説明

双腕型作業機

【課題】操作者の意図しないアクチュエータの動作を抑制することができる双腕型作業機を提供する。
【解決手段】走行体1上の上部旋回体3の前部の左右に多関節構造の第1及び第2作業フロント装置A,Bを備えた双腕型作業機であって、運転席49の左右に設けたアームブラケット51a,b、左右方向に揺動自在にアームブラケット51a,bに設けた操作アーム52a,b、及び操作アーム52a,bの前側部分に上下前後方向に回動自在に設けた横置きの操作レバー55a,bを備えた第1及び第2フロント操作装置50a,bと、動作を許可するか否かを第1及び第2作業フロント装置50a,bのそれぞれに対して個別に設定可能なフロントロック選択スイッチ80a,bと、フロントロック選択スイッチ80a,bからの入力により対応のフロント操作装置A,Bの操作の有効/無効を切り換えるロック制御部161Ga,bとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物解体工事、土木建設工事等に使用される作業機械に係り、特に2つの多関節型の作業フロントを備えた双腕型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の油圧ショベルは、上部旋回体にブーム及びアームからなる多関節型の作業フロントを俯仰動可能に連結し、アーム先端にバケットを上下揺動自在に取り付けた構成であるが、バケットに代えてブレーカやクラッシャ、グラップル等を装着することで、構造物解体工事、土木建設工事等に使用される作業機械を構成する場合がある。
【0003】
この種の作業機械の作業フロントは一般に1つ(以下、適宜「単腕型作業機」と記載する)であるが、2つの作業フロントを備えた双腕型作業機が近年提唱されている(特許文献1等参照)。双腕型作業機では、左右の作業フロントの各操作装置(フロント操作装置)がそれぞれ運転席の左右に設けられており、左右の作業フロントのそれぞれは片手で操作可能な構成となっている。これにより、例えば一方の作業フロントで被解体物を把持し、他方の作業フロントで被解体物を破砕する等、単腕型作業機では難しかった様々な動作が可能になり作業の安全面や効率面のメリットも大きい。
【0004】
【特許文献1】特開2005−171510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者等が双腕型作業機の開発に関して鋭意研究を重ねるうちに、一方の作業フロントで把持し固定した解体対象物に対して他方の作業フロントで引き剥がし作業を行う等、操作者の多くは左右の作業フロントを同時操作するよりも交互に操作するケースが多いことが判ってきた。また、一方の作業フロントの操作に一旦注力し出すと他方の作業フロントの操作装置への注意が行き届かなくなることがあり、操作者は一方の作業フロントの操作中に他方の作業フロントを無意識に動かしてしまう場合があることを知見した。
【0006】
それに対し、特許文献1の双腕型作業機では、1本の作業フロントを左右の操作レバーで操る単腕作業機の操作方式に切り換える機能が備えられており、選択した方の作業フロントの各アクチュエータへの指示を左右の操作装置で分担して操作することができる。この場合には、操作者が操作対象から外した方の作業フロントの意図しない動作は抑制される。
【0007】
ここで、双腕型作業機では各作業フロントの全動作を片手で操作することとなるので、極力直感的に作業フロントの動作を指示できるようにするため、フロント操作装置の可動軸の位置や向きが作業フロントの動作イメージにマッチするように工夫されている。例えば作業フロントの左右方向へのスイング動作は操作者が肘を左右に振ることで操作アームを左右に動かして指示し、ブーム・アーム・作業具等の上下方向への俯仰動作は横向きに配置された操作レバーの前後上下への操作及び捻り操作によって指示する。
【0008】
このように左右の作業フロントの複雑な操作を直感的なものとするため左右の操作レバーが横向きに配置されているので、運転席に座る操作者の胸部前方に左右から操作レバーが張り出す形となっている。そのため、運転席前方に配置された走行指示用の操作レバーや運転席脇に配置されたゲートロックレバーを運転席に着座した状態で操作しようとすると、操作者の肘や腕がフロント操作装置に干渉し操作者の意図に反して作業フロントが動作してしまう恐れがある。この場合、特許文献1の双腕型作業機のように操作対象の作業フロントを選択しても、左右のフロント操作装置の指示する動作の割り振りが切り換わっただけなので、いずれかのフロント操作装置に肘や腕が干渉すれば操作対象の作業フロント或いは上部旋回体が動作してしまう。
【0009】
そこで本発明は、操作者の意図しないアクチュエータの動作を抑制することができる双腕型作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明は、走行体と、前記走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体上の左右方向の中央部に設けられた運転室と、前記運転室内に設置された運転席と、前記上部旋回体の前部の左右にそれぞれ設けられた多関節構造の第1及び第2の作業フロント装置とを備えた双腕型作業機であって、前記運転席の左右両側に設けられたアームブラケット、左右方向に揺動自在に前記アームブラケットに設けられ、前記作業フロント装置の左右揺動を指示する操作アーム、及び前記操作アームの前側部分に上下前後方向に回動自在に設けられ、前記作業フロント装置の俯仰動を指示する横置きの操作レバーを備えた第1及び第2のフロント操作装置と、動作を許可するか否かを前記第1及び第2の作業フロント装置のそれぞれに対して個別に設定可能なフロントロック選択手段と、前記フロントロック選択手段からの入力により対応のフロント操作装置の操作の有効/無効を切り換えるロック制御部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記操作レバーは、中立位置にあるときに前方から見て前記運転席の背もたれ部に少なくとも一部が重なって配置され、前記運転席の前方に設けた走行操作装置と前記運転席の背もたれ部との間に介在していることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記第1及び第2作業フロント装置、前記走行体及び前記上部旋回体の動作を許可するか否かを設定するロック手段と、前記ロック手段の切り換え状態を検出する検出手段とを備え、前記ロック制御部は、前記検出手段からの検出信号を基に前記ロック手段がロック状態にあると判定した場合、前記フロントロック選択手段の設定状態に関わらず前記第1及び第2の作業フロント装置の動作がいずれも禁止された状態に切り換えることを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記操作アームは、揺動中心上にアームレストを有し、前記操作レバーの取り付け部側が前記アームレストよりも高くなっており、前記ロック手段が前記運転席から見て前記操作アーム越しに配置されていることを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、第1−第4の発明のいずれかにおいて、前記フロントロック選択手段とともに該フロントロック選択手段の設定状態を表示する表示部を有するフロントロック操作部を備えたことを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、第1−第5の発明のいずれかにおいて、前記フロントロック選択手段を前記操作レバーに設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、左右のフロント操作装置をそれぞれ任意に操作無効化できるので、操作者の意図しないアクチュエータの動作を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態に係る双腕型作業機の外観を示す左側面図、図2はその平面図である。
【0019】
図1及び図2において、双腕型作業機100は、走行体1と、走行体1上に旋回可能に設けられた上部旋回体3とを備えている。図中の左右方向を双腕作業機100の前後方向とすると、上部旋回体3の前側上部には左右方向の中央部に運転室4が設けられ、上部旋回体3の側部及び後部(運転室4の周囲)には図示しないエンジンやポンプ等が収容されている。本実施形態の場合、運転室4の左側面に乗降口及び乗降口を開閉する乗降扉4aが設けられている。また、上部旋回体3の前部の左右には上下左右揺動自在な多関節構造の第1作業フロント装置A及び第2作業フロント装置Bが設けられている。なお、図1では作業フロント装置A,Bを上げた姿勢を図示しているが、図2では作業フロント装置A,Bを下げた姿勢を図示している。
【0020】
第1作業フロント装置Aは、上部旋回体3の前部左側に設けられたブラケット6aと、ブラケット6aに縦軸周りに左右揺動自在に取り付けられたスイングポスト7aと、このスイングポスト7aに上下揺動自在に取り付けられたブーム10aと、このブーム10aに上下揺動自在に取り付けられたアーム12aと、このアーム12aに上下回動自在に取り付けられたグラップル(作業具)14aと、スイングポスト7aと上部旋回体3とに連結されスイングポスト7aを縦軸回りに左右方向に揺動させるスイングポストシリンダ9aと、スイングポスト7aとブーム10aとに運結されブーム10aを上下方向に揺動させるブームシリンダ11aと、ブーム10aとアーム12aとに連結されアーム12aを上下方向に揺動させるアームシリンダ13aと、アーム12aとグラップル14aとに連結されグラップル14aを上下方向に回動させる作業具シリンダ15aとを有している。
【0021】
ここで、作業フロント装置Aの先端部を構成する作業具は、図示したグラップル14aの他、作業内容に応じてカッタやブレーカ、バケット、その他の作業具のいずれか1つに任意に交換可能である。
【0022】
第2作業フロント装置Bは、上部旋回体3の前部右側に設けられている。この第2作業フロント装置Bは、第1作業フロント装置Aと左右対称に構成されており、対応する部材には符号の添字を「a」から「b」に変えて示すことにし、ここでは説明を省略する。
【0023】
図3は運転室4内に設置された運転席49周りの平面図、図4は正面図、図5は左側面図、図6は第1及び第2作業フロント装置A,Bへの指令系統の概略を示すブロック図である。図6では第2作業フロント装置Bの系統を括弧書きで示している。
【0024】
図3−図5に示したように、運転室4内に設置された運転席49の左右にはそれぞれ第1フロント操作装置50a及び第2フロント操作装置50bが設けられている。第1フロント操作装置50aは第1作業フロント装置Aの動作指示用であり、第2フロント操作装置50bは第2作業フロント装置Bの動作指示用である。
【0025】
第1及び第2フロント操作装置50a,50bの構成を説明する前に、まず運転席49の周辺に配置された他の機器について簡単に説明する。
【0026】
運転席49の前方正面には、走行体1の左右の走行装置の動作を指示する左右の走行操作レバー46a,46bが設けられている。走行操作レバー46a,46bは足でも操作できるように下部(足元)にペダルが備えられている。走行操作レバー46a,46bの側方位置(本例では右側)の床面付近(足元)には、上部旋回体3の旋回動作を指示する旋回ペダル47が設けられている。
【0027】
本実施の形態では、運転室4内の前方側部(本例では右前)には、フロントロック操作部220が設けられている。フロント操作部220は、例えば運転席49に着座した操作者の胸部付近の高さに配置され、図7に例示したように第1及び第2作業フロント装置A,Bの動作を許可するか否かを設定するフロントロック選択スイッチ80a,80bとともに、これらフロントロック選択スイッチ80a,80bのそれぞれの設定状態を表示する表示部であるLED210a,210bを有している。LED210a,210bはフロント選択スイッチ80a,80bとの対応関係が一見して判別できるように対応のフロント選択スイッチ80a,80bの直ぐ近く(本例では直ぐ上)に配置されている。フロント選択スイッチ80a,80bにLEDを組み込み、フロント選択スイッチ80a,80bとLED210a,210bを一体化しても良い。また、フロント選択スイッチ80a,80bには、それぞれ「左」「右」等の第1及び第2作業フロント装置A,Bとの対応関係が明確な表示がなされており、例えば「左」と表示されたフロント選択スイッチ80aを一度押し込むとONとなって左側の第1作業フロント装置Aの動作が許可される。フロント選択スイッチ80aがONになったらLED210aが点灯し、第1作業フロント装置Aの動作が許可されていることを確認することができる。反対に、フロント選択スイッチ80aをもう一度押すとOFFとなって第1作業フロント装置Aの動作が禁止される。フロント選択スイッチ80aがOFFになったらLED210aが消灯し、第1作業フロント装置Aの動作が禁止されていることを確認することができる。フロント選択スイッチ80a,80bは互いの設定状態とは無関係に個別にそれぞれ操作可能であり、第1及び第2作業フロント装置A,Bの動作の「許可・許可」「禁止・禁止」「許可・禁止」「禁止・許可」の4通りの組み合わせを設定することができる。
【0028】
図3−図5に戻り、運転席49から見て第1フロント操作装置50aを挟んで運転室4の乗降口側には、ゲートロックレバー202が設けられている。ゲートロックレバー202は運転席49の左側コンソールボックスの左側面に設けられており、乗降経路に干渉し操作者が運転席49から降りる時に必ず引き上げ操作が必要な位置に設けられている。ゲートロックレバー202は引き上げた状態(図5の二点差線図示)がロック状態であり、第1及び第2作業フロント装置A,B、走行体1及び上部旋回体3の各アクチュエータの動作が操作の有無に関わらず禁止される。一方操作者が運転席49に着座してゲートロックレバー202を下ろすと(図5の実線図示)、ゲートロックレバー202が解除状態に切り換わって機体の動作指示が有効化される。
【0029】
第1フロント操作装置50aは、運転席49の左側に立設したポスト48aに設けられたアームブラケット51aと、このアームブラケット51aに揺動中心軸線73a回りに左右揺動自在に取り付けられ、第1作業フロント装置Aの左右の揺動を指示する操作アーム52aと、この操作アーム52aの揺動中心73a上に設けられ、操作アーム52aに一体に揺動するように取り付けられたアームレスト53aとを備えている。アームレスト53aは運転中に操作者が肘関節を乗せる肘関節支持部77a(図3参照)を有しており、操作アーム52a及びアームレスト53aは、アームレスト53aの肘関節支持部77aが操作アーム52aの揺動中心73a上に位置するように構成されている。詳細には図示していないが、アームブラケット51aは、操作者の体型に合わせて肘関節支持部77aの位置を調節するための肘関節位置調節装置を有している。
【0030】
また、第1フロント操作装置50aは、第1作業フロント装置Aの俯仰動作を指示する横置きの操作レバー55aと、操作レバー55aに設けられ、グラップル14aの始動・停止を指示する作業具操作スイッチ56a(図6参照)とを備えている。作業具操作スイッチ56aは、グラップル14aの開閉動作を指示する開閉操作スイッチ561a、グラップル14aの運転席49から見て時計回りの回転動作を指示する回転操作スイッチ562a、及びその逆回転動作を指示する回転操作スイッチ563aを含んでいる。開閉操作スイッチ561aは操作レバー55aの先端の端面に配置されている。回転操作スイッチ562a,563aはこの順で開閉操作スイッチ561aに近く配置され、操作レバー55aが中立位置にあるときに前方を向くように操作レバー55aの摺動部に配置されている。これら操作スイッチ561a,562a,563aは、例えば操作者の左手の親指、人差指、中指でそれぞれ操作し易いように配置されている。
【0031】
操作レバー55aは、操作アーム52aの前側(先端側)部分の運転席49側の面に設けられ、基部54aを支点にして上下方向及び前後方向に揺動自在で、かつ中心線周りに回転可能に構成されている。操作レバー55aは、中心線を左右方向にほぼ水平に寝かせた状態で操作アーム52aから運転席49側に延在している。操作アーム52aは操作レバー55aの取り付け部側(前側)をアームレスト53aよりも高くしてあり、アームレスト53aの肘置き面よりも操作レバー55aの配置が適度に高くなっている。このとき、操作者が運転席49に着座してアームレスト53aに左肘を置くと、肘から先の前腕部は自然に内側斜め前方(この場合右斜め前方)に延び、また前腕部を肘よりも上げた方が力を入れ易く微妙な力加減もし易くなる。本実施の形態では、操作レバー55aが運転席49側に延在し、なおかつ操作レバー55aがアームレスト53aよりも高位置に配置されているので、フロント操作装置50aが中立状態にあるとき、操作者が運転席49に着座した状態で先の無理のない姿勢で操作レバー55aを把持できるように配慮されている。また、双腕型作業機100の運転席4は作業フロント装置A,Bの間に介在し左右方向の寸法(幅寸法)の制約が大きいため、操作アーム52aの外側(この場合左側)への揺動スペースも大きく制約される。この場合にも、作業者の前腕部が肘よりも内側に延びる自然な姿勢で操作レバー55aが把持できる状態をフロント操作装置50aの中立位置としたことで、操作アーム52aの揺動スペースの過半の領域を揺動中心線73aから前方に延ばした線よりも内側(この場合右側)に分布させることができ、スペースの限られた運転室49内で操作アーム52aの揺動スペースを確保することができる。その結果、操作レバー55aは、中立位置(図示した状態)にあるときに前方から見て運転席49の背もたれ部49aに少なくとも一部が重なり、運転席49の前方に設けた走行操作レバー46a,46bと運転席49の背もたれ部49aとの間に介在する形となっている。本実施の形態の場合、操作スイッチ561a,562a,563aは、操作レバー55aが中立位置にあるときに前方から見て運転席49の背もたれ部49aに重なる部位に配置されている。
【0032】
また、図6に示したように、第1フロント操作装置50aは、操作アーム52aの揺動変位量を検出して信号を発信する操作アーム用変位検出器57aと、操作レバー55aの上下方向の変位量を検出して信号を発信する操作レバー上下方向変位検出器581aと、操作レバー55aの前後方向の変位量を検出して信号を発信する操作レバー前後方向変位検出器582aと、操作レバー55aの回転変位量を検出して信号を発信する操作レバー回転変位検出器59aと、作業具操作スイッチ56a(操作スイッチ561a,562a,563a)の変位量を検出して信号を発信する作業具操作スイッチ変位検出器60aとを有している。
【0033】
第2フロント操作装置50bは、運転席49を挟んで第1フロント操作装置50aとほぼ左右対称に構成されており、同じ部材には第1フロント操作装置50aの符号の添字を「a」から「b」に変えて示すことにし、ここでは説明を省略する。なお、グラップル14bの回転方向と回転操作スイッチ562b,563bの対応関係は第1フロント操作装置50aと逆で、回転操作スイッチ563bによってグラップル14bの時計回りの動作が指示される。
【0034】
図6に示したように、第1及び第2フロント操作装置50a,50bからの操作信号はそれぞれ制御装置160a,160bに入力され、制御装置160a,160bでは第1及び第2フロント操作装置50a,50bからの操作信号に基づいて第1及び第2作業フロント装置A,Bの対応の駆動系に出力される。
【0035】
制御装置160a,160bの入力系としては、第1及び第2フロント作業装置50a,50bの各変位センサ(操作アーム用変位検出器57a,57b、操作レバー上下方向変位検出器581a,581b、操作レバー前後方向変位検出器582a,582b、操作レバー回転変位検出器59a,59b、及び作業具操作スイッチ変位検出器60a,60b)の他、上記のフロントロック選択スイッチ80a,80b及び圧力センサ85が含まれる。圧力センサ85は、上記のゲートロックレバー202の切り換え状態を検出する検出手段である(後述の図8も参照)。
【0036】
制御装置160a,160bは、第1及び第2フロント操作装置50a,50bからの操作信号を基に対応の駆動系への指令信号を出力するフロント操作制御部161a,161bと、圧力センサ85やフロントロック選択スイッチ80a,80bからの信号を基に各駆動系への動力供給の可否を切り換えるロック制御部161Ga,161Gbとを有している。
【0037】
フロント操作制御部161a,161bは、操作アーム用変位検出器57a,57bからの信号を基にスイングポストシリンダ駆動系62a,62b(後述)が駆動可能な駆動信号を出力するスイング駆動信号生成部161Aa,161Abと、操作レバー上下方向変位検出器581a,581bからの信号を基にブームシリンダ駆動系63a,63b(後述)が駆動可能な駆動信号を出力するブーム揺動信号生成部161Ba,161Bbと、操作レバー前後方向変位検出器582a,582bからの信号を基にアームシリンダ駆動系64a,64b(後述)が駆動可能な駆動信号を出力するアーム揺動信号生成部161Ca,161Cbと、操作レバー回転変位検出器59a,59bからの信号を基に作業具シリンダ駆動系65a,65b(後述)が駆動可能な駆動信号を出力する作業具揺動信号生成部161Da,161Dbと、作業具操作スイッチ変位検出器60a,60bからの信号を基に作業具駆動系66a,66b(後述)が駆動可能な駆動信号を出力する作業具駆動信号生成部161Ea,161Ebとを有している。
【0038】
ロック制御部161Ga,161Gbは、フロントロック選択手段80a,80bや圧力センサ85からの信号を用いて所定の判断を実行し、切換弁206a,206b(後述)やLED210a,210bへの指令信号を出力するもので、主に次の2つの機能を有する。第一には、フロントロック選択スイッチ80a,80bからの入力によりフロント操作装置50a,50bの操作の有効/無効を切り換える機能である。第二には、圧力センサ85からの検出信号を基にゲートロックレバー202がロック状態にあると判定した場合、フロントロック選択スイッチ80a,80bの設定状態に関わらず第1及び第2の作業フロント装置A,Bの動作がいずれも禁止された状態(本例の場合、切換弁206a,206bをいずれも遮断位置にする)に切り換える機能である。
【0039】
制御装置160a,160bの出力系には、第1及び第2作業フロント装置A,Bの各駆動系と、切換弁206a,206bと、上記のLED210a,210bとが含まれる。
【0040】
第1及び第2作業フロント装置A,Bの各駆動系には、スイングポスト7a,7bを左右揺動させるためのスイングポストシリンダ9a,9bを駆動するスイングポストシリンダ駆動系62a,62bと、ブーム10a,10bを上下揺動させるためのブームシリンダ11a,11bを駆動するブームシリンダ駆動系63a,63bと、アーム12a,12bを上下揺動させるためのアームシリンダ13a,13bを駆動するアームシリンダ駆動系64a,64bと、グラップル14a,14bを上下揺動させるための作業具シリンダ15a,15bを駆動する作業具シリンダ駆動系65a,65bと、グラップル14a,14bを駆動する作業具駆動系66a,66bとが含まれる。
【0041】
切換弁206a,206bは、図6の各駆動系を構成するコントロールバルブへのパイロット圧(後述のPp1’、図8参照)の入力を切り換える役割を果たす。
【0042】
図8は本実施の形態の双腕型作業機の要部回路図である。この図において、実線(太線)は作動油の管路、実線(細線)はパイロット管路、点線は電気指令系統を表している。
【0043】
図8において、エンジン180が駆動するとメインポンプ181A,181B及びパイロットポンプ200が駆動する。メインポンプ181A,181Bからの圧油は第1及び第2コントロールバルブユニット182a,182bにより分流制御され、第1及び第2アクチュエータ群183a,183bを駆動し双腕型作業機100に所望の動作をさせる。ここで、第1アクチュエータ群183aは第1作業フロント装置Aの各アクチュエータと上部旋回体3の旋回モータを含む油圧アクチュエータの総称であり、第1コントロールバルブユニット182aは第1アクチュエータ群183aの各油圧アクチュエータへの油圧の流れをそれぞれ制御するコントロールバルブの総称である。一方、第2アクチュエータ群183bは第2作業フロント装置Bの各アクチュエータと走行体1の走行モータを含む油圧アクチュエータの総称であり、第2コントロールバルブユニット182bは第2アクチュエータ群183bの各油圧アクチュエータへの油圧の流れをそれぞれ制御するコントロールバルブの総称である。第1及び第2コントロールバルブユニット182a,182bの各コントロールバルブはパイロットポンプ200からのパイロット圧を受けていないときは中立位置に復帰し、対応のアクチュエータへの圧油を遮断する。
【0044】
パイロット回路は主に、パイロットポンプ200と、パイロットポンプ200からの圧油を調圧するパイロットリリーフ弁を内蔵したパイロットフィルタ201と、パイロットポンプ200からのパイロット圧を遮断する上記のゲートロックバルブ203と、旋回ペダル47の操作に応じてパイロット圧(方向及び流量)を制御する旋回操作用パイロットバルブ205aと、走行操作レバー46a,46bの操作に応じてパイロット圧(方向及び流量)を制御する走行操作用パイロットバルブ205bと、上記の切換弁206とで構成されている。
【0045】
ゲートロックバルブ203は、ゲートロックレバー202がロック状態にある場合にパイロットポンプ200の吐出管路を遮断し、双腕型作業機100に搭載された全ての油圧アクチュエータを動作不能とする。
【0046】
旋回操作用パイロットバルブ205aは、旋回ペダル47の操作に応じて制御したパイロット圧を、第1コントロールバルブユニット182aのうちの旋回モータに対応するコントロールバルブに導く。
【0047】
走行操作用パイロットバルブ205bは、走行操作レバー46a,46bの操作に応じて制御したパイロット圧を、第2コントロールバルブユニット182bのうちの走行モータに対応するコントロールバルブに導く。
【0048】
切換弁206aは、第1フロント選択スイッチ80aで第1作業フロント装置Aの動作が禁止された場合に、制御装置160aから出力される指令信号に従って第1作業フロントAの各アクチュエータに対応するコントロールバルブへのパイロット圧Pp1’を遮断し、第1コントロールバルブユニット182aの電磁・油圧パイロットセクション(後述)の操作を無効にする。このとき、ロック操作制御部161Gaは、第1フロント選択スイッチ80aの設定(ON/OFF)を基にLED210aに指令信号を出力し、LED210aの点灯・消灯を切り換える。また、ゲートロックレバー202がロック位置に切り換わった場合、仮にフロント選択スイッチ80aがONの状態であっても、ロック制御部161Gaによって切換弁206aは強制的に遮断位置に切り換えられ、その後ゲートロックレバー202のロックを解除した際にも切換弁206aは遮断位置で維持され、フロント選択スイッチ80aを再びONにしなければ連通位置に切り換わらない。この場合、必要であれば、ロック制御装置161Gaは、切換弁206aの強制遮断に伴ってLED210aに消灯を指令し、フロント選択スイッチ80aに信号を返してOFFに切り換える構成とすることもできる。
【0049】
同じく、切換弁206bは、第2フロント選択スイッチ80bで第2作業フロント装置Bの動作が禁止された場合に、制御装置160bから出力される指令信号に従って第2作業フロントBの各アクチュエータに対応するコントロールバルブへのパイロット圧Pp1’を遮断し、第2コントロールバルブユニット182bの電磁・油圧パイロットセクション(後述)の操作を無効にする。このとき、ロック操作制御部161Gbは、第2フロント選択スイッチ80bの設定(ON/OFF)を基にLED210bに指令信号を出力し、LED210bの点灯・消灯を切り換える。また、ゲートロックレバー202がロック位置に切り換わった場合、仮にフロント選択スイッチ80bがONの状態であっても、ロック制御部161Gbによって切換弁206bは強制的に遮断位置に切り換えられ、その後ゲートロックレバー202のロックを解除した際にも切換弁206bは遮断位置で維持され、フロント選択スイッチ80bを再びONにしなければ連通位置に切り換わらない。この場合、必要であれば、ロック制御装置161Gbは、切換弁206bの強制遮断に伴ってLED210bに消灯を指令し、フロント選択スイッチ80bに信号を返してOFFに切り換える構成とすることもできる。
【0050】
ここで、発明の実施態様を限定する意図ではないが、図8に示したように本実施の形態では上部旋回体3の旋回操作及び走行体1の走行操作には油圧パイロット方式を、第1及び第2作業フロント装置A,Bの操作には電気レバー方式をそれぞれ採用している。したがって、コントロールバルブユニット182a,182bには、油圧パイロットセクションと電磁・油圧パイロットセクションが混在している。
【0051】
油圧パイロットセクションに属するコントロールバルブ(旋回用コントロールバルブ及び走行用コントロールバルブ)は、パイロットバルブ205a,205bに入力されるパイロット圧を元圧(一次圧)として走行操作レバー46a,46bや旋回ペダル47の操作に応じてパイロットバルブ205a,205bで減圧制御されたパイロット圧(二次圧)を受け、これによりスプールを駆動してメインポンプ181A,181Bからの圧油を分流制御し対応のアクチュエータを駆動する。
【0052】
一方、電磁・油圧パイロットセクションに属するコントロールバルブ(作業フロント装置用コントロールバルブ)は、コントロールバルブユニットに入力されるパイロット圧(Pp1’)を元圧(一次圧)とし、フロント操作制御部161a,161bからの指令電流に応じて駆動する電磁比例弁(図示せず)で減圧制御されたパイロット圧(二次圧)を受け、これによりスプールを駆動してメインポンプ181A,181Bからの圧油を分流制御し対応のアクチュエータを駆動する。
【0053】
次に本実施の形態の双腕型作業機の操作について説明する。
【0054】
双腕型作業機100を繰作する場合、まず、運転席49に着座してエンジン180を始動する。続いてゲートロックレバー202を解除位置に操作し(下ろし)、パイロットバルブ205a,205b及び切換弁206a,206bにパイロット圧を供給する。この状態に移行すると、走行操作レバー46a,46bや旋回ペダル47の操作に応じて駆動するパイロットバルブ205a,205bによって、走行用コントロールバルブや旋回用コントロールバルブへのパイロット圧が制御可能で、走行操作レバー46a,46bや旋回ペダル47による操作が有効となる。
【0055】
また、エンジン180が始動すると、パイロットバルブ205a,205b及び切換弁206a,206bの上流側の圧力が圧力センサ85で随時検出され、制御装置160a,160b(ロック制御部161Ga,161Gb)に出力される。ゲートロックレバー202が解除位置に操作されて圧力センサ85の出力値がパイロットフィルタ201内のパイロットリリーフ圧まで上昇すると、ゲートロックレバー202が解除位置に移行したことがロック制御部161Ga,161Gbで検知される。ロック制御部161Ga,161Gbは、ゲートロックレバー202の解除を検知しても、フロント選択スイッチ80a,80bが共にOFFである場合は切換弁206a,206bを遮断位置に指令(Pp1’を遮断)するので、フロント操作装置50a,50bが操作されても対応のコントロールバルブは駆動せず、作業フロント装置A,Bは動作しない。つまり、この時点ではフロント操作装置50a,50bの操作はまだ無効である。
【0056】
その後、フロント選択スイッチ80a,80bを適宜操作し、第1作業フロント装置A及び第2作業フロント装置Bの動作の可否を任意に設定すると、フロント選択スイッチ80a,80bの設定状態がロック制御装置161Ga,161Gbに伝わり、切換弁206a,20bのポジションとともにLED210a,210bの点灯・消灯が切り換えられる。フロント選択スイッチ80a(又は80b)により作業フロント装置A(又はB)の動作が許可された場合、切換弁206a(又は206b)が連通位置に切り換わり、第1コントロールバルブユニット182a(又は182b)の電磁・油圧パイロットセクションの各コントロールバルブの電磁比例弁に元圧Pp1’が入力される。この状態において、フロント操作装置50a(又は50b)を操作すると、これに基づくフロント操作制御部161a(又は161b)からの指令信号によって電磁比例弁が制御され、対応のコントロールバルブが駆動して作業フロント装置A(又はB)の所望の動作が実現する。つまり、フロント操作装置50a(又は50b)の操作が有効になる。
【0057】
また、ゲートロックレバー202がロック位置に切り換わった場合、仮にフロント選択スイッチ80a,80bの少なくとも一方がONの状態であっても、ロック制御部161Ga,161Gbによって切換弁206a,206bはいずれも強制的に遮断位置に切り換えられる。その後、ゲートロックレバー202のロックを解除した際にも切換弁206a,206bは遮断位置で維持され、フロント選択スイッチ80a,80bを再びONにしなければ連通位置に切り換わらない。この場合、例えば、切換弁206a,206bの強制遮断に伴ってLED210a,210bの双方が消灯し、フロント選択スイッチ80a,80bがいずれもOFFに切り換わる。
【0058】
次に、図9及び図10を用いて第1及び第2フロント作業装置50a,50bの操作と第1及び第2作業フロント装置A,Bの動作の対応関係について説明する。ここでは、第1及び第2作業フロント装置A,Bの動作はともに許可された状態とする。
【0059】
図9はフロント操作装置の操作方向を示す説明図、図10はフロント操作装置の操作方向に対応する作業フロント装置の動作方向を示す説明図である。なお、これらの図では、第1フロント操作装置50aと第1作業フロント装置Aを代表して図示し、第2フロント操作装置50bと第2作業フロント装置Bについては図中に括弧書きで示している。
【0060】
第1及び第2フロント操作装置50a,50bを操作して第1作業フロント装置A及び第2作業フロント装置Bを動かすには、左腕の肘関節を操作アーム52a上のアームレスト53aの肘関節支持部77aに載せ、操作レバー55aを把持して作業具操作スイッチ56aに指を懸ける。右腕も同様に、肘関節を操作アーム52b上のアームレスト53bの肘関節支持部77bに載せ、操作レバー55bを掌で把持して作業具操作スイッチ56bに指を懸ける。
【0061】
この状態で操作者が第1及び第2フロント操作装置50a,50bの操作アーム52a,52bを前腕部で左右揺動させると(図9の矢印w参照)、操作アーム用変位検出器57a,57bは、制御装置160a,160b内のスイング駆動信号生成部161Aa,161Baへ検出信号を発信する。次に、この検出信号を受けたスイング駆動信号生成部161Aa,161Baは、スイングポストシリンダ駆動系62a,62bに駆動信号を発信する。さらに、この駆動信号を受けたスイングポストシリンダ駆動系62a,62bは、スイングポストシリンダ9a,9bを伸縮させる。これによりスイングポスト7a,7bが操作アーム52a,52bの変位方向と一致する方向に揺動する(図10の矢印W参照)。
【0062】
このとき、スイングポスト7a,7bの揺動速度は、操作アーム52a,52bの変位量と単純増加の関係、例えば比例関係にあり、操作アーム52a,52bの変位は、スイングポスト7a,7bの揺動を速度制御する。
【0063】
また、掌部で操作レバー55a,55bを上下方向(図9の矢印y参照)に変位させると、操作レバー上下方向変位検出器581a,581bは、制御装置160a,160b内のブーム揺動信号生成部161Ba,161Bbへ検出信号を発信する。次に、この検出信号を受けたブーム揺動信号生成部161Ba,161Bbは、ブームシリンダ駆動系63a,63bに駆動信号を発信する。さらに、この駆動信号を受けたブームシリンダ駆動系63a,63bは、ブームシリンダ11a,11bを伸縮させる。これによりブーム10a,10bが揺動する(図10の矢印Y参照)。
【0064】
このとき、ブーム10a,10bの揺動速度は、操作レバー55a,55bの変位量と単純増却の関係、例えば比例関係にあり、操作レバー55a,55bの変位は、ブーム10a,10bの揺動を速度制御する。
【0065】
同様に、掌部で操作レバー55a,55bを前後方向(図9の矢印x参照)に変位させると、操作レバー前後方向変位検出器582a,582bは、制御装置160a,160b内のアーム揺動信号生成部161Ca,161Cbへ検出信号を発信する。次に、この検出信号を受けたアーム揺動信号生成部161Ca,161Cbは、アームシリンダ駆動系64a,64bに駆動信号を発信する。さらに、この駆動信号を受けたアームシリンダ駆動系64a,64bは、アームシリンダ13a,13bを伸縮させる。これによりアーム12a,12bが揺動する(図10の矢印X参照)。
【0066】
このとき、アーム12a,12bの揺動速度は、操作レバー55a,55bの変位量と単純増加の関係、例えば比例関係にあり、操作レバー55a,55bの変位は、アーム12a,12bの揺動を速度制御する。
【0067】
また、掌で操作レバー55a,55bを回動中心軸線74a,74b回りに回転させると(図9の矢印z参照)、操作レバー回転変位検出器59a,59bは、制御装置160a,160b内の作業具揺動信号生成部161Da,161Dbへ検出信号を発信する。次に、この検出信号を受けた作業具駆動信号生成部161Da,161Dbは、作業具シリンダ駆動系65a,65bに駆動信号を発信する。さらに、この駆動信号を受けた作業具シリンダ駆動系65a,65bは、作業具シリンダ15a,15bを伸縮させる。これによりグラップル14a,14bが操作レバー55a,55bの回動方向と一致する方向に回動する(図10の矢印Z参照)。
【0068】
このとき、グラップル14a,14bの揺動速度は、操作レバー55a,55bの変位量と単純増加の関係、例えば比例関係にあり、操作レバー55a,55bの変位は、グラップル14a,14bの揺動を速度制御する。
【0069】
また、指で作業具操作スイッチ56a,56bを変位させると、作業具操作スイッチ変位検出器60a,60bは、制御装置160a,160b内の作業具駆動信号生成部161Ea,161Ebへ検出信号を発信する。次に、この検出信号を受けた作業具駆動信号生成部161Ea,161Ebは、作業具駆動系66a,66bに駆動信号を発信する。さらに、この駆動信号を受けた作業具駆動系66a,66bは、グラップル14a,14bを駆動させる。例えば開閉操作スイッチ561a,561bの操作に応じてグラップル14a,14bが開閉し(図10中の矢印P参照)、回転操作スイッチ562a,562b及び563a,563bの操作に応じてグラップル14a,14bが回転する(図10中の矢印Q参照)。
【0070】
この時のグラップル14a,14bの駆動速度は作業具操作スイッチ56a,56bの変位量と単純増加の関係、例えば比例関係にあり、作業具操作スイッチ56a,56bの変位は作業具の駆動を速度制御する。
【0071】
以上説明した本実施の形態によれば、第1及び第2作業フロント装置A,Bの俯仰動作に対応して操作レバー55a,55bが横置きとなっているので第1及び第2作業フロント装置A,Bを直感的に操作することができる。また、運転席49に座る操作者の胸部前方に左右から横置きの操作レバー55a,55bが張り出しているので、操作レバー55a,55bを自然な体制で把持することができ、作業フロント装置A,Bの良好な操作性が確保される。このとき、フロントロック選択スイッチ80a,80bで第1及び第2作業フロント装置A,Bの動作を許可するか禁止するかを個別に設定できるので、使用しない作業フロント装置の動作を禁止しておけば、操作対象の片側の作業フロント装置の操作に集中している間に他方のフロント操作装置を無意識に動かしてしまっても他方の作業フロント装置は動作しない。
【0072】
また、走行操作レバー46a,46bは運転席49から見て操作レバー55a,55bを挟んで前方に位置するので、運転席49に着座した操作者は操作レバー55a,55b越しに走行操作レバー46a,46bを操作することになるため、第1及び第2の作業フロント装置A,Bの動作が許可された状態では、操作レバー55a,55bに操作者の肘や腕が触れ、第1及び第2の作業フロント装置A,Bが意図しない形で動作してしまう場合がある。また、ゲートロックレバー202は運転席49から見てフロント操作装置50a越しに配置されており、しかも操作アーム52aの前方が高くなっていることから、運転席49に着座した姿勢でゲートロックレバー202を操作しようとすると、フロント操作装置50aに肘や腕が触れ、やはり第1及び第2の作業フロント装置A,Bが意図しない形で動作してしまう場合がある。
【0073】
それに対しても、本実施の形態では、例えば運転席49を離れるときや走行操作をするときに、フロントロック選択スイッチ80a,80bによって第1及び第2作業フロント装置A,Bの動作を両方禁止しておくことで、運転席49に着座した姿勢で走行操作レバー46a,46bやゲートロックレバー202を操作する際にフロント操作装置50a,50bに肘や腕が触れても第1及び第2作業フロント装置A,Bは動作しない。
【0074】
よって、本実施の形態によれば、操作者の意図しないアクチュエータの動作を抑制することができ、安全性を向上させることができる。
【0075】
また、フロントロック選択スイッチ80a,80bは個別に切り換え操作できるが、本実施の形態の場合、第1及び第2フロント操作装置50a,50bの操作が有効か無効か(フロントロック選択スイッチ80a,80bの設定状態)をLED210a,210bで容易に把握することができる。したがって、操作者はその時点で操作対象となっている作業フロント装置を一目で確認できるため、誤操作を未然に防止することができる。
【0076】
また、圧力センサ85によってゲートロックレバー202のロック/解除が検出できるため、ゲートロックレバー202がロック位置にあることが検知された場合に、フロント操作制御部161a,161bから切換弁206a,206bへの出力を強制的にOFFに切り換えてフロント操作装置50a,50bの操作がともに無効化するシーケンスを組んだことで、次のメリットがある。例えば作業を一時中断して運転席49で待機するにあたって、フロント選択スイッチ80a,80bをOFFにせずにゲートロックレバー202のみで作業フロント装置A,Bの動作を禁止することも想定される。この場合、先のシーケンスがなければ、作業再開時にゲートロックレバー202を解除位置に操作することでフロント操作装置50a,50bの有効/無効の設定が作業中断時の状態に復帰するので、フロント操作装置50a,50bに無意識に体が触れることで少なくとも一方の作業フロント装置が意に反して動作し得る。それに対し、先のシーケンスを組むことで、作業再開後は改めて操作対象の作業フロント装置の動作を許可しなければいずれの作業フロント装置も動作しないので、ゲートロック解除時における作業フロント装置の唐突な作動を未然に防止することができ、安全性を向上させることができる。
【0077】
また、仮にフロント操作装置50a,50bの可動部分を物理的に拘束する構成としても作業フロント装置A,Bの動作を抑制することは可能である。しかしながら、側面から前方にかけて運転席49の操作者の周囲を覆うように配置された操作装置50a,50bの動作を物理的に拘束した場合、居住性が低下し操作者の動作が著しく制限される。それに対し、本実施の形態の場合、フロント操作装置50a,50bの動作を物理的に拘束することなく操作を無効化する構成としたことで、作業フロント装置の選択に伴って操作者の動作が著しく制限されることもない。
【0078】
なお、以上は本発明の双腕型作業機の一実施の形態であるが、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々設計変更は可能である。
【0079】
例えば、押しボタン式のフロントロック選択スイッチ80a,80bを例に挙げて説明したが、例えばトグルスイッチやスライドスイッチ、レバー、或いはダイヤル等選択手段としての態様は実施の形態で例示した態様に限定されない。また、フロントロック選択スイッチ80a,80bの設定状態を表示する手段としてLED210a,210bを例に挙げて説明したが、その他の表示灯、液晶等の文字表示可能なディスプレイ、或いはスイッチ80a,80bの傍らのスペースにスイッチの状態と設定の対応関係を説明又は図示した表示を施すことで代替することもできる。
【0080】
また、作業フロント装置A,Bの操作を電磁・油圧パイロット方式、走行体1や上部旋回体3の操作を油圧パイロット方式と区別したが、この例に限られず、操作方式をいずれかに統一することも上記の例と逆にすることも可能である。また、フロントロック選択スイッチ80a,80bの設定に応じて作業フロント装置A,Bの動作を禁止する場合に切換弁206a,206bを遮断位置に切り換える構成としたが、切換弁206a,206bを省略し、制御装置160a,160bからコントロールバルブユニット182a,182bへの指令信号そのものを無効化する(操作があっても操作信号が出力されなくする)、又はフロント操作装置50a,50bへの電源供給を遮断すること等でも代替可能である。
【0081】
また、運転室4の乗降口を横に設けた場合を例に挙げて説明したが、前方から乗降する構成とする場合もある。この場合、例えば走行操作レバー46a,46bを左右に開いて走行操作レバー46a,46bの間を通って乗降する構成とすることで、走行操作レバー46a,46bをゲートロックレバー202に代わるロック手段とすることができる。また、フロントロック操作部220運転席49の前方(厳密には旋回ペダル47の側方)に設けた場合を例示したが、例えばコンソールボックス等の他の箇所に移設しても良い。
【0082】
また、フロントロック操作部220を設けてフロントロック選択スイッチ80a,80bをそこに配置した場合を例に上げて説明したが、フロントロック選択スイッチ80a,80bはそれぞれ操作レバー55a,55bに設けても良い。この場合、例えば薬指や小指で操作できる箇所に設けることもできるし、誤操作防止の意味では運転中に握る部分から離した箇所(運転中に握る箇所から掌を移動させないと届かない箇所)に設けることも考えられる。操作レバー55a,55bに限らず、フロント操作装置50a,50bの他の箇所(例えば操作アーム52a,52bの操作レバー55a,55bの取り付け部付近等)にフロントロック選択スイッチ80a,80bを設けることもできる。LED210a,210bについても、フロントロック操作部220に限らず、フロント操作装置50a,50bの視認性の良い箇所に設けることができる。例えば、操作レバー55a,55bの先端近傍の周胴部に帯状又はリング状のLEDを配置する、或いは操作アーム52a,52bの操作レバー55a,55bの取り付け部付近等にLEDを配置する等が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施の形態に係る双腕型作業機の外観を示す左側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る双腕型作業機の外観を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る双腕型作業機の運転室内に設置された運転席周りの平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る双腕型作業機の運転室内に設置された運転席周りの正面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る双腕型作業機の運転室内に設置された運転席周りの左側面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る双腕型作業機に備えられた第1及び第2作業フロント装置への指令系統の概略を示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る双腕型作業機に備えられたフロントロック操作部の一構成例を表す概略図である。
【図8】本実施の形態の双腕型作業機の要部回路図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る双腕型作業機に備えられたフロント操作装置の操作方向を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る双腕型作業機に備えられたフロント操作装置の操作方向に対応する作業フロント装置の動作方向を示す説明図である。
【符号の説明】
【0084】
1 走行体
3 上部旋回体
4 運転室
46a,b 走行操作レバー
49 運転席
49a 背もたれ部
50a 第1フロント操作装置
50b 第2作業フロント装置
51a,b アームブラケット
52a,b 操作アーム
53a,b アームレスト
55a,55b 操作レバー
80a,b フロントロック選択スイッチ
85 圧力センサ
100 双腕型作業機
161Ga,b ロック制御部
202 ゲートロックレバー
210a,b LED
220 フロントロック操作部
A 第1作業フロント装置
B 第2作業フロント装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、前記走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体上の左右方向の中央部に設けられた運転室と、前記運転室内に設置された運転席と、前記上部旋回体の前部の左右にそれぞれ設けられた多関節構造の第1及び第2の作業フロント装置とを備えた双腕型作業機であって、
前記運転席の左右両側に設けられたアームブラケット、左右方向に揺動自在に前記アームブラケットに設けられ、前記作業フロント装置の左右揺動を指示する操作アーム、及び前記操作アームの前側部分に上下前後方向に回動自在に設けられ、前記作業フロント装置の俯仰動を指示する横置きの操作レバーを備えた第1及び第2のフロント操作装置と、
動作を許可するか否かを前記第1及び第2の作業フロント装置のそれぞれに対して個別に設定可能なフロントロック選択手段と、
前記フロントロック選択手段からの入力により対応のフロント操作装置の操作の有効/無効を切り換えるロック制御部と
を備えたことを特徴とする双腕型作業機。
【請求項2】
前記操作レバーは、中立位置にあるときに前方から見て前記運転席の背もたれ部に少なくとも一部が重なって配置され、前記運転席の前方に設けた走行操作装置と前記運転席の背もたれ部との間に介在していることを特徴とする請求項1の双腕型作業機。
【請求項3】
前記第1及び第2作業フロント装置、前記走行体及び前記上部旋回体の動作を許可するか否かを設定するロック手段と、
前記ロック手段の切り換え状態を検出する検出手段とを備え、
前記ロック制御部は、前記検出手段からの検出信号を基に前記ロック手段がロック状態にあると判定した場合、前記フロントロック選択手段の設定状態に関わらず前記第1及び第2の作業フロント装置の動作がいずれも禁止された状態に切り換えることを特徴とする請求項1又は2の双腕型作業機。
【請求項4】
前記操作アームは、揺動中心上にアームレストを有し、前記操作レバーの取り付け部側が前記アームレストよりも高くなっており、
前記ロック手段が前記運転席から見て前記操作アーム越しに配置されていることを特徴とする請求項3の双腕型作業機。
【請求項5】
前記フロントロック選択手段とともに該フロントロック選択手段の設定状態を表示する表示部を有するフロントロック操作部を備えたことを特徴とする請求項1−4のいずれかの双腕型作業機。
【請求項6】
前記フロントロック選択手段を前記操作レバーに設けたことを特徴とする請求項1−5のいずれかの双腕型作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−121337(P2010−121337A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295179(P2008−295179)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】