吸音構造板
【課題】発泡ウレタンシートや不織布、織布等の多孔質シート状物を貼り合わせなくても、軽量で、強度、剛性、耐熱性、耐水性に優れ、且つ適度な厚みでもって吸音性の高い吸音構造板を提供する。
【解決手段】二枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部同士を突き合わせた状態で溶着してなる芯材の表裏に、非通気性シートを貼り合わせることにより構成される中空構造板からなり、この中空構造板の表裏両面のうち少なくとも一方の面の中空凸部間に開口する小孔を形成してなる吸音構造板である。
【解決手段】二枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部同士を突き合わせた状態で溶着してなる芯材の表裏に、非通気性シートを貼り合わせることにより構成される中空構造板からなり、この中空構造板の表裏両面のうち少なくとも一方の面の中空凸部間に開口する小孔を形成してなる吸音構造板である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音構造板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フルート型プラスチックダンボール(商品名:ダンプレート、宇部日東化成社製)、コルゲート型プラスチックダンボール、円柱状独立空気室を形成したプラスチック構造板(商品名:プラパール、川上産業社製)等のプラスチック製中空構造板は、軽量且つ耐水性、耐熱性、耐薬品性その他の諸物性に優れ、建材用パネル、コンテナ、各種箱、家屋、ビル、オフィス、乗物等の内装材等、種々の用途に使用されている(ハニカム構造板として、例えば特開2000−326430を参照)。
【0003】
このうち、円柱状の独立空気室(以下中空凸部と称する)を形成した中空構造板は、コルゲート式プラスチックダンボールや、フルート式プラスチックダンボールに比べて縦横の強度差が無いものとして知られている。
【0004】
この構造板は熱可塑性樹脂シートを減圧成形することによって得られるが、この構造において、中空凸部の高さを高くして厚みを増そうとした場合、中空凸部を構成する壁部がフィルム化し、強度を維持できなくなるといった課題がある。この課題を解決するため、樹脂シートの肉厚を増すと、当然重量がかさみ、軽量性が損なわれる。そこで、本発明の従来技術として、特開2000−326430号公報に示す技術が開発された。
【0005】
この技術では、一対の樹脂シートにそれぞれ複数の中空凸部を突設するとともに、この中空凸部同士を突合わせて溶着することで、中空構造板としたものであり、二枚あわせにより、強度を維持したまま従来の厚みより二倍の厚みとすることができ、中空凸部形成と貼合わせ加工後、連続して両樹脂シートの両面に化粧板などをラミネートすることで、軽量中空構造の板材製品を得ることができる。
【0006】
この構造における製造方法として、同公報には、外周部に多数のピンを突出した一対のエンボスローラの間にTダイから押出された二枚の樹脂シートを供給し、ローラ内部を減圧吸引することで、両樹脂シートをピン形状に減圧成形するとともに、ローラの回転に伴いピン同士が接することで中空凸部の端面同士を一体的に熱融着し、この状態で引取りローラで引取ることで、一体化された中空構造板を得られるとされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような中空構造板は、吸音性が非常に乏しく、吸音性を向上させるためには発泡ウレタンシート、不織布、織布等といった多孔質のシート状物等を貼り合わせる必要があった。また、一般的な吸音材料は、その吸音性能が厚みに大きく依存するため、例えば前述の多孔質シート状物の厚みが薄くなればなるほど、特に低・中周波数域における吸音性が乏しくなる。或いは、天井材、壁材等の家屋の内装材として適用されているロックウール、石膏ボード等は軽量で、且つ吸音性能、断熱性能に優れているが、剛性や耐水性能が低いという課題があった。
【0008】
本発明は、発泡ウレタンシートや不織布、織布等の多孔質シート状物を貼り合わせなくても、軽量で、強度、剛性、耐熱性、耐水性に優れ、且つ適度な厚みでもって吸音性の高い吸音構造板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る吸音構造板は、二枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部同士を突き合わせた状態で溶着してなる芯材の表裏に、非通気性シートを貼り合わせることにより構成される積層中空構造板からなり、この積層中空構造板の表裏両面のうち少なくとも一方の面の中空凸部間、換言すれば中空凸部(シート形成後の外観上は凹部)を形成しないライナー部に開口する小孔を形成してなることを特徴とするものである。
【0010】
この発明に係る吸音構造板にあっては、中空構造板の小孔形成面に発泡ウレタンシート、不織布、織布等の多孔質シート状物等の吸音材を貼り合わせたり、前記中空構造板の目付を700〜3000g/m2とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本発明に係る吸音構造板を構成する中空構造板は、図1に示されるように、二枚の熱可塑性樹脂シート110,110Aに突設(エンボス形成)された複数の中空凸部112,112の端面同士を突き合わせた状態で溶着してなり、中空凸部112,112は、円錐台形状をなし、中空凸部112,112の周面に占める下底総面積の割合が0.3から0.9の範囲内であって、かつ、中空凸部112,112の中心軸を含む鉛直面における中空凸部112,112側面の立ち上げ角度が50度から70度の範囲内であることを特徴とするものである。なお、このような中空構造板は、その表裏両面ライナー部(熱可塑性樹脂シート110,110Aにおける中空凸部112,112の間の部分)114,114に熱可塑性樹脂シートからなる非通気性シート(図示しない)を貼り合わせることにより構成することもできる。
【0013】
本発明に用いられる樹脂シート3としては、ポリオレフィン系樹脂シート、特にポリプロピレンシートが好適であるが、他の熱可塑性樹脂素材一般に適用でき、その素材の融点や、軟化点、ガラス転移温度などの各種温度特性や物性に応じて装置各部の設定を変えればよい。
【0014】
−中空構造板実施例1−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径8mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔(立ち上げ部11gの間隔)を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板上に、溶解状態の厚み0.5mm、目付500g/m2のホモプロピレンシート(融点165℃、軟化点120℃)を載せ、オフラインにて真空成形を行った。得られた二枚のエンボスシートを超音波融着機を用いてピン同士を接着させた。これを芯材とし、この表裏に厚み0.25mm、目付250g/m2のホモプロピレンシートを面材として貼り合わせた。こうして、厚み10.5mm、目付1500g/m2の中空構造板を得た後、JIS K7203に準拠して曲げ試験を行った。なお、曲げ弾性勾配については、上記曲げ測定により得られた荷重−たわみ曲線の直線部分から1cm撓んだ時の荷重を求め、その曲げ弾性勾配とした。
【0015】
−中空構造板実施例2−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径6mmと、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0016】
−中空構造板実施例3−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径6mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を4mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0017】
−中空構造板実施例4−
上底11dの直径を4mm、下底11eの直径8mmと、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0018】
−中空構造板実施例5−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径10mmと、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0019】
−中空構造板実施例6−
ピンに段差をつけた形状とする。上底11d、中段の内側、中段の外側、下底11eの直径を順に1.5mm、3mm、5mm、6mmとし、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0020】
−中空構造板比較例1−
上底11dの直径を4mm、下底11eの直径6mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を4mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0021】
−中空構造板比較例2−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径4mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を4mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0022】
−中空構造板比較例3−
上底11dの直径を6mm、下底11eの直径8mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を4mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0023】
−中空構造板比較例4−
上底11dの直径を4mm、下底11eの直径6mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で成形したところ、ウェビングが発生し、良好な中空構造板を得られなかった。
【0024】
−中空構造板比較例5−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径12mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0025】
−試験結果−
以上の実施例、比較例による曲げ試験の結果は、表1に示した通りである。
表1
*1;エンボスシート(片面)総面積を1とした場合
*2;段差のついたピン
【0026】
以上の結果より、上記実施例は、比較例と対比して明らかなように、本発明の効果を奏することは明らかである。
【0027】
図2(a)〜(d)は、上記中空構造板を本発明に係る吸音構造板として用いた好適な実施の形態を示している。同図に示される吸音構造板は、二枚の熱可塑性樹脂シート110,110Aに突設(エンボス形成)された複数の中空凸部(ピンないしはエンボスピンと称することもある)112,112の端面同士を突き合わせた状態で溶着してなる芯材120の表裏両面ライナー部(熱可塑性樹脂シート110,110Aにおける中空凸部112,112の間の部分)114,114に熱可塑性樹脂シートからなる非通気性シート130,130Aを貼り合わせることにより構成される中空構造板140と、中空構造板140の表裏両面のうち少なくともいずれかの面に貼り合わされた多孔質材料からなる吸音材150とを備え、中空構造板140内の閉空間142,142に開口する小孔114a,130aを、吸音材150が貼り合わされた側に位置する熱可塑性樹脂シート110のライナー部114及び非通気性シート130の該ライナー部114と整合する位置のみに形成してなっている。
【0028】
本実施の形態によれば、吸音材150により比較的高い周波数帯域の騒音を吸音することができるとともに、小孔130a,小孔114aを通じて開口する中空構造板140の中空部(空気層)の共鳴吸音効果を得ることにより比較的低い周波数帯域の騒音を吸音することができ、互いの効果を打ち消すことなく可聴域全般に渡り高い吸音性を有する吸音構造板が得られる。
【0029】
しかも、熱可塑性樹脂シート110,110Aが主体であるので軽量でありながら、中空凸部112,112の端面同士を突き合わせた状態で溶着しているので、高強度、高剛性である。
【0030】
ここで、前記芯材120の原料となる熱可塑性樹脂は、特に制限されるものではないが、コスト、成形性、物性、その他諸特性とのバランスを考慮すると、ポリプロピレンが好適である。また、この芯材の両面に貼合させる非通気性シートの原材料も、特に制限されるものではないが、コスト、成形性、物性、その他諸特性とのバランスを考慮すると、ポリプロピレンが好適である。また、これらの原材料にマイカ、タルク等のフィラーや、難燃性を付与するための難燃剤等、改質剤を添加してもよいことは勿論である。ポリプロピレンを採用することにより、リサイクル性にも優れた吸音構造板とすることができる。
【0031】
また、中空構造板140の目付は、700〜3000g/m2程度が好ましい。目付が小さすぎると、中空凸部112,112の厚が薄くなりすぎてフィルム化し易くなり、十分な強度、剛性等が得られなくなる。一方、目付が大きすぎると、軽量化を損なうことになる。また、厚みに関しては、使用目的に応じて、例えば6〜15mm程度とすることが好ましい。なお、中空構造板140を構成する熱可塑性樹脂シート110,110Aの中空凸部112,112は、同図では、中空円錐状となっているが、中空円筒状であってもよい。
【0032】
小孔114a,130aは、図2(c)に示されるように、必ずしもすべての中空凸部112間に配設されることなく、適宜のピッチで配設されている。また、孔径はφ0.3〜7.0mmが好ましい。0.3mmより小さいと加工が困難であり、7.0mmを超えると加工が困難であるばかりか、孔あけ時に中空凸部112の脚部を破壊してしまうため、剛性が低下する。より好ましくは、φ0.5〜4.0mmとするのがよい。さらに、孔数並びに小孔の総面積は特に制限されない。孔径を上述した範囲内で適宜選択し、それぞれの用途により特に吸音したい周波数に応じて調整することができる。小孔の形成は、ドリル、針、パンチング等、加工性に優れた方法を適宜選択すればよい。
【0033】
図2では、小孔114a,130aは、吸音材が貼り合わされた側(同図中で上側)に位置する熱可塑性樹脂シート110のライナー部114及びこれと整合する非通気性シート130のみに形成されているが、熱可塑性樹脂シート110の中空凸部112の端面及び周面に形成することができる。また、小孔114a、130aは、吸音材が貼り合わされていない側(同図中で下側)に位置する熱可塑性樹脂シート110Aのライナー部114及びこれと整合する非通気性シート130Aにも形成することもできる。この場合、小孔114a,130aの位置は、中空構造板140の表裏両面において整合していてもよいし、整合していなくてもよい。また、本発明におけるすべての小孔114a,130aについて、その孔径、ピッチが等しくなくてもよいし、その配設方法が規則的であっても不規則であってもよい。
【0034】
本実施の形態では、中空構造板140の片面(熱可塑性樹脂シート110のライナー部114に小孔114aが形成されている側)のみに吸音材150が貼り合わされて積層中空構造板を構成しているが、中空構造板140の他の面にも吸音材150を貼り合わせてもよい。吸音材150は、例えば連続気泡を有するスポンジ体等の発泡体であり、不織布等の多孔質材料を貼合することで更に吸音効果を高めることができる。
【0035】
=実施例1=
中空凸部(エンボスピン)上底の直径を2mm、下底の直径を6mm、高さ5.5mmとし、ピン間隔2mmで千鳥格子状に配置させた縦1000mm、横1000mmの真空成形板上に、溶融状態の厚み0.5mm、目付500g/m2のホモポリプロピレンシート(融点165℃、軟化点120℃)を載せ、オフラインにて真空成形を行った。得られた二枚のエンボスシートの凸部先端同士を熱融着させ、これを芯材とし、この表裏に厚み0.25mm、目付250g/m2のホモポリプロピレンシートを面材として貼り合わせた。こうして、総厚み11.5mm、目付1500g/m2の中空構造板を得た後、この中空構造板の一方のライナー部に等ピッチでφ1.0の小孔を開孔率0.36%となるように孔あけ加工した。この一辺1m角の孔あき中空構造板を小型残響室(日東紡音響エンジニアリング製)にて吸音率を測定した。
【0036】
=実施例2=
実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、この中空構造板の一方のライナー部に等ピッチでφ2.5mmの孔を開孔率0.36%となるように孔あけ加工した。この孔あき中空構造板を小型残響室にて吸音率を測定した。
【0037】
=実施例3=
実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、この中空構造板の一方のライナー部に等ピッチでφ4.0mmの孔を開孔率0.36%となるように孔あけ加工した。この孔あき中空構造板を小型残響室にて吸音率を測定した。
【0038】
=実施例4=
実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、この中空構造板の一方のライナー部に等ピッチでφ2.5mmの孔を開孔率0.19%となるように孔あけ加工した。この孔あき中空構造板を小型残響室にて吸音率を測定した。
【0039】
=実施例5=
実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、この中空構造板の一方のライナー部に等ピッチでφ2.5mmの孔を開孔率0.66%となるように孔あけ加工した。この孔あき中空構造板を小型残響室にて吸音率を測定した。
【0040】
=実施例6=
実施例1と同様の方法で孔あき中空構造板を得た後、この中空構造板の孔あき面に、吸音材として厚み6mmの軟質ウレタン発泡体を接着した積層中空構造板を作製し、小型残響室にて吸音率を測定した。(t=1→厚1mm)
=実施例7=
実施例2と同様の方法で孔あき中空構造板を得た後、この中空構造板の孔あき面に、吸音材として厚み6mmの通気性表皮材と軟質ウレタン発泡体(t=5)を接着した積層中空構造板を作製し、小型残響室にて吸音率を測定した。
【0041】
=比較例1=
実施例1と同様の方法で中空構造板を作製し、小型残響室にて吸音率を測定した。
【0042】
=比較例2=
厚み6mmの軟質ウレタン発泡体について、小型残響室にて吸音率を測定した。
【0043】
=比較例3=
実施例1と同様の方法で中空構造板を得、孔を開けなかった以外は実施例6と同じ条件で発泡材からなる吸音材を貼り合わせて積層中空構造板を作製し、残響室法にて吸音率を測定した。比較例3の各周波数における吸音率を表2に示す。
【0044】
以上の実施例1〜7,及び比較例1〜3における残響室法吸音率測定結果を、表2に示し、曲げ弾性勾配を表3に示す。
【0045】
表2 残響室法吸音率測定結果
表3
【0046】
また、図3〜6は、実施例1〜7,比較例1〜3における、周波数と残響室法吸音率との相関図である。表2,3及び図3〜6から、次のことが分かる。
【0047】
実施例1〜5では、比較的低い周波数帯域の騒音を吸音することができることが分かった。また、小孔の大きさ、開孔率等を変更することにより、固有振動数を変えることができ、吸音材料として使用する際の設計の自由度が大きいことが実証できた。
【0048】
ところで、連続気泡を有する発泡体、不織布等の多孔質材料は、厚みが厚ければ厚いほど、吸音性能は高まるが、厚みに制約がある場合、特に低・中周波域の吸音性能が低下する。そこで、実施例6,7のように、中空構造板の孔あき面に吸音材として比較的厚みの薄い多孔質シートを貼合して積層中空構造板とすることにより、お互いの長所を補うことによって、幅広い周波数帯域に渡り吸音性能が高まることも実証できた。
【0049】
また、中空構造板に孔を開けずに、表皮材、発泡体を貼り合わせて作製した、比較例3として示す積層中空構造板の吸音率は、比較例2の軟質ウレタン発泡体とほとんど同じであることも分かった。
【0050】
さらに、表3から、本実施例に係る吸音板の曲げ弾性勾配が大きく、相対的に高い剛性を示すことも分かった。
【0051】
以上の説明により明らかなように、本発明に係る吸音構造板によれば、重量増を少なくすることができるとともに、剛性を低下することなく、吸音性を付与することができ、また、他の吸音材と組み合わせることにより、任意の周波数帯域の吸音特性を付与することができ、さらに材料を選択することによりリサイクルしやすいものとすることができ、その結果、建造物、乗り物等の吸音性内材装材料として好適に使用することができる。
【0052】
以上説明した本発明に係る吸音構造板は、以下に説明する製造装置を用いて、以下に説明する製造方法によって製造することが好ましい。
【0053】
図7は、本製造装置の全体構成を示すものである。図において、平行な一対の押出し機1の先端にはそれぞれTダイ2が設けられ、このTダイ2から押出された熱可塑性樹脂シート3は凸部成形と貼り合わせを兼用した成形装置ないしは製造装置(以下、製造装置と称するが、いずれも同義である)4により各樹脂シート3の凸部成形と貼り合わせがなされ、その後ラミネート装置5によりその上下面に連続して表皮材6がラミネートされた状態で引取り機7により所定速度で引取られ、次いで図示しない切断機により順次定寸カットされることにより、製品として完成する。
【0054】
以上のうち、要部である製造装置4は、図8〜10に示すように、上下に半分割状に形成された一対の減圧チャンバ10と、各減圧チャンバ10内に軸受支持され、その周面を減圧チャンバ10の接合位置に開口した開口部10a側に向けたエンボスローラ11と、開口部10aの上下内側に配置され、前記エンボスローラ11の周面における接線、すなわち接触点(以下、接触点とする)方向に向けて傾斜状としたシート導入部プレート12と、減圧チャンバ10の両側部内側に回転可能に支持された複数の耳部ローラ15と、耳部ローラ15に僅かな隙間をあけて対向配列され、かつ各エンボスローラ11の両側に配置されて減圧チャンバ10内においてエンボスローラ15の両側を準封止する一対の耳部ローラ受兼準封止部材14と、エンボスローラ12の背面における接触点方向に向けて水平配置され、減圧チャンバ10の後部側開口部10bに向けて連続する後部プレート16及び、前記導入部プレート12の間に配置された断面三角形状の加熱用ヒータ17とを備えている。
【0055】
各減圧チャンバ10の上下には減圧用吸引口10cが開口されている。この減圧用吸引口10cは、図示しないホースを介して同じく図示しない真空ポンプに接続され、減圧チャンバ10の内部を減圧吸引することによって、開口部10aに向けて供給される両樹脂シート3の間が大気圧、エンボスローラ11側の面が減圧状態となり、その差圧により、両樹脂シート3は両エンボスローラ11の表面に吸引され、その表面に貼付くようになっている。
【0056】
両エンボスローラ11は、図11に示すように、鋼製ないしはアルミダイキャスト製等の金属製のローラ11aの表面に多数のピン11bを縦横規則正しく突設したものである。また、ローラ11aの軸部11cは両減圧チャンバ10の外側面にあって、互いに逆向きであって樹脂シート3の移送方向に向けて回転すべくギアまたはタイミングプーリなどにより連繋しているとともに、一方の軸部11cは、図示しないモータにより回転駆動される。このモータは前記引取り機7の引取り速度に同期した速度で各エンボスローラ11を回転駆動する。
【0057】
また、エンボスローラ11は、樹脂シート3とエンボスローラ11との間に空気溜まりが生じることを防止するため、ローラ11aの谷部(ピン11b以外の平坦部分)に、例えば直径が2mm程度(1〜5mmが好ましい)の孔(図示しない)が形成されている。この孔は、減圧チャンバ10内に開放連通している。これにより、減圧チャンバ10内とエンボスローラ11内部の減圧度に差がなく、樹脂シート3を均等にエンボスローラ11に吸引することができる。従って、エンボスローラ11は、内部を中空のものとすることができる。なお、孔は、ピン11bを1.5〜2本ごとに1つの割合で設けることができ、例えばピン11bで形成される谷部のうちすべてに設けることもできるし、複数の谷部について1つの割合で設けることもできる。
【0058】
さらに、上下のエンボスローラ11の接触点位置で、ピン11b同士は互いに樹脂シート3を介して一列に接触し、この位置で樹脂シート3同士を圧接することで熱融着を可能としている。
【0059】
前記導入部プレート12は、開口部10aと此処より導入される樹脂シート6との間の隙間を最小とし、減圧チャンバ10の内部の減圧を保つ機能を有している。
【0060】
前記各耳部ローラ受兼準封止部材14は、樹脂シート3の幅方向両側部を耳部ローラ15との間に挟みつつその回転により樹脂シート3をエンボスローラ11に押し付けた状態を維持したまま後送する機能を有する。
【0061】
加熱用ヒータ17は、両樹脂シート3の対向面を溶融押出された温度より高い温度に加熱することによってさらに昇温させ、前記エンボスローラ11による熱融着を確実に行うためのものである。
【0062】
以上において、Tダイ2から押出された半溶融状態の樹脂シート3は、製造装置4内において、それぞれ上下面を減圧吸引されつつ上下のエンボスローラ11に接し、これに吸着される結果、ピン11bの形状に応じて多数の中空凸部3aが形成される。そして、エンボスローラ11の接触点位置で、互いのピン11a同士が樹脂シート3を挟んで接する結果、中空凸部3aの端面同士はこの接触による熱圧により熱融着される。つまり、この位置においては、両樹脂シート3の接触面はエンボスローラ11に熱を奪われて冷却固化される一方で、反対面は前記加熱用ヒータ17によって加熱され、溶融状態であるため、熱融着が容易に行われることになる。
【0063】
融着後は同一理由によりピン11bから容易に脱型され、後部プレート16にガイドされてさらに冷却されつつ、減圧チャンバの後部開口部10bより外部に導出される。
【0064】
以上の成形に用いられる樹脂シート3としては、ポリオレフィン系樹脂シート、特にポリプロピレンシートが好適であるが、他の熱可塑性樹脂素材一般に適用でき、その素材の融点や、軟化点、ガラス転移温度などの各種温度特性や物性に応じて装置各部の設定を変えればよい。
【0065】
一例としてホモポリプロピレン(融点165℃、軟化点120℃)を押出し成形材料として選択した場合には、押出し後の表面温度は、前部開口部10aの付近で150〜200℃程度の設定温度とすることが好ましく、この設定温度を下回ると変形しにくく、減圧成形が困難となる。逆に設定温度の上限を上回った場合には、軟化して供給時における樹脂シート3の保形性が低下するため、以上の範囲に設定する。
【0066】
ヒータ温度は280℃〜320℃に加熱しておくことが好ましく、加熱用ヒータ17は両樹脂シート3に対して0.1mm〜2mm離す、好ましくは0.3〜1.2mm離しておくことにより、スタックを未然に防止できる。
【0067】
前記減圧チャンバ10内の減圧度は300〜2000mmH2O、好ましくは400〜600mmH2Oの範囲で減圧成形を容易に行うことができる。
【0068】
また、プレート12、16とエンボスローラ11の隙間は、減圧を保つためできるだけ小さい方がよく、1mm以下、好ましくは0.2mm程度に設定すればよい。ただし、この数値はプレート12,16のエンボスローラ11に対する接触を防ぐとともに、できるだけ減圧度を確保する目的で設定されているから、機械精度に応じてさらに隙間を小さくすることも可能である。
【0069】
エンボスローラ11の各ピン11bは、図示のごとく円錐台形状であり、実際の寸法としては、上底と下底の寸法差が2mm、ピン径5〜10mm、高さ3〜6mm、ピンピッチは10〜15mmが好ましく、これに応じて成形完了後の中空構造体の厚みは6〜12mm、重量は500〜2,000g/m2、平面圧縮強度0.5〜1.5MPa、曲げ破壊荷重30〜100N、曲げ弾性勾配80〜200N/cmと、その厚み、重量の割には高強度の中空構造体を得ることができる。なお、平面圧縮強度はJIS Z 0401に準拠し、曲げ破壊荷重はJIS K 7203に準拠して測定を行った。また、曲げ弾性勾配については、上記曲げ測定により得られた荷重−たわみ曲線の直線部分から1cm撓んだ時の荷重を求め、その曲げ弾性勾配とした。
【0070】
次に前記ラミネート装置5は、図7に示すごとく、ストックロール6aから繰出される表皮材6に順次接着剤を転写するカレンダーロール20、及び前記成形後の中空構造体の移送経路上下に配置された一対のラミネートローラ21とからなるものである。また、上記接着剤を用いたラミネート手段以外として熱接着その他の接着手段も適宜選択可能である。
【0071】
表皮材6としてはどのようなものでもよく、例えば中空凸部3aを塞ぐ目的であれば、同一材料であるポリプロピレンシートを用いるほか、中空構造板を例えば天井材などの車両用内装材などの用途に供する場合には各種装飾用のシート素材を用いることができる。
【0072】
なお、以上のラミネート装置5は必ずしも必要でなく、製造装置4で成形後の中空構造体をそのまま引き取機7で引取り、中間製品とすることも可能である。
【0073】
ここで、ホモポリプロピレン(融点165℃、軟化点120℃)を押出し成形材料として選択し、各樹脂シートの厚みを0.25mmとし、押出し後の表面温度は、減圧チャンバ10の前部開口部10aの付近で180℃程度の設定温度として中空構造体の成形を行った。なおこの時のヒータ温度は300℃に加熱し、両樹脂シート3に対して0.7mm離しておくことにより、スタック防止し、さらに前記減圧チャンバ10の減圧度は500mmH2O、引取機の引取り速度は1.0m/secとした。
【0074】
成形完了後の中空構造体の厚みは11.0mm、重量は1,000g/m2、平面圧縮強度1.0MPa、曲げ破壊荷重MDが52N,TDが47N、曲げ弾性勾配MDが102N/cm,TDが92N/cmであり、その厚み、重量の割には高強度の中空構造体を得た。
【0075】
これに対し、前記と同一樹脂材料、同一条件であって、ヒータ17による加熱を省略した中空構造体を成形したところ、上下シートが接着して一体化せず、目的の中空構造物が得られなかった。
【0076】
このように、本製造装置及び製造方法によれば、押出し成形された二枚の熱可塑性樹脂シートの中空凸部加工と溶融接合を確実かつ短時間に行うことができる。また、本手法を用いて作製した中空凸部の頂部の樹脂厚は脚部に比べ厚くなり易く、中空頂部の樹脂厚の薄いものに比べて、中空凸部頂部同士の接着接合を安定して行うことができる特徴を有する。
【0077】
以上の製造装置において、エンボスローラ11のピン11bは、図13に示すごとく、円錐台(裁頭円錐)形状をなしている。エンボスローラ11の周面11a上に配設されたピン11bの下底11eの総面積がエンボスローラ周面11aにおいて占める割合が0.3から0.9の範囲内であって、該ピン11bの中心軸11hを含む鉛直面(同図の紙面)におけるピン側面11fの立ち上げ角度θ(ピン11bの立ち上げ部11gにおけるローラ周面11aの接触点となす角度)が50度から70度の範囲内のものである。
【0078】
以上を換言すると、例えばピンの高さが5mmの場合においては、上底11dと下底11eの寸法差は3〜5mm程度で、その径比は3:5から1:5の範囲内、特に径比が1:2から1:4の範囲内とし、ピンの凸部11jを形成する角度が鈍角となるような形状にしたものである。
【0079】
また、ピンの間隔については特に限定されないが、間隔が狭ければ狭いほど曲げ剛性は向上する。上述のピン角度の範囲内(50〜70゜)において、ピンの間隔は、0〜4.0mmの範囲で設定することが好ましく、製造コスト(間隔が狭いとピン本数が嵩む)、二次加工(吸音板として適用する場合の孔あけ加工)等を考慮すると、1.5〜2.5mmの範囲で設定することがより好ましい。
【0080】
以上のようにすれば、樹脂シート3のエンボスローラ11からの脱型性が良くなると共に、ピン間隔を狭めてもウェビングを生ずることはなくなり、製造された中空構造板の曲げ特性(特に曲げ弾性勾配)が向上する。
【0081】
また、図14に例示したように、ピン11bに段差を設けた形状とすることも可能である。すなわち、ピン11bを、その側面11fに凹部11kを有するように形成する。このとき、ピン側面11f上にできる凸部11j・凹部11kのいずれもが鈍角となるようにすることが好ましい。このようにすると、製造された中空凸部とライナー部との厚み斑が減少する。そのため、製造された中空構造板の曲げ弾性勾配がさらに向上する。
【0082】
なお、上記の段差を複数にすることも可能である。また、本発明において、ピンの中心軸を含む鉛直面におけるピン側面を曲線状に構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明にかかる中空構造板を示す説明図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明に係る吸音構造板の好適な実施の形態を示し、(a)は製造途中の状態を示す断面図、(b)は中間製品たる中空構造板を示す断面図、(c)は(b)の平面図、(d)は最終製品たる吸音構造板の断面図である。
【図3】実施例1〜5における、周波数と残響室法吸音率との相関図である。
【図4】実施例6,7における、周波数と残響室法吸音率との相関図である。
【図5】比較例1,2における、周波数と残響室法吸音率との相関図である。
【図6】実施例6,比較例2における、周波数と残響室法吸音率との相関図である。
【図7】本発明の吸音構造板の製造装置の全体構成を示す説明図である。
【図8】同製造装置の側断面説明図である。
【図9】図8のA−A線における断面図説明図である。
【図10】図8のB−B線における断面説明図である
【図11】図9のC部拡大図である。
【図12】エンボスローラの斜視図である。
【図13】図12のエンボスローラ部の一部を拡大した説明図である。
【図14】エンボスローラのピンに段差を設けた場合の拡大した断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音構造板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フルート型プラスチックダンボール(商品名:ダンプレート、宇部日東化成社製)、コルゲート型プラスチックダンボール、円柱状独立空気室を形成したプラスチック構造板(商品名:プラパール、川上産業社製)等のプラスチック製中空構造板は、軽量且つ耐水性、耐熱性、耐薬品性その他の諸物性に優れ、建材用パネル、コンテナ、各種箱、家屋、ビル、オフィス、乗物等の内装材等、種々の用途に使用されている(ハニカム構造板として、例えば特開2000−326430を参照)。
【0003】
このうち、円柱状の独立空気室(以下中空凸部と称する)を形成した中空構造板は、コルゲート式プラスチックダンボールや、フルート式プラスチックダンボールに比べて縦横の強度差が無いものとして知られている。
【0004】
この構造板は熱可塑性樹脂シートを減圧成形することによって得られるが、この構造において、中空凸部の高さを高くして厚みを増そうとした場合、中空凸部を構成する壁部がフィルム化し、強度を維持できなくなるといった課題がある。この課題を解決するため、樹脂シートの肉厚を増すと、当然重量がかさみ、軽量性が損なわれる。そこで、本発明の従来技術として、特開2000−326430号公報に示す技術が開発された。
【0005】
この技術では、一対の樹脂シートにそれぞれ複数の中空凸部を突設するとともに、この中空凸部同士を突合わせて溶着することで、中空構造板としたものであり、二枚あわせにより、強度を維持したまま従来の厚みより二倍の厚みとすることができ、中空凸部形成と貼合わせ加工後、連続して両樹脂シートの両面に化粧板などをラミネートすることで、軽量中空構造の板材製品を得ることができる。
【0006】
この構造における製造方法として、同公報には、外周部に多数のピンを突出した一対のエンボスローラの間にTダイから押出された二枚の樹脂シートを供給し、ローラ内部を減圧吸引することで、両樹脂シートをピン形状に減圧成形するとともに、ローラの回転に伴いピン同士が接することで中空凸部の端面同士を一体的に熱融着し、この状態で引取りローラで引取ることで、一体化された中空構造板を得られるとされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような中空構造板は、吸音性が非常に乏しく、吸音性を向上させるためには発泡ウレタンシート、不織布、織布等といった多孔質のシート状物等を貼り合わせる必要があった。また、一般的な吸音材料は、その吸音性能が厚みに大きく依存するため、例えば前述の多孔質シート状物の厚みが薄くなればなるほど、特に低・中周波数域における吸音性が乏しくなる。或いは、天井材、壁材等の家屋の内装材として適用されているロックウール、石膏ボード等は軽量で、且つ吸音性能、断熱性能に優れているが、剛性や耐水性能が低いという課題があった。
【0008】
本発明は、発泡ウレタンシートや不織布、織布等の多孔質シート状物を貼り合わせなくても、軽量で、強度、剛性、耐熱性、耐水性に優れ、且つ適度な厚みでもって吸音性の高い吸音構造板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る吸音構造板は、二枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部同士を突き合わせた状態で溶着してなる芯材の表裏に、非通気性シートを貼り合わせることにより構成される積層中空構造板からなり、この積層中空構造板の表裏両面のうち少なくとも一方の面の中空凸部間、換言すれば中空凸部(シート形成後の外観上は凹部)を形成しないライナー部に開口する小孔を形成してなることを特徴とするものである。
【0010】
この発明に係る吸音構造板にあっては、中空構造板の小孔形成面に発泡ウレタンシート、不織布、織布等の多孔質シート状物等の吸音材を貼り合わせたり、前記中空構造板の目付を700〜3000g/m2とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本発明に係る吸音構造板を構成する中空構造板は、図1に示されるように、二枚の熱可塑性樹脂シート110,110Aに突設(エンボス形成)された複数の中空凸部112,112の端面同士を突き合わせた状態で溶着してなり、中空凸部112,112は、円錐台形状をなし、中空凸部112,112の周面に占める下底総面積の割合が0.3から0.9の範囲内であって、かつ、中空凸部112,112の中心軸を含む鉛直面における中空凸部112,112側面の立ち上げ角度が50度から70度の範囲内であることを特徴とするものである。なお、このような中空構造板は、その表裏両面ライナー部(熱可塑性樹脂シート110,110Aにおける中空凸部112,112の間の部分)114,114に熱可塑性樹脂シートからなる非通気性シート(図示しない)を貼り合わせることにより構成することもできる。
【0013】
本発明に用いられる樹脂シート3としては、ポリオレフィン系樹脂シート、特にポリプロピレンシートが好適であるが、他の熱可塑性樹脂素材一般に適用でき、その素材の融点や、軟化点、ガラス転移温度などの各種温度特性や物性に応じて装置各部の設定を変えればよい。
【0014】
−中空構造板実施例1−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径8mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔(立ち上げ部11gの間隔)を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板上に、溶解状態の厚み0.5mm、目付500g/m2のホモプロピレンシート(融点165℃、軟化点120℃)を載せ、オフラインにて真空成形を行った。得られた二枚のエンボスシートを超音波融着機を用いてピン同士を接着させた。これを芯材とし、この表裏に厚み0.25mm、目付250g/m2のホモプロピレンシートを面材として貼り合わせた。こうして、厚み10.5mm、目付1500g/m2の中空構造板を得た後、JIS K7203に準拠して曲げ試験を行った。なお、曲げ弾性勾配については、上記曲げ測定により得られた荷重−たわみ曲線の直線部分から1cm撓んだ時の荷重を求め、その曲げ弾性勾配とした。
【0015】
−中空構造板実施例2−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径6mmと、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0016】
−中空構造板実施例3−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径6mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を4mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0017】
−中空構造板実施例4−
上底11dの直径を4mm、下底11eの直径8mmと、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0018】
−中空構造板実施例5−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径10mmと、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0019】
−中空構造板実施例6−
ピンに段差をつけた形状とする。上底11d、中段の内側、中段の外側、下底11eの直径を順に1.5mm、3mm、5mm、6mmとし、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0020】
−中空構造板比較例1−
上底11dの直径を4mm、下底11eの直径6mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を4mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0021】
−中空構造板比較例2−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径4mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を4mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0022】
−中空構造板比較例3−
上底11dの直径を6mm、下底11eの直径8mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を4mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0023】
−中空構造板比較例4−
上底11dの直径を4mm、下底11eの直径6mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で成形したところ、ウェビングが発生し、良好な中空構造板を得られなかった。
【0024】
−中空構造板比較例5−
上底11dの直径を2mm、下底11eの直径12mm、高さを5mmとしたピン11bを、ピン間隔を2mmで千鳥格子状に配置させた幅70mm・長さ200mmの真空成形板を使用し、実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、曲げ試験を行った。
【0025】
−試験結果−
以上の実施例、比較例による曲げ試験の結果は、表1に示した通りである。
表1
*1;エンボスシート(片面)総面積を1とした場合
*2;段差のついたピン
【0026】
以上の結果より、上記実施例は、比較例と対比して明らかなように、本発明の効果を奏することは明らかである。
【0027】
図2(a)〜(d)は、上記中空構造板を本発明に係る吸音構造板として用いた好適な実施の形態を示している。同図に示される吸音構造板は、二枚の熱可塑性樹脂シート110,110Aに突設(エンボス形成)された複数の中空凸部(ピンないしはエンボスピンと称することもある)112,112の端面同士を突き合わせた状態で溶着してなる芯材120の表裏両面ライナー部(熱可塑性樹脂シート110,110Aにおける中空凸部112,112の間の部分)114,114に熱可塑性樹脂シートからなる非通気性シート130,130Aを貼り合わせることにより構成される中空構造板140と、中空構造板140の表裏両面のうち少なくともいずれかの面に貼り合わされた多孔質材料からなる吸音材150とを備え、中空構造板140内の閉空間142,142に開口する小孔114a,130aを、吸音材150が貼り合わされた側に位置する熱可塑性樹脂シート110のライナー部114及び非通気性シート130の該ライナー部114と整合する位置のみに形成してなっている。
【0028】
本実施の形態によれば、吸音材150により比較的高い周波数帯域の騒音を吸音することができるとともに、小孔130a,小孔114aを通じて開口する中空構造板140の中空部(空気層)の共鳴吸音効果を得ることにより比較的低い周波数帯域の騒音を吸音することができ、互いの効果を打ち消すことなく可聴域全般に渡り高い吸音性を有する吸音構造板が得られる。
【0029】
しかも、熱可塑性樹脂シート110,110Aが主体であるので軽量でありながら、中空凸部112,112の端面同士を突き合わせた状態で溶着しているので、高強度、高剛性である。
【0030】
ここで、前記芯材120の原料となる熱可塑性樹脂は、特に制限されるものではないが、コスト、成形性、物性、その他諸特性とのバランスを考慮すると、ポリプロピレンが好適である。また、この芯材の両面に貼合させる非通気性シートの原材料も、特に制限されるものではないが、コスト、成形性、物性、その他諸特性とのバランスを考慮すると、ポリプロピレンが好適である。また、これらの原材料にマイカ、タルク等のフィラーや、難燃性を付与するための難燃剤等、改質剤を添加してもよいことは勿論である。ポリプロピレンを採用することにより、リサイクル性にも優れた吸音構造板とすることができる。
【0031】
また、中空構造板140の目付は、700〜3000g/m2程度が好ましい。目付が小さすぎると、中空凸部112,112の厚が薄くなりすぎてフィルム化し易くなり、十分な強度、剛性等が得られなくなる。一方、目付が大きすぎると、軽量化を損なうことになる。また、厚みに関しては、使用目的に応じて、例えば6〜15mm程度とすることが好ましい。なお、中空構造板140を構成する熱可塑性樹脂シート110,110Aの中空凸部112,112は、同図では、中空円錐状となっているが、中空円筒状であってもよい。
【0032】
小孔114a,130aは、図2(c)に示されるように、必ずしもすべての中空凸部112間に配設されることなく、適宜のピッチで配設されている。また、孔径はφ0.3〜7.0mmが好ましい。0.3mmより小さいと加工が困難であり、7.0mmを超えると加工が困難であるばかりか、孔あけ時に中空凸部112の脚部を破壊してしまうため、剛性が低下する。より好ましくは、φ0.5〜4.0mmとするのがよい。さらに、孔数並びに小孔の総面積は特に制限されない。孔径を上述した範囲内で適宜選択し、それぞれの用途により特に吸音したい周波数に応じて調整することができる。小孔の形成は、ドリル、針、パンチング等、加工性に優れた方法を適宜選択すればよい。
【0033】
図2では、小孔114a,130aは、吸音材が貼り合わされた側(同図中で上側)に位置する熱可塑性樹脂シート110のライナー部114及びこれと整合する非通気性シート130のみに形成されているが、熱可塑性樹脂シート110の中空凸部112の端面及び周面に形成することができる。また、小孔114a、130aは、吸音材が貼り合わされていない側(同図中で下側)に位置する熱可塑性樹脂シート110Aのライナー部114及びこれと整合する非通気性シート130Aにも形成することもできる。この場合、小孔114a,130aの位置は、中空構造板140の表裏両面において整合していてもよいし、整合していなくてもよい。また、本発明におけるすべての小孔114a,130aについて、その孔径、ピッチが等しくなくてもよいし、その配設方法が規則的であっても不規則であってもよい。
【0034】
本実施の形態では、中空構造板140の片面(熱可塑性樹脂シート110のライナー部114に小孔114aが形成されている側)のみに吸音材150が貼り合わされて積層中空構造板を構成しているが、中空構造板140の他の面にも吸音材150を貼り合わせてもよい。吸音材150は、例えば連続気泡を有するスポンジ体等の発泡体であり、不織布等の多孔質材料を貼合することで更に吸音効果を高めることができる。
【0035】
=実施例1=
中空凸部(エンボスピン)上底の直径を2mm、下底の直径を6mm、高さ5.5mmとし、ピン間隔2mmで千鳥格子状に配置させた縦1000mm、横1000mmの真空成形板上に、溶融状態の厚み0.5mm、目付500g/m2のホモポリプロピレンシート(融点165℃、軟化点120℃)を載せ、オフラインにて真空成形を行った。得られた二枚のエンボスシートの凸部先端同士を熱融着させ、これを芯材とし、この表裏に厚み0.25mm、目付250g/m2のホモポリプロピレンシートを面材として貼り合わせた。こうして、総厚み11.5mm、目付1500g/m2の中空構造板を得た後、この中空構造板の一方のライナー部に等ピッチでφ1.0の小孔を開孔率0.36%となるように孔あけ加工した。この一辺1m角の孔あき中空構造板を小型残響室(日東紡音響エンジニアリング製)にて吸音率を測定した。
【0036】
=実施例2=
実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、この中空構造板の一方のライナー部に等ピッチでφ2.5mmの孔を開孔率0.36%となるように孔あけ加工した。この孔あき中空構造板を小型残響室にて吸音率を測定した。
【0037】
=実施例3=
実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、この中空構造板の一方のライナー部に等ピッチでφ4.0mmの孔を開孔率0.36%となるように孔あけ加工した。この孔あき中空構造板を小型残響室にて吸音率を測定した。
【0038】
=実施例4=
実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、この中空構造板の一方のライナー部に等ピッチでφ2.5mmの孔を開孔率0.19%となるように孔あけ加工した。この孔あき中空構造板を小型残響室にて吸音率を測定した。
【0039】
=実施例5=
実施例1と同様の方法で中空構造板を得た後、この中空構造板の一方のライナー部に等ピッチでφ2.5mmの孔を開孔率0.66%となるように孔あけ加工した。この孔あき中空構造板を小型残響室にて吸音率を測定した。
【0040】
=実施例6=
実施例1と同様の方法で孔あき中空構造板を得た後、この中空構造板の孔あき面に、吸音材として厚み6mmの軟質ウレタン発泡体を接着した積層中空構造板を作製し、小型残響室にて吸音率を測定した。(t=1→厚1mm)
=実施例7=
実施例2と同様の方法で孔あき中空構造板を得た後、この中空構造板の孔あき面に、吸音材として厚み6mmの通気性表皮材と軟質ウレタン発泡体(t=5)を接着した積層中空構造板を作製し、小型残響室にて吸音率を測定した。
【0041】
=比較例1=
実施例1と同様の方法で中空構造板を作製し、小型残響室にて吸音率を測定した。
【0042】
=比較例2=
厚み6mmの軟質ウレタン発泡体について、小型残響室にて吸音率を測定した。
【0043】
=比較例3=
実施例1と同様の方法で中空構造板を得、孔を開けなかった以外は実施例6と同じ条件で発泡材からなる吸音材を貼り合わせて積層中空構造板を作製し、残響室法にて吸音率を測定した。比較例3の各周波数における吸音率を表2に示す。
【0044】
以上の実施例1〜7,及び比較例1〜3における残響室法吸音率測定結果を、表2に示し、曲げ弾性勾配を表3に示す。
【0045】
表2 残響室法吸音率測定結果
表3
【0046】
また、図3〜6は、実施例1〜7,比較例1〜3における、周波数と残響室法吸音率との相関図である。表2,3及び図3〜6から、次のことが分かる。
【0047】
実施例1〜5では、比較的低い周波数帯域の騒音を吸音することができることが分かった。また、小孔の大きさ、開孔率等を変更することにより、固有振動数を変えることができ、吸音材料として使用する際の設計の自由度が大きいことが実証できた。
【0048】
ところで、連続気泡を有する発泡体、不織布等の多孔質材料は、厚みが厚ければ厚いほど、吸音性能は高まるが、厚みに制約がある場合、特に低・中周波域の吸音性能が低下する。そこで、実施例6,7のように、中空構造板の孔あき面に吸音材として比較的厚みの薄い多孔質シートを貼合して積層中空構造板とすることにより、お互いの長所を補うことによって、幅広い周波数帯域に渡り吸音性能が高まることも実証できた。
【0049】
また、中空構造板に孔を開けずに、表皮材、発泡体を貼り合わせて作製した、比較例3として示す積層中空構造板の吸音率は、比較例2の軟質ウレタン発泡体とほとんど同じであることも分かった。
【0050】
さらに、表3から、本実施例に係る吸音板の曲げ弾性勾配が大きく、相対的に高い剛性を示すことも分かった。
【0051】
以上の説明により明らかなように、本発明に係る吸音構造板によれば、重量増を少なくすることができるとともに、剛性を低下することなく、吸音性を付与することができ、また、他の吸音材と組み合わせることにより、任意の周波数帯域の吸音特性を付与することができ、さらに材料を選択することによりリサイクルしやすいものとすることができ、その結果、建造物、乗り物等の吸音性内材装材料として好適に使用することができる。
【0052】
以上説明した本発明に係る吸音構造板は、以下に説明する製造装置を用いて、以下に説明する製造方法によって製造することが好ましい。
【0053】
図7は、本製造装置の全体構成を示すものである。図において、平行な一対の押出し機1の先端にはそれぞれTダイ2が設けられ、このTダイ2から押出された熱可塑性樹脂シート3は凸部成形と貼り合わせを兼用した成形装置ないしは製造装置(以下、製造装置と称するが、いずれも同義である)4により各樹脂シート3の凸部成形と貼り合わせがなされ、その後ラミネート装置5によりその上下面に連続して表皮材6がラミネートされた状態で引取り機7により所定速度で引取られ、次いで図示しない切断機により順次定寸カットされることにより、製品として完成する。
【0054】
以上のうち、要部である製造装置4は、図8〜10に示すように、上下に半分割状に形成された一対の減圧チャンバ10と、各減圧チャンバ10内に軸受支持され、その周面を減圧チャンバ10の接合位置に開口した開口部10a側に向けたエンボスローラ11と、開口部10aの上下内側に配置され、前記エンボスローラ11の周面における接線、すなわち接触点(以下、接触点とする)方向に向けて傾斜状としたシート導入部プレート12と、減圧チャンバ10の両側部内側に回転可能に支持された複数の耳部ローラ15と、耳部ローラ15に僅かな隙間をあけて対向配列され、かつ各エンボスローラ11の両側に配置されて減圧チャンバ10内においてエンボスローラ15の両側を準封止する一対の耳部ローラ受兼準封止部材14と、エンボスローラ12の背面における接触点方向に向けて水平配置され、減圧チャンバ10の後部側開口部10bに向けて連続する後部プレート16及び、前記導入部プレート12の間に配置された断面三角形状の加熱用ヒータ17とを備えている。
【0055】
各減圧チャンバ10の上下には減圧用吸引口10cが開口されている。この減圧用吸引口10cは、図示しないホースを介して同じく図示しない真空ポンプに接続され、減圧チャンバ10の内部を減圧吸引することによって、開口部10aに向けて供給される両樹脂シート3の間が大気圧、エンボスローラ11側の面が減圧状態となり、その差圧により、両樹脂シート3は両エンボスローラ11の表面に吸引され、その表面に貼付くようになっている。
【0056】
両エンボスローラ11は、図11に示すように、鋼製ないしはアルミダイキャスト製等の金属製のローラ11aの表面に多数のピン11bを縦横規則正しく突設したものである。また、ローラ11aの軸部11cは両減圧チャンバ10の外側面にあって、互いに逆向きであって樹脂シート3の移送方向に向けて回転すべくギアまたはタイミングプーリなどにより連繋しているとともに、一方の軸部11cは、図示しないモータにより回転駆動される。このモータは前記引取り機7の引取り速度に同期した速度で各エンボスローラ11を回転駆動する。
【0057】
また、エンボスローラ11は、樹脂シート3とエンボスローラ11との間に空気溜まりが生じることを防止するため、ローラ11aの谷部(ピン11b以外の平坦部分)に、例えば直径が2mm程度(1〜5mmが好ましい)の孔(図示しない)が形成されている。この孔は、減圧チャンバ10内に開放連通している。これにより、減圧チャンバ10内とエンボスローラ11内部の減圧度に差がなく、樹脂シート3を均等にエンボスローラ11に吸引することができる。従って、エンボスローラ11は、内部を中空のものとすることができる。なお、孔は、ピン11bを1.5〜2本ごとに1つの割合で設けることができ、例えばピン11bで形成される谷部のうちすべてに設けることもできるし、複数の谷部について1つの割合で設けることもできる。
【0058】
さらに、上下のエンボスローラ11の接触点位置で、ピン11b同士は互いに樹脂シート3を介して一列に接触し、この位置で樹脂シート3同士を圧接することで熱融着を可能としている。
【0059】
前記導入部プレート12は、開口部10aと此処より導入される樹脂シート6との間の隙間を最小とし、減圧チャンバ10の内部の減圧を保つ機能を有している。
【0060】
前記各耳部ローラ受兼準封止部材14は、樹脂シート3の幅方向両側部を耳部ローラ15との間に挟みつつその回転により樹脂シート3をエンボスローラ11に押し付けた状態を維持したまま後送する機能を有する。
【0061】
加熱用ヒータ17は、両樹脂シート3の対向面を溶融押出された温度より高い温度に加熱することによってさらに昇温させ、前記エンボスローラ11による熱融着を確実に行うためのものである。
【0062】
以上において、Tダイ2から押出された半溶融状態の樹脂シート3は、製造装置4内において、それぞれ上下面を減圧吸引されつつ上下のエンボスローラ11に接し、これに吸着される結果、ピン11bの形状に応じて多数の中空凸部3aが形成される。そして、エンボスローラ11の接触点位置で、互いのピン11a同士が樹脂シート3を挟んで接する結果、中空凸部3aの端面同士はこの接触による熱圧により熱融着される。つまり、この位置においては、両樹脂シート3の接触面はエンボスローラ11に熱を奪われて冷却固化される一方で、反対面は前記加熱用ヒータ17によって加熱され、溶融状態であるため、熱融着が容易に行われることになる。
【0063】
融着後は同一理由によりピン11bから容易に脱型され、後部プレート16にガイドされてさらに冷却されつつ、減圧チャンバの後部開口部10bより外部に導出される。
【0064】
以上の成形に用いられる樹脂シート3としては、ポリオレフィン系樹脂シート、特にポリプロピレンシートが好適であるが、他の熱可塑性樹脂素材一般に適用でき、その素材の融点や、軟化点、ガラス転移温度などの各種温度特性や物性に応じて装置各部の設定を変えればよい。
【0065】
一例としてホモポリプロピレン(融点165℃、軟化点120℃)を押出し成形材料として選択した場合には、押出し後の表面温度は、前部開口部10aの付近で150〜200℃程度の設定温度とすることが好ましく、この設定温度を下回ると変形しにくく、減圧成形が困難となる。逆に設定温度の上限を上回った場合には、軟化して供給時における樹脂シート3の保形性が低下するため、以上の範囲に設定する。
【0066】
ヒータ温度は280℃〜320℃に加熱しておくことが好ましく、加熱用ヒータ17は両樹脂シート3に対して0.1mm〜2mm離す、好ましくは0.3〜1.2mm離しておくことにより、スタックを未然に防止できる。
【0067】
前記減圧チャンバ10内の減圧度は300〜2000mmH2O、好ましくは400〜600mmH2Oの範囲で減圧成形を容易に行うことができる。
【0068】
また、プレート12、16とエンボスローラ11の隙間は、減圧を保つためできるだけ小さい方がよく、1mm以下、好ましくは0.2mm程度に設定すればよい。ただし、この数値はプレート12,16のエンボスローラ11に対する接触を防ぐとともに、できるだけ減圧度を確保する目的で設定されているから、機械精度に応じてさらに隙間を小さくすることも可能である。
【0069】
エンボスローラ11の各ピン11bは、図示のごとく円錐台形状であり、実際の寸法としては、上底と下底の寸法差が2mm、ピン径5〜10mm、高さ3〜6mm、ピンピッチは10〜15mmが好ましく、これに応じて成形完了後の中空構造体の厚みは6〜12mm、重量は500〜2,000g/m2、平面圧縮強度0.5〜1.5MPa、曲げ破壊荷重30〜100N、曲げ弾性勾配80〜200N/cmと、その厚み、重量の割には高強度の中空構造体を得ることができる。なお、平面圧縮強度はJIS Z 0401に準拠し、曲げ破壊荷重はJIS K 7203に準拠して測定を行った。また、曲げ弾性勾配については、上記曲げ測定により得られた荷重−たわみ曲線の直線部分から1cm撓んだ時の荷重を求め、その曲げ弾性勾配とした。
【0070】
次に前記ラミネート装置5は、図7に示すごとく、ストックロール6aから繰出される表皮材6に順次接着剤を転写するカレンダーロール20、及び前記成形後の中空構造体の移送経路上下に配置された一対のラミネートローラ21とからなるものである。また、上記接着剤を用いたラミネート手段以外として熱接着その他の接着手段も適宜選択可能である。
【0071】
表皮材6としてはどのようなものでもよく、例えば中空凸部3aを塞ぐ目的であれば、同一材料であるポリプロピレンシートを用いるほか、中空構造板を例えば天井材などの車両用内装材などの用途に供する場合には各種装飾用のシート素材を用いることができる。
【0072】
なお、以上のラミネート装置5は必ずしも必要でなく、製造装置4で成形後の中空構造体をそのまま引き取機7で引取り、中間製品とすることも可能である。
【0073】
ここで、ホモポリプロピレン(融点165℃、軟化点120℃)を押出し成形材料として選択し、各樹脂シートの厚みを0.25mmとし、押出し後の表面温度は、減圧チャンバ10の前部開口部10aの付近で180℃程度の設定温度として中空構造体の成形を行った。なおこの時のヒータ温度は300℃に加熱し、両樹脂シート3に対して0.7mm離しておくことにより、スタック防止し、さらに前記減圧チャンバ10の減圧度は500mmH2O、引取機の引取り速度は1.0m/secとした。
【0074】
成形完了後の中空構造体の厚みは11.0mm、重量は1,000g/m2、平面圧縮強度1.0MPa、曲げ破壊荷重MDが52N,TDが47N、曲げ弾性勾配MDが102N/cm,TDが92N/cmであり、その厚み、重量の割には高強度の中空構造体を得た。
【0075】
これに対し、前記と同一樹脂材料、同一条件であって、ヒータ17による加熱を省略した中空構造体を成形したところ、上下シートが接着して一体化せず、目的の中空構造物が得られなかった。
【0076】
このように、本製造装置及び製造方法によれば、押出し成形された二枚の熱可塑性樹脂シートの中空凸部加工と溶融接合を確実かつ短時間に行うことができる。また、本手法を用いて作製した中空凸部の頂部の樹脂厚は脚部に比べ厚くなり易く、中空頂部の樹脂厚の薄いものに比べて、中空凸部頂部同士の接着接合を安定して行うことができる特徴を有する。
【0077】
以上の製造装置において、エンボスローラ11のピン11bは、図13に示すごとく、円錐台(裁頭円錐)形状をなしている。エンボスローラ11の周面11a上に配設されたピン11bの下底11eの総面積がエンボスローラ周面11aにおいて占める割合が0.3から0.9の範囲内であって、該ピン11bの中心軸11hを含む鉛直面(同図の紙面)におけるピン側面11fの立ち上げ角度θ(ピン11bの立ち上げ部11gにおけるローラ周面11aの接触点となす角度)が50度から70度の範囲内のものである。
【0078】
以上を換言すると、例えばピンの高さが5mmの場合においては、上底11dと下底11eの寸法差は3〜5mm程度で、その径比は3:5から1:5の範囲内、特に径比が1:2から1:4の範囲内とし、ピンの凸部11jを形成する角度が鈍角となるような形状にしたものである。
【0079】
また、ピンの間隔については特に限定されないが、間隔が狭ければ狭いほど曲げ剛性は向上する。上述のピン角度の範囲内(50〜70゜)において、ピンの間隔は、0〜4.0mmの範囲で設定することが好ましく、製造コスト(間隔が狭いとピン本数が嵩む)、二次加工(吸音板として適用する場合の孔あけ加工)等を考慮すると、1.5〜2.5mmの範囲で設定することがより好ましい。
【0080】
以上のようにすれば、樹脂シート3のエンボスローラ11からの脱型性が良くなると共に、ピン間隔を狭めてもウェビングを生ずることはなくなり、製造された中空構造板の曲げ特性(特に曲げ弾性勾配)が向上する。
【0081】
また、図14に例示したように、ピン11bに段差を設けた形状とすることも可能である。すなわち、ピン11bを、その側面11fに凹部11kを有するように形成する。このとき、ピン側面11f上にできる凸部11j・凹部11kのいずれもが鈍角となるようにすることが好ましい。このようにすると、製造された中空凸部とライナー部との厚み斑が減少する。そのため、製造された中空構造板の曲げ弾性勾配がさらに向上する。
【0082】
なお、上記の段差を複数にすることも可能である。また、本発明において、ピンの中心軸を含む鉛直面におけるピン側面を曲線状に構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明にかかる中空構造板を示す説明図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明に係る吸音構造板の好適な実施の形態を示し、(a)は製造途中の状態を示す断面図、(b)は中間製品たる中空構造板を示す断面図、(c)は(b)の平面図、(d)は最終製品たる吸音構造板の断面図である。
【図3】実施例1〜5における、周波数と残響室法吸音率との相関図である。
【図4】実施例6,7における、周波数と残響室法吸音率との相関図である。
【図5】比較例1,2における、周波数と残響室法吸音率との相関図である。
【図6】実施例6,比較例2における、周波数と残響室法吸音率との相関図である。
【図7】本発明の吸音構造板の製造装置の全体構成を示す説明図である。
【図8】同製造装置の側断面説明図である。
【図9】図8のA−A線における断面図説明図である。
【図10】図8のB−B線における断面説明図である
【図11】図9のC部拡大図である。
【図12】エンボスローラの斜視図である。
【図13】図12のエンボスローラ部の一部を拡大した説明図である。
【図14】エンボスローラのピンに段差を設けた場合の拡大した断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部同士を突き合わせた状態で溶着してなる芯材の表裏に、非通気性シートを貼り合わせることにより構成される中空構造板からなり、
この中空構造板の表裏両面のうち少なくとも一方の面の中空凸部間に開口する小孔を形成してなることを特徴とする吸音構造板。
【請求項2】
前記中空構造板の小孔形成面に吸音材を貼り合わせたことを特徴とする請求項1に記載の吸音構造板。
【請求項3】
前記中空構造板は、その目付を、700〜3000g/m2としてなることを特徴とする請求項1または2に記載の吸音構造板。
【請求項1】
二枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の中空凸部同士を突き合わせた状態で溶着してなる芯材の表裏に、非通気性シートを貼り合わせることにより構成される中空構造板からなり、
この中空構造板の表裏両面のうち少なくとも一方の面の中空凸部間に開口する小孔を形成してなることを特徴とする吸音構造板。
【請求項2】
前記中空構造板の小孔形成面に吸音材を貼り合わせたことを特徴とする請求項1に記載の吸音構造板。
【請求項3】
前記中空構造板は、その目付を、700〜3000g/m2としてなることを特徴とする請求項1または2に記載の吸音構造板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−19495(P2009−19495A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201679(P2008−201679)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【分割の表示】特願2003−578131(P2003−578131)の分割
【原出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【分割の表示】特願2003−578131(P2003−578131)の分割
【原出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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