説明

哺乳動物細胞におけるIi発現の抑制

本発明は、抗原提示経路を変える目的のための、細胞におけるIi発現の抑制を伴う組成物および方法に対向される。より具体的には、正常な環境下では、MHCクラスII分子と会合して提示されないであろう抗原エピトープのMHCクラスII分子提示に関する組成物および方法が開示される。本発明は、正常にMHCクラスII分子を発現する細胞、ならびにMHCクラスII分子を発現するように誘導することができる細胞における提示に関する。IiのRNA干渉に関する実施態様が具体的に開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
特異的抗原に対する免疫応答は、Tリンパ球によるそれらの抗原のペプチドフラグメントの認識によって調節される。抗原提示細胞内では、プロセスされた抗原のペプチドフラグメントは、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)分子の抗原ペプチド結合部位中に結合されるようになる。次いで、これらのペプチド−MHC複合体は、ヘルパーまたは細胞傷害性Tリンパ球上のT細胞レセプターによる認識(提示MHC分子の外来ペプチドおよび隣接表面の両方の)のために細胞表面に移送される。ペプチドを送達するMHC分子の2種のクラス,MHCクラスIおよびMHCクラスIIが存在する。
【0002】
MHCクラスI分子は、抗原をCD8−ポジティブ細胞傷害性Tリンパ球に提示し、次いで、これが活性化され、そして抗原提示細胞を直接殺傷することができる。クラスIMHC分子は、小胞体において内在的に合成されるタンパク質、例えば感染性ウイルスからのペプチドを、タンパク質合成の時間中独占的に受容する。
【0003】
MHCクラスII分子は、抗原をCD4−ポジティブ・ヘルパ−Tリンパ球(Tヘルパー細胞)に提示する。一旦活性化されると、Tヘルパー細胞は、物理的接触およびサイトカイン放出を介して、細胞傷害性Tリンパ球(Tキラー細胞)およびBリンパ球の活性化に寄与する。MHCクラスI分子とは異なり、MHCクラスII分子は、非特異的または特異的エンドサイトーシスを介して取り込まれた外因性抗原を結合する。合成中、MHCクラスII分子は、インバリアント鎖(invariant chain)タンパク質(Ii)を代わりに結合することによって内因性抗原の結合をブロックしている。これらのMHCクラスII−liタンパク質複合体は、小胞体からポスト−ゴルジ分画(post−Golgi compartment)ヘ移送され、ここでIiはタンパク質分解作用によって遊離され、そして外因性抗原ペプチドが結合される(非特許文献1;非特許文献2)。
【0004】
MHCクラスIおよびMHCクラスII分子は、細胞において別個の分布状態を有する。ほとんど全ての核形成細胞は、発現レベルは細胞の種類間で変化するけれどもMHCクラスI分子を発現する。免疫系の細胞はそれらの表面に豊富なMHCクラスIを発現するが、一方、肝細胞は比較的低いレベルを発現する。非核形成細胞はMHCクラスIをほとんど発現しないか、全く発現しない。MHCクラスII分子は、Bリンパ球およびマクロファージにおいて高度に発現されるが、他の組織細胞では発現しない。しかしながら、多くの他の細胞種は、サイトカインへの曝露によってMHCクラスII分子を発現するように誘導することができる。
【0005】
正常な条件下では、Iiタンパク質は常にナセントMHCクラスII分子と同時に合成されるので、内因性ペプチド(潜在的に自己免疫疾患へと誘導する自己決定基をもつ)は、MHCクラスII分子に対して結合されない。自己決定基ペプチドおよびMHCクラスII分子を含有する複合体は、身体の免疫監視系によって決して認められないので、寛容性はこれらの決定基に対して発達されない。MHCクラスII分子が発達された個体においてIiによって抑制されない場合は、内因性の自己決定基がMHCクラスII分子によって提示されるようになり、それらの内因性抗原に対する自己免疫応答を開始する。そのような状態がある種の自己免疫疾患における場合である。悪性細胞における影響をそのように技術的に変えることによって、腫瘍の内因性抗原に対する「自己免疫応答」が治療学的に使用されて、増殖を制限したり、または腫瘍細胞を除去することができる。
【0006】
Iiタンパク質の付随する増加なしに増加されたMHCクラスII分子の発現の治療学
的効果は、MHCクラスII−ネガティブ、Ii−ネガティブ腫瘍において例証された(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6および非特許文献7)。これらの研究では、MHCクラスII−ネガティブのマウス肉腫へのMHCクラスII−分子の遺伝子のトランスフェクションはMHCクラスII−ポジティブを生成したが、Ii−ネガティブの腫瘍細胞系では生成しなかった。MHCに適合する宿主へのこれらの細胞の注入は親腫瘍の増殖の遅延をもたらした。MHCクラスII遺伝子とともに肉腫細胞系へのIiタンパク質の遺伝子の同時トランスフェクションは、Ii鎖が内因性腫瘍抗原の提示をブロックするために、MHCクラスII遺伝子の腫瘍治療効果を阻害した。類似の結果がマウス黒色腫を用いて出された(非特許文献8)。
【0007】
この治療学的アプローチの成功は、樹状細胞の本来の活性を必要とすると考えられた。樹状細胞は専門の捕捉細胞(scaveger)であり、これは外来の抗原をペプチドにプロセスし、そしてそれらの細胞表面上のMHC抗原からTリンパ球に対してそれらを提示する。樹状細胞は、MHCクラスIおよびクラスII分子の両方をとおして抗原を提示する能力を有するので、それらが両Tヘルパ−およびTキラー細胞を活性化させる。有効なTヘルパー細胞応答は、強力なTキラー細胞応答を惹起するために必要であり、そして樹状細胞によって起こされる合体された活性化が、抗腫瘍応答の増強をもたらすと考えられた(非特許文献9;非特許文献10)。マクロファージ系統の樹状細胞は、腫瘍細胞を発見すると、両腫瘍特異的抗原および腫瘍関連抗原を摂取し、プロセスする。次いで、樹状細胞はリンパ節に移動し、これが腫瘍部位を枯渇させ、そして新しいT細胞が発芽する結節皮質(node cortex)の近傍のそれらの結節に定着する。結節皮質では、樹状細胞上の腫瘍決定基を認識した休止しているTキラー細胞が活性化され、続いて、応答能のある抗腫瘍キラーT細胞として循環中に放出される。
【0008】
Tヘルパー細胞との相互作用は、樹状細胞を活性化または「認可(license)」してMHCクラスI分子をとおして抗原を提示し、その結果Tキラー細胞を活性化するけれども、Tヘルパー細胞およびTキラー細胞との同時相互作用は必ずしも必要ではない;活性化された樹状細胞は、Tヘルパー細胞が活性化を媒介した後しばらくの間、Tキラー細胞を刺激する能力を維持する。MHCクラスIIまたはMHCクラスI決定基のいずれかによって提示されたそれぞれの抗原性ペプチドは、1種の抗原タンパク質由来である必要はなく、悪性細胞からの2種以上の抗原がプロセスされ、そして樹状細胞によって提示されてもよい。したがって、多分腫瘍に特異的ではない1種の決定基への認可は、それとともに、他の多分腫瘍に得意的な決定基に対するTキラー細胞の活性化を認可する能力を保持している。そのような「マイナーな(minor)」または「隠れた(cryptic)」決定基は、種々の治療目的のために使用されている(非特許文献11)。
【0009】
MHCクラスII抗原提示の実験的変更が、これらのマイナーな決定基に対する免疫応答を拡大するために考えられた。MHCクラスII分子に負荷するために通常利用できないペプチド・シリーズは、MHCクラスII提示のために変えられるペプチドの豊富な給源を提供する。このシリーズの決定基の開発は、応答性Tヘルパー細胞の集団の拡大をもたらす。そのような拡大された集団は樹状細胞の認可を惹起することができ、これらのあるものは、腫瘍特異的および腫瘍関連決定基に対向される。正常細胞は潜在的に腫瘍細胞決定基を共有しているが、正常細胞に対しては小さな細胞損傷のみが生じる。これは、抗腫瘍応答の多数のエフェクター応答(大量のキラーT細胞、周囲の活性化するサイトカイン、食作用をするマクロファージおよびそれらの生産物など)が正常細胞には対向されないからである。
【0010】
正常なMHCクラスII抗原提示は、MHCクラスII分子とIiタンパク質との相互作用を抑制することによって変えることができる。このことは、総Iiタンパク質を低下させる(例えば、発現を低下させる)ことによるか、またはIi免疫調節機能を妨害する
他の方法によって達せられる。Ii発現の抑制は種々のアンチセンス技術を用いて達成された。Iiタンパク質のためのmRNAのAUG部位と相互作用するアンチセンスオリゴヌクレオチドが、外因性抗原のMHCクラスII提示を減少させることが記述されている(非特許文献12)。しかしながら、Iiタンパク質の発現およびMHCクラスII分子による内因性抗原の提示に及ぼす影響は試験されなかった。近年、特許文献1は、MHCクラスII分子を発現している抗原提示細胞中への導入によって、Iiタンパク質発現を有効に抑制する、3種のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび逆遺伝子構築物を同定した。このメカニズムによってIiを抑制されている腫瘍細胞を接種されたマウスは、処理されてない親の腫瘍細胞を接種されたマウスよりも有意に長く生残することが示された。この観察は、Iiタンパク質の抑制が抗原決定基提示の範囲における増大を起こし、その結果、腫瘍細胞に対する一層有効な免疫応答を惹起することを示している。
【0011】
肉腫細胞(Sal1)腫瘍モデルにおいて、このIiアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理された腫瘍細胞は、親腫瘍によるチャレンジに対する強力なワクチンである。臨床的に有用なインビボ治療のアンチセンス作用物として、発現可能なIiアンチセンス逆遺伝子構築物(Ii−RGC)が創造された(特許文献2)。これらは、発現可能なプラスミドまたはアデノウイルス中に逆向きに異なるIi遺伝子フラグメントをクローニングすることによって構築されて、腫瘍細胞投与の多数の方法が評価された(非特許文献13;非特許文献14)。Ii−RGC遺伝子は、A20リンパ腫細胞、MC−38結腸腺がん細胞、Renca腎腺がん細胞、B16黒色腫細胞およびRM−9前立腺がん細胞を含む、数種のマウス腫瘍細胞系における安定または一過性のDNAトランスフェクションによって評価された。もっとも活性のある1種のIi−RGC(−92,97)(AUG開始コドンのAが位置1である)がインビボ研究のために選択された。
【0012】
試験された細胞系の中で、A20は既にMHCクラスII+/Ii+である。Ii−RGC(−92,97)は、この構築物が脂質または遺伝子銃トランスフェクション法によって送達された場合、有意にIi発現を抑制した。試験された他の腫瘍系はMHCクラスII−/Ii−である。これらの細胞系は、Ii−RGC(−92,97)およびCIITAまたはIFN−γのいずれかまたは両方とともにインビトロで同時にトランスフェクトされて、MHCクラスII−ポジティブ/Ii−抑制表現型が創造された(非特許文献15;非特許文献13;非特許文献14)。またMHCクラスII−ポジティブ/Ii−抑制表現型のインビボ導入は、脂質とともにIi−RGCおよびCIITAプラスミドの(非特許文献15;非特許文献14)、あるいはIi−RGC(−92,97)、CIITAおよびIFN−γを含有する組み換えアデノウイルスベクターの(非特許文献13)腫瘍内注入によって生成された。
【0013】
これらの治療学的構築物のインビボ活性は、2種の腫瘍モデル:Renca腎がん腫およびRM−9前立腺がん腫を用いて確立された皮下腫瘍における腫瘍内注射によって試験された。両腫瘍モデルにおいて、確立された腫瘍の完全退縮が達成された。Rencaモデルでは、腫瘍の退縮は、IL−2プラスミドの最適以下の用量とともに与えられた4日にわたるCIITAおよびIi−RGCプラスミド構築物の4回の腫瘍内注入後、マウスの約50%において観察された(非特許文献15)。確立されたRenca腫瘍における、CIITA、IFN−γ、Ii−RGC構築物およびIL−2遺伝子を含有する組み換えアデノウイルスの肉腫内注射は、マウスの約60〜70%における完全な腫瘍退縮およびRenca腫瘍の再チャレンジに対する防御を誘導した(非特許文献13)。進行性の、乏しい免疫原性RM−9前立腺腫瘍モデルでは、放射線照射が、最適以下の用量のIL−2およびMHCクラスII−ポジティブ/Ii−抑制表現型の効果を増大して、マウスの50%に完全な腫瘍退縮を惹起した(非特許文献14)。確立されたRM−9皮下腫瘍は、選択的に照射され、そして1日後に、4日間連続してプラスミドpCIITA、pIFN−γ、pIL−2およびpIi−RGCを用いる腫瘍内プラスミド遺伝子治療によって処置された。すべて4プラスミドによる腫瘍内処置は、腫瘍照射が遺伝子治療1日前に投与された場合のみ、マウスの50%以上において完全な腫瘍の退縮を誘導した。照射および腫瘍内遺伝子治療によって腫瘍フリーにされ、そして64日目に再チャレンジされたマウスは、RM−9チャレンジに対しては防御されたが、同系のEL−4チャレンジに対しては防御されなかった。これらの知見は、RM−9モデルでは、照射が、腫瘍に特異的な免疫応答のインサイチュー誘導のための腫瘍内遺伝子治療の治療効果を増進することを例証した。
【0014】
最適治療効果を得るために、MHCクラスIIおよびIiは、CIITAにより誘導されねばならず、そしてIiが、両RencaおよびRM−9腫瘍モデルにおいてIi−RGCによって抑制されることが必要である(非特許文献15;非特許文献14)。この結果は、マウス肺がん腫モデルにおいて、CIITAによるMHCクラスIIの誘導が、有効な腫瘍細胞ワクチンを生成しなかったことを示したMartinら(非特許文献16)の結果と一致する。この研究は、CIITAをトランスフェクトすることによるMHCクラスIIの誘導が、これはまたIiを誘導するが、治療効果のためには不十分であるという本発明者らの知見を確認する。1つは、Iiタンパク質をまた抑制することによってMHCクラスII+/Ii−の治療用表現型を取得しなければならない。Iiタンパク質の最適な抑制について試験するために、治療構築物CIITAおよびIi−RGCが種々の比率において使用された。少なくとも1:4比(CIITA:Ii−RGC)が、Iiの良好な抑制を確保するために要求された。IFN−γがRM−9前立腺腫瘍において使用されて、親の細胞において発現されないMHCクラスI分子を誘導する。Renca細胞はMHCクラスI−ポジティブ細胞であり、そしてIFN−γは、MHCクラスI分子を誘導するためには必要ではないが、それらの発現をさらに上方調節する。両腫瘍モデルにおいては、IL−2プラスミドの治療用以下の用量が免疫応答を促進するために必要とされる。
【0015】
マウスにおいて確立された腫瘍の治癒における有効性、および最適な処置プロトコルを決定するための前臨床研究における堅実な前進という、この明らかな例証があれば、ヒトのがんを処置するための薬剤が創造される。マウスの研究において使用されたCIITA遺伝子はヒトのものであり、その生産物は、MHCクラスIIおよびIi遺伝子のためのマウス・プロモーターにおいて良好に機能する(非特許文献17)。ヒト・B類リンパ芽球(B lymphoblastoid)およびHeLa細胞系においてIi発現を抑制する数種のヒトIi−RGCが作成された。CIITA構築物による細胞の形質導入は、細胞表面のMHCクラスII分子および細胞内Iiの上方調節を誘導し、一方、両CIITAとhIi−RGCによる細胞の形質導入は、MHCクラスIIの発現の増進に影響することなく、Iiの抑制を惹起した。これらのデータは、ヒトBリンパ腫細胞系Raji,およびヒト黒色腫細胞系を含む、さらなるヒトの腫瘍細胞系において再現された。
【0016】
本発明では、これらの方法が、新しく設計されたRNAi遺伝子構築物および合成オリゴヌクレオチドを用いて応用される。二本鎖RNAは、哺乳動物細胞におけるRNA干渉(RNAi)による標的遺伝子発現の選択的抑制のために使用することができる。アンチセンスとは異なり、RNAiは、標的RNAを後に切断するRNA誘導サイレンシング複合体(RNA−induced silencing complex)(RISC)と命名される、ヌクレアーゼ複合体中への二本鎖RNAの取り込みによって媒介される。長さ25ヌクレオチド未満の二本鎖RNAは、ウイルスインターフェロンのRNA応答特性を活性化しないことが知られている。RNA配列は、一般にコーディング領域における標的遺伝子RNAのいずれの領域に基づいていてもよい。合成RNAiを使用する場合、細胞は、RNAiのナノモル濃度の送達のためにカチオン性脂質を用いる培養において処理される。また活性RNAiは発現構築物中に技術的に作成されてもよい。全研究において、標的配列に対して相補的ではないRNAiが対照として使用される。遺伝子発現の抑制は、Western,FACSおよび/または表現型アッセイを用いてRNAi処理後12〜72時間に測定される。
【0017】
IiのRNAi抑制という堅固な性質は、内因的に合成される抗原の提示からもたらされる免疫刺激に理想的に適している。免疫刺激を得るための短期間、細胞の分画において抑制されることだけが必要である。これは、実質的に全細胞において連続的な抑制を要するがん細胞の増殖に関連する他の特異的標的とは全く対照的である。
【0018】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)が、その相補的配列を担持している遺伝子の発現を特異的に抑制するプロセスである(非特許文献18;非特許文献19)。DICERを含む、数種の遺伝子産物がこのプロセスに絡んでいて、これは、長いdsRNAを21〜25ヌクレオチド長の二本鎖フラグメントに進行的に切断するRNアーゼである。これらのフラグメントは、短い干渉性(short interfering)または小さい干渉性(small interfering)RNA(siRNA)として既知である(非特許文献20)。
【0019】
ドロソフィラ(Drosophila)(ショウジョウバエ)における研究は、DICERが長いdsRNAを2つの21nt鎖からなるsiRNAにプロセスするが、これは、各々において他と正確に相補的な19nt領域を含んで、2つのnt−3’オーバーハングに接した19nt二重領域を生成する(特許文献3;非特許文献21)。siRNAは、次いで、標的mRNAを認識し、そして切断するアプロテイン(aprotein)複合体の形成を誘導する。DICER酵素の同族体は、E.コリ(E.coli)からヒトまでの範囲の種において同定されて(非特許文献22;非特許文献23)いて、このことは、siRNAが、哺乳動物およびヒト細胞を含む多数の異なる細胞において遺伝子発現をサイレンスする能力を有することを示唆する。
【0020】
続いて、RNAiは、哺乳動物細胞において合成21−ヌクレオチドのsiRNA二重らせんを導入することによって開始できることが見出された(非特許文献20)。哺乳動物細胞の培養において、RNAiは、トランスフェクションのような技術によって細胞中に導入された合成siRNAにより広範な異なる細胞種において成功裏に再生された(非特許文献20)。21ヌクレオチドのsiRNAは、哺乳動物細胞においてインターフェロン応答を誘導するには短すぎる(非特許文献24)が、標的遺伝子の配列特異的抑制を提供するにはまだ十分に長いので、それらは、研究道具および治療剤としての大きな可能性を保持している。
【特許文献1】Humphreysら、米国特許第5,726,020号(1998)
【特許文献2】米国特許出願第10/127,347号
【特許文献3】WO01/75164
【非特許文献1】Daibata et al.,Molecular Immunology 31:255−260(1994)
【非特許文献2】Xu et al.,Molecular Immunology 31:723−731(1994)
【非特許文献3】Ostrand−Rosenberg et al.,Journal of Immunol.144;4068−4071(1990)
【非特許文献4】Clements et al.,Journal of Immunol.149:2391−2396(1992)
【非特許文献5】Baskar et al.,Cell.Immunol.155:123−133(1994)
【非特許文献6】Baskar et al.,J.Exp.Med.181:619−629(1995)
【非特許文献7】Armstrong et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:6886−6891(1997)
【非特許文献8】Chen and Ananthaswamy,Journal of Immunology 151:244−255(1993)
【非特許文献9】Ridge et al.,Nature 193:474−477(1998)
【非特許文献10】Schoenberg et al.,Nature193:480−483(1998)
【非特許文献11】Mougdil et al.,J.Immunol.159:2574−2579(1997)
【非特許文献12】Bertolino et al.,Internat.Immunology 3:435−443(1991)
【非特許文献13】Hillman et al.,Gene Ther. 10,1512−8(2003)
【非特許文献14】Hillman et al.,Human Gene Therapy 14,763−775(2003)
【非特許文献15】Lu et al.,Cancer Immunol Immnother 48,492−8(2003)
【非特許文献16】Martin et al.,J Immunol 162,6663−70(1999)
【非特許文献17】Ting et al.,Cell 109,521−33(1999)
【非特許文献18】Moss,Curr.Biol.11:R772−5(2001)
【非特許文献19】Elbashir,Genes Dev.15:188−200(2001)
【非特許文献20】Elbashir et al.,2001
【非特許文献21】Bermstein et al.,Nature 409:363,2001
【非特許文献22】Snarp,2001
【非特許文献23】Zamore,Nat.Struct.BIiol.B:746,2001
【非特許文献24】Kumar and Carmichael,1998
【0021】
[発明の要約]
本発明は、抗原提示経路を変える目的のための、細胞におけるIi発現の抑制を伴う組成物および方法に対向される。1つの態様では、本発明はIi発現を抑制するのに有効なsiRNAに関する。1つの実施態様では、本発明のsiRNAはRNA二重らせんを含む。RNA二重らせんの1つの鎖はIiのセンス配列を含有する。RNA二重らせんの第2の鎖はIiのセンス配列の逆の相補配列(complement)を含有する。その他の態様では、siRNAは、単一分子中に、Iiのセンス配列、該センス配列の逆相補配列およびセンスおよび逆相補配列の間に二重らせん形成を可能にする介在配列を含む。すべての実施態様において、Iiのセンス配列は、好ましくは、長さ10〜25ヌクレオチド、より好ましくは、長さ19〜25ヌクレオチド、またはもっとも好ましくは、長さ21〜23ヌクレオチドである。その他の態様では、本発明は、Ii発現を抑制するのに有効なsiRNAをコードしているDNA配列、そのようなDNAまたはsiRNAを含有する細胞、および同物の使用のための方法を提供する。
【0022】
1つの態様では、本発明は、細胞においてIiの発現を抑制する方法に関する。この方法は、Iiを発現する細胞中にsiRNAを導入することを含み、この場合、siRNAは細胞中にいずれか直接または間接的に導入される。その後、siRNAは、RNA誘導
サイレンシング複合体を形成し、それによって細胞におけるIiの発現を抑制する。
【0023】
Ii発現の抑制は抗原提示経路を変えることを意図している。より具体的には、Ii発現の抑制は、これに関して正常には提示されないであろう抗原エピトープのMHCクラスII分子への負荷を促進することを意図している。かくして、その他の態様では、本発明は、MHCクラスII分子−ネガティブ細胞のMHCクラスII分子−ポジティブ細胞への変換に関する。この変換は、例えば、タンパク質をコードしている発現可能な核酸配列を含んでなる組み換えベクターによるMHCクラスII分子−ネガティブ細胞のトランスフェクションによって実施することができ、このトランスフェクションが、MHCクラスII分子−ネガティブ細胞において、トランスフェクトされた細胞の表面におけるMHCクラスII分子の誘導をもたらす。
【0024】
本発明のその他の態様では、本発明は、Iiタンパク質発現が抑制されているMHCクラスII分子−ポジティブ細胞の表面に、関心のある抗原エピトープを提示する方法に関する。この方法は、a)MHCクラスII分子−ポジティブ細胞であるか、またはMHCクラスII分子を発現するように誘導されるかいずれかであり、かつ関心のある抗原エピトープを発現する細胞を提供し;そしてb)siRNAがいずれか直接または間接的に細胞に導入され、そしてさらに、siRNAがRNA誘導サイレンシング複合体を形成し、それによって細胞においてIiの発現を抑制することができるsiRNAを、段階a)の細胞中に導入することを伴う。その他の実施態様では、この方法は、a)MHCクラスII分子−ポジティブであるか、またはMHCクラスII分子をその細胞表面において発現するように誘導されるかいずれかであり、さらに細胞がIiを発現する細胞を提供し;そしてb)関心のある抗原エピトープおよびIiのインヒビターを、段階a)の細胞中に導入することを含んでもよい。IiのインヒビターはsiRNAであってもよい。
【0025】
その他の態様では、本発明は、免疫応答が、Iiタンパク質の発現が抑制されているMHCクラスII分子−ポジティブ細胞の表面において、関心のある抗原エピトープに対向される免疫応答を哺乳動物において刺激する方法に関する。この方法は、関心のある抗原エピトープを発現するMHCクラスII分子−ポジティブ細胞か、または関心のある抗原エピトープを発現し、かつその細胞表面にMHCクラスII分子を発現するように誘導されるMHCクラスII分子−ネガティブ細胞のいずれかを提供し;その後、siRNAがいずれか直接または間接的に細胞に導入され、そしてさらに、siRNAがRNA誘導サイレンシング複合体を形成し、それによってIiの発現を抑制することができるsiRNAを、該細胞中に導入し;そして該細胞によるか、または該細胞由来の関心のある抗原エピトープと複合されたMHCクラスII分子により哺乳動物を免疫化することを含む。
【0026】
その他の態様では、本発明は、細胞のタイプが、同定(identifying)抗原の発現を特徴とする、免疫学的応答のための動物のあるタイプの細胞を標的とする方法に関する。この方法では、培養物が抗原提示細胞を含む、個体からの末梢血液単核細胞の培養物が提供される。Ii発現のsiRNAインヒビターは、発現のために適当な条件下の培養物において、細胞中に同定抗原をコードしている発現可能な核酸配列が存在するように、培養物の抗原提示細胞中にいずれか直接または間接的に導入される。
【0027】
多数の関連する態様は、次の節において詳細に記述される。
【0028】
[発明の詳細な記述]
1つの態様では、本発明は、個体における免疫応答の、病変に特異的な調節または標的化のための組成物および方法に関する。用語が本明細書で使用されるように、調節は、抗原に対する免疫系の感受性増大または感受性減少(寛容)を指すことを意味する。用語が
本明細書で使用されるように、標的化(ターゲティング(targeting))は、抗原エピトープに対する感受性の増大を指すことを意味する。
【0029】
本開示の全態様に関する必要な要素は、細胞におけるIi合成の抑制である。用語「抑制(inhibition)または(suppression)」は、下方調節、あるいは本発明のインヒビターまたはサプレッサーの不在下で観察されるレベル以下に、Iiの活性またはIiRNAのレベルを低下させる作用を意味することを意図している。発明の背景の節で議論されたように、Iiはタンパク質であり、これはMHCクラスII分子と同時に調節(co−regulate)される。IiはMHCクラスII分子を結合し、それによって、内因的に合成される抗原(すなわち、MHCクラスII分子発現細胞内で合成される抗原)のMHCクラスII分子への接近をブロックする。MHCクラスII分子/Ii複合体は、小胞体からポスト−ゴルジ分画ヘ移送され、Iiは、ここで演じられる切断プロセスによって遊離され、これが外因性抗原(すなわち、抗原提示細胞内で合成されず、食作用、オプソニン作用、細胞表面抗体認識、補体レセプター認識およびFcレセプター認識のようなメカニズムによって抗原提示細胞中に取り込まれるために選択された抗原)の負荷(charging)を可能にする。
【0030】
複合されたIiタンパク質の存在により小胞体においてMHCクラスII分子への結合を排除される抗原類は、内因的に合成された抗原と呼ばれてもよい。そのような抗原は、細胞質タンパク質の検査を含み、これがプロテオソームによって消化され、そして抗原ペプチドのトランスポーター(TAP)によって小胞体中にペプチドとして移送される。そのような内因的に合成される抗原は、通常は、小胞体においてMHCクラスI分子に結合される。そのような抗原フラグメントは、Iiタンパク質が抗原ペプチド結合部位をブロックするので、通常は、小胞体ではMHCクラスII分子には結合されない。
【0031】
MHCクラスIへの結合と、続くD8+Tリンパ球への提示のために小胞体中に移送されたこの広いレパートリーのペプチドは、Iiタンパク質の発現を抑制することによって、その後のCD4+T免疫調節細胞への提示と、それの活性化のためにMHCクラスII分子に結合することができる。そのようなCD4+T免疫調節細胞は、免疫応答の種々の経路を統合する際にはヘルパー機能またはサプレッサー機能のいずれかをもつことができる。T免疫調節細胞は、物理的接触およびサイトカイン放出を介して、他の細胞、例えば細胞傷害性Tリンパ球(Tキラー細胞)、Bリンパ球および樹状細胞の活性化に貢献する。
【0032】
本明細書で使用されるように、用語「関心のある抗原エピトープ」は、抗原提示が起きるであろう細胞内で産生されたタンパク質由来のペプチドに存在する抗原エピトープを指す。本明細書で使用されるように、この用語は既知または未知である抗原エピトープを包含することを意図している。かくして、「関心のある」修飾因子は、エピトープが予め決定されていることを暗に含まない。抗原エピトープは、提示が起きるであろう細胞の細胞質において合成されるタンパク質に含有されるという事実によってのみ関心がある。
【0033】
治療的介入のための機会を提供する重要な生物学的結果は、MHCクラスI分子によってそこで結合するために小胞体中に移送されたペプチドの蓄積からのペプチドのMHCクラスII分子による結合を追跡する。しばしば、Ii抑制の存在下でMHCクラスII分子に結合されたエピトープは「隠れた(cryptic」エピトープであり、そのようなエピトープは、別には、抗原提示の古典的経路によってMHCクラスII分子と会合して免疫系に提示されることがない。隠れたエピトープは、試験抗原のアミノ酸配列の重複する合成ペプチドのライブラリーを解析することによって実験的に明らかにすることができる。試験抗原で免疫されたマウスの1株の動物が、そのライブラリーからの1セットのペプチド(「卓越した(dominant)エピトープ」)に応答することが見出される。
しかしながら、同一マウスがそのライブラリーの単一ペプチドにより別に免疫される場合、以前には未同定のサブセット(免疫性ペプチドにおけるいずれかの卓越したエピトープに加えて)が、免疫学的エピトープを含有することが見出されている。これらの以前には未同定のエピトープは1セットの隠れたエピトープを含む。
【0034】
本発明の方法は、卓越したエピトープおよび隠れたエピトープの両方に対して免疫を促進するけれども、若干の臨床状況では、隠れたエピトープに対する免疫応答の増強は、治療効果において特別の役割を演じる。例えば、がんに関連する抗原エピトープに対する治療応答を高める場合には、サプレッサーT細胞応答が決して起きなかった隠れたエピトープに対するTヘルパー細胞応答が、効果的な樹状細胞の認可(licensing)を提供して、これが、順に、頑健な細胞傷害性Tリンパ球の抗腫瘍応答を生み出すことが十分ありそうである。がん関連抗原の卓越したエピトープに対するT細胞応答の抑制の開発は、腫瘍の微小転移巣の成長において役割を演じることが示されている。したがって、本発明の有意義な利用は、推定される隠れたがん関連決定基に対するTヘルパー細胞応答の促進である。
【0035】
その他の態様では、自己免疫疾患の場合、自己免疫疾患に関連する抗原の卓越したエピトープに対する応答が、そのような疾患の病状を促進する。ここで、代替法の開発、例えば、新規な隠れたエピトープに対する免疫応答の経路を抑制することは、治療学的に有用になり得る。これらの概念は、さらなる医学的症状、例えばアレルギー、移植片拒絶、および感染症および心臓血管病の治療において応用できるかもしれない。診断、処置のモニタリングおよびそのような症状を有する患者の治療において適用される化合物の開発における必須かつ有用な第1の段階は、Iiタンパク質抑制の条件下で抗原提示細胞によって提示されるようになるMHCクラスIIエピトープの同定である。そのようなエピトープは、両卓越したエピトープおよび隠れたエピトープを含む。免疫抑制性応答は、例えば、がんまたは感染性疾患の場合、それらには開発されていないし、そして活性化応答は、自己免疫疾患または移植片拒絶の場合には開発されていないので、隠れたエピトープは、特に有用であるかもしれない。したがって、その症例が、与えられた病状において存在しているかもしれないので、臨床医は、応答を活性化または抑制するTh1またはTh2を惹起することに新鮮なスタートを有する。そのようなエピトープを生成、単離および特性決定する方法は本発明の首題である。
【0036】
その他の態様では、本発明は、Iiタンパク質の不在下で小胞体においてMHCクラスII分子に結合される抗原エピトープを含有する個々のペプチドの提示、単離および同定を提供する。そのようなペプチドは合成することができ、そして起源となる疾病に関連する抗原に対して免疫応答を増進または抑制するために、ワクチン適用において、個々にまたは組み合わせて使用することができる。そのようなエピトープペプチドを単離および特性決定する方法は、米国特許第5,827,526号、米国特許第5,874,531号および米国特許第5,880,103号に示されており、これらは引用によって本明細書に組み入れられている。
【0037】
「内因的に合成される」種類内に入る種々の抗原(通常は、MHCクラスII分子提示から排除される)は、ある種の病状と特異的に関連している。例えば、腫瘍細胞または他の悪性細胞を考えよ。そのような細胞は、がんに特異的なタンパク質およびがんに関連するタンパク質を合成し、これらは治療学的に有用なMHCクラスIIエピトープを含有する。しかしながら、これらのタンパク質は抗原提示細胞内で合成されるので、そのようなタンパク質の抗原エピトープは、同じ細胞のMHCクラスII分子に関して提示から除外される。抗原タンパク質が合成される細胞による抗原エピトープの提示におけるこの制約は、ウイルスにより感染された細胞の場合にもまた適用される。ウイルス特異的抗原は、ウイルス感染細胞のMHCクラスII分子との会合における提示から除外されるが、一方
、それらの抗原は、同じ細胞のMHCクラスI分子と会合して提示することができる。他の外因性病原体(例えば、細菌または寄生虫)が細胞を占拠し、そして細胞の機材を利用して病状に特異的なタンパク質を合成するという範囲までは、結果は同じである。事象の正常な経路を変え、それによってMHCクラスII分子と会合して病変に特異的な抗原を提示する能力は、新規なMHCクラスII抗原エピトープによって始動される応答の増強をもたらす。
【0038】
一連の治療様式は本発明の範囲内に入る。特許可能な組成物は多くのこれらの治療様式に関している。治療学的アプローチはインビボおよびエクスビボの実施態様を含む。Ii抑制のために標的化される細胞は、MHCクラスII分子−ポジティブ細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージまたはBリンパ球のような天然に存在する抗原提示細胞)でもよく、あるいはMHCクラスII分子を発現するように誘導されたMHCクラスII分子−ネガティブ細胞(例えば、腫瘍細胞)であってもよい。本明細書で使用されるように、表現「MHCクラスII分子−ネガティブ」は、具体的には、細胞表面にMHCクラスII分子を発現しない細胞のみならず、天然に存在する抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)のようにポジティブの対照細胞の表面におけるMHCクラスII分子の数に較べて、細胞表面に比較的低い数のMHCクラスII分子を含有する細胞もまた含む。これに関して用語「比較的低い」は、MHCクラスII分子−ポジティブ対照細胞(例えば、天然に存在する抗原提示細胞)において見出されるようなそれらの細胞表面のMHCクラスII分子の数の約25%またはそれ未満のみを含有すると評価される細胞を含むことを意味している。MHCクラスII分子の量の評価は、例えば、当該技術分野において周知である免疫蛍光技術を用いて実施することができる。
【0039】
出願者らは、既に、免疫応答を調節する目的のためのIi抑制を開示する特許出願を提出し、そして遂行した。これらの出願は、具体的には、細胞中に導入され、そしてIimRNAに結合することによってIi合成を直接抑制する抑制性コポリマー、ならびに核酸構築物として細胞中に導入され、これが続いて特異的なハイブリッド形成後にIi発現を抑制するRNA分子に転写される逆遺伝子構築物を開示する。これらの早期に提出された特許出願は、米国特許出願公開第08/661,627号、同第09/205,995号、同第10/054,387号および同第10/127,347号を含み、これらの開示は、引用によって本明細書に組み入れられている。米国特許出願公開第08/661,627号および同第09/205,995号は、それぞれ米国特許第5,726,020号および同第6,368,855号として発行された。
【0040】
簡単に言えば、米国特許出願公開第09/205,995号は、約10〜約50ヌクレオチド塩基を含有する化学的に合成されたコポリマーに関する広範な開示を含有する。これらのコポリマーは、別にはアンチセンス配列として既知の、RNA分子の標的部分に相補的であるヌクレオチド塩基配列を含有する。そのようなコポリマーの例は、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNAを含む。アンチセンスコポリマーは2つのメカニズムによってRNAからのタンパク質翻訳を抑制する。1つの方法は、RNAの成熟または翻訳のために必須のリボソーム、スプライセオソームまたは他の因子と相互作用することが必要なRNAの一部分への接近をブロックすることである。第2の方法は、DNAにハイブリダイズされるRNAの配列を切断する酵素、リボヌクレアーゼHの増強作用を必要とする。かくして、RNAにおける対応するセグメントへのDNAまたはDNA類似のコポリマーの結合は、コポリマー結合部位においてRNAの切断をもたらす。
【0041】
コポリマーは、例えば、Watson−Crick塩基対形成によって標的RNAにハイブリダイズする。コポリマーの配列は標的RNAの相補的配列によって定められる。コポリマーは、通常、もっとも普通である12〜25個を含む、標的RNAの少なくとも6個の相補的ヌクレオチドにわたる長さのヌクレオチド配列を用いて化学的に合成される。
統計学的には、約15ヌクレオチドの配列が、細胞内の全RNAの集団内では独特であり、いずれか特定のRNAを高度の特異性により標的とさせる。RNAへの結合は、また、20塩基対を包含するコポリマーについて約10−17MのKd値をもち非常に安定である。
【0042】
若干の場合には、培養中の細胞は、有用な効果を達成するのに十分な量においてコポリマーを取り込む。そのような取り込みは、生物化学的エネルギーおよびある種の細胞表面タンパク質の関与を必要とする活性プロセスであると思われる。また、取り込みは飲作用によっても起き得る。この経路は、コポリマーを含有する高張培地において細胞を培養し、続いてわずかに低張な培地における細胞の再懸濁によって増進されて、細胞内の飲作用小胞の破裂を誘導することができる。他の場合は、取り込みは、脂質、リポソームまたはポリアルキルオキシ・コポリマーの使用によって、またはエレクトロポレーションによって、または細胞膜を浸透性にするストレプトリシンO処理によって助長することができる。インビボの細胞は、しばしば、培養細胞よりも容易にコポリマーを取り込む。エレクトロポレーションによるコポリマーの細胞取り込みのための最適条件は、米国特許出願公開第09/205,995号の実施例2において提供されている。
【0043】
標的RNAの潜在的部位は、タンパク質の機能的複合体の結合のためのそれらの開放部であり、そしてさらなる部位がコポリマーの結合のために別に開放されている。そのような部位は、リボヌクレアーゼH(RNアーゼH)、DNAにハイブリダイズされるRNAを切断する酵素を用いて同定することができる。リボヌクレアーゼHの存在下で5’−放射性リン酸標識されたRNAに、単独でも混合物においても、DNAオリゴヌクレオチドを付加することによって、オリゴヌクレオチドと他のコポリマーがハイブリダイズするRNAにおける部位は、RNAのゲル電気泳動およびオートラジオグラフィーの後に同定される。RNアーゼHの切断のためにもっとも開放されている本発明において見出されたIiRNAにおける部位は、AUGイニシエーターコドンの領域およびpre−mRNAにおける第1スプライス部位の領域であった。
【0044】
本発明に関する用語「オリゴヌクレオチド」は、ホスホジエステル結合によって連結された天然に存在する塩基およびペントフラノシル糖により形成されるヌクレオチド単位を含んでなるポリヌクレオチドを指す。用語「コポリマー」は、オリゴヌクレオチドおよびまた、天然に存在しないまたは改変されたオリゴヌクレオチドのサブユニットから形成された構造的に関連する分子を含む。これらの改変は、ヌクレオチドの塩基部分、ヌクレオチドの糖部分、またはヌクレオチド間の結合基のいずれにおいても起きる。また、さらなる結合基は、しばしば、以下において非常に詳細に議論されるコポリマーを生成するために、天然のオリゴヌクレオチドの糖およびリン酸骨格について置換される。
【0045】
生成されるそのようなオリゴヌクレオチドの改変および特徴は、当業者には容易に利用できる。代表的な改変は、米国特許第4,469,863号(1984);米国特許第5,216,141号(1993);米国特許第5,264,564号(1993);米国特許第5,514,786号(1996);米国特許第5,587,300号(1996);米国特許第5,587,469号(1996);米国特許第5,602,240号(1997);米国特許第5,610,289号(1997);米国特許第5,614,617号(1997);米国特許第5,623,065号(1997);米国特許第5,623,070号(1997);米国特許第5,700,922号(1997);および米国特許第5,726,297号(1998)において示されており、これらの開示は引用によって本明細書に組み入れられている。
【0046】
相補的RNAにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの能力は、化学的改変について非常に寛容である。したがって、多くの異なる機能的コポリマーが可能である。糖リン酸
骨格は、特に、Watson−Crick塩基対を形成する能力を失うことなく広く変えることができる。定義によって、ヌクレオチドは、糖、窒素複素環およびリン酸部分を含む。糖またはリン酸基のいずれかまたは両者を欠く若干のオリゴヌクレオチドの類似体は、なおまだアンチセンスオリゴヌクレオチドと同じようにWatson−Crick塩基対によってハイブリダイズでき、そして同じ目的のために使用することができる。ヌクレオチド塩基を含有するこれらのコポリマーは、RNAにハイブリダイズする点ではオリゴヌクレオチドの機能的等価物である。アンチセンス適用のためにそれらの特性を変え、そして改良するオリゴヌクレオチドの若干の改変が以下に総括される。
【0047】
非架橋酸素原子の置換、架橋酸素原子の置換、ヌクレオシド間リン酸基の置換、糖環の周りの立体化学に対する変更、リボフラノシル環構造の改変、ヌクレオチド結合改変、およびペプチジル核酸(pna)を生成するためのペプチド骨格による糖リン酸骨格置換を含む、多数の特定の改変が開示されている。引用された特許出願の実行は、次に示す請求項の許可をもたらしたが、これは米国特許第6,368,855号の代表的な独立請求項である。
【0048】
1. 哺乳動物のB7分子をコードしている外因性構築物を含有せず、そしてIiタンパク質発現または免疫調節機能の特異的レギュレーターを含有するMHCクラスII−ポジティブ抗原提示細胞であって、オリゴヌクレオチドCTCGGTACCTACTGGは特に除外されて、特異的レギュレーターは、生理学的条件下で哺乳動物Iiタンパク質をコードしているRNA分子の標的領域に特異的にハイブリダイズする能力を特徴とする10〜50ヌクレオチド塩基のコポリマーから本質的になり、この場合、特異的レギュレーターはIi発現を抑制する能力を特徴とする、抗原提示細胞。
【0049】
関連する背景情報、およびさらなる請求項の限定のための支持を提供する目的では、上記請求項における少なくとも2つの特定の限定が先行技術開示を申し出るために含まれたことが注目される。例えば、オリゴヌクレオチド3’CTCGGTACCTACTGG−5’の特別の除外は、Bertoline et al.,Int.Immunol.3(5):435−443(1991)の開示に照らして組み入れられた。哺乳動物のB7分子をコードしている外因性構築物に対向された限定は、Ostrand−Rosenberg(米国特許第5、858、776号)の開示に照らして導入された。
【0050】
従来、公表されてなかった本開示の重要な要素は、ヒト細胞におけるIiの発現を抑制するための逆遺伝子構築物の使用である。ヒトIi配列は、既に報告されていた(Strubin et al.,EMBO J.3:869−872(1984))が、この配列の少なくとも一部を含有する逆遺伝子構築物の使用は、決して報告されていなかった。さらにまた、例えば、マウスIi配列とヒトIi配列との間の有意な保存は報告されたが、非ヒト逆遺伝子構築物は、ヒト細胞におけるIiの翻訳の抑制における使用については無効であった。
【0051】
かくして、1つの態様では、本発明は、ヒトIiタンパク質をコードしているmRNAに相補的であるRNA分子であって、mRNA分子とハイブリダイズして、ヒト細胞におけるmRNAの翻訳を抑制する能力を有するRNA分子をコードしているDNA分子を含んでなる、発現可能な逆遺伝子構築物に関する。本発明のこの態様は、次に示す例示の節において具体的に例証される。より具体的には、cDNAインサートを含有する発現構築物がヒトリンパ腫細胞系におけるIi発現の抑制に有効であることが例証される。このアッセイにおいて有効である構築物は、Ii mRNA 5’非翻訳領域の一部分に相補的なcDNAインサートを含み、かつ翻訳開始コドンを含んだ。有効な構築物は長さ約435ヌクレオチドまでの抑制性RNAをコードしていた。
【0052】
ヒトIi mRNAの一部と完全に相補的であるRNAをコードしている逆遺伝子構築物の使用に加えて、当業者は、野生型ヒト配列からのある程度の相違が許容できることを認識できる。本発明の範囲は、日常的実験によって経験的に決定することができるそのような変異物を包含することを意図している(すなわち、それらはヒト細胞においてIi発現を抑制する能力を特徴とする)。特に有用であり、かつヒト細胞においてIi発現を抑制するのに有効であることが例証された野生型からの変異物の例は、ヒトIi mRNAに相補的な長い半減期のアンチセンスRNA(野生型アンチセンスRNAに較べて)の創造に関する。長い半減期の種では、アンチセンスRNAの読み枠は、開始コドン、AUG、同じ読み枠内で短く/直接に続く終止コドンの存在を避けるように設計される。この状態を避けるために、読み枠1における終止コドンの前近くに存在するAUGに関して、新しいAUGは、終止コドンが改変後にその読み枠に存在しないことを条件に、いずれか読み枠2または読み枠3において、読み枠1のAUGの前に、計画され、そして導入することができる。
【0053】
Ii逆遺伝子構築物の使用に加えて、Ii発現の他の抑制性コポリマーが容易に設計され、構築されることは当業者には認識することができる。例えば、二本鎖の小さい干渉性RNA(siRNA)、およびこれらの分子をコードしている遺伝子は、RNA干渉によってIiを抑制するために使用されてもよい。
【0054】
本発明の目的は、Ii発現を抑制するのに有効なsiRNAを含んでなる組成物、そのような組成物を含有するベクターおよび細胞、および同物を使用する方法を提供することである。
【0055】
本明細書で使用されるように、用語「RNA干渉(RNAi)」は、二本鎖RNA(dsRNA)がその相補的配列を担持している遺伝子の発現を抑制するプロセスを指す(Moss,Curr.Biol.11(19):R772−5(2001);Elbashir,Genes Dev.15(2)188−200(2001))。理論によって束縛されることを願わないが、RNAiは、4つの主な段階:RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によるsiRNAの集合、RISCの活性化、標的認識および標的切断を特徴とする、複数のRNA−タンパク質相互作用を伴うメカニズムによって起きると理解される。本明細書で使用されるように、用語「短い干渉性RNA(siRNA)」は、RNAiまたは遺伝子サイレンシングを媒介することができるすべての核酸分子を指すことを意図している。用語siRNAは、RNAi機能をもつ、種々の天然に生成されるか、または合成の化合物を包含することを意図している。そのような化合物は、限定されることなく、2または3塩基対の末端オーバーラップをもつ約21〜23塩基対の二重の合成オリゴヌクレオチド;3〜5塩基対のループによって連結された21〜23塩基対のセンスおよび相補的なハイブリダイズしているセグメントを有する1つのオリゴヌクレオチド鎖のヘアピン構造物;および前記構造物または機能的等価物の発現へと導く種々の遺伝子構築物を含む。そのような遺伝子構築物は、通常、インビトロで作成され、そして試験系に導入されるが、また、宿主細胞または動物のゲノムによってコードされた天然に存在するsiRNA前駆体からのsiRNAを含んでもよい。
【0056】
本発明のsiRNAがRNAのみからなることは必ずしも必要ではない。本発明のsiRNAは、1つ以上の化学的改変体および/またはヌクレオチド類似体を含んでもよい。改変体および/または類似体はIi発現を抑制するsiRNAの能力にネガティブに影響しない、それぞれいかなる改変体および/または類似体であってもよい。siRNAにおける1つ以上の化学的改変体および/またはヌクレオチド類似体の含有は、ヌクレアーゼ消化を防ぐか、遅らせ、そして順次、実際的使用のためにより安定なsiRNAを作成するることが好ましい。RNAを安定化させる化学的改変体および/またはヌクレオチド類似体は、当該技術分野において既知である。非架橋ホスホロイル酸素原子の硫黄原子によ
る置換を含むホスホロチオエート(phosphorothioate)誘導体は、ヌクレアーゼ消化に対する耐性の増大を示す類似体の1例である。化学的改変のために標的とされてもよいsiRNAの部位は、ヘアピン構造物のループ領域、ヘアピン構造物の5’と3’末端(例えば、キャップ構造物)、二本鎖の線状siRNAの3’オーバーハング領域、線状siRNAのセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の5’または3’末端、およびセンスおよび/またはアンチセンス鎖の1個以上のヌクレオチドを含む。
【0057】
本明細書で使用されるように、用語siRNAは、配列特異的RNAiを媒介できる分子として定義される当該技術分野における全ての用語に対して等価であることを意図している。そのような等価物は、例えば、二本鎖RNA(dsRNA)、micro−RNA(miRNA)、短いヘアピンRNA(shRNA)、短い干渉性オリゴヌクレオチド、および転写後遺伝子サイレンシングRNA(ptgsRNA)を含む。
【0058】
理論によって束縛されるのを願わないが、RNAiにおいて、二本鎖RNAは、相補的mRNAに結合し、そしてその分解をもたらす21〜23塩基対フラグメントにプロセスされると一般に理解されている(Bernstein,Nature 409(6818):363−6(2001)、および国際公開WO 0175164)。siRNAは配列に特異的な翻訳後遺伝子サイレンシングを含む。そのような分子は、国際公開WO 0175164に記述されるように、治療または予防目的のために遺伝子発現を抑制するように細胞中に導入されてもよい。そのような分子は、種々の特許、特許出願および報告書に記述されるように、治療または予防目的のために遺伝子発現を抑制するように細胞中に導入されてもよい。RNAi技術を記述している、引用によって本明細書に組み入れられている公表物は、限定されるものではないが、次のものを含む:米国特許第6,686,463号、米国特許第6,673,611号、米国特許第6,623,962号、米国特許第6,506,559号、米国特許第6,573,099号および米国特許第6,531,644号;国際公開WO04061081;WO04052093;WO04048596;WO04048594;WO04048581;WO04048566;WO04046320;WO04044537;WO04043406;WO04033620;WO04030660;WO04028471;WO0175164。これらの化合物の最適使用のための方法および概念を記述する報告書は、限定されるものではないが次のものを含む:Brummelkamp Science 296:550−553(2002);Caplen Expert Opin.Biol.Ther.3:575−86(2003);Brummelkamp,Sciencexpress 21Mar03 1−6(2003);Yu Proc Natl Acad Sci USA 99:6047−52(2002);Paul Nature Biotechnology 29:505−8(2002);Paddison Proc Natl Acad Sci USA 99:1443−8(2002);Brummelkamp Nature 424:797−801(2003);Brummelkamp,Science 296:−550−3(2003);Sui Proc Natl Acad Sci USA 99:5515−20(2002);Paddison,Genes and Development 16:948−58(2002)。
【0059】
本発明の文脈中、Ii発現を抑制するのに有効なsiRNAを含んでなる組成物は、Iiのセンス配列を含んでなるRNA二重らせんを含んでもよい。この実施態様では、RNA二重らせんは、Iiのセンス配列を含んでなる第1の鎖およびIiのセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖を含む。1つの実施態様では、Iiのセンス配列は、長さ10〜25ヌクレオチドからなる。より好ましくは、Iiのセンス配列は、長さ19〜25ヌクレオチドからなる。もっとも好ましくは、Iiのセンス配列は、長さ21〜23ヌクレオチドからなる。Iiのセンス配列は、好ましくは、翻訳開始部位を含有するIiの配列を含み、より好ましくは、ヒトIimRNAの最初の400nt内にIi配列の一部を含む。
【0060】
その他の実施態様では、Ii発現を抑制するのに有効なsiRNAを含んでなる組成物は、単一分子において、Iiのセンス配列、Iiのセンス配列の逆相補配列、およびセンスと逆相補配列との間に二重らせんを形成させる介在配列を含んでもよい。Iiのセンス配列は、長さ10〜25ヌクレオチド、またはより好ましくは、長さ19〜25ヌクレオチド、またはもっとも好ましくは、長さ21〜23ヌクレオチドを含んでもよい。本発明のsiRNAは、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17および配列番号:18からなる群から選ばれる配列のRNAを含んでもよい。
【0061】
本発明のsiRNAが、Iiのセンス配列あるいは互いにまたはIiの標的領域に完全には相補的ではないIiのセンス配列の逆相補配列を含んでもよいことは当業者には容易に理解できる。言い換えれば、siRNAは、センスまたは逆相補配列内にミスマッチまたはバルジを含んでもよい。1つの態様では、センス配列またはその逆相補配列は、完全には接触していなくてもよい。配列は1個以上の置換、欠失および/または挿入を含んでもよい。本発明のただ1つの要件は、siRNAセンス配列が、その逆相補配列およびIiの標的領域に対して十分な相補性を保持してRNAi活性を可能にさせることである。したがって、本発明の目的は、RNAi活性を可能にするために十分な相補性を維持する本発明のsiRNAの配列改変体を提供することである。本発明の改変されたsiRNA組成物が、Iiの相補配列および標的領域に対して計算された改変配列の結合自由エネルギーに基づいて働くことを、当業者は予想できる。核酸に対する結合自由エネルギーの算出および標準のハイブリッド形成におけるそのような値の効果は当該技術分野において既知である。
【0062】
広範な送達システムが、インビトロおよびインビボの標的細胞に対して本発明のsiRNAを送達する際の使用のために利用できる。本発明のsiRNAは、Ii抑制が望まれる細胞中に直接または間接的に導入できる。siRNAは、例えば、注射によって細胞中に直接導入されてもよい。それ自体、本発明の目的は、注射可能な用量単位形態物においてIiを抑制するのに有効なsiRNAを含んでなる組成物を提供することである。本発明のsiRNAは、本発明の方法および組成物と組み合わせて治療学的使用のために、例えば静脈内または皮下に注射されてもよい。そのような処置は、治療学的に有効なレベルが達成されて所望される組織においてIi発現が抑制されるまでの、間断的または連続的投与を含む。
【0063】
間接的に、siRNAをコードしている発現可能なDNA配列が細胞中に導入され、その後、siRNAがDNA配列から転写されてもよい。したがって、本発明の目的は、Ii発現を抑制するのに有効なsiRNAをコードしているDNA配列を含んでなる組成物を提供することである。
【0064】
本発明のDNA組成物は、Iiのセンス配列を含んでなる第1のRNA配列をコードしている第1のDNA配列およびIiのセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2のRNA配列をコードしている第2のDNA配列を含む。第1および第2のRNA配列は、ハイブリダイズされた場合、Ii発現を抑制することができるRNA誘導サイレンシング複合体を形成することができるsiRNA二重らせんを形成する。第1および第2のDNA配列は、化学的に合成されてもよく、またIiに対する適当なプライマーを用いてPCRによって合成されてもよい。あるいはまた、DNA配列は、当該技術分野において周知であるクローニング技術を用いて組み換え操作によって得られてもよい。一旦得られれば、DNA配列は、精製され、合体され、次いでIi抑制が所望される細胞中に導入することができる。あるいはまた、配列は、単一ベクターまたは別々のベクターに含有され、そしてこれらのベクターがIi抑制が所望される細胞中に導入されてもよい。
【0065】
本発明のDNA組成物を標的細胞に送達する際に使用できる送達システムは、例えば、ウイルスおよび非ウイルス系を含む。適当なウイルス系の例は、例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、レトロウイルスベクター、ワクシニア、単純ヘルペスウイルス、HIV、マウスの微小ウイルス、B型肝炎ウイルスおよびインフルエンザウイルスを含む。また、例えば、非複合DNA、DNA−リポソーム複合体、DNA−タンパク質複合体およびDNAコートされた金粒子、サルモネラのような細菌のベクター、およびVP22輸送タンパク質、Co−X−geneおよびレプリコンベクターを伴う技術のような他の技術を用いて、非ウイルス送達システムが使用されてもよい。本発明の文脈におけるウイルスまたは非ウイルスベクターは、関心のある抗原を発現することができるであろう。
【0066】
動物細胞における関心のある核酸配列の発現のための1つの選択肢はアデノウイルス系である。次に示す例示の節において、アデノウイルス系の使用が具体的に開示される。アデノウイルスは、二本鎖DNAゲノムをプロセスし、そして宿主細胞の分裂とは独立に複製する。アデノウイルスベクターは、細胞中に発現構築物を導入するための代替方法に関連する種々の利点を提供する。例えば、アデノウイルスベクターは、広範囲のヒト組織を形質導入することができ、そして高レベルの遺伝子発現が分裂および非分裂細胞において得ることができる。アデノウイルスベクターは、標的細胞の分裂中の免疫系クリアランスおよび希釈損失による比較的短期間の導入遺伝子の発現を特徴とする。静脈内、胆管内、腹腔内、嚢胞内、頭蓋内および鞘内注射、および標的臓器または組織の直接注射を含む、いくつかの投与経路が使用できる。かくして、解剖学的境界に基づく標的化が達成できる。
【0067】
アデノウイルスゲノムは約15種のタンパク質をコードしており、そして感染は細胞表面の受容体に結合する繊維タンパク質を必要とする。この受容体相互作用はウイルスのインターナリゼーションをもたらす。ウイルスDNAは感染細胞の核に入り、そして細胞分裂の不在下で転写が開始される。発現および複製はE1AおよびE1B遺伝子の制御下にある(参照、Horwitz,M.S.,In Virology,2.sup.nd ed.,1990,pp.1725−1740)。E1遺伝子の除去はウイルスの複製不全をもたらす。
【0068】
アデノウイルス血清型2および5はベクター構築のために広く使用されてきた。Bettら(Pro.Nat.Acad.Sci.U.S.A.91:8802−8806(1994)は、E1およびE3アデノウイルス遺伝子の欠失とともにアデノウイルス血清型5ベクター系を使用した。293ヒト胚性腎細胞が、E1タンパク質を発現するように工作され、その結果E1欠失ウイルスゲノムをトランスコンプルメント(transcomplemnt)できた。ウイルスは293細胞培地から分離され、そして限界希釈プラークアッセイによって精製することができる(Graham and Prevek,In Methods In Molecular Biology:Gene Transfer and Expression Protocols,Humana Press 1991,pp.109−128)。組み換えウイルスは293細胞系培養物において増殖され、そして感染細胞を溶解し、塩化セシウム密度遠心分離による精製によって単離できた。組み換えアデノウイルスの生産について293細胞に関する問題は、E1遺伝子の付加される隣接領域により、それらが、ウイルス粒子生産中、複製能のあるアデノウイルス(RCA)を生じるかもしれないことである。この材料は、野生型アデノウイルスのみであり、そして複製能のある組み換えウイルスではないけれども、それは、所望のアデノウイルス材料の究極的収量に有意な影響を有し、そして製造コストの増大、生産試行のための品質管理発生(issue)および臨床使用のためのバッチの承認をもたらす。293細胞よりも明確なE1遺伝子組込みを有する(すなわち、隣接するウイルス配列を含有しない)PER.C6のような代替細胞系が開発されたが、これは、RCAを生産する組み換え事象を許さず、その結果上記ウイルス生産の発生を克服する潜在力を有する。
【0069】
アデノ随伴ウイルス(AAV)(Kotin,R.M.,Hum.Gene Ther.5:793−801(1994))は、非常に広い宿主範囲の非分裂細胞のゲノム中に組込むことができる一本鎖DNAの非自律性パルボウイルスである。AAVは、ヒトの疾病には関係しないことが分っており、そして免疫応答を惹起しない。
【0070】
AAVは2つの明確なライフサイクル相を有する。野生型ウイルスは宿主細胞に感染し、組込まれ、そして潜伏したまま留まる。アデノウイルスの存在下で、このウイルスの溶菌期が誘導されるが、これは、初期アデノウイルス遺伝子の発現に依存し、そして活性ウイルスの複製をもたらす。AAVゲノムは、逆方向末端反復(ITR)配列によって隣接された2つのオープン読み枠(repおよびcapと呼ばれる)からなる。rep領域は、AAV複製、ウイルスDNA転写、および宿主ゲノム組込みにおいて使用されるエンドヌクレアーゼ機能を媒介する4種のタンパク質をコードしている。rep遺伝子は、ウイルスの複製に必要とされるAAV配列のみである。cap配列は、ウイルスのキャプシドを形成する構造タンパク質をコードしている。ITRはウイルスの複製起点を含有し、包膜シグナルを提供し、そしてウイルスのDNA組込みに寄与する。遺伝子治療のために開発された組み換え複製不全ウイルスは、repおよびcap配列を欠如する。複製不全AAVは、AAV複製に必須の別々の要素を許容性293細胞系中に同時にトランスフェクトすることによって作成することができる。米国特許第4,797,368号は、関連する開示を含有し、そしてそのような開示は引用によって本明細書に組み入れられている。
【0071】
レトロウイルスベクターは、分裂細胞に感染するために有用であり、そして宿主細胞膜由来のエンベロープに包まれたRNAゲノムおよびウイルスタンパク質からなる。レトロウイルス遺伝子の発現は、ポジティブ鎖RNAゲノムが二本鎖DNAの合成を指図する鋳型として用いられ、次いで、宿主細胞DNA中に組込まれる逆転写段階を伴う。組み込まれたプロウイルスは、遺伝子発現のために宿主細胞機構を使用することができる。
【0072】
マウス白血病ウイルスは普通に使用されるレトロウイルス種である(Miller et al.,Methods Enzymol.217:581−599(1993))。レトロウイルスベクターは、典型的には、gag、polおよびenv遺伝子の欠失によって構築される。これらの配列の欠失は、関心のある核酸配列の挿入のための能力を提供し、そしてウイルスの複製機能を排除する。抗生物質耐性をコードしている遺伝子は、しばしば、選択の手段として含まれる。プロモーターおよびエンハンサー機能もまた、例えば、インビボ投与後の組織特異的発現を提供するために含まれてもよい。長い末端反復中に含有されるプロモーターおよびエンハンサー機能がまた使用されてもよい。
【0073】
そのようなウイルス、および関心のある外因性核酸配列を保持するそのようなウイルスの改変物は、ウイルスパッケージング細胞系においてのみ生産できる。パッケージング細胞系は、欠失されたウイルス遺伝子(gag、polおよびenv)が異なる染色体上に存在して組み換えを防ぐように、それらを細胞中に安定に挿入することによって構築されてもよい。パッケージング細胞系は、組み換えプロウイルスDNAを挿入することによって関心のある核酸配列を含有する複製欠陥レトロウイルスを生成できる生産細胞系を構築するために使用される。包膜配列を含有するgag遺伝子の小部分に隣接する長い末端反復配列および関心のある遺伝子を含有するプラスミドDNAが、DNA転移と取り込みのための標準技術(エレクトロポレーション、カルシウム沈降など)を用いてパッケージング細胞系中にトランスフェクトされる。このアプローチの変法は、複製能のあるウイルスの産生の可能性を低下させるために用いられた(Jolly,D.,Cancer Ge
ne Therapy 1:51−64(1994))。ウイルスの宿主細胞範囲は、エンベロープ遺伝子(env)によって決定され、そして異なる細胞特異性によるenv遺伝子の置換が用いられてもよい。また、エンベロープタンパク質への適当なリガンドの組み入れが標的化のために使用されてもよい。
【0074】
組み換えレトロウイルスベクターの投与は、いかなる適当な技術によって達成されてもよい。そのような技術は、例えば、患者の細胞のエクスビボでの形質導入、組織へのウイルスの直接注射、およびレトロウイルス生産細胞の投与を含む。エクスビボのアプローチは患者の細胞の組織培養における分離および維持を要する。これに関して、標的細胞に対して高い比率のウイルス粒子が達成され、その結果、形質導入の効率を改良できる(参照、例えば、米国特許第5,399,346号,これの開示は引用によって本明細書に組み入れられている)。米国特許第4,650,764号は、レトロウイルス発現系の使用に関連する開示を含有し、この関連特許の開示は引用によって本明細書に組み入れられている。
【0075】
ある場合には、インビトロでのウイルスの直接導入が必要であり、または好適である。レトロウイルスは、分裂細胞(腫瘍細胞)のみに感染するレトロウイルの能力が特に得策である脳腫瘍を処置するために使用された。
【0076】
患者における脳腫瘍中への直接レトロウイルス生産細胞系の投与がまた提案された(参照、例えば、Oldfield et al.,Hum.Gene Ther.4:39−69(1993))。そのような生産細胞は数日間脳腫瘍内で生存でき、そして周囲の脳腫瘍を形質導入することが可能なレトロウイルスを分泌するであろう。
【0077】
発現のためのポックスウイルスに基づく系が開示された(Moss and Flexner,Annu.Rev.Immunol.5:305−324(1987):Moss,B.,In Virology,1990,pp.2079−2111)。ワクシニアは、例えば、感染細胞の細胞質において複製する大きい包膜DNAウイルスである。多くの異なる組織からの非分裂および分裂細胞が感染され、そして組込まれてないゲノムからの遺伝子発現が観察されている。組み換えウイルスは、ワクシニア由来のプラスミド中に導入遺伝子を挿入し、そして相同組み換えがウイルス産生をもたらすワクシニア感染細胞中にこのDNAをトランスフェクトすることによって作成できる。それが反復投与を疑わしくさせる150〜200のウイルスにコードされたタンパク質に対して免疫応答を惹起することは明らかな欠点である。
【0078】
単純ヘルペスウイルスは感染細胞の核において複製する大きい二本鎖DNAウイルスである。このウイルスは外因性核酸配列との結合において使用するために適用可能である(参照、Kennedy and Steiner,Q.J.Med.86:697−702(1993))。利点は宿主細胞範囲、分裂および非分裂細胞の感染を含み、そして大きい外来DNAの配列が相同的組み換えによってウイルスゲノム中に挿入できる。欠点は、ウイルス調製物を複製適格ウイルスおよび強い免疫応答のないようにすることの難しさである。ウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子の欠失は、低レベルのチミジンキナーゼを含む細胞においてウイルスを複製欠陥にさせる。活性な細胞分裂を行っている細胞(例えば、腫瘍細胞)は、複製を可能にするのに十分なチミジンキナーゼを保持する。
【0079】
HIV、マウスの微小ウイルス、B型肝炎ウイルスおよびインフルエンザウイルスを含む、種々の他のウイルスが遺伝子転移のためのベクターとして開示されている(参照、Jolly,D.,Cancer Gene Therapy 1:51−64(1994))。
【0080】
非ウイルスDNA送達戦略もまた適用可能である。これらのDNA送達戦略は、無複合プラスミドDNA、DNA−脂質複合体、DNA−リポソーム複合体、DNA−タンパク質複合体、DNAコートされた金粒子およびDNAコートされたポリラクチドコグリコリド粒子に関する。精製核酸は組織中に直接注入することができ、そして例えば筋肉組織において、特に再生しつつある筋肉において効果的な、一過性遺伝子発現をもたらす(Wolff et al.,Science 247:1465−1468(1990))。Davisら(Hum.Gene Ther.4:733−740(1993)は、成熟筋肉(骨格筋が一般に好適である)中へのDNAの直接注射に関して公表した。
【0081】
金粒子上のプラスミドDNAは、遺伝子銃を用いて細胞(例えば、表皮または黒色腫)中に「発射」することができる。DNAは金粒子上に共沈され、次いで噴射剤として電気火花または加圧ガスを用いて発射される(Fynan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:11478−11482(1993))。また、エレクトロポレーションが使用されて、多数の針の列およびパルス回転電場を用いるエレクトロポレーションプローブを使用して固形腫瘍中にDNAを転移させた(Nishi ey al.,Cancer Res.56:1050−1055(1996))。皮下腫瘍への高効率の遺伝子転移は、有意な細胞トランスフェクションの増進および腫瘍内注射操作以上のより良好な分配特性に関して特許請求された。
【0082】
脂質媒介トランスフェクションは、両インビトロおよびインビボトランスフェクションのために好適である(Horton et al.,J.Immunology 162:6378(1999))。脂質−DNA複合体は、DMRIE−C試薬のような市販の脂質を用いて、注射前1〜5分にDNAと脂質を混合することによって形成される。
【0083】
リポソームは疎水性分子により親水性分子を取り囲むことによって細胞侵入を容易にするように働く。リポソームは脂質から作成された単層または多層の球である。脂質組成および製造過程はリポソームの構造に影響を与える。他の分子は脂質膜中に組み入れることができる。リポソームはアニオンまたはカチオン性であってもよい。Nicolauら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:1068−1072(1983))は、ラットに注射されたアニオン性リポソームからのインスリン発現に関する研究を発表した。アニオン性リポソームは、別に標的化されない限り、主に肝臓の網状内皮細胞を標的とした。分子はリポソームの表面に組み入れられて、それらの挙動、例えば細胞選択的送達を変えることができる(Wu and Wu,J.Biol.Chem.262:4429−4432(1987))。
【0084】
Felgnerら(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413−7417(1987))は、静電相互作用によって核酸の結合を例証し、そして細胞侵入を示したカチオン性リポソームに関する研究を公表した。カチオン性リポソームの静脈内注射は、臓器への求心性血液供給中への注射においてほとんどの臓器で導入遺伝子の発現をもたらす。カチオン性リポソームは肺の上皮を標的とするエアゾルによって投与することができる(Brigham et al.,Am.J.Med.Sci.298:278−281(1989))。カチオン性リポソーム導入遺伝子送達によるインビボ研究が公表された(参照、例えば、Nabel et al.,Rev.Hum.Gene Ther.5:79−92(1994);Hyde et al.,Nature 362:250−255(1993)および;Conary et al.,J.Clin.Invest.93:1834−1840(1994))。
【0085】
微粒子が、食細胞にDNAを送達するためのシステムとして研究されているが、そのようなアプローチはPangaea Pharmaceuticalsによって報告された。そのようなDNA微小被包化(microencapsulation)送達システムは、微小球を摂取するマクロファージのような食細胞の、より有効な形質導入を実施するために使用された。微小球は潜在的に免疫性ペプチドをコードしているプラスミドDNAを被包化していて、これが、発現された場合、同じエピトープを含有するそのようなペプチドおよびタンパク質配列に対して免疫応答を刺激できる細胞表面上のMHC分子を介するペプチド提示をもたらす。このアプローチは、現在、抗−腫瘍および病原体ワクチンの開発における潜在的役割に狙いを定めているが、他の可能性のある遺伝子治療応用を有するかもしれない。
【0086】
ウイルス様粒子(VLP)への均一な自己集合の可能な天然のウイルスコートタンパク質もまた、送達のためのDNAを包むために使用された。ヒト・ポリオーマウイルスの主要な構造コートタンパク質(VP1)は、組み換えタンパク質として発現でき、そしてVLPへの自己集合の間にプラスミドDNAを包むことができる。得られる粒子は、続いて種々の細胞系を形質導入するために使用することができる。
【0087】
DNAベクターにおける改良がまた行われ、多くの非ウイルス送達システムに応用できそうである。これらは、高次コイルのミニサークル(細菌の複製起点も抗生物質耐性遺伝子ももたず、その結果、それらは高レベルの生物学的包含を示すので潜在的により安全である)、エピソーム発現ベクター(プラスミドが核内ではあるが染色体の外側で増幅し、ゲノム組込み事象を避ける、エピソーム発現系を複製する)およびT7系(このベクター自体が、ファージT7 RNAポリメラーゼを発現し、そして治療遺伝子が、第1のプロモーターによって生成されるポリメラーゼを用いて、第2のT7プロモーターから得られる厳密に細胞質性発現ベクター)の使用を含む。DNAベクター技術に対する他のより一般的改良は、高レベルの発現を実施するためのシス−作用要素,1細胞周期当たり1回(once−per−cellcycle)の複製を供給するための白斑様(alphoid)反復DNAおよび核ターゲティング配列の使用を含む。
【0088】
先に議論されたように、本発明は、いずれかインビボまたはエクスビボの種々の動物細胞タイプにおけるIiの抑制に関する。本議論に関連する動物細胞タイプにおける広範な区分は、MHCクラスII分子発現の状態に基づいて作成することができる。この広範な区分は、本明細書では簡単に紹介されており、特定の治療学的アプローチの文脈内で再訪されるであろう。
【0089】
天然に存在する抗原提示細胞(ある場合には専門抗原提示細胞と呼ばれる)は、獲得免疫応答に関与している。樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球およびある種の他の単核細胞を含む、これらの細胞は、MHCクラスII分子−ポジティブである。さらに、Tリンパ球のような若干の細胞は、休止状態ではMHCクラスII分子を表さないが、適当な活性化によりMHCクラスII分子を発現するように誘導することができる。抗原ペプチドのMHCクラスII−限定提示の機能へ、インビボまたはインビトロで誘導できるそのような細胞は、天然に存在する抗原提示細胞の部類に含まれる。細胞は、オートロガス血清、多形核細胞について記述されるIFN−γGM−CSFとの同時培養を経てMHCクラスII分子を発現するように誘導されてもよい(Rasdak,Immunol.101:521−30(2000))。またT細胞は、マイトジェンおよび異種間APCとともに培養される場合、MHCクラスII分子を発現し、そして抗原提示細胞機能を身につけるように誘導されてもよい(Patel,J.Immunol.163(10):5201−10(1999))。
【0090】
次節でより詳細に議論されるように、関心のある抗原エピトープをコードしている発現可能な核酸配列を、そのような細胞中に導入することは可能である。このエピトープ発現がIi抑制と合わされる場合、関心のある抗原エピトープが、MHCクラスII分子と会合されて抗原提示細胞の表面に提示される。
【0091】
天然に存在する抗原提示細胞は、身体中を、かつ末梢のリンパ様組織をとおして循環する。末梢リンパ様組織は、身体の2つの流体系、血液およびリンパ液を含めて組織されている。これらの2つの流体系は対照的である。リンパ液は、血液から組織内および組織周囲の区間まで移送される流体によって形成される。これらの細胞外空間から、リンパ液は薄い壁のリンパ管中に流動し、ここで、それは、より大きい中央収集管にゆっくりと移動される。最後には、リンパ液は血管に戻され、ここで、血液に再び入る。血液では、リンパ球は核形成細胞の20〜30%を構成し;リンパ液では、それらは99%を構成する。これらの流体系内を循環する抗原提示細胞は、リンパ節および脾臓の濾胞中心を通過する。身体のリンパ節および脾臓の濾胞中心における高濃度のTリンパ球とBリンパ球は、細胞の相互作用およびクローン拡大を容易にする。
【0092】
典型的にはMHCクラスII分子を殆どまたは全く発現しない関心のある他の細胞は、大多数の悪性およびウイルス感染細胞を含む。特に、通常、MHCクラスII−ネガティブであると思われているある種の腫瘍が、若干または全ての細胞において低レベルのMHCクラスII分子を発現すると報告されたことは注目される。これらは、例えば、乳房、肺または結腸のがん腫を含む。これらの細胞は病変に特異的な抗原を発現できるが、MHCクラスII分子の不在か、比較的低い量を与えるので、そのような細胞によるそのような抗原由来のペプチドの有意な程度のMHCクラスII提示は存在しない。これらの細胞では、MHCクラスII分子発現の誘導ならびにIi発現の抑制の両方が可能である(Ii発現およびMHCクラスII発現は同時に調節される)。この組み合わせ介入は、MHCクラスII分子と会合されて、細胞の表面に病変関連する抗原エピトープ含有ペプチドの提示をもたらす。
【0093】
関心のあるその他の細胞類は、悪性、ウイルス感染または天然に存在する抗原提示細胞のいずれの細胞でもない。そのような細胞の例は、繊維芽細胞、ケラチン細胞および筋細胞を含む。細胞はMHCクラスII分子−ネガティブであり、そして天然に存在する抗原提示細胞として分類されてない。そのような細胞はインビボまたはエクスビボのいずれでも予防接種方法に関連して有用である。例えば、筋細胞がMHCクラスII分子と会合される抗原提示のための標的とされるインビボでの文脈を考慮せよ。関心のある抗原エピトープをコードしている発現可能な核酸配列およびMHCクラスII分子の誘導物質が筋組織中に注射されてもよい。そのような配列が組織内の筋細胞によって取り込まれ、そして発現される。注射領域内の一定パーセントの筋細胞が、究極的に、細胞表面上にMHCクラスII分子と会合された関心のある抗原エピトープを発現するであろう。刺激応答能のある細胞はリンパ液中を循環しているので、そのような提示による刺激に応答能のある細胞(例えば、ヘルパーT細胞)は提示細胞に接触できる。前述のように、リンパ球は循環リンパ液中の核形成細胞の99%を構成する。刺激された抗原提示細胞は、脾臓のリンパ節においてTリンパ球およびBリンパ球と協力し、ここで、高濃度の細胞および他の因子が相互作用を容易にし、そしてクローン選択を拡大する。分泌性Bリンパ球およびそれらの成熟子孫、形質細胞によって産生される抗体は、リンパ節を離れ、血液に輸送される。
【0094】
直前の節は、限定された文脈の議論によって、Ii抑制のための関心のある細胞タイプを紹介するのに役立った。次に示す議論はこれらの紹介された細胞タイプおよび関連する方法をさらに詳細に考察するであろう。
【0095】
Ii抑制療法が新生物疾患に関連して示される。例えば、これらは、決定された原発部位を有するがん、ならびに未知原発部位の転移がんを含む。前者の種類は、乳がん、頭頸部の悪性腫瘍、卵巣のがん腫、睾丸がんおよび他の栄養膜疾患、皮膚がん、および黒色種および他の色素形成皮膚病巣を含む。
【0096】
またIi療法は、PAI−1を過剰発現し、そしてMHCクラスII分子を発現するように誘導されたある種の細胞について示される。そのような細胞は、冠状動脈、頸動脈、腎動脈、静脈におけるアテローム性硬化斑、およびがん細胞において見出される。PAI−1の過剰発現は、腫瘍の浸潤、新脈管形成および転移、ならびに心筋梗塞、アテローム性動脈硬化、再狭窄、および血栓塞栓疾患に関連している(米国特許第6,224,865号;Gunther,J.Surg.Res.103(1):68−78(2002);Harbeck,J.Clin.Oncol.20(4):1000−7(2002);DeYoung,Circulation 104(16):1972−1and(2001);Recolle,Nephrology 22(1):5−13(2001))。プラスミノーゲン・アクチベーター・インヒビター1型(PAI−1)は、糖尿病をもつ患者の動脈壁において増強され、糖尿病患者において臨床的に観察される動脈硬化の促進および病斑の進行に関与している(Pandolfi,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.21(8):1378−82(2001))。PAI−1活性は、特異的抗体、ペプチド競合、アンチセンスおよびおとりのオリゴヌクレオチドの使用によって抑制された(Perolle,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.21(8):1378−82(2001))。
【0097】
またIi抑制療法は感染性疾患に関連して示される。これらは、ウイルス性疾患(DNAおよびRNAウイルス)、細菌性疾患(グラム陽性およびグラム陰性)、ミコバクテリア疾患、スピロヘータ疾患、リケッチア疾患、マイコプラズマおよびクラミジア疾患、真菌感染症、原虫および蠕虫類感染症および外部寄生虫感染症を含む。
【0098】
天然に存在する抗原提示細胞に関して、インビボおよびエクスビボの応用が含まれる。本開示において、用語「ターゲティング、標的化(targeting)」は、時には、抗原タンパク質または抗原タンパク質内の特定の抗原エピトープに対する免疫応答の指図を記述するために使用される。この免疫応答は、一部分、T免疫調節細胞、Tヘルパー細胞またはTサプレッサ−細胞の活性化を特徴とし、これらの細胞は、応答の背景に応じて、可変的にTh1、またはTh2、またはTh3細胞であってもよい。例えば、Th1応答は、応答が腫瘍細胞の殺傷をもたらす腫瘍抗原に対するCTL応答の発達に関してはヘルパー応答である。しかしながら、アレルゲンに対するTh1応答は、病原性のIgE抗体の生産をもたらすTh2応答から離れてアレルゲンに対する応答を免疫偏移する(immunodeviating)ことに関しては、機能的に、抑制性応答であってもよい。さらに、標的化の概念は、新規であるかまたは量の増加におけるMHCクラスII−提示抗原の提示によって刺激される免疫応答の初期部分のみならず、T免疫調節細胞における初期作用によって誘導または調節される免疫応答下流のエフェクター応答もまた含む。かくして、例えば、標的化は、ここで教示される標的化の方法によって開始されてもよいCTL−抗がん応答または免疫グロブリン抗ウイルス応答を含む。
【0099】
標的化は、抗原が特定されていても、また未知であっても、または過度の実験により同定されても、免疫応答が抗原に対向される概念を含む。例えば、標的化は、免疫応答の生成に寄与するであろう各大多数の抗原を発現する細胞に対向されてもよい。細胞内のいかなる特定の抗原が免疫応答に関与するかは、個人の遺伝子構造に応じて人によって異なってもよい。遺伝因子に対する免疫応答の感受性は十分に記述されてきた。結果的に、有用な治療または診断目的のための標的化方法の使用では、細胞の特定成分は特定される必要なく、そしてしばしば特定することはできない。
【0100】
標的化の工程は、インビボでもインビトロでも存在する工程を含む。例えば、インビボでは、腫瘍細胞または樹状細胞のいずれかであるMHCクラスII−ポジティブ細胞によって提示された抗原に対する免疫調節T細胞の活性化は、非腫瘍場所においても、また浸潤する腫瘍において起きてもよい。同様に、免疫応答のエフェクター部分の拡大は、インビボでもまたインビトロで起きてもよい。インビトロ応答の場合は、治療学的応答に影響するように、個人またはその他の選ばれた個人に再導入されてもよい生産物が生成できる。そのような生産物の例は、樹状細胞調製物、細胞傷害性T細胞調製物、およびそのようなインビトロで標的化された培養物からB細胞をクローン化した後、例えば、B細胞ハイブリドーマの作成後に生産された抗体を含む。
【0101】
この目的のために、末梢血液単核細胞が得られた個人への再導入に望ましい治療学的生産物に応じて、最初の培養物が分画されて、所望の細胞集団、例えば樹状細胞またはTリンパ球について強化される。さらに、本明細書で教示される標的化工程が実施された後の培養物が、所望の細胞集団、例えば樹状細胞またはTリンパ球について分画されてもよい。確立された方法は、単離後でかつ本発明の標的化工程直前に、または標的化工程が実施された後続いて、いずれでも個人から得られた細胞の分画について利用できる。さらにまた、確立された方法は、末梢血液単核細胞が最初に得られた個人へのそのような生産物の導入のために利用できる。この目的について、標的化に関する本発明の方法は、末梢血液単核細胞に限定されず、口腔咽頭または他の領域からの粘膜細胞、気管支または胃の洗浄後に得られる細胞、いずれかの臓器、例えば、肝臓、膵臓、前立腺、骨格筋、脂肪、皮膚からの腫瘍組織または正常組織から生検または切除によって得られる細胞、を含む個人から得ることができるすべての細胞調製物を含む。
【0102】
すべての場合において、目的は天然に存在する抗原提示細胞中に関心のある抗原エピトープを導入することであり、このエピトープは処置される病状ならびにIi発現の抑制に特異的である。腫瘍またはウイルス遺伝子感染樹状細胞は、強い抗腫瘍または抗ウイルス免疫応答を惹起する。そのような抗原遺伝子をトランスフェクトされた樹状細胞におけるIiタンパク質発現の抑制は、そのようなDNA予防接種の効力を増進することができる。天然に存在する抗原提示細胞を必要とする両インビボおよびエクスビボ実施態様の場合、関心のある抗原エピトープをコードしている発現可能な核酸配列、およびアンチセンスまたはsiRNA組成物のような逆遺伝子構築物またはコポリマーであってもよいIiのインヒビターを導入することが好ましい。
【0103】
用語「発現可能な核酸配列」は、翻訳応答能のあるRNA種、ならびに導入前に転写される翻訳応答能のあるmRNA種をコードしている転写応答能のあるDNA構築物を含むことを意図している。当業者は転写および翻訳受容能を与えるために必要な分子のシグナルを熟知している。
【0104】
本発明のすべての実施態様では、単一の分子構築物としてのこれらの必要な要素の両方を提供することである(例えば、両エピトープおよびIiインヒビターをコードしている核酸を受け入れるのに十分な能力を有するウイルスベクター送達系を使用して)。例えば、MHCクラスII分子−ネガティブ細胞をMHCクラスII分子−ポジティブ細胞に変換することが所望される場合には、さらなる配列がこの単一の分子構築物において含まれてもよい。この場合、変換を実施するタンパク質をコードしている発現可能な核酸配列が含まれてもよい。そのようなタンパク質は、例えば、本明細書で議論されるようにCIITAおよびγインターフェロンを含む。あるいはまた、別々の発現構築物が各々の要素を担持するように使用されてもよい。独立した方式で送達される別々の構築物の場合、2種の構築物の各々を取り込む単一の抗原提示細胞の可能性は統計的確率の結果である。さらにまた、単一ウイルス粒子における1つ以上の構築物のパッケージングは、Ii抑制の治療学的に有効な誘導、および指示される場合、MHCクラスIIの誘導および/または有害な免疫応答が生成されるウイルスタンパク質の合成に較べて所望のタンパク質抗原の合成の誘導を最大化するという実益を有する。そのような抗ウイルス免疫応答は、例えば、そのような治療学的介入が可能である頻度を限定することができる。
【0105】
結果的に、Iiタンパク質発現が抑制されているMHCクラスII分子−ポジティブ細胞の表面上に関心のある抗原エピトープを提示する方法は、a)MHCクラスII分子−ポジティブであるか、またはその細胞表面上にMHCクラスII分子を発現するように誘導されるか、いずれかの細胞であり、さらに細胞がIiを発現する細胞を提供し;そして段階a)の細胞中に関心のある抗原エピトープおよびIiのインヒビターを導入すること、を含んでもよい。IiのインヒビターはIiのいかなるインヒビターであってもよく、そして本発明の逆遺伝子構築物またはコポリマー、例えばsiRNAまたはアンチセンス組成物であってもよい。関心のある抗原エピトープは、Iiのインヒビターの導入の前、後、または同時に導入されてもよい。MHCクラスII分子−ネガティブ細胞のMHCクラスII分子−ポジティブ細胞への変換が所望されるこの方法では、変換を実施するタンパク質をコードしている発現可能な核酸配列は、厳格に要求されるわけではないが、Iiのインヒビターおよび/または関心のある抗原エピトープと同時に導入されてもよい。
【0106】
非ウイルス送達系による導入は、同様に特定の配慮を必要とする。非ウイルス送達系を使用して、非複合DNA、DNA−リポソーム複合体、DNA−タンパク質複合体およびDNAにコートされた金粒子が細胞中に送達することができる。これらの方法の各々は、特定の病気の選択を制御する利点および欠点を与える。複合DNA(例えばDNA−リポソーム複合体、DNA−タンパク質複合体、DNAにコートされた金粒子、およびポリラクチドコグリコリド粒子における微小被包化物)の使用は、エピトープをコードしている核酸配列およびIi発現のインヒビターをコードしている核酸配列の両方の単一細胞への確実な送達に向かうであろう。別の分子種によってコードされていても、それらは「パッケージ」(例えば、リポソームに被包化されても、また金粒子上にコートされていても))されているので、両分子は単一細胞に送達され易いであろう。
【0107】
DNAにコートされた金粒子は、通常、いわゆる「遺伝子銃」技術を用いる発射方法によって送達される。この技術を用いれば、金粒子は皮膚または筋組織中に発射され、そして細胞に侵入するために使用できる。侵入された細胞は、この方式で導入された核酸配列を発現することが示された。樹状細胞は、この技術を用いて効果的にトランスフェクトされる天然に存在する抗原提示細胞である。そのような発現構築物は、単一樹状細胞中に導入された場合、例えば、MHCクラスII分子と会合されて抗原提示細胞の表面に関心のある抗原エピトープの提示をもたらすことができる。抗原提示細胞の表面上のエピトープ/MHCクラスII分子複合体の提示は、免疫応答の向上を提供するさらなる免疫細胞を刺激できる。
【0108】
あるいはまた、特定の解剖学的位置(例えば、新生物疾患の一次腫瘍または若干の転移物)を有する病状を指向する場合、特定の解剖学的部位への直接注射が指定されてもよい。そのような部位は、樹状細胞のような抗原提示細胞に富む傾向がある。腫瘍は導入のそのような局部的部位の例である。細胞中への関連する発現可能な核酸構築物の導入を達成する手段が適当である。局在する腫瘍部位中にそのような構築物を導入する場合、MHCクラスII分子の発現を刺激するタンパク質をコードしているさらなる発現可能な核酸配列を含むことが好ましい。この第3の成分の包含が腫瘍細胞自体について意図される。Ii発現を抑制する構築物、およびMHCクラスII分子産生の発現可能なインデューサーが病状を表す細胞(例えば、腫瘍細胞)によって取り込まれる場合、細胞はMHCクラスII分子と会合して細胞表面に病気に特異的なエピトープを提示するであろう。また、これらの細胞はTヘルパー細胞およびBリンパ球を刺激できる。その結果、局部的病変に指向される治療に関してこれらの3種の発現可能な要素の直接注射は、病変を表している正常な抗原提示細胞およびMHCクラスII分子−ネガティブ細胞が標的とされる組み合わせ療法として考察することができる。
【0109】
MHCクラスII分子産生を誘導するための発現可能な核酸配列の使用に加えて、当業
者はこの文脈および関連する文脈において核移送プロセスの応用性を認識できる(Wolf,Arch.Med.Res.32(6):609−13(2001);Wakayama,Science 292(5517):740−3(2001))。さらに、抗原提示細胞は、脱分化してがん胎児性抗原を発現するように誘導された体細胞由来であってもよい(Rohrer,J.Immunol.162(11):6880−92(1999))。そのような細胞が使用されて関心のある抗原エピトープへの免疫攻撃が誘導されてもよい。インビボで完全に分化した細胞が未成熟形態物に脱分化するように誘導されて、臓器再生が実施されてもよい(Abbate,Am.J.Physiol.277(3pt2):F454−63(1990))。これらの細胞は、また、異常細胞への免疫攻撃を刺激するために抗原提示細胞として機能してもよい(Fu,Lancet 358(9287):1067−8(2001))。
【0110】
抗原提示細胞がインビボで標的化される本発明の実施態様では、正常な組織がサイトカイン(例えば、GM−CSF)の皮下注射によって刺激される。この皮下「感作(priming)」は、その領域の樹状細胞を攻撃する。感作注射は、その後に、関心のある抗原エピトープならびにIi合成のインヒビター(例えばsiRNA)をコードしている発現可能な核酸配列の注射へと続く。新生物細胞は、病気に特異的なペプチドの生産細胞であるが、一般に、MHCクラスII分子と会合してその細胞表面にそれらを提示しない。そのような細胞では、MHCクラスII分子の発現の誘導ならびにIi発現の抑制の両方が可能である。例えば、MHCクラスII分子の発現は、MHCクラスII分子産生を刺激するタンパク質をコードしているcDNAを、MHCクラスII分子−ネガティブ細胞中に導入することによって誘導できる。そのようなタンパク質は、例えば、CIITAまたはγインターフェロンを含む。この組み合わせ介入は、MHCクラスII分子と会合して細胞の表面に、病変に特異的な抗原エピトープ含有ペプチドの提示をもたらす。既に議論されたように、発現可能な核酸配列の導入はこれらの目的を達成する好適な方法である。
【0111】
先に議論されたように、直接注射は、病変が特定の原発性部位を呈する場所(例えば、腫瘍)に指定される。場合によっては、関心のある抗原エピトープをコードしている発現可能な核酸配列は、その領域の抗原提示細胞を標的化するために注射材料中に含まれてもよい。再び、抗原提示細胞への送達のゴールは、Iiサプレッサーおよび関心のある抗原エピトープである。病変細胞では、送達のゴールはIiサプレッサーおよびMHCクラスII分子誘導物質である。
【0112】
腫瘍内注射に関連して続く特定のプロトコルは、例えば、核酸配列をコードしているサイトカインまたはサイトカイン類の腫瘍内注射を伴う確立された治療プロトコルに基づく。そのようなプロトコルは、例えば、次に示すものを含む多数の公表物において記述されている:Schltz,J.Cancer Gene Ther.7(12):1557−650(2000);Mastrangelo,M.J.,J.Cancer Gene Ther.6(5):409−22(1999);Toda,M.Mol.Ther.2(4):324−9(2000);Fujii,S.,Cancer Gene Ther.7(9):1220−30(2000);Narvaiza,I.,J Immunol 164(6):3112−22(2000);Wright,P.,Cancer Biother.Radiopharm.14(1):49−57(1999):Cancer Res.58(8):1677−83(1998);Staba,M.J.,Gene Ther.5(3):292−300(1998);米国特許第5,833,975号;米国特許第6,265,189B1号;Griffith,T.S.,J.Natl.Cancer Inst.93(13):998−1007(2001);Siemens,D.R.,J.Natl.Cancer Inst.92(5):403−12(2000);Sacco,M.,Gene Ther.6(11):1893−7(1999);Cao,X.,J.Exp.Clin.Cancer Res.18(2):191−2000(1999);Wright,P.,Cancer Gene Ther.5(6):371−379(1998);Nasu,Y.,Gene Ther.6(3)338−49(1999);米国特許第6,034,072号;Lotze,M.T.Cancer J.Sci.Am.6 Suppl 1:S61−66(2000);Schmitz,V.,Hepatology 34(1):72−81(2001);Wang,Q.,Gene Ther.8(7):542−50(2001);Dow,S.W.,J.Clin.Invest.101(11):2406−14(1998);Kagawa,S.,Cancer Res.61(8):3330−8(2001);Addison,C.L.,Gene Ther.5(10):1409−9(1998);Lohr,F.,Cancer Res.61(8):3281−4(2001);Yamashita,Y.I.,Cancer Res.61(3):1005−12(2001);Kirk,C.J.,Cancer Res.61(5):2062−70(2001);Hum.Gene Ther.12(5):489−502(2001);Putzer,B.M.,J.Natl.Cancer Inst.93(6):472−9(2001);Mendirata,S.K.,Hum.Gene Ther.11(13):1851−62(2000);国際公開WO99/47678;Natsume,A.,J.Neurooncology 47(2):117−24(2000);Peplinski,G.R.,Surgery 118(2):185−90(1995);deWilt,J.H.,Hum.Gene Ther.12(5):489−502(2001);Emtage,P.C.,Hum.Gene Ther.10(5):697−709(1999);Clin.Cancer Res.3(12t2):2623−9(1997);Chen,S.H.,Mol.Ther.2(1):39−46(2000);Putzer,B.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94(20):10889−94(1997);Walther,W.,Clin.Cancer Gene Ther.7(6):893−900(2000);Fushimi,T.,J.Clin.Invest.105(10):1383−93(2000);Xiang,J.,Cancer Gene Ther.7(7):1023−33(2000)。
【0113】
エクスビボの応用に関しては、腫瘍細胞が個人から単離され、そしてエクスビボ培養が確立される。そのような培養物は、随伴する正常細胞からの分離の有無によらず、個人から得られた悪性細胞の無選択集団から確立されてもよく、あるいは細胞は、細胞系またはそのような細胞系由来のクローンとして得られてもよい。あるいはまた、そのような細胞は、無関係の患者の確立された悪性細胞系から、または新鮮な悪性組織(例えば、結腸または卵巣がん腫)の外植片として得られる。
【0114】
IiサプレッサーおよびMHCクラスII分子インデューサーが培養細胞中に導入されて、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原エピトープの所望のMHCクラスII分子と会合された提示がもたらされる。MHCクラスII分子発現のインデューサーは当該技術分野において周知であり、例えば、MHCクラスII分子トランス作用因子(CIITA)、γインターフェロン遺伝子およびγインターフェロンサイトカインを含む。この様式で処理された細胞は、複製適格性にされ(例えば、照射または固定(fixation)によって)、そして慣用の免疫化プロトコル(例えば、皮下、静脈内、腹腔内または筋肉内免疫)において使用される。総細胞調合物に加えて、それらの他の誘導物が免疫化調合物において使用されてもよい。
【0115】
大部分の関連腫瘍細胞がMHCクラスII分子およびIi−ネガティブであるけれども、若干の腫瘍(例えば、乳房、肺および結腸を冒す、例えばある種のリンパ腫、黒色腫および腺がん)がMHCクラスII分子−ポジティブおよびIi−ポジティブであることは周知である。MHCクラスII分子を発現するこのサブセットでは、Iiサプレッサーのみの導入が所望の免疫刺激を達成するのに十分であろう。そのような細胞にMHCクラスII分子インデューサーを導入することは、MHCクラスII分子に会合された抗原とTヘルパー細胞との相互作用の可能性を増大することによって所望の刺激を増強するのに役立つ。
【0116】
興味ある細胞の他の種類は、悪性細胞でも、ウイルス感染細胞でも、または天然に存在する抗原提示細胞でもない。発現可能な核酸配列は個人の組織の間質空間に送達される。そのような組織は、例えば、筋肉、皮膚、肺、肝臓、脾臓、骨髄、胸腺、心臓、リンパ液、血液、骨、軟骨、肝臓、腎、胆嚢、胃、腸、精巣、卵巣、子宮、直腸、神経系、眼、腺および結合組織を含む。組織の間質空間は、臓器組織の網状繊維、管または房の壁中の弾性繊維、繊維状組織のコラーゲン繊維内に細胞間液、ムコ多糖基質、あるいは筋細胞を鞘で包む結合組織または骨の小窩中の同じ基質を含む。それは、同様に、循環液の血漿およびリンパチャネルのリンパ流体によって占められる空間である。
【0117】
インビボの筋細胞が、発現可能な核酸配列を取り込みそして発現する能力において特に適格であることが報告されている(参照、例えば、米国特許第6,214,804号、この開示は引用によって本明細書に組み入れられている)。この送達の利点は、多核細胞、筋小胞体および横行小管系を含んでなる、筋肉の単一組織構造によるのであろう。発現可能な核酸配列は、細胞外流体を含有し、筋細胞中に深く伸びる横行小管をとおして筋肉に侵入できる。また、そのような発現可能な核酸配列は、後に回復する損傷された筋細胞に侵入することもできる。
【0118】
また、動物は皮膚をとおしての直接注射によって便利に接近される比較的大きい筋肉塊を有するので、筋肉は、治療学的適用における発現可能な核酸配列の送達の部位として有利に使用される。この理由で、比較的大きい用量の発現可能な核酸配列が多数かつ反復注射によって筋肉に沈着することができる。治療は長期間延長することができ、そして特別な技術および装置なしに安全かつ容易に遂行できる。筋肉以外の、かつ発現可能な核酸配列のやや非効率の取り込みおよび/または発現を特徴とする組織もまた、注射部位として使用されてもよい。
【0119】
本発明に関して、標的細胞においてIi合成を抑制し、そしてまた関心のある抗原エピトープ(処置されるべき病状に具体的に関連する抗原エピトープ)を発現することが望ましい。当該技術分野において既知であるように、発現可能な核酸配列の有効な用量は、一般に、約0.05μg/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲内に入る(普通には、約0.005mg/kg〜約5mg/kg)。有効な用量は多数の関連ファクターに応じて変えられるを認識できる。
【0120】
前記タイプの病変関連抗原を生成し、MHCクラスII分子と会合して細胞表面にそれを提示する細胞を作成するその他の方法は、細胞融合方法である。より具体的には、天然においてMHCクラスII分子を生産する細胞(例えば、樹状細胞のような天然に存在する抗原提示細胞)と、関心のある病変を示す細胞(例えば、腫瘍細胞)との融合体を作成することは日常的実験の問題である。そのような融合細胞では、腫瘍特異的抗原は、融 合細胞の表面にMHCクラスII分子と会合されて提示される。ほとんどの場合、生成物は、天然に存在する抗原提示細胞、例えば樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球、またはある種の多分化能細胞、および関心のある抗原エピトープを発現する細胞類の融合体である。関心のある抗原エピトープを発現するそのような細胞は、例えば、悪性細胞、ウイルス感染細胞または形質転換細胞、自己免疫応答の誘発に関連する細胞、および自己免疫応答を調節する細胞を含む。後者の種類は抗イディオタイプ・ネットワークメカニズムを通じてそれらの影響を発揮する細胞(例えば、類リウマチ性関節炎において病原性関連の
T細胞受容体を発現する)を含む。この種類の細胞融合体はエクスビボで作成される。Ii抑制および予防接種はこの開示においていずれかに記述されるように実施される。
【0121】
本発明の方法がサイトカイン療法(すなわち、サイトカインコーディング核酸配列、またはサイトカインそれ自体の導入)と組み合わせられることは、当業者によって認識できる。他の免疫同時刺激分子が良好に使用できる(Akiyama,Y.,Gene Ther.7(24):2113−21(2000);Miller,P.W.,Hum.Gene Ther.11(1):53−65(2000);J.Neurosurg.94(2):287292(2001);Jantscheff,P.,Cancer Immunol.Immunother.48(6):321−30(1999);Kikuchi,T.,Blood 96(1):91−9(2000);Melero,L.,Gene Ther.7(14):1167−70(2000);Lei,H.,Zhongua Zhong Liu Za Zhi 20(3):174−7(1998))。
【0122】
従来述べられたように、当業者は、過度の実験なしに、MHCクラスII分子と会合された提示が免疫応答の増強を提供する、病変特異的抗原を同定できるであろう。再び、すべての場合において、Ii抑制は、MHCクラスII分子と会合されたそのような抗原の提示を実施するために、要求されるであろう。次のリストは、この種類に入る抗原の例の限定されることのない非徹底的なリスティングであることを意図している:HIVgp120(Barouch et al.,J.Immunol.15:168:562−8(2002));HIVgag(Singh et al.,Vaccine 20:594−602(2001));インフルエンザM1およびM2(Okuda et al.,Vaccine 19:3681−91(2001));B型肝炎表面抗原およびコア抗原(Musacchio et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.282:442−6(2001));ヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)(Heiser et al.,Cancer Res.61:3388−93(2001));Gp75TRP−1(Bowne,Cytokines Cell Mol.Ther.8:217−25(1999));TRP−2およびgg100(Xiang,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:5492−7(2000)):PSA(Kim,Oncogene 20(33):4497−506(2001));CEA(von Mehren et al.,Clin.Cancer Res.7:1181−91(2001));Erb2/Neu(Pilon et al.,Immunol.167:3201−6(2001)およびTuting,Gene Ther.6:629−36(1999))。
【0123】
その他の態様では、本発明は、予防的または治療的ワクチンとして投与される場合、そのような構築物に対する免疫応答を促進する様式での感染性ウイルスにおける遺伝子組み換えを指向する。遺伝子組み換え、およびそれらの構築および使用方法は、関心のあるウイルスにより異なるけれども、広範囲のウイルスワクチンがこれらの遺伝子改変の方法に適している。この目的について、始原型の例としてのワクシニアによる組み換えDNAウイルスの、そして始原型の例としてのインフルエンザウイルスによるRNAウイルスの設計および使用に対する特定のアプローチが考慮される。
【0124】
DNA型でもRNA型でもワクチンウイルスのための2つの形式が存在する。1つは、感染細胞におけるIiタンパク質発現の抑制をもたらす、Ii−RGCまたはsiRNAの発現のための構築物を含有し、そして第2は、両a)感染細胞におけるIiタンパク質発現の抑制をもたらす、Ii−RGCまたはsiRNAの発現のための構築物ならびにb)MHCクラスII分子の発現をもたらす遺伝子構築物、例えば、CIITAまたはγインターフェロンの遺伝子を有する。ワクシニアのようなDNAウイルスの場合は、遺伝子は古典的な哺乳動物プロモーター、例えばCMV、RSV、Ube、EF−1aおよびU6の制御下にある。インフルエンザのようなRNAウイルスの場合は、挿入された構築物のRNAからの翻訳は、RNA転写および翻訳機構を媒介するインフルエンザウイルスの酵素によって発現される。感染細胞においてIiタンパク質の発現を抑制する能力のみを有するウイルスの第1のタイプは、既に外因的にIiタンパク質およびMHCクラスII分子を発現している細胞類に対して標的化される。そのような細胞類は、皮膚のランゲルハンス細胞、皮膚におけるまたは呼吸管もしくは腸の粘膜表面における他の樹状細胞、または骨髄から移動されたかまたは骨髄または脾臓から得られる樹状細胞、末梢血液または他の体腔の腹部、胸膜、心臓周囲において生じているか誘導される滲出性または漏出性の流体のような他の体液のマクロファージを含む。さらなる細胞類は、B細胞、またはB直系白血病およびリンパ腫、およびT細胞や形質転換された悪性または正常細胞の若干のサブセットのような、活性化によってMHCクラスII分子およびIiタンパク質を発現するようになった細胞を含む。ウイルス構築物の第2のタイプ(前記タイプb)は、タイプa)ウイルスによる感染のために先に挙げられた細胞類のすべてにおいてIi発現をトランスフェクトしたり、調節することができるが、さらに、ケラチン細胞、または筋細胞、またはMHCクラスII分子およびIiタンパク質を通常は発現しないが、例えばCIITAまたはインターフェロンによってそれらの分子の誘導をもたらすウイルスに組込まれた遺伝子配列の影響下で誘導される細胞をトランスフェクトすることができる。
【0125】
これらの2種類のDNAまたはRNAウイルスの例の構築は、標準の分子生物学的技術により達成することができる。CIITAおよびIi特異的siRNAをコードしているcDNAが、標準分子クローニング方法を用いてワクシニア、カナリア・ポックスウイルスまたは他のDNAウイルス中に導入することができる(Panicali,D.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1982;16:4927−31)。インタクトのワクシニアウイルスDNAならびにCIITAおよびIi特異的siRNAの発現カセットが、ウイルス配列に隣接するベクター中にクローン化できる。クローン化CIITAおよびIi特異的siRNA発現カセット間の相同的組み換えが起き、そして新しいウイルスが適当な条件下で選択できる(Panicali,D.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1982;16:4927−31;Marti WR.Cell Immunol.1997:179:146−52;Bertley FMN.J.Immunol.2004;172:3745−57)。組み換えRNAウイルスは、同様に、ウイルスcDNAをコードしているプラスミドを用いて構築することができる。インフルエンザAウイルスのためのプラスミドに基づく逆遺伝子系が開発された(Pleschka S.J.Virol 1996;70:4188−92)。この系は、末端を切り取ったヒトポリメラーゼIプロモーターを含有するプラスミドを使用してウイルスRNAを発現する。CIITAおよびIi特異的siRNA発現カセットは、インフルエンザHAまたはNA遺伝子をコードしているプラスミド中にクローン化できる。ウイルスゲノムの全8個のセグメントをコードしているプラスミドは、組織培養細胞中に同時トランスフェクトされて、予防接種目的で使用できる感染性組み換えウイルスを回復できる。あるいはまた、CIITAおよびIi特異的siRNAをコードしている組み換えプラスミドは、インフルエンザヘルパーウイルスにより感染された細胞系中にトランスフェクトされてもよい。選別方法を用いて、遺伝的に工作されたトランスフェクタントウイルスを含有するウイルスが単離できる(Palese P.J.Virol 1996;93:11354−8)。これらの種々の構築物の設計および調製、およびそれらのワクチンとしての応用は、次に示す米国特許の材料および方法を用いて実施できる。米国特許第5,976,552号、米国特許第5,292,506号、米国特許第4,826,687号、米国特許第6,740,325号、米国特許第6,651,655号、米国特許第5,948,410号、米国特許第5,824,536号、米国特許第4,029,763号、米国特許第4,009,258号、米国特許第6,684,63号、米国特許第6,676,11号、米国特許第6,623,962号および米国特許第6,506,559号。CIITAおよびIi特異的siRNAを発現する組み換えウイルスは、インビトロおよびインビボモデルを用いてMHCクラスII応答を増進する能力についてアッセイすることができる。
【実施例】
【0126】
例1
CIITAcDNAを含有するアデノウイルスベクターの構築
この実験の最初のゴールは、MHCクラスII分子ネガティブ細胞(例えば、MC−38およびRenca)におけるMHCクラスII分子の効果的導入のためのアデノウイルスベクターを構築することであった。CMVプロモーターおよびポリAテールを含むCIITA遺伝子構築物は、Sal1を用いてCIITAを含有するpCEP4ベクター(Dr.L.Glimcherより得る)から切り取られた。このフラグメントがpBluescript中に連結されてpBlue/CIITAを作成した。次に、pBlue/CIITAがEcoRVおよびXhoIにより消化されて、CMVプロモーター、CIITAcDNAおよびポリAシグナルを含むDNAフラグメントが遊離され、これがpQBI/BN(Quantum,Montreal,Canada)中に連結されて、pQBI/BN/CIITAが作成された。
【0127】
このベクターは、製造者の指示にしたがって、Cla1消化アデノウイルスDNA(ウイルスの左アームが欠失されてバックグラウンドを減少させた)とともに293Aアデノウイルスパッケージング細胞中にコ・トランスフェクトされた。コ・トランスフェクション後3週目に、得られたプラークが、CIITAcDNAの−7〜+12および+751〜+769に置かれる2種のプライマーを用いるPCRによって選別されて、CIITA遺伝子の存在を確認した。1つのクローンが使用されて、2種のマウス腫瘍細胞系:MC−38結腸腺がんおよびRenca腎細胞腺がんにおけるMHCクラスII分子の誘導を試験した。MHCクラスII分子の誘導の時間経過が、アデノ/CIITA組み換えアデノウイルスベクターによる感染後のこれらの細胞系においてアッセイされた。CIITAインサートを欠如する別の同一アデノウイルスベクターが対照として使用された。MHCクラスII分子が95%以上の細胞において感染後48〜72時間に強く誘導されることが決定された。
【0128】
例2
アデノ/CIITAによる感染およびIiアンチセンスオリゴヌクレオチドによる処理によるMHCクラスII+/Ii−表現型の作成
この実施例は、アデノ/CIITAによる細胞の感染および定義されたIiアンチセンスオリゴヌクレオチドによるIi発現の抑制によるMHCクラスII+/Ii−表現型を発現する細胞の作成を例証する。Iiアンチセンスオリゴヌクレオチドは、有効であると既に例証されていた(Qiu et al.,Cancer Immunol.Immunother.48:499−506(1999))。対照実験は、a)無処理;b)アデノ/CIITA構築物のみ;c)センスの対照オリゴヌクレオチドとともにアデノ/CIITA構築物;およびd)4−ヌクレオチドミスマッチの対照アンチセンスオリゴヌクレオチドとともにアデノ/CIITA構築物を含む。簡単に言えば、1.5x10MC−38細胞が、オリゴによるエレクトロポレーションの24時間前に25cmフラスコ中に接種され、そして1.5mlのウイルス保存液(1.26x10PFU/ml)を含有する5ml総容量の培地において48時間感染された。感染の最初の24時間後、新鮮な培地10mlが添加され、そして細胞はさらに24時間培養された。次いで、細胞は、アンチセンス、センスまたはミスマッチのオリゴヌクレオチドによるエレクトロポレーション前に、トリプシン処理され、そして洗浄された。エレクトロポレーションの条件は、次のとおりである:3〜5x10細胞が50μMオリゴヌクレオチドを含有する0.5mlのRPMI 1640におけるエレクトロポレーションキュベットに添加された。細胞は10分間氷上でインキュベートされ、そしてBTX600エレクトロポレーターを用いて200ボルト/1250μFに懸けられた。次いで、キュベットはさらに10分間氷上でインキュベートされ、この後、細胞は1回洗浄され、新鮮な25cmフラスコ中に接種され、そして24時間インキュベートされた。この時点で、細胞はトリプシン処理され、そして前記のようにMHCクラスII分子およびIiタンパク質についての染色後に流動細胞計測法によって分析された(Qiu et al.,Cancer Immunol.Immunother.48:499−506(1999))。
【0129】
図1において示される典型的な実験では、Iiアンチセンス処理およびアデノ/CIITA処理された細胞は、MHCクラスII分子発現にはほとんど、または全く影響することなくIiの良好な選択的抑制を示した。対照オリゴヌクレオチド処理された細胞(すなわち、ミスマッチまたはセンス配列を用いて)は、Iiの抑制を示さず、そしてアデノ/CIITA処理細胞に匹敵するMHCクラスII分子発現を有した。
【0130】
動物研究の期待、およびMHCクラスII.sup.+/Ii.sup.−細胞を大量に生成する必要において、上記研究はスケールアップした系において繰り返された。5x10MC−38細胞が、感染前18〜24時間に75cmフラスコ中に接種された。細胞は5mlのウイルス保存液(1.26x10PFU/ml)を用いて90分間感染され、そして新鮮な培地20mlが添加された。次いで、細胞は48時間培養され、エレクトロポレーションに懸けられて上記のようにオリゴヌクレオチド(50μM)が送達された。次いで、細胞は蓄えられ、さらに24時間新鮮な75cmフラスコにおいて培養され、この後、培地が変えられ、そして細胞はさらに3時間培養された。次いで、細胞は、MHCクラスII分子およびIiタンパク質の発現ならびにマウスの免疫について分析された。Iiタンパク質発現の配列特異的抑制は、先の実験で観察されたように、アデノ/CIITAにより感染され、Iiアンチセンスで処理された細胞においてのみ得られた。
【0131】
例3
MHCクラスII+/Ii−腫瘍ワクチンによる腫瘍防御
これらの研究では、MC−38腫瘍ワクチン細胞が上記のように調製され、そして6〜7週齢のメスC57BL/6マウス(Jackson Labs)に接種するために使用された。具体的には、MC−38細胞が上記のようにアデノ/CIITAで感染され、4群に分けられ、そしてa)無処理;b)50μMIiアンチセンスオリゴヌクレオチド;c)50μMミスマッチ対照オリゴヌクレオチド;またはd)50μMセンス対照オリゴヌクレオチド;を用いてエレクトロポレーションにより処理され、そしてフラスコ中に接種された。24時間後、新鮮な培地が添加され、そして細胞がさらに3時間培養された。次いで、細胞はトリプシン処理され、50Gy(セシウム源)を致死的に照射され、そして1.2x10細胞/マウスがマウス中に接種された。5週間後、マウスは5x10親MC−38細胞でチャレンジされ、そして腫瘍の出現について追跡された。図2において示されるように、Iiアンチセンス処理され、アデノ/CIITA感染されたMC−38細胞による接種は、すべての他の対照群に較べて腫瘍の成長に対して良好な防御を与えた。これらのデータは、CIITAで安定にトランスフェクトされ、かつIiアンチセンスで処理されたMC−38細胞を用いる本研究者らの前記研究と一致している(図3)。見て分るように、安定にCIITAトランスフェクトされたMC−38またはIiアンチセンスで処理された一過性のアデノ/CIITA感染細胞のいずれかを用いる防御のレベルは、匹敵するレベルの防御を与える。
【0132】
例4
MHCクラスII+/Ii−腫瘍ワクチンおよびGM−CSFによる腫瘍防御
その他の動物研究のセットでは、後続する親MC−38細胞の成長に及ぼすGM−CS
F処理とともにIi抑制されたMC−38ワクチン細胞の役割が検討された。これらの研究では、マウスは、MC−38細胞免疫化の1日前に右後足においてGM−CSF(R&D system,Minneapolis,Minn.)の18μgをS.C.注射されて樹状細胞が誘引された。また、マウスを免疫化するために使用されるMC−38細胞の数は、前実験で使用された数より低い、わずか3x10細胞/マウスであった。図4に示されるように、GM−CSFはクラスII+/Ii−MC−38細胞によって惹起される防御効果を増進する。3x10のクラスII+/Ii−細胞のみを接種されたマウスは、同様に、それがGM−CSFの不在下でクラスII+/Ii−MC−38細胞の1.2x10によって誘導されたように、親細胞の増殖を抑制した。従来の研究では、IFN−γによって誘導されたMHCが、CIITAによるよりもはるかに強い抗腫瘍免疫応答の誘導を与えることが示された(Qiu et al.,Cancer Immunol.Immunother.48:499−506(1999))。
【0133】
これらの研究は、サイトカインとIi抑制との間の相乗効果が達成可能であることを示した。さらなる研究は、Iiアンチセンス戦略とともにGM−CSFおよびIFN−γの使用を合体させ、そしてこの免疫化プロトコルを最適化および拡大するように計画された。
【0134】
例5
IFN−γcDNAを含有するアデノウイルスベクターの構築
IFN−γは、免疫応答の管理を調節することに重要な役割を演じ、そしてそれは、種々の組織および若干の悪性細胞を含む細胞においてMHCクラスII分子およびIiを誘導する。IFN−γ構築物によるトランスフェクションおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドによるIi抑制によって作成されたMHCクラスII+/Ii−腫瘍ワクチンは、MHCクラスII分子発現がCIITAトランスフェクションによって誘導される別の同一腫瘍ワクチンに較べて増強された免疫原性を有する(Qiu et al.,Cancer Immunol.Immunother.48:499−506(1999))。発現可能なマウスIFN−γ配列がアデノウイルス中にクローン化されている。両MHCクラスII分子およびIiタンパク質の発現は、非常に低濃度においてアデノ/IFN−γの感染後に誘導された(図5参照)(MOI 1においてさえ、データ未掲載)。アデノ/IFN−γ構築物を作成するために、マウスIFN−γcDNA(Chen et al.,J.Immunol.151:244−55(1993))が、IFN−γcDNAにおいて開始および停止コドンを含有する領域に相補的な2種の特異的オリゴヌクレオチドを用いてPCRによって増幅された。IFN−γフラグメントが、具体的に設計されたエンドヌクレアーゼ消化部位を用いることによってpCDNA(3+)プラスミド中にクローン化され、そして配列決定によって確認された。CMVプロモーター、IFN−γおよびポリAシグナルが適当なオリゴヌクレオチドを用いてさらにPCR増幅され、次いで、適当な制限部位を使用してpQBI/Ad/BN中にクローン化された。アデノ/IFN−γ組み換えウイルスの生成は実施例1に記述された同じ手順によって実施された。
【0135】
例6
Ii−RGCを含有するアデノウイルスベクターの構築
数種のIi逆遺伝子構築物がRSV.5およびpCDNA(3+)発現ベクター中にクローン化された。構築物のサブセットは、古典的なトランスフェクション法(例えば、リポフェクチン(lipofectin))を使用して、MHCクラスII分子−ポジティブ細胞(A20)においてIiを抑制する能力を有することが示された。Iiアンチセンスオリゴヌクレオチドがまた有効であることは分っているけれども、それらは、エレクトロポレーションまたは有意な関連する傷害性をもつ他の方法を必要とする。また、オリゴヌクレオチドにより処理された細胞の30〜70%以上はIi発現の有意な抑制を例証し
ない。これに反して(そしてアデノ/CIITA構築物を用いて示されたように)、遺伝子送達のためにアデノウイルスベクターを使用することは、全細胞に100%近い送達、所望の表現型変化および事実上無傷害をもたらす。数種のIi−RGCが、MHCクラスII+/Ii−表現型のさらに良好な誘導のためにアデノウイルス中にクローン化された。Ii−RGCを含有する組み換えアデノウイルスを作成するために、RSV(またはCMV)プロモーター、Ii逆遺伝子フラグメントおよびポリAシグナルからなる発現カセットは、PCRによって増幅され、そしてNot1およびXho1または他の適当な制限酵素部位を使用してpQBI/BNベクター中にクローン化されて、pQBI/BN/Ii−RGCが作成された。アデノ/Ii−RGCの最終構築は実施例1に記述された同じ手順によって達成された。MHCクラスII+/Ii−表現型の誘導の実験では、アデノ/Ii−RGCの濃度がアデノ/CIITAの濃度の約4倍に増加された場合に、Iiは細胞の>95%において抑制されたが、MHCクラスII分子の発現はほとんど影響されなかったことが観察された(図6、参照)。
【0136】
例7
IFN−γおよびIi−RGCを含有するアデノウイルスベクターの構築
感染を簡単にするために、アデノ/IFN−γ/Ii−RGC構築物が作成された。プロモーター、Ii−RGCフラグメントおよびポリAシグナルが、適当なオリゴヌクレオチドを用いてPCRによって増幅され、そしてpQBI/Ad/BN/IFN−γ中にクローン化されて、pQBI/Ad/BN/IFN−γ/Ii−RGCが作成され、これが続いて使用されてアデノ/IFN−γ/Ii−RGCが作成された。アデノ/IFN−γ/Ii−RGCを用いる感染によるMHCクラスII+/Ii−表現型誘導実験では、MHCクラスII+/Ii−表現型がpQBI/Ad/BN/IFN−γ/Ii−RGC構築物の1種(アデノ/IFN−γ/Ii−RGC(−92,+97))による感染によって、感染後96時間にMC/38細胞において生成されることが観察された(図7、参照)。
【0137】
例8
多数のIi−RGCを含有するアデノウイルスベクターの構築
Ii−RGCの効力を最大にするために、数種のIi−RGCが1つのアデノウイルス中にクローン化された。PCR増幅および他の適当な分子生物学的方法が使用されて、Ii−RGCの異なる組み合わせ物を含有するpQBI/Ad/BN構築物が生成された。そのような構築物の例は、以下に示されるセットを含んだ。マウスIiインサート(−92,+97)、(+32,+136)、(+314,+458)のヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号:1、2および3として配列リストにおいて提示される。
アデノ(−92,+97)(+314,+458)
アデノ(−92,+97)(+314,+458)x2
アデノ(−92,+97)(+314,+458)x3
アデノ(−92,+97)(+32,+136)
アデノ(−92,+97)(+32,+136)(+314,+458)
【0138】
また、Ii−RGCのあるものは、以下に示されるセットを含む、IFN−γを用いてクローン化された。
アデノ/CIITA/IFN−γ
アデノ/CIITA/IFN−γ(−92,+97)
アデノ/IFN−γ(−92,+97)
アデノ/IFN−γ(−92,+97)(+314,+458)
アデノ/IFN−γ(−92,+97)(+32,+136)(+314,+458)
【0139】
Ii−RGCの多数のコピーを含有するIi−RGCプラスミドの効果を最大にするそ
の後の努力では、各々が異なるプロモーターで作動されるように生成された。これらのプラスミドが以下に記される。
【0140】
pQBI/Ad/BN/Ii−RGC(−92,97/−92,97).プロモーターは、それぞれRSV、EF−1aである。
【0141】
pQBI/Ad/BN/Ii−RGC(−92,97/−92,97/−92,97).プロモーターは、それぞれRSV、EF−1a、UbCである。
【0142】
pQBI/Ad/BN/Ii−RGC(−92,97/32,136/314,456).プロモーターは、それぞれRSV、EF−1a、UbCである。
【0143】
pQBI/Ad/BN/CIITA/Ii−RGC(−92,97/−92,97/−92,97).プロモーターは、それぞれCMV、RSV、EF−1a、UbCである。
【0144】
pQBI/Ad/BN/CIITA/Ii−RGC(−92,97/32,136/314,456).プロモーターは、それぞれCMV、RSV、EF−1a、UbCである。
【0145】
pQBI/Ad/BN/IFN−γ/Ii−RGC(−92,97/−92,97/−92,97).プロモーターは、それぞれCMV、RSV、EF−1a、UbCである。
【0146】
pQBI/Ad/BN/IFN−γ/Ii−RGC(−92,97/32,136/314,456).プロモーターは、それぞれCMV、RSV、EF−1a、UbCである。
【0147】
プロモーター略語:RSV(ラウス肉腫ウイルスプロモーター)、EF−1a(ヒト延長因子−aプロモーター)、UbC(ユビキチンCプロモーター)、CMV(サイトメガロウイルスプロモーター)。
【0148】
例9
ヒトIi−RGCを含有するプラスミドの構築
ヒトIi遺伝子配列から得られるヒトIi−RGC(hIi−RGC)によるヒトIi発現の抑制が本明細書で開示される。ヒト細胞におけるIi発現を抑制するためのhIi−RGCを用いる実験の結果が表1において示される。ヒトIicDNA配列(Strubin et al.,EMBO J.3:869−72(1984))は、Dr.Eric Longより贈られた。Ii遺伝子の種々の長さのフラグメントが適当なオリゴヌクレオチドを用いるPCRによって生成された。すべてのIiフラグメントは複数のAUG開始および停止コドンを含有する。すべては、アンチセンスRNAの半減期を増加させるために、いずれの読み枠においても停止コドンに直接接続されるAUGを避けるように設計された。これを実施するために、AUGは種々の読み枠における停止コドンを無効にする(override)ように作成された。これらのIiPCRフラグメントは、適当な制限部位によってpcDNA3(+)発現ベクター中にクローン化された。ヒトリンパ腫細胞系、Rajiが使用されて、これらのhIi−RGCを用いるIi抑制が決定された。Raji細胞は、製造者の指示にしたがってhIi−RGCプラスミドDNAの1μgを用いてPolyfectトランスフェクション試薬(Qiagen)により一過性にトランスフェクトされた。48時間の培養後、細胞は、抗ヒトIi抗体、LN2(Pharmingen)および抗DR抗体(Pharmingen)による細胞の染色によって、IiおよびMHCクラスIIおよびIiの発現について染色され、続いて流動細胞計測法が実施された。
【0149】
Ii発現はバックグラウンド以上に細胞の一部(細胞の4〜9%)において抑制された(図8、参照)。この抑制は高度に再現性があった。さらに、そのような一過性トランスフェクションアッセイでは、培養における細胞の10%のみ、またはそれ以下が実際に、添加されたDNA構築物を取り込むことが一般的である。かくして、バックグラウンド以上の細胞の4〜9%は、アッセイ系の実際のトランスフェクションの有効性を反映している。これらの細胞では、MHCクラスII分子発現に及ぼす影響は観察されなかった。
【0150】
【表1】

【0151】
hIi−RGCの活性を最大化する試みにおいて、発現カセットの各々が異なるプロモーターによって作動される複数のコピーhIi−RGC(1個のプラスミドにおけるhIi−RGCの数個のコピー)が作成された。これらのプラスミドが以下に列挙される。
【0152】
pQBI/Ad/BN/hIi−RGC(−10,425/−10,425).プロモーターは、それぞれCMV、RSVである。
【0153】
pQBI/Ad/BN/hIi−RGC(−10,425/−10,425/−10,425).プロモーターは、それぞれCMV、RSV、EF−1aである。
【0154】
pQBI/Ad/BN/CIITA/hIi−RGC(−10,425/−10,425).プロモーターは、それぞれUbC、CMV、RSVである。
【0155】
pQBI/Ad/BN/CIITA/hIi−RGC(−10,425/−10,425/−10,425).プロモーターは、それぞれUbC、CMV、RSV、EF−1aである。
【0156】
pQBI/Ad/BN/IFN−γ/hIi−RGC(−10,425/−10,425).プロモーターは、それぞれUbC、CMV、RSVである。
【0157】
pQBI/Ad/BN/IFN−γ/hIi−RGC(−10,425/−10,425/−10,425).プロモーターは、それぞれUbC、CMV、RSV、EF−1aである。
【0158】
例10
MHCクラスII+/Ii−表現型の誘導のためのIL−2とともにIi−RGCベクターの腫瘍内注射および治療効力
BALB/cマウスが10Renca細胞によりs.c.注射された。CIITA:Ii−RGCDNA比1:6(w;w)において、CIITAcDNA遺伝子、CIITAcDNA遺伝子とIi−RGC(−92,97)を含有するプラスミド、またはCIITA遺伝子に加えて3重Ii−RGC(−92,97/32、136/314、459)を含有するプラスミドが、Renca腫瘍、サイズ0.05〜0.2cm中に注射された。総DNAの25μgが、注射前1〜5分にDMRIE/C(1,2−ジメリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド)(GIBCO)とともに1:1(w/w)の比でインキュベートされた。DNA注射後5日目に、切除された腫瘍の凍結切片からスライドが作成された。スライドはマウスMHCクラスIIおよびIiに対する抗体により染色されて、腫瘍細胞のクラスII+/Ii−表現型が決定された。腫瘍におけるクラスII+細胞がT細胞、B細胞またはマクロファージを表しているかもしれない可能性を除外するために、染色は、またCD4、CD8、CD3、CD19(B細胞の)およびMAC(マクロファージ)に対する抗体を用いて実施された。結果(データ未掲載)は、CIITAのみを注射された腫瘍において匹敵するMHCクラスIIおよびIi染色を示したが、一方、いずれかCIITA/Ii−RGC(−92,97)かまたはCIITAプラスミドに加えて三重Ii−RGCを含有するプラスミドを注射された腫瘍においてIi抑制の証拠が存在した。CD4、CD8およびCD3染色は非常に少ないポジティブ細胞を示したので、このことは、腫瘍におけるクラスII+細胞が侵入しているT細胞ではないことを示している。また、B細胞およびマクロファージ染色は、クラスII+細胞がB細胞またはマクロファージではないことを除外した。同時に、脾臓サンプルのスライドがまた、ポジティブ対照として上記抗体のすべてにより染色された。
【0159】
Ii抑制の治療学的効能を試験する研究では、BALB/cマウスは、Renca腎臓腺がん細胞をs.c.注射され、そして1日目にはIL−2(2μg)、CIITA(3μg)およびIi−RGC(−92,97)(18μg)からなる種々のプラスミド調製物、そして2〜4日にはCIITAなしの同じ調製物の腫瘍内注射によって処置された。対照マウスは、IL−2の2μgとともに4日連続で空のベクターを受けた。次いで、腫瘍は2〜3日毎に測定された。マウスは31日間追跡され、そして腫瘍サイズが1000mmに達した時点で終了された。結果は、IL−2とともにCIITAおよびIi−RGC含有ベクターにより処置されたマウスが腫瘍増殖における劇的退縮を表し、一方、IL−2のみおよび対照ベクターを受けているマウスにおける腫瘍増殖は進行性であり、そしてマウスの終末が求められることを示している(図9、参照)。
【0160】
例11
siRNAを用いるヒト細胞におけるIiの抑制
siRNA構築物は、Iiタンパク質発現の抑制においてIi逆遺伝子構築物と同様に有効であることが合理的に期待できる。ここでは、そのような構築物の例が、IicDNA遺伝子とのコ・トランスフェクションによって誘導されるIiタンパク質発現を抑制することが示される。10種のsiRNA構築物が、ヒト腎系293細胞におけるIi発現の抑制について試験された。発現可能なsiRNA構築物は、次に示す理由のために合成オリゴヌクレオチドが好ましいであろう。1)RNAオリゴヌクレオチドによる細胞のトランスフェクションはDNA発現構築物によるトランスフェクションよりも困難である。2)合成siRNAオリゴヌクレオチドの大規模な合成は、DNAプラスミドまたは他のベクターの調製よりも費用がかかる。3)構築物の発現(したがってIi抑制活性)は、組織特異的プロモーターを用いて特定の臓器または組織に対して標的化できる。4)siRNAの活性(合成されても、また遺伝子ベクターから発現されても)は、一般に、逆遺伝子構築物の活性よりもはるかに高い。これらの理由で、発現可能なsiRNA構築物はインビボの使用のために大きな潜在的利益を有する。
【0161】
siRNA(Ii)構築物の設計:10種のsiRNA(Ii)構築物が、表2に提示されるそれらの構築において使用されるオリゴヌクレオチドを用いて設計された。構築物は、siRNAのクローニングのために具体的に設計されたpSuppressorAdenoプラスミド(Imgenex,San Diego,CA)を用いて作成された。プラスミドは、siRNA発現のために最適化された両U6およびSV40プロモーターを含有し、siRNA配列の挿入のために便利なクローニング部位を備え、そして広範な細胞への送達を可能にする。さらに、このプラスミドはまた、siRNA発現構築物を含有する組み換えアデノウイルスの構築にも使用できる。2つのアプローチがこれらのsiRNA(Ii)構築物の設計に続いて行われる。第1に、Imgenexコンピュータープログラムが使用されて、5種の構築物を予測する(表2における11〜15)。このプログラムはIiRNAにハイブリダイズするような塩基組成(すなわち、適当なG−C含量など)を有するRNA配列を同定する。得られる5種のsiRNA(Ii)構築物(表2における11〜15)は、それらがIimRNAと実際にハイブリダイズする場合は、強力なインヒビターであることが期待される。しかしながら、すべての与えられたmRNAの三次構造を予測することは困難であるので、そのようなコンピューター設計されたsiRNA(Ii)構築物は、IimRNAに接近できることを実験的に見出すことはできないであろう。したがって、第2のアプローチが、さらなる5種の構築物(表2における16〜20)の設計においてまた使用される。Iiタンパク質の発現を抑制するためのIi−RGCの使用における過去のデータは、若干のIiアンチセンスオリゴヌクレオチド(Qiu Cancer Imm Immunother.48:499−506(1999))(Xu米国特許第6,368,855号)およびIi−逆遺伝子構築物(RGC;Lu Cancer Imm Immunother.52:592−598(2003))(米国特許出願公開第10/127,347号)が、ヒトIimRNAの最初の400bpにハイブリダイズして、結果的にIiタンパク質発現の強い抑制を起こすことを示した。ヒトIimRNAのこの領域がsiRNA構築物に非常に接近できるであろうことがこのデータから推論できる。さらにまた、この提案は、翻訳を開始するAUG部位を含有するmRNA領域が、一般に、mRNAに結合するアンチセンス構築物にとって感受性の領域であるという文献のデータと一致する。したがって、点検によって、その他の5種のIisiRNA構築物は、AUG開始部位周辺のヒトIimRNAの最初の400bp内のIimRNAの部分にハイブリダイズするように設計された。両方が、機能的な翻訳開始部位であると考えられるヒトIimRNAの初めの部分には2個のAUGが存在するので、siRNA配列はこれらの部位の両方を標的化するように設計された。具体的には、2つのオーバーラップ配列が第1のAUG周辺に設計され、そして3個のオーバーラップsiRNA配列が第2のAUG周辺に設計された。これらの5個のsiRNA(Ii)配列は、最適なアニーリングパラメーターをもたないのに対して、一方、それらはIiRNAとハイブリダイズすることが期待できる。全配列は、発現されたsiRNA配列のヘアピン形成を可能にするように短いループ配列とともに設計された。ヘアピンの形成は、機能的二本鎖siRNAをもたらす。標的mRNAと相互作用し、そしてそれを切断するRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成する際の二本鎖RNAの要件が明白に例証されている(Nature Reviews Genetics 2:110−119,2001)。
【0162】
【表2】

【0163】
二本鎖オリゴヌクレオチドは、先に示されたようにセンスおよび相補鎖のためのそれぞれshRNA(短いヘアピンRNA)をコードしている2本のオリゴヌクレオチドのアニーリングによって作成される。アニールされたオリゴヌクレオチドは、「tcga」(上記)および「gatc」オーバーハングを有して、SalIおよびXbaI消化されるpSuppressorベクター中へのクローニングを助けることができる。センス配列は一本の下線を施されている。ループ配列は太字である。逆配列は二本の下線を施されている。
【0164】
実験手順および結果.
10種のsiRNA(Ii)構築物は、標準の分子生物学的技術にしたがって、SalIおよびXbaI酵素部位を用いて、pSuppressorAdenoプラスミド(Imgenex,San Diego,CA)中に上記配列をクローニングすることによって作成された。293ヒト腎系(ATCC Number CRL−1573)の細胞が、これらのIisiRNA構築物の各々(0.82μg)とともにヒトIicDNA遺伝子プラスミド(0.18μg)によりコ・トランスフェクトされた。数種の活性のあるIisiRNA構築物が決定された。簡単に言えば、293細胞(2x10/ウェル)が6穴プレートにおいて一夜培養された。DNA混合物が、製造者の指示にしたがってEffecteneトランスフェクション試薬(Qiagen,Valencia,Calif.)を用いて293細胞中にトランスフェクトされた。細胞はCOインキュベーターにおいて37℃で36時間培養された。細胞は抗ヒトIi抗体(LN−2,Pharmingen,San Diego,Calif.)により細胞内染色され、次いで、流動細胞計測法によって分析された(表3)。装置の感度(ゲーティング(gating))は、Ii−ネガティブ293細胞の99%が検出できるように設定された。IicDNAは、ポジティブ対照としての、すなわちIi抑制のない、空のpSuppressorAdenoプラスミドとともにコ・トランスフェクトされた。各々3つの別々の実験では、Ii+細胞のパーセンテージは、空のpSuppressorAdenoプラスミドまたはそれぞれ10種のsiRNAプラスミド(表3)の各々によりトランスフェクトされた細胞について決定された。各場合におけるIi+対照細胞との差異は、種々のsiRNA構築物によるIi抑制の程度を反映している。プラスミド11〜18の平均抑制(29%)は実質的である。これらのデータから、プラスミド11〜18(29%の平均抑制)は強い活性を有し、そしてプラスミド19、20および「空」はIi抑制活性をもたないと結論できる。
【0165】
【表3】

【0166】
それぞれのプラスミド11〜20の構造は表3に示される。Obs=Ii+細胞の観察されたパーセンテージ。Diff=[空の」プラスミドにより見出されたパーセンテージからの観察された%における差異。%sup=パーセンテージ抑制(「空の」プラスミドによる差異/観察されたパーセンテージ)。mean sup=3実験の%抑制の平均。
【0167】
Raji細胞におけるsiRNAの効果を試験する実験方法。
遺伝子銃送達方法がRaji細胞中にsiRNA構築物トランスフェクトするために使用された。プラスミドDNAが金粒子上に沈殿された。金の微小担体(microcarrier)(1μm粒子の0.5mg)が0.05Mスペルミジンの100μl中に音波処理によって懸濁された。エンドトキシンを含有しない水中に、1mg/mlの濃度におけるDNAの指示量が添加され、そして1MCaClの100μlが滴下された。この金−DNA混合物は10分間静置された後100%エタノール250μlにより3回洗浄された。最終洗浄後、ペレットは100%エタノール中0.025mg/mlのポリビニルピロリドン(PVP)の200μlに再懸濁され、15mlチューブに移され、そしてPVP/エタノールにより1mlに作成された。1ショット当たり金0.5mgおよび可変DNA装填比(DLR)の得られる微小担体装填量(MLQ)がマウスに送達された。DNA/微小担体懸濁液の1mlは、17の被覆0.5−インチカートリッジを作成し、これは使用前に乾燥剤とともに4℃で一夜保存された。遺伝子銃送達法によるマウスの免役では、各マウスの腹部の毛が、各予防接種前に電気バリカンで除去された。遺伝子銃の銃身は腹部皮膚に対して直接据えられ、そして1回の微小担体ショットが400〜500psi.のヘリウム圧を用いて送達された。注入はヘリウム活性化Gene Gun system(PowderJect)を用いて実施された。
【0168】
例12
siRNA(Ii)二重らせんによるヒト細胞におけるIiの抑制
Ii遺伝子発現をサイレンスするためのshRNAの使用に加えて、siRNA二重らせんの化学合成を伴う第2の方法が試験された。合成siRNAはsiRNAプラスミドベクター以上の若干の利点を提供する。第1に、合成siRNAの送達は、挿入変異誘発を含む、真核細胞への有害な影響を有する外来プラスミドDNAの導入を必要としない。第2に、合成siRNAは、本明細書において提示されるように、治療目的のために一層有効であるかもしれない一過性遺伝子抑制をもたらす。
【0169】
二本鎖siRNAの設計および試験. アンチセンスRNAは細胞中に導入される場合、特定の遺伝子をサイレンスすることができる(Guo,Cell 81,611)。C.エレガンス(C.elegans)を使用して、二本鎖RNAの注入が、センスまたはアンチセンス鎖の注入よりも遺伝子サイレンシングにおいて有効であることが例証された(Fire,Nature 391,806)。したがって,さらなるsiRNA(Ii)が設計され、そしてQiagen(Valencia,CA)によって合成された(表4および5)。合理的なsiRNAの設計および緊縮な相同性解析は、標的遺伝子の最適なサイレンシングを達成するため、そして標的を外した影響を最小にするために決定的である。QIAGENは、RNAiの高度に機能的な標的配列の選択のためのNovartis PharmaceuticalsからのHiPerformance design algorithmを認可された。このアルゴリズムは、現在までのsiRNA機能性の最大の独立した研究に基づいていて、ここでは、34の標的に対向される3000以上の合成siRNA二重らせんの遺伝子サイレンシング効力が解析された。これらのデータが使用されて、精巧なパターン認識アルゴリズムが開発された。HiPerformance design algorithmは、全体的かつ正確な相同性解析を可能にするために、特許権のある相同性解析ツールおよび包括的な重複していない遺伝子データベースを組込んでいる。結果的に、注文設計された4−for−Silencing siRNA Duplexsが高度に特異的かつ強力なsiRNAを提供する。4−for−Silencing siRNA Duplexesは高度に純粋なHPP Grade siRNAである。高い純度はsiRNAの特異性を増大し、そして標的を外した影響の可能性を低下させる。
【0170】
実験結果.
次に示す実験は、MHCクラスII分子と会合されるインバリアント鎖(Ii)に特異的なsiRNAが、siRNAをトランスフェクトされたヒト細胞においてIiの発現を抑制することを明らかにした。これらの実験では、HeLa細胞が、トランスフェクション24時間前に、6穴プレートにおいて1ウェル当たり2.5x10細胞においてプレートされた。HeLa細胞は、製造者の指示にしたがってsiRNAfectトランスフェクション試薬(Qiagen Inc.)を用いてインバリアント鎖に特異的な4個のsiRNA(Ii)によりトランスフェクトされた。LaminA/Cに特異的なsiRNAおよび非サイレンシング蛍光標識siRNAがIi遺伝子サイレンシングについての対照として使用された。細胞は、トランスフェクション後6時間に、γインターフェロン(IFN−γ)100ユニット/mlおよびチロキシン1x10−7Mにより処理されて、MHCクラスII発現を誘導した。トランスフェクション後48時間目に、細胞がIi、HLA−DRおよびイソ型対照に対する抗体によって染色された。細胞は実施例11におけるようにFACS解析された(表6)。全4種のsiRNA(Ii)二重らせんがIiタンパク質発現の有意な抑制を示した。
【0171】
【表4】

【0172】
【表5】

【0173】
【表6】

【0174】
例13
Ii抑制によるHIVgp120DNAワクチンの免役調節
ワクチン抗原をコードしているDNAが導入された樹状細胞または他の専門抗原提示細胞のいずれかにおけるIiタンパク質抑制の誘導は、両Tヘルパー細胞記憶および細胞傷害性T細胞(CTL)応答を増進する強力なTヘルパー細胞応答をもたらす。そのような応答は、従来欠いていたDNAワクチンの強力な治療学的効果を可能にする。
【0175】
本開示の背景において詳細に示されたように、この効果に関するメカニズムは、抗原提示細胞(APC)の小胞体(ER)におけるIiタンパク質発現の抑制に依存する。また、プロテオソームによって処理され、そこでMHCクラスII分子に結合するためにER中に移送される細胞質ペプチドは、Iiタンパク質によってブロックされていない主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子に結合できるようになる。正常には、Iiタンパク質はMHCクラスII分子の抗原ペプチド結合部位をブロックしているが、その後、三量体(MHCクラスIIαおよびβ鎖+Iiタンパク質)は、ポスト−ゴルジ分画(post−Golgi compartment)ヘ移送され、この中に、選ばれた外部抗原が移送されて、Iiタンパク質のタンパク質分解とともに抗原がタンパク質分解的に消化され、そしてMHCクラスII分子に抗原ペプチドが結合される。
【0176】
Iiタンパク質の発現の抑制とともに細胞におけるMHCクラスII分子のER結合部位の改変は、Tヘルパー細胞への提示のために細胞表面への細胞内移送の進行を続ける、MHCクラスII分子中に結合されるMHCクラスIIエピトープの蓄積を拡大する。さらに、MHCクラスII分子の大フラクションが、トランスフェクトされたDNAワクチン遺伝子から合成された決定基を結合し、発現するようになるので、多くのエピトープの提示能力が増強される。その遺伝子の用量、そのプロモーターの能力、プロテオーム処理に及ぼす細胞質で合成されたタンパク質またはタンパク質フラグメントの安定性の影響、および他のファクターが、すべて,ERにおける「ブロックされてない」MHCクラスII分子に結合できるようになるワクチンペプチドのER中濃度に寄与する。
【0177】
この実施例で示されるように、HIVgp120抗原のDNAによるマウスの免疫化への応答は、Iiタンパク質のmRNAとハイブリダイズするRNAの転写を誘導してIiタンパク質の抑制をもたらす、Ii逆遺伝子構築物(Ii−RGC)によるマウスの同時免疫化によって、大きく増強される。金ビーズ免疫化技術の利点は、DNAワクチンおよびIi−RGCに関するプラスミドDNAの最終的な最適有効比率および濃度が、金ビーズ吸着のDNAが押し込まれる細胞内に、細胞ベース当たりで投与することができることである。
【0178】
実験1
DNA被覆された金ビーズの調製.
DNAによる金ビーズのコーティング前に、次のパラメーターが各研究について決定されなければならない:1カートリッジ当たりの金ビーズ装填比(GLR)、1カートリッジ当たりのDNA装填比(DLR)、DNA/金ビーズ比(DGR)、1回の免疫化当たり使用されるカートリッジ(ショット)数、および必要な免疫化回数。次の実験1および2では、DGR=4、GLR=0.5、DLR=2。
【0179】
【表7】

【0180】
マウスの免疫化.
メスBALB/cマウス(6〜8週齢)が、ケタミン溶液(100mg/ml)200μl、キシラジン溶液(20mg/ml)250μlおよび通常の生理食塩水300μlを含んでなる溶液(総量750μl)により麻酔され、各マウスは6週目に50μlのi.p.注射を受ける。次いで、マウスは直ちに電気カミソリで剃られ、そして遺伝子銃発射にかけられる。銃はマウスの皮膚から0.0〜0.5cmにある。発射は400psiヘリウムガスによる。各マウスは4ショットを与えられ、その後のブースターはない。3週後に、インビトロで実施されたIFN−γElispotアッセイは、長いP18ペプチド(RIQRGPGRAFVTIGK)および短いP18ペプチド(RGPGRAFVTI)をそれぞれ使用する。
【0181】
ELISPOTアッセイ.
ELISPOTアッセイは、Cellular Limited Technologyの市販のプロトコルにしたがって実施された。簡単に言えば、0.01Mリン酸ナトリウム、0.14M塩化ナトリウム、pH7.2(リン酸バッファー生理食塩液、PBS)中、6μg/mlにおけるサイトカイン特異的捕捉(capture)抗体の溶液100μlが、4℃で一夜のインキュベーションのために96穴Immunospotプレート(M200)の各ウェルに添加される。吸引後、10%胎児ウシ血清および1%ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミンを含有するリン酸バッファー生理食塩液200μlがRTで2時間各ウェルに添加される。PBS中1%Tween−20で4回洗浄後、10〜10細胞/ウェルにおける免疫マウスの脾臓からの単細胞懸濁液100μlが、培地中、5μg/ウェルまたは25μg/ウェルにおけるエピトープのみのペプチド100μlにより再刺激され、37℃、5%COにおいて24〜72時間インキュベートされる。PBSで2回および洗浄バッファーで4回洗浄後、10%胎児ウシ血清(希釈バッファー)を含有するPBS中2μg/mlビオチン化抗ヒトIFN−γの100μlが、RTで2時間各ウェルに添加される。洗浄バッファーIで5回洗浄後、希釈バッファー中ストレプトアビジン−セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ共役液100μlがRTで1時間各ウェルに添加される。洗浄バッファーIで4回およびPBSで2回洗浄後、3−アミノ−9−エチルカルバゾール/H基質(Pharmingen 551951)100μlがRTで暗所において30〜60分間添加される。反応は脱イオン水100μlで3回洗浄することによって停止される。ELISPOTデータの解析は、Immunospot1.7eソフトウエア(Cellular Limited Technology)を用いることによって実施される。
【0182】
【表8】

【0183】
実験2
実験手順は実験1と同じである。
【0184】
【表9】

【0185】
上記データで示されるように、HIVgp120およびIi−RGCのためのDNAの同時注入は、両細胞数および細胞当たりの出力(output)(スポットサイズ)に関して、CD4+T細胞IFN−γ応答の実質的増強をもたらす。この増強された応答は、より強力なCTL、およびより強いCD4+記憶細胞応答をもたらすであろう。
【0186】
また上記実験は、MHCクラスIIトランスアクチベーター(CIITA)の同時注入が、CIITAなしで見られる応答に比較して抑制された応答を誘導することを例証している。このパターンは、ケラチン細胞中に押し込まれたDNA被覆ビーズが、CIITAのDNAがまたビーズ上に存在するか否かに応じて2パターンの応答をもたらすという事実から得られる。CIITAなしでは、ワクチンDNAは、HIVgp120の発現、MHCクラスI決定基の発現をもたらし、これはMHCクラスIに限定されるCTL応答を
開始できる。あるいはまた、HIVgp120抗原は、ケラチン細胞によって遊離されることもあり、次いで、マクロファージまたは樹状細胞によって捕捉されて、それらの細胞のMHCクラスII分子によって提示される。ケラチン細胞中に押し込まれたDNAから合成されたタンパク質由来のT細胞提示のMHCクラスIIエピトープの量は、少なくともそのような細胞によって提示されるMHCクラスIエピトープの量に較べて非常に低い。そのような細胞では、これらの細胞がMHCクラスII分子またはIiタンパク質のいずれも発現しないので、発現されたIi−RGCは有用な機能を有しない。内因性の合成抗原タンパク質は、まれにポスト−ゴルジ抗原負荷分画(post−Golgi antigen charging compartment)への小胞移送後を除いて、または細胞外遊離と専門的なAPCによる取り込み後を除いて、発現されるようにはならない。
【0187】
しかしながら,ケラチン細胞がCIITAとともに同時にトランスフェクトされる場合には、MHCクラスII分子はケラチン細胞において発現される。Ii−RGCがそのような細胞中にコ・トランスフェクトされない場合、MHCクラスII分子の発現は、それらの細胞によるMHCクラスIIエピトープ提示について影響力をもたない、何故ならば、それらは、専門的APCのポスト−ゴルジ抗原負荷分画に存在するMHCクラスIIプロセシングおよび提示機能の残りの部分を欠如するからである。しかし、Ii抑制がまたIi−RGC構築物、siRNA(Ii)またはアンチセンスIiオリゴヌクレオチドにより生じる場合には、MHCクラスIIエピトープは遺伝子をトランスフェクトされたケラチン細胞によって提示することができる。しかしながら、そのような細胞における応答の生物学的タイプは、ここでは、活性化表現型よりもむしろ抑制表現型である。それは、T細胞提示のためのB7.1、B7.2、CD40、CD80、CD86、および他のAPC補助因子の不在下での、MHCクラスII分子によるTヘルパー細胞へのエピトープの提示という理由で起きるからである。補助因子なしのMHCクラスII分子により提示された抗原エピトープによるT細胞活性化の不履行応答経路は、Th2抑制化表現型である。そのような免役抑制効果の誘導および使用方法は、米国特許第6,106,840号、米国特許第6,218,132号および米国特許第6,405,796号からの引用によって組み入れられている。自己免役疾患は、疾病の発病に関連する少なくとも1種の基本的抗原性抗原が既知であり、そして抗原のDNAコーディング部分または全部が利用できる場合に、この抑制誘導方法によって処置することができる。処置プロトコルは、例えば、一定の濃度および比率における金ビーズにおいて、次の3種のDNA:発病に関連する抗原のためのDNA、Ii−RGCプラスミドのためのDNAおよびCIITAのためのDNAを投与することからなる。そのような免疫化は、次の米国特許で具体的に述べられる、用量、スケジュールおよび方法において、かつそのようなアジュバントを用いて実施される:米国特許第6,710,035号、米国特許第6,586,409号、米国特許第6,214,804号、米国特許第6,339,068号、米国特許第5,620,896号、米国特許第6,706,694号、米国特許第6,649,409号、米国特許第6,258,799号、米国特許第6,743,444号、米国特許第6,656,706号および米国特許第6,783,759号。
【0188】
1つの態様では、本治療方法は、類リウマチ性関節炎、多発性硬化症およびI型真性糖尿病のような自己免役疾患の処置に適用することができる。例えば、ヒトミエリン基礎タンパク質、オリゴグリオデンドロサイト(oligogliodendrocyte)タンパク質、および他のMS関連抗原に対するDNAワクチンが、多発性硬化症を抑制するために両CIITAおよびIi−RGCとともに投与することができる。同様に、Hcgp42、コラーゲンおよび類リウマチ関節炎−または骨関節炎関連抗原のためのDNAが、類リウマチ性関節炎を抑制するために両CIITAおよびIi−RGCとともに投与することができる。インスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、グルコーストランスポーター−2および他のI型真性糖尿病関連抗原のためのDNAが、I型真性糖尿病を抑制するために両CIITAおよびIi−RGCとともに投与することができる。その他の態様では、移植片拒絶が、エンコーディングcDNAとともに移植片の適当な抗原が既知である場合には、拒絶を抑制するためにこの方法によって処置されてもよい。処置プロトコルは、例えば、一定の濃度および比率の次の3種のDNA:移植片拒絶に関連する抗原のためのDNA、CIITAのためのDNAおよびIi−RGCのためのDNAをもつ金ビーズを投与することからなる。
【0189】
例14
ヒトIisiRNAプラスミドによるヒト樹状細胞におけるIiの抑制
siRNAが使用されて、新鮮なヒト末梢血液単球由来の樹状細胞においてIiタンパク質の発現が抑制された。ヒト単球樹状細胞は、ヒト末梢血液市販調製物(Leukopack from All Cells,Inc.Boston)から調製された。末梢血液単核細胞(PBMC)(2.5x10)が,X−VIVO15培養培地(Cat.No.04−418,Cambrex Bioscience Walkersville,Inc.,Walkersville,MD)、10%ヒトAB血清(Cat.No.100−512,Gemini Bio−Products,Woodland,CA)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン保存液(Cat.No.10378−016,GIBCO,Grand Isle NY;保存液濃度:ペニシリン10,000U/ml;ストレプトマイシン10,000μg/ml;L−グルタミン,29.2mg/ml)を含んでなる25mlのDC培地において5%CO雰囲気中37℃で一夜培養されて、単球をプラスチックウェルの底に接着させた。非接着T細胞およびB細胞は、0.1Mリン酸ナトリウムバッファー0.14MNaCl溶液(リン酸バッファー生理食塩液;PBS)で静かに洗浄して除去された。次いで、接着単球は、0.2〜2ng/mlのIL−4(R&D Systems,Minneapolis,MN)および0.2〜2ng/mlのGM−CSF(R&D Systems)を含有する25mlのDC培地において5%CO雰囲気中37℃で7日間培養されて、単球を樹状細胞に分化させた。その培地は3日および6日目に変えられた。樹状細胞はトリプシンによって回収され、そして2ng/mlのIL−4(R&D Systems)および0.2〜2ng/mlのGM−CSF(R&D Systems)を含有するDC培地中に再懸濁された。Leukopackの約2.5x10PBMCから、約2x10樹状細胞が培養7日後に得られた。それらの単球由来の樹状細胞が、IL−4およびGM−CSFを含有する3mlのDC培養培地において1ウェル当たり3.3x10細胞において6穴プレートにプレートされた。プラスミドのポリエチレンイミン(PEI;Cat.No.408727,Sigma Aldrich,St.Louis,MO)調合物が培養物に添加され、そして5%CO雰囲気中37℃で培養されて、対照およびヒトIisiRNA発現プラスミドDNAにより樹状細胞をトランスフェクトした(表10)。トランスフェクション48時間後の細胞がIiに対する抗体により染色された。細胞は実施例11において示されるようにFACS−解析された。2種のヒトIisiRNA発現プラスミドが、ヒト樹状細胞においてIiタンパク質発現の有意な抑制を誘導した。
【0190】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】比蛍光強度を表す図である。MHCクラスII+/Ii−表現型は、アデノ/CIITAアデノウイルスベクターによるマウス結腸腺がん細胞(MC38)の感染と、それに続くIiアンチセンスオリゴヌクレオチドによる処理によって生成された。A)親のMC38細胞(無処理);B)アデノ/CIITAにより感染されたMC38細胞;C)アデノ/CIITAにより感染され、かつセンスの対照オリゴヌクレオチドにより処理されたMC38細胞;D)アデノ/CIITAにより感染され、かつミスマッチの対照オリゴヌクレオチドにより処理されたMC38細胞;E)アデノ/CIITAにより感染され、かつIiアンチセンスオリゴヌクレオチドにより処理されたMC38細胞。
【図2】MHCクラスII+/Ii−細胞で予防接種されたマウスにおけるMC−38結腸腺がんの抑制を表す図である。凡例:(円)MC−38細胞で免疫化されたマウス;(三角)アデノ/CIITAおよびミスマッチ対照オリゴヌクレオチドにより処理されたMC−38細胞で免疫化されたマウス;(菱形)アデノ/CIITAおよびセンスの対照オリゴヌクレオチドにより処理されたMC−38細胞で免疫化されたマウス;および(四角)アデノ/CIITAおよびIiアンチセンスのオリゴヌクレオチドにより処理されたMC−38細胞で免疫化されたマウス。
【図3】CIITAで安定的にトランスフェクトされ、そしてIiアンチセンスを用いてIi発現について抑制された致死的に放射線照射されたMC−38細胞を接種されたマウスにおける親腫瘍細胞の抑制を表す図である。マウスは、PBS(三角)、センスオリゴヌクレオチド(円)またはIiアンチセンス(四角)で処理された、CIITAトランスフェクトされたMC−38細胞を接種された(5マウス/群)。
【図4】MHCクラスII+/Ii−細胞で予防接種され、そしてGM−CSFで処理たマウスにおけるMC−38結腸腺がんの抑制を表す図である。例:(三角)親MC−38細胞で免疫化されたマウス;(円)MC−38細胞およびGM−CSFで免疫化されたマウス;(白い四角)CIITA、センスの対照オリゴヌクレオチドおよびGM−CSFにより処理されたMC−38細胞で免疫化されたマウス;および(菱形)CIITA、IiアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびGM−CSFにより処理されたMC−38細胞で免疫化されたマウス。
【図5】MC−38細胞における、MHCクラスII分子およびアデノ/IFN−γによるIi誘導を表す図である。MC−38はアデノ/IFN−γ(3MOI)により指示された時間感染され、次いで抗MHCクラスII分子またはIi抗体により染色され、そして流動細胞計測法によって分析された。
【図6】比蛍光強度を表す図である。MHCクラスII+/Ii−表現型は、アデノ/CIITAおよびアデノ/Ii−RGC(Ii−92,97)による細胞の同時感染によってRenca細胞において生成された。Renca細胞は、アデノ/CIITA対アデノ/Ii−RGCの種々の比により同時感染され、72時間放置インキュベートされ、そしてMHCクラスII分子またはIiタンパク質発現について染色された。Aでは、親のRenca細胞;Bではアデノ/CIITA感染細胞;Cでは、1:2比におけるアデノ/CIITA対アデノ/Ii−RGCによる同時感染;Dでは、1:4比におけるアデノ/CIITA対アデノ/Ii−RGCによる同時感染が示される。
【図7】MHCクラスII+/Ii−表現型が、アデノ/IFN−γ/Ii−RGC(mIi−92,97)による細胞の感染によって生成された継時的実験の表示である。Ii−であるがクラスII+の表現型は、アデノ/IFN−γ/Ii−RGC(mIi−92,97)後、120時間において生成された(左)が、一方、アデノ/IFN−γのみによる感染はMC−38細胞においてMHCクラスII+/Ii−表現型を産生しなかった(右)。
【図8】一過性にトランスフェクトされたRaji細胞(MHCクラスII+/Ii+)、ヒトBリンパ腫細胞系におけるIi−抑制の表示である。細胞は、1.25.times.10.sup.5細胞/ウエルにおいて一夜12穴プレート中にプレートされ、そしてIi発現を抑制するためにヒトIi−逆遺伝子構築物(hIi−RGC)によりトランスフェクトされた。Effectenトランスフェクション試薬(25.mu.l,QIAGEN)が,濃縮されたhIi−RGCプラスミドDNA(1ug)とともにインキュベートされて、培地と混合されたEffectenDNA複合体が生成され、これが細胞に直接添加された。48時間のインキュベーション培養後、細胞は、抗ヒトIi抗体、LN2(Pharmingen)およびMHCクラスII分子の染色のための抗HLA−DR抗体(Pharmingen)による免疫染色によってIiおよびMHCクラスII分子の発現について分析された。見られるように、Ii発現は、ポジティブ対照細胞に較べて、使用されたIi−RGC配列に応じて細胞の4%〜9%で抑制(左パネル)されたが、一方、MHCクラスII分子発現には影響がなかった(右パネル)。
【図9】アデノ/Ii−RGCベクターのインビボ投与による腫瘍増殖の抑制、およびMHCクラスII+/Ii−表現型の生成の表示である。BALB/cマウスは5.times.10.sup.5Renca腎腺がん細胞を皮下に注射された。腫瘍が、腫瘍細胞の注射後、約10日に50〜200mm.sup.3の大きさに達した時点で、この腫瘍は、DMRIE/cとともに連続4日の毎日に異なるベクター組み合わせ物を注射された。次いで、腫瘍は大きさについて各2または3日毎に測定された。マウスは腫瘍の大きさが1000mm.sup.3に達する時点で終末とされた。左パネルのデータは、4頭のマウスのデータを表し、これらのマウスの腫瘍は、2mu.gIL−2、3mu.gアデノ/BN/CIITAおよび18mu.gアデノ/BN/Ii−RGC(−92、97)を1日目に、続いて2〜4日間、2mu.gIL−2、18mu.gアデノ/BN/Ii−RGC(−92、97)および3μg空の(empty)プラスミド(アデノ/BN)(CIITAなし)を注射された。IL−2とともにCIITAおよびIi−RGC含有ベクターで処置されたマウスは、腫瘍増殖において劇的な退縮を示したが、一方、対照ベクターは進行的であり、そしてマウスの終末が必要であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ii発現を抑制するために有効なsiRNAを含んでなる組成物。
【請求項2】
siRNAが、
a)Iiのセンス配列、長さ10〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)におけるセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
siRNAが、
a)Iiのセンス配列、長さ19〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)におけるセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項2の組成物。
【請求項4】
siRNAが、
a)Iiの21〜23ヌクレオチドのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)における配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項3の組成物。
【請求項5】
Ii発現を抑制するために有効なsiRNAをコードしているDNA配列を含んでなる組成物。
【請求項6】
DNA配列がプラスミドベクター中に存在する、請求項5の組成物。
【請求項7】
DNA配列がウイルスベクター中に存在する、請求項5の組成物。
【請求項8】
ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、インフルエンザウイルスおよびレトロウイルスからなる群から選ばれる、請求項7の組成物。
【請求項9】
siRNAが、単一分子中に、
a)長さ10〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項1または5の組成物。
【請求項10】
siRNAが、単一分子中に、
a)長さ19〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項9の組成物。
【請求項11】
siRNAが、単一分子中に、
a)Iiの21〜23ヌクレオチドのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項10の組成物。
【請求項12】
siRNAが、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17および配列番号:18からなる群から選ばれる配列のRNAを含む、請求項1または5の組成物。
【請求項13】
a)Iiのセンス配列を含んでなる第1のRNA配列をコードしている第1のDNA配列;および
b)段階a)におけるIiのセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2のRNA配列をコードしている第2のDNA配列;
を含んでなる組成物であって、
第1および第2のRNA配列が、ハイブリダイズされた場合、Ii発現を抑制することができるRNA誘導サイレンシング複合体を形成することができるsiRNA二重らせんを形成する、組成物。
【請求項14】
注射可能な用量単位形態物中に包み込まれる請求項1、5または13の組成物。
【請求項15】
Ii発現を抑制するために有効なsiRNAを含有する哺乳動物細胞。
【請求項16】
siRNAが、
a)Iiのセンス配列、長さ10〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)におけるセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項15の哺乳動物細胞。
【請求項17】
siRNAが、
a)Iiのセンス配列、長さ19〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)におけるセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項16の哺乳動物細胞。
【請求項18】
siRNAが、
a)Iiの21〜23ヌクレオチドのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)における配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項17の哺乳動物細胞。
【請求項19】
Ii発現を抑制するために有効なsiRNAを発現することができる1または複数の外因性配列を含有する哺乳動物細胞。
【請求項20】
外因性配列がプラスミドベクター中に存在する、請求項19の哺乳動物細胞。
【請求項21】
外因性配列がウイルスベクター中に存在する、請求項19の哺乳動物細胞。
【請求項22】
ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、インフルエンザウイルスおよびレトロウイルスからなる群から選ばれる、請求項21の哺乳動物細胞。
【請求項23】
いずれかの操作前に個体において存在する場合MHCクラスII分子−ネガティブである、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項24】
siRNAが、単一分子中に、
a)長さ10〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項25】
siRNAが、単一分子中に、
a)長さ19〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項24の哺乳動物細胞。
【請求項26】
siRNAが、単一分子中に、
a)Iiの21〜23ヌクレオチドのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項25の哺乳動物細胞。
【請求項27】
センス配列が翻訳開始部位を含有するIiの配列を含む、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項28】
センス配列がヒトIimRNAの最初の400nt内にIi配列の一部を含む、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項29】
siRNAが、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17および配列番号:18からなる群から選ばれる配列のRNAを含む、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項30】
がん細胞か、あるいは感染性作用物の存在がなかったならば細胞中には存在しないであろうタンパク質の合成を指図する感染性作用物を含有する細胞か、いずれかである、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項31】
MHCクラスII分子−ポジティブ細胞である、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項32】
MHCクラスII分子−ネガティブであり、そしてタンパク質をコードしている発現可能な核酸配列を含んでなる組み換えベクターであって、これのトランスフェクションがMHCクラスII分子−ネガティブ細胞において細胞の表面にMHCクラスII分子の誘導をもたらすベクターを含有する、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項33】
発現可能な核酸配列が、ウイルス性または非ウイルス性発現ベクターによって担持される、請求項32の哺乳動物細胞。
【請求項34】
ウイルス性発現ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、インフルエンザウイルスおよびレトロウイルスからなる群から選ばれる、請求項33の哺乳動物細胞。
【請求項35】
タンパク質が、MHCクラスIIトランスアクチベーターおよびγインターフェロンからなる群から選ばれる、請求項32の哺乳動物細胞。
【請求項36】
悪性細胞である、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項37】
ウイルス感染細胞である、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項38】
天然に存在する抗原提示細胞である、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項39】
樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球およびTリンパ球からなる群から選ばれる、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項40】
関心のある抗原をさらに含んでなる、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項41】
関心のある抗原が、関心のある抗原をコードしている発現可能な核酸配列から細胞内で合成される、請求項40の哺乳動物細胞。
【請求項42】
細胞においてIiの発現を抑制する方法であって、siRNAが直接または間接的に細胞中に導入され、さらに、siRNAがRNA誘導サイレンシング複合体を形成し、それによって細胞においてIiの発現を抑制することことができるsiRNAをIiを発現する細胞中に導入することを含んでなる方法。
【請求項43】
siRNAが細胞中に間接的に導入され、その結果、siRNAがsiRNAをコードしている発現可能な核酸配列から細胞内で転写される、請求項42の方法。
【請求項44】
発現可能な核酸配列が、
a)Iiのセンス配列を含んでなる第1のRNA配列をコードしている第1の発現可能なDNA配列;および
b)段階a)におけるIiのセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2のRNA配列をコードしている第2の発現可能なDNA配列;
を含む方法であって、
siRNA二重らせんが、第2のRNA配列に対する第1のRNA配列のハイブリダイゼーションにより形成される、請求項43の方法。
【請求項45】
第1および第2の発現可能なDNAの少なくとも1つが精製されたPCR産物である、請求項44の方法。
【請求項46】
第1および第2の発現可能なDNAの少なくとも1つがベクター中に存在する、請求項44の方法。
【請求項47】
方法が、
a)MHCクラスII分子−ポジティブ細胞であるか、またはMHCクラスII分子を発現するように誘導されるかいずれかであり、かつ関心のある抗原エピトープを発現し、そしてさらにそこで細胞がIiを発現する細胞を提供し;そして
b)siRNAがいずれか直接または間接的に細胞に導入され、そしてさらに、siRNAがRNA誘導サイレンシング複合体を形成し、それによって細胞においてIiの発現を抑制することができるsiRNAを、段階a)の細胞中に導入すること;
を含んでなる、Iiタンパク質発現が抑制されているMHCクラスII分子−ポジティブ細胞の表面に、関心のある抗原エピトープを提示する方法。
【請求項48】
siRNAが細胞中に間接的に導入され、その結果、siRNAがsiRNAをコードしている発現可能な核酸配列から細胞内で転写される、請求項47の方法。
【請求項49】
発現可能な核酸配列が、
a)Iiのセンス配列を含んでなる第1のRNA配列をコードしている第1の発現可能な
DNA配列;および
b)段階a)におけるIiのセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2のRNA配列をコードしている第2の発現可能なDNA配列;
を含む方法であって、
siRNA二重らせんが、第2のRNA配列に対する第1のRNA配列のハイブリダイゼーションにより形成される、請求項48の方法。
【請求項50】
第1および第2の発現可能なDNAの少なくとも1つが精製されたPCR産物である、請求項49の方法。
【請求項51】
第1および第2の発現可能なDNAの少なくとも1つがベクター中に存在する、請求項49の方法。
【請求項52】
関心のある抗原エピトープががん細胞抗原のものである、請求項47の方法。
【請求項53】
関心のある抗原エピトープがウイルス抗原のものである、請求項47の方法。
【請求項54】
MHCクラスII分子発現が、段階a)の細胞中にタンパク質をコードしている発現可能な核酸配列を含んでなる組み換えベクターを導入することによって誘導され、これの発現が、MHCクラスII分子−ネガティブ細胞において、細胞の表面にMHCクラスII分子の誘導をもたらす、請求項47の方法。
【請求項55】
タンパク質をコードしている発現可能な核酸配列が、ウイルス性または非ウイルス性発現ベクターによって担持される、請求項54の方法。
【請求項56】
タンパク質が、MHCクラスIIトランスアクチベーターおよびγインターフェロンからなる群から選ばれる、請求項54の方法。
【請求項57】
段階a)の細胞が、がん細胞か、あるいは細胞中には存在していないが感染性作用物の存在に関するタンパク質の合成を指図する感染性作用物を含有する細胞か、いずれかである、請求項47の方法。
【請求項58】
関心のある抗原エピトープががん細胞抗原のものである、請求項47の方法。
【請求項59】
関心のある抗原エピトープがウイルス抗原のものである、請求項47の方法。
【請求項60】
発現可能なDNAの少なくとも1つがプラスミドベクター中に存在する、請求項51の方法。
【請求項61】
発現可能なDNAの少なくとも1つがウイルスベクター中に存在する、請求項51の方法。
【請求項62】
ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、フィロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、インフルエンザウイルスおよびレトロウイルスからなる群から選ばれる、請求項61の方法。
【請求項63】
方法が、
a)関心のある抗原エピトープを発現するMHCクラスII分子−ポジティブ細胞か、または関心のある抗原エピトープを発現し、かつその細胞表面にMHCクラスII分子を発現するように誘導されるMHCクラスII分子−ネガティブ細胞のいずれかを提供し;
b)siRNAが、いずれか直接または間接的に細胞に導入され、そしてさらに、siRNAがRNA誘導サイレンシング複合体を形成し、それによってIiの発現を抑制することができるsiRNAを、段階a)の細胞中に導入し;そして
c)段階b)の細胞によるか、または段階b)の細胞由来の関心のある抗原エピトープと複合されたMHCクラスII分子により哺乳動物を免疫化すること;
を含んでなる、免疫応答が、Iiタンパク質の発現が抑制されているMHCクラスII分子−ポジティブ細胞の表面における関心のある抗原エピトープに対向される、哺乳動物における免疫応答を刺激する方法。
【請求項64】
siRNAが細胞中に間接的に導入され、その結果、siRNAがsiRNAをコードしている発現可能な核酸配列から細胞内で転写される、請求項63の方法。
【請求項65】
発現可能な核酸配列が、
a)Iiのセンス配列を含んでなる第1のRNA配列をコードしている第1の発現可能なDNA配列;および
b)段階a)におけるIiのセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2のRNA配列をコードしている第2の発現可能なDNA配列;
を含む方法であって、
siRNA二重らせんが、第2のRNA配列に対する第1のRNA配列のハイブリダイゼーションにより形成される、請求項64の方法。
【請求項66】
第1および第2の発現可能なDNAの少なくとも1つが精製されたPCR産物である、請求項65の方法。
【請求項67】
第1および第2の発現可能なDNAの少なくとも1つがベクター中に存在する、請求項65の方法。
【請求項68】
MHCクラスII分子発現が、段階a)の細胞中にタンパク質をコードしている発現可能な核酸配列を含んでなる組み換えベクターを導入することによって誘導され、これの発現が、MHCクラスII分子−ネガティブ細胞において、細胞の表面にMHCクラスII分子の誘導をもたらす、請求項63の方法。
【請求項69】
タンパク質をコードしている発現可能な核酸配列が、ウイルス性または非ウイルス性発現ベクターによって担持される、請求項68の方法。
【請求項70】
ウイルス性発現ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、インフルエンザウイルスおよびレトロウイルスからなる群から選ばれる、請求項69の方法。
【請求項71】
タンパク質が、MHCクラスIIトランスアクチベーターおよびγインターフェロンからなる群から選ばれる、請求項68の方法。
【請求項72】
段階a)の細胞が、がん細胞か、あるいは感染性作用物の存在がなかったならば細胞中には存在しないであろうタンパク質の合成を指図する感染性作用物を含有する細胞か、いずれかである、請求項63の方法。
【請求項73】
関心のある抗原エピトープががん細胞抗原のものである、請求項63の方法。
【請求項74】
関心のある抗原エピトープがウイルス抗原のものである、請求項63の方法。
【請求項75】
方法が、
a)抗原提示細胞を含む、個体の末梢血液単核細胞を培養物において提供し;
b)siRNAが、いずれか直接または間接的に細胞に導入され、そしてさらに、siRNAがRNA誘導サイレンシング複合体を形成し、それによってIiの発現を抑制することができるsiRNAを、段階a)の培養物の抗原提示細胞中に導入し;そして
c)発現のために適当な条件下の培養物において、細胞中に同定(identifying)抗原をコードしている発現可能な核酸配列を、段階a)の抗原提示細胞中に導入すること;
を含んでなる、細胞のタイプが同定抗原の発現を特徴とする、免疫学的応答のための個体のあるタイプの細胞を標的化する方法。
【請求項76】
siRNAが細胞中に間接的に導入され、その結果、siRNAがsiRNAをコードしている発現可能な核酸配列から細胞内で転写される、請求項75の方法。
【請求項77】
発現可能な核酸配列が、
a)Iiのセンス配列を含んでなる第1のRNA配列をコードしている第1の発現可能なDNA配列;および
b)段階a)におけるIiのセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2のRNA配列をコードしている第2の発現可能なDNA配列;
を含む方法であって、
siRNA二重らせんが、第2のRNA配列に対する第1のRNA配列のハイブリダイゼーションにより形成される、請求項76の方法。
【請求項78】
第1および第2の発現可能なDNAの少なくとも1つがPCR産物である、請求項77の方法。
【請求項79】
第1および第2の発現可能なDNAの少なくとも1つがベクター中に存在する、請求項77の方法。
【請求項80】
抗原提示細胞が、樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球およびTリンパ球からなる群から選ばれる、請求項75の方法。
【請求項81】
段階c)の細胞が、治療効果のために個体中に導入される、請求項75の方法。
【請求項82】
段階a)の末梢血液単核細胞が分画されて、抗原提示細胞について強化される、請求項75の方法。
【請求項83】
段階c)の抗原提示細胞を含有する培養物において細胞の分画されたサブ集団が得られる、請求項75の方法。
【請求項84】
同定抗原ががん細胞抗原である、請求項75の方法。
【請求項85】
同定抗原がウイルス抗原である、請求項75の方法。
【請求項86】
個体中に段階C)の細胞を再導入することをさらに含んでなる、請求項75の方法。
【請求項87】
Iiの発現を抑制することが、関心のある抗原エピトープによる細胞の小胞体におけるMHCクラスII分子のチャージング(charging)を促進する、請求項42の方法。
【請求項88】
siRNAが、エレクトロポレーション、脂質媒介移送、リポソーム、低張性で導入される飲作用、およびストレプトリシンO媒介の細胞浸透化からなる群から選ばれる方法によって細胞中に導入される、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項89】
siRNAをコードしている発現可能な核酸配列が、カチオン性デンドリマー(dendrimer)、脂質、リポソーム、金粒子、ポリラクチドコグリコリド粒子、およびポリアルキルオキシド・コポリマーからなる群から選ばれるメディエーターを用いる方法によって細胞中に導入される、請求項43、48、64または76のいずれかの方法。
【請求項90】
第1の発現可能なDNA配列および第2の発現可能なDNA配列が哺乳動物細胞中にコ・トランスフェクトされる、請求項44、49、65または77のいずれかの方法。
【請求項91】
siRNAが、単一分子中に、
a)長さ10〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項92】
siRNAが、単一分子中に、
a)長さ19〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項91の方法。
【請求項93】
siRNAが、単一分子中に、
a)Iiの21〜23ヌクレオチドのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項92の方法。
【請求項94】
siRNAが、
a)Iiのセンス配列、長さ10〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)におけるセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項95】
siRNAが、
a)Iiのセンス配列、長さ19〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)におけるセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項94の方法。
【請求項96】
siRNAが、
a)Iiの21〜23ヌクレオチドのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)における配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項95の方法。
【請求項97】
siRNAが翻訳開始部位を含有するIiの配列を含む、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項98】
siRNAがヒトIimRNAの最初の400nt内にIi配列の一部を含む、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項99】
siRNAが少なくとも1つの一本鎖の3プライムオーバーハングを含む、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項100】
siRNAが少なくとも1つの一本鎖の5プライムオーバーハングを含む、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項101】
siRNAが、ヌクレアーゼ消化を防ぐために化学的に改変される、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項102】
siRNAが、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17および配列番号:18からなる群から選ばれる配列のRNAを含む、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項103】
Iiの抑制が少なくとも15%である、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項104】
Iiの抑制が少なくとも30%である、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項105】
Iiの抑制が少なくとも40%である、請求項42、47、63または75のいずれかの方法。
【請求項106】
siRNAをコードしている配列が、RNAポリメラーゼIIIプロモーターに作動可能に連結される、請求項43、48、64または76のいずれかの方法。
【請求項107】
RNAポリメラーゼプロモーターがU6またはSV40プロモーターである、請求項106の方法。
【請求項108】
センス配列が翻訳開始部位を含有するIiの配列を含む、請求項1、5または13のいずれかの組成物。
【請求項109】
センス配列がヒトIimRNAの最初の400nt内にIi配列の一部を含む、請求項1、5または13のいずれかの組成物。
【請求項110】
ポックスウイルスがワクシニアである、請求項62または70のいずれかの方法。
【請求項111】
ポックスウイルスがワクシニアである、請求項8の組成物。
【請求項112】
ポックスウイルスがワクシニアである、請求項22または34のいずれかの哺乳動物細胞。
【請求項113】
方法が、
a)MHCクラスII分子−ポジティブ細胞であるか、またはその細胞表面にMHCクラスII分子を発現するように誘導されるかいずれかであり、そしてさらにそこで細胞がIiを発現する細胞を提供し;そして
b)関心のある抗原エピトープおよびIiのインヒビターを段階a)の細胞中に導入する
こと;
を含んでなる、Iiタンパク質発現が抑制されているMHCクラスII分子−ポジティブ細胞の表面に、関心のある抗原エピトープを提示する方法。
【請求項114】
Iiのインヒビターが10〜50ヌクレオチド塩基のコポリマーであり、このコポリマーが、生理学的条件下で哺乳動物Iiタンパク質をコードしているRNA分子の標的領域に特異的にハイブリダイズし、それよってIi発現を抑制する能力を特徴とする、請求項113の方法。
【請求項115】
Iiのインヒビターが、エレクトロポレーション、脂質媒介移送、リポソーム、およびストレプトリシンO媒介の細胞浸透化からなる群から選ばれる方法によって導入される、請求項113の方法。
【請求項116】
Iiのインヒビターが、発現可能な核酸配列から細胞内で生産される、請求項113の方法。
【請求項117】
発現可能な核酸配列が、ヒトIiタンパク質をコードしているmRNA分子に相補的であるRNA分子をコードしているDNA分子を含む、方法であって、RNA分子がmRNA分子にハイブリダイズし、それによってmRNA分子の翻訳を阻害する能力を有する、請求項116の方法。
【請求項118】
RNA分子が、翻訳開始部位およびコーディング配列の約425までのヌクレオチドを含んでなるmRNA分子の一部に相補的である、請求項117の方法。
【請求項119】
発現可能な核酸配列がウイルス性または非ウイルス性発現ベクターによって担持される、請求項116の方法。
【請求項120】
ウイルス性発現ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、フィロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、インフルエンザウイルスおよびレトロウイルスベクターからなる群から選ばれる、請求項119の方法。
【請求項121】
ポックスウイルスがワクシニアである、請求項120の方法。
【請求項122】
ウイルス性または非ウイルス性発現ベクターが、関心のある抗原エピトープをまた発現する、請求項119の方法。
【請求項123】
関心のある抗原エピトープがウイルス抗原のものである、請求項113の方法。
【請求項124】
IiのインヒビターがsiRNAであり、siRNAが、RNA誘導サイレンシング複合体を形成し、それによって細胞においてIiの発現を抑制することができる、請求項113の方法。
【請求項125】
siRNAが細胞において発現可能な核酸配列から生産され、そしてさらに、発現可能な核酸配列が、
a)Iiのセンス配列を含んでなる第1のRNA配列をコードしている第1の発現可能なDNA配列;および
b)段階a)におけるIiのセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2のRNA配列をコードしている第2の発現可能なDNA配列;
を含む方法であって、
siRNA二重らせんが、第2のRNA配列に対する第1のRNA配列のハイブリダイゼ
ーションにより形成される、請求項124の方法。
【請求項126】
第1および第2の発現可能なDNAの少なくとも1つがベクター中に存在する、請求項125の方法。
【請求項127】
発現可能な核酸配列が、カチオン性デンドリマー(dendrimer)、脂質、リポソーム、金粒子、ポリラクチドコグリコリド粒子、およびポリアルキルオキシド・コポリマーからなる群から選ばれるメディエーターを用いる方法によって細胞中に導入される、請求項116の方法。
【請求項128】
第1の発現可能なDNA配列および第2の発現可能なDNA配列が哺乳動物細胞中にコ・トランスフェクトされる、請求項125の方法。
【請求項129】
siRNAが、単一分子中に、
a)長さ10〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項124の方法。
【請求項130】
siRNAが、単一分子中に、
a)長さ19〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項129の方法。
【請求項131】
siRNAが、単一分子中に、
a)Iiの21〜23ヌクレオチドのセンス配列;
b)a)における配列の逆相補配列;および
c)センスと逆相補配列との間に二重らせんの形成を可能にする介在配列;
を含む、請求項130の方法。
【請求項132】
siRNAが、
a)Iiのセンス配列、長さ10〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)におけるセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項124の方法。
【請求項133】
siRNAが、
a)Iiのセンス配列、長さ19〜25ヌクレオチドのIiのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)におけるセンス配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項132の方法。
【請求項134】
siRNAが、
a)Iiの21〜23ヌクレオチドのセンス配列を含んでなる第1の鎖;および
b)a)における配列の逆相補配列を含んでなる第2の鎖;
を含んでなるRNA二重らせんを含む、請求項133の方法。
【請求項135】
siRNAが翻訳開始部位を含有するIiの配列を含む、請求項124の方法。
【請求項136】
siRNAがヒトIimRNAの最初の400nt内にIi配列の一部を含む、請求項124の方法。
【請求項137】
siRNAが少なくとも1つの一本鎖の3プライムオーバーハングを含む、請求項124の方法。
【請求項138】
siRNAが少なくとも1つの一本鎖の5プライムオーバーハングを含む、請求項124の方法。
【請求項139】
siRNAが、ヌクレアーゼ消化を防ぐために化学的に改変される、請求項124の方法。
【請求項140】
siRNAが、配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17および配列番号:18からなる群から選ばれる配列のRNAを含む、請求項124の方法。
【請求項141】
Iiタンパク質発現が少なくとも15%抑制される、請求項113の方法。
【請求項142】
Iiタンパク質発現が少なくとも30%抑制される、請求項113の方法。
【請求項143】
Iiタンパク質発現が少なくとも40%抑制される、請求項113の方法。
【請求項144】
siRNAが発現可能な核酸配列から生産され、そしてさらに、siRNAをコードしている配列が、RNAポリメラーゼIIIプロモーターに作動可能に連結される、請求項124の方法。
【請求項145】
RNAポリメラーゼプロモーターがU6またはSV40プロモーターである、請求項144の方法。
【請求項146】
MHCクラスII分子発現が、タンパク質をコードしている発現可能な核酸配列を含んでなる組み換えベクターによって誘導され、これの発現が、MHCクラスII分子−ネガティブ細胞において、細胞の表面にMHCクラスII分子の誘導をもたらす、請求項113の方法。
【請求項147】
タンパク質が、MHCクラスIIトランスアクチベーターおよびγインターフェロンからなる群から選ばれる、請求項146の方法。
【請求項148】
タンパク質をコードしている発現可能な核酸配列が、ウイルス性発現ベクターによって担持される、請求項146の方法。
【請求項149】
ウイルス性発現ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、フィロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルス、インフルエンザウイルスおよびレトロウイルスベクターからなる群から選ばれる、請求項148の方法。
【請求項150】
ウイルス性発現ベクターが関心のあるウイルス抗原を発現する、請求項148の方法。
【請求項151】
ポックスウイルスがワクシニアである、請求項149の方法。
【請求項152】
siRNAが、配列番号:21、23、25および27からなる群から選ばれる第1の鎖ならびに配列番号:22、24、26および28からなる群から選ばれる第2の鎖、そ
れぞれからなる二重らせんを含む、請求項1または5の組成物。
【請求項153】
siRNAが、配列番号:21、23、25および27からなる群から選ばれる第1の鎖ならびに配列番号:22、24、26および28からなる群から選ばれる第2の鎖、それぞれからなる二重らせんを含む、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項154】
siRNAが、配列番号:21、23、25および27からなる群から選ばれる第1の鎖ならびに配列番号:22、24、26および28からなる群から選ばれる第2の鎖、それぞれからなる二重らせんを含む、請求項42、47、63、75または124のいずれかの方法。
【請求項155】
siRNAが少なくとも1つの一本鎖の3プライムオーバーハングを含む、請求項1または5の組成物。
【請求項156】
siRNAが少なくとも1つの一本鎖の5プライムオーバーハングを含む、請求項1または5の組成物。
【請求項157】
siRNAが、配列番号:29〜40からなる群から選ばれるIiのセンス配列を含む、請求項1または5の組成物。
【請求項158】
siRNAが、配列番号:29〜40からなる群から選ばれるIiのセンス配列を含む、請求項15または19の哺乳動物細胞。
【請求項159】
siRNAが、配列番号:29〜40からなる群から選ばれるIiのセンス配列を含む、請求項42、47、63、75または124のいずれかの方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2008−521410(P2008−521410A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543604(P2007−543604)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/043299
【国際公開番号】WO2006/073625
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(504386565)アンテイジエン・エクスプレス・インコーポレーテツド (3)
【Fターム(参考)】