説明

合成樹脂製スラスト滑り軸受

【課題】 低摩擦性を長期間にわたって維持し得ると共に、摺動時のスティックスリップ現象の発生を防止し得、スティックスリップ現象の発生に起因する異常摩擦音の発生を防止し得る合成樹脂製スラスト滑り軸受を提供する。
【解決手段】合成樹脂製スラスト滑り軸受1では、下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板部202の上面及び上部環状平板状部102の下面とこれら上面及び下面に夫々摺接するスラスト軸受片300の下面及び上面との摺動界面に、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が100cSt以上500000cSt以下であり、これに増ちょう剤を含有して混合ちょう度を200以上400以下としたシリコーングリースが介在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製スラスト滑り軸受、とくに四輪自動車におけるストラット型サスペンション(マクファーソン式)のスラスト滑り軸受として組込まれて好適な合成樹脂製スラスト滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】実公平4−52488号公報
【特許文献2】実公平2−1532号公報
【特許文献3】実公平2−6363号公報
【特許文献4】実公平8−2500号公報
【特許文献5】実公平4−47445号公報
【0003】
一般にストラット型サスペンションは、主として四輪自動車の前輪に用いられ、主軸と一体となった外筒の中に油圧式ショックアブソーバを内蔵したストラットアッセンブリにコイルバネを組み合わせたものである。上記サスペンションには、ストラットの軸線に対してコイルバネの軸線を積極的にオフセットさせ、ストラットに内蔵されたショックアブソーバのピストンロッドの摺動を円滑に行わせる構造と、ストラットの軸線に対してコイルバネの軸線を一致させて配置させる構造のものとがある。いずれの構造においても、ステアリング操作によりストラットアッセンブリがコイルバネと共に回転する際、当該回転を円滑に許容すべく車体の取付部材とコイルバネの上部バネ座シートとの間にスラスト軸受が配されている。
【0004】
このスラスト軸受には、ボール若しくはニードルを使用したころがり軸受又は合成樹脂製の滑り軸受が使用されている。しかしながら、ころがり軸受は、微小揺動及び振動荷重等によりボール若しくはニードルに疲労破壊を生ずる虞があり、円滑なステアリング操作を維持し難いという問題がある。滑り軸受は、ころがり軸受に比べて摩擦トルクが高く、ステアリング操作を重くするという問題がある、さらに、いずれの軸受においても、摺動面への塵埃等異物の侵入を防止すべく装着されたゴム弾性体からなるダストシールの摩擦力が高いことに起因するステアリング操作を重くするという問題、とくに合成樹脂製の滑り軸受においてはステアリング動作を一層重くするという問題がある。
【0005】
上記問題点を解決するべく本出願人は、合成樹脂製の上部ケースと合成樹脂製の下部ケースと上、下部ケース間に合成樹脂製のスラスト軸受片を配すると共に、上、下部ケースを弾性装着によって組み合わせ、上、下部ケース間に弾性装着部と内周面側及び外周面側にラビリンス作用による密封部を形成して当該密封部により軸受摺動面への塵埃等異物の侵入を防止したスラスト軸受を提案した(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5所載)。
【0006】
これを図で説明すると次のとおりである。図9において、合成樹脂製スラスト滑り軸受1は、合成樹脂製の上部ケース10と、合成樹脂製の下部ケース20と、上、下部ケース10、20間に配された合成樹脂製のスラスト軸受片30とを具備しており、上部ケース10は、中央部に円孔11を有する円環状平板状部12と、円環状平板状部12の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部13と、円筒係合垂下部13の端部内周面にフック状の係合部14とを備えており、下部ケース20は、挿通孔21を規定する内周面を有する円筒部22と、円筒部22の外周面に円筒部22の一部23を突出させて一体に形成された環状幅広鍔部24と、環状幅広鍔部24の外周縁に一体に形成された円筒係合突出部25と、円筒係合突出部25の端部内周面に形成された係合部26とを備えており、上部ケース10は、係合部14を下部ケース20の係合部26に弾性装着させて、下部ケース20に組合わされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらスラスト滑り軸受においては、摺動面間に潤滑グリースの介在のもと、摺動面を囲繞して装着されたゴム弾性体からなるダストシールを不要とし、当該ダストシールに起因するステアリング操作力の増大という問題を解決することができ、また摺動面への塵埃等異物の侵入を極力防止して安定した、かつ円滑なステアリング操作力を得ることができるものである。
【0008】
しかしながら、上記スラスト滑り軸受における上、下部ケースと上、下部ケース間に配されるスラスト軸受片とを形成する合成樹脂の組み合わせ、及びこれら合成樹脂の組み合わせに加えて、上、下部ケースと上、下部ケース間に配されるスラスト軸受片との摺動界面に介在する潤滑グリースとの組み合わせによって、上、下部ケースとスラスト軸受片との間にスティックスリップ(付着−滑り)現象を生じ、往々にしてスティックスリップに起因する異常摩擦音を発生するという問題が新たに見出された。
【0009】
本発明者は、このスティックスリップ現象の発生要因として、摺動面間に介在する潤滑グリースに着目した。従来より、摺動面間に介在する潤滑グリースとしては、(a)高温度に長時間晒されても安定であること、(b)温度による粘度変化が小さく耐熱、耐酸化性に優れていること、(c)揮発量が非常に少ないこと、(d)せん断速度で粘度があまり変わらないことなどの優れた特徴を有するシリコーングリースが使用されているが、このシリコーングリースであっても、シリコーングリースを形成する基油の種類及びその粘度、あるいは基油に増ちょう剤を含有した混合ちょう度の大小などによって、摩擦摩耗特性を低下させたり、スティックスリップ現象の発生を助長するという問題点が現れる。
【0010】
本発明者は上記問題点を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、シリコーングリースを形成する基油とその動粘度、及びその基油に増ちょう剤を含有したグリースの混合ちょう度を所定の範囲としたシリコーングリースを、スラスト滑り軸受における上、下部ケースと上、下部ケース間に配されるスラスト軸受片との摺動界面に介在させることにより、低摩擦性を発揮して円滑な摺動が長期間にわたって維持されると共に、摺動時のスティックスリップ現象の発生を防止し得、スティックスリップ現象の発生に起因する異常摩擦音の発生を防止し得ることを見出した。
【0011】
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、その目的とするところは、合成樹脂製の上、下部ケースと上、下部ケース間に配される合成樹脂製のスラスト軸受片とからなるスラスト滑り軸受であって、低摩擦性を長期間にわたって維持し得ると共に、摺動時のスティックスリップ現象の発生を防止し得、スティックスリップ現象の発生に起因する異常摩擦音の発生を防止し得る合成樹脂製スラスト滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受は、上部環状平板状部を有する合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケースに当該上部ケースの軸心回りで回転自在となるように重ね合わされていると共に上部環状平板状部に対面した下部環状平板状部、この下部環状平板状部に同心に配された第一及び第二の環状突起及びこの第一及び第二の環状突起で囲まれた下部環状凹所を有する合成樹脂製の下部ケースと、下部環状凹所に配されて下部環状凹所の底面を規定する下部環状平板状部の上面及び上部環状平板状部の下面と摺接すると共に中央部に円孔を有する円板からなる合成樹脂製のスラスト軸受片とを具備しており、上部ケースは、その外周縁で下部ケースの外周縁に弾性装着させて、下部ケースに組合わされてなる合成樹脂製スラスト滑り軸受であって、下部環状凹所の底面を規定する下部環状平板部の上面及び上部環状平板状部の下面とこれら上面及び下面に夫々摺接するスラスト軸受片の下面及び上面との摺動界面に、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が100cSt以上500000cSt以下であり、これに増ちょう剤を含有して混合ちょう度を200以上400以下としたシリコーングリースが介在していることを特徴とする。
【0013】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、合成樹脂製の上、下部ケースと上、下部ケース間に配される合成樹脂製のスラスト軸受片との摺動界面に、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が100cSt以上500000cSt以下(100mm/s以上500000mm/s以下)、好ましくは25℃における動粘度が1000cSt以上100000cSt以下(1000mm/s以上100000mm/s以下)であり、これに増ちょう剤を含有して混合ちょう度を200以上400以下、好ましくは250以上350以下としたシリコーングリースが介在しているので、低摩擦性を長期間にわたって発揮して円滑な摺動が行われ、摺動時にスティックスリップ現象の発生することなく、当該スティックスリップ現象の発生に起因する異常摩擦音の発生もない。混合ちょう度が200未満であると、グリースが硬すぎてスラスト滑り軸受の起動トルクが増大する傾向を示し、また混合ちょう度が400を超えると、グリースが柔らかすぎて摺動界面に留まれずに当該界面から容易にスクイズアウト(押出)され、グリース自体の寿命が低下し、スラスト滑り軸受から外部に漏洩する虞がある。
【0014】
基油を形成するシリコーン油は、ジメチルシリコーン油、メチルフェニルシリコーン油などのストレートシリコーン油、アルキル基、アミノプロピル基、ポリエーテル基及びフッ素基を含有した変性シリコーン油から選択されるが、とくにストレートシリコーン油が好ましく使用される。
【0015】
基油に含有される増ちょう剤は、リチウム石けん、ナトリウム石けん、アルミニウム石けん、カルシウム石けん、バリウム石けんなどの石けん系増ちょう剤、リチウムコンプレックス、アルミニウムコンプレックス、カルシウムコンプレックス、バリウムコンプレックスなどの複合石けん系増ちょう剤、脂肪族ジウレア、脂環式ジウレア、芳香族ジウレア、トリウレア、ポリウレアなどのウレア系増ちょう剤、ナトリウムテレフタラメート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、メラミンシアヌレート(MCA)などの有機系増ちょう剤、ベントナイト、シリカ、グラファイト、二硫化モリブデン、カーボンブラックなどの無機系増ちょう剤の少なくとも一種が使用される。中でも、リチウム石けん、例えばステアリン酸リチウム、リチウムヒドロキシステアレート〔12−ヒドロキシステアリン酸リチウム:12(OH)StLi)〕、PTFE、メラミンシアヌレート、二硫化モリブデンなどが好ましく使用される。
【0016】
増ちょう剤は、前記シリコーン油からなる基油に対し、3重量%以上50重量%以下の割合で含有されるのが好ましい。基油に対し3重量%未満の配合割合では、混合ちょう度が低く、グリースとして使用し難く、また50重量%を超えて配合すると、得られたグリースの混合ちょう度が大きく、硬すぎてトルクが大きくなり実用上好ましくない。
【0017】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受に使用されるシリコーングリースにおいては、各種特性を向上させるために、所望により種々の添加剤を添加してもよい。例えば、フェニル−1−ナフチルアミン等のアミン系化合物、2,6−t−ブチルフェノール系化合物、硫黄系の化合物、ジチオリン酸亜鉛系等の酸化防止剤、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機スルフォン酸塩、アルキルまたはアルケニルコハク酸エステル等のアルキルまたはアルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの部分エステルなどの防錆剤、脂肪酸や動植物油等の油性剤などの添加剤である。これら添加剤の配合割合は、0.1〜1重量%程度である。
【0018】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受において、上部環状平板状部は、中央部に円孔を有しており、下部環状平板状部は、中央部に上部環状平板状部の円孔と連通する挿通孔を有しており、上部ケースは、上部環状平板状部の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部と、この円筒係合垂下部の内周面に形成された係合部とを備えており、下部ケースは、第二の環状突起の外周面に形成された被係合部を備えており、第一の環状突起は、下部環状平板状部の挿通孔と同径の内径を有して下部環状平板状部の上面に一体に形成されており、第二の環状突起は、第一の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の外周縁に一体に形成されていると共に第一の環状突起と下部環状平板状部の上面と協働して下部環状凹所を形成しており、上部ケースは、係合部を被係合部に弾性装着させて下部ケースに組合わされていてもよい。
【0019】
本合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、上、下部ケースは、係合部を被係合部に弾性装着させることによって互いに組み合わされるので、その組立て作業を極めて簡単に行うことができる。
【0020】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受において、スラスト軸受片の中央部の円孔を規定する内周面は第一の環状突起の外径よりも大きな直径を有すると共にスラスト軸受片の外周面は第二の環状突起の内径よりも小さな外径を有しており、スラスト軸受片は、その円孔を規定する内周面と第一の環状突起の外周面との間及びその外周面と第二の環状突起の内周面との間に夫々環状隙間をもって下部環状凹所に配されており、これら環状隙間の夫々に前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持されていてもよい。
【0021】
斯かる合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、スラスト軸受片の下面と環状凹所の底面を規定する下部環状平板状部の上面との摺動界面に常時シリコーングリースが供給されるので、長期間にわたり低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われる。
【0022】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受において、上部環状平板状部は、中央部に円孔を有しており、下部環状平板状部は、中央部に上部環状平板状部の円孔と連通する挿通孔を有しており、上部ケースは、上部環状平板状部の円孔の周縁から径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の下面に一体に形成された円筒垂下部と、この円筒垂下部と協働して上部外側環状溝を形成するように、円筒垂下部と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部と、この円筒係合垂下部の内周面に形成された係合部とを備えており、下部ケースは、第二の環状突起と協働して下部外側環状溝を形成するように、第二の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の外周縁に一体に形成された環状係合突起と、この環状係合突起の外周面に形成された被係合部とを備えており、第一の環状突起は、下部環状平板状部の挿通孔と同径の内径を有して下部環状平板状部の上面に一体に形成されており、第二の環状突起は、第一の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の上面に一体に形成されていると共に第一の環状突起と下部環状平板状部の上面と協働して下部環状凹所を形成しており、上部ケースは、円筒垂下部を下部外側環状溝に配して第二の環状突起及び環状係合突起の夫々と径方向に重畳させ、係合部を被係合部に弾性装着させて、下部ケースに組合わされてなる態様であってもよい。
【0023】
本態様からなる合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、円筒垂下部と第二の環状突起及び環状係合突起との重畳部及び係合部と被係合部との弾性装着部にラビリンス作用による密封部が形成される結果、上、下部ケース間、ひいては上、下部ケースと上、下部ケース間に配されるスラスト軸受片との摺動界面への塵埃等異物の侵入が防止されので常時、円滑な摺動が行われる。
【0024】
斯かる合成樹脂製スラスト滑り軸受において、スラスト軸受片の中央部の円孔を規定する内周面は第一の環状突起の外径よりも大きな直径を有すると共にスラスト軸受片の外周面は第二の環状突起の内径よりも小さな外径を有しており、スラスト軸受片は、その円孔を規定する内周面と第一の環状突起の外周面との間及びその外周面と第二の環状突起の内周面との間の夫々に環状隙間をもって下部環状凹所に配されており、これら環状隙間及び下部外側環状溝の夫々に前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持されていてもよい。
【0025】
本合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、スラスト軸受片の下面と下部ケースの環状凹所の底面を規定する下部環状平板状部の上面との摺動界面に常時シリコーングリースが供給されるので、長期間にわたり低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われると共に下部外側環状溝にシリコーングリースが充填保持されることにより、係合部と被係合部との弾性装着部からから侵入した塵埃等異物は、当該下部外側環状溝に充填保持されたシリコーングリースに捕獲されて摺動界面への侵入を阻止されるので、塵埃等異物の侵入に対し、ラビリンス作用による密封部とで二重の防止効果が発揮される。
【0026】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受において、上部環状平板状部は、中央部に円孔を有しており、下部環状平板状部は、中央部に上部環状平板状部の円孔と連通する挿通孔を有しており、上部ケースは、上部環状平板状部の円孔と同径の内径をもって上部環状平板状部の下面に一体に形成された第一の円筒垂下部と、この第一の円筒垂下部の外周面と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の下面に一体に形成されていると共に第一の円筒垂下部と上部環状平板状部の下面と協働して上部環状凹所を形成する第二の円筒垂下部と、この第二の円筒垂下部と協働して上部外側環状溝を形成するように、第二の円筒垂下部と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部と、この円筒係合垂下部の内周面に形成された係合部とを備えており、下部ケースは、第二の環状突起と下部環状平板部の上面と協働して下部外側環状溝を形成するように、第二の環状突起の外周面と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の外周縁に一体に形成された環状係合突起と、この環状係合突起の外周面に形成された被係合部とを備えており、第一の環状突起は、下部環状平板状部の挿通孔から環状肩部を介して径方向外方に離れて下部環状平板状部の上面に一体に形成されており、第二の環状突起は、第一の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の上面に一体に形成されていると共に第一の環状突起と上部環状平板状部の上面と協働して下部環状凹所を形成しており、上部ケースは、第一の円筒垂下部を第一の環状突起と径方向に重畳させ、第二の円筒垂下部を下部外側環状溝に配して第二の環状突起及び環状係合突起の夫々と径方向に重畳させ、係合部を被係合部に弾性装着させて、下部ケースに組み合わされてなる態様であってもよい。
【0027】
本態様からなる合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、第一の円筒垂下部と第一の環状突起との重畳部、第二の円筒垂下部と第二の環状突起及び環状係合突起との重畳部及び係合部と被係合部との弾性装着部にラビリンス作用による密封部が形成される結果、上、下部ケース間、ひいては上、下部ケースと上、下部ケース間に配されるスラスト軸受片との摺動界面への塵埃等異物の侵入が防止されるので常時、円滑な摺動が行われる。
【0028】
上記態様からなる合成樹脂製スラスト滑り軸受において、スラスト軸受片の中央部の円孔を規定する内周面は第一の環状突起の外径よりも大きな直径を有すると共にスラスト軸受片の外周面は第二の環状突起の内径よりも小さな外径を有しており、スラスト軸受片は、その円孔を規定する内周面と第一の環状突起の外周面との間及びその外周面と第二の環状突起の内周面との間の夫々に環状隙間をもって下部環状凹所に配されており、これら環状隙間及び下部外側環状溝の夫々に前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持されていてもよい。
【0029】
斯かる合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、スラスト軸受片の下面と環状凹所の底面を規定する下部環状平板状部の上面との摺動界面に常時シリコーングリースが供給されるので、長期間にわたり低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われると共に下部外側環状溝にシリコーングリースが充填保持されることにより、係合部と被係合部との弾性装着部からから侵入した塵埃等異物は、外側環状溝に充填保持されたシリコーングリースに捕獲されて摺動界面への侵入を阻止されるので、塵埃等異物の侵入に対し、前記ラビリンス作用による密封部とで二重の防止効果が発揮される。
【0030】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受において、上部環状平板状部は、中央部に円孔を有しており、下部環状平板状部は、中央部に上部環状平板状部の円孔と連通する挿通孔を有しており、上部ケースは、上部環状平板状部の円孔と環状肩部を介して上部環状平板状部の下面に一体に形成された第一の円筒垂下部と、第一の円筒垂下部の外周面と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の下面に一体に形成されていると共に第一の円筒垂下部と上部環状平板状部の下面と協働して上部環状凹所を形成する第二の円筒垂下部と、第二の円筒垂下部と協働して上部外側環状溝を形成するように、第二の円筒垂下部と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部と、円筒係合垂下部の内周面に形成された係合部とを備えており、下部ケースは、挿通孔と同径の内径をもって下部環状平板状部に一体に形成された第三の環状突起と、第二の環状突起と協働して下部外側環状溝を形成するように、第二の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の外周縁に一体に形成された環状係合突起と、環状係合突起の外周面に形成された被係合部とを備えており、第一の環状突起は、第三の環状突起と協働して下部内側環状溝を形成するように、第三の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の上面に一体に形成されており、第二の環状突起は、第一の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の上面に一体に形成されていると共に第一の環状突起と下部環状平板状部の上面と協働して下部環状凹所を形成しており、上部ケースは、第一の円筒垂下部を下部内側環状溝に配して第一の環状突起及び第三の環状突起と径方向に夫々重畳させ、第二の円筒垂下部の端部を下部外側環状溝に配して第二の環状突起及び環状係合突起の夫々と径方向に重畳させ、係合部を被係合部に弾性装着させて、下部ケースに組合わされてなる態様であってもよい。
【0031】
上記態様の合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、第一の円筒垂下部と第一の環状突起及び第三の環状突起との重畳部、第二の円筒垂下部と第二の環状突起及び環状係合突起との重畳部及び係合部と被係合部との弾性装着部に夫々ラビリンス作用による密封部が形成される結果、上、下部ケース間、ひいては上、下部ケースと上、下部ケース間に配されるスラスト軸受片との摺動界面への塵埃等異物の侵入が防止されので常時、円滑な摺動が行われる。
【0032】
上記態様の合成樹脂製スラスト滑り軸受において、スラスト軸受片の中央部の円孔を規定する内周面は第一の環状突起の外径よりも大きな直径を有すると共にスラスト軸受片の外周面は第二の環状突起の内径よりも小さな外径を有しており、スラスト滑り軸受片は、その円孔を規定する内周面と第一の環状突起の外周面との間及びその外周面と第二の環状突起の内周面との間に夫々環状隙間をもって下部環状凹所に配されており、これら環状隙間、下部内側環状溝及び下部外側環状溝に夫々前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持されている態様であってもよい。
【0033】
上記態様の合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、スラスト軸受片の下面と下部環状凹所の底面を規定する下部環状平板状部の上面との摺動界面に常時シリコーングリースが供給されるので、長期間にわたり低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われると共に下部内側環状溝と下部外側環状溝に夫々シリコーングリースが充填保持されることにより、係合部と被係合部との弾性装着部又は内径側のラビリンス部からから侵入した塵埃等異物は、下部内側環状溝及び下部外側環状溝に充填保持されたシリコーングリースに捕獲されて摺動界面への侵入は防を阻止されるので、塵埃等異物の侵入に対し、内径側及び外径側においてラビリンス作用による密封部とで二重の防止効果が発揮される。
【0034】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受において、上部環状平板状部は、中央部に円孔を有しており、下部環状平板状部は、中央部に上部環状平板状部の円孔と連通する挿通孔を有しており、上部ケースは、円孔と同径の内径をもって上部環状平板状部の下面に一体に形成された第一の円筒垂下部と、第一の円筒垂下部と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の下面に一体に形成されていると共に第一の円筒垂下部と協働して上部内側環状溝を形成する第二の円筒垂下部と、第二の円筒垂下部と径方向外方に所定の隙間を隔てて上部環状平板状部の下面に一体に形成されていると共に第二の円筒垂下部と上部環状平板状部の下面と協働して上部環状凹所を形成する第三の円筒垂下部と、第三の円筒垂下部と協働して上部外側環状溝を形成するように、第三の円筒垂下部と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部と、円筒係合垂下部の内周面に形成された係合部とを備えており、下部ケースは、挿通孔から環状肩部を介して径方向外方に離れて下部環状平板状部の上面に一体に形成された第三の環状突起と、第二の環状突起と協働して下部外側環状溝を形成するように、第二の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の外周縁に一体に形成された環状係合突起と、環状係合突起の外周面に形成された被係合部とを備えており、第一の環状突起は、第三の環状突起と協働して下部内側環状溝を形成するように、第三の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の上面に一体に形成されており、第二の環状突起は、下部環状平板状部の上面に第一の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて一体に形成されていると共に第一の環状突起と下部環状平板状部の上面と協働して下部環状凹所を形成しており、上部ケースは、第一の円筒垂下部を下部ケースの環状肩部に臨ませて第三の環状突起の端部と径方向に重畳させ、第二の円筒垂下部を下部内側環状溝に配して第一の環状突起及び第三の環状突起と径方向に夫々重畳させ、第三の円筒垂下部を下部外側環状溝に配して第二の環状突起及び環状係合突起の夫々と径方向に夫々重畳させ、係合部を被係合部に弾性装着させて、下部ケースに組合わされてなる態様であってもよい。
【0035】
上記態様の合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、第一の円筒垂下部と第三の環状突起との重畳部、第二の円筒垂下部と第一の環状突起及び第三の環状突起との重畳部、第三の円筒垂下部と第二の環状突起及び環状係合突起との重畳部及び係合部と被係合部との弾性装着部にラビリンス作用による密封部が形成される結果、上、下部ケース間、ひいては上、下部ケースと上、下部ケース間に配されるスラスト軸受片との摺動界面への塵埃等異物の侵入が防止されので常時、円滑な摺動が行われる。
【0036】
上記態様の合成樹脂製スラスト滑り軸受において、スラスト軸受片の中央部の円孔を規定する内周面は第一の環状突起の外径よりも大きな直径を有すると共にスラスト軸受片の外周面は第二の環状突起の内径よりも小さな外径を有しており、スラスト滑り軸受片は、その円孔を規定する内周面と第一の環状突起の外周面との間及びその外周面と第二の環状突起の内周面との間に夫々環状隙間をもって下部環状凹所に配されており、これら環状隙間、下部内側環状溝及び下部外側環状溝に夫々前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持されている態様であってもよい。
【0037】
本態様の合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、スラスト軸受片の下面と下部環状凹所の底面を規定する下部環状平板状部の上面との摺動界面に常時シリコーングリースが供給されるので、長期間にわたり低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われると共に下部内側環状溝と下部外側環状溝に夫々シリコーングリースが充填保持されることにより、係合部と被係合部との弾性装着部又は内径側のラビリンス部からから侵入した塵埃等異物は、下部内側環状溝及び下部外側環状溝に充填保持されたシリコーングリースに捕獲されて摺動界面への侵入を阻止されるので、塵埃等異物の侵入に対し、内径側及び外径側においてラビリンス作用による密封部とで二重の防止効果が発揮される。
【0038】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受では、スラスト軸受片は、その上面及び下面に円孔を囲む環状溝と、一端が環状溝に開口し、他端が外周面で開口して円周方向に沿って形成された複数個の放射状溝を具備していてもよく、また下部ケースは、その下面に挿通孔と同径の内径を有して一体に形成された円筒部を備えていてもよい。
【0039】
下部ケースの下面に挿通孔と同径の内径を有して一体に形成された円筒部を備えた合成樹脂製スラスト滑り軸受によれば、当該スラスト滑り軸受の上部バネ座シートへの取付けにあたり、上部バネ座シートに形成された取付孔に円筒部を挿入することにより行うことができるので、その取付け作業性が極めて簡単になる。
【0040】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受では、上、下部ケースを形成する合成樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適であり、またスラスト軸受片を形成する合成樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適である。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、上、下部ケースと上、下部ケース間に配されるスラスト軸受片との摺動界面に、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が100cSt以上500000cSt以下(100mm/s以上500000mm/s以下)、好ましくは25℃における動粘度が1000cSt以上100000cSt以下(1000mm/s以上100000mm/s以下)であり、これに増ちょう剤を含有して混合ちょう度を200以上400以下、好ましくは250以上350以下としたシリコーングリースが介在しているので、低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われ、摺動時にスティックスリップ現象を生じることなく、当該スティックスリップ現象に起因する異常摩擦音の発生のない合成樹脂製スラストすべり軸受を、また下部ケースの外周側又は内周側及び外周側に形成された下部内側環状溝及び下部外側環状溝に上記シリコーングリースと同等のシリコーングリースを充填保持させた場合には、外部、すなわち係合部と被係合部との弾性装着部又は内径側のラビリンス部からから侵入した塵埃等異物を当該シリコーングリースにおいて捕獲して摺動界面への侵入を阻止するので、塵埃等異物の摺動界面への侵入に対し、前記ラビリンス作用による密封部とで二重の侵入防止効果を有する合成樹脂製スラスト滑り軸受を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0043】
図1及び図2において、第一の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1は、合成樹脂製の上部ケース100と、合成樹脂製の下部ケース200と、上、下部ケース100、200間に配される合成樹脂製のスラスト軸受片300とを具備している。
【0044】
上部ケース100は、中央部に円孔101を有する上部環状平板状部102と、上部環状平板状部102の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部103と、円筒係合垂下部103の端部内周面に係合部104とを備えている。
【0045】
下部ケース200は、上部ケース100に当該上部ケース100の軸心回りで回転自在となるように重ね合わされていると共に上部環状平板状部102に対面し、しかも、中央部に円孔101に連通する挿通孔201を有する下部環状平板状部202と、挿通孔201と同径の内径を有して下部環状平板状部202の上面209に一体に形成されていると共に下部環状平板状部202に同心に配された環状突起203と、環状突起203と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の外周縁に一体に形成されていると共に環状突起203と下部環状平板状部202の上面209と協働して下部環状凹所204を形成し、しかも、下部環状平板状部202に同心に配された環状係合突起205と、環状係合突起205の端部外周面に形成された被係合部206とを備えており、下部環状凹所204は、環状突起203と環状係合突起205とで囲まれている。
【0046】
下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部環状平板状部101の下面105と摺接するスラスト軸受片300は、環状突起203の外径よりも大きい内径をもった内周面301で規定された円孔302を中央部に有すると共に環状突起210の内径よりも小さな外径をもった外周面303を有する円板304からなり、その内周面301と環状突起203の外周面207との間及びその外周面303と環状係合突起205の内周面208との間の夫々に環状隙間A1及びA2をもって下部環状凹所204に配されると共に上面305を下部環状凹所204の開口より上方に位置させて上部環状平板状部102の下面105に摺接させ、下面306を下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209に摺接させて上、下部ケース100、200間に配されている。
【0047】
上部ケース100は、その外周縁での円筒係合垂下部103の端部内周面の係合部104を下部ケース200の外周縁である環状係合突起205の端部外周面の被係合部206に弾性装着させて下部ケース200に組合わされている。
【0048】
合成樹脂製スラスト滑り軸受1において、下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部環状平板状部101の下面105と夫々摺接するスラスト軸受片300の上、下面305、306との摺動界面には、基油がシリコーン油であり、これに増ちょう剤を含有したシリコーングリースが介在されていると共に環状隙間A1及びA2に同等のシリコーングリースが充填保持されている。
【0049】
基油を形成するシリコーン油とは、ジメチルシリコーン油、メチルフェニルシリコーン油等のストレートシリコーン油、あるいはアルキル基、アミノプロピル基、ポリエーテル基及びフッ素基等を含有した変性シリコーン油であって、基油の25℃における動粘度は、100cSt以上500000cSt以下(100mm/s以上500000mm/s以下)、好ましくは1000cSt以上100000cSt以下(1000mm/s以上100000mm/s以下)であることが好ましい。25℃における動粘度が100cSt未満では、基油がグリースから分離し易くなり、また25℃における動粘度が500000cStを超えると、スラスト滑り軸受の起動、ランニング時のトルクが高くなり、低摩擦性を発揮し得なくなる。
【0050】
基油に含有される増ちょう剤としては、リチウム石けん、ナトリウム石けん、アルミニウム石けん、カルシウム石けん、バリウム石けんなどの石けん系増ちょう剤、リチウムコンプレックス、アルミニウムコンプレックス、カルシウムコンプレックス、バリウムコンプレックスなどの複合石けん系増ちょう剤、脂肪族ジウレア、脂環式ジウレア、芳香族ジウレア、トリウレア、ポリウレアなどのウレア系増ちょう剤、ナトリウムテレフタラメート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、メラミンシアヌレート(MCA)などの有機系増ちょう剤、ベントナイト、シリカゲル、グラファイト、二硫化モリブデン、カーボンブラックなどの無機系増ちょう剤の少なくとも一種が使用される。中でも、リチウム石けん、例えばステアリン酸リチウム、リチウムヒドロキシステアレート(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム)、PTFE、メラミンシアヌレート、二硫化モリブデンなどが好ましく使用される。
【0051】
増ちょう剤の配合割合は、得られるグリースの混合ちょう度(JIS K 2220 5.3に基づいて測定)が200以上400以下、好ましくは250以上350以下となるように決定される。具体的には、増ちょう剤を基油に対して3重量%以上50重量%以下の割合で配合するのが好ましい。基油に対し3重量%未満の配合割合では、混合ちょう度が低く、グリースとして使用し難く、また50重量%を超えて配合すると、得られたグリースの混合ちょう度が大きく、硬すぎてトルクが大きくなり実用上好ましくない。
【0052】
本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受1に使用されて好適なシリコーングリースの組成物について説明する。
【0053】
(1)基油として、25℃における動粘度が450cSt(450mm/s)を示すメチルフェニルシリコーン油60重量%に、増ちょう剤として二硫化モリブデン(MoS)粉末15重量%とPTFE粉末25重量%を添加し、ついでこれを均一に混練して得られる混合ちょう度を275としたシリコーングリース。
(2)基油として、25℃における動粘度が500cSt(500mm/s)を示すジメチルシリコーン油65重量%に、増ちょう剤としてメラミンシアヌレート(MCA)25重量%とPTFE粉末10重量%を添加し、ついでこれを均一に混練して得られる混合ちょう度を270としたシリコーングリース。
(3)基油として、25℃における動粘度が3000cSt(3000mm/s)を示すメチルフェニルシリコーン油74重量%に、増ちょう剤としてリチウムヒドロキシステアレート〔12−ヒドロキシステアリン酸リチウム:12(OH)StLi〕26重量%を添加し、185℃の温度で2時間加熱混合した後冷却し、ついでこれを均一に混練して得られる混合ちょう度を279としたシリコーングリース。
(4)基油として、25℃における動粘度が6500cSt(6500mm/s)を示すジメチルシリコーン油60重量%に、増ちょう剤としてPTFE粉末40重量%を添加し、ついでこれを均一に混練して得られる混合ちょう度を250としたシリコーングリース。
(5)基油として、25℃における動粘度が11000cSt(11000mm/s)を示すメチルフェニルシリコーン油95重量%に、増ちょう剤としてリチウムヒドロキシステアレート〔12−ヒドロキシステアリン酸リチウム:12(OH)StLi〕5重量%を添加し、185℃の温度で2時間加熱混合した後冷却し、ついでこれを均一に混練して得られる混合ちょう度を258としたシリコーングリース。
(6)基油として、25℃における動粘度が200000cSt(200000mm/s)を示すジメチルシリコーン油92重量%に、増ちょう剤としてシリカ微粉末8重量%を添加し、ついでこれを均一に混練して得られる混合ちょう度を300としたシリコーングリース。
【0054】
これら(1)ないし(6)のシリコーングリースを、図1に示すスラスト滑り軸受1の摺動界面、すなわち上、下部ケース100、200と上、下部ケース100、200間に配されたスラスト軸受片300との摺動界面に塗布し、下部ケース200を固定し、上部ケース200の上面側から荷重4.5kNを負荷し、0.5Hzの揺動速度で±40°の揺動角度で50サイクル揺動運動させ、その時のトルク(Nm)を測定すると共に、スティックスリップ現象の発生の有無並びに摩擦異常音の発生の有無について試験した。試験結果を表1及び表2に示す。なお、試験に供した合成樹脂製スラスト滑り軸受1の上、下部ケース100、200はポリアセタール樹脂で形成し、スラスト軸受片300はポリエチレン樹脂で作成した。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
下部ケース200の下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部ケース100の上部環状平板状部102の下面105と夫々摺接するスラスト軸受片300の上、下面305、306との摺動界面に上記(1)ないし(6)で例示されたシリコーングリースが介在することにより、低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われ、摺動時にスティックスリップ現象を生じることなく、当該スティックスリップ現象に起因する異常摩擦音の発生もない。また、環状隙間A1及びA2にシリコーングリースが充填保持されることにより、スラスト軸受片300の下面306と下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209との摺動界面に常時シリコーングリースが供給されるので、長期間にわたり低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われる。
【0058】
合成樹脂製スラスト滑り軸受1において、スラスト軸受片300は、図2に示すように、その上、下面305、306に円孔302を囲む環状溝307と、一端が環状溝307に開口し、他端が外周面303で開口して円周方向に沿って等間隔に形成された複数個の放射状溝308とを有しているのが好ましく、これら環状溝307及び放射状溝308には、前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持される。
【0059】
上部ケース100及び下部ケース200を形成する合成樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適であり、またスラスト軸受片300を形成する合成樹脂としては、上記上、下部ケース100、200を形成する熱可塑性合成樹脂との摺動特性の良好なポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適である。
【0060】
図3は、第二の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1を示す。斯かる合成樹脂製スラスト滑り軸受1は、合成樹脂製の上部ケース100と、合成樹脂製の下部ケース200と、上、下部ケース100、200間に配される合成樹脂製のスラスト軸受片300とを具備している。
【0061】
上部ケース100は、中央部に円孔101を有する上部環状平板状部102と、円孔101の周縁から径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部102の下面105に一体に形成された円筒垂下部106と、円筒垂下部106と協働して上部外側環状溝107を形成するように、円筒垂下部106と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部102の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部103と、円筒係合垂下部103の端部内周面に係合部104とを備えている。
【0062】
下部ケース200は、中央部に円孔101と連通する挿通孔201を有する下部環状平板状部202と、挿通孔201と同径の内径を有して下部環状平板状部202の上面209に一体に形成された環状突起203と、環状突起203と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の上面209に一体に形成されていると共に環状突起203と下部環状平板状部202の上面209と協働して下部環状凹所204を形成する環状突起210と、環状突起210と協働して下部外側環状溝211を形成するように、環状突起210と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の外周縁に一体に形成された環状係合突起205と、環状係合突起205の端部外周面に形成された被係合部206とを備えている。
【0063】
スラスト軸受片300は、下部ケース200の環状突起203の外径よりも大きい内径をもった内周面301で規定された円孔302を有していると共に環状突起210の内径よりも小さい外径を持った外周面303を有する円板304からなっており、内周面301と環状突起203の外周面207との間及び外周面303と環状突起210の内周面208との間に環状隙間A1及びA2を夫々もって下部環状凹所204に配されると共に、上面305を下部環状凹所204の開口より上方に位置させて上部環状平板状部101の下面105に摺接させ、下面306を下部環状凹所204の底面を規定する下部環状凹所204の上面209に摺接させて上、下部ケース100、200間に配される。
【0064】
上部ケース100は、円筒垂下部106の端部を下部外側環状溝211に配して環状突起210及び環状係合突起205の端部と径方向に夫々重畳させ、係合部104を被係合部206に弾性装着させて、下部ケース200に組合わされている。
【0065】
第二の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1において、下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部環状平板状部102の下面105と夫々摺接するスラスト軸受片300の上、下面305、306との摺動界面には、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が100cSt以上500000cSt以下、好ましくは25℃における動粘度が1000cSt以上100000cSt以下であり、これに増ちょう剤を含有して混合ちょう度を200以上400以下、好ましくは250以上350以下としたシリコーングリースが介在されていると共に環状隙間A1及びA2及び下部外側環状溝211の夫々に同等のシリコーングリースが充填保持されている。
【0066】
このように下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部環状平板状部102の下面105と夫々摺接するスラスト軸受片300の上、下面305、306との摺動界面に前記シリコーングリースが介在することにより、低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われ、摺動時にスティックスリップ現象を生じることなくスティックスリップ現象に起因する異常摩擦音の発生もなく、環状隙間A1及びA2にシリコーングリースが充填保持されることにより、スラスト軸受片300の下面306と下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209との摺動界面に常時、シリコーングリースが供給されるので、摺動面間でのシリコーングリースの枯渇等を生じることがなく、長期間にわたり低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われる。
【0067】
第二の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1において、上部ケース100は、円筒垂下部106の端部を下部外側環状溝211に配して環状突起210及び環状係合突起205の端部と径方向に夫々重畳させ、係合部104を被係合部206に弾性装着させて、下部ケース200に組合わされていることにより、円筒垂下部106と環状突起210及び環状係合突起205との重畳部及び係合部104と被係合部206との弾性装着部にラビリンス作用による密封部が形成されていることにより、また、下部ケース200の外径側に形成された下部外側環状溝211にシリコーングリースが充填保持されることにより、係合部104と被係合部206との弾性装着部からから侵入した塵埃等異物は、当該下部外側環状溝211に充填保持されたシリコーングリースに捕獲されて摺動界面への侵入を阻止されるので、塵埃等異物の侵入に対し、前記ラビリンス作用による密封部とで二重の侵入防止効果が発揮される。
【0068】
第二の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1においても、スラスト軸受片300は、前記第一の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1のスラスト軸受片300と同様であって、図2に示すように、円板304からなるスラスト軸受片300の上、下面305、306に円孔302を囲む環状溝307と、一端が環状溝307に開口し、他端が円板304からなるスラスト軸受片300の外周面303で開口して円周方向に沿って等間隔に形成された放射状溝308を有しているのが好ましく、これら環状溝307及び放射状溝308には、前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持される。
【0069】
第二の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1においても、上部ケース100及び下部ケース200は、前記第一の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1の上部ケース100及び下部ケース200と同様に、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適であり、またスラスト軸受片300を形成する樹脂としては、上部ケース100及び下部ケース200を形成する熱可塑性合成樹脂との摺動特性が良好なポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適である。
【0070】
図4は、第三の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1を示しており、本合成樹脂製スラスト滑り軸受1は、前記第二の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1の構成に加えて、下部環状平板状部202の下面212に、挿通孔201と同径の内径を有する円筒部213を一体に形成したものである。
【0071】
下部環状平板状部202の下面212に円筒部213を具備した第三の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1においては、図5に示すようなストラット型サスペンションアッセンブリにおけるコイルばね41の上部ばね座シート42と、油圧ダンパのピストンロッド43が固着される取付部材44との間への合成樹脂製スラスト滑り軸受1の装着での位置決めが容易となり、その取り付けが容易となる。
【0072】
この場合、合成樹脂製スラスト滑り軸受1の上部ケース100の円孔101及び下部ケース200の挿通孔201にピストンロッド43の上部が上部ケース100及び下部ケース200に対して軸心Oの回りでR方向に揺動回転自在となるようにして挿通される。
【0073】
図5に示すように合成樹脂製スラスト滑り軸受1を介して装着されたストラット型サスペンションアッセンブリでは、ステアリング操作に際してはコイルばね41を介する上部ばね座シート42の軸心Oの回りでの相対的なR方向の揺動回転は、上部ケース100に対する下部ケース200の同方向の相対的な揺動回転で円滑に行われる。
【0074】
図6は、第四の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1を示す。斯かる合成樹脂製スラスト滑り軸受1は、合成樹脂製の上部ケース100と、合成樹脂製の下部ケース200と、上、下部ケース100、200間に配される合成樹脂製のスラスト軸受片300とを具備している。
【0075】
上部ケース100は、中央部に円孔101を有する上部環状平板状部102と、円孔101と同径の内径をもって上部環状平板状部102の下面105に一体に形成された円筒垂下部108と、円筒垂下部108の外周面と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部102の下面105に一体に形成されていると共に円筒垂下部108と上部環状平板状部102の下面105と協働して上部環状凹所109を形成する円筒垂下部106と、円筒垂下部106と協働して上部外側環状溝107を形成するように、円筒垂下部106と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部102の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部103と、円筒係合垂下部103の端部内周面に形成された係合部104とを備えている。
【0076】
下部ケース200は、中央部に円孔101と連通する挿通孔201を有する下部環状平板状部202と、挿通孔201から環状肩部214を介して径方向外方に離れて下部環状平板状部202の上面209に一体に形成された環状突起203と、環状突起203と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の上面209に一体に形成されていると共に環状突起203と下部環状平板状部202の上面209と協働して下部環状凹所204を形成する環状突起210と、環状突起210と下部環状平板状部202の上面209と協働して下部外側環状溝211を形成するように、環状突起210の外周面と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の外周縁に一体に形成された環状係合突起205と、環状係合突起205の端部外周面に形成された被係合部206とを備えている。
【0077】
スラスト軸受片300は、環状突起203の外径よりも大きい内径をもった内周面301によって規定された円孔302を有すると共に環状突起210の内径よりも小さい外径をもった外周面303を有する円板304からなり、内周面301と環状突起203の外周面207との間及び外周面303と環状突起210の内周面208との間に夫々環状隙間A1及びA2をもって下部環状凹所204に配されていると共に上面305を下部環状凹所204の開口より上方に配して上部環状平板状部102の下面105に摺接させ、下面306を下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209に摺接させて上、下部ケース100、200間に配される。
【0078】
上部ケース100は、円筒垂下部108の端部を環状肩部214に臨ませて環状突起203の端部と径方向に、円筒垂下部106の端部を下部外側環状溝211に配して環状突起210の端部及び環状係合突起205の端部の夫々と径方向に夫々重畳させ、係合部104を被係合部206に弾性装着させて、下部ケースに組み合わされている。
【0079】
第四の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1において、下部ケース200の下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部環状平板状部102の下面105と夫々摺接するスラスト軸受片300の上、下面305、306との摺動界面には、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が500cSt以上500000cSt以下、好ましくは25℃における動粘度が1000cSt以上100000cSt以下であり、これに増ちょう剤を含有し、混合ちょう度を200以上400以下、好ましくは250以上350以下としたシリコーングリースが介在されていると共に環状隙間A1及びA2並びに外側環状隙間210に夫々同等のシリコーングリースが充填保持されている。
【0080】
このように下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部環状平板状部102の下面105と夫々摺接するスラスト軸受片300の上、下面305、306との摺動界面に前記シリコーングリースが介在することにより、低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われ、摺動時にスティックスリップ現象を生じることなくスティックスリップ現象に起因する異常摩擦音の発生もなく、環状隙間A1及びA2にシリコーングリースが充填保持されることにより、スラスト軸受片300の下面306と下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209との摺動界面に常時、シリコーングリースが供給されるので、摺動面間でのシリコーングリースの枯渇等を生じることがなく、長期間にわたり低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われる。
【0081】
第四の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1において、上部ケース100は、円筒垂下部108の端部を環状肩部214に臨ませて環状突起203の端部と径方向に重畳させ、円筒垂下部106の端部を下部外側環状溝211に配して環状突起210及び環状係合突起205の端部と径方向に夫々重畳させ、係合部104を被係合部206に弾性装着させて、下部ケース200に組合わされていることにより、合成樹脂製スラスト滑り軸受1の内周面側に円筒垂下部108と環状突起203との重畳部にラビリンス作用による密封部が、また外周面側に円筒垂下部106と環状突起210及び環状係合突起205との重畳部及び係合部104と被係合部206との弾性装着部の夫々にラビリンス作用による密封部が夫々形成されることにより、また下部外側環状溝211にシリコーングリースが充填保持されることにより、係合部104と被係合部206との弾性装着部から侵入した塵埃等異物は、当該下部外側環状溝211に充填保持されたシリコーングリースに捕獲されて摺動界面への侵入を阻止されるので、塵埃等異物の侵入に対し、外径側において前記ラビリンス作用による密封部とで二重の防止効果が発揮される。
【0082】
第四の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1においても、スラスト軸受片300は、前記第一の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1のスラスト軸受片300と同様であって、図2に示すように、円板304からなるスラスト軸受片300の上、下面305、306に円孔302を囲む環状溝307と、一端が環状溝307に開口し、他端が円板304からなるスラスト軸受片300の外周面303で開口して円周方向に沿って等間隔に形成された放射状溝308を有しているのが好ましく、これら環状溝307及び放射状溝308には、前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持される。
【0083】
第四の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1においても、上部ケース100及び下部ケース200は、前記第一の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1の上部ケース100及び下部ケース200と同様に、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適であり、またスラスト軸受片300を形成する樹脂としては、上部ケース100及び下部ケース200を形成する熱可塑性合成樹脂との摺動特性が良好なポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適である。
【0084】
図7は、第五の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1を示す。斯かる合成樹脂製スラスト滑り軸受1は、合成樹脂製の上部ケース100と、合成樹脂製の下部ケース200と、上、下部ケース100、200間に配される合成樹脂製のスラスト軸受片300とを具備している。
【0085】
上部ケース100は、中央部に円孔101を有する上部環状平板状部102と、円孔101と環状肩部110を介して径方向外方に離れて上部環状平板状部102の下面105に一体に形成された円筒垂下部108と、円筒垂下部108と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部102の下面105に一体に形成されていると共に円筒垂下部108と上部環状平板状部102の下面105と協働して上部環状凹所109を形成する円筒垂下部106と、円筒垂下部106と協働して上部外側環状溝107を形成するように、円筒垂下部106と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部102の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部103と、円筒係合垂下部103の端部内周面に形成された係合部104とを備えている。
【0086】
下部ケース200は、中央部に円孔101と連通する挿通孔201を有する下部環状平板状部202と、挿通孔201と同径の内径をもって下部環状平板状部202に一体に形成された環状突起215と、環状突起215と協働して下部内側環状溝216を形成するように、環状突起215と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の上面209に一体に形成された環状突起203と、環状突起203と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の上面209に一体に形成されていると共に環状突起203と下部環状平板状部202の上面209と協働して下部環状凹所204を形成する環状突起210と、環状突起210と協働して下部外側環状溝211を形成するように、環状突起210と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の外周縁に一体に形成された環状係合突起205と、環状係合突起205の端部外周面に形成された被係合部206とを備えている。
【0087】
スラスト軸受片300は、環状突起203の外径よりも大きい内径をもった内周面301によって規定された円孔302を有すると共に環状突起210の内径よりも小さい外径をもった外周面303を有する円板304からなり、内周面301と環状突起203の外周面207との間及び外周面303と環状突起210の内周面208との間に夫々環状隙間A1及びA2をもって下部環状凹所204に配されていると共に上面305を下部環状凹所204の開口より上方に配して上部環状平板状部102の下面105に摺接させ、下面306を下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209に摺接させて上、下部ケース100、200間に配される。
【0088】
上部ケース100は、円筒垂下部108の端部を下部内側環状溝216に配して環状突起215及び環状突起203の端部と径方向に、円筒垂下部106の端部を下部外側環状溝211に配して環状突起210及び環状係合突起205の端部の夫々と径方向に夫々重畳させ、係合部104を被係合部206に弾性装着させて、下部ケース200に組合わされている。
【0089】
第五の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1において、下部ケース200の下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部環状平板状部102の下面105と夫々摺接するスラスト軸受片300の上、下面305、306との摺動界面には、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が500cSt以上500000cSt以下、好ましくは25℃における動粘度が1000cSt以上100000cSt以下であり、これに増ちょう剤を含有し、混合ちょう度を200以上400以下、好ましくは250以上350以下としたシリコーングリースが介在されていると共に環状隙間A1及びA2並びに内側及び外側環状隙間216、211に夫々同等のシリコーングリースが充填保持されている。
【0090】
このように下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部環状平板状部102の下面105と夫々摺接するスラスト軸受片300の上、下面305、306との摺動界面に前記シリコーングリースが介在することにより、低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われ、摺動時にスティックスリップ現象を生じることなくスティックスリップ現象に起因する異常摩擦音の発生もなく、環状隙間A1及びA2にシリコーングリースが充填保持されることにより、スラスト軸受片300の下面306と下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209との摺動界面に常時、シリコーングリースが供給されるので、摺動面間でのシリコーングリースの枯渇等を生じることがなく、長期間にわたり低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われる。
【0091】
第五の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1において、上部ケース100は、円筒垂下部108の端部を下部内側環状溝216に配して環状突起215及び環状突起203の端部と径方向に夫々重畳させ、円筒垂下部106の端部を下部外側環状溝211に配して環状突起210及び環状係合突起205の端部と径方向に夫々重畳させ、係合部104を被係合部206に弾性装着させて、下部ケース200に組合わされていることにより、合成樹脂製スラスト滑り軸受1の内周面側に円筒垂下部108と環状突起215及び環状突起203との重畳部にラビリンス作用による密封部が、また外周面側に円筒垂下部106と環状突起210及び環状係合突起205との重畳部及び係合部104と被係合部206との弾性装着部にラビリンス作用による密封部が夫々形成されることにより、また内径側に形成された下部内側環状溝216と外径側に形成された下部外側環状溝211に夫々シリコーングリースが充填保持されることにより、係合部104と被係合部206との弾性装着部又は内径側のラビリンス部からから侵入した塵埃等異物は、当該下部内側環状溝216及び下部外側環状溝211に充填保持されたシリコーングリースに捕獲されて摺動界面への侵入を阻止されるので、塵埃等異物の侵入に対し、内径側及び外径側において前記ラビリンス作用による密封部とで二重の防止効果が発揮される。
【0092】
第五の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1においても、スラスト軸受片300は、前記第一の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1のスラスト軸受片300と同様であって、図2に示すように、円板304からなるスラスト軸受片300の上、下面305、306に円孔302を囲む環状溝307と、一端が環状溝307に開口し、他端が円板304からなるスラスト軸受片300の外周面303で開口して円周方向に沿って等間隔に形成された放射状溝308を有しているのが好ましく、これら環状溝307及び放射状溝308には、前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持される。
【0093】
第五の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1においても、上部ケース100及び下部ケース200は、前記第一の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1の上部ケース100及び下部ケース200と同様に、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適であり、またスラスト軸受片300を形成する樹脂としては、上部ケース100及び下部ケース200を形成する熱可塑性合成樹脂との摺動特性が良好なポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適である。
【0094】
図8は、本例の第六の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1を示す。斯かる合成樹脂製スラスト滑り軸受1は、合成樹脂製の上部ケース100と、合成樹脂製の下部ケース200と、上、下部ケース100、200間に配される合成樹脂製のスラスト軸受片300とを具備している。
【0095】
上部ケース100は、中央部に円孔101を有する上部環状平板状部102と、円孔101と同径の内径をもって上部環状平板状部102の下面105に一体に形成された円筒垂下部111と、円筒垂下部111と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部102の下面105に一体に形成されていると共に円筒垂下部111の外周面と協働して上部内側環状溝112を形成する円筒垂下部108と、円筒垂下部108と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部102の下面105に一体に形成されていると共に円筒垂下部108と上部環状平板状部102の下面105と協働して上部環状凹所109を形成する円筒垂下部106と、円筒垂下部106と協働して上部外側環状溝107を形成するように、円筒垂下部106と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部102の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部103と、円筒係合垂下部103の端部内周面に形成された係合部104とを備えている。
【0096】
下部ケース200は、中央部に円孔101に連通する挿通孔201を有する下部環状平板状部202と、挿通孔201から環状肩部214を介して径方向外方に離れて下部環状平板状部202の上面209に一体に形成された環状突起217と、環状突起217と協働して下部内側環状溝216を形成するように、環状突起217と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の上面209に一体に形成された環状突起203と、環状突起203と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の上面209に一体に形成されていると共に環状突起203と下部環状平板状部202の上面209と協働して下部環状凹所204を形成する環状突起210と、環状突起210と協働して下部外側環状溝211を形成するように、環状突起210と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部202の外周縁に一体に形成された環状係合突起205と、環状係合突起205の端部外周面に被係合部206とを備えている。
【0097】
スラスト軸受片300は、環状突起203の外径よりも大きい内径をもった内周面301で規定された円孔302を有すると共に環状突起210の内径よりも小さい外径をもった外周面303を有する円板304からなり、内周面301と環状突起203の外周面207との間及び外周面303と環状突起210の内周面208との間に夫々環状隙間A1及びA2をもって下部環状凹所204に配されると共に上面305を下部環状凹所204の開口より上方に配して上部環状平板状部102の下面105に摺接させ、下面306を下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209に摺接させて上、下部ケース100、200間に配される。
【0098】
上部ケース100は、円筒垂下部111の端部を環状肩部214に臨ませて環状突起217の端部と重畳させ、円筒垂下部108の端部を下部内側環状溝216に配して環状突起217及び環状突起203の端部と径方向に夫々重畳させ、円筒垂下部106の端部を下部外側環状溝211に配して環状突起210及び環状係合突起205の端部と径方向に夫々重畳させ、係合部104を被係合部206に弾性装着させて、下部ケース200に組合わされている。
【0099】
第六の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1において、下部ケース200の下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部環状平板状部102の下面105と夫々摺接するスラスト軸受片300の上、下面305、306との摺動界面には、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が500cSt以上500000cSt以下、好ましくは25℃における動粘度が1000cSt以上100000cSt以下であり、これに増ちょう剤を含有し、混合ちょう度を200以上400以下、好ましくは250以上350以下としたシリコーングリースが介在されていると共に環状隙間A1及びA2並びに内側及び外側環状隙間216、211に夫々同等のシリコーングリースが充填保持されている。
【0100】
このように下部環状凹所204に配されて下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209及び上部環状平板状部102の下面105と夫々摺接するスラスト軸受片300の上、下面305、306との摺動界面に前記シリコーングリースが介在することにより、低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われ、摺動時にスティックスリップ現象を生じることなくスティックスリップ現象に起因する異常摩擦音の発生もなく、環状隙間A1及びA2にシリコーングリースが充填保持されることにより、スラスト軸受片300の下面306と下部環状凹所204の底面を規定する下部環状平板状部202の上面209との摺動界面に常時、シリコーングリースが供給されるので、摺動面間でのシリコーングリースの枯渇等を生じることがなく、長期間にわたり低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われる。
【0101】
第六の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1において、上部ケース100は、円筒垂下部111の端部を環状肩部214に臨ませて環状突起217の端部と径方向に重畳させ、円筒垂下部108の端部を下部内側環状溝216に配して環状突起217及び環状突起203の端部と径方向に夫々重畳させ、円筒垂下部106の端部を下部外側環状溝211に配して環状突起210及び環状係合突起205の端部と径方向に夫々重畳させ、係合部104を被係合部206に弾性装着させて、下部ケース200に組合わされていることにより、合成樹脂製スラスト滑り軸受1の内周面側に円筒垂下部111と環状突起217との重畳部、円筒垂下部108と環状突起217及び環状突起203との重畳部にラビリンス作用による密封部が、また外周面側に円筒垂下部106と環状突起210及び環状係合突起205との重畳部及び係合部104と被係合部206との弾性装着部にラビリンス作用による密封部が夫々形成されることにより、また内径側に形成された下部内側環状溝216と外径側に形成された下部外側環状溝211に夫々シリコーングリースが充填保持されることにより、係合部104と被係合部206との弾性装着部又は内径側のラビリンス部からから侵入した塵埃等異物は、当該下部内側環状溝216及び下部外側環状溝211に充填保持されたシリコーングリースに捕獲されて摺動界面への侵入を阻止されるので、塵埃等異物の侵入に対し、内径側及び外径側において前記ラビリンス作用による密封部とで二重の防止効果が発揮される。
【0102】
第六の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1においても、スラスト軸受片300は、前記第一の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1のスラスト軸受片300と同様であって、図2に示すように、円板304からなるスラスト軸受片300の上、下面305、306に円孔302を囲む環状溝307と、一端が環状溝307に開口し、他端が円板304からなるスラスト軸受片300の外周面303で開口して円周方向に沿って等間隔に形成された放射状溝308を有しているのが好ましく、これら環状溝307及び放射状溝308には、前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持される。
【0103】
第六の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1においても、上部ケース100及び下部ケース200は、前記第一の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1の上部ケース100及び下部ケース200と同様に、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適であり、またスラスト軸受片300を形成する樹脂としては、上部ケース100及び下部ケース200を形成する熱可塑性合成樹脂との摺動特性が良好なポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用されて好適である。
【0104】
上記した第一、第四及び第五の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1の夫々では、上述の構成に加えて、第三の実施の形態の合成樹脂製スラスト滑り軸受1と同様に、下部環状平板状部202の下面212に、挿通孔201と同径の内径を有する円筒部213が一体に形成されてもよい。
【0105】
以上のように、本発明の合成樹脂製スラスト滑り軸受は、合成樹脂製の上部ケース100と、合成樹脂製の下部ケース200と、上、下部ケース100、200間に配される合成樹脂製のスラスト軸受片300とを具備しており、上、下部ケース100、200と上、下部ケース100、200間に配されるスラスト軸受片300との摺動界面に、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が100cSt以上500000cSt以下(100mm/s以上500000mm/s以下)、好ましくは25℃における動粘度が1000cSt以上100000cSt以下(1000mm/s以上100000mm/s以下)であり、これに増ちょう剤を含有して混合ちょう度を200以上400以下、好ましくは250以上350以下としたシリコーングリースが介在しているので、低摩擦性を発揮して円滑な摺動が行われ、摺動時にスティックスリップ現象を生じることなく、当該スティックスリップ現象に起因する異常摩擦音の発生を防止でき、また、下部ケース200の外周側又は内周側及び外周側に形成された内側環状溝及び外側環状溝に上記シリコーングリースを充填保持した場合には、外部、すなわち上部ケース100の係合部と下部ケースの被係合部との弾性装着部又は内径側のラビリンス部からから侵入した塵埃等異物を当該シリコーングリースにおいて捕獲して摺動界面への侵入を阻止するので、塵埃等異物の摺動界面への侵入に対し、内径側及び外径側に形成されたラビリンス作用による密封部とで二重の侵入防止効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の好ましい第一の実施の形態の断面図である。
【図2】図1に示すスラスト軸受片の平面図である。
【図3】本発明の好ましい第二の実施の形態の断面図である。
【図4】本発明の好ましい第三の実施の形態の断面図である。
【図5】図4に示す形態をストラット型サスペンションに組込んだ例の断面図である。
【図6】本発明の好ましい第四の実施の形態の断面図である。
【図7】本発明の好ましい第五の実施の形態の断面図である。
【図8】本発明の好ましい第六の実施の形態の断面図である。
【図9】従来の合成樹脂製スラスト滑り軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0107】
1 合成樹脂製スラスト滑り軸受
100 上部ケース
101 円孔
102 環状平板状部
103 円筒係合垂下部
104 係合部
200 下部ケース
201 挿通孔
202 環状平板状部
203 環状突起
204 環状凹所
205 環状突起
206 被係合部
300 スラスト軸受片
301 内周面
302 円孔
303 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部環状平板状部を有する合成樹脂製の上部ケースと、この上部ケースに当該上部ケースの軸心回りで回転自在となるように重ね合わされていると共に上部環状平板状部に対面した下部環状平板状部、この下部環状平板状部に同心に配された第一及び第二の環状突起及びこの第一及び第二の環状突起で囲まれた下部環状凹所を有する合成樹脂製の下部ケースと、下部環状凹所に配されて下部環状凹所の底面を規定する下部環状平板状部の上面及び上部環状平板状部の下面と摺接すると共に中央部に円孔を有する円板からなる合成樹脂製のスラスト軸受片とを具備しており、上部ケースは、その外周縁で下部ケースの外周縁に弾性装着させて、下部ケースに組合わされてなる合成樹脂製スラスト滑り軸受であって、下部環状凹所の底面を規定する下部環状平板部の上面及び上部環状平板状部の下面とこれら上面及び下面に夫々摺接するスラスト軸受片の下面及び上面との摺動界面に、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が100cSt以上500000cSt以下であり、これに増ちょう剤を含有して混合ちょう度を200以上400以下としたシリコーングリースが介在していることを特徴とする合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項2】
シリコーングリースは、基油がシリコーン油であって、25℃における動粘度が1000cSt以上100000cSt以下であり、増ちょう剤を含有した混合ちょう度が250以上350以下である請求項1に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項3】
上部環状平板状部は、中央部に円孔を有しており、下部環状平板状部は、中央部に上部環状平板状部の円孔と連通する挿通孔を有しており、上部ケースは、上部環状平板状部の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部と、この円筒係合垂下部の内周面に形成された係合部とを備えており、下部ケースは、第二の環状突起の外周面に形成された被係合部を備えており、第一の環状突起は、下部環状平板状部の挿通孔と同径の内径を有して下部環状平板状部の上面に一体に形成されており、第二の環状突起は、第一の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の外周縁に一体に形成されていると共に第一の環状突起と下部環状平板状部の上面と協働して下部環状凹所を形成しており、上部ケースは、係合部を被係合部に弾性装着させて下部ケースに組合わされてなる請求項1又は2に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項4】
スラスト軸受片の中央部の円孔を規定する内周面は第一の環状突起の外径よりも大きな直径を有すると共にスラスト軸受片の外周面は第二の環状突起の内径よりも小さな外径を有しており、スラスト軸受片は、その円孔を規定する内周面と第一の環状突起の外周面との間及びその外周面と第二の環状突起の内周面との間に夫々環状隙間をもって下部環状凹所に配されており、これら環状隙間の夫々に前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持されている請求項3に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項5】
上部環状平板状部は、中央部に円孔を有しており、下部環状平板状部は、中央部に上部環状平板状部の円孔と連通する挿通孔を有しており、上部ケースは、上部環状平板状部の円孔の周縁から径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の下面に一体に形成された円筒垂下部と、この円筒垂下部と協働して上部外側環状溝を形成するように、円筒垂下部と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部と、この円筒係合垂下部の内周面に形成された係合部とを備えており、下部ケースは、第二の環状突起と協働して下部外側環状溝を形成するように、第二の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の外周縁に一体に形成された環状係合突起と、この環状係合突起の外周面に形成された被係合部とを備えており、第一の環状突起は、下部環状平板状部の挿通孔と同径の内径を有して下部環状平板状部の上面に一体に形成されており、第二の環状突起は、第一の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の上面に一体に形成されていると共に第一の環状突起と下部環状平板状部の上面と協働して下部環状凹所を形成しており、上部ケースは、円筒垂下部を下部外側環状溝に配して第二の環状突起及び環状係合突起の夫々と径方向に重畳させ、係合部を被係合部に弾性装着させて、下部ケースに組合わされてなる請求項1又は2に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項6】
上部環状平板状部は、中央部に円孔を有しており、下部環状平板状部は、中央部に上部環状平板状部の円孔と連通する挿通孔を有しており、上部ケースは、上部環状平板状部の円孔と同径の内径をもって上部環状平板状部の下面に一体に形成された第一の円筒垂下部と、この第一の円筒垂下部の外周面と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の下面に一体に形成されていると共に第一の円筒垂下部と上部環状平板状部の下面と協働して上部環状凹所を形成する第二の円筒垂下部と、この第二の円筒垂下部と協働して上部外側環状溝を形成するように、第二の円筒垂下部と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部と、この円筒係合垂下部の内周面に形成された係合部とを備えており、下部ケースは、第二の環状突起と下部環状平板部の上面と協働して下部外側環状溝を形成するように、第二の環状突起の外周面と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の外周縁に一体に形成された環状係合突起と、この環状係合突起の外周面に形成された被係合部とを備えており、第一の環状突起は、下部環状平板状部の挿通孔から環状肩部を介して径方向外方に離れて下部環状平板状部の上面に一体に形成されており、第二の環状突起は、第一の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の上面に一体に形成されていると共に第一の環状突起と上部環状平板状部の上面と協働して下部環状凹所を形成しており、上部ケースは、第一の円筒垂下部を第一の環状突起と径方向に重畳させ、第二の円筒垂下部を下部外側環状溝に配して第二の環状突起及び環状係合突起の夫々と径方向に重畳させ、係合部を被係合部に弾性装着させて、下部ケースに組み合わされてなる請求項1又は2に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項7】
スラスト軸受片の中央部の円孔を規定する内周面は第一の環状突起の外径よりも大きな直径を有すると共にスラスト軸受片の外周面は第二の環状突起の内径よりも小さな外径を有しており、スラスト軸受片は、その円孔を規定する内周面と第一の環状突起の外周面との間及びその外周面と第二の環状突起の内周面との間の夫々に環状隙間をもって下部環状凹所に配されており、これら環状隙間及び下部外側環状溝の夫々に前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持されている請求項5又は6に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項8】
上部環状平板状部は、中央部に円孔を有しており、下部環状平板状部は、中央部に上部環状平板状部の円孔と連通する挿通孔を有しており、上部ケースは、上部環状平板状部の円孔と環状肩部を介して上部環状平板状部の下面に一体に形成された第一の円筒垂下部と、第一の円筒垂下部の外周面と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の下面に一体に形成されていると共に第一の円筒垂下部と上部環状平板状部の下面と協働して上部環状凹所を形成する第二の円筒垂下部と、第二の円筒垂下部と協働して上部外側環状溝を形成するように、第二の円筒垂下部と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部と、円筒係合垂下部の内周面に形成された係合部とを備えており、下部ケースは、挿通孔と同径の内径をもって下部環状平板状部に一体に形成された第三の環状突起と、第二の環状突起と協働して下部外側環状溝を形成するように、第二の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の外周縁に一体に形成された環状係合突起と、環状係合突起の外周面に形成された被係合部とを備えており、第一の環状突起は、第三の環状突起と協働して下部内側環状溝を形成するように、第三の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の上面に一体に形成されており、第二の環状突起は、第一の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の上面に一体に形成されていると共に第一の環状突起と下部環状平板状部の上面と協働して下部環状凹所を形成しており、上部ケースは、第一の円筒垂下部を下部内側環状溝に配して第一の環状突起及び第三の環状突起と径方向に夫々重畳させ、第二の円筒垂下部の端部を下部外側環状溝に配して第二の環状突起及び環状係合突起の夫々と径方向に重畳させ、係合部を被係合部に弾性装着させて、下部ケースに組合わされてなる請求項1又は2に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項9】
上部環状平板状部は、中央部に円孔を有しており、下部環状平板状部は、中央部に上部環状平板状部の円孔と連通する挿通孔を有しており、上部ケースは、円孔と同径の内径をもって上部環状平板状部の下面に一体に形成された第一の円筒垂下部と、第一の円筒垂下部と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の下面に一体に形成されていると共に第一の円筒垂下部と協働して上部内側環状溝を形成する第二の円筒垂下部と、第二の円筒垂下部と径方向外方に所定の隙間を隔てて上部環状平板状部の下面に一体に形成されていると共に第二の円筒垂下部と上部環状平板状部の下面と協働して上部環状凹所を形成する第三の円筒垂下部と、第三の円筒垂下部と協働して上部外側環状溝を形成するように、第三の円筒垂下部と径方向外方に所定の間隔を隔てて上部環状平板状部の外周縁に一体に形成された円筒係合垂下部と、円筒係合垂下部の内周面に形成された係合部とを備えており、下部ケースは、挿通孔から環状肩部を介して径方向外方に離れて下部環状平板状部の上面に一体に形成された第三の環状突起と、第二の環状突起と協働して下部外側環状溝を形成するように、第二の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の外周縁に一体に形成された環状係合突起と、環状係合突起の外周面に形成された被係合部とを備えており、第一の環状突起は、第三の環状突起と協働して下部内側環状溝を形成するように、第三の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて下部環状平板状部の上面に一体に形成されており、第二の環状突起は、下部環状平板状部の上面に第一の環状突起と径方向外方に所定の間隔を隔てて一体に形成されていると共に第一の環状突起と下部環状平板状部の上面と協働して下部環状凹所を形成しており、上部ケースは、第一の円筒垂下部を下部ケースの環状肩部に臨ませて第三の環状突起の端部と径方向に重畳させ、第二の円筒垂下部を下部内側環状溝に配して第一の環状突起及び第三の環状突起と径方向に夫々重畳させ、第三の円筒垂下部を下部外側環状溝に配して第二の環状突起及び環状係合突起の夫々と径方向に夫々重畳させ、係合部を被係合部に弾性装着させて、下部ケースに組合わされてなる請求項1又は2に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項10】
スラスト軸受片の中央部の円孔を規定する内周面は第一の環状突起の外径よりも大きな直径を有すると共にスラスト軸受片の外周面は第二の環状突起の内径よりも小さな外径を有しており、スラスト滑り軸受片は、その円孔を規定する内周面と第一の環状突起の外周面との間及びその外周面と第二の環状突起の内周面との間に夫々環状隙間をもって下部環状凹所に配されており、これら環状隙間、下部内側環状溝及び下部外側環状溝に夫々前記シリコーングリースと同等のシリコーングリースが充填保持されている請求項8又は9に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項11】
スラスト軸受片は、その上面及び下面に円孔を囲む環状溝と、一端が環状溝に開口し、他端が外周面で開口して円周方向に形成された複数個の放射状溝とを具備する請求項1から10のいずれか一項に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。
【請求項12】
下部ケースは、下部環状平板状部の下面に挿通孔と同径の内径を有して一体に形成された円筒部を備えている請求項1から11のいずれか一項に記載の合成樹脂製スラスト滑り軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−53908(P2010−53908A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217450(P2008−217450)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】