説明

受信機

【課題】少なくとも自船と対象となる事象との距離を容易に取得して出力することができる簡素な構造の受信機を提供する。
【解決手段】受信機1はナブテックス放送信号を受信するとテキストデータを再生して、緯度経度情報に必ず含まれる特定文字列「数字、N、数字、E」を抽出し、この特定文字列が含まれるセンテンスから緯度経度情報を抽出する。次に、ナブテックス受信機1は、この抽出した緯度経度情報と自船の緯度経度情報とから、抽出した緯度経度情報で表される位置と自船位置との距離を算出するとともに、自船位置に対する方位を算出する。そして、少なくとも算出した距離情報と抽出した緯度経度情報とを外部出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ナブテックス(NAVTEX)等の海上情報を受信する受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、海洋の遭難・安全通信システムとしてGMDSS(Global MaritimeDistress and Safety System)が利用されている。このGMDSSでは、衛星通信技術、ディジタル通信技術等を利用することにより、海上の各船舶がいかなる海域で遭難しても捜索救助機関や付近航行船舶に対して迅速確実に救助要請を行うことができたり、陸上から提供される気象情報や海上安全情報も自動受信方式により確実に入手することができる。このようなGMDSSの情報通信方式のなかに、ナブテックス(NAVTEX)がある。このナブテックスとは海上情報の通信方式であり、主として沿岸から約300海里までを航行する船舶に対して、航行警報や気象情報等の海上情報を英語又は日本語のテキストデータで送信し、各船舶では受信したメッセージを表示または印字するものである。このようなナブテックスの受信機としては、従来、受信して復調したメッセージを順次紙面に印字して出力するものが多く用いられてきた。しかしながら、ナブテックス信号には、対象となる領域内で発生した気象に関する事象や遭難に関する事象、および該事象の緯度経度情報程度のデータがテキストデータとして出力されるだけであり、自船における航行上等での必要な情報を取得して活用することが容易ではなかった。
【0003】
一方、自船における航行上等の必要な情報を取得、出力するシステムとして、特許文献1には、予め海図表示機能を持たせておき、GMDSSで用いられる各種の情報から検出した事象とこの事象の緯度経度情報を用いて、前記海図上に事象の位置を表示する船舶用航行表示システムが開示されている。
【特許文献1】特開平11−271087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のナブテックス受信機では、前述のように受信した各事象とこれらに関連する緯度経度情報とが、例えば紙面上に印字されて順次出力されるので、これらの情報を用いて自船と事象との距離を得ようとすると、ユーザは、自船の緯度経度情報と対象とする事象の緯度経度情報とを用いて手作業で距離を求めなければならず、非常に繁雑な作業を強いることとなっていた。
【0005】
また、特許文献1では、各事象の緯度経度情報に基づいて海図上に事象を表示するので、ユーザにとって視覚的には有効であるが、実際に自船位置と事象の発生位置との距離を直接ユーザが認知することができない。また、ナブテックス受信機だけでなく、他の海図を表示する装置等の複数の装置を用いることでシステムとして機能するので、システム自体が大型化するとともに、操作および制御が複雑になってしまう。
【0006】
したがって、本発明の目的は、簡素な構造で自船と対象となる事象との距離を容易に取得、出力することができるナブテックス受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、放送信号を受信して復調する放送信号復調手段と、復調された放送信号から必要な情報を抽出する情報抽出手段と、を備えた受信機において、情報に含まれる緯度経度情報を検出する緯度経度情報検出手段と、検出された緯度経度情報と自身の緯度経度情報とに基づき少なくとも距離を算出する距離算出手段とを情報抽出手段に備えることを特徴としている。
【0008】
この構成では、受信した放送信号に含まれる情報から緯度経度情報が取得される。そして、この緯度経度情報と自身の緯度経度情報とを用いて、この2点間の距離すなわち自身の位置と目的とする事象の発生位置との距離が算出される。この算出された自身の位置と事象発生位置との距離は予め備えられた表示器やプリンタから外部に出力されることでユーザに通知される。
【0009】
この発明は、海上情報が含まれる放送信号を受信して復調する放送信号復調手段と、復調された放送信号から海上情報を抽出する情報抽出手段と、抽出された海上情報を画像形成する画像形成手段と、を備えた受信機において、情報抽出手段に、海上情報に含まれる緯度経度情報を検出する緯度経度情報検出手段と、検出された緯度経度情報と自船の緯度経度情報とに基づき少なくとも距離を算出する距離算出手段とを、備え、情報抽出手段で算出された距離を画像形成手段に出力することを特徴としている。
【0010】
海上情報には、発信局が対象とする領域内の気象情報や遭難情報等の事象情報が含まれており、これらの事象情報に対してそれぞれ同時に位置情報である緯度経度情報が添付される。
【0011】
この構成では、まず、海上情報に含まれる緯度経度情報が取得される。そして、この緯度経度情報と自船の緯度経度情報とを用いて、この2点間の距離すなわち自船位置と目的とする事象の発生位置との距離が算出される。この算出された自船位置と事象発生位置との距離は予め備えられた表示器やプリンタから外部に出力されることでユーザに通知される。
【0012】
また、この発明の受信機の緯度経度情報算出手段は、海上情報から緯度経度を表す特定文字列を抽出する特定文字列抽出手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
具体的に、この発明の特定文字列抽出手段は、海上情報から「数字、NまたはS、数字、EまたはW」を検索して緯度経度情報を表す文字列を抽出することを特徴としている。
【0014】
緯度経度情報には、英語ナブテックス放送の場合、一般的に、経度緯度として「45.12N123.45E」や「45.12S123.45W」のように必ず「数字、N、数字、E」や「数字、S、数字、W」等の文字列が含まれているものが多いので、この構成では海上情報を表すデータからこのような特定の文字列を検索する。そして、このような特定の文字列が存在するデータ上の位置を含む所定範囲、例えば1センテンスのテキストデータを解析することで緯度経度情報が取得される。
【0015】
また、この発明の受信機の情報抽出手段は、算出された各緯度経度情報の距離から、指定条件に該当する距離と緯度経度情報とを選択して画像形成手段に出力することを特徴としている。
【0016】
この構成では、海上情報に同類の事象で複数の緯度経度情報が存在する場合、前述のように緯度経度情報がそれぞれ取得されて距離算出が行われる。そして、この距離算出結果に基づき、指定条件(例えば、自船に近い方から順に指定個数の距離)に該当する緯度経度情報と距離とが抽出される。
【0017】
また、この発明の受信機の情報抽出手段は、指定条件に該当する距離に対応する事象情報を検出して、この事象情報を画像形成手段に出力することを特徴としている。
【0018】
この構成では、緯度経度情報の前後には事象を表すデータが必ず存在するので、緯度経度情報を含む領域、例えば、1センテンスのテキストデータを解析することで事象情報が取得される。
【0019】
また、この発明の受信機の情報抽出手段は、検出した緯度経度情報に対応する事象情報を検出して同じ事象情報毎に分類し、分類された事象情報毎に検出して、検出された距離と事象情報とを画像形成手段に出力することを特徴としている。
【0020】
この構成では、海上情報に含まれる複数の緯度経度情報とこれらにそれぞれ対応する事象情報とが抽出されると、各事象情報が解析されて分類される。そして、指定条件に該当する距離に対応する緯度経度情報が分類された組毎に選択されて、この緯度経度情報および距離とこれに対応する事象情報とが出力される。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、従来と殆ど変わらない簡素な構造で、自船位置から目的とする事象の発生位置までの距離を出力する受信機を構成することができる。
【0022】
また、この発明によれば、海上情報に含まれる緯度経度情報に特有な文字列を検索することで、各事象の緯度経度情報を容易に取得する受信機を構成することができる。
【0023】
また、この発明によれば、オペレータの指定条件に適合した自船から事象までの距離を容易に取得する受信機を構成することができる。
【0024】
また、この発明によれば、事象の種類により分類されることで、分類された事象毎にオペレータの指定条件に適合した距離を容易に取得する受信機を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第1の実施形態に係る受信機の構成について図1〜図3を参照して説明する。なお、以下の説明では、海上情報としてナブテックス信号を用い、受信機としてナブテックス受信機を用いた例に説明する。また、ナブテックス放送信号は、英語放送であり周波数が518kHzの全世界的に共通なナブテックス放送と周波数がそれぞれ490kHz,4209.5kHzの地方波放送とが存在するとともに、日本語放送であり日本近海のみに放送される周波数が424kHzの日本語ナブテックス放送とが存在する。また、ナブテックス信号に含まれている、低気圧や高気圧、停滞前線等の気象情報や遭難情報等は、以下では総括して「事象」と称して扱う。
図1は本実施形態のナブテックス受信機の概略構成を示すブロック図である。
図2は処理演算部2の処理を示すフローチャートである。
【0026】
図1に示すように、本実施形態のナブテックス受信機1は、処理演算部2、受信部3、表示部4を備える。ナブテックス受信機1の処理演算部2は受信部3、表示部4に接続するとともに、外部のGPS受信機12に接続する。ナブテックス受信機1の受信部3はアンテナ11に接続する。
【0027】
アンテナ11で受信されたナブテックス放送信号は受信部3に入力される。受信部3は、入力されたナブテックス放送信号をベースバンドのナブテックス信号に変換して、処理演算部2に出力する。この受信部3が本発明の「放送信号復調手段」に相当する。
【0028】
処理演算部2は、入力されたナブテックス信号からテキストデータを再生して、後述する方法でテキストデータに含まれる事象の緯度経度情報を検出する。また、処理演算部2は、GPS受信機12から入力される自船の緯度経度情報と前述の事象の緯度経度情報とを用いてこれら間の距離、すなわち、自船から事象までの距離を算出する。
処理演算部2は、このように再生されたテキストデータ、緯度経度情報、距離情報等を用いて、図3に示すような画像データを形成して表示器4に出力する。
ここで、処理演算部2は前述の各処理演算が行われるCPUと各演算処理がプログラムされたROMとを備える。そして、この処理演算部2が、本発明の「情報抽出手段」、「距離算出手段」、「緯度経度情報算出手段」、「特定文字列抽出手段」に相当する。
【0029】
表示器4は、処理演算部2から入力された画像データに基づいて表示画面上に図3に示すような画像を表示する。
【0030】
図3は本実施形態のナブテックス受信機の表示画面の一例を示す図であり、(a)が英語ナブテックス信号受信機の表示画面を示し、(b)は日本語ナブテックス信号受信機の表示画面を示す。図3に示すように、本実施形態のナブテックス受信機1では、表示器4の表示画面100に、受信したナブテックス信号の一覧を表示する受信信号一覧表示エリア101と、受信信号一覧表示エリア101に表示され且つ選択されたナブテックス信号の内容を表示する信号内容表示エリア102とを備える。これらの画面は1画面を切り替えて表示することもできる。受信信号一覧表示エリア101は、受信したナブテックス信号の信号識別コード、受信時刻が表示される信号名表示エリア111と、選択したナブテックス信号に含まれる事象の緯度経度が表示される緯度経度表示エリア112と、当該ナブテックス信号を受信した時点での距離が表示される受信時距離表示エリア113と、現時点での距離が表示される現時点距離表示エリア114とから構成される。また、信号内容表示エリア102は、選択されたナブテックス信号に含まれるテキストデータの内容が表示されるテキスト表示エリア121と、選択したナブテックス信号に含まれる事象の緯度経度が表示される緯度経度表示エリア122と、当該ナブテックス信号を受信した時点での距離が表示される受信時距離表示エリア123と、現時点での距離が表示される現時点距離表示エリア124とから構成される。
【0031】
次に、処理演算部2が行う具体的な処理について、図2、図3を参照して説明する。
処理演算部2は、受信部3からベースバンドのナブテックス信号が入力されると、テキストデータを再生し、図示しないメモリに一時記憶する(S1)。次に、処理演算部2は、予め設定された特定文字列、具体的には、英語ナブテックス信号であれば、緯度経度情報に使用される「数字、NまたはS、数字、EまたはW」からなる文字列を再生したテキストデータから検出する(S2)。この際、日本語ナブテックス信号であれば、緯度経度情報に使用される「北緯または南緯、数字、東経または西経、数字」からなる文字列を検出する。このように特定文字列を検出すると、処理演算部2は検出した特定文字列が含まれるセンテンス、例えば、リターンからリターンの間の文字を解析して、緯度経度情報を取得する(S3→S4)。具体的な例として、英語ナブテックス信号の場合、「数字、N、数字、E」の「N」の直前の数字列は明らかに北緯を示し、「E」の直前の数字列は明らかに東経を示す数字であるので、前記「数字、N、数字、E」の文字列を含むテキストデータの領域を緯度情報、経度情報として検出する。また、「数字、S、数字、W」の「S」の直前の数字列は明らかに南緯を示し、「W」の直前の数字列は明らかに西経を示す数字であるので、前記「数字、S、数字、W」の文字列を含むテキストデータの領域を緯度情報、経度情報として検出する。一方、日本語ナブテックス信号の場合、「北緯、数字、東経、数字」は明らかに北緯情報、東経情報を示すので、「北緯、数字、東経、数字」の文字列を含むテキストデータの領域を緯度情報、経度情報として検出する。また、「南緯、数字、西経、数字」は明らかに南緯情報、西経情報を示すので、「南緯、数字、西経、数字」の文字列を含むテキストデータの領域を緯度情報、経度情報として検出する。なお、これらの緯度経度を示す特定の文字列は放送されるナブテックス信号によって異なるので、自船が受信するナブテックス放送信号の緯度経度情報の検出に用いる文字列は放送の仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
これらを、図3を例に示せば、英語ナブテックス放送の場合(図3(a))、処理演算部2は、まず、テキストデータの1番目のセンテンス内で「数字、N、数字、E」を検出する。この文字列が検出されると処理演算部2はこの文字列から「34.00N」、および「140.00E」を検出する。これにより、処理演算部2は「北緯34度、東経140度」で発生している事象がテキストデータに含まれていることを検出する。
【0033】
また、日本語ナブテックス放送の場合(図3(b))、処理演算部2は、まず、テキストデータの3番目のセンテンス内に2つの「北緯、数字、東経、数字」を検出する。これらの文字列が検出されると処理演算部2はこの文字列から順に「北緯」、「34」で「北緯34度」を検出し、「東経」、「140」で「東経140度」を検出する。これにより、処理演算部2は「北緯34度、東経140度」で発生している事象がテキストデータに含まれていることを検出する。
【0034】
次に、処理演算部2は、テキストデータから取得した緯度経度情報と、GPS受信機12から入力された自船の緯度経度情報とを用いて2つの緯度経度間の距離および方位を算出する。すなわち、自船位置からテキストデータに含まれている事象の発生位置までの距離や自船位置に対する事象の発生位置の方位を算出する。この際、処理演算部2は、テキストデータを受信した時点の自船の緯度経度情報を用いて、受信時点での自船位置から事象の発生位置までの距離や方位を算出するとともに、現時点の自船の緯度経度情報を用いて、現時点での自船位置から事象の発生位置までの距離や方位を算出する(S5)。なお、図2では距離のみを演算するフローチャートが示されているが、この距離演算時に方位を演算することができる。
ここで、例えば、図3に示すような距離のみを表示する例であれば、図中の「DIST」で示されるテキストデータ受信時の距離「2.0」と図中の「NOW DIST」で示される現時点の距離「1.5」とを、算出する。なお、算出する距離は、大圏距離でも漸長距離でもよく、ナブテックス受信機の仕様に応じて最適な距離算出設定を行えばよい。
【0035】
このように検出されたテキストデータに含まれる緯度経度情報およびこの緯度経度と自船の緯度経度との距離は画像形成されて、緯度経度情報は緯度経度表示エリア112,122へ表示され、受信時距離は受信時距離表示エリア113,123に表示され、現時点での距離は現時点距離表示エリア114,124に表示される。例えば、図3では、緯度経度表示エリア112,122に「34°00.00’N,140°00.00’E」が表示され、受信時距離表示エリア113,123に「2.0NM」が表示され、現時点距離表示エリア114,124に「1.5NM」が表示される(S6)。ここで、「NM」はノーティカルマイルを表す。なお、図3では距離のみが表示されているが方位を同時に表示しても良い。
【0036】
以上のような構成とすることで、表示画面上にはナブテックス信号に含まれる事象(図3の例では低気圧)の発生位置と自船位置との距離が表示されるので、オペレータはこの表示を見るだけで自船と事象発生位置と距離を把握して、航行制御に利用することができる。すなわち、従来のように手計算等の煩わしい作業を行うことなく、対象とする事象と自船との距離を把握することができる。さらに、方位を同時に表示させれば、事象発生位置までの距離および方位を把握して、より有効に航行制御に利用することができる。
【0037】
次に、第2の実施形態に係る受信機の構成について図4、図5を参照して説明する。
本実施形態の受信機は、第1の実施形態の受信機と同じ構成であり、情報処理フローが異なるものであるので、構成の説明は省略する。
図4は処理演算部の処理を示すフローチャートである。
図5は本実施形態の構成による表示画面の一例を示す図である。
本実施形態の処理フローでは、距離演算まで(S11〜S15)は第1の実施形態と同じであるので、説明は省略し、距離演算(S15)以降の処理について説明する。
【0038】
テキストデータが再生、解析されて緯度経度情報から距離情報が算出されると、処理演算部2はこの距離情報をテキストデータのフォーマットに変換し、さらに再生したテキストデータの編集を行う(S16)。具体的には、テキストデータ化された距離情報を、再生したテキストデータの緯度経度情報の直後に挿入する。そして、この編集されたテキストデータと、緯度経度情報および距離情報と、を画像データにして出力する(S17)。このような処理を行うことで、図5に示すような表示画面が出力される。この表示画面は、図3に示した第1の実施形態の構成による表示画面に対して、テキスト表示エリア121に表示されるテキストデータが編集後のテキストデータに置き換わったものである。図5に示すように、本実施形態の処理を行うことで、緯度経度情報の直後に距離情報が表示される。
【0039】
このような構成とすることで、テキスト表示エリア121を見るだけで、所望とする事象の緯度経度情報と距離情報とを読み取ることができる。さらには、後述するような、複数の緯度経度情報が1つのテキストデータ内に存在する場合に、各緯度経度情報の直後に距離情報が表示されるので、テキストデータに含まれる全ての事象の緯度経度情報および距離情報を一度に読み取ることができる。
【0040】
次に、第3の実施形態に係る受信機の構成について図6を参照して説明する。
図6は複数の事象および緯度経度情報が含まれたナブテックス信号の表示処理について示したフローチャートである。
前述の説明では、ナブテックス信号に事象が1つしか含まれていない場合について説明したが、複数の同じ事象とこれに対応する緯度経度情報が含まれていることもある。例えば、1つのナブテックス信号のメッセージ中に複数の低気圧情報が存在する場合などである。本実施形態ではこのような場合の処理について説明する。なお、装置構成は第1、第2の実施形態と同じであるので説明は省略する。
処理演算部2は、まず、前述のようにテキストデータを再生して、テキストデータの先頭から順に特定文字列を検出する(S21)。次に、特定文字列を含むセンテンスが検出されるとこのセンテンスのテキストデータの解析を行い、緯度経度情報を取得する(S22→S23→S24)。
【0041】
次に、処理演算部2は、GPS受信機12から取得した自船の緯度経度情報と検出した緯度経度情報とを用いて距離演算を行い(S25)、検出した移動経度情報とこれに対応する距離情報とを記憶する(S26)。処理演算部2は、この処理をテキストエンドが検出されるまで継続し、特定文字列が検出される毎に繰り返す(S27→S22)。
【0042】
特定文字列がそれ以上検出されずテキストエンドが検出されると(S22→S27)、処理演算部2は、記憶した複数の距離情報を用いて距離情報をソートし、設定された数の距離情報を抽出する(S28→S29)。例えば、距離の短い順にソートし、距離の短い側から所定数の距離情報を抽出する。より具体的な一例としては、距離の短い順に距離情報をソートし、最も距離の短い1つの距離情報を抽出する。
【0043】
そして、処理演算部2は、抽出した距離情報と、これに対応する緯度経度情報を画像データに変換して、出力する(S30)。例えば、最も距離が短い距離情報のみを表示する場合は最短の距離情報とこれに対応する緯度経度情報とを出力し、距離が短い側から三つの距離情報を表示する場合は距離の短い三つの距離情報とこれらにそれぞれ対応する緯度経度情報とを出力する。
【0044】
これにより、同じ事象で複数の緯度経度情報が存在する場合に、指定した数の距離情報を容易に認識することができる。例えば、比較的緊急性を要することが多い自船に近い位置に存在する事象発生位置までの距離を即座に且つ容易に認識することができ、航行制御に役立てることができる。
【0045】
なお、距離情報と緯度経度情報とともに事象情報を出力してもよい。
この際、日本語ナブテックス放送信号であれば(図5参照。)、ナブテックス信号の先頭5桁の記号における先頭から2桁目に識別符号が記載されているので、この識別符号を検出することで、事象情報を表す文字の推定、検出に利用する。例えば、図5の例であれば、先頭の記号が「GM005」であるので、先頭から2番目は「M」、すなわち、気象情報を表すので、事象情報を表す文字としては、例えば、「低気圧」等を推定要素とする。そして、これらの事象情報、緯度経度情報、距離情報を画像データに変換して表示器4に出力する。一方、英語ナブテックス放送信号であれば、先頭4桁の識別符号に基づいて事象の識別を行う。表示画像としては、例えば、表示器4は、入力された画像データに基づき表示画面上に自船から最も近い位置で発生している事象情報と、発生位置の緯度経度および自船から発生位置までの距離とを表示する。オペレータはこの表示を見ることで、ナブテックス信号により得られる同じ事象のうちで最も近い位置のものまでの距離を容易に認識することができる。
【0046】
なお、前述の説明では、1つのナブテックス信号に複数の事象情報が含まれる例を示したが、複数のナブテックス放送を連続または略同時に受信する場合についても前述の情報処理を適用することができ、同様の効果を奏することができる。
【0047】
次に、第4の実施形態に係る受信機の構成について図7を参照して説明する。
図7は複数の異なる事象および移動経度情報が含まれたナブテックス信号の表示処理について示したフローチャートである。
【0048】
本実施形態では、ナブテックス信号に事象情報が複数含まれており、さらに事象情報が異なる場合について説明する。これは、例えば、1つのナブテックス信号のメッセージ中に複数の低気圧情報と前線情報が存在する場合などである。
本実施形態の処理方法において緯度経度情報の取得まで(S41→S44)は第3の実施形態に示した処理方法と同じであるので、説明は省略する。
【0049】
処理演算部2は、緯度経度情報を取得すると、この緯度経度情報を含むセンテンスのテキストデータから事象情報を表す文字を検出して事象情報を取得する(S45)。また、処理演算部2はGPS受信機12から取得した自船の緯度経度情報と検出した緯度経度情報とを用いて距離演算を行う(S46)。
【0050】
次に、処理演算部2は、検出した移動経度情報および事象情報とこれに対応する距離情報とを記憶する(S47)。処理演算部2は、この処理をテキストエンドが検出されるまで継続し、特定文字列が検出される毎に繰り返す(S48→S42)。
【0051】
特定文字列がそれ以上検出されずテキストエンドが検出されると(S42→S48)、処理演算部2は、記憶した事象情報に基づいて、緯度経度情報とこれに対応する距離情報とを事象情報毎に分類する(S49)。そして、処理演算部2は、記憶した複数の距離情報を用いて、事象毎に距離情報をソートし、設定された数の距離情報を抽出する(S50→S51)。例えば、事象毎に距離の短い順にソートし、距離の短い側から所定数の距離情報を抽出する。
【0052】
そして、処理演算部2は、抽出した距離情報とこれに対応する緯度経度情報とを事象情報とともに画像データに変換して、出力する(S52)。例えば、所定の事象に対して最も距離が短い距離情報のみを表示する場合は最短の距離情報とこれに対応する緯度経度情報とを事象情報とともに出力する。
【0053】
このような構成とすることで、オペレータは、事象毎に、緊急性を要する可能性を有する自船に近い複数の事象までの距離を容易に認識することができる。
【0054】
なお、前述の説明では、1つのナブテックス信号に複数の異なるグループの事象情報が含まれる例を示したが、複数のナブテックス放送を連続または略同時に受信する場合についても前述の情報処理を適用することができ、同様の効果を奏することができる。
【0055】
また、複数のナブテックス信号から距離情報を取得して、最短の距離情報を抽出して出力する場合、最短の距離情報を有するナブテックス信号を他と識別する表示を行ってもよい。例えば、図3に示す受信信号一覧表示エリア101の該当するナブテックス信号に所定のマーキング記号を表示したり、該当するナブテックス信号の表示を強調表示すればよい。これにより、最短の距離情報を有するナブテックス信号を容易に認識することができる。そして、この処理は、複数の距離情報を表示する場合にも適用することができる。
【0056】
また、前述の説明では、緯度経度表示エリアにテキストデータから抽出した緯度経度情報を表示する例を示したが、自船の緯度経度情報を表示させても良く、さらには抽出した緯度経度情報と自船の緯度経度情報とを同時に表示させても良い。また、テキストデータに複数の緯度経度情報が含まれる場合であれば、抽出した複数の緯度経度情報を同時に表示させても良い。
【0057】
また、前述の説明では、受信時距離表示エリア、現時点距離表示エリアに1つの事象(緯度経度情報)と自船との距離を表示する例を示したが、複数の事象(緯度経度情報)と自船との距離を同時に表示させても良い。
【0058】
また、前述の説明はナブテックス受信機について示したものであるが、事象情報や緯度経度情報を含む放送を受動的に受信する装置であれば、前述の構成を適用することができ、前述の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施形態に係るナブテックス受信機の概略構成を示すブロック図
【図2】図1に示す処理演算部2の処理を示すフローチャート
【図3】第1の実施形態に係るナブテックス受信機の表示画面の一例を示す図
【図4】第2の実施形態に係るナブテックス受信機の処理演算部の処理を示すフローチャート
【図5】第2の実施形態の構成による表示画面の一例を示す図
【図6】第3の実施形態に係るナブテックス受信機の処理演算部の処理を示すフローチャート
【図7】第4の実施形態に係るナブテックス受信機の処理演算部の処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0060】
1−ナブテックス受信機、2−処理演算部、3−受信部、4−表示器、11−アンテナ、12−GPS受信機、100−表示画面、101−受信信号一覧表示エリア、102−信号内容表示エリア、111−信号名表示エリア、112−緯度経度表示エリア、113−受信時距離表示エリア、114−現時点距離表示エリア、121−テキスト表示エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送信号を受信して復調する放送信号復調手段と、
復調された放送信号から必要な情報を抽出する情報抽出手段と、を備えた受信機において、
前記情報抽出手段は、前記情報に含まれる緯度経度情報を検出する緯度経度情報検出手段と、検出された緯度経度情報と自身の緯度経度情報とに基づき少なくとも距離を算出する距離算出手段とを、備えることを特徴とする受信機。
【請求項2】
海上情報が含まれる放送信号を受信して復調する放送信号復調手段と、
復調された放送信号から前記海上情報を抽出する情報抽出手段と、
抽出された海上情報を画像形成する画像形成手段と、を備えた受信機において、
前記情報抽出手段は、前記海上情報に含まれる緯度経度情報を検出する緯度経度情報検出手段と、検出された緯度経度情報と自船の緯度経度情報とに基づき少なくとも距離を算出する距離算出手段とを、備え、算出された距離を前記画像形成手段に出力することを特徴とする受信機。
【請求項3】
前記緯度経度情報算出手段は、前記海上情報から緯度経度を表す特定文字列を抽出する特定文字列抽出手段を備えた請求項2に記載の受信機。
【請求項4】
前記特定文字列抽出手段は、前記海上情報から「数字、NまたはS、数字、EまたはW」の文字列を検索して前記緯度経度情報を表す文字列を抽出する請求項3に記載の受信機。
【請求項5】
前記情報抽出手段は、算出された各緯度経度情報に対応する距離から、指定条件に該当する距離と緯度経度情報とを選択して前記画像形成手段に出力する請求項2〜請求項4のいずれかに記載の受信機。
【請求項6】
前記情報抽出手段は、前記指定条件に該当する距離に対応する事象情報を検出して、該事象情報を前記画像形成手段に出力する請求項5に記載の受信機。
【請求項7】
前記情報抽出手段は、検出した緯度経度情報に対応する事象情報を検出して同じ事象情報毎に分類し、分類した事象情報毎に前記指定条件に該当する距離を検出して、該検出された距離と事象情報を前記画像形成手段に出力する請求項2〜4のいずれかに記載の受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−208287(P2006−208287A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23153(P2005−23153)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】