説明

可変バルブタイミング装置

【課題】可変動弁手段で発生する油圧の変動が、ヘッドカバー油路に到達することを抑制できる可変バルブタイミング装置を提供すること。
【解決手段】吸気弁または排気弁の開閉時期を可変とする可変バルブタイミング装置であって、作動油の流出入に応じてクランクシャフトとカムシャフトとの位相差を変更する可変動弁手段26と、可変動弁手段に流出入する作動油の流量を制御する流量制御手段60とを接続する作動油の油路63を備える。カムキャップ47に形成され、可変動弁手段に接続されたカムキャップ油路63bと、ヘッドカバー48に形成され、流量制御手段に接続されたヘッドカバー油路63aとは、接続部油路65で接続される。接続部油路は、ヘッドカバー油路に対応する壁部65b、およびカムキャップ油路に対応する壁部65cと比較して径方向に突出し、かつ、弾性部材で構成され、作動油の油圧によって径方向に変形可能な特定壁部65aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変バルブタイミング装置に関し、特に、内燃機関のクランクシャフトとカムシャフトとの間の回転の位相差を変更することで、前記内燃機関の吸気弁または排気弁の開閉時期を可変とする可変バルブタイミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気弁または排気弁の開閉時期を可変とする可変バルブタイミング装置が知られている。可変バルブタイミング装置は、クランクシャフトとカムシャフトとの間の回転の位相差を変更することで上記開閉時期を変更する可変動弁手段を備える。可変動弁手段は、例えば、圧送される作動油の流出入に応じて上記位相差を変更する。可変動弁手段に流出入する作動油の流量は、流量制御手段(例えば、オイルコントロールバルブ)により制御される。
【0003】
特許文献1には、シリンダヘッドのヘッドカバーにオイルコントロールバルブが設けられた可変バルブタイミング機構が開示されている。上記特許文献1の可変バルブタイミング機構では、ヘッドカバーに設けられたオイル孔と、シリンダヘッドとともにカムシャフトを回転自在に支持するカムキャップに設けられたオイル通路とを介してオイルコントロールバルブと可変バルブタイミング機構(可変動弁手段)とが接続されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−107479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、流量制御手段と可変動弁手段とを接続する油路が、ヘッドカバーに設けられた部分を有している場合、衝撃的な油圧により、ヘッドカバーから騒音が発生する虞がある。例えば、カムシャフトのトルク変動により可変動弁手段が押し戻されることにより、可変動弁手段において油圧の変動(衝撃的な油圧)が発生することがある。その油圧の変動が、上記油路のうちヘッドカバーに設けられた部分に到達すると、ヘッドカバーから騒音となって放出されやすい。
【0006】
可変動弁手段で発生する油圧の変動が、油路のうちヘッドカバーに設けられた部分に到達することを抑制できることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、内燃機関のクランクシャフトとカムシャフトとの間の回転の位相差を変更することで、内燃機関の吸気弁または排気弁の開閉時期を可変とする可変バルブタイミング装置において、カムシャフトに設けられ、かつ、圧送される作動油の流出入に応じて位相差を変更する可変動弁手段と、可変動弁手段に流出入する作動油の流量を制御する流量制御手段と、流量制御手段と可変動弁手段とを接続する作動油の油路とを備え、カムシャフトは、内燃機関のシリンダヘッドに設けられたカムキャップにより回転可能に支持されており、油路が、カムキャップに形成されたカムキャップ油路と、シリンダヘッドを覆うヘッドカバーに形成されたヘッドカバー油路とを有する場合に、可変動弁手段で発生する油圧の変動が、ヘッドカバー油路に到達することを抑制できる可変バルブタイミング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の可変バルブタイミング装置は、内燃機関のクランクシャフトとカムシャフトとの間の回転の位相差を変更することで、前記内燃機関の吸気弁または排気弁の開閉時期を可変とする可変バルブタイミング装置であって、前記カムシャフトに設けられ、かつ、圧送される作動油の流出入に応じて前記位相差を変更する可変動弁手段と、前記可変動弁手段に流出入する前記作動油の流量を制御する流量制御手段と、前記流量制御手段と前記可変動弁手段とを接続する前記作動油の油路とを備え、前記カムシャフトは、前記内燃機関のシリンダヘッドに設けられたカムキャップにより回転可能に支持されており、前記油路は、前記カムキャップに形成され、前記可変動弁手段に接続されたカムキャップ油路と、前記シリンダヘッドを覆うヘッドカバーに形成され、前記流量制御手段に接続されたヘッドカバー油路と、前記カムキャップ油路と前記ヘッドカバー油路とを接続する接続部油路とを有し、前記接続部油路は、前記ヘッドカバー油路に対応する壁部および前記カムキャップ油路に対応する壁部と比較して径方向に突出し、かつ、弾性部材で構成され、前記作動油の油圧によって径方向に変形可能な特定壁部を有していることを特徴とする。
【0009】
本発明の可変バルブタイミング装置において、前記可変動弁手段は、本体と、前記本体に設けられた進角室および遅角室とを有し、前記流量制御手段により前記進角室に前記作動油が供給されることで前記開閉時期を進角させ、前記流量制御手段により前記遅角室に前記作動油が供給されることで前記開閉時期を遅角させるものであって、前記油路は、前記進角室に接続された進角側油路と、前記遅角室に接続された遅角側油路とを有し、前記進角側油路の前記接続部油路と、前記遅角側油路の前記接続部油路とが隣接しており、かつ、共通の前記特定壁部で隔てられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の可変バルブタイミング装置において、前記進角側油路の前記接続部油路、および、前記遅角側油路の前記接続部油路のうち、一方の前記接続部油路は、他方の前記接続部油路の径方向外方の位置に、環状に形成されており、前記一方の前記接続部油路の外径側、および内径側は、それぞれシール部材によりシールされており、前記特定壁部は、前記内径側をシールするシール部材に設けられ、かつ、前記一方の前記接続部油路と、前記他方の前記接続部油路とを隔てていることを特徴とする。
【0011】
本発明の可変バルブタイミング装置において、前記特定壁部は、前記カムキャップと前記ヘッドカバーとの間に形成された隙間に配置されており、前記隙間のうち、少なくとも前記特定壁部の配置箇所の領域における前記カムキャップと前記ヘッドカバーとの間隔は、前記特定壁部が径方向に変形可能となる大きさであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可変バルブタイミング装置は、カムシャフトに設けられた可変動弁手段と、可変動弁手段に流出入する作動油の流量を制御する流量制御手段と、流量制御手段と可変動弁手段とを接続する作動油の油路とを備え、油路は、カムキャップに形成されたカムキャップ油路と、ヘッドカバーに形成されたヘッドカバー油路と、カムキャップ油路とヘッドカバー油路とを接続する接続部油路とを有している。
【0013】
接続部油路は、ヘッドカバー油路に対応する壁部およびカムキャップ油路に対応する壁部と比較して径方向に突出し、かつ、弾性部材で構成され、作動油の圧力によって径方向に変形可能な特定壁部を有している。可変動弁手段で油圧の変動が生じた場合、特定壁部が径方向に変形することにより、油圧の変動が吸収される。よって、可変動弁手段で発生する油圧の変動が、ヘッドカバー油路に到達することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の可変バルブタイミング装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1から図3を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、内燃機関のクランクシャフトとカムシャフトとの間の回転の位相差を変更することで、前記内燃機関の吸気弁または排気弁の開閉時期を可変とする可変バルブタイミング装置に関する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る装置の概略構成図、図2は、本実施形態に係る可変バルブタイミング装置の概略構成を示す拡大図である。
【0017】
本実施形態の可変バルブタイミング装置(図1および図2の符号100参照)は、オイルコントロールバルブ(OCV、図2の符号60参照)と可変動弁機構(図2の符号26参照)とを接続する制御油路としての油路63,64を備える。油路63,64は、ヘッドカバー(図2の符号48参照)に形成されたヘッドカバー油路63a,64a、および、カムキャップ(図2の符号47参照)に形成されたカムキャップ油路63b,64bをそれぞれ有している。
【0018】
ヘッドカバー油路63aとカムキャップ油路63bとの接続部に設けられたシール部材(図3の符号65参照)には、以下に詳しく説明するように、油圧の衝撃を緩和する構造(油圧変動吸収部65a)が設けられている。これにより、衝撃的油圧を発生する可変動弁機構26と、音が放出されるヘッドカバー48との間で油撃を解消することができる。よって、本実施形態によれば、ヘッドカバー48の放射音が低減され、騒音の防止が可能となる。
【0019】
本実施形態に係る可変バルブタイミング装置100(図1参照)は、エンジン(内燃機関)1において、クランクシャフト14に対する吸気カムシャフト21または排気カムシャフト22の回転位相を変更することで、吸気弁19または排気弁20の開閉時期(バルブタイミング)を可変とする可変動弁手段としての可変動弁機構26を備える。エンジン1は、乗用車、トラックなどの車両に搭載されるエンジンであり、シリンダボア12内に往復運動可能に設けられるピストン13が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルエンジンであるが、可変バルブタイミング装置100は、この形式の内燃機関に限らず、種々の内燃機関に適用することができる。
【0020】
本実施形態に係る可変バルブタイミング装置100が適用される内燃機関としてのエンジン1は、図1に示すように、シリンダブロック10上にシリンダヘッド11が締結されており、シリンダブロック10に形成された複数のシリンダボア12にピストン13がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。シリンダブロック10の下部にクランクシャフト14が回転自在に支持されており、各ピストン13はコネクティングロッド15を介してこのクランクシャフト14にそれぞれ連結されている。
【0021】
燃焼室16は、シリンダブロック10におけるシリンダボア12の壁面とシリンダヘッド11の下面とピストン13の頂面により構成されている。この燃焼室16は、上部(シリンダヘッド11の下面)の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。この燃焼室16の上部、つまり、シリンダヘッド11の下面に吸気ポート17および排気ポート18が対向して形成されており、この吸気ポート17および排気ポート18に対して吸気弁19および排気弁20の下端部がそれぞれ位置している。吸気弁19および排気弁20は、シリンダヘッド11に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート17および排気ポート18を閉止する方向(図1にて上方)に付勢支持されている。また、シリンダヘッド11には、吸気カムシャフト21および排気カムシャフト22が回転自在に支持されており、図示しない吸気カムおよび排気カムが吸気弁19および排気弁20の上端部にそれぞれ接触している。
【0022】
また、クランクシャフト14に固結されたクランクシャフトスプロケット14aと、吸気カムシャフト21および排気カムシャフト22にそれぞれ装着された各カムシャフトスプロケット23,24とに、無端のタイミングチェーン25が掛け回されており、クランクシャフト14と吸気カムシャフト21、排気カムシャフト22とが連動可能となっている。
【0023】
クランクシャフト14の駆動力がタイミングチェーン25を介して吸気カムシャフト21および排気カムシャフト22に伝達されると、吸気カムシャフト21および排気カムシャフト22がクランクシャフト14と同期して回転する。これにより、吸気カムおよび排気カムが吸気弁19および排気弁20をそれぞれ所定のタイミングで上下移動させることで、吸気ポート17および排気ポート18を開閉し、吸気ポート17と燃焼室16、燃焼室16と排気ポート18とをそれぞれ連通することができる。この場合、吸気カムシャフト21および排気カムシャフト22は、クランクシャフト14が2回転(720度)する間にそれぞれ1回転(360度)するように設定されている。そのため、エンジン1は、クランクシャフト14が2回転する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4行程を実行することとなり、このとき、吸気カムシャフト21および排気カムシャフト22がそれぞれ1回転することとなる。
【0024】
また、このエンジン1の動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁19および排気弁20を最適な開閉タイミング(開閉時期)に制御する吸気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)26Aおよび排気可変動弁機構26Bを備える。可変動弁手段としての吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bは、後述するECU110により制御される。吸気可変動弁機構26A、排気可変動弁機構26Bは、後述する進角室56(図2参照)および遅角室57(図2参照)に導入される作動油の油圧に応じてクランクシャフト14と吸気カムシャフト21、排気カムシャフト22との回転位相(位相差)をそれぞれ変更することで吸気弁19、排気弁20の開閉時期(バルブタイミング)を可変とするものである。
【0025】
なお、以下の説明では、吸気可変動弁機構26Aと排気可変動弁機構26Bとはほぼ同様な構成であることから、主として排気可変動弁機構26Bを説明し、吸気可変動弁機構26Aの説明はできるだけ省略する。また、吸気可変動弁機構26Aと排気可変動弁機構26Bとを特に区別する必要がない場合、単に「可変動弁機構26」と略記する。さらに、以下の説明では特に断りのない限り、排気カムシャフト22は、単に「カムシャフト22」と略記し、排気カムシャフトスプロケット24は、単に「カムシャフトスプロケット24」と略記する。
【0026】
この可変動弁機構26は、カムシャフト22の軸端部にVVTコントローラ27が設けられて構成され、作動油の油圧(作動流体)をこのVVTコントローラ27の後述する進角室56および遅角室57に作用させることによりカムシャフトスプロケット24に対するカムシャフト22の位相を変更し、排気弁20の開閉時期を進角または遅角することができるものである。この場合、可変動弁機構26は、排気弁20の作用角(開放期間)を一定としてその開閉時期を進角または遅角させる。カムシャフト22には、その回転位相を検出するカムポジションセンサ28が設けられている。
【0027】
吸気ポート17には、吸気マニホールド29を介してサージタンク30が連結されている。サージタンク30には、吸気管31が連結されており、この吸気管31の空気取入口にはエアクリーナ32が取付けられている。そして、このエアクリーナ32の下流側にスロットル弁33を有する電子スロットル装置34が設けられている。また、シリンダヘッド11には、吸気ポート17に燃料を噴射するインジェクタ35が装着されている。このインジェクタ35は、吸気ポート17側に位置して上下方向に所定角度傾斜して配置されている。各気筒に装着されるインジェクタ35には、図示しないが、燃料供給管を介して燃料ポンプおよび燃料タンクが連結されている。更に、シリンダヘッド11には、燃焼室16の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ36が装着されている。
【0028】
一方、排気ポート18には、排気マニホールド37を介して排気管38が連結されている。排気管38には、排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどの有害物質を浄化処理する三元触媒39,40が装着されている。
【0029】
車両には、マイクロコンピュータを中心として構成されエンジン1の各部を制御可能な電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit、以下、特に断りのない限り「ECU110」と略記する。)110が搭載されている。このECU110は、インジェクタ35の燃料噴射タイミングや点火プラグ36の点火時期などを制御可能となっており、吸入空気量、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定している。
【0030】
吸気管31の上流側にはエアフローセンサ41が装着され、計測した吸入空気量をECU110に出力している。また、電子スロットル装置34にはスロットルポジションセンサ42が設けられ、現在のスロットル開度をECU110に出力している。また、シリンダブロック10には水温センサ43が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU110に出力している。また、アクセルペダルにはアクセルポジションセンサ44が設けられており、現在のアクセル開度をECU110に出力している。
【0031】
排気管38における三元触媒39,40よりも上流側には、O(酸素)センサ45が設けられている。このOセンサ45は、排気空燃比が、理論空燃比を基準にしてリッチ側にある場合とリーン側にある場合とで出力が急変する出力特性を有する酸素センサである。Oセンサ45は、燃焼室16から排気管38に排出された排気ガスのストイキ空燃比を検出し、ストイキ検出信号をECU110に出力している。ECU110は、このOセンサ45が検出したストイキ検出信号に基づいて空燃比フィードバック制御を実行している。
【0032】
クランクシャフト14にはクランク角センサ46が設けられている。クランク角センサ46は、検出したクランク角度をECU110に出力する。ECU110は、クランク角度に基づいてエンジン回転数を算出すると共に、各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別する。なお、ここで、エンジン回転数は、クランクシャフト14の回転速度に対応し、このクランクシャフト14の回転速度が高くなれば、クランクシャフト14の回転数、すなわち、エンジン1のエンジン回転数も高くなる。
【0033】
ECU110は、検出した吸入空気量、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料噴射期間)、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタ35および点火プラグ36を駆動して燃料噴射および点火を実行する。
【0034】
また、ECU110は、エンジン運転状態に基づいて可変動弁機構26を制御可能となっている。即ち、低温時、エンジン始動時、アイドル運転時や軽負荷時には、ECU110は、可変動弁機構26を制御して排気弁20の開放時期と吸気弁19の開放時期とのオーバーラップをなくすことで、排気ガスが吸気ポート17または燃焼室16に吹き返す量を少なくし、燃焼安定および燃費向上を可能とする。また、中負荷時には、ECU110は、可変動弁機構26によりこのオーバーラップを大きくすることで、内部EGR率を高めて排ガス浄化効率を向上させると共に、ポンピングロスを低減して燃費向上を可能とする。更に、高負荷低中回転時には、ECU110は、可変動弁機構26により吸気弁19の閉止時期を進角することで、吸気が吸気ポート17に吹き返す量を少なくして体積効率を向上させる。そして、高負荷高回転時には、ECU110は、可変動弁機構26により吸気弁19の閉止時期を回転数に合わせて遅角することで、吸入空気の慣性力に合わせたタイミングとして体積効率を向上させる。
【0035】
次に、図2を参照して、可変バルブタイミング装置100について説明する。図2は、可変バルブタイミング装置100の概略構成を示す拡大図である。
【0036】
図2に示すように、カムシャフト22は、シリンダヘッド11と、シリンダヘッド11の上部に設けられたカムキャップ47とにより回転可能に支持されている。カムシャフト22の端部には、ロータ51が締結されている。ロータ51は、カムシャフト22と一体に回転する。ロータ51の径方向外方には、ハウジング部としてのリングカバー(本体)53がロータ51と相対回転可能に配置されている。リングカバー53は、ロータ51の外周部を囲うように設けられている。カムシャフトスプロケット24は、リングカバー53と連結されており、リングカバー53は、カムシャフトスプロケット24と一体に回転する。
【0037】
従って、カムシャフト22とロータ51とは、カムシャフト22の軸線を中心に一体回転可能となっており、ロータ51に対して、リングカバー53とカムシャフトスプロケット24は、カムシャフト22の軸線を中心に相対回転可能となっている。
【0038】
リングカバー53の内周面には、径方向内方へ向けて突出する張出部53aが形成されている。張出部53aは、リングカバー53の周方向において所定間隔ごとに形成されている。リングカバー53の周方向における各張出部53aの間には、それぞれ溝部53bが形成されている。
【0039】
ロータ51の外周面には、溝部53bに挿入されるように、径方向外方に向けて突出するベーン部としてのベーン部材51aが形成されている。各溝部53bに対してそれぞれベーン部材51aが一つずつ形成されている。溝部53bは、ベーン部材51aにより進角室56と遅角室57とに区画されている。すなわち、進角室56および遅角室57は、リングカバー53とベーン部材51aとにより区画されている。進角室56および遅角室57は、ベーン部材51aをロータ51の周方向両側から挟むように位置している。
【0040】
シリンダヘッド11を覆うヘッドカバー48には、流量制御手段としてのオイルコントロールバルブ(以下、「OCV」とする)60が設けられている。OCV60には、進角室連通ポート61、遅角室連通ポート62、および、図示しない排出ポートがそれぞれ設けられている。OCV60は、公知のスプール式の流量制御弁として構成されている。OCV60は、図示しないオイルポンプ、および、可変動弁機構26とそれぞれ接続されており、可変動弁機構26に流出入する作動油の流量を制御する。
【0041】
OCV60の進角室連通ポート61は、進角側油路63を介して可変動弁機構26と接続されている。進角側油路63を介して可変動弁機構26に供給された作動油は、進角室供給油路58を経て進角室56に流入する。一方、OCV60の遅角室連通ポート62は、遅角側油路64を介して可変動弁機構26と接続されている。遅角側油路64を介して可変動弁機構26に供給された作動油は、遅角室供給油路59を経て遅角室57に流入する。
【0042】
進角側油路63は、ヘッドカバー48に形成された進角側ヘッドカバー油路63aと、カムキャップ47に形成された進角側カムキャップ油路63bを有する。また、遅角側油路64は、ヘッドカバー48に形成された遅角側ヘッドカバー油路64aと、カムキャップ47に形成された遅角側カムキャップ油路64bを有する。すなわち、OCV60から進角室56へは、進角室連通ポート61、進角側ヘッドカバー油路63a、進角側カムキャップ油路63b、および、進角室供給油路58を通って作動油が供給される。OCV60から遅角室57へは、遅角室連通ポート62、遅角側ヘッドカバー油路64a、遅角側カムキャップ油路64b、および、遅角室供給油路59を通って作動油が供給される。
【0043】
OCV60は、進角室56に作動油を供給し、遅角室57から作動油を排出させる状態、遅角室57に作動油を供給し、進角室56から作動油を排出させる状態、および、進角室56および遅角室57のいずれにも作動油を流出入させない状態(保持状態)のいずれかの状態に選択的に切り替え可能である。OCV60は、ECU110から出力される制御指令値に応じて、内部のスプール弁子の位置を電磁ソレノイドにより制御し、上記3つの状態の切替を行う。
【0044】
例えば、排気弁20の開閉時期を進角させる場合には、進角室連通ポート61を開き、進角室56に作動油を供給する。これにより、進角室56が遅角室57と比較して高圧となる。その差圧に応じてベーン部材51aがリングカバー53に対して相対回転することにより、ロータ51も相対回動する。これに伴い、遅角室57の作動油が、遅角側油路64、および遅角室連通ポート62を経てOCV60の排出ポートから排出される。これにより、カムシャフトスプロケット24、言い換えれば、クランクシャフト14に対するカムシャフト22の回転位相が変更される。この結果、クランクシャフト14に対するカムシャフト22の回転位相が進角側に変更され、排気弁20の開閉時期を変更することができる。
【0045】
ここで、本実施形態のように、ヘッドカバー48にヘッドカバー油路63a,64aが設けられている場合、衝撃的な油圧により、ヘッドカバー48から騒音が発生する虞がある。例えば、カムシャフト22に伝達されるトルクの変動によりリングカバー53等が押し戻されることにより、可変動弁機構26において油圧の変動(例えば、衝撃的な油圧)が発生することがある。その油圧の変動が、ヘッドカバー油路63a,64aに到達すると、大きな面を有するヘッドカバー48から騒音が発生する虞がある。
【0046】
本実施形態では、以下に図3を参照して説明するように、ヘッドカバー油路63a,64aとカムキャップ油路63b,64bとの間に、油圧の変動を吸収する接続部油路が設けられている。接続部油路において油圧の変動(衝撃的油圧)が吸収されることにより、可変動弁機構26で発生した油圧の変動がヘッドカバー油路63a,64aに到達することが抑制される。以下では、進角側油路63の構成について説明するが、遅角側油路64についても進角側油路63と同様の構成であることができる。
【0047】
図3は、進角側ヘッドカバー油路63aと進角側カムキャップ油路63bとの接続部を示す図である。図3に示すように、ヘッドカバー48の下面(カムキャップ47と対向する面)48aと、カムキャップ47の上面(ヘッドカバー48と対向する面)47aとの間には、隙間部70が設けられている。符号Lは、ヘッドカバー48の下面48aとカムキャップ47の上面47aとの間の間隔、言い換えると、隙間部70における進角側油路63の潤滑油の流れ方向の幅(以下、単に「隙間部70の幅L」とする)を示す。
【0048】
進角側ヘッドカバー油路63aと進角側カムキャップ油路63bとは、接続部油路としてのシール部材65で接続されている。シール部材65は、油シール性、油圧吸収性を有する材質で構成されている。シール部材65は、弾性を有する弾性部材、例えば、伸縮性のあるゴム材や樹脂等で構成されている。進角側ヘッドカバー油路63aにおけるカムキャップ47側の端部には、径が拡大された大径部63cが形成されている。進角側カムキャップ油路63bにおけるヘッドカバー48側の端部には、径が拡大された大径部63dが形成されている。大径部63cと大径部63dとは、同じ径である。シール部材65は、略円筒形状をなしており、軸方向の一端部65bが大径部63cに、他端部65cが大径部63dにそれぞれ挿入されている。
【0049】
シール部材65の軸方向の中央部には、シール部材65の他の部分(端部65b,65c)と比較して径が大きい油圧変動吸収部(特定壁部)65aが形成されている。油圧変動吸収部65aは、シール部材65の径方向外方に向けて突出している。言い換えると、油圧変動吸収部65aは、隙間部70へ向けて径方向に突出している。すなわち、接続部油路としてのシール部材65は、進角側ヘッドカバー油路63aに対応する(挿入された)壁部としての一端部65b、および、進角側カムキャップ油路63bに対応する(挿入された)壁部としての他端部65cと比較して径方向に突出する特定壁部としての油圧変動吸収部65aを有する。
【0050】
OCV60の進角室連通ポート61が開かれて進角側油路63に作動油が供給される場合など、進角側油路63に油圧Pが作用すると、シール部材65の端部(シール部)65b,65cが大径部63c,63dにそれぞれ密着し、進角側油路63と隙間部70との間がシールされる。シール部材65の端部65b,65cは、油圧による脱落がないようにゴム硬度が高くされており、大径部63c,63dに保持される。
【0051】
油圧Pが増加する場合、油圧変動吸収部65aは、油圧Pの増加に伴って膨張する。言い換えると、油圧変動吸収部65aは、油圧Pの増加により隙間部70へ向けて径方向に拡大する。また、油圧変動吸収部65aと、ヘッドカバー48の下面48aやカムキャップ47の上面47aとの間に隙間が存在する場合には、油圧Pの増加により、油圧変動吸収部65aが軸方向に拡大する。このように、油圧Pの増加に伴って油圧変動吸収部65aが膨張することにより、可変動弁機構26の進角室56で油圧の変動が生じた場合に、その油圧の変動が油圧変動吸収部65aで吸収される。すなわち、油圧変動吸収部65aは、油圧の変動を吸収するアキュムレータとして機能する。
【0052】
油圧変動吸収部65aの硬度は、可変動弁機構26の作動に影響しない適度な硬度に設定される。油圧変動吸収部65aの硬度は、例えば、通常の供給油圧では実質的に変形せず、衝撃的な油圧Pの変動が発生して油圧Pが所定以上に高圧となった場合に、油圧変動吸収部65aが変形して油圧Pの変動を吸収するように設定されることができる。
【0053】
隙間部70の幅Lは、油圧変動吸収部65aが径方向に変形可能となる大きさに設定されている。言い換えると、隙間部70の幅Lは、油圧Pの変動を吸収可能な程度に油圧変動吸収部65aが径方向に膨張することができる大きさに設定されている。なお、隙間部70の全領域において幅Lが上記径方向に変形可能となる大きさに設定される必要はなく、隙間部70のうち、少なくとも油圧変動吸収部65aの配置箇所の領域における隙間部70の幅Lが、上記径方向に変形可能となる大きさに設定されていればよい。
【0054】
従来、シリンダヘッド11に設けられた動弁系の振動をヘッドカバー48に伝達させないため、および、寸法誤差を吸収するために、カムキャップ47とヘッドカバー48との間には隙間部70が設けられている。一般的に、隙間部70の幅Lはできる限り小さく設定される。これに対して、本実施形態では、油圧変動吸収部65aが径方向に変形可能となる程度に隙間部70の幅Lを大きな値に設定している。シール機能および油圧の衝撃を吸収する機能を有するシール部材65で進角側ヘッドカバー油路63aと進角側カムキャップ油路63bとをつなげることで、油路の長さ・ボリュームを増加させることなく衝撃的な油圧を低減させることができる。進角側油路63の長さ・ボリュームは増加しないため、可変動弁機構26の作動性が低下することがない。また、加工誤差吸収の必要からヘッドカバー48とカムキャップ47との間に設けられる隙間を利用して油圧変動吸収部65aが設置されることで、省スペースで油圧変動を吸収する機構が構成可能となる。
【0055】
本実施形態では、油圧変動吸収部65aが進角側ヘッドカバー油路63aよりも可変動弁機構26側に設けられている。よって、可変動弁機構26で発生した油圧の変動がヘッドカバー48に到達する前に吸収されるため、騒音抑制の効果が大きい。
【0056】
また、油圧変動吸収部65aは、進角側カムキャップ油路63bと比較して、大径である。このように、油圧変動吸収部65aにおいて進角側油路63の径が拡大されていることで、可変動弁機構26で生じた油圧の変動が油圧変動吸収部65aで効果的に減衰される。よって、本実施形態によれば、可変動弁機構26で発生する油圧の変動が、ヘッドカバー48に設けられた進角側ヘッドカバー油路63aに到達することを抑制することができる。これにより、油圧の変動(油撃)が進角側ヘッドカバー油路63aに到達することに起因してヘッドカバー48で発生する騒音を抑制することができる。
【0057】
なお、油圧変動吸収部65aの径および形状は、本実施形態に示すものには限定されない。油圧変動吸収部65aは、油圧Pの変動に応じて径方向に変形可能となっていればよい。油圧変動吸収部65aの形状について、本実施形態では、径方向外方に拡大するバルーン構造とされていたが、油圧変動吸収部65aの形状はこれには限定されない。例えば、油圧変動吸収部65aは、蛇腹構造とされてもよい。また、油圧変動吸収部65aの径は、シール部材65の他の部分と比較して大径でなくともよい。例えば、油圧変動吸収部65aを含めて、シール部材65の径が一定とされてもよい。
【0058】
(第2実施形態)
図4を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0059】
上記第1実施形態では、進角側油路63の油圧変動吸収部と遅角側油路64の油圧変動吸収部とは互いに独立していた。これに代えて、本実施形態では、進角側油路(図4の符号163参照)と遅角側油路(図4の符号164参照)とが隣接しており、かつ、内径側シール部材(図4の符号165)の油圧変動吸収部165aで隔てられている。これにより、上記第1実施形態の作用に加えて、オイルダンパー作用により油圧変動が吸収される。
【0060】
図4は、本実施形態のヘッドカバー油路とカムキャップ油路との接続部を示す図である。
【0061】
本実施形態では、OCV60と可変動弁機構26とを接続する油路163,164は、ヘッドカバー48とカムキャップ47との境界部において、遅角側油路164が径方向の内方、進角側油路163が径方向の外方に配置された二重管構造とされている。進角側油路163と遅角側油路164とは、内径側シール部材165によって仕切られている。内径側シール部材165は、弾性部材で構成されており、進角側油路163と遅角側油路164との差圧によって径方向に変形可能となっている。言い換えると、進角側油路163と遅角側油路164とは、作動油の圧力によって径方向に変形可能な特定壁部としての内径側シール部材165を共有している。
【0062】
進角側油路163において、進角側ヘッドカバー油路163aと進角側カムキャップ油路163bとは、進角側接続部油路166により接続されている。進角側接続部油路166は、ヘッドカバー48に形成されたヘッドカバー側環状油路166aと、カムキャップ47に形成されたカムキャップ側環状油路166cと、ヘッドカバー側環状油路166aとカムキャップ側環状油路166cとを接続する二つのシール部材165,167で構成されている。
【0063】
ヘッドカバー側環状油路166aは、遅角側ヘッドカバー油路164aの径方向外方の位置に環状に形成されている。ヘッドカバー側環状油路166aは、カムキャップ47に向けて開口している。ヘッドカバー側環状油路166aは、進角側ヘッドカバー油路163aと接続されている。ヘッドカバー側環状油路166aにおけるカムキャップ47側の端部には、拡幅部166bが形成されている。拡幅部166bは、ヘッドカバー側環状油路166aの他の部分と比較して径方向の内方および外方に向けてそれぞれ拡幅されている。
【0064】
カムキャップ側環状油路166cは、遅角側カムキャップ油路164bの径方向外方の位置に環状に形成されている。カムキャップ側環状油路166cは、ヘッドカバー48に向けて開口している。カムキャップ側環状油路166cは、進角側カムキャップ油路163bと接続されている。カムキャップ側環状油路166cにおけるヘッドカバー48側の端部には、拡幅部166dが形成されている。拡幅部166dは、カムキャップ側環状油路166cの他の部分と比較して径方向の内方および外方に向けてそれぞれ拡幅されている。
【0065】
ヘッドカバー側環状油路166aの拡幅部166b、カムキャップ側環状油路166cの拡幅部166dには、内径側シール部材165および外径側シール部材167がそれぞれ挿入されている。内径側シール部材165は、略円筒形状をなしており、軸方向の一端部165bがヘッドカバー側環状油路166aの拡幅部166bに、他端部165cがカムキャップ側環状油路166cの拡幅部166dにそれぞれ挿入されている。内径側シール部材165は、拡幅部166b,166dの内径側の壁面に沿っている。内径側シール部材165の軸方向の中央部には、内径側シール部材165の他の部分と比較して径が小さい油圧変動吸収部165aが形成されている。油圧変動吸収部165aは、内径側シール部材165の径方向内方に向けて突出している。言い換えると、油圧変動吸収部165aは、遅角側油路164へ向けて径方向に突出している。内径側シール部材165は、進角側油路163と遅角側油路164との間をシールしている。本実施形態では、共通の特定壁部としての油圧変動吸収部165aが、進角側油路163の接続部油路と、遅角側油路164の接続部油路とを隔てている。
【0066】
外径側シール部材167は、略円筒形状をなしており、軸方向の一端部167bがヘッドカバー側環状油路166aの拡幅部166bに、他端部167cがカムキャップ側環状油路166cの拡幅部166dにそれぞれ挿入されている。外径側シール部材167は、拡幅部166b,166dの外径側の壁面に沿っている。外径側シール部材167は、ヘッドカバー48とカムキャップ47との間に設けられた隙間部70と、進角側油路163との間をシールしている。
【0067】
進角側油路163の油圧P1が増加した場合、油圧変動吸収部165aは、膨張する。言い換えると、油圧変動吸収部165aは、油圧P1の増加により遅角側油路164へ向けて径方向に変形する。一方、油圧P1が減少した場合、油圧変動吸収部165aは、収縮することができる。油圧P1の増加に伴って油圧変動吸収部165aが膨張することにより、可変動弁機構26の進角室56で油圧の変動が生じた場合に、その油圧の変動が油圧変動吸収部165aで吸収される。すなわち、油圧変動吸収部165aは、進角側油路163の油圧の変動を吸収するアキュムレータとして機能する。
【0068】
さらに、進角側油路163と遅角側油路164とが油圧変動吸収部165aにより隔てられているため、進角側油路163の油圧P1の変動に対して、油圧変動吸収部165aは、遅角側油路164の作動油と共にオイルダンパーとして機能する。例えば、進角時に、進角側油路163の油圧P1の変動(例えば、衝撃的油圧)が発生した場合、油圧P1の変動は、低圧側の遅角側油路164に逃がされる。これにより、進角側油路163の油圧P1の変動により油圧変動吸収部165aが膨張あるいは収縮する場合に、オイルダンパー機能により油圧P1の変動が減衰される。このように、本実施形態では、油圧変動吸収部165aの容積変化、および、遅角側油路164の作動油におけるオイルダンパーとしての作用により、進角側油路163の油圧P1の変動を効果的に吸収することができる。
【0069】
また、遅角側油路164の油圧P2が増加した場合、油圧変動吸収部165aは、収縮する。言い換えると、遅角側油路164の油圧P2が増加した場合、油圧変動吸収部165aは、径方向の外方に向けて変形する。油圧P2の増加に伴って油圧変動吸収部165aが収縮することにより、可変動弁機構26の遅角室57で油圧の変動が生じた場合に、その油圧の変動が油圧変動吸収部165aで吸収される。さらに、遅角側油路164の油圧P2の変動に対して、油圧変動吸収部165aは、進角側油路163の作動油と共にオイルダンパーとして機能する。よって、遅角室57で油圧の変動が生じた場合に、オイルダンパー機能により油圧P2の変動が減衰される。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、油圧変動吸収部165aの容積変化、および、オイルダンパー作用により、可変動弁機構26で発生する油圧の変動が、ヘッドカバー油路163a,164aに到達することを抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、可変動弁機構26のロータ51(図2参照)のばたつきを抑制することができる。例えば、進角室56において油圧の変動(衝撃的油圧)が発生した場合、図4の油圧変動吸収部165aにおいて、進角側油路163と遅角側油路164の油圧差を利用して進角側油路163の衝撃が遅角側油路164に吸収される。言い換えると、進角室56と遅角室57との間の差圧の変動が低減される。このため、進角室56において油圧の変動が生じたとしても、進角室56と遅角室57との間の差圧が大きく変動することが抑制される。よって、ロータ51の回転方向のばたつきの発生が抑制される。これにより、ロータ51の位相の制御性、すなわち、クランクシャフト14に対するカムシャフト22の回転位相の制御性を向上させることができる。
【0072】
なお、本実施形態では、進角側油路163が径方向の外方、遅角側油路164が径方向の内方に配置されたが、進角側油路163と遅角側油路164との位置関係は、これには限定されない。例えば、遅角側油路164が進角側油路163の径方向外方に配置されてもよい。さらに、進角側油路163と遅角側油路164とが二重管構造とされていなくとも、接続部油路において、進角側油路163と遅角側油路164とがシール部材により隔てられている構成であればよい。
【0073】
本実施形態では、外径側シール部材167は、径が一定であったが、これに代えて、外径側シール部材167が、上記第1実施形態のシール部材65と同様に径方向外方に突出する油圧変動吸収部65aを有するものとされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の可変バルブタイミング装置の第1実施形態に係る装置の概略構成図である。
【図2】本発明の可変バルブタイミング装置の第1実施形態の概略構成を示す拡大図である。
【図3】本発明の可変バルブタイミング装置の第1実施形態の進角側ヘッドカバー油路と進角側カムキャップ油路との接続部を示す図である。
【図4】本発明の可変バルブタイミング装置の第2実施形態のヘッドカバー油路とカムキャップ油路との接続部を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 エンジン(内燃機関)
11 シリンダヘッド
17 吸気ポート
18 排気ポート
19 吸気弁
20 排気弁
21 吸気カムシャフト(カムシャフト)
22 排気カムシャフト(カムシャフト)
23 吸気カムシャフトスプロケット(カムシャフトスプロケット)
24 排気カムシャフトスプロケット(カムシャフトスプロケット)
26 可変動弁機構
26A 吸気可変動弁機構
26B 排気可変動弁機構
27 VVTコントローラ
28 カムポジションセンサ
46 クランク角センサ
47 カムキャップ
48 ヘッドカバー
51 ロータ
53 リングカバー
56 進角室
57 遅角室
60 OCV
61 進角室連通ポート
62 遅角室連通ポート
63 進角側油路
63a 進角側ヘッドカバー油路
63b 進角側カムキャップ油路
64 遅角側油路
64a 遅角側ヘッドカバー油路
64b 遅角側カムキャップ油路
65 シール部材
65a 油圧変動吸収部
70 隙間部
100 可変バルブタイミング装置
163 進角側油路
164 遅角側油路
165 内径側シール部材
166 進角側接続部油路
166a ヘッドカバー側環状油路
166c カムキャップ側環状油路
167 外径側シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランクシャフトとカムシャフトとの間の回転の位相差を変更することで、前記内燃機関の吸気弁または排気弁の開閉時期を可変とする可変バルブタイミング装置であって、
前記カムシャフトに設けられ、かつ、圧送される作動油の流出入に応じて前記位相差を変更する可変動弁手段と、
前記可変動弁手段に流出入する前記作動油の流量を制御する流量制御手段と、
前記流量制御手段と前記可変動弁手段とを接続する前記作動油の油路とを備え、
前記カムシャフトは、前記内燃機関のシリンダヘッドに設けられたカムキャップにより回転可能に支持されており、
前記油路は、前記カムキャップに形成され、前記可変動弁手段に接続されたカムキャップ油路と、前記シリンダヘッドを覆うヘッドカバーに形成され、前記流量制御手段に接続されたヘッドカバー油路と、前記カムキャップ油路と前記ヘッドカバー油路とを接続する接続部油路とを有し、
前記接続部油路は、前記ヘッドカバー油路に対応する壁部および前記カムキャップ油路に対応する壁部と比較して径方向に突出し、かつ、弾性部材で構成され、前記作動油の油圧によって径方向に変形可能な特定壁部を有している
ことを特徴とする可変バルブタイミング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の可変バルブタイミング装置において、
前記可変動弁手段は、本体と、前記本体に設けられた進角室および遅角室とを有し、前記流量制御手段により前記進角室に前記作動油が供給されることで前記開閉時期を進角させ、前記流量制御手段により前記遅角室に前記作動油が供給されることで前記開閉時期を遅角させるものであって、
前記油路は、前記進角室に接続された進角側油路と、前記遅角室に接続された遅角側油路とを有し、
前記進角側油路の前記接続部油路と、前記遅角側油路の前記接続部油路とが隣接しており、かつ、共通の前記特定壁部で隔てられている
ことを特徴とする可変バルブタイミング装置。
【請求項3】
請求項2に記載の可変バルブタイミング装置において、
前記進角側油路の前記接続部油路、および、前記遅角側油路の前記接続部油路のうち、一方の前記接続部油路は、他方の前記接続部油路の径方向外方の位置に、環状に形成されており、
前記一方の前記接続部油路の外径側、および内径側は、それぞれシール部材によりシールされており、前記特定壁部は、前記内径側をシールするシール部材に設けられ、かつ、前記一方の前記接続部油路と、前記他方の前記接続部油路とを隔てている
ことを特徴とする可変バルブタイミング装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の可変バルブタイミング装置において、
前記特定壁部は、前記カムキャップと前記ヘッドカバーとの間に形成された隙間に配置されており、前記隙間のうち、少なくとも前記特定壁部の配置箇所の領域における前記カムキャップと前記ヘッドカバーとの間隔は、前記特定壁部が径方向に変形可能となる大きさである
ことを特徴とする可変バルブタイミング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−38035(P2010−38035A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201741(P2008−201741)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】