吸排気弁
【課題】水が凍結して体積膨張することによる破損を防止するようにした給排気弁であって、組立性の向上を図るとともに、部品同士の摩擦によって切粉が発生するのを防ぐ。
【解決手段】弁本体100の弁室113内にフロート弁120が挿入され、その上方にシートユニット130が上下に摺動自在に挿入される。弁本体100の外ねじ部118に蓋部材140の内ねじ部144が螺着される。シートユニット130を下方に付勢するコイルバネ150の上端を受けるバネ受け部材160を設け、蓋部材140の貫通穴146に回転操作用工具200の押圧棒210を挿入し、コイルバネ150を圧縮した状態で押圧操作用工具230を回転させて蓋部材140を弁本体110に螺着する。
【解決手段】弁本体100の弁室113内にフロート弁120が挿入され、その上方にシートユニット130が上下に摺動自在に挿入される。弁本体100の外ねじ部118に蓋部材140の内ねじ部144が螺着される。シートユニット130を下方に付勢するコイルバネ150の上端を受けるバネ受け部材160を設け、蓋部材140の貫通穴146に回転操作用工具200の押圧棒210を挿入し、コイルバネ150を圧縮した状態で押圧操作用工具230を回転させて蓋部材140を弁本体110に螺着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水配管に装備される吸排気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1は給水配管に装備される吸排気弁を開示している。
この吸排気弁は、給水配管の頂部に設けられ、給水時には給水配管内の空気を外部に排気するとともに給水配管内の水が外部に漏出するのを防止し、水抜き時には外部から給水配管内に空気を導入してスムーズに水抜きを行うように構成されている。
【0003】
この種の吸排気弁は、水の漏出を防止するためのフロート弁を備えている。このフロート弁は水より比重の小さい材料で形成されており、弁本体に形成された弁室内に上下に変位可能に収容されている。弁室内の水位が上昇すると、フロート弁は上昇し、吸排気口に連通する弁口の周囲のテーパー状のシートに当接して当該弁口を閉塞する。なお、弁口のシール性を向上するべく、シートをゴム等の弾性材料で形成し、フロート弁によってシートを若干圧縮した状態で弁口を閉塞するようにしたものもある。
【0004】
弁室内の水位が低下すると、フロート弁は弁口から離れて下降し、弁室の下方に設けられた弁座に着座する。なお、フロート弁が着座する弁座には排水溝が設けられており、弁室内の水はこの排水溝を介して給水配管内に排水される。これにより吸排気孔から外気が弁室を介して給水配管内に取り込まれ、この外気が給水配管内に流入して給水配管内の水が外部に排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭55−22592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に水が凍結すると9%程度の体積膨張がおこり、密閉空間の場合、体積膨張した水の圧力によって最も強度の弱い箇所が破壊される。そこで、そのような問題の解決を図った吸排気弁が提案されている。
【0007】
図10は、この種の吸排気弁の一例を示す断面図である。
吸排気弁1は弁本体10を有し、弁本体10には給排水口12とこれに連通する弁室13が形成されている。給排水口12と弁室13の間にはテーパー状の弁座14が設けられ、弁室13内には球状のフロート弁20が配置される。
【0008】
このフロート弁20はポリプロピレン(PP)等の比重が0.8程度のプラスチック材で形成され、弁室13内に給水されると水に浮き、給水されないときには弁座14上に着座する。弁本体10の上部には外ねじ部18が設けられ、蓋部材40が螺合される。蓋部材40には弁室13に連通するとともに外気に開放された吸排気孔42が形成されている。
【0009】
弁室13の上部にはシートユニット30が上下に摺動自在に挿入される。シートユニット30はフロート弁20と対向する位置にシート部材32を有している。このシート部材32はゴム等の弾性材料で形成される環状のシール部材であって、フロート弁20と当接する位置にフロート弁接触部34が形成されている。なお、シートユニット30の外周部には、弁本体10の内周面との間の隙間をシールするOリング36が装着されている。
【0010】
蓋部材40は弁本体10の外ねじ部18に螺合する内ねじ部44を有する。蓋部材40とシートユニット30の間にはコイルバネ50が配設される。コイルバネ50は大きなバネ定数を有し、シートユニット30を設定された圧力でフロート弁20側へ押圧する。
【0011】
この吸排気弁1を組立てる際には、蓋部材40を適当な工具で把持して蓋部材40の内ねじ部44を弁本体10の外ねじ部18にねじ込む工程が必要となる。この工程は、蓋部材40でコイルバネ50を圧縮しつつ行うが、コイルバネ50のバネ定数が大きいので、このねじ込みに要するトルクも大きくなり、組立性が良くないとともに、蓋部材40が傾いてねじのカジリ等の不具合が生じやすい。また、コイルバネ50の下端部52とシートユニット30の上面、及びコイルバネ50の上端部54と蓋部材40の頂壁の内面が相対的に回転しながらこすれあうので金属の切粉等が生じやすい。この切粉が吸排気弁1内に存在すると、吸排気弁1の動作不良の原因となる。
そこで、本発明の目的は、上述した問題を解決する吸排気弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の吸排気弁は、給水配管に設けられ、給水時には前記給水配管内の空気を外部に排気するとともに前記給水配管内の水が外部に漏出するのを防止し、水抜き時には外部から前記給水配管内に空気を導入して水抜きを行う吸排気弁であって、 弁室及びその下端部に設けられる給排水口を有する弁本体と、前記弁室内に配置されるフロート弁と、前記弁本体内に上下に摺動自在に挿入されて前記フロート弁と離接するシートユニットと、前記弁本体の上部に螺着される蓋部材と、該蓋部材と前記シートユニットとの間に配設されるとともに前記シートユニットを下方に付勢するバネと、前記蓋部材と前記バネとの間に上下に移動自在に配設されるバネ受け部材とを備え、前記蓋部材の外部から押圧操作用工具を前記蓋部材の内部に挿入して前記バネ受け部材を下方に押圧することにより前記バネ受け部材を前記蓋部材の内面から離間させ、その状態で前記蓋部材を前記弁本体に着脱するようにしたことを特徴とする。
【0013】
なお、前記バネ受け部材は、前記蓋部材に形成される貫通穴に摺動自在に嵌合する嵌合部を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吸排気弁は、組立工程において、蓋部材にバネ力が作用しない状態で蓋部材を弁本体に螺着することができる。これにより、バネが蓋部材やシートユニットと摺接することによる切粉等の発生を防止し、吸排気弁の動作不良や組立時のねじのカジリ等を回避することができる。
【0015】
また、バネ受け部材が、蓋部材に形成される貫通穴に摺動自在に嵌合する嵌合部を有する場合には、バネ受け部材の位置ずれを防いでバネが傾くのを防ぐことができるので、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施例の全体構成を示す図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図、(c)は底面図。
【図2】本発明の第1実施例の分解状態を示す断面図。
【図3】本発明の第1実施例の作用の説明図。
【図4】本発明の第1実施例の組立工程の説明図。
【図5】本発明の第1実施例の組立工程の説明図。
【図6】本発明の第1実施例の組立工程の説明図。
【図7】本発明の第2実施例の組立工程の説明図。
【図8】本発明の第2実施例の組立工程の説明図。
【図9】本発明の第2実施例の組立工程の説明図。
【図10】従来の吸排気弁の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の第1実施例の全体構成を示す図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図、(c)は底面図、図2は図1の吸排気弁の分解状態を示す断面図である。
吸排気弁100は、筒状の弁本体110を備える。弁本体110は、スパナを係合するための六角面111と、下端部に設けられた給排水口112と、給排水口112に連通する弁室113とを有している。給排水口112は外周部に配管を取り付けるためのねじ部112aを有する。給排水口112と弁室113の間にはテーパー状の弁座114が形成され、弁座114には排水溝116が設けられている。弁室113内にはフロート弁120が収容される。フロート弁120の上方において、シートユニット130が弁本体110内に上下に摺動自在に挿入されている。なお、シートユニット130の外周部には、弁本体10の内周面との間の隙間をシールするOリング136が装着されている。シートユニット130はフロート弁120と対向する位置にシート部材132を有している。このシート部材132はゴム等の弾性材料で形成される環状のシール部材であって、フロート弁120と当接する位置にフロート弁接触部134が形成されている。
【0018】
弁本体110の上部には天井付きの筒状の蓋部材140が着脱自在に螺着される。蓋部材140は、側壁に吸排気孔142を有するとともに、頂壁の中央部に貫通穴146を有する。また、貫通穴146の左右両側には後述する回転操作用工具のピンを挿入する有底穴148が形成されている。そして、蓋部材140の頂壁とシートユニット130の間にシートユニット130を下方に付勢するコイルバネ150が設けられ、コイルバネ150の上端部154と蓋部材140の頂壁との間には皿状のバネ受け部材160が上下に移動自在に挿入される。バネ受け部材160の下面には、コイルバネ150の上端部154が嵌合するバネ嵌合部162が設けられている。コイルバネ150の下端部152はシートユニット130に形成された凹部138に嵌合している。
【0019】
この吸排気弁100において、内部の水が凍結して体積が膨張したときには、図3に示すように、フロート弁120とともにシートユニット130がコイルバネ150に抗して押し上げられて距離L1だけ上昇する。この作用により、体積膨張した水が各部品に与える応力が緩和されるので、吸排気弁100の破損が防止される。水の凍結が解消すると、シートユニット130は、図1に示す定常位置に復帰する。
【0020】
図4乃至図6は吸排気弁100の組立工程を示す説明図である。
図4は吸排気弁100の組立工程の最初の工程を示す。
組立てには、2種類の工具を使用する。押圧操作用工具200は、プレス機等に装着されて上下動する工具であって、押圧棒210を備える。回転操作用工具230は、蓋部材140を回転させる工具であって、貫通穴232と2本の植込みピン234を備える。
【0021】
図4は、回転操作用工具230を蓋部材140の頂部に嵌装させた状態を示し、回転操作用工具230の各植込みピン234を蓋部材140の有底穴148に挿入した状態を示す。この状態では、蓋部材140の内ねじ部144と弁本体110の外ねじ部118は未だ螺合されてはいない。
【0022】
図5は、押圧操作用工具200を下降させて押圧棒210を回転操作用工具230の貫通穴232と蓋部材140の貫通穴146を介して蓋部材140内に挿入してバネ受け部材160を下方へ押圧した状態を示す。コイルバネ150はバネ受け部材160を介して押圧操作用工具200の押圧棒210により圧縮され、バネ受け部材160は蓋部材140の頂壁から離間する。
【0023】
図6は、図5の状態を保ったままで回転操作用工具230を回転駆動させて、蓋部材140の内ねじ部144を弁本体110の外ねじ部118にねじ込む工程を示す。コイルバネ150がバネ受け部材160を介して圧縮されてバネ受け部材160が蓋部材140の頂壁から離間しているので、蓋部材140にバネ力が作用せず、バネ受け部材160が蓋部材140に対して摺動することもない。よって、蓋部材140を弁本体110に対して傾かずにかつスムーズにねじ込むことができる。また、コイルバネ150は、このねじ込み作業中に回転しないので、コイルバネ150がシートユニット130に対して摺動することもない。したがって、切粉の発生を防止することができ、切粉に起因する吸排気弁100の動作不良を防止することができる。
【0024】
また、本実施例では、蓋部材140を回転させるための回転操作用工具230を蓋部材140に対して上下方向に装脱可能に形成するとともに、押圧操作用工具200を蓋部材140の上方から蓋部材140の内部に挿入するように構成しているので、回転操作用工具200と押圧操作用工具200を吸排気弁100に対して一方向に接離させることができるため、作業性が良好である。
【0025】
次に、本発明の第2実施例を説明する。図7乃至図9は第2実施例の吸排気弁100’の組立工程を示す説明図である。なお、本実施例において、第1実施例と対応する部分には同一の符号を付して重複する説明は省略するものとする。
【0026】
本実施例では、バネ受け部材160’が上方に向けて突出した位置決め用の嵌合部164を有している。この嵌合部164は、蓋部材140の貫通穴146に対して上下に摺動自在かつ挿脱自在に嵌合するように形成されている。本実施例のその他の構成は第1実施例と同じである。
【0027】
図7に示す状態から押圧操作用工具200の押圧棒210を回転操作用工具230の貫通穴232及び蓋部材140の貫通穴146を介して蓋部材140の内部に挿入し、図8に示すようにバネ受け部材160’を下方に押圧して蓋部材140の頂壁の内面から離間させる。
【0028】
この状態で蓋部材140を弁本体110に螺着すると、図9に示すように、バネ受け部材160’の嵌合部164が貫通穴146に入り込む。この状態において、バネ受け部材160は蓋部材140に対して径方向に規制される。また、コイルバネ154の上端部154はバネ受け部材160のバネ嵌合部162に嵌合して径方向に規制されている。したがって、コイルバネ154が傾くことがなく、動作不良を防いで信頼性を向上することができる。なお、蓋部材140の外部から位置決め用嵌合部164が貫通穴146に嵌合していることを確認することができる。
【0029】
以上、本発明の具体的な実施例を図1乃至図9に基いて説明したが、本発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記の各実施例に種々の改変を施すことができる。
【符号の説明】
【0030】
100、100’ 吸排気弁
110 弁本体
112 給排水口
113 弁室
114 シート
120 フロート弁
130 シートユニット
140 蓋部材
150 コイルバネ
160、160’ バネ受け部材
164 嵌合部
200 回転操作用工具
230 押圧操作用工具
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水配管に装備される吸排気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1は給水配管に装備される吸排気弁を開示している。
この吸排気弁は、給水配管の頂部に設けられ、給水時には給水配管内の空気を外部に排気するとともに給水配管内の水が外部に漏出するのを防止し、水抜き時には外部から給水配管内に空気を導入してスムーズに水抜きを行うように構成されている。
【0003】
この種の吸排気弁は、水の漏出を防止するためのフロート弁を備えている。このフロート弁は水より比重の小さい材料で形成されており、弁本体に形成された弁室内に上下に変位可能に収容されている。弁室内の水位が上昇すると、フロート弁は上昇し、吸排気口に連通する弁口の周囲のテーパー状のシートに当接して当該弁口を閉塞する。なお、弁口のシール性を向上するべく、シートをゴム等の弾性材料で形成し、フロート弁によってシートを若干圧縮した状態で弁口を閉塞するようにしたものもある。
【0004】
弁室内の水位が低下すると、フロート弁は弁口から離れて下降し、弁室の下方に設けられた弁座に着座する。なお、フロート弁が着座する弁座には排水溝が設けられており、弁室内の水はこの排水溝を介して給水配管内に排水される。これにより吸排気孔から外気が弁室を介して給水配管内に取り込まれ、この外気が給水配管内に流入して給水配管内の水が外部に排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭55−22592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に水が凍結すると9%程度の体積膨張がおこり、密閉空間の場合、体積膨張した水の圧力によって最も強度の弱い箇所が破壊される。そこで、そのような問題の解決を図った吸排気弁が提案されている。
【0007】
図10は、この種の吸排気弁の一例を示す断面図である。
吸排気弁1は弁本体10を有し、弁本体10には給排水口12とこれに連通する弁室13が形成されている。給排水口12と弁室13の間にはテーパー状の弁座14が設けられ、弁室13内には球状のフロート弁20が配置される。
【0008】
このフロート弁20はポリプロピレン(PP)等の比重が0.8程度のプラスチック材で形成され、弁室13内に給水されると水に浮き、給水されないときには弁座14上に着座する。弁本体10の上部には外ねじ部18が設けられ、蓋部材40が螺合される。蓋部材40には弁室13に連通するとともに外気に開放された吸排気孔42が形成されている。
【0009】
弁室13の上部にはシートユニット30が上下に摺動自在に挿入される。シートユニット30はフロート弁20と対向する位置にシート部材32を有している。このシート部材32はゴム等の弾性材料で形成される環状のシール部材であって、フロート弁20と当接する位置にフロート弁接触部34が形成されている。なお、シートユニット30の外周部には、弁本体10の内周面との間の隙間をシールするOリング36が装着されている。
【0010】
蓋部材40は弁本体10の外ねじ部18に螺合する内ねじ部44を有する。蓋部材40とシートユニット30の間にはコイルバネ50が配設される。コイルバネ50は大きなバネ定数を有し、シートユニット30を設定された圧力でフロート弁20側へ押圧する。
【0011】
この吸排気弁1を組立てる際には、蓋部材40を適当な工具で把持して蓋部材40の内ねじ部44を弁本体10の外ねじ部18にねじ込む工程が必要となる。この工程は、蓋部材40でコイルバネ50を圧縮しつつ行うが、コイルバネ50のバネ定数が大きいので、このねじ込みに要するトルクも大きくなり、組立性が良くないとともに、蓋部材40が傾いてねじのカジリ等の不具合が生じやすい。また、コイルバネ50の下端部52とシートユニット30の上面、及びコイルバネ50の上端部54と蓋部材40の頂壁の内面が相対的に回転しながらこすれあうので金属の切粉等が生じやすい。この切粉が吸排気弁1内に存在すると、吸排気弁1の動作不良の原因となる。
そこで、本発明の目的は、上述した問題を解決する吸排気弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の吸排気弁は、給水配管に設けられ、給水時には前記給水配管内の空気を外部に排気するとともに前記給水配管内の水が外部に漏出するのを防止し、水抜き時には外部から前記給水配管内に空気を導入して水抜きを行う吸排気弁であって、 弁室及びその下端部に設けられる給排水口を有する弁本体と、前記弁室内に配置されるフロート弁と、前記弁本体内に上下に摺動自在に挿入されて前記フロート弁と離接するシートユニットと、前記弁本体の上部に螺着される蓋部材と、該蓋部材と前記シートユニットとの間に配設されるとともに前記シートユニットを下方に付勢するバネと、前記蓋部材と前記バネとの間に上下に移動自在に配設されるバネ受け部材とを備え、前記蓋部材の外部から押圧操作用工具を前記蓋部材の内部に挿入して前記バネ受け部材を下方に押圧することにより前記バネ受け部材を前記蓋部材の内面から離間させ、その状態で前記蓋部材を前記弁本体に着脱するようにしたことを特徴とする。
【0013】
なお、前記バネ受け部材は、前記蓋部材に形成される貫通穴に摺動自在に嵌合する嵌合部を有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吸排気弁は、組立工程において、蓋部材にバネ力が作用しない状態で蓋部材を弁本体に螺着することができる。これにより、バネが蓋部材やシートユニットと摺接することによる切粉等の発生を防止し、吸排気弁の動作不良や組立時のねじのカジリ等を回避することができる。
【0015】
また、バネ受け部材が、蓋部材に形成される貫通穴に摺動自在に嵌合する嵌合部を有する場合には、バネ受け部材の位置ずれを防いでバネが傾くのを防ぐことができるので、信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施例の全体構成を示す図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図、(c)は底面図。
【図2】本発明の第1実施例の分解状態を示す断面図。
【図3】本発明の第1実施例の作用の説明図。
【図4】本発明の第1実施例の組立工程の説明図。
【図5】本発明の第1実施例の組立工程の説明図。
【図6】本発明の第1実施例の組立工程の説明図。
【図7】本発明の第2実施例の組立工程の説明図。
【図8】本発明の第2実施例の組立工程の説明図。
【図9】本発明の第2実施例の組立工程の説明図。
【図10】従来の吸排気弁の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の第1実施例の全体構成を示す図であり、(a)は正面断面図、(b)は平面図、(c)は底面図、図2は図1の吸排気弁の分解状態を示す断面図である。
吸排気弁100は、筒状の弁本体110を備える。弁本体110は、スパナを係合するための六角面111と、下端部に設けられた給排水口112と、給排水口112に連通する弁室113とを有している。給排水口112は外周部に配管を取り付けるためのねじ部112aを有する。給排水口112と弁室113の間にはテーパー状の弁座114が形成され、弁座114には排水溝116が設けられている。弁室113内にはフロート弁120が収容される。フロート弁120の上方において、シートユニット130が弁本体110内に上下に摺動自在に挿入されている。なお、シートユニット130の外周部には、弁本体10の内周面との間の隙間をシールするOリング136が装着されている。シートユニット130はフロート弁120と対向する位置にシート部材132を有している。このシート部材132はゴム等の弾性材料で形成される環状のシール部材であって、フロート弁120と当接する位置にフロート弁接触部134が形成されている。
【0018】
弁本体110の上部には天井付きの筒状の蓋部材140が着脱自在に螺着される。蓋部材140は、側壁に吸排気孔142を有するとともに、頂壁の中央部に貫通穴146を有する。また、貫通穴146の左右両側には後述する回転操作用工具のピンを挿入する有底穴148が形成されている。そして、蓋部材140の頂壁とシートユニット130の間にシートユニット130を下方に付勢するコイルバネ150が設けられ、コイルバネ150の上端部154と蓋部材140の頂壁との間には皿状のバネ受け部材160が上下に移動自在に挿入される。バネ受け部材160の下面には、コイルバネ150の上端部154が嵌合するバネ嵌合部162が設けられている。コイルバネ150の下端部152はシートユニット130に形成された凹部138に嵌合している。
【0019】
この吸排気弁100において、内部の水が凍結して体積が膨張したときには、図3に示すように、フロート弁120とともにシートユニット130がコイルバネ150に抗して押し上げられて距離L1だけ上昇する。この作用により、体積膨張した水が各部品に与える応力が緩和されるので、吸排気弁100の破損が防止される。水の凍結が解消すると、シートユニット130は、図1に示す定常位置に復帰する。
【0020】
図4乃至図6は吸排気弁100の組立工程を示す説明図である。
図4は吸排気弁100の組立工程の最初の工程を示す。
組立てには、2種類の工具を使用する。押圧操作用工具200は、プレス機等に装着されて上下動する工具であって、押圧棒210を備える。回転操作用工具230は、蓋部材140を回転させる工具であって、貫通穴232と2本の植込みピン234を備える。
【0021】
図4は、回転操作用工具230を蓋部材140の頂部に嵌装させた状態を示し、回転操作用工具230の各植込みピン234を蓋部材140の有底穴148に挿入した状態を示す。この状態では、蓋部材140の内ねじ部144と弁本体110の外ねじ部118は未だ螺合されてはいない。
【0022】
図5は、押圧操作用工具200を下降させて押圧棒210を回転操作用工具230の貫通穴232と蓋部材140の貫通穴146を介して蓋部材140内に挿入してバネ受け部材160を下方へ押圧した状態を示す。コイルバネ150はバネ受け部材160を介して押圧操作用工具200の押圧棒210により圧縮され、バネ受け部材160は蓋部材140の頂壁から離間する。
【0023】
図6は、図5の状態を保ったままで回転操作用工具230を回転駆動させて、蓋部材140の内ねじ部144を弁本体110の外ねじ部118にねじ込む工程を示す。コイルバネ150がバネ受け部材160を介して圧縮されてバネ受け部材160が蓋部材140の頂壁から離間しているので、蓋部材140にバネ力が作用せず、バネ受け部材160が蓋部材140に対して摺動することもない。よって、蓋部材140を弁本体110に対して傾かずにかつスムーズにねじ込むことができる。また、コイルバネ150は、このねじ込み作業中に回転しないので、コイルバネ150がシートユニット130に対して摺動することもない。したがって、切粉の発生を防止することができ、切粉に起因する吸排気弁100の動作不良を防止することができる。
【0024】
また、本実施例では、蓋部材140を回転させるための回転操作用工具230を蓋部材140に対して上下方向に装脱可能に形成するとともに、押圧操作用工具200を蓋部材140の上方から蓋部材140の内部に挿入するように構成しているので、回転操作用工具200と押圧操作用工具200を吸排気弁100に対して一方向に接離させることができるため、作業性が良好である。
【0025】
次に、本発明の第2実施例を説明する。図7乃至図9は第2実施例の吸排気弁100’の組立工程を示す説明図である。なお、本実施例において、第1実施例と対応する部分には同一の符号を付して重複する説明は省略するものとする。
【0026】
本実施例では、バネ受け部材160’が上方に向けて突出した位置決め用の嵌合部164を有している。この嵌合部164は、蓋部材140の貫通穴146に対して上下に摺動自在かつ挿脱自在に嵌合するように形成されている。本実施例のその他の構成は第1実施例と同じである。
【0027】
図7に示す状態から押圧操作用工具200の押圧棒210を回転操作用工具230の貫通穴232及び蓋部材140の貫通穴146を介して蓋部材140の内部に挿入し、図8に示すようにバネ受け部材160’を下方に押圧して蓋部材140の頂壁の内面から離間させる。
【0028】
この状態で蓋部材140を弁本体110に螺着すると、図9に示すように、バネ受け部材160’の嵌合部164が貫通穴146に入り込む。この状態において、バネ受け部材160は蓋部材140に対して径方向に規制される。また、コイルバネ154の上端部154はバネ受け部材160のバネ嵌合部162に嵌合して径方向に規制されている。したがって、コイルバネ154が傾くことがなく、動作不良を防いで信頼性を向上することができる。なお、蓋部材140の外部から位置決め用嵌合部164が貫通穴146に嵌合していることを確認することができる。
【0029】
以上、本発明の具体的な実施例を図1乃至図9に基いて説明したが、本発明は上記の各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で上記の各実施例に種々の改変を施すことができる。
【符号の説明】
【0030】
100、100’ 吸排気弁
110 弁本体
112 給排水口
113 弁室
114 シート
120 フロート弁
130 シートユニット
140 蓋部材
150 コイルバネ
160、160’ バネ受け部材
164 嵌合部
200 回転操作用工具
230 押圧操作用工具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水配管に設けられ、給水時には前記給水配管内の空気を外部に排気するとともに前記給水配管内の水が外部に漏出するのを防止し、水抜き時には外部から前記給水配管内に空気を導入して水抜きを行う吸排気弁であって、
弁室及びその下端部に設けられる給排水口を有する弁本体と、前記弁室内に配置されるフロート弁と、前記弁本体内に上下に移動自在に挿入されて前記フロート弁と離接するシートユニットと、前記弁本体の上部に螺着される蓋部材と、該蓋部材と前記シートユニットとの間に配設されるとともに前記シートユニットを下方に付勢するバネと、前記蓋部材と前記バネとの間に上下に移動自在に配設されるバネ受け部材とを備え、
前記蓋部材の外部から押圧操作用工具を前記蓋部材の内部に挿入して前記バネ受け部材を下方に押圧することにより前記バネ受け部材を前記蓋部材の内面から離間させ、その状態で前記蓋部材を前記弁本体に着脱するようにしたことを特徴とする吸排気弁。
【請求項2】
前記バネ受け部材は、前記蓋部材に形成される貫通穴に摺動自在に嵌合する嵌合部を有することを特徴とする請求項1記載の吸排気弁。
【請求項1】
給水配管に設けられ、給水時には前記給水配管内の空気を外部に排気するとともに前記給水配管内の水が外部に漏出するのを防止し、水抜き時には外部から前記給水配管内に空気を導入して水抜きを行う吸排気弁であって、
弁室及びその下端部に設けられる給排水口を有する弁本体と、前記弁室内に配置されるフロート弁と、前記弁本体内に上下に移動自在に挿入されて前記フロート弁と離接するシートユニットと、前記弁本体の上部に螺着される蓋部材と、該蓋部材と前記シートユニットとの間に配設されるとともに前記シートユニットを下方に付勢するバネと、前記蓋部材と前記バネとの間に上下に移動自在に配設されるバネ受け部材とを備え、
前記蓋部材の外部から押圧操作用工具を前記蓋部材の内部に挿入して前記バネ受け部材を下方に押圧することにより前記バネ受け部材を前記蓋部材の内面から離間させ、その状態で前記蓋部材を前記弁本体に着脱するようにしたことを特徴とする吸排気弁。
【請求項2】
前記バネ受け部材は、前記蓋部材に形成される貫通穴に摺動自在に嵌合する嵌合部を有することを特徴とする請求項1記載の吸排気弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−108577(P2013−108577A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254866(P2011−254866)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】
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