説明

可変界磁モータ

【課題】 構造が簡潔かつステータの支持安定性が高い可変界磁モータを提供する。
【解決手段】 ステータ移動手段30を有するアウターロータ型の可変界磁モータMであって、ステータ20を支持するステータ支持構造体2を有し、ステータ支持構造体2は、モータMの回転軸の軸線Aと同軸に設けられた円筒形部材3と、円筒形部材3の外面より円筒形部材3の半径方向外側へと突出する少なくとも1以上の第1突出部材4と、第1突出部材4より軸線A方向に所定の距離をおいて、円筒形部材3の外面より円筒形部材3の半径方向外側へと突出する少なくとも1以上の第2突出部材5と、第1突出部材4及び第2突出部材5の間を連結するように設けられた少なくとも1以上のガイドシャフト6とを有し、ステータ20は、ガイドシャフト6によって摺動可能に支持されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変界磁モータに関するものであり、詳しくは可変界磁モータの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モータの界磁を調整できるようにし、使用状況に応じた適切な回転数及びトルクが得られるようにした可変界磁モータが駆動源として利用されている。一般的に可変界磁モータは、ステータ又はロータの一方が他方に対して移動可能に設けられ、可変機構部が当該ステータ及びロータの相対位置を変化させることによって、両者の対向面積を増減させて界磁を増減させる。このようなモータが電気自動車に適用された場合には、自動車の加速時に対向面積を増大させて界磁を増加させ、高トルクが得られるようにし、逆に高速走行時には対向面積を減少させて界磁を減少させ、高速回転が可能となるようにする(例えば特許文献1参照)。また、他の適用例としては、洗濯機のモータに適用したものがあり、洗濯槽に水を受容した洗い時には高トルク運転、脱水時には高速回転運転としたものがある(例えば特許文献2参照)
このような可変界磁モータの可変機構部は、アクチュエータと、アクチュエータの回転運動を直線運動へと変換する送りねじとから構成され、送りねじの回転によってステータを回転軸の軸線方向に移動させるものがある。このような可変機構部を用いたモータでは、送りねじはステータを支持する構造の一部を構成し、ステータが回転軸に対して垂直を維持しつつ移動するように支持している。また、ステータを安定的に、回転軸に対して垂直に維持しつつ移動させるため、送りねじが複数本設けられ、各送りねじが同期して回転運動するように制御されているものもある(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特願2006−332985
【特許文献2】特開2002−143595
【特許文献3】特願2006−192486
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のアクチュエータと送りねじとによる可変機構部は、モータ回転により発生する反トルクをステータが受けることによって、ステータとステータを支持する送りねじとの間の噛み合いが強くなり、ステータと送りねじの間に作用する摩擦力が大きくなる。そのため、送りねじを回転させるために必要な駆動力が大きくなり、アクチュエータは高出力のものが必要となって装置が大型化し、消費電力量も増加するという課題がある。また、複数本の送りねじを同期させて回転させる場合には、駆動機構が複雑となって、防塵及び防水等のシールや、送りねじへの潤滑油の供給が行い難くなるという課題がある。
【0004】
本発明は、上記の課題を鑑みなされたものであって、小さな駆動力でステータを移動させることができ、アクチュエータを小型化してモータの軽量化及び低消費電力化を図ることができ、またモータ構造を簡潔化して可変機構部の防塵及び防水対策や製造工程を容易にすることができるように、ステータを回転軸に対して安定的に支持することができる支持構造体を有する可変界磁モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、ロータと、前記ロータに対して同軸をなし、かつ前記ロータの回転軸の軸線方向に変位自在に設けられたステータと、前記ステータを前記回転軸方向に変位させるステータ移動手段とを有する可変界磁モータであって、前記ステータを支持するステータ支持構造体を更に有し、前記モータ支持構造体は、前記回転軸と同軸に設けられた円筒形部材と、前記円筒形部材の外周面より前記回転軸の半径方向外側へと突出する少なくとも1以上の第1突出部材と、前記第1突出部材に対して前記軸線方向に所定の距離をおいて、前記円筒形部材の外周面より前記回転軸の半径方向外側へと突出する少なくとも1以上の第2突出部材と、前記第1突出部材及び前記第2突出部材の間を連結するように設けられた少なくとも1以上のガイドシャフトとを有し、前記ステータは、前記ガイドシャフトによって摺動可能に支持されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は請求項1に係る発明であって、前記ロータは、有底円筒形状に形成され、かつ底部の中心部に回転軸として固定されたシャフトとを有し、前記ステータ支持構造体は、前記円筒形部材の内部に前記シャフトを回転可能に軸支することを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は請求項1または2に係る発明であって、前記ガイドシャフトは、3本であり、かつ前記回転軸と平行に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は請求項1乃至3のいずれかに係る発明であって、前記ステータ移動手段は、前記ステータに一端で連結され、かつ軸線方向に力を伝達する軸方向力伝達部材と、前記軸方向力伝達部材を介して前記ステータを前記回転軸方向に変位させるべく前記軸方向力伝達部材の他端を変位させる軸方向力発生手段とを有し、前記軸方向力発生手段は、前記ステータ支持構造体の外部に設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明は請求項4に係る発明であって、前記ロータの内周面にマグネットが設けられ、前記ステータに前記マグネットに相対するように設けられたステータコアを備え、前記マグネットは、前記ステータの前記ロータ内への没入規制位置におけるステータコアよりも前記ロータの底部側に延出している部分を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によって、ステータはステータ支持構造体に支持されることになり、ステータからステータ移動手段へと加わる負荷は低減される。そのため、ステータを移動させるためにステータ移動手段に要求される駆動力は低減され、ステータ移動手段の駆動力発生装置を小型化し、ステータ移動に伴うエネルギ消費量を低減することができる。また、モータの構造が簡潔となるため、モータの防水及び防塵対策が容易となり、また製造も容易となり製造コストが削減できる。請求項2の発明によって、ロータとモータの回転軸との構造は簡潔となり、構造が簡潔な可変界磁モータを得ることができる。請求項3の発明によって、ステータは3点で支持されるため十分な支持安定性を得ることができ、また部品点数を最小限としてモータ構造を簡潔にすることができる。請求項4の発明によって、ステータ移動手段をモータから離隔させることができるためモータの構造を更に簡潔にすることができる。請求項5の発明によって、ステータは移動範囲内の全ての位置で、磁力により回転軸に沿ってロータ側へと力を受けるようになる。そのため、ステータ移動手段が回転軸に沿ってロータ側と逆方向にステータを牽引する力のみを加える装置である場合に、ステータ位置を力が平衡する位置に安定して位置させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1実施形態に係る可変界磁モータの断面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る可変界磁モータに付随するワイヤ式牽引装置の断面図である。図3は、図1の矢印III方向から見た平面図である。図4は、本発明の第1実施形態に係る可変界磁モータの斜視図である。図5は、本発明の第1実施形態に係る可変界磁モータの分解斜視図である。図6は、本発明の第1実施形態に係る可変界磁モータのステータ移動後を示す断面図である。図7は、本発明の第2実施形態に係る可変界磁モータの断面図である。図8は、本発明の第3実施形態に係る可変界磁モータの断面図である。図9は、本発明の第4実施形態に係る洗濯機を一部破断して示す側面図である。
【0013】
<第1実施形態の構成>
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、第1実施形態に係る可変界磁モータMは、アウターロータ型のモータであり、電気自動車のインホイールモータとして車体本体のナックル1に固定され電気自動車の車輪の一部を構成する。まず、車体本体に設けられたナックル1に、ステータ支持構造体としてのステータベース2が固定されている。
【0014】
ステータベース2は、モータMの回転軸の軸線Aと同軸に配置された円筒形状を有する円筒形部材3と、円筒形部材3の外面より円筒形部材3の半径方向外側に突出した少なくとも1以上の第1突出部材4と、軸線A方向において第1突出部材と所定の間隔をあけて、円筒形部材3の外面より軸線Aの径方向に突出した少なくとも1以上の第2突出部材5とにより構成されている。第1実施形態では、第1突出部材4は、3本であり、同一周内に互いに120°ずつ角度を空けて配置されている。第2突出部材5も第1突出部材4と同様に3本であり、同一周内に互いに120°ずつ角度を空けて配置されている。更に第2突出部材5の3本の内のいずれか2本の間は、モータMの回転速度検出装置(図示しない)を設けるスペースを形成するべく、連結されて平面を形成している。また、第1実施形態では第1及び第2突出部材4、5の基部はそれぞれ、構造の剛性を向上させるために、円筒形部材3の周方向に外周に沿って連結されている。他の実施形態では、突出部材4,5のそれぞれの数を任意の本数としても良く、また突出部材を円筒形部材3の周方向に沿って全て連結させ、第1及び第2突出部材を2枚の円盤状の突出部材としても良い。
【0015】
また、第1突出部材4のそれぞれと、対応する第2突出部材5のそれぞれとが、軸線Aと平行に配置され、第1突出部材4及び第2突出部材5は、ガイドシャフト6によって連結されている。ガイドシャフト6は、軸線に沿って対峙する第1及び第2突出部材4,5に設けられた対応する孔に圧入されて固定されている。ガイドシャフト6もまた、軸線Aに対して平行となる。また、ステータベース2は、後述するステータ移動手段としてのワイヤ式牽引装置30を固定支持する支持突出部材8を第1突出部材4と同一周内に更に有する。
【0016】
ステータベース2の円筒形部材3の円筒内壁には、一対の軸受7a・7bを介してモータMの回転軸となるシャフト11が回転自在に軸支されている。また、シャフト11には、有底円筒形状を有するロータ本体12が、円筒が開放する側を車体のナックル1側に向け、かつロータ本体12の底部の中心で固定されて、モータMのロータ10が構成されている。ロータ10の外周部には、ホイールを介して電気自動車の駆動輪Wが取り付けられている。また、ロータ本体12の側壁13の内周面には、周方向に沿ってN・S極を並べた複数のマグネット14が配設されている。
【0017】
また、ロータ10のマグネット14に相対するようにステータ20が、ステータベース2に支持されている。ステータ20は、マグネット14に相対する複数個のステータコア21と、軸線Aと同軸に設けられた環状部材22とから構成され、複数個のステータコア21は環状部材22の外周側に固定支持されている。ステータコア21は、例えば軸線A方向に積層させられた鋼板から構成され、電機子コイル23によって巻回されている。ステータ20は、環状部材22に設けられた例えばボールブッシュである3個のブッシュ24を介して3本のガイドシャフト6に摺動可能に支持されている。このためステータ20は、モータM内で軸線A方向に沿って、移動することが可能になる。
【0018】
第1実施形態では、ステータ20にステータ移動手段としてのワイヤ式牽引装置30が備えられている。ワイヤ式牽引装置30は、一端が環状部材22に連結された軸方向力伝達部材としてのインナーケーブル31と、ステータベース2を含むモータ本体Mから離間して車体に設けられ、インナーケーブル31の他端が連結された軸方向力発生手段としての手動牽引装置33(図2)とにより構成されている。手動牽引装置33は、例えば車両本体の運転席に設けられ、運転者によって手動操作される。インナーケーブル31は、インナーケーブル31を保護しかつ支持するためにアウターケース32に外装され、アウターケース32内をアウターケース32の軸線方向に沿って移動することができる。アウターケース32は、一端がステータベース2の支持突出部材8に貫通して固定され、他端が手動牽引装置33のケーシング34に固定されている。インナーケーブル31は、支持突出部材8を貫通して、一端で環状部材22に連結され、他端が手動牽引装置33の変位部であるドラム35に連結されている。ドラム35は、ケーシング34に回転可能に支持され、かつ操作入力を行う手動レバー36に固定されており、レバー36を傾動させることによって、ドラム35が回転されてインナーケーブル31が巻き取られ、ステータ20が牽引される。インナーケーブル31及びアウターケース32は自動二輪車や自転車のブレーキ用ケーブルとして一般的に使用されているものであって良い。ケーブルの代替としてプッシュプル等を用いても良い。第1実施形態では、例示として手動牽引装置33を用いたが、ワイヤ式牽引装置30の軸方向力発生手段は、モータの回転によりドラム35を回転させる自動牽引装置であっても良く、インナーケーブル31及びアウターケース32の長さを短く設定して自動牽引装置をモータMと一体に設置しても良い。
【0019】
また、第1実施形態では、マグネット14は、軸線A方向でのステータ20のロータ10に対する没入規制位置におけるステータコア21よりもロータ10の底部側(図中の方向b側)に延出している。没入規制位置とは、ステータ20の軸線A方向での移動範囲において、ステータ20がロータ10の底部側(方向b)へと移動し得る限界の位置のことをいい、機械的或いは制御により任意の位置に設定される。そのため、マグネット14は、ステータ20の移動可能範囲内においてステータコア21が位置する全ての位置で、軸線A方向における方向b側に、常にステータコア21に対向しないマグネット14の部位を有するようになる。また、第1実施形態では、マグネット14及びステータコア21は、回転軸A方向でロータ10のロータ本体12が開放する側(図中の方向a側)に、常にマグネット14に対向しないステータコア21の部位を有するように配置されている。以上のようにして構成された可変界磁モータを図3、4、5に示す。
【0020】
<第1実施形態の作用効果>
以上のように第1実施形態を構成することで、ステータ20が軸線A方向に移動可能な可変界磁モータMを得ることができる。図6に示すように、ステータ20は軸線A方向に移動して、ステータ20及びロータ10の相対する面積を変化させる。また、ステータ20は、回転軸から所定の距離をおき、かつ回転軸を中心として均一に分散して配置された3本のガイドシャフト6によって支持されているため、反トルクに対して抗しつつ、軸線Aに対して安定して垂直に維持しつつ移動することができる。なぜなら、ガイドシャフトは3点で支持するため、ステータ20は空間内で位置が安定的に固定され、またガイドシャフト6は、回転軸から所定の距離をおいた位置に配置されているため支持点間の距離が広く、ステータ20がステータ移動手段によって軸線A方向に力を受ける場合にも、ステータ20に加わるモーメントは低減されるためである。また、ガイドシャフト6はその両端がステータベース2に固定された第1及び第2突出部材4,5に固定されているためステータ20から受ける負荷に対して十分な支持強度を有する。
【0021】
また、ステータベース2の構造は円筒形部材と、円筒形部材の外周から径方向へと突出した部材とからなる簡潔な構造であるため、モータMの構造が簡潔となる。また、駆動力発生機構をモータMから離間して設けることができるワイヤ式牽引装置30を使用することによって、モータMの構造を簡潔にすることができる。モータMの構造が簡潔となることで、防塵及び防水対策や、潤滑油の供給といったメンテナンスを施すことが容易となり、また製造行程においても加工及び組立てが容易となり製造コストの削減が可能となる。
【0022】
ステータ移動手段としてワイヤ式牽引装置30を用いた場合には、ワイヤ式牽引装置30の軸線方向の牽引力により、ステータ20は方向aに牽引されるが、ステータ20の方向bへの移動は、マグネット14とステータコア21との間に作用する磁力を駆動力として行われる。磁力による駆動力は、ステータ20とロータ10との相対位置が偏倚している場合に、ステータコア21とマグネット14との対向面積が大きくなる方向、つまり方向bにステータ20を移動させるように発生する。第1実施形態では、マグネット14及びステータコア21は、軸線A方向でロータ10の方向b側に、常にステータコア21に対向しないマグネット14の部位を有するように配置されているため、ステータ20は常に方向b側へと力を受けることになる。このため、ステータ20は、ワイヤ式牽引装置30による方向aへの牽引力と、ステータコア21及びマグネット14間に作用する方向bへの磁力とを受け、軸線A方向において両者の力が平衡となる位置に確実に位置するようになる。
【0023】
<第2実施形態の構成>
以下、本発明の第2実施形態を、図面を参照しながら説明する。図7に示すように、第2実施形態に係る可変界磁モータMは、アウターロータ型のモータであり、電気自動車のインホイールモータとして車体本体のナックル1に固定され電気自動車の車輪の一部を構成する。第2実施形態は、第1実施形態と大部分において同様であるが、回転軸としてのシャフト41、ステータベース52及びロータ60の構造において異なる。
【0024】
車体本体に設けられたナックル1に、モータ支持構造体としてのステータベース52が固定されている。ステータベース52は、モータMの回転軸の軸線Aと同軸に配置され、一端が固定シャフト41を固定支持するべく封止された封止端59を備え、他端が開放した円筒形状を有する円筒形部材53と、円筒形部材53の外周より円筒形部材53の半径方向外側に突出した少なくとも1以上の第1突出部材54と、軸線A方向において第1突出部材と所定の間隔をあけて、円筒形部材53の外周より円筒形部材53の半径方向外側に突出した少なくとも1以上の第2突出部材55とにより構成されている。第2実施形態における、第1突出部材54、第2突出部材55、ガイドシャフト56及び支持突出部材58の形状及び配置は、第1実施形態における対応する構成要素の形状及び配置と同様であるため説明は省略する。
【0025】
ステータベース2の封止端9には、回転軸としての固定シャフト41が固定されている。固定シャフト41には一対の軸受7c・7dを介してロータ60が固定シャフト41に対して回転自在に支持され、固定ナット42により軸線A方向に位置決めされている。ロータ60は、固定シャフト41と同軸に、ナックル1側(車体側)に向けて開放する有底円筒形状のロータ本体62からなり、ロータ本体62は、ロータ本体62の底部中央部よりナックル1側へと軸線Aと同軸の円筒形状をなして突出したボス部65を備え、ボス部65の内側に固定シャフト41を受容する孔66を備えている。ロータ60の外周部には、ホイールを介して電気自動車の駆動輪Wが取り付けられている。また、大径ボス部63の内周面には、周方向に沿ってN・S極を並べた複数のマグネット14が配設されている。
【0026】
また、ロータ60のマグネット14に相対するようにステータ20が、ステータベース52にガイドシャフト56を介して軸線A方向に摺動可能に支持されている。第2実施形態におけるステータ20の構成は、第1実施形態におけるステータ20の構成と同様であるため、第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。また、第2実施形態におけるステータ移動手段についても、第1実施形態のワイヤ式牽引装置30と同様であるため、説明は省略する。また、マグネット14とステータコア21の配置についても第1実施形態と同様である。
【0027】
<第2実施形態の作用効果>
以上のように構成することで、ステータ20が軸線A方向に移動可能な可変界磁モータMを得ることができる。第2実施形態は、第1実施形態と異なり回転軸としてのシャフト41が回転しない構成であるが、第1実施形態で得られる作用効果と同様の作用効果を有する。
【0028】
<第3実施形態の構成>
以下、本発明の第3実施形態を、図面を参照しながら説明する。図8に示すように、第3実施形態に係る可変界磁モータMは電気自動車のインホイールモータとして車体本体のナックル1に固定され電気自動車の車輪の一部を構成する。第3実施形態は、第1実施形態と大部分において同様であるが、ステータ移動手段においてのみ異なり、ワイヤ式牽引装置30の代わりに送りねじ73を使用したステータ移動装置70を有する。ステータ20及びロータ10の構成は第1実施形態と同様であるため、同一の構成要素については第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。ステータベース2についても大部分は第1実施形態に係るステータベース2と同様であるが、支持突出部材8と対応する第2支持突出部材9が、支持突出部材8から軸線A方向に、かつ第2突出部材5と同一周内に設けられている。
【0029】
ステータ移動装置70は、駆動源としてのアクチュエータ71と、アクチュエータ71の回転を減速する減速ギア72と、減速ギアからの回転を受けてステータを軸線A方向に移動させるべく回転する送りねじ73とによって構成されている。送りねじ73は、第1支持突出部材8及び第2支持突出部材9に回転可能に軸支されている。ステータ20の環状部材22には、送りねじ73の回転力を軸線A方向の力へと変換しステータ20を移動させるべく、送りねじ73のねじ部と螺合するナット部25が設けられている。アクチュエータ71は、駆動制御回路(図示しない)に接続されて駆動制御される。制御については、従来の方法であってよく、ここでは詳細な説明については省略する。
【0030】
第3実施形態では、第1及び第2実施形態においてのマグネット14とステータコア21との位置関係のように制限はないため、任意に設けて良く、ここでは例示として、ステータ20のロータ10に対する没入規制位置で、マグネット14とステータコア21が完全に相対するように配置している。
【0031】
<第3実施形態の作用効果>
以上のように第3実施形態を構成することで、ステータ20が軸線A方向に移動可能な可変界磁モータMを得ることができる。第3実施形態では、第1実施形態と同様にステータ20は、ステータベース2の3本のガイドシャフト6によって支持され、ステータ20は軸線Aに対して垂直に支持されている。ステータ20は、モータMの回転により反トルク受ける際にも、ガイドシャフト6によってステータ20は支持されているため、ステータ20から送りねじ73へと伝わる反トルクは低減され、ステータ20及び送りねじ73の間に作用する摩擦力は低減される。そのため、ステータ20を移動させるために必要な送りねじの回転力は低減され、アクチュエータを低出力なものへと小型化することができる。そのため、従来のアクチュエータ及び送りねじを使用するステータ移動手段を有するモータに比べ、モータの小型化及びエネルギ消費量の低減が図れる。
【0032】
<第4実施形態の構成>
以下、本発明の第4実施形態を、図面を参照しながら説明する。図9に示すように、本発明に係る可変界磁モータMは、洗濯機80のモータとして洗濯機本体81の底部に設けられたモータ台座82の上に固定されている。モータMは、第4実施形態で示したモータMと同様のモータであるためモータMの構成については説明を省略する。また、他の実施形態では、モータMは第1及び第2実施形態に係るモータMであっても良く、その場合には上述したように、ステータ移動手段として備えられえているワイヤ式牽引装置30の軸方向力発生手段にモータを用いた自動牽引装置を使用する。モータMのロータ10の外面には、モータMの回転軸と同軸に洗濯機80の攪拌軸83が固定されている。攪拌軸83は、水受け槽84の内側に設けられている洗濯槽85の内部へと延出し、端部に洗濯槽85内の水を攪拌する攪拌体86が設けられている。
【0033】
<第4実施形態の作用効果>
以上のように構成することで、本発明に係る可変界磁モータMを使用した洗濯機80を得ることができ、洗濯機80は、洗濯行程に応じてモータのトルク及び回転数特性を変化させることができる。本発明に係る可変界磁モータMは、ロータと、ステータと、ステータ移動手段とを一体に備えたモータユニットとして構成されているため、従来のモータが使用されていた部位に容易に代替して適用することができる(第1及び第2実施形態で示したワイヤ式牽引手段もインナーケーブル31及びアウターケース32の長さを調整することで軸方向力発生手段をステータベースと一体に設けることが可能である)。
【0034】
本発明を特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらの実施形態は例示であって本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、ステータにマグネットを備え、ロータに電機子コイルが巻回されたコアを有するように構成したモータにも本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る可変界磁モータは、モータの構造が簡潔であるため、大量生産される電気自動車や洗濯機への適用が可能であり、またステータ移動のためのエネルギ消費量を低く抑えられることから例えばソーラーカーの駆動モータといった省エネルギ駆動装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る可変界磁モータの断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る可変界磁モータに付随するワイヤ式牽引装置の断面図である。
【図3】図1の矢印III方向から見た平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る可変界磁モータの斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る可変界磁モータの分解斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る可変界磁モータのステータ移動後を示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る可変界磁モータの断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る可変界磁モータの断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る洗濯機を一部破断して示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ナックル
2・52 ステータベース
3・53 円筒形部材
4・54 第1突出部材
5・55 第2突出部材
6・56 ガイドシャフト
8・58 支持突出部材
9 第2支持突出部材
10・60 ロータ
11・41 シャフト
14 マグネット
20 ステータ
21 ステータコア
22 環状部材
30 ワイヤ式牽引装置
70 ステータ移動装置
80 洗濯機
A 回転軸の軸線
M 可変界磁モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータに対して同軸をなし、かつ前記ロータの回転軸の軸線方向に変位自在に設けられたステータと、
前記ステータを前記回転軸方向に変位させるステータ移動手段とを有する可変界磁モータであって、
前記ステータを支持するステータ支持構造体を更に有し、
前記モータ支持構造体は、
前記回転軸と同軸に設けられた円筒形部材と、
前記円筒形部材の外周面より前記回転軸の半径方向外側へと突出する少なくとも1以上の第1突出部材と、
前記第1突出部材に対して前記軸線方向に所定の距離をおいて、前記円筒形部材の外周面より前記回転軸の半径方向外側へと突出する少なくとも1以上の第2突出部材と、
前記第1突出部材及び前記第2突出部材の間を連結するように設けられた少なくとも1以上のガイドシャフトとを有し、
前記ステータは、前記ガイドシャフトによって摺動可能に支持されていることを特徴とする可変界磁モータ。
【請求項2】
前記ロータは、有底円筒形状に形成され、かつ底部の中心部に回転軸として固定されたシャフトとを有し、
前記ステータ支持構造体は、前記円筒形部材の内部に前記シャフトを回転可能に軸支することを特徴とする請求項1に記載の可変界磁モータ。
【請求項3】
前記ガイドシャフトは、3本であり、かつ前記回転軸と平行に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の可変界磁モータ。
【請求項4】
前記ステータ移動手段は、
前記ステータに一端で連結され、かつ軸線方向に力を伝達する軸方向力伝達部材と、
前記軸方向力伝達部材を介して前記ステータを前記回転軸方向に変位させるべく前記軸方向力伝達部材の他端を変位させる軸方向力発生手段とを有し、
前記軸方向力発生手段は、前記ステータ支持構造体の外部に設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の可変界磁モータ。
【請求項5】
前記ロータの内周面にマグネットが設けられ、
前記ステータに前記マグネットに相対するように設けられたステータコアを備え、
前記マグネットは、前記ステータの前記ロータ内への没入規制位置におけるステータコアよりも前記ロータの底部側に延出している部分を有することを特徴とする請求項4に記載の可変界磁モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−295272(P2008−295272A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140885(P2007−140885)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】