説明

可変界磁モータ

【課題】可変界磁モータの軽量化かつメンテナンスフリー化の向上を実現する。
【解決手段】ロータ軸4aの軸線回りに3つの回転部材7を配置し、各回転部材にスライド部材8を螺合し、各スライド部材にステータコア9aを一体的に固設し、各回転部材に固着した各ピニオンギア12とギア結合されるリングギア13を設け、リングギアをアクチュエータ15により駆動する。各回転部材により、ロータの回転トルクの反トルクを受けるステータを支持することができる。複数の回転部材を同期して回転させることにより、スライド部材を介してステータを変位させることができ、トルク受け機構とステータ変位機構とを別個に設けることなく、すなわち1つの機構によりトルク受けとステータ変位とを兼ねることができ、部品点数の増加が抑制されるため、可変界磁モータとしての軽量化が向上し、またメンテナンスが必要な箇所の減少によりメンテナンスフリー化が促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの軸線方向に変位自在に設けたステータを有する可変界磁モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの界磁を調整できるようにし、使用状況に応じた適切な回転数及びトルクが得られるようにした可変界磁モータがあり、例えば電気自動車に用いられている。そのような可変界磁モータにあって、ロータの軸線方向に変位可能にステータが設けられ、ステータのロータに対する相対位置を変化させることによって界磁を変化させるようにしたものが同一出願人により提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2006−335502
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
モータではロータの駆動トルクをステータで受けるため、上記構造の可変界磁モータにおけるステータにあっては、ステータに軸線方向に変位させることと回転方向のトルクを受けるという2つの機能をもたせる必要がある。上記特許文献1にあっては、ロータの回転軸を外囲する円筒状固定部材とステータとの両部材同士をスプライン結合し、ステータの軸線方向変位とトルク受けとを実現している。
【0004】
しかしながら、ステータを変位させるためのステータ移動手段にあっては、ベースに回転可能に軸支された雄ねじ部材と、雄ねじ部材に螺合する雌ねじを設けたスライド部材がステータに一体的に設けられた構造であり、上記スプライン構造と合わせて、構造が複雑化し、また部品点数の増大による重量増になって、軽量化が難しいという問題があった。
【0005】
また、構造の複雑化や部品点数の増大などによりメンテナンスが面倒であることから、できるだけメンテナンスフリー化することが望ましいという要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決して、軽量化かつメンテナンスフリー化の向上を実現するために本発明に於いては、ベースに回転自在に設けられたロータと、前記ロータに対して同軸かつ前記ロータの軸線方向に変位自在に設けられたステータと、前記ステータを前記軸線方向に変位させるステータ移動手段とを有する可変界磁モータであって、前記ステータ移動手段は、前記ロータの軸線回りに配置されかつ前記ベースに回転可能に軸支されると共に雄ねじおよび雌ねじの一方が設けられた複数の回転部材と、前記雄ねじおよび雌ねじの一方に螺合しかつ前記ステータに一体に設けられたスライド部材と、前記複数の回転部材を同期して回転させる回転駆動手段とを有するものとした。
【0007】
特に、前記回転駆動手段が、前記ロータに対して同軸に回転するように前記ベースに支持されたリングギアと、前記リングギアと噛み合うように前記回転部材に設けられたピニオンギアとを有すると良い。
【発明の効果】
【0008】
このように本発明によれば、ステータをロータの軸線方向に変位させるステータ移動手段として、ベースに軸支された回転部材と、ステータに一体に設けられたスライド部材とを設けると共に、両部材をねじ結合し、回転部材をロータの軸線回りに複数配置したことから、ロータの回転トルクの反トルクを受けるステータを複数の回転部材により容易に支持することができる。さらに、複数の回転部材を同期して回転させることにより、回転部材に螺合しているスライド部材を介してステータを変位させることができ、トルク受け機構とステータ変位機構とを別個に設けることなく、すなわち1つの機構によりトルク受けとステータ変位とを兼ねることができ、部品点数の増加が抑制されるため、可変界磁モータとしての軽量化が向上し、またメンテナンスが必要な箇所の減少によりメンテナンスフリー化が促進される。
【0009】
特に、ロータの軸線回りに配置された複数の回転部材を、ロータに同軸に設けられたリングギアにより同時に回転させることができ、複数の回転部材を同期させて回転させる機構を簡単な構造で実現し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された電気自動車の駆動輪を回転軸に直交する方向から見た要部模式的断面図である。なお、図1にあっては、回転軸に対して図において上下対称となるように破断したものではなく、上下の断面に主要部がそれぞれ示されるように破断したものである。また、図に示されるように本可変界磁モータは電気自動車のインホイールモータとして構成されて良い。
【0011】
図示されない車体本体側のナックルに、ベースとしての円板形状のモータ取付用ベース1が固設されている。モータ取付用ベース1には、車体側方に突出する円筒状の固定支持軸2が固設されており、その固定支持軸2の内周側に、一対の軸受3a・3bを介してロータ4のロータ軸4aが回転自在に支持されている。
【0012】
ロータ4は、ロータ軸4aの軸線方向端部にて外向フランジ状に形成された円板部4bと、円板部4bの外周部分にてロータ軸4aを同軸に外囲するように形成された周壁部4cとを有する。円板部4bにはホイールを介して駆動輪Wが取り付けられ、周壁部4cにはブレーキディスク5が固設されている。
【0013】
固定支持軸2の外周部分には、ロータ軸4aの軸線方向に所定の距離をおいて対峙する一対の外向フランジ6a・6bが形成されており、一対の外向フランジ6a・6bには、両端部分が軸受を介して支持された複数の回転部材7が回転自在に設けられている。なお、図示例では図2に併せて示されるように、回転部材7はロータ軸4aの軸線回りに120度の等間隔で3箇所に配置されている。回転部材7には台形ねじからなる雄ねじ部7aが形成されている。
【0014】
回転部材7には雄ねじ部7aに螺合する雌ねじ部8aが形成されたスライド部材8が組み付けられている。スライド部材8は回転部材7と同数設けられており、各スライド部材8にはリング状のステータ9が一体的に固設されている。これにより、回転部材7が回転するとスライド部材8が回転部材7の軸線方向に往復動し、ステータ9が一体的に往復動し得る。
【0015】
ステータ9は、各スライド部材8に固設された円環状のステータコア9aと、ステータコア9から半径方向外向きに突設されたティースに巻回された所定数のコイル9bとを有する。ロータ4の周壁部4cの内周面には所定数のマグネット11が周方向にN・S極を交互にして配設されている。なお、図示例では32極36スロットモータが示されているが、これに限られるものではない。
【0016】
各回転部材7の車体本体側の軸線方向端部にはそれぞれピニオンギア12が固着されており、各ピニオンギア12にはロータ軸4aと同軸に設けられたリングギア13がギア結合されている。なお、固定支持軸2の軸線方向端面と、その軸線方向端面に貼り合わせるように固着されたモータ取付用ベース1と固定支持軸2とにより半径方向外向きに開放された外周溝14が形成されており、そのように形成された外周溝14によりリングギア13が摺動可能に支持されている。
【0017】
また、モータ取付用ベース1にはブラケットを介してモータ駆動式のアクチュエータ15が取り付けられており、アクチュエータ15の出力段として設けられた大径ギア15aが1つのピニオンギア12とギア結合されている。
【0018】
これにより、アクチュエータ15を駆動することにより、大径ギア15aの回転力が1つのピニオンギア12を介してリングギア14に伝達され、リングギア14が回転することにより他の2つのピニオンギア12も回転するため、各ピニオンギア12は同期して回転する。したがって、各回転部材7も互いに同期して回転し、雄ねじ部7aと雌ねじ部8aとが螺合していることから、回転部材7の回転によりスライド部材8が回転部材7の軸線方向すなわちロータ軸4aの軸線方向である図1の矢印Aの方向に変位する。
【0019】
このようにして、アクチュエータ15への駆動制御信号に応じてスライド部材8を任意の位置まで変位させることができる。また、雄ねじ部7aと雌ねじ部8aとのリード角や他のギア伝達部の摩擦抵抗などにより、スライド部材8にスライド方向に変位させる外力が作用しても、アクチュエータ15で駆動して停止した位置にスライド部材8を停止状態に保持することができる。
【0020】
図1の実線は、マグネット11の磁極面と、ステータコア9aの磁極面に対峙する対峙面との相対する面積が最大となる位置を示している。その位置からロータ軸4aの軸線方向で車体本体側へステータ9を変位させることにより、マグネット11とステータコア9aとの上記相対する面積が減少する。また、マグネット11の磁極面とステータコア9aの対峙面の相対する面積が減少した位置から、ステータ9を車体本体の外方側へ移動することができる。
【0021】
上記ステータ9の変位量は、マグネット11の磁極面に対して、図1に示されるようにステータコア9aの対峙面がロータ軸4aの軸線方向について完全に重なる位置と、図1の二点差線で示される位置との2位置間であって良い。図示例では、完全に重なる位置からの変位量にあっては、完全に外れた位置までの変位量を100%とした場合に約50%としているが、0%までの任意の位置であって良い。なお、50%の位置の場合にはマグネット11の磁極面とステータコア9aの対峙面とのロータ軸4aの線方向についての重なり量は半分となる。
【0022】
一方、モータ駆動時にあってはロータ4の回転トルクに対する反トルクをステータ9が受ける。上述した構造によれば、ロータ軸4aの軸線回りに所定角度で配置された図示例では3つの回転部材7によりステータコア9aが支持されていることから、ステータ9に作用する上記反トルクを3本の回転部材7により受け止めることができる。
【0023】
したがって、従来のようにセレーションやスプラインより反トルクを受ける構造とする必要が無く、可変界磁モータにおいて必要なステータ9の変位機構を用いて反トルクを受けることができ、部品点数の増加を抑制しかつ軽量化を促進し得るため、コストも削減し得る。また、余計な部品がないため、メンテナンスフリー化の実現を促進し得ると共に、モータを薄型化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明にかかる可変界磁モータは、部品点数の増加の抑制および軽量化が促進されるため、電気自動車、特にソーラーカー等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用された電気自動車の駆動輪を回転軸に直交する方向から見た要部模式的断面図である。
【図2】図1の矢印II線から見た要部端面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 モータ取付用ベース
2 固定支持軸
4 ロータ、4a ロータ軸
6a・6b 外向フランジ
7 回転部材、7a 雄ねじ部
8 スライド部材、8a 雌ねじ部
9 ステータ、9a ステータコア、9b コイル
11 マグネット
12 ピニオンギア
13 リングギア
15 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに回転自在に設けられたロータと、前記ロータに対して同軸かつ前記ロータの軸線方向に変位自在に設けられたステータと、前記ステータを前記軸線方向に変位させるステータ移動手段とを有する可変界磁モータであって、
前記ステータ移動手段は、
前記ロータの軸線回りに配置されかつ前記ベースに回転可能に軸支されると共に雄ねじおよび雌ねじの一方が設けられた複数の回転部材と、
前記雄ねじおよび雌ねじの一方に螺合しかつ前記ステータに一体に設けられたスライド部材と、
前記複数の回転部材を同期して回転させる回転駆動手段とを有することを特徴とする可変界磁モータ。
【請求項2】
前記回転駆動手段が、
前記ロータに対して同軸に回転するように前記ベースに支持されたリングギアと、
前記リングギアと噛み合うように前記回転部材に設けられたピニオンギアとを有することを特徴とする請求項1に記載の可変界磁モータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−213317(P2009−213317A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55754(P2008−55754)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】