説明

受光素子、この受光素子を備える光ディスク装置及び受光素子の製造方法

【課題】本発明は、クロストーク特性の悪化を招くことなく、各受光領域間のリーク電流を改善する受光素子、この受光素子を備える光ディスク装置、受光素子の製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明に係る受光素子1は、分離領域2を介して第1受光領域4a及び第2受光領域4bを互いに隣接させて形成し、これらの領域4a、4b上に反射防止膜5を形成した受光素子1において、第1受光領域4aと第2受光領域4bとの間の分離領域2上に導電膜6を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光領域を複数に分割した構造を有する受光素子、この受光素子を備える光ディスク装置及び受光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DVDプレーヤーや次世代ディスクプレーヤー等の光ピックアップに用いられる受光素子は、受光領域を複数に分割した構造を有しており、ディスク面によって反射されたレーザ光を受光してRF(Radio Frequency)信号を出力しているだけでなく、レーザ光のスポットをディスク面の溝に追随させるためのトラッキングエラー信号や、レーザ光の焦点をディスク面に合わせるためのフォーカスエラー信号を出力する。
【0003】
従来の受光素子は、一般に、特許文献1に示すように、p型半導体基板にp型分離領域を隔てて複数のn型半導体領域を有した構造を有している。例えば、図12に示す従来の受光素子101は、p型半導体基体111上にエピタキシャル成長させたn型半導体層112が形成され、このn型半導体層112にp型半導体層115からなる分離領域102を形成すると共にこの分離領域102を介してn型半導体層112よりも濃度が高いn型半導体層103、103を互いに隣接させて形成することによって、複数の受光領域104a、104bを設けた構造を有しており、n型半導体層112とp型半導体基体111との間のPN接合により各受光領域104a、104bにフォトダイオードが形成される。
【0004】
さらに、この受光素子101において、発振波長405nm程度の青紫色レーザ光を受光する場合、十分な感度を得にくいため、受光素子101上の層間膜を除去した後に反射防止膜105を設けるようにしている。
【特許文献1】特開平7−183563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、受光素子101の反射防止膜105は、SiO膜113とSi膜114との積層膜で形成されているために、ウエハーに拡散等を行う前工程、または組立てを行う後工程の途中で、このSi膜114が帯電してしまい、各受光領域104a、104b間の分離領域102上の表面106の導電型が反転してしまい、受光領域104a、104b間でリーク電流が発生してしまう恐れがあった。
【0006】
この反転を防止するための第1の方法として、図13に示す受光素子121のように、それぞれの受光領域104a、104bの間の分離領域102を、LOCOS酸化膜116などの厚い酸化膜とp型半導体層115とで形成する構造にすることが考えられる。この構造の場合、LOCOS酸化膜116を厚く形成することにより、反射防止膜105が帯電することによる分離領域表面106の導電型の反転を防ぐことはできる。しかし、同時に、各受光領域104a、104bに形成されるフォトダイオードにおいて、分離領域102近傍でのレーザ光の入射に対する受光感度が低下してしまい、これら各受光領域104a、104bに形成されるフォトダイオード間のクロストーク特性の悪化を招く虞があった。ここで、フォトダイオード間のクロストーク特性は、図15に示すように、受光素子における分離領域102付近にビームスポットが照射されたときに、受光領域104aに形成されたフォトダイオードよって発生する電流Iaと受光領域104bに形成されるフォトダイオードによる電流Ibとの電流の和が、各受光領域104a,104bに単独でビームスポットが照射されたときの電流Ia,Ibと略同一となることが望ましい。
【0007】
また、この反転を防止するための第2の方法として、図14に示す受光素子131のように、分離領域102の表面106の不純物濃度をさらに上げて、濃度の高いp型半導体層117を設ける構造とすることが考えられる。この場合、分離領域102の表面濃度を上げることにより、反射防止膜105が帯電することによる分離領域表面106の導電型の反転を防ぐことはできる。しかし、この分離領域102の表面106においてキャリアの再結合が増えてしまうことになるので、同時に分離領域102近傍でのレーザ光の入射に対して各受光領域104a、104bに形成されるフォトダイオードの感度が低下してしまい、これらフォトダイオード間のクロストーク特性の悪化を招く虞があった。また、各受光領域104a、104bに形成されるフォトダイオードの耐圧を確保するために、分離領域102とn型半導体層103との間隔を離す必要が生じ、受光領域104a、104bの寄生容量の増加にもつながる虞があった。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑み、クロストーク特性の悪化を招くことなく、各受光領域に形成されるフォトダイオード間のリーク電流を抑えた受光素子、この受光素子を備える光ディスク装置、受光素子の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、分離領域を介して第1受光領域及び第2受光領域を互いに隣接させて形成し、これらの領域上に反射防止膜を形成した受光素子において、前記第1受光領域と前記第2受光領域との間の前記反射防止膜上に導電膜を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記導電膜は、前記第1受光領域と前記分離領域との間の前記反射防止膜上と、前記第2受光領域と前記分離領域との間の前記反射防止膜上とにそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記導電膜に電圧を印加するコンタクト電極を形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記導電膜は、シリコンに不純物を混入させて形成した膜、または、金属シリサイドにより構成した膜であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、光ディスクを保持して回転駆動する駆動手段と、前記光ディスクにレーザ光を照射する発光素子と、前記レーザ光の前記光ディスクによる反射光を受光する受光素子と、前記受光素子における受光結果に応じて前記光ディスクへの記録又は再生を行う処理部とを備えた光ディスク装置において、前記受光素子は、分離領域を介して第1受光領域及び第2受光領域を互いに隣接させて形成しており、これらの領域上に反射防止膜を形成し、前記第1受光領域と前記第2受光領域との間の前記反射防止膜上に導電膜を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記第1導電型の半導体基体と、前記半導体基体に第2導電型の第1半導体層を形成する工程と、前記第1半導体層に形成される第1受光領域及び第2受光領域を分離するための分離領域を形成する工程と、前記第1半導体層上に反射防止膜を形成する工程と、前記第1受光領域が形成される領域と前記第2受光領域が形成される領域との間の前記反射防止膜上に選択的に導電膜を形成する工程と、前記導電膜をマスクとして第2導電型の不純物を注入により前記第1受光領域と前記第2受光領域を形成する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、分離領域を介して第1受光領域及び第2受光領域を互いに隣接させて形成し、これらの領域上に反射防止膜を形成した受光素子において、第1受光領域と第2受光領域との間の反射防止膜上に導電膜を設けたので、この導電膜によって分離領域表面の反転を抑えることができ、反射防止膜が帯電することによる各受光領域間のリーク電流を抑える。従って、各受光領域間を分離する分離領域の幅をさらに微細化して形成することができ、各受光領域に形成したフォトダイオード間のクロストーク特性を向上することができる。また、図14に示す従来の受光素子131のように、分離領域の表面濃度をあげる必要が無いため、フォトダイオードの耐圧低下やフォトダイオードのカソード−アノード間の容量増加を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本実施の形態に係る光ディスク装置は、光ディスクを保持して回転駆動する駆動手段と、光ディスクにレーザ光を照射する発光素子と、このレーザ光の光ディスクによる反射光を受光する受光素子と、この受光素子における受光結果に応じて光ディスクへの記録又は再生を行う制御部とを備えており、特に、受光素子に特徴を有するものである。
【0017】
すなわち、受光素子は、分離領域を介して第1受光領域及び第2受光領域を互いに隣接させて形成し、これらの領域上に反射防止膜を形成し、第1受光領域と第2受光領域との間の分離領域上に導電膜を設けている。
【0018】
このように本実施の形態に係る受光素子には導電膜を設けているので、この導電膜に対して分離領域表面の導電型が反転が発生しないように電位を印加することにより、分離領域表面の反転を抑えることができ、反射防止膜が帯電することによる各受光領域間のリーク電流が抑えられる。従って、各受光領域間を分離する分離領域の幅をさらに微細化して形成することができ、各受光領域に形成したフォトダイオード間のクロストーク特性を向上することができる。
【0019】
さらに、導電膜は、第1受光領域と分離領域との間の反射防止膜上と、第2受光領域と分離領域との間の反射防止膜上とにそれぞれ設けてもよい。
【0020】
このようにすれば、導電膜と分離領域との対向面積部分で形成される寄生容量を低減することができ、光ディスク装置の高速化を図ることができ、青色レーザなどを用いて大容量を記憶する場合に利点がある。
【0021】
導電膜に電圧を印加するコンタクト電極を導電膜上に備えてもよい。このコンタクト電極は受光領域外に備えることが望ましい。
【0022】
このようにすれば、コンタクト電極を介して導電膜に電圧を印加することができ、これによって反射防止膜の帯電による分離領域表面の導電型の反転を防いで受光領域間のリーク電流を抑えることができる。
【0023】
導電膜は、シリコンに不純物を混入させて形成した膜、または、金属シリサイドにより構成した膜でもよい。例えば、金属と合金化した金属シリサイドとしては、コバルトシリサイド、タングステンシリサイド、チタンシリサイド、モリブデンシリサイド、タンタルシリサイド、ニッケルシリサイドなどであってもよい。また、シリコンに不純物を混入させて形成した膜で導電膜を形成することにより、受光領域の形成と同時に導電膜を形成でき、生産コストを低減することができる。
【0024】
また、本実施の形態に係る受光素子の製造方法は、前記第1導電型の半導体基体と、前記半導体基体に第2導電型の第1半導体層を形成する工程と、前記第1半導体層に形成される第1受光領域及び第2受光領域を分離するための分離領域を形成する工程と、前記第1半導体層上に反射防止膜を形成する工程と、前記第1受光領域が形成される領域と前記第2受光領域が形成される領域との間の前記反射防止膜上に選択的に導電膜を形成する工程と、前記導電膜をマスクとして第2導電型の不純物を注入により前記第1受光領域と前記第2受光領域を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0025】
本実施の形態に係る受光素子の製造方法によれば、分離領域上に形成した導電膜をマスクとして利用することにより自己整合的に第1受光領域と第2受光領域とを形成することができる。
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、本実施の形態に係る受光素子について、詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る受光素子を示す構成図である。本実施の形態は、第1導電型をp型とし、第2導電型をn型とした。
【0027】
本実施の形態に係る受光素子1は、シリコン基板にp型不純物を添加してなるp型半導体基体11上にエピタキシャル成長させたn型半導体層12が形成されており、このn型半導体層12にこのn型半導体層12よりも不純物濃度が高いn型半導体層3a,3bが形成されると共に、これらのn型半導体層3a,3bを分離するために、n型半導体層12にp型分離領域2が形成される。
【0028】
ここで、分離領域2を介して分離される領域をそれぞれ第1受光領域4a及び第2受光領域4bとする。第1受光領域4aは、p型半導体基体11、n型半導体層12及びn型半導体層3aから形成され、p型半導体基体11とn型半導体層12との間のPN接合により第1受光領域4aにフォトダイオードが形成される。また、第2受光領域4bは、p型半導体基体11、n型半導体層12及びn型半導体層3bから形成され、p型半導体基体11とn型半導体層12との間のPN接合により第2受光領域4bにフォトダイオードが形成される。なお、これらのフォトダイオードは、p型半導体基体11をアノードとし、n型半導体層12をカソードとしている。
【0029】
また、これらの受光領域4a、4b及び分離領域2上には反射防止膜5が形成され、さらに、第1受光領域4aと第2受光領域4bとの間の分離領域2上に全面に導電膜6が形成される。
【0030】
導電膜6には、さらに受光領域外において電圧を印加するコンタクト電極が接続されており、配線層からコンタクト電極と分離領域2間に電圧を印加することにより、分離領域2の表面の導電型の反転を防止する。ここで、コンタクト電極を介して導電膜6に印加する電圧としては、分離領域2の表面の導電型の反転が発生しないように、受光領域4a、4bに形成されるフォトダイオードのカソード側の電圧以上を印加するとさらによい。
【0031】
この導電膜6は、多結晶シリコンのポリシリコン膜にAs不純物をイオン注入して形成したものを用いた。なお、金属シリサイド膜としては、コバルトシリサイド、タングステンシリサイド、チタンシリサイド、モリブデンシリサイド、タンタルシリサイド、ニッケルシリサイドなどであってもよい。
【0032】
ここで反射防止膜5は、シリコン酸化膜13とシリコン窒化膜14との積層膜で形成する。例えば、反射防止膜5は、受光領域4a,4bに発振波長405nmの青紫系レーザ光が入射できるように膜厚及び材質を最適化している。特に、反射防止膜5の膜の層数は、上述した2層膜に限定するものではなく、反射防止膜として機能できれば単層膜であってもよいし、三層以上の多層膜で構成したものでもよい。なお、このシリコン窒化膜は、受光素子1を形成するウエハー処理工程のプラズマCVD等のプラズマ処理、組立て工程のスクライブ処理などで帯電しやすいものである。
【0033】
本実施の形態に係る受光素子1によれば、各第1受光領域4aと第2受光領域4b間の、反射防止膜5上の一部にポリシリコン膜を残して導電膜6が形成されており、その導電膜6に分離領域2の表面の導電型が反転が発生しないように電位を印加することにより、分離領域2の表面の反転を抑えることができ、反射防止膜5が帯電することによる各受光領域4a、4b間のリーク電流が抑えられる。従って、各受光領域4a、4b間を分離する分離領域の幅をさらに微細化して形成することができ、各受光領域4a、4bに形成したフォトダイオード間のクロストーク特性を向上することができる。また、図14に示す従来の受光素子131のように、分離領域の表面濃度をあげる必要が無いため、受光素子の耐圧低下や受光素子のカソード−アノード間の容量増加を抑えることができる。
【0034】
図2に示す受光素子1’は、上述した図1の受光素子1の導電膜6をサイドウォール形状に形成したものである。図2は、本実施の形態に係る他の受光素子1’を示す構成図である。図3は、本実施の形態に係る他の受光素子1’を示す平面図である。
【0035】
本実施の形態に係る受光素子1’は、受光素子1と同様に、受光領域4a、4b及び分離領域2が形成され、これらの領域上に反射防止膜5が形成されるものであり、導電膜の形成を異なるものとしている。すなわち、図2に示すように、受光素子1’は、各受光領域4a,4b間の分離領域2上の全面に形成したポリシリコン膜の中央部分を取り除き、端部分にポリシリコン膜を残して導電膜6’が形成される。言い換えれば、受光素子1の導電膜6の中央部を取り除いた構造である。
【0036】
また、導電膜6’は、図3に示すように、各受光領域外に延伸して形成されており、受光領域4a,4b外の導電膜6’に電圧印加するコンタクト電極10を形成する。このコンタクト電極10は、配線層(図示せず)と電気的に接続する。導電膜6’の幅W1は、狭く形成するほど反射防止膜とによって生じる寄生容量が小さくなる。
【0037】
本実施の形態に係る受光素子1’によれば、各受光領域4a,4b間の分離領域2上の一部にポリシリコン膜を残して導電膜6’が形成されており、その導電膜6’に電圧を与えることにより、反射防止膜5の帯電による分離領域2の表面の反転を抑えることができ、受光領域4a、4b間のリーク電流を抑えることができる。従って、各受光領域4a,4b間を分離する分離領域の幅をさらに微細化して形成することができ、各受光領域に形成したフォトダイオード間のクロストーク特性を向上することができる。また、図14に示す従来の受光素子131のように、分離領域の表面濃度をあげる必要が無いため、受光素子の耐圧低下や受光素子のカソード−アノード間の容量増加を抑えることができる。
【0038】
さらに、サイドウォール形状の導電膜6’は、分離領域2の表面の電位が、上部のコンタクト電極10に電圧を印加することにより常に反転を抑えられているため、各受光領域4a,4bに形成されるフォトダイオードの各カソード間に電位差が生じた場合でも、MOS動作を防ぐことができる。
【0039】
またに、分離領域2上の全面にポリシリコン導電膜を残す場合に比べて、ポリシリコン導電膜6’の反射防止膜5と分離領域2間の対向面積を少なくすることができ、ポリシリコン導電膜6’と分離領域2で形成される寄生容量の増加を抑制することができる。
【0040】
また、サイドウォール形状の導電膜6’は、全面に形成した導電膜6の幅に比べ、導電膜6’の幅を細く形成できるため、導電膜6’の抵抗は大きくなる。結果として、ポリシリコン導電膜6’と分離領域2で形成される寄生容量に大きな抵抗がつくことになり、この寄生容量が相対的に見えにくい方向になり、受光素子の高速化を図ることができる。
【0041】
しかも、隣接するフォトダイオードのそれぞれのカソード間の結合が、全面にポリシリコン膜を残す導電膜6場合にはこの導電膜6で形成されるのに対して、本受光素子1’の構造では、サイドウォール形状のポリシリコン導電膜6’とその間の絶縁膜による容量で形成されるため、インピーダンスも高くなり、その点でも各受光領域4a,4bに形成されるフォトダイオードの周波数特性が良好になり、青紫色レーザなどを用いて大容量記録に対応可能な高速化を図ることができる。
【0042】
上述した本受光素子1を備えた光ディスク装置について説明する。図4は、本実施の形態に係る光ディスク装置の概略構成を示す図である。なお、受光素子1’を備えた光ディスク装置については受光素子1を備えた光ディスク装置と構成が同じであるため、ここでは省略する。
【0043】
本実施の形態に係る光ディスク装置21は、光ディスク25を保持して回転駆動する駆動手段23と、光ディスク25に発振波長405nmの青紫色のレーザ光を照射する発光素子22と、レーザ光の光ディスク25による反射光を受光する受光素子1,と、受光素子における受光結果に応じて光ディスク25への記録又は再生を行う処理部である処理回路24を有している。特に、本受光素子1,は、受光領域を複数(ここでは4つ)に分割した構造を有しており、図1に示すように、分離領域2を介して各受光領域を互いに隣接させて形成し、これらの領域上に反射防止膜5を形成し、受光領域間の反射防止膜5上に導電膜6を設けている。
【0044】
そして、この受光素子1により、光ディスク25面によって反射されたレーザ光を受光してRF(Radio Frequency)信号を出力しているだけでなく、レーザ光のスポットをディスク面の溝に追随させるためのトラッキングエラー信号や、レーザ光の焦点をディスク面に合わせるためのフォーカスエラー信号を出力する。
【0045】
このように本実施の形態に係る光ディスク装置21は、RF信号や各種エラー信号を出力する受光素子として、上述の特徴ある受光素子1,1’を適用していることから、品質を向上させることができ、また、高速化を図ることができる。
【0046】
サイドウォール形状の導電膜6’を備えた受光素子1’の製造方法について図面を参照して具体的に説明する。図5〜図11は、本実施の形態に係るサイドウォール形状の導電膜を備えた受光素子1’の製造方法の工程図を示す。
【0047】
先ず、図5に示すように、シリコン基板にp型不純物を添加してなるp型半導体基体11上にエピタキシャル成長したn型半導体層12を形成する。例えば、n型半導体層12は、1Ωcm、膜厚1μm程度で形成する。
【0048】
次に、図6に示すように、イオン注入により、隣り合う受光領域となる領域間を分離するp型分離領域2が形成される。この分離領域2は、アイソレーション領域である。例えば、p型分離領域は、イオン注入を拡散によって形成していてもよい。
【0049】
次に、図7に示すように、熱酸化などによりシリコン酸化膜13を形成し、その後、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によりシリコン窒化膜14を形成する。反射防止膜5は、シリコン酸化膜13とシリコン窒化膜14によって構成する。例えば、シリコン酸化膜13は、10nm程度で成膜し、シリコン窒化膜14は、膜厚50nm程度で成膜する。
【0050】
次に、図8に示すように、CVD法によりシリコン酸化膜を形成し、その後、フォトリソグラフィ法により、フォトレジストなどを用いてパターニング処理を行い、例えばクエン酸等のウェットエッチングまたはRIE(Reactive Ion Etching)などのドライエッチングにより分離領域2上の反射防止膜5上にシリコン酸化膜7を選択的に残して形成する。例えば、シリコン酸化膜7は、膜厚200nm程度で成膜する。
【0051】
次に、図9に示すように、CVD法により導電性のポリシリコン膜15を形成する。例えば、ポリシリコン膜15は、膜厚300nm程度で成膜する。
【0052】
次に、図10に示すように、全面エッチバックを行うことにより、シリコン酸化膜7の側壁にサイドウォール形状のポリシリコン導電膜6’を残して形成する。さらに、砒素(As)不純物のイオン注入を行うことにより、シリコン酸化膜7とサイドウォール形状のポリシリコン導電膜6’が、マスクとなるため自己整合的にn型半導体層3a,3bが形成される。この際、シリコン酸化膜7とサイドウォール形状のポリシリコン導電膜6’直下の各受光領域4a、4bには、n型半導体層3a,3bが形成されない。例えば、As不純物のイオン注入は、エネルギーを30keV、不純物濃度を1E15(1/cm)程度で行う。
【0053】
次に、図11に示すように、層間膜の形成と拡散したn型半導体層3a,3bの活性化のための熱処理を施したのち、最終的に、第1受光領域4a及び第2受光領域4b上の層間膜を除去し反射防止膜5を露出させる。受光素子1’は、第1受光領域4a及び第2受光領域4b間に分離領域2を挟んで形成され、この分離領域2上に反射防止膜5を介してサイドウォール形状のポリシリコン導電膜6’が形成される。
【0054】
本受光素子のサイドウォール形状のポリシリコン導電膜6’は、図3に示すように、各受光領域4a,4b外まで延伸して形成され、この受光領域4a、4b外のサイドウォール形状のポリシリコン導電膜6’上にコンタクト電極10を形成して、コンタクト電極10と配線層(図示せず)とを電気的に接続される。よって本実施の形態に係る受光素子1’を得ることができる。
【0055】
なお、本実施の形態に係る受光素子1の製造方法の詳細な説明については省略するも、上述した図5〜図7までの製造工程を行った後、CVD法によりポリシリコン膜15を形成して、エッチバックを行い、ポリシリコン導電膜6を形成する。ポリシリコン導電膜6は、As不純物をイオン注入する場合、マスクとなるため、自己整合的に受光領域4を形成する。本実施の形態に係る受光素子1を得ることができる。
【0056】
本実施の形態に係る受光素子の製造方法によれば、受光領域を形成するためのイオン注入を行う場合、ポリシリコン導電膜がマスクとなり、自己整合的に各受光領域4a,4bにn型半導体層3a,3bを形成することができる。また、半導体基体としては、ガリウム(Ga)、砒素(As)等の半絶縁基体であってもよい。
【0057】
なお、本実施の形態に係る受光素子において、分離領域は、As不純物をイオン注入して濃度の高いアイソレーション領域として形成したが、LOCOS酸化膜で形成してもよい。
【0058】
本発明に係る実施の一形態について具体的に説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形は可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施の形態における受光素子の構成を示す図である。
【図2】本実施の形態における他の受光素子の構成を示す図である。
【図3】図2の受光素子を示す平面図である。
【図4】本実施の形態における光ディスク装置の概略構成を示す図である。
【図5】図2の受光素子の製造工程を示す図である。
【図6】図2の受光素子の製造工程を示す図である。
【図7】図2の受光素子の製造工程を示す図である。
【図8】図2の受光素子の製造工程を示す図である。
【図9】図2の受光素子の製造工程を示す図である。
【図10】図2の受光素子の製造工程を示す図である。
【図11】図2の受光素子の製造工程を示す図である。
【図12】従来の受光素子の構成を示す図である。
【図13】従来の受光素子の構成を示す図である。
【図14】従来の受光素子の構成を示す図である。
【図15】フォトダイオード間のクロストーク特性を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
1、1’ 受光素子
2 分離領域
3 フォトダイオード
4 受光領域
5 反射防止膜
6、6’ 導電膜
7 シリコン酸化膜
10 コンタクト電極
11 半導体基体
12 第1半導体層
13 シリコン酸化膜
14 シリコン窒化膜
15 ポリシリコン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離領域を介して第1受光領域及び第2受光領域を互いに隣接させて形成し、これらの領域上に反射防止膜を形成した受光素子において、
前記第1受光領域と前記第2受光領域との間の前記反射防止膜上に導電膜を設けた
ことを特徴とする受光素子。
【請求項2】
前記導電膜は、前記第1受光領域と前記分離領域との間の前記反射防止膜上と、前記第2受光領域と前記分離領域との間の前記反射防止膜上とにそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の受光素子。
【請求項3】
前記導電膜に電圧を印加するコンタクト電極を形成した
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の受光素子。
【請求項4】
前記導電膜は、シリコンに不純物を混入させて形成した膜、または、金属シリサイドにより構成した膜である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の受光素子。
【請求項5】
光ディスクを保持して回転駆動する駆動手段と、前記光ディスクにレーザ光を照射する発光素子と、前記レーザ光の前記光ディスクによる反射光を受光する受光素子と、前記受光素子における受光結果に応じて前記光ディスクへの記録又は再生を行う処理部とを備えた光ディスク装置において、
前記受光素子は、分離領域を介して第1受光領域及び第2受光領域を互いに隣接させて形成しており、これらの領域上に反射防止膜を形成し、前記第1受光領域と前記第2受光領域との間の前記反射防止膜上に導電膜を設けた
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
前記第1導電型の半導体基体と、前記半導体基体に第2導電型の第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層に形成される第1受光領域及び第2受光領域を分離するための分離領域を形成する工程と、
前記第1半導体層上に反射防止膜を形成する工程と、
前記第1受光領域が形成される領域と前記第2受光領域が形成される領域との間の前記反射防止膜上に選択的に導電膜を形成する工程と、
前記導電膜をマスクとして第2導電型の不純物を注入により前記第1受光領域と前記第2受光領域を形成する工程とを有する
ことを特徴とする受光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−270254(P2008−270254A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107040(P2007−107040)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】