吐出装置及び吐出方法
【課題】重量測定を行って吐出量を補正することにより、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをより少なくした、吐出装置及び吐出方法を提供する。
【解決手段】基板を載置するステージと、機能液の液滴を吐出する複数の吐出ヘッドと、複数の吐出ヘッドにそれぞれ機能液を供給する機能液供給装置4と、吐出ヘッドから吐出させた液滴を受けてその重量を測定する重量測定装置24と、を備えた吐出装置1である。機能液供給装置4には、機能液供給装置から吐出ヘッドに供給する機能液の温度を調整する調整手段が設けられている。調整手段は、重量測定装置24によって吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する際に、吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するよう、制御されている。
【解決手段】基板を載置するステージと、機能液の液滴を吐出する複数の吐出ヘッドと、複数の吐出ヘッドにそれぞれ機能液を供給する機能液供給装置4と、吐出ヘッドから吐出させた液滴を受けてその重量を測定する重量測定装置24と、を備えた吐出装置1である。機能液供給装置4には、機能液供給装置から吐出ヘッドに供給する機能液の温度を調整する調整手段が設けられている。調整手段は、重量測定装置24によって吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する際に、吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するよう、制御されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出装置及び吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上にカラーフィルター等の機能性薄膜を形成する方法としては、スピンコート法やフレキソ印刷法が一般に用いられている。これに対して近年では、インク使用量削減や工程数削減に効果的であるとして、液滴吐出法が種々の薄膜形成に用いられるようになってきている。液滴吐出法を用いた薄膜の形成方法では、機能性材料(固形分)を溶媒(分散媒)に溶解又は分散させてなるインク(液状体)を液滴として基板上に吐出し、所望位置に配置した後、この配置したインクを乾燥してインク中の溶媒(分散媒)を除去することにより、機能性材料からなる薄膜を形成している。
【0003】
ところで、工業的に形成するカラーフィルター等の機能性薄膜は、近年では益々精細化する傾向にあり、したがって液滴吐出法でこれら機能性薄膜を形成するにあたっては、より高い吐出精度が要求されるようになってきている。このような背景のもとに近年では、基板上に直接機能液を吐出するに先立ち、主に複数の吐出ヘッド間での吐出バラツキを補正するため、各吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定している(例えば、特許文献1参照)。そして、この重量測定結果に基づき、各吐出ヘッドからそれぞれ吐出する液滴の吐出量を決定し、決定した吐出量となるように駆動波形(駆動電圧)を補正し付与することにより、各吐出ヘッド間でバラツキを生じさせることなく、それぞれから基板上に液滴を吐出させ、描画するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−177262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のように重量測定を行う吐出装置では、予め重量測定を行い、その結果に基づいて吐出量を補正しているものの、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキが、依然として生じることがある。そして、特に機能性薄膜としてカラーフィルターを形成した場合には、吐出量のバラツキに起因してスジムラ(スジ状の濃淡ムラ)が生じてしまうことがある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、重量測定を行って吐出量を補正することにより、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをより少なくした、吐出装置及び吐出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するべく、吐出ヘッド間で吐出量がバラツく原因を調べた結果、以下の知見を得た。
前記の吐出装置において、吐出ヘッドから吐出される機能液は、吐出ヘッドに接続された機能液供給装置から供給される。この機能液供給装置は、通常は機能液を貯留するタンクと、該タンクと吐出ヘッドとの間を接続するフレキシブルチューブとを備えて構成されている。
【0008】
しかしながら、このような機能液供給装置を備えた吐出装置にあっては、重量測定時には多量の吐出を行うことがなく、したがって各吐出ヘッド内の機能液は、それぞれの吐出ヘッド内に長時間留まっている。よって、吐出される機能液は、その温度が吐出ヘッドの温度にほぼ一致した温度となる。ところが、複数の吐出ヘッドは、その配置などによって温度差があり、したがってこの吐出ヘッドの温度差が機能液の粘度差となり、そのまま吐出量のバラツキになってしまう。
【0009】
一方、基板への描画時では、機能液の吐出量が多いため、各吐出ヘッド内の機能液はそれぞれの吐出ヘッド内に長時間留まることなく、短時間を経て吐出される。したがって、吐出される機能液の温度は、吐出ヘッドの温度にほとんど影響されることなく、吐出ヘッドに供給される直前の温度にほぼ保持される。
よって、重量測定時には吐出ヘッドの温度の個体差が反映された吐出量となるのに対し、描画時には吐出ヘッドの温度の個体差がほとんど反映されない吐出量となることから、従来では重量測定の結果に基づいて吐出量を補正し、この補正した状態で描画(吐出)を行っても、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキを十分に無くすことができなかったのである。
このような知見に基づき、本発明者はさらに研究を重ねた結果、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の吐出装置は、基板を載置するステージと、機能液の液滴を吐出する複数の吐出ヘッドと、前記複数の吐出ヘッドにそれぞれ機能液を供給する機能液供給装置と、前記吐出ヘッドから吐出させた液滴を受けてその重量を測定する重量測定装置と、を備え、
前記機能液供給装置には、該機能液供給装置から前記吐出ヘッドに供給する機能液の温度を調整する調整手段が設けられ、
前記調整手段は、前記重量測定装置によって前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する際に、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するよう、制御されていることを特徴としている。
【0011】
この吐出装置によれば、液滴の重量を測定する際に、吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するように、調整手段が制御されているので、各吐出ヘッドに供給された機能液は、それぞれの吐出ヘッド内に長時間留まっていても、元々吐出ヘッドより高い温度に調整されているため、吐出ヘッドの温度にほとんど影響されることなく、供給されたときの高い温度に保持される。したがって、このような状態のもとに重量測定がなされることで、この重量測定結果には吐出ヘッドの温度の個体差が反映されることなく、この温度差以外の、吐出ヘッド間の個体差に起因するバラツキのみが反映されるようになる。したがって、この重量測定結果に基づき、描画時において各吐出ヘッドから基板上に吐出させることにより、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをより少なくし、形成する薄膜に例えばスジムラが発生するのを防止することができる。
【0012】
また、前記吐出装置において、前記調整手段は、前記吐出ヘッドが前記ステージに載置された前記基板上に液滴を吐出する際に、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するよう、制御されているのが好ましい。
このようにすれば、描画時においても、吐出ヘッドの温度の個体差が吐出量に反映することがなく、したがって、各吐出ヘッド間でバラツキなく良好に吐出が行えるようになる。
【0013】
また、前記吐出装置において、前記調整手段は、前記重量測定装置によって前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する際の、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度と、前記基板上に液滴を吐出する際の、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度とを、同じに調整するよう、制御されているのが好ましい。
このようにすれば、重量測定の結果が描画時の吐出性に直接反映されるようになり、したがって、各吐出ヘッド間でのバラツキがより良好に防止される。
【0014】
本発明の吐出方法は、基板を載置するステージと、機能液の液滴を吐出する複数の吐出ヘッドと、前記複数の吐出ヘッドにそれぞれ機能液を供給する機能液供給装置と、前記吐出ヘッドから吐出させた液滴を受けてその重量を測定する重量測定装置と、を備えた吐出装置により、前記基板上に機能液の液滴を吐出する吐出方法であって、
前記重量測定装置により、前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程と、
前記重量を測定した結果に基づき、各吐出ヘッドからそれぞれ吐出する液滴の吐出量を決定し、決定した吐出量で各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程と、を備え、
前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程では、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整することを特徴としている。
【0015】
この吐出方法によれば、液滴の重量を測定する工程では、吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するので、各吐出ヘッドに供給された機能液は、それぞれの吐出ヘッド内に長時間留まっていても、元々吐出ヘッドより高い温度に調整されているため、吐出ヘッドの温度にほとんど影響されることなく、供給されたときの高い温度に保持される。したがって、このような状態のもとに重量測定を行うことにより、この重量測定結果に吐出ヘッドの温度の個体差を反映させることなく、この温度差以外の、吐出ヘッド間の個体差に起因するバラツキのみを反映させることができる。したがって、この重量測定結果に基づき、描画時において各吐出ヘッドから基板上に吐出させることにより、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをより少なくし、形成する薄膜に例えばスジムラが発生するのを防止することができる。
【0016】
また、前記吐出方法において、前記各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程では、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するのが好ましい。
このようにすれば、描画時においても、吐出ヘッドの温度の個体差が吐出量に反映することがなく、したがって、各吐出ヘッド間でバラツキなく良好に吐出が行えるようになる。
【0017】
また、前記吐出方法では、前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程において、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度と、前記各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程において、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度とを、同じなるように調整するのが好ましい。
このようにすれば、重量測定の結果を描画時の吐出性に直接反映させることができ、したがって、各吐出ヘッド間でのバラツキがより良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る液滴吐出装置の外観斜視図である。
【図2】本発明に係る液滴吐出装置の正面図である。
【図3】本発明に係る液滴吐出装置の右側面図である。
【図4】本発明に係る液滴吐出装置の一部を省略した平面図である。
【図5】液滴吐出装置のヘッドユニットの平面図である。
【図6】(a)機能液滴吐出ヘッドの斜視図、(b)同、要部の断面図である。
【図7】機能液供給手段を説明するための模式図である。
【図8】本発明に係る重量測定ユニットの外観斜視図である。
【図9】本発明に係る重量測定ユニットの平面図である。
【図10】本発明に係る重量測定ユニットの正面図である。
【図11】重量測定ユニットの受け容器廻りの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明の吐出装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。図1〜図4は、本発明の吐出装置の一実施形態を示す概略構成図であって、これらの図において符号1は吐出装置である。なお、図1は吐出装置の外観斜視図、図2は吐出装置の正面図、図3は吐出装置の右側面図、図4は吐出装置の一部を省略した平面図である。
【0020】
吐出装置1は、本実施形態では機能液としてカラーフィルターの形成材料を吐出し、基板上にカラーフィルターを形成するものである。この吐出装置1は、図1〜図4に示すように基板(ワーク)Wを載置するステージ(図示略)と、機能液(カラーフィルターの形成材料)を吐出するための吐出ヘッド(図示略)を複数備えた吐出手段2と、吐出手段2(吐出ヘッド)のメンテナンスを行うためのメンテナンス手段3と、吐出手段2の各吐出ヘッドに機能液を供給するための機能液供給手段(機能液供給装置)4と、前記の各手段(装置)を駆動・制御するための圧縮エアーを供給するエアー供給手段5と、を備えて構成されたものである。なお、このような各手段は、チャンバー(図示略)に収容されており、このチャンバー及びこのチャンバー内の温度を調整する空調装置(図示略)を含めて、本発明に係る吐出装置1が構成されている。
【0021】
図1〜図4に示すように、吐出手段2およびメンテナンス手段3の後述するフラッシングユニット25は、アングル材が方形に組まれてなる架台11の上部に固定された、石定盤12の上に配設されており、機能液供給装置4およびエアー供給手段5の大部分は、架台11に添設されたキャビネット形式の機台13に組み込まれている。機台13には、大小2つの収容室14、15が形成されており、大きいほうの収容室14には機能液供給装置4を構成する機能液貯留用のタンク類が収容され、小さいほうの収容室15にはエアー供給手段5の主要部が収容されている。
【0022】
また、機台13上には、機台13の長手方向(X軸方向)にスライド自在な移動テーブル18が設けられている。そして、移動テーブル18上には広い面積を持つ可動ベース19が固定されており、この可動ベース19には、メンテナンス手段3を構成する吸引ユニット21、ワイピングユニット22、ドット抜け検出ユニット23、および機能液の重量測定装置である重量測定ユニット24が載置されている。
【0023】
メンテナンス手段3は、吐出手段2を構成する複数の吐出ヘッド30を保守(メンテナンス)して、これら吐出ヘッド30が適切に機能液を吐出できるようにするものであり、後述するθテーブル43上に配設した一対のフラッシングボックス26、26を有するフラッシングユニット25を備えるとともに、機台13上(可動ベース19上)に、吸引ユニット21、ワイピングユニット22およびドット抜け検出ユニット23を備えたものである。さらに、機台13上(可動ベース19上)には、吸引ユニット21およびワイピングユニット22と並ぶようにして、重量測定ユニット(重量測定装置)24が配設されている。なお、図4中の符号27は、予備のフラッシングボックスである。
【0024】
一方、吐出装置1の主体となる吐出手段2は、機能液を吐出する吐出ヘッド30を複数有するヘッドユニット31と、ヘッドユニット31を支持するメインキャリッジ32と、基板Wを載置すると共に基板Wを吐出ヘッド30に対して相対的に走査(移動)させるX・Y移動機構33と、を備えている。
【0025】
X・Y移動機構33は、前記石定盤12に固定され、基板Wを主走査(X軸方向に移動)させるとともに、メインキャリッジ32を介してヘッドユニット31を副走査(Y軸方向に移動)させるものであり、かつ、ヘッドユニット31を副走査の延長上に移動させて、機台13上のメンテナンス手段3側に移動させるものである。また、X・Y移動機構33は、石定盤12の長辺に沿う中心線に軸線が一致して固定されたX軸テーブル41と、X軸テーブル41を跨いで、石定盤12の短辺に沿う中心線に軸線が一致したY軸テーブル51と、を有したものである。
【0026】
X軸テーブル41は、本発明のステージを構成するもので、基板Wをエアー吸引により吸着セットする吸着テーブル42と、吸着テーブル42を支持するθテーブル43と、θテーブル43をX軸方向にスライド自在に支持するX軸エアースライダー44と、θテーブル43を介して吸着テーブル42上の基板WをX軸方向に移動させるX軸リニアモーター(図示略)と、X軸エアースライダー44に併設したX軸リニアスケール45とによって構成されている。吐出ヘッド30の主走査は、X軸リニアモーターの駆動により、基板Wを吸着した吸着テーブル42およびθテーブル43が、X軸エアースライダー44を案内にしてX軸方向に往復移動することにより行われる。
【0027】
Y軸テーブル51は、メインキャリッジ32を吊設するブリッジプレート52と、ブリッジプレート52を両持ちし、かつY軸方向にスライド自在に支持する一対のY軸スライダー53、53と、Y軸スライダー53に併設したY軸リニアスケール54と、一対のY軸スライダー53、53を案内してブリッジプレート52をY軸方向に移動させるY軸ボールねじ55と、Y軸ボールねじ55を正逆回転させるY軸モーター(図示略)と、を備えている。Y軸モーターはサーボモーターで構成されており、Y軸モーターが正逆回転すると、Y軸ボールねじ55を介してこれに螺合しているブリッジプレート52が、一対のY軸スライダー53、53をガイドにしてY軸方向に移動する。すなわち、ブリッジプレート52の移動に伴い、メインキャリッジ32(ヘッドユニット31)がY軸方向の往復移動を行い、吐出ヘッド30の副走査が行われる。
【0028】
ここで、吐出手段2の一連の動作を簡単に説明する。まず、機能液を吐出する前の準備として、吸着テーブル42にセットされた基板Wの位置補正およびヘッドユニット31の位置補正が行われる。次に、基板WをX・Y移動機構33(X軸テーブル41)により主走査(X軸)方向に往復動させると共に、複数の吐出ヘッド30を駆動させて基板Wに対する機能液滴の選択的な吐出動作が行われる(描画動作)。
【0029】
そして、基板Wを復動させた後、ヘッドユニット31をX・Y移動機構33(Y軸テーブル51)により副走査(Y軸)方向に移動させ、再度基板Wの主走査方向への往復移動と吐出ヘッド30の駆動が行われる。なお、本実施形態では、ヘッドユニット31に対して、基板Wを主走査方向に移動させるようにしているが、ヘッドユニット31を主走査方向に移動させる構成であってもよい。また、ヘッドユニット31を固定とし、基板Wを主走査方向および副走査方向に移動させる構成であってもよい。
【0030】
メインキャリッジ32は、前記のブリッジプレート52に下側から固定される外観「I」形の吊設部材61と、吊設部材61の下面に取り付けたθテーブル62と、θテーブル62の下方に吊設するよう取り付けたキャリッジ本体63と、で構成されている。キャリッジ本体63には、ヘッドユニット31を遊嵌するための方形の開口が形成されており、ヘッドユニット31を位置決め固定するようになっている。
【0031】
図5および図6(a)、(b)に示すようにヘッドユニット31は、複数(12個)の吐出ヘッド30と、複数の吐出ヘッド30を搭載するサブキャリッジ71と、各吐出ヘッド30のノズル面(ノズル形成面)88を下面に突出させてサブキャリッジ71に取り付けるための、複数(12個)のヘッド保持部材72と、から構成されている。
【0032】
12個の吐出ヘッド30は、6個ずつに二分されており、基板Wに対して機能液の十分な塗布密度を確保するため、それぞれ所定角度傾けてサブキャリッジ71に配設されている。二分された6個の各吐出ヘッド30は、副走査方向(Y軸方向)に対して相互に位置ずれして配設され、副走査方向において各吐出ヘッド30のノズル95aが連続(一部重複)するようになっている。なお、吐出ヘッド30を専用部品で構成するなどして、基板Wに対して機能液の十分な塗布密度を確保できる場合には、吐出ヘッド30をあえて傾けてセットする必要はない。
【0033】
図5に示すように、サブキャリッジ71は、一部が切り欠かれた本体プレート74と、本体プレート74の長辺方向の中間位置に設けた左右一対の基準ピン75、75と、本体プレート74の両長辺部分に取り付けたグリップ付きの左右一対の支持部材76、76と、を備えている。一対の基準ピン75、75は、画像認識を前提として、サブキャリッジ71(ヘッドユニット31)をX軸、Y軸、およびθ軸方向に位置決め(位置認識)するための基準となるものである。
【0034】
各支持部材76は、ヘッドユニット31をメインキャリッジ32に固定する際の固定部位となる。また、サブキャリッジ71には、各吐出ヘッド30と中間タンク(図示略)とを配管接続するための配管ジョイント77が設けられている。配管ジョイント77は、一端側が各吐出ヘッド30(の接続針33)と接続した配管アダプタ78からのヘッド側配管部材に接続し、他端側が前記の中間タンクからの装置側配管部材を接続するための12個のソケット79を有している。すなわち、機能液は、図3に示したように前記機能液供給手段4を構成するメインタンク6から中間タンク(図示略)に供給され、この中間タンクから分岐して各吐出ヘッド30に供給されるようになっている。
【0035】
ここで、機能液供給手段4は、図7に示すように機能液を貯留する複数のタンク200と、これらタンク200に接続する接続管201と、該接続管201に接続する前記中間タンク202と、該中間タンク202に接続し、かつ前記吐出ヘッド30に接続するフレキシブルチューブ203とを備えて構成されている。そして、この機能液供給手段4には、前記吐出ヘッド30のそれぞれに供給する機能液を加温してその温度を所望の温度、すなわち供給する吐出ヘッド30の温度より高い温度に調整する調整手段210が設けられている。
【0036】
この調整手段210は、前記のタンク202、接続管201、中間タンク202、フレキシブルチューブ203のそれぞれに設けられたヒーター211と、これらヒーター211を制御する制御装置212とからなるもので、制御装置212によって予め設定された温度にヒーター211を発熱させ、これによって吐出ヘッド30のそれぞれに供給する機能液を所望の温度に加温するものである。ヒーター211で加温することによって到達させる機能液の所望の温度については、吐出ヘッド30の温度より高い温度、例えば2〜5℃程度高い温度とする。ただし、吐出ヘッド30間で温度にバラツキがある場合には、これら吐出ヘッド30のうち最も高い温度より、さらに高い温度となるように、機能液を加温する。なお、吐出ヘッド30の温度については、図示しない温度センサーによってそれぞれの温度を検出しておき、これらの検出値を前記制御装置212に入力し、入力した検出値のうちの最大値より機能液の温度が2〜5℃程度高くなるように、ヒーター211を発熱させる。
【0037】
これにより、調整手段210は、後述するように各吐出ヘッド30から吐出させて液滴を受け、その重量を測定する際に、これら吐出ヘッド30のそれぞれに供給する機能液の温度を、供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するように制御されている。また、吐出ヘッド30の全てに対し、供給する機能液が同じ温度になるようにもなっている。さらに、本実施形態では、前記吐出ヘッド30が基板W上に液滴を吐出し描画する際にも、これら吐出ヘッド30のそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッド30の温度より高い温度に調整するように、制御されている。
【0038】
なお、図7に示した機能液供給手段4では、タンク202、接続管201、中間タンク202、フレキシブルチューブ203の全てにヒーター211を設けているが、機能液を所望の温度に調整(加温)可能であれば、これらタンク202、接続管201、中間タンク202、フレキシブルチューブ203のうちの任意の一つ、あるいは複数のものだけに、ヒーター211を設けるようにしてもよい。
【0039】
前記各吐出ヘッド30は、図6(a)に示すようにいわゆる2連のもので、2連の接続針81、81を有する機能液導入部82と、機能液導入部82に連なる2連のヘッド基板83と、機能液導入部82の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体84と、を備えている。
【0040】
各接続針81は、前記の配管アダプタ78を介して前記機能液供給手段4のフレキシブルチューブ203に接続されており、機能液導入部82は、各接続針81から機能液の供給を受けるようになっている。ヘッド基板83には、一対のコネクタ86、86が突設されており、これらコネクタ86に、中間基板(図示略)を介して制御手段のヘッドドライバー(図示略)が接続されている。
【0041】
ヘッド本体84には、複数の圧電素子を収容したアクチュエータユニット91と、これに連なる複数の圧力室93を構成する流路ユニット92とが組み込まれ、かつ流路ユニット92の下面(図6(a)では上面)には、多数(180個)のノズル(ノズル開口)95aからなるノズル列95を形成したステンレス製のヘッドプレート94が貼設されている。すなわち、ヘッドプレート94により、2列の吐出ノズル列95、95を形成した吐出ヘッド30のノズル面88が構成されている。
【0042】
次に、メンテナンス手段の各構成ユニットについて説明する。前述したように、メンテナンス手段3は、θテーブル43上のフラッシングユニット25と、移動テーブル(可動ベース19上)18上の吸引ユニット21、ワイピングユニット22、ドット抜け検出ユニット23および重量測定ユニット24とを備えている。図1および図4に示すようにヘッドユニット(吐出ヘッド30)31は、その主走査時に、フラッシングユニット25に臨むようになっている。一方、吸引ユニット21、ワイピングユニット22、ドット抜け検出ユニット23および重量測定ユニット24に対しては、ヘッドユニット(吐出ヘッド30)31は副走査範囲を越えて機台13上に移動した状態で、移動テーブル18によりこれらユニットを適宜、X軸方向に移動させることにより、これに臨むようになっている。
【0043】
吸引ユニット21は、吐出ヘッド30から機能液を強制的に吸引するとともに、吐出ヘッド30の全ノズルからの機能液の吐出を受けるフラッシングボックスの機能を有している。また、図4に示すようにこの吸引ユニット21には、12個の吐出ヘッド30に対応する12個のキャップ102を組み込んだキャップユニット101が、昇降自在に設けられている。
【0044】
ヘッドユニット31(の吐出ヘッド30)に機能液の充填を行う場合や、吐出ヘッド30内で増粘した機能液を除去する場合には、各キャップ102を各吐出ヘッド30に密着させて、ポンプ吸引を行う。また、装置の非稼働時には、各キャップ102を各吐出ヘッド30に密着させて、吐出ヘッド30の保全(機能液の乾燥防止等)を行う。さらに、ワーク交換などの機能液の吐出を休止するときには、各キャップ102を各吐出ヘッド30から僅かに離間させておいて、フラッシング(予備吐出)を行うようにしている。
【0045】
ワイピングユニット22は、吐出ヘッド30の吸引(クリーニング)等により、機能液が付着して汚れた各吐出ヘッド30のノズル面88を拭き取るものであり、巻取りユニット104と拭取りユニット105とで構成されている。巻取りユニット104から繰り出されたワイピングシート(図示略)は、拭取りユニット105に導かれて各吐出ヘッド30のノズル面88を拭き取り、これを周回するようにして巻取りユニット104に巻き取られる。すなわち、ワイピングユニット22は、ワイピングシートを送りながら、吐出ヘッド30のノズル面88を拭き取るようになっている。
【0046】
フラッシングユニット25は、基板Wに対する液滴吐出時、すなわち描画時に、複数(12個)の吐出ヘッド30のフラッシング動作(予備吐出)により順に吐出される機能液を受けるためのものである。フラッシングユニット25は、X軸テーブル41の吸着テーブル42を挟んで、θテーブル43に固定された1対のフラッシングボックス26、26を備えており、描画動作において、相対的に移動してゆくフラッシングボックス26に対して、その直上部に臨んだ吐出ヘッド30から順次フラッシング動作を行うようになっている。
【0047】
ドット抜け検出ユニット23は、吐出ヘッド30の全ノズルから機能液滴が確実に吐出されているか否か、すなわち各吐出ヘッド30にノズル詰まり等が生じているか否かを検出するものである。ドット抜け検出ユニット23は、6個ずつの二分した吐出ヘッド(群)30に対応して、一対の検出ユニット107、107を有して構成されている。一対の検出ユニット107、107は、相互にY軸方向に位置ずれして配設されており、各検出ユニット107は発光素子(レーザ)108aと受光素子108bとを対向させ、その光路を吐出した機能液的が遮断するか否かで、ドット抜け(吐出不良)を検出するようになっている。
【0048】
重量測定ユニット(重量測定装置)24は、機能液滴の吐出量(重量)を吐出ヘッド30単位で測定し、各吐出ヘッド30間での吐出バラツキを無くすべく、各吐出ヘッド30に供給する駆動電圧(駆動波形)を補正し、適正化して付与するためのものである。また、付随的には、吐出ヘッド30の吐出不良(ドット抜け)を検出するものである。図8ないし図10(図1ないし図4に対して前後を反転して表している)に示すように、重量測定ユニット24は、12個の吐出ヘッド30の機能液を受ける12個の受け容器111と、これら受け容器111を載置した容器載置台112と、各受け容器111を介して機能液の重量を測定する電子天秤113と、各受け容器111を容器載置台112および電子天秤113との相互間で移載する移載機構114と、容器載置台112上の各受け容器111に対しその蓋部材115を搬送して閉蓋する蓋開閉機構116と、を備えている。
【0049】
容器載置台112は上面が平坦なプレートで構成され、その上面には、ヘッドユニット31における吐出ヘッド30の並びに倣って、12個の受け容器111が載置されている。また、容器載置台112には、光路が受け容器111の直上部を横断するように、4組の透過型センサー118が設けられており、各受け容器111上の蓋部材115の有無を検出できるようになっている。
【0050】
電子天秤113は、測定台121を上面中央に没入するように設けられた箱状の天秤本体122と、天秤本体122の脇に配設されたディスプレイ123と、測定台121を上側から覆う覆装機構124とを有している。覆装機構124は、測定台121の没入部を閉蓋するように設けられた透明な覆装プレート126と、覆装プレート126を開閉移動させる覆装シリンダ127とからなり、測定台121上に受け容器111が移載されると、これを覆うことで重量測定の際の気流の影響を排除するように、構成されている。
【0051】
移載機構114は、受け容器111を把持するチャック部131と、チャック部131を昇降(Z軸移動)させる昇降テーブル132と、昇降テーブル132を介してチャック部131をX軸方向に移動させるX動テーブル133と、このX動テーブル133に直交すると共に容器載置台112をY軸方向に移動させるY動テーブル134とを有している。この場合、各テーブル132、133、134はモーターで駆動され、チャック部131はシリンダ(空圧シリンダ)で駆動される。
【0052】
そして、移載動作では、Y動テーブル134を駆動して、所望の受け容器111をチャッキング位置に移動させた後、X動テーブル133を駆動してチャック部131を受け容器111の直上部に移動させ、さらに昇降テーブル132によりチャック部131を下降させて受け容器111を把持する。チャック部131が受け容器111を把持すると、これをいったん上昇させた後、測定台121の直上部まで移動させる。ここで再度、チャック部131が下降し、受け容器111を測定台121上に載せ、その把持状態を解いて上昇する。また、電子天秤113から容器載置台112への受け容器111の移載は、逆の手順となる。
【0053】
一方、蓋開閉機構116は、ホーム位置のある容器載置台112と横並びになるように配設されており、容器載置台112より幾分低い蓋載置台141と、蓋載置台141上の12個の蓋部材115をこの蓋載置台141と容器載置台112との相互間で移載する蓋搬送部142とで構成されている。蓋載置台141上には、容器載置台112上の受け容器111の並びに倣って、12個の蓋部材115が載置されている。
【0054】
蓋搬送部142は、12個の蓋部材115を個々に吸着保持する吸着ユニット144と、吸着ユニット144をX軸方向に進退させる進退動テーブル145と、進退動テーブル145を介して吸着ユニット144を上下動させる上下動テーブル146とで構成されている。これら各テーブル145、146は、シリンダ(空圧シリンダ)で駆動されるようになっている。
【0055】
閉蓋動作では、上下動テーブル146を駆動し、ホーム位置にある吸着ユニット144を下動させて、蓋載置台141上に載置されている12個の蓋部材115を吸着する。この状態で、吸着ユニット144を上昇させた後、進退動テーブル145を駆動し、吸着ユニット144を容器載置台112の直上部まで移動させる。ここで再度、上下動テーブル146を駆動して、12個の蓋部材115を12個の受け容器111に載せるようにしてこれを閉蓋し、吸着を解いて蓋部材115を置き去るようにして吸着ユニット144を上昇させる。また、受け容器111を開放すべく12個の蓋部材115を取り去る場合には、前記と逆の手順で蓋搬送部142を駆動させ、最終的に12個の蓋部材115を蓋載置台141上に載置する。
【0056】
一方、図11に示すように受け容器111は、ステンレス等で箱状に形成された蓋無しの耐食性容器である容器本体151と、容器本体151の内部に充填した機能液吸収材152とで構成されていている。機能液吸収材152は、耐食性(耐薬品性)および含浸性(吸収保持性)を考慮して、ポリビニルアルコールの連続多孔質体で構成されている。
【0057】
ここで、重量測定ユニット24による機能液の重量測定方法(機能液の液滴の重量を測定する工程)について、説明する。この重量測定では、まず、前記調整手段210によって各吐出ヘッド30に供給する機能液の温度を所望の温度に調整する。すなわち、各吐出ヘッド30のうちの最も高い温度の吐出ヘッド30の温度より、さらに供給する機能液の温度が2〜5℃程度高くなるように、調整手段210によって前記機能液供給手段4を調整しておく。
【0058】
また、これとは別に、受け容器(空あるいは前回までの機能液が貯留されている)111の重量測定を行う。すなわち、容器載置台112上の12個の受け容器111には、それぞれ蓋部材115が予め載っており、まず、蓋開閉機構116を駆動して蓋部材115を取り去る。その際、蓋部材115をハンドリングミスは、透過型センサー118によって検出される。
【0059】
次に、移載機構114を駆動し、容器載置台112上の受け容器111を1個ずつ電子天秤113に移載し、各受け容器111の重量を測定する。もちろん、各受け容器111には、対応する吐出ヘッド30と共に番号が付されており、この番号にしたがって重量測定が行われる。また、各受け容器111の重量測定時には、覆装機構124により測定台121の部分が閉蓋される。全ての受け容器111の重量測定が完了したら、ヘッドユニット31を容器載置台112の直上部に移動させて、全吐出ヘッド30を駆動して機能液滴を受け容器111に向かって吐出する。
【0060】
この場合、機能液の吐出は、全吐出ヘッド30の全ノズルからなされ、例えば各レズル95a毎に、予め決められた数(例えば数千発から数万発)の機能液滴の吐出を行う。各吐出ヘッド30から機能液が吐出されると、吐出機能液は、各受け容器111の機能液吸収材152の表面に着弾し、これに吸収保持される。
【0061】
機能液の吐出動作が完了しヘッドユニット31が退避すると、前記と全く同じ動作で、こんどは機能液の吐出を受けた12個の受け容器111の重量測定がそれぞれ行われる。このように全ての受け容器111の重量測定が完了したら、再度、蓋開閉機構116を駆動して蓋部材115を受け容器111に載せるようにしてこれを閉蓋する。一方、電子天秤113に備える演算処理部では、各2回の重量測定の値が減算され且つこの値をノズル数および前記の5万発で除算して、各吐出ヘッド30における平均値としての機能液滴の重量あるいは量が算出される。
【0062】
ここで、このような重量測定に際しては、前述したように調整手段210によって各吐出ヘッド30に供給する機能液の温度を所望の温度に調整し、該機能液を供給する吐出ヘッド30の温度より高い温度にしているので、各吐出ヘッド30に供給された機能液は、待機などのためにそれぞれの吐出ヘッド30内に長時間留まっていても、吐出ヘッドの温度にほとんど影響されることなく、供給されたときの高い温度に保持される。したがって、このような状態のもとに重量測定を行うことにより、この重量測定結果に吐出ヘッド30の温度の個体差が反映されることなく、この温度差以外の、吐出ヘッド30間の個体差に起因するバラツキのみが反映される。
【0063】
そして、この重量測定結果に基づき、各ノズルからの機能液滴の吐出量が適正な値となり、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをなくなるように、駆動電圧(駆動波形)を調整(補正)する。
また、測定結果の値が予想値と極端に異なる場合(少ない)には、機能液を吐出しないノズルがあることが検出されたことになる。そこで、いったんヘッドユニット31を前記の吸引ユニット21に臨ませて、吸引処理を行ってから再度、重量測定を行う。なお、前記の重量測定は、装置の稼動開始時(通常は1日1回)に行うことが好ましい。
【0064】
また、このような重量測定ユニット24による機能液の重量測定(機能液の液滴の重量を測定する工程)を終了したら、前記したメンテナンス手段3によるその他のメンテナンスを適宜行い、その後、前述した吐出手段2の一連の動作に基づき、X軸テーブル(ステージ)41の吸着テーブル42にセットされた基板Wに対して、各吐出ヘッド30から機能液を吐出させ、描画する。すなわち、前記重量測定結果に基づき、各吐出ヘッド30からそれぞれ吐出する液滴の吐出量を決定し、この決定した吐出量となるように補正した駆動電圧(駆動波形)を各吐出ヘッド30にそれぞれ供給することにより、各吐出ヘッド30に吐出動作を行わせる。
【0065】
すると、前述したように前記の重量測定結果には吐出ヘッド30の温度の個体差が反映されておらず、この温度差以外の、吐出ヘッド30間の個体差に起因するバラツキのみが反映されていることから、このバラツキがなくなるように各吐出ヘッド30に供給する駆動電圧(駆動波形)を調整(補正)していることにより、各吐出ヘッド30から基板W上に吐出する機能液の吐出量にバラツキがほとんどなくなる。したがって、形成するカラーフィルター(薄膜)にスジムラが発生するのを防止することができる。
【0066】
また、このように基板W上に液滴を吐出し描画する際にも、前述したように調整手段210によって各吐出ヘッド30に供給する機能液の温度を所望の温度に調整し、該機能液を供給する吐出ヘッド30の温度より高い温度にする。すると、この描画時においても、吐出ヘッド30間の温度の個体差が吐出量に反映されることなく、各吐出ヘッド30間でバラツキなく良好に吐出が行えるようになる。
【0067】
さらに、この描画の際にも、各吐出ヘッド30に供給する機能液の温度を、前記の重量測定の際に各吐出ヘッド30に供給する機能液の温度と同じになるように、前記調整手段210によって調整するのが好ましい。このように調整することにより、重量測定の結果を描画時の吐出性に直接反映させることができ、したがって、各吐出ヘッド30間でのバラツキをより良好に防止し、スジムラの発生をより確実に防止することができる。
【0068】
このように重量測定を行い、その結果に基づいて各吐出ヘッド30に与える駆動電圧(駆動波形)を調整することにより、描画時において各吐出ヘッドから基板上に吐出させることにより、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをより少なくし、形成する薄膜に例えばスジムラが発生するのを防止することができる。
【0069】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態では本発明の調整手段を、ヒーター211と制御装置212とによって構成したが、他に例えば、重量測定を行うエリアと描画を行うエリアとを分け、各エリアの温度をそれぞれ独立して制御できるようにすることにより、この制御装置等によって調整手段としてもよい。具体的には、チャンバー内に収容される各手段(装置)を、仕切りシャッター等によって重量測定エリアと描画エリアとに分け、各エリアに該エリア内の空調(温度調整)を行う空調装置をそれぞれ設け、これら空調装置をそれぞれ独立して動作させることにより、重量測定時における機能液の温度を、吐出ヘッド30の温度より高くなるように、調整することができる。
【0070】
また、各手段(装置)の構成や、吐出手段2の構成等についても、前記実施形態に限定されることなく、種々の構成を採用することができる。
また、前記実施形態では、カラーフィルターの薄膜を製膜する場合について説明したが、本発明の吐出装置及び吐出方法は、カラーフィルター以外にも、有機EL装置における機能膜(発光層や正孔注入層など)や液晶装置における配向膜、さらには配線パターンなど、各種の薄膜の形成に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…吐出装置、2…吐出手段、3…メンテナンス手段、4…機能液供給手段(機能液供給装置)、24…重量測定ユニット(重量測定装置)、30…吐出ヘッド、41…X軸テーブル(ステージ)、210…調整手段、211…ヒーター、212…制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出装置及び吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上にカラーフィルター等の機能性薄膜を形成する方法としては、スピンコート法やフレキソ印刷法が一般に用いられている。これに対して近年では、インク使用量削減や工程数削減に効果的であるとして、液滴吐出法が種々の薄膜形成に用いられるようになってきている。液滴吐出法を用いた薄膜の形成方法では、機能性材料(固形分)を溶媒(分散媒)に溶解又は分散させてなるインク(液状体)を液滴として基板上に吐出し、所望位置に配置した後、この配置したインクを乾燥してインク中の溶媒(分散媒)を除去することにより、機能性材料からなる薄膜を形成している。
【0003】
ところで、工業的に形成するカラーフィルター等の機能性薄膜は、近年では益々精細化する傾向にあり、したがって液滴吐出法でこれら機能性薄膜を形成するにあたっては、より高い吐出精度が要求されるようになってきている。このような背景のもとに近年では、基板上に直接機能液を吐出するに先立ち、主に複数の吐出ヘッド間での吐出バラツキを補正するため、各吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定している(例えば、特許文献1参照)。そして、この重量測定結果に基づき、各吐出ヘッドからそれぞれ吐出する液滴の吐出量を決定し、決定した吐出量となるように駆動波形(駆動電圧)を補正し付与することにより、各吐出ヘッド間でバラツキを生じさせることなく、それぞれから基板上に液滴を吐出させ、描画するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−177262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のように重量測定を行う吐出装置では、予め重量測定を行い、その結果に基づいて吐出量を補正しているものの、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキが、依然として生じることがある。そして、特に機能性薄膜としてカラーフィルターを形成した場合には、吐出量のバラツキに起因してスジムラ(スジ状の濃淡ムラ)が生じてしまうことがある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、重量測定を行って吐出量を補正することにより、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをより少なくした、吐出装置及び吐出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するべく、吐出ヘッド間で吐出量がバラツく原因を調べた結果、以下の知見を得た。
前記の吐出装置において、吐出ヘッドから吐出される機能液は、吐出ヘッドに接続された機能液供給装置から供給される。この機能液供給装置は、通常は機能液を貯留するタンクと、該タンクと吐出ヘッドとの間を接続するフレキシブルチューブとを備えて構成されている。
【0008】
しかしながら、このような機能液供給装置を備えた吐出装置にあっては、重量測定時には多量の吐出を行うことがなく、したがって各吐出ヘッド内の機能液は、それぞれの吐出ヘッド内に長時間留まっている。よって、吐出される機能液は、その温度が吐出ヘッドの温度にほぼ一致した温度となる。ところが、複数の吐出ヘッドは、その配置などによって温度差があり、したがってこの吐出ヘッドの温度差が機能液の粘度差となり、そのまま吐出量のバラツキになってしまう。
【0009】
一方、基板への描画時では、機能液の吐出量が多いため、各吐出ヘッド内の機能液はそれぞれの吐出ヘッド内に長時間留まることなく、短時間を経て吐出される。したがって、吐出される機能液の温度は、吐出ヘッドの温度にほとんど影響されることなく、吐出ヘッドに供給される直前の温度にほぼ保持される。
よって、重量測定時には吐出ヘッドの温度の個体差が反映された吐出量となるのに対し、描画時には吐出ヘッドの温度の個体差がほとんど反映されない吐出量となることから、従来では重量測定の結果に基づいて吐出量を補正し、この補正した状態で描画(吐出)を行っても、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキを十分に無くすことができなかったのである。
このような知見に基づき、本発明者はさらに研究を重ねた結果、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の吐出装置は、基板を載置するステージと、機能液の液滴を吐出する複数の吐出ヘッドと、前記複数の吐出ヘッドにそれぞれ機能液を供給する機能液供給装置と、前記吐出ヘッドから吐出させた液滴を受けてその重量を測定する重量測定装置と、を備え、
前記機能液供給装置には、該機能液供給装置から前記吐出ヘッドに供給する機能液の温度を調整する調整手段が設けられ、
前記調整手段は、前記重量測定装置によって前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する際に、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するよう、制御されていることを特徴としている。
【0011】
この吐出装置によれば、液滴の重量を測定する際に、吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するように、調整手段が制御されているので、各吐出ヘッドに供給された機能液は、それぞれの吐出ヘッド内に長時間留まっていても、元々吐出ヘッドより高い温度に調整されているため、吐出ヘッドの温度にほとんど影響されることなく、供給されたときの高い温度に保持される。したがって、このような状態のもとに重量測定がなされることで、この重量測定結果には吐出ヘッドの温度の個体差が反映されることなく、この温度差以外の、吐出ヘッド間の個体差に起因するバラツキのみが反映されるようになる。したがって、この重量測定結果に基づき、描画時において各吐出ヘッドから基板上に吐出させることにより、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをより少なくし、形成する薄膜に例えばスジムラが発生するのを防止することができる。
【0012】
また、前記吐出装置において、前記調整手段は、前記吐出ヘッドが前記ステージに載置された前記基板上に液滴を吐出する際に、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するよう、制御されているのが好ましい。
このようにすれば、描画時においても、吐出ヘッドの温度の個体差が吐出量に反映することがなく、したがって、各吐出ヘッド間でバラツキなく良好に吐出が行えるようになる。
【0013】
また、前記吐出装置において、前記調整手段は、前記重量測定装置によって前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する際の、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度と、前記基板上に液滴を吐出する際の、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度とを、同じに調整するよう、制御されているのが好ましい。
このようにすれば、重量測定の結果が描画時の吐出性に直接反映されるようになり、したがって、各吐出ヘッド間でのバラツキがより良好に防止される。
【0014】
本発明の吐出方法は、基板を載置するステージと、機能液の液滴を吐出する複数の吐出ヘッドと、前記複数の吐出ヘッドにそれぞれ機能液を供給する機能液供給装置と、前記吐出ヘッドから吐出させた液滴を受けてその重量を測定する重量測定装置と、を備えた吐出装置により、前記基板上に機能液の液滴を吐出する吐出方法であって、
前記重量測定装置により、前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程と、
前記重量を測定した結果に基づき、各吐出ヘッドからそれぞれ吐出する液滴の吐出量を決定し、決定した吐出量で各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程と、を備え、
前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程では、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整することを特徴としている。
【0015】
この吐出方法によれば、液滴の重量を測定する工程では、吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するので、各吐出ヘッドに供給された機能液は、それぞれの吐出ヘッド内に長時間留まっていても、元々吐出ヘッドより高い温度に調整されているため、吐出ヘッドの温度にほとんど影響されることなく、供給されたときの高い温度に保持される。したがって、このような状態のもとに重量測定を行うことにより、この重量測定結果に吐出ヘッドの温度の個体差を反映させることなく、この温度差以外の、吐出ヘッド間の個体差に起因するバラツキのみを反映させることができる。したがって、この重量測定結果に基づき、描画時において各吐出ヘッドから基板上に吐出させることにより、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをより少なくし、形成する薄膜に例えばスジムラが発生するのを防止することができる。
【0016】
また、前記吐出方法において、前記各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程では、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するのが好ましい。
このようにすれば、描画時においても、吐出ヘッドの温度の個体差が吐出量に反映することがなく、したがって、各吐出ヘッド間でバラツキなく良好に吐出が行えるようになる。
【0017】
また、前記吐出方法では、前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程において、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度と、前記各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程において、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度とを、同じなるように調整するのが好ましい。
このようにすれば、重量測定の結果を描画時の吐出性に直接反映させることができ、したがって、各吐出ヘッド間でのバラツキがより良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る液滴吐出装置の外観斜視図である。
【図2】本発明に係る液滴吐出装置の正面図である。
【図3】本発明に係る液滴吐出装置の右側面図である。
【図4】本発明に係る液滴吐出装置の一部を省略した平面図である。
【図5】液滴吐出装置のヘッドユニットの平面図である。
【図6】(a)機能液滴吐出ヘッドの斜視図、(b)同、要部の断面図である。
【図7】機能液供給手段を説明するための模式図である。
【図8】本発明に係る重量測定ユニットの外観斜視図である。
【図9】本発明に係る重量測定ユニットの平面図である。
【図10】本発明に係る重量測定ユニットの正面図である。
【図11】重量測定ユニットの受け容器廻りの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明の吐出装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。図1〜図4は、本発明の吐出装置の一実施形態を示す概略構成図であって、これらの図において符号1は吐出装置である。なお、図1は吐出装置の外観斜視図、図2は吐出装置の正面図、図3は吐出装置の右側面図、図4は吐出装置の一部を省略した平面図である。
【0020】
吐出装置1は、本実施形態では機能液としてカラーフィルターの形成材料を吐出し、基板上にカラーフィルターを形成するものである。この吐出装置1は、図1〜図4に示すように基板(ワーク)Wを載置するステージ(図示略)と、機能液(カラーフィルターの形成材料)を吐出するための吐出ヘッド(図示略)を複数備えた吐出手段2と、吐出手段2(吐出ヘッド)のメンテナンスを行うためのメンテナンス手段3と、吐出手段2の各吐出ヘッドに機能液を供給するための機能液供給手段(機能液供給装置)4と、前記の各手段(装置)を駆動・制御するための圧縮エアーを供給するエアー供給手段5と、を備えて構成されたものである。なお、このような各手段は、チャンバー(図示略)に収容されており、このチャンバー及びこのチャンバー内の温度を調整する空調装置(図示略)を含めて、本発明に係る吐出装置1が構成されている。
【0021】
図1〜図4に示すように、吐出手段2およびメンテナンス手段3の後述するフラッシングユニット25は、アングル材が方形に組まれてなる架台11の上部に固定された、石定盤12の上に配設されており、機能液供給装置4およびエアー供給手段5の大部分は、架台11に添設されたキャビネット形式の機台13に組み込まれている。機台13には、大小2つの収容室14、15が形成されており、大きいほうの収容室14には機能液供給装置4を構成する機能液貯留用のタンク類が収容され、小さいほうの収容室15にはエアー供給手段5の主要部が収容されている。
【0022】
また、機台13上には、機台13の長手方向(X軸方向)にスライド自在な移動テーブル18が設けられている。そして、移動テーブル18上には広い面積を持つ可動ベース19が固定されており、この可動ベース19には、メンテナンス手段3を構成する吸引ユニット21、ワイピングユニット22、ドット抜け検出ユニット23、および機能液の重量測定装置である重量測定ユニット24が載置されている。
【0023】
メンテナンス手段3は、吐出手段2を構成する複数の吐出ヘッド30を保守(メンテナンス)して、これら吐出ヘッド30が適切に機能液を吐出できるようにするものであり、後述するθテーブル43上に配設した一対のフラッシングボックス26、26を有するフラッシングユニット25を備えるとともに、機台13上(可動ベース19上)に、吸引ユニット21、ワイピングユニット22およびドット抜け検出ユニット23を備えたものである。さらに、機台13上(可動ベース19上)には、吸引ユニット21およびワイピングユニット22と並ぶようにして、重量測定ユニット(重量測定装置)24が配設されている。なお、図4中の符号27は、予備のフラッシングボックスである。
【0024】
一方、吐出装置1の主体となる吐出手段2は、機能液を吐出する吐出ヘッド30を複数有するヘッドユニット31と、ヘッドユニット31を支持するメインキャリッジ32と、基板Wを載置すると共に基板Wを吐出ヘッド30に対して相対的に走査(移動)させるX・Y移動機構33と、を備えている。
【0025】
X・Y移動機構33は、前記石定盤12に固定され、基板Wを主走査(X軸方向に移動)させるとともに、メインキャリッジ32を介してヘッドユニット31を副走査(Y軸方向に移動)させるものであり、かつ、ヘッドユニット31を副走査の延長上に移動させて、機台13上のメンテナンス手段3側に移動させるものである。また、X・Y移動機構33は、石定盤12の長辺に沿う中心線に軸線が一致して固定されたX軸テーブル41と、X軸テーブル41を跨いで、石定盤12の短辺に沿う中心線に軸線が一致したY軸テーブル51と、を有したものである。
【0026】
X軸テーブル41は、本発明のステージを構成するもので、基板Wをエアー吸引により吸着セットする吸着テーブル42と、吸着テーブル42を支持するθテーブル43と、θテーブル43をX軸方向にスライド自在に支持するX軸エアースライダー44と、θテーブル43を介して吸着テーブル42上の基板WをX軸方向に移動させるX軸リニアモーター(図示略)と、X軸エアースライダー44に併設したX軸リニアスケール45とによって構成されている。吐出ヘッド30の主走査は、X軸リニアモーターの駆動により、基板Wを吸着した吸着テーブル42およびθテーブル43が、X軸エアースライダー44を案内にしてX軸方向に往復移動することにより行われる。
【0027】
Y軸テーブル51は、メインキャリッジ32を吊設するブリッジプレート52と、ブリッジプレート52を両持ちし、かつY軸方向にスライド自在に支持する一対のY軸スライダー53、53と、Y軸スライダー53に併設したY軸リニアスケール54と、一対のY軸スライダー53、53を案内してブリッジプレート52をY軸方向に移動させるY軸ボールねじ55と、Y軸ボールねじ55を正逆回転させるY軸モーター(図示略)と、を備えている。Y軸モーターはサーボモーターで構成されており、Y軸モーターが正逆回転すると、Y軸ボールねじ55を介してこれに螺合しているブリッジプレート52が、一対のY軸スライダー53、53をガイドにしてY軸方向に移動する。すなわち、ブリッジプレート52の移動に伴い、メインキャリッジ32(ヘッドユニット31)がY軸方向の往復移動を行い、吐出ヘッド30の副走査が行われる。
【0028】
ここで、吐出手段2の一連の動作を簡単に説明する。まず、機能液を吐出する前の準備として、吸着テーブル42にセットされた基板Wの位置補正およびヘッドユニット31の位置補正が行われる。次に、基板WをX・Y移動機構33(X軸テーブル41)により主走査(X軸)方向に往復動させると共に、複数の吐出ヘッド30を駆動させて基板Wに対する機能液滴の選択的な吐出動作が行われる(描画動作)。
【0029】
そして、基板Wを復動させた後、ヘッドユニット31をX・Y移動機構33(Y軸テーブル51)により副走査(Y軸)方向に移動させ、再度基板Wの主走査方向への往復移動と吐出ヘッド30の駆動が行われる。なお、本実施形態では、ヘッドユニット31に対して、基板Wを主走査方向に移動させるようにしているが、ヘッドユニット31を主走査方向に移動させる構成であってもよい。また、ヘッドユニット31を固定とし、基板Wを主走査方向および副走査方向に移動させる構成であってもよい。
【0030】
メインキャリッジ32は、前記のブリッジプレート52に下側から固定される外観「I」形の吊設部材61と、吊設部材61の下面に取り付けたθテーブル62と、θテーブル62の下方に吊設するよう取り付けたキャリッジ本体63と、で構成されている。キャリッジ本体63には、ヘッドユニット31を遊嵌するための方形の開口が形成されており、ヘッドユニット31を位置決め固定するようになっている。
【0031】
図5および図6(a)、(b)に示すようにヘッドユニット31は、複数(12個)の吐出ヘッド30と、複数の吐出ヘッド30を搭載するサブキャリッジ71と、各吐出ヘッド30のノズル面(ノズル形成面)88を下面に突出させてサブキャリッジ71に取り付けるための、複数(12個)のヘッド保持部材72と、から構成されている。
【0032】
12個の吐出ヘッド30は、6個ずつに二分されており、基板Wに対して機能液の十分な塗布密度を確保するため、それぞれ所定角度傾けてサブキャリッジ71に配設されている。二分された6個の各吐出ヘッド30は、副走査方向(Y軸方向)に対して相互に位置ずれして配設され、副走査方向において各吐出ヘッド30のノズル95aが連続(一部重複)するようになっている。なお、吐出ヘッド30を専用部品で構成するなどして、基板Wに対して機能液の十分な塗布密度を確保できる場合には、吐出ヘッド30をあえて傾けてセットする必要はない。
【0033】
図5に示すように、サブキャリッジ71は、一部が切り欠かれた本体プレート74と、本体プレート74の長辺方向の中間位置に設けた左右一対の基準ピン75、75と、本体プレート74の両長辺部分に取り付けたグリップ付きの左右一対の支持部材76、76と、を備えている。一対の基準ピン75、75は、画像認識を前提として、サブキャリッジ71(ヘッドユニット31)をX軸、Y軸、およびθ軸方向に位置決め(位置認識)するための基準となるものである。
【0034】
各支持部材76は、ヘッドユニット31をメインキャリッジ32に固定する際の固定部位となる。また、サブキャリッジ71には、各吐出ヘッド30と中間タンク(図示略)とを配管接続するための配管ジョイント77が設けられている。配管ジョイント77は、一端側が各吐出ヘッド30(の接続針33)と接続した配管アダプタ78からのヘッド側配管部材に接続し、他端側が前記の中間タンクからの装置側配管部材を接続するための12個のソケット79を有している。すなわち、機能液は、図3に示したように前記機能液供給手段4を構成するメインタンク6から中間タンク(図示略)に供給され、この中間タンクから分岐して各吐出ヘッド30に供給されるようになっている。
【0035】
ここで、機能液供給手段4は、図7に示すように機能液を貯留する複数のタンク200と、これらタンク200に接続する接続管201と、該接続管201に接続する前記中間タンク202と、該中間タンク202に接続し、かつ前記吐出ヘッド30に接続するフレキシブルチューブ203とを備えて構成されている。そして、この機能液供給手段4には、前記吐出ヘッド30のそれぞれに供給する機能液を加温してその温度を所望の温度、すなわち供給する吐出ヘッド30の温度より高い温度に調整する調整手段210が設けられている。
【0036】
この調整手段210は、前記のタンク202、接続管201、中間タンク202、フレキシブルチューブ203のそれぞれに設けられたヒーター211と、これらヒーター211を制御する制御装置212とからなるもので、制御装置212によって予め設定された温度にヒーター211を発熱させ、これによって吐出ヘッド30のそれぞれに供給する機能液を所望の温度に加温するものである。ヒーター211で加温することによって到達させる機能液の所望の温度については、吐出ヘッド30の温度より高い温度、例えば2〜5℃程度高い温度とする。ただし、吐出ヘッド30間で温度にバラツキがある場合には、これら吐出ヘッド30のうち最も高い温度より、さらに高い温度となるように、機能液を加温する。なお、吐出ヘッド30の温度については、図示しない温度センサーによってそれぞれの温度を検出しておき、これらの検出値を前記制御装置212に入力し、入力した検出値のうちの最大値より機能液の温度が2〜5℃程度高くなるように、ヒーター211を発熱させる。
【0037】
これにより、調整手段210は、後述するように各吐出ヘッド30から吐出させて液滴を受け、その重量を測定する際に、これら吐出ヘッド30のそれぞれに供給する機能液の温度を、供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するように制御されている。また、吐出ヘッド30の全てに対し、供給する機能液が同じ温度になるようにもなっている。さらに、本実施形態では、前記吐出ヘッド30が基板W上に液滴を吐出し描画する際にも、これら吐出ヘッド30のそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッド30の温度より高い温度に調整するように、制御されている。
【0038】
なお、図7に示した機能液供給手段4では、タンク202、接続管201、中間タンク202、フレキシブルチューブ203の全てにヒーター211を設けているが、機能液を所望の温度に調整(加温)可能であれば、これらタンク202、接続管201、中間タンク202、フレキシブルチューブ203のうちの任意の一つ、あるいは複数のものだけに、ヒーター211を設けるようにしてもよい。
【0039】
前記各吐出ヘッド30は、図6(a)に示すようにいわゆる2連のもので、2連の接続針81、81を有する機能液導入部82と、機能液導入部82に連なる2連のヘッド基板83と、機能液導入部82の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体84と、を備えている。
【0040】
各接続針81は、前記の配管アダプタ78を介して前記機能液供給手段4のフレキシブルチューブ203に接続されており、機能液導入部82は、各接続針81から機能液の供給を受けるようになっている。ヘッド基板83には、一対のコネクタ86、86が突設されており、これらコネクタ86に、中間基板(図示略)を介して制御手段のヘッドドライバー(図示略)が接続されている。
【0041】
ヘッド本体84には、複数の圧電素子を収容したアクチュエータユニット91と、これに連なる複数の圧力室93を構成する流路ユニット92とが組み込まれ、かつ流路ユニット92の下面(図6(a)では上面)には、多数(180個)のノズル(ノズル開口)95aからなるノズル列95を形成したステンレス製のヘッドプレート94が貼設されている。すなわち、ヘッドプレート94により、2列の吐出ノズル列95、95を形成した吐出ヘッド30のノズル面88が構成されている。
【0042】
次に、メンテナンス手段の各構成ユニットについて説明する。前述したように、メンテナンス手段3は、θテーブル43上のフラッシングユニット25と、移動テーブル(可動ベース19上)18上の吸引ユニット21、ワイピングユニット22、ドット抜け検出ユニット23および重量測定ユニット24とを備えている。図1および図4に示すようにヘッドユニット(吐出ヘッド30)31は、その主走査時に、フラッシングユニット25に臨むようになっている。一方、吸引ユニット21、ワイピングユニット22、ドット抜け検出ユニット23および重量測定ユニット24に対しては、ヘッドユニット(吐出ヘッド30)31は副走査範囲を越えて機台13上に移動した状態で、移動テーブル18によりこれらユニットを適宜、X軸方向に移動させることにより、これに臨むようになっている。
【0043】
吸引ユニット21は、吐出ヘッド30から機能液を強制的に吸引するとともに、吐出ヘッド30の全ノズルからの機能液の吐出を受けるフラッシングボックスの機能を有している。また、図4に示すようにこの吸引ユニット21には、12個の吐出ヘッド30に対応する12個のキャップ102を組み込んだキャップユニット101が、昇降自在に設けられている。
【0044】
ヘッドユニット31(の吐出ヘッド30)に機能液の充填を行う場合や、吐出ヘッド30内で増粘した機能液を除去する場合には、各キャップ102を各吐出ヘッド30に密着させて、ポンプ吸引を行う。また、装置の非稼働時には、各キャップ102を各吐出ヘッド30に密着させて、吐出ヘッド30の保全(機能液の乾燥防止等)を行う。さらに、ワーク交換などの機能液の吐出を休止するときには、各キャップ102を各吐出ヘッド30から僅かに離間させておいて、フラッシング(予備吐出)を行うようにしている。
【0045】
ワイピングユニット22は、吐出ヘッド30の吸引(クリーニング)等により、機能液が付着して汚れた各吐出ヘッド30のノズル面88を拭き取るものであり、巻取りユニット104と拭取りユニット105とで構成されている。巻取りユニット104から繰り出されたワイピングシート(図示略)は、拭取りユニット105に導かれて各吐出ヘッド30のノズル面88を拭き取り、これを周回するようにして巻取りユニット104に巻き取られる。すなわち、ワイピングユニット22は、ワイピングシートを送りながら、吐出ヘッド30のノズル面88を拭き取るようになっている。
【0046】
フラッシングユニット25は、基板Wに対する液滴吐出時、すなわち描画時に、複数(12個)の吐出ヘッド30のフラッシング動作(予備吐出)により順に吐出される機能液を受けるためのものである。フラッシングユニット25は、X軸テーブル41の吸着テーブル42を挟んで、θテーブル43に固定された1対のフラッシングボックス26、26を備えており、描画動作において、相対的に移動してゆくフラッシングボックス26に対して、その直上部に臨んだ吐出ヘッド30から順次フラッシング動作を行うようになっている。
【0047】
ドット抜け検出ユニット23は、吐出ヘッド30の全ノズルから機能液滴が確実に吐出されているか否か、すなわち各吐出ヘッド30にノズル詰まり等が生じているか否かを検出するものである。ドット抜け検出ユニット23は、6個ずつの二分した吐出ヘッド(群)30に対応して、一対の検出ユニット107、107を有して構成されている。一対の検出ユニット107、107は、相互にY軸方向に位置ずれして配設されており、各検出ユニット107は発光素子(レーザ)108aと受光素子108bとを対向させ、その光路を吐出した機能液的が遮断するか否かで、ドット抜け(吐出不良)を検出するようになっている。
【0048】
重量測定ユニット(重量測定装置)24は、機能液滴の吐出量(重量)を吐出ヘッド30単位で測定し、各吐出ヘッド30間での吐出バラツキを無くすべく、各吐出ヘッド30に供給する駆動電圧(駆動波形)を補正し、適正化して付与するためのものである。また、付随的には、吐出ヘッド30の吐出不良(ドット抜け)を検出するものである。図8ないし図10(図1ないし図4に対して前後を反転して表している)に示すように、重量測定ユニット24は、12個の吐出ヘッド30の機能液を受ける12個の受け容器111と、これら受け容器111を載置した容器載置台112と、各受け容器111を介して機能液の重量を測定する電子天秤113と、各受け容器111を容器載置台112および電子天秤113との相互間で移載する移載機構114と、容器載置台112上の各受け容器111に対しその蓋部材115を搬送して閉蓋する蓋開閉機構116と、を備えている。
【0049】
容器載置台112は上面が平坦なプレートで構成され、その上面には、ヘッドユニット31における吐出ヘッド30の並びに倣って、12個の受け容器111が載置されている。また、容器載置台112には、光路が受け容器111の直上部を横断するように、4組の透過型センサー118が設けられており、各受け容器111上の蓋部材115の有無を検出できるようになっている。
【0050】
電子天秤113は、測定台121を上面中央に没入するように設けられた箱状の天秤本体122と、天秤本体122の脇に配設されたディスプレイ123と、測定台121を上側から覆う覆装機構124とを有している。覆装機構124は、測定台121の没入部を閉蓋するように設けられた透明な覆装プレート126と、覆装プレート126を開閉移動させる覆装シリンダ127とからなり、測定台121上に受け容器111が移載されると、これを覆うことで重量測定の際の気流の影響を排除するように、構成されている。
【0051】
移載機構114は、受け容器111を把持するチャック部131と、チャック部131を昇降(Z軸移動)させる昇降テーブル132と、昇降テーブル132を介してチャック部131をX軸方向に移動させるX動テーブル133と、このX動テーブル133に直交すると共に容器載置台112をY軸方向に移動させるY動テーブル134とを有している。この場合、各テーブル132、133、134はモーターで駆動され、チャック部131はシリンダ(空圧シリンダ)で駆動される。
【0052】
そして、移載動作では、Y動テーブル134を駆動して、所望の受け容器111をチャッキング位置に移動させた後、X動テーブル133を駆動してチャック部131を受け容器111の直上部に移動させ、さらに昇降テーブル132によりチャック部131を下降させて受け容器111を把持する。チャック部131が受け容器111を把持すると、これをいったん上昇させた後、測定台121の直上部まで移動させる。ここで再度、チャック部131が下降し、受け容器111を測定台121上に載せ、その把持状態を解いて上昇する。また、電子天秤113から容器載置台112への受け容器111の移載は、逆の手順となる。
【0053】
一方、蓋開閉機構116は、ホーム位置のある容器載置台112と横並びになるように配設されており、容器載置台112より幾分低い蓋載置台141と、蓋載置台141上の12個の蓋部材115をこの蓋載置台141と容器載置台112との相互間で移載する蓋搬送部142とで構成されている。蓋載置台141上には、容器載置台112上の受け容器111の並びに倣って、12個の蓋部材115が載置されている。
【0054】
蓋搬送部142は、12個の蓋部材115を個々に吸着保持する吸着ユニット144と、吸着ユニット144をX軸方向に進退させる進退動テーブル145と、進退動テーブル145を介して吸着ユニット144を上下動させる上下動テーブル146とで構成されている。これら各テーブル145、146は、シリンダ(空圧シリンダ)で駆動されるようになっている。
【0055】
閉蓋動作では、上下動テーブル146を駆動し、ホーム位置にある吸着ユニット144を下動させて、蓋載置台141上に載置されている12個の蓋部材115を吸着する。この状態で、吸着ユニット144を上昇させた後、進退動テーブル145を駆動し、吸着ユニット144を容器載置台112の直上部まで移動させる。ここで再度、上下動テーブル146を駆動して、12個の蓋部材115を12個の受け容器111に載せるようにしてこれを閉蓋し、吸着を解いて蓋部材115を置き去るようにして吸着ユニット144を上昇させる。また、受け容器111を開放すべく12個の蓋部材115を取り去る場合には、前記と逆の手順で蓋搬送部142を駆動させ、最終的に12個の蓋部材115を蓋載置台141上に載置する。
【0056】
一方、図11に示すように受け容器111は、ステンレス等で箱状に形成された蓋無しの耐食性容器である容器本体151と、容器本体151の内部に充填した機能液吸収材152とで構成されていている。機能液吸収材152は、耐食性(耐薬品性)および含浸性(吸収保持性)を考慮して、ポリビニルアルコールの連続多孔質体で構成されている。
【0057】
ここで、重量測定ユニット24による機能液の重量測定方法(機能液の液滴の重量を測定する工程)について、説明する。この重量測定では、まず、前記調整手段210によって各吐出ヘッド30に供給する機能液の温度を所望の温度に調整する。すなわち、各吐出ヘッド30のうちの最も高い温度の吐出ヘッド30の温度より、さらに供給する機能液の温度が2〜5℃程度高くなるように、調整手段210によって前記機能液供給手段4を調整しておく。
【0058】
また、これとは別に、受け容器(空あるいは前回までの機能液が貯留されている)111の重量測定を行う。すなわち、容器載置台112上の12個の受け容器111には、それぞれ蓋部材115が予め載っており、まず、蓋開閉機構116を駆動して蓋部材115を取り去る。その際、蓋部材115をハンドリングミスは、透過型センサー118によって検出される。
【0059】
次に、移載機構114を駆動し、容器載置台112上の受け容器111を1個ずつ電子天秤113に移載し、各受け容器111の重量を測定する。もちろん、各受け容器111には、対応する吐出ヘッド30と共に番号が付されており、この番号にしたがって重量測定が行われる。また、各受け容器111の重量測定時には、覆装機構124により測定台121の部分が閉蓋される。全ての受け容器111の重量測定が完了したら、ヘッドユニット31を容器載置台112の直上部に移動させて、全吐出ヘッド30を駆動して機能液滴を受け容器111に向かって吐出する。
【0060】
この場合、機能液の吐出は、全吐出ヘッド30の全ノズルからなされ、例えば各レズル95a毎に、予め決められた数(例えば数千発から数万発)の機能液滴の吐出を行う。各吐出ヘッド30から機能液が吐出されると、吐出機能液は、各受け容器111の機能液吸収材152の表面に着弾し、これに吸収保持される。
【0061】
機能液の吐出動作が完了しヘッドユニット31が退避すると、前記と全く同じ動作で、こんどは機能液の吐出を受けた12個の受け容器111の重量測定がそれぞれ行われる。このように全ての受け容器111の重量測定が完了したら、再度、蓋開閉機構116を駆動して蓋部材115を受け容器111に載せるようにしてこれを閉蓋する。一方、電子天秤113に備える演算処理部では、各2回の重量測定の値が減算され且つこの値をノズル数および前記の5万発で除算して、各吐出ヘッド30における平均値としての機能液滴の重量あるいは量が算出される。
【0062】
ここで、このような重量測定に際しては、前述したように調整手段210によって各吐出ヘッド30に供給する機能液の温度を所望の温度に調整し、該機能液を供給する吐出ヘッド30の温度より高い温度にしているので、各吐出ヘッド30に供給された機能液は、待機などのためにそれぞれの吐出ヘッド30内に長時間留まっていても、吐出ヘッドの温度にほとんど影響されることなく、供給されたときの高い温度に保持される。したがって、このような状態のもとに重量測定を行うことにより、この重量測定結果に吐出ヘッド30の温度の個体差が反映されることなく、この温度差以外の、吐出ヘッド30間の個体差に起因するバラツキのみが反映される。
【0063】
そして、この重量測定結果に基づき、各ノズルからの機能液滴の吐出量が適正な値となり、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをなくなるように、駆動電圧(駆動波形)を調整(補正)する。
また、測定結果の値が予想値と極端に異なる場合(少ない)には、機能液を吐出しないノズルがあることが検出されたことになる。そこで、いったんヘッドユニット31を前記の吸引ユニット21に臨ませて、吸引処理を行ってから再度、重量測定を行う。なお、前記の重量測定は、装置の稼動開始時(通常は1日1回)に行うことが好ましい。
【0064】
また、このような重量測定ユニット24による機能液の重量測定(機能液の液滴の重量を測定する工程)を終了したら、前記したメンテナンス手段3によるその他のメンテナンスを適宜行い、その後、前述した吐出手段2の一連の動作に基づき、X軸テーブル(ステージ)41の吸着テーブル42にセットされた基板Wに対して、各吐出ヘッド30から機能液を吐出させ、描画する。すなわち、前記重量測定結果に基づき、各吐出ヘッド30からそれぞれ吐出する液滴の吐出量を決定し、この決定した吐出量となるように補正した駆動電圧(駆動波形)を各吐出ヘッド30にそれぞれ供給することにより、各吐出ヘッド30に吐出動作を行わせる。
【0065】
すると、前述したように前記の重量測定結果には吐出ヘッド30の温度の個体差が反映されておらず、この温度差以外の、吐出ヘッド30間の個体差に起因するバラツキのみが反映されていることから、このバラツキがなくなるように各吐出ヘッド30に供給する駆動電圧(駆動波形)を調整(補正)していることにより、各吐出ヘッド30から基板W上に吐出する機能液の吐出量にバラツキがほとんどなくなる。したがって、形成するカラーフィルター(薄膜)にスジムラが発生するのを防止することができる。
【0066】
また、このように基板W上に液滴を吐出し描画する際にも、前述したように調整手段210によって各吐出ヘッド30に供給する機能液の温度を所望の温度に調整し、該機能液を供給する吐出ヘッド30の温度より高い温度にする。すると、この描画時においても、吐出ヘッド30間の温度の個体差が吐出量に反映されることなく、各吐出ヘッド30間でバラツキなく良好に吐出が行えるようになる。
【0067】
さらに、この描画の際にも、各吐出ヘッド30に供給する機能液の温度を、前記の重量測定の際に各吐出ヘッド30に供給する機能液の温度と同じになるように、前記調整手段210によって調整するのが好ましい。このように調整することにより、重量測定の結果を描画時の吐出性に直接反映させることができ、したがって、各吐出ヘッド30間でのバラツキをより良好に防止し、スジムラの発生をより確実に防止することができる。
【0068】
このように重量測定を行い、その結果に基づいて各吐出ヘッド30に与える駆動電圧(駆動波形)を調整することにより、描画時において各吐出ヘッドから基板上に吐出させることにより、吐出ヘッド間での吐出量のバラツキをより少なくし、形成する薄膜に例えばスジムラが発生するのを防止することができる。
【0069】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態では本発明の調整手段を、ヒーター211と制御装置212とによって構成したが、他に例えば、重量測定を行うエリアと描画を行うエリアとを分け、各エリアの温度をそれぞれ独立して制御できるようにすることにより、この制御装置等によって調整手段としてもよい。具体的には、チャンバー内に収容される各手段(装置)を、仕切りシャッター等によって重量測定エリアと描画エリアとに分け、各エリアに該エリア内の空調(温度調整)を行う空調装置をそれぞれ設け、これら空調装置をそれぞれ独立して動作させることにより、重量測定時における機能液の温度を、吐出ヘッド30の温度より高くなるように、調整することができる。
【0070】
また、各手段(装置)の構成や、吐出手段2の構成等についても、前記実施形態に限定されることなく、種々の構成を採用することができる。
また、前記実施形態では、カラーフィルターの薄膜を製膜する場合について説明したが、本発明の吐出装置及び吐出方法は、カラーフィルター以外にも、有機EL装置における機能膜(発光層や正孔注入層など)や液晶装置における配向膜、さらには配線パターンなど、各種の薄膜の形成に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…吐出装置、2…吐出手段、3…メンテナンス手段、4…機能液供給手段(機能液供給装置)、24…重量測定ユニット(重量測定装置)、30…吐出ヘッド、41…X軸テーブル(ステージ)、210…調整手段、211…ヒーター、212…制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、機能液の液滴を吐出する複数の吐出ヘッドと、前記複数の吐出ヘッドにそれぞれ機能液を供給する機能液供給装置と、前記吐出ヘッドから吐出させた液滴を受けてその重量を測定する重量測定装置と、を備え、
前記機能液供給装置には、該機能液供給装置から前記吐出ヘッドに供給する機能液の温度を調整する調整手段が設けられ、
前記調整手段は、前記重量測定装置によって前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する際に、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するよう、制御されていることを特徴とする吐出装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記吐出ヘッドが前記ステージに載置された前記基板上に液滴を吐出する際に、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するよう、制御されていることを特徴とする請求項1記載の吐出装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記重量測定装置によって前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する際の、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度と、前記基板上に液滴を吐出する際の、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度とを、同じに調整するよう、制御されていることを特徴とする請求項2記載の吐出装置。
【請求項4】
基板を載置するステージと、機能液の液滴を吐出する複数の吐出ヘッドと、前記複数の吐出ヘッドにそれぞれ機能液を供給する機能液供給装置と、前記吐出ヘッドから吐出させた液滴を受けてその重量を測定する重量測定装置と、を備えた吐出装置により、前記基板上に機能液の液滴を吐出する吐出方法であって、
前記重量測定装置により、前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程と、
前記重量を測定した結果に基づき、各吐出ヘッドからそれぞれ吐出する液滴の吐出量を決定し、決定した吐出量で各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程と、を備え、
前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程では、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整することを特徴とする吐出方法。
【請求項5】
前記各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程では、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整することを特徴とする請求項4記載の吐出方法。
【請求項6】
前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程において、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度と、前記各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程において、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度とを、同じなるように調整することを特徴とする請求項5記載の吐出方法。
【請求項1】
基板を載置するステージと、機能液の液滴を吐出する複数の吐出ヘッドと、前記複数の吐出ヘッドにそれぞれ機能液を供給する機能液供給装置と、前記吐出ヘッドから吐出させた液滴を受けてその重量を測定する重量測定装置と、を備え、
前記機能液供給装置には、該機能液供給装置から前記吐出ヘッドに供給する機能液の温度を調整する調整手段が設けられ、
前記調整手段は、前記重量測定装置によって前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する際に、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するよう、制御されていることを特徴とする吐出装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記吐出ヘッドが前記ステージに載置された前記基板上に液滴を吐出する際に、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整するよう、制御されていることを特徴とする請求項1記載の吐出装置。
【請求項3】
前記調整手段は、前記重量測定装置によって前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する際の、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度と、前記基板上に液滴を吐出する際の、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度とを、同じに調整するよう、制御されていることを特徴とする請求項2記載の吐出装置。
【請求項4】
基板を載置するステージと、機能液の液滴を吐出する複数の吐出ヘッドと、前記複数の吐出ヘッドにそれぞれ機能液を供給する機能液供給装置と、前記吐出ヘッドから吐出させた液滴を受けてその重量を測定する重量測定装置と、を備えた吐出装置により、前記基板上に機能液の液滴を吐出する吐出方法であって、
前記重量測定装置により、前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程と、
前記重量を測定した結果に基づき、各吐出ヘッドからそれぞれ吐出する液滴の吐出量を決定し、決定した吐出量で各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程と、を備え、
前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程では、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整することを特徴とする吐出方法。
【請求項5】
前記各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程では、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度を同じにするとともに、該機能液を供給する吐出ヘッドの温度より高い温度に調整することを特徴とする請求項4記載の吐出方法。
【請求項6】
前記吐出ヘッドから吐出された液滴の重量を測定する工程において、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度と、前記各吐出ヘッドからそれぞれ前記基板上に液滴を吐出させる工程において、前記吐出ヘッドのそれぞれに供給する機能液の温度とを、同じなるように調整することを特徴とする請求項5記載の吐出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−256752(P2010−256752A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108846(P2009−108846)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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