説明

反応装置及び電子機器

【課題】反応装置本体から輻射される輻射のうち適切な波長領域を断熱容器の外部へ放出させる。
【解決手段】反応装置本体11と、反応装置本体11を収容する断熱容器20とを備え、断熱容器20は輻射線を透過する輻射透過領域23,25を有し、輻射透過領域23,25には可視光を反射する誘電体多層膜23b,25bが設けられている反応装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置等に用いる反応装置及びそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、エネルギー変換効率の高いクリーンな電源として、水素を燃料とする燃料電池が自動車や携帯機器などに応用され始めている。燃料電池は、燃料と大気中の酸素を電気化学的に反応させて、化学エネルギーから電気エネルギーを直接取り出す装置である。
【0003】
燃料電池に用いる燃料としては水素が挙げられるが、常温で気体であることによる取り扱い・貯蔵に問題がある。アルコール類及びガソリンといった液体燃料を用いる場合には、液体燃料を気化させる気化器、液体燃料と高温の水蒸気を反応させることによって、発電に必要な水素を取り出す改質器、改質反応の副産物である一酸化炭素を除去するCO除去器等が必要となる。
【0004】
この気化器やCO除去器の動作温度が高温であるため、これらを断熱容器に収納し、放熱を抑制することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−303695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような高温体収容装置において、反応装置本体から断熱容器に伝導する熱量を抑えると、反応装置本体の温度が上昇し、適切な反応温度を保てないおそれがある。一方、このような問題を避けるため、例えば、反応装置本体から断熱容器に伝導する熱量を増大させると、反応装置本体を備える外部の電子機器の温度が上昇するという問題がある。
【0006】
このため、本出願人は、反応装置本体からの輻射を透過させる領域を断熱容器に設け、反応装置本体の熱を輻射により断熱容器の外部へ放射することができる反応装置を検討している。しかし、波長によっては、反応装置の外側に存在する物体が輻射を吸収してしまうため、反応装置本体から輻射される輻射のうち、外側の物体に対する影響の少ない波長領域の輻射を外部に放射することが必要である。特に、光や熱として人体が感知できる可視光や赤外光が放出されると、ユーザに不快感を与えるおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、反応装置本体から輻射される輻射のうち適切な波長領域の輻射を断熱容器の外部へ放出させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、反応装置であって、反応物が反応する反応部を有する反応装置本体と、前記反応装置本体を収容するとともに、前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有する第1の容器とを備え、前記輻射透過領域には、AlF3、BaF2、CaF2、CeF3、CeO2、CsI、DyF2、DLC、Gd23、LaF3、La23、LiF、MgF2、PbF2、Sc23、SrF2、Ta25、TiO2、YF3、Y23、ZnO、ZnS、Al23、、Bi23、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、Cr23、GaAs、Ge、HfO2、MgO、NaF、Na3AlF6、Na5Al314、Nb25、NdF3、Nd23、PbCl2、PbTe、PbS、Sb23、Sb23、Si、Si34、SiO2、Te、TlCl、YbF3、Yb23、ZnSe、ZrO2の少なくとも2つの材料が用いられている誘電体多層膜が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、反応装置であって、反応物が反応する反応部を有する反応装置本体と、前記反応装置本体を収容するとともに、前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有する第1の容器とを備え、前記輻射透過領域には可視光の波長領域の輻射の少なくとも一部を反射する誘電体多層膜が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の反応装置であって、前記誘電体多層膜は610〜800nmの波長領域の輻射の少なくとも一部を反射することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の反応装置であって、前記誘電体多層膜は400〜800nmの波長領域の輻射の少なくとも一部を反射することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、反応装置であって、反応物が反応する反応部を有する反応装置本体と、前記反応装置本体を収容するとともに、前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有する第1の容器とを備え、前記輻射透過領域にはヒトの皮膚に対する浸透深度が50μm以下となる波長領域の輻射の少なくとも一部を反射する誘電体多層膜が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の反応装置であって、前記誘電体多層膜は2.7〜3.1μm及び5.9〜6.5μmの波長領域の輻射の少なくとも一部を反射することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項2〜6のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記誘電体多層膜には、AlF3、BaF2、CaF2、CeF3、CeO2、CsI、DyF2、DLC、Gd23、LaF3、La23、LiF、MgF2、PbF2、Sc23、SrF2、Ta25、TiO2、YF3、Y23、ZnO、ZnS、Al23、、Bi23、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、Cr23、GaAs、Ge、HfO2、MgO、NaF、Na3AlF6、Na5Al314、Nb25、NdF3、Nd23、PbCl2、PbTe、PbS、Sb23、Sb23、Si、Si34、SiO2、Te、TlCl、YbF3、Yb23、ZnSe、ZrO2の少なくとも2つの材料が用いられていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1又は7に記載の反応装置であって、前記誘電体多層膜は、前記少なくとも2つの材料のうち第1の材料により形成された第1の層に、前記第1の材料と異なる第2の材料により形成された第2の層が積層されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1又は7に記載の反応装置であって、前記誘電体多層膜は、前記少なくとも2つの材料のうち第1の材料により形成された第1の層と、前記第1の材料と異なる第2の材料により形成された第2の層とが交互に複数回積層されていることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の反応装置であって、前記第1の材料の屈折率をnH、前記第1の層の膜厚をdHとし、前記第2の材料の屈折率をnL、前記第2の層の膜厚をdL(ただし、nH>nL)とするとき、前記誘電体多層膜は2(nHH+nLL)の波長の輻射の少なくとも一部を反射することを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項1、7〜10のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記第1の材料はCaF2であり、前記第2の材料はZnSであることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応部は、反応物の反応により電力を生成する燃料電池セルを含むことを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の反応装置であって、前記燃料電池セルは固体酸化物型であることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、電子機器であって、請求項12又は13に記載の反応装置と、前記燃料電池セルの電力により動作する電子機器本体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、反応装置本体から輻射される輻射のうち適切な波長領域を断熱容器の外部へ放出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係る反応装置10Aの構成を示す模式図である。図1に示すように、反応装置10Aは、反応装置本体11と、反応装置本体11を収容する断熱容器(第1の容器)20とからなる。反応装置10Aは、例えばステンレス(SUS304)やコバール合金、ニッケル基合金等の金属板を貼り合わせて形成してもよいし、光学材料あるいはガラス基板等を貼り合わせて形成してもよい。
反応装置本体11の外壁面には、後述する輻射放熱膜13a,15aが設けられた部分を除き、輻射を防止する輻射防止膜11aが設けられている。輻射防止膜11aの材料には、後述する反射膜21aと同様の材料を用いることができる。輻射防止膜11aにより、反応装置10Aからの輻射による反応装置10Aの外部への熱量の移動が抑制される。
【0025】
反応装置本体11は、第1連結部12と、低温反応部13と、第2連結部14と、高温反応部15とからなる。高温反応部15は、低温反応部13よりも高温に保たれる。
図1に示すように、低温反応部13及び高温反応部15の外表面には、輻射放熱膜13a,15aがそれぞれ設けられている。輻射放熱膜13a,15aには、1〜30μmの赤外領域での輻射率が0.5以上、より好ましくは0.8以上である高輻射率の材料を用いることができる。
【0026】
輻射放熱膜13a,15aは、反応装置本体11の表面全体に輻射防止膜11aを成膜した後に、輻射防止膜11aと重ねて成膜してもよい。
輻射放熱膜13a,15aの材料としては、作成方法が簡便である材料を選択することができ、SiO2やアルミナ(Al23)に代表される各種酸化物や、カオリン等の粘土鉱物、セラミック等を用いることができる。例えば、SiO2、Al23、カオリンやRFeO3(Rは希土類)、ハフニウム酸化物やYSZや、チタン酸化物を含有する耐熱輻射塗料などを用いることができる。
輻射放熱膜13a,15aは、例えば高輻射率の材料を含有するエマルジョン液体を基板等に塗布し、乾燥させることでシート状に形成することができる。
あるいは、断熱容器20内のガスを吸着する非蒸発型ゲッターにより輻射放熱膜13a,15aを形成してもよい。
【0027】
一方、電気伝導性を有するもの、例えば通常の金属や可視光領域で黒色に見えるグラファイトは、赤外領域を含む長波長領域において輻射率が低くなるため、輻射放熱膜13a,15aの材料として用いることはできない。
【0028】
また、輻射放熱膜13a,15aは、陽極酸化等の手法により、Al23を筐体21の外表面に多孔質体状に形成することができる。あるいは、細いグラスファイバーを用いた布を輻射放熱膜13a,15aとして用いることもできる。
輻射放熱膜13a,15aは、断熱容器20の内壁面の輻射透過窓23,25と対向配置される。
【0029】
第1連結部12は高温反応部15や低温反応部13において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含む。第1連結部12は、一端で低温反応部13に接続され、他端側で断熱容器20を貫通するとともに、他端で図示しない外部の装置に接続される。第1連結部12は、低温反応部13から断熱容器20の外部に反応物や生成物を送る流路となる第1配管(流出配管)と、断熱容器20の外部から低温反応部13に反応物や生成物を送る第2配管(流入配管)とを備える。
【0030】
第2連結部14は高温反応部15や低温反応部13において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含み、高温反応部15と低温反応部13との間を接続する。第2連結部14は、一端で高温反応部15に接続され、他端で低温反応部13に接続されるとともに、高温反応部15から低温反応部13に反応物や生成物を送る流路となる第3配管(流出配管)と、低温反応部13から高温反応部15に反応物や生成物を送る第4配管(流入配管)とを備える。
【0031】
次に、断熱容器20について説明する。断熱容器20は直方体形状をしており、内部に反応装置本体11が収納されている。
【0032】
断熱容器20の内部空間は気体分子による熱伝導や対流を防ぐため、例えば10Pa以下、より好ましくは1Pa以下、といった大気圧よりも低い圧力に維持されている。
断熱容器20は、筐体21と、輻射透過窓23,25と、反射膜21aとから概略構成される。
筐体21の内壁面には、反応装置本体11からの輻射による熱損失を抑制するために、輻射を反射する反射膜21aが形成されている。反射膜21aの材料については、後述する。反射膜21aにより、反応装置本体11からの輻射による筐体21への熱量の移動が抑制される。
【0033】
低温反応部13には第2連結部14を介して高温反応部15から熱量が伝導するので、第1連結部12を介して断熱容器20に伝導する熱量以上の熱量が伝導すると、温度が適温以上に上昇するおそれがある。そこで、本実施形態の断熱容器20の内壁面には、低温反応部13及び高温反応部15に対応する位置に、それぞれ輻射透過窓23,25を設けている。
【0034】
輻射透過窓23,25は、断熱容器20の内壁面の反射膜21aが設けられた領域と比較して、赤外領域での輻射の透過率が高い。輻射透過窓25は高温反応部15の輻射放熱膜15aからの輻射を透過させて断熱容器20の外部に放出する。輻射透過窓23は低温反応部13の輻射放熱膜13aからの輻射を透過させて断熱容器20の外部に放出する。
【0035】
輻射透過窓23,25は、例えば図1に示すように、断熱容器20の輻射放熱膜13a,15aと対向する部分に設けられており、赤外領域の輻射の透過率が高い材料で形成されている。輻射透過窓23,25の材料については、後述する。
【0036】
以下、反応装置10Aにおける熱の移動について説明する。
一般に、固体の伝熱量をQ、熱伝導率をk、断面積をS、温度差をΔT、伝熱長をΔxとすると、以下の数式(1)が成立する。
【数1】

【0037】
したがって、第2連結部14を通しての高温反応部15から低温反応部13への伝熱量QS1は、高温反応部15と低温反応部13との温度差、第2連結部14の熱伝導率及び断面積に比例し、第2連結部14の長さに反比例する。同様に、低温反応部13から断熱容器20への伝熱量QS2は、低温反応部13と断熱容器20との温度差、第1連結部12の熱伝導率及び断面積に比例し、第1連結部12の低温反応部13から断熱容器20までの長さに反比例する。
【0038】
次に、輻射放熱膜13a,15aによる放熱量について検討する。
高温反応部15内における反応熱及び流通ガスとの熱の授受による熱収支をQRA、低温反応部13内における熱収支をQRB、輻射放熱膜15aによる放熱量をQI、輻射放熱膜13aによる放熱量をQIIとすると、熱平衡状態では以下の数式(2)、(3)が成立する。
【数2】

【0039】
数式(2)、(3)より、低温反応器13および高温反応器15の熱収支の合計はQIとQIIとQS2の和となる。したがって、各反応器の温度を適切に保つには、各反応器13,15の熱収支に合わせて放熱量を適切に設定する必要がある。ここで、断熱容器への伝熱量QS2は、断熱容器を介しての外部の装置への伝熱量と等しくなるので、外部の装置の温度上昇を防ぐためには、QS2を抑制する必要がある。一方、輻射放熱膜15a、13aによる放熱量QI、QIIは、輻射透過窓23,25を透過して外部へ放射されるため、各輻射透過窓を適切に配置することにより、この熱が外部の装置へと伝熱させないようにすることができる。したがって、各反応器13,15での熱収支の合計及び抑制された断熱容器への伝熱量QS2に応じて、適切に放熱量QI及びQIIを設定することにより、各反応器13,15の温度を適切に保ちながら、外部の装置への伝熱量QS2を抑制することが可能である。
【0040】
シュテファン=ボルツマンの法則によると、絶対温度T(K)、輻射率ε、表面積A(m2)の物体から単位時間当たりに放出される総輻射エネルギー量E(W/m2)は以下の数式(4)で表される。
【数3】

ここで、σはシュテファン=ボルツマン定数であり、σ=5.67×10-8(W/m2/K4)である。したがって、放熱量QI、QIIは、輻射放熱膜13a,15aの面積を変更したり、適度な輻射率の材質を選択することにより調整することができる。
【0041】
次に、輻射放熱膜13a,15aから放射される輻射の波長と輻射透過窓23,25の材質について検討する。
温度T(K)の黒体が放射する波長λの電磁波の黒体放射強度B(λ)は、プランクの式と呼ばれる次の数式(5)で与えられる。
【数4】

【0042】
ウィーンの変位則によると、温度T(K)の黒体からの輻射強度がピークをとる波長λmax(m)は温度T(K)に反比例し、次の数式(6)で表される。
【数5】

【0043】
図2は数式(5)により求めた、100℃〜1000℃における輻射強度と波長との関係を示す図である。なお、波長λmaxにおける輻射強度B(λmax)を1として規格化している。図2に示すように、反応部の温度によって輻射強度が最大となる波長が異なるため、低温反応部13及び高温反応部15の動作温度に合わせて、反射膜21aや輻射透過窓23,25の材質を選択する必要がある。
【0044】
図3は反射膜21aの材料の候補となるAu,Al,Ag,Cu,Rhの輻射の反射率の波長依存性を示すグラフである。図3に示すように、Au,Al,Ag,Cuは100℃〜1000℃の反応部から放射される約1μm以上の赤外領域での輻射の反射率が90%以上であり、反射膜21aとして用いることができる。また、Rhは約2μm以上の赤外領域での輻射の反射率が90%以上であるので、反応部の温度が500℃以下であれば、反射膜21aとして用いることができる。
【0045】
図4、図5は輻射透過窓23,25の材料の候補となる物質の透過率と光の波長との関係を示すグラフである。輻射透過窓23,25としては、輻射放熱膜13a,15aから放射される輻射の透過率が高い材料を選択することができる。一方、輻射放熱膜13a,15aから放射される輻射の透過率が低く吸収率が高い材料は、吸収した輻射熱により輻射透過窓23,25の温度が上昇し、断熱容器20を介して外部の装置へと伝熱してしまうため、適していない。
【0046】
輻射透過窓23,25に適した材料としては、例えば、超高真空用の覗き窓の材料として利用されているCaF2(フッ化カルシウム;0.15−12)、BaF2(フッ化バリウム;0.25−15)、ZnSe(セレン化亜鉛;0.6−18)、MgF2(フッ化マグネシウム;0.13−10)、KRS−5(臭沃化タリウム;0.6−60)、KRS−6(臭塩化タリウム;0.41−34)、LiF(フッ化リチウム;0.11−8)、SiO2(光学用合成石英;0.16−8)、CsI(ヨウ化セシウム;0.2−70)、KBr(臭化カリウム;0.2−40)等を用いることができる。なお、括弧内の数字は透過領域波長(μm)である。
【0047】
この他にも、AlF3(0.22−12)、NaCl(0.21−26)、(0.16−15)、KCl(0.21−30)、CsCl(0.19−25)、CsBr(0.24−40)、CsF(0.27−18)、NaBr(0.22−23)、CaCO(0.3−5.5)、KI(0.3−30)、NaI(0.25−25)、AgCl(0.4−30)、AgBr(0.45−33)、TlBr(0.9−40)、Al23(0.2−8)、BiF3(0.26−20)、CdSe(0.7−25)、CdS(0.55−18)、CdTe(0.86−28)、CeF3(0.3−12)、CeO2(0.4−16)、Cr23(1.2−10)、DyF2(0.22−12)、GaAs(0.9−18)、GaSe(0.65−17)、Gd23(0.32−15)、Ge(1.7−25)、HfO2(0.23−12)、La23(0.26−11)、MgO(0.23−9)、NaF(0.13−15)、Nb25(0.32−8)、PbF2(0.24−20)、Si(1.1−1.4)、Si34(0.25−9)、SrF2(0.2−10)、TlCl(0.4−20)、YF3(0.2−14)、Y23(0.25−9)、ZnO(0.35−20)、ZnS(0.38−14)、ZrO2(0.3−8)等を用いることができる。
【0048】
図6は輻射透過窓23,25の構造を示す模式図である。輻射防止窓23,25は、図6に示すように、窓材23a,25aと、窓材23a,25aの内壁面に設けられた誘電体多層膜23b,25bとからなる。誘電体多層膜23b,25bは、図4に示すように、高屈折率層23c,25c(屈折率nH)と低屈折率層23d,25d(屈折率nL)とが交互に積層されている。ここで、nH>nLである。
誘電体多層膜23b,25bは、所定の波長領域の輻射に対して高い反射率を示す。具体的には、高屈折率層23c,25cの膜厚をdH、低屈折率層23d,25dの膜厚をdLとすると、誘電体多層膜23b、25bの反射率は、λ=2(nHH+nLL)の波長でピークをとり、このピーク波長を含む所定の波長領域の輻射に対して高い反射率を示す。具体的には後述するが、上述の通り、本実施形態の輻射透過窓は、所望の波長において反射率がピークをとるように、誘電体多層膜23b,25bの材料、屈折率及び膜厚を選択することができる。
【0049】
高屈折率層23c,25c及び低屈折率層23d,25dには、nH>nLを満たす種々の薄膜材料の組み合わせを用いることができる。
例えば、AlF3(1.36)、BaF2(1.48)、CaF2(1.4)、CeF3(1.63)、CeO2(2.0−2.4)、CsI(1.7)、DLC(Diamond−like Carbon) (1.9−2.6)、DyF2(1.53)、Gd23(1.92)、LaF3(1.59)、La23(1.95)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、PbF2(1.5)、Sc23(1.86)、SrF2(1.44)、Ta25(2−2.3)、TiO2(2.2−2.5)、YF3(1.5)、Y23(1.79)、ZnO(2)、ZnS(2.4)等を組み合わせて用いることができる。なお、括弧内の数字は屈折率であり、nH>nLを満たすように組み合わせる必要がある。
【0050】
この他にも、Al23(1.63)、Bi23(1.9−2.45)、BiF3(1.65−1.74)、CdSe(2.45)、CdS(2.3)、CdTe(2.7)、Cr23(2.24)、GaAs(3.2)、Ge(4.25)、HfO2(1.9−2.15)、MgO(1.7)、NaF(1.34)、Na3AlF6(1.35)、Na5Al314(1.35)、Nb25(2.1−2.3)、NdF3(1.6)、Nd23(2)、PbCl2(2.3)、PbTe(5.6)、PbS(3.9−4.2)、Sb23(2)、Sb23(3)、Si(3.45)、Si34(1.72)、SiO2(1.4−1.47)、Te(4.9)、TlCl(2.6)、YbF3(1.52)、Yb23(1.75)、ZnSe(2.6)、ZrO2(2.05)等を組み合わせて用いることができる。
【0051】
このような誘電体多層膜23b,25bは、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタリング法等により作成することができる。
以下、誘電体多層膜23b,25bで反射する光の波長について検討する。
【0052】
〔赤外光領域についての検討〕
図7は、ヒトの皮膚に対する浸透深度と波長との関係を示すグラフである。ある波長における浸透深度が大きいほど、その波長の輻射がヒトの皮膚に吸収されやすいことを示す。このグラフから、上述した反応部から放射された輻射のうち、特に、約2.8〜3.1μmの波長領域、及び、約5.9〜6.5μmの波長領域の輻射は、浸透深度が約50μm以下となり皮膚の表面の近傍で吸収されやすいことがわかる。
【0053】
吸収された輻射は皮膚の表面の近傍で熱に変わるため、ユーザーは温感を感じることにより、輻射によりユーザーに不快感を与えるおそれがある。したがって、誘電体多層膜23b,25bでは、輻射放熱膜から放射された輻射のうち、ヒトの皮膚の表面の近傍で吸収されやすい波長領域の輻射、特に、約2.7〜3.1μmの波長領域、及び、約5.9〜6.5μmの波長領域の輻射を反射することが好ましい。
【0054】
〔可視光領域についての検討〕
図8は数式(4)により求めた、700℃、800℃及び1000℃における輻射強度と波長との関係を示す図であり、図9は図8の可視光領域(400nm〜800nm)を示す拡大図である。なお、λmaxにおける輻射強度B(λmax)を1として規格化している。700℃において、可視光の赤色側限界800nmの輻射の強度はピーク強度の約0.1%となっている。温度上昇とともに、可視光域の輻射強度および輻射域が増大し、800℃では730nm〜800nmの波長範囲において輻射強度が0.1%を超え、1000℃では610nm〜800nmの波長範囲において輻射強度が0.1%を超えている。また、800nmにおける輻射強度は2%にまで増大している。
【0055】
700℃を超える反応部から輻射放熱する場合には、電子機器の一部から赤い光が放出されるために、ユーザに不快感を与えるおそれがある。したがって、誘電体多層膜23b,25bでは、約400nm〜800nmの可視光領域の輻射を反射することが好ましい。
【0056】
以下、誘電体多層膜を形成した輻射透過窓の具体例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0057】
窓材及び低屈折率膜としてCaF2(屈折率nL=1.4)、高屈折率膜としてZnS(屈折率nH=2.4)を用いて、ZnS/(CaF2/ZnS)p/窓材(CaF2)の構造からなる輻射防止窓について検討する。ただし、pは、低屈折率膜と高屈折率膜との交互積層構造が連続して繰り返される回数を表す。
透過防止波長λを3.2μmとするために、高屈折率膜の膜厚dHを333nmとし、低屈折率膜の膜厚dLを571nmとした。
【0058】
図10はp=1,3,5のそれぞれの場合について、輻射が輻射透過窓に対して垂直に入射した場合の反射率の計算結果である。どの多層膜も、3μm近傍の波長領域において反射率が大きくなっており、層数pが1,3,5と増えるに従い反射率が増大している。
【0059】
p=5では、2.6〜3.6μmの波長領域において95%以上の反射率となっている。従って、本実施例の誘電体多層膜を備える輻射透過窓は、ヒトの皮膚に吸収されやすい約2.7〜3.1μmの波長領域の輻射をよく反射する。なお、本実施例の誘電体多層膜では、、3.2μmの奇数分の1の波長のうち1つである約1μm近傍の波長領域においても反射率が大きくなっている。
【0060】
輻射が多層膜に対して斜めに入射した場合、光路長が長くなるため、高反射率波長帯域が低波長側にシフトし、反射率の絶対値も変動する。しかし、上記の条件においては、入射角が0〜60度の広い角度範囲にわたり、3μmでの反射率を95%以上とすることができる。また、輻射放熱膜と輻射透過窓の距離をできるだけ近づけることによって、斜入射の影響を軽減することが可能である。
【0061】
図11に、輻射透過窓を通じて外部に放出される輻射のスペクトルを示す。輻射放熱体の温度は800℃とし、黒体輻射と同じスペクトルが射出されると仮定した。透過窓を通じて外部に放出できるエネルギーを見積もると、輻射放熱体の射出するエネルギーの約53%となった。
【実施例2】
【0062】
窓材及び低屈折率膜としてCaF2(屈折率nL=1.4)、高屈折率膜としてZnS(屈折率nH=2.4)を用いて、(CaF2/ZnS)p/窓材(CaF2)の構造からなる輻射防止窓について、透過防止波長λを6μm及び3μmとするために、高屈折率膜の膜厚dHを938nmとし、低屈折率膜の膜厚dLを536nmとした。
【0063】
図12はp=5の場合について、輻射が輻射透過窓に対して垂直に入射した場合の反射率の計算結果である。3μmと6μm近傍の波長領域において反射率が大きくなっており、3μmにおいて95%以上、6μmにおいて90%以上となっている。従って、本実施例の誘電体多層膜を備える輻射透過窓は、ヒトの皮膚に吸収されやすい約2.7〜3.1μmの波長領域、及び、約5.9〜6.5μmの波長領域の輻射をよく反射する。なお、本実施例の多層膜では、、6μmの1/(4n−1)、1/(4n−2)、1/(4n−3)の波長(nは整数)においても反射率が大きくなっている。
【0064】
図13に、輻射透過窓を通じて外部に放出される輻射のスペクトルを示す。輻射放熱体の温度は800℃とし、黒体輻射と同じスペクトルが射出されると仮定した。透過窓を通じて外部に放出できるエネルギーを見積もると、輻射放熱体の射出するエネルギーの約56%である。
【実施例3】
【0065】
窓材及び低屈折率膜としてCaF2(屈折率nL=1.4)、高屈折率膜としてZnS(屈折率nH=2.4)を用いて、ZnS/(CaF2/ZnS)p/窓材(CaF2)の構造からなる輻射防止窓について、透過防止波長λを700nmとするために、高屈折率膜の膜厚dHを73nmとし、低屈折率膜の膜厚dLを125nmとした。
【0066】
図14はp=5の場合について、輻射が輻射透過窓に対して垂直に入射した場合の反射率の計算結果であり、図15は図14の400nm〜1000nmの波長領域の拡大図である。600nm〜830nmの波長領域において95%以上の非常に高い反射率となっている。
【0067】
前述したように、1000℃の黒体輻射では、輻射強度が0.1%を超える波長領域が610nm〜800nmであるので、本実施例の誘電体多層膜を備える輻射透過窓は、例えば上記実施形態の反応部などの輻射を放射する物体が定常状態において1000℃以下である場合に使用することができる。
【実施例4】
【0068】
窓材及び低屈折率膜としてCaF2(屈折率nL=1.4)、高屈折率膜としてZnS(屈折率nH=2.4)を用いて、透過防止波長λを700nm及び500nmとなるように、[ZnS(26nm)/CaF2(89nm)/ZnS(26nm)]p/[ZnS(36nm)/CaF2(125nm)/ZnS(36nm)]q/窓材(CaF2)の構造からなる輻射防止窓を形成した。ここで、p,qは、低屈折率膜と高屈折率膜との交互積層構造が連続して繰り返される回数を表す。
【0069】
図16はp=7、q=7の場合について、輻射が輻射透過窓に対して垂直に入射した場合の反射率の計算結果であり、図17は図16の300nm〜1100nmの波長領域の拡大図である。400nm〜800nmの全ての可視光領域において95%以上の非常に高い反射率となっている。
【0070】
なお、図17には、比較のために、透過防止中心波長が700nmの誘電体多層膜の反射特性と、透過防止中心波長500nmの誘電体多層膜の反射特性を合わせて示した。設計した膜構造は、これら両方の反射特性を併せ持っており、全可視光領域において95%以上の非常に高い反射率となっている。本実施例の誘電体多層膜を備える輻射透過窓は、第3実施例と同様、例えば上記実施形態の反応部などの輻射を放射する物体が定常状態において1000℃以下である場合に使用することができることはもちろんのこと、この誘電体多層膜は、上述の物体が定常状態において1000℃以上である場合にも使用することができる。
【0071】
以上示したように、本実施形態によれば、高温反応部15または低温反応部13からの輻射を輻射透過窓23,25を介して反応装置10Aの外部に放出するので、高温反応部15または低温反応部13から断熱容器20への伝熱量を抑制しながら、高温反応部15、低温反応部13の温度を適切に維持することができる。
【0072】
また、誘電体多層膜23b,25bが設けられているので、高温反応部15または低温反応部13から輻射される輻射のうち適切な波長領域を断熱容器20の外部へ放出させることができ、特に、高温反応部15または低温反応部13から可視光や赤外光が放出されないため、ユーザに与える不快感を抑制することができる。
【0073】
なお、上記実施形態においては、低温反応部13及び高温反応部15の両方に輻射放熱膜13a,15aを設けたが、いずれか一方のみでもよい。また、輻射透過窓23,25についても、設けられる輻射放熱膜に対向するいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。また、反射膜21aの材質を適切に選択すれば、筐体21を、赤外線の波長を透過させる材料で輻射透過窓23,25と一体に形成してもよい。
【0074】
<変形例1>
また、図18、図19に示すように、第2連結部14に輻射放熱膜14aを設け、断熱容器20の輻射放熱膜14aと対向する部分に輻射透過窓24を設けてもよい。
【0075】
<変形例2>
あるいは、図20に示すように、第1連結部12の低温反応部13と断熱容器20との間の部分に輻射放熱膜12aを設け、断熱容器20の輻射放熱膜12aと対向する部分に輻射透過窓22を設けてもよい。
【0076】
<変形例3>
あるいは、図21に示すように、第1連結部12の低温反応部13と断熱容器20との間の部分に輻射放熱膜12aを設け、断熱容器20の輻射放熱膜12aと対向する部分に輻射透過窓22を設けるとともに、第2連結部14に輻射放熱膜14aを設け、断熱容器20の輻射放熱膜14aと対向する部分に輻射透過窓24を設けてもよい。
【0077】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図22は本発明の第2実施形態に係る電子機器100を示すブロック図である。この電子機器100はノート型パーソナルコンピュータ、PDA、電子手帳、デジタルカメラ、携帯電話機、腕時計、ゲーム機器等といった携帯型の電子機器である。
【0078】
電子機器100は、燃料電池装置130と、燃料電池装置130から供給される電気エネルギーにより駆動される電子機器本体101と、等から概略構成される。燃料電池装置130は後述するように、電気エネルギーを生成し電子機器本体101に供給する。
【0079】
次に、燃料電池装置130について説明する。この燃料電池装置130は、電子機器本体101に出力する電気エネルギーを生成するものであり、燃料容器102、送液ポンプ103、反応装置110、燃料電池セル140、DC/DCコンバータ131、二次電池132、等を備える。
【0080】
燃料容器102には、液体の原燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル)と水との混合液が貯留されている。なお、液体の原燃料と水とを燃料容器102内で別々に貯留してもよい。
燃料容器102内の混合液は、送液ポンプ103により反応装置110の気化器104に送液される。
【0081】
反応装置110は、気化器104、改質器105、一酸化炭素除去器106、熱交換器107、触媒燃焼器109等からなる。
気化器104は燃料容器102から送られた混合液を後述するヒータ兼温度センサ153や改質器105からの伝熱により約110〜160℃程度に加熱し、気化させる。気化器104で気化した混合気は改質器105へ送られる。
【0082】
改質器105は内部に流路が形成され、流路の壁面に改質触媒が担持されている。改質触媒としては、Cu/ZnO系触媒やPd/ZnO系触媒等が用いられる。改質器105は後述するヒータ兼温度センサ155からの伝熱により気化器104から送られる混合気を約300〜400℃程度に加熱し、流路内の触媒により改質反応を起こさせる。すなわち、原燃料と水の触媒反応によって、燃料としての水素、二酸化炭素、及び、副生成物である微量な一酸化炭素等の混合気体(改質ガス)が生成される。
【0083】
ここで、原燃料がメタノールの場合、改質器105では主に次の化学反応式(6)に示すような主反応である水蒸気改質反応が起こる。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(6)
なお、化学反応式(1)についで逐次的に起こる次の化学反応式(7)のような副反応によって、副生成物として一酸化炭素が微量に(1%程度)生成される。
2+CO2→H2O+CO …(7)
化学反応式(6)及び(7)の反応による生成物(改質ガス)は一酸化炭素除去器106に送出される。
【0084】
一酸化炭素除去器106の内部には流路が形成され、その流路の壁面に一酸化炭素を選択的に酸化する選択酸化触媒が担持されている。選択酸化触媒としては、例えばPt/Al23等を用いることができる。
【0085】
一酸化炭素除去器106には改質器105で生成された改質ガス及び、外部の空気が送られる。改質ガスが空気と混合して一酸化炭素除去器106の流路を流れ、改質器105やヒータ兼温度センサ155からの伝熱により約110〜160℃程度に加熱される。そして、改質ガスのうち一酸化炭素が触媒により次の化学反応式(8)のような主反応により優先的に酸化される。これにより主生成物として二酸化炭素が生成され、改質ガス中の一酸化炭素を燃料電池セル140に供給可能な10ppm程度まで低濃度化することができる。
2CO+O2→2CO2 …(8)
化学反応式(8)の反応は発熱反応であるため、吸熱反応(混合液の気化)が行われる気化器104と隣接して配置される。
一酸化炭素除去器106を通過した改質ガスは燃料電池セル140に送出される。
【0086】
触媒燃焼器109には燃料電池セル140の燃料供給流路144aを通過した改質ガス(オフガス)及び空気が送られ、改質ガス中に残留する水素が空気により燃焼される。熱交換器107は一酸化炭素除去器106と隣接して配置され、燃料電池セル140から触媒燃焼器109に供給されるオフガス及び空気が通過する過程で、一酸化炭素除去器106の熱によりオフガス及び空気を加熱する。
【0087】
燃料電池セル140は固体高分子型燃料電池であり、固体高分子電解質膜141と、固体高分子電解質膜141の両面に形成された燃料極142(アノード)及び酸素極143(カソード)と、燃料極142に改質ガスを供給する燃料供給流路144aが設けられた燃料極セパレータ144と、酸素極143に酸素を供給する酸素供給流路145aが設けられた酸素極セパレータ145と、が積層されている。
【0088】
固体高分子電解質膜141は水素イオンを透過するが、酸素分子、水素分子、二酸化炭素、電子を通さない性質を有する。
燃料極142には燃料供給流路144aを介して改質ガスが送られる。燃料極142では改質ガス中の水素による次の電気化学反応式(9)に示す反応が起こる。
2→2H++2e- …(9)
生成した水素イオンは固体高分子電解質膜141を透過して酸素極143に到達する。生成した電子はアノード出力電極146に供給される。
【0089】
酸素極143には、空気が酸素供給流路145aを介して送られる。酸素極143では固体高分子電解質膜141を透過した水素イオンと、空気中の酸素とカソード出力電極147より供給される電子とにより、次の電気化学反応式(10)に示すように水が生成される。
2H++1/2O2+2e-→H2O …(10)
なお、固体高分子電解質膜141の両面には、電気化学反応式(9)、(10)の反応を促進する図示しない触媒が設けられている。
【0090】
アノード出力電極146及びカソード出力電極147は外部回路であるDC/DCコンバータ131と接続されており、アノード出力電極146に到達した電子はDC/DCコンバータ131を通ってカソード出力電極147に供給される。
【0091】
DC/DCコンバータ131は燃料電池セル140により生成された電気エネルギーを適切な電圧に変換したのちに電子機器本体101に供給するとともに、電気エネルギーを二次電池132に充電する。
【0092】
次に、反応装置110の構造について説明する。図23は反応装置110の内部構造を示す模式図である。反応装置110は、反応装置本体111と、反応装置本体111を収容する断熱容器120とからなる。なお、第1実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
【0093】
反応装置本体111は、第1連結部112と、低温反応部113と、連結部114と、高温反応部115とからなる。
高温反応部115には、改質器105となる改質流路105a及び触媒燃焼器109となる触媒燃焼流路109aが設けられる。また、高温反応部115には、電気ヒータ兼温度センサ155が設けられており、高温反応部115は電気ヒータ兼温度センサ155により約300〜400℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ155は、断熱容器120を貫通するリード線155cに接続されており、リード線155cを介して断熱容器120の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ155は、絶縁膜155a,155bにより絶縁されている。
【0094】
低温反応部113には、気化器104となる気化流路104a、一酸化炭素除去器106となる一酸化炭素除去流路106a、熱交換器107となる熱交換流路107aが設けられている。また、低温反応部113には、電気ヒータ兼温度センサ153が設けられており、低温反応部113は電気ヒータ兼温度センサ153により約110〜160℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ153は、断熱容器120を貫通するリード線153cに接続されており、リード線153cを介して断熱容器120の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ153は、絶縁膜153a,153bにより絶縁されている。
【0095】
連結部114は高温反応部115における反応物や生成物の流路となる配管からなる。連結部114は、高温反応部115と低温反応部113との間を接続する。
第1連結部112は高温反応部115や低温反応部113における反応物や生成物の流路となる配管からなる。第1連結部112は一端で低温反応部113に接続され、断熱容器120を貫通し、他端で送液ポンプ103、燃料電池セル140、図示しないエアポンプ等に接続される。
【0096】
本実施形態においては、図23に示すように、低温反応部113に輻射放熱膜113aが設けられており、断熱容器120の輻射放熱膜113aと対向する部分に輻射透過窓123aが設けられている。輻射放熱膜113aからの輻射は輻射透過窓123aを透過するため、低温反応部113の熱量が輻射により断熱容器120の外部へ放出される。したがって、低温反応部113から第1連結部112を経て断熱容器120へ伝導する熱量を抑えながら、高温反応部115からの伝熱による低温反応部113の温度が必要以上に上昇することを防ぐことができる。
【0097】
本実施形態の構造において、低温反応部113の温度を150℃、高温反応部115の温度を400℃、燃料電池セル140の効率を40%、発電量を20Wとした場合の効果を算出する。
連結部114や第1連結部112による熱伝導を除く高温反応部115、低温反応部113の熱収支(各化学反応の反応熱、反応ガスの熱交換の合計)は、それぞれ+2W、+9Wになる。輻射放熱膜113aを設けない場合には、この合計11Wの熱量が断熱容器120へと伝導してしまう。たとえば、9Wを輻射放熱膜113aにより放熱することで、第1連結部112より伝導する熱量を2Wに抑制することができる。誘電体多層膜を形成した輻射透過窓として、例えば実施例1のものを用いる場合、150℃の輻射放熱膜から放出される輻射のうち約43%を透過させ、放熱することができる。したがって、この9Wの放熱は、輻射放熱膜113aの輻射率を1とすると、輻射放熱膜113aの表面積を約116cm2とることで可能である。
【0098】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図24は本発明の第3実施形態に係る電子機器200を示すブロック図である。なお、第2実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
【0099】
本実施形態においては、反応装置210が、気化器204、改質器205、第1の熱交換器207、第2の熱交換器208、触媒燃焼器209、燃料電池セルスタック240等からなる。
気化器204と第1の熱交換器207とは一体に設けられており、改質器205と第2の熱交換器208とは一体に設けられており、燃料電池セルスタック240と触媒燃焼器209とは一体に設けられている。
【0100】
図25は反応装置210の内部構造を示す模式図である。燃料電池セルスタック240は、図25に示すように、複数の燃料電池セル240A,240B,240C,240Dを積層してなる。なお、燃料電池セル240A,240B,240C,240Dは溶融炭酸塩型であり、酸化炭素除去器は用いられない。なお、図24では単一の燃料電池セル240Aのみを示す。
【0101】
以下、単一の燃料電池セル240A及び触媒燃焼器209で生じる反応について説明する。
燃料電池セル240Aは、電解質241と、電解質241の両面に形成された燃料極242(アノード)及び酸素極243(カソード)と、燃料極242に改質ガスを供給する燃料供給流路244aが設けられた燃料極セパレータ244と、酸素極243に酸素を供給する酸素供給流路245aが設けられた酸素極セパレータ245と、が積層されている。
【0102】
電解質241は炭酸イオンを透過するが、酸素分子、水素分子、一酸化炭素、二酸化炭素、電子を通さない性質を有する。
燃料極242には燃料供給流路244aを介して改質ガスが送られる。燃料極242では改質ガス中の水素、一酸化炭素及び電解質241を通過した炭酸イオンによる次の電気化学反応式(11)、(12)に示す反応が起こる。
2+CO32-→H2O+CO2+2e- …(11)
CO+CO32-→2CO2+2e- …(12)
生成した電子はアノード出力電極246に供給される。生成した水、二酸化炭素及び未反応の水素、一酸化炭素からなる混合気体(オフガス)は触媒燃焼器209に供給される。
【0103】
触媒燃焼器209には、第1の熱交換器207及び第2の熱交換器208により加熱された酸素(空気)と、オフガスとが混合されて供給される。触媒燃焼器209では、水素及び一酸化炭素が燃焼され、燃焼熱は燃料電池セルスタック240を加熱するのに用いられる。
触媒燃焼器209の排ガス(水、酸素及び二酸化炭素の混合気体)は酸素供給流路245aを介して酸素極243に供給される。
【0104】
酸素極243では酸素供給流路245aより供給される酸素、二酸化炭素と、カソード出力電極247より供給される電子とにより、次の電気化学反応式(13)に示す反応が起こる。
2CO2+O2+4e-→2CO32- …(13)
生成した炭酸イオンは電解質241を通過して燃料極242に供給される。
【0105】
次に、反応装置210の構造について説明する。なお、第2実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
図25は反応装置210の内部構造を示す模式図である。反応装置210は、反応装置本体211と、反応装置本体211を収容する断熱容器220とからなる。なお、第2実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
【0106】
反応装置本体211は、高温反応部217と、中温反応部215と、低温反応部213と、第1連結部212と、第2連結部214と、第3連結部216とからなる。
高温反応部217には、燃料電池セル240A,240B,240C,240Dが積層された燃料電池セルスタック240及び触媒燃焼器209となる触媒燃焼流路209aが設けられる。
【0107】
燃料電池セル240Aの酸素極セパレータ245と燃料電池セル240Bの燃料極セパレータ244、燃料電池セル240Bの酸素極セパレータ245と燃料電池セル240Cの燃料極セパレータ244、燃料電池セル240Cの酸素極セパレータ245と燃料電池セル240Dの燃料極セパレータ244はそれぞれ一体化された両面セパレータ248となっている。燃料電池セル240Aの燃料極セパレータ244にアノード出力電極246が接続され、燃料電池セル240Dの酸素極セパレータ245にカソード出力電極247が接続されている。アノード出力電極246及びカソード出力電極247は断熱容器220を貫通しており、燃料電池セルスタック240で生成された電力を外部に出力する。
【0108】
また、高温反応部217には、電気ヒータ兼温度センサ257が設けられており、高温反応部217は電気ヒータ兼温度センサ257により約600〜700℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ257は、断熱容器220を貫通するリード線257cに接続されており、リード線257cを介して断熱容器220の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ257は、絶縁膜257a,257bにより絶縁されている。
【0109】
中温反応部215には、改質器205となる改質流路205a及び第2の熱交換器208となる熱交換流路208aが設けられている。
また、中温反応部215には、電気ヒータ兼温度センサ255が設けられており、中温反応部215は電気ヒータ兼温度センサ255により約300〜400℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ255は、断熱容器220を貫通するリード線255cに接続されており、リード線255cを介して断熱容器220の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ255は、絶縁膜255a,255bにより絶縁されている。
【0110】
低温反応部213には、気化器204となる気化流路204a、一酸化炭素除去器206となる一酸化炭素除去流路206a、熱交換器207となる熱交換流路207aが設けられている。また、低温反応部213には、電気ヒータ兼温度センサ253が設けられており、低温反応部213は電気ヒータ兼温度センサ253により約110〜160℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ253は、断熱容器220を貫通するリード線253cに接続されており、リード線253cを介して断熱容器220の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ253は、絶縁膜253a,253bにより絶縁されている。
【0111】
第1連結部212は高温反応部217、中温反応部215や低温反応部213における反応物や生成物の流路となる配管からなる。第1連結部212は一端で低温反応部213に接続され、断熱容器220を貫通し、他端で送液ポンプ203、図示しないエアポンプ等に接続される。
第2連結部214は中温反応部215における反応物や生成物の流路となる配管からなる。第2連結部214は、中温反応部215と低温反応部213との間を接続する。
第3連結部216は高温反応部217における反応物や生成物の流路となる配管からなる。第3連結部216は、高温反応部217と中温反応部215との間を接続する。
【0112】
本実施形態においては、図25に示すように、高温反応部217に輻射放熱膜217aが設けられており、断熱容器220の輻射放熱膜217aと対向する部分に輻射透過窓227が設けられている。輻射放熱膜217aからの輻射は輻射透過窓227を透過するため、高温反応部217の熱量が輻射により断熱容器220の外部へ放出される。したがって、高温反応部217から第3連結部216を経て中温反応部215へ伝導する熱量を抑えながら、高温反応部217で生じる熱量により高温反応部217の温度が必要以上に上昇することを防ぐことができる。
【0113】
本実施形態の構造について、低温反応部213の温度を150℃、中温反応部215の温度を400℃、高温反応部217の温度を650℃、燃料電池セルスタック240の効率を50%とし、発電量を20Wとした場合の効果を算出する。
第3連結部216、第2連結部214及び第1連結部212による熱伝導を除く高温反応部217、中温反応部215、低温反応部213の熱収支(各化学反応の反応熱、反応ガスの熱交換の合計)は、それぞれ+21W、+0.5W、−2.5Wになる。輻射放熱膜217aを設けない場合には、この合計19Wの熱量が断熱容器220へと伝導してしまう。たとえば、17.5Wを輻射放熱膜217aにより放射することで、第1連結部212より伝導する熱量を2Wに抑制することができる。誘電体多層膜を形成した輻射透過窓として、例えば実施例1のものを用いる場合、650℃の輻射放熱膜から放出される輻射のうち約52%を透過させ、放熱することができる。したがって、この17.5Wの放熱は、輻射放熱膜217aの輻射率を1とすると、輻射放熱膜217aの表面積を約8.2cmとることで可能である。
【0114】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図26は本発明の第4実施形態に係る電子機器300を示すブロック図である。以下、本実施形態の第3実施形態と異なる点について説明し、第3実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
【0115】
燃料電池セルスタック340は固体酸化物型であり、複数の燃料電池セル340A,340B,340C,340Dを積層してなる。第3実施形態と同様に、反応装置310Aには一酸化炭素除去器は用いられない。なお、図26では単一の燃料電池セル340Aのみを示す。
【0116】
以下、単一の燃料電池セル340A及び触媒燃焼器309で生じる反応について説明する。
燃料電池セル340Aは、電解質341と、電解質341の両面に形成された燃料極342(アノード)及び酸素極343(カソード)と、燃料極342に改質ガスを供給する燃料供給流路344aが設けられた燃料極セパレータ344と、酸素極343に酸素を供給する酸素供給流路345aが設けられた酸素極セパレータ345と、が積層されている。
【0117】
電解質341は酸素イオンを透過するが、酸素分子、水素分子、一酸化炭素、二酸化炭素、電子を通さない性質を有する。
燃料極342には燃料供給流路344aを介して改質ガスが送られる。燃料極342では改質ガス中の水素、一酸化炭素及び電解質341を通過した酸素イオンによる次の電気化学反応式(14)、(15)に示す反応が起こる。
2+O2-→H2O+2e- …(14)
CO+O2-→CO2+2e- …(15)
生成した電子はアノード出力電極346に供給される。未反応の改質ガス(オフガス)は触媒燃焼器309に供給される。
【0118】
酸素極343には酸素供給流路345aを介して、第1の熱交換器307及び第2の熱交換器308により加熱された酸素(空気)が供給される。酸素極343では、酸素と、カソード出力電極347より供給される電子とにより、次の電気化学反応式(16)に示す反応が起こる。
1/2O2+2e-→O2- …(16)
生成した酸素イオンは電解質341を通過して燃料極342に供給される。未反応の酸素(空気)は触媒燃焼器309に供給される。
【0119】
触媒燃焼器309では、燃料供給流路344aを通過したオフガスと、酸素供給流路345aを通過した酸素(空気)とが混合され、オフガス中の水素及び一酸化炭素が燃焼される。燃焼熱は燃料電池セルスタック340を加熱するのに用いられる。
触媒燃焼器309の排ガス(水、酸素及び二酸化炭素の混合気体)は第2の熱交換器308及び第1の熱交換器307において熱を放出した後に、排出される。
【0120】
本実施形態においては、燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309が一体化された高温反応部317は、電気ヒータ兼温度センサ357により約800〜1000℃に保たれる。
【0121】
図27は反応装置310Aの内部構造を示す模式図である。図27に示すように、反応装置310Aには、高温反応部317に輻射放熱膜317aが設けられており、断熱容器320の輻射放熱膜317aと対向する部分に輻射透過窓327が設けられている。輻射放熱膜317aからの輻射は輻射透過窓327を透過するため、高温反応部317の熱量が輻射により断熱容器320の外部へ放出される。したがって、高温反応部317から第3連結部316を経て中温反応部315へ伝導する熱量を抑えながら、高温反応部317で生じる熱量により高温反応部217の温度が必要以上に上昇することを防ぐことができる。
【0122】
また、本実施形態においては、図27に示すように、中温反応部315に輻射放熱膜315aが設けられており、断熱容器320の輻射放熱膜315aと対向する部分に輻射透過窓325が設けられている。輻射放熱膜315aからの輻射は輻射透過窓325を透過するため、中温反応部315の熱量が輻射により断熱容器320の外部へ放出される。したがって、中温反応部315から第2連結部314を経て低温反応部313へ伝導する熱量を抑えながら、第3連結部316から伝導する熱量により中温反応部315の温度が必要以上に上昇することを防ぐことができる。
【0123】
本実施形態の構造について、低温反応部313の温度を150℃、中温反応部315の温度を400℃、高温反応部317の温度を800℃、燃料電池セルスタック340の効率を60%とし、発電量を20Wとした場合の効果を算出する。
第3連結部316、第2連結部314及び第1連結部312による熱伝導を除く高温反応部317、中温反応部315、低温反応部313の熱収支(各化学反応の反応熱、反応ガスの熱交換の合計)は、それぞれ+10W、+3W、+0Wになる。輻射放熱膜312a,316aを設けない場合には、この合計13Wの熱量が断熱容器320へと伝導してしまう。たとえば、8W,3Wを輻射放熱膜315a,317aにより放射することで、第1連結部312より伝導する熱量を2Wに抑制することができる。誘電体多層膜を形成した輻射透過窓として、例えば実施例1のものを用いる場合、800℃の輻射放熱膜から放出される輻射のうち約53%を、400℃の輻射放熱膜から放出される輻射のうち約53%をそれぞれ透過させ、放熱することができる。したがって、この8W,3Wの放熱は、輻射放熱膜315a,317aの輻射率を1とすると、輻射放熱膜315a,317aの表面積をそれぞれ約2.5cm、4.9cmとることで可能である。
【0124】
なお、上記実施形態においては、中温反応部315及び高温反応部317の両方に輻射放熱膜315a,317aを設けたが、いずれか一方のみでもよい。それに合わせて、対向する輻射透過窓325,327についても、いずれか一方のみでもよい。
【0125】
図28は本実施形態に係る電子機器300の形態例を示す斜視図である。なお、図28に示す電子機器300はノート型パーソナルコンピュータである。図28に示すように、反応装置310Aは電子機器300の背面側に取り付けられており、輻射透過窓325,327は後方向きに設けられている。このため、輻射放熱膜315a,315aより放射された赤外線は輻射透過窓325,327を透過して外部に放出され、電子機器本体301の温度を上昇させることがない。
【0126】
<変形例4>
なお、図29、図30に示すように、第3連結部316に輻射放熱膜316aを設け、断熱容器320の輻射放熱膜316aと対向する部分に輻射透過窓326を設けてもよい。高温反応部317から第3連結部316へ伝導する熱量の一部が輻射放熱膜316aから輻射され、輻射透過窓326より断熱容器320の外部へ放出されるため、中温反応部315の温度が第3連結部316から伝導する熱量により必要以上に上昇することを防ぐことができる。
【0127】
<変形例5>
あるいは、図31に示すように、第2連結部314に輻射放熱膜314aを設け、断熱容器320の輻射放熱膜314aと対向する部分に輻射透過窓324を設けてもよい。中温反応部315から第2連結部314へ伝導する熱量の一部が輻射放熱膜314aから輻射され、輻射透過窓324より断熱容器320の外部へ放出されるため、低温反応部313の温度が第2連結部314から伝導する熱量により必要以上に上昇することを防ぐことができる。
【0128】
<変形例6>
あるいは、図32に示すように、第1連結部312に輻射放熱膜312aを設け、断熱容器320の輻射放熱膜312aと対向する部分に輻射透過窓322を設けてもよい。低温反応部313から第1連結部312へ伝導する熱量の一部が輻射放熱膜312aから輻射され、輻射透過窓322より断熱容器320の外部へ放出されるため、断熱容器320の温度が第1連結部312から伝導する熱量により許容範囲を超えて上昇することを防ぐことができる。
【0129】
<変形例7>
あるいは、図33、図34に示すように、アノード出力電極346及びカソード出力電極347に輻射放熱膜346a,347aを設け、断熱容器320の輻射放熱膜346a,347aと対向する部分に輻射透過窓366,367を設けてもよい。高温反応部317からアノード出力電極346及びカソード出力電極347へ伝導する熱量の一部が輻射放熱膜346a,347aから輻射され、輻射透過窓366,367より断熱容器320の外部へ放出されるため、断熱容器320の温度がアノード出力電極346及びカソード出力電極347から伝導する熱量により許容範囲を超えて上昇することを防ぐことができる。
また、輻射放熱膜346a,347aのいずれか1つのみを設け、対向するいずれか1つの輻射透過窓366,367のみを設けてもよい。
【0130】
なお、輻射放熱膜312a,313a,314a,315a,316a,317a,346a,347aのいずれか2つ以上を設けてもよい。その場合には、対向する輻射透過窓322,323,324,325,326,327,366,367を設ける必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の第1実施形態に係る反応装置10Aの構成を示す模式図である。
【図2】100℃〜1000℃における輻射強度と波長との関係を示す図である。
【図3】Au,Al,Ag,Cu,Rhの反射率の波長依存性を示すグラフである。
【図4】輻射透過窓23,25の材料の候補となる物質の透過率と光の波長との関係を示すグラフである。
【図5】輻射透過窓23,25の材料の候補となる物質の透過率と光の波長との関係を示すグラフである。
【図6】輻射透過窓23,25の構造を示す模式図である。
【図7】ヒトの皮膚の赤外透過性と波長との関係を示すグラフである。
【図8】700℃、800℃及び1000℃における輻射強度と波長との関係を示す図である。
【図9】図8の可視光領域(400nm〜800nm)を示す拡大図である。
【図10】実施例1の輻射透過窓の反射率を示すグラフである。
【図11】実施例1の輻射透過窓を通じて外部に放出される輻射のスペクトルを示すグラフである。
【図12】実施例2の輻射透過窓の反射率を示すグラフである。
【図13】実施例2の輻射透過窓を通じて外部に放出される輻射のスペクトルを示すグラフである。
【図14】実施例3の輻射透過窓の反射率を示すグラフである。
【図15】図14の400nm〜1000nmの波長領域の拡大図である。
【図16】実施例4の輻射透過窓の反射率を示すグラフである。
【図17】図16の300nm〜1100nmの波長領域の拡大図である。
【図18】本発明の第1変形例に係る反応装置10Bの構成を示す模式図である。
【図19】図18のXIX矢視図である。
【図20】本発明の第2変形例に係る反応装置10Cの構成を示す模式図である。
【図21】本発明の第3変形例に係る反応装置10Dの構成を示す模式図である。
【図22】本発明の第2実施形態に係る電子機器100を示すブロック図である。
【図23】反応装置110の内部構造を示す模式図である。
【図24】本発明の第3実施形態に係る電子機器200を示すブロック図である。
【図25】反応装置210の内部構造を示す模式図である。
【図26】本発明の第4実施形態に係る電子機器300を示すブロック図である。
【図27】反応装置310Aの内部構造を示す模式図である。
【図28】本発明の第4実施形態に係る電子機器300の形態例を示す斜視図である。
【図29】本発明の第4変形例に係る反応装置310Bの構成を示す模式図である。
【図30】図29のXXX矢視図である。
【図31】本発明の第5変形例に係る反応装置310Cの構成を示す模式図である。
【図32】本発明の第6変形例に係る反応装置310Dの構成を示す模式図である。
【図33】本発明の第7変形例に係る反応装置310Eの構成を示す模式図である。
【図34】図33のXXXIV矢視図である。
【符号の説明】
【0132】
10A〜10D,110,210,310A〜310E 反応装置
11,111,211,311 反応装置本体
11a,111a,211a,311a 輻射防止膜
12a〜15a,113a,217a,312a〜317a,346a,347a 輻射放熱膜
12,112,212,312 第1連結部
13,113,213,313 低温反応部
14,114,214,314 第2連結部
15,115,217,317 高温反応部
20,120,220,320 断熱容器
21a,121a,221a,321a 反射膜
22,23,24,25,123,226,227,322〜327,366,367 輻射透過窓
100,200,300 電子機器
130,230,330 燃料電池装置
140,240,340 燃料電池セル
146,246,346 アノード出力電極
147,247,347 カソード出力電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応物が反応する反応部を有する反応装置本体と、
前記反応装置本体を収容するとともに、前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有する第1の容器とを備え、
前記輻射透過領域には、AlF3、BaF2、CaF2、CeF3、CeO2、CsI、DyF2、DLC、Gd23、LaF3、La23、LiF、MgF2、PbF2、Sc23、SrF2、Ta25、TiO2、YF3、Y23、ZnO、ZnS、Al23、、Bi23、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、Cr23、GaAs、Ge、HfO2、MgO、NaF、Na3AlF6、Na5Al314、Nb25、NdF3、Nd23、PbCl2、PbTe、PbS、Sb23、Sb23、Si、Si34、SiO2、Te、TlCl、YbF3、Yb23、ZnSe、ZrO2の少なくとも2つの材料が用いられている誘電体多層膜が設けられていることを特徴とする反応装置。
【請求項2】
反応物が反応する反応部を有する反応装置本体と、
前記反応装置本体を収容するとともに、前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有する第1の容器とを備え、
前記輻射透過領域には可視光の波長領域の輻射の少なくとも一部を反射する誘電体多層膜が設けられていることを特徴とする反応装置。
【請求項3】
前記誘電体多層膜は610〜800nmの波長領域の輻射の少なくとも一部を反射することを特徴とする請求項2に記載の反応装置。
【請求項4】
前記誘電体多層膜は400〜800nmの波長領域の輻射の少なくとも一部を反射することを特徴とする請求項2に記載の反応装置。
【請求項5】
反応物が反応する反応部を有する反応装置本体と、
前記反応装置本体を収容するとともに、前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有する第1の容器とを備え、
前記輻射透過領域にはヒトの皮膚に対する浸透深度が50μm以下となる波長領域の輻射の少なくとも一部を反射する誘電体多層膜が設けられていることを特徴とする反応装置。
【請求項6】
前記誘電体多層膜は2.7〜3.1μm及び5.9〜6.5μmの波長領域の輻射の少なくとも一部を反射することを特徴とする請求項5に記載の反応装置。
【請求項7】
前記誘電体多層膜には、AlF3、BaF2、CaF2、CeF3、CeO2、CsI、DyF2、DLC、Gd23、LaF3、La23、LiF、MgF2、PbF2、Sc23、SrF2、Ta25、TiO2、YF3、Y23、ZnO、ZnS、Al23、、Bi23、BiF3、CdSe、CdS、CdTe、Cr23、GaAs、Ge、HfO2、MgO、NaF、Na3AlF6、Na5Al314、Nb25、NdF3、Nd23、PbCl2、PbTe、PbS、Sb23、Sb23、Si、Si34、SiO2、Te、TlCl、YbF3、Yb23、ZnSe、ZrO2の少なくとも2つの材料が用いられていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項8】
前記誘電体多層膜は、前記少なくとも2つの材料のうち第1の材料により形成された第1の層に、前記第1の材料と異なる第2の材料により形成された第2の層が積層されていることを特徴とする請求項1又は7に記載の反応装置。
【請求項9】
前記誘電体多層膜は、前記少なくとも2つの材料のうち第1の材料により形成された第1の層と、前記第1の材料と異なる第2の材料により形成された第2の層とが交互に複数回積層されていることを特徴とする請求項1又は7に記載の反応装置。
【請求項10】
前記第1の材料の屈折率をnH、前記第1の層の膜厚をdHとし、前記第2の材料の屈折率をnL、前記第2の層の膜厚をdL(ただし、nH>nL)とするとき、
前記誘電体多層膜は2(nHH+nLL)の波長の輻射の少なくとも一部を反射することを特徴とする請求項8又は9に記載の反応装置。
【請求項11】
前記第1の材料はCaF2であり、前記第2の材料はZnSであることを特徴とする請求項1、7〜10のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項12】
前記反応部は、反応物の反応により電力を生成する燃料電池セルを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項13】
前記燃料電池セルは固体酸化物型であることを特徴とする請求項12に記載の反応装置。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の反応装置と、前記燃料電池セルの電力により動作する電子機器本体とを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2009−274051(P2009−274051A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130501(P2008−130501)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】