説明

合わせガラス用中間膜及び合わせガラス

【課題】吸湿によるヘイズ値の上昇のない、耐湿性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを提供する。
【解決手段】ポリビニルアセタール樹脂と耐湿性向上剤とを含有する合わせガラス用中間膜とする。耐湿性向上剤としては、両親媒性物質及び/又は界面活性剤であることを特徴とするか、あるいは溶解性パラメータが10.0〜20.0(cal/cm3)1/2であることを特徴とするか、あるいは25℃における比誘電率が20〜35であることを特徴とし、なかでもリン酸エステル系化合物が特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿によるヘイズ値の上昇のない、耐湿性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損しても、ガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車両、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。このような合わせガラスとしては、少なくとも一対のガラス間に、例えば、可塑剤により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂からなる合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させたもの等が挙げられる。
【0003】
このような合わせガラスに用いられる合わせガラス用中間膜は、ガラス板と合わせガラス用中間膜との接着力を調整するために接着力調整剤を含有している。一般的に用いられる接着力調整剤は、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含むカルボン酸塩であった。
【0004】
しかしながら、合わせガラス用中間膜は吸湿すると白化現象を起こし、ヘイズが上昇するといった問題があった。合わせガラス用中間膜の吸湿による白化現象を抑えるために、例えば、特許文献1には、合わせガラス用中間膜中に含まれるアルカリ金属イオンの濃度を一定以下に調整する方法が開示されている。これにより、吸湿によりほとんど白化しない合わせガラス用中間膜が得られている。
【0005】
しかしながら、合わせガラスの端部が露出するサイドガラスやオープンエッジのフロントガラス等では、合わせガラス用中間膜が周辺から白化しやすくなるので、より過酷な環境下でも、吸湿により白化しない合わせガラス用中間膜が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2999177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、吸湿によるヘイズ値の上昇のない、耐湿性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂と耐湿性向上剤とを含有する合わせガラス用中間膜である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
合わせガラス用中間膜中において、水分は2つの形態を取り得る。即ち、1つは吸着水と呼ばれる、合わせガラス用中間膜に含まれる樹脂成分や添加剤等の官能基に吸着された形で含まれる水分であり、もう1つは、これらに吸着されていない、合わせガラス用中間膜中に単独で存在する「バルク水」と呼ばれる水分である。合わせガラス用中間膜が吸湿して「バルク水」の含有量が増えると、「バルク水」同士が凝集してその粒子径が大きくなり、可視光の散乱を起こし、ヘイズの上昇という形で現れてくることがある。また、「バルク水」粒子を核として発泡等が起こることもある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の化合物を配合することにより極めて耐湿性に優れ、吸湿によるヘイズ値の上昇のない遮熱合わせガラス用中間膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂と耐湿性向上剤とを含有する。
上記ポリビニルアセタール樹脂は、合わせガラス用中間膜としての基本的な役割を果たすものである。
上記ポリビニルアセタール樹脂としては特に限定されず、従来合わせガラス用中間膜用樹脂として用いられているものを使用することができ、例えば、アセタール化度60〜75モル%、重合度800〜3000のもの等が好適に用いられる。重合度が800未満であると、樹脂膜の強度が弱くなりすぎて得られる合わせガラスの耐貫通性が低下することがあり、重合度が3000を超えると、樹脂膜の成形性が難しくなったり、樹脂膜の強度が強くなりすぎて得られる合わせガラスの衝撃吸収性が低下したりすることがある。なかでも、ガラスに対する適正な接着力、透明性、耐候性に優れるという点からポリビニルブチラール樹脂が好適である。
【0011】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより得ることができる。上記ポリビニルアルコールは、通常ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度80〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
上記ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度は200〜3000であることが好ましい。200未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下することがあり、3000を超えると、樹脂膜の成形性が悪くなり、樹脂膜の剛性が大きくなり過ぎ、加工性が悪くなることがある。より好ましくは500〜2000である。なお、ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度及び鹸化度は、例えば、JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定することができる。
【0012】
上記アルデヒドとしては特に限定されず、一般に、炭素数が1〜10のアルデヒドが用いられ、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好適に用いられる。特に好ましくは炭素数が4のブチルアルデヒドである。
【0013】
本明細書において耐湿性向上剤とは、配合することにより合わせガラス用中間膜の耐湿性を向上させる剤を意味する。
上記耐湿性向上剤としては特に限定されないが、両親媒性物質及び/又は界面活性剤が好適である。両親媒性物質及び/又は界面活性剤は、後述する熱線遮蔽粒子の分散剤としての効果も有する。
上記両親媒性物質とは、例えば、カルボキシル基、スルホニウム基、アルデヒド基、ケト基、アンモニウム基、ヒドロキシ基等の親水基と、炭化水素基等の疎水基とを両方有する化合物を意味する。具体的には例えば、エタノール、プロパノール等の一価アルコール;エチレングリコール等の二価アルコール等をはじめとする多価アルコール;シクロヘキサノール等の脂環式アルコール;ベンジルアルコール等の芳香族アルコール;ヒドロキシアルデヒド、ヒドロキシケトン、ヒドロキシ酸、ステロール、テルペン類等のアルコール誘導体;酢酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸等のジカルボン酸をはじめとする多官能カルボン酸;安息香酸等の芳香族カルボン酸;アクリル酸等の不飽和カルボン酸;アシル化合物、酸アミド、酸アジド、酸塩化物、酸無水物、ニトリル等のカルボン酸誘導体;ヒドロキシ酸、ケト酸、アルデヒド酸、フェノール酸、アミノ酸、ハロゲンカルボン酸等カルボキシル基以外の官能基を有するカルボン酸等が挙げられる。
【0014】
上記界面活性剤としては特に限定されず、一般に、分散剤、乳化剤、消泡剤、潤滑剤、浸透剤、洗浄剤、ビルダー、疎水化剤、撥水剤、表面調整剤、粘度調整剤として用いられる化合物等が挙げられ、例えば、非イオン性、陽イオン性、両性、陰イオン性のものを用いることができる。
【0015】
非イオン性の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルやポリオキシエチレン誘導体;ソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリエキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
【0016】
陽イオン性の界面活性剤としては、例えば、ココナットアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0017】
両性の界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン等のアルキルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0018】
陰イオン性の界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルフォン酸等のアルキルベンゼンスルフォン酸塩、脂肪酸石けん、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウムやアルケニルコハク酸ジカリウム等のカリウム塩、アルカンスルホン酸ナトリウム等のナトリウム塩;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルリン酸エステル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジル・ジフェニルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルホスフェート、メチルアシッドホスフェート、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、フェニルホスホン酸、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等が挙げられる。
【0019】
上記耐湿性向上剤としては、なかでも、溶解性パラメータがポリビニルアセタール樹脂及び後述する可塑剤よりも大きく、水よりも小さいものが好ましい。なかでも溶解性パラメータが10.0〜20.0(cal/cm1/2であるであるものが好適である。
本発明における溶解性パラメータは、Smallによって提案された方法により算出されるものであり、下記式(1)により求めることができる。
【数1】

溶解性パラメータが10.0(cal/cm1/2未満であると、水分への吸着力が低すぎるために、ヘイズ値上昇の原因となる凝集バルク水の発生を抑えることができず、20.0(cal/cm1/2を超えると、ポリビニルアセタール樹脂や可塑剤との親和性の低さから相分離を起こしてしまうことがある。より好ましい下限は12.0(cal/cm1/2、より好ましい上限は15.0(cal/cm1/2である。
【0020】
また、溶解性パラメータの測定が困難な場合には比誘電率により判断を行ってもよい。即ち、上記耐湿性向上剤としては、25℃における比誘電率が20〜35であるものが好適である。20未満であると、ヘイズ値上昇の原因となる凝集バルク水の発生を抑えることができず、35を超えると、ポリビニルアセタール樹脂や可塑剤との親和性の低さから相分離を起こしてしまうことがある。より好ましい下限は22、より好ましい上限は25である。
なお、比誘電率の値は、「TECHNIQUE OF ORGANIC CHEMISTRY. Volume VII. SECOND EDITION. INTERSCIENCE PUBLISHING, INC. P43〜P258」に記載の表を参照することができる。
【0021】
このような溶解性パラメータ又は比誘電率を有する耐湿性向上剤としては、例えば、リン酸エステル系化合物、エタノールのような低級アルコール等が挙げられる。なかでも、リン酸エステル系化合物が特に好適である。
【0022】
上記耐湿性向上剤の含有量としては、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限が0.005重量部、好ましい上限が20重量部である。0.005重量部未満であると、充分な耐湿性の向上効果が得られないことがあり、20重量部を超えると、中間膜の製膜時に発泡したり、合わせガラスにした際に、発泡を生じたり、中間膜とガラスとの接着力が上がりすぎることがある。より好ましい下限は0.01重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0023】
本発明の合わせガラス用中間膜は、キレート剤及び/又は少なくとも1つのカルボキシル基をもつ化合物を含有することが好ましい。キレート剤及び/又は少なくとも1つのカルボキシル基をもつ化合物を併用することにより、本発明の合わせガラス用中間膜の耐湿性を更に向上させることができる。
【0024】
上記キレート剤としては特に限定されず、例えば、EDTA類及びβ−ジケトン類等が挙げられる。なかでも、β−ジケトン類は、可塑剤や樹脂との相溶性のよいことから好ましく、特にアセチルアセトンが好適である。アセチルアセトン以外にもベンゾイルトリフルオロアセトンやジピバロイルメタン等を用いてもよい。
【0025】
上記キレート剤の含有量としては、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限が0.005重量部、好ましい上限が20重量部である。0.005重量部未満であると、充分な耐湿性の向上効果が得られないことがあり、20重量部を超えると、中間膜の製膜時に発泡したり、合わせガラスにした際に発泡を生じたりすることがある。より好ましい下限は0.01重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0026】
上記少なくとも1つのカルボキシル基をもつ化合物としては特に限定されず、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族カルボン酸、芳香族ジカルボン酸、ヒドロキシ酸等が挙げられ、より具体的には、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、リシノール酸等が挙げられる。なかでも、炭素数2〜18の脂肪族カルボン酸が好ましく、より好ましくは炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸である。具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、2−エチル酪酸、n−ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、n−オクタン酸等が挙げられる。なかでも、2−エチルヘキサン酸が特に好適である。
【0027】
上記少なくとも1つのカルボキシル基をもつ化合物の含有量としては、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限が0.005重量部、好ましい上限が10重量部である。0.005重量部未満であると、充分な耐湿性の向上効果が得られないことがあり、10重量部を超えると、得られる中間膜が黄変したり、ガラスと中間膜との接着性を損なったりすることがある。より好ましい下限は0.01重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0028】
本発明の合わせガラス用中間膜は、更に、可塑剤を含有してもよい。
上記可塑剤としては通常ポリビニルアセタール樹脂に使用されるものであれば特に限定されず、中間膜用の可塑剤として一般的に用いられている公知の可塑剤を用いることができ、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機系可塑剤;有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよく、樹脂との相溶性等を考慮して、ポリビニルアセタール樹脂の種類に応じて使い分けられる。
【0029】
上記一塩基性有機酸エステル系可塑剤としては特に限定されず、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)又はデシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られるグリコール系エステルが挙げられる。なかでも、トリエチレングリコール−ジカプロン酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキシル酸エステル等のトリエチレングリコールの一塩基性有機酸エステルが好適に用いられる。
【0030】
上記多塩基性有機酸エステル系可塑剤としては特に限定されず、例えば、アジピン酸、セバシン酸又はアゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖状又は分枝状アルコールとのエステル等が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適に用いられる。
上記有機リン酸系可塑剤としては特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0031】
上記可塑剤としては、なかでも、トリエチレングリコール−ジ−エチルブチラート、トリエチレングリコール−ジ−エチルヘキソエート、トリエチレングリコール−ジ−ブチルセバケート等が好適に用いられる。
【0032】
上記可塑剤の配合量は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して20〜60重量部であることが好ましい。20重量部未満であると、得られる中間膜や合わせガラスの衝撃吸収性が不充分となることがあり、60重量部を超えると、可塑剤がブリードアウトして得られる中間膜や合わせガラスの光学歪みが大きくなったり、透明性やガラスと中間膜との接着性等が損なわれたりすることがある。より好ましくは30〜50重量部である。
【0033】
本発明の合わせガラス用中間膜は、熱線遮蔽粒子を含有することが好ましい。
上記熱線遮蔽粒子としては特に限定されないが、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)微粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)微粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)微粒子、珪素ドープ酸化亜鉛微粒子、無水アンチモン酸亜鉛及び6ホウ化ランタン微粒子からなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
これらの熱線遮蔽粒子は優れた赤外線(熱線)遮蔽機能を有するので、得られる合わせガラス用中間膜及び合わせガラスは優れた遮熱性を発現する。更に、熱線遮蔽粒子は、一定量以上を配合することにより、本発明の合わせガラス用中間膜の耐湿性を向上させる効果も有する。
【0034】
上記熱線遮蔽粒子の平均粒子径は100nm以下であることが好ましい。100nmを超えると、熱線遮蔽粒子による可視光線の散乱が顕著になり、得られる合わせガラス用中間膜の透明性が損なわれることがある。その結果、合わせガラスとしたときにヘイズが悪化して、例えば自動車のフロントガラスで要求されるような高度な透明性を満足することができなくなる。より好ましくは10〜80nmである。
【0035】
上記熱線遮蔽粒子は、合わせガラス用中間膜中に均一に微分散されていることが好ましい。均一に微分散させることにより、合わせガラスとしたときに、低ヘイズで透明性に優れるとともに、遮熱性は全体にわたって高いものとなり、更に、ガラスと中間膜との接着力が調節可能であることにより、耐貫通性も優れたものとなる。
即ち、本発明の合わせガラス用中間膜においては、上記熱線遮蔽粒子は、粒子径100nm以上の粒子が1個/μm以下に分散していることが好ましい。即ち、透過型電子顕微鏡で本発明の合わせガラス用中間膜を撮影、観察したときに、粒子径100nm以上の上記熱線遮蔽粒子が観察されないか、又は、観察された場合には1μmの枠の中心に粒子径100nm以上の熱線遮蔽粒子を置くと、かかる1μmの枠内に粒子径100nm以上の熱線遮蔽粒子が他に観察されない状態となるよう分散している。これにより、合わせガラスにしたときに、低ヘイズで透明性に優れ、全体に渡って高い遮熱性が得られる。なお、透過型電子顕微鏡による観察は、日立製作所社製H−7100FA型透過型電子顕微鏡等を用いて、加速電圧100kVで撮影することにより行うことができる。
【0036】
上記熱線遮蔽粒子の配合量としては、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して好ましい下限が0.005重量部、好ましい上限が3重量部である。0.005重量部未満であると、赤外線遮蔽効果が充分に発揮されず得られる合わせガラス用中間膜や合わせガラスの遮熱性が充分に向上しないことがあり、3重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜や合わせガラスの可視光線透過性が低下したり、ヘイズが大きくなったりすることがある。
【0037】
本発明の合わせガラス用中間膜は、マロン酸エステル系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ヒンダードアミン系化合物等の紫外線吸収剤;有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、変成シリコーンオイル等の接着力調整剤;酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0038】
本発明の合わせガラス用中間膜を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂、耐湿性向上剤、熱線遮蔽粒子、キレート剤、少なくとも1つのカルボキシル基をもつ化合物、及び、必要に応じて添加する各種の添加剤を、押出機、プラストグラフ、ニーダー、バンバリーミキサー、カレンダーロール等を用いて混練し、これを押し出し法、カレンダー法、プレス法等の通常の製膜法によりシート状に製膜する方法等が挙げられる。
【0039】
シリカ微粒子、酸化アルミニウム微粒子、及び、酸化ジルコニウム微粒子からなる群より選択される少なくとも1種の無機微粒子を含有する合わせガラス用中間膜であって、前記無機微粒子は、分散径が500nm以下である合わせガラス用中間膜もまた、本発明の1つである(以下、第2の本発明ともいう)。
【0040】
本発明者らは、鋭意検討の結果、無機微粒子が一定の粒子径の範囲で微分散した合わせガラス用中間膜は、吸湿による白化現象を起こしにくいということを見出し、本発明を完成させるに至った。
これは、合わせガラス用中間膜の製造過程で含有されるナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンに比べて、水との親和性が高い上記無機微粒子を合わせガラス用中間膜に含有させることにより、合わせガラス用中間膜中の水分子は、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンではなく上記無機微粒子を核として選択的に凝集すること、上記無機微粒子の周りに水が凝集したとしても上記無機微粒子がナノオーダーの粒子径で分散している場合には、白化現象の原因となる程にまで水分子の凝集径が成長しないことによると考えられる。
【0041】
上記無機微粒子の分散径の上限は500nmである。500nmを超えると、得られる合わせガラス用中間膜は、無機微粒子の周りに水分子が凝集した際に凝集体が大きくなり過ぎるため、合わせガラスのヘイズが高くなり、耐湿の効果が得られない。好ましい上限は300nmである。
なお、本明細書において、無機微粒子の分散径とは、合わせガラス用中間膜中に分散している無機微粒子の長径を意味し、無機微粒子が一次粒子の状態で分散している場合には一次粒子の長径を、無機微粒子が凝集した二次粒子の状態で分散している場合には二次粒子の長径を意味する。
【0042】
上記無機微粒子は、本発明の合わせガラス用中間膜中での分散性を向上させるために、表面が有機物により疎水化処理されていることが好ましい。
上記有機物としては特に限定されないが、アルコール類であることが好ましい。
上記アルコール類としては特に限定されないが、メタノール及び/又はブタノールであることが好ましい。
【0043】
上記無機微粒子の含有量としては特に限定されないが、本発明の合わせガラス用中間膜100重量部に対して好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は50重量部である。0.01重量部未満であると、水分子と凝集可能な無機微粒子の数が少なく、充分に吸湿による白化を抑制できないことがあり、50重量部を超えると、得られる合わせガラス用中間膜のヘイズ値が悪化してしまうことがある。より好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0044】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記構成材料に加え、上述したような耐湿性向上剤、熱線遮蔽粒子や、従来公知の添加剤等を含有していてもよい。
【0045】
第2の本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法としては特に限定されないが、例えば、いったん上記無機微粒子を液状可塑剤中に分散させた可塑剤透明溶液を調製し、必要に応じて配合する添加剤を加えたうえで、上記ポリビニルアセタール樹脂に添加して混練し、成形する方法が好適である。
【0046】
上記液状可塑剤としては特に限定されず、合わせガラス用中間膜用の可塑剤として一般に用いられている液状可塑剤を用いることができ、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機系可塑剤;有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸性可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
上記一塩基性有機酸エステル系可塑剤としては特に限定されず、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノリル酸)又はデシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られるグリコール系エステルが挙げられる。なかでも、トリエチレングリコール−ジカプロン酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキシル酸エステル等のトリエチレングリコールの一塩基性有機酸エステルが好適に用いられる。具体的には、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートであることが好ましい。
【0048】
上記多塩基性有機酸エステル系可塑剤としては特に限定されず、例えば、アジピン酸、セバシン酸又はアゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖状又は分岐状アルコールとのエステル等が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適に用いられる。
上記有機リン酸系可塑剤としては特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0049】
上記無機微粒子を上記液状可塑剤に分散させる方法としては特に限定されないが、ビーズミルを用いる方法が好ましい。無機微粒子を分散剤を使用して一次粒子の状態に近い状態まで分散させ、その後カルボン酸等の分散安定剤を添加し、更に攪拌させることで長期にわたって安定した分散状態の維持される可塑剤透明溶液が得られる。また、液状可塑剤は極性を調整するために、他の有機溶媒を含有していてもよい。なお、上記無機微粒子は吸湿性が高く、多くの水分を有しているため、予め100℃程度で乾燥させておくことが好ましい。
【0050】
上記無機微粒子は、上記可塑剤透明溶液中にD25とD75とで表した粒度分布指標D25/D75が2.0以下で分散していることが好ましい。
25とD75とで表した粒度分布指標とは、JIS A 1204に準拠する値である。
25/D75が2.0を超えると、吸湿による白化が発生しやすくなる。
このような可塑剤透明溶液もまた、本発明の1つである。
【0051】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記構成からなることにより、極めて耐湿性に優れ、吸湿によりヘイズ値が上昇したりすることがない。特に、本発明の合わせガラス用中間膜が熱線遮蔽粒子を含有する際には、遮熱性能にも優れることとなる。
本発明の合わせガラス用中間膜を用いてなる合わせガラスもまた、本発明の1つである。
【0052】
本発明の合わせガラスに使用するガラスとしては特に限定されず一般に使用されている透明板ガラスを使用することができ、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス等の各種無機ガラス:ポリカーボネート板:ポリメチルメタクリレート板等の有機ガラス等が挙げられる。これらのガラスは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
なかでも、熱線吸収ガラスを用いることが好ましい。
【0053】
上記熱線吸収ガラスとしては特に限定されないが、なかでもグリーンガラスが好適である。また、上記熱線吸収ガラスのなかでも、可視光線透過率75%以上、波長領域900〜1300nmにおいて透過率が65%以下である熱線吸収ガラスを用いれば、例えばITO微粒子の赤外線カット性が1300nmより長波長側で大きく、900〜1300nmの領域では比較的小さいことから、同じ可視光線透過率に対しても日射透過率を低くすることができ、日射カット率を向上させることができる。
上記熱線吸収ガラスは、合わせガラス用中間膜を挟み込む1対のガラスのうち、両側に用いてもよいし、片側のみに用いてもよい。
また、ガラスの代わりにポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等の透明性のプラスチックを用いてもよい。
上記ガラス等の厚みとしては、用途によって適宜選択されればよく、特に限定されるものではない。
本発明の合わせガラスは、本発明の合わせガラス用中間膜を使用して、従来公知の方法により製造することができる。
【0054】
本発明の合わせガラスの用途としては特に限定されず、例えば、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラス;航空機や電車等の乗り物のガラス部位、建築用ガラス等が挙げられる。なかでも、自動車のサイドガラス等のように、合わせガラスの側面が露出しているような場合に特に好適である。
【0055】
本発明の合わせガラスを、側面が露出しているような用途に用いる場合、該露出した側面に面した部分にのみ本発明の合わせガラス用中間膜が用いられていても充分な効果が得られる。
図1及び図2にこのような態様の合わせガラスを示す模式図を示した。図1及び図2において(a)は、合わせガラスの正面図であり、(b)は、一点破線部分において切断した断面図である。
図1に示した合わせガラスでは、露出した側面に面した部分全体に本発明の合わせガラス用中間膜が、その他の部分には従来の合わせガラス用中間膜が用いられている。
図2に示した合わせガラスでは、ガラスの全体に用いられた従来の合わせガラス用中間膜の露出した側面に面した部分に切り割り状に本発明の合わせガラス用中間膜が挿入された構造である。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、吸湿によるヘイズ値の上昇のない、耐湿性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の合わせガラスの一実施態様を示す模式図である。
【図2】本発明の合わせガラスの一実施態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
(1)ポリビニルブチラールの合成
純水2890重量部に、平均重合度1700、鹸化度99.2モル%のポリビニルアルコール275重量部を加えて加熱溶解した。この反応系を15℃に温度調節し、35重量%の塩酸201重量部とn−ブチルアルデヒド157重量部を加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を60℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn−ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化ナトリウム水溶液で中和し、更に、過剰の水で2時間水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂の平均ブチラール化度は68.5モル%であった。
【0060】
(2)合わせガラス用中間膜の製造
得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部に対し、耐湿性向上剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(溶解性パラメータ:18.7(cal/cm1/2)を1.0重量部、可塑剤としてトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(3GO)38.0重量部、及び、接着力調整剤としてMg濃度が0.006重量部となるように2−エチル酪酸マグネシウムを添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、押出機を用いて成型し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。
【0061】
(3)合わせガラスの製造
得られた合わせガラス用中間膜を、その両端から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)で挟み込み、これをゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブンに移し、更に90℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備圧着された合わせガラスをオートクレーブ中で135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。
【0062】
(実施例2)
耐湿性向上剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(溶解性パラメータ:16.1(cal/cm1/2)を用いた以外は実施例1と同様の方法により合わせガラス用中間膜を作製し、得られた合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを得た。
【0063】
(実施例3)
実施例1で得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部に対し、耐湿性向上剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(溶解性パラメータ:18.7(cal/cm1/2)を1.0重量部、アセチルアセトンを1.0重量部、可塑剤としてトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(3GO)38.0重量部、及び、接着力調整剤としてMg濃度が0.006重量部となるように2−エチル酪酸マグネシウムを添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、押出機を用いて成型し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。
得られた合わせガラス用中間膜を用いた以外は実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。
【0064】
(実施例4)
実施例1で得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部に対し、耐湿性向上剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(溶解性パラメータ:18.7(cal/cm1/2)を1.0重量部、2−エチルヘキサン酸を1.0重量部、可塑剤としてトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(3GO)38.0重量部、及び、接着力調整剤としてMg濃度が0.006重量部となるように2−エチル酪酸マグネシウムを添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、押出機を用いて成型し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。
得られた合わせガラス用中間膜を用いた以外は実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。
【0065】
(実施例5)
実施例1で得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部に対し、耐湿性向上剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(溶解性パラメータ:18.7(cal/cm1/2)を1.0重量部、アセチルアセトンを1.0重量部、2−エチルヘキサン酸を1.0重量部、可塑剤としてトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(3GO)38.0重量部、及び、接着力調整剤としてMg濃度が0.006重量部となるように2−エチル酪酸マグネシウムを添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、押出機を用いて成型し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。
得られた合わせガラス用中間膜を用いた以外は実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。
【0066】
(比較例1)
実施例1で得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部に対し、可塑剤としてトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(3GO)38.0重量部、及び、接着力調整剤としてMg濃度が0.006重量部となるように2−エチル酪酸マグネシウムを添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、押出機を用いて成型し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。
得られた合わせガラス用中間膜を用いた以外は実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。
【0067】
(評価)
実施例1〜5及び比較例1で得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
【0068】
(1)耐湿試験
遮熱合わせガラスを80℃、相対湿度95%環境下にて500hr放置した後、合わせガラスの端部からの白化距離を測定した。
【0069】
【表1】

【0070】
(実施例6)
(1)ポリビニルブチラールの合成
純水2890重量部に、平均重合度1700、鹸化度99.2モル%のポリビニルアルコール275重量部を加えて加熱溶解した。この反応系を15℃に温度調節し、35重量%の塩酸201重量部とn−ブチルアルデヒド157重量部を加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を60℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn−ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化ナトリウム水溶液で中和し、更に、過剰の水で2時間水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂の平均ブチラール化度は68.5モル%であった。
【0071】
(2)熱線吸収剤分散可塑剤の調製
トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(3GO)40重量部に対しITO微粒子を0.5重量部仕込み、分散剤及び耐湿性向上剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(溶解性パラメータ:18.7(cal/cm1/2)1.0重量部を添加して、ビ−ズミルにて可塑剤中にITO微粒子を分散させて熱線吸収剤分散可塑剤を作製した。
【0072】
(3)合わせガラス用中間膜の製造
得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部に対し、熱線吸収剤分散可塑剤を40重量部、更に全系に対してMg含有量が60ppmとなるように2−エチル酪酸マグネシウムを添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、押出機を用いて成型し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。
膜中のITO微粒子の平均粒径は56nmであり、粒径が100nm以上の粒子は観察されなかった。
【0073】
(4)合わせガラスの製造
得られた合わせガラス用中間膜を、その両端から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)で挟み込み、これをゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブンに移し、更に90℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備圧着された合わせガラスをオートクレーブ中で135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。
【0074】
(実施例7)
熱線吸収剤分散可塑剤の調製において、分散剤及び耐湿性向上剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル(溶解性パラメータ:16.1(cal/cm1/2)を用いた以外は実施例6と同様の方法により合わせガラス用中間膜を作製し、得られた合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを得た。
【0075】
(実施例8)
熱線吸収剤分散可塑剤の調製において、更に、アセチルアセトン0.5重量部を加えた以外は実施例6と同様の方法により合わせガラス用中間膜を作製し、得られた合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを得た。
【0076】
(実施例9)
熱線吸収剤分散可塑剤の調製において、更に、2−エチルヘキサン酸1.0重量部を加えた以外は実施例6と同様の方法により合わせガラス用中間膜を作製し、得られた合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを得た。
【0077】
(実施例10)
熱線吸収剤分散可塑剤の調製において、更に、アセチルアセトン0.5重量部及び2−エチルヘキサン酸1.0重量部を加えた以外は実施例6と同様の方法により合わせガラス用中間膜を作製し、得られた合わせガラス用中間膜を用いて合わせガラスを得た。
【0078】
(評価)
実施例6〜10で得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて以下の方法により評価を行った。
結果を表2に示した。
【0079】
(1)可視光線透過率、日射透過率、及び、ヘイズ値の測定
自記分光光度計(日立製作所社製「U4000」)を使用して、得られた合わせガラスの300〜2500nmの透過率を測定し、JIS R 3106に従って、380〜780nmの可視光線透過率及び300〜2500nmの日射透過率を求めた。また、JIS K 6714に準拠してヘイズ値を測定した。
【0080】
(2)耐湿試験
合わせガラスを80℃、相対湿度95%環境下にて500hr放置した後、合わせガラスの端部からの白化距離を測定した。
【0081】
【表2】

【0082】
(実施例11)
(1)ポリビニルブチラール樹脂の合成
純水2890重量部に、平均重合度1700、鹸化度99.2モル%のポリビニルアルコール275重量部を加えて加熱溶解した。この反応系を15℃に温度調節し、35重量%の塩酸201重量部とn−ブチルアルデヒド157重量部を加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を60℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn−ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化ナトリウム水溶液で中和し、更に、過剰の水で2時間水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂の平均ブチラール化度は68.5モル%であった。
【0083】
(2)可塑剤透明溶液の調製
トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(3GO)40重量部に対して、シリカ微粒子(日本触媒社製、シーホスターKE−P10)を1.0重量部仕込み、坂本薬品工業社製SYグリスターCR−ED(0.2重量部)を分散剤とし、ビーズミルを用いて分散させた。
【0084】
(3)合わせガラス用中間膜の製造
得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部に対し、可塑剤透明溶液を40重量部、更に、全系に対してMg含有量が60ppmとなるように2−エチル酪酸マグネシウムを添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、押出機を用いて成形し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。
膜中のシリカ微粒子の平均粒径は、112nmであった。
【0085】
(4)合わせガラスの製造
得られた合わせガラス用中間膜を、その両端から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)で挟み込み、これをゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブンに移し、更に90℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備圧着された合わせガラスをオートクレーブ中で135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。
【0086】
(実施例12)
(1)可塑剤透明溶液の調製
トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(3GO)40重量部に対して、シリカ微粒子(日本触媒社製、シーホスターKE−P10)を1.0重量部仕込み、坂本薬品工業社製SYグリスターCR−ED(0.2重量部)を分散剤とし、ビーズミルを用いて分散させた。その後、更に、2−エチルヘキサン酸0.1重量部を加え、充分に攪拌した。
【0087】
(2)合わせガラス用中間膜及び合わせガラスの製造
実施例11と同様にして得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部に対し、可塑剤透明溶液を40重量部、更に、全系に対してMg含有量が60ppmとなるように2−エチル酪酸マグネシウムを添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、押出機を用いて成形し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。
膜中のシリカ微粒子の平均粒径は107nmであった。
次いで、実施例11と同様にして合わせガラスを製造した。
【0088】
(評価)
実施例11〜12で得られた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて以下の方法により評価を行った。
結果を表3に示した。
【0089】
(1)可視光線透過率、及び、ヘイズ値の測定
自記分光光度計(日立製作所社製「U4000」)を使用して、得られた合わせガラスの300〜2500nmの透過率を測定し、JIS R 3106に従って、380〜780nmの可視光線透過率、また、JIS K 6714に準拠してヘイズ値を測定した。及び300〜2500nmの日射透過率を求めた。
【0090】
(2)耐湿試験
合わせガラスを80℃、相対湿度95%環境下にて500hr放置した後、合わせガラスの端部からの白化距離を測定した。
【0091】
【表3】

【0092】
(実施例13)
(1)ポリビニルブチラール樹脂の合成
純水2890重量部に、平均重合度1700、鹸化度99.2モル%のポリビニルアルコール275重量部を加えて加熱溶解した。この反応系を15℃に温度調節し、35重量%の塩酸201重量部とn−ブチルアルデヒド157重量部を加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を60℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn−ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化ナトリウム水溶液で中和し、更に、過剰の水で2時間水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂の平均ブチラール化度は68.5モル%であった。
【0093】
(2)可塑剤透明溶液の調製
液状可塑剤であるトリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート38.5重量部に対して、メタノール及びブタノールでシリカ微粒子(日本触媒社製、シーホスターKE−P10)0.5重量部を秤量し、攪拌機(スリーワンモーターBL1200)を用いて10分間混合することにより、シリカ微粒子を含有した可塑剤透明溶液を製造した。
【0094】
(3)合わせガラス用中間膜及び合わせガラスの製造
得られた可塑剤透明溶液と得られたポリビニルブチラール樹脂とを混合し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、プレス成形機を用いて150℃で30分間プレス成形し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。
更に、得られた合わせガラス用中間膜をその両端から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)で挟み込み、これをゴムバック内に入れ、2.6kPaの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブンに移し、更に90℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備圧着された合わせガラスをオートクレーブ中で135℃、圧力1.2MPaの条件で20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。
【0095】
(実施例14)
シリカ微粒子(アドマテックス社製、SO−E1)0.5重量部を用い、更に、分散剤としてポリグリセリンエステル分散剤(坂本薬品工業社製、SYグリスターCR−ED)を0.06重量部添加した以外は、実施例13と同様にして可塑剤透明溶液を製造した。
次いで、実施例13と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを製造した。
【0096】
(実施例15)
シリカ微粒子の代わりに酸化アルミニウム微粒子(アドマテックス社製、AO−802)を用いた以外は、実施例14と同様にして可塑剤透明溶液を製造した。
次いで、実施例13と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを製造した。
【0097】
(比較例2)
無機微粒子を含有させない参考溶液として、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート液状可塑剤を調製した。
次いで、実施例13と同様にして合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを製造した。
【0098】
(評価)
実施例13〜15及び比較例2で得られた溶液、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスについて以下の方法により評価を行った。
結果を表4に示した。
【0099】
(1)溶液の粒度分布指標測定
溶液について、JIS A 1204に準拠した方法に従い、D25とD75とで表した粒度分布指標D25/D75の値を求めた。
【0100】
(2)溶液の可視光線透過率測定
溶液について、自記分光光度計(日立製作所社製「U4000」)を使用して、得られた溶液の300〜2500nmの透過率を測定し、JIS Z 8722及びJIS R 3106に従って、380〜780nmの可視光線透過率を測定した。
【0101】
(3)溶液のヘイズ値測定
溶液について、自記分光光度計(日立製作所社製「U4000」)を使用してJIS K 6714に準拠してヘイズ値を測定した。
【0102】
(4)合わせガラス用中間膜中における無機微粒子の粒径測定
以下の透過型電子顕微鏡(TEM)及び測定条件により、合わせガラス用中間膜中の無機微粒子の分散状態を撮影、観察した。なお、撮影は3μm×4μmの範囲を2万倍で撮影し、写真の焼き付けで3倍に引き伸ばした。
無機微粒子の粒子径は、上記撮影により得られた写真中の微粒子の最も長い径とした。また、上記撮影範囲3μm×4μm中の全微粒子の粒子径を測定し、体積換算平均により平均粒子径を求めた。
観察装置: 透過型電子顕微鏡 日立製作所社製 H−7100FA型
加速電圧: 100kV
切片作製装置: ウルトラミクロトーム ライカ社製 EM−ULTRACUT・S
: FC−S型 凍結切削システム ライカ社製 REICHERT−NISSEI−FCS
ナイフ: DIATOME社製 DIATOME ULTRA CRYO DRY
【0103】
(5)合わせガラスの可視光線透過率の測定
自記分光光度計(日立製作所社製「U4000」)を使用して、得られた合わせガラスの300〜2500nmの透過率を測定し、JIS R 3106に従って、380〜780nmの可視光線透過率を測定した。
【0104】
(6)合わせガラスの耐湿試験
JIS R 3212(1998)に準拠して、合わせガラスを相対湿度95%の雰囲気に1ヶ月間放置し、その後、白化している部分の距離(白化距離)を合わせガラスの周辺から測定した。
【0105】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、吸湿によるヘイズ値の上昇のない、耐湿性に優れた合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを提供することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 本発明の合わせガラス用中間膜
2 従来の合わせガラス用中間膜
3 ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂と耐湿性向上剤とを含有することを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】
耐湿性向上剤は、両親媒性物質及び/又は界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
耐湿性向上剤は、溶解性パラメータが10.0〜20.0(cal/cm1/2であることを特徴とする請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
耐湿性向上剤は、25℃における比誘電率が20〜35であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
耐湿性向上剤は、リン酸エステル系化合物であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
キレート剤及び/又は少なくとも1つのカルボキシル基をもつ化合物を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
キレート剤は、アセチルアセトンであることを特徴とする請求項6記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
少なくとも1つのカルボキシル基をもつ化合物は、2−エチルヘキサン酸であることを特徴とする請求項6記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
熱線遮蔽粒子を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
熱線遮蔽粒子は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)微粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)微粒子、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)微粒子、珪素ドープ酸化亜鉛微粒子、無水アンチモン酸亜鉛及び6ホウ化ランタン微粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項9記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
シリカ微粒子、酸化アルミニウム微粒子、及び、酸化ジルコニウム微粒子からなる群より選択される少なくとも1種の無機微粒子を含有する合わせガラス用中間膜であって、前記無機微粒子は、分散径が500nm以下であることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の合わせガラス用中間膜を用いてなることを特徴とする合わせガラス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−254924(P2012−254924A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158890(P2012−158890)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【分割の表示】特願2006−528948(P2006−528948)の分割
【原出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】