取付ブラケットおよびエアバッグを車両構造体に締結するための締結具
本発明は、エアバッグに接続されたストラップ(21)が挿入されうる開口部(14、15)と、車両構造体(2)に載置されるクランプ面とを備えた、エアバッグを車両構造体(2)に締結するための取付ブラケット(1)であって、取付ブラケット(1)は、クランプ面を形成する少なくとも1つの第1層(12)と、ばね弾性の作用で、第1層(12)から間隔の空いた第2層(11)とから形成され、第1および第2層(12、11)は、車両構造体(2)の同じ側に位置でき、取付ブラケット(1)は、締結手段(22、23、50)によって、車両構造体(2)に締結でき、第1と第2層(12、11)の間の距離は、締結手段(22、23、50)で取付ブラケット(1)を締結することによって短くなり、第1層(12)と車両構造体(2)との間に作用するクランプ力は、距離を短くすることによって生成できる、取付ブラケット(1)に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および請求項11の前文の特徴を備えた、取付ブラケットおよびエアバッグを車両構造体に締結するための締結具、並びに、請求項13の前文の特徴を備えたエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、最新の車両には様々なエアバッグが備えられている。エアバッグは、事故の際に急速に膨張し、乗員または歩行者が、エアバッグによって覆われた車両構造体の領域、またはハンドル、背もたれなど、エアバッグによって覆われた構成部品に激突するのを防ぐ。具体的には、例えば、AピラーからCまたはDピラーへと延在するサイドエアバッグなど、事故の際に車両の大きな表面面積を覆っているエアバッグは、膨張状態にあっても、エアバッグが設定位置に維持され、および/または、膨張過程の間、エアバッグの形状が制御されるように、ストラップによって車両構造体に締結されなければならない。ストラップによる車両構造体への締結は、種々の条件下での積載量について、車両メーカー側に、様々な法的要件や追加的な要件が課せられる。さらに、締結は、当然ながら、できるだけ組み立てやすく、高い費用対効果で実現されなければならない。
【0003】
特許文献1からは、取付ブラケットの表面から打ち抜かれた弓形の舌状部分が設けられた取付ブラケットを用いる、エアバッグの締結が公知である。エアバッグを車両構造体に締結するために、舌状部分が、片側から、車両構造体に設けられた開口部に挿入され、そして、舌状部分の端部が車両構造体の方に向けられた状態では、舌状部分は、車両構造体の反対側にある第2の開口部に挿入される。弓形の舌状部分が車両構造体の反対側に載置されているために、取付ブラケットは、クランプ面がクランプ力を加える状態で、車両構造体に載置される。このときのクランプ力は、舌状部分の形状およびばね弾性によって決定される。高いクランプ力が得られる場合には、舌状部分は、それに応じた堅固な構成を有さねばならず、その結果、舌状部分が、組立中にも、弾性的に変形しなければならないので、取付ブラケットを取り付けるのに比較的大きな力を加える必要があるという不具合につながる。この解決法によるさらに大きな不具合とは、取付ブラケットを取り付けるのに、特定の熟練した組立者が要求されることである。この理由は、舌状部分は、取付ブラケットを締結するために変形しなければならないだけでなく、さらに、大変な手間をかけて開口部に挿入しなければならず、次いで、舌状部分を、車両構造体の背面にあるアクセスしにくい開口部内に、弓形端部で固定しなければならないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許公開公報第1 502 824 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、このような締結は、特に、組立ライン上で車両を製造している場合、および車両内の窮屈な状態で組み立てる際に問題となり得る。
【0006】
この点を考慮して、本発明の目的は、取り付けるのが簡単で、かつ十分なクランプ力で車両構造体に取り付けられる、エアバッグ用の取付ブラケットおよび締結具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を備えた取付ブラケットと、請求項11の特徴を備えた締結具と、請求項13の特徴を備えたエアバッグとによって解決される。本発明の好ましい発展形態は、従属請求項から分かるであろう。
【0008】
本目的を解決するために、請求項1によると、取付ブラケットは、クランプ面を形成する少なくとも1つの第1層と、ばね弾性の作用で第1層から間隔の空いた第2層とから形成されていることと、
−第1および第2層は、車両構造体の同じ側に位置できることと、
−取付ブラケットは、締結手段によって車両構造体に締結できることと、
−第1層と第2層との間の距離は、締結手段で取付ブラケットを締結することによって、短くなることと、
−第1層と車両構造体との間に作用するクランプ力は、上記距離を短くすることによって、生成できることと
が提案される。
【0009】
本発明の基本的な概念は、クランプ面に作用するクランプ力が、ばね弾性の作用で間隔の空いた2層を備える取付ブラケットの完全に新規な構造によって生成され、これらの層は、車両構造体の同じ側に位置でき、締結手段が、取付ブラケットを締結することによって、層の間の距離を短くすることである。取付ブラケットのクランプ力は、第1および第2層を締結手段によって互いに押し付け、この互いに押し付けられた状態で、2層を締結手段によって車両構造体に固定することによって生成される。その結果、取付ブラケットを取り付けるのに圧縮力のみが加わる。この圧縮力は、2層が車両構造体の同じ側に位置しているがために、組立中は、車両構造体に作用する。この結果、取付ブラケットの取り扱いが著しく簡単になり、そのうえ、著しく大きなクランプ力を生成できるようになる。この理由は、組立中に圧縮力を利用するために、組立者側の熟練をさらに必要とせずに、組立力をより簡単に加えることができるからである。さらに、1つの層を有する取付ブラケット自体は、大変な手間をかけて車両構造体の開口部に挿入される必要がなく、車両構造体の背面に固定される必要がない。それによって、取付ブラケットの取り付けがさらに簡単になる。
【0010】
さらに、第1および第2層が、折り重ねた1つの層から形成されることが提案される。それゆえに、取付ブラケットは1つの層から作製することができ、2つの層は、単に、上記1つの層を折り重ねることによって提供される。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施形態は、第1および第2層が、片側で互いに接続されていることである。2つの層を片側で接続することによって、両方の層の間に作用するばね力を極めて簡単に生成できる可能性がもたらされる。この場合、接続部が片側のみに存在していることにより、2つの層が互いの方向に移動することが、他方の側におけるさらなる接続点によって、全く制限されないことが重要である。
【0012】
さらに、第1層と第2層との間の距離は、取付ブラケットが車両構造体に締結されていない状態において、取付ブラケットの片側から始まり、増加していくことが提案される。2つの層を互いに提案されたとおり配列することによって、2つの層を互いに引き寄せ、続いて、互いに対して、実質的に平行に、締結状態で載置するようにし、その結果、本発明によって生成された大きなクランプ力を、クランプ面を有する車両構造体に加えることができる。
【0013】
この場合、さらに、取付ブラケットが車両構造体に締結されていない状態における第1層と第2層との間の距離が、締結手段の領域内よりも、開口部の領域内の方が短いことが提案される。これによって、2つの層を締結手段の領域内で、より長い距離にわたって互いに引き寄せることにより、所望のクランプ力を生成することができる。一方で、挿入ストラップの領域内の層は、わずかではあるが、互いに対する位置を変化させ、これにより、締結によって、取付ブラケットを介してエアバッグに接続されたストラップにできるだけ小さいたるみが導入されるようにする。
【0014】
取付ブラケットについての構造上簡単な締結形態は、締結手段が、接続ウェブを介して取付ブラケットに接続された係止頭部から形成されている点と、係止頭部を車両構造体に位置する開口部に挿入し、回転運動を行うことによって、取付ブラケットが、クランプ式に車両構造体に固定できる点において見られる。
【0015】
この場合、さらに、第1および第2層がそれぞれ、接続ウェブを介して取付ブラケットに接続された係止頭部を備えていることと、係止頭部が車両構造体の開口部に一緒に挿入されることと、挿入後の係止頭部は、係止頭部によって、第1および第2層が、回転運動を行う際に互いに引き寄せられるように、位置決めされることとが提案される。挿入後の係止頭部は、例えば、取付ブラケットに対して僅かにずれて位置決めされる。その結果、係止頭部は、位置ずれのため、および係止頭部が車両構造体に載置されているために、回転運動の際に、互いに対して相対運動を行い、層を互いに引き寄せる。理想的な場合には、係止頭部は、一致するように、互いに平行に、締結後の車両構造体の他方の側に載置される。
【0016】
代替的に、取付ブラケットには、締結手段が挿入されうる開口部が設けられていることと、取付ブラケットは、取付ブラケットに対して回転運動を行う締結手段によって、車両構造体に固定できることとが提案される。この提案された解決法によって、取付ブラケット自体を回転させる必要がなく、締結手段だけを取付ブラケットに対して回転させればよい。取付ブラケットを狭い取付スペースに位置決めしなければならない場合、または、ストラップが挿入された状態で取付ブラケットを回転させることができない場合には、このような締結が適している。
【0017】
この場合には、係止セグメントが締結手段に設けられるべきである。締結手段が締結位置から意図せずに自動的にはずれることがないように、係止セグメントは、回転運動を行った後に、締結手段が逆方向に回転運動するのを防止する。
【0018】
取付ブラケット自体が回転中に締結手段と一緒に回転しないようにするために、さらに、第1層には、車両構造体に対して取付ブラケットが回転することを防ぐ係止輪郭部が設けられることが提案される。
【0019】
さらに、本目的を解決するために、請求項8から10のうちの1項による取付ブラケットを備えたエアバッグのための締結具が提案される。締結手段は係止頭部を備え、係止頭部は、取付ブラケットの長孔および車両構造体の長孔に挿入できる。締結手段は、回転運動を行うことによって、係止頭部と取付ブラケットとの間で車両構造体をクランプし、それによって、取付ブラケットを車両構造体に固定する。
【0020】
以下において、様々な実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。図は以下を詳細に示している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】折り重ねる前の係止頭部付き取付ブラケットを示す。
【図2】折り重ねた後の係止頭部付き取付ブラケットの側面図を示す。
【図3】車両構造体に締結した後の係止頭部付き取付ブラケットの断面図を示す。
【図4】回転前の係止頭部付き取付ブラケットの上面図を示す。
【図5】回転後の係止頭部付き取付ブラケットの上面図を示す。
【図6】折り重ねる前の開口部付き取付ブラケットを示す。
【図7】回転前の、開口部および挿入後の締結手段付き取付ブラケットの断面図を示す。
【図8】回転後の、開口部および挿入後の締結手段付き取付ブラケットの断面図を示す。
【図9】回転前の、開口部および挿入後の締結手段付き取付ブラケットの上面図を示す。
【図10】回転後の、開口部および挿入後の締結手段付き取付ブラケットの上面図を示す。
【図11】折り重ねる前の取付ブラケットの開口部に挿入される締結手段を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、金属薄板からプレス部品として打ち抜かれた取付ブラケット1を示している。取付ブラケット1は、第1層12および第2層11から形成され、これらの層は、接続ウェブ20を介して互いに接続されている。締結手段22、23が、層11、12の自由端部に位置し、これらの締結手段は、接続ウェブ16、17を介して層11、12に接続された係止頭部18、19によって形成されている。さらに、開口部14、15が層11、12に設けられている。これらの開口部は、同一の形状であり、接続ウェブ20の折り目13に対して対称的に位置している。図1で示された状態では、取付ブラケット1はまだ折り重ねられておらず、1層のみから形成されている。しかし、誤解を避けるために、取付ブラケット1は、すでに第1層12と第2層11とに分かれている。
【0023】
図2は、折り重ねられた状態の図1と同じ取付ブラケット1を示している。第1の折り重ね工程において、第1層12および第2層11が、折り目13で折り曲げられ、第1層12および第2層11に折り重ねられた結果、全体的に2層の取付ブラケット1になる。続いて、係止頭部18、19が、2層の取付ブラケット1の片側にほぼ直角に、折り目27、26で曲げられる。あるいは、係止頭部18、19をまず折り目27、26で曲げ、次いで、第1層12および第2層11が互いに重なり合うように折り曲げられる。しかし、この場合、係止頭部18、19を取付ブラケット1の異なる側に曲げることにより、層11、12を折り重ねた後に係止頭部18、19が同じ方向を指すようにすることが重要である。明確に見られるように、第1層12と第2層11との間の距離「d」は、接続ウェブ20から始まって係止頭部18、19の方向に増加する。
【0024】
図3は、締結位置にある図1および図2と同じ取付ブラケット1の断面図を示している。ストラップ21が、開口部14、15を通って案内されている。このストラップはエアバッグ(図示せず)に接続されている。第1層および第2層を互いに重なり合うように折り曲げることによって、開口部14、15は互いに重なり合うようになり、それによって、ストラップ21を接続するための開口部を形成している。なお、ストラップ21の接触表面の大きい方の半径は、互いに重なり合う2層11、12によって提供される。係止頭部18、19および層11、12は、図2で示された位置と比べて、互いの方向に強く引き寄せられ、これにより、第1層12と第2層11との間でかなり大きなばね力が作用し、そして、第1層12は、クランプ力で車両構造体2に押し付けられる。クランプ力は、車両構造体2の他方の側に載置される係止頭部18、19によって、車両構造体2に導入されて、取付ブラケット1は、自動的に車両構造体2にクランプされるようになる。
【0025】
図4および5は、車両構造体2への締結前および締結後の図3の取付ブラケット1を示している。まず、取付ブラケット1は、係止頭部18、19が、車両構造体2の開口部30に挿入される。開口部30は、中央の円形セグメント32を備えた長孔31から形成されている。締結するためには、取付ブラケット1を、ブラケット1に垂直な仮想軸「Y」に対して矢印方向「A」または「C」に約90度、図5で示した位置まで回転させる。その結果、係止頭部18、19は、車両構造体2側に載置されるようになり、取付ブラケット1からそれる。取付ブラケット1の回転を可能にするために、層11、12は互いに押し付けられる。なお、層11、12を互いに引き寄せる過程は、係止頭部18、19によって支援されてもよく、および/または、交差することによって、回転運動中に、車両構造体2に垂直な係止頭部18、19のうちの少なくとも一方の相対運動に影響を与える、対応する傾斜面が設けられた車両構造体2の表面によって支援されてもよい。しかし、第1層12および第2層11は、単に手動で第2層11に圧力を加えることによって、互いに押し付けられてもよい。取付ブラケット1を回転した後、車両構造体2は、第1層12によって形成されるクランプ面と係止頭部18、19との間でクランプされる。取付ブラケット1の締結に関しては、係止頭部18、19を挿入するという簡単な方法に加えて、取付ブラケット1の第2層11に圧縮力を加えさえすればよく、組立工程の実行がかなり容易になり、扱いやすさゆえに、著しく大きなクランプ力が実現可能となる。
【0026】
図6は、本発明の代替的な実施形態を示している。ここでは、取付ブラケット1は、第1層12と、接続ウェブ20を介して第1層12に接続された第2層11とによって形成され、図1で示された実施形態の場合にもあるように、ストラップ21を挿入するために、開口部14、15が層11、12の表面に設けられている。さらに、開口部40、43が層11、12に設けられている。開口部40、43はそれぞれ、長孔44、42によって、幾何学的に同一の構成で形成され、それぞれ、中央の円形セグメント45、41を備えている。折り重ねられる前の製造中の図6の取付ブラケット1は、1層のみから形成されている。しかし、ここでは、この1層は、適切に、第1層12と第2層11とにすでに分けられている。次に、層11、12は、図7の断面図で見られるように、折り目13で互いに重なり合うように折り曲げられ、2層の取付ブラケット1となる。開口部14、15、40、43は、折り重ねられた状態で、互いに重なり合うようにして、層11および12に配置される。
【0027】
図7および8は、車両構造体2における折り重ねられた状態の取付ブラケット1を示している。係止輪郭部24、25が、車両構造体2に面する第1層12に設けられている。この係止輪郭部は、車両構造体2の開口部30に延在する2つの突条部によって形成されている。係止輪郭部は、取付ブラケット1が車両構造体2に対して回転するのを防止する。取付ブラケット1を車両構造体2に配置した後には、締結手段50が、互いに重ね合わされている開口部40、43、30に挿入される。締結手段50は、作動セグメント51と、接続ウェブ55を介して作動セグメント51に接続された係止頭部54とを備えている。接続ウェブ55の長さは、挿入後の締結手段50が、作動セグメント51を備えた取付ブラケット1よりも上に位置し、係止頭部54を備えた取付ブラケット1からそれて車両構造体2側に位置するように、寸法を合わせられる。図11で見られるように、締結手段50は、例えばプレス部品のような平らな要素から形成され、その構成は、作動セグメント51と係止頭部54と係止セグメント52とに分けられ、これらはそれぞれ、接続ウェブ53、55を介して互いに接続されている。締結手段50は、第1工程で、折り目57で折り曲げられて、係止セグメント52が作動セグメント51の上にほぼ重なるようになる。続いて、係止セグメント52が、折り目56で後方に曲げられて、係止セグメント52が締結手段50からほぼ直角に突き出る。図8は、折り重ねられた後の締結手段50の形態の断面図を示している。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態が、図7から10で示されているように、上向きの方向に、車両構造体2に対する相対的な取付位置に対して、折り目100で部分103を曲げている状態で見られる。このように、部分103は、車両構造体2とブラケット1との間にある距離を提供し、この距離によって、挿入されたストラップ21が、車両構造体2とブラケット1との間でクランプされないようになる。
【0029】
係止セグメント52を離れる方向に曲げることにより、係止セグメント52は、締結手段50の挿入運動中に、取付ブラケット1でドッグとして作用し、その結果、締結手段50が、図7で示された位置よりもさらに深くまで開口部40、43、30に挿入できなくなる。取付ブラケット1を締結するために、締結手段50は、図7で示された位置から回転する。係止突条部58が、第2層11の自由な上面に設けられている。この係止突条部によって、締結手段50は係止セグメント52と係合して、締結手段50は、締結位置まで回転した後に、自動的に逆回転できなくなる。係止セグメント52には、図7に示されているように、開口部101と、折り目102で上向きに曲げられる部分52aとが設けられている。締結手段50を回すと、図10に示されているように、係止突条部58が最終的に開口部101と係合するまで、係止セグメント52は、部分52aとともに、係止突条部58の上に移動する。曲げ部分52aは、先端で係止突条部58に当接し、そして、係止突条部58が開口部101に係合するまで、運動中に短時間、弾性的に係止セグメント52を持ち上げることによって回転運動を可能にする。
【0030】
図9および10は、締結手段50の上面図における締結過程を示している。締結手段50は、目視できない係止頭部54が作動セグメント51と位置合わせされた状態で、互いに重なり合っている開口部43、40と、車両構造体2の示された開口部30とに挿入される。締結手段50が、図7で示された断面図に対応する、図9で示された位置からブラケット1に垂直な仮想軸「Z」に対して矢印方向「B」に回転すると、取付ブラケット1が固定された状態での締結手段50は、係止頭部54がある位置に達する。この位置で、係止頭部54は、車両構造体2側に載置されるようになり、取付ブラケット1からそれる。次に、回転可能にするために、取付ブラケット1の第1および第2層12、11が互いに押し付けられる。層11、12は、締結手段50を介して、単に手動で互いに押し付けられてもよく、および/または、車両構造体2および/または作動セグメント51もしくは係止頭部54における、対応する傾斜面によって支援される方法で、互いに押し付けられてもよい。次に、締結位置では、車両構造体2と取付ブラケット1とが、作動セグメント51と係止頭部54との間でクランプされる。この場合、層11、12が同時に互いに押し付けられて、2層11、12間に存在する間隙の幅が狭くなり、そして、第1層12によって車両構造体2に加わるクランプ力は、大きくなる。図6から11に示された実施形態の実質的な利点は、取付ブラケット1自体を回転する必要がないことである。取付ブラケット1を締結するためには、例えば、ドアを施錠または開錠する場合など、誰もが毎日しているように、締結手段50を挿入および回転させるだけでよい。そのために特別な熟練は必要ない。そして、加えられる組立力は、締結手段50を介して集中させた圧縮力のみから成っている。この圧縮力は、車両構造体2上に作用し、第1層12および第2層11を互いに押し付けるのに必要とされる。
【0031】
締結手段50または締結手段22、23を回転した後、取付ブラケット1は、車両構造体2の開口部30内の位置にさらに移動することができる。その位置では、ストラップ21によって導入される潜在的な力が、車両構造体2により伝達されやすくなり、および/または、その位置においては、取付ブラケット1が、開口部30から意図せずに抜け出ることが防止される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および請求項11の前文の特徴を備えた、取付ブラケットおよびエアバッグを車両構造体に締結するための締結具、並びに、請求項13の前文の特徴を備えたエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、最新の車両には様々なエアバッグが備えられている。エアバッグは、事故の際に急速に膨張し、乗員または歩行者が、エアバッグによって覆われた車両構造体の領域、またはハンドル、背もたれなど、エアバッグによって覆われた構成部品に激突するのを防ぐ。具体的には、例えば、AピラーからCまたはDピラーへと延在するサイドエアバッグなど、事故の際に車両の大きな表面面積を覆っているエアバッグは、膨張状態にあっても、エアバッグが設定位置に維持され、および/または、膨張過程の間、エアバッグの形状が制御されるように、ストラップによって車両構造体に締結されなければならない。ストラップによる車両構造体への締結は、種々の条件下での積載量について、車両メーカー側に、様々な法的要件や追加的な要件が課せられる。さらに、締結は、当然ながら、できるだけ組み立てやすく、高い費用対効果で実現されなければならない。
【0003】
特許文献1からは、取付ブラケットの表面から打ち抜かれた弓形の舌状部分が設けられた取付ブラケットを用いる、エアバッグの締結が公知である。エアバッグを車両構造体に締結するために、舌状部分が、片側から、車両構造体に設けられた開口部に挿入され、そして、舌状部分の端部が車両構造体の方に向けられた状態では、舌状部分は、車両構造体の反対側にある第2の開口部に挿入される。弓形の舌状部分が車両構造体の反対側に載置されているために、取付ブラケットは、クランプ面がクランプ力を加える状態で、車両構造体に載置される。このときのクランプ力は、舌状部分の形状およびばね弾性によって決定される。高いクランプ力が得られる場合には、舌状部分は、それに応じた堅固な構成を有さねばならず、その結果、舌状部分が、組立中にも、弾性的に変形しなければならないので、取付ブラケットを取り付けるのに比較的大きな力を加える必要があるという不具合につながる。この解決法によるさらに大きな不具合とは、取付ブラケットを取り付けるのに、特定の熟練した組立者が要求されることである。この理由は、舌状部分は、取付ブラケットを締結するために変形しなければならないだけでなく、さらに、大変な手間をかけて開口部に挿入しなければならず、次いで、舌状部分を、車両構造体の背面にあるアクセスしにくい開口部内に、弓形端部で固定しなければならないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許公開公報第1 502 824 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、このような締結は、特に、組立ライン上で車両を製造している場合、および車両内の窮屈な状態で組み立てる際に問題となり得る。
【0006】
この点を考慮して、本発明の目的は、取り付けるのが簡単で、かつ十分なクランプ力で車両構造体に取り付けられる、エアバッグ用の取付ブラケットおよび締結具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を備えた取付ブラケットと、請求項11の特徴を備えた締結具と、請求項13の特徴を備えたエアバッグとによって解決される。本発明の好ましい発展形態は、従属請求項から分かるであろう。
【0008】
本目的を解決するために、請求項1によると、取付ブラケットは、クランプ面を形成する少なくとも1つの第1層と、ばね弾性の作用で第1層から間隔の空いた第2層とから形成されていることと、
−第1および第2層は、車両構造体の同じ側に位置できることと、
−取付ブラケットは、締結手段によって車両構造体に締結できることと、
−第1層と第2層との間の距離は、締結手段で取付ブラケットを締結することによって、短くなることと、
−第1層と車両構造体との間に作用するクランプ力は、上記距離を短くすることによって、生成できることと
が提案される。
【0009】
本発明の基本的な概念は、クランプ面に作用するクランプ力が、ばね弾性の作用で間隔の空いた2層を備える取付ブラケットの完全に新規な構造によって生成され、これらの層は、車両構造体の同じ側に位置でき、締結手段が、取付ブラケットを締結することによって、層の間の距離を短くすることである。取付ブラケットのクランプ力は、第1および第2層を締結手段によって互いに押し付け、この互いに押し付けられた状態で、2層を締結手段によって車両構造体に固定することによって生成される。その結果、取付ブラケットを取り付けるのに圧縮力のみが加わる。この圧縮力は、2層が車両構造体の同じ側に位置しているがために、組立中は、車両構造体に作用する。この結果、取付ブラケットの取り扱いが著しく簡単になり、そのうえ、著しく大きなクランプ力を生成できるようになる。この理由は、組立中に圧縮力を利用するために、組立者側の熟練をさらに必要とせずに、組立力をより簡単に加えることができるからである。さらに、1つの層を有する取付ブラケット自体は、大変な手間をかけて車両構造体の開口部に挿入される必要がなく、車両構造体の背面に固定される必要がない。それによって、取付ブラケットの取り付けがさらに簡単になる。
【0010】
さらに、第1および第2層が、折り重ねた1つの層から形成されることが提案される。それゆえに、取付ブラケットは1つの層から作製することができ、2つの層は、単に、上記1つの層を折り重ねることによって提供される。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施形態は、第1および第2層が、片側で互いに接続されていることである。2つの層を片側で接続することによって、両方の層の間に作用するばね力を極めて簡単に生成できる可能性がもたらされる。この場合、接続部が片側のみに存在していることにより、2つの層が互いの方向に移動することが、他方の側におけるさらなる接続点によって、全く制限されないことが重要である。
【0012】
さらに、第1層と第2層との間の距離は、取付ブラケットが車両構造体に締結されていない状態において、取付ブラケットの片側から始まり、増加していくことが提案される。2つの層を互いに提案されたとおり配列することによって、2つの層を互いに引き寄せ、続いて、互いに対して、実質的に平行に、締結状態で載置するようにし、その結果、本発明によって生成された大きなクランプ力を、クランプ面を有する車両構造体に加えることができる。
【0013】
この場合、さらに、取付ブラケットが車両構造体に締結されていない状態における第1層と第2層との間の距離が、締結手段の領域内よりも、開口部の領域内の方が短いことが提案される。これによって、2つの層を締結手段の領域内で、より長い距離にわたって互いに引き寄せることにより、所望のクランプ力を生成することができる。一方で、挿入ストラップの領域内の層は、わずかではあるが、互いに対する位置を変化させ、これにより、締結によって、取付ブラケットを介してエアバッグに接続されたストラップにできるだけ小さいたるみが導入されるようにする。
【0014】
取付ブラケットについての構造上簡単な締結形態は、締結手段が、接続ウェブを介して取付ブラケットに接続された係止頭部から形成されている点と、係止頭部を車両構造体に位置する開口部に挿入し、回転運動を行うことによって、取付ブラケットが、クランプ式に車両構造体に固定できる点において見られる。
【0015】
この場合、さらに、第1および第2層がそれぞれ、接続ウェブを介して取付ブラケットに接続された係止頭部を備えていることと、係止頭部が車両構造体の開口部に一緒に挿入されることと、挿入後の係止頭部は、係止頭部によって、第1および第2層が、回転運動を行う際に互いに引き寄せられるように、位置決めされることとが提案される。挿入後の係止頭部は、例えば、取付ブラケットに対して僅かにずれて位置決めされる。その結果、係止頭部は、位置ずれのため、および係止頭部が車両構造体に載置されているために、回転運動の際に、互いに対して相対運動を行い、層を互いに引き寄せる。理想的な場合には、係止頭部は、一致するように、互いに平行に、締結後の車両構造体の他方の側に載置される。
【0016】
代替的に、取付ブラケットには、締結手段が挿入されうる開口部が設けられていることと、取付ブラケットは、取付ブラケットに対して回転運動を行う締結手段によって、車両構造体に固定できることとが提案される。この提案された解決法によって、取付ブラケット自体を回転させる必要がなく、締結手段だけを取付ブラケットに対して回転させればよい。取付ブラケットを狭い取付スペースに位置決めしなければならない場合、または、ストラップが挿入された状態で取付ブラケットを回転させることができない場合には、このような締結が適している。
【0017】
この場合には、係止セグメントが締結手段に設けられるべきである。締結手段が締結位置から意図せずに自動的にはずれることがないように、係止セグメントは、回転運動を行った後に、締結手段が逆方向に回転運動するのを防止する。
【0018】
取付ブラケット自体が回転中に締結手段と一緒に回転しないようにするために、さらに、第1層には、車両構造体に対して取付ブラケットが回転することを防ぐ係止輪郭部が設けられることが提案される。
【0019】
さらに、本目的を解決するために、請求項8から10のうちの1項による取付ブラケットを備えたエアバッグのための締結具が提案される。締結手段は係止頭部を備え、係止頭部は、取付ブラケットの長孔および車両構造体の長孔に挿入できる。締結手段は、回転運動を行うことによって、係止頭部と取付ブラケットとの間で車両構造体をクランプし、それによって、取付ブラケットを車両構造体に固定する。
【0020】
以下において、様々な実施形態に基づいて本発明をより詳細に説明する。図は以下を詳細に示している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】折り重ねる前の係止頭部付き取付ブラケットを示す。
【図2】折り重ねた後の係止頭部付き取付ブラケットの側面図を示す。
【図3】車両構造体に締結した後の係止頭部付き取付ブラケットの断面図を示す。
【図4】回転前の係止頭部付き取付ブラケットの上面図を示す。
【図5】回転後の係止頭部付き取付ブラケットの上面図を示す。
【図6】折り重ねる前の開口部付き取付ブラケットを示す。
【図7】回転前の、開口部および挿入後の締結手段付き取付ブラケットの断面図を示す。
【図8】回転後の、開口部および挿入後の締結手段付き取付ブラケットの断面図を示す。
【図9】回転前の、開口部および挿入後の締結手段付き取付ブラケットの上面図を示す。
【図10】回転後の、開口部および挿入後の締結手段付き取付ブラケットの上面図を示す。
【図11】折り重ねる前の取付ブラケットの開口部に挿入される締結手段を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、金属薄板からプレス部品として打ち抜かれた取付ブラケット1を示している。取付ブラケット1は、第1層12および第2層11から形成され、これらの層は、接続ウェブ20を介して互いに接続されている。締結手段22、23が、層11、12の自由端部に位置し、これらの締結手段は、接続ウェブ16、17を介して層11、12に接続された係止頭部18、19によって形成されている。さらに、開口部14、15が層11、12に設けられている。これらの開口部は、同一の形状であり、接続ウェブ20の折り目13に対して対称的に位置している。図1で示された状態では、取付ブラケット1はまだ折り重ねられておらず、1層のみから形成されている。しかし、誤解を避けるために、取付ブラケット1は、すでに第1層12と第2層11とに分かれている。
【0023】
図2は、折り重ねられた状態の図1と同じ取付ブラケット1を示している。第1の折り重ね工程において、第1層12および第2層11が、折り目13で折り曲げられ、第1層12および第2層11に折り重ねられた結果、全体的に2層の取付ブラケット1になる。続いて、係止頭部18、19が、2層の取付ブラケット1の片側にほぼ直角に、折り目27、26で曲げられる。あるいは、係止頭部18、19をまず折り目27、26で曲げ、次いで、第1層12および第2層11が互いに重なり合うように折り曲げられる。しかし、この場合、係止頭部18、19を取付ブラケット1の異なる側に曲げることにより、層11、12を折り重ねた後に係止頭部18、19が同じ方向を指すようにすることが重要である。明確に見られるように、第1層12と第2層11との間の距離「d」は、接続ウェブ20から始まって係止頭部18、19の方向に増加する。
【0024】
図3は、締結位置にある図1および図2と同じ取付ブラケット1の断面図を示している。ストラップ21が、開口部14、15を通って案内されている。このストラップはエアバッグ(図示せず)に接続されている。第1層および第2層を互いに重なり合うように折り曲げることによって、開口部14、15は互いに重なり合うようになり、それによって、ストラップ21を接続するための開口部を形成している。なお、ストラップ21の接触表面の大きい方の半径は、互いに重なり合う2層11、12によって提供される。係止頭部18、19および層11、12は、図2で示された位置と比べて、互いの方向に強く引き寄せられ、これにより、第1層12と第2層11との間でかなり大きなばね力が作用し、そして、第1層12は、クランプ力で車両構造体2に押し付けられる。クランプ力は、車両構造体2の他方の側に載置される係止頭部18、19によって、車両構造体2に導入されて、取付ブラケット1は、自動的に車両構造体2にクランプされるようになる。
【0025】
図4および5は、車両構造体2への締結前および締結後の図3の取付ブラケット1を示している。まず、取付ブラケット1は、係止頭部18、19が、車両構造体2の開口部30に挿入される。開口部30は、中央の円形セグメント32を備えた長孔31から形成されている。締結するためには、取付ブラケット1を、ブラケット1に垂直な仮想軸「Y」に対して矢印方向「A」または「C」に約90度、図5で示した位置まで回転させる。その結果、係止頭部18、19は、車両構造体2側に載置されるようになり、取付ブラケット1からそれる。取付ブラケット1の回転を可能にするために、層11、12は互いに押し付けられる。なお、層11、12を互いに引き寄せる過程は、係止頭部18、19によって支援されてもよく、および/または、交差することによって、回転運動中に、車両構造体2に垂直な係止頭部18、19のうちの少なくとも一方の相対運動に影響を与える、対応する傾斜面が設けられた車両構造体2の表面によって支援されてもよい。しかし、第1層12および第2層11は、単に手動で第2層11に圧力を加えることによって、互いに押し付けられてもよい。取付ブラケット1を回転した後、車両構造体2は、第1層12によって形成されるクランプ面と係止頭部18、19との間でクランプされる。取付ブラケット1の締結に関しては、係止頭部18、19を挿入するという簡単な方法に加えて、取付ブラケット1の第2層11に圧縮力を加えさえすればよく、組立工程の実行がかなり容易になり、扱いやすさゆえに、著しく大きなクランプ力が実現可能となる。
【0026】
図6は、本発明の代替的な実施形態を示している。ここでは、取付ブラケット1は、第1層12と、接続ウェブ20を介して第1層12に接続された第2層11とによって形成され、図1で示された実施形態の場合にもあるように、ストラップ21を挿入するために、開口部14、15が層11、12の表面に設けられている。さらに、開口部40、43が層11、12に設けられている。開口部40、43はそれぞれ、長孔44、42によって、幾何学的に同一の構成で形成され、それぞれ、中央の円形セグメント45、41を備えている。折り重ねられる前の製造中の図6の取付ブラケット1は、1層のみから形成されている。しかし、ここでは、この1層は、適切に、第1層12と第2層11とにすでに分けられている。次に、層11、12は、図7の断面図で見られるように、折り目13で互いに重なり合うように折り曲げられ、2層の取付ブラケット1となる。開口部14、15、40、43は、折り重ねられた状態で、互いに重なり合うようにして、層11および12に配置される。
【0027】
図7および8は、車両構造体2における折り重ねられた状態の取付ブラケット1を示している。係止輪郭部24、25が、車両構造体2に面する第1層12に設けられている。この係止輪郭部は、車両構造体2の開口部30に延在する2つの突条部によって形成されている。係止輪郭部は、取付ブラケット1が車両構造体2に対して回転するのを防止する。取付ブラケット1を車両構造体2に配置した後には、締結手段50が、互いに重ね合わされている開口部40、43、30に挿入される。締結手段50は、作動セグメント51と、接続ウェブ55を介して作動セグメント51に接続された係止頭部54とを備えている。接続ウェブ55の長さは、挿入後の締結手段50が、作動セグメント51を備えた取付ブラケット1よりも上に位置し、係止頭部54を備えた取付ブラケット1からそれて車両構造体2側に位置するように、寸法を合わせられる。図11で見られるように、締結手段50は、例えばプレス部品のような平らな要素から形成され、その構成は、作動セグメント51と係止頭部54と係止セグメント52とに分けられ、これらはそれぞれ、接続ウェブ53、55を介して互いに接続されている。締結手段50は、第1工程で、折り目57で折り曲げられて、係止セグメント52が作動セグメント51の上にほぼ重なるようになる。続いて、係止セグメント52が、折り目56で後方に曲げられて、係止セグメント52が締結手段50からほぼ直角に突き出る。図8は、折り重ねられた後の締結手段50の形態の断面図を示している。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態が、図7から10で示されているように、上向きの方向に、車両構造体2に対する相対的な取付位置に対して、折り目100で部分103を曲げている状態で見られる。このように、部分103は、車両構造体2とブラケット1との間にある距離を提供し、この距離によって、挿入されたストラップ21が、車両構造体2とブラケット1との間でクランプされないようになる。
【0029】
係止セグメント52を離れる方向に曲げることにより、係止セグメント52は、締結手段50の挿入運動中に、取付ブラケット1でドッグとして作用し、その結果、締結手段50が、図7で示された位置よりもさらに深くまで開口部40、43、30に挿入できなくなる。取付ブラケット1を締結するために、締結手段50は、図7で示された位置から回転する。係止突条部58が、第2層11の自由な上面に設けられている。この係止突条部によって、締結手段50は係止セグメント52と係合して、締結手段50は、締結位置まで回転した後に、自動的に逆回転できなくなる。係止セグメント52には、図7に示されているように、開口部101と、折り目102で上向きに曲げられる部分52aとが設けられている。締結手段50を回すと、図10に示されているように、係止突条部58が最終的に開口部101と係合するまで、係止セグメント52は、部分52aとともに、係止突条部58の上に移動する。曲げ部分52aは、先端で係止突条部58に当接し、そして、係止突条部58が開口部101に係合するまで、運動中に短時間、弾性的に係止セグメント52を持ち上げることによって回転運動を可能にする。
【0030】
図9および10は、締結手段50の上面図における締結過程を示している。締結手段50は、目視できない係止頭部54が作動セグメント51と位置合わせされた状態で、互いに重なり合っている開口部43、40と、車両構造体2の示された開口部30とに挿入される。締結手段50が、図7で示された断面図に対応する、図9で示された位置からブラケット1に垂直な仮想軸「Z」に対して矢印方向「B」に回転すると、取付ブラケット1が固定された状態での締結手段50は、係止頭部54がある位置に達する。この位置で、係止頭部54は、車両構造体2側に載置されるようになり、取付ブラケット1からそれる。次に、回転可能にするために、取付ブラケット1の第1および第2層12、11が互いに押し付けられる。層11、12は、締結手段50を介して、単に手動で互いに押し付けられてもよく、および/または、車両構造体2および/または作動セグメント51もしくは係止頭部54における、対応する傾斜面によって支援される方法で、互いに押し付けられてもよい。次に、締結位置では、車両構造体2と取付ブラケット1とが、作動セグメント51と係止頭部54との間でクランプされる。この場合、層11、12が同時に互いに押し付けられて、2層11、12間に存在する間隙の幅が狭くなり、そして、第1層12によって車両構造体2に加わるクランプ力は、大きくなる。図6から11に示された実施形態の実質的な利点は、取付ブラケット1自体を回転する必要がないことである。取付ブラケット1を締結するためには、例えば、ドアを施錠または開錠する場合など、誰もが毎日しているように、締結手段50を挿入および回転させるだけでよい。そのために特別な熟練は必要ない。そして、加えられる組立力は、締結手段50を介して集中させた圧縮力のみから成っている。この圧縮力は、車両構造体2上に作用し、第1層12および第2層11を互いに押し付けるのに必要とされる。
【0031】
締結手段50または締結手段22、23を回転した後、取付ブラケット1は、車両構造体2の開口部30内の位置にさらに移動することができる。その位置では、ストラップ21によって導入される潜在的な力が、車両構造体2により伝達されやすくなり、および/または、その位置においては、取付ブラケット1が、開口部30から意図せずに抜け出ることが防止される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグを車両構造体(2)に締結するための取付ブラケット(1)において、
エアバッグに接続されたストラップ(21)が挿入される開口部(14、15)と;車両構造体(2)に載置されるように設けられたクランプ面とを備え、
前記取付ブラケット(1)は、前記クランプ面を形成する少なくとも1つの第1層(12)と、ばね弾性の作用で、前記第1層(12)から間隔の空いた第2層(11)とから形成され、
前記第1および第2層(12、11)は、前記車両構造体(2)の同じ側に配置可能であり、
前記取付ブラケット(1)は、締結手段(22、23、50)によって前記車両構造体(2)に締結可能であり、
前記第1層と第2層(12、11)の間の距離は、前記締結手段(22、23、50)で前記取付ブラケット(1)を締結することによって短くなり、
前記第1層(12)と前記車両構造体(2)との間に作用するクランプ力は、前記距離を短くすることによって生成可能に構成されたことを特徴とする取付ブラケット(1)。
【請求項2】
前記第1および第2層(12、11)は、折り重ねられた1つの層から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項3】
前記第1および第2層(12、11)が片側で互いに接続されていることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項4】
前記第1層と第2層(12、11)の間の距離(d)は、前記取付ブラケット(1)が前記車両構造体(2)に締結されていない状態において、前記取付ブラケット(1)の片側から始まり、増加していくことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項5】
前記取付ブラケット(1)が前記車両構造体(2)に締結されていない状態にある前記第1層と第2層(12、11)の間の距離(d)が、前記締結手段(22、23、50)の領域内よりも、前記開口部(14、15)の領域内の方が短いことを特徴とする、請求項4に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項6】
前記締結手段(22、23)は、接続ウェブ(16、17)を介して前記取付ブラケット(1)に接続された係止頭部(18、19)から形成されていることと、前記係止頭部(18、19)を、前記車両構造体(2)に位置する開口部(30)に挿入し、回転運動を行うことによって、前記取付ブラケット(1)が、クランプ式に、前記車両構造体(2)に固定できることとを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項7】
前記第1および第2層(12、11)がそれぞれ、接続ウェブ(16、17)を介して前記取付ブラケット(1)に接続された係止頭部(18、19)を備えていることと、前記係止頭部(18、19)が前記車両構造体(2)の前記開口部(30)に一緒に挿入されることと、前記開口部(30)に挿入された後の前記係止頭部(18、19)は、前記係止頭部(18、19)によって、前記第1および第2層(12、11)が、回転運動を行う際に互いに引き寄せられるように、位置決めされることとを特徴とする、請求項6に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項8】
前記締結手段(50)が挿入されうる開口部(44、40)が、前記取付ブラケット(1)に設けられていることと、前記取付ブラケット(1)は、前記取付ブラケット(1)に対して回転運動を行う前記締結手段(50)によって、前記車両構造体(2)に固定できることとを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項9】
係止セグメント(52)が前記締結手段(50)に設けられ、この係止セグメントは、回転運動を行った後に、前記締結手段(50)が逆方向に回転運動するのを防止することを特徴とする、請求項8に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項10】
前記第1層(12)には、前記車両構造体(2)に対して前記取付ブラケット(1)が回転するのを防止する係止輪郭部(24、25)が設けられることを特徴とする、請求項8または9に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)を備えたエアバッグのための締結具であって、前記締結手段(50)は係止頭部(54)を備え、前記係止頭部(54)は、前記取付ブラケット(1)の前記開口部(40、43)と前記車両構造体(2)の前記開口部(30)とに挿入されうることと、前記締結手段(50)は、前記回転運動を行うことによって、前記係止頭部(54)と前記取付ブラケット(1)との間で前記車両構造体(2)をクランプし、それによって、前記取付ブラケット(1)を前記車両構造体(2)に固定することを特徴とする、締結具。
【請求項12】
前記開口部(30)は、長孔として前記車両構造体(2)に形成されていることと、前記取付ブラケット(1)は、長手方向に移動可能な方法で、前記長孔内に位置決めされることとを特徴とする、請求項11に記載の締結具。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)または請求項11または12に記載の締結具を備えた、エアバッグ。
【請求項1】
エアバッグを車両構造体(2)に締結するための取付ブラケット(1)において、
エアバッグに接続されたストラップ(21)が挿入される開口部(14、15)と;車両構造体(2)に載置されるように設けられたクランプ面とを備え、
前記取付ブラケット(1)は、前記クランプ面を形成する少なくとも1つの第1層(12)と、ばね弾性の作用で、前記第1層(12)から間隔の空いた第2層(11)とから形成され、
前記第1および第2層(12、11)は、前記車両構造体(2)の同じ側に配置可能であり、
前記取付ブラケット(1)は、締結手段(22、23、50)によって前記車両構造体(2)に締結可能であり、
前記第1層と第2層(12、11)の間の距離は、前記締結手段(22、23、50)で前記取付ブラケット(1)を締結することによって短くなり、
前記第1層(12)と前記車両構造体(2)との間に作用するクランプ力は、前記距離を短くすることによって生成可能に構成されたことを特徴とする取付ブラケット(1)。
【請求項2】
前記第1および第2層(12、11)は、折り重ねられた1つの層から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項3】
前記第1および第2層(12、11)が片側で互いに接続されていることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項4】
前記第1層と第2層(12、11)の間の距離(d)は、前記取付ブラケット(1)が前記車両構造体(2)に締結されていない状態において、前記取付ブラケット(1)の片側から始まり、増加していくことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項5】
前記取付ブラケット(1)が前記車両構造体(2)に締結されていない状態にある前記第1層と第2層(12、11)の間の距離(d)が、前記締結手段(22、23、50)の領域内よりも、前記開口部(14、15)の領域内の方が短いことを特徴とする、請求項4に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項6】
前記締結手段(22、23)は、接続ウェブ(16、17)を介して前記取付ブラケット(1)に接続された係止頭部(18、19)から形成されていることと、前記係止頭部(18、19)を、前記車両構造体(2)に位置する開口部(30)に挿入し、回転運動を行うことによって、前記取付ブラケット(1)が、クランプ式に、前記車両構造体(2)に固定できることとを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項7】
前記第1および第2層(12、11)がそれぞれ、接続ウェブ(16、17)を介して前記取付ブラケット(1)に接続された係止頭部(18、19)を備えていることと、前記係止頭部(18、19)が前記車両構造体(2)の前記開口部(30)に一緒に挿入されることと、前記開口部(30)に挿入された後の前記係止頭部(18、19)は、前記係止頭部(18、19)によって、前記第1および第2層(12、11)が、回転運動を行う際に互いに引き寄せられるように、位置決めされることとを特徴とする、請求項6に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項8】
前記締結手段(50)が挿入されうる開口部(44、40)が、前記取付ブラケット(1)に設けられていることと、前記取付ブラケット(1)は、前記取付ブラケット(1)に対して回転運動を行う前記締結手段(50)によって、前記車両構造体(2)に固定できることとを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項9】
係止セグメント(52)が前記締結手段(50)に設けられ、この係止セグメントは、回転運動を行った後に、前記締結手段(50)が逆方向に回転運動するのを防止することを特徴とする、請求項8に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項10】
前記第1層(12)には、前記車両構造体(2)に対して前記取付ブラケット(1)が回転するのを防止する係止輪郭部(24、25)が設けられることを特徴とする、請求項8または9に記載の取付ブラケット(1)。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)を備えたエアバッグのための締結具であって、前記締結手段(50)は係止頭部(54)を備え、前記係止頭部(54)は、前記取付ブラケット(1)の前記開口部(40、43)と前記車両構造体(2)の前記開口部(30)とに挿入されうることと、前記締結手段(50)は、前記回転運動を行うことによって、前記係止頭部(54)と前記取付ブラケット(1)との間で前記車両構造体(2)をクランプし、それによって、前記取付ブラケット(1)を前記車両構造体(2)に固定することを特徴とする、締結具。
【請求項12】
前記開口部(30)は、長孔として前記車両構造体(2)に形成されていることと、前記取付ブラケット(1)は、長手方向に移動可能な方法で、前記長孔内に位置決めされることとを特徴とする、請求項11に記載の締結具。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1項に記載の取付ブラケット(1)または請求項11または12に記載の締結具を備えた、エアバッグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−519618(P2012−519618A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552340(P2011−552340)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001002
【国際公開番号】WO2010/099871
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(510136301)オートリブ ディベロップメント エービー (46)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001002
【国際公開番号】WO2010/099871
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(510136301)オートリブ ディベロップメント エービー (46)
【Fターム(参考)】
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