説明

吸引装置および吸引方法

【課題】 吸引用ポンプの下流側に設けられるサイレンサからドレンの回収を行わなくてもよい吸引装置および吸引方法を提供する。
【解決手段】 成形材料Mから発生するガス状物質に含まれる水分を吸引する吸引装置において、ガス状物質に含まれる水分を吸引する吸引用ポンプ19と、吸引用ポンプ19の下流側に設けられるサイレンサ21と、吸引用ポンプ19の下流側の接続管路20またはサイレンサ21へガス状物質よりも水分含有率の低い気体を供給する気体供給装置23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料から発生するガス状物質に含まれる水分を吸引する吸引装置および吸引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凝縮性物質を含有するガスを真空ポンプにより吸引するものであって、前記真空ポンプの下流側にサイレンサ(消音器)を設けたものとしては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1では、攪拌槽の中で発生したガスが吸引管により真空ポンプに送られ、前記真空ポンプから吐出管路および吐出サイレンサを介して外部に放出される。そして前記吐出サイレンサの下部にはドレン排出管が設けられ、ドレンが一定量貯まると開閉弁を開いて排出されるようになっている。しかしながらドレンの排出は、作業員によって一定時間毎に行われており、それを忘れるとガス吸引が正常に行えなくなる可能性があった。またはドレンが一定量貯まったことにより自動的にドレンを回収することも考えられるが、自動化のためのコストが高額となるものであった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−270326号公報(請求項4、0019、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では上記の問題を鑑みて、吸引用ポンプの下流側に設けられるサイレンサからドレンの回収を行わなくてもよい吸引装置および吸引方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の吸引装置は、成形材料から発生するガス状物質に含まれる水分を吸引する吸引装置において、ガス状物質を吸引する吸引用ポンプと、吸引用ポンプの下流側に設けられるサイレンサと、吸引用ポンプの下流側の接続管路またはサイレンサへガス状物質よりも水分含有率の低い気体を供給する気体供給装置と、が備えられたことを特徴とする。
【0006】
本発明の吸引方法は、成形材料から発生するガス状物質に含まれる水分を吸引する吸引方法において、吸引用ポンプによりガス状物質がサイレンサへ送られる際に、吸引用ポンプの下流側の接続管路またはサイレンサへガス状物質よりも水分含有率の低い気体を供給し、サイレンサ内におけるガス状物質の水分含有率を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の吸引装置および吸引方法は、成形材料から発生するガス状物質に含まれる水分を吸引する吸引装置において、ガス状物質を吸引する吸引用ポンプと、吸引用ポンプの下流側に設けられるサイレンサと、吸引用ポンプの下流側の接続管路またはサイレンサへガス状物質よりも水分含有率の低い気体を供給する気体供給装置とが備えられ、サイレンサ内におけるガス状物質の水分含有率を低下させるので、サイレンサからドレンの回収を行わなくてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態について、図1および図2を参照して説明する。図1は、本実施形態の吸引装置の概略説明図である。図2は、本実施形態の吸引装置の要部の正面図である。
【0009】
射出成形機の射出装置11は、加熱筒12の内部にスクリュ13が配設され、フィードスクリュ14から供給された成形材料Mを溶融し、スクリュ13の前進により成形金型15のキャビティ16内へ射出されることによって成形品が成形される。フィードスクリュ14が配設される筒部を含む加熱筒12内は、シールされており外部から密閉構造となっている。そして前記フィードスクリュ14が配設される筒部には吸引用の管路17が接続され、フィルタ装置18を介して吸引用ポンプである真空ポンプ19に接続されている。
【0010】
本実施形態で真空ポンプ19は、ポンプの潤滑油が飛散せず結露も発生しにくいルーツ型のドライポンプが使用されている。ただし吸引用ポンプとしては、他の種類の真空ポンプや、低圧の負圧状態にしか到達出来ない吸引用ポンプを用いたものでもよい。真空ポンプ19の下流側は、接続管路20を介してサイレンサ21に接続されている。図2に示されるようにサイレンサ21は、前記真空ポンプ19で発生する騒音を減少させるためのものであり、側面に円筒面22を有する円筒形状をしている。なおサイレンサ21の形状や種類は限定されない。そしてサイレンサ21の前記円筒面22の略中央には、真空ポンプ19から送られるガス等を導入用の接続管路20が接続されている。またサイレンサ21の円筒面22の下から1/4以下の部分には、気体供給装置23に接続される管路24が設けられている。気体供給装置23としてはエアドライヤ付のコンプレッサが使用され、圧縮状態の乾燥空気が供給可能となっている。
【0011】
なお本実施形態では、サイレンサ21に接続される管路24には、開閉弁等は設けられていない。ただし常時使用はしないが、成形材料Mによっては水分の発生が多い材料もあり、前記管路24に継手を設け、継手から分岐する管路の一方にはドレンを抜くための開閉弁を設けるようにしてもよい。また気体供給装置23に接続される管路24は、真空ポンプ19の下流側の接続管路20に接続されるように設けてもよく、直接または間接にサイレンサ21へ乾燥空気等の気体が供給され、少なくともサイレンサ21内で前記気体と真空ポンプ19から送られるガス状物質が混合された状態とされるようになっている。
【0012】
サイレンサ21の上面25には排出用の管路26が接続され、排出用の管路26は、脱臭装置27に接続されている。なお排出用の管路26はサイレンサ21の円筒面22の上から1/3以上の部分に設けてもよい。そしてサイレンサ21の内部には、小径が複数設けられたパンチングメタルが円筒形状に配設され、真空ポンプ19側の接続管路20に接続される部分と排出用の管路26に接続される部分が前記パンチングメタルによって区画されている。また脱臭装置27は白金触媒式の脱臭装置であって、外部から取り入れた酸素と化合させることにより、排出されるガスの臭いを脱臭し、排出口28から排出する。本実施形態では脱臭装置27には空気(酸素)を取り入れるための専用の管路や装置は設けられていない。なお必要に応じて真空ポンプ19とガス状物質の排出口28の間には別のフィルタ等を設けてもよい。
【0013】
次に吸引装置による吸引方法について説明する。射出装置11では成形材料Mの可塑化、射出が順次に行われるが、吸引用ポンプである真空ポンプ19は常時稼動し、加熱筒12内の成形材料Mが溶融する時に発生する水分を含むガス状物質を吸引している。ガス状物質としては、成形材料Mが樹脂ペレットの場合、樹脂から発生するガスが中心となるが、他には微細な固形物質や粘着流動物質も含まれる。そして水分は、樹脂ペレットに含有されていたものが中心となるが、加熱筒のシール部分からのリークにより外部から入ってくる僅かな空気にも水分が含まれる。そして前記水分は、樹脂の加熱とともに水蒸気となる。よって未乾燥または乾燥時間が短い樹脂ペレットを用いると、水分を多く含んでいるので水蒸気の発生量も増加する。例えば未乾燥で水分率が5000ppmの成形材料Mを使用すると成形材料10kgあたり50gの水が排出されることになり、1時間の成形材料Mの使用量を50kgとすると、24時間で6Lの水が排出されることになる。
【0014】
本実施形態では加熱筒12内は、真空ポンプ19により−70kPaないし−100kPaに真空引きされている。加熱筒12内の気密性を高め高真空状態とすると、加熱筒12内で発生し、真空ポンプ19によって排出されるガス状物質に含まれる水分の比率は相対的に高くなる。加熱筒12内から吸引された水蒸気、ガス、および微細な固形物質や粘着液状物質が含有されたガス状物質は、管路17を経て真空ポンプ19の上流側のフィルタ装置18に送られる。そしてフィルタ装置18内部のフィルタによりガス状物質に含まれる微細な固形物質や粘着液状物質が捕集される。ただしガス状物質に含まれる水分(水蒸気)は、フィルタ装置18によってはほとんど捕集されず、真空ポンプ19の側へ送られ、真空ポンプ19を経て下流側のサイレンサ21へ送られる。真空ポンプ19の下流側の接続管路20においてガス状物質は常圧または常圧近くに昇圧されるのでサイレンサ21内では高温状態のままでも水蒸気が結露しやすくなる。特にはサイレンサ21の設置される雰囲気温度が低い場合(冬など)には結露が発生しやすい。
【0015】
本実施形態では、気体供給装置23からサイレンサ21の下部に接続される管路24を経て常時、乾燥空気が供給されている。この際の気体供給装置23から供給される乾燥空気の量は、射出装置11の容量にも影響されるが、1分あたり30L以下でよい。そして加熱筒12内から真空ポンプ19を経て送られたガス状物質と、前記乾燥空気とがサイレンサ21内で混合される。なお気体供給装置23から供給される気体は、ガス状物質よりも水分含有率の低い気体であればよく、サイレンサ21内におけるガス状物質に含まれる水分含有率を減少させ、サイレンサ21内部での結露を防止することができる。従って前記条件を満たす場合は、外気をそのまま利用してもよい。また供給される気体は加熱したものや窒素等でもよく限定されない。
【0016】
本実施形態では加熱筒12内を高真空に保つことによりガス状物質に含まれる水分含有率が高いのでサイレンサ21内の結露が発生しやすく、ガス状物質よりも水分含有率の低い気体を導入することが特に有効である。そしてガス状物質よりも水分含有率の低い気体を加える位置を真空ポンプ19の下流側にすることにより、加熱筒12内を高真空に保つことが可能である。
【0017】
そしてサイレンサ21内で混合され希釈されたガス状物質は、排出用の管路26から脱臭装置27に送られる。脱臭装置27は前記したように白金触媒式の脱臭装置であるが、サイレンサ21内においてガス状物質と乾燥空気が混合され、所定以上に酸素を含有する状態となっているため、脱臭装置専用の空気(酸素)供給機構を設ける必要が無くなった。そして脱臭が行われたガス状物質は、排出口28から大気中に放出される。
【0018】
また本発明はサイレンサ21を電気ヒータにより加熱して結露を防止するものを除外するものではないが、水分含有率の低い気体をサイレンサ21内に供給することによりより低コストで同じ目的を達成することができ、作業員によるメンテナンス作業が不要となった。
【0019】
本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。本発明が取付けられる吸引装置は、射出成形機の射出装置の他、プランジャ装置、押出機、混練機、プレス機、ペレット造粒装置、半導体製造装置、積層成形装置、および化学プラント装置などで成形材料の化学反応等により水分を含むガス状物質が発生する装置であれば種類を選ばない。そしてガス状物質は、ほとんどが水蒸気であってもよい。また本発明に用いられる成形材料についても、樹脂の他、金属、有機物質、無機物質、それらの混合物等、種類を問わない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の吸引装置の概略説明図である。
【図2】本実施形態の吸引装置の要部の正面図である。
【符号の説明】
【0021】
12 加熱筒
18 フィルタ装置
19 真空ポンプ(吸引用ポンプ)
20 接続管路
21 サイレンサ
23 気体供給装置
27 脱臭装置
M 成形材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料から発生するガス状物質に含まれる水分を吸引する吸引装置において、
前記ガス状物質を吸引する吸引用ポンプと、
前記吸引用ポンプの下流側に設けられるサイレンサと、
吸引用ポンプの下流側の接続管路またはサイレンサへ前記ガス状物質よりも水分含有率の低い気体を供給する気体供給装置と、が備えられたことを特徴とする吸引装置。
【請求項2】
前記吸引用ポンプの上流側には前記ガス状物質の一部を捕集するフィルタが備えられたことを特徴とする請求項1に記載の吸引装置。
【請求項3】
前記サイレンサの下流側には脱臭装置が備えられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸引装置。
【請求項4】
成形材料から発生するガス状物質に含まれる水分を吸引する吸引方法において、
前記ガス状物質が吸引用ポンプによりサイレンサへ送られる際に、
吸引用ポンプの下流側の接続管路またはサイレンサへ前記ガス状物質よりも水分含有率の低い気体を供給し、
サイレンサ内におけるガス状物質の水分含有率を低下させることを特徴とする吸引方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−23273(P2010−23273A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184905(P2008−184905)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】