説明

可溶性エポキシド加水分解酵素阻害剤として有益なN−置換ピリジノン又はピリミジノン化合物

可溶性エポキシド加水分解酵素(sEH)に対して活性を有する化合物、その組成、使用法及び製造方法について開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(背景技術)
1.技術分野
本発明は抗-sEH活性を有する化合物及び可溶性エポキシド加水分解酵素(sEH)阻害剤の循環器系疾患に関する疾患への使用に関する。
2.発明の背景
エポキシド加水分解酵素は、植物から哺乳類にわたる種に認められる、自然界に広範囲に分布する酵素群である。これらの酵素はすべてエポキシドへの水の付加を触媒し、その結果ジオールを得るという点において機能的に関連する。エポキシド加水分解酵素は、生物(living system)において重要な代謝酵素であり、及びそのジオール生成物は異物代謝の経路における中間生成物としてよく見られる。エポキシド加水分解酵素は従ってエポキシドをその対応する非反応性のジオールに変換することにより解毒するために重要な酵素である。
【0002】
哺乳類において、数種類のエポキシド加水分解酵素が特徴付けられていおり、それには可溶性エポキシド加水分解酵素(sEH)が含まれ、サイトゾルエポキシド加水分解酵素、コレステロールエポキシド加水分解酵素、LTA4加水分解酵素、ヘポキシリン加水分解酵素、およびミクロソームエポキシド加水分解酵素とも呼ばれている(Fretland and Omiecinski, Chemico-Biological Interactions, 129: 41-59 (2000)). エポキシド加水分解酵素は心臓、腎臓及び肝臓を含む、脊椎動物において検討したすべての組織に認められた(Vogel, et al., Eur J. Biochemistry, 126: 425-431 (1982); Schladt et al., Biochem. Pharmacol., 35: 3309-3316 (1986))。エポキシド加水分解酵素はリンパ球(例えばT-リンパ球)、単核球、赤血球、血小板及び血漿を含む人の血液成分にも検出されている。血中において、検出されたsEHの大部分はリンパ球に存在する(Seidegard et al., Cancer Research, 44: 3654-3660 (1984))。
【0003】
エポキシド加水分解酵素類はそのエポキシド基質に対する特異性が異なる。例えば、sEHはエポキシド脂肪酸のような脂肪族エポキシド選択的で、ミクロソームエポキシド加水分解酵素(mEH)は環状及び芳香族エポキシドに対してより選択的である。sEHの最も知られた生理的基質は、エポキシエイコサトリエン酸又はEET類としても知られるアラキドン酸の4種の位置異性シスエポキシド類5,6-、8,9-、11,12-、及び14,15-エポキシエイコサトリエン酸である。ロイコトキシン又はイソロイコトキシンとして知られるリノール酸のエポキシドもまたsEHの基質として知られる。EET類及びロイコトキシンは共にチトクロームP450モノオキシゲナーゼファミリーの一員によって産生される(Capdevila, et al., J. Lipid Res., 41: 163-181 (2000))。
【0004】
EET類は心血管系及び腎臓系におけるの化学オートクライン及びパラクラインメディエーターとして機能する(Spector, et al, Progress in Lipid Research, 43: 55-90 (2004); Newman, et al., Progress in Lipid Research 44: 1-51 (2005))。EET類は、その血管平滑筋細胞の膜電位の過分極を引き起こし、その結果血管拡張を起こす能力によりさまざまな血管床において内皮由来過分極因子(EDHF)として機能できるようである(Weintraub, et al., Circ. Res., 81: 258-267 (1997))。EDHFはアラキドン酸から血管平滑筋の近くの内皮細胞中に存在する多様なチトクロームP450により合成される (Quilley, et al., Brit. Pharm., 54: 1059 (1997); Quilley and McGiff, TIPS, 21: 121-124 (2000)); Fleming and Busse, Nephrol. Dial. Transplant, 13: 2721-2723 (1998))。血管平滑筋細胞内において、EETsはBKCa2+チャネル(ビッグCa2+活性化カリウムチャネル)の活性化及びL型Ca2+チャネルの阻害を引き起こし、最終的に膜電位の過分極、Ca2+の流入阻害及び弛緩を引き起こす結果となるシグナル経路を誘発する (Li et al., Circ. Res., 85: 349-356 (1999))。内皮依存性血管拡張は人の高血圧症と同様、さまざまな形態の実験的高血圧症において障害を受けることが示されてきた(Lind, et al., Blood Pressure, 9: 4-15 (2000))。障害を受けた内皮依存性血管拡張は血管内皮機能障害として知られる症候群に独特な特徴である(Goligorsky, et. al., Hypertension, 37[part 2]:744-748 (2001))。血管内皮機能障害はI型、II型糖尿病、インスリン抵抗性症候群、高血圧、アテローム性動脈硬化、冠状動脈疾患、狭心症、虚血、虚血発作、レイノー病及び腎疾患を含む多くの病態において重要な役割を果たす。従って、血管内皮機能障害が原因となる患者において、EET類濃度の増進がおそらく有益な治療効果を有するだろう。高血圧症に影響を及ぼすEET類の他の効果には腎機能への効果が含まれる。多様なEET類及びその加水分解生成物であるDHET類の濃度は共に自然発症性高血圧ラット(SHR)の腎臓において(Yu, et al., Circ. Res. 87: 992-998 (2000))及び妊娠高血圧症候群に罹患している女性の腎臓において(Catella, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 87: 5893-5897 (1990))有意に増加する。アンジオテンシンII処置ラットにおいて、選択的sEH阻害剤による治療は腎臓における輸入再動脈の径を減少させ、及び易感染性の腎機能マーカーである尿中へのアルブミン分泌を下げ、EET類濃度の増加による抗高血圧症及び腎血管保護作用が示唆された(Zhao, et al, 15: 1244-1253 (2004))。自然発症性高血圧ラットモデルにおいて、チトクロームP450及びsEHの活性が増加していることが見出された(Yu et al., Molecular Pharmacology, 57: 1011-1020 (2000))。既知のsEH阻害剤の投与により血圧が正常値まで減少することが示された。さらに、選択的sEH阻害剤をアンジオテンシンII処置ラットに投与することにより、収縮期圧が低下することが示された(Imig, et al, Hypertension, 39: 690-694 (2002))。最後に、雄性可溶性エポキシド加水分解酵素欠損マウスはその対応する野生型マウスと比較して低い血圧を特徴とする表現型を発現した(Sinal, et al., J. Biol. Chem., 275: 40504-40510 (2000))。
【0005】
EET類、特に11,12-EETもまた、抗炎症作用を有することが示されてきた (Node, et al., Science, 285: 1276-1279 (1999); Campbell, TIPS, 21: 125-127 (2000); Zeldin and Liao, TIPS, 21: 127-128 (2000))。Nodeらは11,12-EETがサイトカイン誘導性内皮細胞接着分子、とりわけVCAM-1の発現を減少させることを示した。彼らはさらにEET類が白血球の血管壁への接着を阻害し、及びその機構にNF-κB及びIκBキナーゼが関与していることを示した。血管の炎症は血管内皮機能障害において役割を果たしている(Kessler, et al., Circulation, 99: 1878-1884 (1999))。従って、EET類がNF-κB経路を阻害する能力はこの症状を寛解する。さらに、EETの投与及び/又は選択的sEH阻害剤の投与は、気管支肺胞洗浄による総細胞数及び同時に起こる好中球、肺胞マクロファージ及びリンパ球の減少によって評価されるように、タバコ煙誘導性炎症を減弱させることが証明された(Smith, et al, 102: 2186-2191 (2005))。
【0006】
sEHの数種の基質(上記EET類)の生理学的効果に加えて、sEHにより生産される数種のジオールすなわちDHET類も強力な生物学的効果を有するだろう。例えば、sEHのリノール酸から生成したエポキシド(ロイコトキシン及びイソロイコトキシン)の代謝によりロイコトキシン及びイソロイコトキシンジオールが生成する(Greene, et al., Arch. Biochem. Biophys. 376(2): 420-432 (2000))。これらのジオールは培養ラット肺胞上皮細胞に対し毒性を有し、細胞内カルシウム濃度を上昇させ、細胞間接合部の透過性を上昇させ上皮の完全性の減少を促進する(Moghaddam et al., Nature Medicine, 3: 562-566 (1997))。従ってこれらのジオールは、肺のロイコトキシン濃度が上昇していることが示されている成人の呼吸困難症候群のような疾患の原因に寄与しうる(Ishizaki, et al., Pulm. Pharm.& Therap., 12: 145-155 (1999))。
Hammockらは炎症性疾患、特に成人の呼吸困難症候群及び脂質代謝に仲介される他の急性炎症性症状の、エポキシド加水分解酵素の阻害剤を投与することによる治療法を開示した(WO 98/06261; U.S. Patent No. 5,955,496)。
【0007】
多くの種類のsEH阻害剤が同定されてきた。これらの中にはカルコンオキシド誘導体(Miyamoto, et al. Arch. Biochem. Biophys., 254: 203-213 (1987))及び多様なトランス-3-フェニルグリシドール類 (Dietze, et al., Biochem. Pharm. 42: 1163-1175 (1991); Dietze, et al., Comp.Biochem. Physiol. B, 104: 309-314 (1993))がある。
【0008】
より最近には、Hammockらが炎症性疾患の治療の為の、エポキシド加水分解酵素のアフィニティ分離(affinity separation)に使用する及び農学分野に適用する生物学的に安定な特定のsEH阻害剤を開示した(U.S. Patent No. 6,150,415)。Hammockの415特許はまた、開示したファルマコフォア(pharmacophores)が例えばアルキル化剤又はミカエル受容体のような反応性の官能基を触媒部位に運ぶことができ、及びこれらの反応性置換基は酵素の検出のために蛍光または親和性ラベルを酵素の活性部位に運ぶことができると一般的に記載している(col.4、66行からcol.5、5行)。sEHの特定の尿素及びカルバメート阻害剤が文献に記載されている(Morisseau et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 96: 8849-8854 (1999); Argiriadi et al., J. Biol. Chem., 275 (20): 15265-15270 (2000); Nakagawa et al. Bioorg. Med. Chem., 8: 2663-2673 (2000); US 2005/0026844 and Kim, et al., J. Med. Chem. 47(8): 2110-2122 (2004) いずれも阻害剤と付加的にテザードオキソファルマコフォアについて記載している。)。
【0009】
WO00/23060はsEH阻害剤を投与することによる、Tリンパ球を介した免疫疾患の治療方法について開示している。数種の1-(4-アミノフェニル)ピラゾール類がsEH阻害剤の例として示されている。
【0010】
Hammockの米国特許第6,150,415 は以下の構造を有する化合物を用いたエポキシド加水分解酵素の阻害方法を目的としている。

式中X及びYはそれぞれ独立して窒素、酸素又は硫黄であり、及びXはさらに炭素で有り得、少なくともR1−R4のうち一つが水素であり、R2はXが窒素の場合水素であるが、Xが硫黄又は酸素の場合は存在せず、R4はYが窒素の場合水素であるが、Yが硫黄又は酸素の場合存在せず、R1及びR3はそれぞれ独立してH、C1-20置換又は非置換のアルキル、シクロアルキル、アリール、アシル又はヘテロ環である。Hammock特許に関連するのはエポキシド加水分解酵素阻害剤の高血圧症を治療する方法を請求するKroetzらの米国特許6,531,506であり、また、Hammock特許に記載されたものと同様の化合物を用いて高血圧症を治療する方法についても請求されている。これらの特許はいずれも明細書に記載した特定のsRH阻害剤を使用した循環器系疾患の治療方法を教示又は示唆もしていない。
【0011】
上記の考察で概説されるように、sEH阻害剤はそれ故に、有益な効果を有するsEH基質の変性を防ぐことによって、又は有害作用を有する代謝物質の生成を防ぐことによって血管内皮機能障害などの心血管疾患の治療において有益である。
【0012】
上記およびこの出願全体で引用される参考文献は全体として本明細書に組み込まれるものとする。
【0013】
(発明の簡単な概要)
本発明は以下に記載するように、sEHの阻害剤として活性を有する式Iの化合物を提供することを目的とする。
本発明はさらに、以下に記載するように、式Iの化合物を患者に投与することにより高血圧の治療方法を提供することを目的とする。
以下に記載する化合物の製造方法を提供することがさらなる目的である。
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明の一般的一態様において、式(I)の化合物又はその薬剤的に許容される塩が提供される。:

【0015】
各Aは独立して窒素又はC-Hであり、したがってAを有する環はピリジニル又はフェニルであり、前記ピリジニル又はフェニルは任意にY又はZで置換される。
【0016】
Y及びZは各環上でメタ又はパラ位であり、及び独立してF、Cl、Br、CN、OR、R、-S(O)2R、-C(O)NRR又は-S(O)2NRRであり、前記Rは独立して水素又はヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルオキシ、C1-4アルキルアミノ、C1-4アルキルチオ又は1−3個のフッ素原子で置換されているか又は置換されていないC1-5アルキルであり、
Lはエチレンリンカーであり、任意でヒドロキシ、アミノ、C1-4アルキルオキシ、C1-4アルキルアミノ、C1-4アルキルチオ又は1−3個のフッ素原子で置換される。
XはO又はSであり、
QはN又はCHであり、
Dは結合又はメチレン若しくはエチレンリンカーであり、式中、前記リンカーのCH2-基は-C(O)-で置き換えられても良く、
Wは水素、C1-5アルキル、シアノ、炭素環、ヘテロ環、アリールオキシ、C1-4アルキルオキシ、OH又はヘテロアリールであり、それぞれ置換されず又はヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、カルボキシアミド、C1-4アルキル、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルオキシ、C1-4アルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、C3-6シクロアルキルアミノ、ジ(C3-6シクロアルキル)アミノ、C1-4アルキルスルホニル、C1-4アルキルオキシカルボニル又はC1-4アルキルアミドカルボニルで置換され、
式中、Dが結合であればWはシアノである。
【0017】
他の実施態様では、直前の実施態様に従って化合物が提供され、式中、
QはCHであり、
XはOであり、
各環上のY及びZ(存在する場合)が、メタ又はパラ位に存在し、及び独立してF、Cl、-S(O)2R又は-C(O)NRRであり、前記Rは独立して水素又はC1-5アルキルであり、
Wは水素、シアノ、C3-6シクロアルキル、アリール、フェノキシ、C1-4アルキルオキシ、OH、C1-5アルキル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル及びジオキソラニルから選択されるヘテロ環又はピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、フラニル、ピラニル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル及び

から選択されるヘテロアリールであり、
それぞれ置換されない又はヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、カルボキシアミド、C1-4アルキル、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルオキシ、C1-4アルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、C3-6シクロアルキルアミノ、ジ(C3-6シクロアルキル)アミノ、C1-4アルキルスルホニル、C1-4アルキルオキシカルボニル又はC1-4アルキルアミドカルボニルで置換される。
【0018】
他の実施態様において、直前に記載された実施態様に従った化合物が提供され、
式中、
Lはエチレンリンカーであり
Wは水素、シアノ、ピペリジニル、モルホリニル、フェニル、フェノキシ、C1-4 アルキルオキシ、OH、C1-5アルキル、ピリジニル又は

であり、それぞれ置換されていなくても、ヒドロキシ又はC1-4アルキルオキシで置換されていても良い。
【0019】
発明の他の一般的な態様において、公式(II)の化合物又はその薬剤的に許容可能なその塩を提供し、式(II)中、

構成

は下記表I中のA1−A14から選択され、
下記表I中のB1−B11から選択された任意の構成

と組み合わされる。































【0020】
本発明の他の実施態様において、一般的な合成方法及び後述の実施例にしたがって製造された以下の化合物又は薬剤的に許容可能なその塩が提供される。



















表II












【0021】
本出願において、上記で開示されたすべての化合物において、命名法が構造と矛盾する場合は、化合物は構造により定義されると理解するものとする。
【0022】
1つ又は複数の不斉炭素原子を含む上記の任意の化合物は、ラセミ化合物及びラセミ混合物、単一の鏡像異性体、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして生じる場合があり、当該化合物の使用は本発明に含まれる。すべてのそのような異性体の形式の前記化合物は、明らかに本発明に含まれる。各不斉炭素は、R又はS配置又は配置の組み合わせであってもよい。
【0023】
本発明のいくつかの化合物は1以上の互換異性体の形で存在することができる。本発明はそのようなすべての互換異性体の使用方法も含みうる。
【0024】
本明細書で使用されるように、別に述べない限り、すべての用語は当該技術分野で知られるその通常の意味で理解されるだろう。例えば、C1-4アルコキシはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシのような有機基である末端に酸素を有する有機C1-4アルキル基を含む。
【0025】
すべての有機基:アルキル、アルケニル及びアルキニル基又はアシル及びアルコキシのような他の基に組み込まれている基は、構造的に可能であり及び別に特定しない限り、分岐又は直鎖であると理解され及び部分的に又は全体的にハロゲン化されていても良い。
【0026】
前記及び下記において言及する「低級」という用語は、有機基又は化合物とそれぞれ結合する分岐又は直鎖の7以下の、好ましくは4以下の及びより好ましくは1又は2個の炭素原子を意味する。
【0027】
環状基は炭素環、ヘテロ環又はヘテロアリールを意味すると理解され、それぞれ部分的に又は全体的にハロゲン化されていても良い。
【0028】
アシル基は-C(O)-Rと定義される基であり、前記Rは有機基又は環式基である。アシルは例えば、炭素環状又はヘテロ環状アロイル、シクロアルキルカルボニル、(オキサ又はチア)-シクロアルキルカルボニル、低級アルカノイル、(低級アルコキシ、ヒドロキシ又はアシルオキシ)-低級アルカノイル、(モノ-又はジ-炭素環状又はヘテロ環状)-(低級アルカノイル又は低級アルコキシ-、ヒドロキシ-又はアシルオキシ-置換低級アルカノイル)又はバイアロイル(biaroyl)である。
【0029】
炭素環類は3−14個の炭素原子を有する炭化水素環を含む。これらの炭素環類は芳香族環、非芳香族環構造のどちらでも良い。非芳香族環構造はモノ-又はポリ不飽和の、単環式、二環式又は三環式でも良く、及び架橋でも良い。好ましい炭素環類はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプタニル、シクロヘプテニル、フェニル、ベンジル、インダニル、インデニル、ベンゾシクロブタニル、ジヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、ナフチル、デカヒドロナフチル、ベンゾシクロヘプタニル、アダマンチル、ノルボルニル、フルオレン及びベンゾシクロヘプテニルを含むがこれに限定されない。シクロブタニル及びシクロブチルのようなシクロアルキルを表す用語は互換的に使用されるものとする。
【0030】
「ヘテロ環」と言う用語は安定な、非芳香族の4-8員(しかし好ましくは、5又は6員)の単環系又は8-11員の二環系ヘテロ環基(飽和でも不飽和でも良い)を意味する。各ヘテロ環は炭素原子と1以上の、好ましくは1−4個の窒素、酸素及び硫黄から選択されるヘテロ原子を含む。ヘテロ環は、環の任意の原子で結合していてもよく、結果として安定な構造を創造する。特に述べない限り、ヘテロ環類は例えばピロリジニル、ピロリニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニル スルフォキシド、チオモルホリニルスルホン、ジオキサラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、1,3-ジオキソラノン、1,3-ジオキサノン、1,4-ジオキサニル、ピペリジノニル、テトラヒドロピリミドニル、ペンタメチレンスルフィド、ペンタメチレンスルフォキシド、ペンタメチレンスルホン、テトラメチレンスルフィド、テトラメチレンスルフォキシド及びテトラメチレンスルホンを含むがこれらに限定されない。
【0031】
「ヘテロアリール」という用語は、5-8員芳香族単環式又は炭素原子及び窒素、酸素及び硫黄から選択される1−4個のヘテロ原子から構成される8-11員二環式ヘテロ環を意味する。特に述べない限り、そのようなヘテロアリール類はアジリジニル、チエニル、フラニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピラニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、インダゾリル、トリアゾリル、ピラゾロ[3,4-b]ピリミジニル、プリニル、ピロロ [2,3-b]ピリジニル、ピラゾロ[3,4-b]ピリジニル、ツベルシジニル(tubercidinyl)、オキサゾ[4,5-b]ピリジニル、イミダゾ[4,5-b]ピリジニル及び

を含む。
本明細書における「ヘテロ原子」の用語は酸素、窒素、硫黄及びリンのような炭素以外の原子を意味するものと理解される。
【0032】
本明細書における「窒素」及び「硫黄」は窒素及び硫黄の任意の酸化型及び任意の塩基性窒素の第4級化型を含む。非環式鎖又は環式基におけるすべてのヘテロ原子はすべての酸化型を含む。
【0033】
すべてのアルキル基又は炭素鎖において一以上の炭素がヘテロ原子(O、S又はN)によって任意に置き換えられていても良く、もしNが置換されていなければNHであると理解され、ヘテロ原子は分岐又は直鎖炭素鎖中の末端炭素原子又は内部炭素原子で置き換えられると理解される。そのような基はオキソのような上記明細書に記載された基で置換することができ、その結果、アルコキシカルボニル、アシル、アミド及びチオキソと定義されるがこれらに限定されるものではない。
【0034】
本明細書における「アリール」という用語は芳香族炭素環式又は本明細書で定義されるヘテロアリールを意味すると理解される。各アリール又はヘテロアリールは他に特に指定しない限り、その部分的又は完全に水素化された誘導体及び/又は部分的又は完全にハロゲン化されたものを含む。例えば、キノリニルはデカヒドロキノリニル及びテトラヒドロキノリニルを含んでも良く、ナフチルはテトラヒドロナフチルのようなその水素化した誘導体を含んでも良い。本明細書に記載されたアリール及びヘテロアリール化合物の他の部分的又は完全に水素化された誘導体は当業者にとって明らかである。
【0035】
本明細書で使用される用語「ハロゲン」は、臭素、塩素、フッ素又はヨウ素を意味すると理解されるべきであり、好ましくはフッ素である。「部分的に又は完全にハロゲン化された」;部分的に又は完全にフッ素化された;「1以上のハロゲン原子で置換された」という定義は例えば、1以上の炭素原子のモノ、ジ、トリハロ誘導体を含む。アルキルの場合、非限定的な例は-CH2CHF2、-CF3等である。
【0036】
本発明の化合物は「化学的に安定」であると予測されると技術分野の当業者に認められるもののみである。例えば、「ダングリング原子価」、又は「カルボアニオン」を有する化合物は、本明細書で開示された本発明の方法で使用されると予測される化合物でない。
【0037】
本発明は本発明の化合物の薬剤的に許容可能な誘導体を含む。「薬剤的に許容される誘導体」は、本発明の化合物の任意の薬剤的に許容される塩又はエステル、又は患者に投与することによって、本発明に有益な化合物、薬理学的に活性を有する代謝産物又は薬理学的に活性を有するその残分を(直接又は間接的に)提供できる任意のその他の化合物を意味する。薬理学的に活性を有する代謝産物は酵素的に又は化学的に代謝される可能性がある発明の任意の化合物を意味すると理解される。例えば、水酸化又は酸化された本発明の誘導体化合物を含む。
【0038】
薬剤的に許容可能な塩には薬剤的に許容可能な無機及び有機酸及び塩基から誘導されたものを含む。適切な酸の例には塩酸、臭化水素、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-硫酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、蟻酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-硫酸及びベンゼンスルホン酸を含む。シュウ酸のような他の酸は自身は薬剤的に許容されないが、化合物及びそれらの薬剤的に許容可能な酸付加塩を得るための中間生成物として有益な塩の調製に使用されても良い。適切な塩基から誘導された塩にはアルカリ金属(例えば、ナトリウム)、アルカリ土類金属(例えばマグネシウム)、アンモニウム及びN-(C1-C4アルキル)4+塩が含まれる。
【0039】
さらに、本発明の範囲内には本発明の化合物のプロドラッグの使用も含まれる。プロドラックは簡単な化学的変換により、本発明の化合物を生成するように修飾された化合物を含む。簡単な化学的変換には加水分解、酸化、及び還元が含まれる。特に、プロドラッグを患者に投与した場合、プロドラッグは上記開示した化合物に変換され、その結果所望する薬学的効果を示す。
【0040】
本明細書に記載した化合物は市販により入手可能か、技術分野において周知の方法及び必要な中間体により合成することができる。
【0041】
本発明をより完全に理解するために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は本発明の好ましい実施態様を例証するものであり、何らかの方法で本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【0042】
以下の実施例は実例であり、当業者に認識されるように、特定の試薬及び条件は、過度の実験なしに個々の化合物について必要な変更がなされる。下記のスキームで使用する出発物質は市販により入手可能か又は市販により入手可能な原料から当業者によって容易に調製することができる。
【0043】
(一般的合成方法)
本発明はまた式(I)及び(II)の化合物の製造方法を提供する。すべてのスキームにおいて、他に指定しない限り、以下の式中のA、D、L、Q、W、Y及びZは上記明細書に記載した本発明の式(I)及び(II)中のA、D、L、Q、W、Y及びZを意味するものとする。
【0044】
最適な反応条件及び反応時間は使用する特定の反応体により異なっても良い。他に指定しない限り、溶媒、温度、圧力及びその他の反応条件は当業者によって容易に選択されてよい。特定の方法を合成例の項で提供する。典型的には反応の進行は薄層クロマトグラフィー(TLC)で監視し、所望であれば、中間生成物及び生成物シリカゲルクロマトグラフィーで及び/又は再結晶で精製してもよい。本発明の化合物の調製に使用される適切に置換された出発物質及び中間生成物はいずれも市販により入手可能か又は当該技術分野における文献により知ることができる方法で容易に調製することができ、以下の合成例に例証されている。この点に関しては米国仮出願番号第60/678,828及び60/678,871を参考とすることができ、本明細書に参考文献として組み込む。
【0045】
式(I)及び(II)の化合物はスキーム1に図示された方法により合成しても良い。

【0046】
カルボン酸と所望のアミン(III)のアミドカップリングにより、式(IV)の化合物が得られる。当該分野で既知の標準的なペプチドカップリング反応(例えばBodanszky, 1984, The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag参照)をこれらの合成に利用しても良い。適切なカップリング条件の例はDMFのような適切な溶媒中でカルボン酸溶液をEDC、HOBT及びジイソプロピルエチルアミンのような塩基、続いて所望のアミンで処理することである。
代わりの方法として、カルボン酸と塩化オキサリルのような試薬を反応させることにより対応する酸の塩化物を得る。適切な溶媒中で酸塩化物と所望のアミン(III)を反応させることにより式(IV)の化合物を得る。適切な溶媒中でW-D-Hal(式中HalはCl、Br又はI及び任意にヨウ化カリウムである)のような適切なアルキル化剤を用いて式(IV)の化合物をN-アルキル化することにより式(I)又は(II)の所望の生成物を得る。当該技術分野で既知の方法及び以下の実施例に例証した方法を用いて式(I)又は(II)の出発物質をさらに修飾し、本発明の付加的な化合物を調製しても良い。
【0047】
式(I)及び(II)の化合物はスキーム2に例証される方法により合成しても良い。

【0048】
出発物質のヒドロキシルピリジンエステルを、適切な溶媒中適切な塩基の存在下でW-D-Hal(式中 HalはCl、Br又はI及び任意でヨウ化カリウムである)のような適切なアルキル化剤でN-アルキル化し、式(V)の化合物を得る。式(V)のエステルを水酸化リチウムのような適切な塩基を用いた適切な溶媒中での加水分解により式(VI)のN-アルキル化ニコチン酸を得る。カルボン酸と所望のアミンのアミドカップリングにより、スキーム1に示すように式(I)又は(II)の化合物を得る。代わりに、カルボン酸を塩化オキサリルのような試薬と反応させることにより対応する酸塩化物を得る。酸塩化物を所望のアミンと適切な溶媒中で反応させることにより式(I)又は(II)の化合物を得る。
【0049】
式(III)の中間体のアミンはスキーム3に概説する方法により調製しても良い。

適切に置換された3-クロロアクリロニトリルと適切に置換したアリール/ヘテロアリールボロン酸を適切なカップリング触媒存在下、適切な溶媒中で反応させ、カップリング生成物(VII)を得る。適切な還元剤によるカップリング生成物の還元により、所望のアミン(III)を得る。
【0050】
本発明の化合物の調製に使用される適切に置換された出発物質及び中間生成物はいずれも市販により入手可能か又は当該技術分野における文献により知ることができる方法で容易に調製することができ、以下の合成例に例証されている。
【0051】
実施例1

1-シアノメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
【0052】
工程A:N-(3,3-ジフェニル-プロピル)-6-ヒドロキシ-ニコチンアミド
6-ヒドロキシアミノ-ニコチン酸(0.065g、0.473mmol)のN,N,ジメチルホルムアミド(4mL)溶液に3,3-ジフェニル-プロピルアミン(0.100g、0.473mmol)を加え、続いて1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.127g、0.946mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(0.180g、0.946mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.247mL、1.419mmol)を加えた。反応液を一晩攪拌した。混合物を水で希釈し、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機抽出物はシリカゲル及び硫酸マグネシウムを含むカートリッジに通した。得られた化合物を、メタノール/ジクロロメタン(2:98から10:90)を溶出液として使用したフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、減圧下蒸発させ所望の化合物を得た(0.041g、26.3%)。
【0053】
工程B:1-シアノメチル6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
工程Aの生成物(0.050g、0.150mmol)のアセトニトリル(5mL)溶液にブロモアセトニトリル(0.018g、0.150mmol)を加え、続いてPS-TBD(0.383g、0.450mmol)を加えた。混合物を一晩攪拌し、ろ過し及び減圧下蒸発させ所望の生成物を得た(0.011g、19.7%).LCMS:372.33(M+H+)。
【0054】
実施例2

1-(2-メトキシエチル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物(0.050g、0.150mmol)及び1-ブロモ-2-メトキシエタン(0.032g、0.225mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、メタノール/ジクロロメタンを溶出液として使用した分取TLCを用いて精製し所望の生成物を得た(0.010g、17.1%)。LCMS:391.48(M+H+)。
【0055】
実施例3

1-(2-ヒドロキシ-エチル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物及び2-ブロモエタノール(0.037g、0.300mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、メタノール/ジクロロメタンを溶出液として使用した分取TLCを用いて精製し所望の生成物を得た(0.028g、24.8%)。LCMS:377.38(M+H+)。
【0056】
実施例4

【0057】
6-オキソ-1-(2-フェノキシ-エチル)-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物及び2-ブロモエトキシベンゼン(0.054g、0.270mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、メタノール/ジクロロメタンを溶出液として使用した分取TLCを用いて精製し所望の生成物を得た(0.015g、12.4%)。LCMS:453.37(M+H+)。
【0058】
実施例5

6-オキソ-1-(2-ピペリジン-1-イル-エチル)-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物及び2-クロロエトキシピペリジン(0.040g、0.270mmol)から出発して実施例3の方法を用いて調製し、所望の生成物を得た(0.049g、41.6%)。LCMS:444.43(M+H+)。
【0059】
実施例6

6-オキソ-1-フェネチル-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物及び2-ブロモエチルベンゼン(0.050g、0.271mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、所望の生成物を得た(0.025g、21.1%)。LCMS:437.37(M+H+)。
【0060】
実施例7

1-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル-メチル6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸 (3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物及び3-クロロメチル[1,2,4]オキサジアゾール(0.090g、0.270mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、所望の生成物を得た(0.040g、35.7%)。LCMS:415.37(M+H+)。
【0061】
実施例8

1-(2-モルホリン-4-イル-2-オキソ-エチル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物及び2-クロロ-1-モルホリン-4-イル-エタノール(0.090g、0.270mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製し所望の生成物を得た(0.041g、26.3%)。LCMS:460.39(M+H+)。
【0062】
実施例9

1-(2-ヒドロキシ-プロピル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物及び1-ブロモ-プロパン-2-オール(0.042g、0.300mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製し所望の生成物を得た(0.008g、7.3%)。LCMS:391.36(M+H+)。
【0063】
実施例10

1-(2-エトキシ-エチル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物及び1-ブロモ-2-エトキシ-エタン(0.046g、0.300mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を溶出液として使用した分取TLCを用いて精製し所望の生成物を得た(0.030g、24.7%)。LCMS:405.37(M+H+)。
【0064】
実施例11

6-オキソ-1-ピリジン-3-イルメチル1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物(0.090g、0.270mmol)及び3-ブロモメチルピリジン臭化水素塩(0.068g、0.270mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を溶出液として使用した分取TLCを用いて精製し所望の生成物を得た(0.015g、13.6%)。LCMS:424.34(M+H+)。
【0065】
実施例12

1-(2-モルホリン-4-イル-エチル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸(3,3-ジフェニル-プロピル)-アミド
当該化合物は実施例1、工程Aの生成物(0.090g、0.270mmol)及び4-(2-クロロエチル)-モルホリン(0.041g、0.270mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を溶出液として使用した分取TLCを用いて精製し所望の生成物を得た(0.007g、5.7%)。LCMS:446.38(M+H+)。
【0066】
実施例13

6-オキソ-1-(2-ピペリジン-1-イル-エチル)-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド

工程A:3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-アクリロニトリル
シアノメチルホスホン酸ジエチルエステル(14.6g、91.66mmol)のアセトニトリル(2.5mL)溶液に洗浄し及び乾燥した水酸化ナトリウム(60%鉱物油に分散)(4.399g、183.3mmol)を加え、数分間攪拌した。ビス-(4-フルオロ-フェニル)-メタノン(20.00g、91.66mmol)を混合物に加えると、暗赤色になった。その後混合物をより少ないバッチにし、電子レンジ中で100℃30分間処理した。反応混合物を減圧下蒸発させ、ジエチルエーテルと共に粉砕した。エーテル層を減圧下蒸発させ、所望の生成物を得た。
【0067】
工程B:3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピオンニトリル
工程Aの生成物(0.315g、1.187mmol)のエタノール溶液にパラジウム炭素(10%、0.100g)を加えた。混合物を水素下で一晩攪拌した。溶液をろ過紙路液を減圧下蒸発させ所望の生成物を得た。
【0068】
工程C: 3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピルアミン
0℃まで冷却した、工程Bの生成物(0.336g、1.26mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(4mL)溶液にLiAlH4のテトラヒドロフラン溶液(1M、1.7mL、1.7mmol)を滴下して加えた。混合物を0℃で1.5時間攪拌し、室温に戻るまで放置した。重炭酸ナトリウムを反応混合物に加え、混合物を硫酸マグネシウムの層に通し、ろ液を減圧下乾燥させ所望の生成物(17.00g、76.9%)を得た。
【0069】
工程D:6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド

当該化合物は工程Cの生成物(0.2g、0.809mmol)及び6-ヒドロキシニコチン酸(0.1g、0.719mmol)から出発して実施例1、工程Aの方法に従って調製した。粗生成物は、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を溶出液として使用した分取TLCを用いて精製し所望の生成物を得た(0.02g、7.6%)。
【0070】
工程E:6-オキソ-1-(2-ピペリジン-1-イル-エチル)-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
この化合物は工程Dの生成物(0.090g、0.270mmol)及び1-クロロ-2-エトキシ-ピペリジン(0.040g、0.270mmolから出発し実施例1、工程Bの方法を用いて調製及び精製し、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を溶出液として使用した分取TLCを用いて精製し所望の生成物を得た(0.049g、41.6%)。LCMS:480.37(M+H+)。
【0071】
実施例14

1-シアノメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
当該当該化合物は実施例13、工程Dの生成物(0.050g、0.136mmol)及びブロモアセトニトリル(0.016g、0.136mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製及び精製し、所望の生成物を得た(0.048g、87.5%)。LCMS:408.33(M+H+)。
【0072】
実施例15

1-(2-モルホリン-4-イル-2-オキソ-エチル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
当該当該化合物は実施例13、工程Dの生成物(0.050g、0.136mmol)及び2-クロロ-1-モルホリン-4-イル-エタノン(0.022g、0.136mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製及び精製し、所望の生成物を得た(0.031g、46.4%)。LCMS:496.35(M+H+)。
【0073】
実施例16

1-(2-エトキシ-エチル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
当該当該化合物は実施例13、工程Dの生成物(0.050g、0.136mmol)及び1-ブロモ-2-エトキシ-エタン(0.021g、0.136mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製及び精製し、所望の生成物を得た(0.021g、35.1%)。LCMS:441.36(M+H+)。
【0074】
実施例17

6-オキソ-1-フェネチル-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
当該化合物は実施例13、工程Dの生成物(0.050g、0.136mmol)及び(2-ブロモエチル)-ベンゼン(0.025g、0.136mmol)から出発し実施例1、工程Bの方法を用いて調製し、ヘキサンを用いて再結晶し所望の生成物を得た(0.027g、42.5%)。LCMS:473.35(M+H+)。
【0075】
実施例18

6-オキソ-1-(2-フェノキシ-エチル)-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
当該化合物は実施例13、工程Dの生成物(0.050g、0.136mmol)及び(2-ブロモエトキシ)-ベンゼン(0.027g、0.136mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を溶出液として使用した分取TLCを用いて精製し所望の生成物を得た(0.023g、34.9%)。LCMS:489.35(M+H+)。
【0076】
実施例19

1-エチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
当該化合物は実施例13、工程Dの生成物(0.1g、0.271mmol)及びブロモエタン(0.048、0.440mmol)から出発して実施例1の方法を用いて調製し、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を溶出液として使用した分取TLCを用いて精製し所望の生成物を得た(0.048g、44.6%)。LCMS:489.35(M+H+)。
【0077】
実施例20

1-エチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3-(4-フルオロ-フェニル)-3-(4-メタンスルホニル-フェニル)-プロピル]-アミド

工程A:6-ヒドロキシニコチン酸メチルエステル
6-ヒドロキシニコチン酸(1.070g、7.69mmol)のベンゼン(45mL)及びメタノール(15mL)溶液にTMSジアゾメタン(5.00mL、10.00mmol)を5分間かけて滴下し加える。反応溶液を室温で4時間撹拌する。反応溶液を減圧下蒸発させ、所望の生成物を得る(1g、84.9%)。1HNMRδ:8.20(m,1H)、8.11(m,1H)、7.20(s,1H)、6.61(m,1H)、3.79(s,3H)ppm。
【0078】
工程B:1-エチル-6-ヒドロキシニコチン酸メチルエステル
工程Aの生成物(200mg、1.306mmol)のジクロロメタン:アセトニトリル(1:1)(10.0mL)溶液にPS-TBD(3.20g、3.918mmol)を加え、続いてヨードエタン(0.210mL、2.658mmol)を加え一晩撹拌する。溶液をその後ろ過し、残渣をジクロロメタン及びアセトニトリルで洗浄する。得られた溶液を減圧下濃縮し、所望の生成物を得る(0.216g、91.3%)。LCMS:182.26(M+H+)。
【0079】
工程C:1-エチル-6-ヒドロキシニコチン酸
水酸化リチウム(0.790g、33.00mmol)及び工程Bの生成物(スケールアップ;2.00g、11.04mmol)にジオキサン/水(1:1)(46mL)を加える。混合物を2時間撹拌しジオキサンを減圧下除去する。水層は酢酸エチルで3回洗浄し、酸性化し、及び生成物を酢酸エチルで抽出する。得られた有機層を減圧下濃縮し所望の生成物を得る(1.83g、99.2%)。LCMS:168.37(M+H+)。
【0080】
工程D:(Z)-3-(4-フルオロ-フェニル)-3-(4-メタンスルホニル-フェニル)-アクリロニトリル
窒素環境下で乾燥させた100mL容量の火炎乾燥(flamedried)丸底フラスコに4-(メタンスルホニル)ベンゼンボロン酸(1.81g;9.1mmol)、3-クロロ-3-(4-フルオロフェニル)アクリロニトリル(1.52g;8.4mmol)、[(C4H9)3PH]+BF4-(0.120g、0.42mmol)、Pd2(dba)3(0.191g、0.21mmol)を加えた。当該フラスコをその後5分間減圧下に設置し、代わりに窒素を充填した(3回繰り返す)。フッ化カリウム(1.490g、25.4mmol)をフラスコに加え、フラスコをセプタ(septa)で密封し、窒素でパージし、テトラヒドロフラン(17.5mL)をシリンジを用いて導入した。反応液を45℃の油浴に16時間置いた。反応混合物をシリカゲルのパッドに通し、シリカゲルを大量のテトラヒドロフラン及びジエチルエーテルで洗浄した。併せた有機層を減圧下乾燥させ黄色固体を得、ヘキサン/酢酸エチルから再結晶し所望の生成物(2.08g、82%yield)を得た。LCMS:302.06(M+H+)。
【0081】
工程E:3-(4-フルオロ-フェニル)-3-(4-メタンスルホニル-フェニル)-プロピルアミン
パールボンブ(Parr-Bomb)に工程Dの生成物(150mg、0.498mmol)及び250mgの10%パラジウム炭素を入れた。固体をエタノール(30mL)及び酢酸(3mL)に懸濁し水素化装置(hydrogentor apparatus)内で40psiまで加圧した。反応は40psiで一晩行い、生成物はセライト(celite)のパッドに通した。セライトを大量のエタノールで洗浄し、併せた洗液を蒸発させ油状物を得、当該油状物をメタノール/ジクロロメタンを用いたフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(0.070g、45.7%)を得た。LCMS:308.12(M+H+)
【0082】
工程F:
実施例20工程Cの生成物(0.135g、0.808mmol)のジクロロメタン溶液に塩化チオニル(1.8mL)を加え、混合物を2時間撹拌した。過剰な塩化チオニルを減圧下除去し油状物をジクロロメタンに取り、0℃まで冷却した。トリエチルアミン(0.240mL)及び実施例20工程Eの生成物(0.170g、0.553mmol)を混合物に加え2時間反応させたままにする。反応体を水に注ぎ、エーテルで抽出した。エーテル層を塩水及び炭酸水素塩溶液で洗浄し、乾燥し、ろ過し、減圧下蒸発させた。得られた油状物はメタノールのジクロロメタン溶液(5:95)を用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し所望の化合物(0.144mg、39.1%)を得た。LCMS:457.535(M+H+)。
【0083】
実施例21

1-シアノ-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-クロロ-フェニル)-プロピル]-アミド

工程A:3,3-ビス-(4-クロロ-フェニル)-2-シアノ-アクリル酸エチルエステル
(Z)-3-(4-クロロ-フェニル)-2-シアノ-アクリル酸エチルエステル(36.00g、152.8mmol)の無水トルエン(550mL)溶液に4-クロロフェニルマグネシウムブロミド(1Mジエチルエーテル溶液)199mL、198.6mmol)をゆっくり加え、反応混合物を激しく撹拌しながら1時間還流し、その後溶液を氷(400g)及びHCl(4N)(55mL)を混合したものに注いだ。水層を分離し酢酸エチル(1×200mL)で洗浄した。合わせた有機層を炭酸ナトリウム(1×200mL)及び塩水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液を減圧下乾燥させ、所望の生産物(56.00g、105.7%)を得た。
【0084】
工程B:2-カルバモイル-3,3-ビス-(4-クロロ-フェニル)-アクリル酸
工程Aの生成物(56.00g、150mmol)に水酸化ナトリウム(25.00g、600mmol)水溶液(500mL)を加え、混合物を還流しながら2時間撹拌し室温に冷却しMTBE(2×200mL)で洗浄し、HCl(80mL)で酸性化し、及び酢酸エチル(3×200mL)で洗浄した。酢酸エチル層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下蒸発させ2種類の他の不純物と共に生成物を得た。
【0085】
工程C:3,3-ビス-(4-クロロ-フェニル)-プロピオンアミド及び3,3-ビス-(4-クロロ-フェニル)-プロピオンニトリル
工程Bの生成物(21g、62.09mmol)のDMSO(200mL)溶液に塩化リチウム(5.27g、124.18mmol)を加え、混合物を130℃になるまで2時間加熱し室温まで冷却した。水(250mL)及び酢酸エチル(100mL)を混合物に加え反応混合物を激しく振とうした。有機層を分離し水層を酢酸エチル(100mL)で抽出した。あわせた有機層を水(2×100mL)飽和重炭酸ナトリウム(100mL)、塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し及び減圧下蒸発させ所望の生成物(2:1)を得た。LCMS:
【0086】
工程D:3,3-ビス-(4-クロロ-フェニル)-プロピルアミン
工程Cの生成物(15.95g、54.2mmol)のテトラヒドロフラン(150mL)溶液に-78℃でゆっくりと水素化リチウムアルミニウム(1Mテトラヒドロフラン溶液)(110mL、110mmol)を加え、混合物を8時間攪拌し、室温になるまで放置し、一晩攪拌し、その後0℃まで冷却した。混合物に水を(4mL)加え、続いて硫酸ナトリウム十水和物を加えた。得られた塩をろ取しテトラヒドロフラン(5×50mL)で洗浄した。有機層を減圧下蒸発させ油状の生成物(16g)を得た。この油状物をMTBE(250mL)に溶解しHCl(1×200mL)、塩水(1×200mL)で洗浄し、減圧下溶媒を除去し泡沫状の黄色固体を得た。当該固体を温めた酢酸エチルと共に粉砕し無色固体を得た。ろ過液から減圧下蒸発させることにより第二の収穫物(second crop)を得、酢酸エチル(20mL)に再溶解し、ヘプタン(250mL)で析出させた。あわせた沈殿をもう一度ヘプタン/酢酸エチル(5:1)と粉砕し及びろ過して無色の粉末を得た。粉末をヘプタン/アセトン(5:2)(700mL)に溶解し、過熱し、冷却しろ過して黄色固体(9.20g)を得た。当該固体をクロロホルム(100mL)中で煮沸し、-10℃まで冷却し、ろ過して白色固体を得た。ろ液を濃縮し、クロロホルム中で粉砕し、ろ過して所望の無色固体を得た。当該固体は他の固体とあわせた(7.89g、51.8%)。LCMS:280.74(M+H+)。
【0087】
工程E:1-シアノ-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3,3-ビス-(4-クロロ-フェニル)-プロピル]-アミド
当該化合物は実施例20、工程Cの生成物(0.135g、0.808mmol)、実施例21、工程Dの生成物(0.250g、0.790mmol)、EDC(0.303g、1.589mmol)、HOBt(0.220g、1.628mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.500mL、3.869mmol)から出発して調製し、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を溶出液として使用したフラッシュクロマトグラフィーを用いて精製し所望の生成物を得た(0.196g、56.5%)。LCMS:430.345(M+H+)。
【0088】
実施例22

1-エチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3-(4-フルオロ-フェニル)-3-(4-メチルカルバモイル-フェニル)-プロピル]-アミド
【0089】
工程A:6-ヒドロキシニコチン酸メチルエステル
6-ヒドロキシニコチン酸(1.070g、7.692mmol)のベンゼン(54mL)溶液及び15mLのメタノールにTMSジアゾメタン(5.00mL、10.00mmol)を5分間かけ滴下して加えた。反応溶液を室温で4時間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、所望の生成物を得た(1.00g、84.9%)。1H NMRδ:8.20(m,1H)、8.11(m,1H)、7.20(s,1H)、6.61(m,1H)、3.79(s,3H)ppm。
【0090】
工程B:1-エチル-6-ヒドロキシニコチン酸メチルエステル
工程Aの生成物(0.200g、1.306mmol)のジクロロメタン/アセトニトリル(1:1)(10mL)溶液にPS-TBD(3.20g、3.918mmol)を加え、続いてヨードエタン(0.210mL、2.658mmol)を加え、一晩撹拌した。その後溶液をろ過し、残渣をジクロロメタン及びアセトニトリルで洗浄する。得られた溶液を減圧下濃縮し、所望の生成物を得た(0.216g、91.3%)。LCMS:182.26(M+H+)。
【0091】
工程C:1-エチル-6-ヒドロキシニコチン酸
水酸化リチウム(0.790g、33.000mmol)及び工程Bの生成物(スケールアップ;2.00g、11.04mmol)にジオキサン/水(1:1)(46mL)を加える。混合物を2時間撹拌しジオキサンを減圧下除去する。水層を酢酸エチルで抽出し、酸性化し及び生成物を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を減圧下濃縮し所望の生成物を得た(1.830g、99.2%)。LCMS:168.37(M+H+)。
【0092】
工程D:(Z)-3-(4-フルオロ-フェニル)-3-(4-メタンスルホニル-フェニル)アクリロニトリル
オーブン乾燥させた丸底フラスコに4-(N-メチルカルボキシアミド)ベンゼンボロン酸(0.43g、2.43mmol)、3-クロロ-3-(4-フルオロフェニル)アクリロニトリル(0.4g、2.20mmol)、[(C4H9)3PH]+BF4-(0.065g、0.22mmol)、Pd2(dba)3(0.1g、0.11mmol)を入れた。フラスコをテフロン(登録商標)ライナー付きセプタキャップで密閉し3分間窒素でパージ(purge)した。キャップをはずしKFを直ちに1度で加えた。反応キャップを交換し、バイアルを窒素で3分間フラッシュ(flash)した。乾燥テトラヒドロフラン(3.6mL)をバイアルにシリンジを用いて導入し、反応容器をテフロン(登録商標)テープで密封する。バイアルを次に温度を45度に設定した油浴に浸し一晩反応させる。16時間後、バイアルを湯浴からはずし室温になるまで放置する。混合物をシリカゲルのプラグ(plug)に通し、大量のテトラヒドロフラン及びジエチルエーテルで洗浄する。あわせた洗液を減圧下蒸発させ所望の化合物を得た(0.590g、86%)。LCMS:281.11(M+H+)。
【0093】
工程E:4-[3-アミノ-1-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-N-メチルベンズアミド
パールボンブ装置に工程Dの生成物(0.266g、0.949mmol)及びパラジウム炭素(0.25g、10%v/v)を入れる。固体をエタノール(30mL)及び酢酸(3mL)に懸濁し水素化装置内で40psiまで加圧する。反応は40psiで一晩行い、生成物をセライトのパッドで濾過する。セライトを大量のエタノールで洗浄し、あわせた洗液を減圧下蒸発させ、得た油状物をメタノールのジクロロメタン溶液を溶出液として使用したフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、表題の化合物を得た(40.0mg、14.7%)。LCMS:287.12(M+H+)。
【0094】
工程F:1-エチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸[3-(4-フルオロ-フェニル)-3-(4-メチルカルバモイル-フェニル)-プロピル]-アミド
この化合物は実施例20工程Cの生成物(0.129g、0.774mmol)、実施例22、工程Eの生成物(0.250g、0.774mmol)、EDC(0.293g、1.540mmol)、HOBt(0.208g、1.54mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.512mL、3.09mmol)から出発し実施例1、工程Aの方法を用いて調製及び精製し、メタノール/ジクロロメタン(5:95)を溶出液としてラッシュクロマトグラフィーを用いて精製し所望の生成物を得た(0.196g、56.5%)。LCMS:435.98(M+H+)。
【0095】
(使用方法)
本発明により、本明細書に記載された化合物及びその薬剤的に許容可能な誘導体の使用方法を提供する。本発明で使用される化合物は有益な作用を有するsEH基質の変性を防ぎ又は有害作用を有する代謝物の生成を防ぐ。sEHの阻害は例えば血管内皮機能障害のような多様な心血管疾患又は症状を予防し及び治療する為に魅力的な方法である。したがって、本発明の方法はそのような症状の治療に有用である。これらは1型及び2型糖尿病、インスリン抵抗症候群、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、狭心症、虚血、脳梗塞、レイノー病、および腎臓病を含むが、これらに限定されない疾患を包含する。
【0096】
治療的使用のために、化合物は任意の従来の剤形で任意の従来の投与方法で投与しても良い。投与経路は静脈内、筋内、皮下、滑液胞内注入、舌下、経皮、経口、局所又は吸入を含むがそれらに限定されない。好ましい投与形態は経口または静脈内投与である。
【0097】
本明細書に記載された化合物は単独で又は阻害剤の安定性を向上させる、特定の実施態様においてこれらを含む医薬組成物の投与を容易にする、溶解性及び拡散性を増加させる、阻害活性を増強する、薬物補助療法を提供する等のような補助剤と組み合わせて他の活性成分を含んだ状態で投与しても良い。好ましくは、そのような併用療法に
は従来の治療薬を低容量で利用し、そうすることによりそれらの治療薬を単独で使用した場合に予想しうる毒性及び有害な副作用を避ける。本発明の化合物は従来の治療薬又は他の補助剤と物理的に組み合わせて単一の医薬組成物にしても良い。いくつかの実施態様において、化合物のそのような組み合わせを含む医薬組成物は、少なくとも約5%、より好ましくは少なくとも約20%の化合物(w/w)又はその組み合わせを含む。本発明の化合物の最適割合(w/w)は変化してもよく、当業者の理解の範囲内である。あるいは、化合物は別々に投与してもよい(連続的に、又は平行して)。別々に服用することは、投与計画における自由度をより大きくする。
【0098】
上述の通り、上述の化合物の投与剤形は、当業者に知られる薬剤的に許容されるキャリヤ及び補助剤を含む。これらのキャリヤ及び補助薬としては、例えばイオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清蛋白質、緩衝物質、水、塩又は電解質及びセルロース・ベース物質が挙げられる。好ましい投与剤形としては、錠剤、カプセル、キャプレット(caplet)、液体、液剤、懸濁液、乳液、舐剤(lozenges)、シロップ、再構成可能な(reconstitutable)散剤、顆粒剤、坐剤及び経皮貼布が挙げられる。このような投与剤形を調製する方法は知られている(例えば、H.C. Ansel and N.G. Popovish, Pharmaceutical Dosage forms and Drug Delivery Systems, 5th ed., Lea and Febiger (1990)参照)。投薬量レベル及び要求は、当該技術分野でよく認識されており、特定の患者に適した利用可能な方法及び技術から当業者が選択してもよい。いくつかの実施態様において、投薬量レベルは、70kgの患者について約1-1000mg/doseの範囲で変化する。1日当たり1回の投与で十分であるかもしれないが、1日当たり最大5回投与しても良い。経口の用量について、最大2000mg/日まで、必要であっても良い。当業者が正しく認識するように、特定の要因に応じてより少ない又は多い投与量が必要とされても良い。例えば、最適な投与量及び投薬計画は、患者の一般の健康プロフィール、患者の病気の重症度及び経過又はその性質、及び主治医の判断のような因子に依存する。
【0099】
「患者」という用語はヒト及びヒト以外の哺乳類の両方を含む
【0100】
「有効量」という用語は文中で投与又は使用された量が所望する効果又は結果得を達成するのに十分である本発明の化合物の量を意味する。文脈により有効量の用語は医薬的有効量又は診断的有効量を含み又は同義であっても良い。
【0101】
「薬剤的有効量」又は「治療有効量」という用語は投与が必要な患者に投与した際に化合物が効果を有する病状、症状又は疾患の治療に十分な本発明の化合物の量を意味する。そのような量は研究者又は臨床医によって求められる患者またはin vitro又はin vivoの組織又は系において生物学的又は医学的反応を惹起するのに十分である。薬剤有効量を構成する本発明の化合物の量は化合物及びその生理活性、使用される診断方法、装置、アッセイ、投与に使用される組成、投与時間、投与経路、化合物の排泄速度、投与の持続時間、治療される病状又は疾患の型、及びその重症度、本発明の化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物又は他の化合物及び患者の年齢、体重、一般的健康、性別及び食事のような因子に依存して変化する。そのような薬剤的有効量は当業者によって彼ら自身の知識、先行技術及び本明細書の開示を考慮してルーチン的に決定することができる。
【0102】
「診断有効量」という用語は本発明の化合物が診断的方法、装置、アッセイに使用される場合に、所望する診断効果を発揮する又は診断方法、装置、又はアッセイに必要な所望する生理活性を発揮するのに十分な量を意味する。そのような量は診断方法、装置、アッセイにおいて生物学的又は医学的反応を惹起するのに十分であり、前記反応は研究者又は臨床医によって求められる患者又はin vitro又はin vivoの組織又は系において生物学的又は医学的反応を含む。診断有効量を構成する本発明の化合物の量は化合物及びその生理活性、使用される診断方法、装置、アッセイ、投与に使用される組成、投与時間、投与経路、化合物の排泄速度、投与の持続時間本発明の化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物又は他の化合物及びもし患者が診断的投与の対象である場合は患者の年齢、体重、一般的健康、性別及び食事のような因子に依存して変化する。そのような診断有効量は当業者によって彼ら自身の知識、先行技術及び本明細書の開示を考慮してルーチン的に決定することができる。
【0103】
「治療(treating)」又は「治療(treatment)」という用語は患者における病気の症状の治療を意味し、以下を含む。
(i)患者に病状が起こるのを伏せぐこと、とりわけ、そのような患者が遺伝的に又は他に病状が起こりやすい傾向にある場合であって、まだ病状を有すると診断されていない場合;
(ii)患者の病状の抑制又は軽減、すなわち病状の進行を抑止又は遅らせること;又は
(iii)患者における病状の軽減、すなわち、病状の復帰又は治癒をおこすこと
【0104】
(In vitroにおけるhsEH阻害アッセイ)
この高速大量スクリーニング(high throughput screen)はヒト可溶性エポキシド加水分解酵素(sEH)とテトラメチルローダミン(TAMRA)-標識プローブの間の相互作用を阻害する化合物を同定する。UHTSは試薬、バッファー及び試験化合物を96-ウェル又は384-ウェル黒色マイクロタイタープレート(Costar社)のいずれに分配するのにもZymark Allegroモジュラーロボットシステム(modular robotic system)を使用した。アッセイバッファーの組成は:20mM TES、200mM NaCl、0.05%w/vCHAPS、1mMTCEP、pH=7.0である。試験化合物はニート(neat)DMSOに5mg/mLの濃度で溶解し、0.5mg/mLまでニートDMSOで希釈する。0.5mg/mLの溶液をさらに30μg/mLまで、DMSOを含んだアッセイバッファーで希釈し、DMSOの最終濃度が30%になるように調製する。384-ウェルフォーマットでは、10.35nMヒトsEH及び2.59nMプローブをアッセイバッファーで調製し最終的なsEH濃度が10nM及び最終的なプローブ濃度が2.5nMとなるように各ウェルに60μLずつ加えた。その後、最終的なアッセイ濃度が1μg/mL試験化合物及び1%DMSOとなるように2.1μLの希釈した試験化合物を各ウェルに加えた。陽性コントロールは試験化合物を含まない反応混合物であり、陰性コントロール(ブランク)は3μMのBI00611349XXを含む反応混合物であった。96ウェルフォーマットではすべての反応化合物の最終濃度は同じままであり、最終的なウェル内の体積が150mLとなるように135μLのsEH/プローブ混合物を15μLの試験化合物が入っているウェルに加えた。反応溶液を室温で30分間インキュベートした後、プレートの蛍光偏光をLJLAnalystで励起光波長を530nm発光波長を580nmにセットしRh561二色性ミラーを用いて測定した。
【0105】
In vitroにおけるmsEH阻害アッセイ
このスクリーニングによりラット可溶性エポキシド加水分解酵素(sEH)とテトラメチルローダミン(TAMRA)-標識プローブの間の相互作用を阻害する化合物を同定する。当該アッセイには試薬、バッファー及び試験化合物を96-ウェル黒色マイクロタイタープレート(Costar社3792)に分配するのにMultimek、Multidrop及び手動のマルチチャンネルピペッターを使用した。アッセイ緩衝液は20mM TES、200mMNaCl、0.05%w/v CHAPS、1mM TCEP、pH=7.0である。試料をニートDMSOに10mMで溶解したものをニートDMSOで1.5mMに希釈した。1.5mMの溶液をポリプロピレンプレート内でニートDMSOで3倍希釈することにより段階的に希釈した。アッセイバッファーを化合物が10倍に希釈され及びDMSO濃度が10パーセントになるようにウェルに加えた。11.1nMのラットsEH及び2.78nMプローブの混合物をアッセイバッファーで調製した。最終的な最大アッセイ濃度が、3μM試験化合物及び1%DMSOとなるように15μLの希釈した試験化合物を各ウェルに調整した。135μLのsEH/プローブ混合物を最終的なsEH濃度が10nM及び最終的なプローブ濃度が2.5nMになるように各ウェルに加えた。最終的な各ウェル内の体積は150μLであった。陽性コントロールは試験化合物を含まない反応混合物であり、陰性コントロール(ブランク)は3μMのBI00611349XXを含む反応混合物であった。反応溶液を室温で30分間インキュベートした後、プレートの蛍光偏光をLJL Analystで励起光波長を530nm発光波長を580nmにセットしRh561二色性ミラーを用いて測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又は薬剤的に許容可能なその塩。

(各Aは独立して窒素又はC-HでありAが構成員である環はピリジニル又はフェニルであってもよく、前記ピリジニル又はフェニルは、任意にY又はZで置換されていても良い。
それぞれの環上のY及びZはメタ又はパラ位であっても良く、独立してF、Cl、Br、CN、OR、R、-S(O)2R、C(O)NRR又は-S(O)2NRRであり、前記Rは独立して水素又はヒドロキシ、アミノ、C1-4アルコキシ、C1-4アルキルアミノ、C1-4アルキルチオ、又は1−3個のフッ素原子で置換されていても置換されていなくても良いC1-5アルキルであり、
Lは任意にヒドロキシ、アミノ、C1-4アルコキシC1-4アルキルアミノ、C1-4アルキルチオ又は1−3個のフッ素原子で置換されたエチレンリンカーであり、
XはO又はSであり、
QはN又はCHであり、
Dは結合又はメチレン若しくはエチレンリンカーであって、前記リンカーのCH2-基が-C(O)-で置き換えられてもよく、
Wは水素、C1-5アルキル、シアノ、炭素環、ヘテロ環、アリールオキシ、C1-4アルキルオキシ、OH又はヘテロアリール(それぞれ置換されていなくてもよく、又はヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、カルボキシアミド、C1-4アルキル、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルオキシ、C1-4アルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、C3-6シクロアルキルアミノ、ジ(C3-6シクロアルキル)アミノ、C1-4アルキルスルホニル、C1-4アルキルオキシカルボニル又はC1-4アルキルアミドカルボニルで置換されていても良い。)であり、
式中、Dが結合であれば、Wはシアノである。)
【請求項2】
QがCHであり、
XがOであり、
各環上のY及びZ(存在する場合)が、メタ又はパラ位に存在し、及び独立してF、Cl、-S(O)2R又は-C(O)NRR(Rは独立して水素又はC1-5アルキルである)であり、
Wは水素、シアノ、C3-6シクロアルキル、アリール、フェノキシ、C1-4アルコキシ、ヒドロキシ、C1-5アルキル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル及びジオキソラニルから選択されるヘテロ環又はピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、フラニル、ピラニル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル及び

から選択されるヘテロアリールであり、それぞれ置換されていなくてもよく、又はヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、シアノ、カルボキシ、カルボキシアミド、C1-4アルキル、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルオキシ、C1-4アルキルアミノ、C1-4ジアルキルアミノ、C3-6シクロアルキルアミノ、ジ(C3-6シクロアルキル)アミノ、C1-4アルキルスルホニル、C1-4アルキルオキシカルボニル又はC1-4アルキルアミドカルボニルで置換されていても良い、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Lはエチレンリンカーであり、
Wは水素、シアノ、ピペリジニル、モルホリニル、フェニル、フェノキシ、C1-4アルキルオキシ、OH、C1-5アルキル、ピリジニル又は

であり、それぞれ置換されていなくてもヒドロキシ又はC1-4アルキルオキシで置換されていても良い、
請求項2記載の化合物。
【請求項4】
式(II)の化合物又は薬剤的に許容可能なその塩。

(II)
(式 (II)中の以下の部分

は、下記の表IのA1A14 から選択され、
下記の表中のB1B11から選択される任意の構成

と組み合わされる)


















【請求項5】
以下から選択される化合物又は薬剤的に許容可能なその塩。





























【請求項6】
治療有効量の請求項1−5いずれか1項記載の化合物を患者に投与することを含む、1型及び2型糖尿病、インスリン抵抗症候群、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、狭心症、虚血、脳梗塞、レイノー病、および腎臓病から選択される疾患の治療方法。

【公表番号】特表2009−511489(P2009−511489A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534691(P2008−534691)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2006/039055
【国際公開番号】WO2007/044491
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】