説明

合成開口レーダ及びコンパクト・ポラリメトリSAR処理方法、プログラム

【課題】汎用型の垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを利用して、コンパクト・ポラリメトリSARを簡単に実現する合成開口レーダを提供する。
【解決手段】アンテナ部が、送受信モジュール毎に送信偏波を水平偏波又は垂直偏波に切替可能であって、水平偏波と垂直偏波の2つの偏波で同時に受信可能な垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナである。制御系が、送信時に前記フェーズドアレイアンテナをエレベーション方向に電気的に分割して、その一方を水平偏波送信、残りを垂直偏波送信に設定し、受信時に水平偏波と垂直偏波の2偏波同時受信に設定する。SAR処理装置が、複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、フルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を得ることでポラリメトリSAR処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用型の垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを用いて、円偏波又は直線偏波による送信/垂直及び水平偏波による受信のコンパクト・ポラリメトリSARを実現するための合成開口レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
合成開口レーダ(SAR: Synthetic Aperture Radar)のデータは、通常、送信偏波と受信偏波について、各々、水平偏波(H偏波)と垂直偏波(V偏波)の組合せにより、4種類の偏波状態、すなわち、水平−水平偏波(H−H)、水平−垂直偏波(HV)、垂直−垂直偏波(VV)、垂直−水平偏波(VH)を取り得る。
【0003】
前記4種類の偏波のデータがあれば、観測対象の反射偏波特性を完全に再現することができるが、4種類の偏波を同時に取得するためには、フルポラリメトリSARが必要とされる。フルポラリメトリSARでは、1パルス毎に水平偏波と垂直偏波とを交互に送信し、両方の偏波で同時に受信することで、4種類の偏波データを取得する。
【0004】
特に衛星SARでは、フルポラリメトリSARでの観測幅やデータ量が課題となるため、近年、コンパクト・ポラリメトリSARが提案されている。コンパクト・ポラリメトリSARは、円偏波又は45度直線偏波で送信を行い、水平偏波と垂直偏波との2偏波で受信を行うSARであり、レーダの反射特性を利用し、統計処理を行うことで、4種類の偏波状態を再現する。その方法は例えば、非特許文献1に示されている。また、非特許文献2には、一般化したアンテナを用いて、コンパクト・ポラリメトリSARを実現する構成が示されている。
【非特許文献1】Jean-Claude Souyris, Roger Fjørtoft, Sandra Mingot, and Jong-Sen Lee, “Compact Polarimetry Based on Symmetry Properties of Geophysical Media: The π/4 Mode”, IEEE TRANSACTIONS ON GEOSCIENCE AND REMOTE SENSING, 2005
【非特許文献2】R.Keith Raney, “Hybrid-Polarity SAR Architecture”,IGARSS’2006
【特許文献1】特開2006−322848号公報
【特許文献2】特開2002−064321号公報
【特許文献3】特開平03−089606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1及び2に開示されたコンパクト・ポラリメトリSARでは、送信が円偏波又は45度直線偏波、受信が水平偏波と垂直偏波とであり、異なる種類の偏波を使用する必要があるため、構成が複雑になるという課題がある。
【0006】
また、従来のフルポラリメトリSARや、水平−水平(HH)偏波や垂直−垂直(VV)偏波等の単偏波によるSARでも運用できるようにしようとすると、さらに構成が複雑化し、質量増加・アンテナロスの増加・信頼性低下等が発生するという課題がある。
【0007】
また、特許文献1は、水平偏波(H)と垂直偏波(V)とを交互に送信するフルポラリメトリSARを対象とするものであるが、本発明が意図する水平偏波(H)と垂直偏波(V)とを同時に送信するコンパクト・ポラリメトリSARとは、SARの実現方法を全く異にするものである。
【0008】
また、特許文献2には、所定の偏波特性を有する第3のアレーアンテナと第3のアレーアンテナの偏波特性に対して直交する偏波特性を有する第4のアレーアンテナとを組み合わせた構成が開示され、特許文献3には、相対位相の設定で同相に設定することで全体の偏波を垂直又は水平偏波に設定する構成が開示されているが、送信が円偏波又は45度直線偏波、受信が水平偏波と垂直偏波との異なる種類の偏波を用いるには、位相中心を共用するH偏波放射素子・V偏波放射素子に対し同時に送信給電をする必要がある等、コンパクト・ポラリメトリSARの構成が複雑になるという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、汎用型の垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを利用して、コンパクト・ポラリメトリSARを簡単に実現する合成開口レーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る合成開口レーダは、アンテナ部と、制御系を含む電気回路部と、SAR画像再生装置と、コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置とを有し、
前記アンテナ部が、送受信モジュール毎に送信偏波を水平偏波又は垂直偏波に切替可能であって、水平偏波と垂直偏波の2つの偏波で同時に受信可能な垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナであり、
前記制御系が、送信時に前記フェーズドアレイアンテナのアンテナ面を電気的に分割して、その一方を水平偏波送信、残りを垂直偏波送信に設定し、受信時に水平偏波と垂直偏波の2偏波同時受信に設定するものであり、
前記コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置が、前記アンテナ部・電気回路部により送受信され前記SAR画像再生装置により各々画像化された複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、フルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を得ることでコンパクト・ポラリメトリSAR処理を行うものであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係るプログラムは、送受信モジュール毎に送信偏波を水平偏波又は垂直偏波に切替可能であって、水平偏波と垂直偏波の2つの偏波で同時に受信可能な垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを制御するコンピュータに、
送信時に前記フェーズドアレイアンテナのアンテナ面を電気的に分割して、その一方を水平偏波送信、残りを垂直偏波送信に設定し、受信時に水平偏波と垂直偏波の2偏波同時受信に設定する機能を実行させることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係るプログラムは、垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナで受信した信号に基づいてコンパクト・ポラリメトリSAR処理を行うコンピュータに、
複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、前記ターゲットベクトルについて、近接ピクセルの空間平均により、共分散行列のデータを求め、
幾何学的な関係に基づいて画像の観測位置におけるルック角を求め、その求めたルック角に基づいて水平偏波と垂直偏波との相対位相を求め、
前記共分散行列のデータと前記水平偏波と垂直偏波との相対位相のデータに基づいてフルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を出力することにより、
水平偏波・垂直偏波同時送信の下でのコンパクト・ポラリメトリSAR処理について観測幅内のレンジ方向位置に応じて相対位相に対応した処理を実行させることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係るコンパクト・ポラリメトリSAR処理方法は、送受信モジュール毎に送信偏波を水平偏波又は垂直偏波に切替可能であって、水平偏波と垂直偏波の2つの偏波で同時に受信可能な垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを用い、前記フェーズドアレイアンテナで受信した信号に基づいて、水平偏波・垂直偏波同時送信の下でのコンパクト・ポラリメトリSAR処理について観測幅内のレンジ方向位置に応じて相対位相に対応した処理を行うコンパクト・ポラリメトリSAR処理方法であって、
送信時に前記フェーズドアレイアンテナのアンテナ面を電気的に分割して、その一方を水平偏波送信、残りを垂直偏波送信に設定し、受信時に水平偏波と垂直偏波の2偏波同時受信に設定し、
複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、フルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を得ることでコンパクト・ポラリメトリSAR処理を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、汎用型の垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを用いてコンパクト・ポラリメトリSARを実現でき、従って、円偏波送信素子や45度直線偏波送信素子を使用する必要がなく、また、位相中心を共用する水平偏波素子と垂直偏波素子に同時に送信給電する必要がなく、簡単なアンテナ構成でコンパクト・ポラリメトリSARを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。
【0016】
本発明の実施形態の基本的な構成を図1及び2に基づいて説明する。本発明の実施形態では図1に示すように、アンテナ部1として、送受信モジュール毎に送信偏波を水平偏波又は垂直偏波に切替可能であって、かつ水平偏波と垂直偏波との2つの偏波で同時に受信可能なフルポラリメトリSARを実現するために使用されている垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを用いる。電気回路部2、特にその制御系25の制御の下で、前記フェーズドアレイアンテナをエレベーション方向に電気的に分割し、その一方を水平偏波送信、残りを垂直偏波送信にそれぞれ設定する。そして、前記制御系25の制御の下で、前記フェーズドアレイアンテナによる受信は、汎用のフルポラリメトリSARと同様に、水平偏波と垂直偏波との2偏波同時受信に設定する。そして、前記制御系25の制御の下で、送受信モジュールの位相設定を、ビーム指向の制御に必要な設定とすることで直線偏波送信(特に45度直線偏波送信)のコンパクト・ポラリメトリSARを、また、ビーム指向の制御に必要な位相設定に加えて送信のみ、水平偏波送信の送受信モジュールと垂直偏波送信の送受信モジュールとの位相をずらす(特にπ/2ラジアン(90度))ことで、円偏波送信のコンパクト・ポラリメトリSARを実現する。さらに、ビーム中心以外では完全な直線偏波送信又は円偏波送信とはならず、楕円偏波送信となるため、観測幅内の位置による水平偏波と垂直偏波との間の相対位相のずれに応じたコンパクト・ポラリメトリSAR処理を行う。
【0017】
上述した本発明の実施形態に係るポラリメトリSAR処理方法を実施するための合成開口レーダは図1及び2に示すように、アンテナ部1と、制御系25を含む電気回路部2と、SAR画像再生装置3と、コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4とを有している。
【0018】
そして、アンテナ部1が、送受信モジュール毎に送信偏波を水平偏波又は垂直偏波に切替可能であって、水平偏波と垂直偏波との2つの偏波で同時に受信可能な垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナで構成している。また、前記制御系25が、送信時に前記フェーズドアレイアンテナをエレベーション方向に電気的に分割して、その一方を水平偏波送信、残りを垂直偏波送信にそれぞれ設定し、受信時に水平偏波と垂直偏波との2偏波同時受信に設定している。また、コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4が、前記アンテナ部1・電気回路部2により送受信され前記SAR画像再生装置3により各々画像化された複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、フルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を得ることでコンパクト・ポラリメトリSAR処理を行う構成としたものである。
【0019】
制御系25が、前記フェーズドアレイアンテナ1の送受信モジュールの位相設定を、ビーム指向の制御に必要な設定とすることで直線偏波送信(特に45度直線偏波)の制御を行い、前記ビーム指向の制御に必要な設定に加えて水平偏波送信の送受信モジュールと垂直偏波送信の送受信モジュールとで位相をずらす(特にπ/2(90度))ことで円偏波送信の制御を行う構成としてもよいものである。
【0020】
コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4が図2に示すように、水平偏波・垂直偏波同時送信の下でのコンパクト・ポラリメトリSAR処理について観測幅内のレンジ方向位置に応じて相対位相に対応した処理を行う、共分散行列演算部4aと、ルック角・相対位相演算部4bと、収束演算部4cとを含み、
共分散行列演算部4aが、複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、前記ターゲットベクトルについて、近接ピクセルの空間平均により、共分散行列のデータを求め、
ルック角・相対位相演算部4bが、幾何学的な関係に基づいて画像の観測位置におけるルック角を求め、その求めたルック角に基づいて水平偏波と垂直偏波との相対位相を求め、
収束演算部4cが、前記共分散行列のデータと前記水平偏波と垂直偏波との相対位相のデータに基づいてフルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を出力する構成としてもよいものである。
【0021】
なお、上述した電気回路2の制御系25及びコンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4とをハードウェアとして構築したが、制御系25及びコンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4が実行する上述した機能をソフトウェアとして構築し、これをコンピュータに実行させるプログラムとして構築してもよいものである。
【0022】
次に、具体例を用いて本発明の実施形態を更に詳細に説明する。
【0023】
本発明の実施形態に係る合成開口レーダは、その基本的構成が図1に示すように、アンテナ部1と、電気回路部2の制御系25と、サンプリングデータからSAR画像データを再生するSAR画像再生装置3と、SAR画像データからコンパクト・ポラリメトリSAR画像データを生成するコンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4とを有しているが、図2に基づいて、アンテナ部1と、電気回路部2と、コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4との具体的な構成について説明する。なお、SAR画像再生装置3は、汎用の構成のものを用いている。SAR画像再生装置3は、図2に示す受信系23,24が出力するサンプリングデータに基づいてSAR画像データを再生することが可能な構成であればよく、本発明の実施形態に係る特徴がSAR画像再生装置3にないため、その詳細を省略している。
【0024】
電気回路部2は図2に示すように、送信信号を生成しアンテナ部1に出力する1系統の送信系22と、アンテナ部1からの2偏波の受信信号を各々受信・サンプリングを行う2系統の受信系23及び24と、全体の制御を行う制御系25より構成される。
【0025】
アンテナ部1は、複数の送受信モジュール(TRM)11と、各送受信モジュール11に接続されたV偏波放射素子12及びH偏波放射素子13と、各送受信モジュール11と電気回路部2との間で送信信号の分配と受信信号の合成とを行う分合波器14とより構成される。
【0026】
各送受信モジュール11には、V偏波放射素子12とH偏波放射素子13とが共に接続されており、V偏波放射素子12又はH偏波放射素子13のいずれかに対し送信信号を出力すると共に、V偏波放射素子12とH偏波放射素子13との両方の信号を各々受信することが可能である。
【0027】
送受信モジュール11は図4に示すように、送信と受信、偏波毎に位相を変更可能な移相器11d,11jと、LNA11b,11hと、HPA11fと、スイッチ11c,11eと、サーキュレータ11a,11g等を含む一般的な構成のものである。送受信モジュール11による送信は、1パルスではV偏波放射素子12又はH偏波放射素子13のいずれか一方のみに送信可能な(同時に送信する必要がない)一般的な構成である。また、送受信モジュール11による受信は、V偏波放射素子12又はH偏波放射素子13から別々に同時に受信可能である。
【0028】
図2に示す制御系25が、電気回路部2の全体の制御を行う他に、フェーズドアレイアンテナ1の送受信モジュールの位相設定を、ビーム指向の制御に必要な設定とすることで直線偏波送信(特に45度直線偏波)の制御を行い、前記ビーム指向の制御に必要な設定に加えて水平偏波送信の送受信モジュールと垂直偏波送信の送受信モジュールとで位相をずらす(特にπ/2(90度))ことで円偏波送信の制御を行う。なお、上述した電気回路2の制御系25をハードウェアとして構築したが、制御系25が実行する上述した機能をソフトウェアとして構築し、これをコンピュータに実行させるプログラムとして構築してもよいものである。
【0029】
図2に示すコンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4が、水平偏波・垂直偏波同時送信の下でのコンパクト・ポラリメトリSAR処理について観測幅内のレンジ方向位置に応じて相対位相に対応した処理を行う、共分散行列演算部4aと、ルック角・相対位相演算部4bと、収束演算部4cとを含んでいる。共分散行列演算部4aが、複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、前記ターゲットベクトルについて、近接ピクセルの空間平均により、共分散行列のデータを求める。ルック角・相対位相演算部4bが、幾何学的な関係に基づいて画像の観測位置におけるルック角を求め、その求めたルック角に基づいて水平偏波と垂直偏波との相対位相を求める。収束演算部4cが、前記共分散行列のデータと前記水平偏波と垂直偏波との相対位相のデータに基づいてフルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を出力する。なお、上述したコンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4をハードウェアとして構築したが、コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4が実行する上述した機能をソフトウェアとして構築し、これをコンピュータに実行させるプログラムとして構築してもよいものである。
【0030】
次に、図2に示す本発明の実施形態に係る合成開口レーダを用いて、ポラリメトリSAR処理方法を実施する場合を説明する。
【0031】
図3は、フェーズドアレイアンテナ1を正面方向から見た図であり、アンテナの送受信モジュールの偏波・位相の設定を示している。図3において、横方向がアジマス(Az)方向であり、上下方向がエレベーション(EL)方向を示している。図3の例では、フェーズドアレイアンテナ1のアンテナ面を2分割し、その上半分では送信をV偏波/0度、受信をH+V偏波/0度に設定し、下半分では送信をH偏波/+0度又は−90度又は+90度、受信をH+V偏波/+0度に設定している。
【0032】
図7は、本実施形態におけるアンテナ面の偏波・位相設定を示すものであり、フェーズドアレイアンテナ1の複数のH偏波素子12と複数のV偏波素子13とがアンテナ面を形成している。図6の下方向が真下方向であり、角度βの方向がアンテナ法線方向であり、角度αの方向にアンテナ面からビームが放射される(ビーム方向)。図6において、斜めのアンテナ面に沿う方向がエレベーション方向(EL)である。
【0033】
図7での「No」の欄に記載したNo.1〜2Nは各送受信モジュール11に対応する各偏波素子12,13の番号を示している。また、「送信偏波」は、図3に示すアンテナ面をエレベーション(EL)方向に2分割していることを示している。具体的には、送受信モジュール11の複数の素子12,13によるアンテナ面が、No.1〜No.Nまでの素子で形成される上半分のアンテナ面と、No.N+1〜No.2Nまでの素子で形成される下半分のアンテナ面に2分割され、その上半分のアンテナ面を使ってV偏波での送信を行い、下半分のアンテナ面を使ってH偏波での送信を行う。なお、図7には、45度直線偏波送信、左旋円偏波送信、右旋円偏波送信に場合分けして、送信偏波、送信位相を記載しており、さらに受信での受信偏波と受信位相を追加して記載している。
【0034】
フェーズドアレイアンテナ1のアンテナ面を使って受信する場合には、全ての送受信モジュール11とも、H偏波とV偏波とを同時に受信する。
【0035】
本実施形態における送信時の信号経路が図5に示すような太い矢印で示す経路であり、受信時の信号経路が図6に示すような太い矢印で示す経路である。
【0036】
また、電気回路部2の制御系25は、同時受信する際における光受信モジュール11の位相設定を、所定のビーム走査の角度に必要な位相φ(i)に設定する。前記位相φ(i)を式(1)に示す。式(1)において、位相φ(i)は送受信モジュール11の番号iに相当する位相を示し、dは番号iの送受信モジュール11とこれに隣接する更新モジュール11とにおける素子間隔を示し、λは波長を示し、βは図7でのアンテナ法線方向を示し、αはアンテナ面に対するビーム方向を示している。
φ(i)= −{2π×i×d×sin(β−α)}/λ ・・・・・(1)
【0037】
また、電気回路部2の制御系25は、送信する際における光受信モジュール11の位相設定を行う場合、式(1)に示す位相φ(i)に加えて、アンテナ面での下半分のみ、0ラジアン、+π/2ラジアン(90度)又は−π/2ラジアン(−90度)を加算して、送信時の送受信モジュールの位相設定を行う。なお、逆に、アンテナ面での上半分のみ、0ラジアン、+π/2ラジアン(90度)又は−π/2ラジアン(−90度)を加算して、送信時の送受信モジュールの位相設定を行うようにしてもよいものである。
【0038】
上述した制御系25の制御により、アンテナ面全体では、上半分からはV偏波で、下半分からは0又はπ/2ラジアン遅れた(又は進んだ)位相でH偏波での送信が行われ、全体として45度直線偏波又は円偏波で送信されることになる。受信はH偏波とV偏波との両方を複数の送受信モジュール11で同時に受信することで、コンパクト・ポラリメトリを実現する。なお、実際に送受信モジュール11に設定する位相は、上記位相を2πラジアンで割った余り(0〜2πラジアン)である。
【0039】
ただし、この場合、完全に45度直線偏波又は円偏波となるのは、図7に示すビーム方向(ビーム指向の中心)のみである。水平偏波と垂直偏波との相対位相は、観測幅内のレンジ方向位置により異なり、楕円偏波となる。
【0040】
図8において、アンテナ面から放射されたビームで地表の地表位置A点を観測した際におけるアンテナ面の真下方向に対する地表位置A点の角度をルック角γとすると、ルック角γに対応する地表位置Aにおける水平偏波と垂直偏波の相対位相δφは式(2)である。45度直線偏波送信設定時の相対位相δφを式(2a)、左旋回円偏波送信設定時の相対位相δφを式(2b)、右旋回円偏波送信設定時の相対位相δφを式(2c)としてそれぞれ示す。
45度直線偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ)−sin(β−α)) ・・・・・・(2a)
左旋円偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ) −sin(β−α)) +π/2・・(2b)
右旋円偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ) −sin(β−α)) −π/2・・(2c)
【0041】
図8では、45度直線偏波送信設定時、左旋円偏波送信設定時及び右旋円偏波送信設定時と、A点における水平偏波と垂直偏波との相対位相との関係を対応して記載している。
【0042】
コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4は、コンパクト・ポラリメトリSAR処理を、図8に示す地表の観測幅内のレンジ方向位置に応じて式(2a),(2b),(2c)に示す相対位相δφに対応して行う。45度直線偏波(δφ=0)の場合のコンパクト・ポラリメトリSAR処理は、例えば、非特許文献1に示されているが、本実施形態でのコンパクト・ポラリメトリSAR処理では、図8に示す地表の観測幅内の位置により相対位相δφが変化する楕円偏波であるため、相対位相δφに対応した処理を行う。
【0043】
コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4による処理を図9に基づいて具体的に説明する。コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4の共分散演算部4aは、SAR画像再生装置3が出力するデータを入力する(図9のステップS1)。SAR画像再生装置3が出力するデータはSAR画像データである。前記SAR画像の各ピクセルは、水平偏波受信と垂直偏波受信との2つのデータkφH及びkφVより構成される。2つのデータkφH及びkφVは、それぞれ複素データである。両偏波データをベクトルとして扱ったのが、ターゲットベクトルkφであり、式(3)で定義する。
【数3】

【0044】
共分散演算部4aは、式(3)で定義したターゲットベクトルkφについて、近傍ピクセルの空間平均により、式(4)により、共分散行列を求める(図9のステップS2)。
【数4】

式(4)において、右上付き*は複素共約を、演算子<・>は近傍ピクセルの空間平均を示す。
【0045】
コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4のルック角・相対位相演算部4bは、図8に示す幾何的な関係から、画像の地表位置A点におけるルック角γを求める。さらにルック角・相対位相演算部4bは、求めたγから、式(2)(式(2a),(2b),(2c))に基づき、水平偏波と垂直偏波との相対位相δφを求める(図9のステップS3)。
【0046】
次に、コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4の収束演算部4cは、共分散演算部4aが求めた共分散行列(式(4))と、ルック角・相対位相演算部4bが求めた相対位相δφ(図8)とを元に、式(5)〜(9)の収束演算によって、H,V,X,Pをそれぞれ計算する(図9のステップS4,S5)。
【0047】
具体的に説明すると、収束演算部4cは、初期値として交差偏波データの分散X=0を置いて、まず、式(5)より|ρH−V|の値を計算する。その|ρH−V|の値を式(6)に代入して、交差偏波データの分散Xの値を計算する。収束演算部4は、計算した交差偏波データの分散Xの値を再び式(5)に代入することを繰り返し、|ρH−V|と交差偏波データの分散Xとを収束させる。
【数5】

【数6】

【0048】
次に、収束演算部4cは、収束した前記交差偏波データの分散Xの値を式(7)〜(9)に代入することで、水平−水平偏波データの分散H,垂直−垂直偏波データの分散V,水平―水平偏波のデータと垂直−垂直偏波データとの共分散Pを求め、その求めたH,V,X,Pを式(11)に代入することで、フルポラリメトリの式(10)に示すターゲットベクトルkFPの共分散行列(式(11))に相当する演算結果を得る(図9のステップS6)。なお、式(10)のh,x,vは、フルポラリメトリの水平−水平偏波(HH)データ、垂直−垂直(VV)データ、交差偏波データ(HV)に相当する。
【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【0049】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、汎用型の垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを用いてコンパクト・ポラリメトリSARを実現することができる。したがって、円偏波送信素子や45度直線偏波送信素子を使用する必要がなく、また、位相中心を共用する水平偏波素子と垂直偏波素子とに同時に送信給電する必要がなく、簡単なアンテナ構成でコンパクト・ポラリメトリSARを実現する効果がある。
【0050】
また、汎用型の垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを使用するため、コンパクト・ポラリメトリSARだけでなく、フルポラリメトリSARや、水平−水平(HH)や垂直−垂直(VV)等の単偏波を用いたSARでも運用できる。
【0051】
また、フェーズドアレイアンテナの送信アンテナ面をエレベーション方向に分割しているため、送信のエレベーション方向ビーム幅は受信のビーム幅の約2倍となるが、送受信の合成ビーム幅が狭い受信ビーム幅とほぼ同じであり、信号対虚像比等の性能は大きく損なわれない効果がある。
【0052】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
【0053】
図1及び図2では、アンテナ面をエレベーション方向に分割した上半分をV偏波送信、下半分をH偏波送信としたが、逆に、分割したアンテナ面の上半分を使ってH偏波での送信、下半分を使ってV偏波での送信を行うようにしてもよいものである。また、図3に示す付加位相についても、逆でも良い。さらに、図3に示す付加位相は、必ずしも0度や±90度でなくても良い。この場合は、図8に示す水平偏波と垂直偏波の相対位相δφに付加位相分を追加することで実現できる。
【0054】
また、図2に示す例では、H偏波放射素子とV偏波放射素子とが同じ送受信モジュール11に接続される構成となっているが、別々の送受信モジュール11に接続される構成でも良い。また、図4に示す送受信モジュールの構成は一例であり、送信と受信、偏波毎に位相を変更できる機能があれば、他の構成でも良い。
【0055】
また、各送受信モジュールは1偏波のみを受信する構成として、図10に示すように、フェーズドアレイアンテナ1のアンテナ面をエレベーション方向(EL)とアジマス方向(Az)にそれぞれ2分割し、その上半分の左側での送信をV偏波/+0度、受信をH偏波/+0度に設定し、上半分の右側での送信をV偏波/+0度、受信をV偏波/+0度に設定し、その下半分の左側での送信をH偏波/+0度又は±90度、受信をH偏波/+0度に設定し、下半分の右側での送信をH偏波/+0度又は±90度、受信をV偏波/+0度に設定してもよいものである。なお、図10において、左側と右側との送信及び受信の偏波と付加位相との関係を逆にしてもよいものである。
【0056】
また、図12に示すように、送受信モジュール11が、送受信にそれぞれ共用する、移相器11rと、LNA11nと、HPA11pと、スイッチ11k,11qと、サーキュレータ11mとにより構成されている。図12に示す送受信モジュール11は、H偏波とV偏波とを同時に受信する構成に代えて、パルス毎にH偏波とV偏波とを交互に受信するように構成してある。この場合、図11に示すように、H偏波で受信する際には、アンテナ面を分割した上半分での送信をV偏波/+0度、受信をH偏波/+0度に設定し、その下半分での送信をH偏波/+0度又は−90度又は+90度、受信をH偏波/+0度に設定し、V偏波で受信する際には、アンテナ面を分割した上半分での送信をV偏波/+0度、受信をV偏波/+0度に設定し、その下半分での送信をH偏波/+0度又は−90度又は+90度、受信をV偏波/+0度に設定し、これらをパルス毎に切り替える。
【0057】
図11及び図12に示す例では、受信偏波を交互に切り替えるため、パルス繰り返し周期を速くする必要があり、観測幅が制限されるが、送受信モジュール11・電気回路部2共に、受信系が1系統のみで良いため、全体構成を簡略化・軽量化できる効果がある。
【0058】
また、図7の実施形態では、ビーム指向制御分の位相設定を理想的な設定としているが、成形アンテナパターンを考慮した位相設定としても良い。また、図7では、エレベーション方向にのみビーム指向を走査する構成としているが、エレベーション方向(EL)及びアジマス方向(Az)の2方向にビーム指向を走査する設定としても良い。
【0059】
また、図1及び図3に示す例では、送信偏波・位相をエレベーション方向に分割しているが、アジマス(Az)方向に分割しても良い。また、図2では、SAR画像再生装置3とコンパクト・ポラリメトリSAR処理装置4とが別々の装置であるが、一台のコンピュータに対応する処理ソフトウェアを搭載しても良い。また、図2におけるV偏波放射素子とH偏波放射素子との送受信モジュール11に対する接続関係は逆であってもよいものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、汎用型の垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを用いてコンパクト・ポラリメトリSARを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る合成開口レーダの基本的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る合成開口レーダの具体的な一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態において、フェーズドアレイアンテナの偏波及び付加位相の設定の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における送受信モジュールの具体的な一例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態における送信時の信号経路を示す図である。
【図6】本発明の実施形態における受信時の信号経路を示す図である。
【図7】本発明の実施形態におけるアンテナ面の偏波・位相設定の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態における水平偏波と垂直偏波との相対位相の関係を示す図である。
【図9】本発明の実施形態におけるコンパクト・ポラリメトリSAR処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態において、フェーズドアレイアンテナの偏波及び付加位相の設定の他の例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態において、受信偏波を交互に切り替える設定を示す図である。
【図12】本発明の実施形態において、単偏波受信の例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 アンテナ部(フェーズドアレイアンテナ)
2 電気回路部
3 SAR画像再生装置
4 コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置
11 送受信モジュール
12 V偏波放射素子
13 H偏波放射素子
25 制御系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ部と、制御系を含む電気回路部と、SAR画像装置と、コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置とを有し、
前記アンテナ部が、送受信モジュール毎に送信偏波を水平偏波又は垂直偏波に切替可能であって、水平偏波と垂直偏波の2つの偏波で同時に受信可能な垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナであり、
前記制御系が、送信時に前記フェーズドアレイアンテナのアンテナ面を電気的に分割して、その一方を水平偏波送信、残りを垂直偏波送信に設定し、受信時に水平偏波と垂直偏波の2偏波同時受信に設定するものであり、
前記コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置が、前記アンテナ部・前記電気回路部により送受信され前記SAR画像再生装置により各々画像化された複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、フルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を得ることでコンパクト・ポラリメトリSAR処理を行うものであることを特徴とする合成開口レーダ。
【請求項2】
前記制御系が、前記フェーズドアレイアンテナの送受信モジュールの位相設定を、ビーム指向の制御に必要な設定とすることで、45度直線偏波送信の制御を行う請求項1に記載の合成開口レーダ。
【請求項3】
前記制御系が、前記フェーズドアレイアンテナの送受信モジュールの位相設定をビーム指向の制御に必要な設定とし、前記ビーム指向の制御に必要な設定に加えて水平偏波送信と垂直偏波送信の送受信モジュールとで位相をずらすことで円偏波送信の制御を行う請求項1に記載の合成開口レーダ。
【請求項4】
前記制御系が、前記フェーズドアレイアンテナのアンテナ面をエレベーション方向に電気的に分割する請求項1に記載の合成開口レーダ。
【請求項5】
前記制御系が、前記フェーズドアレイアンテナのアンテナ面をエレベーション方向及びアジマス方向に電気的に分割する請求項1に記載の合成開口レーダ。
【請求項6】
前記コンパクト・ポラリメトリSAR処理装置が、水平偏波・垂直偏波同時送信の下でのコンパクト・ポラリメトリSAR処理について観測幅内のレンジ方向位置に応じて相対位相に対応した処理を行う、共分散行列演算部と、ルック角・相対位相演算部と、収束演算部及び共分散行列演算部とを含み、
前記共分散行列演算部が、複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、前記ターゲットベクトルについて、近接ピクセルの空間平均により、共分散行列のデータを求めるものであり、
前記ルック角・相対位相演算部が、幾何学的な関係に基づいて画像の観測位置におけるルック角を求め、その求めたルック角に基づいて水平偏波と垂直偏波との相対位相を求めるものであり、
前記収束演算部が、前記共分散行列のデータと前記水平偏波と垂直偏波との相対位相のデータに基づいてフルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を出力するものである請求項1に記載の合成開口レーダ。
【請求項7】
前記共分散行列演算部が、複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、前記ターゲットベクトルについて、近接ピクセルの空間平均により、
【数4】

に基づいて共分散行列のデータを求める請求項6に記載の合成開口レーダ。
【請求項8】
前記ルック角・相対位相演算部が、幾何学的な関係に基づいて画像の観測位置でのルック角に基づいて
式(2a)、式(2b)又は式(2c)
45度直線偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ)−sin(β−α)) ・・・・・・(2a)
左旋円偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ) −sin(β−α)) +π/2・・(2b)
右旋円偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ) −sin(β−α)) −π/2・・(2c)
に基づいて、水平偏波と垂直偏波との相対位相を求める請求項6に記載の合成開口レーダ。
【請求項9】
前記収束演算部が、前記共分散行列のデータと前記水平偏波と垂直偏波との相対位相のデータに基づき、
初期値として交差偏波データの分散X=0として、式(5)より|ρH−V|を計算し、それを式(6)に代入して交差偏波データの分散Xを計算し、これを再び式(5)に代入することを繰り返して、|ρH−V|と交差偏波データの分散Xを収束させ、収束した交差偏波データの分散Xを式(7)〜(9)に代入することで、水平−水平偏波データの分散Hと、垂直−垂直偏波データの分散Vと、水平−水平偏波データと垂直−垂直偏波データとの共分散Pとを求め、これらを式(11)に代入することで、式(10)に示すフルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を得る請求項6に記載の合成開口レーダ。
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【請求項10】
送受信モジュール毎に送信偏波を水平偏波又は垂直偏波に切替可能であって、水平偏波と垂直偏波の2つの偏波で同時に受信可能な垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを制御するコンピュータに、
送信時に前記フェーズドアレイアンテナをエレベーション方向に電気的に分割して、その一方を水平偏波送信、残りを垂直偏波送信に設定し、受信時に水平偏波と垂直偏波の2偏波同時受信に設定する機能を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
前記コンピュータに、
前記フェーズドアレイアンテナの送受信モジュールの位相設定を、ビーム指向の制御に必要な設定とすることで45度直線偏波送信の制御を行う、あるいは、さらに前記ビーム指向の制御に必要な設定に加えて水平偏波送信と垂直偏波送信の送受信モジュールとで位相をずらすことで円偏波送信の制御を行う機能を実行させる請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナで受信した信号に基づいてコンパクト・ポラリメトリSAR処理を行うコンピュータに、
複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、前記ターゲットベクトルについて、近接ピクセルの空間平均により、共分散行列のデータを求め、
幾何学的な関係に基づいて画像の観測位置におけるルック角を求め、その求めたルック角に基づいて水平偏波と垂直偏波との相対位相を求め、
前記共分散行列のデータと前記水平偏波と垂直偏波との相対位相のデータに基づいてフルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を出力することにより、
水平偏波・垂直偏波同時送信の下でのコンパクト・ポラリメトリSAR処理について観測幅内のレンジ方向位置に応じて相対位相に対応した処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
前記コンピュータに、
複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、前記ターゲットベクトルについて、近接ピクセルの空間平均により、
【数4】

に基づいて共分散行列のデータを求め、
幾何学的な関係に基づいて画像の観測位置でのルック角に基づいて
式(2a)、式(2b)又は式(2c)
45度直線偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ)−sin(β−α)) ・・・・・・(2a)
左旋円偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ) −sin(β−α)) +π/2・・(2b)
右旋円偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ) −sin(β−α)) −π/2・・(2c)
に基づいて
水平偏波と垂直偏波との相対位相を求め、
前記共分散行列のデータと前記水平偏波と垂直偏波との相対位相のデータに基づき、
初期値として交差偏波データの分散X=0として、式(5)より|ρH−V|を計算し、それを式(6)に代入して交差偏波データの分散Xを計算し、これを再び式(5)に代入することを繰り返して、|ρH−V|と交差偏波データの分散Xを収束させ、収束した交差偏波データの分散Xを式(7)〜(9)に代入することで、水平−水平偏波データの分散Hと、垂直−垂直偏波データの分散Vと、水平−水平偏波データと垂直−垂直偏波データとの共分散Pとを求め、これらを式(11)に代入することで、式(10)に示すフルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を得る機能を実行させる請求項12に記載のプログラム。
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【請求項14】
送受信モジュール毎に送信偏波を水平偏波又は垂直偏波に切替可能であって、水平偏波と垂直偏波の2つの偏波で同時に受信可能な垂直・水平偏波共用フェーズドアレイアンテナを用い、前記フェーズドアレイアンテナで受信した信号に基づいて、水平偏波・垂直偏波同時送信の下でのコンパクト・ポラリメトリSAR処理について観測幅内のレンジ方向位置に応じて相対位相に対応した処理を行うコンパクト・ポラリメトリSAR処理方法であって、
送信時に前記フェーズドアレイアンテナをエレベーション方向に電気的に分割して、その一方を水平偏波送信、残りを垂直偏波送信に設定し、受信時に水平偏波と垂直偏波の2偏波同時受信に設定し、
複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、フルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を得ることでコンパクト・ポラリメトリSAR処理を行うことを特徴とするコンパクト・ポラリメトリSAR処理方法。
【請求項15】
前記フェーズドアレイアンテナの送受信モジュールの位相設定を、ビーム指向の制御に必要な設定とすることで直線偏波送信の制御を行い、前記ビーム指向の制御に必要な設定に加えて水平偏波送信と垂直偏波送信の送受信モジュールとで位相をずらすことで円偏波送信の制御を行う請求項14に記載のコンパクト・ポラリメトリSAR処理方法。
【請求項16】
複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、前記ターゲットベクトルについて、近接ピクセルの空間平均により、共分散行列のデータを求め、
幾何学的な関係に基づいて画像の観測位置におけるルック角を求め、その求めたルック角に基づいて水平偏波と垂直偏波との相対位相を求め、
前記共分散行列のデータと前記水平偏波と垂直偏波との相対位相のデータに基づいてフルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を出力することにより、
水平偏波・垂直偏波同時送信の下でのコンパクト・ポラリメトリSAR処理について観測幅内のレンジ方向位置に応じて相対位相に対応した処理を行う請求項14に記載のコンパクト・ポラリメトリSAR処理方法。
【請求項17】
複素データである水平偏波受信データと垂直偏波受信データとをターゲットベクトルとして取扱い、前記ターゲットベクトルについて、近接ピクセルの空間平均により、
【数4】

に基づいて共分散行列のデータを求め、
幾何学的な関係に基づいて画像の観測位置でのルック角に基づいて
式(2a)、式(2b)又は式(2c)
45度直線偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ)−sin(β−α)) ・・・・・・(2a)
左旋円偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ) −sin(β−α)) +π/2・・(2b)
右旋円偏波送信設定時の相対位相δφ
δφ = 2π×N×d/λ×(sin(β−γ) −sin(β−α)) −π/2・・(2c)
に基づいて
水平偏波と垂直偏波との相対位相を求め、
前記共分散行列のデータと前記水平偏波と垂直偏波との相対位相のデータに基づき、
初期値として交差偏波データの分散X=0として、式(5)より|ρH−V|を計算し、それを式(6)に代入して交差偏波データの分散Xを計算し、これを再び式(5)に代入することを繰り返して、|ρH−V|と交差偏波データの分散Xを収束させ、収束した交差偏波データの分散Xを式(7)〜(9)に代入することで、水平−水平偏波データの分散Hと、垂直−垂直偏波データの分散Vと、水平−水平偏波データと垂直−垂直偏波データとの共分散Pとを求め、これらを式(11)に代入することで、式(10)に示すフルポラリメトリのターゲットベクトルの共分散行列に相当する演算結果を得る処理を実行する請求項14に記載のコンパクト・ポラリメトリSAR処理方法。
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−74918(P2009−74918A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244034(P2007−244034)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】