説明

口腔ケア物質を送達するためのシリコーン感圧性接着剤を含む組成物

口腔に1つまたはそれ以上の口腔ケア物質を送達するための組成物であって、
(a)シリコン結合ヒドロキシルラジカル類を有するシリコーン/樹脂コポリマー、エンドキャップ化シリコン結合ヒドロキシルラジカルを有するシリコーン/樹脂コポリマーおよびこれらの混合物から選択されるシリコーン感圧性接着剤と、
(b)可塑剤と、
(c)水溶性生体接着ポリマーと、
(d)親水性界面活性剤と、
(e)少なくとも1つの口腔ケア物質と、を含む組成物を開示する。
シリコーン/樹脂コポリマーは、シラノールエンドブロック化ポリジアルキルシロキサンおよびヒドロキシルエンドブロック化ケイ酸塩樹脂を重縮合することにより調製される。重縮合生成物は、ポリマーにおけるヒドロキシルラジカルの数を減らすために、さらにトリアルキルシリルエンドキャップ剤と反応することができる。
歯の漂白および白化の用途などのために、これらの組成物を使用する方法がさらに開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔表面、例えば歯に口腔ケア物質を供給するための組成物に関する。組成物は、長期にわたる治療の効果、予防の効果および/または審美的な効果のために適用され、フィルムからの口腔ケア物質の維持された放出を提供する、口腔表面上で付着性のフィルムを形成する。
【背景技術】
【0002】
様々な口腔ケア物質または活性物質が口腔の軟質および硬質の組織に送達されることによる口腔ケア製品は、すでに開示されている。このような口腔ケア製品としては、例えば、歯垢の形成を導くバクテリアを減らすためのフッ化物または他の活性物質などの抗虫歯活性物質の送達のための歯磨剤製品、および息清涼化活性物質および/または抗菌活性物質を含むマウスウォッシュなどのブラッシング補助剤を含む。さらに、歯の表面、すなわち、歯のエナメル質に直接適用可能な過酸化物などの漂白剤が開発されてきた。
【0003】
しかしながら、このような従来の製品形態は、活性物質によって提供される治療の効果、予防の効果および/または審美的な効果を高めるまたは延ばすのに充分な期間、硬質および軟質の口腔組織上に活性物質を維持するために充分な持続性を典型的に提供しないことが判明した。そして、このような従来の製品形態は、比較的短い時間間隔での周期的な再適用なしに、または、マウスピースなどの特別な供給装置または容器なしに、口腔ケア活性物質の持続的送達を提供することが不可能だった。
【0004】
白化漂白剤、殺菌剤および口腔ケア製品の他の活性物質構成成分の直接性(substantivity)を高めるための試みがすでに行われてきた。米国特許第5,425,953号(シントヴ(Sintov)ら)、米国特許第5,438,076号(フリードマン(Friedman)ら)、および米国特許第6,083,421号(ホワン(Huang))を参照のこと。これらの開示は、一般的に、適用後約1〜3時間以内に、唾液によって直ちに溶解される水溶性システムに焦点を合わせている。したがって、それらの耐久性は低く、組成物に存在する活性成分の長期にわたる送達を提供しない。さらに、それらの水溶性の性質は、それらが水性フィルムにおいて不安定な口腔ケア活性物質と共に使用されるのを不可能にする。過炭酸ナトリウムは、このような活性物質の1つの例であり、水性基剤フィルム(aqueous-based film)の高いpH環境において不安定である。
【0005】
比較的高い程度の耐久性を有する適用組成物を提供するために、歯に適用される非水溶性または保護コーティングの使用は記載されてきた。例えば、歯および他の口腔表面に直接性または付着性を提供する主な送達剤として特定の架橋オルガノシロキサン樹脂を含む組成物を開示する、全て共に譲渡された米国特許第6,589,512号、同第6,569,408号、同第6,692,727号、同第6,649,147号および同第6,685,921号を参照のこと。米国特許第5,401,528号(シュミット(Schmidt))は、歯に載置され、その後、硬化によりその場で重合化されて、歯垢付着物から保護するために歯を被覆する、有機的に変性されたケイ酸重縮合物を開示する。このシステムは、活性成分が経時的に放出されることによる真の送達システムではなく、その代わりに、それは、歯垢を引き起こすバクテリアの有害な影響が削減されうる障壁を提供する。このような障壁コーティングは強化された耐久性に関する効果を提供しうるが、それは特定の機器および複雑な適用の使用を必要とし、したがって、それは自宅で実行不可能であり、自己治療のために使用不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
歯および他の口腔表面に対する活性成分の、直接性並びに放出特性が強化され、それにより治療効率を高める様々な口腔ケア活性物質のための便利な送達システムに対する必要性は依然として残る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、口腔に口腔ケア物質を送達するための組成物であって、
(a)シリコン結合ヒドロキシルラジカルを有するシリコーン/樹脂コポリマー、エンドキャップ化シリコン結合ヒドロキシルラジカルを有するシリコーン/樹脂コポリマーおよびこれらの混合物から選択されるシリコーン感圧性接着剤;
(b)可塑剤;
(c)水溶性生体接着ポリマー;
(d)親水性界面活性剤;および
(e)少なくとも1つの口腔ケア物質を含む組成物およびその使用に関する。
【0008】
シリコーン/樹脂コポリマーは、シラノールエンドブロック化ポリジアルキルシロキサンとヒドロキシルエンドブロック化ケイ酸塩樹脂とを重縮合することにより調製される。さらに重縮合生成物は、ポリマーのヒドロキシルラジカルの数を減らすために、トリアルキルシリルエンドキャップ剤と反応することができる。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、本開示を読むことにより当業者には明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書は、本発明を特に指摘しかつ明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、以下の説明からよりよく理解されるものと考えられる。
【0011】
本明細書の以下で使用される全ての百分率および比率は、特に指示がない限り、組成物全体の重量を基準とする。本明細書で言及される成分のすべての百分率、比率および濃度は、特に指示がない限り、成分の実際の量に基づき、市販製品として成分と組み合わされている場合がある溶媒、充填剤、またはその他の物質を含まない。
【0012】
本明細書で参照されている全ての測定は、特に指定がない限り、25℃で行なわれる。
【0013】
本明細書中で、「含む」は、最終結果に影響を及ぼさない他の工程および他の構成成分が追加され得ることを意味する。この用語には、「からなる」および「から本質的になる」という用語が包含される。
【0014】
本明細書で使用する時、用語「含む」およびその変形は非限定的であることを意図し、挙げられた品目の詳細説明は、本発明の材料、組成物、装置および方法でも有用であるその他のものを除外しない。
【0015】
本明細書で使用する時、用語「好ましい」、「好ましくは」およびその変形は、特定の状況下で特定の効果をもたらす本発明の実施形態を指す。しかしながら、同様または他の環境において、他の実施形態が好まれ得る。さらに、1つ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するもではない。
【0016】
「口腔用組成物」とは、通常の使用過程では、特定の治療剤の全身投与の目的で意図的に嚥下されず、むしろ、口腔の活性を目的として実質的にすべての歯の表面および/または口腔組織と接触させるのに充分な時間、口腔内に保持される製品を意味する。本発明の口腔用組成物は、練り歯みがき、歯磨剤、歯用ゲル、歯肉縁下用ゲル、口内洗浄剤、義歯製品、マウススプレー、錠剤、咀しゃく錠またはチューインガムを含む様々な形態を含む。口腔用組成物はまた、口腔表面に直接適用する、または貼付するストリップまたはフィルム上に組み込まれてもよい。
【0017】
本明細書で使用する時、「歯磨剤」という用語は、特に指定がない限り、ペースト、ゲル、または液体製剤を意味する。歯磨剤組成物は、単一相組成物であってもよく、または2つ以上の別々の歯磨剤組成物の組み合わせであってもよい。歯磨剤組成物は、深くまで達する縞状、表面的な縞状、ペーストを囲むゲルを有する多層状またはこれらのいずれかの組み合わせのような、いずれの所望の形態であってもよい。二つ以上の別個の歯磨剤組成物を含む歯磨剤中の各歯磨剤組成物は、ディスペンサーの物理的に分離された区画内に収容され、同時に投与されてもよい。
【0018】
本明細書で使用する時、用語「ディスペンサー」とは、歯磨剤などの組成物を分配するのに好適なあらゆるポンプ、チューブ、または容器を意味する。
【0019】
本明細書で使用する時、用語「歯」とは、天然の歯、並びに人工の歯または歯科補綴物を指す。
【0020】
本明細書で使用する時、用語「口腔に受け入れ可能な担体」とは、本発明の組成物に使用される安全かつ効果的なあらゆる材料を含む。口腔ケア組成物における従来の添加剤のこのような材料には、フッ化物イオン源、抗結石剤または抗歯石剤、緩衝剤、シリカなどの研磨剤、過酸化物源、アルカリ金属重炭酸塩、増粘材料、湿潤剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香料系、甘味剤、キシリトール、着色剤およびこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0021】
本発明は、歯などの口腔表面の上にある組成物の付着および定着を提供する口腔ケア活性物質のための効果的な送達マトリックスとして機能する組成物、並びに被処理表面上のこのような活性物質の有効な放出特性を提供する。したがって口腔用組成物は、(単数または複数)口腔ケア活性物質(1つまたは複数)に加えて、(1)活性物質(1つまたは複数)の貯蔵安定性と、(2)乾燥したまたは湿った口腔表面への付着と、(3)標的の口腔表面に対する活性物質の有効な放出と、(4)活性物質(1つまたは複数)から所望の効果(1つまたは複数)を達成する充分な期間の間の標的表面上での定着と、を提供する材料の組み合わせを含む。本組成物の本質的な成分および任意成分は後述する。
【0022】
シリコーン感圧性接着剤
本組成物は、歯および他の口腔表面への充分な付着および定着を提供するシリコーン感圧性接着剤(PSA)を含む。「充分な付着」は、組成物を表面に付着させ、その上に接触を保持させるために、組成物が過度の圧力を必要とせずに適用後に容易に標的表面に付着することを意味することが意図される。好適なシリコーンPSAは、シラノールエンドブロック化ポリジオルガノシロキサンとヒドロキシルエンドブロック化ケイ酸塩樹脂との間の重縮合生成物およびそのような重縮合生成物のエンキャップ化(encapped)された変形を含む。重縮合生成物は、シリコン結合ヒドロキシルラジカルを有するシリコーン/樹脂コポリマーである。コポリマーがエンドキャップ試薬と反応することは、コポリマーにおけるヒドロキシルラジカルの数を減らすことになる。
【0023】
シリコーン感圧性接着剤(PSA)は当該技術分野において周知であり、数多く市販されている。一般に、シリコーンPSAの接着剤は、シラノールエンドブロック化ポリジオルガノシロキサンおよびヒドロキシルエンドブロックケイ酸塩樹脂を混合または濃縮することによって製造できる。標準のシリコーンPSAと呼ばれる重縮合生成物は、構成成分の単一のブレンドと比較して、より良い凝集性を提供し、したがって本発明の実施において好ましいことが判明した。このような標準のシリコーンPSAの粘着剤は、例えば米国特許第2,736,721号、同第2,814,601号、同第2,857,356号および同第3,528,940号に開示される。開始ケイ酸塩樹脂材料の単位の比率またはポリジオルガノシロキサンとケイ酸塩樹脂との比率を変更することによって、このような材料の接着性は変化し得る。最適接着性を有する例では、樹脂とポリジオルガノシロキサンとの比率が40:60〜65:35の範囲にある。シリコーン感圧性接着剤は、肌にとって非刺激性かつ非感応性であることは公知であり、ニトログリセリンなどの薬品の制御放出におけるものなどの経皮的なドラッグデリバリー用品における接着材層として使用されてきた。商品名「BIО‐PSA」(登録商標)で重縮合されたPDMS/樹脂ネットワークなどの、シリコーン感圧性の医療グレードはダウ・コーニング・コーポレイション(Dow Corning Corporation)から市販されている。
【0024】
全てダウ・コーニング・コーポレイションに譲渡された米国特許第4,584,355号、同第4,585,836号および同第4,491,622号に記載されるように、シリコーンPSAの剤はシリコン結合ヒドロキシルラジカルの含有量を減らすために化学的に処理できる。これは、ヒドロキシル基と、例えばトリメチルシリルエンドキャップ化シリコーンPSAとなるヘキサメチルジシラザンといった、トリアルキルシリルエンドキャップ剤との反応を含む。このようなエンキャップ化(encapped)シリコーンPSAの接着剤は、非エンキャップ(non-encapped)または標準のシリコーンPSAの接着剤と比較して、アミンの存在において向上した化学安定性を呈するため、「適合性アミン(amine compatible)」と標識されてきた。トリメチルシリルエンドキャップ化シリコーンPSAの接着剤のための調製スキーム
を下記に示す。
【化1】

【0025】
例えば、米国再発行特許第35,474号および米国特許第6,337,086号に記載されているように、標準的なエンキャップ(encapped)シリコーンPSAの接着剤と同様に、エンキャップされた(encapped)変形例もまた、治療目的のために経皮的に送達されるのに適した活性医薬品の制御送達のための経皮的なドラッグデリバリー用品に使用されてきた。このようなエンキャップ化(encapped)シリコーンPSAの接着剤は、例えばBIО‐PSA(登録商標)7‐4202および7‐4302として、ダウ・コーニングから市販されている。約200,000〜約275,000の範囲の平均分子量(AMW)を有するBIО‐PSA(登録商標)7‐4202および7−4302のポリマーが、本発明の実施において特に有用である。これらのポリマーは、エチルアセテートなどの適当な溶媒に溶媒和されて、約0.75〜約0.9Pa・S(約750〜約900センチポアズ(cp))の平均粘性を有する溶液を生じることができる。
【0026】
エンドキャップ化シリコーンPSAは、完全にまたは部分的に被覆されてもよい。1つの実施形態において、エンドキャップ化シリコーンは、少なくとも約25%が覆われる。
【0027】
標準シリコーンPSAの接着剤およびエンドキャップ化シリコーンPSAの接着剤は本発明の実施において有用であるが、エンドキャップ化シリコーンPSAは反応性ヒドロキシル末端基が無いまたは数が減るため、改良された安定性およびマトリックスの他の構成成分との互換性を提供し、その一方で、標的表面上での付着および定着のために必要な性質をも有する。シリコーンPSAのエンドキャップの間、一旦それに付着すると、基材を離すのがより難しい比較的固い材料(増粘性)を作製するポリマーの架橋の増加が生じる。したがって、エンドキャップ化シリコーンPSAは、表面に粘着力または初めの接着力、並びに改良された耐久性を提供する。
【0028】
シリコーンPSAによって提供される付着および定着の効果に加えて驚くべき効果は、反感応性である。歯に付着するシリコーンPSAはまた、歯の細管オリフィスを効果的に塞ぐまたは詰まらせ、このことにより、管内で液体の移動が減少し、それゆえ、例えば、冷たい液体に対する感応性が減少すると考えられる。
【0029】
組成物において使用されるシリコーン感圧性接着樹脂のレベルは、製剤の溶解性または混和性の度合いを含む多くの要素に依存する。一般に、本発明に使用されるシリコーンPSAの範囲は、約1%〜約70%の範囲である。歯磨剤において、その濃度は一般的に約1%〜約10%のレベルの範囲である。口腔表面への付着のためにストリップまたはフィルム上に塗るまたは組み込むことにより歯に対する直接適用を行う用途のゲルなどの実施形態では、高濃度が典型的に使用され、これは約10%〜約70%の範囲、特定の実施形態においては約20%〜約60%の範囲にある。
【0030】
可塑剤(Plasticizing Material)
シリコーン感圧性接着剤に加えて、マトリックスの接着性および凝集性を制御するために、本発明の送達マトリックスは可塑剤の1つまたは混合物をさらに含む。特に湿った表面、例えば歯への付着が可能となるように、可塑剤はシリコーンPSAを軟化する。他の構成成分、特に活性物質が沈殿することを防止するために、可塑剤は、充分に高い濃度でマトリックスの粘性を維持するように機能してもよい。可塑剤として、液体ジオルガノポリシロキサン系ポリマーが有用であることが判明した。液体ジオルガノシロキサンポリマーは、25℃で約0.00001〜約1m/s(約10〜約1,000,000センチストーク(cSt))という広い範囲の粘性を有する。本発明の液体ジオルガノポリシロキサン系ポリマーは、式(RSiO)に相当する反復単位を含むジオルガノポリシロキサンポリマーであり、式中、Rは、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル、ビニル、アリル、シクロヘキシル、アミノアルキル、フェニル、フルオロアルキルおよびこれらの混合物からなる群から選択される、1〜6個の炭素原子を含む、一価のラジカルである。本発明で使用される液体ジオルガノポリシロキサンポリマーは、1つ以上のこれらのラジカルをシロキサンポリマー主鎖における置換基として含有してもよい。液体ジオルガノポリシロキサンポリマーは、式(R’’33Si)のトリオルガノシリル基によって終了されることができ、式中、R’’ は、1〜6個の炭素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基およびこれらの混合物を含むラジカルからなる基から選択される一価のラジカルである。液体ジオルガノポリシロキサンポリマーは、シリコーン感圧性接着剤および他の構成成分と、特定の製剤のために必要な比率で混合できる。例えば、比較的低い粘性(約0.00001〜約0.0125m/s(約 10〜約12,500cSt)の範囲の粘性)の液体ジオルガノポリシロキサンポリマーと、)より高い粘性(約0.0125〜約0.1m/s(約12,500〜約100,000cSt))の粘性)のポリマーとの混合物が特に有用であることが判明した。低い粘性の液体ジオルガノポリシロキサンポリマーは、主にシリコーンPSAを軟化するために機能し、より高い粘性の液体ジオルガノポリシロキサンポリマーは高い粘性を維持するのをさらに補助して、カルバミドペルオキシドなどの固体構成成分を懸濁し、マトリックスから沈殿することを防ぐ。1つの実施形態において、可塑剤は、ダウ・コーニングによって供給される商品名「DC Q7−9120」(約0.001m/s(約100cSt))およびDC200液体(約0.06m/s(約60,000cSt)などの液体ポリジメチルシロキサン(PDMS)ポリマーの混合物を含む。これらのような液体ジオルガノポリシロキサンポリマーもゼネラル・エレクトリック・カンパニー(General Electric Company)およびワッカー・シリコーンズ(Wacker Silicones)から入手可能である。
【0031】
可塑剤は、シリコーンPSAを軟化するのに充分な量が含まれる。シリコーンPSA樹脂と液体ジオルガノポリシロキサン系ポリマーとの比率は製品の形状に応じて大きく変化し得る。歯磨剤では、その比率は約2:1〜約1:40である。口腔表面に直接に適用されるゲルにおいては、約10:1〜約1:10、典型的には約6:1〜約1:1の範囲の比率である。
【0032】
生体接着材料
本組成物の第3の構成成分は、より長い期間にわたる湿った環境においてシリコーンPSAの接着力を高めるように機能する生体接着材料である。好適な生体接着材料は、結合、増粘およびフィルム形成などの多くの他の望ましい性質をマトリックスに提供する親水性の性質を有する。生体接着材料は、実質的に無水かつ疎水性のシリコーンマトリックスに、水が入ることを可能にし、それにより、シリコーンマトリックスから歯などの湿った標的表面への活性物質の放出、特に水溶性の活性物質の放出を容易にすると考えられる。有用な生体接着材料には、ソルビトールおよびグリセリンおよびエーテルとエステルなどのこれらの誘導体などの多価アルコール、酸化エチレン、酸化プロピレン、アクリレートおよびビニルピロリドンおよびヒドロキシエチルセルロースポリマーのポリマーまたはコポリマーが挙げられる。実施例としては、ダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company)から商品名「ポリオックス(Polyox)」として市販されているポリエチレンオキシド、BASFから商品名「プルロニック(Pluronic)」および「プルラフロ(Pluraflo)」と示されたエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマー、商品名「カーボポール(Carbopol)」および「ペムレン(Pemulen)」(登録商標)シリーズとして ノヴェオン・インコーポレイテッド(Noveon Incorporated)から入手可能な架橋アクリレートポリマー、リポ・ケミカルズ(Lipo Chemicals)およびロケット・アメリカ(Roquette America)から入手可能なソルビトール粉末または70%のソルビトール溶液、イーストマン・ケミカル(Eastman Chemical)から入手可能なトリアセチン(グリセリンおよび酢酸のトリエステル)、並びに、商品名「プラスドン(Plasdone)」としてISPから入手可能なポリビニルピロリドンなどの市販の材料が挙げられる。
【0033】
生体接着ポリマーは、約0.5重量%〜約50重量%の範囲の濃度で一般に本組成物に存在する。
【0034】
親水性界面活性剤
現在の組成物の他の構成成分は、実質的に疎水性のシリコーン接着剤マトリックスから歯などの湿った表面までの、過酸化物などの活性物質の移動および放出を促進するために機能する親水性界面活性剤である。親水性界面活性剤はマトリックスに水が入るのを可能にし、それは活性物質の放出を開始する。活性物質が開放されると、より多くの水が入るのを可能にするマトリックスにおいて、チャネルが作製され、その後、活性物質のさらなる放出を可能にする。例えば、過酸化物化合物などの活性物質が本送達マトリックスに組み込まれる時、最適な放出特性が達成される。増量された過酸化物は、維持された漂白効果のために一定時間放出された。
【0035】
好適な親水性界面活性剤は、水溶性、低起泡性であって、約3〜約15の範囲の親水性/親油性バランス(HLB)を有する非イオン性界面活性剤を含む。実施例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドなどのグリコールおよびアルキレンオキシドに基づく界面活性剤が挙げられる。特に有用な非イオン性界面活性剤には、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド、エトキシ化および/またはプロポキシ化された脂肪酸、アルコールまたはアルキルフェノールおよびシリコーンポリエーテルのポリマーおよびコポリマーを含む。このような市販の界面活性剤は「乳化剤および洗剤(Emulsifiers & Detergents)」(2005年、マカッチャン(McCutcheon's))第1巻に詳細に記載されている。実施例には、ユニケマ(Uniqema)から商品名「シンペロニック(Synperonic)」、および、BASFから商品名「ルテンゾール(Lutensol)」および「プルラファク(Plurafac)」として供給されるような、エトキシ化されたアルコールまたはアルキルフェノールと、サンヨーケミカル(Sanyo Chemical)から商品名「ニューポル(Newpol)」、および、BASFより商品名「プルロニックL(Pluronic L)」として供給されるような、酸化エチレンおよび酸化プロピレンのブロックコポリマーと、ジェネラル・エレクトリック(General Electric)から商品名「シルウェット(Silwet)」、および、ゴルトシュミット(Goldschmidt)から商品名「アビルEM(Abil EM)」として供給される、シリコーンポリエーテルとが挙げられる。類似のシリコーンポリエーテル界面活性剤は、例えば、表記「DC193液体(DC 193 Fluid)」としてダウ・コーニング(Dow Corning)から、および商品名「シルソフト(Silsoft)」(ジメチコンのポリエチレングリコール誘導体)としてОSIスペシャリティーズ(OSI Specialties)から市販されている。
【0036】
親水性界面活性剤は、一般に約0.5重量%〜10重量%の範囲の量で存在する。
【0037】
口腔ケア物質
上記構成成分の組み合わせから調製された送達マトリックスは湿った口腔表面、特に歯および歯肉に口腔ケア物質を送達するために有用である。
【0038】
口腔ケア物質は、好ましくは目的の使用の際に、適用される口腔表面を損なわずにユーザーによって求められる効果が促進される濃度で活性物質を含む。これらの活性物質が対象にする効果としては、白化、染み漂白、染み除去、歯垢、歯石、虫歯、虫歯穴および象牙質の過敏性の予防および治療と、炎症を起こしたおよび/または出血している歯肉、粘膜創傷、損傷、潰瘍、アフター性潰瘍、ヘルペスおよび歯の膿瘍などの口腔状態の治療と、並びに、上記状態から、および、微生物増殖などの他の原因から生じた口腔の悪臭の除去を含む歯への外観および構造上の変化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
好適な口腔ケア物質には、口腔内での使用に安全であると一般に考えられ、全体的な外観に対する変化および/または口腔の健康を提供するあらゆる材料が挙げられる。本発明の組成物の口腔ケア物質の濃度は、特に明記されない限り、一般に約0.01%〜約50%である。活性物質のタイプおよび処理される条件に応じて、活性物質の濃度は、組成物の約0.1重量%〜約20重量%、または約0.5重量%〜約10重量%、または約1重量%〜約7重量%であってもよい。
【0040】
本発明の口腔ケア組成物または物質には、当該技術分野において以前に開示されている多くの活性物質を挙げてもよい。以下は、本発明において使用されてもよい口腔ケア活性物質の非限定リストである。
【0041】
1.歯の白化活性物質(Teeth Whitening Actives)
歯の白化活性物質は本発明の口腔ケア物質に含まれてもよい。白化に適した活性物質は、過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸、ペルオキソ硫酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。適した過酸化物化合物には、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウムおよびこれらの混合物が挙げられる。好適な金属亜塩素酸塩には、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、および亜塩素酸カリウムが挙げられる。付加的な白化活性物質は、次亜塩素酸塩および二酸化塩素であってもよい。好ましい過炭酸塩は、過炭酸ナトリウムである。好ましい過硫酸塩はオキソンである。
【0042】
2.抗歯石剤
デンタルケア製品に使用される公知の抗歯石剤はリン酸塩を含む。リン酸塩として、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、ポリホスホン酸塩、およびこれらの混合物が挙げられる。ピロリン酸塩は、デンタルケア製品への使用が中でも一番良く知られている。ピロリン酸およびポリリン酸エステルイオンは、歯に供給されるピロリン酸またはポリリン酸エステル塩から得る。本発明の組成物に有用なピロリン酸塩には、ピロリン酸ジアルカリ金属塩、ピロリン酸テトラアルカリ金属塩、およびこれらの混合物が挙げられる。非水和形態並びに水和形態の、ピロリン酸二水素二ナトリウム(NaО)、ピロリン酸四ナトリウム(NaО)、およびピロリン酸四カリウム(KО)は、好適な種類である。上記ピロリン酸塩のいずれも使用されてよいが、ピロリン酸四ナトリウムが好ましい。例えばポリリン酸ナトリウムおよびポリリン酸トリエタノールアミンも有用である。
【0043】
ピロリン酸塩は、カーク・オスマー(Kirk & Othmer)著、「工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」(1982年、ワイリー・インターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-Interscience Publishers))第3版、第17巻、により詳細に記載されている。付加的な抗結石剤には、米国特許第4,590,066号(1986年5月20日発行)に開示されるピロリン酸またはポリリン酸塩と、米国特許第3,429,963号(1969年2月25日発行)および米国特許第4,304,766号(1981年12月8日発行)および米国特許第4,661,341号(1987年4月28日発行)に開示されるようなポリアクリレートおよび他のポリカルボキシレートと、米国特許第4,846,650号(1989年7月11日発行)に開示されるポリエポキシコハク酸塩と、英国特許第490,384号(1937年2月15日付)にて開示されるようなエチレンジアミン四酢酸と、米国特許第3,678,154号(1972年7月18日発行)にて開示されるようなニトリロ三酢酸および関連化合物と、米国特許第3,737,533号(1973年6月5日発行)および米国特許第3,988,443号(1976年10月26日発行)および米国特許第4,877,603号(1989年10月31日発行)に開示されるようなポリホスホネートとを含む。
【0044】
ピロリン酸塩の代わりに、またはピロリン酸塩と組み合わせて使用してもよい他の抗結石剤には、例えば米国特許第4,627,977号に記載のポリアクリレートおよび無水マレイン酸またはマレイン酸のコポリマーおよびメチルビニルエーテル(例えばガントレッツ(Gantrez))、並びに、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、クエン酸亜鉛三水和物、ポリホスフェート(例えば、トリポリホスフェート、ヘキサメタホスフェート)、ジホスホネート(例えば、EHDP、AHP)、ポリペプチド(例えば、ポリアスパラギン酸およびポリグルタミン酸)およびこれらの混合物を含む合成アニオン性ポリマーなどの周知の材料が挙げられる。
【0045】
3.フッ化物イオン源
フッ化物イオン源は、口腔ケア組成物において虫歯予防剤として使用されることが周知である。フッ化物イオンは、この目的のために多数の口腔ケア組成物、特に練り歯磨きに含有される。このような練り歯みがきを開示している特許には、米国特許第3,538,230号(1970年11月3日発行)、同第3,689,637号(1972年9月5日発行)、同第3,711,604号(1973年1月16日発行)、同第3,911,104号(1975年10月7日発行)、同第3,935,306号(1976年1月27日発行)、同第4,040,858号(1977年8月9日発行)が挙げられる。
【0046】
フッ化物イオンのエナメル質への適用は、歯を腐食から保護する役割を果す。多種多様なフッ化物イオン生成物質が、本発明の組成物の可溶性フッ化物源として採用されることができる。好適なフッ化物イオン産出材料の例としては、米国特許第3,535,421号(1970年10月20日発行)および米国特許第3,678,154号(1972年7月18日発行)に、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化スズおよびフッ化アンモニウムなどが見出される。1つの実施形態において、本発明の送達システムを使用する場合、当該組成物は、歯の表面と接触する組成物内に、約50ppm〜10,000ppmのフッ化物イオンを提供し、別の実施形態では、約100ppm〜3000ppmのフッ化物イオンを提供する。
【0047】
4.抗菌剤
抗菌剤も、本発明の口腔ケア組成物または口腔ケア物質に存在することができる。このような薬剤には、米国特許第3,506,720および欧州特許公開第0251591号(1988年1月7日公開)において、一般にトリクロサンと呼ばれ、「メルク・インデックス(Merk Index)」(1989年)第11版の1529ページ(エントリーナンバー9573)に記載されている5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−フェノールと、米国特許第4,994,262号(1991年2月19日)において開示されるものを含むがこれに限定されないフタル酸およびその塩が挙げられ、好ましくは、フタル酸一カリウムマグネシウム、クロルヘキシジン(メルク・インデックス2090番)、アレキシジン(メルク・インデックス222番)、ヘキセチジン(メルク・インデックス4624番)、サンギナリン(メルク・インデックス8320番)、塩化ベンザルコニウム(メルク・インデックス1066番)、サリチルアニリド(メルク・インデックス8299番)、臭化ドミフェン(メルク・インデックス3411番)、塩化セチルピリジニウム(CPC)(メルク・インデックス2024番)、塩化テトラデシルピリジニウム(TPC)、N−テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロライド(TDEPC)、オクテニジン、デルモピノール、オクタピノール、および、他のピペリジノ誘導体、ナイシン(nicin)調製物、亜鉛/スズ/銅イオン薬剤、抗生物質(オ−グメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンおよびメトロニダゾールなど)、および上記の類縁体および塩、チモール、ゲラニオール、カルバクロール、シトラール、ヒノキチオール、オイカリプトール、カテコール(特に4−アリルカテコール)およびそれらの混合物を含む精油、サリチル酸メチル、過酸化水素、金属亜塩素酸塩および上記の物質の混合物が挙げられる。
【0048】
5.抗炎症剤
抗炎症剤は、本発明の口腔ケア組成物または物質にも存在し得る。このような薬剤には、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、アスピリン、ケトプロフェン、ピロキシカムおよびメクロフェナム酸などの非ステロイド性抗炎症剤またはNSAIDが挙げられるが、これに限定されない。ケトロラクのようなNSAIDの使用は、米国特許第5,626,838号(1997年5月6日発行)で請求されている。その中に開示されているのは、口腔または中咽頭にNSAIDの有効量を局所投与することにより、原発または再発の口腔または中咽頭の扁平上皮細胞癌を予防および、または治療する方法である。
【0049】
6.栄養素
栄養素は、口腔の状態を改善させる可能性があり、本発明の口腔ケア組成物または物質に含まれることができる。栄養素には、ミネラル、ビタミン、経口栄養補給剤、経腸栄養補給剤、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
本発明の組成物と共に含有されることができるミネラルには、カルシウム、リン、フッ化物、亜鉛、マンガン、カリウムおよびこれらの混合物が挙げられる。これらのミネラルは、ウォルタース・クルー・カンパニー(Wolters Kluer Company)(ミズーリ州、セントルイス(St. Lous)(ルーズリーフ式医薬品情報サービス)の「薬物の事実と比較(Drug Facts and Comparisons)」(1997年)の10ページ〜17ページに開示される。
【0051】
ビタミンは、ミネラルと共に含有されることもでき、または別個に使用されることもできる。ビタミンには、ビタミンCおよびビタミンD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラ−アミノ安息香酸、ビオフラボノイド、およびこれらの混合物が挙げられる。このようなビタミンは、ウォルタース・クルー・カンパニーの「薬物の事実と比較」(1997年)の3ページ〜10ページ)に開示される。
【0052】
ウォルタース・クルー・カンパニーの「薬物の事実と比較」(1997年)の54ページ〜54eページに開示されるように、口腔栄養補給剤はアミノ酸、脂肪親和物質、魚油およびこれらの混合物を含む。アミノ酸には、L−トリプトファン、L−リシン、メチオニン、スレオニン、レボカルニチンまたはL−カルニチンおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。脂肪親和物質には、コリン、イノシトール、ベタイン、リノール酸、リノレン酸、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。魚油は、大量のオメガ−3(N−3)多不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸を含有する。
【0053】
経腸の栄養補給剤は、ウォルタース・クルー・カンパニー(版権)の「薬物の事実と比較」(1997年)の55ページ〜57ページ)に開示されるように、タンパク質製品、グルコースポリマー、とうもろこし油、ベニバナ油、中鎖トリグリセリドを含むが、これに限定されない。
【0054】
7.口および喉用製品
本発明と共に使用できる他の物質には、一般に既知の口および喉用製品が挙げられる。このような製品は、ウォルタース・クルー・カンパニー(ミズーリ州、セントルイス)(版権)の「薬物の事実と比較」(1997年)の520bページ〜527ページに開示される。これらの製品は抗かび剤、抗菌剤および鎮痛剤を含むが、これに限定されない。
【0055】
8.酸化防止剤
酸化防止剤は、一般に、本発明の組成物のようなものに有用であると認められている。酸化防止剤は、カデナス&パッカー(Cadenas and Packer)(版権)の「酸化防止剤便覧(The Handbook of Antioxidants)」(1996年、マーセル・デッカー社(Marcel Dekker, Inc.))などのテキストに開示されている。本発明の口腔ケア組成物または物質に含有されてもよい酸化防止剤には、ビタミンE、アスコルビン酸、尿酸、カロチノイド、ビタミンA、フラボノイドおよびポリフェノール、薬草系酸化防止剤、メラトニン、アミノインドール、リポ酸およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
9.H−2拮抗物質
ヒスタミン−2(H−2またはH2)受容体拮抗化合物(H−2拮抗物質)は、本発明の口腔ケア組成物に使用してもよい。本明細書において使用されるように、選択的H−2拮抗物質は、H−2受容体を遮断するが、ヒスタミン−1(H−1またはH1)受容体の遮断の有意な活性の無い化合物である。選択的H−2拮抗物質は、消化管や気管のような様々の臓器の平滑筋の収縮を刺激するが、この効果は、典型的な抗ヒスタミン剤である低濃度のメピラミンで抑制することができる。これらのメピラミン感受性ヒスタミン反応に含まれる薬理学的受容体は、H−1受容体(「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・キーモザー(Brit. J. Pharmacol Chemother)」(1966年)第27巻、427ページ)として定義されてきた。ヒスタミンも胃によって酸の分泌を促進し(「プロシーディング・オブ・ザ・ソサエティ・フォー・エクスペリメンタルバイオロジー&メディシン(Proc.Soc. Exp. Biol. Med.)」(1941年)第48巻、65ページ)、心拍数(「ジャーナルオブファーマコロジー(J.Pharmacol)」(1960年)第130巻、450ページ)を高め、ラットの子宮の収縮を抑止し(「ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・キーモザー(J. Pharmacol Chemother)」(1946年)第1巻、278ページ)、これらの作用は、メピラミンおよび関連薬によって拮抗されることができない。口腔ケア組成物または物質に有用なH−2拮抗物質は、メピラミン非感受性の非H−1(H−2)ヒスタミン応答に関与する受容体を遮断し、およびメピラミン感受性のヒスタミン応答に関与する受容体を遮断しないものである。
【0057】
選択的H−2拮抗物質は、H−2拮抗物質の機能についての古典的な前臨床スクリーニングテストにおけるそれらの性能を通してH−2拮抗物質であることが見出される化合物である。選択的H−2拮抗物質は、H−2受容体の機能に特に依存するスクリーニングモデルでは、ヒスタミン媒介効果の競合的または非競合的阻害物質として機能するが、H−1受容体の機能に依存するスクリーニングモデルでは、著しいヒスタミン拮抗物質活性を欠くことが明示され得る化合物として識別される。具体的には、これは、J.W.ブラックら(J. W. Black et al.)の「ヒスタミンH2−受容体の定義および拮抗作用」(「ネイチャー(Nature)」第236巻(1972年4月21日)、385ページ〜390ページに記載のように、自然発生的右の心房を打つモルモットの生体外アッセイおよびラットの胃酸分泌の生体内アッセイによるテストを通じて、J.W.ブラックらにより記載されているように評価される場合、 H−2拮抗物質として分類される化合物を含むが、モルモットの回腸収縮の生体外アッセイまたはマウスの胃の筋肉の収縮の生体内アッセイをJ.W.ブラックらに記載のように評価する場合、H−2拮抗物質活性と関連して、重要なH−1拮抗物質活性が不足することを示す。好ましくは、選択的H−2拮抗物質は、上記のH−1テストにおいて妥当な投与濃度において、有意のH−1活性を全く示さない。典型的な妥当な投与濃度は、ヒスタミンの90%の抑制、好ましくはヒスタミンの99%の抑制が上記H−2テストにおいて実現される最低投与濃度である。
【0058】
選択的H−2拮抗物質は、米国特許第5,294,433号および同第5,364,616号(それぞれ1994年3月15日および1994年11月15日発行、プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)に譲渡)に開示される、上記基準を満たす化合物を含み、シメチジン、エチンチジン、ラニチジン、ICIA−5165、チオチジン、ОRF−17578、ルピチジン、ドネチジン、ファモチジン、ロキサチジン、ピファチジン(pifatidine)、ラムチジン、BL−6548、BMY−25271、ザルチジン、ニザチジン、ミフェンチジン、BMY−25368(SKF−94482)(BL−6341A、ICI−162846、ラミキソチジン、Wy−45727、SR−58042、BMY−25405、ロクスチジン(loxtidine)、DA−4634、ビスフェンチジン、スフォチジン(sufotidine)、エブロチジン、HE−30−256、D−16637、FRG−8813、FRG−8701、インプロミジン、L−643728およびHB−408からなる群から選択的H−2拮抗物質は選択される。特に好ましいのは、シメチジン(SKF−92334)、N−シアノ−N’−メチル−N’’−(2−(((5−メチル−1H−イミダゾール−4−イル)メチル)チオ)エチル)グアニジンである。
【化2】

【0059】
シメチジンはまた、「メルク・インデックス(Merck Index)」第11版(1989年)、354ページ(エントリーナンバー2279)、および「医師用卓上参考書(Physicians' Desk Reference)」第46版(1992年)、2228ページに開示されている。関連する好ましいH−2拮抗物質には、ブリマミドおよびメチアミドが挙げられる。
【0060】
10.鎮痛活性物質
抗疼痛(anti-pain agent)または減感剤も本発明の口腔ケア組成物または物質中に存在できる。そのような薬剤には、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、天然ハーブ、例えば没食子、アサルム、クベビン(Cubebin)、ガランガ、オウゴン、リアングミアンツェン(Liangmianzhen)、バイジ(Baizhi)などを挙げてもよいが、それらには限定されない。
【0061】
11.抗ウイルス性活性物質
本組成物において有用な抗ウイルス性活性物質は、ウィルス感染を治療するために通常使用されるあらゆる公知の活性物質を含む。このような抗ウイルス性の活性物質は、ウォルタース・クルー・カンパニー(版権)の「薬物の事実と比較」(1997年、402(a)ページ〜407(z)ページ)に開示される。具体例には米国特許第5,747,070号(1998年5月5日発行)に開示される抗ウイルス性の活性物質が挙げられる。前記特許は、ウイルスの制御にスズ塩を使用することを開示する。スズ塩および他の抗ウイルス性活性物質は、カークおよびオスマー(Kirk & Othmer)著、「化学技術百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」(1982年、ワイリー・インターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-lnterscience Publishers))第3版、第23巻、42ページ〜71ページに詳述される。本発明で使用され得るスズ塩は、有機スズカルボン酸塩および無機スズハライドを含む。フッ化スズが使用されるが、それは典型的に、別のスズハライドまたは1つ以上のスズカルボン酸塩または他の治療薬との組み合わせでのみ使用される。
【0062】
溶媒
様々な物質の、特にシリコーン感圧性接着剤および可塑剤の、混和性または溶媒和を補助して、例えば持続性のフィルムコーティングとして、歯または他の口腔表面に用意に適用できる接着性および凝集性組成物を形成するために、溶媒は本組成物中に任意に存在してもよい。
【0063】
溶媒は、処理後または適用後に組成物から蒸発し、組成物の約1重量%〜約60重量%である、揮発性の溶媒であってもよい。好適な溶媒には、非毒性炭化水素油、揮発性のシリコーン、非炭化水素溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
本発明において有用な炭化水素油には、約C〜約C20の鎖長を有する炭化水素油などの、60℃〜260℃の範囲の沸点を有するもの、好ましくはC〜C20のイソパラフィンが挙げられる。有用なイソパラフィンの例は、イソドデカン、イソヘキサデカン、イソエイコサン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3−ジメチルヘキサンおよびこれらの混合物である。1つの実施形態において、イソパラフィン溶媒は、例えばパーメチル・コーポレイション(Permethyl Corporation)からパーメチル99A(Permethyl 99A)として入手可能な、式:CH(CH10に対応する、イソドデカンである。
【0065】
揮発性シリコーン液体は、式
【化3】

に対応する3個、4個および5個の員環構造を有するシクロメチコンを含み、式中、Xは約3〜約6である。このような揮発性のシリコーンは、全てダウ・コーニング・コーポレイションからの244液体、344液体および245液体および345液体を含む。
【0066】
本明細書において有用な非炭化水素溶媒の一般的な分類は、60〜200℃の範囲の沸点を有するエステル、ケトン、アルコール、フルオロカーボンおよびフルオロカーボンエーテルを含む。特に有用な非炭化水素溶媒またはこれらの混合物は、接着剤樹脂および可塑剤を可溶化することができるものを含む。このような溶媒には、エタノール、アセトン、ブタノン、エチルアセテート、プロピルアセテート、アミルアセテート、酪酸エチル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテルおよびそれらの混合物を含まれるが、これに限定されない。これらの非炭化水素溶媒は、両方とも米国、ニュージャージー州、フィリスバーグ(Phillispburg)のJ.T.ベイカー(J. T. Baker)から供給されるエチルアセテートおよびメチルエチルケトン、および3Mカンパニー(3M Company)から供給されるHFE(メチルノナフルオロイソブチルエーテルおよびメチルノナフルオロブチルエーテルの混合物)などて容易に入手可能である。
【0067】
レオロジー調整剤
この組成物は、再分散を容易にしてレオロジー的な流れ性質を制御しうる方法で、構成成分の沈殿を抑制し分離を制御するレオロジー調整剤を任意に含んでもよい。本明細書において好適なレオロジー調整剤には、有機変性粘土、シリカ、ポリエチレン、およびこれらの混合物が挙げられる。好適な有機物親和性の粘土は、レオックス(Rheox)からのベントン(Bentone)27および38(商標)などのクオタニウム−18ヘクトライトまたはステアラルコニウムヘクトライト、ベントンISDゲル(商標)などの有機粘土分散、または、レオックスからのベントン34(商標)またはサザンクレイプロダクツ(Southern Clay Products)からのクレイトンシリーズ(商標)などのベントナイト有機変性粘土およびそれらの混合物を含む。好適なシリカは、デグッサ(Degussa)からのアエロシル(Aerosil)(商標)シリーズ、または、カボット・コーポレイション(Cabot Corporation)からのカブ−オーシル(Cab-o-sil)(商標)シリーズなどのヒュームドシリカ、シロデント(Sylodent)(商標)またはW.R.グレース&カンパニー(W. R. Grace & Co.)からのシロックス(Sylox)(商標)シリーズなどのシリカゲル、またはJ.M.ヒューバー・コーポレイション(J. M. Huber Corporation)からのゼオシックス265(Zeothix 265)などの沈殿シリカであってもよい。
【0068】
レオロジー調整剤は、約0.1%〜約30%の濃度で組成物に存在してもよい。
【0069】
他の成分
上記の材料に加えて、多くの他の構成成分は、所望により加えられてもよい。追加の構成成分には、着香剤、甘味剤、キシリトール、乳白剤、着色剤、追加の界面活性剤およびエチレンジアミン四酢酸などのキレート剤が挙げられるが、これに限定されない。適切な着香剤には、非限定的に、ペパーミント油、サッサフラス油、クローブのつぼみ油、ペパーミント、メントール、アネトール、チモール、サリチル酸メチル、オイカリプトール、カッシア、1−メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、オランダセリ油、オキサノン、冬緑油、α−イリソン、スペアミント油、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、桂皮、およびこれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。
【0070】
本明細書において、組成物は実際に適用され、ユーザーがより完全にまたは均一に組成物を適用できるようにになる位置をより正確に示すために、顔料が組成物に添加されてもよい。
【0071】
本組成物は、実質的に非水溶性から水溶性にまで及ぶ。実質的に非水溶性とは、組成物が、ソルビトールなどの吸湿性の材料などの他の材料を有する組成物において通常導入される約5%未満の非常に低い水量を含むことを意味する。商業的に好適な水性の組成物の調製に使用される水は、イオン含有量が低く、有機不純物が含まれていないことが好ましい。水は一般に、本明細書の水性組成物の約5重量%〜約70重量%、好ましくは約20重量%〜約50重量%を構成する。これらの量の水は、他の材料と共に導入される水をプラスして加えられる遊離水を含む。
【0072】
使用方法
本発明を実施する際、ユーザーは、所望の効果、例えば、白化、息の清涼化、虫歯防止、鎮痛、減感、歯肉の健康、歯石の制御等を得るために、口腔ケア物質または必要な物質を含む本明細書の組成物を、歯の表面の所望の領域へ適用する必要がある。組成物は、例えば歯肉組織または粘膜組織などの他の口腔表面または他のあらゆる口腔表面にも適用されてもよい。組成物は、ブラシ、ペンアプリケータ、ドウズ・フットアプリケータ(doe's foot applicator)等、または指でも適用できる。口腔用組成物はまた、口腔表面に直接適用する、または貼付するストリップまたはフィルム上に組み込まれてもよい。可撓性を有し適合する好適なストリップの例は、例えば同一出願人による、米国特許第5,879,691号、同第5,891,453号、同第5,894,017号、同第5,989,569号、同第6,045,811号、同第6,096,328号、および同第6,136,297号に記載されている。
【0073】
口腔ケア物質を含むフィルムは、組成物が適用された表面上で急速に形成される。口腔ケア物質が時間とともにフィルムから放出されるので、口腔ケア物質の長期間の送達が可能になる。所望の期間が経過した後、または歯のブラッシングまたは他の口腔ケア活動の通常の進行において、口腔表面の拭き取り、ブラッシングまたはすすぎにより、あらゆる残留製品が簡単に除去される。組成物は、口腔に適用されると殆ど目立たないことが好ましい。
【0074】
本発明の組成物を適用する前に口腔を下処理する必要はない。例えば、ユーザーは組成物を適用する前に、歯のブラッシングか、または、口をすすぐことを選択してもしなくてもよい。組成物が適用される前に、口腔の表面が乾燥していること、または、唾液または水によって極度に湿っていることを必要としない。湿った表面に対する付着が改良されることは、本組成物の利点である。
【0075】
本発明は、ヒトの口腔に口腔ケア物質を送達する方法のみでなく、動物、例えば家庭用ペットまたはその他家畜または捕獲された動物の口腔に口腔ケア物質を送達する方法に関することも理解されたい。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある実施形態をさらに説明および実証する。これら実施例は、説明の目的のためのみに提示するものであって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変更が可能であるので、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0077】
例I−歯の白化組成物
本組成物は、歯の漂白または白化用途に有益に使用される。本発明による歯の白化組成物の例は、ブラッシングし、歯のエナメル質表面へ塗りつけ、または歯に組成物で被覆されるストリップを付着することによって、歯に適用可能な液体組成物である。本発明の実質的に無水の疎水性シリコーン感圧性接着剤は、保管の間および使用前に、過酸化物などの白化剤の分解を防ぐ安定したビヒクルを提供する。歯に塗付すると、適用された白化組成物は、例えば約5分から長くて一晩の長期間にわたって白化剤を放出する白化剤を含有する製品の付着性の層を形成する。適用層は歯の表面に付着し、放出された白化剤は、組成物が適用された歯を白くする。過酸化物源は、特に白化剤として有用である。
【0078】
本発明による一連の歯の白化組成物は、成分を重量%で下記に示されている。均一分散または溶液を形成するためにミキサーによって提供されるステンレス鋼タンクなどの好適な容器内で、組成物の成分を添加し混合することによって白化組成物は調製される。
【表1】

1.ダウ・コーニングからのバイオPSA(登録商標)7−4202または7−4302の適合性アミン接着剤樹脂。
2.尿素過酸化水素(35%HО)または過炭酸ナトリウム
3.ダウ・コーニング200液体(ポリジメチルシロキサン)
4.ダウ・コーニングQ7−9120液体(ポリジメチルシロキサン)
5.ダウ・コーニングDC193液体、GEからのシルウェットL(Silwet L)またはОSIスペシャリティーズからのシルソフト(Silsoft)(430、440、475、840)
6.ダウポリオックス(Dow Polyox)WSR301
7.ノヴオン(Noveon)からのペミュレン(Pemulen)TR−2(アクリレートクロスポリマー)またはカーボポール(Carbopol)
【0079】
上記で開示され、示された歯の白化組成物による実施形態には、多くの利点がある。例えば、それらはより良い耐久性を提供し、特に歯の表面への漂白剤の送達を持続した。それらは、従来の製品の形状によって達成可能なものとは大きく異なる効果をもたらすことが可能な製品の便利で個別かつ使いやすい形状をも提供する。
【0080】
白化、染み漂白および染み除去に加えて更なる効果を提供するために、他の口腔ケア活性物質、例えば、フッ化ナトリウムまたはフッ化スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、ピロリン酸塩、クロルヘキシジン、ポリリン酸塩、トリクロサン、酵素および香料は、類似した組成物内の漂白剤に加えて、またはその代わりに、使用されてもよい。これらの効果には、フッ素添加および再石灰化、歯垢および歯石の除去および予防が挙げられるが、これに限定されない。香料は、処理組成物の消費者受容性を高める。さらに、水性系フィルムシステムの不安定性を呈する口腔ケア活性物質が、安定性を損なわずに本明細書における実質的に無水の組成物に組み込まれることができる。
【0081】
例II.漂白性能
内因性の歯の染みに対する組成物の漂白性能は、以下の処置を使用して評価され得る。抜歯されたヒトの臼歯からあらゆる軟組織を取り除いてきれいにし、研磨/予防し、あらゆる歯石または外因性の染みを除去した。臼歯の標本はレゴ(Lego)(登録商標)ブロックベースラインに取り付けられ、CIE L*a*b*値が、偏光フィルタによる制御された照明条件(D55光)の下で、フジ(Fuji)HC1000デジタルカメラを使用して測定される。その後、臼歯は、一晩、水またはリン酸緩衝液内で再水和される。その後、臼歯は単数または複数のテスト組成物による処理のための溶液から除去される。各々のテストストリップは、剥離ライナーから分離され、各臼歯を包む。2、3滴のヒト唾液は、各テスト臼歯に添加された。次に臼歯は、処置が持続している間は37℃でインキュベータ中に置かれる。各臼歯は、4日以上の観察期間にわたって、組成物によって1日2回30分間処理される。30分の処理時間の後、臼歯はインキュベータから除去され、あらゆる残存組成物を除去するためにに蒸留水で洗浄される。臼歯は、各々の処理の間に水または緩衝液内に投入される。それぞれの処置時間の間は、2〜4時間あける。
【0082】
各処理の後、標本は拭き取り乾燥され、三次元色空間の数式であるL*、a*およびb*の変化を測定されたが、式中、L*はy軸上の明度を示し、a*は×軸上の彩度(赤〜緑)を示し、b*はz軸上の彩度(黄〜青)を表す。
【0083】
シリコーンPSAおよび6%の過酸化水素を含む本発明による組成物の漂白性能は、6.5日にわたって上記の処置を用いて、同じ濃度の過酸化水素(クレストホワイトストリップス(Crest Whitestrips)(登録商標)として販売される市販の白化製品)を含むカーボポールゲル剤組成物と比較された。テスト組成物は、約0.2gのカーボポールゲル組成物を含むクレストホワイトストリップス(登録商標)と比較して、約0.3gのテスト組成物(例1D)を含む実験ストリップである。簡約化された結果は、デルタb*対ベースラインの変化として下記の表IIに示される。口腔環境をシミュレーションしている水性の条件の下で、同じ濃度の過酸化水素を含むカーボポールゲルに対比して、シリコーンPSAを含む本マトリックスが、抜歯されたヒトの歯の内因性の変色/染みに、より大きな漂白効果を提供することを、これらの結果は実証する。
【表2】

【0084】
例III シリコーンPSAマトリックスからの漂白剤(過酸化物)の放出
シリコーンPSAマトリックス中の、生体接着材料および界面活性剤が過酸化物放出に及ぼす効果は、以下の処置を用いて研究された。テスト組成物は、40%〜60%のシリコーンPSA、可塑剤として15%〜20%のPDMS、6%〜10%の過酸化物(UHPとして添加)を含む。使用される界面活性剤は、5%のダウ・コーニングDC193液体であった。
【0085】
1リットルの脱イオン水(溶出溶媒)は、ガラスビーカー内に計量され、このビーカーは、研究室のジャッキに配置され、インペラブレードがビーカーの400mLの印と同じ高さとなるようジャッキの高さを調整する。その後、ミキサーは作動され、速度は100rpmにセットされた。
【0086】
ストリップ(約0.3gのテスト組成物を含む)は選択され、剥離ライナーから分離され、計量されて、1× 8cm(3インチ) の非つや消しガラスの顕微鏡スライド上へ置かれる。ストリップの一端は、より小さい固定クリップを使用してスライドに取り付けられ、一方、スライドがミキサーを保持するスタンドに固定される際に、ストリップの反対側の端部はその場に保持される。スライド/ストリップ組立体を固定した後に、スライドがビーカーの壁に対して平行で、ゲル表面はインペラの回転に接線方向であるように配置された。その後、スライドは水に沈められ、ストリップから放出される過酸化物のモニタリングが開始した。過酸化物放出は、溶出溶媒を1時間以上にわたって選択された時点(1分、5分、10分など)でサンプリングすることによって観察された。各試料の過酸化物濃度は、指標ストリップ法(RQフレックス反射計測テスト(RQ Flex reflectometric test))を使用して測定された。
【0087】
研究終了後、ストリップ上のゲル組成物は、エチルアセテートにおいて溶解された。溶解されたゲルは溶出溶媒へ戻され、得られた混合物は乳化された。過酸化物総含有量は、エマルションの過酸化物濃度を測定することで決定された。下記の表IIIは、時間の関数として、マトリックスから放出される過酸化物の%を示す。シリコーンPSAマトリックスから過酸化物の制御放出および持続放出にとって、界面活性剤および生体接着材料が重要なことを結果は示す。
【表3】

【0088】
例IV−歯磨剤組成物
本発明による歯磨剤の組成物は、重量%で組成物構成成分を示される。これらの組成物は従来の方法を用いて作製する。
【表4】

1.ダウ・コーニングからのBIO−PSA(登録商標)7−4202または7−4302適合性アミン接着剤樹脂
2.ダウ・コーニングDC193液体、ジェネラル・エレクトリックからのシルウェットL、またはOSIスペシャリティーズからのシルソフト(430、440、475、840)
【0089】
本明細書に開示されている寸法および値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に指定されない限り、各こうした寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0090】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。この文書における用語のいずれかの意味または定義が、参考として組み込まれる文献における用語のいずれかの意味または定義と対立する範囲については、本文書におけるその用語に与えられた意味または定義を適用するものとする。
【0091】
本発明の特定の実施形態を説明記述してきたが、本発明の精神範囲から逸脱することなく他の様々な変更修正を行えることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔に口腔ケア物質を送達するための組成物であって、
(a)シリコン結合ヒドロキシルラジカルを有するシリコーン/樹脂コポリマー、エンドキャップ化シリコン結合ヒドロキシルラジカルを有するシリコーン/樹脂コポリマー、およびこれらの混合物から選択されるシリコーン感圧性接着剤;
(b)前記シリコーン感圧性接着剤を軟化可能な可塑剤;
(c)水溶性生体接着ポリマー;
(d)親水性界面活性剤;および
(e)少なくとも1つの口腔ケア物質
を含む、組成物。
【請求項2】
前記シリコーン/樹脂コポリマーが、シラノールエンドブロック化ポリジアルキルシロキサンとヒドロキシルエンドブロック化ケイ酸塩樹脂とを重縮合することにより調製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エンドキャップ化シリコーン/樹脂コポリマーは、シラノールエンドブロック化ポリジアルキルシロキサンとヒドロキシルエンドブロック化ケイ酸塩樹脂とを重縮合し、さらに、該重縮合生成物とトリアルキルシリルエンドキャップ剤とを反応させることにより調製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記シラノールエンドブロック化ポリジオルガノシロキサンが、シラノールエンドブロック化ポリジメチルシロキサンであり、前記重縮合生成物が、ヘキサメチルジシラザンを用いてエンドキャップされる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも25%の前記シリコーン/樹脂コポリマーがエンドキャップされる、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記感圧性接着剤が、1%〜70%の濃度で前記組成物に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記可塑剤が、式(RSiO)の反復単位を含む液体ジオルガノポリシロキサンポリマーであり、式(RSi)のトリオルガノシリル基によって終了し、式中、Rは1〜6個の炭素原子を含む一価のラジカルから選択され、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル、ビニル、アリル、シクロヘキシル、アミノアルキル、フェニル、フルオロアルキル、およびこれらの混合物から選択され、Rは、1〜6個の炭素原子を含む一価性のラジカル、ヒドロキシル基、アルコキシル基、およびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記液体ジオルガノポリシロキサンポリマー可塑剤は、25℃で0.00001m/s〜1m/s(10センチストーク(cSt)〜1,000,000センチストーク(cSt))の粘性を有するポリジメチルシロキサンの1つまたは混合物であり、好ましくは0.00001m/s〜0.0125m/s(10cSt〜12,500cSt)の粘性を有するポリジメチルシロキサンと0.0125m/s〜0.1m/s(12,500cSt〜100,000cSt)の範囲の粘性を有するポリジメチルシロキサンとの混合物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記生体接着材料が、多価アルコールおよびそのエーテルまたはエステル誘導体;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、アクリレート、およびビニルピロリドンのポリマーまたはコポリマー;ヒドロキシエチルセルロースポリマー;並びにこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記親水性界面活性剤が、3〜15の範囲の親水性/親油性バランス(HLB)を有する水溶性の非イオン性界面活性剤から選択され、好ましくは、前記親水性界面活性剤が、シリコーンポリエーテルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の0.01重量%〜50重量%の口腔ケア物質を含み、前記口腔ケア物質が、歯の白化活性物質、抗歯石剤、フッ化物イオン源、抗菌剤、抗炎症剤、栄養素、酸化防止剤、H2拮抗物質、鎮痛活性物質、減感活性物質、抗ウィルス剤、抗真菌剤、着香剤、甘味剤、キシリトール、乳白剤、着色剤、キレート剤、界面活性剤、顔料、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの口腔ケア活性物質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記口腔ケア物質が、過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸、過硫酸塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される歯の白化活性物質であり、好ましくは、前記歯の白化活性物質は、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過炭酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記白化活性物質のための安定剤を更に含み、前記安定剤は、スズ酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、およびこれらの混合物から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
炭化水素油、揮発性シリコーン、非炭化水素溶媒、およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒をさらに含み、好ましくは、前記溶媒が、エタノール、イソドデカン、ブタノン、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物を、少なくとも1つの水溶性生体接着材料と、少なくとも1つの親水性界面活性剤と、シリコーン感圧性接着剤と、前記シリコーン接着剤の可塑剤との混合物で処方することによる、実質的に無水のシリコーン接着性口腔ケア組成物から送達される口腔ケア活性物質を制御放出および持続放出するための方法。
【請求項16】
口腔の少なくとも1つの表面に口腔ケア物質を送達する方法であって、
(1)
(a)シリコン結合ヒドロキシルラジカルを有するシリコーン/樹脂コポリマー、エンドキャップ化シリコン結合ヒドロキシルラジカルを有するシリコーン/樹脂コポリマー、およびこれらの混合物から選択されるシリコーン感圧性接着剤;
(b)前記シリコーン感圧性接着剤を軟化可能な可塑剤;
(c)水溶性生体接着ポリマー;
(d)親水性界面活性剤;および
(e)少なくとも1つの口腔ケア物質
を含む組成物を前記口腔表面に適用する工程と、
(2)前記組成物に前記口腔の表面上でフィルムを形成させる工程
を含み、
好ましくは、前記組成物は歯の白化活性物質を含み、前記組成物が適用される前記口腔表面は、歯のエナメル質である、方法。
【請求項17】
口腔表面に口腔ケア物質を送達するための口腔ケア組成物の製造において、シリコン結合ヒドロキシルラジカルを有するシリコーン/樹脂コポリマー、エンドキャップ化シリコン結合ヒドロキシルラジカルを有するシリコーン/樹脂コポリマー、およびこれらの混合物から選択されるシリコーン感圧性接着剤の使用。

【公表番号】特表2009−523782(P2009−523782A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550884(P2008−550884)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050086
【国際公開番号】WO2007/083253
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】