説明

可動接点体及びその製造方法

【課題】各種電子機器の操作に用いられる可動接点体及びその製造方法に関し、簡易な構成で安価なものを提供することを目的とする。
【解決手段】EL素子13下面の所定箇所に、略ドーム状のダイアフラム15を貼付して可動接点体16を構成すると共に、EL素子13をダイアフラム15に沿わせ、略ドーム状に形成することによって、ダイアフラム15を収納するスペーサ等が不要となり、簡易な構成で安価な可動接点体及びその製造方法を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の操作に用いられる照光式の可動接点体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器、特に携帯電話等の携帯端末機器においては、周囲が暗い場合でも、スイッチや押釦等の識別や操作が可能なように、EL素子等を発光させ、操作部の照光を行うものが増えており、使い易く安価なものが求められている。
【0003】
このような従来のスイッチについて、図4を用いて説明する。
【0004】
図4は従来のスイッチの分解断面図であり、同図において、1は光透過性でフィルム状の可撓性を有する基材で、この基材1下面には、光透過電極層や発光体層、誘電体層、背面電極層、これらを覆う絶縁層等が順次重ねて積層されたEL層2が形成されて、EL素子3が構成されている。
【0005】
また、4は絶縁樹脂製のスペーサで、複数の貫通孔4Aが形成されると共に、上下面に塗布された接着剤(図示せず)によって、EL素子3下面に貼付されている。
【0006】
さらに、5は略ドーム状で薄板導電金属製のダイアフラムで、スペーサ4に形成された複数の貫通孔4A内に収納されると共に、凸状に形成された中央頂点部が、接着剤(図示せず)によってEL素子3下面に貼付されて、可動接点体6が構成されている。
【0007】
そして、このような可動接点体6が、スペーサ4下面の接着剤によって、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板7上面に貼付されると共に、配線基板7上面に形成された複数の固定接点8に、ダイアフラム5の外周が載置され、中央部下面が間隙を空けて対向するようにして、スイッチが構成される。
【0008】
また、このように構成されたスイッチが、押釦や表示シート等の背面に配置されて電子機器の操作部に装着されると共に、EL素子3の光透過電極層や背面電極層、配線基板7の固定接点8が配線パターンやコネクタ等によって、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0009】
以上の構成において、機器の電子回路からEL素子3の光透過電極層と背面電極層に電圧が印加されると、EL素子3が発光し、この光が機器の押釦や表示シート等を後方から照光するため、周囲が暗い場合でも、操作部の識別や操作を容易に行うことが可能となる。
【0010】
また、押釦等によってダイアフラム5上方のEL素子3を押圧操作すると、EL素子3が下方へ撓んでダイアフラム5の中央頂点部を押圧するため、ダイアフラム5が反転して中央部下面が固定接点8に接触し、ダイアフラム5を介して複数の固定接点8の電気的接離が行われ、機器の各機能の切換えが行われるように構成されているものであった。
【0011】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平11−250758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の可動接点体においては、EL素子3下面にスペーサ4を貼付し、このスペーサ4の貫通孔4A内にダイアフラム5を収納しているため、構成部品数が多く、製作にも時間を要するという課題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡易な構成で安価な可動接点体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0015】
本発明の請求項1に記載の発明は、EL素子下面の所定箇所に、略ドーム状のダイアフラムを貼付して可動接点体を構成したものであり、ダイアフラムを収納するスペーサ等が不要となり、簡易な構成で安価な可動接点体を得ることができるという作用を有する。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、EL素子下面にセパレータを貼付し、ダイアフラム下面を覆ったものであり、可動接点体の搬送時や配線基板への貼付時の、ダイアフラム下面への塵埃等の付着を防ぎ、固定接点との安定した接触を行うことができるという作用を有する。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、EL素子の光透過電極層または発光体層、背面電極層のいずれかを、ダイアフラム近傍にのみ形成したものであり、ダイアフラム近傍以外にはこれらの層が形成されていないため、EL素子を安価なものにすることができるという作用を有する。
【0018】
請求項4に記載の発明は、EL素子下面にダイアフラムを貼付した後、EL素子をダイアフラムに沿わせ、略ドーム状に成形して請求項1記載の可動接点体を製作するものであり、EL素子下面がダイアフラムに密着し隙間がなくなるため、EL素子の押圧操作によって、ダイアフラムを確実に反転動作させることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明によれば、簡易な構成で安価な可動接点体、及びその製造方法を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。
【0021】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0022】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図であり、同図において、11は光透過性の可撓性を有する基材で、厚さ5〜50μm前後のポリエチレンテレフタレートやポリイミド等のフィルムから形成されると共に、この下面には酸化インジウム錫等を分散した光透過性合成樹脂や、ポリエチレンジオキシチオフェン等の導電性樹脂を印刷して、光透過電極層が形成されている。
【0023】
そして、この光透過性電極層下面には、フッ素ゴム等の合成樹脂内に発光の母材となる硫化亜鉛等の蛍光体を分散した発光体層や、同じく合成樹脂にチタン酸バリウム等を分散した誘電体層、樹脂に銀やカーボン等を分散させた背面電極層、これらを覆うエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の絶縁層等が順次重ねて積層されたEL層12が印刷形成されて、EL素子13が構成されている。
【0024】
また、15は略ドーム状で銅合金や鋼等の薄板導電金属製のダイアフラムで、中央頂点部が凸状に形成されると共に、EL素子13下面に塗布されたアクリルやブチルゴム等の接着剤(図示せず)によって、複数のダイアフラム15がEL素子13下面に所定間隔で貼付されている。
【0025】
さらに、EL素子13のダイアフラム15が貼付された箇所は、ダイアフラム15に沿わせ略ドーム状に形成され、EL素子13下面とダイアフラム15が密着して、可動接点体16が構成されている。
【0026】
なお、このように構成された可動接点体16は、図2(a)の分解断面図に示すように、先ず、EL素子13下面に塗布された接着剤によって、複数のダイアフラム15をEL素子13下面に所定間隔で貼付した後、この下面に、厚さ50〜100μm前後でポリエチレンテレフタレート等のフィルム状のセパレータ17を貼付し、このセパレータ17によってダイアフラム15下面を覆う。
【0027】
そして、次に、図2(b)に示すように、ダイアフラム15の間のEL素子13上面を、フォーミング治具18で加熱加圧して、EL素子13をダイアフラム15に沿わせ略ドーム状に成形することによって、EL素子13下面がダイアフラム15全体にほぼ密着した、可動接点体16の製作を行うことができる。
【0028】
また、このような可動接点体16は、下面にセパレータ17を貼付した状態で保管や搬送が行われた後、図3の分解断面図に示すように、セパレータ17を剥離し、EL素子13下面の接着剤によって、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された配線基板7上面に貼付されると共に、配線基板7上面に形成された複数の固定接点8に、ダイアフラム15の外周が載置され、中央部下面が間隙を空けて対向するようにして、スイッチが形成される。
【0029】
なお、以上のように、可動接点体16はセパレータ17が貼付され、ダイアフラム15下面が覆われた状態で保管や搬送が行われ、配線基板7上面に貼付する直前にセパレータ17が剥離されるため、ダイアフラム15下面への塵埃等の付着がなく、清浄な状態でスイッチへの組立てが行われる。
【0030】
また、この時、可動接点体16のEL素子13がダイアフラム15に沿って略ドーム状に形成され、ダイアフラム15のほぼ全体がEL素子13下面に密着して接着されているため、セパレータ17を剥離する際や、配線基板7に貼付する際に、ダイアフラム15の脱落や位置ずれ等がなく、スイッチの組立てを容易に行うことが可能なように構成されている。
【0031】
さらに、このように構成されたスイッチが、押釦や表示シート等の背面に配置されて電子機器の操作部に装着されると共に、EL素子13の光透過電極層や背面電極層、配線基板7の固定接点8が配線パターンやコネクタ等によって、機器の電子回路(図示せず)に接続される。
【0032】
以上の構成において、機器の電子回路からEL素子13の光透過電極層と背面電極層に電圧が印加されると、EL素子13が発光し、この光が機器の押釦や表示シート等を後方から照光するため、周囲が暗い場合でも、操作部の識別や操作を容易に行うことが可能となる。
【0033】
なお、この時、EL素子13の基材11下面の全面に光透過電極層や発光体層、誘電体層、背面電極層を形成するのではなく、これらのうち特に高価な材料が使用されている層のいずれかを、照光が必要であるダイアフラム15上方やその近傍にのみ形成すれば、使用材料を減らし、EL素子13を安価に形成することができる。
【0034】
また、押釦等によってダイアフラム15上方のEL素子13を押圧操作すると、EL素子13が下方へ撓んでダイアフラム15の中央頂点部を押圧するため、ダイアフラム15が反転して中央部下面が固定接点8に接触し、ダイアフラム15を介して複数の固定接点8の電気的接離が行われ、機器の各機能の切換えが行われる。
【0035】
そして、この時、可動接点体16のEL素子13が略ドーム状に形成され、EL素子13下面がダイアフラム15のほぼ全体に密着しているため、中心ずれや斜め押し等が生じづらく、ダイアフラム15の確実な反転動作が行われるように構成されている。
【0036】
このように本実施の形態によれば、EL素子13下面の所定箇所に、略ドーム状のダイアフラム15を貼付して可動接点体16を構成することによって、ダイアフラム15を収納するスペーサ等が不要となり、簡易な構成で安価な可動接点体及びその製造方法を得ることができるものである。
【0037】
そして、EL素子13をダイアフラム15に沿わせ、略ドーム状に形成することによって、EL素子13下面がダイアフラム15のほぼ全体に密着し隙間がなくなるため、スイッチへの組立てを容易に行えると共に、押圧操作時に、ダイアフラム15を確実に反転動作させることができる。
【0038】
また、EL素子13下面にセパレータ17を貼付し、ダイアフラム15下面を覆うことによって、可動接点体15の搬送時や配線基板7への貼付時の、ダイアフラム15下面への塵埃等の付着を防ぎ、固定接点8との安定した接触を行うことができる。
【0039】
さらに、EL素子13の光透過電極層または発光体層、背面電極層のいずれかを、ダイアフラム15近傍にのみ形成することによって、EL素子13を安価に形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明による可動接点体及びその製造方法は、簡易な構成で安価なものが得られ、各種電子機器の操作用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態による可動接点体の断面図
【図2】同分解断面図
【図3】同スイッチの分解断面図
【図4】従来のスイッチの分解断面図
【符号の説明】
【0042】
7 配線基板
8 固定接点
11 基材
12 EL層
13 EL素子
15 ダイアフラム
16 可動接点体
17 セパレータ
18 フォーミング治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性で可撓性の基材下面に、光透過電極層と発光体層、背面電極層が順次重ねて形成されたEL素子と、略ドーム状で薄板導電金属製のダイアフラムからなり、上記EL素子下面の所定箇所に上記ダイアフラムを貼付した可動接点体。
【請求項2】
EL素子下面にセパレータを貼付し、ダイアフラム下面を覆った請求項1記載の可動接点体。
【請求項3】
EL素子の光透過電極層または発光体層、背面電極層のいずれかを、ダイアフラム近傍にのみ形成した請求項1記載の可動接点体。
【請求項4】
EL素子下面にダイアフラムを貼付した後、上記EL素子を上記ダイアフラムに沿わせ略ドーム状に成形する請求項1記載の可動接点体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−12285(P2007−12285A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187668(P2005−187668)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】