周波数検出方法及び装置
【課題】所望の周波数分解能力を維持しながらフーリエ変換におけるサンプリング周波数を低くしてサンプル数を少なくし、複素乗算回数を減らす。
【解決手段】周波数fcを含む所定の周波数帯域幅Δfp内で受信信号の周波数解析を行う装置は、受信信号の周波数変換を行う変調器3と、変調器3の出力に接続したアナログフィルタ4と、アナログフィルタ4の出力をオーバーサンプリングでデジタル信号に変換するA/D変換器6と、A/D変換器6の出力から周波数帯域幅Δfpに相当する成分を抽出するデジタルBPF(バンドパスフィルタ)7と、周波数ゼロからΔfpに相当する帯域幅内に配置されるように、デジタルBPF7から出力される信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング部8と、ダウンサンプリング部8の出力に対して高速フーリエ変換を行うFFT処理部9とを備える。
【解決手段】周波数fcを含む所定の周波数帯域幅Δfp内で受信信号の周波数解析を行う装置は、受信信号の周波数変換を行う変調器3と、変調器3の出力に接続したアナログフィルタ4と、アナログフィルタ4の出力をオーバーサンプリングでデジタル信号に変換するA/D変換器6と、A/D変換器6の出力から周波数帯域幅Δfpに相当する成分を抽出するデジタルBPF(バンドパスフィルタ)7と、周波数ゼロからΔfpに相当する帯域幅内に配置されるように、デジタルBPF7から出力される信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング部8と、ダウンサンプリング部8の出力に対して高速フーリエ変換を行うFFT処理部9とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望する周波数範囲の受信信号に対してフーリエ変換を適用することによる周波数解析の技術分野に関し、特に、所望の周波数分解能力を維持しながらフーリエ変換におけるサンプル数を減らして演算処理時間を短縮でき、これにより、フーリエ変換における演算速度を実質的に向上させた周波数検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある決まった周波数の音波信号や電波信号を媒質に対して発射(送信)して媒質中の対象物(ターゲット)で反射させ、反射してきた信号(反射エコー)を受信したとき、その反射エコーの周波数は、ドップラー効果により、信号の送受信器と対象物との相対的な速度に応じて変化する。逆に言えば、媒質から受信した反射エコーの周波数を解析することにより、対象物の移動速度あるいは自装置の移動速度を求めることができる。周波数解析には、DFT(離散フーリエ変換:Discrete Fourier Transform)やFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)などの手法が用いられる。サンプル数(データ点数)が2のべき乗個であるときには、より高速で演算処理を行うことが可能なFFTが一般的に用いられる。データ点数をNとすると、DFTでの複素乗算の演算回数はN×Nとなる。また、N=2nであるとすれば、FFTでの複素乗算の演算回数はN×log2 2n、すなわちN×log2 Nで表される。
【0003】
以下に説明するように、反射エコーにおいてドップラー効果によって変化し得る周波数の範囲は、自装置と対象物との間の考え得る最大の相対速度に応じて決まるから、反射エコーの周波数解析によって自装置あるいは対象物の移動速度を測定する装置では、反射エコーすなわち受信信号の周波数の測定範囲を予め決めて周波数解析を実行する。このようにして、媒質からの反射エコーの周波数解析を実行して対象物や自装置の速度を測定する機器として、例えば、ドップラーレーダーや超音波ドップラー速度計等がある。なお、送信した信号の周波数と反射エコーの周波数との差をドップラー周波数と呼ぶ。
【0004】
また、媒質中に送信する音波信号あるいは電波信号としてパルス状のものを使用すれば、反射エコーもパルス状の信号として得られるが、信号パルスの発射から反射エコーの受信までの時間を媒質中での信号伝搬速度の2倍で除算することにより、送受信器から対象物までの距離も求めることができる。
【0005】
以下、反射エコーの周波数解析による速度測定について説明する。ここでは、媒質が水(海水)であり、音波信号を海中に発射する場合を考える。
【0006】
送信回路によって一定の送信周波数ftxの信号を生成し、送受波器からこの周波数ftxの音波信号を水中に発射する。媒質中を反射物(対象物)が移動しているとして、ドップラー周波数fdopは、対象物の移動速度をV[m/s]、媒質中の音波伝搬速度をC[m/s]とすると、媒質中の信号の伝搬速度が対象物の速度よりも十分に速い場合(C≫V)には、次の近似式で表される。
【0007】
【数1】
【0008】
ここでθは、対象物から送受波器を見たときの方向と対象物の移動方向とがなす角度であり、同じ方向であれば(対象物が送受波器にむかってまっすぐ進んでいるときには)、θ=0となる。したがって、ドップラー周波数fdopは、対象物が近付いているときには正(+)となり、遠ざかるときには負(−)となる。
【0009】
図1は、従来の周波数検出方法を説明する図であって、受信信号(反射エコーを受信した信号)と中間周波数の信号との関係を示すスペクトル図である。図において、周波数範囲Δfp(12)は、送受波器と対象物との相対速度に基づいて変化する受信信号の周波数の範囲を示しており、ドップラー周波数fdopはΔfpの範囲内で変化することになる。周波数範囲Δfpの中心、つまりドップラー周波数fdopがゼロのときの受信信号の周波数fc(14)は、送信周波数ftxと一致する(fc=ftx)。
【0010】
海中に送信する音波信号としてftx=120kHzの超音波を用いるものとして、移動する対象物からの反射エコーのドップラー周波数fdopを求めて、対象物の移動速度を求めるものとする。検出する速度Vの最大値は10m/sであるとし、対象物は送受波器に向かって真っ直ぐに移動している(すなわちθ=0°)とする。海水中での音波の伝搬速度CをC=1500m/sとすると、式1−1により
【0011】
【数2】
【0012】
となり、検出最大速度が10m/sであるとすれば、受信信号として観測される周波数範囲Δfpは、120±1.6(KHz)となる。
【0013】
測定する速度範囲すなわち検出最大速度は、通常、予め決められているので、測定に際してドップラー周波数範囲についても予め定められていることになる。速度の測定精度を0.1m/sとするために必要な周波数分解能は、16Hzとなる。
【0014】
周波数解析に用いられる手法のうち、離散フーリエ変換(DFT)は、次の式で表される。
【0015】
【数3】
【0016】
DFTまたはFFTのサンプリング周波数をfft、フーリエ変換の基本波の周期をT0とすると、周期の逆数は、フーリエ変換での基本周波数f0と呼ばれ、
f0=1/T0 :式1−4
と表される。この基本周波数f0は、DFTやFFTでの最小分解周波数、すなわち周波数の分解能となる。サンプルされた信号点の総数すなわちサンプル数をNとすると、
T0=N/fft :式1−5
が成立し、周波数分解能である最小分解周波数f0は、
f0=1/T0=fft/N :式1−6
と表されることになる。逆に、所望の周波数分解能f0が与えられたとして、必要なサンプル数Nは、
N=fft/f0 :式1−7
で表されることになる。
【0017】
図2は、海水などの媒質から受信された反射エコーの受信波形を示している。周波数解析を行う際には、このような受信波形で示される受信信号から、期間T0で表される部分を取り出してフーリエ変換を行うことになる。
【0018】
ところで、ドップラー周波数を含んだ受信信号からFFTあるいはDFTなどの手法によりフーリエ変換で周波数を求めるためには、アナログ信号である受信信号をデジタル信号に変換することが必要である。サンプリング定理から、このアナログ/デジタル(A/D)変換でのサンプリング周波数は、入力信号の2倍以上の周波数でなければならない。言い換えると、A/D変換の対象となる入力信号はサンプリング周波数の1/2以下でなければならない。
【0019】
図3は、超音波信号を媒質中に放射し受信信号に対してフーリエ変換を行う従来の周波数検出装置の構成の一例を示すブロック図である。ここでは、受信信号に対して中間周波数信号への周波数変換を行うことなく、受信信号をその本来の周波数帯域でサンプリングしてフーリエ変換を行っている。このように受信信号の本来の周波数帯域でサンプリングを行ってフーリエ変換を行う構成を、ストレートアンプ方式と呼ぶ。
【0020】
超音波信号を水中に送信し反射エコーを受信して受信信号とする送受波器1は、送受信切替え回路11を介して、送信回路10の出力と受信増幅器2の入力に接続している。受信増幅器2の出力は、A/D変換でのエリアシングを防ぐための高次アナログフィルタ26を介して、A/D変換器27の入力に供給される。A/D変換器27の出力は、デジタルBPF(バンドパスフィルタ;band-pass filter)7を介して、FFT処理による周波数解析を実行するFFT処理部9に供給される。FFT処理部9から、周波数解析結果が出力される。
【0021】
この周波数検出装置では、水中に超音波信号を発射する時には、送信周波数ftxの信号を送信回路10から送受信切替え回路11を介して送受波器1に供給する。その後、送受信切替え回路11を受信側とし、媒質(水中)からの反射エコーを送受波器1で受信して電気信号である受信信号に変換し、送受信切替え回路11を介してこの受信信号を受信増幅器2に供給する。受信増幅器2は受信信号を信号増幅する。高次アナログフィルタ26は、信号増幅された受信信号から所定の周波数帯域の部分を取り出す。
【0022】
図4は、受信信号とサンプリング周波数などとの関係を示すスぺクトル図である。上述したように、ドップラー周波数による受信信号の変化範囲Δfpの中心、つまりドップラー周波数がゼロのときの受信信号の周波数fc(14)で、送信周波数ftxと同じである(fc=ftx)。ここで周波数解析の対象としたいドップラー周波数の範囲は、符号12で示すΔfpの範囲である。
【0023】
高次アナログフィルタ26は、A/D変換でのエリアシングを防ぐためのものであるので、このフィルタには、BPFかローパスフィルタ(LPF;low-pass filter)が使用される。以下では、説明のため、通過帯域におけるリップルが少ないバターワース型LPFを高次アナログフィルタ26に使用するものとする。図4においては、LPFとして構成された高次アナログフィルタ26の周波数特性が、符号21により示されている。A/D変換におけるエリアシングを考えると、A/D変換器27におけるA/D変換のデータ幅が8ビットであるときには、サンプリング周波数fadc(40)の1/2の周波数すなわちfadc/2(41)での信号レベルが、フィルタにおける通過帯域での信号レベルを基準として−48dB以下であれば、完全にエリアシングは起こらない。同様に、16ビット幅のA/D変換の場合には、信号レベルが−96dB以下であればエリアシングは完全に起らない。したがって、高次アナログフィルタ26は、受信信号における着目する周波数帯域(周波数fcを中心とする範囲Δfp)をその通過帯域内に含むとともに、周波数fadc/2では上述した減衰量(8ビット幅のA/D変換であれば−48dB、16ビット幅であれば−96dB)を有するものである必要がある。逆に言えば、減衰量がこの値となるまでfadc/2を高くし、その分、サンプリング周波数fadcも高くする必要がある。
【0024】
以下では、A/D変換のデータ幅が8ビットであるものとして説明を進める。図5は、バターワース型LPFの周波数特性の一例を示している。符号31は2次のLPFの周波数特性を示している。2次のLPFでは、−48dBの減衰量となる。高次アナログフィルタ26として2次のLPFを用いた場合には、その通過帯域の周波数に比べ、−48dBの減衰量となる周波数が高くなりすぎ、その分、サンプリング周波数も高くなり、現実的でない。したがって、高次アナログフィルタ26には、2次のLPFよりもはるかに大きな高域減衰特性が必要となる。バターワース型LPFは、その次数1段あたり−6dB/oct.(オクターブ)の減衰特性を有しているから、着目している信号(受信信号)の周波数上限の2倍の周波数の信号に対する信号レベルを−48dBとするためには、48/6=8であることにより、8次のLPFを用いる必要がある。図5の符号30は、8次LPFの周波数特性を示している。図5の符号29は16次のLPFの特性を示しているが、16ビット幅のA/D変換を行う場合には、16次のLPFの特性が必要となる。もっとも、アナログフィルタを構成する回路部品の精度の制約から、16次のLPFを構成することは現実的でない。8次のLPFを用い、さらにサンプリング周波数を2倍にすることで、−96dBという16ビット幅A/D変換に要求される減衰量を確保できるが、非常に非効率なものとなる。
【0025】
8ビット幅A/D変換を用いる場合に戻ると、図4に示すように、受信信号の中心周波数fcが120KHzであり、Δfpの周波数帯域幅自体はfcに比べて十分に小さいとして、周波数240KHzにおいては高次アナログフィルタ26が十分な減衰量を有するので、この周波数240KHzの2倍である480KHzをサンプリング周波数fadcとしている。ドップラー周波数において要求される分解能16Hzを満足するためには、式1−7から、サンプル数Nは、N=480000/16=30000となる。
【0026】
FFTにおいてデータ点数は2のべき乗であることが必要であるので、30000以上であって30000に最も近い215(=32768)をサンプル数Nとすると、式1−6より、f0=480000/32768=14.65[Hz]の周波数分解能となる。このとき、FFT計算で実行される複素乗算の回数は、
FFT複素乗算回数: 215×log2 215=491520
となる。FFTの代わりにDFTを用いて周波数解析を行うものとすれば、DFTにおいてはデータ点数が2のべき乗である必要はないので、FFTの場合と同じ条件でDFT計算を行ったときの複素乗算の回数は、
DFT複素乗算回数: 30000×30000=900000000
となる。DFTを用いた場合には、9×108回という異常に多回数の複素乗算を行う必要が生じ、本発明で想定しているような周波数解析に対しては現実的ではない。FFTを用いた場合であっても、ほぼ5×105回という膨大な回数の複素乗算演算が必要となり、FFT演算器の処理能力と処理時間がかかり過ぎて実用的ではない。また、高次アナログフィルタである前述のLPFは、そのようなLPFを構成するための部品の精度や温度係数などの影響で実現が困難であるし、もし実現するとしても、高精度の部品を用いて長時間にわたる調整が必要となるので、コストが著しくかかりすぎる問題を有する。
【0027】
そこで、ストレートアンプ方式ではなく、受信信号をそれよりも低い周波数の中間周波数の信号に周波数変換し、その後、フーリエ変換を行うことが考えられている。特に、超音波を海中に発射して反射エコーを取得し周波数解析を行う場合、反射エコーによる受信信号は非常に微弱な信号であるので受信増幅器には高利得が必要であるが、周波数変換を行わずに高利得で増幅すると、増幅器の出力信号が入力にクロストークして発振を起こす可能性がある。中間周波数に受信信号を周波数変換した場合にはこのようなクロストークの問題が起こりにくいという利点もある。
【0028】
図6は、受信信号を中間周波数の信号に周波数変換してからA/D変換を行うようにした従来の周波数検出装置の構成の一例を示すブロック図である。受信信号を中間周波数の信号に周波数変換してからA/D変換し、再サンプリングなどを行うことなくA/D変換で得られたデジタル信号に対してフーリエ変換を行う構成を周波数変換方式と呼ぶことにする。図6に示した周波数検出装置は、図3に示したものと同様の構成のものであるが、周波数変換方式のものであり、受信増幅器2の出力と高次アナログフィルタ26の入力との間に変調器3が設けられ、変調器3に対して局部発振回路6から局部発振周波数flocの信号が供給されている点で、図3に示したものとは異なっている。後述するように、変調器3は周波数fcで表される受信信号を周波数fmidで表される中間周波数の信号に周波数変換するものである。図6には示されていないが、A/D変換などに適した振幅の信号とするために、周波数変換後の受信信号を増幅する増幅器が変調器3とA/D変換器27の間に設けられていてもよい。
【0029】
次に、図6に示した周波数検出装置の動作について、上述の図1に示したスペクトル図を参照しながら説明する。
【0030】
水中への超音波信号の発射と反射エコーに基づく受信信号の受信増幅器2による信号増幅とについては、図3に示した周波数検出装置の場合と同様に行われる。受信増幅器2で信号増幅された信号は、変調器3へ被変調信号として入力する。受信増幅器2から出力される信号自体は、図1において符号56で示されるような周波数帯域を有するものとする。受信信号の帯域は、符号56で示す周波数帯域の一部であり、受信信号の周波数帯域の中心は、測定しようとするドップラー周波数の中心となる。これは、ドップラー周波数がゼロの時の周波数fc(14)であって、送信周波数ftxと同じである(fc=ftx)。変調器3は、局部発振周波数floc(15)も供給され、受信信号と局部発振周波数の信号とを乗算して、受信信号を中間周波数fmidの信号に変換する。受信信号の上限周波数をfmax(38)とし、下限周波数をfmin(37)とすると、フーリエ変換を実行すべき周波数範囲Δfp(12)は、Δfp=fmax−fminで表される。
【0031】
変調器3における中間周波数fmidの信号の生成は、下記の式で表されるものであり、2つの変換周波数からローパスフィルタかバンドパスフィルタを使用して、低い方の周波数を得る。
【0032】
【数4】
【0033】
受信信号での周波数範囲Δfpは、中間周波数fmidを中心に、
【0034】
【数5】
【0035】
の範囲に変換されることとなり、検出対象の周波数帯域Δfpは、周波数変換しても保たれる。上記の式は、floc>fcの時の処理を示しているが、floc<fcの時も、複号(符号(±))が逆になるだけで、同様に処理がなされる。
【0036】
図1において、図の右側部分が、受信信号と局部発振周波数flocとの関係を表しており、ここでは、受信信号よりも高周波側に局部発振周波数flocが選択されるとして(つまりfloc>fc+Δfp/2)、fmid(36)は、fmid=floc−fcの関係を満たしている。一方、図1の左側部分は、受信信号を中間周波数信号に変換した後のスペクトルを示している。ここでは中間周波数信号の中心周波数はfmid(18)となっている。上述の周波数帯域56も周波数帯域39に変換され、符号12で示される受信信号でのΔfpの帯域は、周波数変換により、符号16で示される帯域に移っている。すなわち帯域16は、変調器3によって周波数変換して低い方の周波数成分だけを取り出すことによって中間周波数信号とされ、高次アナログフィルタ26を通過させた後の受信信号におけるΔfpの帯域を表している。このように中間周波数fmidの信号に変換された後の信号に対してA/D変換を行い、フーリエ変換を実行するが、この場合も、上述と同様にサンプリング定理に従う。
【0037】
図7は、中間周波数への周波数変換を行う場合に用いられるLPFの周波数特性の一例を示している。以下、図7を用いて、受信信号の周波数帯域を説明する。
【0038】
ドップラー周波数の最大値が1600Hz、フーリエ変換に要求される周波数分解能が16Hzであるとする。式2−3に示すように、受信信号を中間周波数信号に変換したとしても、ドップラー周波数の周波数範囲Δfpそのものは変化しない。その一方で、受信信号と局部発振周波数の信号がクロストークしたり混変調を起したりしないように、局部発振周波数flocを選ぶ必要がある。ここでは、受信信号からその周波数で1割以上離れた局部発振周波数flocを選ぶこととし、17KHz離すこととする。局部発振周波数flocはfloc=fc+17kHz=137KHzとなり、中間周波数fmidは17KHzとなる。このとき、アナログLPFの通過帯域(全帯域)Wは、
【0039】
【数6】
【0040】
とする必要がある。Δfp/2=1600Hzであり、これに適切なα(減衰域)とfmidとを加算すると、LPFは、図7に示すように、20KHzまでの信号を完全に通過させるものであればよい。図7において、符号34は2次のLPFの特性を示しており、符号33は4次のLPFの特性を示しており、符号32は8次のLPFの特性を示している。アナログLPFでは、構成部品の精度や温度係数などから、8次のLPFを構成することはコスト面からも実用的ではないので、4次のLPFを高次アナログフィルタ26に用いるものとする。
【0041】
上述したように、8ビット幅A/D変換では、サンプリング周波数の1/2の周波数での信号レベルを通過帯域に比べて−48dBとすれば、エリアシングの問題は生じない。図8は、中間周波数に変換された信号とA/D変換のサンプリング周波数の関係を示している。図8においては、サンプリング周波数は、f2ad(28)で示されている。ここでは4次のLPFを使うこととしたので、−48dBの周波数は80kHzとなり、サンプリング周波数f2adの半分の周波数f2ad/2(27)も80kHzに設定される。したがって、A/D変換は、160kHzのサンプリング周波数f2adで行なわれることになる。
【0042】
その結果、式1−7から、分解能の条件を満たすサンプル数Nは、N=f2ad/f0=160000/16=10000となる。FFTのデータ点数は2のべき乗個とすべきであることから、FFTではサンプル数を16384(=214)とし、このときの周波数分解能f0は、f0=160000/16384=9.77[Hz]となる。ストレートアンプ方式の場合と同様に、FFTとDFTのそれぞれの場合の複素乗算回数を求めると、
DFT複素乗算回数: 10000×10000=100000000)
FFT複素乗算回数: 214×log2 214=229376
となる。DFTは、必要とする複素乗算回数が1×108回と極めて膨大となり、本発明のような周波数解析の用途には実用的ではない。FFTを用いる場合であっても、膨大な演算が必要となり、FFT演算器に高い処理能力を要求するとともに長大な処理時間を必要とし、その結果、強力なDSP(デジタル信号プロセッサ)やソフト演算能力を備えたCPUが必要となり、周波数検出装置のコストを上昇させる。
【0043】
なお特許文献1には、FFTにおける演算ポイント数を減らしつつ、周波数分解能を高めるようにした信号処理方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】WO2006/043511
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
反射エコーを受信して得られた受信信号に対してドップラー周波数を求めるためなどに、フーリエ変換による周波数解析を行う場合、ストレートアンプ方式では、ドップラー周波数における周波数変化幅に比べて著しく高い周波数でサンプリングを行うため、フーリエ変換での複素乗算回数が極めて膨大なものとなり、演算処理が困難になる。受信信号を中間周波数信号に変換してからフーリエ変換を行う場合であっても、周波数変換時のクロストークや混変調を避けるために中間周波数をそれほど小さくすることはできないから、やはり、サンプリング周波数が高くなってフーリエ変換での複素乗算回数が膨大となり、演算処理が困難になることがある。また膨大な複素演算を行うためには超高速な演算処理器を使用する必要があり、多大なコストがかかるという問題があった。サンプリング定理からの要請を満たしつつサンプリング周波数を低くするためには、受信信号から高域成分を除去するためのアナログLPFやアナログBPFとして急峻な減衰特性を有するものを使用することも考えられるが、アナログフィルタを構成する部品の精度や温度特性を考慮すると、急峻な特性のアナログフィルタを使用することは現実的ではない。
【0046】
本発明の目的は、所望の周波数分解能力を維持しながらフーリエ変換におけるサンプリング周波数を低くしてサンプル数を少なくし、これによってフーリエ変換での複素乗算回数を減らすことができる周波数検出方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本発明の周波数検出方法は、第1の周波数を含む所定の周波数帯域幅内で受信信号における周波数解析を行う方法であって、第1の周波数とは異なる中間周波数の信号に受信信号を周波数変換する段階と、アナログフィルタを適用して、周波数変換された信号から高域成分を除去する段階と、アナログフィルタを適用した後の信号に対して第2の周波数でサンプリングしてA/D変換する段階と、A/D変換で得られたデジタル信号に対してデジタルバンドパスフィルタを適用し、所定の周波数帯域幅に相当する信号のみを抽出する段階と、第2の周波数の2のべき乗分の1の周波数である第3の周波数をサンプリング周波数として、デジタルバンドパスフィルタから出力される信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング段階と、ダウンサンプリングによって抽出された信号に対して高速フーリエ変換を行う段階と、を有し、ダウンサンプリング段階において、ダウンサンプリングによって抽出される信号の周波数帯域が周波数ゼロから所定の周波数帯域幅に相当する帯域幅内に配置される。
【0048】
本発明の周波数検出装置は、第1の周波数を含む所定の周波数帯域幅内で受信信号における周波数解析を行う装置であって、受信信号を第1の周波数とは異なる中間周波数の信号に周波数変換する周波数変換手段と、周波数変換された信号から高域成分を除去するアナログフィルタと、アナログフィルタから出力される信号を第2の周波数でサンプリングしてA/D変換するA/D変換器と、A/D変換器の出力に接続され、所定の周波数帯域幅に相当する信号のみを含むデジタル信号を出力するデジタルバンドパスフィルタと、第2の周波数の2のべき乗分の1の周波数である第3の周波数をサンプリング周波数として、デジタルバンドパスフィルタから出力される信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング手段と、ダウンサンプリング手段から出力されるデジタルデータ列に対して高速フーリエ変換を行うFFT手段と、を有し、ダウンサンプリング手段から出力されるデジタルデータ列における信号の周波数帯域が周波数ゼロから所定の周波数帯域幅に相当する帯域幅内に配置されている。
【発明の効果】
【0049】
本発明では、所望の周波数帯域の信号に対してフーリエ変換を適用しその周波数帯域でのパワースペクトル求める際に、周波数変換、オーバーサンプリングでのA/D変換、デジタルフィルタリングによる所望の周波数帯域幅Δfpの成分の抽出、及びダウンサンプリングを行うことによって、所望の周波数帯域幅Δfpを周波数ゼロから始まってfbs=Δfpあるような最大周波数fbsまでの帯域に移している。その結果、fbsの2倍(すなわちΔfpの2倍)の周波数をサンプリング周波数としてフーリエ変換を行うことが可能になって、最小のサンプル数でのフーリエ変換が可能になり、複素乗算の回数を減らして高速でのスペクトル解析が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の周波数検出方法における中間周波数信号の変換とフィルタ特性を示すスペクトル図である。
【図2】超音波信号を送信した反射エコーの受信波形を示す図である。
【図3】中間周波数への周波数変換を行うことなくFFTによる周波数解析を行う従来の周波数検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】中間周波数への周波数変換を行わない場合の受信信号とサンプリング周波数などとの関係を示すスペクトル図である。
【図5】中間周波数への周波数変換を行わない場合に用いられるアナログLPF(ローパスフィルタ)の特性の一例を示すグラフである。
【図6】中間周波数への周波数変換を行ってFFTによる周波数解析を行う従来の周波数検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】中間周波数への周波数変換を行う場合に用いられるアナログLPFの特性の一例を示すグラフである。
【図8】図6に示す装置におけるA/D変換でのサンプリング周波数と中間周波数との関係を示すスペクトル図である。
【図9】本発明の実施の一形態の周波数検出装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示した周波数検出装置における受信信号の中間周波数信号への変換を説明するスペクトル図である。
【図11】図9に示す周波数検出装置におけるFFTの対象となる信号を示すスペクトル図である。
【図12】2のべき乗でダウンサンプリングした時の信号を説明するスペクトル図である。
【図13】デジタルBPF(バンドパスフィルタ)により不要な周波数成分を削除した後の信号を示すのスペクトル図である。
【図14】中間周波数とA/D変換器のサンプリング周波数との関係を示すスペクトル図である。
【図15】FFTによる周波数スペクトル解析結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
媒質に対してある決まった周波数の音波信号や電波信号を発射(送信)して媒質中の対象物(ターゲット)で反射させ、反射してきた信号(反射エコー)を受信する場合を考える。ドップラー効果によって反射エコーの周波数は元の音波信号あるいは電波信号の周波数からずれるが、そのずれの大きさすなわちドップラー周波数の周波数帯域幅は、対象物との間の相対的な移動速度が媒質中での信号の伝搬速度に比べて十分に小さい場合には、元の信号の周波数に比べて十分に小さくなる。例えば、ftx=120kHzの超音波信号を水中に反射し、最大測定速度Vを10m/sとしたとき、上記の式1−1から、ドップラー周波数fdopの最大値は1600Hzとなる。対象物の移動方向は近づく方向の場合と遠ざかる方向の場合があるから、ドップラー周波数の周波数帯域幅Δfpは3200Hzとなるが、これは120kHzである送信周波数ftxに比べて十分に小さい。周波数帯域幅Δfpに隣接する減衰域を考慮しないとすれば、受信信号からこのΔfpの範囲内の周波数成分のみを取り出して0から3200Hzの範囲内に配置し、これに対してフーリエ変換を行えば、十分に小さなサンプリング周波数で十分な周波数分解能が得られるはずであり、必要な周波数分解能を得るために最小のサンプル数でフーリエ変換を実行できるはずである。従来技術においては、きわめて低い周波数への周波数変換の困難さや、急峻な特性で高域成分を除去するためのアナログフィルタの実現の困難さのために、最小のサンプル数でフーリエ変換を行って周波数解析を行うことができなかった。
【0052】
ここで注意すべきことは、式1−4に示したように、フーリエ変換による周波数分解能f0自体は、フーリエ変換の基本波の周期T0すなわち図2に示すように信号の切り出しの長さT0の逆数で表され、サンプリング周波数fftには依存しないことである。周波数分解能f0を一定としてサンプリング周波数fftが高くなれば、式1−7に基づいてサンプル数Nも増加して演算量が増大するが、増加したサンプル数N自体は、周波数解析によって検出可能な周波数範囲をより高周波側に広げることには寄与するが、周波数分解能の向上には寄与しない。サンプリング周波数が高いということは、ドップラー周波数の考え得る変化範囲を超えて、無駄に広い周波数範囲に対して実質的に周波数解析を行っていることを意味する。
【0053】
図9に示す本発明の実施の一形態の周波数検出装置は、オーバーサンプリングによってA/D変換を行った後、デジタルバンドパスフィルタ(D−BPF)を通して必要とする周波数帯域を取り出し、その後、ダウンサンプリングを行うことで、受信信号における周波数解析の対象となる周波数帯域を周波数ゼロから最低周波数範囲に実質的に移動させている。これにより、周波数解析の対象となる周波数帯域幅の2倍に相当するサンプリング周波数でフーリエ変換を行うことが可能となり、最小のサンプル数でフーリエ変換を行って周波数解析を行うことが可能になる。つまり、本実施形態の周波数検出装置によれば、所望する周波数分解能によって、周波数解析の対象としたい周波数帯域に対するパワースペクトル解析を行うことができ、かつ、サンプル数が最小であるので、最速のフーリエ変換を行うことができる。以下、図9に示した周波数検出装置について説明する。図9に示したものは、図6に示したものと同様に、超音波信号を媒質である水中に発射し、対象物からの反射エコーを受信してドップラー周波数の周波数解析を行うものである。
【0054】
図9に示した周波数検出装置において、超音波信号を水中に送信し反射エコーを受信して受信信号とする送受波器1は、送受信切替え回路11を介して、送信回路10の出力と受信増幅器2の入力に接続している。受信増幅器2の出力は、周波数変換を行うための変調器3に供給されている。変調器3には、局部発振回路4から局部発振周波数flocの信号も供給されている。変調器3の出力は、アナログフィルタ5を介して、オーバーサンプリングを行うA/D変換器6の入力に供給されている。A/D変換器6から出力されるデジタル信号は、デジタルBPF7を介して、ダウンサンプリングを行うダウンサンプリング部8に供給され、ダウンサンプリング部8でダウンサンプリングされたデジタル信号は、デジタルデータ列であるサンプル列として、FFT処理による周波数解析を実行するFFT処理部9に供給される。FFT処理部9から、周波数解析結果が出力される。
【0055】
この周波数検出装置では、水中に超音波信号を発射する時には、送信周波数ftxの信号を送信回路10から送受信切替え回路11を介して送受波器1に供給する。その後、送受信切替え回路11を受信側とし、媒質(水中)からの反射エコーを送受波器1で受信して電気信号である受信信号に変換し、送受信切替え回路11を介してこの受信信号を受信増幅器2に供給する。受信増幅器2は受信信号を信号増幅する。受信増幅器2で信号増幅された信号は、変調器3へ被変調信号として供給され、変調器3において中間周波数信号に変換される。
【0056】
図10は、受信信号と、局部発振回路4から変調器3に供給される局部発振周波数floc(15)の信号と、周波数変換後の中間周波数fmid(36)の信号との関係を示している。受信増幅器2から出力される信号自体は、図10において符号13で示されるような周波数帯域を有するものとする。受信信号の帯域12は、符号13で示す周波数帯域の一部であり、受信信号の周波数帯域の中心は、測定しようとするドップラー周波数の中心となる。これは、ドップラー周波数がゼロの時の周波数fc(14)であって、送信周波数ftxと同じである(fc=ftx)。変調器3は、受信信号と局部発振周波数flocの信号とを乗算して、受信信号を中間周波数fmidの信号に周波数変換する。ここでは、上述の図1と同様に、局部発振周波数flocは受信信号よりも高い周波数に設定される、すなわちfloc>fc+Δfp/2であるものとする。受信信号の上限周波数をfmax(38)とし、下限周波数をfmin(37)とすると、フーリエ変換を実行すべき周波数範囲Δfp(12)は、Δfp=fmax−fminで表される。本実施形態の周波数検出装置では、フーリエ変換における最小サンプル数を実現するために、図11に示すように、ドップラー周波数の変化範囲Δfpを最終的に最小の周波数範囲に収めるようにする。言い換えれば、フーリエ変換の対象とする最高周波数をfbsとして、fbs=Δfpとなるように、周波数ゼロから周波数fbsまでの範囲内に周波数解析の範囲Δfpを収めるようにする。以下、Δfpの範囲をこのように配置することについて説明する。
【0057】
図11のスペクトル図において、所望する周波数解析の範囲はΔfp(25)であり、その最高周波数はfbs(23)であるから、フーリエ変換のサンプリング周波数fftは、これの2倍でよい。サンプリング周波数fftとして、Δfpの2倍よりは少し高めの周波数を使用してもよく、周波数範囲Δfpは、A/D変換の時にエリアシングが発生しない範囲にあればよい。
【0058】
まず、中間周波数fmidについて説明する。図12は、2のべき乗でダウンサンプリングした時の信号を説明する図であって、受信信号を中間周波数fmidの信号に周波数変換したときのΔfpの帯域16と、目的とする最小周波数帯に投影したときのΔfpの帯域25とを示している。帯域25の最高周波数23をfbsとすると、fmidを次の式に示すように定めればよい。
【0059】
【数7】
【0060】
fbs(23)をΔfpの帯域幅と同じに設定するとと、
【0061】
【数8】
【0062】
が得られる。このようにして中間周波数fmidを求めたら、次に、局部発振周波数flocを決定する。図10の左側部分に示す中間周波数fmid(18)は、右側部分のfmid(36)と等しく、これはfmid=floc−fcであるから、
floc=fc+fmid=ftx+3.5×Δfp :式3−3
とflocを定めればよい。
【0063】
次に、A/D変換器6でのオーバーサンプリングによるサンプリング周波数fadcについて説明する。図13は、受信信号を中間周波数fmidの信号に周波数変換し、A/D変換器6によりデジタル信号に変換し、その後、デジタルBPF7により不要な周波数成分を削除してΔfpの範囲のみを抽出した信号16と、A/D変換器6のサンプリング周波数fadc(19)との関係を示している。ここで、中間周波数fmidの信号に変換した後のΔfpの範囲の上限周波数21をfmmとおくと、後述するダウンサンプリングを考えて、図12や式3−2に示すように、
fmm=4×fbs :式3−4
とすればよいことが分かる。fmmは、A/D変換器6への入力信号の最高周波数となるから、mを2のべき乗(すなわちnを1以上の整数としてm=2n)として、m倍のオーバーサンプリングを行うこととすれば、式3−1から、サンプリング周波数fadcは、
fadc=fmm×m=4×m×fbs :式3−5
で表されることになる。
【0064】
次に、アナログフィルタ5に要求される特性について説明する。図14は、中間周波数fmid(18)とオーバーサンプリングによるサンプリング周波数fadc(19)との関係を示している。
【0065】
A/D変換器6に対して供給される入力信号は、サンプリング定理に従い、アナログフィルタ5によって予め高域成分が減衰されていなければならない。上述したように、fmm(21)が信号の最高周波数であるから、これをアナログフィルタ5での通過帯域の上限とし、サンプリング周波数fadc(19)の半分の周波数fadc/2(20)において信号が十分に減衰(8ビット幅A/D変換であれば−48dB)していればよい。式3−5よりfmm(21)はfadc/mでもあるから、結局、信号の最高周波数であるfmmからみてそのm/2倍の周波数において十分な減衰が確保できればよいことになる。m倍のオーバーサンプリングを行うことにより、アナログフィルタにおいて必要とされるオクターブあたりの減衰量を1/mに緩和することが可能になって、アナログフィルタの設計が容易になる。m=8とした場合には、4次のバタワース型LPFに相当する減衰特性を有するフィルタをアナログフィルタ5に使用することが可能になり、アナログフィルタ5を容易に構成することが可能になる。
【0066】
次に、デジタルBPF7について説明する。アナログフィルタ5を介してA/D変換器6に入力してサンプリングされた信号は、図14において符号17で示すように、解析対象とする周波数範囲Δfp(16)よりも広い周波数帯域を有している。そこでデジタルBPF7は、符号17で示す周波数範囲の信号から不要な信号成分を取り除き、図13に示すように所望の帯域Δfp(16)のみを取り出してダウンサンプリング部8に供給する。デジタルBPF7としては、BPF特性を有するFIR(有限インパルス応答;finite impulse response)デジタルフィルタを用いることができる。
【0067】
次に、ダウンサンプリング部8によるダウンサンプリングについて説明する。デジタルBPF7によって処理することによって、中間周波数fmidに周波数変換された受信信号は、所望の帯域Δfp(16)の成分のみを有する信号となっている。ダウンサンプリング部8は、この信号を、mによってダウンサンプリングする。言い換えれば、m倍のオーバーサンプリングであるfadcでサンプリングされた信号を、サンプル数が2m分の1になるように、ダウンサンプリングを行う。図12及び図13の符号21は、帯域Δfpの最高周波数fmmを表しているが、式3−5から(fadc/m)=fmmであるから、1/mにダウンサンプリングした周波数fadc/mは、A/D変換時にエリアシングを発生させない最高周波数fmm(21)と等しいことになる。
【0068】
ところで、符号16で表される、中間周波数fmidに変換されたのちの帯域Δfpは、全体として、ダウンサンプリングの周波数fadc/m(21)の半分の周波数fadc/2m(22)よりは高い周波数領域にあり、ダウンサンプリングによるエリアシング領域にあることになる。その結果、ダウンサンプリングを行うことにより、符号16で表される帯域Δfpは、周波数fadc/2m(22)を中心として鏡像対称で折り返され、図12において符号25で表される領域に移ることになる。fmm(21)はこの折り返しにより、符号35で示す周波数に移ることになる。ここでは、Δfp=fbs=fadc/4mとしているので、符号35で示す周波数は0Hzとなる。したがって、ドップラー周波数測定のための周波数解析の対象となる帯域Δfp(25)は、最終的に、0Hzからfbsまでの周波数範囲に移ったことになる。
【0069】
ところで、図11及び図12において、帯域Δfp(25)の最高周波数は符号23で表されるfbsである。デジタルBPF7によるデジタルフィルタリングを行っているので、ダウンサンプリング部8からの出力には、周波数fbsを超える成分は現れない。したがって、fbsの2倍である周波数fadc/2m(22)をフーリエ変換のサンプリング周波数fftとすることができる。
【0070】
【数9】
【0071】
本実施形態の周波数検出装置では、送信周波数ftxが高い場合であっても、ドップラー周波数の変化範囲の帯域幅などの所望する周波数範囲の帯域幅Δfpの2倍の周波数をフーリエ変換でのサンプリング周波数を使用することができ、必要なサンプル数を大幅に減らして演算量を大幅に削減することが可能になる。
【0072】
次に、本実施形態におけるフーリエ変換について説明する。本実施形態では、フーリエ変換の手法として、一般に高速処理ができるFFTを使用し、FFT処理部9においてFFTを実行する。FFTにおけるサンプル数Nとしては2のべき乗を使用し、FFTによって得られる0番目からN−1番目までのN個の結果のうち、複素共役となるものを除いた、0番目から(N−1)/2番目までのものを使用する。図15は、FFTによって得られた結果の一例を示している。
【0073】
図15において、横軸は周波数を表しており、周波数分解能であるf0刻みで離散的に信号強度を示している。n番目のデータに対応する周波数は、n×f0(Hz)で与えられる。信号の中心周波数が分かっているドップラー周波数を求めるときは、(N−1)/4番目を中心にして±Δfp/2の範囲として計算すればよい。FFTのピークパワースペクトルから求めた周波数をffftとすると、ドップラー周波数fdopから速度を求めるには、式1−1から、
【0074】
【数10】
【0075】
を計算すればよいことになる。
【0076】
図11の周波数fmf(24)は、Δfpの中心周波数を表している。FFTによって帯域25でのスペクトルを解析していることになるので、求められたFFT結果から上記のようにn番目の周波数を計算したものを、周波数変換を行う前の中心周波数fcに加減算することにより、元の周波数を知ることができる。
【0077】
以上説明したように本実施形態では、ある定められた周波数を中心周波数とする所望する周波数帯域幅Δfp内の信号からフーリエ変換を用いてパワースペクトル求める際に、Δfpを最大周波数fbsと置き換え(Δfp=fbs)、fbsの2倍のサンプリング周波数でフーリエ変換を行うことができるようにすることにより、Δfpの帯域幅と所望の周波数分解能から定まる最小のサンプル数でフーリエ変換を行うことができるようになって、フーリエ変換での複素乗算回数が少なくすることができ、高速でスペクトル解析を行うことが可能になる。以下、数値を挙げて本実施形態の利点を説明する。
【0078】
送信周波数ftxが120kHzであって、受信信号におけるドップラー周波数の範囲が±1.6kHzであるとする。すなわち、120±1.6(kHz)の範囲について周波数解析を行うものとする。周波数分解能f0は16Hzとする。その結果、観測対象とすべき周波数帯域幅Δfpは、Δfp≧2×1600=3200としなければならない。また、フーリエ変換での最大周波数fbsをfbs=Δfpとする。
【0079】
信号の減衰帯域(900Hz)を考慮して、
Δfp=(1600+900)×2=2500×2=5000
とする。900Hzの減衰帯域の外側では信号はほとんどゼロと考えてよいので、5kHz(すなわちfbs)においては信号はほとんどゼロである。
【0080】
式3−1及び式3−3より、
中間周波数の中心: fmid=3.5×fbs=17500
局部発振周波数: floc=ftx+fmid=120000+17500=137500
となる。また、オーバーサンプリングの係数mをm=4とすると、A/D変換のサンプリング周波数fadcは、式3−5より、
A/D変換: fadc=4×m×fbs=16×5000=80000
フーリエ変換のサンプリング周波数fftは、
【0081】
【数11】
【0082】
となり、フーリエ変換でのサンプル数Nは、N=fft/f0=500となる。500以上であって500に最も近い2のべき乗数は29=512であるので、FFTでのサンプル数NをN=29=512とする。このとき、FFT計算で実行される複素乗算の回数は、
FFT複素乗算回数: 29×log2 29=4608
となる。また、FFTの場合と同じ条件でDFT計算を行ったときの複素乗算の回数は、
DFT複素乗算回数: 500×500=250000
となる。
【0083】
表1は、図9に示した本実施形態の周波数検出装置を用いた場合、図3に示した従来のストレートアンプ方式の周波数検出装置を用いた場合、及び図6に示した従来の周波数変換方式の周波数検出装置を用いた場合の各々における、上記の条件でドップラー周波数の測定を行うために必要な複素乗算の回数をDFT演算による場合とFFT演算による場合の双方について示している。
【0084】
【表1】
【0085】
DFT演算での複素乗算回数で比較すると、本実施形態の周波数解析の手法によれば、従来の手法に比べて複素乗算回数を少なくとも400分の1にすることができ、400倍以上の高速で周波数解析処理を行うことが可能になる。DFT演算によるフーリエ変換では演算回数が多いため、通常は、フーリエ変換での演算としてはFFT演算が用いられるが、FFT演算の場合であっても本実施形態の周波数解析の手法によれば、従来の周波数変換方式を用いる場合に比べ、複素乗算回数が1/50になり、同じ結果を得るために50倍の高速化が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 送受波器
2 受信増幅器
3 変調器
4 局部発振回路
5 アナログフィルタ
6,27 A/D変換器
7 デジタルBPF(バンドパスフィルタ)
8 ダウンサンプリング部
9 FFT処理部
10 送信回路
11 送受信え切替回路
26 高次アナログフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望する周波数範囲の受信信号に対してフーリエ変換を適用することによる周波数解析の技術分野に関し、特に、所望の周波数分解能力を維持しながらフーリエ変換におけるサンプル数を減らして演算処理時間を短縮でき、これにより、フーリエ変換における演算速度を実質的に向上させた周波数検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある決まった周波数の音波信号や電波信号を媒質に対して発射(送信)して媒質中の対象物(ターゲット)で反射させ、反射してきた信号(反射エコー)を受信したとき、その反射エコーの周波数は、ドップラー効果により、信号の送受信器と対象物との相対的な速度に応じて変化する。逆に言えば、媒質から受信した反射エコーの周波数を解析することにより、対象物の移動速度あるいは自装置の移動速度を求めることができる。周波数解析には、DFT(離散フーリエ変換:Discrete Fourier Transform)やFFT(高速フーリエ変換:Fast Fourier Transform)などの手法が用いられる。サンプル数(データ点数)が2のべき乗個であるときには、より高速で演算処理を行うことが可能なFFTが一般的に用いられる。データ点数をNとすると、DFTでの複素乗算の演算回数はN×Nとなる。また、N=2nであるとすれば、FFTでの複素乗算の演算回数はN×log2 2n、すなわちN×log2 Nで表される。
【0003】
以下に説明するように、反射エコーにおいてドップラー効果によって変化し得る周波数の範囲は、自装置と対象物との間の考え得る最大の相対速度に応じて決まるから、反射エコーの周波数解析によって自装置あるいは対象物の移動速度を測定する装置では、反射エコーすなわち受信信号の周波数の測定範囲を予め決めて周波数解析を実行する。このようにして、媒質からの反射エコーの周波数解析を実行して対象物や自装置の速度を測定する機器として、例えば、ドップラーレーダーや超音波ドップラー速度計等がある。なお、送信した信号の周波数と反射エコーの周波数との差をドップラー周波数と呼ぶ。
【0004】
また、媒質中に送信する音波信号あるいは電波信号としてパルス状のものを使用すれば、反射エコーもパルス状の信号として得られるが、信号パルスの発射から反射エコーの受信までの時間を媒質中での信号伝搬速度の2倍で除算することにより、送受信器から対象物までの距離も求めることができる。
【0005】
以下、反射エコーの周波数解析による速度測定について説明する。ここでは、媒質が水(海水)であり、音波信号を海中に発射する場合を考える。
【0006】
送信回路によって一定の送信周波数ftxの信号を生成し、送受波器からこの周波数ftxの音波信号を水中に発射する。媒質中を反射物(対象物)が移動しているとして、ドップラー周波数fdopは、対象物の移動速度をV[m/s]、媒質中の音波伝搬速度をC[m/s]とすると、媒質中の信号の伝搬速度が対象物の速度よりも十分に速い場合(C≫V)には、次の近似式で表される。
【0007】
【数1】
【0008】
ここでθは、対象物から送受波器を見たときの方向と対象物の移動方向とがなす角度であり、同じ方向であれば(対象物が送受波器にむかってまっすぐ進んでいるときには)、θ=0となる。したがって、ドップラー周波数fdopは、対象物が近付いているときには正(+)となり、遠ざかるときには負(−)となる。
【0009】
図1は、従来の周波数検出方法を説明する図であって、受信信号(反射エコーを受信した信号)と中間周波数の信号との関係を示すスペクトル図である。図において、周波数範囲Δfp(12)は、送受波器と対象物との相対速度に基づいて変化する受信信号の周波数の範囲を示しており、ドップラー周波数fdopはΔfpの範囲内で変化することになる。周波数範囲Δfpの中心、つまりドップラー周波数fdopがゼロのときの受信信号の周波数fc(14)は、送信周波数ftxと一致する(fc=ftx)。
【0010】
海中に送信する音波信号としてftx=120kHzの超音波を用いるものとして、移動する対象物からの反射エコーのドップラー周波数fdopを求めて、対象物の移動速度を求めるものとする。検出する速度Vの最大値は10m/sであるとし、対象物は送受波器に向かって真っ直ぐに移動している(すなわちθ=0°)とする。海水中での音波の伝搬速度CをC=1500m/sとすると、式1−1により
【0011】
【数2】
【0012】
となり、検出最大速度が10m/sであるとすれば、受信信号として観測される周波数範囲Δfpは、120±1.6(KHz)となる。
【0013】
測定する速度範囲すなわち検出最大速度は、通常、予め決められているので、測定に際してドップラー周波数範囲についても予め定められていることになる。速度の測定精度を0.1m/sとするために必要な周波数分解能は、16Hzとなる。
【0014】
周波数解析に用いられる手法のうち、離散フーリエ変換(DFT)は、次の式で表される。
【0015】
【数3】
【0016】
DFTまたはFFTのサンプリング周波数をfft、フーリエ変換の基本波の周期をT0とすると、周期の逆数は、フーリエ変換での基本周波数f0と呼ばれ、
f0=1/T0 :式1−4
と表される。この基本周波数f0は、DFTやFFTでの最小分解周波数、すなわち周波数の分解能となる。サンプルされた信号点の総数すなわちサンプル数をNとすると、
T0=N/fft :式1−5
が成立し、周波数分解能である最小分解周波数f0は、
f0=1/T0=fft/N :式1−6
と表されることになる。逆に、所望の周波数分解能f0が与えられたとして、必要なサンプル数Nは、
N=fft/f0 :式1−7
で表されることになる。
【0017】
図2は、海水などの媒質から受信された反射エコーの受信波形を示している。周波数解析を行う際には、このような受信波形で示される受信信号から、期間T0で表される部分を取り出してフーリエ変換を行うことになる。
【0018】
ところで、ドップラー周波数を含んだ受信信号からFFTあるいはDFTなどの手法によりフーリエ変換で周波数を求めるためには、アナログ信号である受信信号をデジタル信号に変換することが必要である。サンプリング定理から、このアナログ/デジタル(A/D)変換でのサンプリング周波数は、入力信号の2倍以上の周波数でなければならない。言い換えると、A/D変換の対象となる入力信号はサンプリング周波数の1/2以下でなければならない。
【0019】
図3は、超音波信号を媒質中に放射し受信信号に対してフーリエ変換を行う従来の周波数検出装置の構成の一例を示すブロック図である。ここでは、受信信号に対して中間周波数信号への周波数変換を行うことなく、受信信号をその本来の周波数帯域でサンプリングしてフーリエ変換を行っている。このように受信信号の本来の周波数帯域でサンプリングを行ってフーリエ変換を行う構成を、ストレートアンプ方式と呼ぶ。
【0020】
超音波信号を水中に送信し反射エコーを受信して受信信号とする送受波器1は、送受信切替え回路11を介して、送信回路10の出力と受信増幅器2の入力に接続している。受信増幅器2の出力は、A/D変換でのエリアシングを防ぐための高次アナログフィルタ26を介して、A/D変換器27の入力に供給される。A/D変換器27の出力は、デジタルBPF(バンドパスフィルタ;band-pass filter)7を介して、FFT処理による周波数解析を実行するFFT処理部9に供給される。FFT処理部9から、周波数解析結果が出力される。
【0021】
この周波数検出装置では、水中に超音波信号を発射する時には、送信周波数ftxの信号を送信回路10から送受信切替え回路11を介して送受波器1に供給する。その後、送受信切替え回路11を受信側とし、媒質(水中)からの反射エコーを送受波器1で受信して電気信号である受信信号に変換し、送受信切替え回路11を介してこの受信信号を受信増幅器2に供給する。受信増幅器2は受信信号を信号増幅する。高次アナログフィルタ26は、信号増幅された受信信号から所定の周波数帯域の部分を取り出す。
【0022】
図4は、受信信号とサンプリング周波数などとの関係を示すスぺクトル図である。上述したように、ドップラー周波数による受信信号の変化範囲Δfpの中心、つまりドップラー周波数がゼロのときの受信信号の周波数fc(14)で、送信周波数ftxと同じである(fc=ftx)。ここで周波数解析の対象としたいドップラー周波数の範囲は、符号12で示すΔfpの範囲である。
【0023】
高次アナログフィルタ26は、A/D変換でのエリアシングを防ぐためのものであるので、このフィルタには、BPFかローパスフィルタ(LPF;low-pass filter)が使用される。以下では、説明のため、通過帯域におけるリップルが少ないバターワース型LPFを高次アナログフィルタ26に使用するものとする。図4においては、LPFとして構成された高次アナログフィルタ26の周波数特性が、符号21により示されている。A/D変換におけるエリアシングを考えると、A/D変換器27におけるA/D変換のデータ幅が8ビットであるときには、サンプリング周波数fadc(40)の1/2の周波数すなわちfadc/2(41)での信号レベルが、フィルタにおける通過帯域での信号レベルを基準として−48dB以下であれば、完全にエリアシングは起こらない。同様に、16ビット幅のA/D変換の場合には、信号レベルが−96dB以下であればエリアシングは完全に起らない。したがって、高次アナログフィルタ26は、受信信号における着目する周波数帯域(周波数fcを中心とする範囲Δfp)をその通過帯域内に含むとともに、周波数fadc/2では上述した減衰量(8ビット幅のA/D変換であれば−48dB、16ビット幅であれば−96dB)を有するものである必要がある。逆に言えば、減衰量がこの値となるまでfadc/2を高くし、その分、サンプリング周波数fadcも高くする必要がある。
【0024】
以下では、A/D変換のデータ幅が8ビットであるものとして説明を進める。図5は、バターワース型LPFの周波数特性の一例を示している。符号31は2次のLPFの周波数特性を示している。2次のLPFでは、−48dBの減衰量となる。高次アナログフィルタ26として2次のLPFを用いた場合には、その通過帯域の周波数に比べ、−48dBの減衰量となる周波数が高くなりすぎ、その分、サンプリング周波数も高くなり、現実的でない。したがって、高次アナログフィルタ26には、2次のLPFよりもはるかに大きな高域減衰特性が必要となる。バターワース型LPFは、その次数1段あたり−6dB/oct.(オクターブ)の減衰特性を有しているから、着目している信号(受信信号)の周波数上限の2倍の周波数の信号に対する信号レベルを−48dBとするためには、48/6=8であることにより、8次のLPFを用いる必要がある。図5の符号30は、8次LPFの周波数特性を示している。図5の符号29は16次のLPFの特性を示しているが、16ビット幅のA/D変換を行う場合には、16次のLPFの特性が必要となる。もっとも、アナログフィルタを構成する回路部品の精度の制約から、16次のLPFを構成することは現実的でない。8次のLPFを用い、さらにサンプリング周波数を2倍にすることで、−96dBという16ビット幅A/D変換に要求される減衰量を確保できるが、非常に非効率なものとなる。
【0025】
8ビット幅A/D変換を用いる場合に戻ると、図4に示すように、受信信号の中心周波数fcが120KHzであり、Δfpの周波数帯域幅自体はfcに比べて十分に小さいとして、周波数240KHzにおいては高次アナログフィルタ26が十分な減衰量を有するので、この周波数240KHzの2倍である480KHzをサンプリング周波数fadcとしている。ドップラー周波数において要求される分解能16Hzを満足するためには、式1−7から、サンプル数Nは、N=480000/16=30000となる。
【0026】
FFTにおいてデータ点数は2のべき乗であることが必要であるので、30000以上であって30000に最も近い215(=32768)をサンプル数Nとすると、式1−6より、f0=480000/32768=14.65[Hz]の周波数分解能となる。このとき、FFT計算で実行される複素乗算の回数は、
FFT複素乗算回数: 215×log2 215=491520
となる。FFTの代わりにDFTを用いて周波数解析を行うものとすれば、DFTにおいてはデータ点数が2のべき乗である必要はないので、FFTの場合と同じ条件でDFT計算を行ったときの複素乗算の回数は、
DFT複素乗算回数: 30000×30000=900000000
となる。DFTを用いた場合には、9×108回という異常に多回数の複素乗算を行う必要が生じ、本発明で想定しているような周波数解析に対しては現実的ではない。FFTを用いた場合であっても、ほぼ5×105回という膨大な回数の複素乗算演算が必要となり、FFT演算器の処理能力と処理時間がかかり過ぎて実用的ではない。また、高次アナログフィルタである前述のLPFは、そのようなLPFを構成するための部品の精度や温度係数などの影響で実現が困難であるし、もし実現するとしても、高精度の部品を用いて長時間にわたる調整が必要となるので、コストが著しくかかりすぎる問題を有する。
【0027】
そこで、ストレートアンプ方式ではなく、受信信号をそれよりも低い周波数の中間周波数の信号に周波数変換し、その後、フーリエ変換を行うことが考えられている。特に、超音波を海中に発射して反射エコーを取得し周波数解析を行う場合、反射エコーによる受信信号は非常に微弱な信号であるので受信増幅器には高利得が必要であるが、周波数変換を行わずに高利得で増幅すると、増幅器の出力信号が入力にクロストークして発振を起こす可能性がある。中間周波数に受信信号を周波数変換した場合にはこのようなクロストークの問題が起こりにくいという利点もある。
【0028】
図6は、受信信号を中間周波数の信号に周波数変換してからA/D変換を行うようにした従来の周波数検出装置の構成の一例を示すブロック図である。受信信号を中間周波数の信号に周波数変換してからA/D変換し、再サンプリングなどを行うことなくA/D変換で得られたデジタル信号に対してフーリエ変換を行う構成を周波数変換方式と呼ぶことにする。図6に示した周波数検出装置は、図3に示したものと同様の構成のものであるが、周波数変換方式のものであり、受信増幅器2の出力と高次アナログフィルタ26の入力との間に変調器3が設けられ、変調器3に対して局部発振回路6から局部発振周波数flocの信号が供給されている点で、図3に示したものとは異なっている。後述するように、変調器3は周波数fcで表される受信信号を周波数fmidで表される中間周波数の信号に周波数変換するものである。図6には示されていないが、A/D変換などに適した振幅の信号とするために、周波数変換後の受信信号を増幅する増幅器が変調器3とA/D変換器27の間に設けられていてもよい。
【0029】
次に、図6に示した周波数検出装置の動作について、上述の図1に示したスペクトル図を参照しながら説明する。
【0030】
水中への超音波信号の発射と反射エコーに基づく受信信号の受信増幅器2による信号増幅とについては、図3に示した周波数検出装置の場合と同様に行われる。受信増幅器2で信号増幅された信号は、変調器3へ被変調信号として入力する。受信増幅器2から出力される信号自体は、図1において符号56で示されるような周波数帯域を有するものとする。受信信号の帯域は、符号56で示す周波数帯域の一部であり、受信信号の周波数帯域の中心は、測定しようとするドップラー周波数の中心となる。これは、ドップラー周波数がゼロの時の周波数fc(14)であって、送信周波数ftxと同じである(fc=ftx)。変調器3は、局部発振周波数floc(15)も供給され、受信信号と局部発振周波数の信号とを乗算して、受信信号を中間周波数fmidの信号に変換する。受信信号の上限周波数をfmax(38)とし、下限周波数をfmin(37)とすると、フーリエ変換を実行すべき周波数範囲Δfp(12)は、Δfp=fmax−fminで表される。
【0031】
変調器3における中間周波数fmidの信号の生成は、下記の式で表されるものであり、2つの変換周波数からローパスフィルタかバンドパスフィルタを使用して、低い方の周波数を得る。
【0032】
【数4】
【0033】
受信信号での周波数範囲Δfpは、中間周波数fmidを中心に、
【0034】
【数5】
【0035】
の範囲に変換されることとなり、検出対象の周波数帯域Δfpは、周波数変換しても保たれる。上記の式は、floc>fcの時の処理を示しているが、floc<fcの時も、複号(符号(±))が逆になるだけで、同様に処理がなされる。
【0036】
図1において、図の右側部分が、受信信号と局部発振周波数flocとの関係を表しており、ここでは、受信信号よりも高周波側に局部発振周波数flocが選択されるとして(つまりfloc>fc+Δfp/2)、fmid(36)は、fmid=floc−fcの関係を満たしている。一方、図1の左側部分は、受信信号を中間周波数信号に変換した後のスペクトルを示している。ここでは中間周波数信号の中心周波数はfmid(18)となっている。上述の周波数帯域56も周波数帯域39に変換され、符号12で示される受信信号でのΔfpの帯域は、周波数変換により、符号16で示される帯域に移っている。すなわち帯域16は、変調器3によって周波数変換して低い方の周波数成分だけを取り出すことによって中間周波数信号とされ、高次アナログフィルタ26を通過させた後の受信信号におけるΔfpの帯域を表している。このように中間周波数fmidの信号に変換された後の信号に対してA/D変換を行い、フーリエ変換を実行するが、この場合も、上述と同様にサンプリング定理に従う。
【0037】
図7は、中間周波数への周波数変換を行う場合に用いられるLPFの周波数特性の一例を示している。以下、図7を用いて、受信信号の周波数帯域を説明する。
【0038】
ドップラー周波数の最大値が1600Hz、フーリエ変換に要求される周波数分解能が16Hzであるとする。式2−3に示すように、受信信号を中間周波数信号に変換したとしても、ドップラー周波数の周波数範囲Δfpそのものは変化しない。その一方で、受信信号と局部発振周波数の信号がクロストークしたり混変調を起したりしないように、局部発振周波数flocを選ぶ必要がある。ここでは、受信信号からその周波数で1割以上離れた局部発振周波数flocを選ぶこととし、17KHz離すこととする。局部発振周波数flocはfloc=fc+17kHz=137KHzとなり、中間周波数fmidは17KHzとなる。このとき、アナログLPFの通過帯域(全帯域)Wは、
【0039】
【数6】
【0040】
とする必要がある。Δfp/2=1600Hzであり、これに適切なα(減衰域)とfmidとを加算すると、LPFは、図7に示すように、20KHzまでの信号を完全に通過させるものであればよい。図7において、符号34は2次のLPFの特性を示しており、符号33は4次のLPFの特性を示しており、符号32は8次のLPFの特性を示している。アナログLPFでは、構成部品の精度や温度係数などから、8次のLPFを構成することはコスト面からも実用的ではないので、4次のLPFを高次アナログフィルタ26に用いるものとする。
【0041】
上述したように、8ビット幅A/D変換では、サンプリング周波数の1/2の周波数での信号レベルを通過帯域に比べて−48dBとすれば、エリアシングの問題は生じない。図8は、中間周波数に変換された信号とA/D変換のサンプリング周波数の関係を示している。図8においては、サンプリング周波数は、f2ad(28)で示されている。ここでは4次のLPFを使うこととしたので、−48dBの周波数は80kHzとなり、サンプリング周波数f2adの半分の周波数f2ad/2(27)も80kHzに設定される。したがって、A/D変換は、160kHzのサンプリング周波数f2adで行なわれることになる。
【0042】
その結果、式1−7から、分解能の条件を満たすサンプル数Nは、N=f2ad/f0=160000/16=10000となる。FFTのデータ点数は2のべき乗個とすべきであることから、FFTではサンプル数を16384(=214)とし、このときの周波数分解能f0は、f0=160000/16384=9.77[Hz]となる。ストレートアンプ方式の場合と同様に、FFTとDFTのそれぞれの場合の複素乗算回数を求めると、
DFT複素乗算回数: 10000×10000=100000000)
FFT複素乗算回数: 214×log2 214=229376
となる。DFTは、必要とする複素乗算回数が1×108回と極めて膨大となり、本発明のような周波数解析の用途には実用的ではない。FFTを用いる場合であっても、膨大な演算が必要となり、FFT演算器に高い処理能力を要求するとともに長大な処理時間を必要とし、その結果、強力なDSP(デジタル信号プロセッサ)やソフト演算能力を備えたCPUが必要となり、周波数検出装置のコストを上昇させる。
【0043】
なお特許文献1には、FFTにおける演算ポイント数を減らしつつ、周波数分解能を高めるようにした信号処理方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】WO2006/043511
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
反射エコーを受信して得られた受信信号に対してドップラー周波数を求めるためなどに、フーリエ変換による周波数解析を行う場合、ストレートアンプ方式では、ドップラー周波数における周波数変化幅に比べて著しく高い周波数でサンプリングを行うため、フーリエ変換での複素乗算回数が極めて膨大なものとなり、演算処理が困難になる。受信信号を中間周波数信号に変換してからフーリエ変換を行う場合であっても、周波数変換時のクロストークや混変調を避けるために中間周波数をそれほど小さくすることはできないから、やはり、サンプリング周波数が高くなってフーリエ変換での複素乗算回数が膨大となり、演算処理が困難になることがある。また膨大な複素演算を行うためには超高速な演算処理器を使用する必要があり、多大なコストがかかるという問題があった。サンプリング定理からの要請を満たしつつサンプリング周波数を低くするためには、受信信号から高域成分を除去するためのアナログLPFやアナログBPFとして急峻な減衰特性を有するものを使用することも考えられるが、アナログフィルタを構成する部品の精度や温度特性を考慮すると、急峻な特性のアナログフィルタを使用することは現実的ではない。
【0046】
本発明の目的は、所望の周波数分解能力を維持しながらフーリエ変換におけるサンプリング周波数を低くしてサンプル数を少なくし、これによってフーリエ変換での複素乗算回数を減らすことができる周波数検出方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本発明の周波数検出方法は、第1の周波数を含む所定の周波数帯域幅内で受信信号における周波数解析を行う方法であって、第1の周波数とは異なる中間周波数の信号に受信信号を周波数変換する段階と、アナログフィルタを適用して、周波数変換された信号から高域成分を除去する段階と、アナログフィルタを適用した後の信号に対して第2の周波数でサンプリングしてA/D変換する段階と、A/D変換で得られたデジタル信号に対してデジタルバンドパスフィルタを適用し、所定の周波数帯域幅に相当する信号のみを抽出する段階と、第2の周波数の2のべき乗分の1の周波数である第3の周波数をサンプリング周波数として、デジタルバンドパスフィルタから出力される信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング段階と、ダウンサンプリングによって抽出された信号に対して高速フーリエ変換を行う段階と、を有し、ダウンサンプリング段階において、ダウンサンプリングによって抽出される信号の周波数帯域が周波数ゼロから所定の周波数帯域幅に相当する帯域幅内に配置される。
【0048】
本発明の周波数検出装置は、第1の周波数を含む所定の周波数帯域幅内で受信信号における周波数解析を行う装置であって、受信信号を第1の周波数とは異なる中間周波数の信号に周波数変換する周波数変換手段と、周波数変換された信号から高域成分を除去するアナログフィルタと、アナログフィルタから出力される信号を第2の周波数でサンプリングしてA/D変換するA/D変換器と、A/D変換器の出力に接続され、所定の周波数帯域幅に相当する信号のみを含むデジタル信号を出力するデジタルバンドパスフィルタと、第2の周波数の2のべき乗分の1の周波数である第3の周波数をサンプリング周波数として、デジタルバンドパスフィルタから出力される信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング手段と、ダウンサンプリング手段から出力されるデジタルデータ列に対して高速フーリエ変換を行うFFT手段と、を有し、ダウンサンプリング手段から出力されるデジタルデータ列における信号の周波数帯域が周波数ゼロから所定の周波数帯域幅に相当する帯域幅内に配置されている。
【発明の効果】
【0049】
本発明では、所望の周波数帯域の信号に対してフーリエ変換を適用しその周波数帯域でのパワースペクトル求める際に、周波数変換、オーバーサンプリングでのA/D変換、デジタルフィルタリングによる所望の周波数帯域幅Δfpの成分の抽出、及びダウンサンプリングを行うことによって、所望の周波数帯域幅Δfpを周波数ゼロから始まってfbs=Δfpあるような最大周波数fbsまでの帯域に移している。その結果、fbsの2倍(すなわちΔfpの2倍)の周波数をサンプリング周波数としてフーリエ変換を行うことが可能になって、最小のサンプル数でのフーリエ変換が可能になり、複素乗算の回数を減らして高速でのスペクトル解析が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の周波数検出方法における中間周波数信号の変換とフィルタ特性を示すスペクトル図である。
【図2】超音波信号を送信した反射エコーの受信波形を示す図である。
【図3】中間周波数への周波数変換を行うことなくFFTによる周波数解析を行う従来の周波数検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】中間周波数への周波数変換を行わない場合の受信信号とサンプリング周波数などとの関係を示すスペクトル図である。
【図5】中間周波数への周波数変換を行わない場合に用いられるアナログLPF(ローパスフィルタ)の特性の一例を示すグラフである。
【図6】中間周波数への周波数変換を行ってFFTによる周波数解析を行う従来の周波数検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】中間周波数への周波数変換を行う場合に用いられるアナログLPFの特性の一例を示すグラフである。
【図8】図6に示す装置におけるA/D変換でのサンプリング周波数と中間周波数との関係を示すスペクトル図である。
【図9】本発明の実施の一形態の周波数検出装置の構成を示すブロック図である。
【図10】図9に示した周波数検出装置における受信信号の中間周波数信号への変換を説明するスペクトル図である。
【図11】図9に示す周波数検出装置におけるFFTの対象となる信号を示すスペクトル図である。
【図12】2のべき乗でダウンサンプリングした時の信号を説明するスペクトル図である。
【図13】デジタルBPF(バンドパスフィルタ)により不要な周波数成分を削除した後の信号を示すのスペクトル図である。
【図14】中間周波数とA/D変換器のサンプリング周波数との関係を示すスペクトル図である。
【図15】FFTによる周波数スペクトル解析結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
媒質に対してある決まった周波数の音波信号や電波信号を発射(送信)して媒質中の対象物(ターゲット)で反射させ、反射してきた信号(反射エコー)を受信する場合を考える。ドップラー効果によって反射エコーの周波数は元の音波信号あるいは電波信号の周波数からずれるが、そのずれの大きさすなわちドップラー周波数の周波数帯域幅は、対象物との間の相対的な移動速度が媒質中での信号の伝搬速度に比べて十分に小さい場合には、元の信号の周波数に比べて十分に小さくなる。例えば、ftx=120kHzの超音波信号を水中に反射し、最大測定速度Vを10m/sとしたとき、上記の式1−1から、ドップラー周波数fdopの最大値は1600Hzとなる。対象物の移動方向は近づく方向の場合と遠ざかる方向の場合があるから、ドップラー周波数の周波数帯域幅Δfpは3200Hzとなるが、これは120kHzである送信周波数ftxに比べて十分に小さい。周波数帯域幅Δfpに隣接する減衰域を考慮しないとすれば、受信信号からこのΔfpの範囲内の周波数成分のみを取り出して0から3200Hzの範囲内に配置し、これに対してフーリエ変換を行えば、十分に小さなサンプリング周波数で十分な周波数分解能が得られるはずであり、必要な周波数分解能を得るために最小のサンプル数でフーリエ変換を実行できるはずである。従来技術においては、きわめて低い周波数への周波数変換の困難さや、急峻な特性で高域成分を除去するためのアナログフィルタの実現の困難さのために、最小のサンプル数でフーリエ変換を行って周波数解析を行うことができなかった。
【0052】
ここで注意すべきことは、式1−4に示したように、フーリエ変換による周波数分解能f0自体は、フーリエ変換の基本波の周期T0すなわち図2に示すように信号の切り出しの長さT0の逆数で表され、サンプリング周波数fftには依存しないことである。周波数分解能f0を一定としてサンプリング周波数fftが高くなれば、式1−7に基づいてサンプル数Nも増加して演算量が増大するが、増加したサンプル数N自体は、周波数解析によって検出可能な周波数範囲をより高周波側に広げることには寄与するが、周波数分解能の向上には寄与しない。サンプリング周波数が高いということは、ドップラー周波数の考え得る変化範囲を超えて、無駄に広い周波数範囲に対して実質的に周波数解析を行っていることを意味する。
【0053】
図9に示す本発明の実施の一形態の周波数検出装置は、オーバーサンプリングによってA/D変換を行った後、デジタルバンドパスフィルタ(D−BPF)を通して必要とする周波数帯域を取り出し、その後、ダウンサンプリングを行うことで、受信信号における周波数解析の対象となる周波数帯域を周波数ゼロから最低周波数範囲に実質的に移動させている。これにより、周波数解析の対象となる周波数帯域幅の2倍に相当するサンプリング周波数でフーリエ変換を行うことが可能となり、最小のサンプル数でフーリエ変換を行って周波数解析を行うことが可能になる。つまり、本実施形態の周波数検出装置によれば、所望する周波数分解能によって、周波数解析の対象としたい周波数帯域に対するパワースペクトル解析を行うことができ、かつ、サンプル数が最小であるので、最速のフーリエ変換を行うことができる。以下、図9に示した周波数検出装置について説明する。図9に示したものは、図6に示したものと同様に、超音波信号を媒質である水中に発射し、対象物からの反射エコーを受信してドップラー周波数の周波数解析を行うものである。
【0054】
図9に示した周波数検出装置において、超音波信号を水中に送信し反射エコーを受信して受信信号とする送受波器1は、送受信切替え回路11を介して、送信回路10の出力と受信増幅器2の入力に接続している。受信増幅器2の出力は、周波数変換を行うための変調器3に供給されている。変調器3には、局部発振回路4から局部発振周波数flocの信号も供給されている。変調器3の出力は、アナログフィルタ5を介して、オーバーサンプリングを行うA/D変換器6の入力に供給されている。A/D変換器6から出力されるデジタル信号は、デジタルBPF7を介して、ダウンサンプリングを行うダウンサンプリング部8に供給され、ダウンサンプリング部8でダウンサンプリングされたデジタル信号は、デジタルデータ列であるサンプル列として、FFT処理による周波数解析を実行するFFT処理部9に供給される。FFT処理部9から、周波数解析結果が出力される。
【0055】
この周波数検出装置では、水中に超音波信号を発射する時には、送信周波数ftxの信号を送信回路10から送受信切替え回路11を介して送受波器1に供給する。その後、送受信切替え回路11を受信側とし、媒質(水中)からの反射エコーを送受波器1で受信して電気信号である受信信号に変換し、送受信切替え回路11を介してこの受信信号を受信増幅器2に供給する。受信増幅器2は受信信号を信号増幅する。受信増幅器2で信号増幅された信号は、変調器3へ被変調信号として供給され、変調器3において中間周波数信号に変換される。
【0056】
図10は、受信信号と、局部発振回路4から変調器3に供給される局部発振周波数floc(15)の信号と、周波数変換後の中間周波数fmid(36)の信号との関係を示している。受信増幅器2から出力される信号自体は、図10において符号13で示されるような周波数帯域を有するものとする。受信信号の帯域12は、符号13で示す周波数帯域の一部であり、受信信号の周波数帯域の中心は、測定しようとするドップラー周波数の中心となる。これは、ドップラー周波数がゼロの時の周波数fc(14)であって、送信周波数ftxと同じである(fc=ftx)。変調器3は、受信信号と局部発振周波数flocの信号とを乗算して、受信信号を中間周波数fmidの信号に周波数変換する。ここでは、上述の図1と同様に、局部発振周波数flocは受信信号よりも高い周波数に設定される、すなわちfloc>fc+Δfp/2であるものとする。受信信号の上限周波数をfmax(38)とし、下限周波数をfmin(37)とすると、フーリエ変換を実行すべき周波数範囲Δfp(12)は、Δfp=fmax−fminで表される。本実施形態の周波数検出装置では、フーリエ変換における最小サンプル数を実現するために、図11に示すように、ドップラー周波数の変化範囲Δfpを最終的に最小の周波数範囲に収めるようにする。言い換えれば、フーリエ変換の対象とする最高周波数をfbsとして、fbs=Δfpとなるように、周波数ゼロから周波数fbsまでの範囲内に周波数解析の範囲Δfpを収めるようにする。以下、Δfpの範囲をこのように配置することについて説明する。
【0057】
図11のスペクトル図において、所望する周波数解析の範囲はΔfp(25)であり、その最高周波数はfbs(23)であるから、フーリエ変換のサンプリング周波数fftは、これの2倍でよい。サンプリング周波数fftとして、Δfpの2倍よりは少し高めの周波数を使用してもよく、周波数範囲Δfpは、A/D変換の時にエリアシングが発生しない範囲にあればよい。
【0058】
まず、中間周波数fmidについて説明する。図12は、2のべき乗でダウンサンプリングした時の信号を説明する図であって、受信信号を中間周波数fmidの信号に周波数変換したときのΔfpの帯域16と、目的とする最小周波数帯に投影したときのΔfpの帯域25とを示している。帯域25の最高周波数23をfbsとすると、fmidを次の式に示すように定めればよい。
【0059】
【数7】
【0060】
fbs(23)をΔfpの帯域幅と同じに設定するとと、
【0061】
【数8】
【0062】
が得られる。このようにして中間周波数fmidを求めたら、次に、局部発振周波数flocを決定する。図10の左側部分に示す中間周波数fmid(18)は、右側部分のfmid(36)と等しく、これはfmid=floc−fcであるから、
floc=fc+fmid=ftx+3.5×Δfp :式3−3
とflocを定めればよい。
【0063】
次に、A/D変換器6でのオーバーサンプリングによるサンプリング周波数fadcについて説明する。図13は、受信信号を中間周波数fmidの信号に周波数変換し、A/D変換器6によりデジタル信号に変換し、その後、デジタルBPF7により不要な周波数成分を削除してΔfpの範囲のみを抽出した信号16と、A/D変換器6のサンプリング周波数fadc(19)との関係を示している。ここで、中間周波数fmidの信号に変換した後のΔfpの範囲の上限周波数21をfmmとおくと、後述するダウンサンプリングを考えて、図12や式3−2に示すように、
fmm=4×fbs :式3−4
とすればよいことが分かる。fmmは、A/D変換器6への入力信号の最高周波数となるから、mを2のべき乗(すなわちnを1以上の整数としてm=2n)として、m倍のオーバーサンプリングを行うこととすれば、式3−1から、サンプリング周波数fadcは、
fadc=fmm×m=4×m×fbs :式3−5
で表されることになる。
【0064】
次に、アナログフィルタ5に要求される特性について説明する。図14は、中間周波数fmid(18)とオーバーサンプリングによるサンプリング周波数fadc(19)との関係を示している。
【0065】
A/D変換器6に対して供給される入力信号は、サンプリング定理に従い、アナログフィルタ5によって予め高域成分が減衰されていなければならない。上述したように、fmm(21)が信号の最高周波数であるから、これをアナログフィルタ5での通過帯域の上限とし、サンプリング周波数fadc(19)の半分の周波数fadc/2(20)において信号が十分に減衰(8ビット幅A/D変換であれば−48dB)していればよい。式3−5よりfmm(21)はfadc/mでもあるから、結局、信号の最高周波数であるfmmからみてそのm/2倍の周波数において十分な減衰が確保できればよいことになる。m倍のオーバーサンプリングを行うことにより、アナログフィルタにおいて必要とされるオクターブあたりの減衰量を1/mに緩和することが可能になって、アナログフィルタの設計が容易になる。m=8とした場合には、4次のバタワース型LPFに相当する減衰特性を有するフィルタをアナログフィルタ5に使用することが可能になり、アナログフィルタ5を容易に構成することが可能になる。
【0066】
次に、デジタルBPF7について説明する。アナログフィルタ5を介してA/D変換器6に入力してサンプリングされた信号は、図14において符号17で示すように、解析対象とする周波数範囲Δfp(16)よりも広い周波数帯域を有している。そこでデジタルBPF7は、符号17で示す周波数範囲の信号から不要な信号成分を取り除き、図13に示すように所望の帯域Δfp(16)のみを取り出してダウンサンプリング部8に供給する。デジタルBPF7としては、BPF特性を有するFIR(有限インパルス応答;finite impulse response)デジタルフィルタを用いることができる。
【0067】
次に、ダウンサンプリング部8によるダウンサンプリングについて説明する。デジタルBPF7によって処理することによって、中間周波数fmidに周波数変換された受信信号は、所望の帯域Δfp(16)の成分のみを有する信号となっている。ダウンサンプリング部8は、この信号を、mによってダウンサンプリングする。言い換えれば、m倍のオーバーサンプリングであるfadcでサンプリングされた信号を、サンプル数が2m分の1になるように、ダウンサンプリングを行う。図12及び図13の符号21は、帯域Δfpの最高周波数fmmを表しているが、式3−5から(fadc/m)=fmmであるから、1/mにダウンサンプリングした周波数fadc/mは、A/D変換時にエリアシングを発生させない最高周波数fmm(21)と等しいことになる。
【0068】
ところで、符号16で表される、中間周波数fmidに変換されたのちの帯域Δfpは、全体として、ダウンサンプリングの周波数fadc/m(21)の半分の周波数fadc/2m(22)よりは高い周波数領域にあり、ダウンサンプリングによるエリアシング領域にあることになる。その結果、ダウンサンプリングを行うことにより、符号16で表される帯域Δfpは、周波数fadc/2m(22)を中心として鏡像対称で折り返され、図12において符号25で表される領域に移ることになる。fmm(21)はこの折り返しにより、符号35で示す周波数に移ることになる。ここでは、Δfp=fbs=fadc/4mとしているので、符号35で示す周波数は0Hzとなる。したがって、ドップラー周波数測定のための周波数解析の対象となる帯域Δfp(25)は、最終的に、0Hzからfbsまでの周波数範囲に移ったことになる。
【0069】
ところで、図11及び図12において、帯域Δfp(25)の最高周波数は符号23で表されるfbsである。デジタルBPF7によるデジタルフィルタリングを行っているので、ダウンサンプリング部8からの出力には、周波数fbsを超える成分は現れない。したがって、fbsの2倍である周波数fadc/2m(22)をフーリエ変換のサンプリング周波数fftとすることができる。
【0070】
【数9】
【0071】
本実施形態の周波数検出装置では、送信周波数ftxが高い場合であっても、ドップラー周波数の変化範囲の帯域幅などの所望する周波数範囲の帯域幅Δfpの2倍の周波数をフーリエ変換でのサンプリング周波数を使用することができ、必要なサンプル数を大幅に減らして演算量を大幅に削減することが可能になる。
【0072】
次に、本実施形態におけるフーリエ変換について説明する。本実施形態では、フーリエ変換の手法として、一般に高速処理ができるFFTを使用し、FFT処理部9においてFFTを実行する。FFTにおけるサンプル数Nとしては2のべき乗を使用し、FFTによって得られる0番目からN−1番目までのN個の結果のうち、複素共役となるものを除いた、0番目から(N−1)/2番目までのものを使用する。図15は、FFTによって得られた結果の一例を示している。
【0073】
図15において、横軸は周波数を表しており、周波数分解能であるf0刻みで離散的に信号強度を示している。n番目のデータに対応する周波数は、n×f0(Hz)で与えられる。信号の中心周波数が分かっているドップラー周波数を求めるときは、(N−1)/4番目を中心にして±Δfp/2の範囲として計算すればよい。FFTのピークパワースペクトルから求めた周波数をffftとすると、ドップラー周波数fdopから速度を求めるには、式1−1から、
【0074】
【数10】
【0075】
を計算すればよいことになる。
【0076】
図11の周波数fmf(24)は、Δfpの中心周波数を表している。FFTによって帯域25でのスペクトルを解析していることになるので、求められたFFT結果から上記のようにn番目の周波数を計算したものを、周波数変換を行う前の中心周波数fcに加減算することにより、元の周波数を知ることができる。
【0077】
以上説明したように本実施形態では、ある定められた周波数を中心周波数とする所望する周波数帯域幅Δfp内の信号からフーリエ変換を用いてパワースペクトル求める際に、Δfpを最大周波数fbsと置き換え(Δfp=fbs)、fbsの2倍のサンプリング周波数でフーリエ変換を行うことができるようにすることにより、Δfpの帯域幅と所望の周波数分解能から定まる最小のサンプル数でフーリエ変換を行うことができるようになって、フーリエ変換での複素乗算回数が少なくすることができ、高速でスペクトル解析を行うことが可能になる。以下、数値を挙げて本実施形態の利点を説明する。
【0078】
送信周波数ftxが120kHzであって、受信信号におけるドップラー周波数の範囲が±1.6kHzであるとする。すなわち、120±1.6(kHz)の範囲について周波数解析を行うものとする。周波数分解能f0は16Hzとする。その結果、観測対象とすべき周波数帯域幅Δfpは、Δfp≧2×1600=3200としなければならない。また、フーリエ変換での最大周波数fbsをfbs=Δfpとする。
【0079】
信号の減衰帯域(900Hz)を考慮して、
Δfp=(1600+900)×2=2500×2=5000
とする。900Hzの減衰帯域の外側では信号はほとんどゼロと考えてよいので、5kHz(すなわちfbs)においては信号はほとんどゼロである。
【0080】
式3−1及び式3−3より、
中間周波数の中心: fmid=3.5×fbs=17500
局部発振周波数: floc=ftx+fmid=120000+17500=137500
となる。また、オーバーサンプリングの係数mをm=4とすると、A/D変換のサンプリング周波数fadcは、式3−5より、
A/D変換: fadc=4×m×fbs=16×5000=80000
フーリエ変換のサンプリング周波数fftは、
【0081】
【数11】
【0082】
となり、フーリエ変換でのサンプル数Nは、N=fft/f0=500となる。500以上であって500に最も近い2のべき乗数は29=512であるので、FFTでのサンプル数NをN=29=512とする。このとき、FFT計算で実行される複素乗算の回数は、
FFT複素乗算回数: 29×log2 29=4608
となる。また、FFTの場合と同じ条件でDFT計算を行ったときの複素乗算の回数は、
DFT複素乗算回数: 500×500=250000
となる。
【0083】
表1は、図9に示した本実施形態の周波数検出装置を用いた場合、図3に示した従来のストレートアンプ方式の周波数検出装置を用いた場合、及び図6に示した従来の周波数変換方式の周波数検出装置を用いた場合の各々における、上記の条件でドップラー周波数の測定を行うために必要な複素乗算の回数をDFT演算による場合とFFT演算による場合の双方について示している。
【0084】
【表1】
【0085】
DFT演算での複素乗算回数で比較すると、本実施形態の周波数解析の手法によれば、従来の手法に比べて複素乗算回数を少なくとも400分の1にすることができ、400倍以上の高速で周波数解析処理を行うことが可能になる。DFT演算によるフーリエ変換では演算回数が多いため、通常は、フーリエ変換での演算としてはFFT演算が用いられるが、FFT演算の場合であっても本実施形態の周波数解析の手法によれば、従来の周波数変換方式を用いる場合に比べ、複素乗算回数が1/50になり、同じ結果を得るために50倍の高速化が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 送受波器
2 受信増幅器
3 変調器
4 局部発振回路
5 アナログフィルタ
6,27 A/D変換器
7 デジタルBPF(バンドパスフィルタ)
8 ダウンサンプリング部
9 FFT処理部
10 送信回路
11 送受信え切替回路
26 高次アナログフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数を含む所定の周波数帯域幅内で受信信号における周波数解析を行う方法であって、
前記第1の周波数とは異なる中間周波数の信号に前記受信信号を周波数変換する段階と、
アナログフィルタを適用して、前記周波数変換された信号から高域成分を除去する段階と、
前記アナログフィルタを適用した後の信号に対して第2の周波数でサンプリングしてA/D変換する段階と、
A/D変換で得られたデジタル信号に対してデジタルバンドパスフィルタを適用し、前記所定の周波数帯域幅に相当する信号のみを抽出する段階と、
前記第2の周波数の2のべき乗分の1の周波数である第3の周波数をサンプリング周波数として、前記デジタルバンドパスフィルタから出力される信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング段階と、
前記ダウンサンプリングによって抽出された信号に対して高速フーリエ変換を行う段階と、
を有し、前記ダウンサンプリング段階において、前記ダウンサンプリングによって抽出される信号の周波数帯域が周波数ゼロから前記所定の周波数帯域幅に相当する帯域幅内に配置される、方法。
【請求項2】
前記高速フーリエ変換でのサンプル数を所定の周波数分解能を得るために最低限のサンプル数とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の周波数帯域幅の周波数幅をΔfとし、第2及び第3の周波数をそれぞれf2及びf3とし、前記中間周波数をfmidとし、nを1以上の整数としてm=2nとし、
fmid=3.5×Δf,
f2=4×m×Δf,
f3=f2/(2×m)
とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の周波数を含む所定の周波数帯域幅内で受信信号における周波数解析を行う装置であって、
前記受信信号を前記第1の周波数とは異なる中間周波数の信号に周波数変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換された信号から高域成分を除去するアナログフィルタと、
前記アナログフィルタから出力される信号を第2の周波数でサンプリングしてA/D変換するA/D変換器と、
A/D変換器の出力に接続され、前記所定の周波数帯域幅に相当する信号のみを含むデジタル信号を出力するデジタルバンドパスフィルタと、
前記第2の周波数の2のべき乗分の1の周波数である第3の周波数をサンプリング周波数として、前記デジタルバンドパスフィルタから出力される信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング手段と、
前記ダウンサンプリング手段から出力されるデジタルデータ列に対して高速フーリエ変換を行うFFT手段と、
を有し、前記ダウンサンプリング手段から出力される前記デジタルデータ列における信号の周波数帯域が周波数ゼロから前記所定の周波数帯域幅に相当する帯域幅内に配置されている、装置。
【請求項5】
前記高速フーリエ変換でのサンプル数は、所定の周波数分解能を得るために最低限のサンプル数とされる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記所定の周波数帯域幅の周波数幅をΔfとし、第2及び第3の周波数をそれぞれf2及びf3とし、前記中間周波数をfmidとし、nを1以上の整数としてm=2nとし、
fmid=3.5×Δf,
f2=4×m×Δf,
f3=f2/(2×m)
とする、請求項4または5に記載の装置。
【請求項1】
第1の周波数を含む所定の周波数帯域幅内で受信信号における周波数解析を行う方法であって、
前記第1の周波数とは異なる中間周波数の信号に前記受信信号を周波数変換する段階と、
アナログフィルタを適用して、前記周波数変換された信号から高域成分を除去する段階と、
前記アナログフィルタを適用した後の信号に対して第2の周波数でサンプリングしてA/D変換する段階と、
A/D変換で得られたデジタル信号に対してデジタルバンドパスフィルタを適用し、前記所定の周波数帯域幅に相当する信号のみを抽出する段階と、
前記第2の周波数の2のべき乗分の1の周波数である第3の周波数をサンプリング周波数として、前記デジタルバンドパスフィルタから出力される信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング段階と、
前記ダウンサンプリングによって抽出された信号に対して高速フーリエ変換を行う段階と、
を有し、前記ダウンサンプリング段階において、前記ダウンサンプリングによって抽出される信号の周波数帯域が周波数ゼロから前記所定の周波数帯域幅に相当する帯域幅内に配置される、方法。
【請求項2】
前記高速フーリエ変換でのサンプル数を所定の周波数分解能を得るために最低限のサンプル数とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の周波数帯域幅の周波数幅をΔfとし、第2及び第3の周波数をそれぞれf2及びf3とし、前記中間周波数をfmidとし、nを1以上の整数としてm=2nとし、
fmid=3.5×Δf,
f2=4×m×Δf,
f3=f2/(2×m)
とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の周波数を含む所定の周波数帯域幅内で受信信号における周波数解析を行う装置であって、
前記受信信号を前記第1の周波数とは異なる中間周波数の信号に周波数変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換された信号から高域成分を除去するアナログフィルタと、
前記アナログフィルタから出力される信号を第2の周波数でサンプリングしてA/D変換するA/D変換器と、
A/D変換器の出力に接続され、前記所定の周波数帯域幅に相当する信号のみを含むデジタル信号を出力するデジタルバンドパスフィルタと、
前記第2の周波数の2のべき乗分の1の周波数である第3の周波数をサンプリング周波数として、前記デジタルバンドパスフィルタから出力される信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング手段と、
前記ダウンサンプリング手段から出力されるデジタルデータ列に対して高速フーリエ変換を行うFFT手段と、
を有し、前記ダウンサンプリング手段から出力される前記デジタルデータ列における信号の周波数帯域が周波数ゼロから前記所定の周波数帯域幅に相当する帯域幅内に配置されている、装置。
【請求項5】
前記高速フーリエ変換でのサンプル数は、所定の周波数分解能を得るために最低限のサンプル数とされる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記所定の周波数帯域幅の周波数幅をΔfとし、第2及び第3の周波数をそれぞれf2及びf3とし、前記中間周波数をfmidとし、nを1以上の整数としてm=2nとし、
fmid=3.5×Δf,
f2=4×m×Δf,
f3=f2/(2×m)
とする、請求項4または5に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−247303(P2012−247303A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119218(P2011−119218)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(303057044)株式会社ソニック (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(303057044)株式会社ソニック (17)
【Fターム(参考)】
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