説明

収容具の形成方法

【課題】正確な深さの円形凹部を形成可能な収容具の形成方法を提供する。
【解決手段】円形凹部15と該円形凹部15を囲繞する環状凸部17とを有する収容具を形成する方法であって、チャックテーブル36で円板状部材11を保持するステップと、円板状部材11に該円板状部材11の直径の略1/2の直径を有する研削砥石24を該円板状部材11の中心と外周の手前に当接させ、該チャックテーブル36と該研削砥石24とを回転させて該円板状部材11に円形凹部15を形成するとともに該円形凹部15を囲繞する環状凸部17を形成する研削ステップとを具備し、第1高さ位置検出手段44で加工領域の高さ位置を第1高さ位置として検出するとともに、第2高さ位置検出手段46で該環状凸部17に対応する外周領域の高さ位置を第2高さ位置として検出し、該第2高さ位置から該第1高さ位置を減じた値が所定値に達した際に研削を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物を収容するための円形凹部と円形凹部を囲繞する環状凸部とを有する収容具の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造プロセスでは、シリコン、GaAs、サファイア、SiC等のウエーハ上にICや光デバイス等の回路素子が複数形成されてデバイスウエーハが製造される。その後、デバイスウエーハの裏面が研削、研磨されて所定の厚みまで薄化された後、切削装置で分割されて個々の半導体デバイスが製造される。
【0003】
一般に研削装置で被加工物を研削して所定の厚みへと薄化する場合、被加工物を保持するチャックテーブルの上面高さと被加工物の上面高さを検出しつつ研削を遂行する。そして、被加工物の上面高さとチャックテーブルの上面高さの差が所定値に達した際に研削を停止することで、被加工物を所望の厚みに薄化している(例えば、特開2005−246491号公報参照)。
【0004】
また、特開2007−19461号公報には、円形凹部と円形凹部を囲繞する環状凸部とを有するウエーハが開示されているが、ガラスやシリコン等からなる円板状部材を研削して円形凹部と円形凹部を囲繞する環状凸部とを形成し、例えば半導体ウエーハのような板状物を円形凹部内に収容する収容具として利用する場合がある。
【0005】
被加工物を研削して円形凹部と円形凹部を囲繞する環状凸部を形成する場合には、通常、チャックテーブルの上面高さと円形凹部の底面高さを検出しつつ研削を遂行し、円形凹部の底面高さとチャックテーブルの上面高さとの差が所定の値に達した際に研削を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−246491号公報
【特許文献2】特開2007−19461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、円形凹部と円形凹部を囲繞する環状凸部が形成された円板状部材を収容具として使用する場合には、円形凹部の深さを正確に形成することが必要である。研削前の円板状部材の厚みに誤差があった場合、円形凹部の底面高さとチャックテーブルの上面高さを検出しつつ研削を遂行すると、形成される円形凹部の深さが正確に所望深さにならないという問題がある。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、正確な所望深さの円形凹部を有する収容具の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、円形凹部と該円形凹部を囲繞する環状凸部とを有し該円形凹部中に板状物を収容するための収容具を形成する収容具の形成方法であって、研削装置のチャックテーブルで円板状部材を保持する保持ステップと、該チャックテーブルで保持した円板状部材に該円板状部材の直径の略1/2の直径を有する研削砥石を該円板状部材の中心と外周の手前に当接させ、該チャックテーブルと該研削砥石とを回転させて該円板状部材に円形凹部を形成するとともに該円形凹部を囲繞する環状凸部を形成する研削ステップとを具備し、該研削ステップでは、第1高さ位置検出手段で該円形凹部に対応する該円板状部材の加工領域の高さ位置を第1高さ位置として検出するとともに、第2高さ位置検出手段で該環状凸部に対応する該円板状部材の外周領域の高さ位置を第2高さ位置として検出し、該第2高さ位置から該第1高さ位置を減じた値を算出しつつ研削を遂行し、該第2高さ位置から該第1高さ位置を減じた値が所定値に達した際に研削を終了することを特徴とする収容具の形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、円形凹部の底面高さと環状凸部の上面高さを検出しつつ研削が遂行されるため、円形凹部の深さを正確に所望の深さに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の形成方法を実施するのに適した研削装置の斜視図である。
【図2】円板状部材の斜視図である。
【図3】本発明実施形態に係る収容具の形成方法を説明する斜視図である。
【図4】円形凹部形成方法を説明する模式図である。
【図5】図5(A)は実施形態にかかる収容具の断面図、図5(B)は収容具の円形凹部内にウエーハを収容した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明を実施するのに適した研削装置2の概略構成図を示している。4は研削装置2のベース(ハウジング)であり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向にのびる一対のガイドレール8が固定されている。
【0013】
この一対のガイドレール8に沿って研削ユニット(研削手段)10が上下方向に移動可能に装着されている。研削ユニット10は、ハウジング12と、ハウジング12を保持する支持部14を有しており、支持部14が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動される移動基台16に取り付けられている。
【0014】
研削ユニット10は、ハウジング12中に回転可能に収容されたスピンドル18と、スピンドル18の先端に固定されたホイールマウント20と、ホイールマウント20にねじ締結され環状に配設された複数の研削砥石24を有する研削ホイール22と、スピンドル18を回転駆動するサーボモータ26を含んでいる。
【0015】
研削装置2は、研削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ28とパルスモータ30とから構成される研削ユニット送り機構32を備えている。パルスモータ30を駆動すると、ボールねじ28が回転し、移動基台16が上下方向に移動される。
【0016】
ベース4の上面には凹部4aが形成されており、この凹部4aにチャックテーブル機構34が配設されている。チャックテーブル機構34はチャックテーブル36を有し、図示しない移動機構により図1に示されたウエーハ着脱位置Aと、研削ユニット10に対向する研削位置Bとの間でY軸方向に移動される。38,40は蛇腹である。ハウジング4の前方側には、研削装置2のオペレータが研削条件等を入力する操作パネル42が配設されている。
【0017】
図2を参照すると、本発明の加工対象である円板状部材11の斜視図が示されている。円板状部材11は、例えばシリコンインゴットからワイヤーソーでスライスされたシリコンウエーハから構成されており、円板状部材11の外周には、シリコンウエーハの結晶方位を示すマークとしてのノッチ13が形成されている。
【0018】
円板状部材(シリコンウエーハ)11は約700μmの厚さを有しているが、その厚さは一様ではなく数10μm程度の誤差を有している。円板状部材11はシリコンウエーハに限定されるものではなく、ガラス板等も採用可能である。
【0019】
次に図1及び図3を参照して、本発明実施形態に係る収容具の形成方法について詳細に説明する。図1に示すウエーハ着脱位置Aに位置付けられたチャックテーブル36上に、シリコンウエーハ11を吸引保持する。次いで、チャックテーブル36をY軸方向に移動して研削位置Bに位置付ける。
【0020】
そして、図3及び図4に示すように、チャックテーブル36を矢印aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削砥石24を矢印bで示す方向に例えば6000rpmで回転させるとともに、研削ユニット送り機構32を駆動して研削ホイール22の研削砥石24をシリコンウエーハ11の裏面に接触させる。そして、研削ホイール22を所定の研削送り速度で下方に所定量研削送りする。
【0021】
この研削の結果、シリコンウエーハ11には、図3及び図5(A)に示すように、中央部に所定厚さの円形凹部15が形成されるとともに、円形凹部15の外周に円形凹部15を囲繞する環状凸部17が形成される。
【0022】
この研削時には、第1高さ位置検出器44で円形凹部15に対応するシリコンウエーハ11の加工領域の高さ位置を第1高さ位置として検出するとともに、第2高さ位置検出器46で環状凸部17に対応するシリコンウエーハ11の外周領域の高さ位置を第2高さ位置として検出し、第2高さ位置から第1高さ位置を減じた値を算出しつつ研削を遂行する。そして、第2高さ位置から第1高さ位置を減じた値が所定値に達した際に研削を終了するように制御する。
【0023】
ここで、チャックテーブル36に保持されたシリコンウエーハ11と研削ホイール22を構成する研削砥石24の関係について図4を参照して説明する。チャックテーブル36の回転中心P1と研削砥石24の回転中心P2は偏心しており、環状に形成された研削砥石24の外径は円形凹部15と環状凸部17との境界線19の直径より小さく、境界線19の半径より大きい寸法に設定され、環状に配置された研削砥石24がチャックテーブル36の回転中心P1を通過するような関係になっている。
【0024】
本実施形態の収容部の形成方法によると、円形凹部15の底面高さと環状凸部17の上面高さを検出しつつ研削が遂行されるため、円形凹部15の深さを正確に所望の深さに形成することができる。
【0025】
このように形成された収容具48の円形凹部15内には、図5(B)に示すように、例えば表面に複数のデバイスを有し裏面が研削されて所定厚さに形成された半導体ウエーハ21が収容される。
【0026】
このように収容具48の円形凹部15内に半導体ウエーハ21を収容した状態で、例えば顕微鏡の資料載置台上に収容具48を直接載置して、半導体ウエーハ21のパターンの欠陥等を顕微鏡で拡大して観察することができる。
【0027】
収容具48は円形凹部15を囲繞する環状凸部17を有しているので、十分な強度を確保することができる。よって、収容具48の円形凹部15内に半導体ウエーハ21等の板状物を収容した状態で、収容具48を重ねて積み上げることができ、省スペース化を達成することができる。
【符号の説明】
【0028】
2 研削装置
10 研削ユニット
11 シリコンウエーハ(円板状部材)
15 円形凹部
17 環状凸部
22 研削ホイール
24 研削砥石
36 チャックテーブル
48 収容具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形凹部と該円形凹部を囲繞する環状凸部とを有し、該円形凹部中に板状物を収容するための収容具を形成する収容具の形成方法であって、
研削装置のチャックテーブルで円板状部材を保持する保持ステップと、
該チャックテーブルで保持した円板状部材に該円板状部材の直径の略1/2の直径を有する研削砥石を該円板状部材の中心と外周の手前に当接させ、該チャックテーブルと該研削砥石とを回転させて該円板状部材に円形凹部を形成するとともに該円形凹部を囲繞する環状凸部を形成する研削ステップとを具備し、
該研削ステップでは、
第1高さ位置検出手段で該円形凹部に対応する該円板状部材の加工領域の高さ位置を第1高さ位置として検出するとともに、第2高さ位置検出手段で該環状凸部に対応する該円板状部材の外周領域の高さ位置を第2高さ位置として検出し、該第2高さ位置から該第1高さ位置を減じた値を算出しつつ研削を遂行し、
該第2高さ位置から該第1高さ位置を減じた値が所定値に達した際に研削を終了することを特徴とする収容具の形成方法。
【請求項2】
前記円板状部材はシリコン又はガラスから構成される請求項1記載の収容具の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−20344(P2012−20344A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157755(P2010−157755)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】