説明

可変容量排気ガスタービンの製造方法

【課題】鋳造等の素材成型により製作し、機械加工により最終仕上げ製品を得るような可変容量排気ガスタービンの構成部材において、排気ガスの流れを円滑に前記内周スクロール部に流入されるための舌部の間隙を最小限度に形成でき、またリング円近傍での蓋部材の装着を高精度で行うことを可能とした可変容量排気ガスタービンの製造方法を提供する。
【解決手段】蓋部材と、内径側を軸受ハウジングとタービンロータの空隙に沿ってシャフト直交面方向に延在させた縮径板とを、鋳造、射出成形、もしくは冷間鍛造のいずれかの成型にて一体的に形成されるとともに、蓋部材の内周スクロール部の入口相当部分に形成される前記タービンハウジングの排気ガス通路の舌部に対応する、蓋部材の成型面を突起させて突出部を形成し、該突出部に切削加工を施して該切削加工面と舌部との間に間隙値を保持して組み付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的中小型内燃機関の排気ターボ過給機の製造に用いられ、エンジン(内燃機関)からの排気ガスを、排気入口部とタービンロータとの間に通路断面積が漸次減少するスクロール部を、前記タービンロータの径方向に分割して形成された内周スクロール部および外周スクロール部とに構成し、蓋部材の周方向に複数個列設されたインサートベーンにより、前記内周スクロール部と外周スクロール部とに排気ガスを流動させるようにした可変容量排気ガスタービンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4(A)は特許文献1(特許第3956884号公報)にて開示されている可変容量排気ガスタービンの回転軸心に直角な要部断面図、図4(B)は図4(A)のD−D断面図、図5は図4(A)のY−Y断面図である。
かかる可変容量排気ガスタービンは、排気ガスにより回転駆動されるタービンロータ10を、タービンハウジング01の中央部に収容(回転軸心100a)している。
前記タービンハウジング01は、排気入口部20及び排気出口部20aを有して、該排気入口部20と内周のタービンロータ10との間に通路断面積が漸次減少するスクロール部12を有する。
【0003】
前記スクロール部12は、前記タービンロータ10の径方向に2分割されて、内周スクロール部2および外周スクロール部1を形成している。
前記内周スクロール部2と外周スクロール部1との間は、前記スクロール部12の境界壁2aに沿うように周方向に複数個列設されたインサートベーン6aを介して分割され、それぞれのインサートベーン6aの間には、排気通路6bが形成されている。
また、インサートベーン6aは、蓋部材6の本体部から前記周方向に複数個突設されており、図5に示すように、該インサートベーン6aにより、該内周スクロール部2と前記外周スクロール部1とを分離している。
また、図5に示すように、特許文献1では、前記蓋部材6と遮熱板6cの2枚を一体にして、該一体品を、タービンハウジング01を軸受ハウジング11に締め付けるボルト29を用いて、蓋部材6の外縁のリング円8で前記タービンハウジング01の支持部1sで挟着しつつ、締め付けられている。
【0004】
また、図4(A)に示すように、前記内周スクロール部2の入口部には、該入口部に排気ガスをガイドし、排気ガスの流れを円滑に前記内周スクロール部2に流入されるための舌部5が、排気ガス流に沿って形成されている。
また、前記外周スクロール部1の排気入口部側には、制御弁4が設置され、該制御弁4は前記タービンハウジング01の周壁4aに接脱することにより、前記内周スクロール部2への排気ガス流量および外周スクロール部1への排気ガス流量をそれぞれ制御している。
【0005】
即ち、エンジンの低回転時には、制御弁4が周壁4aに接して閉じることにより外周スクロール部1が閉じて、排気ガスはUのように内周スクロール部2側にのみ流れる。
またエンジンの高回転時には、制御弁4が周壁4aから離れて開くことにより、排気ガスは外周スクロール部1をUのように流れて、インサートベーン6aの排気通路6bを通って内周スクロール部2に流入するとともに、内周スクロール部2へもUのように流れる。
従って、エンジンの低回転時と高回転時とで、前記制御弁4により排気ガス流量を変えることができる。
【0006】
【特許文献1】特許第3956884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4、5に記載された特許文献1のような可変容量排気ガスタービンを、鋳造、射出成形、もしくは冷間鍛造のいずれかで成型、即ち素材成型により製作し、機械加工により最終仕上り製品を得る場合、次のような解決すべき問題がある。
【0008】
(1)図4(A)および図4(A)のD−D断面図である図4(B)に示すように、前記内周スクロール部2の入口部に排気ガスをガイドし、排気ガスの流れを円滑に前記内周スクロール部2に流入されるための舌部5が、排気ガス流に沿って形成されている。
この舌部5と前記蓋部材6の本体面6pとの間隙19a、つまりタービンハウジング01に形成される舌部5と前記本体面6pとの間隙19a(間隙寸法S)は、該本体面6pのみが素材成型面か、あるいは該本体面6pおよび舌部5の双方が素材成型面であるため、素材成型面の公差を考慮して大きめに取っている。
然るに、かかる舌部5と前記本体面6pとの間隙19aは、これが小さい程、タービン性能が良好であり、前記のように素材成型面の公差を考慮してこれを大きく取ると、かかる間隙19aからのガス漏れが多くなって、タービン性能が低下するという問題がある。
【0009】
(2)また、前記蓋部材6は、図5のように、外周のリング円8で前記タービンハウジング01の支持部1sで挟着して、ボルト29で締め付けている。しかしながら、かかる構造では、蓋部材6の取り付けが高精度でできず、また前記遮熱板6cの熱膨張を考慮した対策がなされていない等の問題がある。
【0010】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、鋳造等の素材成型により製作し、機械加工により最終仕上げ製品を得るような可変容量排気ガスタービンの構成部材において、排気ガスの流れを円滑に前記内周スクロール部に流入されるための舌部の間隙を最小限度に形成でき、またリング円近傍での蓋部材の装着を高精度で行うことを可能とした可変容量排気ガスタービンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明はかかる目的を達成するもので、軸受ハウジングにより軸支されるシャフトと、該シャフトの一端に固定され排気ガスにより回転駆動されるタービンロータと、該タービンロータを中央部に収容するとともに排気入口部及び排気出口部を有し、前記排気入口部とタービンロータとの間に通路断面積が漸次減少するスクロール部を有するタービンハウジングと、前記スクロール部を前記タービンロータの径方向に分割して形成された内周スクロール部および外周スクロール部とを備えるとともに、該タービンロータの周方向に複数個列設されたインサートベーンにより、内周スクロール部へ直接流入する排気ガスの流動と前記外周スクロール部を流れる排気ガスを内周スクロール部に流入させる排気ガスの流動とを制御するように構成し、前記外周スクロール部の排気入口部側に配設され前記内周スクロール部への排気ガス流量および外周スクロール部への排気ガス流量をそれぞれ制御する制御弁を備えるとともに、前記タービンハウジングの開口端面に前記内、外周スクロール部を画成する蓋部材が配設され、該蓋部材の排気通路側に前記インサートベーンが突設されて構成されている可変容量排気ガスタービンの製造方法において、
前記蓋部材と該蓋部材の内径側を軸受ハウジングとタービンロータの空隙に沿ってシャフト直交面方向に延在させた縮径板とを備え、鋳造、射出成形、若しくは冷間鍛造のいずれかの成型にて一体的に形成されるとともに、前記蓋部材の内周スクロール部の入口相当部分に形成される前記タービンハウジングの排気ガス通路の舌部に対応する、前記蓋部材の成型面を突起させて突出部を形成し、該突出部に切削加工を施して該切削加工面と舌部との間に間隙値を保持して組み付けたことを特徴とする(請求項1)。
【0012】
また、本発明は、好ましくは、前記蓋部材内径側と縮径板との間を、該蓋部材から軸受ハウジング側に突設するリング円を介して一体的に成型するとともに、該リング円の内周側に切削加工を施して、前記リング円の内周と軸受ハウジング側の円形段部とを嵌合可能に支持されている(請求項2)。
【0013】
また、本発明は、好ましくは、前記蓋部材の外径の外側面に切削加工を施して、前記蓋部材の外径側を軸受ハウジングとタービンハウジングに挟着支持させるとともに、前記リング円の内周側に延在する前記縮径板をフリーの状態にて中空保持し、縮径板の熱膨張を許容可能にする(請求項3)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鋳造、射出成形、もしくは冷間鍛造のいずれかの成型、即ち素材成型により製作し機械加工により最終仕上り製品を得る場合において、
前記蓋部材と該蓋部材の内径側を軸受ハウジングとタービンロータの空隙に沿ってシャフト直交面方向に延在させた縮径板とを備えて、前記素材成型により一体的に素材が形成されるとともに、前記タービンハウジングの排気ガス通路の舌部に対応して、前記蓋部材の成型面を突起させて突出部を形成し、該突出部に切削加工を施して該切削加工面と舌部との間に間隙値を保持して組み付けたので(請求項1)、
タービンハウジングに形成される前記舌部と前記本体面との間隙は、前記舌部に対応して蓋部材の素材成型面を突起させて突出部を形成しておいてから、該突出部に切削加工を施して、該切削加工面と舌部との間に間隙値を形成するので、前記舌部との間に間隙値を保持して組み付けることとなり、前記間隙値を機械加工面によって形成することができる。
【0015】
従って、かかる舌部と前記本体面との間隙値は機械加工面であるため、これを最小限度に小さく取ることができ、かかる間隙値からのガス漏れが少なくなって、タービン性能が向上する。
また、蓋部材の素材成型面を突出させ、該突出部に切削加工を施すのみであるので、加工および構造が簡単で低コストである。
【0016】
また、前記発明において、前記蓋部材内径側と縮径板との間を、該蓋部材から軸受ハウジング側に突設するリング円を介して一体的に成型するとともに、該リング円の内周側に切削加工を施して、前記リング円の内周と軸受ハウジング側の円形段部とを嵌合可能に支持されるように構成すれば(請求項2)、
素材成型にて蓋部材内径側と縮径板との間を、前記リング円を介して一体的に成型接続するにあたり、該リング円の内周側に切削加工を施して、該リング円内周側の切削加工面を高精度に加工して軸受ハウジング側の円形段部に嵌合でき、
これにより、蓋部材内径側と縮径板とを接続するリング円の内周側と、軸受ハウジング側の円形段部とが切削加工面の嵌合により、寸法の狂いがなく高精度に嵌合できる。
従って、図5の従来技術のように、外周のリング円で前記タービンハウジングの支持部で挟着してボルトで締め付けるものに比べて、蓋部材の取り付けを高精度で行うことができる。
【0017】
また、前記発明において、蓋部材の外径の外側面に切削加工を施して、前記蓋部材の外径側を軸受ハウジングとタービンハウジングに挟着支持させ、前記リング円内周側に延在する縮径板をフリーの状態にて中空保持すれば(請求項3)、
素材成型の状態で蓋部材の外径の外側面に切削加工を施して、上述したような構成とすることにより、前記縮径板(遮熱板)の熱膨張を許容することになって熱拘束の発生を防止して、縮径板(遮熱板)の破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る可変容量排気ガスタービンのタービン軸心線に沿う断面図である。図2(A)は前記実施例における蓋部材および縮径板の断面図、図2(B)は(A)のA矢視図、図2(C)は(A)のB矢視図である。図3(A)は図1のC−C断面図、図3(B)は(A)のD−D断面図である。
図1において、かかる可変容量排気ガスタービンは、タービンハウジング01内に、排気ガスにより回転駆動されるタービンロータ10を、該タービンハウジング01の中央部に配置し、該タービンロータ10は該タービンシャフト10aを介して、コンプレッサハウジング13内に収納されたコンプレッサ10bを直結駆動している(100aは回転軸心)。
また、前記コンプレッサハウジング13は軸受ハウジング11を介して前記タービンハウジング01に連結されている。
【0020】
図3(A)は前記タービンハウジング01の平面形状を示し、かかるタービンハウジング01は、排気入口部20及び排気出口部20a(図1参照)を有し、該排気入口部20と内周のタービンロータとの間に通路断面積が漸次減少するスクロール部12を有する。
前記スクロール部12は、前記タービンロータの径方向に、内周スクロール部2および外周スクロール部1に、2分割して形成されている。後述する制御弁は符号4で示されている。
【0021】
以上の基本構成は、図4〜5の従来技術と同様である。
本発明は、蓋部材6及び縮径板62からなるインサート部材60の素材成型および加工仕上げに関するものである。
【0022】
図1において、前記タービンハウジング01によって、開口端面100b側から覆われる形で蓋部材6及び縮径板62からなるインサート部材60が設けられている。また、その他に図1に示される可変容量排気ガスタービンは、排気出口20aと、スクロール部12と、後述されるリング円7と、インサートベーン6aを備える。
前記蓋部材6及び縮径板62からなるインサート部材60は、本実施例では精密鋳造により素材成型を行うものとする。尚、前記素材成型は、ロストワックス成形、金属射出成形、もしくは冷間鍛造のいずれかの成型でもよい。
【0023】
前記インサート部材60の形状を図2(A)〜(C)に示す。
前記蓋部材6及び縮径板62からなるインサート部材60は、素材成型時には、前記蓋部材6については、前記内周スクロール部2と外周スクロール部1とを区画形成し、該内周スクロール部2と外周スクロール部1との間は、図3(A)に示す該スクロール部12の境界壁2aが設けられ、該境界壁2aに沿うように後述する複数のインサートベーン6aが設置されている。
そして、前記複数個のインサートベーン6aを、それぞれ排気側に一体にほぼ軸方向に突設して排気ガスの流動を制御するように構成している。そして、それぞれのインサートベーン6aの間には、排気通路6bが該インサートベーン6aの周方向に沿って形成されている。
【0024】
図1に示すように、前記インサート部材60の前記蓋部材6の内径側には、軸受ハウジング11とタービンロータ10の空隙に沿ってタービンシャフト10aの直交面方向に延在させた縮径板62が、該蓋部材6と一体的に形成されている。
この縮径板62は、タービンロータ10に対向させて、該タービンロータ10からの熱流を遮断する遮熱板として用いられる。
【0025】
以上のようにして、精密鋳造により素材成型が行われた蓋部材6と縮径板62ならなるインサート部材60は、図2のように、蓋部材6のリング円7の内周側(径D)に切削加工を施す。
そして、前記リング円7の内周の切削加工面7eを、軸受ハウジング11側の円形段部11aに嵌合して、該インサート部材60を前記軸受ハウジング11に支持せしめる。即ち、リング円7の内周側(径D)に切削加工を施こすことにより、該リング円7内周側の切削加工面(径D)を高精度に加工して、軸受ハウジング11側の円形段部11a(図1参照)に嵌合することができる。
【0026】
これにより、蓋部材6内径側と縮径板62とを接続するリング円7内周側(径D)と、軸受ハウジング11側の円形段部11aとが、切削加工面の嵌合により、寸法の狂いがなく高精度に嵌合できる。
従って、図5の従来技術のように、外周のリング円で前記タービンハウジング01の支持部で挟着してボルトで締め付けるものに比べて、蓋部材6の取り付けを高精度で行うことができる。
【0027】
次に、図2(A)のように、前記蓋部材6の外径の外側面6uに、切削加工を施してかかる蓋部材6の外径の外側面6uを、軸受ハウジング11とタービンハウジング01の間に挟着支持させるとともに、前記リング円7の内周側に延在する縮径板62をフリーの状態にて中空保持する。
このように構成すれば、素材成型の状態で蓋部材6の外径の外側面6uに切削加工を施して、蓋部材6を軸受ハウジング11とタービンハウジング01の間に挟着支持させておき、高温になる縮径板(遮熱板)62をフリーの状態にて中空保持することにより、縮径板(遮熱板)62の熱膨張を許容することになって熱拘束の発生を防止して、縮径板(遮熱板)62の破損を防止できる。
【0028】
次に、図3(A)、(B)に示すように、前記内周スクロール部2の入口部には、該入口部に排気ガスをガイドし、排気ガスの流れを円滑に前記内周スクロール部2に流入されるための舌部5が、素材成型の状態で、排気ガス流に沿って形成されている。
そこで、かかる実施例では、図3(B)に示すように、タービンハウジング01の前記舌部5に対応して、前記蓋部材6の成型面6sから突起させて厚さtなる突出部19sを形成しておく。
そして、該突出部19sに切削加工を施して、該切削加工面19と舌部5との間に間隙値Sを保持して組み付ける。
【0029】
このように構成すれば、図3(B)に示すように、前記舌部5に対応する突出部19sに切削加工を施こすことにより、舌部5と前記突出部19sの切削加工面19との間隙値Sを、常時舌部5に対応した最小間隙に保持できる。
従って、かかる舌部5と前記突出部19sの切削加工面19との間隙値Sは、機械加工面であるためこれを最小限度に小さく取ることができ、かかる間隙値Sからのガス漏れが少なくなって、タービン性能が良好となる。
また、蓋部材6の素材成型面6sを突出させ、該突出部19sに切削加工を施すのみであるので、加工および構造が簡単で低コストとなる。
【0030】
次に、本発明の実施例において、かかる要素の組み立てを以下に述べる。
前記インサート部材60を構成する蓋部材6は、図1のように、前記タービンハウジング01と軸受ハウジング11との間に、該タービンハウジング01と軸受ハウジング11とを締着するボルト29によって、前記該タービンハウジング01と軸受ハウジング11間に、止めピン30を介して挟着されている。
また、外側に位置するリング円8は、図2(A)のように、内径Dなるリング円8であり、該リング円8は、蓋部材6に形成された凸部8aと該凸部8aに嵌合するようにタービンハウジング01に形成された凹部1s(図1参照)を嵌着している。
【0031】
なお、前記図4に示す従来技術と同様に、前記外周スクロール部1の排気入口部側には制御弁4が設置され、該制御弁4は前記タービンハウジング01の周壁4aに接脱することにより、前記内周スクロール部2への排気ガス流量および外周スクロール部1への排気ガス流量をそれぞれ制御している。
即ち、エンジンの低回転時には、制御弁4が周壁4aに接して閉じることにより外周スクロール部1が閉じて、排気ガスはUのように内周スクロール部2側にのみ流れる。
またエンジンの高回転時には、制御弁4が周壁4aから離れて開くことにより、排気ガスは外周スクロール部1をUのように流れて、インサートベーン6aの排気通路6bを通って内周スクロール部2に流入するとともに、内周スクロール部2へもUのように流れる。
従って、エンジンの低回転時と高回転時とで、前記制御弁4により排気ガス流量を変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、鋳造等の素材成型により製作し、機械加工により最終仕上げ製品を得るような可変容量排気ガスタービンの構成部材において、排気ガスの流れを円滑に前記内周スクロール部に流入されるための舌部の間隙を最小限度に形成でき、またリング円近傍での蓋部材の装着を高精度で行うことを可能とした可変容量排気ガスタービンの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例に係る可変容量排気ガスタービンのタービン軸心線に沿う断面図である。
【図2】(A)は前記実施例における蓋部材および縮径板の断面図、(B)は(A)のA矢視図、(C)は(A)のB矢視図である。
【図3】(A)は図1のC−C断面図、(B)は(A)のD−D断面図である。
【図4】従来技術にかかる可変容量排気ガスタービンの回転軸心に直角な要部断面図である。
【図5】従来技術にかかる図4のY−Y断面図である。
【符号の説明】
【0034】
01 タービンハウジング
1 外周スクロール部
2 内周スクロール部
2a 境界壁
4 制御弁
4a 周壁
5 舌部
60 インサート部材
6 蓋部材
6a インサートベーン
6b 排気通路
8 リング円
10 タービンロータ
11 軸受ハウジング
12 スクロール部
20 排気入口部
20a 排気出口部
29 ボルト
30 止めピン
62 縮径板(遮熱板)
100b 開孔端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受ハウジングにより軸支されるシャフトと、該シャフトの一端に固定され排気ガスにより回転駆動されるタービンロータと、該タービンロータを中央部に収容するとともに排気入口部及び排気出口部を有し、前記排気入口部とタービンロータとの間に通路断面積が漸次減少するスクロール部を有するタービンハウジングと、前記スクロール部を前記タービンロータの径方向に分割して形成された内周スクロール部および外周スクロール部とを備えるとともに、該タービンロータの周方向に複数個列設されたインサートベーンにより、内周スクロール部へ直接流入する排気ガスの流動と前記外周スクロール部を流れる排気ガスを内周スクロール部に流入させる排気ガスの流動とを制御するように構成し、
前記外周スクロール部の排気入口部側に配設され前記内周スクロール部への排気ガス流量および外周スクロール部への排気ガス流量をそれぞれ制御する制御弁を備えるとともに、
前記タービンハウジングの開口端面に前記内、外周スクロール部を画成する蓋部材が配設され、該蓋部材の排気通路側に前記インサートベーンが突設されて構成されている可変容量排気ガスタービンの製造方法において、
前記蓋部材と該蓋部材の内径側を軸受ハウジングとタービンロータの空隙に沿ってシャフト直交面方向に延在させた縮径板とを備え、鋳造、射出成形、若しくは冷間鍛造のいずれかの成型にて一体的に形成されるとともに、前記蓋部材の内周スクロール部の入口相当部分に形成される前記タービンハウジングの排気ガス通路の舌部に対応する、前記蓋部材の成型面を突起させて突出部を形成し、該突出部に切削加工を施して該切削加工面と舌部との間に間隙値を保持して組み付けたことを特徴とする可変容量排気ガスタービンの製造方法。
【請求項2】
前記蓋部材内径側と縮径板との間を、該蓋部材から軸受ハウジング側に突設するリング円を介して一体的に成型するとともに、該リング円の内周側に切削加工を施して、前記リング円の内周と軸受ハウジング側の円形段部とを嵌合可能に支持されていることを特徴とする請求項1記載の可変容量排気ガスタービンの製造方法。
【請求項3】
前記蓋部材の外径の外側面に切削加工を施して、前記蓋部材の外径側を軸受ハウジングとタービンハウジングに挟着支持させるとともに、前記リング円の内周側に延在する前記縮径板をフリーの状態にて中空保持し、縮径板の熱膨張を許容可能にしたことを特徴とする請求項2記載の可変容量排気ガスタービンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−53792(P2010−53792A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220363(P2008−220363)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】