説明

双極型二次電池、これを複数接続した組電池、および、これらを搭載した車両

【課題】振動耐久性を向上させた双極型二次電池、これを複数接続した組電池、および、これらを搭載した車両を提供する。
【解決手段】積層された集電体230間に挿入され、対向した集電体のいずれか一方とそれぞれ電気的に接続された複数の歯301と、複数の歯を支持し複数の歯の電位を出力する出力端を有する柄と、を備えた櫛型形状の配線基板300を有し、歯301は導電材料303が絶縁材料304a、304bで被覆された基部301bと導電材料が露出した先端部301aとからなり、歯と集電体は、歯の先端部と集電体との間に設けられた導電性弾性体を介して電気的に接続されたことを特徴とする双極型二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型二次電池、および、これを含む組電池および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギを有することが求められている。したがって、全ての電池の中で最も高い理論エネルギを有するリチウムイオン二次電池(一つの二次電池を単電池と称する)を直列に積層した双曲型二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
【0004】
双極型二次電池は、各単電池が製造バラツキによりその内部抵抗や容量等にバラツキを有することから、これを直列に接続したときに各単電池が分担する電圧にバラツキが生じる。単電池の分担電圧のバラツキが発生すると、分担電圧の大きな単電池に過大な負荷がかかり、当該分担電圧が大きい単電池から劣化が進行し、双極型二次電池全体としての寿命が当該分担電圧の大きい単電池によって制限されてしまうことがある。このため、各単電池の電圧をモニタし、分担電圧を均等にするための制御をすることが望ましい。
【0005】
従来は、各単電池の電圧をモニタするために、積層された各集電体間に櫛型形状の配線基板の歯の部分を挿入して、該歯の部分と各集電体とを接触させて電気的に接続し、該配線基板の柄の部分から各集電体の電圧を取り出していた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2008−160060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、該配線基板の歯の先端部分は、集電体と接続するために導電材料を被覆した絶縁材料を除去して導電材料を露出させている。そのため、導電材料を露出した該先端部分と、導電材料が露出していない部分との間で段差が生じており、該段差の影響で該歯の先端部分と集電体との接触面積が十分とれず両者の接着の振動耐久性を劣化させる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る双極型二次電池は、集電体と、配線基板と、導電性弾性体を有する。配線基板は、積層された集電体間に挿入され、対向した前記集電体のいずれか一方とそれぞれ電気的に接続された複数の歯と、複数の歯を支持し前記複数の歯の電位を出力する出力端を有する柄と、を備える。配線基板の歯は導電材料が絶縁材料で被覆された基部と導電材料が露出した先端部とからなり、歯と集電体は、歯の先端部と集電体との間に設けられた導電性弾性体を介して電気的に接続する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る双極型二次電池によれば、集電体と配線基板の歯の先端部との間に導電性弾性体を設ける。これにより、前記段差の影響を低減して集電体と配線基板との接触面積を十分確保するとともに、導電性弾性体に振動を吸収させることができるため、振動耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明に係る双極型二次電池、これを複数接続した組電池、および、これらを搭載した車両について実施形態により詳細に説明する。
【0010】
まず、双極型二次電池について、双極型のリチウムイオン二次電池(以下、双極型二次電池と称する)を例に簡単に説明する。なお、以下参照する図面では、双極型二次電池の構成要素の形状、厚さ等を誇張しているが、これは発明の理解を容易にするためである。
【0011】
図1は、双極型二次電池の外観図である。図2は、図1に示す双極型二次電池の断面図である。
【0012】
図1に示すように、双極型二次電池100は、たとえば、長方形状の扁平な形状を有し、その両側部からそれぞれ電力を取り出すための正極タブ110Aおよび負極タブ110Bが引き出される。発電要素120は、双極型二次電池100の外装材(たとえば、ラミネートフィルム)130によって包まれ、その周囲は熱融着されており、正極タブ110Aおよび負極タブ110Bを引き出した状態で密封される。
【0013】
図2に示すように、双極型二次電池100の発電要素120は、正極活物質層210と、負極活物質層220とが集電体230のそれぞれの面に形成された双極型二次電池用電極200を複数有する。各双極型二次電池用電極は、電解質層240を介して積層されて発電要素120を形成する。隣接する正極活物質層210、電解質層240および負極活物質層220は、一つの単電池層100を構成する。したがって、双極型二次電池100は、単電池層200が積層されてなる構成を有する。また、各集電体230のそれぞれ対向する面の外周には、隣接する集電体230間を絶縁するためのシール部材250を設ける。
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る双極型二次電池の各部材について説明する。
【0015】
[双極型二次電池用電極]
双極型二次電池用電極は、集電体230と、その表面に設けた活物質層210、220とを有する。より詳しくは、一つの集電体の片面に正極活物質層210を、他方の面に負極活物質層220を有する。各活物質層は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
【0016】
正極活物質層は正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMnやLiNiO等のリチウム−遷移金属酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物が挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。上記以外の正極活物質が用いられてもよい。
【0017】
負極活物質層は負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、上述したようなリチウム−遷移金属化合物、金属材料、リチウム−金属合金材料が挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。上記以外の負極活物質が用いられてもよい。
【0018】
正極および負極の活物質層に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmである。ただし、この範囲を外れる形態が採用されてもよい。
【0019】
[電解質層]
電解質層を構成する電解質に特に制限はなく、液体電解質、ならびに高分子ゲル電解質および高分子固体電解質等のポリマー電解質を用いることができる。
【0020】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が挙げられる。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiN(SO、LiN(SOCF、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSOCF等の電極の活物質層に添加されうる化合物を同様に用いることができる。
【0021】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない高分子固体電解質に分類される。ゲル電解質は、リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。リチウムイオン伝導性を有するマトリックスポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなマトリックスポリマーには、リチウム塩等の電解質塩がよく溶解しうる。高分子固体電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が高分子固体電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0022】
高分子ゲル電解質や高分子固体電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発揮しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0023】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0024】
[シール部材]
双極型二次電池100においては、通常、各集電体230のそれぞれ対向する面の外周、すなわち、各単電池層200の周囲にシール部材250を設ける。このシール部材250は、電池内で隣り合う集電体230同士が接触することや、発電要素120における単電池層200の端部のわずかな不揃い等に起因する短絡が起こることを防止する目的で設ける。シール部材250を設けることにより、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型二次電池100を提供しうる。
【0025】
シール部材250の材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性を有するものを用いる。例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムを用いうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂を好適に用いうる。
【0026】
[正極タブおよび負極タブ]
電池外部に電力を取り出す目的で、電池要素120において最大電位および最小電位となる集電体230にそれぞれ電気的に接続したタブ(正極タブ110Aおよび負極タブ110B)を電池の外装材130の外部に引き出すように設ける。
【0027】
タブを構成する材料には高導電性材料を用いる。高導電性材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料を用いることが望ましい。また、軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅を用いることがさらに望ましい。
【0028】
[電池外装材]
電池外装材130としては、金属缶ケースのほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースを用いることができる。ラミネートフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルムを用いることができるが、これに制限されない。
【0029】
次に、本発明に係る双極型二次電池について詳細に説明する。
【0030】
図3は、本発明の実施形態に係る双極型二次電池の断面図の一部(発電要素と配線基板)を示した図である。
【0031】
図3に示すように、発電要素120は、電池を構成する最小単位である単電池層200が集電体230を介して複数積層されることで構成される。したがって、集電体230は単電池層200を介して積層される。櫛型形状を有する配線基板300は、その歯301の部分が積層された集電体間に挿入し、対向した集電体230のいずれか一方とそれぞれ電気的に接続する。配線基板300の出力端302aは複数の歯301に対応した数の出力端子302bを有し、複数の歯301それぞれと配線により個々に接続する。
【0032】
配線基板300は、上述したように、複数の歯301とこれを支持する柄302とからなる櫛型の形状を有し、各集電体230と電気的に接続されたことで、各集電体230から配線基板300の歯301にそれぞれ印加された電圧をそれぞれ別個に出力端302aから出力することができる。これにより、積層された各集電体の電圧を配線基板の出力端302aから双極型二次電池の外装材の外に取り出すことができる。すなわち、各単電池200の電圧を外装材の外からモニタすることができる。
【0033】
図4は、本実施形態に係る双極型二次電池の断面図の一部を示す図であって、図3の太線A内の部分の拡大図である。
【0034】
図4に示すように、配線基板300の歯301は、先端部301aと基部301bとからなる。基部301bは、導電材料303を絶縁材料304a、304bが被覆した構造を有する。先端部301aは、絶縁材料304a、304bの一部(304b)を除去した構造を有する。そして、歯301の先端部301aの導電材料303が露出した部分と集電体230とを導電性弾性体400を介して電気的に接続する。これにより歯301と集電体230が電気的に接続される。
【0035】
図9は、本実施形態と異なり、導電性弾性体400を用いずに配線基板300の歯301の先端部301aと集電体230を電気的に接続させた場合を示す参考図である。上述したように、先端部301を構成するために、配線基板300の歯301の一部から絶縁材料304a、304bの一部(304b)を除去する。このため、先端部301と基部302との間には除去した絶縁材料304bの厚さ分の段差が生じる。配線基板300の歯301の先端部301aと集電体230との間に導電性弾性体を設けない場合は、図9に示すように、該段差の影響で該歯の先端部分と集電体との接触面積を十分確保することができない。また、集電体230と配線基板との間に空間が発生することで、後述するシール部材が電気的接触部分に侵入することがある。そうすると、配線基板300と集電体230との間の電気的接続を低抵抗かつ信頼性の高いものとすることが困難となる可能性がある。
【0036】
本実施形態に係る双極型二次電池においては、図4に示すように、歯301の先端部301aと集電体230との間に導電性弾性体400を設け、歯301の導電材料303および集電体230を導電性弾性体400と接触(すなわち電気的に接続)させる。これにより、配線基板300の歯301と集電体230を電気的に接続させる。このような構造とすることにより、本実施形態に係る双極型二次電池は、前記段差の影響を低減して集電体と配線基板との接触面積を十分確保することができる。また、導電性弾性体に振動を吸収させることで、双極型二次電池の振動耐久性を向上させることができる。
【0037】
導電材料303としては、例えば、銅を用いることができ、絶縁材料304a、304bとしては、例えば、ポリイミドを用いることができる。ポリイミドを用いることで、双極型二次電池の耐温度性能、耐振動強度を高くし、信頼性の向上を実現することができる。
【0038】
ここで、配線基板300の歯301の導電材料303を被覆する絶縁材料304bの厚さは、導電性弾性体400の厚さより薄いことが望ましい。これにより、集電体と配線基板との接触面積を十分に確保することができ、低抵抗で信頼性の高い電気的接続を実現することができる。
【0039】
歯301の導電材料303および集電体230を導電性弾性体400と接触させるために、シール部材250を利用することができる。すなわち、一般的に、双極型二次電池は、電池内で隣り合う集電体230同士が接触すること等を防止するために、各集電体230のそれぞれ対向する面の外周にシール部材(接着剤)250を設ける。そこで、シール部材250を利用して、シール部材250が歯301の先端部301を覆った構造とすることで、歯301の導電材料および集電体230と導電性弾性体400との接触を維持することができる。このような構造は、配線基板をシール部材250でモールドする工程において、歯301の導電材料303および集電体230を導電性弾性体400と接触させた状態で、シール部材250をモールドすることにより実現できる。具体的には、歯301の先端部301に設けた導電性弾性体400と集電体230を導電性両面テープで貼り付け、歯301の周囲をシール部材でモールドして固定する。これにより、電圧モニタ用の配線基板300と双極型二次電池の各単電池200との間で、簡便で安価かつ強固な電気的接続を実現できる。
【0040】
導電性弾性体400は、熱融着または熱硬化といった方法で配線基板300および集電体230と接着する。シール部材250は、集電体230と電解質層(セパレータ)240との間に配置され、配線基板300を覆って、電解質層240と集電体230とを接着する。これにより、集電体230と配線基板300(すなわち、配線基板300の歯301の先端部301a)の接着部に絶縁体であるシール部材や気体が入りこまない構造を実現し、集電体230と配線基板300との接触を維持することができる。また、配線基板300の導電材料303と導電性弾性体400との間、および、導電性弾性体400と集電体230との間には接着力があるので、振動時に応力集中などによるはがれが発生することを防止し、信頼性の高い電気的接続を維持することができる。
【0041】
また、前述したように、配線基板300の歯301の先端部301aと基部301bの境界には段差を生じているが、振動導入時には、このような段差に曲げが集中し断線しやすくなる。しかし、シール部材250のモールド工程において該段差の部分がシール部材でモールドされて補強されるため、曲げの集中、ひいては断線を防止することができ、信頼性の高い電気的接続を実現できる。
【0042】
導電性弾性体400は、その融点がシール部材250の融点または熱硬化温度よりも高いものを使用することが望ましい。これにより、配線基板300をシール部材250でモールドする工程で熱可塑性の導電性弾性体400が溶解することがなく、導電性弾性体400と集電体230間、導電性弾性体400と配線基板300間に空間が生じないので、シール部材250が電気的接触部分に侵入することを防止することができ、低抵抗で信頼性の高い電気的接続を実現できる。また、導電性弾性体400は、弾性を有するため、振動を吸収する。従って、導電性弾性体400を用いることにより、双極型二次電池の振動耐久性を向上させることができる。導電性弾性体400としては、例えば、ゴムにカーボンを分散させた導電性ゴムシートを用いることができる。
【0043】
図5は、本実施形態に係る双極型二次電池の他の例を示す図である。
【0044】
図5に示すように、対向した集電体230間に配線基板300の歯301を挿入し、一方の集電体230と、歯301の先端部301aの露出させた導電材料303とを導電性弾性体400を介して電気的に接続させる。このとき、導電性弾性体400の表面に、導電性かつ粘着性を有する接着層500を設け、配線基板300の歯301の先端部301aと導電性弾性体400とを接着層500を介して電気的に接続させる。また、集電体230と導電性弾性体400とを接着層500を介して電気的に接続させる。これにより、配線基板300の歯301と集電体230とを電気的に接続させている。
【0045】
このように、導電性弾性体400の表面に接着層500を有するものを用いることにより、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を使う場合に必要な、接続のための熱処理工程が不要とすることができ、コスト削減を実現できる。また、配線基板300の歯301の周囲をシール材でモールドしているので、導電性弾性体400、配線基板300の歯301、集電体230、の相互間に気体が侵入して接触不良を起こすことを防止できる。
【0046】
ここで、導電性弾性体400の表面に設けられた接着層500は、そのガラス転移温度がシール部材250の熱硬化温度または融点より低いものを用いることが望ましい。シール部材250のモールド工程において、接着層500のガラス転移温度以上の温度でシール部材250のモールドが可能となるため、シール部材250塗布時に、接着層500と配線基板300および集電体230との間で粘着を保つことができ、シール部材250が電気的接触部分に侵入することを防止することができる。従って、シール部材250が電気的接触部分に侵入することを防止することで、低抵抗で信頼性の高い電気的接続を実現することができる。接着層500としては、例えば、アクリル系粘着剤中にカーボンファイバーを分散させた導電性両面テープを用いることができる。
【0047】
図6は、本発明に係る双極型二次電池の配線基板を示す表面図である。
【0048】
図6に示すように、配線基板300は、歯301と柄302からなる櫛型形状を有する。歯301の部分は、導電材料が絶縁材料で被覆された構造の基部301bと、絶縁材料上で導電材料が露出した構造の先端301aと、を有してなる。配線基板300の柄302の部分は、歯301の部分を支持するとともに、複数の歯301の電圧を出力するために出力端302aを有する。出力端302aは、複数の歯301の電圧をそれぞれ出力する複数の端子302bを有する。
【0049】
配線基板300は、歯301の電圧を出力端302aから出力するために、歯301の先端301aから、柄302の出力端302aの出力端子302bまで個別に伸延した複数の配線(図示せず)を有することができる。配線基板300は、銅箔をポリイミドフィルムに接着してパターン整形し、パターン整形されたポリイミドフィルムで銅を覆うことで作製することができる。
【0050】
図7は、本実施形態に係る双極型二次電池を複数接続した組電池の実施形態の外観図であって、図7のAは組電池の平面図であり、図7のBは組電池の正面図であり、図7のCは組電池の側面図である。
【0051】
図7に示すように本発明の実施形態に係る組電池700は、本発明の実施形態に係る双極型二次電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池750を形成し、この装脱着可能な小型の組電池750をさらに複数、直列にまたは並列に接続して形成することもできる。
【0052】
これにより、高体積エネルギ密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池700を形成することができる。図7に示す組電池では、作成した装脱着可能な小型の組電池750は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池750は接続治具710を用いて複数段積層される。何個の非双極型ないし双極型二次電池を接続して組電池750を作成するか、また、何段の組電池750を積層して組電池700を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めことができる。すなわち、二次電池を直列化、並列化することで電池の容量および電圧を自由に調節できる。また、低コスト化を実現することができる。
【0053】
図8は、本発明の実施形態に係る双極型二次電池または組電池を搭載した電気自動車800を示す図である。本発明に係る双極型二次電池810は、図8に示すように、電気自動車800の車体中央部の座席下820に搭載しうる。座席下820に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広くとることができるメリットを有する。なお、本発明に係る二次電池810を搭載する場所は、座席下820に限られない。すなわち、本発明に係る二次電池は、後部トランクルームの下部や車両前方のエンジンルームにも搭載しうる。本実施形態に係るリチウムイオン電池をハイブリット車や電気自動車といった車両に用いることにより高寿命で信頼性の高い車両とすることができる。また、車両の低コスト化を実現することができる。
【0054】
なお、本実施形態は双極型二次電池に関するものであるが、双極型二次電池に換え単電池が並列接続された積層型二次電池に本実施形態を適用することもできる。
【0055】
以下に、本発明の実施形態に係る双極型二次電池、これを複数接続した組電池、および、これらを搭載した車両の効果を示す。
・集電体と配線基板の歯の先端部との間に導電性弾性体を設けることで、配線基板の段差の影響を低減し、集電体と配線基板との接触面積を十分確保することで、振動耐久性向上による信頼性向上を実現できる。
・集電体と配線基板の歯の先端部との間に導電性弾性体を設けることで、導電性弾性体に振動を吸収させ、振動耐久性の向上による信頼性の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】双極型二次電池の外観図である。
【図2】双極型二次電池の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る双極型二次電池の断面図の一部を示した図である。
【図4】本実施形態に係る双極型二次電池の断面図の一部を示す拡大図である。
【図5】本実施形態に係る双極型二次電池の他の例の断面図の一部を示す拡大図である。
【図6】本実施形態に係る双極型二次電池の配線基板を示す表面図である。
【図7】本実施形態に係る双極型二次電池を複数接続した組電池の実施形態の外観図である。
【図8】本発明の実施形態に係る双極型二次電池または組電池を搭載した電気自動車700を示す図である。
【図9】導電性弾性体を用いずに配線基板の歯の先端部と集電体を電気的に接続させた双極型二次電池を示す参考図である。
【符号の説明】
【0057】
100 双極型のリチウムイオン二次電池(双極型二次電池)、
120 発電要素、
130 外装材、
200 単電池層、
210 正極活物質層、
220 負極活物質層、
230 集電体、
240 電解質層、
250 シール部材、
300 配線基板、
301 歯、
301a 先端部、
301b 基部、
302 柄、
302a 出力端、
302b 出力端子、
303 導電材料、
304a 絶縁材料、
304b 絶縁材料、
400 導電性弾性体、
500 接着層、
700 組電池、
800 電気自動車(車両)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された集電体間に挿入され、対向した前記集電体のいずれか一方とそれぞれ電気的に接続された複数の歯と、前記複数の歯を支持し前記複数の歯の電位を出力する出力端を有する柄と、を備えた櫛型形状の配線基板を有し、
前記歯は導電材料が絶縁材料で被覆された基部と前記導電材料が露出した先端部とからなり、前記歯と前記集電体は、前記歯の前記先端部と前記集電体との間に設けられた導電性弾性体を介して電気的に接続されたことを特徴とする双極型二次電池。
【請求項2】
対向した前記集電体の外周部間に設けられたシール部材をさらに有し、
前記シール部材は前記先端部を覆ったことを特徴とする請求項1に記載の双極型二次電池。
【請求項3】
前記導電性弾性体の融点は、前記シール部材の融点または熱硬化温度より高いことを特徴とする請求項2に記載の双極型二次電池。
【請求項4】
前記導電性弾性体は表面に導電性を有する接着層を有し、
前記先端部および前記集電体は、前記接着層により前記導電性弾性体と接着されたことを特徴とする請求項2に記載の双極型二次電池。
【請求項5】
前記接着層のガラス転移温度は、前記シール部材の融点または熱硬化温度よりも低いことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の双極型二次電池。
【請求項6】
前記歯の前記導電材料を被覆する前記絶縁材料の厚さは、前記導電性弾性体の厚さより薄いことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の双極型二次電池。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の双極型二次電池を複数電気的に接続して構成したことを特徴とする組電池。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の双極型二次電池、または請求項7に記載の組電池を駆動用電源として搭載したことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−157417(P2010−157417A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334682(P2008−334682)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】