説明

周波数シンセサイザ及び無線送信装置

【課題】VCOの出力帯域を選択設定可能な周波数シンセサイザにおける消費電力を低減すること。
【解決手段】互いに並列に接続されたミキサ111と分周器112とを有する周波数変換回路110を設け、VCO101の周波数帯域選択時に分周器112を用いることにより、VCO101の周波数帯域選択時の位相比較器102の最高動作周波数を低くすることができ、消費電力を低減できる。また、送信時にはミキサ111を用いることにより、送信時のループゲインを下げずに済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア周波数帯域(無線帯域)の送信信号の生成するために用いられる周波数シンセサイザ、及びそれを用いた無線送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線機には、変調信号をアップコンバートしてキャリア周波数帯域の送信信号(無線信号)を生成するために、周波数シンセサイザが設けられている。
【0003】
この種の周波数シンセサイザの一例が、特許文献1で開示されている。なお、特許文献1では、周波数シンセサイザが送信装置と呼ばれているので、以下、特許文献1で開示されている装置を送信装置と呼ぶことにする。図12に、特許文献1で開示されている送信装置の概略構成を示す。図12に示すように、入力電圧に応じて出力周波数が変化する電圧制御発振器1(以下、VCO1と呼ぶ)と、VCO1の出力F_outをダウンコンバートするミキサ2と、ミキサ出力と基準信号F_IFとの位相を比較し、位相差(位相誤差)を出力する位相比較器3と、位相比較器3の出力信号を平滑化するループフィルタ4と、ミキサ2のローカル信号を生成するローカル信号生成回路5とが設けられている。このようにミキサを用いて周波数をシフトする機能を備えたPLL(Phase-Locked Loop)回路はオフセットPLLと呼ばれる。
【0004】
ここで、F_IFは例えば直交変調器で生成されたIF(Intermediate Frequency)帯の変調信号である。F_IFは、VCO1を制御するPLLによって、RF(Radio Frequency)帯にアップコンバートされ、VCO1からアップコンバートされたRF帯の送信信号F_outが出力される。IF帯の変調信号F_IFのノイズ成分は、VCO1を制御するPLLの周波数特性により抑圧されるので、図12に示した構成は、GSM方式の携帯電話等で一般によく用いられる構成である。
【0005】
一方、特許文献2には、PLL回路を用いた、VCO周波数帯域切替型の周波数シンセサイザが開示されている。図13に、特許文献2で開示されている周波数シンセサイザの構成を示す。図13に示すように、PLL部11と、シフト信号SSに応答してVCO13の発振周波数帯を選択・シフトする選択信号Sを出力する周波数帯選択回路12と、最初に選択した発振周波数帯でVCO13に接地GNDを供給して自走発振させこのVCO出力信号VOを一定時間サンプリングして計数したサンプリング値COを生成するサンプリング回路14と、サンプリング値COと期待値EXとを比較し比較結果に対応して電圧制御切換信号SVとシフト信号SSとを出力する比較回路15と、期待値EXを保持する期待値レジスタ16とが設けられている。
【0006】
図14に、図13のVCO13の制御電圧SC対発振周波数の特性を示す。VCO13をLSIに内蔵する場合、素子値のばらつきにより発振周波数が大きくばらつく。そのため、図14のように、VCO13は、発振周波数を複数の周波数帯域A〜Gで切り替えることができるように、広い発振周波数範囲を有するように設計されている。そして、出力信号VOの周波数切替時に、VCO13の出力周波数がカウンタ回路で計測され、周波数帯選択回路12によって、図14に示した複数の周波数帯域の中から最適な周波数帯域が選択される。
【特許文献1】特開2008−109680号公報
【特許文献2】特開2001−251186号公報
【特許文献3】米国特許第6,269,135号 明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図12の送信装置で用いられているVCO1も、LSIに集積化する場合の素子のばらつきに起因する発振周波数(送信信号周波数)のばらつきを抑制するために、図13のVCO13と同様に、図14のような複数の周波数帯域を持つように設計すればよいと考えられる。
【0008】
しかしながら、図12の構成において、VCO1に複数の発振周波数帯域を持たせ、この複数の発振周波数帯域の中から最適な発振周波数を選択する場合には、回路の消費電力が増加する問題がある。
【0009】
以下、この問題について具体例を挙げて説明する。ここでは、図12の送信装置が送信信号F_outの周波数(目標周波数)を1.91[GHz]に変更することを指示する指示信号を基地局より受信した場合を考える。このときにローカル周波数F_localは1.99[GHz]に設定され、PLLの動作が安定した後にはミキサ2の出力周波数は80[MHz](=1.99[GHz]−1.91[GHz])となる。しかしながら、VCO1が1.5[GHz]から2.1[GHz]の発振周波数範囲を複数のバンドでカバーする場合は、VCO1の周波数帯域を選択して設定する際に、ミキサ2の出力が−110[MHz]から490[MHz]の広い範囲で変化する。よって、その信号を受ける位相比較器3は最高動作周波数が490[MHz]と高くなり、この結果、消費電力の増加を招く。
【0010】
本発明は、かかる点を考慮してなされたものであり、VCOの出力帯域を選択設定可能な周波数シンセサイザにおいて、消費電力を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の周波数シンセサイザの一つの態様は、選択可能な複数の発振周波数帯域を有し、制御電圧端子に印加される電圧に応じた周波数の信号を発振する電圧制御発振器と、互いに並列に接続されたミキサと分周器とを有し、前記ミキサ又は前記分周器のいずれか一方を選択的に用いて、前記電圧制御発振器の出力信号の周波数をダウンコンバートする周波数変換回路と、前記周波数変換回路から出力された信号と、基準信号とを比較し、比較結果信号を出力する比較器と、前記比較結果信号を平滑化し、平滑化した信号を前記電圧制御発振器の前記制御電圧端子に出力するループフィルタと、を具備する構成を採る。
【0012】
本発明の周波数シンセサイザの一つの態様は、前記周波数変換回路は、前記電圧制御発振器の発振周波数帯域の選択が行われる場合に、前記分周器を使用し、前記電圧制御発振器の発振周波数帯域が目標周波数をカバーする帯域となった場合に、前記ミキサを使用する構成を採る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、VCOの出力帯域を選択設定可能な周波数シンセサイザにおいて、消費電力を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1に係る周波数シンセサイザの構成を示す。本実施の形態の周波数シンセサイザ100は、ミキサを用いて周波数をシフトする機能を備えたオフセットPLL構成となっている。周波数シンセサイザ100は、例えば端末の送信部に設けられている。以下の説明では、周波数シンセサイザ100が端末の送信部に設けられている場合について説明するが、本発明の周波数シンセサイザは端末に限らず、種々の無線機に広く適用可能である。
【0016】
周波数シンセサイザ100は、制御電圧端子に印加される電圧に応じた周波数の信号を発振するVCO101と、VCO101の出力信号F_outの周波数をダウンコンバートする周波数変換回路110と、周波数変換回路110から出力された信号と基準信号F_IFとを比較し、比較結果信号を出力する位相比較器102と、比較結果信号を平滑化し、平滑化した信号をVCO101の制御電圧端子に出力するループフィルタ103と、周波数変換回路110で使用されるローカル信号F_localを生成するローカル信号生成回路104と、VCO周波数帯域切替制御回路105とを有する。周波数シンセサイザ100においては、VCO101、周波数変換回路110、位相比較器102及びループフィルタ103によって、PLLが形成されている。
【0017】
位相比較器102には、基準信号として、F_IF信号が入力される。このF_IF信号は、例えば直交変調器で生成されたIF(Intermediate Frequency)帯の変調信号である。F_IF信号は、VCO101を制御するPLLによって、RF(Radio Frequency)帯にアップコンバートされ、VCO101からアップコンバートされたRF帯の送信信号F_outが出力される。IF帯の変調信号F_IFのノイズ成分は、VCO101を制御するPLLの周波数特性により抑圧される。
【0018】
VCO101は、周波数帯域選択端子に入力されるバンド選択信号S4に応じて、n個の周波数帯域(以下これをバンドと呼ぶ)のいずれか一つを選択できる構成とされている。このような、複数のバンドの中から1つのバンドを選択可能なVCOの構成は、例えば特許文献2にも記載されている公知のものなので、ここでの説明は省略する。
【0019】
周波数変換回路110は、互いに並列に接続されたミキサ111と分周器112とを有し、ミキサ111又は分周器112のいずれか一方を選択的に用いて、VCO101の出力信号をダウンコンバートするようになされている。具体的には、スイッチ113及びスイッチ114の接続によって、ミキサ111を用いるか又は分周器112を用いるかが選択される。つまり、ミキサ111が用いられる場合にはスイッチ113及びスイッチ114がミキサ111側に接続され、分周器112が用いられる場合にはスイッチ113及びスイッチ114が分周器112側に接続される。スイッチ113、114のスイッチング制御は、VCO周波数帯域切替制御回路105からのスイッチング制御信号S3によって行われる。
【0020】
ローカル信号生成回路104は、例えばVCO、分周器、位相比較器及びループフィルタを有するPLL回路を用いて形成されており、所望周波数のローカル信号を生成できるようになっている。ローカル信号生成回路104は、生成したローカル信号F_localをミキサ111に出力する。
【0021】
VCO周波数帯域切替制御回路105は、基地局から送信された周波数切替開始信号S1が入力されると、周波数シンセサイザ100を周波数帯域選択モードに制御する。具体的には、VCO周波数帯域切替制御回路105は、周波数切替開始信号S1が入力されると、スイッチング制御信号S3によって、VCO101と位相比較器102との間に分周器を接続させる(図1の状態)。一方、VCO周波数帯域切替制御回路105は、周波数帯域選択が終了したと判断すると(すなわちVCO101の出力信号F_outの周波数帯域が目標帯域に収まったと判断すると)、スイッチング制御信号S3によって、VCO101と位相比較器102との間に分周器112に代えてミキサ111を接続させる。
【0022】
また、VCO周波数帯域切替制御回路105は、基地局から送信された目標周波数情報S2を入力し、この目標周波数情報S2とVCO101の出力信号F_outの周波数とを比較し、比較結果に応じたバンド選択信号S4をVCO101のバンド選択端子に出力する。これにより、VCO101の出力信号F_outのバンドが目標周波数をカバーするものに設定される。なお、設定されたバンド内において、出力信号F_outの周波数をより目標周波数に細かく合わせる調整動作は、ミキサ111を用いたPLLのロック動作により行われる。
【0023】
なお、基地局は、端末との通信状況に応じて、各端末に送信周波数帯域を変更することを指示する制御信号(周波数切替開始信号S1、目標周波数情報S2)を送信する。この送信周波数帯域を変更することを示す制御信号は、例えば端末の所属するセルが移った場合、又は現在使用されている周波数帯域の受信電界強度が小さくなった場合等に送信される。この周波数帯域の変更は、例えばGSM方式の場合、数百[μsec]間隔で行われることが多い。
【0024】
次に、図2のタイミングチャートを用いて、本実施の形態の周波数シンセサイザ100の動作を説明する。
【0025】
周波数シンセサイザ100は、時点t1で、VCO周波数帯域切替制御回路105に基地局からの周波数切替開始信号S1が入力されると、VCOの周波数帯域選択動作を始める。周波数シンセサイザ100は、時点t1で、VCOの周波数帯域選択動作を始めると、VCO周波数帯域切替制御回路105がスイッチング制御信号S3をHigh状態とすることで、周波数変換回路110において分周器112が用いられるようにする。
【0026】
周波数シンセサイザ100は、このように分周器112を選択した状態において、VCO周波数帯域切替制御回路105が、バンド選択信号S4によってVCO101のバンドを順次切替制御し、目標周波数をカバーするバンドを選択したときに、周波数帯域選択動作を終了する。
【0027】
なお、本実施の形態では、周波数切替開始信号S1を用いて周波数切替開始タイミングを検出したが、目標周波数情報S2が切り替わるタイミングに基づいて周波数切替開始タイミングを検出することもできる。よって、周波数切替開始信号S1を用いなくても実施の形態と同様の処理を行うことができる。
【0028】
図2では、バンド選択の一例として、2分検索アルゴリズムを用いてVCO101の周波数帯域を目標周波数に近づけていく例が示されている。2分検索アルゴリズムを用いて各時点t1〜t5でバンドが選択され、時点t5で目標周波数をカバーするバンドが選択されている。
【0029】
周波数シンセサイザ100においては、目標周波数をカバーする周波数帯域がVCO周波数帯域切替制御回路105によって決定されると、VCO周波数帯域切替制御回路105がスイッチング制御信号S3をLow状態とすることで、周波数変換回路110においてミキサ111が用いられるようにする。
【0030】
周波数シンセサイザ100は、このようにミキサ111を選択した状態において(時点t6以降)、通常のPLLの周波数引き込み動作に入り、最終的には目標周波数にて安定する。
【0031】
図3に、本実施の形態の周波数シンセサイザ100における周波数の一例を示す。また、図3との対応部分に同一符号を付して示す図4に、本実施の形態に対する比較例として、分周器112を有しない場合の周波数の一例を示す。
【0032】
先ず、本実施の形態の比較例である図4での周波数について説明する。図4の例では、目標周波数が1.91[GHz]、ローカル周波数が1.99[GHz]、VCO101の発振周波数範囲が1.5[GHz]から2.1[GHz]である場合が示されている。ここで、PLL安定時のミキサ111の出力周波数は80[MHz](=1.99[GHz]−1.91[GHz])となる。一方、VCO101の周波数帯域を選択する際には、ミキサ111の出力が−110[MHz]から490[MHz]の広い範囲で変化する。よって、その信号を受ける位相比較器102は最高動作周波数が490[MHz]と高くなり、この結果、消費電力の増加を招く。
【0033】
これに対して、本実施の形態の周波数シンセサイザ100は、図3に示すように、分周器112の分周比が16、目標周波数が1.91[GHz]、ローカル周波数が1.99[GHz]、VCO101の発振周波数範囲が1.5[GHz]から2.1[GHz]といった図4と同じ条件下でも、周波数帯域選択時に、ミキサ111の代わりに分周器112(図3の例では分周比が16)を使用することにより、位相比較器102の入力周波数が最高でも約130[MHz]に抑えられている。これにより、位相比較器102の最高動作周波数を低くすることができるので、消費電力を低減できる。
【0034】
なお、図4では、分周比Pが16の場合を例に説明したが、分周比pは16に限らない。
【0035】
以上のように、本実施の形態によれば、周波数変換回路110に、互いに並列に接続されたミキサ111と分周器112とを設け、VCO101の周波数帯域選択時に分周器112を用いたことにより、VCO101の周波数帯域選択時の位相比較器102の最高動作周波数を低くすることができ、消費電力を低減できる。
【0036】
(実施の形態2)
図1との対応部分に同一符号を付して示す図5に、本実施の形態の周波数シンセサイザの構成を示す。周波数シンセサイザ200は、図1の周波数シンセサイザ100と比較して、周波数変換回路110の出力周波数をデジタル変換する周波数−デジタル変換回路201と、周波数−デジタル変換回路201の動作クロックを生成するクロック生成回路202とを備えている点と、位相比較器102に代えて周波数比較器203を備えている点とが異なる。
【0037】
周波数変換回路110から出力される信号の周波数情報は、周波数−デジタル変換回路201によってデジタル化され、周波数比較器203に入力される。周波数比較器203は、周波数−デジタル変換回路201から出力された信号の周波数情報と、基準信号F_IFの周波数とを比較し、その周波数差(周波数誤差と言ってもよい)を示す比較結果信号を、ループフィルタ103に出力する。ここで、本実施の形態の周波数シンセサイザ200においては、周波数−デジタル変換回路201、周波数比較器203及びループフィルタ103は、デジタル回路によって構成されており、全体としてデジタル方式のFrequency−Locked−Loop構成となっている。
【0038】
周波数−デジタル変換回路201は、例えば特許文献3で開示されているように構成すればよい。図6に、特許文献3で開示されている周波数−デジタル変換回路の構成を示す。図6の周波数−デジタル変換回路は、連鎖的に接続された複数のフリップフロップQ1〜Q6と、NANDゲートN1〜N3とを有する。図6の構成において、クロック信号Fxとして周波数変換回路110の出力信号を入力し、クロック信号Fsとしてクロック生成回路202からのクロック信号を入力させることにより、NANDゲートN3からデジタル化された周波数情報を出力させることができる。
【0039】
図7を用いて、図6の周波数−デジタル変換回路の動作を説明する。クロック信号Fsの1周期の間にクロック信号Fxの立ち上がりエッジがあればNANDゲートN3から1が出力され、クロック信号Fsの1周期の間にクロック信号Fxの立ち上がりエッジが無ければNANDゲートN3から0が出力される。つまり、クロック信号Fsとクロック信号Fxが同じ周波数の場合はNANDゲートN3から常に1が出力され、クロック信号Fxの周波数がゼロの場合はNANDゲートN3から常に0が出力される。従って、NANDゲートN3から出力されるデジタル値は、1の数が多いほど、クロック信号(周波数変換回路110の出力信号)Fxはクロック信号Fsの周波数に近いことを意味する。このように、周波数−デジタル変換回路201は、周波数が0からFsまでをデジタル値で出力できる回路である。実用上、周波数−デジタル変換回路201は、デジタル化した周波数情報を、変換誤差を低減するためのデジタルフィルタを介して周波数比較器203に出力する。
【0040】
本実施の形態の周波数シンセサイザ200によれば、周波数−デジタル変換回路201及び周波数比較器203を備えたデジタル方式のFrequency−Locked−Loop構成であっても、実施の形態1と同様に、周波数変換回路110に、互いに並列に接続されたミキサ111と分周器112とを設け、VCO101の周波数帯域選択時に分周器112を用いたことにより、VCO101の周波数帯域選択時の周波数変換回路110から周波数−デジタル変換回路201への入力周波数及びクロック生成回路202の出力周波数を低くすることができるので、消費電力を低減できる。
【0041】
(実施の形態3)
図1との対応部分に同一符号を付して示す図8に、本実施の形態の周波数シンセサイザの構成を示す。周波数シンセサイザ300は、図1の周波数シンセサイザ100と比較して、周波数変換回路310の構成が異なる。
【0042】
本実施の形態の周波数変換回路310は、VCO101とミキサ111の間に分周比を1とL(Lは2以上の整数)とで切替可能な分周器311が設けられている。また、周波数変換回路310は、ミキサ111とローカル信号生成回路104の間に分周比を1とM(Mは2以上の整数)とで切替可能な分周器312が設けられている。
【0043】
分周器311、312は、VCO周波数帯域切替制御回路105からのスイッチング制御信号S3によって、VCO101の周波数帯域選択時には分周比が1に制御され、VCO101の周波数帯域選択時以外の場合(送信時)には分周比がそれぞれL及びMに制御される。なお、動作タイミングは、図2と同様である。
【0044】
図9に、本実施の形態の周波数シンセサイザ300における周波数の一例を示す。図9の例では、目標周波数が1.91[GHz]、ローカル周波数が1.99[GHz]、VCO101の発振周波数範囲が1.5[GHz]から2.1[GHz]である場合が示されている。周波数帯域選択時に、分周器311、312の分周比を8に制御することにより、位相比較器102の入力周波数が最高でも約60[MHz]に抑えられ、この結果消費電力を低減できる。
【0045】
本実施の形態によれば、VCO101とミキサ111の間に分周比を1とL(Lは2以上の整数)とで切替可能な分周器311を設けると共に、ミキサ111とローカル信号生成回路104の間に分周比を1とM(Mは2以上の整数)とで切替可能な分周器312を設け、VCO101の周波数帯域選択時に分周器311、312の分周比を2以上の整数に切り替えることにより、消費電力を低減できる。
【0046】
(実施の形態4)
図8及び図5との対応部分に同一符号を付して示す図10に、本実施の形態の周波数シンセサイザの構成を示す。周波数シンセサイザ400は、図8の周波数シンセサイザ300と比較して、周波数変換回路310の出力周波数をデジタル変換する周波数−デジタル変換回路201と、周波数−デジタル変換回路201の動作クロックを生成するクロック生成回路202とを備えている点と、位相比較器102に代えて周波数比較器203を備えている点とが異なる。
【0047】
周波数−デジタル変換回路201及び周波数比較器203の構成については、実施の形態2で説明したので、ここでの説明は省略する。
【0048】
本実施の形態の周波数シンセサイザ400によれば、周波数−デジタル変換回路201及び周波数比較器203を備えたデジタル方式のFrequency−Locked−Loop構成であっても、実施の形態3と同様に、VCO101とミキサ111の間に分周比を1とL(Lは2以上の整数)とで切替可能な分周器311を設けると共に、ミキサ111とローカル信号生成回路104の間に分周比を1とM(Mは2以上の整数)とで切替可能な分周器312を設け、VCO101の周波数帯域選択時に分周器311、312の分周比を2以上の整数に切り替えることにより、VCO101の周波数帯域選択時の周波数変換回路310から周波数−デジタル変換回路201への入力周波数及びクロック生成回路202の出力周波数を低くすることができるので、消費電力を低減できる。
【0049】
(実施の形態5)
図11に、実施の形態1〜4のいずれかの周波数シンセサイザを搭載した無線送信装置の構成を示す。無線送信装置500は、実施の形態1〜4のいずれかの周波数シンセサイザ100(200、300、400)と、送信データから変調信号F_IFを形成する変調部501と、周波数シンセサイザ100(200、300、400)により得られたRF帯の送信信号F_outを増幅する増幅器502と、増幅された信号を送信するアンテナ503とを有する。
【0050】
これにより、無線送信装置500においては、本発明の周波数シンセサイザを搭載して構成することにより、消費電力を低減できる。この結果、無線送信装置500を例えば携帯端末に搭載した場合には、長時間の使用が可能な小型の携帯端末を実現できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の周波数シンセサイザ及び無線送信装置は、VCOの出力帯域を選択設定可能な周波数シンセサイザにおいて消費電力を低減できる効果を有し、例えば端末装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1に係る周波数シンセサイザの構成を示すブロック図
【図2】実施の形態の動作の説明に供する図
【図3】実施の形態1の周波数シンセサイザにおける周波数特性例を示す図
【図4】実施の形態1に対する比較例における周波数特性例を示す図
【図5】実施の形態2の周波数シンセサイザの構成を示すブロック図
【図6】周波数−デジタル変換回路の構成例を示す接続図
【図7】周波数−デジタル変換回路の動作の説明に供する図
【図8】実施の形態3の周波数シンセサイザの構成を示すブロック図
【図9】実施の形態3の周波数シンセサイザにおける周波数特性例を示す図
【図10】実施の形態4の周波数シンセサイザの構成を示すブロック図
【図11】実施の形態5の無線送信装置の構成を示すブロック図
【図12】特許文献1で開示されている送信装置の概略構成を示すブロック図
【図13】特許文献2で開示されている周波数シンセサイザの構成を示すブロック図
【図14】VCOの制御電圧対発振周波数の特性を示す図
【符号の説明】
【0053】
100、200、300、400 周波数シンセサイザ
101 電圧制御発振器(VCO)
102 位相比較器
103 ループフィルタ
104 ローカル信号生成回路
105 VCO周波数帯域切替制御回路
110、310 周波数変換回路
111 ミキサ
112、311、312 分周器
113、114 スイッチ
201 周波数−デジタル変換回路
202 クロック生成回路
203 周波数比較器
500 無線送信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択可能な複数の発振周波数帯域を有し、制御電圧端子に印加される電圧に応じた周波数の信号を発振する電圧制御発振器と、
互いに並列に接続されたミキサと分周器とを有し、前記ミキサ又は前記分周器のいずれか一方を選択的に用いて、前記電圧制御発振器の出力信号の周波数をダウンコンバートする周波数変換回路と、
前記周波数変換回路から出力された信号と、基準信号とを比較し、比較結果信号を出力する比較器と、
前記比較結果信号を平滑化し、平滑化した信号を前記電圧制御発振器の前記制御電圧端子に出力するループフィルタと、
を具備する周波数シンセサイザ。
【請求項2】
前記周波数変換回路は、前記電圧制御発振器の発振周波数帯域の選択が行われる際に、前記分周器を使用する、
請求項1に記載の周波数シンセサイザ。
【請求項3】
前記比較器は、位相比較器であり、前記周波数変換回路から出力された信号の位相と、前記基準信号の位相とを比較し、その位相差を示す前記比較結果信号を出力する、
請求項1に記載の周波数シンセサイザ。
【請求項4】
前記周波数変換回路から出力された信号の周波数をデジタル変換する周波数−デジタル変換回路を、さらに具備し、
前記比較器は、周波数比較器であり、前記周波数−デジタル変換回路から出力された信号の周波数情報と、前記基準信号の周波数とを比較し、その周波数差を示す前記比較結果信号を出力する、
請求項1に記載の周波数シンセサイザ。
【請求項5】
前記周波数変換回路は、前記電圧制御発振器の発振周波数帯域の選択が行われる場合に、前記分周器を使用し、前記電圧制御発振器の発振周波数帯域が目標周波数をカバーする帯域となった場合に、前記ミキサを使用する、
請求項1に記載の周波数シンセサイザ。
【請求項6】
請求項1に記載の周波数シンセサイザを具備する無線送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−81247(P2010−81247A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246624(P2008−246624)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】