説明

吐出不良検出装置、吐出不良検出方法、液滴塗布装置及び液滴塗布方法

【課題】塗布ヘッドの吐出安定性を正確に判定する。
【解決手段】液滴を吐出する吐出口を有する塗布ヘッド4の吐出不良を検出する吐出不良検出装置8は、塗布ヘッド4の吐出口から液滴が吐出される空間を撮像する撮像部8aと、その撮像部8aにより撮像された画像を処理し、その画像中に点状の画像があるか否かを判断し、画像中に点状の画像があると判断した場合、塗布ヘッド4の吐出が安定していないと判定する判定部8fとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出不良検出装置、吐出不良検出方法、液滴塗布装置及び液滴塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴塗布装置は、表示装置や半導体装置などを製造する際に用いられている。例えば、表示装置の製造では、ガラス基板上に配向膜などの機能性薄膜を形成する場合に、また、半導体装置の製造では、半導体ウェハ上にレジストなどの機能性薄膜を形成する場合に液滴塗布装置が用いられている。
【0003】
前述の液滴塗布装置は、基板などの塗布対象物に向けて液を複数のノズル(吐出口)からそれぞれ液滴として吐出するインクジェット方式の塗布ヘッドを備えており、ステージ上の塗布対象物と塗布ヘッドとを相対移動させながら、塗布ヘッドにより塗布対象物の被塗布面に複数の液滴を順次着弾させて塗布を行う。
【0004】
この液滴塗布装置においては、様々な原因により吐出不良が発生することがある。例えば、塗布液中に混入した気泡や異物がノズルを塞ぐことによる吐出量不足や不吐出、また、ノズルの開口付近に塗布液や異物が付着することによる飛行曲がりなどが発生する。
【0005】
このような吐出不良が発生すると、塗布対象物に対して所望の塗布量で塗布液を塗布することができず、製品の歩留まりが低下することになる。そこで、吐出不良をいち早く検出してメンテナンスを行う必要がある。このため、塗布ヘッドから吐出された各液滴を撮像し、その液滴の撮像画像と吐出が正常な正常画像との比較結果から吐出不良を検出する吐出不良検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−246911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の吐出不良は一度起きるとそのまま継続されるものばかりではなく、吐出不良が一回あるいは数回発生し、その後、元の正常吐出に戻ることがあり、さらに、その発生タイミングや復帰タイミングもランダムである。このため、前述のように特定のタイミングで撮像された液滴の撮像画像と正常画像との比較結果からでは、吐出不良が発生することなく良好な吐出が継続して得られているか否か(吐出安定性)を判定することは困難であり、吐出不良を検出できずに誤判定が発生してしまう。
【0008】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布ヘッドの吐出安定性を正確に判定することができる吐出不良検出装置、吐出不良検出方法、液滴塗布装置及び液滴塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る吐出不良検出装置は、液滴を吐出する吐出口を有する塗布ヘッドの吐出不良を検出する吐出不良検出装置であって、塗布ヘッドの吐出口から液滴が吐出される空間を撮像する撮像部と、撮像部により撮像された画像を処理し、画像中に点状の画像があるか否かを判断し、画像中に点状の画像があると判断した場合、塗布ヘッドの吐出が安定していないと判定する判定部とを備える。
【0010】
本発明の実施形態に係る吐出不良検出方法は、液滴を吐出する吐出口を有する塗布ヘッドの吐出不良を検出する吐出不良検出方法であって、塗布ヘッドの吐出口から液滴が吐出される空間を撮像し、撮像した画像を処理し、画像中に点状の画像があるか否かを判断し、画像中に点状の画像があると判断した場合、塗布ヘッドの吐出が安定していないと判定する。
【0011】
本発明の実施形態に係る液滴塗布装置は、塗布ヘッドの吐出面に形成された吐出口から液滴を吐出させて塗布対象物に液滴を塗布する液滴塗布装置であって、塗布ヘッドの吐出不良を検出する吐出不良検出装置を備え、吐出不良検出装置は、塗布ヘッドの吐出口から液滴が吐出される空間を撮像する撮像部と、撮像部により撮像された画像を処理し、画像中に点状の画像があるか否かを判断し、画像中に点状の画像があると判断した場合、塗布ヘッドの吐出が安定していないと判定する判定部とを具備する。
【0012】
本発明の実施形態に係る液滴塗布方法は、塗布ヘッドの吐出面に形成された吐出口から液滴を吐出させて塗布対象物に液滴を塗布する液滴塗布方法であって、塗布ヘッドの吐出口から液滴が吐出される空間を撮像し、撮像した画像を処理し、画像中に点状の画像があるか否かを判断し、画像中に点状の画像があると判断した場合、塗布ヘッドの吐出が安定していないと判定して塗布ヘッドのメンテナンスを実行する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗布ヘッドの吐出安定性を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る液滴塗布装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す液滴塗布装置が備える塗布ヘッドの概略構成を示す断面図である。
【図3】図1に示す液滴塗布装置が備える吐出不良検出装置の概略構成を示す図である。
【図4】図3に示す吐出不良検出装置が備える撮像部により撮像された画像の一例を示す図である。
【図5】図1に示す液滴塗布装置が行う塗布処理(吐出不良検出処理を含む)の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る液滴塗布装置1は、基板などの塗布対象物Wが載置されるステージ2と、そのステージ2をY軸方向に移動させるステージ移動装置3と、移動するステージ2上の塗布対象物Wに向けて液滴を吐出する塗布ヘッド4と、その塗布ヘッド4をX軸方向に移動させるヘッド移動装置5と、そのヘッド移動装置5と共に塗布ヘッド4を支持する支持部6と、塗布ヘッド4を保守する保守装置7と、塗布ヘッド4の吐出不良を検出する吐出不良検出装置8と、ステージ移動装置3及び支持部6などを支持する架台9と、各部を制御する制御装置10とを備えている。
【0017】
ステージ2は、塗布対象物Wが載置される載置面を有しており、ステージ移動装置3上に設けられている。このステージ2には、塗布対象物Wが自重により載置されるが、これに限るものではなく、例えば、その塗布対象物Wを保持するため、静電チャックや吸着チャックなどの機構が設けられても良い。
【0018】
ステージ移動装置3は、ステージ2をY軸方向に案内して移動させる移動装置であり、架台9の上面に固定されて設けられている。このステージ移動装置3は制御装置10に電気的に接続されており、その駆動が制御装置10により制御される。ステージ移動装置3としては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動機構などが用いられる。
【0019】
塗布ヘッド4は、ヘッド移動装置5にX軸方向に移動可能に設けられており、ステージ2上の塗布対象物Wに対して塗布液を液滴として吐出(噴射)する吐出ヘッドである。この塗布ヘッド4は制御装置10に電気的に接続されており、その駆動が制御装置10により制御される。塗布液は、その塗布液を貯留する塗布液タンクからチューブなどの配管を介して塗布ヘッド4に供給される。この塗布液としては、例えば、配向膜材料や接着剤、顔料など、塗布対象物W上に残留物として残留する溶質及びその溶質を溶解(分散)させる溶媒を含む溶液が用いられる。
【0020】
ここで、前述の塗布ヘッド4について詳述すると、図2に示すように、塗布ヘッド4は、インクジェット方式の塗布ヘッドであり、液滴を吐出する複数の吐出口11aを有するノズルプレート11と、各吐出口11aにそれぞれつながる複数の液室12aを有するヘッド本体12と、各液室12aの容積を変化させる可撓板13と、可撓板13を変形させる複数の圧電素子14と、それらの圧電素子14を駆動させる圧電素子駆動部15とを備えている。
【0021】
ノズルプレート11には、複数個の吐出口11aが長手方向に所定ピッチ(所定間隔)で直線状に並べられて形成されている。これらの吐出口11aの並び方向が例えばX軸方向(図1参照)に対して所定角度だけ傾けられ、塗布ヘッド4がヘッド移動装置5を介して支持部6に設けられている。ただし、塗布ヘッド4は前述の所定角度が変更可能に構成されている。例えば、塗布ヘッド4が回転機構(図示せず)によりθ方向(図1中、XY平面に沿う回転方向)に回転可能に支持されており、その回転機構によりX軸方向に対して所定角度傾くことが可能である。この所定角度を変更することにより、塗布対象物W上でX軸方向に並ぶ各液滴の間隔、すなわちX軸方向の塗布ピッチを調整することができる。もちろん、吐出口11aの並び方向がX軸方向に対して平行になるように調整することも可能である。
【0022】
ヘッド本体12には、塗布液を収容する各液室12aに加え、それらの液室12aに枝管路(図示せず)を介してつながる主管路12bと、その主管路12bの一端につながる給液管路12cと、主管路12bの他端につながる排液管路12dとが形成されている。なお、給液管路12cは塗布液タンクから主管路12bに塗布液を供給するための流路であり、チューブやパイプなどの供給管を介して塗布液タンクに接続されている。また、排液管路12dは主管路12bを通過した塗布液を塗布液タンクに戻すための流路であり、チューブやパイプなどの排出管を介して前述の塗布液タンクに接続されている。
【0023】
可撓板13は、その変形により各液室12aの容積を増減させるための板部材である。この可撓板13は撓み変形可能にヘッド本体12に取付けられており、各液室12aの壁部として機能する。なお、ヘッド本体12は矩形枠状に形成されており、その下面側開口部分が可撓板13によって閉塞されている。この可撓板13がノズルプレート11により覆われ、ノズルプレート11と可撓板13との間に各液室12aが形成されている。
【0024】
各圧電素子14は、各液室12aにそれぞれ対向させて可撓板13に固着されている。これらの圧電素子14は圧電素子駆動部15に電気的に接続されており、その圧電素子駆動部15からの電力供給により駆動する。圧電素子14が駆動して伸縮すると、その駆動した圧電素子14に対応する可撓板13の一部が変形するため、その変形に応じて液室12aの容積が増減し、その液室12aにつながる吐出口11aから液滴が吐出される。この圧電素子14が駆動素子として機能する。
【0025】
圧電素子駆動部15は、制御装置10に電気的に接続されており、その制御装置10からの制御信号を受けて各圧電素子14に個別に電圧を印加することが可能なデバイスである。この圧電素子駆動部15は、制御装置10からの制御信号に応じて各圧電素子14を個別に駆動させ、塗布ヘッド4の各吐出口11aから個別に液滴を吐出させる。
【0026】
このような構成の塗布ヘッド4は、圧電素子駆動部15による各圧電素子14に対する駆動電圧の印加に応じて、可撓板13の変形により各液室12a内の塗布液を対応する吐出口11aから押し出して液滴として吐出する。このとき、各液室12aは塗布液により満たされている状態である。
【0027】
図1に戻り、ヘッド移動装置5は、コラムなどの支持部6に固定されて設けられており、塗布ヘッド4をステージ2上の塗布対象物Wの被塗布面に沿うX軸方向に移動させる移動装置である。このヘッド移動装置5は制御装置10に電気的に接続されており、その駆動が制御装置10により制御される。ヘッド移動装置5としては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動機構などが用いられる。
【0028】
支持部6は、X軸方向に長尺な門型の形状に形成されており、架台9上のステージ移動装置3を跨ぐように架台9の上面に設けられている。この支持部6の梁部はX軸方向に平行にステージ2の被載置面に対して水平にされ、支持部6の脚部は架台9の上面に固定されている。
【0029】
保守装置7は、ステージ2と共に移動するようにステージ2の側面に設けられており、塗布ヘッド4に対向する位置までステージ2と共に移動し、払拭や吸引により塗布ヘッド4の吐出面M1に付着した液(付着液)を除去するワイピング装置、また、捨て打ちや液圧送(塗布液タンクから塗布液を気体圧力やポンプによって加圧供給すること)により塗布ヘッド4の各吐出口11aから塗布液を強制的に排出させる液排出装置を備えている。この保守装置7は制御装置10に電気的に接続されており、その駆動が制御装置10により制御される。
【0030】
吐出不良検出装置8は、図1及び図3に示すように、撮像を行う撮像部8aと、その撮像部8aを昇降させる昇降移動装置8bと、その昇降移動装置8bと共に撮像部8aを支持する支持アーム8cと、ドレインパンなどの液受け部8dと、撮像用の照明装置8eと、画像を処理して判定を行う判定部8fとを備えている。
【0031】
撮像部8aは、昇降移動装置8bに昇降可能(上下移動可能)に設けられており、その昇降移動装置8bにより撮像位置を変更可能に形成されている。この撮像部8aは所定の撮像位置から、塗布ヘッド4の吐出口11aから液滴が吐出される空間である、吐出面M1の下側の空間を撮像することによって、塗布ヘッド4の各吐出口11aから個別に吐出された飛翔中の各液滴を連続して撮像することを可能とする。これにより、図4に示すような画像G1が撮像される(詳しくは、後述する)。撮像部8aとしては、例えば、CCD(電荷結合素子)カメラなどが用いられる。
【0032】
ここで、前述の所定の撮像位置は撮像部8aが塗布ヘッド4の各吐出口11aから個別に吐出された複数の液滴を連続して撮像する位置、例えば、撮像部8aが昇降移動装置8bの下端部まで移動した位置である。ただし、この所定の撮像位置は変更可能であり、例えば、塗布ヘッド4がメンテナンスや故障などにより交換された場合などに再設定されたりする。
【0033】
昇降移動装置8bは、支持アーム8cに固定されて設けられており、撮像部8aをZ軸方向に案内して移動させる移動装置である。この昇降移動装置8bは制御装置10に電気的に接続されており、その駆動が制御装置10により制御される。昇降移動装置8bとしては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動機構などが用いられる。
【0034】
支持アーム8cは、支持部6の梁部の上面に固定されて設けられており、昇降移動装置8bと共に撮像部8aを支持するアームである。撮像部8aは支持アーム8cに沿って昇降移動装置8bにより撮影位置及び退避位置に移動する。
【0035】
液受け部8dは、ステージ2と共に移動するようにステージ2の側面に照明装置8eと一緒に設けられている。この液受け部8dは、撮像部8aが撮像を行う場合、塗布ヘッド4に対向する位置までステージ2と共に移動し、塗布ヘッド4の各吐出口11aから個別に吐出された複数の液滴を受け取る。
【0036】
照明装置8eは、撮像部8aが塗布ヘッド4の各吐出口11aから個別に吐出された各液滴を撮像できるように光を照射する。例えば、照明装置8eは、撮像部8aにより撮像した画像にハレーションが発生しないよう、具体的には、液受け部8dが塗布ヘッド4に対向する位置にあるとき照明装置8eからの直接光が撮像部8aに入射しないように液受け部8dの側面に取り付け部材(図示せず)などにより固定されて設けられている。この照明装置8eは制御装置10に電気的に接続されており、その駆動が制御装置10により制御される。照明装置8eとしては、例えば、LED(発光ダイオード)照明装置などが用いられる。
【0037】
判定部8fは、撮像部8aにより撮像された画像G1(図4参照)を処理し、画像G1中に直線状の液体像Z1の他に点状の液体像Z2があるか否かを判断し、画像G1中に点状の液体像Z2があると判断した場合、吐出量不足や不吐出、あるいは飛行曲がりなどの吐出不良が不定期(ランダム)に発生して吐出が不安定であると判定し、その判定結果を制御装置10に送信する。
【0038】
ここで、図4に示す画像G1中においては、直線状の液体像Z1が存在しており、その直線状の液体像Z1の他に点状の液体像Z2も存在している。塗布ヘッド4の吐出が安定しているときには、吐出口11aから吐出された液滴は一直線に下に向かって行くため、直線状の液体像Z1のみが見えることになる。一方、塗布ヘッド4の吐出が不安定になっているときには、吐出口11aから吐出された液滴は飛散するため、小さい粒状(点状)の液体像が見えることになる。すなわち、吐出が不安定であれば、液滴の速度が低くなり、液滴は液受け部8dに到達する前に舞い上がって飛散する。この舞い上がりの有無を確認することにより吐出が安定しているか否かを判定する。
【0039】
なお、撮像部8aのシャッター速度は、設定された周波数で吐出口11aから吐出される液滴が線状に見える状態で撮像されるように設定される。例えば、1000滴/秒の吐出周波数であれば、1/30秒〜1/60秒程度のシャッター速度で、吐出口11aから下へ向かって飛翔する液滴を線状に見える状態で撮像することができる。
【0040】
また、液受け部8dの底面と塗布ヘッド4の吐出面M1との離間距離は、吐出が安定しているとき液滴が舞い上がる前に底面に到達し、吐出が不安定になっているとき液滴が底面に到達せずに舞い上がる距離に設定されている。この距離は、用いる塗布液の種類や塗布ヘッド4の吐出周波数や駆動電圧、液滴の飛翔速度などに応じて実験的に求められている。
【0041】
また、画像G1中には、処理時間短縮のため、サーチエリア(検査範囲)E1が設定されている。すなわち、撮像部8aは塗布ヘッド4の吐出面M1の下側の空間を撮像するものであるが、その撮像画像G1中には検査に必要のない塗布ヘッド4の下端部の画像などが含まれる。そこで、撮像画像G1内の全ての範囲を検査するのは無駄であるので、サーチエリアE1を設定する。
【0042】
例えば、サーチエリアE1は液受け部8dと塗布ヘッド4の吐出面M1との間において、吐出面M1から所定の離間距離L1だけ離間して設定されている。このサーチエリアE1の範囲高さは所定距離L2に設定されており、さらに、その範囲幅は塗布ヘッド4の各吐出口11aから個別に吐出された複数の液滴を撮像可能な幅(少なくとも塗布ヘッド4の両端に位置する各吐出口11aの離間距離より大きい)に設定されている。なお、判定精度向上のためには、離間距離L1は5〜15mmの範囲内で設定されることが望ましく、さらに、範囲高さの所定距離L2は1〜10mmの範囲内で設定されることが望ましい。なお、範囲幅を塗布ヘッド4における吐出口11aの配列長さよりも短く設定する場合には、吐出口11aの配列方向に複数回に分けて撮像を行うようにしても良い。
【0043】
このようなサーチエリアE1内で直線状の液体像Z1の他に点状の液体像Z2があるか否かが判断される。具体的には、サーチエリアE1内の画像が二値化処理され、サーチエリアE1内のX軸方向にのびる一ライン毎に黒色のピークが検出される。このとき、不吐出の吐出口11aが存在しなければ、一ラインにおいては、直線状の液体像Z1の黒色は所定間隔(塗布ピッチ)毎に検出される。この検出による黒色のピーク間にも、黒色に対応するピークが存在すると、その黒色は点状の液体像Z2によるものであり、点状の液体像Z2が存在することになる。これがZ軸方向に順次(サーチエリアE1の上側端から下側端に向けて順次)行われて全ライン分実行され、このサーチエリアE1内で直線状の液体像Z1の他に点状の液体像Z2があるか否かが判断される。
【0044】
その後、サーチエリアE1内に点状の液体像Z2があると判断されると、吐出不良が発生して吐出が不安定であると判定され、その判定結果が制御装置10に送信される。一方、サーチエリアE1内に点状の液体像Z2がないと判断された場合には、吐出不良が発生しておらず、吐出が安定していると判定され、その判定結果が制御装置10に送信される。
【0045】
図1に戻り、架台9は、床面上に設置され、ステージ移動装置3や支持部6などを床面から所定の高さ位置に支持する支持台である。架台9の上面は平面に形成されており、この架台9の上面にステージ移動装置3や支持部6などが載置されている。また、架台9の内部には、判定部8fや制御装置10などが設けられている。
【0046】
制御装置10は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、各種情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を備えている。各種情報としては、塗布パターンや塗布速度などの塗布情報や保守装置7に必要な保守情報などがあり、それらの情報はあらかじめ記憶部に記憶されている。記憶部としては、メモリやハードディスクドライブ(HDD)などが用いられる。この制御装置10は、吐出不良検出装置8の判定部8fにより吐出安定性を判定し、その判定結果に応じて塗布ヘッド4によりステージ2上の塗布対象物Wに塗布する塗布動作や保守装置7により塗布ヘッド4を保守するメンテナンス動作の制御を行う。
【0047】
次に、前述の液滴塗布装置1が行う塗布動作(吐出不良検出動作を含む)について説明する。なお、液滴塗布装置1の制御装置10が各種プログラム及び各種情報に基づいて塗布処理(吐出不良検出処理を含む)を実行する。
【0048】
図5に示すように、制御装置10は、吐出不良検出装置8の撮像部8aによる撮像を行う(ステップS1)。この撮像は、あらかじめ決められたタイミングで、例えば、所定時間毎や塗布が実行された塗布対象物Wの所定枚数毎に、あるいは、塗布ヘッド4の保守が行われる毎に実行される。
【0049】
撮像を行う場合、まず、液受け部8dがステージ移動装置3によりステージ2と共に塗布ヘッド4に対向する位置まで移動し、さらに、撮像部8aが昇降移動装置8bにより前述の退避位置から撮像位置に移動する。この状態で、照明装置8eは点灯し、サーチエリアE1を含む撮像範囲を照らす。その後、塗布ヘッド4は液受け部8dに向けて全ての吐出口11aから一斉に液滴を予め設定された吐出周波数で連続的に吐出する。このとき、撮像部8eは、塗布ヘッド4の各吐出口11aから吐出された複数の液滴を設定されたシャッター速度で撮像する。これにより、図4に示すような画像G1が撮像される。
【0050】
その後、制御装置10は、吐出不良検出装置8の判定部8fを用いて、撮像部8aにより撮像された画像G1中のサーチエリアE1内に直線状の液体像Z1の他に点状の液体像Z2があるか否かを判断する(ステップS2)。これにより、塗布ヘッド4の各吐出口11aから吐出された液滴の舞い上がりの有無が確認される。
【0051】
サーチエリアE1内に直線状の液体像Z1の他に点状の液体像Z2があると判断した場合には(ステップS2のYES)、吐出不良が発生し、吐出が安定していないと判定し、保守装置7により塗布ヘッド4の吐出不良を解消するためのメンテナンス動作を行い(ステップS3)、処理をステップS1に戻す。
【0052】
メンテナンス動作を行う場合、保守装置7はワイピング装置をステージ移動装置3により塗布ヘッド4に対向する位置までステージ2と共に移動させ、その対向状態で払拭や吸引によるワイピングによって塗布ヘッド4の吐出面M1に付着した液(付着液)を除去したり、あるいは、液排出装置による液圧送により塗布ヘッド4の各吐出口11aから気泡や異物を除去したりする。
【0053】
このメンテナンス動作は、1つだけ行うものでも組み合わせて行うものでも良く、更には段階的に行うものであっても良い。例えば、段階的とは、ステップS2の処理で吐出が安定してないと判定されたとき、ステップ3においてまずワイピング装置による吐出面M1の清掃を行い、その次のステップS2の処理において吐出が安定していないと再度判定されたときには、その後のステップS3において液排出装置による液圧送を行う如くである。このように、段階的なメンテナンスを行うことで、吐出不良の解消を効率的に行うことが可能となる。
【0054】
すなわち、吐出不良の原因として頻度が比較的高い吐出面M1への塗布液の付着を解消するワイピングにて吐出不良の解消を試み、ワイピングによって吐出不良が解消されなかったときに次に頻度が高い気泡や異物の詰まりを除去する液圧送にて吐出不良の解消を試みる。ワイピングによって吐出不良が解消されれば液圧送を行う必要がなく、その分メンテナンスに要する時間が短縮できるので効率的である。なお、液圧送を行った後のステップS2の処理において吐出が安定してないと再度判定されたときには、保守装置7による吐出不良の解消は望めないとして、その旨を警報やモニタ表示などによって作業者に報知するようにしても良い。
【0055】
一方、サーチエリアE1内に直線状の液体像Z1の他に点状の液体像Z2がないと判断した場合には(ステップS2のNO)、吐出不良が発生しておらず、吐出が安定していると判定し、塗布ヘッド4による塗布を行う(ステップS4)。
【0056】
塗布を行う場合、制御装置10は、塗布情報に基づいてステージ移動装置3及び塗布ヘッド4を制御し、ステージ2上の塗布対象物Wと塗布ヘッド4とを相対移動させながら、その塗布対象物Wの被塗布面に向けて各吐出口11aから液滴を順次吐出して塗布を行い、塗布対象物Wの被塗布面上に所定の塗布パターンを形成する。
【0057】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、塗布ヘッド4の各吐出口11aから吐出された複数の液滴を撮像部8aにより撮像し、撮像した画像G1を判定部8fにより処理し、画像G1中に直線状の液体像Z1の他に点状の液体像Z2があるか否かを判断し、画像G1中に点状の液体像Z2があると判断した場合、塗布ヘッド4の吐出が安定していないと判定する。すなわち、吐出量不足や飛行曲がりが生じて吐出された液滴や不吐出がランダムに発生している吐出口11aから吐出される液滴は、正常な吐出が安定して得られている安定状態の吐出口11aから吐出された液滴に比べて飛翔速度が遅いため、液受け部8dの底面に到達せずに舞い上がる。そのため、撮像部8aによって撮像された画像G1中には、舞い上がった液滴の画像が点状の液体像Z2として映し出されることとなる。そして、その画像G1中の点状の液体像Z2の有無によって液滴の舞い上がりの有無が確認され、その舞い上がりの有無に応じて吐出安定性が判定されるので、塗布ヘッド4の吐出安定性を正確に判定することができる。
【0058】
その結果、塗布ヘッド4による塗布液の安定吐出を維持することが可能となるので、塗布ヘッド4から吐出されて塗布対象物W上に形成される塗布膜の品質を向上させることができる。また、通常、塗布や乾燥後の塗布対象物Wを検査して吐出安定性を判断していたが、塗布や乾燥後の塗布対象物Wを検査する必要が無くなり、本塗布前に吐出状態の把握を迅速に行うことができる。その結果、不安定な吐出状態の塗布ヘッド4によって塗布されたことによる塗布対象物Wの塗布膜不良を低減させることができ、歩留り向上を図ることができる。
【0059】
また、塗布ヘッド4の吐出が安定していないと判定されたときにおいても、塗布ヘッド4の吐出不良を解消するメンテナンス動作(ワイピングや排液処理)が保守装置7によって実行されることから、このメンテナンス動作によって吐出不良が解消されれば、塗布動作を再開することが可能となり、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0060】
なお、本発明に係る前述の実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。前述の実施形態は種々変更可能であり、例えば、前述の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても良く、さらに、異なる実施形態に係る構成要素が適宜組み合わされても良い。
【0061】
前述の実施形態においては、一つの塗布ヘッド4を用いているが、これに限るものではなく、例えば、複数の塗布ヘッド4を用いるようにしても良い。この場合には、各塗布ヘッド4をX軸方向に並べて塗布対象物WのX軸方向の長さをカバー可能に設置すれば、ヘッド移動装置5を不要とすることができる。なお、この場合には、撮像部8aも塗布ヘッド4の個数に合わせて増加させて設置すると良い。ただし、一台の撮像部8aで複数個の塗布ヘッド4を撮像可能である場合(例えば、撮像部8aによる撮像視野が複数個の塗布ヘッド4を一度に取り込むことができる大きさを有する場合や撮像部8aを塗布ヘッド4の並び方向であるX軸方向に移動自在に設けた場合など)には、塗布ヘッド4の個数よりも撮像部8aの個数は少なくても構わない。
【0062】
また、前述の実施形態においては、支持アーム8cを用いているが、これに限るものではなく、他の部材に昇降移動装置8bを直接設けるようにしても良い。例えば、複数の塗布ヘッド4をX軸方向に並べて塗布対象物WのX軸方向の長さをカバー可能に設置する場合、各塗布ヘッド4をY軸方向に交互にずらして設置することがある。この場合には、ヘッド移動装置5にかえて、複数の塗布ヘッド4を一体的に支持する枠体などの支持部材を用いることがある。この場合には、その支持部材に昇降移動装置8を直接設けるようにしても良い。
【0063】
また、前述の実施形態においては、液滴の舞い上がりの有無を確認することにより吐出が安定しているか否かを判定しているが、これに限るものではなく、液滴の舞い上がり度合いを確認して吐出が安定しているか否かを判定するようにしても良い。具体的には、撮像部8aにより撮像された画像G1中のサーチエリアE1内に直線状の液体像Z1の他に点状の液体像Z2が所定数以上あるか否かを判断する。すなわち、実際には、浮遊するミスト(液滴の吐出時に、意図せず付随して吐出されてしまう微小液滴など)が発生することがあり、このため、点状の液体像Z2が全く存在しない状態とはなり難いことがある。このような場合には、点状の液体像Z2の数に閾値を設定し、点状の液体像Z2の数が閾値以下である場合は点状の液体像Z2がないものとして吐出が安定していると判定し、閾値を越えた場合に吐出が不安定であると判定するようにしても良い。この所定数(閾値)は、用いる塗布液の種類や塗布ヘッド4の吐出周波数や駆動電圧などに応じて実験的に求められ、記憶部に保存されている。
【0064】
また、点状の液体像Z2の検出を、パターンマッチング手法を用いて行うようにしても良い。例えば、円形図形をテンプレート画像とし、このテンプレート画像と予め設定された割合以上のマッチング率で一致する画像が撮像画像中に存在するか否かを判定する。撮像画像中にテンプレート画像と一致する画像があればそれを液体像Z2と判定し、その数が閾値を越えた場合には吐出が不安定であると判定するようにしても良い。このようなテンプレートマッチング手法によれば、テンプレート画像との大きさとの比較も可能となるので、舞い上がって浮遊する液滴の平均粒径とそのバラツキに基づいてマッチング率の閾値を決定することで、液滴の画像(点状の液体像Z2)と液滴以外(液滴ではない可能性のある塵など)の画像の分別が可能となるので、塵などのノイズによって判別精度が低下することを防止することができる。なお、舞い上がって浮遊する液滴は球形と考えられるため、テンプレート画像を円形としたが、他の形状であってもよい。
【0065】
また、撮像部8aによる塗布ヘッド4の各吐出口11aから吐出された液滴の撮像を、全ての吐出口11aから液滴を一斉に吐出させて行うものとして説明したが、吐出口11a毎に液滴を吐出させ、吐出口11a単位で撮像し、その吐出口11aからの吐出の安定性をその都度する判断するようにしても良い。
【0066】
また、塗布ヘッド4の全ての吐出口11aから液滴を一斉に吐出させた状態で撮像部8aによる撮像を行うものとして説明したが、吐出口11aから液滴の吐出を停止させた状態で撮像を行うようにしても良い。すなわち、塗布ヘッド4の全ての吐出口11aから液滴を予め設定された時間だけ一斉に吐出させ、その後、吐出口11aから液滴の吐出を停止させた状態で、吐出面M1の下側の空間を撮像部8aで撮像する。このようにした場合でも、前述の設定時間中の吐出の際に吐出不良が生じている吐出口11aがあればその吐出口11aからの吐出に起因して液滴の舞い上がりが生じ、舞い上がった液滴は吐出面M1の下側の空間を浮遊するから、この浮遊する液滴の画像が液滴の吐出が停止された後に撮像された撮像部8aの画像G1中に点状の液体像Z2として撮像される。したがって、この画像G1中に点状の液体像Z2があるか否かを判断することにより、塗布ヘッド4の吐出が安定しているか否かを判定することが可能である。この場合には、画像G1中に直線状の液体像Z1がない分だけ、点状の液体像Z2の有無を容易に判断することが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 液滴塗布装置
4 塗布ヘッド
7 保守装置
8 吐出不良検出装置
8a 撮像部
8f 判定部
10 制御装置
11a 吐出口
G1 画像
Z2 点状の液体像(点状の画像)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する吐出口を有する塗布ヘッドの吐出不良を検出する吐出不良検出装置であって、
前記塗布ヘッドの前記吐出口から液滴が吐出される空間を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像を処理し、前記画像中に点状の画像があるか否かを判断し、前記画像中に点状の画像があると判断した場合、前記塗布ヘッドの吐出が安定していないと判定する判定部と、
を備えることを特徴とする吐出不良検出装置。
【請求項2】
液滴を吐出する吐出口を有する塗布ヘッドの吐出不良を検出する吐出不良検出方法であって、
前記塗布ヘッドの前記吐出口から液滴が吐出される空間を撮像し、
撮像した画像を処理し、前記画像中に点状の画像があるか否かを判断し、前記画像中に点状の画像があると判断した場合、前記塗布ヘッドの吐出が安定していないと判定することを特徴とする吐出不良検出方法。
【請求項3】
前記塗布ヘッドの前記吐出口から液滴が吐出される空間の撮像を、前記吐出口から液滴が吐出されている状態で行うことを特徴とする請求項2記載の吐出不良検出方法。
【請求項4】
塗布ヘッドの吐出面に形成された吐出口から液滴を吐出させて塗布対象物に液滴を塗布する液滴塗布装置であって、
前記塗布ヘッドの吐出不良を検出する吐出不良検出装置を備え、
前記吐出不良検出装置は、
前記塗布ヘッドの前記吐出口から液滴が吐出される空間を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像を処理し、前記画像中に点状の画像があるか否かを判断し、前記画像中に点状の画像があると判断した場合、前記塗布ヘッドの吐出が安定していないと判定する判定部と、
を具備することを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項5】
前記塗布ヘッドのメンテナンスを行う保守装置と、
前記判定部によって前記塗布ヘッドの吐出が安定していないと判定されたときに、前記保守装置を制御して前記塗布ヘッドのメンテナンスを実行させる制御装置と、
を備えることを特徴とする請求項4記載の液滴塗布装置。
【請求項6】
塗布ヘッドの吐出面に形成された吐出口から液滴を吐出させて塗布対象物に液滴を塗布する液滴塗布方法であって、
前記塗布ヘッドの前記吐出口から液滴が吐出される空間を撮像し、
撮像した画像を処理し、前記画像中に点状の画像があるか否かを判断し、前記画像中に点状の画像があると判断した場合、前記塗布ヘッドの吐出が安定していないと判定して前記塗布ヘッドのメンテナンスを実行することを特徴とする液滴塗布方法。
【請求項7】
前記塗布ヘッドの前記吐出口から液滴が吐出される空間の撮像を、前記吐出口から液滴が吐出されている状態で行うことを特徴とする請求項6記載の液滴塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157824(P2012−157824A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19371(P2011−19371)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】