合焦装置、合焦方法、合焦プログラム及び顕微鏡
【課題】本発明は、高速かつ高精細なサンプル像を取得させる。
【解決手段】本発明は、生体サンプルSPL全体を含むサムネイル像SNGを基に撮像範囲ARにおける生体サンプルSPLの位置を検出し、生体サンプルSPLの位置に基づいて設定された読み出し領域PRAで撮像された検波像を取得し、その取得した検波像に基づいて撮像範囲ARの合焦位置を決定するので、生体サンプルSPLに対して高速かつ精度よく合焦することができ、かくして高速かつ高精細な拡大像を取得することができる。
【解決手段】本発明は、生体サンプルSPL全体を含むサムネイル像SNGを基に撮像範囲ARにおける生体サンプルSPLの位置を検出し、生体サンプルSPLの位置に基づいて設定された読み出し領域PRAで撮像された検波像を取得し、その取得した検波像に基づいて撮像範囲ARの合焦位置を決定するので、生体サンプルSPLに対して高速かつ精度よく合焦することができ、かくして高速かつ高精細な拡大像を取得することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合焦装置、合焦方法、合焦プログラム及び顕微鏡に関し、例えば生体サンプルを拡大して観察する分野に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体サンプルに対して割り当てられた範囲の画像を、対物レンズの焦点位置を光軸方向に所定間隔ごとに移動させてそれぞれ撮像し、撮像された画像の輝度値に基づいて生体サンプルに対する合焦位置を検出する顕微鏡が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−2534公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述した顕微鏡は、撮像素子における結像面全面の電気信号を取得して画像に変換するので、光軸方向に所定間隔ごとに多数の画像を取得しなくてはならない場合、それぞれの位置で撮像素子から電気信号を読み出すのに時間がかかってしまい、従って合焦位置を検出するまでに時間がかかってしまうといった問題があった。
【0005】
一方、撮像素子の結像面における所定幅の領域だけの画像を取得する、所謂パーシャルスキャンを顕微鏡に適応した場合、撮像素子から所定幅の領域だけの電気信号しか読み出さないので、読み出しにかかる時間を短縮することができ、従って短時間で合焦位置を検出することができる。
【0006】
しかしながら、この方法では、撮像範囲における電気信号を読み出す所定幅の領域に対応する位置に生体サンプルが存在しない場合、取得した画像に生体サンプルが写ることはなく、生体サンプルに対して正確に合焦させられないといった問題が生じる。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、高速かつ高精細なサンプル像を取得させ得る合焦装置、合焦方法、合焦プログラム及び顕微鏡を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、合焦装置であって、拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定部と、サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに撮像素子に結像される像のうちの設定部によって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて範囲に対する合焦位置を決定する合焦部とを有する。
【0009】
また本発明においては、合焦方法であって、拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定ステップと、サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに撮像素子に結像される像のうちの設定ステップによって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて範囲に対する合焦位置を決定する合焦ステップとを有する。
【0010】
さらに本発明においては、合焦プログラムであって、コンピュータに対して、拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定ステップと、サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに撮像素子に結像される像のうちの設定ステップによって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて範囲に対する合焦位置を決定する合焦ステップとを実行させる。
【0011】
さらに本発明においては、顕微鏡であって、サンプルの部位を拡大する対物レンズと、対物レンズにより拡大される部位を結像する撮像素子と、対物レンズに拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定部と、サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに撮像素子に結像される像のうちの設定部によって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて範囲に対する合焦位置を決定する合焦部とを有する。
【0012】
これにより、サンプルに対して割り当てられた範囲に対して、サンプルの位置に応じて撮像素子から読み出す領域を設定するので、撮像素子の全ての領域の像を取得する場合よりも高速に合焦位置を検出するための像を取得でき、またサンプルが写された像から合焦位置を決定するので精度よくサンプルに対する合焦位置を検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、サンプルに対して割り当てられた範囲に対して、サンプルの位置に応じて撮像素子から読み出す領域を設定するので、撮像素子の全ての領域の像を取得する場合よりも高速に合焦位置を検出するための像を取得でき、またサンプルが写された像から合焦位置を決定するので精度よくサンプルに対する合焦位置を検出することができ、かくして高速かつ高精細なサンプル像を取得させ得る合焦装置、合焦方法、合焦プログラム及び顕微鏡を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】顕微鏡の構成を示す略線図である。
【図2】撮像素子の読み出し領域を示す略線図である。
【図3】統括制御部の機能的構成を示す略線図である。
【図4】サムネイル像を示す略線図である。
【図5】撮像範囲の割当を示す略線図である。
【図6】読み出し領域の候補を示す略線図である。
【図7】読み出し領域の設定を示す略線図である。
【図8】拡大像取得処理手順を示すフローチャートである。
【図9】読み出し領域が中央固定の場合を示す略線図である。
【図10】読み出し領域の位置及び数の設定を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態について説明する。なお、説明は以下の順序とする。
<1.実施の形態>
<2.他の実施の形態>
【0016】
<1.実施の形態>
[1−1.顕微鏡の構成]
図1において、本一実施の形態による顕微鏡1を示す。この顕微鏡1は、生体サンプルSPLが配されるプレパラートPRT全体を含む像(以下、これをサムネイル像とも呼ぶ)を撮像するサムネイル像撮像部10、及び生体サンプルSPLが所定倍率で拡大された像(以下、これを拡大像とも呼ぶ)を撮像する拡大像撮像部20を有する。
【0017】
プレパラートPRTは、血液等の結合組織、上皮組織又はそれらの双方の組織などの組織切片又は塗抹細胞でなる生体サンプルSPLを、所定の固定手法によりスライドガラスに固定したものであり、該組織切片又は塗抹細胞には必要に応じて染色が施される。この染色には、HE(ヘマトキシリン・エオシン)染色、ギムザ染色又はパパニコロウ染色等に代表される一般染色のみならず、FISH(Fluorescence In-Situ Hybridization)や酵素抗体法等の蛍光染色が含まれる。
【0018】
プレパラートPRTの一端側は、氏名、日時、染色の種類などの付帯情報が記載されたラベルLB(図5)が貼付される場合もある。
【0019】
顕微鏡1には、プレパラートPRTより一回り小さい開口部を有し、該開口部の上にプレパラートPRTが配されるステージ31が設けられる。また顕微鏡1は、ステージ31に対してステージ駆動機構32が設けられる。
【0020】
このステージ駆動機構32は、ステージ面に対して平行となる方向(X軸−Y軸方向)と、直交する方向(Z軸方向)にステージ31を駆動するものとされる。ちなみに、プレパラートPRTが配される側のステージ面(以下、これをプレパラート配置面とも呼ぶ)には、一般に、プレパラートPRTを定位置に抑止する抑止部(図示せず)が設けられる。
【0021】
サムネイル像撮像部10は、ステージ31のプレパラート配置面とは逆の面側に光源11が設けられる。光源11は、一般染色が施された生体サンプルSPLを照明する光(以下、これを明視野照明光とも呼ぶ)と、特殊染色が施された生体サンプルSPLを照明する光(以下、これを暗視野照明光とも呼ぶ)とを切り換えて照射可能なものとされる。ただし、明視野照明光又は暗視野照明光のいずれか一方だけが照射可能なものであってもよい。また、サムネイル像撮像部10は、プレパラートPRTに貼付されたラベルLBに対して光を照射するラベル光源(図示せず)が別途設けられる。
【0022】
ステージ31のプレパラート配置面側には、プレパラート配置面におけるサムネイル像撮像部10の基準位置の法線を光軸とする所定倍率の対物レンズ12が設けられる。この対物レンズ12の後方には、該対物レンズ12により集光された像を結像する撮像素子13が配される。
【0023】
一方、拡大像撮像部20は、ステージ31のプレパラート配置面とは逆の面側に明視野照明光を照射する光源21が配される。また光源21とは異なる位置(例えばプレパラート配置面側)に暗視野照明光を照射する光源(図示せず)が配される。
【0024】
光源21とステージ31との間には、プレパラート配置面における拡大像撮像部20の基準位置の法線を光軸とするコンデンサレンズ22が配される。
【0025】
ステージ31のプレパラート配置面側には、プレパラート配置面における拡大像撮像部20の基準位置の法線を光軸とする所定倍率の対物レンズ23が配される。この対物レンズ23の後方には、該対物レンズ23により拡大された像が結像される撮像素子24が配される。
【0026】
撮像素子24は、結像面IFにおける水平ラインごとの電気信号を順番に読み出すようになされており、図2(A)に示すように、結像面IF全面に対して読み出し領域FRAが設定された場合、該読み出し領域FRAの電気信号が読み出される。
【0027】
また撮像素子24は、図2(B)に示すように、結像面IFの所定幅の水平ラインに対して読み出し領域PRAが設定され得るようになされており、この場合、該読み出し領域PRAの電気信号のみが読み出される。
【0028】
なお、本実施の撮像素子24では、図3(A)〜(F)に示すように、撮像素子24の結像面IFが上下方向に6等分された読み出し領域PRA1〜PRA6が設定され得るようになされている。
【0029】
この顕微鏡1における制御系として、ステージ駆動機構32にはステージ駆動制御部41が、光源11及び21には照明制御部42が、撮像素子13にはサムネイル像撮像制御部43が、撮像素子24には拡大像撮像制御部44がデータ通信路を介して接続される。
【0030】
これら制御系は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、CPUのワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)及び演算回路などを含むコンピュータとされる。
【0031】
ステージ駆動制御部41は、ステージ駆動機構32を駆動制御し、サムネイル像を取得する場合には、光源11と対物レンズ12との間の所定位置に生体サンプルSPLが位置するようにステージ面方向(X軸−Y軸方向)にステージ31を移動させる。またステージ駆動制御部41は、プレパラートPRT全体に対物レンズ12の焦点が合うようにステージ31をZ軸方向に移動させる。
【0032】
照明制御部42は、明視野像を取得すべきモード(以下、これを明視野モードとも呼ぶ)又は暗視野像を取得すべきモード(以下、これを暗視野モードとも呼ぶ)に応じたパラメータを光源11に設定し、該光源11から照明光を照射させる。このパラメータは例えば照明光の強度や光源種類の選択などである。
【0033】
なお、明視野モードにおける照射光は一般に可視光とされる。一方、暗視野モードにおける照射光は、特殊染色で用いられる蛍光マーカを励起する波長を含む光とされる。また暗視野モードでは蛍光マーカに対する背景部分はカットアウトされる。
【0034】
光源11から照明光が照射された場合、ステージ31の開口部を介して生体サンプルSPL全体に照明光が照射される。
【0035】
サムネイル像撮像制御部43は、明視野モード又は暗視野モードに応じたパラメータを撮像素子13に設定し、該撮像素子13の結像面に結像されるプレパラートPRT全体を含むサムネイル像に応じた電気信号を取得し、該電気信号を光電変換してサムネイル像のデータを取得する。このパラメータは例えば露光の開始タイミング及び終了タイミングなどである。
【0036】
一方、拡大像を取得する場合にはステージ駆動制御部41は、ステージ駆動機構32を駆動制御し、光源11と対物レンズ12との間からコンデンサレンズ22と対物レンズ23との間に生体サンプルSPLが位置するようステージ面方向にステージ31を移動させる。
【0037】
またステージ駆動制御部41は、コンデンサレンズ22によって集められる集光部分に生体サンプルSPLが割り当てられるようステージ面方向(X軸−Y軸方向)にステージ31を移動させる。
【0038】
さらにステージ駆動制御部41は、ステージ駆動機構32を駆動制御し、集光部分に割り当てられる生体サンプルSPLの部位が対物レンズ23の焦点に合うようステージ面の直交方向(Z軸方向(つまり組織切片の奥行方向))にステージ31を移動させる。
【0039】
照明制御部42は、明視野モード又は暗視野モードに応じたパラメータを光源21又は図示しない光源に設定し、該光源21又は図示しない光源から照明光を照射させる。このパラメータは例えば照明光の強度や光源種類の選択などである。
【0040】
光源21から照明光が照射された場合、その照明光はコンデンサレンズ22によって、ステージ31におけるプレパラート配置面の基準位置に集められる。対物レンズ23の結像面には、プレパラートPRTにおける生体サンプルSPLのうち、コンデンサレンズ22によって集光される集光部分の像が拡大されて結像され、その拡大された像が対物レンズ23によって撮像素子24の撮像面に被写体像として結像される。
【0041】
拡大像撮像制御部44は、明視野モード又は暗視野モードに応じたパラメータを撮像素子24に設定し、該撮像素子24の撮像面に結像される生体サンプルSPL部位の拡大像に対応する電気信号を取得し、該電気信号を光電変換して拡大像のデータを取得する。このパラメータは例えば露光の開始タイミング及び終了タイミングなどである。
【0042】
ところでこの顕微鏡1には、該顕微鏡1の全体の制御を司る制御部(以下、これを統括制御部とも呼ぶ)40があり、これはステージ駆動制御部41、照明制御部42、サムネイル像撮像制御部43及び拡大像撮像制御部44それぞれにデータ通信路を介して接続される。この統括制御部40は、CPU、ROM、RAM、演算回路及びHDD(Hard Disc Drive)などを含むコンピュータとされる。
【0043】
統括制御部40は、サムネイル像及び拡大像を取得するプログラム(以下、これをサンプル像取得プログラムとも呼ぶ)を含む各種プログラムがROM及びHDDに格納されている。
【0044】
統括制御部40は、ROM及びHDDに格納された各種プログラムのうち、実行命令に対応するプログラムをRAMに展開し、該展開したプログラムに従ってステージ駆動制御部41、照明制御部42、サムネイル像撮像制御部43及び拡大像撮像制御部44を適宜制御する。
【0045】
[1−2.サンプル像取得処理]
統括制御部40は、サンプル像取得プログラムを実行する指示を受けた場合、該サンプル像取得プログラムをRAMに展開してサンプル像取得処理を実行する。
【0046】
統括制御部40は、サンプル像取得プログラムに従って、図4に示すように、サムネイル像取得部51、割当部52、設定部53、合焦部54及び拡大像取得部55として機能する。
【0047】
サムネイル像取得部51は、ステージ駆動制御部41及びステージ駆動機構32を介して、ステージ31に配されるプレパラートPRTが光源11と対物レンズ12との間に位置するよう、該ステージ31を移動させる。
【0048】
またサムネイル像取得部51は、照明制御部42を介して光源11を駆動させ、該光源11から生体サンプルSPL全体に照射光を照射させる。
【0049】
サムネイル像取得部51は、図5に示すように、サムネイル像撮像制御部43を介して撮像素子13により撮像されたプレパラートPRT全体を含むサムネイル像SNGを取得し、該サムネイル像SNGのデータをHDDに記憶する。
【0050】
これにより、ラベルLBを含むプレパラートPRT全体のサムネイル像SNGを保存することができるのでラベルLBの記載内容を認識させることができる。また、プレパラートPRTに油性ペンなどで医師などにより記入されたマークや記号なども同時に記録しておけるので、サムネイル像SNGを用いて該医師などが検索する際の目印として容易に識別させることができる。
【0051】
割当部52は、取得されたサムネイル像SNGから例えば輝度値を基に、生体サンプルを示す画素の領域(以下、これを生体サンプル領域とも呼ぶ)SPAとその他の領域とを区別するための領域抽出処理を施し、生体サンプル領域SPAを抽出する。
【0052】
割当部52は、サムネイル像SNGにおける生体サンプル領域SPAの画素位置と、サムネイル像SNGが撮像された際のステージ31の座標位置との関係から、ステージ31の所定の基準位置に対する生体サンプルSPLの位置を算出する。
【0053】
そして割当部52は、図6に示すように、対物レンズ23により拡大されて撮像素子24により撮像される範囲(以下、これを撮像範囲とも呼ぶ)ARを生体サンプルSPLに対して割り当てる。この撮像範囲ARは、生体サンプルSPLの全てがいずれかの撮像範囲ARに含まれ、かつ撮像範囲ARの数が最小となるように割り当てられる。
【0054】
なお、撮像範囲ARは、拡大像撮像部20の対物レンズ23の拡大倍率及び撮像素子24の撮像面サイズにより決定される。また、この図6では、撮像範囲ARが重ならない態様となっているが、隣接する領域の一部が重なる態様であってもよい。
【0055】
割当部52は、サムネイル像SNGにおける生体サンプル領域SPAに対して、生体サンプルSPLに対して割り当てられた撮像範囲ARと対応する範囲(以下、これを分割範囲とも呼ぶ)を割り当てる。すなわち、分割範囲における生体サンプル領域SPAは、それぞれ対応する撮像範囲ARに割り当てられる生体サンプルSPLを示す領域である。
【0056】
設定部53は、例えば分割範囲を上下方向に6等分し、6等分されたそれぞれの領域(以下、これを帯領域とも呼ぶ)の輝度値の分散値を算出する。そして設定部53は、算出した分散値が最も高い帯領域に対応する読み出し領域PRA1〜PRA6のいずれかをその撮像範囲ARに対する読み出し領域として設定する。
【0057】
例えば、設定部53は、図7(A)に示すように、撮像範囲ARの上側に生体サンプルSPLが位置する場合、算出される帯領域の輝度値の分散値(図7(B))を基に、この撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA1を設定する。
【0058】
また設定部53は、設定部53は、図7(C)に示すように、撮像範囲ARの下側に生体サンプルSPLが位置する場合、算出される帯領域の輝度値の分散値(図7(D))を基に、この撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA6を設定する。
【0059】
このように設定部53は、それぞれ撮像範囲ARに対応する分割範囲の帯領域における輝度値の分散値を算出し、その結果からそれぞれの撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA1〜PRA6のいずれかを設定する。
【0060】
合焦部54は、ステージ駆動制御部41及びステージ駆動機構32を介して、撮像素子24に撮像される位置に割り当てられた撮像範囲ARが位置するよう、ステージ31を移動させる。
【0061】
合焦部54は、照明制御部42を介して光源21又は図示しない光源を駆動させ、例えば光源21からコンデンサレンズ22で集光される集光部分に照射光を照射させる。
【0062】
合焦部54は、ステージ駆動制御部41及びステージ駆動機構32を介して、対物レンズ23の焦点(合焦位置)が生体サンプルSPLを含む範囲内で移動するよう、Z軸方向に所定間隔ごとにステージ31を移動させる。この所定間隔は、例えば対物レンズ23の被写体深度が設定される。
【0063】
合焦部54は、Z軸方向における所定間隔ごとのそれぞれの位置で、設定部53により設定された撮像素子24の読み出し領域PRA(PRA1〜PRA6)に結像された像(以下、これを検波像とも呼ぶ)を取得する。
【0064】
合焦部54は、Z軸方向のそれぞれの位置で取得した検波像のコントラストを算出し、最もコントラストが高い検波像を取得したZ軸方向の位置をその撮像範囲ARの合焦位置として決定する。
【0065】
拡大像取得部55は、合焦部54により決定された合焦位置にステージ31を移動させ、その位置で、撮像素子24の結像面IF全面に結像された像を拡大部位像として取得する。
【0066】
合焦部54は、拡大部位像が取得されるごとに次の撮像範囲ARが撮像素子24に撮像される位置にくるようステージ31を移動させ、上述のようにして、撮像される位置に移動された撮像範囲ARの合焦位置を検出する。拡大像取得部55は、合焦部54により撮像範囲ARの合焦位置が決定されるたびに、その合焦位置にステージ31を移動させ、その位置での拡大部位像を取得する。
【0067】
拡大像取得部55は、全ての撮像範囲ARでの拡大部位像を取得すると、該拡大部位像を結合して拡大像を生成し、該拡大像のデータをHDDに記憶する。
【0068】
このようにこの顕微鏡1は、生体サンプルSPLを鏡検状態の拡大像として記憶することで、プレパラートPRT自体を保存する場合に比べて、固定や染色等の状態を劣化させることなく長期にわたって組織切片に関する情報を保存できるようになされている。
【0069】
[1−3.サンプル像取得処理手順]
次に、上述したサンプル像取得処理の手順について、図8に示すフローチャートに従って説明する。
【0070】
実際上、統括制御部40は、ルーチンRT1の開始ステップから入って次のステップSP1へ移る。ステップSP1において統括制御部40は、サムネイル像撮像部10を適宜制御して、該サムネイル像撮像部10で撮像されるサムネイル像SNGを取得し、次のステップSP2に移る。
【0071】
ステップSP2において統括制御部40は、サムネイル像SNGから生体サンプル領域SPAを抽出し、抽出された生体サンプル領域SPAに基づいて生体サンプルSPLに対して撮像範囲ARを割り当て、次のステップSP3に移る。
【0072】
ステップSP3において統括制御部40は、サムネイル像SNGにおける生体サンプル領域SPAに対して、生体サンプルSPLに対して割り当てられる撮像範囲ARと対応する分割範囲を割り当て、次のステップSP4に移る。
【0073】
ステップSP4において統括制御部40は、分割範囲におけるぞれぞれの帯領域の輝度値の分散値を算出し、算出された分散値を基に、分割範囲に対する該撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA1〜PRA6のいずれかを設定し、次のステップSP5に移る。
【0074】
ステップSP5において統括制御部40は、拡大像撮像部20を適宜制御して、対物レンズ23に撮像される位置に割り当てられた撮像範囲ARが位置するよう、ステージ31を移動させる。
【0075】
そして統括制御部40は、対物レンズ23の焦点位置が生体サンプルSPLを含む範囲で移動するよう、Z軸方向に所定幅間隔でステージ31を移動させる。統括制御部40は、それぞれの位置で、撮像素子24の設定された読み出し領域PRA(PRA1〜RA6)で撮像された検波像を取得し、次のステップSP6に移る。
【0076】
ステップSP6において統括制御部40は、それぞれの位置で撮像された検波像のコントラストを算出し、最もコントラストが高い検波像を取得したZ軸方向の位置をその撮像範囲ARの合焦位置として決定し、次のステップSP7に移る。
【0077】
ステップSP7において統括制御部40は、決定された合焦位置にステージ31を移動させ、その位置で、撮像素子24の撮像面IF全面に結像された像を拡大部位像として取得し、次のステップSP8に移る。
【0078】
ステップSP8において統括制御部40は、全ての撮像範囲ARの拡大部位像を取得したか否かを判断し、否定結果が得られるとステップSP5に戻って、ステップSP5〜SP7を繰り返す。
【0079】
これに対してステップSP8において肯定結果が得られると統括制御部40は次のステップSP9に移って、全ての拡大部位像を結合して拡大像を生成し、次のステップに移って処理を終了する。
【0080】
[1−4.動作及び効果]
以上の構成において、顕微鏡1は、生体サンプルSPL全体を含むサムネイル像SNGを取得し、該サムネイル像SNGの生体サンプル領域SPAに基づいて、生体サンプルSPLに対して撮像範囲ARを割り当てる。
【0081】
顕微鏡1は、割り当てられた撮像範囲ARにおける帯領域の輝度値の分散値を算出し、最も分散値が高い帯領域、すなわち生体サンプルSPLの割合が最も高い帯領域に対応する読み出し領域PRA(PRA1〜PRA6)を設定する。
【0082】
顕微鏡1は、対物レンズ23の光軸方向(Z軸方向)の所定間隔ごとに、設定された読み出し領域PRA(PRA1〜PRA6)の検波像を取得し、該検波像に基づいて撮像範囲ARに対する合焦位置を決定する。
【0083】
顕微鏡1は、決定された合焦位置で撮像素子24の結像面IF全面に結像される拡大部位像を取得し、該拡大部位像を結合して拡大像を取得するようにした。
【0084】
従って顕微鏡1は、検波像を取得する際、撮像素子24の所定幅の水平ラインだけの電気信号を読み出すようにしたことにより、撮像素子24の結像面IF全面に結像される像を取得する場合と比して、1つの検波像を取得するための時間を短くすることができる。
【0085】
ここで、撮像素子における中央の所定幅に読み出し領域が固定される装置では、図9に示すように、生体サンプルSPLが撮像範囲ARにおける上側又は下側にしか位置していない場合、生体サンプルSPLが写っていない検波像しか取得することができない。この場合、生体サンプルSPLに対して合焦させることができないので、高精細な拡大部位像が取得できなくなってしまう。
【0086】
これに対して顕微鏡1は、撮像範囲ARにおける生体サンプルSPLの位置を、サムネイル像SNGを用いて検出し、生体サンプルSPLが存在する位置に読み出し領域PRAを設定するので、生体サンプルSPLが含まれる検波像を取得することができる。
【0087】
従って顕微鏡1は、生体サンプルSPLに対して精度よく合焦させることができるので、高精細な拡大部位像を取得することができる。
【0088】
以上の構成によれば、生体サンプルSPL全体を含むサムネイル像SNGを基に撮像範囲ARにおける生体サンプルSPLの位置を検出し、生体サンプルSPLの位置に基づいて設定された読み出し領域PRAで撮像された検波像を取得する。そして取得した検波像に基づいて撮像範囲ARの合焦位置を決定するので、生体サンプルSPLに対して高速かつ精度よく合焦することができ、かくして高速かつ高精細な拡大像を取得することができる。
【0089】
<2.他の実施の形態>
上述の実施の形態においては、生体サンプルSPLがサンプルとされた。しかしながらサンプルはこの実施の形態に限定されるものではない。
【0090】
上述の実施の形態においては、読み出し領域PRA(PRA1〜PRA6)が固定幅である場合について述べた。本発明はこれに限らず、読み出す幅が可変であってもよい。この場合、例えば設定部53は、撮像範囲ARにおける生体サンプルSPLが位置するとされる水平ラインに相当する部分を読み出し領域PRAに設定する。但し、生体サンプルSPLが位置するとされるライン全てを読み出し領域RPAに設定すると、その分読み出しに時間がかかってしまうため、読み出し速度と合焦精度の観点から、読み出し領域PRAの幅が適切に設定される。
【0091】
上述した実施の形態においては、撮像範囲ARに対して6つの読み出し領域PRA1〜PRA6のなかから設定されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、上下方向にさらに粗く又は細かく設定された複数の読み出し領域PRAのなかから撮像範囲ARに対して読み出し領域PRAが設定されるようにしてもよい。
【0092】
上述した実施の形態においては、読み出し領域PRA1〜PRA6が結像面IF全面に対して1/6の幅に設定された場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば全面に対して1/3や1/4などの幅であってもよい。この場合も、撮像範囲ARに対する読み出し領域PRAの幅は、読み出し速度と合焦精度の観点から適切に設定される。
【0093】
上述した実施の形態においては、撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA1〜PRA6のいずれか1つを設定するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、撮像範囲ARに対して2つ以上の読み出し領域PRAを設定するようにしてもよい。
【0094】
一例として、図10に示すように、撮像範囲ARに、上側及び下側に分かれて生体サンプルSPLが位置する場合について説明する。この場合、設定部53は、サムネイル像SNGに基づいて撮像範囲ARの上側及び下側に生体サンプルSPLが位置することを検出する。
【0095】
設定部53は、検出結果に基づいて、この撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA1及びPRA6を設定する。そして合焦部54は、Z軸方向の所定幅ごとの位置で、撮像素子24に結像される読み出し領域PRA1及びPRA6の検波像を取得し、該検波像を用いてそれぞれの読み出し領域PRA1及びPRA6での合焦位置を決定する。
【0096】
拡大像取得部55は、合焦部54により決定されたそれぞれの合焦位置にステージ31を順に移動させ、その位置で、撮像素子24の結像面IF全面に結像された像を拡大部位像として取得する。
【0097】
そして拡大像取得部55は、撮像範囲ARの上側に位置する生体サンプルSPLに合焦させて取得された拡大部位像の上半分と、撮像範囲ARの下側に位置する生体サンプルSPLに合焦させて取得された拡大部位像の下半分とを結合して該撮像範囲ARに対する拡大部位像を生成する。
【0098】
これにより顕微鏡1は、撮像範囲ARのなかに分離された生体サンプルSPLが複数存在する場合であっても、全ての生体サンプルSPL部位に対して合焦させて拡大部位像を取得することができるので、より高精細な拡大部位像を取得することができる。
【0099】
これは、プレパラートPRT上に複数の分離された組織切片が配される場合や塗抹細胞を撮像する場合、それぞれの組織切片、塗抹細胞がZ軸方向の異なる位置に固定されることがあるため、特に有用である。
【0100】
なお、この例では2つの読み出し領域PRA1及びPRA6を設定するようにした場合について述べたが、設定される読み出し領域PRAの数、位置及び幅は問わない。
【0101】
上述した実施の形態においては、帯領域の輝度値の分散値を算出し、分散値が最も高い帯領域に対応する読み出し領域PRA1〜PRA6のいずれかをその撮像範囲ARに対する読み出し領域として設定するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば帯領域における生体サンプルSPLの面積を算出し、最も面積が大きい帯領域に対応する読み出し領域PRA1〜PRA6をその撮像範囲ARに対して設定してもよい。このように、設定部53は、撮像範囲ARにおける生体サンプルSPLの位置を、分散値、面積等を算出することにより検出し、検出した生体サンプルSPLの位置に応じてその撮像範囲ARに対する読み出し領域PRAを設定する。
【0102】
上述した実施の形態においては、所定倍率の対物レンズ23が1つ設けられている場合について述べた。本発明はこれに限らず、倍率の異なる複数の対物レンズが設けられ、複数の対物レンズのなかからレンズ切換機構又は手動により選択するようにしてもよい。
【0103】
明視野照明光を照射する光源21と暗視野照明光を照射する図示しない光源が配されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、光源21及び図示しない光源が明視野照明光と暗視野照明光とを切り替え可能なもので、一方のみが配されるようにしてもよい。また、互いに異なる波長域の照射光を照射する光源素子が光源21内部に複数配されるようにしてもよい。同様に、互いに異なる波長域の照射光を照射する光源素子が図示しない光源に複数配されていてもよい。
【0104】
上述した実施の形態においては、統括制御部40がHDDに格納されているサンプル像取得処理プログラムに従い、上述したサンプル像取得処理を行うようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、サンプル像取得処理プログラムがROMに格納されていてもよく、また記憶媒体からインストールしたり、インターネットからダウンロードしたサンプル像取得処理プログラムに従って上述したサンプル像取得処理を行うようにしても良い。またその他種々のルートによってインストールしたサンプル像取得処理ログラムに従って上述したサンプル像取得処理を行うようにしても良い。
【0105】
上述した実施の形態においては、設定部として設定部53、合焦部として合焦部54が設けられるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる設定部、合焦部を設けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、生物実験、医薬の創製又は患者の経過観察などのバイオ産業上において利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1……顕微鏡、10……サムネイル像撮像部、11、21……光源、12、23……対物レンズ、13、24……撮像素子、20……拡大像撮像部、22……コンデンサレンズ、31……ステージ、32……ステージ駆動制御部、40……統括制御部、41……ステージ駆動制御部、42……照明制御部、43……サムネイル像撮像制御部、44……拡大像撮像制御部、51……サムネイル像取得部、52……割当部、53……検出部、54……設定部、55……合焦部、56……拡大像取得部、CG……比較像、PRT……プレパラートPRT……基準像。
【技術分野】
【0001】
本発明は合焦装置、合焦方法、合焦プログラム及び顕微鏡に関し、例えば生体サンプルを拡大して観察する分野に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体サンプルに対して割り当てられた範囲の画像を、対物レンズの焦点位置を光軸方向に所定間隔ごとに移動させてそれぞれ撮像し、撮像された画像の輝度値に基づいて生体サンプルに対する合焦位置を検出する顕微鏡が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−2534公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述した顕微鏡は、撮像素子における結像面全面の電気信号を取得して画像に変換するので、光軸方向に所定間隔ごとに多数の画像を取得しなくてはならない場合、それぞれの位置で撮像素子から電気信号を読み出すのに時間がかかってしまい、従って合焦位置を検出するまでに時間がかかってしまうといった問題があった。
【0005】
一方、撮像素子の結像面における所定幅の領域だけの画像を取得する、所謂パーシャルスキャンを顕微鏡に適応した場合、撮像素子から所定幅の領域だけの電気信号しか読み出さないので、読み出しにかかる時間を短縮することができ、従って短時間で合焦位置を検出することができる。
【0006】
しかしながら、この方法では、撮像範囲における電気信号を読み出す所定幅の領域に対応する位置に生体サンプルが存在しない場合、取得した画像に生体サンプルが写ることはなく、生体サンプルに対して正確に合焦させられないといった問題が生じる。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、高速かつ高精細なサンプル像を取得させ得る合焦装置、合焦方法、合焦プログラム及び顕微鏡を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、合焦装置であって、拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定部と、サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに撮像素子に結像される像のうちの設定部によって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて範囲に対する合焦位置を決定する合焦部とを有する。
【0009】
また本発明においては、合焦方法であって、拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定ステップと、サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに撮像素子に結像される像のうちの設定ステップによって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて範囲に対する合焦位置を決定する合焦ステップとを有する。
【0010】
さらに本発明においては、合焦プログラムであって、コンピュータに対して、拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定ステップと、サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに撮像素子に結像される像のうちの設定ステップによって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて範囲に対する合焦位置を決定する合焦ステップとを実行させる。
【0011】
さらに本発明においては、顕微鏡であって、サンプルの部位を拡大する対物レンズと、対物レンズにより拡大される部位を結像する撮像素子と、対物レンズに拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定部と、サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに撮像素子に結像される像のうちの設定部によって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて範囲に対する合焦位置を決定する合焦部とを有する。
【0012】
これにより、サンプルに対して割り当てられた範囲に対して、サンプルの位置に応じて撮像素子から読み出す領域を設定するので、撮像素子の全ての領域の像を取得する場合よりも高速に合焦位置を検出するための像を取得でき、またサンプルが写された像から合焦位置を決定するので精度よくサンプルに対する合焦位置を検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、サンプルに対して割り当てられた範囲に対して、サンプルの位置に応じて撮像素子から読み出す領域を設定するので、撮像素子の全ての領域の像を取得する場合よりも高速に合焦位置を検出するための像を取得でき、またサンプルが写された像から合焦位置を決定するので精度よくサンプルに対する合焦位置を検出することができ、かくして高速かつ高精細なサンプル像を取得させ得る合焦装置、合焦方法、合焦プログラム及び顕微鏡を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】顕微鏡の構成を示す略線図である。
【図2】撮像素子の読み出し領域を示す略線図である。
【図3】統括制御部の機能的構成を示す略線図である。
【図4】サムネイル像を示す略線図である。
【図5】撮像範囲の割当を示す略線図である。
【図6】読み出し領域の候補を示す略線図である。
【図7】読み出し領域の設定を示す略線図である。
【図8】拡大像取得処理手順を示すフローチャートである。
【図9】読み出し領域が中央固定の場合を示す略線図である。
【図10】読み出し領域の位置及び数の設定を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態について説明する。なお、説明は以下の順序とする。
<1.実施の形態>
<2.他の実施の形態>
【0016】
<1.実施の形態>
[1−1.顕微鏡の構成]
図1において、本一実施の形態による顕微鏡1を示す。この顕微鏡1は、生体サンプルSPLが配されるプレパラートPRT全体を含む像(以下、これをサムネイル像とも呼ぶ)を撮像するサムネイル像撮像部10、及び生体サンプルSPLが所定倍率で拡大された像(以下、これを拡大像とも呼ぶ)を撮像する拡大像撮像部20を有する。
【0017】
プレパラートPRTは、血液等の結合組織、上皮組織又はそれらの双方の組織などの組織切片又は塗抹細胞でなる生体サンプルSPLを、所定の固定手法によりスライドガラスに固定したものであり、該組織切片又は塗抹細胞には必要に応じて染色が施される。この染色には、HE(ヘマトキシリン・エオシン)染色、ギムザ染色又はパパニコロウ染色等に代表される一般染色のみならず、FISH(Fluorescence In-Situ Hybridization)や酵素抗体法等の蛍光染色が含まれる。
【0018】
プレパラートPRTの一端側は、氏名、日時、染色の種類などの付帯情報が記載されたラベルLB(図5)が貼付される場合もある。
【0019】
顕微鏡1には、プレパラートPRTより一回り小さい開口部を有し、該開口部の上にプレパラートPRTが配されるステージ31が設けられる。また顕微鏡1は、ステージ31に対してステージ駆動機構32が設けられる。
【0020】
このステージ駆動機構32は、ステージ面に対して平行となる方向(X軸−Y軸方向)と、直交する方向(Z軸方向)にステージ31を駆動するものとされる。ちなみに、プレパラートPRTが配される側のステージ面(以下、これをプレパラート配置面とも呼ぶ)には、一般に、プレパラートPRTを定位置に抑止する抑止部(図示せず)が設けられる。
【0021】
サムネイル像撮像部10は、ステージ31のプレパラート配置面とは逆の面側に光源11が設けられる。光源11は、一般染色が施された生体サンプルSPLを照明する光(以下、これを明視野照明光とも呼ぶ)と、特殊染色が施された生体サンプルSPLを照明する光(以下、これを暗視野照明光とも呼ぶ)とを切り換えて照射可能なものとされる。ただし、明視野照明光又は暗視野照明光のいずれか一方だけが照射可能なものであってもよい。また、サムネイル像撮像部10は、プレパラートPRTに貼付されたラベルLBに対して光を照射するラベル光源(図示せず)が別途設けられる。
【0022】
ステージ31のプレパラート配置面側には、プレパラート配置面におけるサムネイル像撮像部10の基準位置の法線を光軸とする所定倍率の対物レンズ12が設けられる。この対物レンズ12の後方には、該対物レンズ12により集光された像を結像する撮像素子13が配される。
【0023】
一方、拡大像撮像部20は、ステージ31のプレパラート配置面とは逆の面側に明視野照明光を照射する光源21が配される。また光源21とは異なる位置(例えばプレパラート配置面側)に暗視野照明光を照射する光源(図示せず)が配される。
【0024】
光源21とステージ31との間には、プレパラート配置面における拡大像撮像部20の基準位置の法線を光軸とするコンデンサレンズ22が配される。
【0025】
ステージ31のプレパラート配置面側には、プレパラート配置面における拡大像撮像部20の基準位置の法線を光軸とする所定倍率の対物レンズ23が配される。この対物レンズ23の後方には、該対物レンズ23により拡大された像が結像される撮像素子24が配される。
【0026】
撮像素子24は、結像面IFにおける水平ラインごとの電気信号を順番に読み出すようになされており、図2(A)に示すように、結像面IF全面に対して読み出し領域FRAが設定された場合、該読み出し領域FRAの電気信号が読み出される。
【0027】
また撮像素子24は、図2(B)に示すように、結像面IFの所定幅の水平ラインに対して読み出し領域PRAが設定され得るようになされており、この場合、該読み出し領域PRAの電気信号のみが読み出される。
【0028】
なお、本実施の撮像素子24では、図3(A)〜(F)に示すように、撮像素子24の結像面IFが上下方向に6等分された読み出し領域PRA1〜PRA6が設定され得るようになされている。
【0029】
この顕微鏡1における制御系として、ステージ駆動機構32にはステージ駆動制御部41が、光源11及び21には照明制御部42が、撮像素子13にはサムネイル像撮像制御部43が、撮像素子24には拡大像撮像制御部44がデータ通信路を介して接続される。
【0030】
これら制御系は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、CPUのワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)及び演算回路などを含むコンピュータとされる。
【0031】
ステージ駆動制御部41は、ステージ駆動機構32を駆動制御し、サムネイル像を取得する場合には、光源11と対物レンズ12との間の所定位置に生体サンプルSPLが位置するようにステージ面方向(X軸−Y軸方向)にステージ31を移動させる。またステージ駆動制御部41は、プレパラートPRT全体に対物レンズ12の焦点が合うようにステージ31をZ軸方向に移動させる。
【0032】
照明制御部42は、明視野像を取得すべきモード(以下、これを明視野モードとも呼ぶ)又は暗視野像を取得すべきモード(以下、これを暗視野モードとも呼ぶ)に応じたパラメータを光源11に設定し、該光源11から照明光を照射させる。このパラメータは例えば照明光の強度や光源種類の選択などである。
【0033】
なお、明視野モードにおける照射光は一般に可視光とされる。一方、暗視野モードにおける照射光は、特殊染色で用いられる蛍光マーカを励起する波長を含む光とされる。また暗視野モードでは蛍光マーカに対する背景部分はカットアウトされる。
【0034】
光源11から照明光が照射された場合、ステージ31の開口部を介して生体サンプルSPL全体に照明光が照射される。
【0035】
サムネイル像撮像制御部43は、明視野モード又は暗視野モードに応じたパラメータを撮像素子13に設定し、該撮像素子13の結像面に結像されるプレパラートPRT全体を含むサムネイル像に応じた電気信号を取得し、該電気信号を光電変換してサムネイル像のデータを取得する。このパラメータは例えば露光の開始タイミング及び終了タイミングなどである。
【0036】
一方、拡大像を取得する場合にはステージ駆動制御部41は、ステージ駆動機構32を駆動制御し、光源11と対物レンズ12との間からコンデンサレンズ22と対物レンズ23との間に生体サンプルSPLが位置するようステージ面方向にステージ31を移動させる。
【0037】
またステージ駆動制御部41は、コンデンサレンズ22によって集められる集光部分に生体サンプルSPLが割り当てられるようステージ面方向(X軸−Y軸方向)にステージ31を移動させる。
【0038】
さらにステージ駆動制御部41は、ステージ駆動機構32を駆動制御し、集光部分に割り当てられる生体サンプルSPLの部位が対物レンズ23の焦点に合うようステージ面の直交方向(Z軸方向(つまり組織切片の奥行方向))にステージ31を移動させる。
【0039】
照明制御部42は、明視野モード又は暗視野モードに応じたパラメータを光源21又は図示しない光源に設定し、該光源21又は図示しない光源から照明光を照射させる。このパラメータは例えば照明光の強度や光源種類の選択などである。
【0040】
光源21から照明光が照射された場合、その照明光はコンデンサレンズ22によって、ステージ31におけるプレパラート配置面の基準位置に集められる。対物レンズ23の結像面には、プレパラートPRTにおける生体サンプルSPLのうち、コンデンサレンズ22によって集光される集光部分の像が拡大されて結像され、その拡大された像が対物レンズ23によって撮像素子24の撮像面に被写体像として結像される。
【0041】
拡大像撮像制御部44は、明視野モード又は暗視野モードに応じたパラメータを撮像素子24に設定し、該撮像素子24の撮像面に結像される生体サンプルSPL部位の拡大像に対応する電気信号を取得し、該電気信号を光電変換して拡大像のデータを取得する。このパラメータは例えば露光の開始タイミング及び終了タイミングなどである。
【0042】
ところでこの顕微鏡1には、該顕微鏡1の全体の制御を司る制御部(以下、これを統括制御部とも呼ぶ)40があり、これはステージ駆動制御部41、照明制御部42、サムネイル像撮像制御部43及び拡大像撮像制御部44それぞれにデータ通信路を介して接続される。この統括制御部40は、CPU、ROM、RAM、演算回路及びHDD(Hard Disc Drive)などを含むコンピュータとされる。
【0043】
統括制御部40は、サムネイル像及び拡大像を取得するプログラム(以下、これをサンプル像取得プログラムとも呼ぶ)を含む各種プログラムがROM及びHDDに格納されている。
【0044】
統括制御部40は、ROM及びHDDに格納された各種プログラムのうち、実行命令に対応するプログラムをRAMに展開し、該展開したプログラムに従ってステージ駆動制御部41、照明制御部42、サムネイル像撮像制御部43及び拡大像撮像制御部44を適宜制御する。
【0045】
[1−2.サンプル像取得処理]
統括制御部40は、サンプル像取得プログラムを実行する指示を受けた場合、該サンプル像取得プログラムをRAMに展開してサンプル像取得処理を実行する。
【0046】
統括制御部40は、サンプル像取得プログラムに従って、図4に示すように、サムネイル像取得部51、割当部52、設定部53、合焦部54及び拡大像取得部55として機能する。
【0047】
サムネイル像取得部51は、ステージ駆動制御部41及びステージ駆動機構32を介して、ステージ31に配されるプレパラートPRTが光源11と対物レンズ12との間に位置するよう、該ステージ31を移動させる。
【0048】
またサムネイル像取得部51は、照明制御部42を介して光源11を駆動させ、該光源11から生体サンプルSPL全体に照射光を照射させる。
【0049】
サムネイル像取得部51は、図5に示すように、サムネイル像撮像制御部43を介して撮像素子13により撮像されたプレパラートPRT全体を含むサムネイル像SNGを取得し、該サムネイル像SNGのデータをHDDに記憶する。
【0050】
これにより、ラベルLBを含むプレパラートPRT全体のサムネイル像SNGを保存することができるのでラベルLBの記載内容を認識させることができる。また、プレパラートPRTに油性ペンなどで医師などにより記入されたマークや記号なども同時に記録しておけるので、サムネイル像SNGを用いて該医師などが検索する際の目印として容易に識別させることができる。
【0051】
割当部52は、取得されたサムネイル像SNGから例えば輝度値を基に、生体サンプルを示す画素の領域(以下、これを生体サンプル領域とも呼ぶ)SPAとその他の領域とを区別するための領域抽出処理を施し、生体サンプル領域SPAを抽出する。
【0052】
割当部52は、サムネイル像SNGにおける生体サンプル領域SPAの画素位置と、サムネイル像SNGが撮像された際のステージ31の座標位置との関係から、ステージ31の所定の基準位置に対する生体サンプルSPLの位置を算出する。
【0053】
そして割当部52は、図6に示すように、対物レンズ23により拡大されて撮像素子24により撮像される範囲(以下、これを撮像範囲とも呼ぶ)ARを生体サンプルSPLに対して割り当てる。この撮像範囲ARは、生体サンプルSPLの全てがいずれかの撮像範囲ARに含まれ、かつ撮像範囲ARの数が最小となるように割り当てられる。
【0054】
なお、撮像範囲ARは、拡大像撮像部20の対物レンズ23の拡大倍率及び撮像素子24の撮像面サイズにより決定される。また、この図6では、撮像範囲ARが重ならない態様となっているが、隣接する領域の一部が重なる態様であってもよい。
【0055】
割当部52は、サムネイル像SNGにおける生体サンプル領域SPAに対して、生体サンプルSPLに対して割り当てられた撮像範囲ARと対応する範囲(以下、これを分割範囲とも呼ぶ)を割り当てる。すなわち、分割範囲における生体サンプル領域SPAは、それぞれ対応する撮像範囲ARに割り当てられる生体サンプルSPLを示す領域である。
【0056】
設定部53は、例えば分割範囲を上下方向に6等分し、6等分されたそれぞれの領域(以下、これを帯領域とも呼ぶ)の輝度値の分散値を算出する。そして設定部53は、算出した分散値が最も高い帯領域に対応する読み出し領域PRA1〜PRA6のいずれかをその撮像範囲ARに対する読み出し領域として設定する。
【0057】
例えば、設定部53は、図7(A)に示すように、撮像範囲ARの上側に生体サンプルSPLが位置する場合、算出される帯領域の輝度値の分散値(図7(B))を基に、この撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA1を設定する。
【0058】
また設定部53は、設定部53は、図7(C)に示すように、撮像範囲ARの下側に生体サンプルSPLが位置する場合、算出される帯領域の輝度値の分散値(図7(D))を基に、この撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA6を設定する。
【0059】
このように設定部53は、それぞれ撮像範囲ARに対応する分割範囲の帯領域における輝度値の分散値を算出し、その結果からそれぞれの撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA1〜PRA6のいずれかを設定する。
【0060】
合焦部54は、ステージ駆動制御部41及びステージ駆動機構32を介して、撮像素子24に撮像される位置に割り当てられた撮像範囲ARが位置するよう、ステージ31を移動させる。
【0061】
合焦部54は、照明制御部42を介して光源21又は図示しない光源を駆動させ、例えば光源21からコンデンサレンズ22で集光される集光部分に照射光を照射させる。
【0062】
合焦部54は、ステージ駆動制御部41及びステージ駆動機構32を介して、対物レンズ23の焦点(合焦位置)が生体サンプルSPLを含む範囲内で移動するよう、Z軸方向に所定間隔ごとにステージ31を移動させる。この所定間隔は、例えば対物レンズ23の被写体深度が設定される。
【0063】
合焦部54は、Z軸方向における所定間隔ごとのそれぞれの位置で、設定部53により設定された撮像素子24の読み出し領域PRA(PRA1〜PRA6)に結像された像(以下、これを検波像とも呼ぶ)を取得する。
【0064】
合焦部54は、Z軸方向のそれぞれの位置で取得した検波像のコントラストを算出し、最もコントラストが高い検波像を取得したZ軸方向の位置をその撮像範囲ARの合焦位置として決定する。
【0065】
拡大像取得部55は、合焦部54により決定された合焦位置にステージ31を移動させ、その位置で、撮像素子24の結像面IF全面に結像された像を拡大部位像として取得する。
【0066】
合焦部54は、拡大部位像が取得されるごとに次の撮像範囲ARが撮像素子24に撮像される位置にくるようステージ31を移動させ、上述のようにして、撮像される位置に移動された撮像範囲ARの合焦位置を検出する。拡大像取得部55は、合焦部54により撮像範囲ARの合焦位置が決定されるたびに、その合焦位置にステージ31を移動させ、その位置での拡大部位像を取得する。
【0067】
拡大像取得部55は、全ての撮像範囲ARでの拡大部位像を取得すると、該拡大部位像を結合して拡大像を生成し、該拡大像のデータをHDDに記憶する。
【0068】
このようにこの顕微鏡1は、生体サンプルSPLを鏡検状態の拡大像として記憶することで、プレパラートPRT自体を保存する場合に比べて、固定や染色等の状態を劣化させることなく長期にわたって組織切片に関する情報を保存できるようになされている。
【0069】
[1−3.サンプル像取得処理手順]
次に、上述したサンプル像取得処理の手順について、図8に示すフローチャートに従って説明する。
【0070】
実際上、統括制御部40は、ルーチンRT1の開始ステップから入って次のステップSP1へ移る。ステップSP1において統括制御部40は、サムネイル像撮像部10を適宜制御して、該サムネイル像撮像部10で撮像されるサムネイル像SNGを取得し、次のステップSP2に移る。
【0071】
ステップSP2において統括制御部40は、サムネイル像SNGから生体サンプル領域SPAを抽出し、抽出された生体サンプル領域SPAに基づいて生体サンプルSPLに対して撮像範囲ARを割り当て、次のステップSP3に移る。
【0072】
ステップSP3において統括制御部40は、サムネイル像SNGにおける生体サンプル領域SPAに対して、生体サンプルSPLに対して割り当てられる撮像範囲ARと対応する分割範囲を割り当て、次のステップSP4に移る。
【0073】
ステップSP4において統括制御部40は、分割範囲におけるぞれぞれの帯領域の輝度値の分散値を算出し、算出された分散値を基に、分割範囲に対する該撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA1〜PRA6のいずれかを設定し、次のステップSP5に移る。
【0074】
ステップSP5において統括制御部40は、拡大像撮像部20を適宜制御して、対物レンズ23に撮像される位置に割り当てられた撮像範囲ARが位置するよう、ステージ31を移動させる。
【0075】
そして統括制御部40は、対物レンズ23の焦点位置が生体サンプルSPLを含む範囲で移動するよう、Z軸方向に所定幅間隔でステージ31を移動させる。統括制御部40は、それぞれの位置で、撮像素子24の設定された読み出し領域PRA(PRA1〜RA6)で撮像された検波像を取得し、次のステップSP6に移る。
【0076】
ステップSP6において統括制御部40は、それぞれの位置で撮像された検波像のコントラストを算出し、最もコントラストが高い検波像を取得したZ軸方向の位置をその撮像範囲ARの合焦位置として決定し、次のステップSP7に移る。
【0077】
ステップSP7において統括制御部40は、決定された合焦位置にステージ31を移動させ、その位置で、撮像素子24の撮像面IF全面に結像された像を拡大部位像として取得し、次のステップSP8に移る。
【0078】
ステップSP8において統括制御部40は、全ての撮像範囲ARの拡大部位像を取得したか否かを判断し、否定結果が得られるとステップSP5に戻って、ステップSP5〜SP7を繰り返す。
【0079】
これに対してステップSP8において肯定結果が得られると統括制御部40は次のステップSP9に移って、全ての拡大部位像を結合して拡大像を生成し、次のステップに移って処理を終了する。
【0080】
[1−4.動作及び効果]
以上の構成において、顕微鏡1は、生体サンプルSPL全体を含むサムネイル像SNGを取得し、該サムネイル像SNGの生体サンプル領域SPAに基づいて、生体サンプルSPLに対して撮像範囲ARを割り当てる。
【0081】
顕微鏡1は、割り当てられた撮像範囲ARにおける帯領域の輝度値の分散値を算出し、最も分散値が高い帯領域、すなわち生体サンプルSPLの割合が最も高い帯領域に対応する読み出し領域PRA(PRA1〜PRA6)を設定する。
【0082】
顕微鏡1は、対物レンズ23の光軸方向(Z軸方向)の所定間隔ごとに、設定された読み出し領域PRA(PRA1〜PRA6)の検波像を取得し、該検波像に基づいて撮像範囲ARに対する合焦位置を決定する。
【0083】
顕微鏡1は、決定された合焦位置で撮像素子24の結像面IF全面に結像される拡大部位像を取得し、該拡大部位像を結合して拡大像を取得するようにした。
【0084】
従って顕微鏡1は、検波像を取得する際、撮像素子24の所定幅の水平ラインだけの電気信号を読み出すようにしたことにより、撮像素子24の結像面IF全面に結像される像を取得する場合と比して、1つの検波像を取得するための時間を短くすることができる。
【0085】
ここで、撮像素子における中央の所定幅に読み出し領域が固定される装置では、図9に示すように、生体サンプルSPLが撮像範囲ARにおける上側又は下側にしか位置していない場合、生体サンプルSPLが写っていない検波像しか取得することができない。この場合、生体サンプルSPLに対して合焦させることができないので、高精細な拡大部位像が取得できなくなってしまう。
【0086】
これに対して顕微鏡1は、撮像範囲ARにおける生体サンプルSPLの位置を、サムネイル像SNGを用いて検出し、生体サンプルSPLが存在する位置に読み出し領域PRAを設定するので、生体サンプルSPLが含まれる検波像を取得することができる。
【0087】
従って顕微鏡1は、生体サンプルSPLに対して精度よく合焦させることができるので、高精細な拡大部位像を取得することができる。
【0088】
以上の構成によれば、生体サンプルSPL全体を含むサムネイル像SNGを基に撮像範囲ARにおける生体サンプルSPLの位置を検出し、生体サンプルSPLの位置に基づいて設定された読み出し領域PRAで撮像された検波像を取得する。そして取得した検波像に基づいて撮像範囲ARの合焦位置を決定するので、生体サンプルSPLに対して高速かつ精度よく合焦することができ、かくして高速かつ高精細な拡大像を取得することができる。
【0089】
<2.他の実施の形態>
上述の実施の形態においては、生体サンプルSPLがサンプルとされた。しかしながらサンプルはこの実施の形態に限定されるものではない。
【0090】
上述の実施の形態においては、読み出し領域PRA(PRA1〜PRA6)が固定幅である場合について述べた。本発明はこれに限らず、読み出す幅が可変であってもよい。この場合、例えば設定部53は、撮像範囲ARにおける生体サンプルSPLが位置するとされる水平ラインに相当する部分を読み出し領域PRAに設定する。但し、生体サンプルSPLが位置するとされるライン全てを読み出し領域RPAに設定すると、その分読み出しに時間がかかってしまうため、読み出し速度と合焦精度の観点から、読み出し領域PRAの幅が適切に設定される。
【0091】
上述した実施の形態においては、撮像範囲ARに対して6つの読み出し領域PRA1〜PRA6のなかから設定されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、上下方向にさらに粗く又は細かく設定された複数の読み出し領域PRAのなかから撮像範囲ARに対して読み出し領域PRAが設定されるようにしてもよい。
【0092】
上述した実施の形態においては、読み出し領域PRA1〜PRA6が結像面IF全面に対して1/6の幅に設定された場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば全面に対して1/3や1/4などの幅であってもよい。この場合も、撮像範囲ARに対する読み出し領域PRAの幅は、読み出し速度と合焦精度の観点から適切に設定される。
【0093】
上述した実施の形態においては、撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA1〜PRA6のいずれか1つを設定するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、撮像範囲ARに対して2つ以上の読み出し領域PRAを設定するようにしてもよい。
【0094】
一例として、図10に示すように、撮像範囲ARに、上側及び下側に分かれて生体サンプルSPLが位置する場合について説明する。この場合、設定部53は、サムネイル像SNGに基づいて撮像範囲ARの上側及び下側に生体サンプルSPLが位置することを検出する。
【0095】
設定部53は、検出結果に基づいて、この撮像範囲ARに対して読み出し領域PRA1及びPRA6を設定する。そして合焦部54は、Z軸方向の所定幅ごとの位置で、撮像素子24に結像される読み出し領域PRA1及びPRA6の検波像を取得し、該検波像を用いてそれぞれの読み出し領域PRA1及びPRA6での合焦位置を決定する。
【0096】
拡大像取得部55は、合焦部54により決定されたそれぞれの合焦位置にステージ31を順に移動させ、その位置で、撮像素子24の結像面IF全面に結像された像を拡大部位像として取得する。
【0097】
そして拡大像取得部55は、撮像範囲ARの上側に位置する生体サンプルSPLに合焦させて取得された拡大部位像の上半分と、撮像範囲ARの下側に位置する生体サンプルSPLに合焦させて取得された拡大部位像の下半分とを結合して該撮像範囲ARに対する拡大部位像を生成する。
【0098】
これにより顕微鏡1は、撮像範囲ARのなかに分離された生体サンプルSPLが複数存在する場合であっても、全ての生体サンプルSPL部位に対して合焦させて拡大部位像を取得することができるので、より高精細な拡大部位像を取得することができる。
【0099】
これは、プレパラートPRT上に複数の分離された組織切片が配される場合や塗抹細胞を撮像する場合、それぞれの組織切片、塗抹細胞がZ軸方向の異なる位置に固定されることがあるため、特に有用である。
【0100】
なお、この例では2つの読み出し領域PRA1及びPRA6を設定するようにした場合について述べたが、設定される読み出し領域PRAの数、位置及び幅は問わない。
【0101】
上述した実施の形態においては、帯領域の輝度値の分散値を算出し、分散値が最も高い帯領域に対応する読み出し領域PRA1〜PRA6のいずれかをその撮像範囲ARに対する読み出し領域として設定するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば帯領域における生体サンプルSPLの面積を算出し、最も面積が大きい帯領域に対応する読み出し領域PRA1〜PRA6をその撮像範囲ARに対して設定してもよい。このように、設定部53は、撮像範囲ARにおける生体サンプルSPLの位置を、分散値、面積等を算出することにより検出し、検出した生体サンプルSPLの位置に応じてその撮像範囲ARに対する読み出し領域PRAを設定する。
【0102】
上述した実施の形態においては、所定倍率の対物レンズ23が1つ設けられている場合について述べた。本発明はこれに限らず、倍率の異なる複数の対物レンズが設けられ、複数の対物レンズのなかからレンズ切換機構又は手動により選択するようにしてもよい。
【0103】
明視野照明光を照射する光源21と暗視野照明光を照射する図示しない光源が配されるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、光源21及び図示しない光源が明視野照明光と暗視野照明光とを切り替え可能なもので、一方のみが配されるようにしてもよい。また、互いに異なる波長域の照射光を照射する光源素子が光源21内部に複数配されるようにしてもよい。同様に、互いに異なる波長域の照射光を照射する光源素子が図示しない光源に複数配されていてもよい。
【0104】
上述した実施の形態においては、統括制御部40がHDDに格納されているサンプル像取得処理プログラムに従い、上述したサンプル像取得処理を行うようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、サンプル像取得処理プログラムがROMに格納されていてもよく、また記憶媒体からインストールしたり、インターネットからダウンロードしたサンプル像取得処理プログラムに従って上述したサンプル像取得処理を行うようにしても良い。またその他種々のルートによってインストールしたサンプル像取得処理ログラムに従って上述したサンプル像取得処理を行うようにしても良い。
【0105】
上述した実施の形態においては、設定部として設定部53、合焦部として合焦部54が設けられるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる設定部、合焦部を設けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、生物実験、医薬の創製又は患者の経過観察などのバイオ産業上において利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1……顕微鏡、10……サムネイル像撮像部、11、21……光源、12、23……対物レンズ、13、24……撮像素子、20……拡大像撮像部、22……コンデンサレンズ、31……ステージ、32……ステージ駆動制御部、40……統括制御部、41……ステージ駆動制御部、42……照明制御部、43……サムネイル像撮像制御部、44……拡大像撮像制御部、51……サムネイル像取得部、52……割当部、53……検出部、54……設定部、55……合焦部、56……拡大像取得部、CG……比較像、PRT……プレパラートPRT……基準像。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定部と、
上記サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに上記撮像素子に結像される像のうちの上記設定部によって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて上記範囲に対する合焦位置を決定する合焦部と
を有する合焦装置。
【請求項2】
上記設定部は、
上記範囲における上記サンプルの位置に応じて、上記撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置及び数を設定する
請求項1に記載の合焦装置。
【請求項3】
上記設定部は、
上記範囲に上記サンプルが複数に領域に分布している場合、分布するそれぞれに対して読み出す領域を設定し、
上記合焦部は、
上記対物レンズの光軸方向の所定間隔ごとに、上記設定部により設定された複数の領域の像をそれぞれ取得して、上記範囲における分離されたそれぞれの上記サンプルに対する合焦位置を決定する
請求項2に記載の合焦装置。
【請求項4】
上記設定部は、
上記サンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を、上記サンプル全体を含む像を用いて検出する
をさらに有する請求項3に記載の合焦装置。
【請求項5】
上記合焦部により決定された合焦位置で上記撮像素子の結像面全面に結像される上記サンプルの部位の像を取得する拡大像取得部と
をさらに有する請求項4に記載の合焦装置。
【請求項6】
上記サンプルは、生体サンプルである
請求項1乃至5に記載の合焦装置。
【請求項7】
拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定ステップと、
上記サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに上記撮像素子に結像される像のうちの上記設定ステップによって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて上記範囲に対する合焦位置を決定する合焦ステップと
を有する合焦方法。
【請求項8】
コンピュータに対して、
拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定ステップと、
上記サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに上記撮像素子に結像される像のうちの上記設定ステップによって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて上記範囲に対する合焦位置を決定する合焦ステップと
を実行させる合焦プログラム。
【請求項9】
サンプルの部位を拡大する対物レンズと、
上記対物レンズにより拡大される部位を結像する撮像素子と、
上記対物レンズに拡大される像を取得するために上記サンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて上記撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定部と、
上記サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに上記撮像素子に結像される像のうちの上記設定部によって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて上記範囲に対する合焦位置を決定する合焦部と
を有する顕微鏡。
【請求項10】
上記サンプル全体を含む像を撮像するサムネイル像撮像部と
をさらに有し、
上記設定部は、
上記サムネイル像撮像部により撮像されたサンプル全体を含む像を用いて上記範囲におけるサンプルの位置を検出し、上記撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する
請求項9に記載の顕微鏡。
【請求項1】
拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定部と、
上記サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに上記撮像素子に結像される像のうちの上記設定部によって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて上記範囲に対する合焦位置を決定する合焦部と
を有する合焦装置。
【請求項2】
上記設定部は、
上記範囲における上記サンプルの位置に応じて、上記撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置及び数を設定する
請求項1に記載の合焦装置。
【請求項3】
上記設定部は、
上記範囲に上記サンプルが複数に領域に分布している場合、分布するそれぞれに対して読み出す領域を設定し、
上記合焦部は、
上記対物レンズの光軸方向の所定間隔ごとに、上記設定部により設定された複数の領域の像をそれぞれ取得して、上記範囲における分離されたそれぞれの上記サンプルに対する合焦位置を決定する
請求項2に記載の合焦装置。
【請求項4】
上記設定部は、
上記サンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を、上記サンプル全体を含む像を用いて検出する
をさらに有する請求項3に記載の合焦装置。
【請求項5】
上記合焦部により決定された合焦位置で上記撮像素子の結像面全面に結像される上記サンプルの部位の像を取得する拡大像取得部と
をさらに有する請求項4に記載の合焦装置。
【請求項6】
上記サンプルは、生体サンプルである
請求項1乃至5に記載の合焦装置。
【請求項7】
拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定ステップと、
上記サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに上記撮像素子に結像される像のうちの上記設定ステップによって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて上記範囲に対する合焦位置を決定する合焦ステップと
を有する合焦方法。
【請求項8】
コンピュータに対して、
拡大される像を取得するためにサンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて該範囲の像を撮像する撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定ステップと、
上記サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに上記撮像素子に結像される像のうちの上記設定ステップによって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて上記範囲に対する合焦位置を決定する合焦ステップと
を実行させる合焦プログラム。
【請求項9】
サンプルの部位を拡大する対物レンズと、
上記対物レンズにより拡大される部位を結像する撮像素子と、
上記対物レンズに拡大される像を取得するために上記サンプルに対して割り当てられる範囲における該サンプルの位置を検出し、検出された位置に基づいて上記撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する設定部と、
上記サンプルの厚さ方向の所定間隔ごとに上記撮像素子に結像される像のうちの上記設定部によって設定された領域の像を取得し、該像に基づいて上記範囲に対する合焦位置を決定する合焦部と
を有する顕微鏡。
【請求項10】
上記サンプル全体を含む像を撮像するサムネイル像撮像部と
をさらに有し、
上記設定部は、
上記サムネイル像撮像部により撮像されたサンプル全体を含む像を用いて上記範囲におけるサンプルの位置を検出し、上記撮像素子に結像される像のうちの読み出す領域の位置を設定する
請求項9に記載の顕微鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−197283(P2011−197283A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62908(P2010−62908)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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