説明

品質判定値計算回路、切り替え判定方法および回路、並びに無線通信装置

【課題】伝搬状況が急速に変化しても最適な伝送方式を選択可能な無線通信装置および適応変調方式を提供する。
【解決手段】品質判定値は、ビット誤り情報に補正係数を乗算した値と前回の品質判定値に減衰係数を乗算した値との和で求められる。今回の品質判定値と、前回の品質判定値との差が計算される。補正係数は、現在の変調方式を示す情報とこの差とにより定められる。減衰係数は、この差により定められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置の構成およびそれに用いられる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムにおいては、伝送路の状態が悪化すると受信データのエラーや欠落の発生により、通信品質が悪化する場合がある。特に、マイクロ波やミリ波等の高周波帯域で伝送を行う無線通信システムにおいては、降雨等に起因する伝搬環境の悪化によって、受信品質が著しく低下することが知られている。
【0003】
このため、無線通信システムにおいては、伝搬環境が悪化した場合でも安定した受信品質が得られるような変調方式を選択する必要がある。たとえば、変調方式の多値数を小さくすると、伝送路状態が悪化した場合でも高いエラー耐性を確保することができる。しかし、伝搬環境が良好で受信データにエラーの発生が少ない状況では、変調方式の多値数を可能な限り大きくして良好な受信品質を維持しつつ伝送速度を向上させることが伝送効率の点からは望ましい。そこで、受信品質に応じて最適な変調方式を選択して切り替える適応変調方式が広く採用されている。
【0004】
特開2004−104196号公報(特許文献1)には、上記の適応変調方式に関連する発明が記載されている。
【0005】
図11は、特許文献1に記載された、送受信機の構成を示す図、図12は変調方式決定部A300の構成を示す図である。
【0006】
図11において、受信部A22で受信された受信信号a202は復調回路A21を経て誤り訂正回路に入力される。誤り訂正回路(誤り訂正復号化回路とも言う)A20は、復調信号a201の誤り情報信号a3000を変調方式決定部A300へ送信する。変調方式決定部A300は、誤り情報信号a3000を基に、変調方式を選択する。変調方式決定部A300は、変調方式指定信号a3002を変調回路A11へ通知する。変調回路A11は、その通知に従い変調方式の切り替えを行う。
【0007】
図12は、変調方式決定部A300の構成である。変調方式決定部A300は、変調方式を決定するための値である品質判定値a3001を計算し、変調方式指定信号a3002を生成する。
【0008】
品質判定値a3001は次のように計算される。図11および図12において、誤り訂正回路A20は、誤り情報信号a3000を乗算器A72に通知する。ここで、誤り情報信号a3000は、復調信号a201のエラー情報である。乗算器A72は誤り情報信号a3000と補正係数a701とを乗算し、その結果である乗算値a7004を出力する。また、補正係数a701は、品質判定値a3001の値が増加する速度を決定するパラメータであり、補正係数a701の値が大きいほど、誤り発生に対する品質判定値a3001の上昇度が高くなる。
【0009】
加算器A75は、乗算値a7004と乗算値a706とを加算する。ここで、乗算値a706は減衰係数a703と前回の品質判定値a705との乗算値である。
【0010】
また、減衰係数a703は、前回の品質判定値a705の値が減少する速度を決定するパラメータであり、減衰係数a703の値は1より小さい正の値である。当減衰係数a703の値が小さいほど、過去の品質判定値が品質判定値a3001に与える影響は速く減少していく。
【0011】
以上により計算された品質判定値a3001は、閾値判定部A301に入力される。閾値判定部A301は、品質判定値a3001と、変調方式ごとに定められた閾値とを比較し、その結果を変調方式決定通知部A302に出力する。変調方式決定通知部A302は、閾値判定部A301の出力結果により変調方式指定信号a3002を決定し、変調回路A11に出力する。
【0012】
一方、品質判定値a3001は遅延素子A77にも入力され、次回の品質判定値の計算に利用される。
【0013】
品質判定値a3001は伝搬環境状態を表しており、例えば、無線区間の伝搬環境が劣化すると、品質判定値a3001の値が大きくなる。品質判定値a3001の値が閾値をまたがって変化すると、閾値判定部A301の出力が変化し、変調方式決定部A302において変調方式の指定が変更され、変調回路A11における変調方式が変更される。
【0014】
以上のように、この特許文献1に記載の変調方式の切り替え方法は、伝搬環境が劣化する場合、あるいは回復する場合に、伝搬環境の変動に対応して変調方式を選択する。
【0015】
また、伝搬環境の悪化に対応するための他の技術として、複数の送信機および受信機を備えた構成が知られている。特開2006−013642号公報(特許文献2)は、この技術を開示している。特許文献2は、対向して通信する通信局および端局において、送信部および受信部を0系と1系とに二重化し、両系にそれぞれ受信部と送信部を備える。さらに、特許文献2の技術は、0系と1系の信号選択を行う受信選択部を有する。特許文献2は、この構成により、0系あるいは1系の一方の通信品質が悪化した場合にも、受信選択部により他方からの受信に切り換えることで通信品質を維持することを可能としている。
【0016】
【特許文献1】特開2004−104196号公報
【特許文献2】特開2006−013642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
先に説明した特許文献1に記載の通信システムには、伝搬環境の変動率が変化した場合、伝搬環境の変動に対する品質判定値a3001の追従性が悪くなるという問題がある。
【0018】
その理由は、補正係数a701および減衰係数a703が予め固定値に設定されているため、前回の品質判定値a705の今回の判定への影響度(重み付け)が伝搬状況の変動の状況にかかわらず一定であるからである。
【0019】
たとえば、受信電界が緩やかに変化する場合でも、急激に変化する場合でも、補正係数a701および減衰係数a703は一定である。このため、前回から伝搬状況が急激に変化した場合には、この事実が品質判定値a3001に反映されるのに時間がかかる。すなわち、特許文献1に記載の通信システムでは、品質判定値a3001が伝搬状況の急激な変化を正確に反映できず、その結果、よりエラー耐性のある変調方式が選択されるタイミングが遅れてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明にかかる品質判定値計算回路は、
無線通信装置の受信信号の誤り検出情報から品質判定値を計算して出力するための品質判定値計算回路であって、
遅延回路と、加算器と、減算器と、補正係数決定部と、減衰係数決定部と、第1の乗算器と、第2の乗算器とから構成され、
遅延回路は、品質判定値を所定の時間だけ遅延させて出力し、
減算器は、品質判定値と遅延回路の出力との差を出力し、
補正係数決定部は、使用中の変調方式を示す変調方式情報信号と減算器の出力とから補正係数を計算して出力し、
減衰係数決定部は、減算器の出力から減衰係数を計算して出力し、
第1の乗算器は、受信信号の誤り検出情報と補正係数との乗算結果を出力し、
第2の乗算器は、遅延回路の出力と減衰係数との乗算結果を出力し、
加算器は、第1の乗算器の出力と第2の乗算器の出力との加算結果を品質判定値として出力する、
ことを特徴とする。
【0021】
本発明にかかる変調方式の切り替え判定方法は、
受信信号の誤り検出情報から品質判定値を計算して出力するための品質判定値計算回路を備え、品質判定値計算回路は、遅延回路と、加算器と、減算器と、補正係数決定部と、減衰係数決定部と、第1の乗算器と、第2の乗算器とから構成されている無線通信装置に用いられる変調方式の切り替え判定方法であって、
(a)品質判定値と予め定められた品質閾値との比較を行い、
(b)品質判定値の大きさが品質閾値以下の場合には、変調方式をより高多値数の変調方式へ切り替え、
(c)品質判定値の大きさが品質閾値を超える場合には、品質判定値が品質閾値を連続して越えている継続時間と予め定められた時間閾値との比較を行い、
継続時間が時間閾値を超えている場合には変調方式をより低多値数の変調方式へ切り替え、
(d)継続時間が時間閾値よりも小さい場合には、現在の変調方式を維持する、
ことを特徴とする。
【0022】
本発明にかかる変調方式の切り替え判定回路は、
品質比較回路と、時間比較回路と、判定信号出力回路とを備える無線通信装置に用いられる変調方式の切り替え判定回路であって、
品質比較回路は、受信信号の品質を示す品質判定値と予め定められた品質閾値とを比較してその結果を時間比較回路および判定信号出力回路に出力し、
時間比較回路は、品質判定値が品質閾値を連続して越えている継続時間と時間閾値とを比較してその結果を判定信号出力回路に出力し、
判定信号出力回路は、変調方式の情報を含む変調方式判定信号を出力し、
品質判定値の大きさが品質閾値以下の場合には、判定信号出力回路は現在より高多値数の変調方式の情報を含む変調方式判定信号を出力し、
品質判定値の大きさが品質閾値を超える場合には、時間比較回路は品質判定値が品質閾値を連続して越えている継続時間と予め定められた時間閾値との比較を行い、
継続時間が時間閾値を超えている場合には、判定信号出力回路は現在より低多値数の変調方式の情報を含む変調方式判定信号を出力し、
継続時間が時間閾値を超えていない場合には、判定信号出力回路は現在の変調方式の情報を含む変調方式判定信号を出力する、
ことを特徴とする。
【0023】
本発明にかかる第1の無線通信装置は、
送受信回路と切り替え判定回路とで構成される無線通信装置であって、
送受信回路は、誤り訂正符号化回路と、変調回路と、復調回路と、誤り訂正回路と、品質判定値計算回路とで構成されており、
誤り訂正符号化回路は、無線通信装置への入力信号と切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号とを多重化して変調回路に出力し、
変調回路は、誤り訂正回路から出力される変調方式指定信号に従い誤り訂正符号化回路の出力信号を変調し、
復調回路は、切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号に従い受信信号を復調して誤り訂正回路に出力するとともに、使用中の変調方式の情報を示す変調方式情報信号を品質判定値計算回路に出力し、
誤り訂正回路は、復調回路の出力信号の誤りを検出および訂正し、誤りを訂正した信号を出力し、誤り検出情報を品質判定値計算回路に出力するとともに、復調回路の出力信号から抽出した変調方式判定信号を変調方式指定信号として変調回路に出力し、
品質判定値計算回路は、入力された誤り検出情報と変調方式情報信号とから品質判定値を計算して品質判定値を切り替え判定回路に出力し、
切り替え判定回路は、入力された品質判定値から変調方式判定信号を計算して変調方式判定信号を誤り訂正符号化回路および復調回路に出力する、
ことを特徴とする。
【0024】
本発明にかかる第2の無線通信装置は、
切り替え判定回路と、受信切り替え回路と、2以上の送受信回路とで構成される無線通信装置であって、
各送受信回路は、誤り訂正符号化回路と、変調回路と、復調回路と、誤り訂正回路と、品質判定値計算回路とで構成されており、
誤り訂正符号化回路は、入力信号と切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号とを多重化して変調回路に出力し、
変調回路は、誤り訂正回路から出力される変調方式指定信号に従い誤り訂正符号化回路の出力信号を変調し、
復調回路は、切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号に従い受信信号を復調して誤り訂正回路に出力するとともに使用している変調方式の情報を品質判定値計算回路に出力し、
誤り訂正回路は、復調回路の出力信号の誤りを検出および訂正した後、誤りを訂正した信号を受信切り替え回路に出力し、誤り検出情報を品質判定値計算回路に出力するとともに、復調回路の出力信号から変調方式指定信号を抽出して変調回路に出力し、
品質判定値計算回路は、入力された誤り検出情報と変調方式情報信号とから品質判定値を計算して品質判定値を切り替え判定回路に出力し、
切り替え判定回路は、品質判定値を比較してその結果に従い送受信回路のいずれかを選択し、受信切り替え回路に切り替え指示を送出するとともに、変調方式判定信号を、選択された送受信回路に出力し、
受信切り替え回路は、切り替え指示に従って、送受信回路から入力された誤りを訂正した信号のうちからいずれかを選択して出力する、
ことを特徴とする。
【0025】
本発明にかかる第3の無線通信装置は、
送受信回路と切り替え判定回路とで構成される無線通信装置であって、
送受信回路は、誤り訂正符号化回路と、変調回路と、復調回路と、誤り訂正回路と、品質判定値計算回路とで構成されており、
誤り訂正符号化回路は、無線通信装置への入力信号と切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号とを多重化して変調回路に出力し、
変調回路は、誤り訂正回路から出力される変調方式指定信号に従い誤り訂正符号化回路の出力信号を変調し、
復調回路は、
誤り訂正回路から入力された変調方式指定信号に従い受信信号を復調して誤り訂正回路に出力するとともに、
変調方式が適用されたことを示す変調方式通知信号を誤り訂正符号化回路に出力し、
使用中の変調方式の情報を変調方式情報信号として品質判定値計算回路に出力し、
誤り訂正回路は、
復調回路の出力信号の誤りを検出および訂正し、誤りを訂正した信号を出力し、
誤り検出情報を品質判定値計算回路に出力し、
復調回路の出力信号から変調方式判定信号が抽出された場合は、変調方式判定信号を変調方式指定信号として復調回路に出力し、
復調回路の出力信号から変調方式通知信号が抽出された場合は、変調方式通知信号を変調方式指定信号として変調回路に出力し、
品質判定値計算回路は、入力された誤り検出情報と変調方式情報信号とから品質判定値を計算して品質判定値を切り替え判定回路に出力し、
切り替え判定回路は、入力された品質判定値から変調方式判定信号を計算して変調方式判定信号を誤り訂正符号化回路に出力する、
ことを特徴とする。
【0026】
本発明にかかる無線通信装置は、
切り替え判定回路と、受信切り替え回路と、2以上の送受信回路とで構成される無線通信装置であって、
送受信回路は、誤り訂正符号化回路と、変調回路と、復調回路と、誤り訂正回路と、品質判定値計算回路とで構成されており、
誤り訂正符号化回路は、無線通信装置への入力信号と切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号とを多重化して変調回路に出力し、
変調回路は、誤り訂正回路から出力される変調方式指定信号に従い誤り訂正符号化回路の出力信号を変調し、
復調回路は、
誤り訂正回路から入力された変調方式指定信号に従い受信信号を復調して誤り訂正回路に出力するとともに、
変調方式が適用されたことを示す変調方式通知信号を誤り訂正符号化回路に出力し、
使用中の変調方式の情報を変調方式情報信号として品質判定値計算回路に出力し、
誤り訂正回路は、
復調回路の出力信号の誤りを検出および訂正し、誤りを訂正した信号を出力し、
誤り検出情報を品質判定値計算回路に出力し、
復調回路の出力信号から変調方式判定信号が抽出された場合は、変調方式判定信号を変調方式指定信号として復調回路に出力し、
復調回路の出力信号から変調方式通知信号が抽出された場合は、変調方式通知信号を変調方式指定信号として変調回路に出力し、
品質判定値計算回路は、入力された誤り検出情報と変調方式情報信号とから品質判定値を計算して品質判定値を切り替え判定回路に出力し、
切り替え判定回路は、品質判定値を比較してその結果に従い送受信回路のいずれかを選択し、受信切り替え回路に切り替え指示を送出するとともに、変調方式判定信号を、選択された送受信回路に出力し、
受信切り替え回路は、切り替え指示に従って、送受信回路から入力された誤りを訂正した信号のうちからいずれかを選択して出力する、
【発明の効果】
【0027】
本発明の効果は、伝搬環境の急激な劣化、回復に対しても、受信信号の切り替え及び変調方式の切り替えを適切なタイミングで行えることにある。
【0028】
その理由は、ビット誤り情報信号と前回の品質判定値との大きさを調節する補正係数と減衰係数とを、伝搬環境の変化量に応じて調節するからである。この品質判定値計算方法により、本発明は、伝搬環境の変化が穏やかな状態から急激に回復または劣化する状態に変化した場合でも、品質判定値を伝搬環境の変動に対して追従させて更新することができ、通信方式の伝搬環境の変化に対する追従性を改善している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明における無線通信装置の第1の実施形態である。
【0030】
図1において、自局と対向局とは同様の内部構成を持ち、互いの間で無線通信を行う。対向局の同一名称の各ブロック及び信号の機能は自局送受信回路中の各ブロック及び信号の機能と対応している。たとえば、対向局送受信回路内の誤り訂正符号化回路A10_2は、自局送受信回路内の誤り訂正符号化回路A10と同様の機能を持つ。以下の自局に関する説明は、対向局の相当する個所についても同様である。
【0031】
まず、送受信回路および品質判定値計算回路の構成について説明する。
【0032】
図1に示されたように、自局の送受信回路は、誤り訂正符号化回路A10、変調回路A11、送信部A12、受信部A22、復調回路A21、誤り訂正回路A20で構成される。
【0033】
自局送受信回路の送信部A12から送信された信号a103は、無線伝送路を経由して対向局送受信回路の受信部A22_2で受信される。また、対向局送受信回路の送信部A12_2から送信された無線送信信号a103_2は、自局送受信回路の受信部A22で受信される。
【0034】
さらに、自局および対向局は、通信インタフェース回路A1およびA1_2、切り替え判定回路A4およびA4_2、品質判定値計算回路A30およびA30_2を有する。
【0035】
図2は、品質判定値計算回路A30の構成例である。図2において、品質判定値計算回路は、補正係数決定部A71、乗算器A72、A74、減衰係数決定部A73、加算器A75、減算器A76および遅延素子A77から構成される。
[第1の実施形態の動作の説明]
図1を用いて、送信系の動作を説明する。
【0036】
通信インタフェース回路A1は、自局に接続されたIP網等から送信データa1を受信し、送信入力信号a10を出力する。誤り訂正符号化回路A10は、送信入力信号a10を受信し、自局変調方式判定信号a401が持つ情報を送信入力信号a10に多重した後、誤り訂正符号化信号a101を出力する。自局変調方式判定信号a401は、自局受信方向の変調方式を指定するための情報が乗せられた信号である。変調回路A11は、誤り訂正符号化信号a101を受信し、対向変調方式指定信号a501から指定された変調方式により、誤り訂正符号化信号a101を変調して、送信変調信号a102を出力する。対向変調方式指定信号a501は、対向局が決定した変調方式の情報を持つ信号である。送信部A12は、中間周波数である送信変調信号a102を無線周波数に周波数変換するとともに電力増幅を行い、アンテナから無線送信信号a103として無線伝送路へ送出する。
【0037】
次に受信系の動作について説明する。
【0038】
図1において、自局の受信部A22は、対向局1系送受信回路から送信された無線受信信号a203をアンテナで受信して増幅した後、中間周波数へ変換して受信変調信号a202として復調回路A21に送出する。復調回路A21は、自局変調方式判定信号a401によって指定された変調方式で受信変調信号a202を復調し、復調信号a201を誤り訂正回路A20に出力する。また、復調回路A21は、復調回路の変調方式情報信号a301を品質判定値計算回路A30へ通知する。誤り訂正回路A20は、復調信号a201に対して誤り訂正処理を行い、誤り訂正復号化信号a200を出力するとともに、復調信号a201から検出したビット誤り情報をビット誤り情報信号a300にのせて品質判定値計算回路A30へ送信する。さらに、誤り訂正回路A20は、受信信号から抽出された対向変調方式指定信号a501を変調回路A11に送信する。
【0039】
通信インタフェース回路A1は、誤り訂正復号化信号a200を受信し、IP網等の自局に接続されたネットワークへ受信データa2を出力する。
【0040】
なお、対向局の受信系においても、自局が送信した信号に対して同様の処理が実施される。
【0041】
続いて、変調方式の切り替え手順が説明される。
【0042】
図1において、誤り訂正回路A20は、ビット誤り情報信号a300を、品質判定値計算回路A30へ入力する。品質判定値計算回路A30は、ビット誤り情報信号a300と変調方式情報信号a301に基づいて、現在の伝搬環境を判断する品質判定値a400を計算し、切り替え判定回路A4へ通知する。
【0043】
切り替え判定回路A4は、この品質判定値a400に基づいて変調方式を決定し、自局変調方式判定信号a401を、誤り訂正符号化回路A10及び復調回路A21へ通知する。ここで、自局変調方式判定信号a401は、切り替え判定回路A4で決定した自局受信方向の変復調回路に適用する変調方式の情報を乗せた信号である。
【0044】
次に、切り替え判定回路A4が決定した変調方式を自局受信方向の変復調回路に適用する手段について説明する。
【0045】
まず、誤り訂正符号化回路A10は、自局変調方式判定信号a401が持つ変調方式の情報を送信入力信号a10に多重して、送信入力信号a10を誤り訂正符号化した誤り訂正符号化信号a101として変調回路A11へ入力する。誤り訂正符号化信号a101は、変調回路A11で変調を受け、送信部A12、無線伝送路、対向局の受信部A22_2、復調回路A21_2を介して、対向局の誤り訂正回路A20_2に送信される。誤り訂正回路A20_2は、自局送受信回路で送信入力信号a10に多重していた変調方式の情報を抽出し、対向変調方式指定信号a501_2を変調回路A11_2へ送信する。対向変調方式指定信号a501_2に基づいて、自局の切り替え判定回路A4で決定した変調方式が、変調回路A11_2に適用される。以上の手順により、自局の切り替え判定回路A4が決定し変調方式が、自局の復調回路A21および対向局の変調回路A11_2に適用される。
【0046】
以上説明した自局受信方向の変調方式の切り替えは、対向局受信方向の変調方式の切り替えにおいても同様の手順で実行可能である。
【0047】
次に、品質判定値計算回路A30の動作を図1および図2を用いて説明する。
【0048】
図1において、誤り訂正回路A20は、フレーム周期毎に受信信号の誤りの有無を検査し、検査対象のフレームに誤りがある場合「ビット誤り情報信号a300=‘1'」を、誤りが無い場合「ビット誤り情報信号a300=‘0'」を品質判定値計算回路A30へ通知する。ビット誤り情報信号a300は、復調信号a201に対するビット誤りの情報である。
【0049】
ここで、「ビット誤り情報信号a300=‘1'」とする条件として、「フレームに誤りがある場合」と「フレームに誤りがあり、かつ誤りが訂正不能であった場合」との2通りが想定される。いずれを条件としても本発明の効果は得られるが、変調方式の選択にあたって伝送路の状況をより直接的に反映させるためには、フレームに誤りがあれば、訂正が可能であったかどうかにかかわらず「ビット誤り情報信号a300=‘1'」とする手順が好ましい。
【0050】
また、フレームに誤りがあることの判定条件としては、フレームに1ビットでも誤りがあれば「誤りあり」としてもよいし、フレームのデータが一定量以上(たとえば1フレームに3ビット以上、あるいはフレームを構成するビットの10%以上、など)誤った場合に「誤りあり」としてもよい。
【0051】
さらに、ビット誤り情報信号a300は、フレーム内で検出された誤りの個数であってもよい。
【0052】
図2は品質判定値計算回路A30のブロック図である。図2において、乗算器A72は受信したビット誤り情報信号a300と補正係数a701とを乗算し、乗算値a704を計算する。加算器A75は、減衰係数a703と前回の品質判定値a705とを乗算して得られた乗算値a706と乗算値a704とを加算し、品質判定値a400を得る。計算された品質判定値a400は0または正の値であり、切り替え判定回路A4(図1参照)へ出力される。
【0053】
遅延素子A77は、品質判定値a400を1フレーム周期分保持した後、前回の品質判定値a705として次回の品質判定値計算まで蓄積する。前回の品質判定値a705は次の周期の品質判定値の計算に用いられる。
【0054】
計算された品質判定値a400の大きさは、伝搬環境の状態を表す。例えば、品質判定値a400の値が前回の計算値と比べて大きくなった場合は無線区間の伝搬環境が悪化していることを示している。また、減衰係数a703は、前回の品質判定値a705の値の今回の品質判定値に与える影響が減少する速度を決定するパラメータであり、その値は1以下の正の値である。減衰係数a703の値が小さいほど、前回の品質判定値a705が今回の品質判定値a400へ与える影響は速く減少していく。したがって、回線品質が速やかに回復しているときは、減衰係数a703の値を小さくすることにより前回の品質判定値の影響も小さくなるので、高い多値数の変調方式への変更が高速に実施される。
【0055】
一方、補正係数a701は、品質判定値a400が増加する速度を決定するパラメータである。補正係数a701の値が大きいと、変調方式情報信号a301の値が品質判定値a400に与える影響が大きくなるので、品質判定値a400の値も大きくなる。たとえば、回線品質が急激に低下している時は、この補正係数a701の制御により耐性の強い(多値数の小さな)変調方式への変更が迅速に実施されることが好ましい。このような場合には、当該補正係数a701の値を大きくすることで、品質判定値を大きくすることができる。
【0056】
減算器A76は品質判定値a400から前回の品質判定値a705を引いて品質判定値の差a700を計算する。品質判定値の差a700は品質判定値の変化を表しており、その値が0に近いほど伝搬環境が安定していることを示している。品質判定値の差a700が大きな正の値を取るときは、伝搬環境が急激に劣化していることを示している。逆に、大きな負の値を取るとき伝搬環境が急激に回復している。
【0057】
本実施形態では、以下のようにして、品質判定値の差a700を用いて補正係数a701と減衰係数a703とを自動的に調節している。
【0058】
変調方式情報信号a301と、前記品質判定値の差a700とは、補正係数決定部A71に入力される。補正係数決定部A71は、まず、変調方式情報信号a301から変調方式毎に固有に定まる補正係数値Cを決定する。
【0059】
同一環境の下では、変調方式の多値数が小さいほどビット誤りは発生しにくい。このような変調方式の相違によるビット誤り毎の重みの不均等が解消されるように、多値数の小さい変調方式に対して大きい固有の補正係数値Cが設定されるようにしてもよい。
【0060】
次に、固有の補正係数値Cを調節する正の係数zを品質判定値の差a700を用いて求める。そして、固有の補正係数値Cと係数zとの積C×zを求め、その値を補正係数a701として乗算器A72へ出力する。
【0061】
ここで、正の係数zは、品質判定値の差a700が負の大きい値を取るほど0に近づき、品質判定値の差a700が正の方向へ増加するにつれて単調に増加するように決定される。すなわち、伝搬環境が急速に悪化している(すなわち品質判定値の差a700が正の大きい値となる)時ほど係数zは大きい値を取り、その結果補正係数a701の値も大きくなる。逆に、伝搬環境が急速に回復している(すなわち品質判定値の差a700が負の大きい値となる)場合は、係数zの値は0に近づき、結果補正係数a701の値も0に近づく。
【0062】
一方、減衰係数決定部A73は、品質判定値の差a700を受信し、その値を用いて減衰係数a703の値を調節し、乗算値a706として出力する。本実施形態では、減衰係数決定部A73は、品質判定値の差a700の値が負の大きい値を取るほど減衰係数a703の値を0に近づけ、品質判定値の差a700の値が正の大きい値を取るほど1に近づくように調節される。
【0063】
上に述べたように、伝搬環境の劣化が大きい場合には、補正係数a701は正の大きい値となる一方、減衰係数a703の上限値は1である。このため、補正係数a701は減衰係数a703よりも大きくなる。その結果、品質判定値a400に対する補正係数a701の影響が大きくなる。よって、伝搬環境が悪化した場合には低多値数変調方式への高速な切り替えが行われる。
【0064】
反対に、品質判定値の差a700の値が負でその絶対値が大きい場合(すなわち伝搬環境が急速に回復している場合)は、補正係数a701および減衰係数a703はともに0に近づく。このため品質判定値a400の値も0に近づくので、高多値数変調方式への変更が高速に行われる。
【0065】
図3は、無線通信装置のBER(Bit Error Rate;ビット誤り率)に対して、閾値と品質判定値との関係およびそれに対応した変調方式の時間的な推移例を示す図である。この例では、変調方式として128QAM(Quadrature Amplitude Modulation)と64QAMを採用している。図3において、横軸は時間であり、縦軸はBER、閾値および品質判定値を並べて記載している。図3の上方向ほどBERは高く、閾値と品質判定値は大きい。図3のように、品質判定値a400が予め設定した閾値より大きくなると、変調方式が低多値数のものに切り替えられる。変調方式の切り替えによりBERは低下するが、品質判定値a400は、補正係数a701の重みにより変調方式切り替え直後も変調方式切り替え直前の値を維持し、その後はBERの変動に従って更新されていく。BERが低下していくと、補正係数a701が0に近づいて品質判定値a400が小さくなる。品質判定値a400が閾値を下回ると高多値の変調方式に切り替わる。このとき、BERは瞬間的に上昇するが、品質判定値a400は、補正係数a701の重みにより変調方式切り替え直後も変調方式切り替え直前の値を維持し、その後はBERの変動に従って更新されていく。このように、品質判定値の差a700により補正係数a701及び減衰係数a703が自動的に調節されることで、図3のように、BERの変動に対して品質判定値が適切に追従する。
【0066】
図13は、切り替え判定回路の一実施形態を示すブロック図である。切り替え判定回路A4は、品質比較回路A41と、時間比較回路A43と、判定信号出力回路A44とを備える。品質比較回路は、受信した品質判定値a400と、予め定められた品質閾値aとを比較して、その結果を時間比較回路および判定信号出力回路に出力する。時間比較回路は、前記品質判定値a400が品質閾値aを連続して越えている継続時間tと時間閾値Taとを比較してその結果を判定信号出力回路に出力する。判定信号出力回路は、変調方式の情報を含む変調方式判定信号を出力する。
【0067】
次に、切り替え判定回路A4の動作を図4のフローチャートを用いて説明する。
【0068】
切り替え判定回路A4は、品質判定値計算回路A20で計算された受信信号の品質判定値a400を受信する。
【0069】
図4のように、切り替え判定回路A4は、受信信号の品質判定値a400と品質閾値aとの比較を行う(ステップS101)。品質閾値aは変調方式切り替えのための閾値であり、切り替え判定回路A4は、「品質判定値a400<=a」のとき高多値数の変調方式への切り替えを実施する(ステップS102)。「品質判定値a400>a」のとき、品質判定値a400が品質閾値aを連続で越えている時間tと時間閾値Taとの比較を行う(ステップS103)。時間閾値Taは低多値数への変調方式切り替えを判定する閾値であり、「t>Ta」となった場合に伝搬環境が長期的に悪くなったと判断して低多値数の変調方式への切り替えを実施する(ステップS104)。「t<=Ta」のときは現在適用されている変調方式を維持する(ステップS105)。例えば、変調方式として128QAMと64QAMを用意した場合、「品質判定値a400<=a」のときは128QAMを適用し、「品質判定値a400>a」かつ「t>Ta」のときは64QAMを適用する。「品質判定値a400>a」かつ「t<=Ta」のときは現在適用されている変調方式を維持する。
【0070】
さらに、変調方式の種類は3種類以上でも良い。図5は、「品質判定値a400>a」かつ「t>Ta」である場合に、変調方式の決定手順を示すフローチャートである。
【0071】
図5においては、変調方式として64QAM、16QAMおよびQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)の3種類としている。切り替え判定回路A4は、64QAMとそれ以外の変調方式との切り替え閾値bと、16QAMとQPSKの切り替え閾値cとを用意する。まず、閾値bと品質判定値a400とを比較し(ステップS201)、品質判定値a400<=閾値bであれば64QAMを適用する(ステップS202)。品質判定値a400>閾値bであれば、閾値cと品質判定値a400とを比較する(ステップS203)。ここで品質判定値a400<=閾値cであれば16QAMを適用し(ステップS204)、品質判定値a400>閾値cであればQPSKを適用する(ステップS205)。
【0072】
このようにして、変調方式が3種類以上の場合でも最適な変調方式を決定できる。この場合の切り替え判定回路の実施形態のブロック図を図14に示す。図14においては、図13と比べて品質比較回路を複数(A41およびA42)有する点が異なる。さらに、これに時間比較回路を付加して時間閾値との比較を行ってもよい。
【0073】
なお、さらに多種の変調方式を用いる実施形態においても、それぞれに閾値を設定することで同様の手順により変調方式を決定可能である。
【0074】
以上の動作により変調方式を決定した後、切り替え判定回路A4は自局変調方式指定信号a401を出力する。
【0075】
なお、対向局の品質判定値計算回路A30_2及び切り替え判定回路A4_2も、品質判定値計算回路A30及び切り替え判定回路A4と同様に動作する。
[発明の第2の実施形態]
伝搬環境の劣化期間が非常に短時間であって、変調方式の切り替えが決定されてから適用されるまでの間に伝搬環境がすみやかに回復すると、伝搬環境の回復後にも低多値数の変調方式がしばらく維持される場合がある。この点は、前述された第1の実施形態において残された課題である。より好ましいのは、このような場合においても、伝搬環境の変化に高速に伝送方式を追随させ、高効率な通信が実現されることである。
【0076】
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態と特許文献2の技術とを融合させることによって、この課題を解決するための技術と、本発明のより好ましい実施形態とを提供するものである。
【0077】
図6は、本発明の無線通信装置の第2の実施形態を示す図である。自局と対向局とは、対向して互いの間で無線通信を行う。図6において、対向局とは自局と同一の内部構成を持っているので、対向局の内部の詳細な記載は省略している。自局および対向局は、1系および2系の、2組の送受信回路から構成されており、さらに、切り替え判定回路、ヒットレススイッチ、通信インタフェース回路を備えている。ヒットレススイッチとは、パケットの損失を伴わずにディジタル信号の切り替えが可能なスイッチである。
【0078】
図6において、自局1系送受信回路から送信された信号は、対向局1系送受信回路で受信される。また、自局2系送受信回路から送信された信号は対向局2系送受信回路で受信される。同様に、対向局1系送受信回路および対向局2系送受信回路から送信された信号は、それぞれ自局1系送受信回路および自局2系送受信回路で受信される。
【0079】
本実施形態において、送信系および受信系の構成および基本的な動作は第1の実施形態および図1で説明したものと同様である。本実施形態では、2系に関わる機能部分の符号には、1系の符号AをBに置換したものを用いている。たとえば、自局2系送受信回路内の誤り訂正符号化回路B10は、自局1系送受信回路内の誤り訂正符号化回路A10と同様の構成および機能を持つ。
【0080】
図6に示されるように、自局の送受信回路は、誤り訂正符号化回路A10、B10、変調回路A11、B11、送信部A12、B12、受信部A22、B22、復調回路A21、B21、誤り訂正回路A20、B20、品質判定値計算回路A30、B30で構成される。
【0081】
さらに、自局は、通信インタフェース回路A1、受信信号を選択するためのヒットレススイッチ A2、切り替え判定回路A3を備える。通信インタフェース回路A1、受信信号を選択するためのヒットレススイッチA2、切り替え判定回路A3は1系および2系に共通の構成要素である。
【0082】
品質判定値計算回路A30,B30の構成は、第1の実施形態の図2で説明したものと同一であるので重複した説明は省略される。
【0083】
図6を用いて、送受信回路の動作を説明する。通信インタフェース回路A1から出力された送信入力信号a10は、誤り訂正符号化回路A10、変調回路A11、送信部A12を通過し、アンテナから無線送信信号a103として無線伝送路へ送出される。また、2系送受信回路は、1系送受信回路と同様の処理を送信入力信号a10に対して行い、無線伝送路に無線送信信号b103を出力する。対向局の送信系における送信処理も、自局と同様である。
【0084】
受信部A22は、無線受信信号a203をアンテナにより受信し、受信変調信号a202を復調回路A21に送出する。復調回路A21は、受信変調信号a202を復調し、復調信号a201を出力する。誤り訂正回路A20は、復調信号a201に対して誤り訂正処理を行い、誤り訂正復号化信号a200およびビット誤り情報信号a300を出力する。
【0085】
自局2系送受信回路は、対向局2系送受信回路から送信された無線受信信号b203に対して、1系送受信回路と同様の処理を実施し、誤り訂正回路B20は、誤り訂正復号化信号b200およびビット誤り情報信号b300を出力する。
【0086】
ヒットレススイッチA2は、1系及び2系送受信回路の誤り訂正復号化信号a200とb200を受信する。ヒットレススイッチA2は、切り替え判定回路A3の出力信号である系指定信号a500を用いて、誤り訂正復号化信号a200とb200のいずれかを選択し受信出力信号a20として出力する。通信インタフェース回路A1は、受信出力信号a20を、IP網等の外部ネットワークへ外部出力信号a2として出力する。
【0087】
対向局の受信系も、上述した自局と同様の処理を実施する。
【0088】
続いて、受信系及び変調方式切り替えの構成について説明する。
【0089】
図6において、自局の1系送受信回路において、誤り訂正回路A20は、ビット誤り情報信号a300を、品質判定値計算回路A30へ入力する。品質判定値計算回路A30は、ビット誤り情報信号a300と変調方式情報信号a301に基づいて、現在の伝搬環境を判断する品質判定値a400を計算し、切り替え判定回路A3へ送出する。また、2系送受信回路においても、品質判定値計算回路B30は、誤り訂正回路B20が出力したビット誤り情報信号b300を、1系送受信回路と同様の処理を実施した後、品質判定値b400を切り替え判定回路A3へ送出する。
【0090】
切り替え判定回路A3は、前記品質判定値a400、b400に基づいて、受信する系(1系または2系)及び変調方式を決定する。そして、切り替え判定回路A3は、系指定信号a500をヒットレススイッチA2へ、自局変調方式判定信号a401、b401をそれぞれ誤り訂正符号化回路A10、B10及び復調回路A21、B21へ通知する。ここで、自局変調方式判定信号a401、b401は、切り替え判定回路A3で決定した自局受信方向の変復調回路に適用する変調方式の情報を乗せた信号である。
【0091】
次に、本実施形態における切り替え判定回路A3の動作を図7のフローチャートを用いて説明する。
【0092】
切り替え判定回路A3は、品質判定値計算回路A20で計算された1系受信信号の品質判定値a400と2系受信信号の品質判定値b400を受信する。
【0093】
図7のように、切り替え判定回路A3は、1系受信信号の品質判定値a400と2系受信信号の品質判定値b400とが入力されると、その大小を比較する(ステップS301)。そして、その比較結果の情報を系指定信号a500にのせてヒットレススイッチA2へ送信する。1系受信信号の品質判定値a400が2系受信信号の品質判定値b400より小さい場合、ヒットレススイッチA2は1系誤り訂正復号化信号a200を選択し、受信出力信号a20として出力する。
【0094】
ステップS301において、1系受信信号の品質判定値a400が2系受信信号の品質判定値b400未満の値であった場合、切り替え判定回路A3は、1系受信信号の品質判定値a400と閾値aとの比較を行う(ステップS302)。閾値aは変調方式切り替えのための閾値であり、切り替え判定回路A3は、「品質判定値a400<=a」のとき高多値数の変調方式への切り替えを実施する(ステップS303)。「品質判定値a400>a」のとき、品質判定値a400が閾値aを連続で越えた時間tと閾値Taとの比較を行う(ステップS304)。Taは低多値数への変調方式切り替えを判定する閾値であり、「t>Ta」となった場合に伝搬環境が長期的に悪くなったと判断して低多値数の変調方式への切り替えを実施する(ステップS305)。「t<=Ta」のときは現在適用されている変調方式を維持する(ステップS306)。例えば、変調方式として128QAMと64QAMを用意した場合、「品質判定値a400<=a」のときは128QAMを適用し、「品質判定値a400>a」かつ「t>Ta」のときは64QAMを適用する。「品質判定値a400>a」かつ「t<=Ta」のときは現在適用されている変調方式を維持する。
【0095】
一方、品質判定値b400がa400未満の値である場合、ヒットレススイッチA2は2系の誤り訂正復号化信号b200を受信するように切り替えを行う。また、上記の1系受信信号が選択された場合の変調方式決定方法と全く同様の方法で、図7中にステップS307〜ステップS311として示すように、2系自局側受信方向の変調方式を独立に決定する。
【0096】
なお、本実施例においても、第1の実施例の図5で説明したように、変調方式の種類は3種類以上でも良い。
【0097】
切り替え判定回路A3で決定した変調方式を自局受信方向の変復調回路に適用する手順については、第1の実施形態と同様であるので、重複した説明は省略される。
【0098】
対向局における受信信号選択及び受信方向の変調方式切り替えは、自局における受信信号選択及び受信方向の変調方式切り替えと同様の手段により行われる。
【0099】
本実施形態における品質判定値計算回路A30の動作は、2系送受信回路の品質判定値計算回路B30を含めて第1の実施形態と同様である。すなわち、2系送受信回路の誤り訂正回路B20と復調回路B21は、検出した受信信号のビット誤り情報信号b300と変調方式情報信号b301とを、それぞれ、図2で示される乗算器A72と補正係数決定部A71へ送信する。品質判定値計算回路B30は、入力されたビット誤り情報信号b300と変調方式情報信号b301から上記と全く同様の方法で品質判定値b400を計算して切り替え判定回路A3へ通知する。
【0100】
以上の動作により変調方式を決定した後、切り替え判定回路A3は1系の自局変調方式指定信号a401と2系の自局変調方式判定信号b401を出力する。ここで変調方式の切り替え命令は切り替え判定回路A3が指定した系(送受信回路)に対して通知し、他方の系(送受信回路)には変調方式維持の命令を通知する。例えば、切り替え判定回路A3が1系の誤り訂正復号化信号a200を受信出力信号a20として出力するように決定した場合、1系の送受信回路へ自局変調方式判定信号a401を通知することで変調方式の切り替え命令を通知して、2系の送受信回路には現在適用されている変調方式の維持命令を通知する。
[第2の実施形態に伴う効果]
本発明の第の実施形態による効果は、伝搬環境の劣化が瞬間的な場合でも、高品質を維持した通信を行えることである。
【0101】
その理由は、適応変調方式を備えた無線通信装置に2組の送受信回路を導入し、これらの2つの送受信回路を通過した受信信号のビット誤り情報信号から求めた品質判定値を基に、まず伝搬環境の良い受信回路の受信信号を選択した上で、変調方式の切り替え判定を行うからである。ヒットレススイッチによる受信信号の選択動作は変調方式の切り替え動作よりも短時間に実行できるため、伝搬環境の劣化が瞬間的な場合であっても、より状態の良い方の受信信号を迅速に選択することで、変調方式の切り替えよりも環境変化への追従性の良い受信を行うことができる。
[発明の第3の実施形態]
これまで説明してきた本発明の実施形態は、自局の受信信号により決定した変調方式を自局側受信方向の変復調回路(自局の復調回路および対向局の変調回路)に適用することを前提としているが、自局側送信方向の変復調回路(自局の変調回路および対向局の復調回路)に適用してもよい。自局受信信号により決定した変調方式を、自局側送信方向の変復調回路に適用する場合の実施形態を本発明の第3の実施形態として図8に示す。
【0102】
図8において、基本的な構成は図1とほぼ同様であるが、切り替え判定回路A4が出力した自局変調方式判定信号a401の持つ変調方式の情報を自局の復調回路及び対向局の変調回路ではなく、自局の変調回路及び対向局の復調回路に送信する点が、図1の構成と異なる。すなわち、自局が受信した信号により算出した品質判定値a400は、自局が送信する信号の変調方式を切り替えるために用いられる。
【0103】
図8は、本発明の無線通信装置の第3の実施形態を示す図である。本実施形態において、切り替え判定回路A4における変調方式判定信号を出力する手順は図1と同様であるので、重複する説明は省略される。
【0104】
図8の自局の送受信回路において、切り替え判定回路A4は、自局変調方式判定信号a401を誤り訂正符号化回路A10へ送信する。誤り訂正符号化回路A10は、自局変調方式判定信号a401を送信入力信号a10に多重して、送信入力信号a10を誤り訂正符号化する。自局変調方式判定信号a401が持つ情報を多重した誤り訂正符号化信号a101は、変調回路A11で変調され、送信部A12、無線伝送路を介して、対向局送受信回路の受信部A22_2へ送信される。受信部A22_2は、無線伝送路から受信した受信信号a203_2を処理した後、受信変調信号a202_2を復調回路A21_2へ送信する。復調回路A21_2は、受信変調信号a202_2を復調して誤り訂正回路A20_2に送信する。誤り訂正回路A20_2は、復調信号a201_2を誤り訂正復号化した後、自局の誤り訂正符号化回路A10で多重された自局変調方式判定信号a401が持つ変調方式の情報を抽出して、対向変調方式指定信号a501_2として復調回路A21_2へ送信する。復調回路A21_2は、対向変調方式指定信号a501_2に基づいて切り替え判定回路A3で決定した変調方式を自身に適用する。さらに、復調回路A21_2に変調方式が適用されたことを自局へ通知するために、復調回路A21_2は対向変調方式通知信号a100_2を誤り訂正符号化回路A10_2へ送信する。誤り訂正符号化回路A10_2は対向変調方式通知信号a100_2を入力信号a10_2に多重し、入力信号a10_2を誤り訂正符号化する。誤り訂正符号化信号a101_2は、変調回路A11_2で変調され、送信部A12_2、無線伝送路を介して、自局送受信回路の受信部A22へ送信される。
【0105】
自局の受信部A22は、無線伝送路を通過した誤り訂正符号化信号a101_2を処理した後、受信変調信号a202を復調回路A21へ送信する。復調回路A21は、受信変調信号a202を復調して誤り訂正回路A20に送信する。誤り訂正回路A20は、復調信号a201を誤り訂正復号化した後、対向局1系送受信回路で入力信号a10_2に多重された対向変調方式通知信号a100_2が持つ変調方式の情報を抽出して、自局変調方式指定信号a601を変調回路A11に送信する。変調回路A11では、自局変調方式指定信号a601を受信することにより、自局の切り替え判定回路A3で決定された変調方式が適用される。
【0106】
以上により、自局の切り替え判定回路A4で決定された変調方式が自局からの送信に適用される。
【0107】
また、本実施形態においては、自局受信方向の変調方式は、対向局の切り替え判定回路A4_2により決定される。対向局の切り替え判定回路A4_2で決定した変調方式の適用方法も、自局の切り替え判定回路A4で決定した変調方式の適用方法と同様である。
[第3の実施形態に伴う効果]
以上説明した本発明の第3の実施形態の効果は、送受信方向の変調方式切り替えを、お互いの変調方式に影響されることなく、伝搬環境の変化に対してのみ行うことができることである。
【0108】
その理由は、品質判定値は受信信号の変調方式に依存しない値となるからである。一般に、受信信号のビット誤りは変調方式のエラー耐性が高いほど小さくなる。従って、受信信号のビット誤り情報のみを用いて送信信号の変調方式を選択すると、自局の送信信号の変調方式が、自局の受信信号の変調方式に依存してしまう。しかしながら、第1の実施形態で説明したように、本発明の品質判定値計算回路は、変調方式情報信号a301に応じて重み付けされる補正係数a701を用いて品質判定値を計算している。このため、エラー耐性の高い変調方式については品質判定値が大きくなり、受信信号の変調方式の影響を大きく受けることなく品質判定値が計算される。
[発明の第4の実施形態]
図9は、先に説明した第2の実施形態と第3の実施形態とが結合された、本発明の無線通信装置の第4の実施形態を示す図である。図9に示されるように、第4の実施形態は、第2の実施形態と同様に1系および2系の2系統の送受信回路を備えるとともに、第3の実施形態で説明したように、自局の受信信号により決定した変調方式を自局送信方向および対向局受信方向の変復調回路に適用する構成を有している。なお、図9においては1系送受信回路のみが詳細に図示されているが、2系送受信回路の構成及び動作は1系と同様である。
【0109】
第4の実施形態においては、切り替え判定回路A3が出力した自局変調方式判定信号a401、b401の持つ変調方式の情報を自局の復調回路及び対向局の変調回路ではなく自局の変調回路及び対向局の復調回路に送信する点と、受信信号選択と変調方式切り替えを独立に行う点が、第2および第3の実施形態と異なっている。すなわち、自局受信信号により算出した2つの品質判定値a400とb400は、自局の受信信号選択と自局側送信方向の変復調方式の切り替えとに用いられる。受信信号から1系と2系とのいずれかを選択する手順は第2の実施形態と同様であり、自局受信信号の切り替え判定結果により定まる変調方式を自局送信方向および対向局受信方向の変復調回路に適用する手順は第3の実施形態と同様であるので、重複する詳細な動作の説明は省略される。
[第4の実施形態に伴う効果]
以上説明した本発明の第4の実施形態は、第2および第3の実施形態の効果を併せ持つ。すなわち、第4の実施形態の効果は、伝搬環境の劣化が瞬間的な場合でも、高品質を維持した通信を行うことができ、かつ送受信方向の変調方式切り替えを、お互いの変調方式に影響されることなく、伝搬環境の変化に対してのみ行うことができることである。
【0110】
その理由は、第2および第3の実施形態に伴う効果で述べたものと同様である。すなわち、無線通信装置に2組の送受信回路を導入し、受信信号のビット誤り情報信号から求めた品質判定値を基に、まず伝搬環境の良い受信回路の受信信号を選択した上で、変調方式の切り替え判定を行うからであり、また、受信信号の変調方式の影響を大きく受けることなく品質判定値が計算されるからである。
[発明の第5の実施形態]
以上の第1から第4の発明の実施形態においては、正負の値を持つ品質判定値の差a700に対して、補正係数a701と減衰係数a703とは互いに独立して算出されていた。
【0111】
第5の実施形態では、補正係数a711と減衰係数a713とを互いに連動させて品質判定値a400を計算する手順を説明する。
【0112】
図10は、本発明の第5の実施形態における品質判定値計算回路のブロック図である。第1の実施形態における図2の品質判定値計算回路のブロック図との相違は、図10において、減算器A76は品質判定値の差の絶対値a710を計算し、補正係数決定部A71および減衰係数決定部A73に通知している点である。品質判定値の差の絶対値a710は品質判定値の変化の大きさを表しており、その値が0に近いほど伝搬環境が安定しており、その値が大きいほど急速に伝搬環境が悪化または改善していることを示している。
【0113】
本実施形態では、品質判定値の差の絶対値a710が大きい場合に増加し、品質判定値の差の絶対値a710が小さい場合に減少する係数α(αは0以上1以下)を用いる。本実施形態は、この係数αを用いて、補正係数a711と減衰係数a713とを自動的に調節している。
【0114】
本実施形態において、補正係数a701と減衰係数a703とは、補正係数a701=α×C、減衰係数a703=1−αとして計算される。ここで、Cは第1の実施形態での説明と同様に、変調方式情報信号a301から変調方式毎に固有に定まる値である。
【0115】
以下は、補正係数a701および減衰係数a703を以上のように定義した場合の品質判定値計算回路A30の動作である。伝搬環境が急速に変化している(すなわち品質判定値の差の絶対値a710が正の大きい値となる)時ほど係数αは1に近づく。また、減衰係数(1−α)は、0に近づく。したがって、本実施形態では伝搬環境が急速に変化している場合には、品質判定値a400の値は、αが1に近いためC×ビット誤り情報信号a300、すなわち現時点の瞬時の伝搬品質に近い値となる。
【0116】
この結果、低多値変調方式への切り替え(伝搬環境が急速に悪化している場合)や高多値変調方式への切り替え(伝搬環境が急速に回復している場合)が速やかに行われる。
【0117】
また、本実施形態では、伝搬環境が安定している場合には減衰係数(1−α)はαよりも大きい値とすることができる。この場合、品質判定値a400は遅延素子A77の出力(すなわち、過去の品質判定値のリーク積分値に近い値となる。
【0118】
品質判定値a400は、ビット誤り情報信号a300の影響をあまり受けない。伝搬環境の小さな変動により変調方式が頻繁に切り替えられることを防止する。
[第5の実施形態に伴う効果]
以上説明した本発明の第5の実施形態は、今回の品質判定値a400に対する前回の品質判定値a705の影響を効果的に低減させることができる。
【0119】
その理由は、係数αを導入し、補正係数a711と減衰係数a713とを互いにトレードオフの関係になるように連動して変化させるようにしているからである。
【0120】
なお、本実施形態で述べた品質判定値計算回路A30の動作は、第1の実施形態のみならず第2の実施形態から第4の実施形態に対しても適用可能であり、それぞれの実施形態において上記と同様の効果をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明における無線通信装置の第1の実施形態を示す図
【図2】品質判定値計算回路A30のブロック図
【図3】BERに対して、閾値と品質判定値との関係およびそれに対応した変調方式の時間的な推移例を示す図
【図4】切り替え判定回路の動作を示すフローチャート
【図5】変調方式として64QAM、16QAMおよびQPSKを採用した場合の変調方式の決定手順を示すフローチャート
【図6】本発明の無線通信装置の第2の実施形態を示す図
【図7】本発明の第2の実施形態における切り替え判定回路A3の動作を示す図
【図8】本発明の無線通信装置の第3の実施形態を示す図
【図9】本発明の無線通信装置の第4の実施形態を示す図
【図10】本発明の第5の実施形態における品質判定値計算回路のブロック図
【図11】送受信機の構成例
【図12】品質判定値を計算する回路の構成例
【図13】切り替え判定回路の一実施形態を示すブロック図
【図14】切り替え判定回路の実施形態を示すブロック図
【符号の説明】
【0122】
A1 通信インタフェース回路
A10 誤り訂正符号化回路
A10_2 誤り訂正符号化回路
B10 誤り訂正符号化回路
A11 変調回路
B11 変調回路
A11_2 変調回路
A12 送信部
B12 送信部
A12_2 送信部
A2 ヒットレススイッチ
A20 誤り訂正回路
A20_2 誤り訂正回路
B20 誤り訂正回路
A21 復調回路
A21_2 復調回路
B21 復調回路
A22 受信部
A22_2 受信部
B22 受信部
A3 切り替え判定回路
A4 切り替え判定回路
A4_2 切り替え判定回路
A41 品質比較回路
A42 品質比較回路
A43 時間比較回路
A44 判定信号出力回路
A30 品質判定値計算回路
A30_2 品質判定値計算回路
B30 品質判定値計算回路
A300 変調方式決定部
A301 閾値判定部
A302 変調方式決定通知部
A71 補正係数決定部
A72 乗算器
A74 乗算器
A73 減衰係数決定部
A75 加算器
A76 減算器
A77 遅延素子
a1 送信データ
a10 送信入力信号
a100 変調方式通知信号
a101 誤り訂正符号化信号
a101_2 誤り訂正符号化信号
a102 送信変調信号
a103 無線送信信号
a103_2 無線送信信号
b103 無線送信信号
a2 受信データ
a20 受信出力信号
a200 誤り訂正復号化信号
b200 誤り訂正復号化信号
a201 復調信号
a201_2 復調信号
a202 受信変調信号
a202_2 受信変調信号
a203 無線受信信号
b203 無線受信信号
a300 ビット誤り情報信号
b300 ビット誤り情報信号
a3000 誤り情報信号
a3001 品質判定値
a3002 変調方式指定信号
a301 変調方式情報信号
b301 変調方式情報信号
a400 品質判定値
a400_2 品質判定値
b400 品質判定値
b400_2 品質判定値
a401 自局変調方式判定信号
b401 自局変調方式判定信号
a500 系指定信号
a501 対向変調方式指定信号
a501_2 対向変調方式指定信号
a601 変調方式指定信号
a700 品質判定値の差
a7004 乗算値
a701 補正係数
a711 補正係数
a703 減衰係数
a713 減衰係数
a704 乗算値
a705 前回の品質判定値
a706 乗算値
a710 品質判定値の差の絶対値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置の受信信号の誤り検出情報から品質判定値を計算して出力するための品質判定値計算回路であって、
遅延回路と、加算器と、減算器と、補正係数決定部と、減衰係数決定部と、第1の乗算器と、第2の乗算器とから構成され、
前記遅延回路は、前記品質判定値を所定の時間だけ遅延させて出力し、
前記減算器は、前記品質判定値と前記遅延回路の出力との差を出力し、
前記補正係数決定部は、使用中の変調方式を示す変調方式情報信号と前記減算器の出力とから補正係数を計算して出力し、
前記減衰係数決定部は、前記減算器の出力から減衰係数を計算して出力し、
前記第1の乗算器は、前記受信信号の誤り検出情報と前記補正係数との乗算結果を出力し、
前記第2の乗算器は、前記遅延回路の出力と前記減衰係数との乗算結果を出力し、
前記加算器は、前記第1の乗算器の出力と前記第2の乗算器の出力との加算結果を前記品質判定値として出力する、
ことを特徴とする品質判定値計算回路。
【請求項2】
前記変調方式係数は、前記無線通信装置の受信信号の変調方式の多値数が大きいほど小さく設定され、
前記補正係数は0以上の値であって前記減算器の出力の値の増加につれて単調増加し、
前記減衰係数は0以上1以下の値であって前記減算器の出力の値の増加につれて単調に増加する、
ことを特徴とする請求項1記載の品質判定値計算回路。
【請求項3】
前記変調方式係数の値をCおよび0以上1以下の定数をαを用いて前記補正係数の値はC×αで与えられ、前記減衰係数の値は1−αで与えられ、前記減算器の出力の絶対値の増加に対して単調に増加する、
ことを特徴とする、請求項1記載の品質判定値計算回路。
【請求項4】
受信信号の誤り検出情報から品質判定値を計算して出力するための品質判定値計算回路を備え、前記品質判定値計算回路は、遅延回路と、加算器と、減算器と、補正係数決定部と、減衰係数決定部と、第1の乗算器と、第2の乗算器とから構成されている無線通信装置に用いられる変調方式の切り替え判定方法であって、
(a)前記品質判定値と予め定められた品質閾値との比較を行い、
(b)前記品質判定値の大きさが前記品質閾値以下の場合には、前記変調方式をより高多値数の変調方式へ切り替え、
(c)前記品質判定値の大きさが前記品質閾値を超える場合には、前記品質判定値が前記品質閾値を連続して越えている継続時間と予め定められた時間閾値との比較を行い、
前記継続時間が前記時間閾値を超えている場合には前記変調方式をより低多値数の変調方式へ切り替え、
(d)前記継続時間が前記時間閾値よりも小さい場合には、現在の変調方式を維持する、
ことを特徴とする変調方式の切り替え判定方法。
【請求項5】
2系統の送受信回路で構成され、
受信信号の誤り検出情報から品質判定値を計算して出力するための品質判定値計算回路をそれぞれ備え、
前記品質判定値計算回路は、遅延回路と、加算器と、減算器と、補正係数決定部と、減衰係数決定部と、第1の乗算器と、第2の乗算器とから構成されている無線通信装置に用いられる切り替え判定方法であって、さらに、
(a)前記送受信回路のそれぞれの品質判定値計算回路が出力する品質判定値を基に前記送受信回路を選択し、
(b)選択された前記送受信回路の品質判定値が、前記品質閾値または前記時間閾値と比較される、
ことを特徴とする請求項4記載の変調方式の切り替え判定方法。
【請求項6】
複数の前記品質閾値を有し、前記品質判定値と前記品質閾値との大小の比較結果により変調方式を選択することを特徴とする、請求項4または請求項5のいずれかに記載の変調方式の切り替え判定方法。
【請求項7】
品質比較回路と、時間比較回路と、判定信号出力回路とを備える無線通信装置に用いられる変調方式の切り替え判定回路であって、
前記品質比較回路は、受信信号の品質を示す品質判定値と予め定められた品質閾値とを比較してその結果を前記時間比較回路および前記判定信号出力回路に出力し、
前記時間比較回路は、前記品質判定値が前記品質閾値を連続して越えている継続時間と前記時間閾値とを比較してその結果を前記判定信号出力回路に出力し、
前記判定信号出力回路は、変調方式の情報を含む変調方式判定信号を出力し、
前記品質判定値の大きさが前記品質閾値以下の場合には、前記判定信号出力回路は現在より高多値数の変調方式の情報を含む前記変調方式判定信号を出力し、
前記品質判定値の大きさが前記品質閾値を超える場合には、前記時間比較回路は前記品質判定値が前記品質閾値を連続して越えている継続時間と予め定められた時間閾値との比較を行い、
前記継続時間が前記時間閾値を超えている場合には、前記判定信号出力回路は現在より低多値数の変調方式の情報を含む前記変調方式判定信号を出力し、
前記継続時間が前記時間閾値を超えていない場合には、前記判定信号出力回路は現在の変調方式の情報を含む前記変調方式判定信号を出力する、
ことを特徴とする変調方式の切り替え判定回路。
【請求項8】
受信切り替え回路および2以上の送受信回路で構成される無線通信装置に用いられる切り替え判定回路であって、
選択回路をさらに備え、
前記選択回路は、前記送受信回路のそれぞれが出力する受信信号の品質を示す品質判定値を互いに比較した結果を基に前記送受信回路を選択し、
選択された前記送受信回路の品質判定値が、前記品質閾値または前記時間閾値と比較され、
前記判定信号出力回路は、受信切り替え回路に切り替え指示を送出するとともに、選択された前記送受信回路に変調方式判定信号を出力する、
ことを特徴とする請求項7記載の変調方式の切り替え判定回路。
【請求項9】
(切り替え判定回路:3以上の変調方式):
新たな比較回路をさらに備え、
前記新たな比較回路は、受信信号の品質を示す品質判定値と、前記品質閾値とは異なる品質閾値とを比較してその結果を前記時間比較回路および前記判定信号出力回路に出力し、
前記判定信号出力回路は、その結果を基に前記変調方式判定信号を出力する、
ことを特徴とする、請求項7または請求項8のいずれかに記載の変調方式の切り替え判定回路。
【請求項10】
送受信回路と切り替え判定回路とで構成される無線通信装置であって、
前記送受信回路は、誤り訂正符号化回路と、変調回路と、復調回路と、誤り訂正回路と、品質判定値計算回路とで構成されており、
前記誤り訂正符号化回路は、前記無線通信装置への入力信号と前記切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号とを多重化して前記変調回路に出力し、
前記変調回路は、前記誤り訂正回路から出力される変調方式指定信号に従い前記誤り訂正符号化回路の出力信号を変調し、
前記復調回路は、前記切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号に従い受信信号を復調して前記誤り訂正回路に出力するとともに、使用中の変調方式の情報を示す変調方式情報信号を前記品質判定値計算回路に出力し、
前記誤り訂正回路は、前記復調回路の出力信号の誤りを検出および訂正し、誤りを訂正した信号を出力し、誤り検出情報を前記品質判定値計算回路に出力するとともに、前記復調回路の出力信号から抽出した前記変調方式判定信号を前記変調方式指定信号として前記変調回路に出力し、
前記品質判定値計算回路は、入力された前記誤り検出情報と前記変調方式情報信号とから品質判定値を計算して前記品質判定値を前記切り替え判定回路に出力し、
前記切り替え判定回路は、入力された前記品質判定値から前記変調方式判定信号を計算して前記変調方式判定信号を前記誤り訂正符号化回路および前記復調回路に出力する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項11】
前記品質判定値計算回路は、請求項2記載の品質判定値計算回路であり、
前記切り替え判定回路は、請求項7記載の前記切り替え判定回路、
であることを特徴とする、請求項10記載の無線通信装置。
【請求項12】
切り替え判定回路と、受信切り替え回路と、2以上の送受信回路とで構成される無線通信装置であって、
前記各送受信回路は、誤り訂正符号化回路と、変調回路と、復調回路と、誤り訂正回路と、品質判定値計算回路とで構成されており、
前記誤り訂正符号化回路は、入力信号と前記切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号とを多重化して前記変調回路に出力し、
前記変調回路は、前記誤り訂正回路から出力される変調方式指定信号に従い前記誤り訂正符号化回路の出力信号を変調し、
前記復調回路は、前記切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号に従い受信信号を復調して前記誤り訂正回路に出力するとともに使用している変調方式の情報を前記品質判定値計算回路に出力し、
前記誤り訂正回路は、前記復調回路の出力信号の誤りを検出および訂正した後、誤りを訂正した信号を前記受信切り替え回路に出力し、誤り検出情報を前記品質判定値計算回路に出力するとともに、前記復調回路の出力信号から前記変調方式指定信号を抽出して前記変調回路に出力し、
前記品質判定値計算回路は、入力された前記誤り検出情報と前記変調方式情報信号とから品質判定値を計算して前記品質判定値を前記切り替え判定回路に出力し、
前記切り替え判定回路は、前記品質判定値を比較してその結果に従い前記送受信回路のいずれかを選択し、前記受信切り替え回路に切り替え指示を送出するとともに、変調方式判定信号を、選択された前記送受信回路に出力し、
前記受信切り替え回路は、前記切り替え指示に従って、前記送受信回路から入力された前記誤りを訂正した信号のうちからいずれかを選択して出力する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項13】
前記品質判定値計算回路は、請求項2記載の品質判定値計算回路であり、
前記切り替え判定回路は、請求項8記載の前記切り替え判定回路、
であることを特徴とする、請求項12記載の無線通信装置。
【請求項14】
送受信回路と切り替え判定回路とで構成される無線通信装置であって、
前記送受信回路は、誤り訂正符号化回路と、変調回路と、復調回路と、誤り訂正回路と、品質判定値計算回路とで構成されており、
前記誤り訂正符号化回路は、前記無線通信装置への入力信号と前記切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号とを多重化して前記変調回路に出力し、
前記変調回路は、前記誤り訂正回路から出力される変調方式指定信号に従い前記誤り訂正符号化回路の出力信号を変調し、
前記復調回路は、
前記誤り訂正回路から入力された変調方式指定信号に従い受信信号を復調して前記誤り訂正回路に出力するとともに、
変調方式が適用されたことを示す変調方式通知信号を前記誤り訂正符号化回路に出力し、
使用中の変調方式の情報を変調方式情報信号として前記品質判定値計算回路に出力し、
前記誤り訂正回路は、
前記復調回路の出力信号の誤りを検出および訂正し、誤りを訂正した信号を出力し、
誤り検出情報を前記品質判定値計算回路に出力し、
前記復調回路の出力信号から前記変調方式判定信号が抽出された場合は、前記変調方式判定信号を前記変調方式指定信号として前記復調回路に出力し、
前記復調回路の出力信号から前記変調方式通知信号が抽出された場合は、前記変調方式通知信号を前記変調方式指定信号として前記変調回路に出力し、
前記品質判定値計算回路は、入力された前記誤り検出情報と前記変調方式情報信号とから品質判定値を計算して前記品質判定値を前記切り替え判定回路に出力し、
前記切り替え判定回路は、入力された前記品質判定値から前記変調方式判定信号を計算して前記変調方式判定信号を前記誤り訂正符号化回路に出力する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項15】
前記品質判定値計算回路は、請求項2記載の品質判定値計算回路であり、
前記切り替え判定回路は、請求項7記載の前記切り替え判定回路、
であることを特徴とする、請求項14記載の無線通信装置。
【請求項16】
切り替え判定回路と、受信切り替え回路と、2以上の送受信回路とで構成される無線通信装置であって、
前記送受信回路は、誤り訂正符号化回路と、変調回路と、復調回路と、誤り訂正回路と、品質判定値計算回路とで構成されており、
前記誤り訂正符号化回路は、前記無線通信装置への入力信号と前記切り替え判定回路から入力された変調方式判定信号とを多重化して前記変調回路に出力し、
前記変調回路は、前記誤り訂正回路から出力される変調方式指定信号に従い前記誤り訂正符号化回路の出力信号を変調し、
前記復調回路は、
前記誤り訂正回路から入力された変調方式指定信号に従い受信信号を復調して前記誤り訂正回路に出力するとともに、
変調方式が適用されたことを示す変調方式通知信号を前記誤り訂正符号化回路に出力し、
使用中の変調方式の情報を変調方式情報信号として前記品質判定値計算回路に出力し、
前記誤り訂正回路は、
前記復調回路の出力信号の誤りを検出および訂正し、誤りを訂正した信号を出力し、
誤り検出情報を前記品質判定値計算回路に出力し、
前記復調回路の出力信号から前記変調方式判定信号が抽出された場合は、前記変調方式判定信号を前記変調方式指定信号として前記復調回路に出力し、
前記復調回路の出力信号から前記変調方式通知信号が抽出された場合は、前記変調方式通知信号を前記変調方式指定信号として前記変調回路に出力し、
前記品質判定値計算回路は、入力された前記誤り検出情報と前記変調方式情報信号とから品質判定値を計算して前記品質判定値を前記切り替え判定回路に出力し、
前記切り替え判定回路は、前記品質判定値を比較してその結果に従い前記送受信回路のいずれかを選択し、前記受信切り替え回路に切り替え指示を送出するとともに、変調方式判定信号を、選択された前記送受信回路に出力し、
前記受信切り替え回路は、前記切り替え指示に従って、前記送受信回路から入力された前記誤りを訂正した信号のうちからいずれかを選択して出力する、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項17】
前記品質判定値計算回路は、請求項2記載の品質判定値計算回路であり、
前記切り替え判定回路は、請求項8記載の前記切り替え判定回路、
であることを特徴とする、請求項16記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−65401(P2009−65401A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230868(P2007−230868)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】