説明

合成樹脂成形品の製造方法

【課題】文字や模様を凸形に形成し、凸部の天面のみ光を透過させバックライティングによっても美麗な外観を呈する合成樹脂成形品を容易に製造できる方法を提供すること。
【解決手段】凹凸のある金型表面に隣接して合成樹脂シートを装填して、金型内に溶融樹脂を射出して、該合成樹脂シートを溶着接合してなる合成樹脂成形品の製造方法において、少なくとも1面にインク膜層12が形成された合成樹脂シート10のインク膜層12が形成された面を金型60に接するように合成樹脂シート10を金型60に装填する工程と、合成樹脂シート10が装填された金型60に溶融樹脂を射出し、合成樹脂成形品32を成形する工程と、成形された合成樹脂成形品32の凸部22の天面34のインク膜層12を切削する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂シートを装填した金型に溶融樹脂を射出して成形する合成樹脂成形品の製造方法に関し、特に、自動車の計器盤や家電製品のパネル等において計器盤やパネルの裏側から光を当て、立体文字や模様を局部的に明るく調光することによりコントラストをつけ、より見やすく、あるいは、高級感を演出可能な合成樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の計器盤や家電製品のパネル等では、計器盤やパネルの裏側から光を当て、前面から文字や模様を明るく見えやすくすること(以降、「バックライティング」という)が多く行われている。バックライティングの文字や模様は、合成樹脂成形品に印刷し、あるいは、文字や模様を印刷した合成樹脂シートを貼り付けることによって製作されている。この内、文字や模様を印刷した合成樹脂シートを合成樹脂成形品に貼り付けて製作することが、製作コスト等の観点からは優位であった。そこで、文字や模様を印刷した合成樹脂シートを金型に装填し、溶融樹脂を射出して一体に成形することにより、効率よく、美麗なバックライティング可能な合成樹脂成形品を製造することが行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−178362号公報(第4、5ページ、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
計器盤やパネルでは、より見やすくするために、文字や模様を凸に突出させることが行われている。すなわち、昼間等の周囲が明るいときには、凸であることにより文字や模様を見えやすく、夜間等の周囲が暗いときにはバックライティングにより文字や模様を見えやすくする。このような計器盤やパネルの場合、文字や模様を印刷した合成樹脂シートを凹凸のある合成樹脂成形品に貼り付けようとすると、合成樹脂成形品の凹凸と合成樹脂シートに印刷した文字や模様とがぴったりと一致せず、僅かにずれてしまうことが多い。よって、凸に突出した部分(以降、「凸部」という)の天面からだけ光を放射することは困難であった。また、僅かなずれは、バックライティングしたときに計器盤やパネルを透過する光の像ににじみを生じ、その見栄えを大きく劣化させる。そのため、遮光性のインクを塗布した合成樹脂シートの凸部に該当する部分に孔を開け、合成樹脂シートから前面に透明な凸部を貫通させることが行われていた。しかし、凸部を合成樹脂シートから前面に貫通させて、裏側から光を当てると、凸部以外の部分の光は遮光されるものの凸部の側面からも光が漏れるため、文字や模様がぼやけてしまうという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、文字や模様を凸に突出し、バックライティングによっても美麗な外観を呈する合成樹脂成形品を容易に製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係る合成樹脂成形品の製造方法は、たとえば図1に示すように、凹凸のある金型60a表面に隣接して合成樹脂シート10を装填して、金型60内に溶融樹脂20を射出して、合成樹脂シート10を溶着接合してなる合成樹脂成形品30の製造方法において、少なくとも1面にインク膜層12が形成された合成樹脂シート10のインク膜層12が形成された面を金型60aに接するように合成樹脂シート10を金型60aに装填する工程と、合成樹脂シート10が装填された金型60に溶融樹脂20を射出し、合成樹脂成形品32を成形する工程と、成形された合成樹脂成形品32の凸部22の天面34のインク膜層12を切削する工程とを備える。
【0006】
このように構成すると、合成樹脂成形品の凸部の天面のインク膜層を切削するので、凸部の天面だけにインクが塗布されていない合成樹脂成形品を製造することが出来る。また、合成樹脂成形品の凸部の天面のインク膜層を切削することにより凸部の天面だけにインクが塗布されていない合成樹脂成形品を製造するので、該合成樹脂成形品の容易な製造方法となる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明に係る合成樹脂成形品の製造方法では、請求項1に記載の合成樹脂成形品の製造方法において、たとえば図1に示すように、切削する工程が、合成樹脂シート10の厚さの一部を切削する。
このように構成すると、凸部の天面では、インク膜層が削除されるが、合成樹脂シートの一部が残るので、射出された樹脂と合成樹脂シート間での層間剥離がない。
【0008】
また、請求項3に記載の発明に係る合成樹脂成形品の製造方法では、請求項1または請求項2に記載の合成樹脂成形品の製造方法において、射出された樹脂が透明である。
このように構成すると、樹脂が透明であるので、バックライティングに適した合成樹脂成形品を製造することが出来る。なお「透明」とは、光を透過すればよく、完全な透明だけではなく、色の付いたあるいは濁りのある、いわゆる半透明をも含む。
【0009】
また、請求項4に記載の発明に係る合成樹脂成形品の製造方法では、請求項3に記載の合成樹脂成形品の製造方法において、凸部の立ち壁部分に印刷または箔転写による金属調の加飾が施される。
このように構成すると、凸部としてたとえば樹脂圧により立体的に賦形されたシート文字盤および目盛等の立ち壁部分に金属調(たとえば箔転写、鏡面性の高い高輝度シルバーインク等による)加飾を行うことで立体文字若しくは目盛等の側面のみ金属調の反射が可能となり精緻で高級感のある立体文字板の成形品を得ることができる。
【0010】
また、請求項5に記載の発明に係る合成樹脂成形品の製造方法では、請求項3に記載の合成樹脂成形品の製造方法において、たとえば図3に示すように、合成樹脂成形品50の合成樹脂シート10が溶着接合された面と反対側の面24に、ダイヤカット模様、ヘアーライン模様を含む模様28を成形金型内転写にて形成する。
このように構成すると、樹脂を透過する光が、模様により散乱するので、より美麗にバックライティングすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、合成樹脂成形品の製造方法は、凹凸のある金型表面に隣接して合成樹脂シートを装填して、金型内に溶融樹脂を射出して、該合成樹脂シートを溶着接合してなる合成樹脂成形品の製造方法において、少なくとも1面にインク膜層が形成された合成樹脂シートのインク膜層が形成された面を金型に接するように合成樹脂シートを金型に装填する工程と、合成樹脂シートが装填された金型に溶融樹脂を射出し、合成樹脂成形品を成形する工程と、成形された合成樹脂成形品の凸部の天面のインク膜層を切削する工程とを備えるので、容易に凸部の天面だけにインクが塗布されていない、若しくは天面のみ配色が変化する合成樹脂成形品を製造することが出来る。よって、文字や模様を凸に突出しバックライティングによっても美麗な外観を呈する合成樹脂成形品を容易に製造できる方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一又は相当する要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
図1を参照して、本発明に係る合成樹脂成形品の製造方法について説明する。図1は、本発明に係る合成樹脂成形品の製造方法を説明する部分断面図で、(a)は合成樹脂シート10にインク膜層12を形成した様子を、(b)はインク膜層12が形成された面を金型60aに接するように合成樹脂シート10を装填した様子を、(c)は金型60に溶融樹脂20を射出した様子を、(d)は金型60から取り出した合成樹脂成形品32を、(e)は凸部22のインク膜層12を切削した合成樹脂成形品30を示す。ここで、合成樹脂シート10を装填するときに接する側の固定金型を金型60aと、金型60aと組み合わされる可動金型を金型60bとし、その両者を合わせて金型60とする。また、図1(b)および図1(c)では、固定金型60aを上方に可動金型60bを下方に示すが、固定金型60aと可動金型60bの配置はこれに限られない。
【0014】
なお図1では、合成樹脂成形品30の一部分の成形の様子を示しており、すなわち、1つの凸部22の周囲しか示していないが、合成樹脂成形品30は平板に任意の文字あるいは模様が凸部22として成形された任意の形状を有することができる。ただし、凸部22の突出する高さは一般的に均一であり、特殊な例として、領域により高さを変える(徐変する)ことも出来る。
【0015】
先ず図1(a)に示すように、合成樹脂シート10の少なくとも1つの面にインク層膜12を形成する。合成樹脂シート10は、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PC/PETブレンド、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等のシートが好ましいが、これらには限定されない。ただし、バックライティング用には透明な合成樹脂シートを用いる。
【0016】
合成樹脂シート10の厚さは、0.2mm〜2.0mmの範囲であることが好ましい。合成樹脂シート10の厚さが0.2mmより薄いと、金型60内に装填するときに腰が弱く、金型60の構造によっては金型60からずれてしまうことがある。また、溶融樹脂20の温度及び圧力によっては部分的に溶融若しくは破断することがあり、その形状を保てなくなることもある。また、切削代を確保するためにも成形後の形状とシート厚の選定は重要である。合成樹脂シート10の厚さが2.0mmより厚いと、合成樹脂シート12が金型60aの凹凸に沿えず、所望の成形品が得られないことがある。
【0017】
インク層膜12は、バックライティング用には4μm以上の厚さを有することが好ましい。ここで、インク層膜12の厚さは乾燥後の厚さである。インク層膜12が4μmより薄いとピンホールが発生しやすい。また、さらに好ましくは、二層の重ね印刷により8μm以上の厚さとする。二層の重ね印刷とすることにより、インク層膜12の面積が広くなってもピンホールの発現頻度を低く抑えることが出来る。インク層膜12の形成は、周知の印刷法を用いることが出来るが、4μm以上のインク層膜12を形成するにはスクリーン印刷が好ましい。
【0018】
次に、図1(b)に示すように、インク層膜12を金型60aに接するようにして、合成樹脂シート10を金型60aに装填する。金型60aには、文字あるいは模様に応じた凹凸が形成されている。合成樹脂成形品30に形成する文字あるいは模様を凸部22とするように、金型60aの対応する部分は凹部とされる。合成樹脂シート10は、金型60aの凹凸に沿って装填されるのが好ましい。なお、合成樹脂シート10を平らに装填し、後述の溶融樹脂の射出により、合成樹脂シート10を金型60aの凹凸に沿うように変形させてもよい。
【0019】
図1(c)に示すように、合成樹脂シート10を装填した固定金型60aに可動金型60bを組み合わせて、金型60に所定形状のキャビティを形成する。その際、金型60内で合成樹脂シート10を固定するように、金型60に設けられたピン(不図示)で合成樹脂シート10を押さえあるいは合成樹脂シート10をピンが刺してもよい。
【0020】
金型60のキャビティに溶融樹脂20を射出する。射出する樹脂としては、ポリカーボネート、アクリル、ABS樹脂、ポリプロピレン(PP)など任意の樹脂でよいが、バックライティング用には透明な樹脂がよい。溶融樹脂20の射出後、溶融樹脂20を冷却固化する。溶融樹脂20が冷却固化することにより、インク層膜12が形成された合成樹脂シート10が溶着接合され一体となった合成樹脂成形品32が形成される。なお、射出および冷却固化は、周知の方法で行うことができる。
【0021】
図1(d)に金型60から取り出した合成樹脂成形品32を示す。合成樹脂成形品32には、文字あるいは模様に対応する部分に凸部22が形成される。凸部22も、天面34を含め、インク層膜12が形成された合成樹脂シート10で覆われている。
【0022】
そこで、凸部22の天面34を切削する。ここで、「切削する」とは、凸部22の天面34側を切り取り、あるいは、削り取ることを指し、その加工方法等を限定するものではない。切削加工は、研削盤、フライス盤など、周知の加工装置を用いて行う。切削加工では、少なくとも、インク層膜12を除去するまで、天面34を切削する。典型的には、図1(d)にc−c線で示す、合成樹脂シート10の厚さの一部を切削する。あるいは、合成樹脂シート10の厚さのすべてを切削してもよく、さらに、射出された合成樹脂20(この時点では、冷却固化しており、冷却固化されたものをも含む)の一部までを切削してもよい。
【0023】
凸部22の天面34を切削することで、図1(e)に示すように、凸部22のインク膜層12を切削した合成樹脂成形品30が製造される。本方法によれば、従来の合成樹脂成形品の製造方法の一つである、金型内に合成樹脂シートを装填して、溶融樹脂を射出し、合成樹脂シートを溶融接着して製造する方法に、凸部22の天面34を切削する工程を加えることで、合成樹脂成形品30が容易に製造できる。
【0024】
次に、図1(e)に示す、本発明に係る製造方法により製造された合成樹脂成形品30について説明する。合成樹脂成形品30は、合成樹脂シート10が貼られた側(図1(e)の上側)から視認するのに用い、たとえば自動車の計器盤のような略平らな板に文字や模様が記された製品である。凸部22が文字や模様の部分となる。すなわち、全体としてはインク膜層12の色に見えつつ、凸部22の天面14は、インク膜層12と異なった色に見える。凸となった部分の天面14が異なった色となることにより、文字や模様を明確に視認することが出来る。
【0025】
特に、射出された樹脂20が透明で、かつ、合成樹脂シート10が透明であると、バックライティング用に適した合成樹脂成形品30となる。この場合、インク膜層12を形成するインクに遮光性のインクを用いる。そして、合成樹脂シート10が接合された面と反対側の面24側、すなわち裏側から光を当てる。すると、インク膜層12が形成された部分は遮光され、インク膜層12が切削された天面14からだけ光が透過し、明るく視認される。すなわち、文字や模様の形状に形成された凸部22の天面14だけが光る。よって、文字や模様は、周囲が明るい場合には凸部22として見えやすく、暗い場合には天面14が光って見えやすい。
【0026】
特に、凸部22の天面34を切削することにより、インク膜層12の形成されていない天面14を得ることが出来るので、その縁は角が立ち、鮮明となる。すなわち、合成樹脂シート10を金型60内に装填し、溶融樹脂20を射出したままでは、たとえば図1(d)に示すように、天面34の縁は合成樹脂シート10を曲げた、多少丸みのある形状となる。縁に丸みがあると、その形状はぼやけて見える。それに対し、本製造方法で製造した合成樹脂成形品30では、天面14の縁の角が立っているので鮮明に見えるという利点がある。
【0027】
また、図1(e)に示すように、凸部22の天面34を切削する際に、インク膜層12をすべて切削しつつ、合成樹脂シート10の厚さのすべてを切削せず、凸部22の天面14にも合成樹脂シート10の厚さの一部を残すようにすると、合成樹脂シート10の合成樹脂20からの剥離が防止できて好ましい。さらに、天面14においても合成樹脂シート10で射出された合成樹脂20を保護できるので好ましい。
【0028】
次に、図2を参照して、合成樹脂成形品30の変形例としての合成樹脂成形品40について説明する。図2は、本発明に係る合成樹脂成形品の製造方法により製造された、光拡散粒子26を含む合成樹脂成形品40を説明する部分断面図である。合成樹脂成形品40は、合成樹脂成形品30と同様の方法で製造できるが、射出された樹脂20に光拡散粒子26が混入されている点で異なる。光拡散粒子26は、樹脂20を金型60内に射出する前に樹脂20に混入しても、射出と同時に樹脂20に混入してもよい。
【0029】
光拡散粒子26としては、典型的にはシリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、パールマイカ等、光吸収能の小さな材料で形成された粒子である。光拡散粒子26の平均粒径1〜100μmの範囲であるのが好ましい。射出された樹脂20に光拡散粒子26が混入されることにより、合成樹脂成形品40を透過する光が散乱され、均一な分布となる。よって、バックライティングにおいて輝度むらをなくしあるいは減少させ、美麗にバックライティングすることが出来る。また、光拡散粒子26の径を大きくすると、光拡散粒子26が輝いて見え、バックライティングがきらきらして見え、美観が向上する。
【0030】
次に、図3を参照して、合成樹脂成形品30の変形例としての合成樹脂成形品50について説明する。図3は、本発明に係る合成樹脂成形品の製造方法により製造された、ダイヤカット模様28が形成された合成樹脂成形品50を説明する部分断面図である。合成樹脂成形品50は、合成樹脂成形品30と同様の方法で製造できるが、合成樹脂シート10が溶着接合された面と反対側の面24にダイヤカット模様28を形成する点で異なる。
【0031】
ダイヤカット模様28は、図1(d)に示す合成樹脂成形品32を形成した後に、面24を加工して成形する。あるいは、可動金型60bにダイヤカット模様28に対応する模様を形成し、樹脂20を射出成形するときに形成してもよい。合成樹脂成形品32を形成した後に、面24を加工して成形すると、ダイヤカットの断面の角が立ったものを形成しやすい。可動金型60bにダイヤカット模様28に対応する模様を形成し、樹脂20を射出成形するときに形成すると、工程を増やすことなくダイヤカット模様28を形成できる。また、ダイヤカット模様28を、面24の溝としてだけでなく、突起としても形成でき、より複雑な光の散乱が得られる。
【0032】
面24にダイヤカット模様28を形成することにより、合成樹脂系製品50に入射する光が散乱され、均一な分布となる。よって、バックライティングにおいて輝度むらをなくしあるいは減少させ、美麗にバックライティングすることが出来る。また、ダイヤカット模様28を大きく形成すると、バックライティングにおいてダイヤカット模様28がきらきらして見え、美観が向上する。面24に形成する模様は、ダイヤカット模様には限定されず、ヘアーライン模様であっても、他の模様であってもよい。
【0033】
合成樹脂シート10の凸部22となる部分に予め印刷、箔転写あるいはマスク蒸着により金属調の加飾(不図示)を施してもよい。加飾は、鏡面性の高い高輝度シルバーインク等を用いて行う。天面34を切削する際に、当該部分の加飾も除去され、天面14には加飾が施されず、凸部22の立ち壁部分(側面)にだけ加飾されることになる。よって、立体文字や目盛等の側面のみ金属調の反射を生ずることとなり、精緻で高級感のある立体文字板の成形品を得ることができる。
【0034】
これまでの説明では、合成樹脂シート10の1面にインク膜層12が形成されるものとして説明したが、インク膜層12は、合成樹脂シート10の両面に形成されてもよい。その際、バックライティング用には、射出された合成樹脂20側に配置される、すなわち切削されないインク膜層(不図示)のインクは、光透過性のものを用いる。このように構成すると、バックライティングで視認される光は、切削されないインク膜層の色の付いた光となり、バックライティングの光の色を変更しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る合成樹脂成形品の製造方法を説明する部分断面図で、(a)は合成樹脂シートにインク膜層を形成した様子を、(b)はインク膜層が形成された面を金型に接するように合成樹脂シートを装填した様子を、(c)は金型に溶融樹脂を射出した様子を、(d)は金型から取り出した合成樹脂成形品を、(e)は凸部のインク膜層を切削した合成樹脂成形品を示す。
【図2】本発明に係る合成樹脂成形品の製造方法により製造された、光拡散粒子を含む合成樹脂成形品を説明する部分断面図である。
【図3】本発明に係る合成樹脂成形品の製造方法により製造された、ダイヤカット模様が形成された合成樹脂成形品を説明する部分断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 合成樹脂シート
12 インク膜層
14 天面
20 溶融樹脂
22 凸部
24 合成樹脂シートが溶着接合された面と反対側の面
26 光拡散粒子
28 ダイヤカット模様
30、32 合成樹脂成形品
34 天面
40、50 合成樹脂成形品
60(60a、60b) 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸のある金型表面に隣接して合成樹脂シートを装填して、金型内に溶融樹脂を射出して、該合成樹脂シートを溶着接合してなる合成樹脂成形品の製造方法において、
少なくとも1面にインク膜層が形成された合成樹脂シートの前記インク膜層が形成された面を前記金型に接するように前記合成樹脂シートを前記金型に装填する工程と;
前記合成樹脂シートが装填された金型に溶融樹脂を射出し、合成樹脂成形品を成形する工程と;
前記成形された合成樹脂成形品の凸部の天面の前記インク膜層を切削する工程とを備える;
合成樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記切削する工程が、前記合成樹脂シートの厚さの一部を切削する;
請求項1に記載の合成樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記射出された樹脂が透明である;
請求項1または請求項2に記載の合成樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記凸部の立ち壁部分に印刷または箔転写またはマスク蒸着による金属調の加飾が施される;
請求項3に記載の合成樹脂成形品の製造方法。
【請求項5】
前記合成樹脂成形品の前記合成樹脂シートが溶着接合された面と反対側の面に、ダイヤカット模様、ヘアーライン模様を含む模様を成形金型内転写にて形成する;
請求項3に記載の合成樹脂成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−125773(P2010−125773A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304772(P2008−304772)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(392010267)株式会社サカイヤ (24)
【Fターム(参考)】