説明

受液器一体型熱交換器

【課題】配置自由度を低下させることなく、受液器における開口部を閉塞する際の熱害を抑制可能な受液器一体型熱交換器を提供する。
【解決手段】受液器3の構成部品であるモジュレータタンク31は、モジュレータタンク31の長手方向におけるタンクキャップ(閉塞部材)32が接合される開口端部が、第2ヘッダタンク25における長手方向端部に対して、第2ヘッダタンク25の長手方向内側に位置する。さらに、モジュレータタンク31の長手方向におけるタンクキャップ32が接合される開口端部には、第2ヘッダタンク25から離間する隙間部311cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換部と、熱交換部から流出する冷媒を蓄える受液器とが一体となった受液器一体型熱交換器に関するものであり、例えば、車両用冷凍サイクル装置に適用して好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒が流通する複数本のチューブ、およびチューブの長手方向の両端部に配設されると共に、チューブ内と連通する一対のヘッダタンクを有して構成される熱交換部と、一対のヘッダタンクの一方に、ろう付け固定されると共に、熱交換部から流出する冷媒を気液二相に分離して液相冷媒を蓄える受液器と、を備える受液器一体型熱交換器が知られている。
【0003】
受液器一体型熱交換器の受液器では、筒状のモジュレータタンクに乾燥剤やフィルタを収容した状態で、モジュレータタンクの端部に形成された開口部を閉塞部材(タンクキャップ)で密閉している。
【0004】
ここで、モジュレータタンクの開口部の閉鎖を炉中ろう付け後に実施する場合、モジュレータタンクの開口部にタンクキャップを溶接によって接合することがあるが、受液器とヘッダタンクとが隣接しているため、タンクキャップを接合する際の熱が、ヘッダタンクに伝わって、ヘッダタンクの変形やタンクキャップの接合不良等といった熱害を招くといった問題があった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1では、受液器におけるモジュレータタンクの長手方向一端側を、ヘッダタンクよりも長手方向外側に突出させ、当該突出した部位に形成された開口部を閉塞部材で密閉する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−139195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、受液器が熱交換部のヘッダタンクよりも外側に突出する構成としているため、受液器一体型熱交換器の配置自由度が低下するといった問題がある。例えば、受液器一体型熱交換器を構成機器の収容スペースが小さい車両に搭載する場合、受液器一体型熱交換器の配置自由度(搭載自由度)が著しく低下してしまう。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、配置自由度を低下させることなく、受液器における開口部を閉塞する際の熱害を抑制可能な受液器一体型熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、冷媒が流通する複数本のチューブ(21)、およびチューブ(21)の長手方向両端側に配設され、チューブ(21)の長手方向と直交する方向に延びて複数本のチューブ(21)と連通する一対のヘッダタンク(24、25)を有して構成される熱交換部(2)と、熱交換部(2)から流出する冷媒を蓄えると共に、一対のヘッダタンク(24、25)のうち、一方のヘッダタンク(25)に隣接し、一方のヘッダタンク(25)に接合するための座面部(311a)を有する筒状のモジュレータタンク(31)、およびモジュレータタンク(31)の長手方向一端側に形成された開口部(311b)を閉塞するように、溶接によって開口部(311b)に接合される閉塞部材(32)を有して構成される受液器(3)と、を備える受液器一体型熱交換器であって、モジュレータタンク(31)は、モジュレータタンク(31)の長手方向における閉塞部材(32)が接合される開口端部が、一方のヘッダタンク(25)における長手方向端部に対して、一方のヘッダタンク(25)の長手方向内側に位置すると共に、開口端部に、一方のヘッダタンク(25)から離間する隙間部(311c)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
これによると、受液器(3)のモジュレータタンク(31)における開口部(311b)が形成された開口端部が、ヘッダタンク(25)の長手方向端部に対して、長手方向内側に位置するので受液器一体型熱交換器の配置自由度の低下を招くことがない。加えて、モジュレータタンク(31)の開口端部(311b)とヘッダタンク(25)との間に隙間部(311c)を設けているので、溶接により閉塞部材(32)を開口部(311b)に接合する際の熱がヘッダタンク(25)側に伝わることを抑制することができる。
【0011】
従って、受液器一体型熱交換器において、配置自由度を低下させることなく、受液器(3)における開口部(311b)を閉塞する際の熱害を抑制することができる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の受液器一体型熱交換器において、閉塞部材(32)には、少なくとも開口部(311b)と当接する部位にろう材が被覆されていることを特徴とする。
【0013】
これによると、溶接により閉塞部材(32)を開口部(311b)に接合する際の熱によって、閉塞部材(32)に被覆されたろう材が溶融し、溶融したろう材が閉塞部材(32)と開口部(311b)との隙間に回り込むので、閉塞部材(32)と開口部(311b)との間に空隙が発生することを抑制することができる。この結果、受液器(3)における耐圧性を向上させることができる。
【0014】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る凝縮器の正面図である。
【図2】第1実施形態に係る凝縮器の要部を示す上面図である。
【図3】図1のA部の拡大図である。
【図4】タンクキャップの一般的な溶接方法を説明する説明図である。
【図5】第1実施形態に係るタンクキャップの溶接方法を説明する説明図である。
【図6】タンクキャップと上端側開口部の接合部の模式的な断面図である。
【図7】溶接ビード高さを説明するための説明図である。
【図8】第2実施形態に係るタンクキャップ32の断面図である。
【図9】第2実施形態に係るタンクキャップと上端側開口部の接合部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図7に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る凝縮器1の正面図、図2は、本実施形態の凝縮器1の要部を示す上面図(ヘッダタンク24は断面で示す。)、図3は、図1のA部の拡大図である。なお、図1における上下左右の矢印は、車両搭載状態における上下左右の各方向を示している。
【0018】
本実施形態では、本発明の受液器一体型熱交換器を車両用冷凍サイクル装置の凝縮器1に適用している。この凝縮器1は、冷媒と空気とを熱交換させて冷媒を過冷却域まで冷却する、いわゆるサブクールコンデンサである。
【0019】
図1に示すように、凝縮器1は、冷媒と空気とを熱交換させる熱交換部2と、熱交換部2から流出した冷媒を蓄える受液器3とを有して構成されている。
【0020】
熱交換部2は、冷媒が流通する複数本のチューブ21とフィン22とを交互に積層してなるコア部23、およびチューブ21の長手方向両端側に配設されて複数本のチューブ21と連通する一対のヘッダタンク24、25等を有して構成される。
【0021】
コア部23を構成するチューブ21は、冷媒が流れる扁平状の管であり、その長径方向が空気流れ方向(紙面垂直方向)と一致すると共に、その長手方向が水平方向に一致するように、上下方向において、複数本平行に配置されている。
【0022】
フィン22は、波状に成形され、複数本のチューブ21間において、チューブ21の両扁平面に接合されている。このフィン22により空気との伝熱面積を増大させて冷媒と空気との熱交換を促進している。
【0023】
一対のヘッダタンク24、25は、チューブ21の長手方向両端部にてチューブ21の長手方向と直交する方向(図1における上下方向)に延びて、複数本のチューブ21に連通している。一対のヘッダタンク24、25は、チューブ21が挿入接合されるコアプレート241、251、コアプレート241、251と共にタンク内空間を構成するタンク本体部242、252等で構成されている。なお、一対のヘッダタンク24、25としては、押し出し成形により略円筒形状に形成されたものを採用してもよい。
【0024】
一対のヘッダタンク24、25のうち右方側のヘッダタンク24(以下、第1ヘッダタンクと称する。)には、その上端側部位に冷媒入口部243が設けられ、その下端側部位に冷媒出口部244が設けられている。また、第1ヘッダタンク24は、その内部における冷媒入口部243と冷媒出口部244との間に、第1仕切板26が配置されている。
【0025】
一対のヘッダタンク24、25のうち左方側のヘッダタンク25(以下、第2ヘッダタンクと称する。)には、その内部における第2仕切板27が、第1ヘッダタンク24内部の第1仕切板26と同一高さに配置されている。
【0026】
コア部23のうち、一対のヘッダタンク24、25の各仕切板26、27よりも上方側の部位は、冷媒入口部243から流入した気相冷媒と空気とを熱交換させて、冷媒を凝縮させる凝縮部23aを構成している。一方、コア部23のうち、一対のヘッダタンク24、25の各仕切板26、27よりも下方側の部位は、液相冷媒と空気とを熱交換させて、液相冷媒を冷却する過冷却部23bを構成している。このように、コア部23は、冷媒と空気との間で熱交換を行う部位である。
【0027】
なお、熱交換部2を構成する各部材および受液器3を構成する部材の一部は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属材からなり、治具によって仮組みされ、予め各部材の表面に被覆されたろう材によって一体に接合されている。
【0028】
受液器3は、気相冷媒と液相冷媒とを分離して、液相冷媒を溜める気液分離手段を構成するもので、一対のヘッダタンク24、25のうち、第2ヘッダタンク25に隣接して設けられている。
【0029】
受液器3は、第2ヘッダタンク25に接合するための座面部311aを有する有底筒状のモジュレータタンク31、およびモジュレータタンク31の長手方向一端側(上端側)に形成された上端側開口部311bを閉塞するタンクキャップ(閉塞部材)32等を有して構成される。
【0030】
モジュレータタンク31は、その内部に図示しない乾燥材やフィルタが収容されており、円筒状の筒部311、筒部311の下端側の開口部を閉鎖する蓋部312からなる。受液器3の耐圧性を確保するため、モジュレータ31の筒部311は、筒部311に段差(縮径部)を設けることなく、押し出し成形等により一体に形成することが望ましい。なお、筒部311の座面部311aは、筒部311における第2ヘッダタンク25に対向する部位に形成されており、ろう付けによってモジュレータタンク31を第2ヘッダタンク25に接合する接合部を構成する。
【0031】
また、本実施形態のモジュレータタンク31の蓋部312は、モジュレータタンク31の底面を構成している。モジュレータタンク31の下端側に形成された開口部は、蓋部312がろう付けされることで閉鎖されている。なお、当該開口部の内壁面にネジ溝を切って、ねじ山を有する蓋部312によって開口部を閉鎖する構成としてもよい。
【0032】
本実施形態のモジュレータタンク31は、その長手方向におけるタンクキャップ32が接合される上端部(開口端部)が、第2ヘッダタンク25における長手方向端部に対して、第2ヘッダタンク25の長手方向内側に位置するように構成されている。換言すれば、モジュレータタンク31は、モジュレータタンク31の上端部が、第2ヘッダタンク25の上端部よりも下方側に位置するように、第2ヘッダタンク25に接合されている。
【0033】
タンクキャップ32は、図2、図3に示すように、円盤部321、円盤部321の周縁から略垂直に突出した周壁部322を有して構成されている。タンクキャップ32は、圧入により上端側開口部311bに挿嵌した状態で、溶接によりモジュレータタンク31の上端部に接合される。
【0034】
ところで、溶接によって、タンクキャップ32をモジュレータタンク31の上端側開口部311bに接合すると、溶接時の熱が第2ヘッダタンク25に伝わることで、第2ヘッダタンクの変形や、タンクキャップ32の接合不良といった熱害が生ずる虞がある。
【0035】
そこで、本実施形態では、モジュレータタンク31におけるタンクキャップ32が接合される上端部(開口端部)に、第2ヘッダタンク25から離間する隙間部311cを設ける構成としている。この隙間部311cは、例えば、モジュレータタンク31の上端部から下方へ10mm程度に形成すればよい。なお、隙間部311cは、タンクキャップ32を上端側開口部311bに接合する前に、モジュレータタンク31の座面部311aの一部を切除することによって形成することができる。
【0036】
このように構成される凝縮器1では、以下のように冷媒が流れる。すなわち、冷媒入口部243から第1ヘッダタンク24内部の上方側空間に流入した気相冷媒は、凝縮部23aを第1ヘッダタンク24側から第2ヘッダタンク25側へと一方向に流れて空気と熱交換して凝縮する。そして、凝縮部23aで凝縮された冷媒は、第2ヘッダタンク25内部の上方側空間に集合した後、受液器3の内部に流入する(図1に示す矢印a参照)。
【0037】
受液器3に溜まった液相冷媒は、第2ヘッダタンク25内部の下方側空間に流入する(図1に示す矢印b参照)。そして、第2ヘッダタンク25の下方側空間に流入した液相冷媒は、過冷却部23bを第2ヘッダタンク25側から第1ヘッダタンク24側へと一方向に流れて空気と熱交換して冷却される。過冷却部23bにて冷却された液相冷媒は、第1ヘッダタンク24の下方側空間に集合した後、冷媒出口部244から流出する。
【0038】
次に、本実施形態の凝縮器1の製造方法について簡単に説明する。まず、凝縮器1の各構成部品であるチューブ21、フィン22、各ヘッダタンク24、25、受液器3等を製造する(準備工程)。この際、各構成部品には、他部品との接合箇所にろう材を被覆する。
【0039】
そして、凝縮器1の各構成部品を組み付けて、治具等によって各構成部位品を仮固定する(仮組み工程)。なお、受液器3のタンクキャップ32については、モジュレータタンク31の上端側開口部311bに溶接するため、仮組み工程では組み付けない。
【0040】
その後、仮組み工程にて組み付けた組付体を、真空加熱炉または不活性雰囲気の加熱炉等で、各部材に被覆されたろう材の融点以上の温度に組付体を加熱し、ろう材を溶融することにより組付体を一体ろう付けする(ろう付け工程)。
【0041】
なお、モジュレータタンク31におけるタンクキャップ32が接合される上端部(開口端部)に形成する隙間部311cは、予め準備工程にて形成してもよいし、ろう付け工程後に形成してもよい。
【0042】
次に、第2ヘッダタンク25に接合されたモジュレータタンク31の内部に乾燥剤やフィルタを収容した後、上端側開口部311bに、圧入によりタンクキャップ32を挿嵌し、タンクキャップ32の周壁部322と、上端側開口部311bの縁部とを溶接にて接合して上端側開口部311bを閉塞する(溶接工程)。
【0043】
ここで、図4は、タンクキャップ32の周壁部322と、上端側開口部311bの縁部との一般的な溶接方法を説明する説明図、図5は、本実施形態に係るタンクキャップ32の周壁部322と、上端側開口部311bの縁部との溶接方法を説明する説明図である。
【0044】
図4に示すように、タンクキャップ32の周壁部322と、上端側開口部311bの縁部とを溶接にて接合する際、溶接トーチ4をモジュレータタンク31の長手方向に平行とした状態で移動させると、溶接トーチ4の作動域が大きいので、溶接時の作業スペースを充分に確保する必要がある。
【0045】
このため、本実施形態では、図5に示すように、溶接トーチ4の根元側をモジュレータタンク31の径方向の中心側に位置するように傾斜させて、溶接トーチ4の軌跡が円錐を描くように移動させることで、タンクキャップ32を上端側開口部311bに接合するようにしている。これによれば、溶接トーチ4の作動域を小さくすることができるので、溶接時の作業スペースを容易に確保することが可能となる。
【0046】
また、タンクキャップ32と上端側開口部311bの接合部の模式的な断面図である図6に示すように、溶接時には、タンクキャップ32の周壁部322を、上端側開口部311bの縁部よりも外側に突出させることで、熱が他の部位へと逃げ易い上端側開口部311bよりも、タンクキャップ32の周壁部322を優先的に溶融させることで、安定した溶接ビードを形成することが可能となる。この結果、受液器3における耐圧性の向上を図ることができる。
【0047】
これら各工程(準備工程→仮組み工程→ろう付け工程→溶接工程)を経て、本実施形態の凝縮器1が製造される。
【0048】
以上説明した本実施形態の凝縮器1によれば、受液器3のモジュレータタンク31における上端側開口部311bが形成された上端部が、第2ヘッダタンク25の長手方向端部に対して、長手方向内側に位置するので、凝縮器1の配置自由度の低下を招くことがない。
【0049】
これに加えて、モジュレータタンク31の上端部と第2ヘッダタンク25との間に隙間部311cを設けているので、溶接でタンクキャップ32を上端側開口部311bに接合する際の熱が第2ヘッダタンク25側に伝わることを抑制することができる。これにより、溶接時の熱による第2ヘッダタンクの変形や、タンクキャップ32の接合不良といった熱害を抑制することができる。
【0050】
従って、熱交換部2と受液器3とを一体化した凝縮器1(受液器一体型熱交換器)において、配置自由度を低下させることなく、受液器3における上端側開口部311bを閉塞する際の熱害を抑制することができる。
【0051】
より詳細には、モジュレータタンク31の上端部と第2ヘッダタンク25との間に隙間部311cを設けていない構成では、タンクキャップ32を上端側開口部311bに溶接する際に、溶接時の熱が第2ヘッダタンク25側に伝わってしまう。このため、上端側開口部311b側が溶融し難く、溶接ビード高さ(余盛り高さ)H1が低く、受液器3の耐圧性が充分に確保できない可能性がある(図7(a)参照)。
【0052】
これに対して、本実施形態では、モジュレータタンク31の上端部と第2ヘッダタンク25との間に隙間部311cを設けているので、溶接時の熱が第2ヘッダタンク25側に伝わってしまうことを抑制することができる。このため、上端側開口部311b側についても溶融させることができ、溶接ビード高さ(余盛り高さ)H2を高くすることができるので、受液器3の耐圧性が充分に確保することが可能となる(図7(b)参照)。
【0053】
なお、実際に、モジュレータタンク31の上端部と第2ヘッダタンク25との間に隙間部311cを設けていない構成Xの溶接ビード高さH1と、モジュレータタンク31の上端部と第2ヘッダタンク25との間に隙間部311cを設けている構成の溶接ビード高さH2を比較したところ、図7(c)に示すように、本実施形態のように、隙間部311cを設けている構成Yの方が、溶接ビード高さが高くなった(平均値Ave.で約1.0mm増大)。
【0054】
なお、図7は、溶接ビード高さを説明するための説明図であり、図7の(a)が、構成Xにおけるタンクキャップ32と上端側開口部311bの接合部の断面図、(b)が、構成Yにおけるタンクキャップ32と上端側開口部311bの接合部の断面図、(c)が、構成Xと構成Yにおける溶接ビード高さを示す図表である。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図8、図9に基づいて説明する。図8は、第2実施形態に係るタンクキャップ32の断面図、図9は、タンクキャップ32と上端側開口部311bの接合部の断面図を示している。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
【0056】
ここで、タンクキャップ32を上端側開口部311bに溶接する際に、タンクキャップ32と上端側開口部311bの間に空隙(図7(a)のP点参照)が生ずることがある。この空隙(P点)には、その上方側の面に受液器3内の圧力が作用する。このため、タンクキャップ32と上端側開口部311bの間の空隙が大きくなり、当該空隙における上方側の面が拡大すると、空隙(P点)に対して接合部の端面側に向かって突き上げる方向(図中上方側)に作用する力が増大する。このことは、受液器3の耐圧性の低下を招く要因となり、好ましくない。
【0057】
そこで、本実施形態では、受液器3のタンクキャップ32における少なくとも上端側開口部311bと当接する部位にろう材を被覆している。より具体的には、図8に示すように、タンクキャップ32の上端側開口部311bと当接する部位を有する面(図8における下方側の面)にろう材を被覆している。
【0058】
これによると、溶接によってタンクキャップ32を上端側開口部311bに接合する際の熱によって、タンクキャップ32に被覆されたろう材が溶融し、溶融したろう材がタンクキャップ32と上端側開口部311bとの隙間に回り込む。これにより、図9に示すように、タンクキャップ32と上端側開口部311bとの間に空隙をろう材によって埋めることが可能となる。この結果、受液器3における耐圧性を向上させることができる。
【0059】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。例えば、以下のように種々変形可能である。
【0060】
(1)上述の各実施形態では、図5で示す溶接方法によりタンクキャップ32を上端側開口部311bに溶接する例について説明したが、作業スペースが充分に確保できる場合には、図4で示す一般的な溶接方法によりタンクキャップ32を上端側開口部311bに溶接してもよい。
【0061】
(2)上述の各実施形態では、各ヘッダタンク24、25内部に設けた各仕切板26、27により、凝縮器1における冷媒の流れがU字形状となるようにしているが、これに限定されず、例えば、W字形状となるようにしてもよい。
【0062】
(3)上述の各実施形態では、本実施形態の凝縮器1を車両用冷凍サイクル装置に適用した例を説明したが、これに限定されず、様々な装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
2 熱交換部
21 チューブ
24 第1ヘッダタンク(一対のヘッダタンク)
25 第2ヘッダタンク(一対のヘッダタンク)
3 受液器
31 モジュレータタンク
311a 座面部
311b 上端側開口部(開口部)
311c 隙間部
32 タンクキャップ(閉塞部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流通する複数本のチューブ(21)、および前記チューブ(21)の長手方向両端側に配設され、前記チューブ(21)の長手方向と直交する方向に延びて前記複数本のチューブ(21)と連通する一対のヘッダタンク(24、25)を有して構成される熱交換部(2)と、
前記熱交換部(2)から流出する冷媒を蓄えると共に、前記一対のヘッダタンク(24、25)のうち、一方のヘッダタンク(25)に隣接し、前記一方のヘッダタンク(25)に接合するための座面部(311a)を有する筒状のモジュレータタンク(31)、および前記モジュレータタンク(31)の長手方向一端側に形成された開口部(311b)を閉塞するように、溶接によって前記開口部(311b)に接合される閉塞部材(32)を有して構成される受液器(3)と、
を備える受液器一体型熱交換器であって、
前記モジュレータタンク(31)は、
前記モジュレータタンク(31)の長手方向における前記閉塞部材(32)が接合される開口端部が、前記一方のヘッダタンク(25)における長手方向端部に対して、前記一方のヘッダタンク(25)の長手方向内側に位置すると共に、
前記開口端部に、前記一方のヘッダタンク(25)から離間する隙間部(311c)が設けられていることを特徴とする受液器一体型熱交換器。
【請求項2】
前記閉塞部材(32)には、少なくとも前記開口部(311b)と当接する部位にろう材が被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の受液器一体型熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−97992(P2012−97992A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247696(P2010−247696)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】