説明

吸音材

【課題】建材として必要な不燃性と引裂強度とを有する吸音材、及び吸音材に使用される装飾シートを提供する。
【解決手段】反射面16を含む構造体に取り付けられる吸音材1であって、該吸音材1が、フィルム層10と接着剤層11とが積層され微小な穴を有する装飾フィルム層14、及びガラスクロス層12を含む装飾シートであって、前記装飾シートと前記構造体の表面によってそれらの間に背後空気層15が規定されるように前記構造体の表面の近傍に配置される装飾シートを含む吸音材1、及吸音材1に使用される装飾シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材及び装飾シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物や車両内部の壁面、天井、または床等の表皮材として装飾シートが用いられている。
例えば特許文献1には、微小な穴を有するフィルムを利用した吸音材が記載されている。この吸音材は、断面形状がテーパーを有している微小な穴を有するポリマーフィルムを、空隙を介して構造体に取り付けるものであり、空隙の少なくとも一部に、ポリマーフィルムに隣接する繊維状吸音材料を含む。
【0003】
また、特許文献2には、微小な穴を有する装飾シートを利用した吸音装飾シートが記載されている。かかる吸音装飾シートは、微小な穴を有する装飾フィルム層、不燃性連続発泡体層、及び接着剤層を含み、背後空気層を設けずに、被着体に貼りつけるだけで吸音し装飾性も有するシートである。
【0004】
このような、微小な穴を有するフィルムを利用した吸音材や装飾シートは、穴を有すること、ポリマーフィルムの背後に空隙や繊維状材料が隣接していること、あるいは装飾フィルム層に弾力性のある不燃性連続発泡体層が積層されていることにより、表面の強度が十分でないことがある。そのため、建築物や車両内部の壁面、天井、または床等の表皮材として使用されると、表面に傷やへこみができたり、表面のフィルムが破断したりすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002−521722号公報
【特許文献2】特開2010−196421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
装飾性、吸音性を有し、さらに建材としての不燃性と、表面強度を有する吸音材及び吸音材に用いる装飾シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、反射面を含む構造体に取り付けられる吸音材であって、該吸音材が、フィルム層と接着剤層とが積層され、直径20〜500μmで数密度が2〜700個/cm2の微小な穴を有する装飾フィルム層、及びガラスクロス層を含む装飾シートであって、前記装飾シートと前記構造体の表面によってそれらの間に背後空気層が規定されるように前記構造体の表面の近傍に配置される装飾シートを含む吸音材を提供するものである。
【0008】
また本発明は、フィルム層と接着剤層とが積層され、直径20〜500μmで数密度が2〜700個/cm2の微小な穴を有する装飾フィルム層、及びガラスクロス層を含み、反射面を含む構造体に取り付けられる吸音材に使用される装飾シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、装飾性、吸音性を有し、さらに建材としての不燃性と、表面強度を有する吸音材及び吸音材に用いる装飾シートを提供することが可能となる。かかる吸音材及び装飾シートは、ガラスクロス層を有するので、外部から衝撃を受けた際の吸音材表面、あるいは装飾シート表面の破損や傷を防ぐことができる。また、装飾シートの剛性も向上するため取り扱い性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の吸音材の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の装飾シートの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の吸音材の吸音特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の吸音材は、反射面(表面)を含む構造体に取り付けられ、装飾フィルム層及びガラスクロス層からなる装飾シートを含む。構造体の反射面とは、構造体の表面のうち装飾シートに対向する表面をいう。
【0012】
そして装飾シートは、装飾シートと構造体との間に背後空気層が規定されるように、構造体の表面の近傍に配置される。
【0013】
装飾フィルム層は、フィルム層に接着剤層を積層してなり、そのいずれか一方または両方の面に従来公知のインクを用いてグラビア印刷法やオフセット印刷法等により模様が施されていてもよい。あるいはカラーフィルムを用いることもできる。
【0014】
また、フィルム層は、単一の層でも、二層以上の層でもよく、二層以上の場合は、各層の間に接着剤層やプライマー層あるいはその他の機能を有する層を含んでも良い。
【0015】
フィルム層としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、またはポリオレフィン系樹脂等の各種合成樹脂よりなるフィルムを用いることができる。
【0016】
このうち、フィルム層として単一の層を用いる場合は、ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムを好ましいものとして挙げることができる。
【0017】
また、フィルム層が二層以上の場合は、例えば、塩化ビニル系樹脂からなるフィルム層に、さらにフッ素系樹脂やアクリル系樹脂からなる透明の表面保護層を積層することもできる。そしてこの場合、表面保護層のフィルム層側の面に従来公知の印刷法により模様などを施すことができる。
【0018】
フィルム層の厚さは特に限定されないが、例えば約0.01〜約0.5mmとすることができる。
【0019】
接着剤層は、フィルム層とガラスクロス層とを接着するものである。
かかる接着剤層としては、これら二層を接着することができる従来公知の感圧性接着剤や感熱性接着剤を用いることができる。例えば、感圧性接着剤としては、粘着性ポリマーを含有する単層フィルム状の感圧接着フィルムや、2つの感圧接着層を有する両面接着シートを使用することができる。
【0020】
接着剤層は、例えば、剥離紙の剥離面の上に塗膜化した粘着剤層を有する剥離紙付き粘着剤層を別途用意し、この粘着剤層とフィルム層とをドライラミネートすることによって製造することができる。あるいは、フィルム層に直接粘着性ポリマー等の接着剤を塗布・乾燥して接着剤層とすることができる。
【0021】
接着剤層の厚さは特に限定されないが、例えば、約0.01〜約0.2mmとすることができる。
【0022】
装飾フィルム層は、微小な穴を有する。微小な穴は、直径が20〜500μmで、かつ数密度が2〜700個/cmである。かかる範囲において、装飾性を維持しつつ所望の吸音性を得ることができる。
【0023】
微小な穴の直径は、装飾フィルム層の表面、すなわち接着剤層とは反対側の面における微小な穴の直径を示す。かかる直径は、40〜350μmであることがより好ましく、50〜250μmであることがさらに好ましい。
【0024】
数密度は、単位面積当たりの微小な穴の数を示す。かかる数密度は、4〜625個/cmであることがより好ましく、10〜200個/cmであることがさらに好ましい。
【0025】
上述の直径と数密度の好適な範囲は、それぞれ適宜組み合わせて用いることができる。
【0026】
装飾フィルム層は、上述のようにしてフィルム層と接着剤層とを積層した後、例えば、レーザーを用いて、あるいは針やドリル等により微小な穴を施すことにより得られる。あるいは、市販の内装用装飾シートや粘着剤付きのグラフィックフィルムに上述のようにして微小な穴を設けたものを用いることができる。
【0027】
レーザーは、従来公知の装置を用いて照射することができるが、例えば、堀内電機社製炭酸ガスレーザー照射機(LSS−S050VAH−W)あるいは、住友重機械工業メカトロニクス社製炭酸ガスレーザー照射機(LUMONICS IMPACT2500「LAVIA1000TW」)を使用することができる。
【0028】
後者の照射機を用いる場合、レーザー照射装置の仕様を、波長9.3μm、レーザー照射機の平均最大出力65W、ガルバノシステム×2ヘッド、加工条件を、出力1〜1.6Wとすることができる。
【0029】
ガラスクロス層は、本発明の吸音材に不燃性を付与すると同時に、装飾シートの表面強度の向上に寄与する。そのため、外部から衝撃を受けた際に、吸音材表面や装飾シート表面の破損や傷を防ぐことができる。また、装飾シートの剛性の向上にも寄与するので、吸音材及び装飾シートの取り扱い性も向上する。
【0030】
ガラスクロス層には、公知のガラスクロスを使用することができる。ガラスクロス層の厚みや目付は、装飾シートに通気性と十分な表面強度を付与することができる範囲で適宜選択することができ限定されない。例えば、ガラスクロス層の厚みは、約10μm以上、約30μm以上、または約50μm以上、約300μm以下、約200μm以下、または約100μm以下とすることができ、目付は、約10g/cm以上または約30g/cm以上、約350g/cm以下または約200g/cm以下とすることができる。
【0031】
このようなガラスクロスとして、具体的には例えば、ユニチカ社製のH105を挙げることができる。
【0032】
装飾シートは、当該シートをスペーサー等に接着するために、ガラスクロス層のフィルム層とは反対側の面(構造体側の面)に接着剤層を有してもよい。かかる接着剤層は、フィルム層とガラスクロス層の接着剤層と同様の接着剤を用い、同様の方法により、同程度の厚さのものを得ることができる。かかる接着剤層に、さらにライナー(剥離紙)を備えることができる。このようなライナーは、粘着テープなどの分野で一般的に使用されているものでよく、特定の部材に限定されるものではない。本発明で使用するのに好適なライナーとしては、例えば、紙、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、または酢酸セルロース等のプラスチック材料、あるいはこのようなプラスチック材料で被覆又はそれを積層された紙やその他の材料などである。これらのライナーは、そのまま使用してもよいが、シリコーン処理あるいはその他の方法で処理して剥離特性を向上させた後に使用するのが好ましい。また、ライナーの厚さは特に限定されないが、通常約0.025〜約0.5mm、あるいは約0.05〜約0.2mm程度とすることができる。
【0033】
装飾シートは、微小な穴を有する装飾フィルム層の接着剤層に、所望の厚さのガラスクロス層を貼り付けて作成することができる。あるいは、ライナー上に粘着性ポリマー溶液を塗布、乾燥することにより得られる接着剤層とガラスクロス層とを貼り合わせることによっても得ることができる。
【0034】
装飾シートの全体の厚さ(「総厚」ということがある。)は、シートの使用態様により適宜選択することができ特に限定されない。「総厚」とは、フィルム層、接着剤層、及びガラスクロス層の厚さの合計を示す。
【0035】
総厚は、本発明の効果が得られる範囲であれば良く特に限定されないが、例えば、約0.1mm以上、約0.2mm以上、約1mm以下、約0.5mm以下することができる。
【0036】
装飾シートは、さらにプライマー層等、機能を有する層を含んでも良い。
【0037】
吸音材は、反射面を含む構造体に装飾シートを取り付けたものである。装飾シートは、構造体の反射面と装飾シートのガラスクロス層が対向し、これらの間に背後空気層(空隙)が規定されるように構成される。
【0038】
構造体は、装飾シートを取り付ける被着体の一部であることができる。例えば、一般家屋、集合住宅、ビルその他の建築物の壁面、天井面、床面、またはパーティションなどである。
【0039】
構造体は、板状の金属、石膏等からなる基材でもよく、その場合は装飾シートを基材に取り付けた吸音材を壁面、天井面、床面、またはパーティション等に取り付けて使用するか、あるいはかかる吸音材により、壁、天井、床、またはパーティション等を構成してもよい。
【0040】
背後空気層は、構造体と装飾シートの間に、例えばスペーサー等を設けて所望の距離を保つように固定することにより規定することができる。このとき、構造体と装飾シートとが、いずれの場所においても常に一定の距離を保つ必要はない。例えば、構造体が凹凸や立体形状を有する場合は、場所によって構造体の表面と装飾シートとの距離が異なるように、スペーサーにより構造体と装飾シートとを固定することにより、装飾シートの外側表面が平坦になるようにすることができる。スペーサーとしては、例えばグリッド、メッシュ、格子、または枠組みなどの構造体を使用することができる。
【0041】
吸音材は、従来公知の方法により得られる。例えば、装飾シートを壁面等の構造体に取り付けた吸音材の場合は、装飾シートとスペーサーとを接着等により固定し、さらにスペーサーを壁面等の表面に接着等により固定することにより得られる。あるいは、装飾シートを基材に取り付けた吸音材の場合は、装飾シートとスペーサーとを接着等により固定し、これを板状の金属や石膏ボード等の基材に接着等の方法で取り付けて得られる。この場合、かかる吸音材をつなぎ合わせて壁面等を構成することができる。
【0042】
背後空気層を有することにより、吸音材の吸音率を向上することができ、また背後空気層の厚さを変えることにより、吸音材の吸音特性を調整することが可能である。背後空気層の厚さは、構造体の表面と装飾シートの内側表面(構造体側の面)との間の距離をいい、所望の吸音特性に応じて適宜調整することが可能である。具体的には例えば、約2mm以上、約5mm以上、約8mm以上、約10mm以上、約50mm以下、約30mm以下、約20mm以下とすることができる。
【0043】
装飾シートは、ガラスクロス層を有するので、装飾シートの外側表面すなわち吸音材の表面に強度を持たせることができる。そのため、吸音材において装飾シートと構造体との間に背後空気層を有しても、吸音材表面の剛性を失うことなく、外部から衝撃を受けた際にも表面の破損や傷を防ぐことができる。
【実施例】
【0044】
装飾シートサンプルの作成
サンプル1
ポリ塩化ビニル製フィルムとアクリル系粘着剤を積層した装飾フィルム(住友スリーエム社製ダイノックTMフィルムFW−888、厚さ約200μm)に、堀内電機社製炭酸ガスレーザー照射機(LSS−S050VAH−W)により、出力6Wのレーザーを照射して、直径約350μmの微小な穴を、ピッチが2mmとなるように施した(数密度25個/cm2)。得られた微小な穴を有するダイノックフィルムからライナーを剥がし、これを厚さ100μmのガラスクロスシート(ユニチカ社製、商品名H105)に貼り付けてサンプル1を作成した。
【0045】
サンプル2
ポリ塩化ビニル製フィルムとアクリル系粘着剤を積層した装飾フィルム(住友スリーエム社製ダイノックTMフィルムFW−888、厚さ約200μm)に、堀内電機社製炭酸ガスレーザー照射機(LSS−S050VAH−W)により、出力6Wのレーザーを照射して、サンプル1と同様の微小な穴を施した。得られた微小な穴を有するダイノックフィルムからライナーを剥がし、これを厚さ3mmの軟質ウレタン樹脂層(ブリヂストン化成社製、VHZ)に貼り付けた。ライナーに、アクリル系粘着剤(ブチルアクリレート:アクリル酸=90:10、質量比、固形分32%)を乾燥後の厚さが40μmになるようにナイフコートにより塗布して粘着剤層を作成して軟質ウレタン樹脂層に積層してサンプル2を作成した。
【0046】
発熱性試験
財団法人日本建築総合試験所作成の防耐火性能試験・評価業務方法書(平成22年6月1日変更版)4.10.2に基づき試験を実施し、発熱量及び発熱速度(200kW/m超過時間)を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
吸音率の測定
ASTM E1050に従い、垂直入射吸音測定機を用いて測定した。サンプル径は29mmとなるようにした。結果を図3に示す。図3中の各Sampleにおいて使用したサンプル(上記サンプル1または2)と、背後空気層は次のとおりである。
Sample1−1:サンプル1、背後空気層3mm
Sample1−2:サンプル1、背後空気層4mm
Sample1−3:サンプル1、背後空気層8mm
Sample1−4:サンプル1、背後空気層13mm
Sample2:サンプル2、背後空気層なし
Sample3:サンプル1、背後空気層なし
【0048】
引裂強度(tear strength)の測定
サンプル1とサンプル2について、JIS L 1096Cに基づき引裂き強度を測定した。引張速度は15cm/分、つかみ間隔は2.5cmとし、フィルムのウエブの流れ方向(MD:Machine Direction)と、ウエブの流れ方向に垂直な方向(CD:Cross machine Direction)について測定した。結果を表2に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【符号の説明】
【0051】
1 吸音材
2 装飾シート
10 フィルム層
11 接着剤層
12 ガラスクロス層
13 微小な穴
14 装飾フィルム層
15 背後空気層
16 反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を含む構造体に取り付けられる吸音材であって、該吸音材が、
フィルム層と接着剤層とが積層され、直径20〜500μmで数密度が2〜700個/cm2の微小な穴を有する装飾フィルム層、及びガラスクロス層を含む装飾シートであって、
前記装飾シートと前記構造体の表面によってそれらの間に背後空気層が規定されるように前記構造体の表面の近傍に配置される装飾シートを含む吸音材。
【請求項2】
前記ガラスクロス層の厚さが、10μm以上300μm以下である請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記背後空気層の厚さが、2mm以上50mm以下である請求項1または2に記載の吸音材。
【請求項4】
フィルム層と接着剤層とが積層され、直径20〜500μmで数密度が2〜700個/cm2の微小な穴を有する装飾フィルム層、及びガラスクロス層を含み、反射面を含む構造体に取り付けられる吸音材に使用される装飾シート。
【請求項5】
前記ガラスクロス層の厚さが、10μm以上300μm以下である請求項4に記載の装飾シート。
【請求項6】
前記背後空気層の厚さが、2mm以上50mm以下である請求項4または5に記載の装飾シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−44983(P2013−44983A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183356(P2011−183356)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】