説明

可変容量圧縮機用制御弁

【課題】可変容量圧縮機の吸入圧力に基づいて弁部の開閉制御を行う可変容量圧縮機用制御弁を、簡易な構成で実現する。
【解決手段】可変容量圧縮機用制御弁によれば、ボディ5のソレノイド3とは反対側の端部にパワーエレメント6が設けられる。弁体22の有効受圧面積Aと感圧部材の有効受圧面積Bとを実質的に等しくすることで、弁体22に作用するクランク圧力Pcが実質的にキャンセルされる。その結果、弁体22は、実質的に吸入圧力Psを感知して弁部の開閉動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変容量圧縮機用制御弁に関し、特に自動車用空調装置の冷凍サイクルを構成する可変容量圧縮機の吐出容量を制御するのに好適な可変容量圧縮機用制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する圧縮機、そのガス冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された液冷媒を断熱膨張させることで低温・低圧の冷媒にする膨張装置、その冷媒を蒸発させることにより車室内空気との熱交換を行う蒸発器等を備えている。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻され、冷凍サイクルを循環する。
【0003】
この圧縮機は、車両の走行状態によって回転数が変化するエンジンを駆動源としているため、回転数制御を行うことができない。そこで、エンジンの回転数によらず適切な冷房能力を得るために、冷媒の吐出容量を可変できる可変容量圧縮機が用いられている。
【0004】
このような可変容量圧縮機では、エンジンによって回転駆動される軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結されている。そして、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整するようにしている。この揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に吐出冷媒の一部を導入し、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることによって連続的に変えられる。クランク室内の圧力(以下「クランク圧力」という)Pcは、可変容量圧縮機の吐出室とクランク室との間、またはクランク室と吸入室との間に設けられた可変容量圧縮機用制御弁により制御される。
【0005】
このような可変容量圧縮機用制御弁として、吸入圧力Psに応じてクランク室への冷媒の導入量を調整することにより、クランク圧力Pcを制御するものがある。この可変容量圧縮機用制御弁は、吸入圧力Psを感知して変位する感圧部と、感圧部の駆動力を受けて吐出室からクランク室へ通じる通路を開閉制御する弁部と、感圧部の設定値を外部電流によって可変できるソレノイドとを備える。このような可変容量圧縮機用制御弁は、吸入圧力Psが外部電流により設定された設定圧力に保持されるように弁部を開閉する。一般に、吸入圧力Psは蒸発器出口の冷媒温度に比例するため、その設定圧力を所定値以上に保持することにより、蒸発器の凍結等を防止できる。また、ソレノイドが非通電のときには弁部が全開状態となり、クランク圧力Pcを吐出圧力Pdに近い圧力に維持でき、これによって揺動板が回転軸に対してほぼ直角になり、可変容量圧縮機を最小容量で運転させることができる。エンジンと回転軸とが直結されていても、実質的に吐出容量をゼロに近くすることができる。
【0006】
近年、このような可変容量圧縮機用制御弁として、ソレノイドを圧力室外に配置することにより、ソレノイドの部分についての耐圧を考慮しなくてよいものも提案されている。例えば、ソレノイドのプランジャを第1プランジャと第2プランジャの2つに分割して両者間に吸入圧力Psを感知する薄膜状の感圧部材を配置し、分割された第2プランジャ側でクランク圧力Pcを制御する弁部の開度制御を行うようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−214059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなプランジャ分割型の可変容量圧縮機用制御弁は、ソレノイド力を弁部へ伝達するプランジャを2つに分割し、その間に感圧部材を配置することから構造が複雑になる。また、このような可変容量圧縮機用制御弁は、ソレノイドのオン/オフごとに第1プランジャと第2プランジャとが感圧部材を挟んで連結/解除され、従来1つのプランジャで実現していた機能を2つのプランジャの協働により実現する。このため、感圧部材を介して隔てられる両プランジャ間で構造面および機能面で整合をとる必要があり、その点において煩雑であった。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、可変容量圧縮機の吸入圧力に基づいて弁部の開閉制御を行う可変容量圧縮機用制御弁を、簡易な構成で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の可変容量圧縮機用制御弁は、可変容量圧縮機の吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる。この可変容量圧縮機用制御弁は、内部に冷媒通路が形成されたボディと、吐出室とクランク室とを連通させる冷媒通路を形成する弁孔に接離可能に配置され、その一端側でクランク室のクランク圧力を受ける一方、他端側で吸入室の吸入圧力を受け、軸線方向に動作して弁部を開閉する弁体と、ボディの一端側に設けられたハウジングと、ハウジング内をクランク圧力が導入される開放空間と密閉空間とに仕切るように配設され、弁部の開閉方向に変位する薄膜または薄板状の感圧部材とを含み、感圧部材の軸線方向の変位による駆動力を弁体へ付与可能な感圧部と、ボディの他端側に設けられ、供給される電流量に応じた閉弁方向のソレノイド力を弁体に付与可能なソレノイドと、を備える。
【0010】
そして、弁体の有効受圧面積と感圧部材の有効受圧面積とが実質的に等しく形成されることにより弁体に作用するクランク圧力が実質的にキャンセルされ、吸入圧力が電流量に応じた設定圧力となるよう、弁体が自律的に動作するように構成されている。
【0011】
この態様によると、ボディのソレノイドとは反対側の端部に感圧部が設けられる。このため、感圧部材を弁体とソレノイドとの間に配置する必要がなく、可変容量圧縮機用制御弁を簡易な構成で実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可変容量圧縮機の吸入圧力に基づいて弁部の開閉制御を行う可変容量圧縮機用制御弁を、簡易な構成で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
【0014】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の構成を示す断面図である。
【0015】
可変容量圧縮機用制御弁1は、可変容量圧縮機に設けられた所定の冷媒通路に配設され、可変容量圧縮機の吸入圧力Psを設定圧力に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。
【0016】
可変容量圧縮機用制御弁1は、吐出冷媒の一部をクランク室へ導入するための冷媒通路を開閉する弁部を含む弁本体2と、その弁部の開度を調整してクランク室へ導入する冷媒流量を制御するソレノイド3とを、接続部材4を介して一体に組み付けて構成される。
【0017】
弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ボディ5の内部に設けられた弁部、ボディ5の上端に設けられて弁部を開閉するための駆動力を発生するパワーエレメント6(「感圧部」に該当する)等を備えている。
【0018】
ボディ5の側部には、可変容量圧縮機の吐出室に連通して吐出圧力Pdを受けるポート11(「吐出室連通ポート」に該当する)が設けられている。ポート11は、ボディ5の上端部に設けられたポート13(「クランク室連通ポート」に該当する)と内部で連通している。ポート13は、可変容量圧縮機のクランク室に連通し、そのクランク室に弁部を介して制御された圧力であるクランク圧力Pcを導出する。
【0019】
ポート11とポート13とを連通する冷媒通路には、パワーエレメント6を構成するハウジング50(後に詳述する)の下部が挿通されており、その内部通路により弁孔15が形成されている。また、ハウジング50において弁孔15の吐出室側の開口端縁により弁座16が形成されている。さらに、弁孔15を貫通するように、円柱状の伝達ロッド17が挿通されており、ハウジング50によって摺動可能に支持されている。この伝達ロッド17の外周面に設けられた凹部18と弁孔15との間隙により、ポート11とポート13とを連通する冷媒通路が形成される。伝達ロッド17の上端は、パワーエレメント6を構成するダイヤフラム19に当接可能となっている。
【0020】
また、弁座16に吐出室側から対向して、長尺円柱状の作動ロッド21の一端部からなる弁体22が接離自在に配置されている。作動ロッド21は、ボディ5の中央に設けられたガイド孔23に摺動可能に軸支されている。弁体22は、弁孔15の上流側で吐出室に連通する圧力室24に配置され、その先端面の外周縁が弁座16に着脱することにより弁孔15を開閉する。作動ロッド21の上端面は、伝達ロッド17の下端面に下方から当接し、これを軸線方向に支持している。なお、本実施の形態では、作動ロッド21の一端部により弁体22が形成されるとしたが、作動ロッド21の全体を弁体と捉えることもできる。
【0021】
ボディ5の下部は、有底円筒状の接続部材4に圧入されている。なお、このボディ5の接続部材4への圧入量によりソレノイド3の磁気ギャップを設定可能となっている。接続部材4の底部近傍の側部には内外を連通する連通孔が設けられており、ボディ5の下端部と接続部材4の底部との間には、可変容量圧縮機の吸入室に連通して吸入圧力Psを受けるポート26(「吸入室連通ポート」に該当する)が形成されている。ポート26は、ボディ5の下端中央に設けられた所定深さの開口孔27に連通している。ボディ5とソレノイド3とにより囲まれたこの開口孔27が位置する内部空間は、吸入圧力Psが導入される圧力室28を形成する。なお、吸入圧力Psはソレノイド3の内部にも導入可能となっている。さらに、作動ロッド21とボディ5との間には、作動ロッド21を開弁方向に付勢するスプリング30が介装されている。
【0022】
一方、ソレノイド3は、ヨークとしても機能するケース31と、ケース31内に固定されたコア32と、コア32と軸線方向に対向配置されたプランジャ33と、外部からの供給電流により磁気回路を生成する電磁コイル34とを備えている。接続部材4とソレノイド3とは、接続部材4の下端部とケース31の上端部とを突き合わせ、その接合部をコア32の上端部を加締めることにより固定することで連結されている。
【0023】
コア32には、その中央を軸線方向に貫通する挿通孔35が設けられており、ソレノイド力を弁体22へ伝達するためのシャフト36を挿通している。コア32の上端部には、リング状の軸受け部材38が圧入されており、シャフト36の上端部がこの軸受け部材38に摺動可能に支持されている。圧力室28内の吸入圧力Psは、シャフト36と軸受け部材38との微少な間隙を介してソレノイド3の内部にも導入可能となっている。
【0024】
コア32には、また、下端が閉じた有底スリーブ39が外挿されている。有底スリーブ39内においては、プランジャ33がコア32の下方で軸線方向に進退可能に配置されている。有底スリーブ39は、その下端部が縮管されており、その縮管部によってシャフト36の下端部を摺動可能に軸支している。プランジャ33は、円筒状をなし、シャフト36の下半部に圧入されている。
【0025】
ケース31の下端開口部には、ソレノイド3の内部を下方から封止するように樹脂材からなる取っ手40が設けられている。この取っ手40には、ケース31とともに磁気回路を構成する磁性部材からなるカラー42が埋設されている。取っ手40はまた、電磁コイル34につながる端子の一端を露出させるコネクタ部としても機能する。
【0026】
以上のように構成された可変容量圧縮機用制御弁1は、取り付け用のワッシャ45を介して可変容量圧縮機100の所定の冷媒通路内に固定される。
【0027】
次に、感圧部および弁部周辺の構成および動作について詳細に説明する。
図2は、図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。同図は、可変容量圧縮機用制御弁が大気に放置された状態を表している。
【0028】
パワーエレメント6は、ボディ5の上端開口部に固定された中空のハウジング50と、ハウジング50内を密閉空間S1と開放空間S2とに仕切るように配設された金属薄膜からなるダイヤフラム19と、密閉空間S1に配置された金属薄板からなる皿ばね51とを含んで構成されている。ダイヤフラム19は、例えばベリリウム銅やステンレス鋼等の金属薄板からなるものでもよい。皿ばね51は、例えばステンレス鋼からなるものでもよい。さらに、ダイヤフラム19と皿ばね51との間には、両者間の摩耗を抑制するための薄膜状の耐摩耗シート52(「薄膜状部材」に該当する)が介装されている。この耐摩耗シート52によりダイヤフラム19の寿命を長くしている。この耐摩耗シート52としては、例えばテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂からなる薄膜シートあるいはポリイミドフィルム等を使用することができる。開放空間S2が弁孔15に連通している。本実施の形態では、ダイヤフラム19と皿ばね51とを重ねて構成された部材が「感圧部材」として機能する。
【0029】
ハウジング50は、いずれもステンレス等をプレス成形して得られた皿状の第1ハウジング53および第2ハウジング54からなり、これらの開口部を突き合わせてその外縁部にダイヤフラム19および耐摩耗シート52の外縁部を挟むようにして組み付けられる。すなわち、ハウジング50は、第1ハウジング53側に皿ばね51を配置するとともに、第1ハウジング53と第2ハウジング54との間にダイヤフラム19および耐摩耗シート52を挟んだ状態でその接合部に沿って外周溶接(TIG溶接)が施されることにより、容器状に形成されている。両ハウジングの溶接は真空雰囲気内で行われ、その溶接の後、第1ハウジング53の底部中央に形成された真空引き用の孔部を封止するようにボール部材55を溶接する。このため、密閉空間S1は真空状態となっているが、密閉空間S1内に大気等を満たすようにしてもよい。密閉空間S1に配置された皿ばね51は、ダイヤフラム19に沿って中央部が下側にやや膨らんだ凸形状をなしている。このため、パワーエレメント6が大気に放置された状態ではダイヤフラム19も皿ばね51に沿った凸形状となる。
【0030】
第2ハウジング54は、その中央部が下方に円筒状に延出してボス部57となっており、そのボス部57がボディ5の上端開口部に圧入されている。ボス部57の下部により弁孔15が形成されている。第2ハウジング54には、その内外を連通する複数の連通孔58が設けられており、第2ハウジング54、ダイヤフラム19および弁体22(作動ロッド21)に囲まれた空間が、ポート13および開放空間S2に連通する圧力室29を形成している。ダイヤフラム19には、この圧力室29に導入されるクランク圧力Pcが作用する。
【0031】
一方、伝達ロッド17は円柱状をなし、曲面状の上端面中央がダイヤフラム19の下面中央に当接している。伝達ロッド17の側面には、圧力室29とを連通する凹部18が形成されている。伝達ロッド17の下面はフラットになっており、作動ロッド21のフラットな上端面に当接している。本実施の形態において、伝達ロッド17と作動ロッド21とは固定されておらず、両者のそれぞれに加わる力の関係によっては離間可能となるが、変形例においてはこれらが一体に固定あるいは、一体成形されていてもよい。その場合、伝達ロッド17はボス部57に対して摺動する必要はなく、両者の間に冷媒通路となる間隙が形成されていてもよい。
【0032】
ガイド孔23のポート11側の開口端縁には、ポリイミドフィルム等からなる薄膜状のダイヤフラム60(「シール部材」に該当する)が配設されている。作動ロッド21がこのダイヤフラム60の中央部を貫通しているが、ダイヤフラム60の内縁が作動ロッド21の外周面に密着しているため、ダイヤフラム60の上下で冷媒の漏洩が防止され、吐出圧力Pdが圧力室28に及び難くなっている。作動ロッド21の軸線方向中央部の外周面には、凹部25が形成されている。この凹部25は、仮にポート11から導入された冷媒がポート26側に漏れた場合に、その冷媒に含まれるごみを滞留させ、作動ロッド21の摺動部の間隙に詰まるのを防止する。
【0033】
本実施の形態においては、弁体22の有効受圧面積A(弁孔15の断面積と実質的に等しい)と、ダイヤフラム19および皿ばね51からなる感圧部材のみかけの有効受圧面積Bとが実質的に等しく形成されている。なお、ここでいう「みかけの有効受圧面積」とは、感圧部材を制御点近傍の所定位置まで軸線方向に一定量変位させるのに要する軸線に沿った集中荷重を、同時に感圧部材の前後に付与する等分布圧力を変化させて測定し、その集中荷重の変化量をその等分布圧力の変化量にて除算して得られる面積として定義される。なお、ここでいう「制御点」とは、ソレノイド3がオンにされた制御状態における感圧部材の中央部の位置を意味し、感圧部材がほぼフラットになった状態に対応する。
【0034】
具体的には、感圧部材の片側(例えば凸側)に等分布圧力P=P1を付与した状態でその中心に軸線に沿った集中荷重Fを付与する。このとき、その感圧部材がフラットな形状まで変位するのに集中荷重F=F1を要したとする。一方、同様に感圧部材の片側に等分布圧力P=P2を付与した状態で集中荷重Fを付与する。このとき、その感圧部材がフラットな形状まで変位するのに集中荷重F=F2を要したとする。このとき、みかけの有効受圧面積Bは、下記式(1)により算出される。
B=ΔF/ΔP ・・・(1)
ΔF=|F2−F1|
ΔP=|P2−P1|
【0035】
すなわち、感圧部材の形状はその軸線方向への変位にともなってやや変化するため、微視的にみればその有効受圧面積もその変位にともなって変化する。ここでは、感圧部材の平均的な有効受圧面積として「みかけの有効受圧面積」を用いている。
【0036】
なお、変形例においては、ソレノイド3がオンにされた制御状態における感圧部材の軸線方向の変位による密閉空間S1の体積変化を、その軸線方向の変位量で除算して得られる面積を、みかけの有効受圧面積Bとしてもよい。
【0037】
このように、弁体22の有効受圧面積Aと感圧部材のみかけの有効受圧面積Bとを実質的に等しくしたため、感圧部材、伝達ロッド17および作動ロッド21の結合体に作用するクランク圧力Pcによる力が実質的にキャンセルされる。その結果、弁体22は、ソレノイド3がオンにされた制御状態においては、圧力室28にて受ける吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。つまり、可変容量圧縮機用制御弁1は、いわゆるPs感知弁として機能することになる。
【0038】
すなわち、感圧部材による付勢力fs(x)(x:軸線方向の変位量)、ソレノイド力f(i)(i:供給される電流値)、スプリング30による付勢力fsとすると、弁体22に作用する力として、概ね下記式(2)のような力のつり合いの関係がある。
【0039】
A・Ps=fs(x)−f(i)+fs+(A−B)・Pc ・・・(2)
ここで、A=Bとすると、下記式(3)が成立する。
Ps=(fs(x)−f(i)+fs)/A ・・・(3)
ここで、制御状態において弁体22の変位が安定すると、fs(x)およびfsはほとんど変化しないため、吸入圧力Psはソレノイド力f(i)に応じて決まることになる。
【0040】
本実施の形態の感圧部材は、ダイヤフラム19および皿ばね51の個々の剛性を合わせた剛性を有し、ダイヤフラム19のしなやかさを保持する一方、皿ばね51によって耐圧強度が高められている。皿ばね51は、片側に凸状に膨らんだ形状を有するため、その凸部側から荷重が負荷されると、その荷重が小さい間は変形量も小さいが、荷重が大きくなるにつれてフラットになる側に徐々に変形し、さらに荷重が大きくなると反転して中央部が大きく変位する。このため、感圧部材の荷重に対する変形の特性は全体としてみれば非線形となるが、その形状がフラットになる前後の所定の変位幅においては線形性を有する。本実施の形態では、この線形領域を制御領域に利用することにより、正確な弁開度制御を行っている。
【0041】
このダイヤフラム19および皿ばね51からなる感圧部材を変位させるのに要する吸入圧力Psは、ソレノイド3に供給する電流量を変化させることによって変更することができる。つまり、供給電流値を変化させてソレノイド力f(i)が変化すると、それに合わせて吸入圧力Psによる力も変化する。さらに、パワーエレメント6のボディ5に対する圧入量を変化させることにより、皿ばね51の設定荷重を微調整することもできる。これにより、吸入圧力Psがソレノイド3に供給する電流量により設定された設定圧力になるように、弁体22が動作するようになる。
【0042】
図3および図4は、可変容量圧縮機用制御弁の動作を表す説明図である。各図は図2に対応する部分拡大断面図である。図3は、ソレノイド3がオフにされ、クランク圧力Pcが高いときの状態を示している。図4は、ソレノイド3がオンにされ、弁部が微少開度に保持された制御状態を示している。
【0043】
ソレノイド3の非通電状態においてクランク圧力Pcが高くなると、図3に示すように、開放空間S2に導入されたそのクランク圧力Pcと、密閉空間S1内の内部圧力との差圧が大きくなり、その差圧による荷重がダイヤフラム19および皿ばね51に作用する。このため、皿ばね51がその周縁部を支点にしてその凸形状が反転する側に弾性変形し、第1ハウジング53の内壁にほぼ沿うようになる。本実施の形態では、このように皿ばね51が第1ハウジング53の内壁面によって係止されるため、完全に反転する手前の状態に保持される。その結果、クランク圧力Pcが低くなれば、皿ばね51がその弾性力により元の形状に復帰できる。言い換えれば、第1ハウジング53は、このように皿ばね51が反転する手前の状態に変形したときの形状に沿う浅い形状に形成されている。これは、パワーエレメント6ひいては可変容量圧縮機用制御弁1のコンパクト化に寄与している。
【0044】
一方、ソレノイド3に通電された安定した制御状態においては、図4に示すように、シャフト36を介してソレノイド力が弁体22に伝達される。それにより、弁体22は、クランク圧力Pcを感知して動作するパワーエレメント6による開弁方向の力、スプリング30による開弁方向の付勢力、ソレノイド3による閉弁方向のソレノイド力等がつり合った位置に変位する。上述のように、弁体22は、実質的に吸入圧力Psを感知して自律的に動作し、弁部を所定開度に制御する。本実施の形態では、この安定した状態において図示のように皿ばね51がほぼフラットになるように設定されている。
【0045】
次に、可変容量圧縮機用制御弁の全体の動作について説明する。
図1に示した可変容量圧縮機用制御弁1において、ソレノイド3が非通電のときには、スプリング30の付勢力により弁体22が弁座16から離間して弁部が全開状態に保持される。このとき、可変容量圧縮機の吐出室からポート11に導入された吐出圧力Pdの高圧冷媒は、全開状態の弁部を通過し、ポート13からクランク室へと流れることになる。したがって、クランク圧力Pcが吐出圧力Pdに近い圧力になるため、可変容量圧縮機は最小容量運転を行うことになる。
【0046】
一方、自動車用空調装置の起動時または冷房負荷が最大のときには、ソレノイド3に供給される電流値は最大になり、プランジャ33は、コア32に最大の吸引力で吸引される。このとき、プランジャ33、シャフト36、作動ロッド21、伝達ロッド17、およびダイヤフラム19等が、一体になって閉弁方向に動作し、弁体22が弁座16に着座する。この閉弁動作によってクランク圧力Pcが低下するため、可変容量圧縮機は最大容量運転を行うことになる。
【0047】
そして、ソレノイド3に供給される電流値が所定値に設定された制御状態においては、弁体22は、クランク圧力Pcを感知して動作するパワーエレメント6による開弁方向の力と、スプリング30による開弁方向の付勢力と、ソレノイド3による閉弁方向のソレノイド力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。上述のようにクランク圧力Pcがキャンセルされるため、弁体22には冷媒圧力として実質的に吸入圧力Psのみが作用することになる。
【0048】
このバランスが取れた状態で、エンジンの回転数とともに可変容量圧縮機の回転数が上がって吐出容量が増えると、吐出圧力Pdが上がって吸入圧力Psが下がる。その結果、弁体22は、さらにリフトして吐出室からクランク室へ流す冷媒の流量を増やす。これにより、クランク圧力Pcが上昇し、可変容量圧縮機は、その吐出容量を減少させる方向に動作し、吸入圧力Psが設定圧力になるように制御される。エンジンの回転数が低下した場合には、その逆の動作が行われ、吸入圧力Psが設定圧力になるように制御される。すなわち、可変容量圧縮機用制御弁1においてはソレノイド3に供給される電流量により設定圧力が設定される。弁体22は、吸入圧力Psがその設定圧力に近づくように自律的に動作する。
【0049】
以上に説明したように、本実施の形態の可変容量圧縮機用制御弁1によれば、ボディ5のソレノイド3とは反対側の端部にパワーエレメント6が設けられる。このため、ボディ5とソレノイド3との間にダイヤフラム19を介装させる態様のように、感圧部の構成が複雑になることがない。また、ソレノイド3のプランジャを分割する構成とする必要もなくなる。その結果、簡易な構成で実現することができる。また、パワーエレメント6内にダイヤフラム19に加えて皿ばね51を設けた構成としたため、感圧部材の耐圧強度を高く保持することができる。さらに、パワーエレメント6のハウジング50の形状を皿ばね51の形状に合わせるようにしたため、パワーエレメント6そのもの、ひいては可変容量圧縮機用制御弁1をコンパクトに構成することができる。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁は、感圧部の構成が異なる点を除けば第1の実施の形態の可変容量圧縮機用制御弁とほぼ同様の構成を有する。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図5は、第2の実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。
【0051】
可変容量圧縮機用制御弁201において、弁本体202のボディ5の上端開口部には、パワーエレメント206が固定されている。
【0052】
パワーエレメント206は、第1の実施の形態のパワーエレメント6とは異なる構成を有する。ハウジング250は、第1ハウジング253と第2ハウジング254との間にダイヤフラム19を介装するが、皿ばね51とダイヤフラム19との間に、図2に示された耐摩耗シート52のような薄膜状部材は設けられていない。一方、第1ハウジング253と皿ばね51との間には、皿ばね51の荷重を調整するためのスプリング210が介装されている。第1ハウジング253は、ボール部材55が接合された中央部とダイヤフラム19を挟む周縁部との間の中間部の肉厚が小さくなるように形成されており、パワーエレメント206をボディ5に圧入した後に、第1ハウジング253の薄肉部を変形させてスプリング210による荷重の微調整ができるようになっている。
【0053】
また、第2ハウジング254のボス部257がボディ5の上端開口部に圧入されているが、その下端内周縁がテーパ状に形成されて弁座216を構成している。このテーパ形状により、弁孔15の下端の断面積とガイド孔23の断面積とを正確に一致させ、弁体22に吸入圧力Ps以外の冷媒圧力が実質的にキャンセルされて作用しないようにしている。
【0054】
本実施の形態の可変容量圧縮機用制御弁201も、ボディ5のソレノイド3とは反対側の端部にパワーエレメント206が設けられているため、簡易な構成で実現される。さらに、パワーエレメント206のボディ5への圧入量により皿ばね51による設定荷重を調整し、第1ハウジング253の変形によりこれを微調整することもでき、開弁特性の設定を比較的容易に行えるというメリットもある。
【0055】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁は、弁部等の構成が異なる点を除けば第1の実施の形態の可変容量圧縮機用制御弁とほぼ同様の構成を有する。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図6は、第3の実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。
【0056】
可変容量圧縮機用制御弁301において、弁本体302のポート11とポート13とを連通する冷媒通路には、弁孔15を貫通するように長尺円筒状の伝達ロッド317(「伝達部」に該当する)が挿通されており、この伝達ロッド317と弁孔15との間隙により、ポート11とポート13とを連通する冷媒通路が形成される。伝達ロッド317の上端は、パワーエレメント6を構成するダイヤフラム19に当接可能となっている。
【0057】
また、弁座16に吐出室側から対向して、長尺有底円筒状の作動ロッド321の一端部からなる弁体22が接離自在に配置されている。作動ロッド321は、ガイド孔23に摺動可能に軸支されている。作動ロッド321の上端部には、伝達ロッド317の下端部が挿通され、一体的に連結されている。なお、本実施の形態では、作動ロッド321の一端部により弁体22が形成されるとしたが、作動ロッド321の全体を弁体と捉えることもできる。
【0058】
伝達ロッド317は、その上端開口部の先端320がR形状に形成されており、ダイヤフラム19の下面中央に当接している。一方、作動ロッド321は、その上半部が段付円筒状をなし、その上端開口部330に伝達ロッド317の下端部が圧入されている。作動ロッド321の側部には、内部通路319と圧力室28とを連通させる連通孔323が形成されている。
【0059】
このような構成により、ポート26を介して導入された吸入圧力Psは、作動ロッド321の内部通路319および伝達ロッド317の内部通路318に導入される。ソレノイド3がオンにされた制御状態においては、伝達ロッド317の先端320とダイヤフラム19との当接状態が保持され、内部通路318が圧力室29に対して封止された状態となる。このとき、ダイヤフラム19および皿ばね51にて構成される感圧部材の駆動力が、伝達ロッド317を介して弁体22に伝達される。一方、ソレノイド3がオフにされた状態でクランク圧力Pcが高くなると、伝達ロッド317がダイヤフラム19から離間して内部通路318を圧力室29に対して開放し、ポート26とポート13とを連通させる。その結果、弁体22の前後差圧が小さくなり、再びソレノイド3をオンにしたときに、全開状態にある弁体22が速やかに閉弁方向に動作して制御状態へ移行できるようになる。
【0060】
なお、ボディ5とソレノイド3とを接続する接続部材304には絞り部となるオリフィス322が設けられ、このオリフィス322によってポート26が形成されている。オリフィス322が設けられたことにより、伝達ロッド317の先端320が開放されてポート13のクランク圧力Pcが圧力室28に導入されたとしても、ポート13を介して導出される吸入圧力Psへの影響が大きくならないようになっている。
【0061】
図7および図8は、可変容量圧縮機用制御弁の動作を表す説明図である。図7は、ソレノイド3がオンにされ、弁部が微少開度に保持された制御状態を示している。図8は、ソレノイド3がオフにされ、クランク圧力Pcが高いときの状態を示している。
【0062】
ソレノイド3に通電された安定した制御状態においては、図7に示すように、伝達ロッド317の先端320とダイヤフラム19との当接状態が保持され、内部通路318が圧力室29に対して封止された状態となる。このとき、ダイヤフラム19および皿ばね51にて構成される感圧部材の駆動力が、伝達ロッド317を介して弁体22に伝達される。弁体22は、実質的に吸入圧力Psを感知して、その吸入圧力Psがソレノイド3に供給された電流量に応じた設定圧力となるように自律的に動作する。その結果、弁部が所定開度に制御される。本実施の形態では、この安定した状態において図示のように皿ばね51がほぼフラットになるように設定されている。
【0063】
一方、ソレノイド3の非通電状態において吸入圧力Psが高くなると、図8に示すように、開放空間S2に導入されたそのクランク圧力Pcと、密閉空間S1内の内部圧力との差圧が大きくなり、その差圧による荷重がダイヤフラム19および皿ばね51に作用する。このため、皿ばね51がその周縁部を支点にしてその凸形状が反転する側に弾性変形し、第1ハウジング53の内壁にほぼ沿うようになる。一方、弁体22は、作動ロッド321がスプリング30により開弁方向に付勢されているため、弁部が全開状態となり、可変容量圧縮機用制御弁301の運転状態は最小容量運転に移行する。一方、伝達ロッド317の先端320がダイヤフラム19から離間して内部通路318を圧力室29に対して開放し、ポート26とポート13とを連通させる。その結果、弁体22の前後差圧が小さくなり、再びソレノイド3をオンにしたときに、全開状態にある弁体22が速やかに閉弁方向に動作して制御状態へ移行できるようになる。
【0064】
以上に説明したように、本実施の形態の可変容量圧縮機用制御弁301も、ボディ5のソレノイド3とは反対側の端部にパワーエレメント6が設けられているため、簡易な構成で実現される。さらに、ソレノイド3がオフにされてクランク圧力Pcが高いときに、ポート13とポート26とを連通させることができる構成としたことで、最小容量運転から制御状態への制御の応答性を高めることができる。
【0065】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はその特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0066】
例えば、上記各実施の形態においては、感圧部としてのパワーエレメントを、ハウジングと、これを密閉空間と開放空間とに仕切る金属製のダイヤフラムと、密閉空間に配置されてダイヤフラムの剛性を補う皿ばねとを含んで構成する例を示した。図9は、変形例に係る感圧部の構成を表す部分断面図である。同図においては、図1に示したパワーエレメント6と同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0067】
この変形例では、パワーエレメント406を構成する感圧部材として、比較的厚みのある金属製のダイヤフラム419を用いる。このダイヤフラム419は、薄膜状の本体の中央部にて片面側に突出する凸部420を有する。ダイヤフラム419の周縁部は、第1ハウジング53と第2ハウジング54との間に挟まれるように、ハウジング50に固定されている。ダイヤフラム419は、その凸部420の部分において皿ばねのような反転動作が可能なものであるが、この例においても反転側に変形したときには第1ハウジング53により係止されるため、反転動作の手前の段階までしか変形しないようになっている。つまり、ダイヤフラム419そのものが皿ばねのような機能を有しているため、別部材として皿ばねを設ける必要がない。
【0068】
あるいは逆に、ダイヤフラムをなくし、皿ばねをハウジングに直接固定する構成としてもよい。例えば図9のダイヤフラム419を皿ばねに置き換え、その周縁部が第1ハウジング53と第2ハウジング54との間に挟まれるようにして、溶接等によりハウジング50に固定してもよい。ただし、変形例のように可撓性を有するダイヤフラムを用いるほうが、皿ばねよりもしなやかな動作を実現することができ、所望の特性を得やすいというメリットがあると考えられる。
【0069】
また、上記第1の実施の形態では、ガイド孔23のポート11側の開口部にシール部材としてのダイヤフラム60を設けた構成を示したが、作動ロッド321のガイド孔23との摺動部近傍にシール用のOリング等を取り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の構成を示す断面図である。
【図2】図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
【図3】可変容量圧縮機用制御弁の動作を表す説明図である。
【図4】可変容量圧縮機用制御弁の動作を表す説明図である。
【図5】第2の実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。
【図6】第3の実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の上半部に対応する部分拡大断面図である。
【図7】可変容量圧縮機用制御弁の動作を表す説明図である。
【図8】可変容量圧縮機用制御弁の動作を表す説明図である。
【図9】変形例に係る感圧部の構成を表す部分断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 可変容量圧縮機用制御弁、 2 弁本体、 3 ソレノイド、 5 ボディ、 6 パワーエレメント、 11 ポート、 13 ポート、 15 弁孔、 16 弁座、 17 伝達ロッド、 19 ダイヤフラム、 21 作動ロッド、 22 弁体、 23 ガイド孔、 24 圧力室、 26 ポート、 28 圧力室、 29 圧力室、 30 スプリング、 50 ハウジング、 52 耐摩耗シート、 60 ダイヤフラム、 100 可変容量圧縮機、 201 可変容量圧縮機用制御弁、 202 弁本体、 206 パワーエレメント、 216 弁座、 250 ハウジング、 301 可変容量圧縮機用制御弁、 302 弁本体、 317 伝達ロッド、 318 内部通路、 319 内部通路、 321 作動ロッド、 322 オリフィス、 406 パワーエレメント、 419 ダイヤフラム、 420 凸部、 S1 密閉空間、 S2 開放空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量圧縮機の吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる可変容量圧縮機用制御弁において、
内部に冷媒通路が形成されたボディと、
前記吐出室と前記クランク室とを連通させる冷媒通路を形成する弁孔に接離可能に配置され、その一端側で前記クランク室のクランク圧力を受ける一方、他端側で吸入室の吸入圧力を受け、軸線方向に動作して弁部を開閉する弁体と、
前記ボディの一端側に設けられたハウジングと、前記ハウジング内を前記クランク圧力が導入される開放空間と密閉空間とに仕切るように配設され、前記弁部の開閉方向に変位する薄膜または薄板状の感圧部材とを含み、前記感圧部材の軸線方向の変位による駆動力を前記弁体へ付与可能な感圧部と、
前記ボディの他端側に設けられ、供給される電流量に応じた閉弁方向のソレノイド力を前記弁体に付与可能なソレノイドと、
を備え、
前記弁体の有効受圧面積と前記感圧部材の有効受圧面積とが実質的に等しく形成されることにより前記弁体に作用する前記クランク圧力が実質的にキャンセルされ、前記吸入圧力が前記電流量に応じた設定圧力となるよう、前記弁体が自律的に動作するように構成されたことを特徴とする可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項2】
前記感圧部材の有効受圧面積は、前記感圧部材を制御点近傍の所定位置まで軸線方向に一定量変位させるのに要する軸線に沿った集中荷重を、同時に前記感圧部材の前後に付与する等分布圧力を変化させて測定し、その集中荷重の変化量をその等分布圧力の変化量にて除算して得られるみかけの有効受圧面積として定義されることを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項3】
前記感圧部材は、ダイヤフラムと、前記密閉空間内に前記ダイヤフラムに沿うように配設され、前記弁体に対して開弁方向の付勢力を付与可能な薄板状の皿ばねとを含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項4】
前記ダイヤフラムが金属製ダイヤフラムからなり、
前記ダイヤフラムと前記皿ばねとの間に両者間の摩耗を抑制するための薄膜状部材が介装されていることを特徴とする請求項3に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項5】
前記感圧部材が金属製のダイヤフラムからなり、
前記ダイヤフラムは、その中央部に片方の面側に突出する凸部を有し、周縁部が前記ハウジングに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項6】
前記感圧部材が皿ばねからなり、
前記皿ばねの周縁部が前記ハウジングに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項7】
前記皿ばねは、その中央部が前記弁体側に突出した形状を有し、その周縁部を支点にして前記中央部の突出する向きが変化可能なものであることを特徴とする請求項3に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項8】
前記ハウジングの内壁が、前記皿ばねが反転する側に変形したときの形状にほぼ沿う形状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項9】
前記ボディの一端側から順に前記クランク室に連通するクランク室連通ポート、前記吐出室に連通する吐出室連通ポート、前記吸入室に連通する吸入室連通ポートが設けられ、
前記ボディ内において、前記吐出室連通ポートと前記クランク室連通ポートとをつなぐ冷媒通路に前記弁孔が設けられる一方、前記弁体が前記吐出室連通ポートと前記吸入室連通ポートとの間に形成されたガイド孔に沿って軸線方向に摺動可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項10】
前記弁体の前記ソレノイドとは反対側に前記弁孔を貫通するように延設されるとともに、その先端が前記感圧部材に接離可能な伝達部と、
前記弁体および前記伝達部を貫通するように設けられた内部通路と、
をさらに備え、
前記伝達部は、前記ソレノイドがオンにされた制御状態においては前記感圧部材との当接状態を保持して前記内部通路を封止しつつ前記感圧部材の駆動力を前記弁体に伝達する一方、前記ソレノイドがオフにされた状態で前記クランク圧力が高くなったときには前記感圧部材から離間し、前記内部通路を開放して前記クランク室連通ポートと前記吸入室連通ポートとを連通させることを特徴とする請求項9に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項11】
前記吸入室連通ポートをオリフィスにて構成したことを特徴とする請求項10に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項12】
前記伝達部が前記弁体に一体に形成され、
前記弁体に対して開弁方向の付勢力を付与する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項13】
前記ガイド孔の開口部に、前記吐出室連通ポート側から前記吸入室連通ポート側への冷媒の漏洩を抑制するためのシール部材が配設されていることを特徴とする請求項9に記載の可変容量圧縮機用制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−223664(P2008−223664A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64838(P2007−64838)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】