説明

向上した機械的強度の層でコーティングしたガラス基材

本発明は、ドープした酸化物からなり、光起電モジュールの電極を形成することができる透明な電気伝導性層と組み合わされた透明ガラス基材であって、前記ガラス基材と前記透明電気伝導性層との間に、当該ガラスに対する付着特性が良好である少なくとも1種の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層が挿入され、次いで当該ガラスに対する付着特性が良好である少なくとも1種の第2の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物と、透明電気伝導性層を、任意選択的にドープされた状態でもって、形成することができる少なくとも1種の第3の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物との混成層が挿入されていることを特徴とする透明ガラス基材に関する。本発明はまた、そのような基材を含む光起電モジュールのため、付形した加熱ガラスのため、プラズマスクリーンのため、フラットランプ電極のため、低輻射率ガラスのために、そのような基材を製造するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電モジュールの前面基材、特に透明ガラス基材に関し、そしてまたこのような基材を組み込んだ光起電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光起電モジュールでは、入射光の作用下で電気エネルギーを生じさせる光起電性材料を含む光起電システムを背面基材と前面基材との間に配置し、この前面基材は入射光が光起電性材料に達する前に通り抜ける最初の基材となる。
【0003】
光起電性材料は、例えばテルル化カドミウム、非晶質ケイ素、微結晶ケイ素、又は一般に銅、インジウム及びセレンを含有している三元系黄銅鉱、から構成することができる吸収材を意味するものと理解される。このような吸収材の層はCISe2層と呼ばれる。吸収材の層は、ガリウム(例えばCu(In,Ga)Se2又はCuGaSe2)、アルミニウム(例えばCu(In,Al)Se2)又はイオウ(例えばCuIn(Se,S))を含有していてもよい。それらは一般に、黄銅鉱吸収材層という用語で表示される。
【0004】
光電池では、前面基材は通常、入射光の主な到達方向が上方からであると見なされる場合において下に配置された光起電性材料と電気的に接触している透明な電極コーティングを、光起電性材料の方を向いた主表面の下に含む。
【0005】
本発明との関連において、「光電池」という用語は、太陽輻射線の変換により電極間に電流を生じさせる構成要素の集成体を、この集成体の寸法がどんなものであれ、また生じる電流の強度と電圧がどのようなものであれ、そして特にこの構成要素の集成体に内部における電気的接続(直列の及び/又は並列の)が1以上あろうとなかろうと、意味するものと解すべきである。従って、本発明との関連において「光電池」という表記は、「光起電モジュール」あるいは「光起電パネル」という表記と同等である。
【0006】
本発明は、ガラス上において非常に有利である透明な導電性層、特に酸化物を基礎材料とする層、に関する。
【0007】
それらの例は、スズをドープした酸化インジウムのITO(酸化インジウムスズ)層、フッ素をドープした酸化スズのSnO2:F層である。このような層は、特定の用途において、すなわち平面ランプ、エレクトロルミネッセントグレージング、エレクトロクロミックグレージング、液晶ディスプレイ、プラズマスクリーン、光起電パネル又はモジュール、電気的に加熱されるガラスにおいて、電極を構成する。その他の、例えば低輻射率のグレージング向けの用途では、これらの透明導電性層は電圧印加状態に置かれるべきでない。
【0008】
従来技術では、これらの透明導電性層は一般に、ガラス基材上における透明導電性層の又は透明導電性層の積重体の光学的特性を向上させることを目的として、副層と組み合わされている。全てを網羅してはいないが、PPGによるヨーロッパ特許出願公開第611733号明細書を特に挙げることができ、これはフッ素ドープ酸化スズの透明導電性層により誘起される虹色効果を防止するため、酸化ケイ素と酸化スズの混成勾配層を提案している。Roy Gordonによるフランス国特許出願公開第2419335号明細書も、フッ素ドープ酸化スズの透明導電性層の色特性を向上させるためにこの副層の変形例を提案している。他方において、この特許明細書で挙げられている前駆物質は工業規模では使用に適さない。Pilkingtonによるヨーロッパ特許第0275662号明細書を挙げることもでき、これはフッ素ドープ酸化スズを基礎材料とする電気伝導性層の下の酸炭化ケイ素から構成される副層を提案しており、この副層はガラスからのアルカリ金属の拡散に対するバリヤ層と、そしてまた反射の色を無彩色化するための虹色防止層の二重の役割をもたらす。サン−ゴバン社もこの分野における技術情報を保有しており、例えばフランス国特許出願公開第2736632号明細書は、フッ素ドープ酸化スズの透明導電性層のための着色防止層として、酸化ケイ素と酸化スズの混成の逆屈折率勾配の副層を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開第611733号明細書
【特許文献2】フランス国特許出願公開第2419335号明細書
【特許文献3】ヨーロッパ特許第0275662号明細書
【特許文献4】フランス国特許出願公開第2736632号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
他方において、ガラス上の透明導電性酸化物層には、光起電モジュールあるいは先に挙げた有効である全ての用途において層間剥離する傾向のあることが観察されている。層間剥離は、層がガラスに対する付着力を喪失することを意味するものと理解される。これは、当業者が簡単に検出することができる割れの形成により見てとれる。割れの伝播は層の剥離を招くことがあり、従って貼り付けの機能を失わせることがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この現象の解明を促進するため、老化試験が開発された。それは、ガラスとその電極をいろいろな時間電場の作用にさらすものである。この試験の目的は、ガラスから層に向かってのアルカリ金属の拡散を強制することであり、後者が層間剥離の発生の原因となるもののうちの一つである。この層間剥離試験は次のようにして行われる。最初に、例えば銀を基礎材料とする対電極をガラスの電気伝導性電極を備えた側と反対の面に被着させる。次に、こうして形成した集成体を、銀を基礎材料とする層をホットプレート上に直接接触させるか、あるいは炉でアニーリングすることのいずれかにより、200℃にする。熱的平衡が得られたならば、電気伝導性電極にほぼ−200Vの電位を印加し、銀を基礎材料とする対電極は接地する。この結果、ガラスから電気伝導性層へのアルカリ金属の移動を誘起する電場が形成される。この試験は、標準温度及び圧力条件下でのガラスの抵抗率の値に応じて、例えば0.1〜40mC/cm2以上の電荷の変化をもたらすように1分から約20分までの範囲のいろいろな時間をかけて行われる。これらの変化した電荷のうちの、層間剥離が起こり始める下限値を観測する。この層間剥離はまた、従来技術で述べられた副層でも観測される。
【0012】
ガラス基材上に被着した透明導電性酸化物層の層間剥離の問題を解決するために、発明者らは、集成体を電場下に、比較的高い温度、すなわち100℃より高くあるいは200℃よりも高い温度で配置する条件下で特に、透明導電性酸化物層の付着力を相当に向上させる、ガラス基材を透明導電性酸化物層に結合する副層の積重体を開発した。
【0013】
従って、本発明が対象とするものの一つは、ドープした酸化物からなり、光起電モジュールの電極を構成することができる透明な電気伝導性層と組み合わされた透明ガラス基材であって、ガラス基材と透明電気伝導性層との間に、ガラスに対する付着特性が良好である1以上の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層が挿入され、次いでガラスに対する付着特性が良好である1以上の第2の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物と、透明電気伝導性層を、任意選択的にドープされた状態でもって、構成することができる1以上の第3の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物との混成層が挿入されていることを特徴とする透明ガラス基材である。
【0014】
こうして、本発明は、いろいろな点において、光起電モジュールに好適な層の積重体を得るのを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ガラス基材上における機械的強度は、電場の存在下において不利な影響を受けず、その原因は光起電モジュールへの電圧の印加又はモジュールの周囲の金属の枠の存在に内在的又は外在的に関連していることが考えられ、そしてその電位は、実際の屋外で日光に暴露される条件下での使用については、変動することが考えられる。ここで言及する太陽スペクトルは、ASTM標準規格で定義されているAM 1.5の太陽光スペクトルである。このかなりの改善は、大きなガラス表面(フロート全幅、フランス語にてPLF)について得ることができ、と言うのもそのような寸法に適合する被着プロセスが当該層について利用可能であるからである。
【0016】
更に、曇り度計を使って測定される曇り及び拡散透過の局所的なばらつきなどの美観上の欠陥を解決することができ、そのため本発明は光起電モジュールの製造に特に非常によく適している。
【0017】
有利なことに、本発明の基材の機械的強度は、基材の片側における少なくとも100V、好ましくは200Vの電場、及び少なくとも200℃の温度による、その試験温度でのガラス基材の抵抗率の値に依存して少なくとも1mC/cm2、好ましくは4mC/cm2の電荷の変化を誘起する処理の24時間後において、不利な影響を受けない。機械的強度は、積重体又は積重体の一部分が層間剥離しないことを意味するものと理解される。
【0018】
好ましくは、
・前記第1及び第2の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物は、Si、Al及びTiの窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物、特にSiOC、SiO2、SiON、TiO2、TiN及びAl23から選ばれ、
・前記第3の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物は、Sn、Zn及びInの窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物、特にSnO2、ZnO及びInOから選ばれ、
・前記透明電気伝導性層は、Sn、Zn又はInのドープ酸化物、例えばSnO2:F、SnO2:Sb、ZnO:Al、ZnO:Ga、ZnO:B、InO:Sn又はZnO:Inから構成される。
【0019】
基材の所望の光学的特性と機械的強度との最適な組み合わせを提供する実施形態によれば、
・前記1以上の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層は、酸炭化ケイ素SiOCの層であり、
・前記混成層はスズケイ素酸化物の層であり、
・前記混成層における[Si]/[Sn]比は少なくとも1、好ましくは2であり、発明者らはこの事項が、特に光起電モジュールとして使用する状況において、先に定義したとおりの機械的強度に非常に特別な明白な効果を及ぼすことを認めており、
・前記1以上の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層の厚さは少なくとも5nmに等しく、
・前記1以上の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層の厚さは80nm以下であり、実際のところ、より厚くなると、例えば機械的強度の観点から、更なる効果をもたらさず、
・前記混成層の厚さは少なくとも3nmに等しく、
・前記混成層の厚さは65nm以下、好ましくは40nm以下であり、より厚くなると、最終製品、特に光起電モジュールの美的外観に多かれ少なかれ悪影響を及ぼす曇りの局所的なばらつきが生じることがあり、
・ドープ酸化物から構成される前記透明電気導電性層は、非ドープの同じ酸化物の層を挟んで前記混成層に結合され、非ドープ酸化物とドープ酸化物の2つの層を一緒にした厚さは特に300〜1600nmであり、好ましくは最大で1100nmに等しく、特に好ましくは最大で900nmに等しくて、この場合に2層に厚さの比は1:4〜4:1である。
【0020】
本発明が対象とするもう一つは、上述の基材を製造するための方法であって、この場合、前記1以上の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層、前記混成層、次に前記透明電気導電性層は、連続的な化学気相成長での被着によって得られる。
【0021】
化学気相成長(CVD)は、大きなガラス表面上で、特にフロート全幅(フランス語でPLF)上で、工業的規模にて容易に実施することができる。真空設備は必要とされない。
【0022】
ここで、
・SiO2の前駆物質(SiOC−SiOSn)としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、シラン(SiH4)が挙げられ、
・SnO2の前駆物質(SiOSn、SnO2、SnO2:F)としては、モノブチルスズトリクロライド(MBTCl)、ジブチルスズジアセテート(DBTA)、四塩化スズ(SnCl4)、ジブチルスズジクロライド(DBTCl)が挙げられ、
・その他の炭素ベースの前駆物質(SiOC)としては、エチレン、二酸化炭素が挙げられ、
・その他の酸素ベースの前駆物質(SiOC、SiOSn、SnO2、SnO2:F)としては、二酸化炭素、酸素、水が挙げられ、
・フッ素ベースの前駆物質(SnO2:F)としては、テトラフルオロメタン(CF4)、オクタフルオロプロパン(C38)、ヘキサフルオロエタン(C26)、フッ化水素(HF)、ジフルオロクロロメタン(CHClF2)、ジフルオロクロロエタン(CH3CClF2)、トリフルオロメタン(CHF3)、ジクロロジフルオロメタン(CF2Cl2)、トリフルオロクロロメタン(CF3Cl)、トリフルオロブロモメタン(CF3Br)、トリフルオロ酢酸(TFA、CF3COOH)、三フッ化窒素(NF3)が挙げられる。
【0023】
前述の連続的な成長(被着)は、少なくとも500℃に等しく、650℃以上の値に達することもある基材の温度で実施するのが有利である。
【0024】
例えば、SiOC層をガラス基材製造ラインで被着させ、そしてSiOSn層をこの製造ラインの外部で被着させてもよく、あるいはこれらの層の両方をこの製造ラインの外部で被着させてもよい。
【0025】
とは言え、方法の一つの好ましい実施形態によれば、上述の連続的な化学気相成長はガラス基材製造ラインで、例えば徐冷炉のフロート浴、出口及び開始部を含む部分の連続のリボン上で、行われる。
【0026】
更に、本発明が対象とするそのほかのものは、
・上述の基材を含む光起電モジュール、
・上述の基材を含む電気的に加熱される付形ガラス、
・本発明による基材を含むプラズマスクリーン(プラズマ表示パネルのためのPDP)、
・そのような基材を含むフラットランプ電極、
・そのような基材を含む低輻射率(low−e)ガラス、
である。
【実施例】
【0027】
以下の例により本発明を説明する。
【0028】
〔比較例1〕
以下の全ての例において、ソーダ−石灰フロートガラスの5cm×5cm×3.2mmのサンプルに化学気相成長により層を被着させる。それらのサンプルを600℃で加熱する。
以下において示す比率はモル百分率である。
【0029】
次のものから25nmのSiOC層を被着させる:
7.8%のSiH4
26.6%のC24
47.8%のN2
17.7%のCO2
【0030】
続いて、次のものから1μmのSnO2:F層を被着させる:
3.63%のモノn−ブチルスズトリクロライド(MBTCl)、
0.45%のトリフルオロ酢酸(TFA)、
20%の水、
57%のN2
19%のO2
【0031】
全ての例において、サンプルの片側を200Vの電圧にさらすとともにサンプルを200℃の温度にいろいろな時間さらす。この操作の24時間後に、変化した電荷のうちの層間剥離が生じた下限値を観測する(この老化試験の上記の詳しい説明参照)。
【0032】
この下限値は、ここでは0.5mC/cm2未満であり、そしてそれは多くの用途にとって、特に光起電モジュールとしては不十分な、比較的低い機械的強度であると認められる。
更に、曇りの実質的に局所的なばらつきは観測されなかった。
【0033】
〔比較例2〕
次のものから40nmのSiOSn層を被着させる。
0.08%のMBTCl、
0.04%のテトラエトキシシラン(TEOS)、
0.17%の水、
93.1%のN2
6.6%のO2
【0034】
この層のSi/Snモル比は0.5である。
【0035】
次に、例1におけるように1μmのSnO2:F層を被着させる。
【0036】
変化した電荷のうちの0.5mC/cm2未満の値から始まる層間剥離が観測され、これは不十分である。
更に、このサンプルは製品の美的外観に悪影響を与える曇りの局所的ばらつきを示した。
【0037】
〔例3〕
次のものを被着させる:
・例1におけるとおりの25nmのSiOC層、
・例2におけるとおりの40nmのSiOSn層(Si/Snモル比0.5)、
・前の2つの例におけるとおりの1μmのSnO2:F層。
【0038】
変化した電荷のうちの1mC/cm2未満の値から始まる層間剥離が観測され、これは前の2つの例のものと比べて実質的に改善されているが、対象とする特定の用途においてはなおも不十分なことがある。
曇りの局所的なばらつきは観察されなかった。
【0039】
〔例4〕
次のものを被着させる:
・例3におけるとおりの25nmのSiOC層、
・下記のものから出発してSi/Snモル比が1.4の40nmのSiOSn層:
0.08%のMBTCl、
0.11%のTEOS、
0.17%の水、
93%のN2
6.6%のO2
・例3におけるとおりのSnO2:F層。
【0040】
変化した電荷のうちの4〜5mC/cm2の値から始まる層間剥離が生じ、これは多くの対象とする用途にとって十分である。
曇りの局所的なばらつきは観察されなかった。
【0041】
〔例5〕
例4を、SiOSn層のみを変更して再現し、この層はここではSi/Snモル比が2.7であり、下記のものから得られる:
0.08%のMBTCl、
0.23%のTEOS、
0.17%の水、
92.9%のN2
6.6%のO2
【0042】
変化した電荷のうちの10mC/cm2の下限値から始まる層間剥離が生じ、これは非常に良好である。
曇りの局所的なばらつきは観察されなかった。
【0043】
〔例6〕
例3〜5を、SiOSn層を変更して再現し、この層は厚さが80nm、Si/Snモル比が2.7であり、下記のものから得られる:
0.14%のMBTCl、
0.37%のTEOS、
0.26%の水、
86.8%のN2
12.4%のO2
【0044】
変化した電荷のうちの15mC/cm2の値から始まる層間剥離が生じ、これは非常に良好である。
しかし、曇りの局所的なばらつきが観察された。
【0045】
〔例7〕
例6を再現するが、下記のものから得られるSiOSn層のSi/Snモル比の値は0.5である:
0.14%のMBTCl、
0.07%のTEOS、
0.26%の水、
87.1%のN2
12.4%のO2
【0046】
変化した電荷のうちの1mC/cm2未満の値から始まる層間剥離が生じ、これは用途に応じて好適なこともあり好適でないこともあるが、それは比較的小さい。
【0047】
曇りの局所的なばらつきが観察される。一つの解釈は、例6におけるようにSiOSn層の比較的大きな厚さ(80nm)がその原因であろう。
【0048】
〔例8〕
次のものを被着させる:
・下記のものから、50nmのSiOC層:
10.2%のSiH4
35%のC24
31.5%のN2
23.3%のCO2
・下記のものから得られる、Si/Snモル比が0.6の20nmのSiOSn層:
0.04%のMBTCl、
0.02%のTEOS、
0.11%の水、
96.2%のN2
3.6%のO2
・前の例におけるのと同じSnO2:F。
【0049】
変化した電荷のうちの2mC/cm2未満の値から始まる層間剥離が生じ、これは一定の用途において十分であり得るが、とは言え向上させることができる。
曇りの局所的なばらつきは観察されなかった。
【0050】
〔例9〕
例8を、SiOSn層のみを変更して繰り返すが、今回の層は厚さが50nm、Si/Snモル比が2.7であり、下記のものから得られる:
0.10%のMBTCl、
0.27%のTEOS、
0.22%の水、
91.3%のN2
8.1%のO2
【0051】
ここでは、変化した電荷のうちの層間剥離が生じる下限値は高く、12mC/cm2である。
曇りの局所的なばらつきは観察されなかった。
【0052】
〔例10〕
例8と9を、SiOSn層のみを変更して繰り返すが、今回の層は厚さが70nm、Si/Snモル比が2.7であり、下記のものから得られる:
0.13%のMBTCl、
0.37%のTEOS、
0.31%の水、
88.1%のN2
11.1%のO2
【0053】
この例において、変化した電荷のうちの層間剥離が観測され始める下限値は最大であり、20mC/cm2である。
【0054】
しかし、美的外観は、SiOSn層の比較的大きな厚さに起因する曇りの局所的なばらつきによってわずかに悪影響を受けていた。
【0055】
このように、本発明は、高い機械的強度と高い調節可能な光学的特性とを提供する層の積重体であって、厳しい用途に、特に光起電モジュールにとって、完全に好適である層の積重体を利用可能にした。この積重体は、言うまでもなく、現在のところ予期される最高度の光起電モジュールの機能性を得るのと両立し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープした酸化物からなり、光起電モジュールの電極を構成することができる透明な電気伝導性層と組み合わされた透明ガラス基材であって、前記ガラス基材と前記透明電気伝導性層との間に、当該ガラスに対する付着特性が良好である1以上の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層が挿入され、次いで当該ガラスに対する付着特性が良好である1以上の第2の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物と、透明電気伝導性層を、任意選択的にドープされた状態でもって、構成することができる1以上の第3の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物との混成層が挿入されていることを特徴とする透明ガラス基材。
【請求項2】
前記第1及び第2の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物が、Si、Al及びTiの窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物、特にSiOC、SiO2、SiON、TiO2、TiN及びAl23から選ばれることを特徴とする、請求項1記載の基材。
【請求項3】
前記第3の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物が、Sn、Zn及びInの窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物、特にSnO2、ZnO及びInOから選ばれることを特徴とする、請求項1又は2記載の基材。
【請求項4】
前記透明電気伝導性層が、Sn、Zn又はInのドープ酸化物、例えばSnO2:F、SnO2:Sb、ZnO:Al、ZnO:Ga、InO:Sn、ZnO:B又はZnO:Inから構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の基材。
【請求項5】
前記1以上の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層が酸炭化ケイ素SiOCの層であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の基材。
【請求項6】
前記混成層がスズケイ素酸化物の層であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の基材。
【請求項7】
前記混成層における[Si]/[Sn]モル比が少なくとも1に等しく、好ましくは少なくとも2に等しいことを特徴とする、請求項6記載の基材。
【請求項8】
前記1以上の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層の厚さが少なくとも5nmに等しいことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の基材。
【請求項9】
前記1以上の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層の厚さが80nm以下であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の基材。
【請求項10】
前記混成層の厚さが少なくとも3nmに等しいことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の基材。
【請求項11】
前記混成層の厚さが65nm以下、好ましくは40nm以下であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の基材。
【請求項12】
ドープされた酸化物から構成される前記透明電気伝導性層が非ドープの同じ酸化物の層を挟んで前記混成層に結合されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載の基材。
【請求項13】
前記非ドープの酸化物とドープされた酸化物の2つの層を一緒にした厚さが300〜1600nm、好ましくは最大で1100nmに等しく、特に好ましくは最大で900nmに等しく、当該2層の厚さの比が1:4〜4:1であることを特徴とする、請求項12記載の基材。
【請求項14】
請求項1〜13の一つに記載の基材を製造するための方法であって、前記1以上の第1の窒化物又は酸窒化物、あるいは酸化物又は酸炭化物の層、前記混成層、次に前記透明電気導電性層を連続的な化学気相成長での被着によって得ることを特徴とする製造方法。
【請求項15】
前記被着を当該ガラス基材の製造ラインで行うことを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の基材を含む光起電モジュール。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の基材を含む、電気的に加熱される付形ガラス。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の基材を含むプラズマスクリーン。
【請求項19】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の基材を含むフラットランプ電極。
【請求項20】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の基材を含む低輻射率ガラス。

【公表番号】特表2013−520391(P2013−520391A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554391(P2012−554391)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050226
【国際公開番号】WO2011/101572
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】