説明

取付部材

【課題】取付部の位置がばらついた場合にも、係合爪を取付部に確実に係合させることができる取付部材を得る。
【解決手段】プロテクタ10をラジエータサポートサイドに取付ける際に、下弾性脚部42を構成する弾性脚部70の車幅方向内側弾性脚部70Cがアンダーパネルの車幅方向外側縁部と摺動するようになっている。このため、車幅方向内側弾性脚部70Cが先端部70Aを起点にして、車幅外側方向へ弾性変形することで、弾性脚部70の車幅方向内側弾性脚部70Cに形成した係合爪80の位置を、アンダーパネルの車幅方向外側縁部と確実に係合する位置へ移動することができるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部材に形成された取付部に係合される係合爪を備えた取付部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の取付部材として、例えば、特許文献1に示すものが知られている。この取付部材では、バンパー取付具をサイドアウターパネルの取付面に固定する際に、係合爪の傾斜面がホイルハウスインナーパネルの下縁部と当って撓み、下縁部を通過すると係合爪が復帰して、ホイルハウスインナーパネルの取付部に係合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−262919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような取付部材では、サイドアウターパネルの取付部の位置がばらついた場合に、バンパー取付具に形成した複数の係合部を、それぞれの取付部に係合させることができない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、取付部の位置がばらついた場合にも、係合爪を取付部に確実に係合させることができる取付部材を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、被取付部材に形成された取付部に係合される係合爪を備えた取付部材であって、前記係合爪は、前記取付部と摺動することで弾性変形可能とされた弾性脚部に形成されている。
【0007】
請求項1に記載の発明の取付部材では、取付部材を被取付部材に取付ける際に、取付部材の弾性脚部が、被取付部材に形成された取付部と摺動し弾性変形する。このため、取付部の位置がばらついた場合にも、弾性脚部の弾性変形によって、弾性脚部に形成された係合爪の位置が取付部の位置に移動する。このため、取付部の位置がばらついた場合にも、係合爪を取付部に確実に係合させることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の取付部材において、前記弾性脚部は、先端が折り曲げられ両端部が前記取付部材から立設された板状とされている。
【0009】
請求項2に記載の発明の取付部材では、弾性脚部を先端が折り曲げられ両端部が取付部材から立設された板状とするため、簡単な構造で取付部の位置がばらついた場合にも、係合爪を取付部に確実に係合させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の取付部材において、前記弾性脚部は、前記取付部材との接続部が円弧状の湾曲部となっている。
【0011】
請求項3に記載の発明の取付部材では、弾性脚部における取付部材からの接続部が円弧状の湾曲部となっているため、この湾曲部を起点にして弾性脚部が容易に弾性変形する。
【0012】
請求項4に記載の発明は請求項1〜3の何れか1項に記載の取付部材において、前記係合爪は、前記弾性脚部の先端側を中心に揺動可能に形成されている。
【0013】
請求項4に記載の発明の取付部材では、取付部材を被取付部材に取付ける際に、取付部材の弾性脚部が、被取付部材に形成された取付部と摺動し弾性変形する。この際、係合爪は弾性脚部の先端側に設けた揺動中心側から被取付部材に形成された取付部と摺動し揺動する。このため、弾性脚部の弾性変形に追従して係合爪を揺動させることで、係合爪を取付部に円滑に係合させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は請求項1〜4の何れか1項に記載の取付部材は、前記取付部に係合し、位置決めの基準となる位置決め用係合爪を有する。
【0015】
請求項5に記載の発明の取付部材では、取付部材を被取付部材に取付ける際に、取付部材の位置決め用係合爪が被取付部材の取付部に係合して、取付部材の被取付部材への位置決めの基準となる。従って、取付部の位置がばらついた場合にも、位置決め用係合爪が係合する取付部を基準にして、他の係合爪を取付部に確実に係合させることができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の本発明の取付部材は、上記構成としたので、取付部の位置がばらついた場合にも、係合爪を取付部に確実に係合させることができる。
【0017】
請求項2に記載の本発明の取付部材は、上記構成としたので、簡単な構造で取付部の位置がばらついた場合にも、係合爪を取付部に確実に係合させることができる。
【0018】
請求項3に記載の本発明の取付部材は、上記構成としたので、湾曲部を起点にして弾性脚部を容易に弾性変形させることができる。
【0019】
請求項4に記載の本発明の取付部材は、上記構成としたので、係合爪を取付部に円滑に係合させることができる。
【0020】
請求項5に記載の本発明の取付部材は、上記構成としたので、取付部の位置がばらついた場合にも、位置決め用係合爪が係合する取付部を基準にして、他の係合爪を取付部に確実に係合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る取付部材の下係合爪を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る取付部材の上係合爪を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る取付部材を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る取付部材を示す正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る取付部材を示す側面図である。
【図6】図4の6−6断面線に沿った断面図である。
【図7】図4の7−7断面線に沿った断面図である。
【図8】図5の8−8断面線に沿った断面図である。
【図9】図5の9−9断面線に沿った断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る取付部材と被取付部材とを示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る取付部材と被取付部材とを示す分解斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る取付部材が適用された車体前部を示す斜視図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る取付部材の下係合爪を示す斜視図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係る取付部材の下係合爪を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る取付部材について図1〜図12に従って説明する。なお、図中矢印FRは本実施形態の取付部材としてのプロテクタ10が取付けられる自動車車体の車体前方方向を、矢印UPは車体上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
【0023】
図12に示すように、本実施形態における取付部材としてのプロテクタ10は、自動車車体11が前面衝突した際の衝撃を車体のフロアパネルに伝えるための部品であって、被取付部材としてのラジエータサポートサイド12に取付けられている。なお、ラジエータサポートサイド12は図示を省略したラジエータを支持し、略枠状に構成されたラジエータサポート14の車幅方向両端部を構成している。また、ラジエータサポート14は、自動車車体11の前端部に車幅方向に沿って配置されたフロントバンパリインフォース18の車体後方側に配置されている。
【0024】
図11に示すように、ラジエータサポートサイド12は複数の板材によって構成されており、ラジエータサポートサイド12におけるプロテクタ10の取付部は、取付面を車体前方側に向けたアッパパネル20とアンダーパネル22とで構成されている。アッパパネル20の上部は垂直面20Aとなっており、アッパパネル20の下部は垂直面20Aの下端から車体前方下側に向かって傾斜した取付面20Bとなっている。また、アッパパネル20の取付面20Bの下端部は車体下方に向かって屈曲されたフランジ20Cとなっている。
【0025】
一方、アンダーパネル22の取付面22Aは垂直面となっており、アンダーパネル22の取付面22Aの上端部は、アッパパネル20のフランジ20Cにおける下端部の裏面に溶接等により固定されている。
【0026】
アッパパネル20の取付面20Bの中央部には、取付部としての円形の取付孔28が形成されており、アッパパネル20の取付面20Bにおける取付孔28の周縁部30は、垂直面となっている。また、アッパパネル20の取付面20Bにおける車幅方向外側縁部20Dと、アンダーパネル22の取付面22Aにおける車幅方向外側縁部22Cとがそれぞれ取付部となっている。
【0027】
図10に示すように、プロテクタ10は、ラジエータサポートサイド12の取付部に車体前方側から取付けられている。
【0028】
(プロテクタの説明)
図3及び図4に示すように、プロテクタ10は車体前方から見た形状が略矩形状の基部10Aを備えており、基部10Aの外周部には車体前後方向に突出した補強用の上リブ10B、下リブ10C、車幅方向外側リブ10D及び車幅方向内側リブ10Eが形成されている。また、プロテクタ10の基部10Aには、上リブ10Bから下リブ10Cに達する複数の縦リブ10Fが車幅方向に間隔を開けて車体前後方向に突出形成されている。さらに、プロテクタ10の基部10Aには、車幅方向外側リブ10Dから車幅方向内側リブ10Eに達する複数の横リブ10Gが車体上下方向に間隔を開けて車体前後方向に突出形成されている。
【0029】
図3に示すように、プロテクタ10における車幅方向内側上部となる位置には、位置決め用係合爪40が車体後方へ向かって突出形成されている。また、プロテクタ10における車幅方向外側端下部となる位置には、弾性脚部の一つとしての下弾性脚部42が車体後方へ向かって突出形成されており、プロテクタ10における車幅方向外側端上部となる位置には、弾性脚部の一つとしての上弾性脚部44が車体後方へ向かって突出形成されている。
【0030】
また、プロテクタ10の上リブ10Bにおける車幅方向内側端部となる位置には、突出部46が形成されている。この突出部46は車幅方向に沿った上部46Aと、上部46Aの車幅方向外側端から車幅方向外側下方に向かって伸び上リブ10Bに連結された傾斜部46Bとを備えている。また、図5に示すように、突出部46の上部46Aの後端からは車体後側下方に向かって伸びる傾斜部46Cが形成されている。
【0031】
図4に示すように、プロテクタ10における車幅方向内側部の上下方向中間部には、切欠48が形成されている。この切欠48は上下方向を長手方向とする長方形状となっており、車幅方向外側の上下の角部48A、48Bは湾曲形状とされている。
【0032】
また、プロテクタ10の下リブ10Cにおける位置決め用係合爪40の下方となる部位には、車体下方へ向かって凸部50が形成されている。この凸部50は車幅方向を長手方向とする長方形状となっており、図5に示すように、車体後方側面50Aが車体後方上側から車体前方下側へ向かう傾斜面となっている。
【0033】
図3に示すように、位置決め用係合爪40は、縦リブ10Fと横リブ10Gとの交差部に形成された座部54に形成されている。また、図4に示すように、座部54は外周部54Aがリブで構成された前後方向に沿った筒形状とされている。
【0034】
図3に示すように、座部54の後端部には、上壁部54Bと下壁部54Cとが車幅方向に伸びるスリット56を挟んで形成されている。なお、図7に示すように、座部54の上壁部54Bと下壁部54Cは、アッパパネル20の取付面20Bにおける取付孔28の周縁部30に当接するようになっている。
【0035】
図5に示すように、位置決め用係合爪40は先頭形状の先端部(後端部)60の上部から前方に向かって延設された上脚部62と、先端部60の下部から前方に向かって延設された下脚部64と、を備えている。なお、上脚部62は先端部60から車体前方上側に向かって傾斜した傾斜部62Aと、傾斜部62Aから車体前方に伸びる根元部62Bとからなり、根元部62Bの先端(前端)が座部54の上壁部54Bに連結されている。また、下脚部64は先端部60から車体前方下側に向かって傾斜した傾斜部64Aと、傾斜部64Aから車体前方に伸びる根元部64Bとからなり、根元部64Bの先端(前端)が座部54の下壁部54Cに連結されている。
【0036】
図6に示すように、位置決め用係合爪40は先端部60の車幅方向外側から車幅方向外側前方に向かって延設された外側爪部66と、先端部60の車幅方向内側から車幅方向内側前方に向かって延設された内側爪部68と、を備えている。また、これらの外側爪部66と内側爪部68とは互いに接離する方向(図6の矢印A方向と矢印B方向)とへ弾性変形可能となっている。
【0037】
従って、プロテクタ10をラジエータサポートサイド12に取付ける際に、外側爪部66と内側爪部68は、アッパパネル20に形成した取付孔28の内周部と摺動し、互いに接近する方向(図6の矢印A方向)へ弾性変形して、取付孔28を通過するようになっている。一方、外側爪部66と内側爪部68は、取付孔28を通過すると互いに離間する方向(図6の矢印B方向)へ弾性変形して、外側爪部66と内側爪部68の各先端部が、取付孔28の周縁部30に係合するようになっている。
【0038】
次に、下弾性脚部42について説明する。
図1に示すように、下弾性脚部42を構成する弾性脚部70は、プロテクタ10の基部10Aからループ状に立設された板状となっており、弾性脚部70の先端部(後端部)70AはV字状に折り曲げられている。また、先端部70Aの車幅方向外側からは車幅方向外側脚部70Bが車体前方へ向かって延設されており、車幅方向外側脚部70Bの前端部は車幅方向外側リブ10Dに連結されている。一方、弾性脚部70の先端部70Aの車幅方向内側からは車幅方向内側脚部70Cが車幅方向内側前方へ向かって延設されている。
【0039】
また、車幅方向内側脚部70Cにおける先端部70A側の部分は、先端部70Aの車幅方向内側から車幅内側前方へ向かって傾斜した傾斜壁部70Dとなっている。一方、車幅方向内側脚部70Cにおけるプロテクタ10の基部10A側の部位は接続部70Eとなっており、接続部70Eの端部は車幅方向外側後方から車幅方向内側前方へ向かう円弧状の湾曲部70Kとなっている。また、傾斜壁部70Dからは、車体前方へ向かって縦壁部70Fが形成されており、縦壁部70Fと接続部70Eとの境には、車幅方向外側後方から車幅方向内側前方へ向かって傾斜部70Gが形成されている。
【0040】
従って、図11に示すように、プロテクタ10をラジエータサポートサイド12に取付ける際に、図8に示すアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cに下弾性脚部42を構成する弾性脚部70が当接すると、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cの傾斜壁部70Dがアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cと摺動して、車幅方向内側脚部70Cが先端部70Aを起点にして、車幅外側方向(図8の矢印C方向)へ弾性変形するようになっている。
【0041】
図1に示すように、プロテクタ10の基部10Aにおける、車幅方向外側脚部70Bが連結された車幅方向外側リブ10Dと、弾性脚部70の接続部70Eの根元と、の間となる部位には、矩形状の切欠72が形成されている。また、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cにおける傾斜壁部70D、縦壁部70F、傾斜部70G及び接続部70Eの幅方向中間部(上下方向中間部)には、車体前後方向に伸びる帯状の切欠74が形成されている。切欠74の前端74Aはプロテクタ10の基部10Aに食い込んでおり、切欠74の後端74Bは弾性脚部70の先端部70Aの近傍に達している。また、切欠74の後端74Bにおける幅方向中央部からは、係合爪80が車体前方へ向かって突出形成されている。即ち、係合爪80の幅方向両端部には、スリット状に切欠74が形成されている。
【0042】
図3に示すように、係合爪80の基部81の根元部81Aは、先端部70Aの近傍に連結されており、係合爪80は基部81の根元部81Aを起点にして車幅外側方向(図8の矢印D方向)と車幅内側方向(図8の矢印E方向)とへ揺動可能となっている。また、図1に示すように、係合爪80の基部81の幅方向中央部には、係合爪80の爪部82が車幅方向内側に向かって突出形成されている。
【0043】
図8に示すように、爪部82は車体上下方向から見た形状が三角形となっており、基部81の根元部81Aから車幅方向内側に向かって高さH1が徐々に高くなっている。また、係合爪80の基部81の車体上下方向から見た形状は、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cにおける傾斜壁部70D、縦壁部70F及び傾斜部70Gに沿った形状となっており、基部81の先端部(前端部)は、爪部82の前端82Aの車幅方向外側端部から車体前方へ向かって伸びた係合部81Bとなっている。
【0044】
図11に示すように、プロテクタ10をラジエータサポートサイド12に取付ける際に、アンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cに図8に示す係合爪80の爪部82が当接すると、爪部82がアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cと摺動して、係合爪80が基部81の根元部81Aを起点にして、車幅外側方向(図8に矢印D方向)へ弾性変形するようになっている。一方、係合爪80は、爪部82がアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cを通過すると車幅内側方向(図8の矢印E方向)へ弾性変形して、爪部82の前端82Aがアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cの後面側に係合し、係合部81Bがアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cのエッジに係合するようになっている。
【0045】
従って、下弾性脚部42を構成する弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cが先端部70Aを起点にして、車幅外側方向へ弾性変形することで、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cに形成した係合爪80の位置を、アンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cと確実に係合する位置へ移動することができるようになっている。
【0046】
次に、上弾性脚部44について説明する。
なお、上弾性脚部44を構成する弾性脚部70については下弾性脚部42と同じためその説明を省略する。
【0047】
図11に示すように、プロテクタ10をラジエータサポートサイド12に取付ける際に、アッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dに図9に示す上弾性脚部44が当接すると、上弾性脚部44を構成する弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cの傾斜壁部70Dがアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dと摺動して、車幅方向内側脚部70Cが先端部70Aを起点にして、車幅外側方向(図2に矢印C方向)へ弾性変形するようになっている。
【0048】
また、弾性脚部70における縦壁部70F、傾斜部70G及び接続部70Eの幅方向中間部(上下方向中間部)には、前後方向に伸びる帯状の切欠84が形成されている。切欠84の前端84Aはプロテクタ10の基部10Aに食い込んでおり、切欠84の後端84Bは傾斜壁部70Dの近傍に達している。また、切欠84の後端84Bにおける幅方向中央部からは、係合爪90が車体前方へ向かって突出形成されている。即ち、係合爪90の幅方向両端部には、スリット状に切欠84が形成されている。
【0049】
図3に示すように、係合爪90の基部91の根元部91Aは、傾斜壁部70Dの近傍に連結されており、係合爪90は基部91の根元部91Aを起点にして車幅外側方向(図9の矢印D方向)と車幅内側方向(図9の矢印E方向)とへ揺動可能となっている。
【0050】
図2に示すように、係合爪80の基部81の幅方向両端には、一対の爪部92が車幅方向内側に向かって突出形成されている。
【0051】
図9に示すように、爪部92は車体上下方向から見た形状が三角形となっており、基部91の根元部91Aから車幅方向内側に向かって高さが徐々に高くなっている。また、係合爪90の基部91の車体上下方向から見た形状は、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cにおける縦壁部70F及び傾斜部70Gに沿った形状となっており、基部91の先端部(前端部)は、爪部92の前端92Aの車幅方向外側端部から前方へ向かって伸びた係合部91Bとなっている。
【0052】
図11に示すように、プロテクタ10をラジエータサポートサイド12に取付ける際に、図9に示すアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dに係合爪90の爪部92が当接すると、爪部92がアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dと摺動して、係合爪90が基部91の根元部91Aを起点にして、車幅外側方向(図9に矢印D方向)へ弾性変形するようになっている。一方、係合爪90は、爪部92がアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dを通過すると車幅内側方向(図9の矢印E方向)へ弾性変形して、爪部92の前端92Aがアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dの後面側に係合し、係合部91Bがアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dのエッジに係合するようになっている。
【0053】
従って、上弾性脚部44においても下弾性脚部42と同様に上弾性脚部44を構成する弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cが先端部70Aを起点にして、車幅外側方向へ弾性変形することで、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cに形成した係合爪90の位置を、アッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dと確実に係合する位置へ移動することができるようになっている。
【0054】
(作用・効果)
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0055】
図11に示すように、プロテクタ10をラジエータサポートサイド12に取付ける際には、プロテクタ10をラジエータサポートサイド12の取付部に向かって、車体前方から車体後方(図11の矢印F)方向へ移動することで、プロテクタ10に形成された位置決め用係合爪40がアッパパネル20に形成された取付孔28に係合する。また、プロテクタ10に形成された下弾性脚部42がアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cに係合し、プロテクタ10に形成された上弾性脚部44がアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dに係合する。
【0056】
このとき、本実施形態では、図6に示すように、プロテクタ10に形成された位置決め用係合爪40における外側爪部66と内側爪部68とが、ラジエータサポートサイド12のアッパパネル20に形成した取付孔28の内周部と摺動し、互いに接近する方向(図6の矢印A方向)へ弾性変形して、取付孔28を通過する。一方、外側爪部66と内側爪部68は、取付孔28を通過すると互いに離間する方向(図6の矢印B方向)へ弾性変形して、外側爪部66と内側爪部68の各先端部が、取付孔28の周縁部30に係合する。
【0057】
また、図8に示す下弾性脚部42を構成する弾性脚部70がアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cに当接し、車幅方向内側脚部70Cの傾斜壁部70Dがアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cと摺動する。このため、車幅方向内側脚部70Cが先端部70Aを起点にして、車幅外側方向(図8の矢印C方向)へ弾性変形する。
【0058】
さらに、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cに形成した係合爪80の爪部82がアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cに当接し、係合爪80の爪部82がアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cと摺動する。このため、係合爪80が基部81の根元部81Aを起点にして、車幅外側方向(図8に矢印D方向)へ弾性変形する。
【0059】
従って、下弾性脚部42を構成する弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cが先端部70Aを起点にして、車幅外側方向へ弾性変形することで、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cに形成した係合爪80の位置を、アンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cと確実に係合する位置へ移動することができる。
【0060】
一方、係合爪80は、爪部82がアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cを通過すると車幅内側方向(図8の矢印E方向)へ弾性変形して、係合爪80の爪部82の前端82Aがアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cの後面側に係合し、基部81の係合部81Bがアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cのエッジに係合する。
【0061】
また、図9に示す上弾性脚部44を構成する弾性脚部70がアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dに当接し、車幅方向内側脚部70Cの傾斜壁部70Dがアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dと摺動する。このため、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cが先端部70Aを起点にして、車幅外側方向(図9の矢印C方向)へ弾性変形する。
【0062】
さらに、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cに形成した係合爪90の爪部92が、アッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dに当接すると、爪部92がアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dと摺動して、係合爪90が基部91の根元部91Aを起点にして、車幅外側方向(図9に矢印D方向)へ弾性変形する。
【0063】
従って、上弾性脚部44を構成する弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cが先端部70Aを起点にして、車幅外側方向へ弾性変形することで、弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cに形成した係合爪90の位置を、アッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dと確実に係合する位置へ移動することができる。
【0064】
一方、係合爪90は、爪部92がアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dを通過すると車幅内側方向(図9の矢印E方向)へ弾性変形して、係合爪90の爪部92の前端92Aがアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dの後面側に係合し、基部91の係合部91Bがアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dのエッジに係合する。
【0065】
このため、本実施形態では、アッパパネル20の取付孔28に対して、アッパパネル20に溶接等により固定されているアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cの位置が車幅方向にばらついた場合にも、図1に示すように、下弾性脚部42を構成する弾性脚部70の車幅方向内側脚部70Cが車幅外側方向(図1の矢印C方向)へ弾性変形することで、弾性脚部70に形成された係合爪80の位置がアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cの位置に移動する。
【0066】
この結果、アッパパネル20の取付孔28に対して、アンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cの位置が車幅方向にばらついた場合にも、下弾性脚部42の係合爪80をアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cに確実に係合させることができる。また、上弾性脚部44の係合爪90についても同様にアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dに確実に係合させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、下弾性脚部42及び上弾性脚部44が先端が折り曲げられ両端部がプロテクタ10から立設された板状とされている。このため、簡単な構造で取付部の位置がばらついた場合にも、下弾性脚部42の係合爪80及び上弾性脚部44の係合爪90を取付部に確実に係合させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、下弾性脚部42及び上弾性脚部44の車幅方向内側脚部70Cの前端部がプロテクタ10の基部10Aとの接続部70Eとなっており、接続部70Eの前部は車幅方向外側後方から車幅方向内側前方へ向かう円弧状の湾曲部70Kとなっている。このため、湾曲部70Kを起点にして車幅方向内側脚部70Cが容易に弾性変形する。
【0069】
また、本実施形態では、下弾性脚部42及び上弾性脚部44を構成する弾性脚部70に設けた係合爪80、90の基部81、91が、弾性脚部70の先端部70A側に設けた揺動中心側から車幅外側方向(図8及び図9の矢印D方向)へ揺動する。このため、車幅方向内側脚部70Cの弾性変形に追従して係合爪80、90が揺動することで、係合爪80をアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cに円滑に係合させることができると共に係合爪90をアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dに円滑に係合させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、プロテクタ10に設けた位置決め用係合爪40がアッパパネル20の取付孔28に係合する。このため、位置決め用係合爪40が係合する取付孔28を基準にして、下弾性脚部42に設けた係合爪80をアンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cに確実に係合させることができると共に、上弾性脚部44に設けた係合爪90をアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dに確実に係合させることができる。
【0071】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、図13に示すように、下弾性脚部42(または上弾性脚部44)を構成する弾性脚部70の車幅方向外側脚部70Bの形状を、車幅方向内側脚部70Cの対称形状に代えてもよい。また、図14に示すように、下弾性脚部42(または上弾性脚部44)を構成する弾性脚部70の車幅方向外側脚部70Bの車幅方向外側に、車幅方向内側脚部70Cと対称形状となる新たな車幅方向外側弾性脚部70Hを追加した構成としてもよい。
【0072】
また、プロテクタ10に設けた下弾性脚部42または上弾性脚部44が係合する部位は、アンダーパネル22の車幅方向外側縁部22Cやアッパパネル20の車幅方向外側縁部20Dに限定されず、ラジエータサポートサイド12に形成された、開口部、孔等の他の係合部であってもよい。
【0073】
また、下弾性脚部42または上弾性脚部44を構成する弾性脚部70が弾性変形する方向は、上記実施形態における車幅方向(左右方向)に限定されず、車体上下方向等の他の方向としてもよい。さらには、上下左右(2次元方向)に弾性変形する構成としてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、取付部材としてのプロテクタ10に位置決め用係合爪40、下弾性脚部42及び上弾性脚部44を設けたが、位置決め用係合爪40を設けない構成としてもよいし、係合爪の数も上記実施形態に限定されない。
【0075】
また、本発明の取付部材は、被取付部材としてのラジエータサポートサイド12に取付けられるプロテクタ10に限定されず、ラジエータサポートサイド12以外の被取付部材に取付けられるプロテクタ10以外の取付部材にも適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 プロテクタ(取付部材)
12 ラジエータサポートサイド(被取付部材)
20 ラジエータサポートサイドのアッパパネル
20D アッパパネルの車幅方向外側縁部(取付部)
22 ラジエータサポートサイドのアンダーパネル
22C アンダーパネルの車幅方向外側縁部(取付部)
28 アッパパネルの取付孔
40 位置決め用係合爪
42 下弾性脚部
44 上弾性脚部
70 弾性脚部
70A 弾性脚部の先端部
70B 弾性脚部の車幅方向外側脚部
70C 弾性脚部の車幅方向内側脚部
70K 弾性脚部の湾曲部
80 係合爪
81 係合爪の基部
81A 係合爪の基部の根元部
81B 係合爪の基部の係合部
82 係合爪の爪部
90 係合爪
91 係合爪の基部
91A 係合爪の基部の根元部
91B 係合爪の基部の係合部
92 係合爪の爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に形成された取付部に係合される係合爪を備えた取付部材であって、
前記係合爪は、前記取付部と摺動することで弾性変形可能とされた弾性脚部に形成されている取付部材。
【請求項2】
前記弾性脚部は、先端が折り曲げられ両端部が前記取付部材から立設された板状とされている請求項1に記載の取付部材。
【請求項3】
前記弾性脚部は、前記取付部材との接続部が円弧状の湾曲部となっている請求項1または請求項2に記載の取付部材。
【請求項4】
前記係合爪は、前記弾性脚部の先端側を中心に揺動可能に形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の取付部材。
【請求項5】
前記取付部に係合し、位置決めの基準となる位置決め用係合爪を有する請求項1〜4の何れか1項に記載の取付部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−13195(P2012−13195A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152696(P2010−152696)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】