説明

可変容量圧縮機用制御弁

【課題】可変容量圧縮機用制御弁を簡易な構成で実現するとともに、その弁体の安定な動作を確保する。
【解決手段】制御弁によれば、ボディ5のソレノイド3とは反対側の端部にパワーエレメント6が設けられる。パワーエレメント6内にはダイヤフラム19に加えて皿ばね51が設けられ、これらにより感圧部材が構成されている。また、長尺状の作動ロッド17が挿通される挿通孔23の高圧側開口部を封止するようにOリング25が配設されている。この作動ロッド17の軸受けの一方はボディ5の摺動孔14により構成され、他方がOリング25により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用空調装置の冷凍サイクルを構成する可変容量圧縮機の吐出容量を制御するのに好適な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する圧縮機、そのガス冷媒を凝縮する凝縮器、凝縮された液冷媒を断熱膨張させることで低温・低圧の冷媒にする膨張装置、その冷媒を蒸発させることにより車室内空気との熱交換を行う蒸発器等を備えている。蒸発器で蒸発された冷媒は、再び圧縮機へと戻され、冷凍サイクルを循環する。
【0003】
この圧縮機としては、エンジンの回転数によらず一定の冷房能力が維持されるように、冷媒の吐出容量を可変できる可変容量圧縮機(単に「圧縮機」ともいう)が用いられている。この圧縮機は、エンジンによって回転駆動される回転軸に取り付けられた揺動板に圧縮用のピストンが連結され、揺動板の角度を変化させてピストンのストロークを変えることにより冷媒の吐出量を調整する。揺動板の角度は、密閉されたクランク室内に吐出冷媒の一部を導入し、ピストンの両面にかかる圧力の釣り合いを変化させることで連続的に変えられる。このクランク室内の圧力(以下「クランク圧力」という)Pcは、圧縮機の吐出室とクランク室との間、またはクランク室と吸入室との間に設けられた可変容量圧縮機用制御弁(単に「制御弁」ともいう)により制御される。
【0004】
このような制御弁として、例えば吸入圧力Psに応じてクランク室への冷媒の導入量を調整することにより、クランク圧力Pcを制御するものがある。この制御弁は、吸入圧力Psを感知して変位する感圧部と、感圧部の駆動力を受けて吐出室からクランク室へ通じる通路を開閉制御する弁部と、感圧部の設定値を外部電流によって可変できるソレノイドとを備える。このような制御弁は、吸入圧力Psが外部電流により設定された設定圧力に保持されるように弁部を開閉する。一般に、吸入圧力Psは蒸発器出口の冷媒温度に比例するため、その設定圧力を所定値以上に保持することにより、蒸発器の凍結等を防止できる。また、ソレノイドが非通電のときには弁部が全開状態となり、クランク圧力Pcを吐出圧力Pdに近い圧力に維持でき、これによって揺動板が回転軸に対してほぼ直角になり、可変容量圧縮機を最小容量で運転させることができる。エンジンと回転軸とが直結されていても、実質的に吐出容量をゼロに近くすることができる。
【0005】
近年、このような制御弁として、ソレノイドを圧力室外に配置することにより、ソレノイドの部分についての耐圧を考慮しなくてよいものも提案されている。例えば、ソレノイドのプランジャを第1プランジャと第2プランジャの2つに分割して両者間に吸入圧力Psを感知する薄膜状の感圧部材を配置し、分割された第2プランジャ側でクランク圧力Pcを制御する弁部の開度制御を行うようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−214059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなプランジャ分割型の制御弁は、ソレノイド力を弁部へ伝達するプランジャを2つに分割し、その間に感圧部材を配置することから構造が複雑になる。また、このような制御弁は、ソレノイドのオン/オフごとに第1プランジャと第2プランジャとが感圧部材を挟んで連結/解除され、従来一つのプランジャで実現していた機能を2つのプランジャの協働により実現する。このため、感圧部材を介して隔てられる両プランジャ間で構造面および機能面で整合をとる必要があり、その点において煩雑であった。
【0007】
そこで、出願人は、先行する未公開の特許出願(特願2007−58226号)において、ボディのソレノイドとは反対側の端部に感圧部を設けた制御弁を提案している。この制御弁の一態様は、ボディの軸線に沿って挿通される長尺状のロッド部材を有する。ロッド部材は、感圧部の感圧部材とソレノイドのシャフトとの間に介装され、その一部が弁体を構成している。ボディには、感圧部に近い側から順にクランク室に連通するクランク室連通ポート、吐出室に連通する吐出室連通ポート、吸入室に連通する吸入室連通ポートが設けられ、その吐出室連通ポートとクランク室連通ポートとをつなぐ冷媒通路に弁孔が設けられている。ロッド部材は、その一端側が弁孔を貫通して感圧部近傍にて軸支され、他端側が吐出室連通ポートと吸入室連通ポートとの間に形成されたガイド孔に沿って軸線方向に摺動可能に支持されている。ガイド孔の高圧側の入口には、例えば薄膜状のシール部材が配設され、高圧側から低圧側への冷媒の漏洩が抑制される。ロッド部材には、その一端部および他端部に開口部を有する内部通路が形成されており、吸入室連通ポートを介して導入された吸入圧力Psが、その内部通路を通って感圧部に導かれるように構成されている。このような構成により、感圧部材を弁体とソレノイドとの間に配置する必要がなく、制御弁を簡易な構成で実現することができる。
【0008】
しかし、上述のように吐出室連通ポートと吸入室連通ポートとをガイド孔を介して隣接配置したため、そのガイド孔の前後差圧が大きくなり、薄膜状のシール部材では吐出冷媒の漏洩を完全に防止するのは難しい。このため、吐出冷媒に含まれるゴミがガイド孔に詰まり、ロッド部材の摺動ひいては弁体の開閉動作を阻害するおそれがあった。また、ロッド部材が長尺状であり軸支点間の距離が比較的大きいためにシャフトの軸線に対して傾き易く、そのことがロッド部材の摺動性に悪影響を及ぼすおそれもあった。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、可変容量圧縮機用制御弁を簡易な構成で実現するとともに、その弁体の安定な動作を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる可変容量圧縮機用制御弁において、内部に冷媒通路が形成されるとともに、一端側から順にクランク室に連通するクランク室連通ポート、吐出室に連通する吐出室連通ポート、吸入室に連通する吸入室連通ポートが設けられたボディと、吐出室連通ポートとクランク室連通ポートとを連通させる冷媒通路を形成する弁孔に接離するように配置されて弁部を開閉する弁体と、弁体が一体に設けられた長尺状の本体を有し、吐出室連通ポートと吸入室連通ポートとの間に形成された挿通孔に所定のクリアランスをもって挿通され、軸線方向に動作可能な作動ロッドと、作動ロッドを介して弁体に軸線方向の力を伝達するためのシャフトと、ボディの他端側に設けられ、供給される電流量に応じた閉弁方向のソレノイド力をシャフトに軸線方向に付与可能なソレノイドと、挿通孔よりも小さな内径を有する筒状またはリング状の本体を有し、挿通孔の高圧側開口部を封止するように配設されるとともに、その内周面にて作動ロッドを支持する軸受けとして機能するシール部材と、を備える。
【0011】
ここで、「ボディの一端側から順にクランク室連通ポート、吐出室連通ポート、吸入室連通ポートが設けられる」としたが、例えばボディのさらに一端側に別の吸入室連通ポートやクランク室連通ポートが設けられるような構成を排除するものではない。「シール部材」は、作動ロッドの軸受けとして機能できる剛性を有するとともに、作動ロッドが微少に傾いていてもこれを吸収してその良好な摺動性を確保できる可撓性または弾性を有するものであってよい。「弁体が作動ロッドに一体に設けられる」としたが、これらは一体成形されていてもよいし、個々に成形されたものを組み付けて一体的に動作するようにしたものでもよい。
【0012】
この態様によれば、作動ロッドが挿通される挿通孔の前後差圧が比較的大きくなるが、シール部材がその高圧側開口部を封止する。このシール部材は、軸受けとしても機能できるほどの剛性を有し、作動ロッドにほぼ密着するような態様でこれを安定に摺動させる。このため、吐出冷媒の挿通孔への浸入を効果的に防止または抑制でき、その吐出冷媒に含まれるゴミ等の詰まりを防止することができる。また、シール部材が軸受けとして機能するため、剛体による軸支よりも作動ロッドの傾きを許容できる。一方、作動ロッドと挿通孔との間には所定のクリアランスが確保されている。このため、作動ロッドが摺動時の傾きにより挿通孔に固着することもなく、弁体の安定な動作が確保される。
【0013】
具体的には、ボディの一端側に設けられたハウジングと、ハウジング内を吸入圧力が導入される開放空間と密閉空間とに仕切るように配設された感圧部材とを含み、吸入圧力が設定圧力よりも低くなったときに感圧部材が変位して、作動ロッドを介して弁体に開弁方向の駆動力を付与するように構成された感圧部をさらに備えてもよい。感圧部材は、薄板状または薄膜状のものであってもよい。作動ロッドは、感圧部材とシャフトとの間に介装されるとともに、一端側が弁孔を貫通してボディ内に設けられた摺動孔に摺動可能に支持される一方、他端側がシール部材に支持されていてもよい。作動ロッドは、一端側で開放空間に連通するとともに、他端側で吸入室連通ポートに連通する内部通路を備えてもよい。そして、吸入室連通ポートを介して導入された吸入圧力が、内部通路を介して開放空間に導かれるように構成されていてもよい。
【0014】
この態様によれば、ボディのソレノイドとは反対側の端部に感圧部が設けられる。このため、感圧部材を弁体とソレノイドとの間に配置する必要がなく、可変容量圧縮機用制御弁を簡易な構成で実現することができる。
【0015】
本発明の別の態様も、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる可変容量圧縮機用制御弁である。この制御弁は、内部に冷媒通路が形成されるとともに、クランク室に連通するクランク室連通ポート、吐出室に連通する吐出室連通ポート、吸入室に連通する吸入室連通ポートが設けられたボディと、吐出室連通ポートとクランク室連通ポートとを連通させる冷媒通路を形成する弁孔に接離するように配置されて弁部を開閉する弁体と、弁体が一体に設けられた長尺状の本体を有し、吐出室連通ポートと吸入室連通ポートとの間に形成された挿通孔に挿通され、軸線方向に動作可能な作動ロッドと、供給される電流量に応じた弁部の開閉方向のソレノイド力を、作動ロッドを介して弁体に付与可能なソレノイドと、挿通孔と作動ロッドとの間の摺動部に介装されたシール部材と、を備える。
【0016】
この態様によれば、挿通孔と作動ロッドとの間の摺動部にシール部材が介装されるため、高圧側から低圧側への冷媒の漏洩を良好に防止することができる。また、ソレノイドへの電流の供給状態によって作動ロッドが軸線方向に微少振動しようとしても、シール部材が変形してある程度これを吸収し、その振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可変容量圧縮機用制御弁を簡易な構成で実現するとともに、その弁体の安定な動作を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては、便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を上下と表現することがある。
【0019】
図1は、実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の構成を示す断面図である。
可変容量圧縮機用制御弁(単に「制御弁」という)1は、可変容量圧縮機(単「圧縮機」という)の吸入圧力Psを設定圧力に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPs感知弁として構成されている。
【0020】
制御弁1は、吐出冷媒の一部をクランク室へ導入するための冷媒通路を開閉する弁部を含む弁本体2と、その弁部の開度を調整してクランク室へ導入する冷媒流量を制御するソレノイド3とを、接続部材4を介して一体に組み付けて構成される。
【0021】
弁本体2は、段付円筒状のボディ5、ボディ5の内部に設けられた弁部、ボディ5の上端に設けられて弁部を開閉するための駆動力を発生するパワーエレメント6(「感圧部」に該当する)等を備えている。
【0022】
ボディ5の側部には、可変容量圧縮機の吐出室に連通して吐出圧力Pdを受けるポート11(「吐出室連通ポート」に該当する)が設けられている。ポート11の周囲には、ボディ5の内部へのごみ等の侵入を抑制するためのストレーナ12が取り付けられている。ポート11は、ボディ5の上部に設けられたポート13(「クランク室連通ポート」に該当する)と内部で連通している。ポート13は、可変容量圧縮機のクランク室に連通し、そのクランク室に制御されたクランク圧力Pcを導出する。
【0023】
ポート11とポート13とを連通する冷媒通路には弁孔15が形成され、その弁孔15の吐出室側の開口端縁により弁座16が形成されている。ボディ5の中央をその軸線方向に延びるように、長尺状の作動ロッド17が挿通されている。作動ロッド17は、例えばステンレス鋼を押出成形したパイプ材を加工して有底円筒状に構成され、その底部を上にして配設されている。作動ロッド17は、その上端側が弁孔15を貫通してボディ5内に設けられた摺動孔14に摺動可能に支持されている。作動ロッド17の上端近傍の側部には、部分的にくびれるように小径化された段差部18が設けられ、その段差部18の基端部が弁体20を構成している。作動ロッド17の段差部18と弁孔15との間隙により、ポート11とポート13とを連通する冷媒通路が形成される。作動ロッド17の上底部は、パワーエレメント6を構成するダイヤフラム19に当接可能となっている。弁体20は、弁座16に吐出室側から対向し、その先端面の外周縁が弁座16に着脱することにより弁孔15を開閉する。
【0024】
ボディ5の下端開口部は、その内径が下方に向かって段階的に拡径されており、有底円筒状の受け部材21がその底部を上にして圧入されている。受け部材21の底部中央には挿通孔23が設けられ、作動ロッド17の下端部を挿通させている。さらに、受け部材21の上端開口部(「高圧側開口部」に該当する)を封止するように、シール部材としてのOリング25が配設されている。
【0025】
ボディ5の下部は、有底円筒状の接続部材4に圧入されている。なお、このボディ5の接続部材4への圧入量によりソレノイド3の磁気ギャップを設定することが可能となっている。接続部材4の底部近傍の側部には内外を連通する連通孔が設けられており、ボディ5の下端部と接続部材4の底部との間には、可変容量圧縮機の吸入室に連通して吸入圧力Psを受けるポート26(「吸入室連通ポート」に該当する)が形成されている。ポート26は、受け部材21の内部を経て作動ロッド17の下端開口部に連通している。ボディ5とソレノイド3とに囲まれた内部空間は、吸入圧力Psが導入される圧力室28を形成する。この圧力室28は、作動ロッド17に設けられた内部通路を介してパワーエレメント6の圧力室29に連通しており、吸入圧力Psがその圧力室29に導入されるように構成されている。なお、吸入圧力Psはソレノイド3の内部にも導入可能となっている。さらに、作動ロッド17の下端部と受け部材21の底部との間には、作動ロッド17を開弁方向に付勢するスプリング30が介装されている。
【0026】
一方、ソレノイド3は、ヨークとしても機能するケース31と、ケース31内に固定されたコア32と、コア32と軸線方向に対向配置されたプランジャ33と、外部からの供給電流により磁気回路を生成する電磁コイル34とを備えている。接続部材4とソレノイド3とは、接続部材4の下端部とケース31の上端部とを突き合わせ、その接合部をコア32の上端部を加締めることにより固定することで連結されている。
【0027】
コア32には、その中央を軸線方向に貫通する挿通孔35が設けられており、ソレノイド力を弁体20へ伝達するためのシャフト36を挿通している。コア32の上端部には、リング状の軸受け部材38が圧入されており、シャフト36がこの軸受け部材38に摺動可能に支持されている。シャフト36は、軸受け部材38を貫通して作動ロッド17の内部にまで延設され、その先端が作動ロッド17の上底部を下方から支持している。圧力室28内の吸入圧力Psは、シャフト36と作動ロッド17との間隙により形成される内部通路に導入される一方、シャフト36と軸受け部材38との微少な間隙を介してソレノイド3の内部にも導入可能となっている。
【0028】
コア32には、また、下端が閉じた有底スリーブ39が外挿されている。有底スリーブ39内においては、プランジャ33がコア32の下方で軸線方向に進退可能に配置されている。有底スリーブ39は、その下端部が縮管されており、その縮管部によってシャフト36の下端部を摺動可能に軸支している。プランジャ33は、円筒状をなし、シャフト36の下部に圧入されている。
【0029】
ケース31の下端開口部には、ソレノイド3の内部を下方から封止するように樹脂材からなる取っ手40が設けられている。この取っ手40には、ケース31とともに磁気回路を構成する磁性部材からなるカラー42が埋設されている。取っ手40はまた、電磁コイル34につながる端子の一端を露出させるコネクタ部としても機能する。
【0030】
以上のように構成された制御弁1は、図示しない取り付け用のワッシャ等を介して可変容量圧縮機の所定の冷媒通路内に固定される。
【0031】
次に、感圧部および弁部周辺の構成および動作について詳細に説明する。
図2は、図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。同図は、制御弁1が大気に放置された状態を表している。
【0032】
パワーエレメント6は、ボディ5の上端開口部を封止するように加締め接合された中空のハウジング50と、ハウジング50内を密閉空間S1と開放空間S2とに仕切るように配設された金属薄膜からなるダイヤフラム19と、密閉空間S1に配置された金属薄板からなる皿ばね51とを含んで構成されている。ダイヤフラム19は、例えばベリリウム銅やステンレス鋼等の金属薄板からなるものでもよい。皿ばね51は、例えばステンレス鋼からなるものでもよい。さらに、ダイヤフラム19と皿ばね51との間には、両者間の摩耗を抑制するための薄膜状の耐摩耗シート52(「薄膜状部材」に該当する)が介装されている。この耐摩耗シート52によりダイヤフラム19の寿命を長くしている。この耐摩耗シート52としては、例えばテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂からなる薄膜シートあるいはポリイミドフィルム等を使用することができる。開放空間S2が上述の圧力室29を構成している。本実施の形態では、ダイヤフラム19と皿ばね51とを重ねて構成された部材が「感圧部材」として機能する。
【0033】
ハウジング50は、いずれもステンレス等をプレス成形して得られた皿状の第1ハウジング53および第2ハウジング54からなり、これらの開口部を突き合わせてその外縁部にダイヤフラム19および耐摩耗シート52の外縁部を挟むようにして組み付けられる。すなわち、ハウジング50は、第1ハウジング53側に皿ばね51を配置するとともに、第1ハウジング53と第2ハウジング54との間にダイヤフラム19および耐摩耗シート52を挟んだ状態でその接合部に沿って外周溶接(TIG溶接)が施されることにより、容器状に形成されている。両ハウジングの溶接は真空雰囲気内で行われ、その溶接の後、第1ハウジング53の底部中央に形成された真空引き用の孔部を封止するようにボール部材55を溶接する。このため、密閉空間S1は真空状態となっているが、密閉空間S1内に大気等を満たすようにしてもよい。密閉空間S1に配置された皿ばね51は、ダイヤフラム19に沿って中央部が下側にやや膨らんだ凸形状をなしている。このため、パワーエレメント6が大気に放置された状態ではダイヤフラム19も皿ばね51に沿った凸形状となる。第2ハウジング54の中央部には開口部が設けられ、作動ロッド17の上端部がその開口部を介してダイヤフラム19に当接できるように構成されている。ボディ5の上端開口部、第2ハウジング54、ダイヤフラム19、および作動ロッド17に囲まれた空間が圧力室29を形成している。
【0034】
作動ロッド17は、下方に開口する有底円筒状をなし、曲面状の上端面中央がダイヤフラム19の下面中央に当接している。シャフト36の上端部が作動ロッド17の底部に達しているため、作動ロッド17は、その底部を支点にいわゆるやじろべいのような形で支持されている。したがって、作動ロッド17を挟持する感圧部材(ダイヤフラム19および皿ばね51)とシャフト36との支点間距離が短く、作動ロッド17が支持力によるモーメントを受けにくくなっている。これにより、作動ロッド17がボディ5の軸線に対して傾くことが抑制されている。
【0035】
作動ロッド17の内周面とシャフト36の外周面との間隙によって内部通路61が形成されており、作動ロッド17の上端近傍の側部には、内部通路61と圧力室29とを連通する連通孔62が形成されている。このような構成により、ポート26を介して導入された吸入圧力Psは、作動ロッド17の下端開口部63から内部通路61に導入され、連通孔62を介して圧力室29に導かれる。ダイヤフラム19は、この吸入圧力Psを感知して弁部の開閉方向に伸縮動作する。
【0036】
Oリング25は、挿通孔23よりも小さな内径を有するリング状の本体を有し、作動ロッド17の外周にほぼ密着するような態様でこれを安定に支持する。すなわち、本実施の形態では、摺動孔14が作動ロッド17の上端側の軸受けとして機能し、Oリング25が作動ロッド17の下端側の軸受けとして機能する。挿通孔23と作動ロッド17とのクリアランスが、作動ロッド17と摺動孔14とのクリアランスよりも十分に大きいため、挿通孔23は、軸受けとしては実質的に機能しない。つまり、Oリング25がシール機能および軸受け機能の双方を兼ね備えている。Oリング25は、ボディ5、受け部材21および作動ロッド17により囲まれる領域に押し込められており、その弾性反力によって少なくともボディ5と作動ロッド17に密着し、その間隙をシールしている。結果的に、受け部材21と作動ロッド17との間に形成される間隙が、高圧側から封止されている。この結果、挿通孔23を介した吐出冷媒の漏洩が抑制され、吐出冷媒に含まれるゴミが挿通孔23に詰まる等の不具合を回避することができる。その結果、作動ロッド17の円滑な摺動ひいては弁体20の安定した動作を確保できる。一方、作動ロッド17は、その上端側において摺動孔14に剛に支持されるが、下端側はOリング25によって比較的柔軟に支持されており、挿通孔23との間には十分なクリアランスが確保されている。このため、摺動孔14と挿通孔23との軸心位置が多少ずれていたり、作動ロッド17が多少傾くようなことがあっても、その作動ロッド17をボディ5内で固着させることなく、軸線方向に安定に摺動させることができる。
【0037】
本実施の形態においては、摺動孔14の断面積Aと弁孔15の断面積Bとが等しく形成され、挿通孔23の断面積Cはこれらよりやや大きいものの、実質的に等しく形成されている。したがって、作動ロッド17に作用するクランク圧力Pc等による力がキャンセルされる。弁体20は、制御状態においてはパワーエレメント6の感圧部材が感知する吸入圧力Psに基づいて開閉動作することになる。
【0038】
本実施の形態の感圧部材は、ダイヤフラム19および皿ばね51の個々の剛性を合わせた剛性を有し、ダイヤフラム19のしなやかさを保持する一方、皿ばね51によって耐圧強度が高められている。皿ばね51は、片側に凸状に膨らんだ形状を有するため、その凸部側から荷重が負荷されると、その荷重が小さい間は変形量も小さいが、荷重が大きくなるにつれてフラットになる側に徐々に変形し、さらに荷重が大きくなると反転して中央部が大きく変位する。このため、皿ばね51の荷重に対する変形の特性は全体としてみれば非線形となるが、その形状がフラットになる前後の所定の変位幅においては線形性を有する。
【0039】
本実施の形態では、この線形領域を制御領域に利用することにより、正確な弁開度制御を行っている。この皿ばね51の荷重を調整することにより、ダイヤフラム19および皿ばね51からなる感圧部材を変位させるのに要する吸入圧力Psも変化する。この皿ばね51の設定荷重は、ソレノイド3に供給する電流量を変化させることによって変更することができる。これにより、吸入圧力Psがソレノイド3に供給する電流量により設定された設定圧力になるように、弁体20が動作するようになる。
【0040】
図3および図4は、可変容量圧縮機用制御弁の感圧部を中心とした動作を表す説明図である。各図は、図2に対応する部分拡大断面図である。図3は、ソレノイド3がオフにされ、吸入圧力Psが高いときの状態を示している。図4は、ソレノイド3がオンにされ、弁部が微少開度に保持された制御状態を示している。
【0041】
ソレノイド3の非通電状態において吸入圧力Psが高くなると、図3に示すように、開放空間S2に導入されたその吸入圧力Psと、密閉空間S1内の内部圧力との差圧が大きくなり、その差圧による荷重がダイヤフラム19および皿ばね51に作用する。このため、皿ばね51がその周縁部を支点にしてその凸形状が反転する側に弾性変形し、第1ハウジング53の内壁にほぼ沿うようになる。本実施の形態では、このように皿ばね51が第1ハウジング53の内壁面によって係止されるため、完全に反転する手前の状態に保持される。その結果、吸入圧力Psが低くなれば、皿ばね51がその弾性力により元の形状に復帰できる。言い換えれば、第1ハウジング53は、このように皿ばね51が反転する手前の状態に変形したときの形状に沿う浅い形状に形成されている。これは、パワーエレメント6ひいては制御弁1のコンパクト化にも寄与している。
【0042】
一方、ソレノイド3に通電された安定した制御状態においては、図4に示すように、シャフト36を介してソレノイド力が弁体20に伝達される。それにより、弁体20は、吸入圧力Psを感知して動作するパワーエレメント6による開弁方向の力、スプリング30による開弁方向の付勢力、ソレノイド3による閉弁方向のソレノイド力等がつり合った位置に変位し、弁部が所定開度に制御される。本実施の形態では、この安定した状態において図示のように皿ばね51がほぼフラットになるように設定されている。
【0043】
次に、可変容量圧縮機用制御弁の全体の動作について説明する。
図1に示した制御弁1において、ソレノイド3が非通電のときには、スプリング30の付勢力により弁体20が弁座16から離間して弁部が全開状態に保持される。このとき、可変容量圧縮機の吐出室からポート11に導入された吐出圧力Pdの高圧冷媒は、全開状態の弁部を通過し、ポート13からクランク室へと流れることになる。したがって、クランク圧力Pcが吐出圧力Pdに近い圧力になるため、可変容量圧縮機は最小容量運転を行うことになる。
【0044】
一方、自動車用空調装置の起動時または冷房負荷が最大のときには、ソレノイド3に供給される電流値は最大になり、プランジャ33は、コア32に最大の吸引力で吸引される。このとき、プランジャ33、シャフト36、作動ロッド17、およびダイヤフラム19等が、一体になって閉弁方向に動作し、弁体20が弁座16に着座する。この閉弁動作によってクランク圧力Pcが低下するため、可変容量圧縮機は最大容量運転を行うことになる。
【0045】
そして、ソレノイド3に供給される電流値が所定値に設定された制御状態においては、弁体20は、吸入圧力Psを感知して動作するパワーエレメント6による開弁方向の力と、スプリング30による開弁方向の付勢力と、ソレノイド3による閉弁方向のソレノイド力とがバランスした弁リフト位置にて停止する。
【0046】
このバランスが取れた状態で、エンジンの回転数とともに可変容量圧縮機の回転数が上がって吐出容量が増えると、吐出圧力Pdが上がって吸入圧力Psが下がる。その結果、パワーエレメント6による開弁方向の力が大きくなって弁体20に作用し、弁体20は、さらにリフトして吐出室からクランク室へ流す冷媒の流量を増やす。これにより、クランク圧力Pcが上昇し、可変容量圧縮機は、その吐出容量を減少させる方向に動作し、吸入圧力Psが設定圧力になるように制御される。エンジンの回転数が低下した場合には、その逆の動作が行われ、吸入圧力Psが設定圧力になるように制御される。すなわち、制御弁1においてはソレノイド3に供給される電流量により設定圧力が設定される。弁体20は、吸入圧力Psがその設定圧力に近づくように自律的に動作する。
【0047】
以上に説明したように、本実施の形態の制御弁1によれば、ボディ5のソレノイド3とは反対側の端部にパワーエレメント6が設けられる。このため、ボディ5とソレノイド3との間にダイヤフラム19を介装させる態様のように、感圧部の構成が複雑になることがない。また、ソレノイド3のプランジャを分割する構成とする必要もなくなる。その結果、簡易な構成で実現することができる。また、パワーエレメント6内にダイヤフラム19に加えて皿ばね51を設けた構成としたため、感圧部材の耐圧強度を高く保持することができる。さらに、パワーエレメント6のハウジング50の形状を皿ばね51の形状に合わせるようにしたため、パワーエレメント6そのもの、ひいては制御弁1をコンパクトに構成することができる。
【0048】
また、前後差圧が比較的大きくなる挿通孔23の高圧側開口部を封止するようにOリング25が配設されているため、吐出冷媒に含まれるゴミ等が挿通孔23に詰まることが効果的に防止される。さらに、長尺状の作動ロッド17の軸受けの一方がボディ5の摺動孔14により構成され、他方がOリング25により構成されている。すなわち、作動ロッド17の一端側は剛に支持されるが、他端側は比較的柔軟に支持されている。一方、作動ロッド17と挿通孔23との間に十分なクリアランスが設定されている。このため、仮に作動ロッド17が微少に傾いたとしてもその傾き分は吸収され、作動ロッド17がボディ5内で固着することが防止される。その結果、弁体20の安定な動作が確保される。
【0049】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はその特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0050】
上記実施の形態においては、作動ロッド17の軸受けとしても機能するシール部材としてOリング25を用いた。変形例においては、軸受けとしても機能できるものであればOリング以外のスクイーズパッキンを用いてもよいし、リップパッキンを用いてもよい。各パッキンは、リング状であってもよいし筒状であってもよい。各パッキンの材質としては、シール機能を確保するための可撓性や弾性と、軸受け機能を確保するための剛性とを兼ね備えたものを選択することができる。例えば比較的剛性の高い合成ゴムであってもよいし、ゴム中に金属等の補強材を含有したものでもよい。あるいは、フッ素樹脂など、ある程度弾性を有する樹脂材であってもよい。図5および図6は、その変形例にかかる制御弁の部分拡大断面図である。各図において、図2に示した第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0051】
図5には、シール部材としてリップパッキン225を適用した例が示されている。リップパッキン225に吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧が作用すると、そのリップ部226が作動ロッド17の摺動面に圧着し、そのセルフシール作用により吐出冷媒の漏れを効果的に抑制することができる。リップ部226は、その圧着により作動ロッド17を安定に軸支できる程度の剛性を有する。このため、作動ロッド17の安定した摺動を維持することができる。
【0052】
図6には、シール部材としてスクイーズパッキンの一つであるVリング325を適用した例が示されている。Vリング325は、高圧側に凹部を有するV字状の断面を有し、単体の状態から弾性変形して図示のように組み付けられる。この弾性反力により、凹部の内側の内周部326が作動ロッド17の摺動面に圧着する。このVリング325に吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧が作用すると、内周部326と作動ロッド17との接面圧力がさらに増加するため、そのシール性がさらに高められる。Vリング325の全体としても十分な剛性を有するため、軸受けとして良好に機能する。
【0053】
上記実施の形態においては、感圧部としてのパワーエレメントを、ハウジングと、これを密閉空間と開放空間とに仕切る金属製のダイヤフラムと、密閉空間に配置されてダイヤフラムの剛性を補う皿ばねとを含んで構成する例を示した。変形例においては、パワーエレメントを構成する感圧部材として皿ばねを用いることなく、比較的厚みのある金属製のダイヤフラムを用いてもよい。具体的には、薄膜状の本体の中央部にて片面側に突出する凸部を有し、その凸部において皿ばねのような反転動作が可能なダイヤフラムを用いることができる。あるいは逆に、ダイヤフラムをなくし、皿ばねをハウジングに直接固定する構成としてもよい。具体的には、皿ばねの周縁部を第1ハウジングと第2ハウジングとの間に挟まれるようにして、溶接等によりハウジングに固定してもよい。
【0054】
上記実施の形態においては、制御弁1をいわゆるPs感知弁として構成した例を示した。変形例においては、例えば図2に示した構成において摺動孔14の断面積と弁孔15の断面積とを等しくしたまま、挿通孔23の断面積が弁孔15の断面積よりも大きく形成し、弁体20に吐出圧力Pdと吸入圧力Psとの差圧(Pd−Ps)が作用するように構成してもよい。このように構成すれば、制御弁を、差圧(Pd−Ps)を供給電流値により設定された設定差圧に保つように、吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御するいわゆるPd−Ps弁として機能させることもできる。その場合、差圧(Pd−Ps)を設定差圧に保つ容量制御が行われる一方で吸入圧力Psが監視され、その吸入圧力Psが設定圧力よりも低くなると、感圧部が弁体に開弁方向の駆動力を付与する。すなわち、吸入圧力Psが設定圧力よりも低くなったときに弁部を開きやすくすることにより、可変容量圧縮機の吐出容量が低減され、過剰冷房を防止することができる。
【0055】
また、制御弁をいわゆる三方弁として構成してもよい。例えば、図2に示した構成においてさらに、ポート13とポート26とを連通する冷媒通路と、その冷媒通路を開閉するもう一つの弁部を設けてもよい。このような構成では、弁体20と弁座16とからなる弁部(第1の弁部)により吐出室からクランク室へ導入される冷媒流量が調整され、もう一つの弁部(第2の弁部)によりクランク室から吸入室へ導出される冷媒流量が調整される。
【0056】
図7は、別の変形例にかかる制御弁の構成を示す断面図である。なお、同図において図1に示した実施の形態とほぼ同様の構成部分については、同一の符号を付している。
制御弁201は、特開2005−214059号公報の図8に示される制御弁と同様に、ソレノイドのプランジャを2つに分割してその間に吸入圧力Psを感知するダイヤフラムを配置したものである。制御弁201がこの先行技術の制御弁と大きく異なるのは、吐出室連通ポートと吸入室連通ポートとをつなぐ挿通孔にシール部材としてのOリングを配設した点にある。
【0057】
制御弁201は、弁本体202とソレノイド203とを、接続部材204を介して一体に組み付けて構成される。制御弁201の内部には、ソレノイド203を構成するコア210、第1プランジャ212、第2プランジャ214が直列に配置されている。接続部材204は磁性体からなり、その内方に第2プランジャ214が配置されている。
【0058】
第2プランジャ214の上部および下部には、非磁性体からなるガイドリング216がそれぞれ嵌合している。ガイドリング216は、例えばポリテトラフルオロエチレン等の摺動抵抗の低い部材からなり、その外周面が第2プランジャ214の外周面よりも突出している。ガイドリング216が接続部材204の内面と摺動可能に当接することにより、第2プランジャ214が接続部材204と所定間隔を保ちながら軸線方向に進退できるようになっている。なお、ガイドリング216の周方向の一部は切断されており、吸入圧力Psは第2プランジャ214の下端面側に形成される空間にも導入される。第2プランジャ214は、その上端部にリング状のフランジ部220が圧入されている。フランジ部220と接続部材204の上端面との間には、第2プランジャ214を第1プランジャ212から離間する方向に付勢するスプリング222が介装されている。
【0059】
ボディ205の中央には、ポート11とポート26とをつなぐ挿通孔224が設けられており、作動ロッド217を軸線方向に移動可能に挿通している。作動ロッド217の上端部には、細径部227を介して弁体20が一体に設けられている。弁体20は、ボディ205のポート13側から弁孔15に接離して弁部を開閉する。ボディ205の上端開口部にはばね受け228が螺着され、そのばね受け228と弁体20との間には、弁体20を閉弁方向に付勢するスプリング230が介装されている。ポート11から導入されて弁部を通過した冷媒は、ばね受け228に形成された孔部を介してクランク室側へ導出される。
【0060】
作動ロッド217の下端部は、ポート26側に露出して第2プランジャ214の上端面中央に当接している。スプリング222の荷重がスプリング230の荷重よりも大きく設定されているため、図示のようにソレノイド203への通電がないときには、弁体20が弁座16から離間し、弁部が全開状態になる。
【0061】
第2プランジャ214の下方には、感圧部材としてのダイヤフラム19が配置されている。ダイヤフラム19は、その外周縁部が接続部材204とソレノイド203のケース31とによって挾持されている。このダイヤフラム19によって仕切られた部分まで吸入圧力Psが導入される。ダイヤフラム19よりも下側には大気圧がかかる。
【0062】
ケース31内には電磁コイル34が配置され、その内側にはスリーブ240が配置されている。スリーブ240の下半部には、コア210が挿入されて固定されている。コア210とダイヤフラム19との間には、第1プランジャ212がスリーブ240内を軸線方向に進退自在に配置されている。第1プランジャ212は、軸線位置に配置されたシャフト236の上端部が挿通されて接続されており、そのシャフト236の下端部は、取っ手40に螺着された軸受部材244によって支持されている。シャフト236の中央部に固定された係止リング248と軸受部材244との間にはスプリング250が介装され、第1プランジャ212をダイヤフラム19の方へ付勢している。
【0063】
以上のような構成により、ソレノイド203の非通電時は、ダイヤフラム19の変位が弁部には伝達されず、かつ弁部が全開状態に維持されることから、可変容量圧縮機を最小容量運転状態に保持することができる。第1プランジャ212と第2プランジャ214は、非通電時では互いに離間されており、通電時には互いに吸引されて1つのプランジャとして動作するようになる。
【0064】
そして、以上のような構成において、作動ロッド217における挿通孔224との摺動面には凹部260が形成され、その凹部260にシール用のOリング262が嵌合されている。Oリング262は、作動ロッド217と挿通孔224との間に挟まれるように圧接されており、ポート11とポート26との間のシール性を確保している。Oリング262は、上記実施の形態のOリング25と同様のものでよいが、作動ロッド217が軸線方向に変位する際に、挿通孔224との間のシール性を保持しつつ摺動可能な程度の剛性を有するとともに、作動ロッド217の軸線方向への振動を抑制可能な程度にその軸線方向に変形する程度の可撓性を有する。
【0065】
すなわち、ソレノイド203に供給される電流のデューティ比によっては、作動ロッド217がそのパルス駆動による影響で微少に振動することがある。特に、弁体20が微少開度に制御された状態においては、その振動により弁体20が弁座16に衝突して跳ね返りを生じさせ、振動を増幅させるおそれがある。しかし、Oリング262が挿通孔224に圧接されてその密着状態を保持するように当接部においてある程度変形するため、その変形の際に微少振動が吸収される。つまり、作動ロッド217の振動を抑制することで、弁部の開閉ひいては吸入圧力Psの変化を安定化させることができる。なお、このような効果は、上記実施の形態の構成においても得ることができる。
【0066】
なお、本変形例では、作動ロッド217側に凹部260を形成してOリング262を保持する態様としたが、挿通孔224側に凹部を設け、Oリング等の円筒状またはリング状のパッキンを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態に係る可変容量圧縮機用制御弁の構成を示す断面図である。
【図2】図1の上半部に対応する部分拡大断面図である。
【図3】可変容量圧縮機用制御弁の感圧部を中心とした動作を表す説明図である。
【図4】可変容量圧縮機用制御弁の感圧部を中心とした動作を表す説明図である。
【図5】変形例にかかる制御弁の部分拡大断面図である。
【図6】変形例にかかる制御弁の部分拡大断面図である。
【図7】変形例にかかる制御弁の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 制御弁、 2 弁本体、 3 ソレノイド、 5 ボディ、 6 パワーエレメント、 11 ポート、 13 ポート、 14 摺動孔、 15 弁孔、 16 弁座、 17 作動ロッド、 18 段差部、 19 ダイヤフラム、 20 弁体、 23 挿通孔、 25 Oリング、 26 ポート、 28 圧力室、 29 圧力室、 36 シャフト、 50 ハウジング、 52 耐摩耗シート、 61 内部通路、 62 連通孔、 63 下端開口部、 225 リップパッキン、 226 リップ部、 325 Vリング、 326 内周部、 S1 密閉空間、 S2 開放空間 201 制御弁、 202 弁本体、 203 ソレノイド、 205 ボディ、212 第1プランジャ、214 第2プランジャ、217 作動ロッド、224 挿通孔、236 シャフト、260 凹部、262 Oリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる可変容量圧縮機用制御弁において、
内部に冷媒通路が形成されるとともに、一端側から順に前記クランク室に連通するクランク室連通ポート、前記吐出室に連通する吐出室連通ポート、吸入室に連通する吸入室連通ポートが設けられたボディと、
前記吐出室連通ポートと前記クランク室連通ポートとを連通させる冷媒通路を形成する弁孔に接離するように配置されて弁部を開閉する弁体と、
前記弁体が一体に設けられた長尺状の本体を有し、前記吐出室連通ポートと前記吸入室連通ポートとの間に形成された挿通孔に所定のクリアランスをもって挿通され、軸線方向に動作可能な作動ロッドと、
前記作動ロッドを介して前記弁体に軸線方向の力を伝達するためのシャフトと、
前記ボディの他端側に設けられ、供給される電流量に応じた閉弁方向のソレノイド力を前記シャフトに軸線方向に付与可能なソレノイドと、
前記挿通孔よりも小さな内径を有する筒状またはリング状の本体を有し、前記挿通孔の高圧側開口部を封止するように配設されるとともに、その内周面にて前記作動ロッドを支持する軸受けとして機能するシール部材と、
を備えたことを特徴とする可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項2】
前記ボディの一端側に設けられたハウジングと、前記ハウジング内を吸入圧力が導入される開放空間と密閉空間とに仕切るように配設された感圧部材とを含み、前記吸入圧力が設定圧力よりも低くなったときに前記感圧部材が変位して、前記作動ロッドを介して前記弁体に開弁方向の駆動力を付与するように構成された感圧部をさらに備え、
前記作動ロッドは、前記感圧部材と前記シャフトとの間に介装されるとともに、一端側が前記弁孔を貫通して前記ボディ内に設けられた摺動孔に摺動可能に支持される一方、他端側が前記シール部材に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項3】
前記作動ロッドは、一端側で前記開放空間に連通するとともに、他端側で前記吸入室連通ポートに連通する内部通路を備え、
前記吸入室連通ポートを介して導入された吸入圧力が、前記内部通路を介して前記開放空間に導かれるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項4】
前記作動ロッドは、前記他端側に開口部を有する有底筒状の本体を有し、
前記シャフトが、前記作動ロッドの開口部から内部に挿通され、前記作動ロッドをその底部を支点とするように支持し、
前記内部通路が、前記作動ロッドの内周面と前記シャフトの外周面との間隙によって形成されていることを特徴とする請求項3に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項5】
前記摺動孔の断面積、前記弁孔の断面積、および前記挿通孔の断面積が実質的に等しく形成されることにより、前記吸入圧力が前記電流量に応じた設定圧力に保持されるように前記弁体が自律的に動作するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項6】
前記摺動孔の断面積と前記弁孔の断面積とが実質的に等しく形成される一方、前記挿通孔の断面積が前記弁孔の断面積よりも大きく形成されることにより、前記弁体に吐出圧力と前記吸入圧力との差圧が作用するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項7】
前記感圧部材は、ダイヤフラムと、前記密閉空間内に前記ダイヤフラムに沿うように配設され、前記弁体に対して開弁方向の付勢力を付与可能な薄板状の皿ばねと、を含んで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項8】
前記ダイヤフラムが金属製ダイヤフラムからなり、
前記ダイヤフラムと前記皿ばねとの間に両者間の摩耗を抑制するための薄膜状部材が介装されていることを特徴とする請求項7に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項9】
前記感圧部材が皿ばねからなり、
前記皿ばねの周縁部が前記ハウジングに固定されていることを特徴とする請求項2に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項10】
前記ハウジングの内壁が、前記皿ばねが反転する側に変形したときの形状に沿う形状に形成されていることを特徴とする請求項7または9に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項11】
吐出室からクランク室に導入する冷媒流量を制御して、可変容量圧縮機の吐出容量を変化させる可変容量圧縮機用制御弁において、
内部に冷媒通路が形成されるとともに、前記クランク室に連通するクランク室連通ポート、前記吐出室に連通する吐出室連通ポート、吸入室に連通する吸入室連通ポートが設けられたボディと、
前記吐出室連通ポートと前記クランク室連通ポートとを連通させる冷媒通路を形成する弁孔に接離するように配置されて弁部を開閉する弁体と、
前記弁体が一体に設けられた長尺状の本体を有し、前記吐出室連通ポートと前記吸入室連通ポートとの間に形成された挿通孔に挿通され、軸線方向に動作可能な作動ロッドと、
供給される電流量に応じた前記弁部の開閉方向のソレノイド力を、前記作動ロッドを介して前記弁体に付与可能なソレノイドと、
前記挿通孔と前記作動ロッドとの間の摺動部に介装されたシール部材と、
を備えたことを特徴とする可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項12】
前記シール部材は、筒状またはリング状をなし、前記挿通孔および前記作動ロッドの一方に形成された凹部に嵌合するようにして支持され、前記挿通孔および前記作動ロッドの他方に摺動可能に圧接されていることを特徴とする請求項11に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項13】
前記シール部材は、前記作動ロッドが軸線方向に変位する際に、前記挿通孔および前記作動ロッドの他方との間のシール性を保持しつつ摺動可能な程度の剛性を有するとともに、前記作動ロッドの軸線方向への振動を抑制可能な程度にその軸線方向に変形する程度の可撓性を有することを特徴とする請求項12に記載の可変容量圧縮機用制御弁。
【請求項14】
前記シール部材は、Oリングからなることを特徴とする請求項13に記載の可変容量圧縮機用制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−103116(P2009−103116A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51669(P2008−51669)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】