説明

可塑化装置における原料供給量の制御方法

【課題】最適な原料供給量が容易に設定可能な可塑化装置の原料供給量の制御方法を提供する。
【解決手段】減圧した加熱筒4内へ原料供給手段11から供給する原料Mを可塑化する際に発生する水分やガス分を吸引し排出するように構成した可塑化装置1の原料供給量の制御方法であって、ある種類の原料Mによる成形サイクルの可塑化工程において、原料供給量が、前記水分やガス分を良好に流通させ、かつ前記可塑化を安定して実行するように制限されて制御されるとき、その原料供給量の設定値を記憶させ、他の種類の原料Mによる成形サイクルの可塑化工程では、前記記憶された原料供給量の設定値に基づいて可塑化を行う可塑化装置1の原料供給量の制御方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧した加熱筒内へ原料供給手段から供給する原料を可塑化する際に発生する水分やガス分を吸引し排出するように構成した可塑化装置の原料供給量の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野の可塑化装置は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1において、原料供給量の制御に関して、「このときの当該定量フィーダ機構による原料供給、より具体的には前記可塑化部のフィードゾーンに対する原料供給は、操作盤ボックスに設けられた各種スイッチ類の操作によって微調整可能となっており、前記可塑化部における1ショットにて成形される成形品に対応した定量の原料を間欠的に供給することによって、いわゆる「飢餓的成形」が実現されるように構成されている。「飢餓的成形」は、前記可塑化部の可塑化シリンダーにおけるフィードゾーンに適宜のガス抜き空隙を常時形成するように維持しつつメインスクリューに対して原料供給を行うものであり、加熱された原料から可塑化シリンダー内に発生した水分やガスを上述したガス抜き空隙から原料供給口を通して機外に排出する構成になされている。」との記載がある。
【0003】
しかしながら、前記飢餓的成形を実現するための原料供給量の設定は、特許文献1に記載のCCDカメラが設けられていたとしても、数成形サイクルにわたって試行錯誤を繰り返しながら求める必要があり、原料と時間を浪費することになる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−69143号公報(段落0019)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題を解決すべくなされたものであって、最適な原料供給量が容易に設定可能な可塑化装置の原料供給量の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、減圧した加熱筒内へ原料供給手段から供給する原料を可塑化する際に発生する水分やガス分を吸引し排出するように構成した可塑化装置の原料供給量の制御方法であって、ある種類の原料による成形サイクルの可塑化工程において、前記水分やガス分を良好に流通させ、かつ前記可塑化を安定して実行するように原料供給量が制限されて制御されるとき、その原料供給量の設定値を記憶させ、他の種類の原料による成形サイクルの可塑化工程では、前記記憶された原料供給量の設定値に基づいて可塑化を行う可塑化装置の原料供給量の制御方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明における可塑化装置の原料供給量の制御方法によれば、最適な原料供給量が容易に設定可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の可塑化装置の原料供給量の制御方法を実施する可塑化装置の縦断面図とブロック図である。
【0009】
可塑化装置1は、先端面にノズル6を螺着した加熱筒4と、加熱筒4の内孔に回転往復動可能に嵌挿したスクリュ5と、スクリュ5を前後進及び回転駆動する射出・回転駆動手段2と、スクリュ5の回転角度及びスクリュ5の移動距離に変換された回転角度を検出するエンコーダ3と、加熱筒4の後部上面に穿孔した上部開口7に原料落下路8を介して配設された原料供給手段11と、原料供給手段11の上面に立設したホッパ14と、ホッパ14を三に区画する開閉自在のシャッタ13と、エンコーダ3等の信号を入力部18に入力し記憶部19や設定・表示部20のデータに基づいてCPU16でシーケンス処理や演算処理した結果を出力部17を介して射出・回転駆動手段2、フィードスクリュ駆動手段10、シャッタ13等へ出力する制御装置15とからなる。なお、可塑化装置1は、図示しない型締装置とともに射出成形機を構成するものであるが、射出・回転駆動手段2の射出駆動部及びエンコーダ3の移動距離検出部を削除すれば押出機として機能する。
【0010】
原料供給手段11は、フィードスクリュ9と、フィードスクリュ9を回転可能に嵌挿する筒体21と、フィードスクリュ9を回転駆動するフィードスクリュ回転駆動手段10とからなる。制御装置15により所定の回転数で回転駆動されるフィードスクリュ回転駆動手段10は、フィードスクリュ9を回転駆動して、筒体21の一方の上面に立設したホッパ14から落下・供給された原料Mを搬送して、筒体21の他方の下面に設けた原料落下路8から加熱筒4内へ供給する。なお、原料供給手段11は、フィードスクリュ9を有するものとして例示したが、可変絞り部を有するものとしてもよい。また、ホッパ14は、シャッタ13を有するものとして例示したが、回転升を有するものとしてもよい。
【0011】
加熱筒4の上部開口7から加熱筒4内のスクリュ5の溝に落下した原料Mは、原料供給手段11で搬送量が制限されているので、スクリュ5の溝内に粗に堆積する。特に、スクリュ5の後部はフィードゾーンとなっており、それより前方のコンプレッションゾーンやさらにその前方のメータリングゾーンにおける溝深さよりも深くなっている。すなわち、原料Mはフィードゾーンからコンプレッションゾーンへ移送されつつ溶融され、スクリュ5の溝深さの減少に応じて容積を減少させてゆく。そして、メータリングゾーンでは原料Mはすべて溶融状態の溶融原料となり、メータリングゾーンの浅い溝を充填する。そのため、スクリュ5前部は気密となり、スクリュ5後部は加熱筒4後端部との間のパッキング(図示せず)で気密となり、原料落下路8と原料供給手段11は気密に連結され、ホッパ14は交互に開閉するシャッタ13,13で原料供給手段11との間を気密にするので、加熱筒4内は気密に保たれる。そして、筒体21の原料落下路8上面に真空ポンプからなる真空源12が接続されているので、加熱筒4内は減圧される。
【0012】
このように減圧された状況で原料Mは可塑化されるので、原料Mに包含されていた水分やガス分が溶融過程の原料Mから放出される。それらの水分やガス分は、スクリュ5のフィードゾーンの溝を流通して後部へ流動するので、原料Mの供給量が制限されて少ないとき程、効果的に水分やガス分を真空源12に吸引させることができる。ところが、原料Mの供給量が制限されて少ないときには、可塑化状態が不安定になり、加熱筒4内のスクリュ5前方に搬送される溶融原料の量が増減し、スクリュ5の後退速度が不安定となる。このようにして可塑化された溶融原料は、その密度や温度が不均一となっており、それを金型へ射出しても良好な成形品は成形されることはない。
【0013】
そこで、実際の可塑化工程における条件出し制御では、原料落下路8から加熱筒4内を観察したり、スクリュ5の回転駆動力を監視したりして、スクリュ5のフィードゾーンの溝が原料Mで充填されない状態を現出させるとともに、可塑化中のスクリュ5の後退速度を観察して、スクリュ5の後退速度が一旦停止する等の不安定な状態にならないような兼ね合い状態を求めるべく、制御装置15の設定・表示部20を操作して原料供給手段11の原料供給量を調節する。そして、このようにして求めた原料供給量の設定値は、同じ種類の原料間で同じとなることは当然であるが、他の種類の原料に適用しても大きく異なることはない。
【0014】
制御装置15の設定・表示部20における原料供給量の設定は、0から100%までの任意の数値であり、その数値に基づいてフィードスクリュ9を可塑化のためのスクリュ5の回転速度に同調させて回転駆動制御する。すなわち、原料供給量の設定が100%のときは、所定の回転速度で回転するスクリュ5が出し得る最大の可塑化量のための原料Mを搬送・供給可能なフィードスクリュ9の回転速度が制御され、原料供給量の設定が100%から低下するに応じて、スクリュ5のフィードゾーンにおける原料Mの量が減少して可塑化量は減少してゆく。そして、原料供給量の設定とフィードスクリュ9の回転速度とは比例関係にあり、フィードバック制御で精密に制御されている。このように、フィードスクリュ9は、スクリュ5のフィードゾーンを原料Mが充満しないように原料供給量を制限して原料Mを搬送するのである。なお、このような原料供給量の設定をスクリュ5の回転速度に同調させた比率の設定であるものとして例示したが、原料供給量の設定をスクリュ5の回転速度とは関連しない単独のものとして設定するようにしてもよい。
【0015】
このようにして、ある種類の原料Mによる可塑化が適宜な原料供給量で水分やガス分の流通が良好でかつスクリュ5の後退速度が良好に実行されているとき、設定・表示部20における特定の操作で手動的に、又は特定の成形工程の終了時等に自動的に、原料供給量の設定値が制御装置15の記憶部19に格納されて記憶される。そして、この記憶された原料供給量の設定値は、他の種類の原料Mによる成形サイクルが開始されるときに、記憶部19から読み出され設定・表示部20における他の種類の原料Mによる成形サイクルの成形条件として自動的に格納され、他の種類の原料Mによる成形サイクルの可塑化工程で使用される。なお、原料供給量の設定値は、可塑化工程中一定のものであってもよいし、可塑化工程中のスクリュ5の後退距離か又は可塑化工程開始からの時間経過に応じて変化するプログラム状のものであってもよい。
【0016】
こうして、他の種類の原料Mによる成形サイクルの開始時に、0〜100%の広い設定範囲の中から試行錯誤を繰返して原料供給量の設定値を求める必要がなくなり、極めて容易に最適な原料供給量を設定することができる。
【0017】
上記の他の種類の原料Mは、ある種類の原料Mと同一名称の原料であっても形状、製造ロット、メーカ等の異なる場合も含む。そして、その場合には、この発明により最適な原料供給量に略等しい設定値に自動設定されるが、僅かな設定変更が必要になるときもある。そのため、自動設定された原料供給量の設定値は、その値に加減して微調整が可能となっている。この微調整は、ある種類の原料Mとは明らかに種類の異なる他の原料Mで成形サイクルを開始するときには、さらに必要となるが、それに対応可能な調整幅を有している。ところで、制御装置15はその記憶部19にフィードスクリュ9の回転速度の設定値を含むスクリュ5の回転速度や射出速度等の金型毎に予め求められた成形条件群を有し、その成形条件群のデータを設定・表示部20に呼び出してその金型の成形サイクルを実行する。そのときには、本発明の記憶された原料供給量の設定値は成形条件群のフィードスクリュ9の回転速度の設定値データで上書きされる。
【0018】
この発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の可塑化装置の原料供給量の制御方法を実施する可塑化装置の縦断面図とブロック図である。
【符号の説明】
【0020】
1 可塑化装置
2 射出・回転駆動手段
3 エンコーダ
4 加熱筒
5 スクリュ
6 ノズル
7 上部開口
8 原料落下路
9 フィードスクリュ
10 フィードスクリュ回転駆動手段
11 原料供給手段
12 真空源
13 シャッタ
14 ホッパ
15 制御装置
16 CPU
17 出力部
18 入力部
19 記憶部
20 設定・表示部
21 筒体
M 原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧した加熱筒内へ原料供給手段から供給する原料を可塑化する際に発生する水分やガス分を吸引し排出するように構成した可塑化装置の原料供給量の制御方法であって、
ある種類の原料による成形サイクルの可塑化工程において、前記水分やガス分を良好に流通させ、かつ前記可塑化を安定して実行するように原料供給量が制限されて制御されるとき、その原料供給量の設定値を記憶させ、他の種類の原料による成形サイクルの可塑化工程では、前記記憶された原料供給量の設定値に基づいて可塑化を行うことを特徴とする可塑化装置の原料供給量の制御方法。
【請求項2】
前記他の種類の原料の成形サイクルの可塑化工程では、原料供給量は、前記記憶された原料供給量の設定値に加減して調節可能である請求項1に記載の可塑化装置の原料供給量の制御方法。
【請求項3】
記憶された前記原料供給量の設定値は、成形条件群のデータが呼び出されたときには、成形条件群の原料供給量の設定値に対応するデータで上書きされる請求項1又は2に記載の可塑化装置の原料供給量の制御方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−61674(P2009−61674A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231480(P2007−231480)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】