説明

吸着装置及びワーク搬送装置

【課題】吸着パッドを所定の真空度にする時間を短縮することができる吸着装置及びワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】本発明のワーク搬送装置1は、搬送対象物であるワークwの表面に配置される吸着パッド21を真空ポンプ22により真空引きしてワークwを把持する吸着装置2と、吸着パッド21を支持するクロスバー31とクロスバー31を移動させる駆動アーム32と駆動アーム32を移動可能に支持する支持部材33とを有する構造部材3と、を備えており、前記吸着装置2は、支持部材33に形成された真空タンク4と、真空タンク4と吸着パッド21との間に配置された第一吸気流路5と、第一吸気流路5に配置された電磁弁6と、真空タンク4と真空ポンプ22との間に配置された第二吸気流路7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着パッドを真空引きしてワークを把持する吸着装置及び該吸着装置を備えたワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用パネルのように複雑な形状をなした製品は、複数の成形工程を必要とするため、複数のプレス機が一列に配置されたトランスファプレスやタンデムプレスにより成形されることが多い。かかるトランスファプレスやタンデムプレスでは、プレス機間に配置されたワーク搬送装置により被加工材であるワークを順次搬送している。かかるワーク搬送装置には、一般に吸着パッドを真空引きしてワークを把持する吸着装置が採用されている。吸着装置は、対象物の表面に配置される吸着パッドと、該吸着パッドに接続された吸気流路と、該吸気流路内を真空引きする真空ポンプと、を有している。吸着パッドは、吸盤やバキュームカップとも称され、ワークの上方に配置可能なクロスバーに接続される。また、クロスバーは、特許文献1〜特許文献3に記載された種々の方式により駆動され、ワークを搬送する。なお、吸着装置により吸着されるワークには、上述したプレス成形品の他に、ガラス基板その他の板状部材の場合もある。
【0003】
特許文献1に記載されたワーク搬送装置は、振り子式に駆動されるアームの先端に吸着パッドを備えたクロスバーを配置したものである。特許文献2に記載されたワーク搬送装置は、フロッグレッグ式に駆動されるアームの先端に吸着パッドを備えたクロスバーを配置したものである。特許文献3に記載されたワーク搬送装置は、スイングアーム式の先端に吸着パッドを備えたクロスバーを配置したものである。その他、多間接ロボットの先端に吸着パッドを配置したワーク搬送装置も存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−161406号公報
【特許文献2】特開2007−216254号公報
【特許文献3】米国特許第6223582号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のワーク搬送装置に使用されている吸着装置では、吸着パッドに接続された吸気流路である真空配管は、クロスバー及びアームに沿って配置され、ワーク搬送装置の建屋等の構造部材に配置された真空ポンプに接続されている。したがって、真空配管の長さが長くなり易い。また、真空配管は駆動部に配置されるため、重量とスペースの制約から細くなり易い。その結果、真空引きの立ち上がりが悪く、吸着パッドを所定の真空度にする時間が長くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上述した問題点に鑑み創案されたものであり、吸着パッドを所定の真空度にする時間を短縮することができる吸着装置及びワーク搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、吸着対象物の表面に配置される吸着パッドを真空ポンプにより真空引きして前記対象物を把持する吸着装置であって、前記吸着パッドと前記真空ポンプとの間に存在する構造部材に形成された真空タンクと、該真空タンクと前記吸着パッドとの間に配置された第一吸気流路と、該第一吸気流路に配置された電磁弁と、前記真空タンクと前記真空ポンプとの間に配置された第二吸気流路と、を有することを特徴とする吸着装置が提供される。
【0008】
前記構造部材は、前記吸着パッドが連結される連結部材、該連結部材を移動させるアーム部材又は該アーム部材を支持する支持部材であることが好ましい。また、前記真空タンクは、前記吸着パッドの排気容積に対して10倍以上の容積であることが好ましい。また、前記構造部材に複数の真空タンクを形成し、真空タンクどうしを連結する第三吸気流路を配置するようにしてもよい。
【0009】
前記第一吸気流路は、前記第二吸気流路よりも短いことが好ましい。また、前記第一吸気流路は前記真空タンクの長手方向の一端部側に接続され、前記第二吸気流路は前記真空タンクの長手方向の他端部側に接続されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、搬送対象物であるワークの表面に配置される吸着パッドを真空ポンプにより真空引きして前記ワークを把持する吸着装置と、少なくとも前記吸着パッドが連結されるクロスバーと該クロスバーを移動させる駆動アームとを有する構造部材と、を備えたワーク搬送装置であって、前記構造部材に形成された真空タンクと、該真空タンクと前記吸着パッドとの間に配置された第一吸気流路と、該第一吸気流路に配置された電磁弁と、前記真空タンクと前記真空ポンプとの間に配置された第二吸気流路と、を有することを特徴とするワーク搬送装置が提供される。なお、前記構造部材には、前記駆動アームを支持する支持部材を含むようにしてもよい。
【0011】
前記真空タンクは、前記吸着パッドの排気容積に対して10倍以上の容積であることが好ましい。また、前記クロスバー又は前記駆動アームに複数の真空タンクを形成し、真空タンクどうしを連結する第三吸気流路を配置するようにしてもよい。また、前記第一吸気流路は、前記第二吸気流路よりも短いことが好ましい。さらに、前記第一吸気流路は前記真空タンクの長手方向の一端部側に接続され、前記第二吸気流路は前記真空タンクの長手方向の他端部側に接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明の吸着装置及びワーク搬送装置によれば、吸着装置又はワーク搬送装置に予め配置されている構造部材に真空タンクを形成することにより、吸着パッドを真空引きする距離を短くすることができ、吸着パッドを所定の真空度にする時間を短縮することができる。特に構造部材の空きスペースを真空タンク化しているため、別部材の真空タンクを配置する必要がなく、装置の大型化及び重量化を抑制することができる。また、第一吸気流路は従来の吸気流路よりも短いため、細い配管で流路を構成することができ、重量とスペースの制約から解放される。さらに、真空タンクを吸気流路の途中に形成したことにより、真空引き時に生じる脈動を抑制することができ、排気速度の低い真空ポンプを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るワーク搬送装置の第一実施形態を示す図であり、(A)は概略全体構成図、(B)は図1(A)におけるB−B概略断面図、を示している。
【図2】第一実施形態の変形例を示す上面図である。
【図3】本発明に係るワーク搬送装置の第二実施形態を示す図であり、(A)は概略全体構成図、(B)は第二実施形態の変形例、を示している。
【図4】本発明に係るワーク搬送装置の第三実施形態を示す図であり、(A)は概略全体構成図、(B)は第三実施形態の変形例、を示している。
【図5】本発明に係るワーク搬送装置の第四実施形態を示す図であり、(A)は概略全体構成図、(B)は第四実施形態の変形例、を示している。
【図6】本発明に係るワーク搬送装置の第五実施形態を示す図であり、(A)は概略全体構成図、(B)は第五実施形態の変形例を示す図6(A)におけるB矢視図、である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図1〜図6用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係るワーク搬送装置の第一実施形態を示す図であり、(A)は概略全体構成図、(B)は図1(A)におけるB−B概略断面図、を示している。また、図2は、第一実施形態の変形例を示す上面図である。
【0015】
図1(A)に示した本発明のワーク搬送装置1は、搬送対象物であるワークwの表面に配置される吸着パッド21を真空ポンプ22により真空引きしてワークwを把持する吸着装置2と、吸着パッド21を支持するクロスバー31とクロスバー31を移動させる駆動アーム32と駆動アーム32を移動可能に支持する支持部材33とを有する構造部材3と、を備えており、前記吸着装置2は、支持部材33に形成された真空タンク4と、真空タンク4と吸着パッド21との間に配置された第一吸気流路5と、第一吸気流路5に配置された電磁弁6と、真空タンク4と真空ポンプ22との間に配置された第二吸気流路7と、を有する。
【0016】
前記ワーク搬送装置1は、例えば、タンデムプレスラインに配置され、隣接するプレス機8,8の間で被加工材であるワークwを順次搬送する装置である。具体的には、図1(A)に示したように、ワーク搬送装置1は、上流側のプレス機8のベッド81でプレス処理の終了したワークwを把持して、下流側のプレス機8のベッド82にワークwを搬送する。なお、図1(A)において、プレス機8のスライド等の上部構造物は省略してある。
【0017】
図1(A)及び図2に示したワーク搬送装置1は、いわゆるV型搬送機構を備えたものである。具体的には、このV型搬送機構は、V字形状の支持部材33と、支持部材33に配置された駆動モータ34,34と、駆動モータ34に連結されたボールねじ軸35,35と、ボールねじ軸35,35上に滑動可能に接続されたスライドブロック36,36と、スライドブロック36,36に回動可能に接続された駆動アーム32,32と、駆動アーム32,32に連結されたクロスバー31と、から構成されている。なお、図2に示すように、V型搬送機構はクロスバー31の両側に配置されており、クロスバー31は各駆動アーム32により両側から支持されている。そして、駆動モータ34,34を駆動させてスライドブロック36,36をボールねじ軸35,35上で移動させることにより、クロスバー31をベッド81からベッド82に移動できるように構成されている。また、クロスバー31をチルトさせる機構を駆動アーム32に先端部に配置するようにしてもよい。さらに、スライドブロック36,36の駆動機構は、タイミングベルト、液圧シリンダ、ラックアンドピニオン、リニアモータ等を利用したものであってもよい。
【0018】
かかるV型搬送機構を備えたワーク搬送装置1において、真空タンク4を形成し得る構造部材3は、吸着パッド21が連結される連結部材であるクロスバー31、連結部材(クロスバー31)を移動させるアーム部材である駆動アーム32及びアーム部材(駆動アーム32)を支持する支持部材33である。したがって、その他の構造部材(例えば、支持部材33を支持する柱部材、油圧タンクや真空ポンプ22等を支持する建屋の構造部材等)に関しては、従来の装置と同様の構成であるため、ここでは図及び説明を省略する。
【0019】
本発明において、吸着装置2は、上述したように、吸着パッド21、真空ポンプ22、真空タンク4、第一吸気流路5、電磁弁6及び第二吸気流路7により構成される。吸着パッド21は、図1(A)及び図2に示すように、例えば、クロスバー31の左右両側に交互に張り出すように複数配置されている。また、真空ポンプ22は、例えば、ワーク搬送装置1の建屋の構造部材上に配置される。そして、真空ポンプ22を作動させることにより吸着パッド21を真空引きしてワークwを吸着パッド21により把持する。このとき、真空ポンプ22は、吸着パッド21から離れた場所に置かざるを得ず、吸着パッド21と真空ポンプ22を連結する吸気流路が長くなり易い。吸気流路が長くなると真空引きする時間が長くなったり、容量の大きな真空ポンプ22が必要になったりしてしまう。そこで、本発明では、吸気流路中に真空タンク4を配置して、真空ポンプ22を大型化せずに真空引きする時間を短縮するようにしている。
【0020】
前記真空タンク4は、例えば、図1(A)に示すように、支持部材33に形成される。支持部材33は、図1(B)に示すように、V型搬送機構の駆動モータ34やボールねじ軸35を支持する部材であり、断面角状の鋼管により形成されている。本発明は、この支持部材33の中空部を真空タンク4として利用することを特徴とする。このように既存設備を利用して真空タンク4を形成することにより、新たに別の真空タンク4を設置する必要がなく、装置の大型化及び重量化を抑制することができ、吸着パッド21を所定の真空度にする時間を短縮することができる。また、真空タンク4を吸気流路の途中に形成したことにより、真空引き時に生じる脈動を抑制することができ、排気速度の低い真空ポンプ22を使用することができる。
【0021】
また、真空タンク4の容積は、吸着パッド21の排気容積に対して10倍以上の容積であることが好ましい。吸着パッド21が複数配置されている場合には、その総和を基準として真空タンク4の容積が設定される。吸着パッド21の排気容積に対して真空タンク4の容積を十分大きくすることにより、効率的に吸着パッド21を真空引きすることができる。なお、真空タンク4を形成する構成部材(ここでは支持部材33)は、真空引きに耐える必要があり、負圧を受けても凹まないこと、負圧と搬送圧力を同時に受け続けても疲労破壊し難いこと等の条件を満たしていることが好ましい。
【0022】
また、支持部材33には、駆動モータ34の固定部材9等のように、鋼板を溶接した部位が形成される場合がある。かかる溶接部では、真空タンク4(支持部材33の中空部)を真空引きした場合に、高い応力が発生して変形してしまうおそれがある。そこで、本発明では、真空タンク4の内部に補強板41を設置している。補強板41は、真空タンク4の断面形状を有する板状部材であり、真空タンク4と連通する開口部42が形成されている。補強板41の形状、枚数、開口部42の大きさ等の条件は真空タンク4の容量、断面形状等の条件により適宜設計される。
【0023】
前記第一吸気流路5は、真空タンク4と吸着パッド21とを連結する真空配管である。具体的には、第一吸気流路5は、真空タンク4から支持部材33、駆動アーム32及びクロスバー31に沿って吸着パッド21まで配置される。かかる第一吸気流路5は、支持部材33、駆動アーム32及びクロスバー31の外面に沿って配置してもよいし、内部に挿通して配置してもよい。第一吸気流路5と真空タンク4の接続部は、例えば、第一吸気流路5を構成する真空配管の先端を真空タンク4内に挿通して密封・固定できるように構成されている。また、第一吸気流路5を構成する真空配管の先端部又は外周面には開口部が形成されており、真空タンク4内を真空引きできるように構成されている。また、第一吸気流路5は従来の吸気流路よりも短いため、細い配管で流路を構成することができ、重量とスペースの制約から解放される。
【0024】
また、第一吸気流路5には流路の開閉を行う電磁弁6が配置されている。ここでは、第一吸気流路5と真空タンク4の接続部の近傍に電磁弁6を配置している。電磁弁6は、ワーク搬送装置1の制御装置(図示せず)に接続されており、所定のタイミングで開閉できるように構成されている。例えば、吸着パッド21がベッド81上のワークwの表面に配置されたタイミングで電磁弁6を開状態として真空ポンプ22により真空引きを行い、ワークwを吸着して把持した状態で電磁弁6を閉状態とし、ベッド82上にワークwを載置したタイミングで真空状態を破断して吸着パッド21からワークwを離脱させる。真空状態破断機構は、例えば、吸着パッド21に形成された開閉弁(図示せず)であり、真空状態の第一吸気流路5内を大気圧状態にすることができるように構成されている。
【0025】
前記第二吸気流路7は、真空タンク4と真空ポンプ22とを連結する真空配管である。具体的には、第二吸気流路7は、真空タンク4から支持部材33及びワーク搬送装置1のその他の構造部材に沿って真空ポンプ22まで配置される。かかる第二吸気流路7は、支持部材33及びワーク搬送装置1のその他の構造物の外面に沿って配置してもよいし、内部に挿通して配置してもよい。第二吸気流路7と真空タンク4の接続部は、第一吸気流路5の接続部と同様に構成される。
【0026】
ここで、第一吸気流路5は、第二吸気流路7よりも短く形成されていることが好ましい。第一吸気流路5が長い場合には、真空引きする時間の短縮効果が少ないため、真空タンク4の配置位置は、吸着パッド21と真空ポンプ22の中間部を一つの基準とし、中間部よりも吸着パッド21寄りにすることが好ましい。また、第一吸気流路5は、真空タンク4の長手方向の一端部側に接続され、第二吸気流路7は真空タンク4の長手方向の他端部側に接続されていることが好ましい。すなわち、真空タンク4の上流側に第二吸気流路7を接続し、下流側に第一吸気流路5を接続する。このように第一吸気流路5及び第二吸気流路7を真空タンク4に接続することにより、真空タンク4で真空配管を兼用することができ、第一吸気流路5及び第二吸気流路7に必要な真空配管の長さを短縮することができ、吸着装置2の構造を簡略化することができる。したがって、ワーク搬送装置1の構造部材の中から真空タンク4を形成する部材を選択する際には、真空配管を配置することができるスペースが少ない構造部材を選択することにより、本発明の効果をより発揮させることができる。
【0027】
例えば、図2に示した第一実施形態の変形例のように、真空タンク4はクロスバー31に形成してもよい。かかる変形例では、真空タンク4に各吸着パッド21が直に接続されており、複数の第一吸気流路5が配置されている。したがって、電磁弁6も各第一吸気流路5にそれぞれ配置されている。このようにクロスバー31に真空タンク4を形成すると、真空タンク4と吸着パッド21との距離、すなわち、第一吸気流路5の長さを最も短くすることができ、吸着パッド21の真空立ち上げに要する時間を効果的に短縮することができる。なお、その他の構成については、図1に示した第一実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0028】
次に、本発明を振り子式のワーク搬送装置1に適用した場合について説明する。ここで、図3は、本発明に係るワーク搬送装置の第二実施形態を示す図であり、(A)は概略全体構成図、(B)は第二実施形態の変形例、を示している。なお、第一実施形態と同じ構成部品については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0029】
図3に示した本発明の第二実施形態は、本発明を振り子式のワーク搬送装置1に適用したものである。振り子式のワーク搬送装置1は、ワーク搬送装置1の柱部材やプレス機8等の構造部材に接続されたレール11と、レール11に移動可能に接続された台車12と、台車12に回動可能に接続された第一アーム37aと、第一アーム37aに回動可能に接続された第二アーム37bと、を有している。第二アーム37bは、クロスバー31に連結されている。そして、図3(A)に示した第二実施形態では、第二アーム37bに真空タンク4を形成している。勿論、第二アーム37bの代わりに第一アーム37aに真空タンク4を形成してもよい。また、図3(B)に示した変形例のように、第一アーム37aと第二アーム37bの両方に真空タンク4を形成し、真空タンク4どうしを連結する第三吸気流路43を配置してもよい。なお、図3(B)ではプレス機8の図を省略してある。さらに、クロスバー31や台車12に真空タンク4を形成してもよい。
【0030】
次に、本発明をスイングアーム式のワーク搬送装置1に適用した場合について説明する。ここで、図4は、本発明に係るワーク搬送装置の第三実施形態を示す図であり、(A)は概略全体構成図、(B)は第三実施形態の変形例、を示している。なお、第一実施形態と同じ構成部品については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0031】
図4に示した本発明の第三実施形態は、本発明をスイングアーム式のワーク搬送装置1に適用したものである。スイングアーム式のワーク搬送装置1は、床面に立設されたI字形状の支持部材33と、支持部材33に回動可能に接続されたスイングアーム38と、支持部材33に配置された駆動モータ34と、駆動モータ34に連結されたボールねじ軸35と、ボールねじ軸35上に滑動可能に接続されたスライドブロック36と、スライドブロック36及びスイングアーム38に回動可能に接続された駆動アーム32と、を有している。スイングアーム38は、クロスバー31に連結されている。そして、図4(A)に示した第三実施形態では、支持部材33に真空タンク4を形成している。また、図4(B)に示した変形例のように、スイングアーム38に真空タンク4を形成してもよい。さらに、支持部材33とスイングアーム38の両方に真空タンク4を形成し真空タンク4どうしを連結する第三吸気流路を配置してもよいし、クロスバー31に真空タンク4を形成してもよい。
【0032】
次に、本発明をフロッグレッグ式のワーク搬送装置1に適用した場合について説明する。ここで、図5は、本発明に係るワーク搬送装置の第四実施形態を示す図であり、(A)は概略全体構成図、(B)は第四実施形態の変形例、を示している。なお、第一実施形態と同じ構成部品については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0033】
図5に示した本発明の第四実施形態は、本発明をフロッグレッグ式のワーク搬送装置1に適用したものである。フロッグレッグ式のワーク搬送装置1は、ワーク搬送装置1の柱部材13,13に接続された梁部材14と、梁部材14に吊り下げられた支持部材15と、支持部材15に回動可能に接続された一対の第一アーム37a,37aと、各第一アーム37aに回動可能に接続された第二アーム37b,37bと、を有している。第二アーム37b,37bは、クロスバー31に連結されている。そして、図5(A)に示した第四実施形態では、各第二アーム37bに真空タンク4を形成している。また、真空ポンプ22は、柱部材13上に配置されており、真空ポンプ22から延出された第二吸気流路7は、各第一アーム37aに分岐して配置され、各真空タンク4から延出された第一吸気流路5はクロスバー31内で統合されるように配置されている。勿論、第二吸気流路7を分岐させずに、片方の第一アーム37aにのみ配置し、片方の第二アーム37bにのみ真空タンク4を形成するようにしてもよい。
【0034】
また、図5(B)に示した変形例のように、第二アーム37bの両方に真空タンク4を形成してもよい。なお、図3(B)ではプレス機8の図を省略してある。ここでは、吸着装置2を左右に分割して構成し、各真空タンク4に対応した真空ポンプ22、第二吸気流路7、第一吸気流路5及び電磁弁6をそれぞれに配置している。勿論、第二吸気流路7及び第一吸気流路5の配置を図5(A)に示した第四実施形態と同様の構成にしてもよい。また、第一アーム37a及び第二アーム37bの両方に真空タンク4を形成して真空タンク4どうしを連結する第三吸気流路を配置してもよい。さらに、第一アーム37a又は第二アーム37bの内部に同調駆動のためのベルトやシャフト等の内装部材が配置されていて真空タンク4を形成する十分なスペースを確保できないような場合には、クロスバー31や支持部材15に真空タンク4を形成してもよい。
【0035】
次に、本発明を直動機構式のワーク搬送装置1に適用した場合について説明する。ここで、図6は、本発明に係るワーク搬送装置の第五実施形態を示す図であり、(A)は概略全体構成図、(B)は第五実施形態の変形例を示す図6(A)におけるB矢視図、である。なお、第一実施形態と同じ構成部品については同じ符号を付し、重複した説明を省略する。
【0036】
図6に示した本発明の第五実施形態は、本発明を直動機構式のワーク搬送装置1に適用したものである。直動機構式のワーク搬送装置1は、プレス機8,8間に配置されたレール11と、レール11に移動可能に接続された台車12と、台車12にスライド可能に接続された直動アーム39と、直動アーム39にスライド可能に接続された滑走子30と、を有している。滑走子30は、クロスバー31に連結されている。そして、図6(A)に示した第五実施形態では、直動アーム39に真空タンク4を形成している。真空ポンプ22は、図示したようにレール11上に配置してもよいし、ワーク搬送装置1の建屋等の構造部材上に配置してもよい。
【0037】
直動機構式のワーク搬送装置1には、例えば、特願2007−234064等に開示されたものを使用することが好ましい。直動機構式のワーク搬送装置1では、レール11は、昇降機構により上下移動可能に構成されている。かかる昇降機構は、例えば、レール11上に立設されたラック16と、ワーク搬送装置1の建屋等の構造部材に配置された駆動モータ17と、駆動モータ17により駆動されラック16と噛合するピニオン18と、から構成される。また、台車12は、駆動モータにより駆動されるピニオン121を有し、レール11に形成されたラックと噛合して水平移動できるように構成されている。さらに、台車12は、駆動モータ123(図6(B)参照)により駆動されるピニオン122を有し、直動アーム39に形成されたラックと噛合して水平移動できるように構成されている。また、滑走子30は、ラック・ピニオン機構、ベルト駆動機構、チェーン駆動機構、リニアモータ機構等により直動アーム39に沿って水平移動できるように構成されている。このとき、滑走子30は、特願2007−234064に記載された倍速機構により水平移動させるようにしてもよい。なお、昇降機構、台車12の駆動機構及び直動アーム39の駆動機構は、ラック・ピニオン機構に代えて、油圧シリンダ機構、ベルト駆動機構、チェーン駆動機構、リニアモータ機構等により構成してもよい。
【0038】
上述した直動機構式のワーク搬送装置1では、真空タンク4が直動アーム39に形成されているため真空タンク4が水平移動することとなる。したがって、第一吸気流路5及び第二吸気流路7は、真空タンク4の水平移動に追従できるように配置される。また、真空タンク4は、クロスバー31や滑走子30に形成してもよいが、この場合も滑走子30の水平移動に第二吸気流路7が追従できるように配置される。さらに、真空タンク4は、図6(B)に示したように、台車12の組付部材124,124に形成してもよい。台車12は、一般に、鋼材を組み合わせて構成されるものであり、真空タンク4を形成することが可能である。ここでは、台車12の組付部材124,124の2箇所に真空タンク4を形成し、第三吸気流路43を配置している。
【0039】
上述した実施形態において、各図に示したV型搬送機構を備えたワーク搬送装置1、振り子式のワーク搬送装置1、フロッグレッグ式のワーク搬送装置1、スイングアーム式のワーク搬送装置1及び直動機構式のワーク搬送装置1は、単なる一例であり、かかる構成に限定されるものではない。また、ワーク搬送装置1は、図示したものに限られず、例えば、多間接ロボット式のワーク搬送装置等であってもよい。また、吸着装置2の実施形態としてワーク搬送装置1の場合について説明したが、本発明にかかる吸着装置2はワーク搬送装置以外の吸着機構を備えた装置にも適用することができることは勿論である。
【0040】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 ワーク搬送装置
2 吸着装置
3 構造部材
4 真空タンク
5 第一吸気流路
6 電磁弁
7 第二吸気流路
8 プレス機
9 固定部材
11 レール
12 台車
13 柱部材
14 梁部材
15 支持部材
16 ラック
17 駆動モータ
18 ピニオン
21 吸着パッド
22 真空ポンプ
31 クロスバー
32 駆動アーム
33 支持部材
34 駆動モータ
35 ボールねじ軸
36 スライドブロック
37a 第一アーム
37b 第二アーム
38 スイングアーム
39 直動アーム
30 滑走子
41 補強板
42 開口部
81,82 ベッド
121,122 ピニオン
123 駆動モータ
124 組付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着対象物の表面に配置される吸着パッドを真空ポンプにより真空引きして前記吸着対象物を把持する吸着装置であって、
前記吸着パッドと前記真空ポンプとの間に存在する構造部材に形成された真空タンクと、該真空タンクと前記吸着パッドとの間に配置された第一吸気流路と、該第一吸気流路に配置された電磁弁と、前記真空タンクと前記真空ポンプとの間に配置された第二吸気流路と、を有することを特徴とする吸着装置。
【請求項2】
前記構造部材は、前記吸着パッドが連結される連結部材、該連結部材を移動させるアーム部材又は該アーム部材を支持する支持部材である、ことを特徴とする請求項1に記載の吸着装置。
【請求項3】
前記真空タンクは、前記吸着パッドの排気容積に対して10倍以上の容積である、ことを特徴とする請求項1に記載の吸着装置。
【請求項4】
前記構造部材に複数の真空タンクを形成し、真空タンクどうしを連結する第三吸気流路を配置した、ことを特徴とする請求項1に記載の吸着装置。
【請求項5】
前記第一吸気流路は、前記第二吸気流路よりも短い、ことを特徴とする請求項1に記載の吸着装置。
【請求項6】
前記第一吸気流路は前記真空タンクの長手方向の一端部側に接続され、前記第二吸気流路は前記真空タンクの長手方向の他端部側に接続されている、ことを特徴とする請求項1に記載の吸着装置。
【請求項7】
搬送対象物であるワークの表面に配置される吸着パッドを真空ポンプにより真空引きして前記ワークを把持する吸着装置と、少なくとも前記吸着パッドが連結されるクロスバーと該クロスバーを移動させる駆動アームとを有する構造部材と、を備えたワーク搬送装置であって、
前記吸着装置は請求項1〜請求項6のいずれかに記載された吸着装置である、ことを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項8】
前記構造部材には、前記駆動アームを支持する支持部材を含む、ことを特徴とする請求項7に記載のワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−214563(P2010−214563A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66282(P2009−66282)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】