喫煙未経験者におけるマイクロRNA、ならびに関連する材料および方法
本発明は、喫煙未経験者における肺癌の診断、予後および治療のための新規方法および組成物を提供する。本発明はまた、抗肺癌剤を同定する方法も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
[0001]本出願は、その開示が本明細書に援用される、2009年2月26日出願の米国仮出願第61/155,709号の優先権を請求する。
【0002】
連邦が支援する研究に関する言及
[0002]本発明は、壁内研究プログラム、ならびに米国衛生研究所、米国癌研究所、および癌研究センターの元で政府の援助を受けて行われた。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
配列表
[0003]本出願は、EFSウェブを通じて提出されており、そしてその全体が本明細書に援用される配列表を含有する。2010年2月23日に作製されたASCIIコピーは、604 50753 SEQ LIST 06008−2.txtと名付けられており、そしてサイズは758バイトである。
【背景技術】
【0004】
[0004]肺癌は、癌による死亡の主因であり、そして米国および世界の両方において、喫煙関連死亡の最も一般的な原因である。しかし、すべての肺癌症例のおよそ10〜25%は、喫煙に起因しない。喫煙未経験者における肺癌に特に関心を向ける最近の研究によって、これらが喫煙者におけるものとは異なる特性を有することが示唆された: p53およびK−ras突然変異のGからTへのトランスバージョンは、喫煙者由来の肺腺癌におけるより、喫煙未経験者由来のものでより頻度が減っており;そして上皮増殖因子受容体(EFGR)遺伝子の突然変異は、喫煙未経験者の症例でより頻繁に観察される。
【0005】
[0005]ゲフィチニブおよびエルロチニブを含むEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR−TKI)は、現在、臨床的に使用されており、そしてEGFR突然変異体症例において、優先的に有効である。しかし、30%ものEGFR突然変異体症例および90%ものEGFR野生型症例は、EGFR−TKIに療法的反応を示さなかった。
【0006】
[0006]マイクロRNA[交換可能に:「miRNA」、「miR(単数または複数)」、「miR(単数または複数)」の遺伝子産物(単数または複数)]は、癌において欠失するかまたは増幅される染色体領域に頻繁に位置する遺伝子によってコードされる、約18〜25ヌクレオチドの小分子ノンコーディングRNA分子であり、miRがヒト腫瘍形成に関与する新規クラスの遺伝子であることが示唆される。miRの発現レベルは、肺癌を含む多様なタイプのヒト癌において改変される。最近、miRは、白血病、肺癌および結腸癌における診断および予後マーカーとして示されてきている。本発明者らは、本明細書において、miRがヒト癌における療法的ターゲットになりうると考えている。
【0007】
[0007]本発明者らは、以前、104の肺癌のmiR発現プロフィールを分析してきており、このうち99は喫煙者由来であり、そして高miR−155および低let−7aは劣った生存と相関することを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]要約すると、新規療法ターゲットおよびEGFR−TKI療法を改善する方法の同定は、癌、特に肺癌のより優れた治療に対して非常に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本発明は、少なくとも部分的に、喫煙未経験者由来の肺癌におけるmiRの広範囲の発現プロフィールの発見に基づく。喫煙未経験者対喫煙者症例において、およびEGFR野生型対EGFR突然変異体症例において、miR発現プロフィールを比較すると、喫煙未経験者由来の肺癌のユニークな病因が示され、そしてmiR発現のEGFRが仲介する制御が明らかになる。
【0010】
[0010]本明細書に提示するin vivo機能分析はまた、miRをコードする特定の遺伝子またはその遺伝子産物の調節が、単独で、他のこうした調節因子と組み合わせて、他の癌治療と組み合わせてのいずれかで療法的であり、そしてEGFR−TKI治療と組み合わせて療法的でありうることも示す。
【0011】
[0011]広い態様において、本発明は、少なくとも1つのアンチセンスmiRおよび少なくとも1つのさらなる組成物を含む、物質の組成物である組成物であって、アンチセンスmiRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、上皮増殖因子受容体喫煙未経験者突然変異体癌細胞において示差的に発現されるmiRに対してアンチセンスであり、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である、前記組成物を提供する。特定の態様において、少なくとも1つのさらなる組成物は:化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ(panitumab);ザルツママブ(zalutumamab);ニモツザマブ(nimotuzamab);マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択されうる。
【0012】
[0012]また、特定の態様において、こうした組成物は、アンチセンスmiRが、群:miR−21;miR−210;miR−129より選択されうるmiRに対してアンチセンスであるmiRより選択される。やはり特定の態様において、こうした組成物には、少なくとも1つのアンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスであるもの;癌を治療するのに有用な少なくとも1つのさらなる組成物が上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるもの;または好ましくは、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤がAG1478であるものが含まれてもよい。
【0013】
[0013]本発明がやはり提供するのは、少なくとも1つのアンチセンスmiRおよび少なくとも1つのさらなる組成物を含む物質の組成物であって、miRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、上皮増殖因子受容体突然変異体喫煙未経験者癌細胞において上方制御され、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である、前記組成物である。特定の態様において、miRは、群:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択される。
【0014】
[0014]やはり提供するのは、少なくとも1つのアンチセンスmiRおよび少なくとも1つの組成物を含む物質の組成物であって、アンチセンスmiRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、EGFR突然変異体喫煙未経験者癌細胞において上方制御されるmiRに対してアンチセンスであり、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である、前記組成物である。特定の態様において、これらの組成物は、アンチセンスmiRが、群:miR−21;miR−210;およびmiR−129より選択されるmiRに対してアンチセンスであるmiRより選択されうるものである。
【0015】
[0015]他の広い態様において、試験試料において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞を同定する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、試験試料が上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞を含有すると同定される、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法には、miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択されるものが含まれる。
【0016】
[0016]他の広い態様において、喫煙未経験被験体が肺癌を有するか、または発症するリスクがあるかどうかを決定する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、該被験体が肺癌を有するか、または発症するリスクがあると診断される、前記方法を提供する。特定の態様において、こうした方法は、試験試料および対照における上皮増殖因子受容体突然変異体状態を比較する工程をさらに含んでもよい。また、特定の態様において、これらの方法には、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を用いて、上皮増殖因子受容体突然変異体状態を決定するものが含まれてもよい。やはり好ましいのは、miRが、群:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択される、記載するような方法である。
【0017】
[0017]他の広い態様において、喫煙未経験癌患者における予後を提供する方法であって:試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、劣った予後が示される、前記方法を提供する。特定の態様において、こうした方法には、miRが、群:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択されるものが含まれてもよい。
【0018】
[0018]別の広い態様において、患者において上皮増殖因子受容体突然変異体癌を診断する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、該被験体が上皮増殖因子受容体突然変異体癌を有すると診断される、前記方法を提供する。特定の態様において、方法には、miRが、群:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択されるものが含まれてもよい。
【0019】
[0019]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌患者における予後を提供する方法であって:試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、劣った予後が示される、前記方法を提供する。特定の態様において、こうした方法には、miRが、群:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択されるものが含まれてもよい。
【0020】
[0020]別の広い態様において、癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の本明細書の組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。特定の態様において、該方法には、治療する癌が:神経芽細胞腫;肺癌;胆管癌;非小細胞肺癌;肝細胞癌;リンパ腫;鼻咽頭癌;卵巣癌;頭頸部扁平上皮癌;子宮頸部扁平上皮癌;胃癌;結腸癌;子宮頸癌;胆嚢癌;前立腺癌;乳癌;精巣胚細胞腫瘍;大細胞型リンパ腫;濾胞性リンパ腫;結腸直腸癌;悪性胸膜中皮腫;神経膠腫;甲状腺癌;基底細胞癌;T細胞リンパ腫;t(8;17)−前リンパ球性白血病;骨髄異形成症候群;膵臓癌;t(5;14)(q35.1;q32.2)白血病;悪性線維性組織球腫;胃腸間質腫瘍;および肝芽腫を含む群より選択されるものが含まれる。
【0021】
[0021]別の広い態様において、癌を治療する必要がある喫煙未経験患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の、miR−21に対してアンチセンスである組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法には、治療する癌が肺癌であるものが含まれてもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、アンチセンスmiR−21および上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含んでもよく;そして特定の態様において、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤はAG1478である。1つの特定の態様において、これらの方法には、治療する癌が腺癌であるものが含まれる。
【0022】
[0022]別の広い態様において、癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のアンチセンスmiRを投与する工程を含み、アンチセンスmiRが、群:miR−21;miR−210;miR−129より選択されるmiRに対してアンチセンスである、前記方法を提供する。
【0023】
[0023]別の広い態様において、癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のアンチセンスmiRを投与する工程を含み、アンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスである、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法には、治療する癌が:神経芽細胞腫および肺癌を含む群より選択されるものが含まれる。やはり特定の態様において、これらの方法には、治療する癌が腺癌であるものが含まれてもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、アジュバントを投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含んでもよい。
【0024】
[0024]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の本明細書の組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。やはり提供するのは、薬学的に有効な量のアンチセンスmiR−21を投与する工程を含む、上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法である。
【0025】
[0025]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR発現阻害剤を投与する工程を含み、miRが群:miR−21;miR−210;およびmiR−129より選択される、前記方法を提供する。やはり提供するのは、上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR−21発現阻害剤を投与する工程を含む、前記方法である。特定の態様において、これらの方法は:化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含んでもよい。
【0026】
[0026]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR発現促進組成物を投与する工程を含み、miRが、群:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択される、前記方法を提供する。
【0027】
[0027]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量の本明細書の組成物を導入する工程を含む、前記方法を提供する。
【0028】
[0028]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、上皮増殖因子受容体チロシン(EGFR)キナーゼ阻害剤と組み合わせて、アポトーシスに有効な量のアンチセンスmiR−21を導入する工程を含む、前記方法を提供する。
【0029】
[0029]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のアンチセンスmiRを導入する工程を含み、アンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスである、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法には、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞が腺癌細胞であるものが含まれてもよい。やはり特定の態様において、これらの方法には、腺癌細胞が、群:H3255細胞;H1975細胞;およびH1650細胞より選択されるものが含まれてもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、アジュバントを導入する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、群:化学療法薬剤;幹細胞;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブより選択される組成物を導入する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含んでもよい。
【0030】
[0030]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR発現阻害剤を導入する工程を含み、miRが:miR−21;miR−210;およびmiR−129を含む群より選択される、前記方法を提供する。
【0031】
[0031]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR−21発現阻害剤を導入する工程を含む、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法は:化学療法薬剤;幹細胞;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含んでもよい。
【0032】
[0032]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR発現促進組成物を導入する工程を含み、miRが、群:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択される、前記方法を提供する。
【0033】
[0033]別の広い態様において、薬学的に有用な組成物を同定するための方法であって:i)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物にアンチセンスmiRを導入し、ここでアンチセンスmiRは:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aの群より選択されるmiRに対してアンチセンスであり;ii)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物に試験組成物を導入し;そしてiii)アポトーシスを誘導する試験組成物を、薬学的に有用な組成物と同定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0034】
[0034]別の広い態様において、薬学的に有用な組成物を同定するための方法であって:i)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物にアンチセンスmiRを導入し、ここでアンチセンスmiRは:miR−21に対してアンチセンスであり;ii)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物に試験組成物を導入し;そしてiii)アポトーシスを誘導する試験組成物を、薬学的に有用な組成物と同定する工程を含む、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法には、癌細胞が肺癌細胞であるものが含まれてもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、リン酸化上皮増殖因子受容体レベルを同定する工程をさらに含んでもよい。
【0035】
[0035]別の広い態様において、肺癌と診断された患者の臨床転帰を予測する方法であって、患者から得た癌細胞試料においてmiR−21発現レベルを検出する工程を含み、対照に比較してmiR−21レベルの1.5倍以上の増加があると、上皮増殖因子受容体突然変異体状態と組み合わせて、生存減少が予測される、前記方法を提供する。
【0036】
[0036]別の広い態様において、肺癌治療用の療法剤を同定する方法であって、in vitroで候補剤をスクリーニングして、miR−21の発現を減少させる剤を選択し、それによって肺癌治療用の剤を同定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0037】
[0037]別の広い態様において、肺癌において示差的に発現されるmiRを同定するためのキットであって、群:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択されるmiRの少なくとも1つの分子同定因子を含む、前記キットを提供する。
【0038】
[0038]別の広い態様において、肺癌において示差的に発現されるmiR−21を同定するためのキットであって、miR−21の少なくとも1つの分子同定因子を含み、分子同定因子が、群:プローブ;プライマー;抗体;miR;ロック化miR;または小分子より選択される、前記キットを提供する。
【0039】
[0039]本発明の多様な目的および利点は、付随する図を踏まえて読むと、好ましい態様の以下の詳細な説明から、当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】[0040]図1A〜1B: ヒト肺癌細胞株におけるmiR−21発現。
【0041】
[0041]図1A: qRTーPCRによってmiR−21発現レベルを分析し、そしてHBET2(hTERT不死化正常ヒト気管支上皮細胞)(1.0と定義、未提示)に対して表した。データは3回の独立の実験由来の平均±SDであった。*、HBET2と比較した際のp<0.05、スチューデントt検定。MTSアッセイによって細胞増殖に対するAG1478の抑制効果を決定し、そしてIC50(最大阻害濃度の半分)として示した。Sq、扁平上皮癌;La、大細胞型癌;Ad、腺癌;S、喫煙者の症例由来;N、喫煙未経験者の症例由来;N/A、情報入手不能;Wt、EGFR野生型;Mt*、EGFR突然変異体ΔE746−A750;Mt**、L858RおよびT790M;Mt***、L858R。
【0042】
[0042]図1B: miR−21発現およびp−EGFRレベル間の相関(Pearson相関、r=0.71、p<0.05)。miR−21データは図1A由来であり、そしてp−EGFRデータは、図6に示す結果を定量的に分析することによって得られた。
【図2】[0043]図2A〜2B: AG1478は、miR−21発現を抑制する。miR−21の高発現およびEGFR突然変異によって特徴付けられるH3255肺腺癌細胞を、24時間血清枯渇させ、そして次いで、AG1478(2μMまたは10μM)の存在下または非存在下のいずれかで、2時間増殖させ、その後、20ng/mlのEGFに15分間曝露し、または曝露しなかった。
【0043】
[0044]図2A: ホスホEGFR(p−EGFR)およびホスホAkt(p−Akt)発現に対するAG1478の影響。βアクチンは装填対照であった。
【0044】
[0045]図2B: EGFリガンド刺激を伴いまたは伴わずに、AG1478処理(2μMまたは10μM)した後の、qRT−PCRによるmiR−21発現レベル分析。miR−21発現レベルを、EGFの非存在下での未処理細胞に対する相対値として表した。データは、4回の独立の実験由来の平均±SDであった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図3A】[0046]図3A〜3D: miR−21の阻害はAG1478が誘導するアポトーシスを増進する。
【0045】
[0047]図3A: 細胞を40nMのアンチmiR−21(+)または対照オリゴヌクレオチド(アンチEGFP)(−)で72時間トランスフェクションし、そしてqRT−PCRによって調べた。アンチmiR−21トランスフェクション後のmiR−21発現レベルを、対照に対する相対値として表した。データは、3回の独立の実験由来の平均±SDであった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図3B】図3A〜3D: miR−21の阻害はAG1478が誘導するアポトーシスを増進する。
【0046】
[0048]図3B〜3C: 細胞(H3255またはH441)を40nMのアンチmiR−21(+)またはアンチEGFP(−)で72時間トランスフェクションし、そして次いで、0.2μMのAG1478の存在下または非存在下で24時間(H3255)、あるいは10μMの存在下または非存在下で72時間(H441)、増殖させた。カスパーゼ3/7の活性を、アンチmiR−21およびAG1478の非存在下での細胞の活性に対する相対値として表した。データは、少なくとも4回の独立の実験由来の平均±SDであった。*、p<0.05、スチューデントt検定。
【図3C】図3A〜3D: miR−21の阻害はAG1478が誘導するアポトーシスを増進する。
【0047】
[0048]図3B〜3C: 細胞(H3255またはH441)を40nMのアンチmiR−21(+)またはアンチEGFP(−)で72時間トランスフェクションし、そして次いで、0.2μMのAG1478の存在下または非存在下で24時間(H3255)、あるいは10μMの存在下または非存在下で72時間(H441)、増殖させた。カスパーゼ3/7の活性を、アンチmiR−21およびAG1478の非存在下での細胞の活性に対する相対値として表した。データは、少なくとも4回の独立の実験由来の平均±SDであった。*、p<0.05、スチューデントt検定。
【図3D】図3A〜3D: miR−21の阻害はAG1478が誘導するアポトーシスを増進する。
【0048】
[0049]図3D: 未切断PARPをウェスタンブロットによって評価した。上記のように、細胞をアンチmiR−21またはアンチEGFPでトランスフェクションし、そして次いで、2μMのAG1478の存在下または非存在下で72時間増殖させた。βアクチンは装填対照であった。
【図4A】[0050]図4A〜4C: 喫煙未経験者試料由来のmiR−21(図4A)、miR−126(図4B)およびmiR−486(図4C)発現。qRT−PCRを用いて、20対の腫瘍および正常組織における各miRの発現レベルを分析した。15の症例は、EGFR野生型(症例番号1、3、5、6、8、9、10、11、12、13、14、15、23、26および27)であり、そして5つの症例はEGFR突然変異体(症例番号2、4、24、25および28)であった。高レベルのmiR−21を発現する5つの腫瘍は、3つのEGFR突然変異体(症例番号24、25および28)および2つのEGFR野生型(症例番号5および23)症例由来であった。反応は、各試料に関して3つ組であった。発現レベルをRNU6Bで規準化し、2−ΔΔCT法を用いて決定し、そして正常組織の平均値に比較して提示した。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図4B】[0050]図4A〜4C: 喫煙未経験者試料由来のmiR−21(図4A)、miR−126(図4B)およびmiR−486(図4C)発現。qRT−PCRを用いて、20対の腫瘍および正常組織における各miRの発現レベルを分析した。15の症例は、EGFR野生型(症例番号1、3、5、6、8、9、10、11、12、13、14、15、23、26および27)であり、そして5つの症例はEGFR突然変異体(症例番号2、4、24、25および28)であった。高レベルのmiR−21を発現する5つの腫瘍は、3つのEGFR突然変異体(症例番号24、25および28)および2つのEGFR野生型(症例番号5および23)症例由来であった。反応は、各試料に関して3つ組であった。発現レベルをRNU6Bで規準化し、2−ΔΔCT法を用いて決定し、そして正常組織の平均値に比較して提示した。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図4C】[0050]図4A〜4C: 喫煙未経験者試料由来のmiR−21(図4A)、miR−126(図4B)およびmiR−486(図4C)発現。qRT−PCRを用いて、20対の腫瘍および正常組織における各miRの発現レベルを分析した。15の症例は、EGFR野生型(症例番号1、3、5、6、8、9、10、11、12、13、14、15、23、26および27)であり、そして5つの症例はEGFR突然変異体(症例番号2、4、24、25および28)であった。高レベルのmiR−21を発現する5つの腫瘍は、3つのEGFR突然変異体(症例番号24、25および28)および2つのEGFR野生型(症例番号5および23)症例由来であった。反応は、各試料に関して3つ組であった。発現レベルをRNU6Bで規準化し、2−ΔΔCT法を用いて決定し、そして正常組織の平均値に比較して提示した。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図5A】[0051]図5A〜5C: 喫煙者に対する、喫煙未経験者におけるmiR−21(図5A)、miR−126*(図5B)およびmiR−138(図5C)発現。肺腺癌および正常肺組織の喫煙未経験者由来の13対および喫煙者由来の14対をqRT−PCRによって分析した。反応は、各試料に関して3つ組であった。Log2 2−ΔCTとして相対的発現を定量化し、ここでΔCT=(CTmiR−CTRNU6B)であった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図5B】[0051]図5A〜5C: 喫煙者に対する、喫煙未経験者におけるmiR−21(図5A)、miR−126*(図5B)およびmiR−138(図5C)発現。肺腺癌および正常肺組織の喫煙未経験者由来の13対および喫煙者由来の14対をqRT−PCRによって分析した。反応は、各試料に関して3つ組であった。Log2 2−ΔCTとして相対的発現を定量化し、ここでΔCT=(CTmiR−CTRNU6B)であった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図5C】[0051]図5A〜5C: 喫煙者に対する、喫煙未経験者におけるmiR−21(図5A)、miR−126*(図5B)およびmiR−138(図5C)発現。肺腺癌および正常肺組織の喫煙未経験者由来の13対および喫煙者由来の14対をqRT−PCRによって分析した。反応は、各試料に関して3つ組であった。Log2 2−ΔCTとして相対的発現を定量化し、ここでΔCT=(CTmiR−CTRNU6B)であった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図6A】[0052]8つのNSCLC細胞株のウェスタンブロット分析。ホスホEGFR(p−EGFR)、EGFRおよびホスホAkt(p−Akt)のタンパク質発現をウェスタンブロット分析によって調べた。A;非腺癌細胞株(扁平上皮癌H157および大細胞型癌H1299)、B;野生型EGFRを伴う腺癌細胞株(A549、H23およびH441)、C;突然変異体EGFRを伴う腺癌細胞株(H1650、H1975およびH3255)。βアクチンは装填対照であった。NIH Image J1.40gを用いて、シグナル強度を測定することによって、これらの画像を定量化した。
【図6B】[0052]8つのNSCLC細胞株のウェスタンブロット分析。ホスホEGFR(p−EGFR)、EGFRおよびホスホAkt(p−Akt)のタンパク質発現をウェスタンブロット分析によって調べた。A;非腺癌細胞株(扁平上皮癌H157および大細胞型癌H1299)、B;野生型EGFRを伴う腺癌細胞株(A549、H23およびH441)、C;突然変異体EGFRを伴う腺癌細胞株(H1650、H1975およびH3255)。βアクチンは装填対照であった。NIH Image J1.40gを用いて、シグナル強度を測定することによって、これらの画像を定量化した。
【0049】
【図6C】[0052]8つのNSCLC細胞株のウェスタンブロット分析。ホスホEGFR(p−EGFR)、EGFRおよびホスホAkt(p−Akt)のタンパク質発現をウェスタンブロット分析によって調べた。A;非腺癌細胞株(扁平上皮癌H157および大細胞型癌H1299)、B;野生型EGFRを伴う腺癌細胞株(A549、H23およびH441)、C;突然変異体EGFRを伴う腺癌細胞株(H1650、H1975およびH3255)。βアクチンは装填対照であった。NIH Image J1.40gを用いて、シグナル強度を測定することによって、これらの画像を定量化した。
【図7】[0053]AG1478は、H441肺腺癌細胞において、miR−21発現を抑制する。EGFの非存在下でのAG1478処理(2μMまたは10μM)後、qRT−PCRによって、miR−21発現レベルを分析し、そして未処理細胞に比較して表した。データは3つ組由来の平均±SDであった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図8】[0054]表1−非小細胞肺癌に罹患した喫煙未経験患者の特性。
【図9】[0055]表2−非小細胞肺癌に罹患した喫煙未経験患者の特性(n=28)。
【図10】[0056]表3−28の喫煙未経験者由来の肺癌組織および正常肺組織間で示差的に発現されるmiR。
【図11】[0057]表4 肺腺癌に罹患した喫煙患者の特性(n=23)。
【図12A】[0058]図12A〜C:表5−示差的に発現され、そして喫煙状態に関連する43のmiR。
【図12B】[0058]図12A〜C:表5−示差的に発現され、そして喫煙状態に関連する43のmiR。
【図12C】[0058]図12A〜C:表5−示差的に発現され、そして喫煙状態に関連する43のmiR。
【図13】[0059]表6−喫煙未経験者由来のEGFR突然変異体および野生型肺癌間で示差的に発現されるmiR。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[0060]肺癌症例のおよそ15%は、喫煙に関連せず、そして喫煙者におけるものとは異なる分子的および臨床的特性を示す。上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子突然変異は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR−TKI)に対する感受性と相関し、喫煙未経験者肺癌においてより頻繁である。
【0051】
[0061]本明細書において、28の喫煙未経験者肺癌症例のマイクロRNA(miR)発現プロファイリングによって、異常に発現されるmiRが同定され、これは喫煙者の肺癌でははるかに低く、そしてこれには、喫煙者症例において、以前同定されたmiR(例えば上方制御されるmiR−21)および同定されていないmiR(例えば下方制御されるmiR−138)が含まれることが、現在、示されている。
【0052】
[0062]これらのmiRのいくつかの発現における変化は、EGFR突然変異を伴わないものよりも、EGFR突然変異を伴う症例において、より顕著であり:最も上方制御されるmiRであるmiR−21は、EGFR突然変異を伴う癌において、より豊富であった。肺癌細胞株におけるリン酸化EGFR(p−EGFR)およびmiR−21レベル間の有意な相関、ならびにEGFR−TKIであるAG1478によるmiR−21の抑制によって、現在、EGFRシグナル伝達経路が、miR−21発現を正に制御することが示されている。突然変異体EGFR、ならびに高レベルのp−EGFRおよびmiR−21を伴う喫煙未経験者由来の肺腺癌細胞株H3255において、miR−21のアンチセンス阻害は、AG1478が誘導するアポトーシスを増進させた。野生型EGFRを伴う喫煙未経験者由来腺癌細胞株H441では、アンチセンスmiR−21はAG1478に付加的な効果を示すだけでなく、それ自体、アポトーシスを誘導した。miR−21の異常に増加した発現は、活性化されたEGFRシグナル伝達経路によってさらに増進され、こうした発現は、喫煙未経験者における肺癌形成に役割を果たし、そしてEGFR突然変異体および野生型症例両方における潜在的な療法ターゲットである。
【0053】
[0063]本発明は、したがって、これらの新規発見に関連する材料および方法を提供する。特に、癌、特に肺癌を治療するのに有用な組成物を提供する。しかし、癌を治療するのに有用なさらなる組成物を同定する方法、癌を診断する方法、癌の予後を提供する方法、アポトーシスを誘導する方法などもまた提供する。これらの発見に関連する研究ツール、特にキット等もまた提供する。
【0054】
[0064]略語
[0065]DNA デオキシリボ核酸
[0066]mRNA メッセンジャーRNA
[0067]PCR ポリメラーゼ連鎖反応
[0068]プレmiR 前駆体マイクロRNA
[0069]qRT−PCR 定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応
[0070]RNA リボ核酸
[0071]用語
[0072]前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示および説明のみのためのものであり、そして本解説の範囲を限定することを意図されない。本出願において、具体的に別に明記しない限り、単数形の使用には、複数形が含まれる。
【0055】
[0073]単語「a」または「an」の使用は、請求項および/または明細書において、用語「含む(comprising)」と組み合わせて用いた場合、「1つ」を意味する可能性もあるが、これはまた、「1以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1より多く」の意味とも一致する。
【0056】
[0074]また、「含む(comprise)」、「含有する(contain)」および「含まれる(include)」の使用、またはこれらの語根の修飾、例えば限定されるわけではないが、「comprises」、「contained」、および「including」は限定することを意図しない。用語「および/または」は、前後の用語が一緒にまたは別個に採用されうることを意味する。例示目的のためであるが、制限としてではなく、「Xおよび/またはY」は、「X」または「Y」あるいは「XおよびY」を意味してもよい。
【0057】
[0075]miRはゲノム配列または遺伝子に由来することが理解される。これに関して、用語「遺伝子」は、わかりやすくするために、所定のmiRに関して、前駆体miRをコードするゲノム配列を指す。しかし、本発明の態様は、その発現に関与するmiRのゲノム配列、例えばプロモーターまたは他の制御配列を伴うことも可能である。
【0058】
[0076]用語「miR」は、一般的に、一本鎖分子を指すが、特定の態様において、本発明で実行される分子はまた、同じ一本鎖分子の別の領域に、または別の核酸に、部分的に相補的(鎖の長さに渡って10〜50%の間で相補的)、実質的に相補的(鎖の長さに渡って50%より大きいが、100%未満相補的)、または完全に相補的である、領域またはさらなる鎖も含むであろう。したがって、核酸は、1以上の相補鎖もしくは自己相補鎖(単数または複数)または分子を含む特定の配列の「相補体(単数または複数)」を含む分子を含んでもよい。例えば、前駆体miRは最大100%相補的な自己相補性領域を有してもよく、本発明のmiRプローブは、そのターゲットに60、65、70、75、80、85、90、95、または100%相補的であってもよいし、少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、または100%相補的であってもよい。
【0059】
[0077]用語「その組み合わせ」は、本明細書において、該用語に先行する列挙された項目のすべての順列および組み合わせを指す。例えば「A、B、C、またはその組み合わせ」は:A、B、C、AB、AC、BC、またはABC、および特定の文脈において順序が重要である場合、また、BA、CA、CB、ACB、CBA、BCA、BAC、またはCABの少なくとも1つを含むよう意図される。
【0060】
[0078]別に示さない限り、技術用語は、慣用的使用にしたがって用いられる。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, Oxford University Press刊行, 1994(ISBN 0−19−854287−9); Kendrewら(編), The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd.刊行, 1994(ISBN 0−632−02182−9);およびRobert A. Meyers(編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.刊行, 1995(ISBN 1−56081−569−8)に見出されうる。
【0061】
[0079]開示の多様な態様の再検討を容易にするため、特定の用語の以下の説明を提供する:
[0080]補助療法:一次治療の効果を改善するため、一次治療と組み合わせて用いられる治療。
【0062】
[0081]臨床転帰:疾患または障害のための治療後、あるいは治療の非存在下での患者の健康状態を指す。臨床転帰には、限定されるわけではないが、死亡までの時間の長さの増加、死亡までの時間の長さの減少、生存可能性の増加、死亡リスクの増加、生存、無病生存率、慢性疾患、転移、進行したまたは侵襲性疾患、疾患再発、死亡、ならびに療法に対する好ましいまたは劣った反応が含まれる。
【0063】
[0082]対照:「対照」は、実験試料、例えば患者から得られる腫瘍試料と比較するために用いられる試料または標準を指す。
【0064】
[0083]サイトカイン:他の細胞の振る舞いに影響を及ぼす、非常に多様な造血および非造血細胞によって産生されるタンパク質。サイトカインは、自然免疫および適応免疫反応の両方に重要である。
【0065】
[0084]生存減少:本明細書において、「生存減少」は、患者が死亡するまでの時間の長さの減少、または患者に関する死亡するリスクの増加を指す。
【0066】
[0085]発現レベルの検出:例えば、「miRまたはmiR発現レベルの検出」は、miRまたは試料に存在するmiRの量を定量化することを指す。当該技術分野に知られるかまたは本明細書に記載する方法いずれかを用いて、例えばqRT−PCRによって、特定のmiR、またはマイクロRNAいずれかの発現の検出を達成してもよい。miR発現の検出には、miRの成熟型、またはmiR発現と相関する前駆体型のいずれかの発現の検出が含まれる。典型的には、miR検出法は、配列特異的検出、例えばRT−PCRによるものを伴う。当該技術分野に知られ、そして本明細書の配列番号におけるように提供される、前駆体および成熟miR核酸配列を用いて、miR特異的プライマーおよびプローブを設計してもよい。
【0067】
[0086]マイクロRNA(miR):遺伝子発現を制御する一本鎖RNA分子。マイクロRNAは、一般的に、長さ21〜23ヌクレオチドである。マイクロRNAは、プリmiR(pri-miR)として知られる一次転写物から、前駆体(プレ)miRと呼ばれる短いステムループ構造に、そして最終的に、機能する成熟マイクロRNAにプロセシングされる。成熟マイクロRNA分子は、1以上のメッセンジャーRNA分子に部分的に相補的であり、そしてその主な機能は、遺伝子発現を下方制御することである。マイクロRNAは、RNAi経路を通じて、遺伝子発現を制御する。
【0068】
[0087]miR発現:本明細書において、「miR低発現」および「miR高発現」は、試料中に見られるmiRのレベルを指す、相対的な用語である。いくつかの態様において、miR低発現および高発現は、対照試料および試験試料の群におけるmiRレベルの比較によって決定される。次いで、試料中のmiの発現が、平均または中央値miR発現レベルより上(高発現)または下(低発現)であるかに基づいて、各試料に対して、低発現および高発現を割り当ててもよい。個々の試料に関しては、高発現または低発現を有することが知られる対照または参照試料に対して試料を比較することによって、あるいは標準値に比較することによって、miR高発現または低発現を決定してもよい。miR低発現および高発現には、miRの前駆体または成熟型いずれか、あるいは両方の発現が含まれてもよい。
【0069】
[0088]患者:本明細書において、用語「患者」には、ヒトおよび非ヒト動物が含まれる。治療のために好ましい患者はヒトである。「患者」および「被験体」は、本明細書において、交換可能に用いられる。
【0070】
[0089]薬学的に許容されうるビヒクル:本開示で有用な薬学的に許容されうるキャリアー(ビヒクル)は、慣用的である。Remington’s Pharmaceutical Sciences, E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 第15版(1975)は、1以上の療法化合物、分子または剤の薬学的送達に適した組成物および配合物を記載する。
【0071】
[0090]一般的に、キャリアーの性質は、使用する特定の投与様式に応じるであろう。例えば、非経口配合物は、通常、薬学的および生理学的に許容されうる液体、例えば水、生理学的生理食塩水、平衡化塩溶液、水性デキストロース、グリセロール等をビヒクルとして含む、注射可能液体を含む。固形組成物(例えば粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル型)に関しては、慣用的な非毒性固形キャリアーには、例えば、薬剤等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれてもよい。生物学的中性キャリアーに加えて、投与すべき薬学的組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤等、例えば酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含有してもよい。
【0072】
[0091]疾患の防止、治療または軽減:疾患の「防止」は、疾患の完全発展を阻害することを指す。「治療」は、疾患または病理学的状態が発展し始めた後、これらの徴候または症状を軽減する療法的介入を指す。「軽減」は、疾患の徴候または症状の数または重症度の減少を指す。
【0073】
[0092]スクリーニング:本明細書において、「スクリーニング」は、こうした疾患に影響を及ぼす候補剤を評価し、そして同定するために用いられるプロセスを指す。当該技術分野に知られ、そして本明細書に記載するいくつかの技術のいかなる1つを用いて、例えばマイクロアレイ分析によって、またはqRT−PCRによって、マイクロRNAの発現を定量化してもよい。
【0074】
[0093]小分子:典型的には約1000ダルトン未満、またはいくつかの態様において、約500ダルトン未満の分子量を持つ分子であって、何らかの測定可能な度合いまで、ターゲット分子の活性を調節可能である、前記分子。
【0075】
[0094]療法的:診断および治療の両方を含む包括的な用語。
【0076】
[0095]療法剤:被験体に適切に投与された際、望ましい療法的または予防的効果を誘導可能な、化学的化合物、小分子、または他の組成物、例えばアンチセンス化合物、抗体、プロテアーゼ阻害剤、ホルモン、ケモカインまたはサイトカイン。
【0077】
[0096]本明細書において、「候補剤」は、療法剤として機能可能であるかどうかを決定するスクリーニングのために選択される化合物である。「インキュベーションする」には、剤が細胞または組織と相互作用するのに十分な時間が含まれる。「接触させる」には、固体型または液体型の剤を細胞または組織とインキュベーションすることが含まれる。剤で細胞または組織を「治療する」には、剤と細胞または組織を接触させるかまたはインキュベーションすることが含まれる。
【0078】
[0097]療法的に有効な量:剤で治療される被験体または細胞において、望ましい効果を達成するのに十分な、明記される薬学的剤または療法剤の量。剤の有効量は、いくつかの要因に応じ、こうした要因には、限定されるわけではないが、治療される被験体または細胞、および療法組成物の投与方式が含まれる。
【0079】
[0098]本発明のいくつかの態様において、「対照」の使用が望ましい。これに関して、対照は、同じ患者から得た非癌性組織試料、または健康な被験体、例えば健康な組織ドナーから得た組織試料であってもよい。別の例において、対照は、歴史的値から計算された標準である。当該技術分野に知られる任意の方法にしたがって、腫瘍試料および非癌性組織試料を得てもよい。例えば、切除術を受けた癌患者から腫瘍および非癌性試料を得てもよいし、あるいは皮下針を用いた抽出によって、顕微解剖によって、またはレーザー捕捉によって、試料を得てもよい。例えば、屍体ドナーから、または健康なドナーから、対照(非癌性)試料を得てもよい。
【0080】
[0099]いくつかの態様において、スクリーニングは、候補剤を細胞と接触させる工程を含む。細胞は患者から得た初代細胞であってもよいし、あるいは細胞は不死化または形質転換細胞であってもよい。
【0081】
[00100]「候補剤」は、タンパク質、ペプチド、小分子、抗体または核酸などの任意のタイプの剤であってもよい。いくつかの態様において、候補剤はサイトカインである。いくつかの態様において、候補剤は小分子である。スクリーニングには、ハイスループットスクリーニング、および個々のまたは小さいグループの候補剤のスクリーニングの両方が含まれる。
【0082】
[00101]本明細書のいくつかの方法において、試料中に存在するmiRを同定することが望ましい。
【0083】
[00102]前駆体マイクロRNA(プレmiR)および成熟miRの配列は公的に入手可能であり、例えばSanger Instituteによってオンラインで入手可能なmiRBaseデータベース(Griffiths−Jonesら, Nucleic Acids Res. 36:D154−D158, 2008; Griffiths−Jonesら, Nucleic Acids Res. 34:D140−D144, 2006;およびGriffiths−Jones, Nucleic Acids Res. 32:D109−D111, 2004を参照されたい)を通じて入手可能である。現在開示される好ましいファミリーメンバーの前駆体および成熟型の配列を本明細書に提供する。
【0084】
[00103]当該技術分野に周知であり(例えば、本明細書に援用される米国特許出願公報第2006/0211000号および第2007/0299030号を参照されたい)、そして以下に記載する、いくつかの方法の任意の1つによって、RNA発現の検出および定量化を達成してもよい。RNAファミリーメンバーに関する既知の配列を用いて、適切なように、以下に記載する検出法において使用するため、特異的プローブおよびプライマーを設計可能である。
【0085】
[00104]いくつかの場合、RNA検出法は、試料、例えば細胞または組織試料からの核酸の単離を必要とする。当該技術分野に知られる任意の適切な技術を用いて、RNAそして特にmiRを含む核酸を単離してもよい。例えば、フェノールに基づく抽出は、RNAの単離のための一般的な方法である。フェノールに基づく試薬は、細胞および組織破壊、ならびにそれに続く混入物質からのRNAの分離のため、変性剤およびRNアーゼ阻害剤の組み合わせを含有する。フェノールに基づく単離法は、10〜200ヌクレオチドの範囲のRNA種(例えば前駆体および成熟miR、5Sおよび5.8SリボソームRNA(rRNA)、ならびにU1小分子核RNA(snRNA))を回収可能である。さらに、TRIZOLTMまたはTRI試薬TMを用いるものなどの抽出法は、巨大および小分子のすべてのRNAを精製し、そしてmiRおよび小分子干渉RNA(siRNA)を含有する生物学的試料から総RNAを単離するのに効率的な方法である。
【0086】
[00105]いくつかの態様において、マイクロアレイの使用が望ましい。マイクロアレイは、核酸、タンパク質、小分子、細胞または他の物質の顕微鏡的な規則正しいアレイであり、複雑な生化学的試料の並行分析を可能にする。DNAマイクロアレイは、マイクロチップ、ガラススライドまたは微小球体サイズのビーズであってもよい固体支持体に化学的に付着する、捕捉プローブとして知られる、異なる核酸プローブからなる。マイクロアレイを用いて、例えば多数のメッセンジャーRNA(mRNA)および/またはmiRの発現レベルを同時に測定することも可能である。
【0087】
[00106]ガラススライド上への微細な先端のピンでのプリンティング、あらかじめ作製したマスクを用いたフォトリソグラフィー、動的マイクロミラーデバイスを用いたフォトリソグラフィー、インクジェットプリンティング、または微小電極アレイ上の電気化学を含む、多様な技術を用いて、マイクロアレイを製作してもよい。
【0088】
[00107]例えば、miRのマイクロアレイ分析(これらの方法は、任意のRNA分析のために修飾された形式で使用可能であるが)を、当該技術分野に知られる任意の方法にしたがって達成してもよい(例えば、各々、本明細書に援用される、PCT公報第WO2008/054828号; Yeら, Nat. Med. 9(4):416−423, 2003; Calinら, N. Engl. J. Med. 353(17):1793−1801, 2005を参照されたい)。1つの例において、RNAを細胞または組織試料から抽出し、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて、小分子RNA(18〜26ヌクレオチドRNA)を総RNAよりサイズ選択する。オリゴヌクレオチドリンカーを小分子RNAの5’および3’端に付着させ、そして生じた連結産物を、10サイクルの増幅を伴うRT−PCR反応のためのテンプレートとして用いる。センス鎖PCRプライマーは、5’端に付着したフルオロフォアを有し、それによって、PCR産物のセンス鎖を蛍光標識する。PCR産物を変性させ、そして次いでマイクロアレイにハイブリダイズさせる。アレイ上の対応するmiR捕捉プローブ配列に相補的である、ターゲット核酸と称されるPCR産物は、塩基対形成を通じて、捕捉プローブが固定されたスポットにハイブリダイズするであろう。次いで、スポットは、マイクロアレイレーザースキャナを用いて励起された際に、蛍光を生じるであろう。次いで、いくつかの陽性および陰性対照、ならびにアレイデータ規準化法を用いて、各スポットの蛍光強度を、特定のmiRのコピー数に関して評価し、これが特定のmiR発現レベルの評価を生じるであろう。
【0089】
[00108]別の方法において、細胞または組織試料から抽出される小分子RNA分画(miRを含む)を含有する総RNAを、小分子RNAのサイズ選択を伴わずに直接用いて、そしてT4 RNAリガーゼおよびどちらかの蛍光標識された短いRNAリンカーを用いて3’端標識する。30℃で2時間インキュベーションすることによって、RNA試料を標識した後、T4 RNAリガーゼを80℃で5分間熱不活性化する。アレイ上の対応するmiR捕捉プローブ配列に相補的なフルオロフォア標識miRは、塩基対形成を通じて、捕捉プローブが固定されたスポットにハイブリダイズするであろう。マイクロアレイスキャニングおよびデータプロセシングを上記のように行う。
【0090】
[00109]使用可能ないくつかのタイプのマイクロアレイがあり、これにはスポット化オリゴヌクレオチドマイクロアレイ、作製済みのオリゴヌクレオチドマイクロアレイおよびスポット化長鎖オリゴヌクレオチドアレイが含まれる。スポット化オリゴヌクレオチドマイクロアレイにおいて、捕捉プローブは、miR配列に相補的なオリゴヌクレオチドである。このタイプのアレイは、典型的には、2つの異なるフルオロフォアで標識された、比較しようとする2つの試料(例えば非癌性組織および癌性または試料組織)由来のサイズ選択された小分子RNAの増幅PCR産物とハイブリダイズされる。あるいは、小分子RNA分画(miRを含む)を含有する総RNAを2つの試料から抽出し、そして小分子RNAのサイズ選択を伴わずに、そしてT4 RNAリガーゼおよび2つの異なるフルオロフォアで標識された短鎖RNAリンカーを用いて3’端標識した。試料を混合し、そして単一のマイクロアレイにハイブリダイズさせ、これを次いでスキャンして、1つのアッセイにおいて、上方制御されたおよび下方制御されたmiR遺伝子の視覚化を可能にする。
【0091】
[00110]作製済みのオリゴヌクレオチドマイクロアレイまたは単一チャネルマイクロアレイにおいて、プローブは、既知のまたは予測されるmiRの配列にマッチするように設計される。完全ゲノムを含む、商業的に入手可能な設計がある(例えばAffimetrixまたはAgilentから)。これらのマイクロアレイは、遺伝子発現の絶対値の概算を提供し、そしてしたがって、2つの状態の比較は、2つの別個のマイクロアレイの使用を必要とする。
【0092】
[00111]スポット化長鎖オリゴヌクレオチドアレイは、50〜70量体のオリゴヌクレオチド捕捉プローブで構成され、そしてインクジェットまたはロボットプリンティングのいずれかによって産生される。短鎖オリゴヌクレオチドアレイは、20〜25量体オリゴヌクレオチドプローブで構成され、そしてフォトリソグラフィー合成(Affymetrix)によって、またはロボットプリンティングによって産生される。
【0093】
[00112]いくつかの態様において、定量的RT−PCRの使用が望ましい。定量的RT−PCR(qRT−PCR)は、ポリメラーゼ連鎖反応産物の量を迅速に測定するのに用いられる、ポリメラーゼ連鎖反応の修飾法である。qRT−PCRは、一般的に、遺伝子配列、例えばmiRが試料中に存在するかどうか、そして存在する場合には、試料中のコピー数を決定する目的のために用いられる。miRを含む核酸分子の発現を決定可能な任意のPCR法が本開示の範囲内に属する。当該技術分野に知られるqRT−PCR法のいくつかの変型があり、このうち3つを以下に記載する。
【0094】
[00113]定量的ポリメラーゼ連鎖反応のための方法には、限定されるわけではないが、アガロースゲル電気泳動を介するもの、SYBRグリーン(二本鎖DNA色素)を用いるもの、および蛍光レポータープローブを用いるものが含まれる。後者の2つは、リアルタイムで分析可能である。
【0095】
[00114]アガロースゲル電気泳動を用いて、増幅用の既知の濃度の類似のサイズのターゲットDNA部分とともに、未知の試料および既知の試料を調製する。どちらの反応も同一条件(好ましくは同じプライマー、または少なくとも類似のアニーリング温度のプライマーを用いる)において、同じ時間、反応させる。アガロースゲル電気泳動を用いて、その元来のDNAから反応産物を分離し、そしてプライマーを取り置く。既知および未知の試料の相対量を測定して、未知の量を決定する。
【0096】
[00115]SYBRグリーン色素の使用は、アガロースゲル法より正確であり、そしてリアルタイムで結果を生じうる。DNA結合色素は、すべての新規合成二本鎖DNAに結合し、そして蛍光強度増加を測定し、こうして最初の濃度の決定を可能にする。しかし、SYBRグリーンは、いかなる予期せぬPCR産物、ならびにプライマー二量体も含む、すべての二本鎖DNAを標識するので、複雑化する要因およびアーチファクトにつながる可能性もある。反応は、蛍光二本鎖DNA色素を添加して、通常と同様に調製する。反応を実行し、そして蛍光レベルを監視する(色素は二本鎖DNAに結合した場合にのみ蛍光を生じる)。標準試料または標準曲線を参照して、PCR中の二本鎖DNA濃度を決定してもよい。
【0097】
[00116]蛍光レポータープローブ法は、プローブ配列のみを定量化し、そしてすべての二本鎖DNAを定量化しないように、配列特異的な核酸に基づくプローブを用いる。これは一般的に、蛍光レポーターおよび隣接位に保持される消光剤を含むDNAに基づくプローブ(いわゆる二重標識プローブ)を用いて実行される。消光剤に対してレポーターがごく近接していると、蛍光が防止され;蛍光が検出されるのは、プローブが分解した際のみである。このプロセスは、関与するポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性に依存する。
【0098】
[00117]二重標識プローブを添加して、リアルタイム定量的PCR反応を調製する。二本鎖DNAテンプレートを変性させた際、プローブは、テンプレートDNAの関心対象の領域中の相補配列に結合可能である。PCR反応混合物を加熱してポリメラーゼを活性化させた際、ポリメラーゼは、プライミングされた一本鎖テンプレートDNAに対する相補鎖を合成し始める。重合が進むにつれて、ポリメラーゼは相補配列に結合したプローブに到達し、次いで、プローブは、ポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性のために加水分解され、それによって蛍光レポーターおよび消光剤分子が分離する。これは蛍光の増加を生じ、これを検出する。リアルタイムPCR反応の熱サイクリング中、各PCRサイクル中に加水分解された二重標識プローブから放出された際の蛍光の増加を監視し、これによって、DNAの最終の、そしてしたがって最初の量の正確な決定が可能になる。
【0099】
[00118]いくつかの態様において、in situハイブリダイゼーションの使用が望ましい。in situハイブリダイゼーション(ISH)は、単一細胞レベルに、核酸ハイブリダイゼーション技術を適用し、そして当てはめ(extrapolate)、そして細胞化学、免疫細胞化学および免疫組織化学の技術と組み合わされて、維持しそして同定しようとする形態の維持および細胞マーカーの同定を可能にし、そして組織および血液試料などの集団内の特定の細胞に対する配列の位置決定を可能にする。ISHは、相補的核酸を用いるハイブリダイゼーションの一種であり、組織の部分または切片における1以上の特異的核酸配列を位置決定する(in situ)か、または組織が十分に小さい場合は、全組織において位置決定する(全載ISH)。RNA ISHを用いて、組織における発現パターン、例えばmiR発現をアッセイしてもよい。
【0100】
[00119]試料細胞または組織を処理し、浸透性を増加させて、プローブ、例えばmiR特異的プローブが細胞に進入するのを可能にする。プローブを、処理した細胞に添加し、適切な温度でハイブリダイズを可能にし、そして過剰なプローブを洗い流す。相補的プローブを、放射性、蛍光または抗原性タグで標識し、オートラジオグラフィ、蛍光顕微鏡またはイムノアッセイを用いて、組織におけるプローブの位置および量を決定してもよい。
【0101】
[00120]いくつかの態様において、in situ PCRの使用が望ましい。in situ PCRは、ISHの前にターゲット核酸配列のPCRに基づく増幅を行う。RNAを検出するため、細胞内逆転写工程を導入して、in situ PCRの前に、RNAテンプレートから相補DNAを生成する。これによって、低コピー数RNA配列の検出が可能になる。
【0102】
[00121]in situ PCRの前に、細胞または組織試料を固定し、そして透過処理して形態を保持し、そして増幅しようとする細胞内配列へのPCR試薬のアクセスを可能にする。次に、懸濁中に保持された損なわれていない(intact)細胞中、または直接、細胞遠心分離調製物中、またはガラススライド上の組織切片中のいずれかで、ターゲット配列のPCR増幅を行う。前者のアプローチでは、PCR反応混合物中に懸濁された固定細胞を、慣用的なサーマルサイクラーを用いて熱サイクリングする。PCR後、ガラススライド上に細胞を細胞遠心分離して、ISHまたは免疫組織化学によって細胞内PCR産物を視覚化する。カバーガラスの下、試料にPCR混合物を重層し、これを次いで密封して反応混合物の蒸発を防止することによって、ガラススライド上のin situ PCRを行う。ガラススライドを、慣用的なまたは特別に設計されたサーマルサイクラーの加熱ブロック上に直接置くか、あるいは熱サイクリングオーブンを用いることによるかのいずれかで、熱サイクリングを達成する。
【0103】
[00122]一般的に、2つの異なる技術、PCR産物特異的プローブを用いたISHによる間接的in situ PCR、または熱サイクリング中にPCR産物内に取り込まれている標識ヌクレオチド(例えば、ジゴキシゲニン−11−dUTP、フルオレセイン−dUTP、3H−CTPまたはビオチン−16−dUTP)の直接検出を通じた、ISHを伴わない直接in situ PCRのうちの1つによって、細胞内PCR産物の検出を達成する。
【0104】
[00123]示差的に発現されるmiR、ならびに肺癌の予後の予測マーカーとしての、および肺癌の治療のための療法剤の同定のためのmiRの使用
[00124]miRの特定の発現パターンは、EGFR突然変異体状態指標とともに、EGFR突然変異体患者における生存予後の予測因子であることを本明細書に開示する。示差的に発現されるmiR(この例を図13−表6に示す)を伴うEGFR突然変異体癌細胞試料(例えば組織生検試料)は、野生型EGFR腫瘍組織と比較した際、生存減少を予測する。したがって、腫瘍において示差的に発現されるmiR状態を、肺癌患者の予後および治療における臨床ツールとして用いることも可能である。本明細書において、「劣った予後」は、一般的に、生存の減少、あるいは言い換えると、死亡リスクの増加または死亡までの時間の減少を指す。劣った予後はまた、疾患重症度の増加、例えば他の臓器への癌の蔓延(転移)の増加も指してもよい。1つの態様において、それぞれのマーカーは、対照に比較して、発現の少なくとも1.5倍の増加または減少を示す。他の態様において、劣った予後は、野生型腫瘍対照の数値に比較して、マーカーの少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、または少なくとも4倍の増加または減少によって示される。
【0105】
[00125]候補剤をスクリーニングして、疾患治療のための療法剤を同定する方法は、当該技術分野に周知である。RNAおよびタンパク質の発現レベルを検出する方法が当該技術分野に知られ、そして本明細書に記載され、これには例えば、限定されるわけではないが、マイクロアレイ分析、RT−PCR(qRT−PCRを含む)、in situハイブリダイゼーション、in situ PCR、およびノーザンブロット分析がある。1つの態様において、スクリーニングはハイスループットスクリーニングを含む。別の態様において、候補剤は個々にスクリーニングされる。
【0106】
[00126]候補剤は任意のタイプの分子であってもよく、これには例えば、限定されるわけではないが、核酸分子、タンパク質、ペプチド、抗体、脂質、小分子、化学薬品、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、あるいは直接または間接的にのいずれかで癌疾患状態(単数または複数)を改変しうる任意の他のタイプの分子がある。いくつかの態様において、候補剤は、NFκB/IL−6シグナル伝達経路において役割を果たす分子である。他の態様において、候補剤は、IL−10、STAT3またはインターフェロン誘導性因子シグナル伝達ネットワークにおいて役割を果たす分子である。1つの態様において、候補剤はサイトカインである。別の態様において、候補剤は小分子である。
【0107】
[00127]本明細書にやはり記載するのは、EGFR突然変異体喫煙未経験者の癌を特徴付けるための方法であって、EGFR突然変異体喫煙未経験者の癌の少なくとも1つの特徴が:EGFR突然変異体癌の存在または非存在;EGFR突然変異体癌の診断;EGFR突然変異体癌の予後;療法転帰予測;療法転帰監視;EGFR突然変異体癌の治療に対する適切さ、例えば化学療法治療および/または放射線治療に対するEGFR突然変異体癌の適切さ;ホルモン治療に対するEGFR突然変異体癌の適切さ;侵襲性手術による除去に関するEGFR突然変異体癌の適切さ;併用アジュバント療法に対するEGFR突然変異体癌の適切さ;を含む群の1以上より選択される、前記方法である。
【0108】
[00128]本明細書にやはり記載するのは、EGFR突然変異体癌を検出するためのキットであり、該キットには、miRまたはEGFR突然変異体癌において示差的に発現されると本明細書に開示されるmiRを含む少なくとも1つの検出プローブが含まれてもよい。キットはオリゴヌクレオチドアレイの形であってもよいし、またはオリゴヌクレオチドアレイを含んでもよい。
【0109】
[00129]本明細書にやはり記載するのは、治療に関する、EGFR突然変異体癌患者の適切さを決定するための方法であって:i)EGFR突然変異体癌に罹患した患者から少なくとも1つの組織試料を単離し;ii)少なくとも1つの組織試料の特徴付けを行い、そして/または検出プローブを利用して、EGFR突然変異体示差miR発現パターンを同定し、iii)工程ii)で同定した少なくとも1つの特徴に基づいて、患者の生理学的状態を診断し;iv)工程iii)で得た診断に基づいて、患者がEGFR突然変異体癌の治療から利益を受けるかどうかを決定する工程を含む、前記方法である。特定の態様において、癌の少なくとも1つの特徴は:癌の存在または非存在;癌のタイプ;癌の起源;癌の診断;癌の予後;療法転帰予測;療法転帰監視;治療に対する癌の適切さ、例えば化学療法治療および/または放射線治療に対する癌の適切さ;ホルモン治療に対する癌の適切さ;侵襲性手術による除去に関する癌の適切さ;併用アジュバント療法に対する癌の適切さ;を含む群の1以上より選択される。
【0110】
[00130]本明細書にやはり記載するのは、治療に関する癌の適切さを決定するための方法であって、癌の少なくとも1つの特徴が、治療に対する癌の適切さ、例えば化学療法治療および/または放射線治療に対する癌の適切さ;ホルモン治療に対する癌の適切さ;侵襲性手術による除去に関する癌の適切さ;併用アジュバント療法に対する癌の適切さ;を含む群の1以上より選択される、前記方法である。
【0111】
[00131]本明細書にやはり記載するのは、癌患者のありうる予後を決定するための方法であって:i)癌に罹患した患者から少なくとも1つの組織試料を単離し;そしてii)少なくとも1つの組織試料を特徴付けして、EGFR突然変異体miR示差発現パターンを同定する工程を含み;特徴が癌患者のありうる予後の決定を可能にする、前記方法である。
【0112】
[00132]本発明は、以下の実施例においてさらに定義され、ここで、別に言及しない限り、すべての部分および割合は重量であり、そして度は摂氏である。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示すが、例示目的のためのみに提供されることを理解しなければならない。上記考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認可能であり、そして本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多様な変化および修飾を作製して、多様な使用および条件に適応させることも可能である。本明細書において言及される特許および非特許文献を含むすべての刊行物は、本明細書に完全に援用される。以下の実施例は、本発明の特定の好ましい態様を例示するよう意図され、そしてそう明記されない限り、請求項に定義するような本発明の範囲を限定するように解釈されてはならない。
【0113】
[00133]本発明の価値は、したがって、本明細書の実施例を参照することによって理解されうる。
【実施例】
【0114】
[00134]実施例I
[00135]喫煙未経験者由来の肺癌におけるマイクロRNA発現プロフィール
[00136]喫煙未経験者(図8−表1および図9−表2)由来の肺癌および非癌性肺組織の28のマッチした対において、オハイオ州miRマイクロアレイ・バージョン3.0(21)を用いることによって、miR発現プロフィールを調べた。
【0115】
[00137]Biometric Research Branch(BRB)アレイツールを用いたクラス比較分析において、18のmiRが、非癌性組織に比較して、癌において示差的に発現されることが見出された(p<0.01、偽発見率(FDR)<0.15)(図10−表3)。
【0116】
[00138]これらの18のmiRの発現プロフィールは、癌および対の非癌性組織間を区別し、3近傍法を用いると84%の予測正確さであり、そしてBRBアレイツール内のサポートベクターマシーンアルゴリズムを用いると82%の予測正確さであった(10倍交差検定を100回反復)。
【0117】
[00139]5つのmiRが癌組織においてより高いレベルで発現され、miR−21は最大2.35倍濃縮された。13のmiRの発現レベルは癌においてより低く、miR−486およびmiR−126*は最大0.45倍抑制された。
【0118】
[00140]2つの異なるプローブによって単一のmiRが同定され(miR−21、miR−521およびmiR−516a)、単一のステムループプレmiRから2つの成熟miRが生成され(miR−126およびmiR−126*)、そして1より多くのmiRが染色体でクラスター形成し、そしておそらく同時制御されている(6q13上のmiR−30aおよびmiR−30c;8q24.22上のmiR−30bおよびmiR−30d;ならびに19q13.41上のmiR−516a、miR−520およびmiR−521)ことはすべて、該分析の妥当性を裏付けた。
【0119】
[00141]喫煙未経験者肺腺癌症例のmRNAマイクロアレイデータ(ncbi.nlm.nih.gov/geo/、寄託番号=GSE10072)はまた、2つの宿主遺伝子、TMEM49およびEGFL7(図10−表3)が、内在miR(それぞれ、miR−21およびmiR−126/126*)と同じ方向に、癌および非癌性組織間で示差的に発現されることも示した。3つのmiR(miR−21、miR−126およびmiR−486)の発現レベルを、リアルタイム定量的RT−PCR(qRT−PCR)によって調べた(図4A〜4C)。miR−21発現は、非癌性組織におけるより、癌組織において有意により高く(p<0.05、対応のあるt検定)(図4A)、そしてmiR−126およびmiR−486は、癌において有意により低いレベルで発現され(p<0.05、対応のあるt検定)(図4Bおよび図4C)、マイクロアレイ分析の結果がさらに検証された。
【0120】
[00142]喫煙者に対する喫煙未経験者由来の肺癌における示差miRプロフィール
[00143]喫煙状態に関連する、miR発現における癌関連変化を同定するため、本発明者らは、本研究の喫煙未経験者の症例のmiR発現プロフィールと、本発明者らの先の研究(Yanaihara Nら(2006) Unique microRNA molecular profiles in lung cancer diagnosis and prognosis. Cancer Cell 9:189−198)における58の喫煙者肺腺癌症例、およびさらなる23の喫煙者肺腺癌症例(図11−表4)を比較した。
【0121】
[00144]5つのmiRでは、喫煙未経験者および喫煙者の症例において、共通した発現変化が同定され、このなかにmiR−21の増加があった(図12−表5)。2つのmiR、miR−138およびlet−7cのみが、喫煙未経験者症例において有意に変化する(どちらも下方制御される)一方、36のmiRの発現改変は、喫煙者症例と優先的に関連し(図12−表5)、これはおそらく、喫煙者由来肺癌において、より広範囲に遺伝子的およびエピジェネティックな変化が多いことを反映する。
【0122】
[00145]本発明者らは、qRT−PCRによって、喫煙未経験者腺癌におけるmiR−138の特異的下方制御、ならびに喫煙状態に関わらないmiR−21の上方制御およびmiR−126*の下方制御を検証した(図5)。興味深いことに、miR−138は染色体3p21.33に位置し、これは肺癌抑制因子遺伝子を所持する候補遺伝子座であり、そして多様な細胞性およびウイルス性の発癌機構が作用するヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子をターゲットとすると報告された。肺癌の病因におけるこのmiRの役割は、さらなる研究に値する。
【0123】
[00146]EGFR遺伝子突然変異に関連するmiR発現プロフィール
[00147]喫煙未経験者由来の28の肺癌組織におけるDNA配列決定によって、EGFR遺伝子の状態を決定した(図9−表2)。6つの症例は、EGFRのチロシンキナーゼドメインに活性化突然変異を有することが見出され;4つの症例には、コドン858でのロイシンからアルギニンへのアミノ酸置換(L858R)が見られ;1つにはコドン861でのロイシンからグルタミン酸へのアミノ酸置換(L861E)が見られ;そして1つには、コドン747〜752のインフレーム欠失(ΔL747〜S752)が見られた。22のEGFR野生型および6つのEGFR突然変異体症例間のmiR発現のクラス比較分析によって、EGFR突然変異体症例において、有意により豊富であるかまたはより少ない、12のmiRが見出された(p<0.01、FDR<0.15)(図13−表6)。
【0124】
[00148]12のmiRのうち10(miR−21、miR−210、miR−486、miR−126、miR−126*、miR−138、miR−521、miR−451、miR−30dおよびmiR−30a)が、非癌性組織対癌の比較において、同じ方向に変化していると上記で同定され(図10−表3)、これによって、EGFR突然変異が、喫煙未経験者における肺癌形成と関連するいくつかのmiRの異常な制御を強いている可能性もあることが示された。癌対非癌性組織において、それぞれ、最も上方制御されているおよび下方制御されている、miR−21およびmiR−486は、再び、EGFR突然変異体および野生型癌間で最大の相違を示した(それぞれ、〜1.7倍および0.60倍)。図4に示すqRT−PCRデータは、限定された数の症例に対して行われ、それによって、miR−21、miR−126またはmiR−486発現のいずれにおけるEGFR突然変異体および野生型症例間の統計的に有意な相違を示す能力も限定されているが、癌において最高レベルのmiR−21を発現している3つの症例(症例24、25および28)はすべて、EGFRの活性化突然変異を有したことに注目すべきである(図4および図9−表2)。
【0125】
[00149]肺癌細胞株におけるmiR−21の発現およびEGFRシグナル伝達状態
[00150]癌対非癌性組織において最も顕著に増加し、そしてEGFR−TKIに対する感受性の指標となるEGFR突然変異と関連していることから、miR−21をさらなる分析のために選択した。miR−21発現レベルおよびEGFRシグナル伝達経路の状態間の相関を調べるため、8つの非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株をウェスタンブロット(図6A、6Bおよび6C)およびqRT−PCR分析で調べた(図1A)。
【0126】
[00151]この中で、3つの腺癌細胞株は、EGFRに関して突然変異体であった:H3255はL858Rを含み;H1975はL858Rおよびコドン790でのスレオニンからメチオニンへの置換(T790M)の両方を含み;そしてH1650はコドン746から750のインフレーム欠失(ΔE746−A750)を含んだ。これらの3つのEGFR突然変異体細胞株は、高レベルのリン酸化EGFR(p−EGFR)、ならびに増加した量の総EGFRタンパク質およびリン酸化Akt(p−Akt)の誘導を有し(図6C)、これは、これらの細胞におけるEGFRシグナル伝達経路の恒常的活性化と一致した。3つのうち2つ(H3255およびH1975)は上昇したレベルのmiR−21を発現したが、第三の細胞株(H1650)は上昇したレベルでは発現しなかった(図1A)。
【0127】
[00152]検出可能なレベルのp−EGFRを伴う(H441)または伴わない(A549およびH1299)、5つのEGFR野生型細胞株のうちの3つ(図6AおよびB)もまた、対照非形質転換細胞よりも有意により高いレベルのmiR−21を発現した(図1A)。miR−21およびpEGFRレベルの定量的比較によって、これらの2つの間で、有意な正の相関が示された(Pearson相関、r=0.71、p<0.05)(図1B)。これらの結果によって、活性化されたEGFRシグナル伝達経路は、miR−21制御の主要な、しかし単独ではない機構であることが示唆される。miR−21発現および/またはEGFR状態が、最大阻害濃度の半分(IC50)として示される、EGFR−TKI、AG1478に対する感受性と相関することが見出されたこともまた注目に値した(図1A):AG1478で細胞増殖阻害を示す5つの細胞株は、突然変異体EGFRを有する(H1650)か、または>2倍増加したレベルでmiR−21を発現する(H441およびA549)か、あるいはその両方であった(H3255およびH1975)。miR−21の機能アッセイのため、喫煙未経験者の癌由来の2つの肺腺癌細胞株を選択した(以下を参照されたい):AG1478に高い感受性を持つ(IC50、0.3μM)H3255は、突然変異体EGFRおよび最高レベルのmiR−21を伴う喫煙未経験者肺癌症例(例えば、図4Aおよび図9−表2の症例番号24、25および28)を模倣し;そしてAG1478に対して中程度の感受性を持つ(IC50、10μM)H441は、野生型EGFRを持つが、なお有意に増加したレベルのmiR−21を持つもの(例えば図4Aおよび図9−表2の症例番号5および23)を模倣した。
【0128】
[00153]活性化されたEGFRシグナル伝達は、miR−21発現を増進させる
[00154]活性化されたEGFRシグナル伝達が、miR−21発現レベルの上昇に関与しているかどうかを実験的に検証するため、EGFR突然変異体H3255細胞を、EGFの存在下または非存在下でAG1478で処理した(図2)。
【0129】
[00155]2μMまたは10μMいずれかのAG1478は、p−EGFRおよびp−Aktの減少によって示されるように、EGFリガンド刺激を伴うまたは伴わない条件下で、EGFRシグナル伝達を効率的に阻害し(図2A)、これはこの細胞株における0.3μMのIC50値と一致した。EGFの非存在下でのmiR−21発現レベルは、どちらの濃度のAG1478での処理によっても有意に抑制された(p<0.01、対応のあるt検定)(図2B、左)。EGFを添加すると、miR−21発現の〜2.5倍の上方制御が生じ、これはなお、いずれの濃度のAG1478処理によっても基底レベルに戻るまで阻害された(p<0.05、対応のあるt検定)(図2B、右)。
【0130】
[00156]これらの結果は、miR−21発現が、活性化EGFR突然変異を持つ癌細胞において活性化されたEGFRシグナル伝達によって正に制御されることを示し、そしてEGFR−TKIがmiR−21の異常な増加を有効に抑制しうることを示す。野生型EGFRを持つH441細胞において、10μMのAG1478(この細胞株におけるIC50値と同等)はmiR−21発現を有意に抑制した(p<0.05、対応のあるt検定)が、2μMでは抑制しなかった(図7)。
【0131】
[00157]したがって、H441細胞における野生型EGFRからの活性化されたシグナル伝達(図6B)は、おそらく、自己が産生したトランスフォーミング増殖因子(TGF)−アルファ刺激を通じて、やはり、AG1478によって阻害可能であり、miR−21の抑制を生じる。
【0132】
[00158]miR−21のアンチセンス阻害は、EGFR−TKIと協調してアポトーシスを誘導する
[00159]喫煙未経験者由来肺癌において上昇したmiR−21発現の生物学的活性を調べるため、H3255およびH441細胞を、miR−21をターゲットとするアンチセンスオリゴヌクレオチド(アンチmiR−21)でトランスフェクションした。これらの細胞におけるmiR−21のアンチセンス仲介抑制をqRT−PCRによって確認した(図3A)。miR−21は、報告によれば抗アポトーシス活性を有しているため、本発明者らは、本明細書において、miR−21の阻害がこれらの細胞においてアポトーシスを誘導するかどうかを、カスパーゼ−3およびカスパーゼ−7酵素活性を測定するアッセイによって決定した(図3Bおよび3C)。H3255細胞において、アンチmiR−21は、単独ではアポトーシスを誘導しなかった(図3B、左)。しかし、特に、0.2μM(IC50値よりわずかに低い濃度)のAG1478と組み合わせて用いた際、アンチmiR−21は、AG1478が誘導するアポトーシス反応を有意に増進した(図3B、右)。H441細胞において、アンチmiR−21はそれ自体で、アポトーシス反応の有意な増加を生じた(図3C、左)が、これは10μM(IC50値と同等の濃度)でのAG1478処理よりも有効でなかった。H3255細胞で観察された併用効果と同様に、アンチmiR−21は、H441細胞において、10μMのAG1478によって誘導されるアポトーシス反応をさらに増進した(図3C、右)。
【0133】
[00160]アポトーシスに対するアンチmiR−21の影響を、アポトーシス反応におけるカスパーゼ−3の主な切断ターゲットであるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)のウェスタンブロット分析によってさらに立証した(図3D)。アンチmiR−21およびAG1478両方で処理したH3255細胞において、そしてAG1478の存在下および非存在下でアンチmiR−21で処理したH441細胞において、未切断PARPの量は顕著に減少し、ここで、アンチmiR−21はカスパーゼ3/7活性の有意な増加を引き起こした。
【0134】
[00161]実施例Iの考察
[00162]実施例Iは、ここで、喫煙未経験者における肺癌におけるmiR発現プロフィールを初めて解明した。該プロフィールを喫煙者の症例のものと比較し、そしてEGFR遺伝子の状態にしたがってデータを分析することによって、実施例Iは、喫煙未経験者における肺癌の新規分子シグネチャーを示す:
1)比較的少数のmiRの発現変化が、喫煙未経験者における肺癌形成に関与している;
2)EGFR突然変異は、miR発現のこれらの変化のいくつか、例えばmiR−21の増加を強化している可能性もある;
3)長らく探し求められてきた肺癌抑制因子遺伝子を所持する染色体領域、3p21.33上のmiR−138は、喫煙未経験者症例において、優先的に下方制御されている;そして
4)miR−21は、喫煙未経験者および喫煙者症例の両方において、最も異常に増加するmiRの1つである。
【0135】
[00163]これらの発見によって、miR−21が、肺癌形成において発癌上の役割を果たしていると同定された。したがって、本発明者らは、喫煙未経験者、ならびに喫煙者の肺癌治療における新規分子ターゲットの候補としてこれを選択した。理論によって束縛されることは望ましくないが、EGFR突然変異およびmiR−21上方制御の間の関連を考慮すると、本発明者らは、本明細書において、現在、このmiRは、その有効性がEGFR遺伝子状態および患者の喫煙歴と相関するEGFR−TKI療法の改善に関与すると考えている。
【0136】
[00164]高レベルのmiR−21発現は、喫煙者および喫煙未経験者(本発明)両方由来の肺癌を含む、多様なタイプのヒト腫瘍において見出されるが、発癌中にどのような機構がmiR−21を上方制御するかはよく理解されていない。
【0137】
[00165]EGFR突然変異体症例において、miR−21がより高レベルであることを示すmiRマイクロアレイデータ(図13−表6)に加えて、NSCLC細胞株を用いたin vitro分析によって、活性化されたEGFRシグナル伝達がmiR−21発現を上方制御することが示された。NSCLC細胞株において、miR−21発現レベルおよびp−EGFRレベル間で、統計的に有意な正の相関が観察された(図1B)。さらに、p−EGFRが上昇している2つのNSCLC細胞株、EGFR突然変異体H3255(図2)およびEGFR野生型H441(図7)において、EGFR−TKI(AG1478)での処理によって、miR−21発現が阻害されたことから、活性化されたEGFRシグナル伝達経路およびmiR−21の異常な上方制御、ならびにEGFR活性化を伴う肺癌におけるmiR−21の阻害に関する療法的基礎の間の機構的関連が提供された。多発性骨髄腫細胞において、IL6が誘導するmiR−21の上方制御をシグナル伝達すると報告されるSTAT3、または増加したp−Akt(図2Aおよび図6)は、EGFRシグナル伝達が誘導するmiR−21の上方制御を仲介しうる。にもかかわらず、EGFR突然変異またはp−EGFRを伴わないA549細胞においてmiR−21が高レベルであること(図1Aおよび図6B)、そしてEGFR突然変異およびp−EGFR増加を伴うH1650細胞においてmiR−21発現の増加がないこと(図1Aおよび図6C)によって、miR−21発現を制御するEGFR独立機構もまた存在するはずであることが示唆される。
【0138】
[00166]EGFR突然変異の存在下または非存在下で、miR−21を上昇したレベルで発現し、喫煙未経験者由来のいくつかの肺癌症例を反復するようである2つのNSCLC細胞株、H3255およびH441(図4A)において、アンチセンスオリゴヌクレオチドが仲介するノックダウンを成功裡に行って、miR−21発現を阻害した(図3A)。H441細胞において、miR−21のアンチセンス阻害は、それ自体、増加したアポトーシス反応を導き(図3Cおよび図3D)、miR−21もまた肺癌において療法ターゲットでありうることが示唆された。重要なことに、どちらの細胞株においても、アンチmiR−21は、AG1478によって誘導されるアポトーシス反応を有意に増進した(図3Bおよび図3C)。H3255細胞において、アンチmiR−21単独では効果がないこと(図3B)によって、最高レベルのp−EGFR(図3C)およびmiR−21(図1A)によって明らかである、細胞生存に向けて恒常的に活性化されたEGFRシグナル伝達経路を有効に減弱させるには、アンチmiR−21およびEGFR−TKIの併用が必要であることが示唆される可能性がある。EGFR−TKIは、肺癌のための臨床使用に広く用いられており、そして発癌性miRの阻害は、癌療法における新規の有望なアプローチであるが、実施例Iは、これらの2つの療法戦略の併用が、いずれか単独よりも有意により有効でありうることを、初めて明らかにする。この発見は、現在のEGFR−TKI療法により反応性でない傾向がある非アジア民族の肺癌患者のためのよりよい治療を開発する際に、特に重要である。実施例Iはまた、NSCLCにおいて、EGFR−TKI耐性が獲得されるのを防止し、そしてレスキューする有用性も例示し、これは臨床関連の重要な問題である。二次的T790M突然変異およびMET増幅獲得に加えて、野生型/突然変異体混合のバックグラウンド上で、EGFR野生型下位集団が選択されることによって、NSCLCにおけるEGFR−TKI耐性獲得につながる。EGFR−TKIおよびアンチmiR−21の併用を用いて、野生型EGFRに関する選択による、こうした耐性獲得を防止し、そしてレスキューすることも可能であり、これは、アンチmiR−21がEGFR野生型および突然変異体腫瘍細胞の両方に対して有効であるためである。最近、ロック化核酸で修飾したオリゴヌクレオチド(LNA−アンチmiR)を静脈内投与すると、霊長類において肝臓で発現されたmiR−122がアンタゴナイズされ、これによって、ヒト疾患の療法において、miRをin vivoでターゲティングする実現可能性が裏付けられた。
【0139】
[00167]したがって、実施例Iは、喫煙未経験者における肺癌が、喫煙者における肺癌とは別個の新規分子特性として、ユニークなmiR発現プロフィールを有することを示す。miR−21は、活性化されたEGFRシグナル伝達経路の下流エフェクターであり、そしてEGFR突然変異を伴うおよび伴わない肺癌における療法的ターゲットでありうる。miR−21のアンチセンス阻害は、EGFR−TKI療法に対する臨床反応を改善するのに有用でありうる。
【0140】
[00168]実施例Iの材料および方法
[00169]臨床試料
[00170]米国におけるメリーランド大学医学センター(n=15)、メイヨークリニック(n=7)、ならびに日本における浜松大学医学部(n=6)で、2000年から2004年に外科的切除を受けた、喫煙未経験者から、28対の肺癌組織および対応する非癌性肺組織を得た(表1およびS1)。すべての組織を、手術中に新鮮に収集し、瞬間凍結し、そして−80℃で保存した。世界保健機構TNM(腫瘍−リンパ節−転移)病期決定にしたがうと、21人の患者が第I期疾患を有し、1人が第II期疾患を有し、4人が第III期疾患を有し、そして2人が第IV期疾患を有した。22の症例はEGFR野生型であり、そして6つの症例はEGFR突然変異体であった(図8−表1および図9−表2)。各収集部位で、施設審査委員会認可およびすべての患者からの書面のインフォームドコンセントを得た。
【0141】
[00171]細胞培養
[00172]6つの肺腺癌細胞株(A549、H23、H441、H1650、H1975およびH3255)、1つの扁平細胞株(H157)および1つの大細胞型癌細胞株(H1299)を本研究で用いた。H3255は米国癌研究所によって提供され、そしてこれを5%ウシ胎児血清(GIBCO)を含むACL−4培地(GIBCO)中で維持した。A549、H23、H441、H1650、H1975、H157およびH1299をAmerican Type Culture Collection(ATCC)より購入し、そして10%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640(GIBCO)中で維持した。hTERT不死化正常ヒト気管支上皮細胞(HBET2)を樹立した。
【0142】
[00173]マイクロアレイ分析
[00174]製造者の指示にしたがって、TRIzol試薬(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)によって総RNAを単離した。先に記載するようにマイクロアレイ分析を行った。簡潔には、389プローブを3つ組で含有するmiRマイクロアレイチップ(オハイオ州マイクロRNAマイクロアレイ・バージョン3.0、オハイオ州コロンバス)上でのハイブリダイゼーションのため、5μgの総RNAを用いた。PerkinElmer ScanArray XL5Kスキャナを用いて、プロセシングしたスライドをスキャンした。Rを用い、画像定量化ソフトウェアGenePix Pro 6.0.1.00によってフラグを付けられておらず、そして表面強度がバックグラウンド強度よりも高いスポット値のみを用いた。次いで、残りのスポットをLOESS(局所荷重スキャッタープロット平滑化)で規準化し、そして複製スポットを平均化した。次いで、あらかじめプロセシングし、そして規準化したデータを、BRB−アレイツール・バージョン3.5.0(linus.nci.nih.gov/BRB−ArrayTools.html)内にインポートした。最後に、試料の75%より多くに存在する、欠損していない記録値(log value)を持つ291のmiRを選択した。
【0143】
[00175]リアルタイムRT−PCR分析
[00176]TaqManヒト・マイクロRNAアッセイキット(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を用いたqRT−PCR分析を用いて、成熟miR発現を調べた。RNU6Bを内因性対照として用いた(#4373381、Applied Biosystems)。PRISM 7700配列検出系(Applied Biosystems)を用いて、反応を行った。遺伝子発現を定量化し、そして値を2−ΔΔCTとして報告した。データを3つ組由来の平均±SDとして示した。
【0144】
[00177]細胞処理および増殖阻害アッセイ
[00178]AG1478をCalbiochem(カリフォルニア州サンディエゴ)より購入した。上皮増殖因子(EGF)をPromega(ウィスコンシン州マディソン)より購入した。EGFRシグナル伝達経路およびmiR−21発現レベルに対するAG1478の影響を評価するため、肺癌細胞株を24時間血清枯渇させ、AG1478(2μMまたは10μM)の存在下または非存在下で2時間インキュベーションし、そして次いで、EGF(20ng/ml)の存在下または非存在下で、さらに15分間インキュベーションした。
【0145】
[00179]MTSアッセイ(同仁堂、日本)によって増殖阻害を評価して、肺癌細胞株に対するAG1478の影響を調べた。細胞懸濁物(5,000細胞/ウェル)を96ウェルプレート内に植え付け、そして増加する濃度のAG1478(0、0.4、2.0、10および50μM)を添加した。37℃で72時間インキュベーションした後、MTS[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)2H−テトラゾリウム、内塩]を各ウェルに添加し、そして37℃で2時間インキュベーションし、そして次いで、450nmの試験波長で、マイクロプレート読み取り装置を用いて、吸光度を測定した。IC50値は、AG1478での処理による増殖の50%減少に必要な濃度として定義された。各実験を少なくとも3つ組で行い、そして独立に4回行った。データを平均±SDで示した。
【0146】
[00180]抗体およびウェスタンブロット分析
[00181]50mM Tris−HCl、pH 7.6、150mM NaCl、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、1% Nonidet P−40、および0.5%デオキシコール酸ナトリウムを含有する緩衝液中で、細胞を溶解した。溶解物を氷上で30分間維持し、そして次いで、13000gで30分間遠心分離した。上清を収集し、そして次いで、10μgのタンパク質を10%ゲル上でのゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜にトランスファーし、そして化学発光系(GE Healthcare Bio−Sciences Corp、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いたイムノブロッティングによって検出した。NIH ImageJ1.40g(rsb.info.nih.gov/ij/)を用いてシグナル強度を測定することによって、画像を定量化した。EGFR、ホスホEGFR(Tyr1173)、ホスホ−Akt(Ser473)、PARPおよびβアクチンを検出する抗体を、Cell Signaling Technology(マサチューセッツ州ビバリー)から購入した。
【0147】
[00182]オリゴヌクレオチドトランスフェクションおよびアポトーシスアッセイ
[00183]2’−O−メチルオリゴヌクレオチドを、Integrated DNA Technologies(アイオワ州コーラルビル)で化学的に合成した。2’−O−メチルオリゴヌクレオチドは、以下の配列を有した:2’OMe増進緑色蛍光タンパク質(EGFP)(アンチEGFP)5’−AAG GCA AGC UGA CCC UGA AGU−3’[配列番号1]および2’OMe−miR−21(アンチmiR−21)5’−UCA ACA UCA GUC UGA UAA GCUA−3’[配列番号2]。H441およびH3255細胞を3つ組で96ウェルプレートにプレーティングした。LipofectAMINE 2000試薬(Invitrogen)を用いて、プレーティング24時間後、細胞をトランスフェクションした。製造者の指示にしたがって、トランスフェクション複合体を調製し、そして最終オリゴヌクレオチド濃度40nMまで、細胞に直接添加した。トランスフェクション培地をトランスフェクション8時間後に交換した。72時間後、0.2μMのAG1478の存在下または非存在下、24時間(H3255)、あるいは10μMのAG1478の存在下または非存在下、72時間(H441)、細胞をインキュベーションした。製造者の指示にしたがって、ApoONE均質カスパーゼ3/7アッセイ(Promega)を用いて、カスパーゼ3およびカスパーゼ7の活性を分析した。カスパーゼ基質と6時間インキュベーションした後、励起および発光のため、それぞれ485および535nmの波長を用い、蛍光プレート読み取り装置上で試料を測定した。各実験を3つ組で、そして少なくとも4回、独立に行った。データを平均±SDで示した。
【0148】
[00184]統計分析:
[00185]対応のあるt検定は、肺癌組織および正常肺組織間で示差的に発現されるmiRを同定した(p<0.01、FDR<0.15)。本発明者らはまた、F検定を用いて、EGFR突然変異体および野生型肺癌間で示差的に発現されるmiRも同定した(p<0.01、FDR<0.15)。対応のあるt検定を用いて、腫瘍および対応する正常組織間で、qRT−PCRデータに関して、miR発現(miR−21、miR−126およびmiR−486)の相違を分析した。Pearson相関に関して、Graphpad Prism v5.0(Graphpad Softoware Inc、カリフォルニア州ラホヤ)分析を用いた。すべての統計検定は両側であり、そして統計的有意性をP<0.05と定義した。
【0149】
[00186]実施例II
[00187]喫煙未経験者および喫煙者由来の肺癌のmiRプロファイリング比較
[00188]本発明の28の喫煙未経験者症例のオハイオ州miRマイクロアレイデータ(バージョン3.0)および本発明者らの以前の研究における58の喫煙者肺腺癌のもの(バージョン1.0)とさらなる23の喫煙者症例(バージョン2.0)(図11−表4)を分析した。すべてのバージョンの間で共通しているプローブのみを含む発現データを、各バージョン群内で、Rを用いてLOESS規準化した。次に、各バージョン内でzスコアを計算し、そしてすべてのバージョン由来のデータを統合した。次いで、統合したデータセットをBRB−アレイツール・バージョン3.5.0内にインポートして、示差的に発現されるmiRを同定した(p<0.01、FDR<0.2)。
【0150】
[00189]宿主遺伝子のmRNA発現データ
[00190]20の喫煙未経験者肺腺癌症例のメッセンジャーRNAマイクロアレイデータを、GEOデータベース(ncbi.nlm.nih.gov/geo/、GSE10072)からダウンロードして、そしてBRB−アレイツール・バージョン3.5.0によって分析した。
【0151】
[00191]実施例III
[00192]肺癌患者を治療する方法
[00193]本実施例は、本明細書の組成物での治療に好ましい反応を有する可能性が高い患者を選択し、そして治療する方法を記載する。
【0152】
[00194]肺癌と診断された患者は、通常、まず、治癒を意図して肺切除術を受ける。患者から取り除いた肺組織の一部から肺腫瘍試料を得る。次いで、当該技術分野に周知の任意の適切な小分子RNA抽出法を用いて、例えばTRIZOLTMを用いることによって、RNAを組織試料から単離する。次いで、精製したRNAを、miR21または図13−表6に開示する他の示差的に発現されるmiRに特異的なプライマーを用いたRT−PCRに、場合によってEGFR遺伝子分析またはEGFRリン酸化分析と組み合わせて供する。これらのアッセイを行って、腫瘍における関連RNAの発現レベルを決定する。示差的に発現されるmiR発現パターンが決定された場合、特に、EGFR突然変異体状態が解明された場合、患者は本明細書の組成物での治療の候補となる。
【0153】
[00195]したがって、当該技術分野に知られる方法にしたがって、患者を療法的に有効な量の組成物で治療する。組成物の用量および投薬措置は、多様な要因、例えば患者の健康状態および肺癌の病期に応じて多様であろう。典型的には、治療は、長期に渡り、多数回の用量で投与される。
【0154】
[00196]実施例IV
[00197]EGFR突然変異体肺癌患者を診断する方法
[00198]1つの特定の側面において、本明細書において、EGFR突然変異体肺癌を有するかまたはEGFR突然変異体肺癌を発展させるリスクがあるかどうかを診断する方法を提供する。該方法には、一般的に、図13−表6中のmiRの示差的miR発現パターン、特に対照に比較したmiR−21上方制御を測定する工程が含まれる。示差的miR発現パターンが確認された場合、この結果は、被験体がEGFR突然変異体肺癌を有するかまたはEGFR突然変異体肺癌を発展させるリスクがあるかいずれかの指標となる。特定の態様において、ノーザンブロット分析を用いて、少なくとも1つの遺伝子産物のレベルを測定する。また、特定の態様において、試験試料中の少なくとも1つの遺伝子産物のレベルは、対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベルより低く、そして/または試験試料中の少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベルより大きい。
【0155】
[00199]実施例V
[00200]miR遺伝子産物の測定
[00201]被験体から得た試験試料からRNAを逆転写して、ターゲット・オリゴデオキシヌクレオチド・セットを提供し;ターゲット・オリゴデオキシヌクレオチドを、miR特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせて、試験試料に関するハイブリダイゼーション・プロフィールを提供し;そして試験試料ハイブリダイゼーション・プロフィールを、対照試料から生成したハイブリダイゼーション・プロフィールに比較することによって、少なくとも1つのmiR遺伝子産物レベルを測定してもよい。少なくとも1つのmiRのシグナルが改変されていると、被験体が肺癌、特にEGFR突然変異体肺癌を有するか、またはこれを発展させるリスクがあるかいずれかの指標となる。
【0156】
[00202]実施例VI
[00203]診断および療法適用
[00204]別の側面において、本明細書において、対照試料から生じたシグナルに比較して、少なくとも1つのmiRシグナルが脱制御されている(例えば下方制御および/または上方制御される)、被験体においてEGFR突然変異体肺癌を治療する方法を提供する。
【0157】
[00205]やはり本明細書において、被験体における1以上の不都合な予後マーカーと関連するEGFR突然変異体肺癌を有するか、または該癌を発症するリスクがあるかどうかを診断する方法であって、被験体から得た試験試料からRNAを逆転写して、ターゲット・オリゴデオキシヌクレオチドセットを提供し;ターゲット・オリゴデオキシヌクレオチドを、miR特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせて、試験試料に関するハイブリダイゼーション・プロフィールを提供し;そして試験試料ハイブリダイゼーション・プロフィールを、対照試料から生成したハイブリダイゼーション・プロフィールに比較することによる、前記方法もまた提供する。シグナルの変化は、被験体が癌を有するか、癌を発症するリスクがあることを示す。
【0158】
[00206]また、本明細書において、表6のmiRの少なくとも2つのmiR遺伝子産物が、対照細胞に比較して、被験体の癌細胞において下方制御されているかまたは上方制御されている、EGFR突然変異体肺癌を有する被験体において、EGFR突然変異体肺癌を治療する方法も提供する。少なくとも2つの遺伝子産物が癌細胞において下方制御されている場合、該方法は、被験体における癌細胞の増殖が阻害されるように、少なくとも2つの単離遺伝子産物の有効量を被験体に投与する工程を含む。2以上の遺伝子産物が癌細胞において上方制御されている場合、該方法は、被験体における癌細胞の増殖が阻害されるように、少なくとも1つの遺伝子産物の発現を阻害するための少なくとも1つの化合物の有効量を被験体に投与する工程を含む。また、本明細書において、被験体においてEGFR突然変異体肺癌を治療する方法であって:EGFR突然変異体肺癌細胞において、対照細胞に比較して、少なくとも2つのmiR(図13−表6に示す)遺伝子産物の量を決定し;そして:被験体における癌細胞の増殖が阻害されるように、癌細胞において発現される遺伝子産物の量が、対照細胞で発現される遺伝子産物の量より少ない場合、少なくとも2つの遺伝子産物の有効量を被験体に投与するか;または癌細胞において発現される遺伝子産物の量が、対照細胞で発現される遺伝子産物の量より多い場合、少なくとも2つの遺伝子産物発現を阻害するため少なくとも1つの化合物の有効量を被験体に投与することによって、EGFR突然変異体肺癌細胞で発現される遺伝子産物の量を改変する工程を含む、前記方法も提供する。
【0159】
[00207]実施例VII
[00208]組成物
[00209]また、本明細書において、少なくとも2つの単離miR(図13−表6に示す)遺伝子産物および薬学的に許容されうるキャリアーを含む、EGFR突然変異体肺癌を治療するための薬学的組成物も提供する。特定の態様において、薬学的組成物は、適切な対照細胞に比較して、EGFR突然変異体肺癌細胞において、下方制御されている遺伝子産物に対応する遺伝子産物を含む。
【0160】
[00210]別の特定の態様において、薬学的組成物は、少なくとも1つの発現制御因子(例えば阻害剤)化合物および薬学的に許容されうるキャリアーを含む。
【0161】
[00211]また、本明細書において、適切な対照細胞に比較して、EGFR突然変異体肺癌細胞で上方または下方制御されている遺伝子産物に特異的な少なくとも1つの発現制御因子化合物を含む、薬学的組成物も提供する。
【0162】
[00212]実施例VIII
[00213]キット
[00214]本明細書記載の任意の組成物は、キット中に含まれてもよい。限定されない例において、miRを単離し、miRを標識し、そして/またはアレイを用いてmiR集団を評価するための試薬がキット中に含まれる。キットには、miRプローブを生成するかまたは合成するための試薬がさらに含まれてもよい。キットは、したがって、適切な容器手段中に、標識ヌクレオチド、またはその後に標識される未標識ヌクレオチドを取り込むことによって、miRを標識するための酵素を含む。キットにはまた、反応緩衝剤、標識緩衝剤、洗浄緩衝剤、もしくはハイブリダイゼーション緩衝剤のような1以上の緩衝剤、miRプローブを調製するための化合物、およびmiRを単離するための構成要素が含まれてもよい。他のキットには、miRに相補的なオリゴヌクレオチドを含む核酸アレイを作製するための構成要素が含まれてもよく、そしてしたがって、例えば固体支持体が含まれてもよい。
【0163】
[00215]アレイを含む任意のキット態様に関して、本明細書の配列いずれかのすべてまたは一部に同一であるかまたは相補的である配列を含有する核酸分子があってもよい。
【0164】
[00216]キットの構成要素を水性媒体または凍結乾燥型のいずれかでパッケージングしてもよい。キットの容器手段には、一般的に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジまたは他の容器手段が含まれ、この中に構成要素が配置されてもよく、そして好ましくは適切にアリコットされてもよい。キット中に1より多い構成要素がある(標識試薬および標識はともにパッケージングされてもよい)場合、キットはまた、一般的に、第二、第三または他のさらなる容器を含有し、この中にさらなる構成要素を別個に配置してもよい。しかし、構成要素の多様な組み合わせがバイアル中に含まれてもよい。本発明のキットにはまた、典型的には、商業的販売のための密封状態で(in close confinement)、核酸および任意の他の試薬を含有するための手段が含まれるであろう。こうした容器には、注入またはブロー成形プラスチック容器が含まれてもよく、この中に望ましいバイアルを保持する。
【0165】
[00217]キットの構成要素が1つおよび/またはそれより多くの溶液中で提供される場合、溶液は水溶液であり、無菌水溶液が1つの好ましい溶液である。キット中に含まれてもよい他の溶液は、混合試料からmiRを単離しそして/または濃縮する際に関与する溶液である。
【0166】
[00218]しかし、キットの構成要素を乾燥粉末(単数または複数)として提供してもよい。試薬および/または構成要素が乾燥粉末として提供される場合、粉末は適切な溶媒の添加によって再構成されてもよい。溶媒はまた、別の容器手段中で提供されてもよいことが想定される。キットにはまた、標識されたmiRの単離を促進する構成要素も含まれてもよい。キットにはまた、miRを保存するかまたは維持するか、あるいはその分解に対して保護する構成要素も含まれてもよい。構成要素はRNアーゼ不含であってもよいし、またはRNアーゼに対して保護してもよい。
【0167】
[00219]また、キットは一般的に、適切な手段で、各個々の試薬または溶液に関して別個の容器を含んでもよい。キットにはまた、キット構成要素を使用するための、またそれとともに、キット中に含まれていない任意の他の試薬を使用するための説明書も含まれてもよい。説明書には、実行可能な変型が含まれてもよい。こうした試薬が本発明のキットの態様であることが予期される。また、キットは上に同定される特定の項目に限定されず、そしてキットには、miRの操作または特徴付けに使用される任意の試薬が含まれてもよい。
【0168】
[00220]miRアレイの背景において論じられる任意の態様は、より一般的に、本発明のスクリーニングまたはプロファイリング法またはキットにおいて使用されてもよいこともまた予期される。言い換えると、特定のアレイ中に含まれてもよいものを記載する任意の態様は、より一般的にmiRプロファイリングの背景において実施されてもよく、そしてアレイ自体を伴わなくてもよい。
【0169】
[00221]任意のキット、アレイまたは他の検出技術またはツール、あるいは任意の方法は、これらのmiRのいずれに関するプロファイリングを伴ってもよいこともまた予期される。また、miRアレイの背景において論じられる任意の態様は、本発明の方法において、アレイ形式を伴いまたは伴わずに実行されてもよく;言い換えると、miRアレイ中の任意のmiRを、当業者に知られる任意の技術にしたがって、本発明の任意の方法でスクリーニングするかまたは評価してもよい。アレイ形式は、スクリーニングおよび診断法を実施するのに必要ではない。
【0170】
[00222]療法、予後、または診断適用のためにmiRアレイを用いるためのキットおよびこうした使用が、本明細書において、本発明者らによって予期される。キットには、miRアレイ、ならびにアレイ上のmiRに関する標準または規準化miRプロフィールに関する情報が含まれてもよい。また、特定の態様において、対照RNAまたはDNAがキット中に含まれてもよい。対照RNAは、標識および/またはアレイ分析のための陽性対照として使用可能なmiRであってもよい。
【0171】
[00223]本解説の方法およびキットは、本明細書において、広くそして一般的に記載されてきている。一般的な開示内に属する、より狭い種および亜属の集団の各々もまた、本解説の一部を形成する。これには、条件付の、または排除される物質が本明細書に具体的に列挙されているかどうかに関わらず、属から任意の対象を除去する負の限定を伴う、本解説の一般的な説明が含まれる。
【0172】
[00224]実施例IX
[00225]アレイ調製およびスクリーニング
[00226]また、本明細書において、複数のmiR分子または前駆体miR分子に完全にもしくはほぼ完全に相補的であるかまたは同一であり、そして空間的に分離された構成で支持物質上に配置されている、核酸分子(プローブ)の秩序だったマクロアレイまたはマイクロアレイである、miRアレイの調製および使用も提供する。マクロアレイは、典型的には、ニトロセルロースまたはナイロンのシートであり、その上にプローブがスポットされている。マイクロアレイは、最大10,000の核酸分子が、典型的には1〜4平方センチメートルの領域内にフィット可能であるように、より密に核酸プローブを配置する。
【0173】
[00227]核酸分子、例えば遺伝子、オリゴヌクレオチド等を支持体上にスポットするか、または支持体上、in situでオリゴヌクレオチド配列を製造することによって、マイクロアレイを製造してもよい。スポットされるまたは製造される核酸分子は、平方センチメートルあたり最大約30の非同一核酸分子の高密度マトリックスパターンで、またはそれより高密度で、例えば、平方センチメートルあたり最大約100またはさらに1000まで適用可能である。マイクロアレイは、典型的には、フィルターアレイのニトロセルロースに基づく物質とは対照的に、コーティングされたガラスを固体支持体として用いる。miR相補核酸試料の秩序だったアレイを有することによって、各試料の位置を追跡し、そして元来の試料と関連付けることも可能である。
【0174】
[00228]複数の別個の核酸プローブが固体支持体表面と安定に会合する、多様な異なるアレイデバイスが当業者に知られる。アレイのために有用な支持体には、ナイロン、ガラスおよびシリコンが含まれる。アレイは、いくつかの異なる点で多様であってもよく、これには、平均プローブ長、プローブの配列または種類、プローブおよびアレイ表面間の結合の性質、例えば共有または非共有結合等が含まれる。本明細書記載の標識およびスクリーニング法、ならびにアレイは、プローブがmiRを検出する以外のいかなるパラメーターに関しても、その有用性を限定されず;その結果、方法および組成物を、多様な異なるタイプのmiRアレイとともに用いてもよい。
【0175】
[00229]本発明の原理を適用可能な、多くのありうる態様を考慮すると、例示する態様は単に本発明の好ましい例であると認識すべきであり、そして本発明の範囲に対する限定と解釈してはならない。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求項によって定義される。本発明者らは、したがって、本発明を、これらの請求項の範囲および精神の範囲内にあるすべてのものと請求する。
【0176】
[00230]本発明は、多様なそして好ましい態様に言及して記載されてきているが、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多様な変化を行ってもよく、そしてその要素を同等物で置換してもよいことが、当業者には理解されなければならない。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の解説に対して、特定の状況または物質を適応させるよう、多くの修飾を行ってもよい。したがって、本発明は、本発明を実施するために予期される、本明細書に開示する特定の態様に限定されず、本発明には、請求項の範囲内に属するすべての態様が含まれることが意図される。
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
[0001]本出願は、その開示が本明細書に援用される、2009年2月26日出願の米国仮出願第61/155,709号の優先権を請求する。
【0002】
連邦が支援する研究に関する言及
[0002]本発明は、壁内研究プログラム、ならびに米国衛生研究所、米国癌研究所、および癌研究センターの元で政府の援助を受けて行われた。米国政府は本発明に特定の権利を有する。
【0003】
配列表
[0003]本出願は、EFSウェブを通じて提出されており、そしてその全体が本明細書に援用される配列表を含有する。2010年2月23日に作製されたASCIIコピーは、604 50753 SEQ LIST 06008−2.txtと名付けられており、そしてサイズは758バイトである。
【背景技術】
【0004】
[0004]肺癌は、癌による死亡の主因であり、そして米国および世界の両方において、喫煙関連死亡の最も一般的な原因である。しかし、すべての肺癌症例のおよそ10〜25%は、喫煙に起因しない。喫煙未経験者における肺癌に特に関心を向ける最近の研究によって、これらが喫煙者におけるものとは異なる特性を有することが示唆された: p53およびK−ras突然変異のGからTへのトランスバージョンは、喫煙者由来の肺腺癌におけるより、喫煙未経験者由来のものでより頻度が減っており;そして上皮増殖因子受容体(EFGR)遺伝子の突然変異は、喫煙未経験者の症例でより頻繁に観察される。
【0005】
[0005]ゲフィチニブおよびエルロチニブを含むEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR−TKI)は、現在、臨床的に使用されており、そしてEGFR突然変異体症例において、優先的に有効である。しかし、30%ものEGFR突然変異体症例および90%ものEGFR野生型症例は、EGFR−TKIに療法的反応を示さなかった。
【0006】
[0006]マイクロRNA[交換可能に:「miRNA」、「miR(単数または複数)」、「miR(単数または複数)」の遺伝子産物(単数または複数)]は、癌において欠失するかまたは増幅される染色体領域に頻繁に位置する遺伝子によってコードされる、約18〜25ヌクレオチドの小分子ノンコーディングRNA分子であり、miRがヒト腫瘍形成に関与する新規クラスの遺伝子であることが示唆される。miRの発現レベルは、肺癌を含む多様なタイプのヒト癌において改変される。最近、miRは、白血病、肺癌および結腸癌における診断および予後マーカーとして示されてきている。本発明者らは、本明細書において、miRがヒト癌における療法的ターゲットになりうると考えている。
【0007】
[0007]本発明者らは、以前、104の肺癌のmiR発現プロフィールを分析してきており、このうち99は喫煙者由来であり、そして高miR−155および低let−7aは劣った生存と相関することを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]要約すると、新規療法ターゲットおよびEGFR−TKI療法を改善する方法の同定は、癌、特に肺癌のより優れた治療に対して非常に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本発明は、少なくとも部分的に、喫煙未経験者由来の肺癌におけるmiRの広範囲の発現プロフィールの発見に基づく。喫煙未経験者対喫煙者症例において、およびEGFR野生型対EGFR突然変異体症例において、miR発現プロフィールを比較すると、喫煙未経験者由来の肺癌のユニークな病因が示され、そしてmiR発現のEGFRが仲介する制御が明らかになる。
【0010】
[0010]本明細書に提示するin vivo機能分析はまた、miRをコードする特定の遺伝子またはその遺伝子産物の調節が、単独で、他のこうした調節因子と組み合わせて、他の癌治療と組み合わせてのいずれかで療法的であり、そしてEGFR−TKI治療と組み合わせて療法的でありうることも示す。
【0011】
[0011]広い態様において、本発明は、少なくとも1つのアンチセンスmiRおよび少なくとも1つのさらなる組成物を含む、物質の組成物である組成物であって、アンチセンスmiRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、上皮増殖因子受容体喫煙未経験者突然変異体癌細胞において示差的に発現されるmiRに対してアンチセンスであり、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である、前記組成物を提供する。特定の態様において、少なくとも1つのさらなる組成物は:化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ(panitumab);ザルツママブ(zalutumamab);ニモツザマブ(nimotuzamab);マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択されうる。
【0012】
[0012]また、特定の態様において、こうした組成物は、アンチセンスmiRが、群:miR−21;miR−210;miR−129より選択されうるmiRに対してアンチセンスであるmiRより選択される。やはり特定の態様において、こうした組成物には、少なくとも1つのアンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスであるもの;癌を治療するのに有用な少なくとも1つのさらなる組成物が上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるもの;または好ましくは、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤がAG1478であるものが含まれてもよい。
【0013】
[0013]本発明がやはり提供するのは、少なくとも1つのアンチセンスmiRおよび少なくとも1つのさらなる組成物を含む物質の組成物であって、miRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、上皮増殖因子受容体突然変異体喫煙未経験者癌細胞において上方制御され、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である、前記組成物である。特定の態様において、miRは、群:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択される。
【0014】
[0014]やはり提供するのは、少なくとも1つのアンチセンスmiRおよび少なくとも1つの組成物を含む物質の組成物であって、アンチセンスmiRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、EGFR突然変異体喫煙未経験者癌細胞において上方制御されるmiRに対してアンチセンスであり、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である、前記組成物である。特定の態様において、これらの組成物は、アンチセンスmiRが、群:miR−21;miR−210;およびmiR−129より選択されるmiRに対してアンチセンスであるmiRより選択されうるものである。
【0015】
[0015]他の広い態様において、試験試料において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞を同定する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、試験試料が上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞を含有すると同定される、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法には、miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択されるものが含まれる。
【0016】
[0016]他の広い態様において、喫煙未経験被験体が肺癌を有するか、または発症するリスクがあるかどうかを決定する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、該被験体が肺癌を有するか、または発症するリスクがあると診断される、前記方法を提供する。特定の態様において、こうした方法は、試験試料および対照における上皮増殖因子受容体突然変異体状態を比較する工程をさらに含んでもよい。また、特定の態様において、これらの方法には、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を用いて、上皮増殖因子受容体突然変異体状態を決定するものが含まれてもよい。やはり好ましいのは、miRが、群:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択される、記載するような方法である。
【0017】
[0017]他の広い態様において、喫煙未経験癌患者における予後を提供する方法であって:試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、劣った予後が示される、前記方法を提供する。特定の態様において、こうした方法には、miRが、群:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択されるものが含まれてもよい。
【0018】
[0018]別の広い態様において、患者において上皮増殖因子受容体突然変異体癌を診断する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、該被験体が上皮増殖因子受容体突然変異体癌を有すると診断される、前記方法を提供する。特定の態様において、方法には、miRが、群:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択されるものが含まれてもよい。
【0019】
[0019]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌患者における予後を提供する方法であって:試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、劣った予後が示される、前記方法を提供する。特定の態様において、こうした方法には、miRが、群:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択されるものが含まれてもよい。
【0020】
[0020]別の広い態様において、癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の本明細書の組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。特定の態様において、該方法には、治療する癌が:神経芽細胞腫;肺癌;胆管癌;非小細胞肺癌;肝細胞癌;リンパ腫;鼻咽頭癌;卵巣癌;頭頸部扁平上皮癌;子宮頸部扁平上皮癌;胃癌;結腸癌;子宮頸癌;胆嚢癌;前立腺癌;乳癌;精巣胚細胞腫瘍;大細胞型リンパ腫;濾胞性リンパ腫;結腸直腸癌;悪性胸膜中皮腫;神経膠腫;甲状腺癌;基底細胞癌;T細胞リンパ腫;t(8;17)−前リンパ球性白血病;骨髄異形成症候群;膵臓癌;t(5;14)(q35.1;q32.2)白血病;悪性線維性組織球腫;胃腸間質腫瘍;および肝芽腫を含む群より選択されるものが含まれる。
【0021】
[0021]別の広い態様において、癌を治療する必要がある喫煙未経験患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の、miR−21に対してアンチセンスである組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法には、治療する癌が肺癌であるものが含まれてもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、アンチセンスmiR−21および上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含んでもよく;そして特定の態様において、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤はAG1478である。1つの特定の態様において、これらの方法には、治療する癌が腺癌であるものが含まれる。
【0022】
[0022]別の広い態様において、癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のアンチセンスmiRを投与する工程を含み、アンチセンスmiRが、群:miR−21;miR−210;miR−129より選択されるmiRに対してアンチセンスである、前記方法を提供する。
【0023】
[0023]別の広い態様において、癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のアンチセンスmiRを投与する工程を含み、アンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスである、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法には、治療する癌が:神経芽細胞腫および肺癌を含む群より選択されるものが含まれる。やはり特定の態様において、これらの方法には、治療する癌が腺癌であるものが含まれてもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、アジュバントを投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含んでもよい。
【0024】
[0024]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の本明細書の組成物を投与する工程を含む、前記方法を提供する。やはり提供するのは、薬学的に有効な量のアンチセンスmiR−21を投与する工程を含む、上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法である。
【0025】
[0025]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR発現阻害剤を投与する工程を含み、miRが群:miR−21;miR−210;およびmiR−129より選択される、前記方法を提供する。やはり提供するのは、上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR−21発現阻害剤を投与する工程を含む、前記方法である。特定の態様において、これらの方法は:化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含んでもよい。
【0026】
[0026]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR発現促進組成物を投与する工程を含み、miRが、群:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択される、前記方法を提供する。
【0027】
[0027]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量の本明細書の組成物を導入する工程を含む、前記方法を提供する。
【0028】
[0028]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、上皮増殖因子受容体チロシン(EGFR)キナーゼ阻害剤と組み合わせて、アポトーシスに有効な量のアンチセンスmiR−21を導入する工程を含む、前記方法を提供する。
【0029】
[0029]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のアンチセンスmiRを導入する工程を含み、アンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスである、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法には、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞が腺癌細胞であるものが含まれてもよい。やはり特定の態様において、これらの方法には、腺癌細胞が、群:H3255細胞;H1975細胞;およびH1650細胞より選択されるものが含まれてもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、アジュバントを導入する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、群:化学療法薬剤;幹細胞;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブより選択される組成物を導入する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含んでもよい。
【0030】
[0030]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR発現阻害剤を導入する工程を含み、miRが:miR−21;miR−210;およびmiR−129を含む群より選択される、前記方法を提供する。
【0031】
[0031]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR−21発現阻害剤を導入する工程を含む、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法は:化学療法薬剤;幹細胞;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含んでもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含んでもよい。
【0032】
[0032]別の広い態様において、上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR発現促進組成物を導入する工程を含み、miRが、群:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択される、前記方法を提供する。
【0033】
[0033]別の広い態様において、薬学的に有用な組成物を同定するための方法であって:i)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物にアンチセンスmiRを導入し、ここでアンチセンスmiRは:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aの群より選択されるmiRに対してアンチセンスであり;ii)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物に試験組成物を導入し;そしてiii)アポトーシスを誘導する試験組成物を、薬学的に有用な組成物と同定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0034】
[0034]別の広い態様において、薬学的に有用な組成物を同定するための方法であって:i)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物にアンチセンスmiRを導入し、ここでアンチセンスmiRは:miR−21に対してアンチセンスであり;ii)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物に試験組成物を導入し;そしてiii)アポトーシスを誘導する試験組成物を、薬学的に有用な組成物と同定する工程を含む、前記方法を提供する。特定の態様において、これらの方法には、癌細胞が肺癌細胞であるものが含まれてもよい。やはり特定の態様において、これらの方法は、リン酸化上皮増殖因子受容体レベルを同定する工程をさらに含んでもよい。
【0035】
[0035]別の広い態様において、肺癌と診断された患者の臨床転帰を予測する方法であって、患者から得た癌細胞試料においてmiR−21発現レベルを検出する工程を含み、対照に比較してmiR−21レベルの1.5倍以上の増加があると、上皮増殖因子受容体突然変異体状態と組み合わせて、生存減少が予測される、前記方法を提供する。
【0036】
[0036]別の広い態様において、肺癌治療用の療法剤を同定する方法であって、in vitroで候補剤をスクリーニングして、miR−21の発現を減少させる剤を選択し、それによって肺癌治療用の剤を同定する工程を含む、前記方法を提供する。
【0037】
[0037]別の広い態様において、肺癌において示差的に発現されるmiRを同定するためのキットであって、群:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択されるmiRの少なくとも1つの分子同定因子を含む、前記キットを提供する。
【0038】
[0038]別の広い態様において、肺癌において示差的に発現されるmiR−21を同定するためのキットであって、miR−21の少なくとも1つの分子同定因子を含み、分子同定因子が、群:プローブ;プライマー;抗体;miR;ロック化miR;または小分子より選択される、前記キットを提供する。
【0039】
[0039]本発明の多様な目的および利点は、付随する図を踏まえて読むと、好ましい態様の以下の詳細な説明から、当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】[0040]図1A〜1B: ヒト肺癌細胞株におけるmiR−21発現。
【0041】
[0041]図1A: qRTーPCRによってmiR−21発現レベルを分析し、そしてHBET2(hTERT不死化正常ヒト気管支上皮細胞)(1.0と定義、未提示)に対して表した。データは3回の独立の実験由来の平均±SDであった。*、HBET2と比較した際のp<0.05、スチューデントt検定。MTSアッセイによって細胞増殖に対するAG1478の抑制効果を決定し、そしてIC50(最大阻害濃度の半分)として示した。Sq、扁平上皮癌;La、大細胞型癌;Ad、腺癌;S、喫煙者の症例由来;N、喫煙未経験者の症例由来;N/A、情報入手不能;Wt、EGFR野生型;Mt*、EGFR突然変異体ΔE746−A750;Mt**、L858RおよびT790M;Mt***、L858R。
【0042】
[0042]図1B: miR−21発現およびp−EGFRレベル間の相関(Pearson相関、r=0.71、p<0.05)。miR−21データは図1A由来であり、そしてp−EGFRデータは、図6に示す結果を定量的に分析することによって得られた。
【図2】[0043]図2A〜2B: AG1478は、miR−21発現を抑制する。miR−21の高発現およびEGFR突然変異によって特徴付けられるH3255肺腺癌細胞を、24時間血清枯渇させ、そして次いで、AG1478(2μMまたは10μM)の存在下または非存在下のいずれかで、2時間増殖させ、その後、20ng/mlのEGFに15分間曝露し、または曝露しなかった。
【0043】
[0044]図2A: ホスホEGFR(p−EGFR)およびホスホAkt(p−Akt)発現に対するAG1478の影響。βアクチンは装填対照であった。
【0044】
[0045]図2B: EGFリガンド刺激を伴いまたは伴わずに、AG1478処理(2μMまたは10μM)した後の、qRT−PCRによるmiR−21発現レベル分析。miR−21発現レベルを、EGFの非存在下での未処理細胞に対する相対値として表した。データは、4回の独立の実験由来の平均±SDであった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図3A】[0046]図3A〜3D: miR−21の阻害はAG1478が誘導するアポトーシスを増進する。
【0045】
[0047]図3A: 細胞を40nMのアンチmiR−21(+)または対照オリゴヌクレオチド(アンチEGFP)(−)で72時間トランスフェクションし、そしてqRT−PCRによって調べた。アンチmiR−21トランスフェクション後のmiR−21発現レベルを、対照に対する相対値として表した。データは、3回の独立の実験由来の平均±SDであった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図3B】図3A〜3D: miR−21の阻害はAG1478が誘導するアポトーシスを増進する。
【0046】
[0048]図3B〜3C: 細胞(H3255またはH441)を40nMのアンチmiR−21(+)またはアンチEGFP(−)で72時間トランスフェクションし、そして次いで、0.2μMのAG1478の存在下または非存在下で24時間(H3255)、あるいは10μMの存在下または非存在下で72時間(H441)、増殖させた。カスパーゼ3/7の活性を、アンチmiR−21およびAG1478の非存在下での細胞の活性に対する相対値として表した。データは、少なくとも4回の独立の実験由来の平均±SDであった。*、p<0.05、スチューデントt検定。
【図3C】図3A〜3D: miR−21の阻害はAG1478が誘導するアポトーシスを増進する。
【0047】
[0048]図3B〜3C: 細胞(H3255またはH441)を40nMのアンチmiR−21(+)またはアンチEGFP(−)で72時間トランスフェクションし、そして次いで、0.2μMのAG1478の存在下または非存在下で24時間(H3255)、あるいは10μMの存在下または非存在下で72時間(H441)、増殖させた。カスパーゼ3/7の活性を、アンチmiR−21およびAG1478の非存在下での細胞の活性に対する相対値として表した。データは、少なくとも4回の独立の実験由来の平均±SDであった。*、p<0.05、スチューデントt検定。
【図3D】図3A〜3D: miR−21の阻害はAG1478が誘導するアポトーシスを増進する。
【0048】
[0049]図3D: 未切断PARPをウェスタンブロットによって評価した。上記のように、細胞をアンチmiR−21またはアンチEGFPでトランスフェクションし、そして次いで、2μMのAG1478の存在下または非存在下で72時間増殖させた。βアクチンは装填対照であった。
【図4A】[0050]図4A〜4C: 喫煙未経験者試料由来のmiR−21(図4A)、miR−126(図4B)およびmiR−486(図4C)発現。qRT−PCRを用いて、20対の腫瘍および正常組織における各miRの発現レベルを分析した。15の症例は、EGFR野生型(症例番号1、3、5、6、8、9、10、11、12、13、14、15、23、26および27)であり、そして5つの症例はEGFR突然変異体(症例番号2、4、24、25および28)であった。高レベルのmiR−21を発現する5つの腫瘍は、3つのEGFR突然変異体(症例番号24、25および28)および2つのEGFR野生型(症例番号5および23)症例由来であった。反応は、各試料に関して3つ組であった。発現レベルをRNU6Bで規準化し、2−ΔΔCT法を用いて決定し、そして正常組織の平均値に比較して提示した。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図4B】[0050]図4A〜4C: 喫煙未経験者試料由来のmiR−21(図4A)、miR−126(図4B)およびmiR−486(図4C)発現。qRT−PCRを用いて、20対の腫瘍および正常組織における各miRの発現レベルを分析した。15の症例は、EGFR野生型(症例番号1、3、5、6、8、9、10、11、12、13、14、15、23、26および27)であり、そして5つの症例はEGFR突然変異体(症例番号2、4、24、25および28)であった。高レベルのmiR−21を発現する5つの腫瘍は、3つのEGFR突然変異体(症例番号24、25および28)および2つのEGFR野生型(症例番号5および23)症例由来であった。反応は、各試料に関して3つ組であった。発現レベルをRNU6Bで規準化し、2−ΔΔCT法を用いて決定し、そして正常組織の平均値に比較して提示した。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図4C】[0050]図4A〜4C: 喫煙未経験者試料由来のmiR−21(図4A)、miR−126(図4B)およびmiR−486(図4C)発現。qRT−PCRを用いて、20対の腫瘍および正常組織における各miRの発現レベルを分析した。15の症例は、EGFR野生型(症例番号1、3、5、6、8、9、10、11、12、13、14、15、23、26および27)であり、そして5つの症例はEGFR突然変異体(症例番号2、4、24、25および28)であった。高レベルのmiR−21を発現する5つの腫瘍は、3つのEGFR突然変異体(症例番号24、25および28)および2つのEGFR野生型(症例番号5および23)症例由来であった。反応は、各試料に関して3つ組であった。発現レベルをRNU6Bで規準化し、2−ΔΔCT法を用いて決定し、そして正常組織の平均値に比較して提示した。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図5A】[0051]図5A〜5C: 喫煙者に対する、喫煙未経験者におけるmiR−21(図5A)、miR−126*(図5B)およびmiR−138(図5C)発現。肺腺癌および正常肺組織の喫煙未経験者由来の13対および喫煙者由来の14対をqRT−PCRによって分析した。反応は、各試料に関して3つ組であった。Log2 2−ΔCTとして相対的発現を定量化し、ここでΔCT=(CTmiR−CTRNU6B)であった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図5B】[0051]図5A〜5C: 喫煙者に対する、喫煙未経験者におけるmiR−21(図5A)、miR−126*(図5B)およびmiR−138(図5C)発現。肺腺癌および正常肺組織の喫煙未経験者由来の13対および喫煙者由来の14対をqRT−PCRによって分析した。反応は、各試料に関して3つ組であった。Log2 2−ΔCTとして相対的発現を定量化し、ここでΔCT=(CTmiR−CTRNU6B)であった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図5C】[0051]図5A〜5C: 喫煙者に対する、喫煙未経験者におけるmiR−21(図5A)、miR−126*(図5B)およびmiR−138(図5C)発現。肺腺癌および正常肺組織の喫煙未経験者由来の13対および喫煙者由来の14対をqRT−PCRによって分析した。反応は、各試料に関して3つ組であった。Log2 2−ΔCTとして相対的発現を定量化し、ここでΔCT=(CTmiR−CTRNU6B)であった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図6A】[0052]8つのNSCLC細胞株のウェスタンブロット分析。ホスホEGFR(p−EGFR)、EGFRおよびホスホAkt(p−Akt)のタンパク質発現をウェスタンブロット分析によって調べた。A;非腺癌細胞株(扁平上皮癌H157および大細胞型癌H1299)、B;野生型EGFRを伴う腺癌細胞株(A549、H23およびH441)、C;突然変異体EGFRを伴う腺癌細胞株(H1650、H1975およびH3255)。βアクチンは装填対照であった。NIH Image J1.40gを用いて、シグナル強度を測定することによって、これらの画像を定量化した。
【図6B】[0052]8つのNSCLC細胞株のウェスタンブロット分析。ホスホEGFR(p−EGFR)、EGFRおよびホスホAkt(p−Akt)のタンパク質発現をウェスタンブロット分析によって調べた。A;非腺癌細胞株(扁平上皮癌H157および大細胞型癌H1299)、B;野生型EGFRを伴う腺癌細胞株(A549、H23およびH441)、C;突然変異体EGFRを伴う腺癌細胞株(H1650、H1975およびH3255)。βアクチンは装填対照であった。NIH Image J1.40gを用いて、シグナル強度を測定することによって、これらの画像を定量化した。
【0049】
【図6C】[0052]8つのNSCLC細胞株のウェスタンブロット分析。ホスホEGFR(p−EGFR)、EGFRおよびホスホAkt(p−Akt)のタンパク質発現をウェスタンブロット分析によって調べた。A;非腺癌細胞株(扁平上皮癌H157および大細胞型癌H1299)、B;野生型EGFRを伴う腺癌細胞株(A549、H23およびH441)、C;突然変異体EGFRを伴う腺癌細胞株(H1650、H1975およびH3255)。βアクチンは装填対照であった。NIH Image J1.40gを用いて、シグナル強度を測定することによって、これらの画像を定量化した。
【図7】[0053]AG1478は、H441肺腺癌細胞において、miR−21発現を抑制する。EGFの非存在下でのAG1478処理(2μMまたは10μM)後、qRT−PCRによって、miR−21発現レベルを分析し、そして未処理細胞に比較して表した。データは3つ組由来の平均±SDであった。*、p<0.05、対応のあるt検定。
【図8】[0054]表1−非小細胞肺癌に罹患した喫煙未経験患者の特性。
【図9】[0055]表2−非小細胞肺癌に罹患した喫煙未経験患者の特性(n=28)。
【図10】[0056]表3−28の喫煙未経験者由来の肺癌組織および正常肺組織間で示差的に発現されるmiR。
【図11】[0057]表4 肺腺癌に罹患した喫煙患者の特性(n=23)。
【図12A】[0058]図12A〜C:表5−示差的に発現され、そして喫煙状態に関連する43のmiR。
【図12B】[0058]図12A〜C:表5−示差的に発現され、そして喫煙状態に関連する43のmiR。
【図12C】[0058]図12A〜C:表5−示差的に発現され、そして喫煙状態に関連する43のmiR。
【図13】[0059]表6−喫煙未経験者由来のEGFR突然変異体および野生型肺癌間で示差的に発現されるmiR。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[0060]肺癌症例のおよそ15%は、喫煙に関連せず、そして喫煙者におけるものとは異なる分子的および臨床的特性を示す。上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子突然変異は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR−TKI)に対する感受性と相関し、喫煙未経験者肺癌においてより頻繁である。
【0051】
[0061]本明細書において、28の喫煙未経験者肺癌症例のマイクロRNA(miR)発現プロファイリングによって、異常に発現されるmiRが同定され、これは喫煙者の肺癌でははるかに低く、そしてこれには、喫煙者症例において、以前同定されたmiR(例えば上方制御されるmiR−21)および同定されていないmiR(例えば下方制御されるmiR−138)が含まれることが、現在、示されている。
【0052】
[0062]これらのmiRのいくつかの発現における変化は、EGFR突然変異を伴わないものよりも、EGFR突然変異を伴う症例において、より顕著であり:最も上方制御されるmiRであるmiR−21は、EGFR突然変異を伴う癌において、より豊富であった。肺癌細胞株におけるリン酸化EGFR(p−EGFR)およびmiR−21レベル間の有意な相関、ならびにEGFR−TKIであるAG1478によるmiR−21の抑制によって、現在、EGFRシグナル伝達経路が、miR−21発現を正に制御することが示されている。突然変異体EGFR、ならびに高レベルのp−EGFRおよびmiR−21を伴う喫煙未経験者由来の肺腺癌細胞株H3255において、miR−21のアンチセンス阻害は、AG1478が誘導するアポトーシスを増進させた。野生型EGFRを伴う喫煙未経験者由来腺癌細胞株H441では、アンチセンスmiR−21はAG1478に付加的な効果を示すだけでなく、それ自体、アポトーシスを誘導した。miR−21の異常に増加した発現は、活性化されたEGFRシグナル伝達経路によってさらに増進され、こうした発現は、喫煙未経験者における肺癌形成に役割を果たし、そしてEGFR突然変異体および野生型症例両方における潜在的な療法ターゲットである。
【0053】
[0063]本発明は、したがって、これらの新規発見に関連する材料および方法を提供する。特に、癌、特に肺癌を治療するのに有用な組成物を提供する。しかし、癌を治療するのに有用なさらなる組成物を同定する方法、癌を診断する方法、癌の予後を提供する方法、アポトーシスを誘導する方法などもまた提供する。これらの発見に関連する研究ツール、特にキット等もまた提供する。
【0054】
[0064]略語
[0065]DNA デオキシリボ核酸
[0066]mRNA メッセンジャーRNA
[0067]PCR ポリメラーゼ連鎖反応
[0068]プレmiR 前駆体マイクロRNA
[0069]qRT−PCR 定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応
[0070]RNA リボ核酸
[0071]用語
[0072]前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示および説明のみのためのものであり、そして本解説の範囲を限定することを意図されない。本出願において、具体的に別に明記しない限り、単数形の使用には、複数形が含まれる。
【0055】
[0073]単語「a」または「an」の使用は、請求項および/または明細書において、用語「含む(comprising)」と組み合わせて用いた場合、「1つ」を意味する可能性もあるが、これはまた、「1以上」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは1より多く」の意味とも一致する。
【0056】
[0074]また、「含む(comprise)」、「含有する(contain)」および「含まれる(include)」の使用、またはこれらの語根の修飾、例えば限定されるわけではないが、「comprises」、「contained」、および「including」は限定することを意図しない。用語「および/または」は、前後の用語が一緒にまたは別個に採用されうることを意味する。例示目的のためであるが、制限としてではなく、「Xおよび/またはY」は、「X」または「Y」あるいは「XおよびY」を意味してもよい。
【0057】
[0075]miRはゲノム配列または遺伝子に由来することが理解される。これに関して、用語「遺伝子」は、わかりやすくするために、所定のmiRに関して、前駆体miRをコードするゲノム配列を指す。しかし、本発明の態様は、その発現に関与するmiRのゲノム配列、例えばプロモーターまたは他の制御配列を伴うことも可能である。
【0058】
[0076]用語「miR」は、一般的に、一本鎖分子を指すが、特定の態様において、本発明で実行される分子はまた、同じ一本鎖分子の別の領域に、または別の核酸に、部分的に相補的(鎖の長さに渡って10〜50%の間で相補的)、実質的に相補的(鎖の長さに渡って50%より大きいが、100%未満相補的)、または完全に相補的である、領域またはさらなる鎖も含むであろう。したがって、核酸は、1以上の相補鎖もしくは自己相補鎖(単数または複数)または分子を含む特定の配列の「相補体(単数または複数)」を含む分子を含んでもよい。例えば、前駆体miRは最大100%相補的な自己相補性領域を有してもよく、本発明のmiRプローブは、そのターゲットに60、65、70、75、80、85、90、95、または100%相補的であってもよいし、少なくとも60、65、70、75、80、85、90、95、または100%相補的であってもよい。
【0059】
[0077]用語「その組み合わせ」は、本明細書において、該用語に先行する列挙された項目のすべての順列および組み合わせを指す。例えば「A、B、C、またはその組み合わせ」は:A、B、C、AB、AC、BC、またはABC、および特定の文脈において順序が重要である場合、また、BA、CA、CB、ACB、CBA、BCA、BAC、またはCABの少なくとも1つを含むよう意図される。
【0060】
[0078]別に示さない限り、技術用語は、慣用的使用にしたがって用いられる。分子生物学における一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, Oxford University Press刊行, 1994(ISBN 0−19−854287−9); Kendrewら(編), The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd.刊行, 1994(ISBN 0−632−02182−9);およびRobert A. Meyers(編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc.刊行, 1995(ISBN 1−56081−569−8)に見出されうる。
【0061】
[0079]開示の多様な態様の再検討を容易にするため、特定の用語の以下の説明を提供する:
[0080]補助療法:一次治療の効果を改善するため、一次治療と組み合わせて用いられる治療。
【0062】
[0081]臨床転帰:疾患または障害のための治療後、あるいは治療の非存在下での患者の健康状態を指す。臨床転帰には、限定されるわけではないが、死亡までの時間の長さの増加、死亡までの時間の長さの減少、生存可能性の増加、死亡リスクの増加、生存、無病生存率、慢性疾患、転移、進行したまたは侵襲性疾患、疾患再発、死亡、ならびに療法に対する好ましいまたは劣った反応が含まれる。
【0063】
[0082]対照:「対照」は、実験試料、例えば患者から得られる腫瘍試料と比較するために用いられる試料または標準を指す。
【0064】
[0083]サイトカイン:他の細胞の振る舞いに影響を及ぼす、非常に多様な造血および非造血細胞によって産生されるタンパク質。サイトカインは、自然免疫および適応免疫反応の両方に重要である。
【0065】
[0084]生存減少:本明細書において、「生存減少」は、患者が死亡するまでの時間の長さの減少、または患者に関する死亡するリスクの増加を指す。
【0066】
[0085]発現レベルの検出:例えば、「miRまたはmiR発現レベルの検出」は、miRまたは試料に存在するmiRの量を定量化することを指す。当該技術分野に知られるかまたは本明細書に記載する方法いずれかを用いて、例えばqRT−PCRによって、特定のmiR、またはマイクロRNAいずれかの発現の検出を達成してもよい。miR発現の検出には、miRの成熟型、またはmiR発現と相関する前駆体型のいずれかの発現の検出が含まれる。典型的には、miR検出法は、配列特異的検出、例えばRT−PCRによるものを伴う。当該技術分野に知られ、そして本明細書の配列番号におけるように提供される、前駆体および成熟miR核酸配列を用いて、miR特異的プライマーおよびプローブを設計してもよい。
【0067】
[0086]マイクロRNA(miR):遺伝子発現を制御する一本鎖RNA分子。マイクロRNAは、一般的に、長さ21〜23ヌクレオチドである。マイクロRNAは、プリmiR(pri-miR)として知られる一次転写物から、前駆体(プレ)miRと呼ばれる短いステムループ構造に、そして最終的に、機能する成熟マイクロRNAにプロセシングされる。成熟マイクロRNA分子は、1以上のメッセンジャーRNA分子に部分的に相補的であり、そしてその主な機能は、遺伝子発現を下方制御することである。マイクロRNAは、RNAi経路を通じて、遺伝子発現を制御する。
【0068】
[0087]miR発現:本明細書において、「miR低発現」および「miR高発現」は、試料中に見られるmiRのレベルを指す、相対的な用語である。いくつかの態様において、miR低発現および高発現は、対照試料および試験試料の群におけるmiRレベルの比較によって決定される。次いで、試料中のmiの発現が、平均または中央値miR発現レベルより上(高発現)または下(低発現)であるかに基づいて、各試料に対して、低発現および高発現を割り当ててもよい。個々の試料に関しては、高発現または低発現を有することが知られる対照または参照試料に対して試料を比較することによって、あるいは標準値に比較することによって、miR高発現または低発現を決定してもよい。miR低発現および高発現には、miRの前駆体または成熟型いずれか、あるいは両方の発現が含まれてもよい。
【0069】
[0088]患者:本明細書において、用語「患者」には、ヒトおよび非ヒト動物が含まれる。治療のために好ましい患者はヒトである。「患者」および「被験体」は、本明細書において、交換可能に用いられる。
【0070】
[0089]薬学的に許容されうるビヒクル:本開示で有用な薬学的に許容されうるキャリアー(ビヒクル)は、慣用的である。Remington’s Pharmaceutical Sciences, E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 第15版(1975)は、1以上の療法化合物、分子または剤の薬学的送達に適した組成物および配合物を記載する。
【0071】
[0090]一般的に、キャリアーの性質は、使用する特定の投与様式に応じるであろう。例えば、非経口配合物は、通常、薬学的および生理学的に許容されうる液体、例えば水、生理学的生理食塩水、平衡化塩溶液、水性デキストロース、グリセロール等をビヒクルとして含む、注射可能液体を含む。固形組成物(例えば粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル型)に関しては、慣用的な非毒性固形キャリアーには、例えば、薬剤等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれてもよい。生物学的中性キャリアーに加えて、投与すべき薬学的組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤等、例えば酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含有してもよい。
【0072】
[0091]疾患の防止、治療または軽減:疾患の「防止」は、疾患の完全発展を阻害することを指す。「治療」は、疾患または病理学的状態が発展し始めた後、これらの徴候または症状を軽減する療法的介入を指す。「軽減」は、疾患の徴候または症状の数または重症度の減少を指す。
【0073】
[0092]スクリーニング:本明細書において、「スクリーニング」は、こうした疾患に影響を及ぼす候補剤を評価し、そして同定するために用いられるプロセスを指す。当該技術分野に知られ、そして本明細書に記載するいくつかの技術のいかなる1つを用いて、例えばマイクロアレイ分析によって、またはqRT−PCRによって、マイクロRNAの発現を定量化してもよい。
【0074】
[0093]小分子:典型的には約1000ダルトン未満、またはいくつかの態様において、約500ダルトン未満の分子量を持つ分子であって、何らかの測定可能な度合いまで、ターゲット分子の活性を調節可能である、前記分子。
【0075】
[0094]療法的:診断および治療の両方を含む包括的な用語。
【0076】
[0095]療法剤:被験体に適切に投与された際、望ましい療法的または予防的効果を誘導可能な、化学的化合物、小分子、または他の組成物、例えばアンチセンス化合物、抗体、プロテアーゼ阻害剤、ホルモン、ケモカインまたはサイトカイン。
【0077】
[0096]本明細書において、「候補剤」は、療法剤として機能可能であるかどうかを決定するスクリーニングのために選択される化合物である。「インキュベーションする」には、剤が細胞または組織と相互作用するのに十分な時間が含まれる。「接触させる」には、固体型または液体型の剤を細胞または組織とインキュベーションすることが含まれる。剤で細胞または組織を「治療する」には、剤と細胞または組織を接触させるかまたはインキュベーションすることが含まれる。
【0078】
[0097]療法的に有効な量:剤で治療される被験体または細胞において、望ましい効果を達成するのに十分な、明記される薬学的剤または療法剤の量。剤の有効量は、いくつかの要因に応じ、こうした要因には、限定されるわけではないが、治療される被験体または細胞、および療法組成物の投与方式が含まれる。
【0079】
[0098]本発明のいくつかの態様において、「対照」の使用が望ましい。これに関して、対照は、同じ患者から得た非癌性組織試料、または健康な被験体、例えば健康な組織ドナーから得た組織試料であってもよい。別の例において、対照は、歴史的値から計算された標準である。当該技術分野に知られる任意の方法にしたがって、腫瘍試料および非癌性組織試料を得てもよい。例えば、切除術を受けた癌患者から腫瘍および非癌性試料を得てもよいし、あるいは皮下針を用いた抽出によって、顕微解剖によって、またはレーザー捕捉によって、試料を得てもよい。例えば、屍体ドナーから、または健康なドナーから、対照(非癌性)試料を得てもよい。
【0080】
[0099]いくつかの態様において、スクリーニングは、候補剤を細胞と接触させる工程を含む。細胞は患者から得た初代細胞であってもよいし、あるいは細胞は不死化または形質転換細胞であってもよい。
【0081】
[00100]「候補剤」は、タンパク質、ペプチド、小分子、抗体または核酸などの任意のタイプの剤であってもよい。いくつかの態様において、候補剤はサイトカインである。いくつかの態様において、候補剤は小分子である。スクリーニングには、ハイスループットスクリーニング、および個々のまたは小さいグループの候補剤のスクリーニングの両方が含まれる。
【0082】
[00101]本明細書のいくつかの方法において、試料中に存在するmiRを同定することが望ましい。
【0083】
[00102]前駆体マイクロRNA(プレmiR)および成熟miRの配列は公的に入手可能であり、例えばSanger Instituteによってオンラインで入手可能なmiRBaseデータベース(Griffiths−Jonesら, Nucleic Acids Res. 36:D154−D158, 2008; Griffiths−Jonesら, Nucleic Acids Res. 34:D140−D144, 2006;およびGriffiths−Jones, Nucleic Acids Res. 32:D109−D111, 2004を参照されたい)を通じて入手可能である。現在開示される好ましいファミリーメンバーの前駆体および成熟型の配列を本明細書に提供する。
【0084】
[00103]当該技術分野に周知であり(例えば、本明細書に援用される米国特許出願公報第2006/0211000号および第2007/0299030号を参照されたい)、そして以下に記載する、いくつかの方法の任意の1つによって、RNA発現の検出および定量化を達成してもよい。RNAファミリーメンバーに関する既知の配列を用いて、適切なように、以下に記載する検出法において使用するため、特異的プローブおよびプライマーを設計可能である。
【0085】
[00104]いくつかの場合、RNA検出法は、試料、例えば細胞または組織試料からの核酸の単離を必要とする。当該技術分野に知られる任意の適切な技術を用いて、RNAそして特にmiRを含む核酸を単離してもよい。例えば、フェノールに基づく抽出は、RNAの単離のための一般的な方法である。フェノールに基づく試薬は、細胞および組織破壊、ならびにそれに続く混入物質からのRNAの分離のため、変性剤およびRNアーゼ阻害剤の組み合わせを含有する。フェノールに基づく単離法は、10〜200ヌクレオチドの範囲のRNA種(例えば前駆体および成熟miR、5Sおよび5.8SリボソームRNA(rRNA)、ならびにU1小分子核RNA(snRNA))を回収可能である。さらに、TRIZOLTMまたはTRI試薬TMを用いるものなどの抽出法は、巨大および小分子のすべてのRNAを精製し、そしてmiRおよび小分子干渉RNA(siRNA)を含有する生物学的試料から総RNAを単離するのに効率的な方法である。
【0086】
[00105]いくつかの態様において、マイクロアレイの使用が望ましい。マイクロアレイは、核酸、タンパク質、小分子、細胞または他の物質の顕微鏡的な規則正しいアレイであり、複雑な生化学的試料の並行分析を可能にする。DNAマイクロアレイは、マイクロチップ、ガラススライドまたは微小球体サイズのビーズであってもよい固体支持体に化学的に付着する、捕捉プローブとして知られる、異なる核酸プローブからなる。マイクロアレイを用いて、例えば多数のメッセンジャーRNA(mRNA)および/またはmiRの発現レベルを同時に測定することも可能である。
【0087】
[00106]ガラススライド上への微細な先端のピンでのプリンティング、あらかじめ作製したマスクを用いたフォトリソグラフィー、動的マイクロミラーデバイスを用いたフォトリソグラフィー、インクジェットプリンティング、または微小電極アレイ上の電気化学を含む、多様な技術を用いて、マイクロアレイを製作してもよい。
【0088】
[00107]例えば、miRのマイクロアレイ分析(これらの方法は、任意のRNA分析のために修飾された形式で使用可能であるが)を、当該技術分野に知られる任意の方法にしたがって達成してもよい(例えば、各々、本明細書に援用される、PCT公報第WO2008/054828号; Yeら, Nat. Med. 9(4):416−423, 2003; Calinら, N. Engl. J. Med. 353(17):1793−1801, 2005を参照されたい)。1つの例において、RNAを細胞または組織試料から抽出し、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて、小分子RNA(18〜26ヌクレオチドRNA)を総RNAよりサイズ選択する。オリゴヌクレオチドリンカーを小分子RNAの5’および3’端に付着させ、そして生じた連結産物を、10サイクルの増幅を伴うRT−PCR反応のためのテンプレートとして用いる。センス鎖PCRプライマーは、5’端に付着したフルオロフォアを有し、それによって、PCR産物のセンス鎖を蛍光標識する。PCR産物を変性させ、そして次いでマイクロアレイにハイブリダイズさせる。アレイ上の対応するmiR捕捉プローブ配列に相補的である、ターゲット核酸と称されるPCR産物は、塩基対形成を通じて、捕捉プローブが固定されたスポットにハイブリダイズするであろう。次いで、スポットは、マイクロアレイレーザースキャナを用いて励起された際に、蛍光を生じるであろう。次いで、いくつかの陽性および陰性対照、ならびにアレイデータ規準化法を用いて、各スポットの蛍光強度を、特定のmiRのコピー数に関して評価し、これが特定のmiR発現レベルの評価を生じるであろう。
【0089】
[00108]別の方法において、細胞または組織試料から抽出される小分子RNA分画(miRを含む)を含有する総RNAを、小分子RNAのサイズ選択を伴わずに直接用いて、そしてT4 RNAリガーゼおよびどちらかの蛍光標識された短いRNAリンカーを用いて3’端標識する。30℃で2時間インキュベーションすることによって、RNA試料を標識した後、T4 RNAリガーゼを80℃で5分間熱不活性化する。アレイ上の対応するmiR捕捉プローブ配列に相補的なフルオロフォア標識miRは、塩基対形成を通じて、捕捉プローブが固定されたスポットにハイブリダイズするであろう。マイクロアレイスキャニングおよびデータプロセシングを上記のように行う。
【0090】
[00109]使用可能ないくつかのタイプのマイクロアレイがあり、これにはスポット化オリゴヌクレオチドマイクロアレイ、作製済みのオリゴヌクレオチドマイクロアレイおよびスポット化長鎖オリゴヌクレオチドアレイが含まれる。スポット化オリゴヌクレオチドマイクロアレイにおいて、捕捉プローブは、miR配列に相補的なオリゴヌクレオチドである。このタイプのアレイは、典型的には、2つの異なるフルオロフォアで標識された、比較しようとする2つの試料(例えば非癌性組織および癌性または試料組織)由来のサイズ選択された小分子RNAの増幅PCR産物とハイブリダイズされる。あるいは、小分子RNA分画(miRを含む)を含有する総RNAを2つの試料から抽出し、そして小分子RNAのサイズ選択を伴わずに、そしてT4 RNAリガーゼおよび2つの異なるフルオロフォアで標識された短鎖RNAリンカーを用いて3’端標識した。試料を混合し、そして単一のマイクロアレイにハイブリダイズさせ、これを次いでスキャンして、1つのアッセイにおいて、上方制御されたおよび下方制御されたmiR遺伝子の視覚化を可能にする。
【0091】
[00110]作製済みのオリゴヌクレオチドマイクロアレイまたは単一チャネルマイクロアレイにおいて、プローブは、既知のまたは予測されるmiRの配列にマッチするように設計される。完全ゲノムを含む、商業的に入手可能な設計がある(例えばAffimetrixまたはAgilentから)。これらのマイクロアレイは、遺伝子発現の絶対値の概算を提供し、そしてしたがって、2つの状態の比較は、2つの別個のマイクロアレイの使用を必要とする。
【0092】
[00111]スポット化長鎖オリゴヌクレオチドアレイは、50〜70量体のオリゴヌクレオチド捕捉プローブで構成され、そしてインクジェットまたはロボットプリンティングのいずれかによって産生される。短鎖オリゴヌクレオチドアレイは、20〜25量体オリゴヌクレオチドプローブで構成され、そしてフォトリソグラフィー合成(Affymetrix)によって、またはロボットプリンティングによって産生される。
【0093】
[00112]いくつかの態様において、定量的RT−PCRの使用が望ましい。定量的RT−PCR(qRT−PCR)は、ポリメラーゼ連鎖反応産物の量を迅速に測定するのに用いられる、ポリメラーゼ連鎖反応の修飾法である。qRT−PCRは、一般的に、遺伝子配列、例えばmiRが試料中に存在するかどうか、そして存在する場合には、試料中のコピー数を決定する目的のために用いられる。miRを含む核酸分子の発現を決定可能な任意のPCR法が本開示の範囲内に属する。当該技術分野に知られるqRT−PCR法のいくつかの変型があり、このうち3つを以下に記載する。
【0094】
[00113]定量的ポリメラーゼ連鎖反応のための方法には、限定されるわけではないが、アガロースゲル電気泳動を介するもの、SYBRグリーン(二本鎖DNA色素)を用いるもの、および蛍光レポータープローブを用いるものが含まれる。後者の2つは、リアルタイムで分析可能である。
【0095】
[00114]アガロースゲル電気泳動を用いて、増幅用の既知の濃度の類似のサイズのターゲットDNA部分とともに、未知の試料および既知の試料を調製する。どちらの反応も同一条件(好ましくは同じプライマー、または少なくとも類似のアニーリング温度のプライマーを用いる)において、同じ時間、反応させる。アガロースゲル電気泳動を用いて、その元来のDNAから反応産物を分離し、そしてプライマーを取り置く。既知および未知の試料の相対量を測定して、未知の量を決定する。
【0096】
[00115]SYBRグリーン色素の使用は、アガロースゲル法より正確であり、そしてリアルタイムで結果を生じうる。DNA結合色素は、すべての新規合成二本鎖DNAに結合し、そして蛍光強度増加を測定し、こうして最初の濃度の決定を可能にする。しかし、SYBRグリーンは、いかなる予期せぬPCR産物、ならびにプライマー二量体も含む、すべての二本鎖DNAを標識するので、複雑化する要因およびアーチファクトにつながる可能性もある。反応は、蛍光二本鎖DNA色素を添加して、通常と同様に調製する。反応を実行し、そして蛍光レベルを監視する(色素は二本鎖DNAに結合した場合にのみ蛍光を生じる)。標準試料または標準曲線を参照して、PCR中の二本鎖DNA濃度を決定してもよい。
【0097】
[00116]蛍光レポータープローブ法は、プローブ配列のみを定量化し、そしてすべての二本鎖DNAを定量化しないように、配列特異的な核酸に基づくプローブを用いる。これは一般的に、蛍光レポーターおよび隣接位に保持される消光剤を含むDNAに基づくプローブ(いわゆる二重標識プローブ)を用いて実行される。消光剤に対してレポーターがごく近接していると、蛍光が防止され;蛍光が検出されるのは、プローブが分解した際のみである。このプロセスは、関与するポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性に依存する。
【0098】
[00117]二重標識プローブを添加して、リアルタイム定量的PCR反応を調製する。二本鎖DNAテンプレートを変性させた際、プローブは、テンプレートDNAの関心対象の領域中の相補配列に結合可能である。PCR反応混合物を加熱してポリメラーゼを活性化させた際、ポリメラーゼは、プライミングされた一本鎖テンプレートDNAに対する相補鎖を合成し始める。重合が進むにつれて、ポリメラーゼは相補配列に結合したプローブに到達し、次いで、プローブは、ポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性のために加水分解され、それによって蛍光レポーターおよび消光剤分子が分離する。これは蛍光の増加を生じ、これを検出する。リアルタイムPCR反応の熱サイクリング中、各PCRサイクル中に加水分解された二重標識プローブから放出された際の蛍光の増加を監視し、これによって、DNAの最終の、そしてしたがって最初の量の正確な決定が可能になる。
【0099】
[00118]いくつかの態様において、in situハイブリダイゼーションの使用が望ましい。in situハイブリダイゼーション(ISH)は、単一細胞レベルに、核酸ハイブリダイゼーション技術を適用し、そして当てはめ(extrapolate)、そして細胞化学、免疫細胞化学および免疫組織化学の技術と組み合わされて、維持しそして同定しようとする形態の維持および細胞マーカーの同定を可能にし、そして組織および血液試料などの集団内の特定の細胞に対する配列の位置決定を可能にする。ISHは、相補的核酸を用いるハイブリダイゼーションの一種であり、組織の部分または切片における1以上の特異的核酸配列を位置決定する(in situ)か、または組織が十分に小さい場合は、全組織において位置決定する(全載ISH)。RNA ISHを用いて、組織における発現パターン、例えばmiR発現をアッセイしてもよい。
【0100】
[00119]試料細胞または組織を処理し、浸透性を増加させて、プローブ、例えばmiR特異的プローブが細胞に進入するのを可能にする。プローブを、処理した細胞に添加し、適切な温度でハイブリダイズを可能にし、そして過剰なプローブを洗い流す。相補的プローブを、放射性、蛍光または抗原性タグで標識し、オートラジオグラフィ、蛍光顕微鏡またはイムノアッセイを用いて、組織におけるプローブの位置および量を決定してもよい。
【0101】
[00120]いくつかの態様において、in situ PCRの使用が望ましい。in situ PCRは、ISHの前にターゲット核酸配列のPCRに基づく増幅を行う。RNAを検出するため、細胞内逆転写工程を導入して、in situ PCRの前に、RNAテンプレートから相補DNAを生成する。これによって、低コピー数RNA配列の検出が可能になる。
【0102】
[00121]in situ PCRの前に、細胞または組織試料を固定し、そして透過処理して形態を保持し、そして増幅しようとする細胞内配列へのPCR試薬のアクセスを可能にする。次に、懸濁中に保持された損なわれていない(intact)細胞中、または直接、細胞遠心分離調製物中、またはガラススライド上の組織切片中のいずれかで、ターゲット配列のPCR増幅を行う。前者のアプローチでは、PCR反応混合物中に懸濁された固定細胞を、慣用的なサーマルサイクラーを用いて熱サイクリングする。PCR後、ガラススライド上に細胞を細胞遠心分離して、ISHまたは免疫組織化学によって細胞内PCR産物を視覚化する。カバーガラスの下、試料にPCR混合物を重層し、これを次いで密封して反応混合物の蒸発を防止することによって、ガラススライド上のin situ PCRを行う。ガラススライドを、慣用的なまたは特別に設計されたサーマルサイクラーの加熱ブロック上に直接置くか、あるいは熱サイクリングオーブンを用いることによるかのいずれかで、熱サイクリングを達成する。
【0103】
[00122]一般的に、2つの異なる技術、PCR産物特異的プローブを用いたISHによる間接的in situ PCR、または熱サイクリング中にPCR産物内に取り込まれている標識ヌクレオチド(例えば、ジゴキシゲニン−11−dUTP、フルオレセイン−dUTP、3H−CTPまたはビオチン−16−dUTP)の直接検出を通じた、ISHを伴わない直接in situ PCRのうちの1つによって、細胞内PCR産物の検出を達成する。
【0104】
[00123]示差的に発現されるmiR、ならびに肺癌の予後の予測マーカーとしての、および肺癌の治療のための療法剤の同定のためのmiRの使用
[00124]miRの特定の発現パターンは、EGFR突然変異体状態指標とともに、EGFR突然変異体患者における生存予後の予測因子であることを本明細書に開示する。示差的に発現されるmiR(この例を図13−表6に示す)を伴うEGFR突然変異体癌細胞試料(例えば組織生検試料)は、野生型EGFR腫瘍組織と比較した際、生存減少を予測する。したがって、腫瘍において示差的に発現されるmiR状態を、肺癌患者の予後および治療における臨床ツールとして用いることも可能である。本明細書において、「劣った予後」は、一般的に、生存の減少、あるいは言い換えると、死亡リスクの増加または死亡までの時間の減少を指す。劣った予後はまた、疾患重症度の増加、例えば他の臓器への癌の蔓延(転移)の増加も指してもよい。1つの態様において、それぞれのマーカーは、対照に比較して、発現の少なくとも1.5倍の増加または減少を示す。他の態様において、劣った予後は、野生型腫瘍対照の数値に比較して、マーカーの少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、または少なくとも4倍の増加または減少によって示される。
【0105】
[00125]候補剤をスクリーニングして、疾患治療のための療法剤を同定する方法は、当該技術分野に周知である。RNAおよびタンパク質の発現レベルを検出する方法が当該技術分野に知られ、そして本明細書に記載され、これには例えば、限定されるわけではないが、マイクロアレイ分析、RT−PCR(qRT−PCRを含む)、in situハイブリダイゼーション、in situ PCR、およびノーザンブロット分析がある。1つの態様において、スクリーニングはハイスループットスクリーニングを含む。別の態様において、候補剤は個々にスクリーニングされる。
【0106】
[00126]候補剤は任意のタイプの分子であってもよく、これには例えば、限定されるわけではないが、核酸分子、タンパク質、ペプチド、抗体、脂質、小分子、化学薬品、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、あるいは直接または間接的にのいずれかで癌疾患状態(単数または複数)を改変しうる任意の他のタイプの分子がある。いくつかの態様において、候補剤は、NFκB/IL−6シグナル伝達経路において役割を果たす分子である。他の態様において、候補剤は、IL−10、STAT3またはインターフェロン誘導性因子シグナル伝達ネットワークにおいて役割を果たす分子である。1つの態様において、候補剤はサイトカインである。別の態様において、候補剤は小分子である。
【0107】
[00127]本明細書にやはり記載するのは、EGFR突然変異体喫煙未経験者の癌を特徴付けるための方法であって、EGFR突然変異体喫煙未経験者の癌の少なくとも1つの特徴が:EGFR突然変異体癌の存在または非存在;EGFR突然変異体癌の診断;EGFR突然変異体癌の予後;療法転帰予測;療法転帰監視;EGFR突然変異体癌の治療に対する適切さ、例えば化学療法治療および/または放射線治療に対するEGFR突然変異体癌の適切さ;ホルモン治療に対するEGFR突然変異体癌の適切さ;侵襲性手術による除去に関するEGFR突然変異体癌の適切さ;併用アジュバント療法に対するEGFR突然変異体癌の適切さ;を含む群の1以上より選択される、前記方法である。
【0108】
[00128]本明細書にやはり記載するのは、EGFR突然変異体癌を検出するためのキットであり、該キットには、miRまたはEGFR突然変異体癌において示差的に発現されると本明細書に開示されるmiRを含む少なくとも1つの検出プローブが含まれてもよい。キットはオリゴヌクレオチドアレイの形であってもよいし、またはオリゴヌクレオチドアレイを含んでもよい。
【0109】
[00129]本明細書にやはり記載するのは、治療に関する、EGFR突然変異体癌患者の適切さを決定するための方法であって:i)EGFR突然変異体癌に罹患した患者から少なくとも1つの組織試料を単離し;ii)少なくとも1つの組織試料の特徴付けを行い、そして/または検出プローブを利用して、EGFR突然変異体示差miR発現パターンを同定し、iii)工程ii)で同定した少なくとも1つの特徴に基づいて、患者の生理学的状態を診断し;iv)工程iii)で得た診断に基づいて、患者がEGFR突然変異体癌の治療から利益を受けるかどうかを決定する工程を含む、前記方法である。特定の態様において、癌の少なくとも1つの特徴は:癌の存在または非存在;癌のタイプ;癌の起源;癌の診断;癌の予後;療法転帰予測;療法転帰監視;治療に対する癌の適切さ、例えば化学療法治療および/または放射線治療に対する癌の適切さ;ホルモン治療に対する癌の適切さ;侵襲性手術による除去に関する癌の適切さ;併用アジュバント療法に対する癌の適切さ;を含む群の1以上より選択される。
【0110】
[00130]本明細書にやはり記載するのは、治療に関する癌の適切さを決定するための方法であって、癌の少なくとも1つの特徴が、治療に対する癌の適切さ、例えば化学療法治療および/または放射線治療に対する癌の適切さ;ホルモン治療に対する癌の適切さ;侵襲性手術による除去に関する癌の適切さ;併用アジュバント療法に対する癌の適切さ;を含む群の1以上より選択される、前記方法である。
【0111】
[00131]本明細書にやはり記載するのは、癌患者のありうる予後を決定するための方法であって:i)癌に罹患した患者から少なくとも1つの組織試料を単離し;そしてii)少なくとも1つの組織試料を特徴付けして、EGFR突然変異体miR示差発現パターンを同定する工程を含み;特徴が癌患者のありうる予後の決定を可能にする、前記方法である。
【0112】
[00132]本発明は、以下の実施例においてさらに定義され、ここで、別に言及しない限り、すべての部分および割合は重量であり、そして度は摂氏である。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示すが、例示目的のためのみに提供されることを理解しなければならない。上記考察およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認可能であり、そして本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の多様な変化および修飾を作製して、多様な使用および条件に適応させることも可能である。本明細書において言及される特許および非特許文献を含むすべての刊行物は、本明細書に完全に援用される。以下の実施例は、本発明の特定の好ましい態様を例示するよう意図され、そしてそう明記されない限り、請求項に定義するような本発明の範囲を限定するように解釈されてはならない。
【0113】
[00133]本発明の価値は、したがって、本明細書の実施例を参照することによって理解されうる。
【実施例】
【0114】
[00134]実施例I
[00135]喫煙未経験者由来の肺癌におけるマイクロRNA発現プロフィール
[00136]喫煙未経験者(図8−表1および図9−表2)由来の肺癌および非癌性肺組織の28のマッチした対において、オハイオ州miRマイクロアレイ・バージョン3.0(21)を用いることによって、miR発現プロフィールを調べた。
【0115】
[00137]Biometric Research Branch(BRB)アレイツールを用いたクラス比較分析において、18のmiRが、非癌性組織に比較して、癌において示差的に発現されることが見出された(p<0.01、偽発見率(FDR)<0.15)(図10−表3)。
【0116】
[00138]これらの18のmiRの発現プロフィールは、癌および対の非癌性組織間を区別し、3近傍法を用いると84%の予測正確さであり、そしてBRBアレイツール内のサポートベクターマシーンアルゴリズムを用いると82%の予測正確さであった(10倍交差検定を100回反復)。
【0117】
[00139]5つのmiRが癌組織においてより高いレベルで発現され、miR−21は最大2.35倍濃縮された。13のmiRの発現レベルは癌においてより低く、miR−486およびmiR−126*は最大0.45倍抑制された。
【0118】
[00140]2つの異なるプローブによって単一のmiRが同定され(miR−21、miR−521およびmiR−516a)、単一のステムループプレmiRから2つの成熟miRが生成され(miR−126およびmiR−126*)、そして1より多くのmiRが染色体でクラスター形成し、そしておそらく同時制御されている(6q13上のmiR−30aおよびmiR−30c;8q24.22上のmiR−30bおよびmiR−30d;ならびに19q13.41上のmiR−516a、miR−520およびmiR−521)ことはすべて、該分析の妥当性を裏付けた。
【0119】
[00141]喫煙未経験者肺腺癌症例のmRNAマイクロアレイデータ(ncbi.nlm.nih.gov/geo/、寄託番号=GSE10072)はまた、2つの宿主遺伝子、TMEM49およびEGFL7(図10−表3)が、内在miR(それぞれ、miR−21およびmiR−126/126*)と同じ方向に、癌および非癌性組織間で示差的に発現されることも示した。3つのmiR(miR−21、miR−126およびmiR−486)の発現レベルを、リアルタイム定量的RT−PCR(qRT−PCR)によって調べた(図4A〜4C)。miR−21発現は、非癌性組織におけるより、癌組織において有意により高く(p<0.05、対応のあるt検定)(図4A)、そしてmiR−126およびmiR−486は、癌において有意により低いレベルで発現され(p<0.05、対応のあるt検定)(図4Bおよび図4C)、マイクロアレイ分析の結果がさらに検証された。
【0120】
[00142]喫煙者に対する喫煙未経験者由来の肺癌における示差miRプロフィール
[00143]喫煙状態に関連する、miR発現における癌関連変化を同定するため、本発明者らは、本研究の喫煙未経験者の症例のmiR発現プロフィールと、本発明者らの先の研究(Yanaihara Nら(2006) Unique microRNA molecular profiles in lung cancer diagnosis and prognosis. Cancer Cell 9:189−198)における58の喫煙者肺腺癌症例、およびさらなる23の喫煙者肺腺癌症例(図11−表4)を比較した。
【0121】
[00144]5つのmiRでは、喫煙未経験者および喫煙者の症例において、共通した発現変化が同定され、このなかにmiR−21の増加があった(図12−表5)。2つのmiR、miR−138およびlet−7cのみが、喫煙未経験者症例において有意に変化する(どちらも下方制御される)一方、36のmiRの発現改変は、喫煙者症例と優先的に関連し(図12−表5)、これはおそらく、喫煙者由来肺癌において、より広範囲に遺伝子的およびエピジェネティックな変化が多いことを反映する。
【0122】
[00145]本発明者らは、qRT−PCRによって、喫煙未経験者腺癌におけるmiR−138の特異的下方制御、ならびに喫煙状態に関わらないmiR−21の上方制御およびmiR−126*の下方制御を検証した(図5)。興味深いことに、miR−138は染色体3p21.33に位置し、これは肺癌抑制因子遺伝子を所持する候補遺伝子座であり、そして多様な細胞性およびウイルス性の発癌機構が作用するヒト・テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子をターゲットとすると報告された。肺癌の病因におけるこのmiRの役割は、さらなる研究に値する。
【0123】
[00146]EGFR遺伝子突然変異に関連するmiR発現プロフィール
[00147]喫煙未経験者由来の28の肺癌組織におけるDNA配列決定によって、EGFR遺伝子の状態を決定した(図9−表2)。6つの症例は、EGFRのチロシンキナーゼドメインに活性化突然変異を有することが見出され;4つの症例には、コドン858でのロイシンからアルギニンへのアミノ酸置換(L858R)が見られ;1つにはコドン861でのロイシンからグルタミン酸へのアミノ酸置換(L861E)が見られ;そして1つには、コドン747〜752のインフレーム欠失(ΔL747〜S752)が見られた。22のEGFR野生型および6つのEGFR突然変異体症例間のmiR発現のクラス比較分析によって、EGFR突然変異体症例において、有意により豊富であるかまたはより少ない、12のmiRが見出された(p<0.01、FDR<0.15)(図13−表6)。
【0124】
[00148]12のmiRのうち10(miR−21、miR−210、miR−486、miR−126、miR−126*、miR−138、miR−521、miR−451、miR−30dおよびmiR−30a)が、非癌性組織対癌の比較において、同じ方向に変化していると上記で同定され(図10−表3)、これによって、EGFR突然変異が、喫煙未経験者における肺癌形成と関連するいくつかのmiRの異常な制御を強いている可能性もあることが示された。癌対非癌性組織において、それぞれ、最も上方制御されているおよび下方制御されている、miR−21およびmiR−486は、再び、EGFR突然変異体および野生型癌間で最大の相違を示した(それぞれ、〜1.7倍および0.60倍)。図4に示すqRT−PCRデータは、限定された数の症例に対して行われ、それによって、miR−21、miR−126またはmiR−486発現のいずれにおけるEGFR突然変異体および野生型症例間の統計的に有意な相違を示す能力も限定されているが、癌において最高レベルのmiR−21を発現している3つの症例(症例24、25および28)はすべて、EGFRの活性化突然変異を有したことに注目すべきである(図4および図9−表2)。
【0125】
[00149]肺癌細胞株におけるmiR−21の発現およびEGFRシグナル伝達状態
[00150]癌対非癌性組織において最も顕著に増加し、そしてEGFR−TKIに対する感受性の指標となるEGFR突然変異と関連していることから、miR−21をさらなる分析のために選択した。miR−21発現レベルおよびEGFRシグナル伝達経路の状態間の相関を調べるため、8つの非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株をウェスタンブロット(図6A、6Bおよび6C)およびqRT−PCR分析で調べた(図1A)。
【0126】
[00151]この中で、3つの腺癌細胞株は、EGFRに関して突然変異体であった:H3255はL858Rを含み;H1975はL858Rおよびコドン790でのスレオニンからメチオニンへの置換(T790M)の両方を含み;そしてH1650はコドン746から750のインフレーム欠失(ΔE746−A750)を含んだ。これらの3つのEGFR突然変異体細胞株は、高レベルのリン酸化EGFR(p−EGFR)、ならびに増加した量の総EGFRタンパク質およびリン酸化Akt(p−Akt)の誘導を有し(図6C)、これは、これらの細胞におけるEGFRシグナル伝達経路の恒常的活性化と一致した。3つのうち2つ(H3255およびH1975)は上昇したレベルのmiR−21を発現したが、第三の細胞株(H1650)は上昇したレベルでは発現しなかった(図1A)。
【0127】
[00152]検出可能なレベルのp−EGFRを伴う(H441)または伴わない(A549およびH1299)、5つのEGFR野生型細胞株のうちの3つ(図6AおよびB)もまた、対照非形質転換細胞よりも有意により高いレベルのmiR−21を発現した(図1A)。miR−21およびpEGFRレベルの定量的比較によって、これらの2つの間で、有意な正の相関が示された(Pearson相関、r=0.71、p<0.05)(図1B)。これらの結果によって、活性化されたEGFRシグナル伝達経路は、miR−21制御の主要な、しかし単独ではない機構であることが示唆される。miR−21発現および/またはEGFR状態が、最大阻害濃度の半分(IC50)として示される、EGFR−TKI、AG1478に対する感受性と相関することが見出されたこともまた注目に値した(図1A):AG1478で細胞増殖阻害を示す5つの細胞株は、突然変異体EGFRを有する(H1650)か、または>2倍増加したレベルでmiR−21を発現する(H441およびA549)か、あるいはその両方であった(H3255およびH1975)。miR−21の機能アッセイのため、喫煙未経験者の癌由来の2つの肺腺癌細胞株を選択した(以下を参照されたい):AG1478に高い感受性を持つ(IC50、0.3μM)H3255は、突然変異体EGFRおよび最高レベルのmiR−21を伴う喫煙未経験者肺癌症例(例えば、図4Aおよび図9−表2の症例番号24、25および28)を模倣し;そしてAG1478に対して中程度の感受性を持つ(IC50、10μM)H441は、野生型EGFRを持つが、なお有意に増加したレベルのmiR−21を持つもの(例えば図4Aおよび図9−表2の症例番号5および23)を模倣した。
【0128】
[00153]活性化されたEGFRシグナル伝達は、miR−21発現を増進させる
[00154]活性化されたEGFRシグナル伝達が、miR−21発現レベルの上昇に関与しているかどうかを実験的に検証するため、EGFR突然変異体H3255細胞を、EGFの存在下または非存在下でAG1478で処理した(図2)。
【0129】
[00155]2μMまたは10μMいずれかのAG1478は、p−EGFRおよびp−Aktの減少によって示されるように、EGFリガンド刺激を伴うまたは伴わない条件下で、EGFRシグナル伝達を効率的に阻害し(図2A)、これはこの細胞株における0.3μMのIC50値と一致した。EGFの非存在下でのmiR−21発現レベルは、どちらの濃度のAG1478での処理によっても有意に抑制された(p<0.01、対応のあるt検定)(図2B、左)。EGFを添加すると、miR−21発現の〜2.5倍の上方制御が生じ、これはなお、いずれの濃度のAG1478処理によっても基底レベルに戻るまで阻害された(p<0.05、対応のあるt検定)(図2B、右)。
【0130】
[00156]これらの結果は、miR−21発現が、活性化EGFR突然変異を持つ癌細胞において活性化されたEGFRシグナル伝達によって正に制御されることを示し、そしてEGFR−TKIがmiR−21の異常な増加を有効に抑制しうることを示す。野生型EGFRを持つH441細胞において、10μMのAG1478(この細胞株におけるIC50値と同等)はmiR−21発現を有意に抑制した(p<0.05、対応のあるt検定)が、2μMでは抑制しなかった(図7)。
【0131】
[00157]したがって、H441細胞における野生型EGFRからの活性化されたシグナル伝達(図6B)は、おそらく、自己が産生したトランスフォーミング増殖因子(TGF)−アルファ刺激を通じて、やはり、AG1478によって阻害可能であり、miR−21の抑制を生じる。
【0132】
[00158]miR−21のアンチセンス阻害は、EGFR−TKIと協調してアポトーシスを誘導する
[00159]喫煙未経験者由来肺癌において上昇したmiR−21発現の生物学的活性を調べるため、H3255およびH441細胞を、miR−21をターゲットとするアンチセンスオリゴヌクレオチド(アンチmiR−21)でトランスフェクションした。これらの細胞におけるmiR−21のアンチセンス仲介抑制をqRT−PCRによって確認した(図3A)。miR−21は、報告によれば抗アポトーシス活性を有しているため、本発明者らは、本明細書において、miR−21の阻害がこれらの細胞においてアポトーシスを誘導するかどうかを、カスパーゼ−3およびカスパーゼ−7酵素活性を測定するアッセイによって決定した(図3Bおよび3C)。H3255細胞において、アンチmiR−21は、単独ではアポトーシスを誘導しなかった(図3B、左)。しかし、特に、0.2μM(IC50値よりわずかに低い濃度)のAG1478と組み合わせて用いた際、アンチmiR−21は、AG1478が誘導するアポトーシス反応を有意に増進した(図3B、右)。H441細胞において、アンチmiR−21はそれ自体で、アポトーシス反応の有意な増加を生じた(図3C、左)が、これは10μM(IC50値と同等の濃度)でのAG1478処理よりも有効でなかった。H3255細胞で観察された併用効果と同様に、アンチmiR−21は、H441細胞において、10μMのAG1478によって誘導されるアポトーシス反応をさらに増進した(図3C、右)。
【0133】
[00160]アポトーシスに対するアンチmiR−21の影響を、アポトーシス反応におけるカスパーゼ−3の主な切断ターゲットであるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)のウェスタンブロット分析によってさらに立証した(図3D)。アンチmiR−21およびAG1478両方で処理したH3255細胞において、そしてAG1478の存在下および非存在下でアンチmiR−21で処理したH441細胞において、未切断PARPの量は顕著に減少し、ここで、アンチmiR−21はカスパーゼ3/7活性の有意な増加を引き起こした。
【0134】
[00161]実施例Iの考察
[00162]実施例Iは、ここで、喫煙未経験者における肺癌におけるmiR発現プロフィールを初めて解明した。該プロフィールを喫煙者の症例のものと比較し、そしてEGFR遺伝子の状態にしたがってデータを分析することによって、実施例Iは、喫煙未経験者における肺癌の新規分子シグネチャーを示す:
1)比較的少数のmiRの発現変化が、喫煙未経験者における肺癌形成に関与している;
2)EGFR突然変異は、miR発現のこれらの変化のいくつか、例えばmiR−21の増加を強化している可能性もある;
3)長らく探し求められてきた肺癌抑制因子遺伝子を所持する染色体領域、3p21.33上のmiR−138は、喫煙未経験者症例において、優先的に下方制御されている;そして
4)miR−21は、喫煙未経験者および喫煙者症例の両方において、最も異常に増加するmiRの1つである。
【0135】
[00163]これらの発見によって、miR−21が、肺癌形成において発癌上の役割を果たしていると同定された。したがって、本発明者らは、喫煙未経験者、ならびに喫煙者の肺癌治療における新規分子ターゲットの候補としてこれを選択した。理論によって束縛されることは望ましくないが、EGFR突然変異およびmiR−21上方制御の間の関連を考慮すると、本発明者らは、本明細書において、現在、このmiRは、その有効性がEGFR遺伝子状態および患者の喫煙歴と相関するEGFR−TKI療法の改善に関与すると考えている。
【0136】
[00164]高レベルのmiR−21発現は、喫煙者および喫煙未経験者(本発明)両方由来の肺癌を含む、多様なタイプのヒト腫瘍において見出されるが、発癌中にどのような機構がmiR−21を上方制御するかはよく理解されていない。
【0137】
[00165]EGFR突然変異体症例において、miR−21がより高レベルであることを示すmiRマイクロアレイデータ(図13−表6)に加えて、NSCLC細胞株を用いたin vitro分析によって、活性化されたEGFRシグナル伝達がmiR−21発現を上方制御することが示された。NSCLC細胞株において、miR−21発現レベルおよびp−EGFRレベル間で、統計的に有意な正の相関が観察された(図1B)。さらに、p−EGFRが上昇している2つのNSCLC細胞株、EGFR突然変異体H3255(図2)およびEGFR野生型H441(図7)において、EGFR−TKI(AG1478)での処理によって、miR−21発現が阻害されたことから、活性化されたEGFRシグナル伝達経路およびmiR−21の異常な上方制御、ならびにEGFR活性化を伴う肺癌におけるmiR−21の阻害に関する療法的基礎の間の機構的関連が提供された。多発性骨髄腫細胞において、IL6が誘導するmiR−21の上方制御をシグナル伝達すると報告されるSTAT3、または増加したp−Akt(図2Aおよび図6)は、EGFRシグナル伝達が誘導するmiR−21の上方制御を仲介しうる。にもかかわらず、EGFR突然変異またはp−EGFRを伴わないA549細胞においてmiR−21が高レベルであること(図1Aおよび図6B)、そしてEGFR突然変異およびp−EGFR増加を伴うH1650細胞においてmiR−21発現の増加がないこと(図1Aおよび図6C)によって、miR−21発現を制御するEGFR独立機構もまた存在するはずであることが示唆される。
【0138】
[00166]EGFR突然変異の存在下または非存在下で、miR−21を上昇したレベルで発現し、喫煙未経験者由来のいくつかの肺癌症例を反復するようである2つのNSCLC細胞株、H3255およびH441(図4A)において、アンチセンスオリゴヌクレオチドが仲介するノックダウンを成功裡に行って、miR−21発現を阻害した(図3A)。H441細胞において、miR−21のアンチセンス阻害は、それ自体、増加したアポトーシス反応を導き(図3Cおよび図3D)、miR−21もまた肺癌において療法ターゲットでありうることが示唆された。重要なことに、どちらの細胞株においても、アンチmiR−21は、AG1478によって誘導されるアポトーシス反応を有意に増進した(図3Bおよび図3C)。H3255細胞において、アンチmiR−21単独では効果がないこと(図3B)によって、最高レベルのp−EGFR(図3C)およびmiR−21(図1A)によって明らかである、細胞生存に向けて恒常的に活性化されたEGFRシグナル伝達経路を有効に減弱させるには、アンチmiR−21およびEGFR−TKIの併用が必要であることが示唆される可能性がある。EGFR−TKIは、肺癌のための臨床使用に広く用いられており、そして発癌性miRの阻害は、癌療法における新規の有望なアプローチであるが、実施例Iは、これらの2つの療法戦略の併用が、いずれか単独よりも有意により有効でありうることを、初めて明らかにする。この発見は、現在のEGFR−TKI療法により反応性でない傾向がある非アジア民族の肺癌患者のためのよりよい治療を開発する際に、特に重要である。実施例Iはまた、NSCLCにおいて、EGFR−TKI耐性が獲得されるのを防止し、そしてレスキューする有用性も例示し、これは臨床関連の重要な問題である。二次的T790M突然変異およびMET増幅獲得に加えて、野生型/突然変異体混合のバックグラウンド上で、EGFR野生型下位集団が選択されることによって、NSCLCにおけるEGFR−TKI耐性獲得につながる。EGFR−TKIおよびアンチmiR−21の併用を用いて、野生型EGFRに関する選択による、こうした耐性獲得を防止し、そしてレスキューすることも可能であり、これは、アンチmiR−21がEGFR野生型および突然変異体腫瘍細胞の両方に対して有効であるためである。最近、ロック化核酸で修飾したオリゴヌクレオチド(LNA−アンチmiR)を静脈内投与すると、霊長類において肝臓で発現されたmiR−122がアンタゴナイズされ、これによって、ヒト疾患の療法において、miRをin vivoでターゲティングする実現可能性が裏付けられた。
【0139】
[00167]したがって、実施例Iは、喫煙未経験者における肺癌が、喫煙者における肺癌とは別個の新規分子特性として、ユニークなmiR発現プロフィールを有することを示す。miR−21は、活性化されたEGFRシグナル伝達経路の下流エフェクターであり、そしてEGFR突然変異を伴うおよび伴わない肺癌における療法的ターゲットでありうる。miR−21のアンチセンス阻害は、EGFR−TKI療法に対する臨床反応を改善するのに有用でありうる。
【0140】
[00168]実施例Iの材料および方法
[00169]臨床試料
[00170]米国におけるメリーランド大学医学センター(n=15)、メイヨークリニック(n=7)、ならびに日本における浜松大学医学部(n=6)で、2000年から2004年に外科的切除を受けた、喫煙未経験者から、28対の肺癌組織および対応する非癌性肺組織を得た(表1およびS1)。すべての組織を、手術中に新鮮に収集し、瞬間凍結し、そして−80℃で保存した。世界保健機構TNM(腫瘍−リンパ節−転移)病期決定にしたがうと、21人の患者が第I期疾患を有し、1人が第II期疾患を有し、4人が第III期疾患を有し、そして2人が第IV期疾患を有した。22の症例はEGFR野生型であり、そして6つの症例はEGFR突然変異体であった(図8−表1および図9−表2)。各収集部位で、施設審査委員会認可およびすべての患者からの書面のインフォームドコンセントを得た。
【0141】
[00171]細胞培養
[00172]6つの肺腺癌細胞株(A549、H23、H441、H1650、H1975およびH3255)、1つの扁平細胞株(H157)および1つの大細胞型癌細胞株(H1299)を本研究で用いた。H3255は米国癌研究所によって提供され、そしてこれを5%ウシ胎児血清(GIBCO)を含むACL−4培地(GIBCO)中で維持した。A549、H23、H441、H1650、H1975、H157およびH1299をAmerican Type Culture Collection(ATCC)より購入し、そして10%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640(GIBCO)中で維持した。hTERT不死化正常ヒト気管支上皮細胞(HBET2)を樹立した。
【0142】
[00173]マイクロアレイ分析
[00174]製造者の指示にしたがって、TRIzol試薬(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)によって総RNAを単離した。先に記載するようにマイクロアレイ分析を行った。簡潔には、389プローブを3つ組で含有するmiRマイクロアレイチップ(オハイオ州マイクロRNAマイクロアレイ・バージョン3.0、オハイオ州コロンバス)上でのハイブリダイゼーションのため、5μgの総RNAを用いた。PerkinElmer ScanArray XL5Kスキャナを用いて、プロセシングしたスライドをスキャンした。Rを用い、画像定量化ソフトウェアGenePix Pro 6.0.1.00によってフラグを付けられておらず、そして表面強度がバックグラウンド強度よりも高いスポット値のみを用いた。次いで、残りのスポットをLOESS(局所荷重スキャッタープロット平滑化)で規準化し、そして複製スポットを平均化した。次いで、あらかじめプロセシングし、そして規準化したデータを、BRB−アレイツール・バージョン3.5.0(linus.nci.nih.gov/BRB−ArrayTools.html)内にインポートした。最後に、試料の75%より多くに存在する、欠損していない記録値(log value)を持つ291のmiRを選択した。
【0143】
[00175]リアルタイムRT−PCR分析
[00176]TaqManヒト・マイクロRNAアッセイキット(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を用いたqRT−PCR分析を用いて、成熟miR発現を調べた。RNU6Bを内因性対照として用いた(#4373381、Applied Biosystems)。PRISM 7700配列検出系(Applied Biosystems)を用いて、反応を行った。遺伝子発現を定量化し、そして値を2−ΔΔCTとして報告した。データを3つ組由来の平均±SDとして示した。
【0144】
[00177]細胞処理および増殖阻害アッセイ
[00178]AG1478をCalbiochem(カリフォルニア州サンディエゴ)より購入した。上皮増殖因子(EGF)をPromega(ウィスコンシン州マディソン)より購入した。EGFRシグナル伝達経路およびmiR−21発現レベルに対するAG1478の影響を評価するため、肺癌細胞株を24時間血清枯渇させ、AG1478(2μMまたは10μM)の存在下または非存在下で2時間インキュベーションし、そして次いで、EGF(20ng/ml)の存在下または非存在下で、さらに15分間インキュベーションした。
【0145】
[00179]MTSアッセイ(同仁堂、日本)によって増殖阻害を評価して、肺癌細胞株に対するAG1478の影響を調べた。細胞懸濁物(5,000細胞/ウェル)を96ウェルプレート内に植え付け、そして増加する濃度のAG1478(0、0.4、2.0、10および50μM)を添加した。37℃で72時間インキュベーションした後、MTS[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)2H−テトラゾリウム、内塩]を各ウェルに添加し、そして37℃で2時間インキュベーションし、そして次いで、450nmの試験波長で、マイクロプレート読み取り装置を用いて、吸光度を測定した。IC50値は、AG1478での処理による増殖の50%減少に必要な濃度として定義された。各実験を少なくとも3つ組で行い、そして独立に4回行った。データを平均±SDで示した。
【0146】
[00180]抗体およびウェスタンブロット分析
[00181]50mM Tris−HCl、pH 7.6、150mM NaCl、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、1% Nonidet P−40、および0.5%デオキシコール酸ナトリウムを含有する緩衝液中で、細胞を溶解した。溶解物を氷上で30分間維持し、そして次いで、13000gで30分間遠心分離した。上清を収集し、そして次いで、10μgのタンパク質を10%ゲル上でのゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜にトランスファーし、そして化学発光系(GE Healthcare Bio−Sciences Corp、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いたイムノブロッティングによって検出した。NIH ImageJ1.40g(rsb.info.nih.gov/ij/)を用いてシグナル強度を測定することによって、画像を定量化した。EGFR、ホスホEGFR(Tyr1173)、ホスホ−Akt(Ser473)、PARPおよびβアクチンを検出する抗体を、Cell Signaling Technology(マサチューセッツ州ビバリー)から購入した。
【0147】
[00182]オリゴヌクレオチドトランスフェクションおよびアポトーシスアッセイ
[00183]2’−O−メチルオリゴヌクレオチドを、Integrated DNA Technologies(アイオワ州コーラルビル)で化学的に合成した。2’−O−メチルオリゴヌクレオチドは、以下の配列を有した:2’OMe増進緑色蛍光タンパク質(EGFP)(アンチEGFP)5’−AAG GCA AGC UGA CCC UGA AGU−3’[配列番号1]および2’OMe−miR−21(アンチmiR−21)5’−UCA ACA UCA GUC UGA UAA GCUA−3’[配列番号2]。H441およびH3255細胞を3つ組で96ウェルプレートにプレーティングした。LipofectAMINE 2000試薬(Invitrogen)を用いて、プレーティング24時間後、細胞をトランスフェクションした。製造者の指示にしたがって、トランスフェクション複合体を調製し、そして最終オリゴヌクレオチド濃度40nMまで、細胞に直接添加した。トランスフェクション培地をトランスフェクション8時間後に交換した。72時間後、0.2μMのAG1478の存在下または非存在下、24時間(H3255)、あるいは10μMのAG1478の存在下または非存在下、72時間(H441)、細胞をインキュベーションした。製造者の指示にしたがって、ApoONE均質カスパーゼ3/7アッセイ(Promega)を用いて、カスパーゼ3およびカスパーゼ7の活性を分析した。カスパーゼ基質と6時間インキュベーションした後、励起および発光のため、それぞれ485および535nmの波長を用い、蛍光プレート読み取り装置上で試料を測定した。各実験を3つ組で、そして少なくとも4回、独立に行った。データを平均±SDで示した。
【0148】
[00184]統計分析:
[00185]対応のあるt検定は、肺癌組織および正常肺組織間で示差的に発現されるmiRを同定した(p<0.01、FDR<0.15)。本発明者らはまた、F検定を用いて、EGFR突然変異体および野生型肺癌間で示差的に発現されるmiRも同定した(p<0.01、FDR<0.15)。対応のあるt検定を用いて、腫瘍および対応する正常組織間で、qRT−PCRデータに関して、miR発現(miR−21、miR−126およびmiR−486)の相違を分析した。Pearson相関に関して、Graphpad Prism v5.0(Graphpad Softoware Inc、カリフォルニア州ラホヤ)分析を用いた。すべての統計検定は両側であり、そして統計的有意性をP<0.05と定義した。
【0149】
[00186]実施例II
[00187]喫煙未経験者および喫煙者由来の肺癌のmiRプロファイリング比較
[00188]本発明の28の喫煙未経験者症例のオハイオ州miRマイクロアレイデータ(バージョン3.0)および本発明者らの以前の研究における58の喫煙者肺腺癌のもの(バージョン1.0)とさらなる23の喫煙者症例(バージョン2.0)(図11−表4)を分析した。すべてのバージョンの間で共通しているプローブのみを含む発現データを、各バージョン群内で、Rを用いてLOESS規準化した。次に、各バージョン内でzスコアを計算し、そしてすべてのバージョン由来のデータを統合した。次いで、統合したデータセットをBRB−アレイツール・バージョン3.5.0内にインポートして、示差的に発現されるmiRを同定した(p<0.01、FDR<0.2)。
【0150】
[00189]宿主遺伝子のmRNA発現データ
[00190]20の喫煙未経験者肺腺癌症例のメッセンジャーRNAマイクロアレイデータを、GEOデータベース(ncbi.nlm.nih.gov/geo/、GSE10072)からダウンロードして、そしてBRB−アレイツール・バージョン3.5.0によって分析した。
【0151】
[00191]実施例III
[00192]肺癌患者を治療する方法
[00193]本実施例は、本明細書の組成物での治療に好ましい反応を有する可能性が高い患者を選択し、そして治療する方法を記載する。
【0152】
[00194]肺癌と診断された患者は、通常、まず、治癒を意図して肺切除術を受ける。患者から取り除いた肺組織の一部から肺腫瘍試料を得る。次いで、当該技術分野に周知の任意の適切な小分子RNA抽出法を用いて、例えばTRIZOLTMを用いることによって、RNAを組織試料から単離する。次いで、精製したRNAを、miR21または図13−表6に開示する他の示差的に発現されるmiRに特異的なプライマーを用いたRT−PCRに、場合によってEGFR遺伝子分析またはEGFRリン酸化分析と組み合わせて供する。これらのアッセイを行って、腫瘍における関連RNAの発現レベルを決定する。示差的に発現されるmiR発現パターンが決定された場合、特に、EGFR突然変異体状態が解明された場合、患者は本明細書の組成物での治療の候補となる。
【0153】
[00195]したがって、当該技術分野に知られる方法にしたがって、患者を療法的に有効な量の組成物で治療する。組成物の用量および投薬措置は、多様な要因、例えば患者の健康状態および肺癌の病期に応じて多様であろう。典型的には、治療は、長期に渡り、多数回の用量で投与される。
【0154】
[00196]実施例IV
[00197]EGFR突然変異体肺癌患者を診断する方法
[00198]1つの特定の側面において、本明細書において、EGFR突然変異体肺癌を有するかまたはEGFR突然変異体肺癌を発展させるリスクがあるかどうかを診断する方法を提供する。該方法には、一般的に、図13−表6中のmiRの示差的miR発現パターン、特に対照に比較したmiR−21上方制御を測定する工程が含まれる。示差的miR発現パターンが確認された場合、この結果は、被験体がEGFR突然変異体肺癌を有するかまたはEGFR突然変異体肺癌を発展させるリスクがあるかいずれかの指標となる。特定の態様において、ノーザンブロット分析を用いて、少なくとも1つの遺伝子産物のレベルを測定する。また、特定の態様において、試験試料中の少なくとも1つの遺伝子産物のレベルは、対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベルより低く、そして/または試験試料中の少なくとも1つのmiR遺伝子産物のレベルは、対照試料中の対応するmiR遺伝子産物のレベルより大きい。
【0155】
[00199]実施例V
[00200]miR遺伝子産物の測定
[00201]被験体から得た試験試料からRNAを逆転写して、ターゲット・オリゴデオキシヌクレオチド・セットを提供し;ターゲット・オリゴデオキシヌクレオチドを、miR特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせて、試験試料に関するハイブリダイゼーション・プロフィールを提供し;そして試験試料ハイブリダイゼーション・プロフィールを、対照試料から生成したハイブリダイゼーション・プロフィールに比較することによって、少なくとも1つのmiR遺伝子産物レベルを測定してもよい。少なくとも1つのmiRのシグナルが改変されていると、被験体が肺癌、特にEGFR突然変異体肺癌を有するか、またはこれを発展させるリスクがあるかいずれかの指標となる。
【0156】
[00202]実施例VI
[00203]診断および療法適用
[00204]別の側面において、本明細書において、対照試料から生じたシグナルに比較して、少なくとも1つのmiRシグナルが脱制御されている(例えば下方制御および/または上方制御される)、被験体においてEGFR突然変異体肺癌を治療する方法を提供する。
【0157】
[00205]やはり本明細書において、被験体における1以上の不都合な予後マーカーと関連するEGFR突然変異体肺癌を有するか、または該癌を発症するリスクがあるかどうかを診断する方法であって、被験体から得た試験試料からRNAを逆転写して、ターゲット・オリゴデオキシヌクレオチドセットを提供し;ターゲット・オリゴデオキシヌクレオチドを、miR特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせて、試験試料に関するハイブリダイゼーション・プロフィールを提供し;そして試験試料ハイブリダイゼーション・プロフィールを、対照試料から生成したハイブリダイゼーション・プロフィールに比較することによる、前記方法もまた提供する。シグナルの変化は、被験体が癌を有するか、癌を発症するリスクがあることを示す。
【0158】
[00206]また、本明細書において、表6のmiRの少なくとも2つのmiR遺伝子産物が、対照細胞に比較して、被験体の癌細胞において下方制御されているかまたは上方制御されている、EGFR突然変異体肺癌を有する被験体において、EGFR突然変異体肺癌を治療する方法も提供する。少なくとも2つの遺伝子産物が癌細胞において下方制御されている場合、該方法は、被験体における癌細胞の増殖が阻害されるように、少なくとも2つの単離遺伝子産物の有効量を被験体に投与する工程を含む。2以上の遺伝子産物が癌細胞において上方制御されている場合、該方法は、被験体における癌細胞の増殖が阻害されるように、少なくとも1つの遺伝子産物の発現を阻害するための少なくとも1つの化合物の有効量を被験体に投与する工程を含む。また、本明細書において、被験体においてEGFR突然変異体肺癌を治療する方法であって:EGFR突然変異体肺癌細胞において、対照細胞に比較して、少なくとも2つのmiR(図13−表6に示す)遺伝子産物の量を決定し;そして:被験体における癌細胞の増殖が阻害されるように、癌細胞において発現される遺伝子産物の量が、対照細胞で発現される遺伝子産物の量より少ない場合、少なくとも2つの遺伝子産物の有効量を被験体に投与するか;または癌細胞において発現される遺伝子産物の量が、対照細胞で発現される遺伝子産物の量より多い場合、少なくとも2つの遺伝子産物発現を阻害するため少なくとも1つの化合物の有効量を被験体に投与することによって、EGFR突然変異体肺癌細胞で発現される遺伝子産物の量を改変する工程を含む、前記方法も提供する。
【0159】
[00207]実施例VII
[00208]組成物
[00209]また、本明細書において、少なくとも2つの単離miR(図13−表6に示す)遺伝子産物および薬学的に許容されうるキャリアーを含む、EGFR突然変異体肺癌を治療するための薬学的組成物も提供する。特定の態様において、薬学的組成物は、適切な対照細胞に比較して、EGFR突然変異体肺癌細胞において、下方制御されている遺伝子産物に対応する遺伝子産物を含む。
【0160】
[00210]別の特定の態様において、薬学的組成物は、少なくとも1つの発現制御因子(例えば阻害剤)化合物および薬学的に許容されうるキャリアーを含む。
【0161】
[00211]また、本明細書において、適切な対照細胞に比較して、EGFR突然変異体肺癌細胞で上方または下方制御されている遺伝子産物に特異的な少なくとも1つの発現制御因子化合物を含む、薬学的組成物も提供する。
【0162】
[00212]実施例VIII
[00213]キット
[00214]本明細書記載の任意の組成物は、キット中に含まれてもよい。限定されない例において、miRを単離し、miRを標識し、そして/またはアレイを用いてmiR集団を評価するための試薬がキット中に含まれる。キットには、miRプローブを生成するかまたは合成するための試薬がさらに含まれてもよい。キットは、したがって、適切な容器手段中に、標識ヌクレオチド、またはその後に標識される未標識ヌクレオチドを取り込むことによって、miRを標識するための酵素を含む。キットにはまた、反応緩衝剤、標識緩衝剤、洗浄緩衝剤、もしくはハイブリダイゼーション緩衝剤のような1以上の緩衝剤、miRプローブを調製するための化合物、およびmiRを単離するための構成要素が含まれてもよい。他のキットには、miRに相補的なオリゴヌクレオチドを含む核酸アレイを作製するための構成要素が含まれてもよく、そしてしたがって、例えば固体支持体が含まれてもよい。
【0163】
[00215]アレイを含む任意のキット態様に関して、本明細書の配列いずれかのすべてまたは一部に同一であるかまたは相補的である配列を含有する核酸分子があってもよい。
【0164】
[00216]キットの構成要素を水性媒体または凍結乾燥型のいずれかでパッケージングしてもよい。キットの容器手段には、一般的に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジまたは他の容器手段が含まれ、この中に構成要素が配置されてもよく、そして好ましくは適切にアリコットされてもよい。キット中に1より多い構成要素がある(標識試薬および標識はともにパッケージングされてもよい)場合、キットはまた、一般的に、第二、第三または他のさらなる容器を含有し、この中にさらなる構成要素を別個に配置してもよい。しかし、構成要素の多様な組み合わせがバイアル中に含まれてもよい。本発明のキットにはまた、典型的には、商業的販売のための密封状態で(in close confinement)、核酸および任意の他の試薬を含有するための手段が含まれるであろう。こうした容器には、注入またはブロー成形プラスチック容器が含まれてもよく、この中に望ましいバイアルを保持する。
【0165】
[00217]キットの構成要素が1つおよび/またはそれより多くの溶液中で提供される場合、溶液は水溶液であり、無菌水溶液が1つの好ましい溶液である。キット中に含まれてもよい他の溶液は、混合試料からmiRを単離しそして/または濃縮する際に関与する溶液である。
【0166】
[00218]しかし、キットの構成要素を乾燥粉末(単数または複数)として提供してもよい。試薬および/または構成要素が乾燥粉末として提供される場合、粉末は適切な溶媒の添加によって再構成されてもよい。溶媒はまた、別の容器手段中で提供されてもよいことが想定される。キットにはまた、標識されたmiRの単離を促進する構成要素も含まれてもよい。キットにはまた、miRを保存するかまたは維持するか、あるいはその分解に対して保護する構成要素も含まれてもよい。構成要素はRNアーゼ不含であってもよいし、またはRNアーゼに対して保護してもよい。
【0167】
[00219]また、キットは一般的に、適切な手段で、各個々の試薬または溶液に関して別個の容器を含んでもよい。キットにはまた、キット構成要素を使用するための、またそれとともに、キット中に含まれていない任意の他の試薬を使用するための説明書も含まれてもよい。説明書には、実行可能な変型が含まれてもよい。こうした試薬が本発明のキットの態様であることが予期される。また、キットは上に同定される特定の項目に限定されず、そしてキットには、miRの操作または特徴付けに使用される任意の試薬が含まれてもよい。
【0168】
[00220]miRアレイの背景において論じられる任意の態様は、より一般的に、本発明のスクリーニングまたはプロファイリング法またはキットにおいて使用されてもよいこともまた予期される。言い換えると、特定のアレイ中に含まれてもよいものを記載する任意の態様は、より一般的にmiRプロファイリングの背景において実施されてもよく、そしてアレイ自体を伴わなくてもよい。
【0169】
[00221]任意のキット、アレイまたは他の検出技術またはツール、あるいは任意の方法は、これらのmiRのいずれに関するプロファイリングを伴ってもよいこともまた予期される。また、miRアレイの背景において論じられる任意の態様は、本発明の方法において、アレイ形式を伴いまたは伴わずに実行されてもよく;言い換えると、miRアレイ中の任意のmiRを、当業者に知られる任意の技術にしたがって、本発明の任意の方法でスクリーニングするかまたは評価してもよい。アレイ形式は、スクリーニングおよび診断法を実施するのに必要ではない。
【0170】
[00222]療法、予後、または診断適用のためにmiRアレイを用いるためのキットおよびこうした使用が、本明細書において、本発明者らによって予期される。キットには、miRアレイ、ならびにアレイ上のmiRに関する標準または規準化miRプロフィールに関する情報が含まれてもよい。また、特定の態様において、対照RNAまたはDNAがキット中に含まれてもよい。対照RNAは、標識および/またはアレイ分析のための陽性対照として使用可能なmiRであってもよい。
【0171】
[00223]本解説の方法およびキットは、本明細書において、広くそして一般的に記載されてきている。一般的な開示内に属する、より狭い種および亜属の集団の各々もまた、本解説の一部を形成する。これには、条件付の、または排除される物質が本明細書に具体的に列挙されているかどうかに関わらず、属から任意の対象を除去する負の限定を伴う、本解説の一般的な説明が含まれる。
【0172】
[00224]実施例IX
[00225]アレイ調製およびスクリーニング
[00226]また、本明細書において、複数のmiR分子または前駆体miR分子に完全にもしくはほぼ完全に相補的であるかまたは同一であり、そして空間的に分離された構成で支持物質上に配置されている、核酸分子(プローブ)の秩序だったマクロアレイまたはマイクロアレイである、miRアレイの調製および使用も提供する。マクロアレイは、典型的には、ニトロセルロースまたはナイロンのシートであり、その上にプローブがスポットされている。マイクロアレイは、最大10,000の核酸分子が、典型的には1〜4平方センチメートルの領域内にフィット可能であるように、より密に核酸プローブを配置する。
【0173】
[00227]核酸分子、例えば遺伝子、オリゴヌクレオチド等を支持体上にスポットするか、または支持体上、in situでオリゴヌクレオチド配列を製造することによって、マイクロアレイを製造してもよい。スポットされるまたは製造される核酸分子は、平方センチメートルあたり最大約30の非同一核酸分子の高密度マトリックスパターンで、またはそれより高密度で、例えば、平方センチメートルあたり最大約100またはさらに1000まで適用可能である。マイクロアレイは、典型的には、フィルターアレイのニトロセルロースに基づく物質とは対照的に、コーティングされたガラスを固体支持体として用いる。miR相補核酸試料の秩序だったアレイを有することによって、各試料の位置を追跡し、そして元来の試料と関連付けることも可能である。
【0174】
[00228]複数の別個の核酸プローブが固体支持体表面と安定に会合する、多様な異なるアレイデバイスが当業者に知られる。アレイのために有用な支持体には、ナイロン、ガラスおよびシリコンが含まれる。アレイは、いくつかの異なる点で多様であってもよく、これには、平均プローブ長、プローブの配列または種類、プローブおよびアレイ表面間の結合の性質、例えば共有または非共有結合等が含まれる。本明細書記載の標識およびスクリーニング法、ならびにアレイは、プローブがmiRを検出する以外のいかなるパラメーターに関しても、その有用性を限定されず;その結果、方法および組成物を、多様な異なるタイプのmiRアレイとともに用いてもよい。
【0175】
[00229]本発明の原理を適用可能な、多くのありうる態様を考慮すると、例示する態様は単に本発明の好ましい例であると認識すべきであり、そして本発明の範囲に対する限定と解釈してはならない。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求項によって定義される。本発明者らは、したがって、本発明を、これらの請求項の範囲および精神の範囲内にあるすべてのものと請求する。
【0176】
[00230]本発明は、多様なそして好ましい態様に言及して記載されてきているが、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多様な変化を行ってもよく、そしてその要素を同等物で置換してもよいことが、当業者には理解されなければならない。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の解説に対して、特定の状況または物質を適応させるよう、多くの修飾を行ってもよい。したがって、本発明は、本発明を実施するために予期される、本明細書に開示する特定の態様に限定されず、本発明には、請求項の範囲内に属するすべての態様が含まれることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアンチセンスmiRおよび少なくとも1つのさらなる組成物を含む、物質の組成物であって、
アンチセンスmiRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、上皮増殖因子受容体(EGFR)喫煙未経験者突然変異体癌細胞において示差的に発現されるmiRに対してアンチセンスであり、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である
前記組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのさらなる組成物が:化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ(panitumab);ザルツママブ(zalutumamab);ニモツザマブ(nimotuzamab);マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項3】
アンチセンスmiRが、群:miR−21;miR−210;miR−129より選択されるmiRに対してアンチセンスであるmiRより選択される、請求項1の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つのアンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスである、請求項1の組成物。
【請求項5】
癌を治療するのに有用な少なくとも1つのさらなる組成物が上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤である、請求項4の組成物。
【請求項6】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤がAG1478である、請求項5の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのmiRおよび少なくとも1つのさらなる組成物を含む物質の組成物であって、miRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、上皮増殖因子受容体(EGRF)突然変異体喫煙未経験者癌細胞において上方制御され、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である、前記組成物。
【請求項8】
miRが、群:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択される、請求項7の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのアンチセンスmiRおよび少なくとも1つの組成物を含む物質の組成物であって、アンチセンスmiRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、上皮増殖因子受容体(EGFR)突然変異体喫煙未経験者癌細胞において上方制御されるmiRに対してアンチセンスであり、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である、前記組成物。
【請求項10】
アンチセンスmiRが:miR−21;miR−210;およびmiR−129を含む群より選択されるmiRに対してアンチセンスであるmiRより選択される、請求項9の組成物。
【請求項11】
試験試料において、上皮増殖因子受容体(EGFR)突然変異体癌細胞を同定する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、試験試料が上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞を含有すると同定される、前記方法。
【請求項12】
miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、請求項11の方法。
【請求項13】
喫煙未経験被験体が肺癌を有するか、または発症するリスクがあるかどうかを診断する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、該被験体が肺癌を有するか、または発症するリスクがあると診断される、前記方法。
【請求項14】
試験試料および対照における上皮増殖因子受容体突然変異体状態を比較する工程をさらに含む、請求項13の方法。
【請求項15】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を用いて、上皮増殖因子受容体突然変異体状態を決定する、請求項14の方法。
【請求項16】
miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、請求項13の方法。
【請求項17】
喫煙未経験癌患者における予後を提供する方法であって:試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、劣った予後が示される、前記方法。
【請求項18】
miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、請求項17の方法。
【請求項19】
患者において上皮増殖因子受容体(EGFR)突然変異体癌を診断する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、該被験体が上皮増殖因子受容体突然変異体癌を有すると診断される、前記方法。
【請求項20】
miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、請求項19の方法。
【請求項21】
上皮増殖因子受容体(EGFR)突然変異体癌患者における予後を提供する方法であって:試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、劣った予後が示される、前記方法。
【請求項22】
miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、請求項21の方法。
【請求項23】
癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の請求項1の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項24】
治療する癌が:神経芽細胞腫;肺癌;胆管癌;非小細胞肺癌;肝細胞癌;リンパ腫;鼻咽頭癌;卵巣癌;頭頸部扁平上皮癌;子宮頸部扁平上皮癌;胃癌;結腸癌;子宮頸癌;胆嚢癌;前立腺癌;乳癌;精巣胚細胞腫瘍;大細胞型リンパ腫;濾胞性リンパ腫;結腸直腸癌;悪性胸膜中皮腫;神経膠腫;甲状腺癌;基底細胞癌;T細胞リンパ腫;t(8;17)−前リンパ球性白血病;骨髄異形成症候群;膵臓癌;t(5;14)(q35.1;q32.2)白血病;悪性線維性組織球腫;胃腸間質腫瘍;および肝芽腫を含む群より選択される、請求項23の方法。
【請求項25】
癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の請求項4の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項26】
治療する癌が肺癌である、請求項25の方法。
【請求項27】
癌治療が必要な患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の請求項5の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項28】
治療する癌が腺癌である、請求項27の方法。
【請求項29】
癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のアンチセンスmiRを投与する工程を含み、アンチセンスmiRが:miR−21;miR−210;miR−129を含む群より選択されるmiRに対してアンチセンスである、前記方法。
【請求項30】
癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のアンチセンスmiRを投与する工程を含み、アンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスである、前記方法。
【請求項31】
治療する癌が肺癌である、請求項30の方法。
【請求項32】
治療する癌が腺癌である、請求項30の方法。
【請求項33】
アジュバントを投与する工程をさらに含む、請求項30の方法。
【請求項34】
化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される少なくとも1つの化合物を含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含む、請求項30の方法。
【請求項35】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含む、請求項30の方法。
【請求項36】
AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含む、請求項30の方法。
【請求項37】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の請求項1の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項38】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の請求項4の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項39】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR発現阻害剤を投与する工程を含み、miRが:miR−21;miR−210;およびmiR−129を含む群より選択される、前記方法。
【請求項40】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR−21発現阻害剤を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項41】
化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含む、請求項40の方法。
【請求項42】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含む、請求項40の方法。
【請求項43】
AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含む、請求項40の方法。
【請求項44】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR発現促進組成物を投与する工程を含み、miRが:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、前記方法。
【請求項45】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量の請求項1の組成物を導入する工程を含む、前記方法。
【請求項46】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量の請求項4の組成物を導入する工程を含む、前記方法。
【請求項47】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のアンチセンスmiRを導入する工程を含み、該アンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスである、前記方法。
【請求項48】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞が腺癌細胞である、請求項47の方法。
【請求項49】
腺癌細胞が:H3255細胞;H1975細胞;およびH1650細胞を含む群より選択される、請求項47の方法。
【請求項50】
アジュバントを導入する工程をさらに含む、請求項47の方法。
【請求項51】
化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を導入する工程をさらに含む、請求項47の方法。
【請求項52】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含む、請求項47の方法。
【請求項53】
AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含む、請求項47の方法。
【請求項54】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR発現阻害剤を導入する工程を含み、miRが:miR−21;miR−210;およびmiR−129を含む群より選択される、前記方法。
【請求項55】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR−21発現阻害剤を導入する工程を含む、前記方法。
【請求項56】
化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含む、請求項54の方法。
【請求項57】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含む、請求項54の方法。
【請求項58】
AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含む、請求項54の方法。
【請求項59】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR発現促進組成物を導入する工程を含み、miRが:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、前記方法。
【請求項60】
薬学的に有用な組成物を同定するための方法であって:
i)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物にアンチセンスmiRを導入し、ここでアンチセンスmiRは:miR−21;miR−210;miR−129を含む群より選択されるmiRに対してアンチセンスであり;
ii)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物に試験組成物を導入し;そして
iii)アポトーシスを誘導する試験組成物を、薬学的に有用な組成物と同定する;
工程を含む前記方法。
【請求項61】
薬学的に有用な組成物を同定するための方法であって:
i)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物にアンチセンスmiRを導入し、ここでアンチセンスmiRは:miR−21に対してアンチセンスであり;
ii)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物に試験組成物を導入し;そして
iii)アポトーシスを誘導する試験組成物を、薬学的に有用な組成物と同定する;
工程を含む前記方法。
【請求項62】
癌細胞が肺癌細胞である、請求項61の方法。
【請求項63】
リン酸化上皮増殖因子受容体レベルを同定する工程をさらに含む、請求項61の方法。
【請求項64】
肺癌と診断された患者の臨床転帰を予測する方法であって、患者から得た癌細胞試料においてmiR−21発現レベルを検出する工程を含み、対照に比較してmiR−21レベルの1.5倍以上の増加があると、上皮増殖因子受容体突然変異体状態と組み合わせて、生存減少が予測される、前記方法。
【請求項65】
肺癌治療用の療法剤を同定する方法であって、in vitroで候補剤をスクリーニングして、miR21の発現を減少させる剤を選択し、それによって肺癌治療用の剤を同定する工程を含む、前記方法。
【請求項66】
肺癌において示差的に発現されるmiRを同定するためのキットであって:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択されるmiRの少なくとも1つの分子同定因子を含む、前記キット。
【請求項67】
肺癌において示差的に発現されるmiR−21を同定するためのキットであって、miR−21の少なくとも1つの分子同定因子を含み、分子同定因子が:プローブ;プライマー;抗体;または小分子を含む群より選択される、前記キット。
【請求項1】
少なくとも1つのアンチセンスmiRおよび少なくとも1つのさらなる組成物を含む、物質の組成物であって、
アンチセンスmiRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、上皮増殖因子受容体(EGFR)喫煙未経験者突然変異体癌細胞において示差的に発現されるmiRに対してアンチセンスであり、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である
前記組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのさらなる組成物が:化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ(panitumab);ザルツママブ(zalutumamab);ニモツザマブ(nimotuzamab);マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される、請求項1の組成物。
【請求項3】
アンチセンスmiRが、群:miR−21;miR−210;miR−129より選択されるmiRに対してアンチセンスであるmiRより選択される、請求項1の組成物。
【請求項4】
少なくとも1つのアンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスである、請求項1の組成物。
【請求項5】
癌を治療するのに有用な少なくとも1つのさらなる組成物が上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤である、請求項4の組成物。
【請求項6】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤がAG1478である、請求項5の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのmiRおよび少なくとも1つのさらなる組成物を含む物質の組成物であって、miRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、上皮増殖因子受容体(EGRF)突然変異体喫煙未経験者癌細胞において上方制御され、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である、前記組成物。
【請求項8】
miRが、群:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aより選択される、請求項7の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのアンチセンスmiRおよび少なくとも1つの組成物を含む物質の組成物であって、アンチセンスmiRが、野生型喫煙未経験者癌細胞に比較して、上皮増殖因子受容体(EGFR)突然変異体喫煙未経験者癌細胞において上方制御されるmiRに対してアンチセンスであり、そして少なくとも1つのさらなる組成物が癌を治療するのに有用である、前記組成物。
【請求項10】
アンチセンスmiRが:miR−21;miR−210;およびmiR−129を含む群より選択されるmiRに対してアンチセンスであるmiRより選択される、請求項9の組成物。
【請求項11】
試験試料において、上皮増殖因子受容体(EGFR)突然変異体癌細胞を同定する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、試験試料が上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞を含有すると同定される、前記方法。
【請求項12】
miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、請求項11の方法。
【請求項13】
喫煙未経験被験体が肺癌を有するか、または発症するリスクがあるかどうかを診断する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、該被験体が肺癌を有するか、または発症するリスクがあると診断される、前記方法。
【請求項14】
試験試料および対照における上皮増殖因子受容体突然変異体状態を比較する工程をさらに含む、請求項13の方法。
【請求項15】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を用いて、上皮増殖因子受容体突然変異体状態を決定する、請求項14の方法。
【請求項16】
miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、請求項13の方法。
【請求項17】
喫煙未経験癌患者における予後を提供する方法であって:試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、劣った予後が示される、前記方法。
【請求項18】
miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、請求項17の方法。
【請求項19】
患者において上皮増殖因子受容体(EGFR)突然変異体癌を診断する方法であって、試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、該被験体が上皮増殖因子受容体突然変異体癌を有すると診断される、前記方法。
【請求項20】
miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、請求項19の方法。
【請求項21】
上皮増殖因子受容体(EGFR)突然変異体癌患者における予後を提供する方法であって:試験試料におけるmiRレベルを、対照のmiRレベルに比較する工程を含み、miRレベルが示差的に発現されていると、劣った予後が示される、前記方法。
【請求項22】
miRが:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、請求項21の方法。
【請求項23】
癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の請求項1の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項24】
治療する癌が:神経芽細胞腫;肺癌;胆管癌;非小細胞肺癌;肝細胞癌;リンパ腫;鼻咽頭癌;卵巣癌;頭頸部扁平上皮癌;子宮頸部扁平上皮癌;胃癌;結腸癌;子宮頸癌;胆嚢癌;前立腺癌;乳癌;精巣胚細胞腫瘍;大細胞型リンパ腫;濾胞性リンパ腫;結腸直腸癌;悪性胸膜中皮腫;神経膠腫;甲状腺癌;基底細胞癌;T細胞リンパ腫;t(8;17)−前リンパ球性白血病;骨髄異形成症候群;膵臓癌;t(5;14)(q35.1;q32.2)白血病;悪性線維性組織球腫;胃腸間質腫瘍;および肝芽腫を含む群より選択される、請求項23の方法。
【請求項25】
癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の請求項4の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項26】
治療する癌が肺癌である、請求項25の方法。
【請求項27】
癌治療が必要な患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の請求項5の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項28】
治療する癌が腺癌である、請求項27の方法。
【請求項29】
癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のアンチセンスmiRを投与する工程を含み、アンチセンスmiRが:miR−21;miR−210;miR−129を含む群より選択されるmiRに対してアンチセンスである、前記方法。
【請求項30】
癌治療が必要な喫煙未経験患者において癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のアンチセンスmiRを投与する工程を含み、アンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスである、前記方法。
【請求項31】
治療する癌が肺癌である、請求項30の方法。
【請求項32】
治療する癌が腺癌である、請求項30の方法。
【請求項33】
アジュバントを投与する工程をさらに含む、請求項30の方法。
【請求項34】
化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される少なくとも1つの化合物を含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含む、請求項30の方法。
【請求項35】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含む、請求項30の方法。
【請求項36】
AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含む、請求項30の方法。
【請求項37】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の請求項1の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項38】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量の請求項4の組成物を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項39】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR発現阻害剤を投与する工程を含み、miRが:miR−21;miR−210;およびmiR−129を含む群より選択される、前記方法。
【請求項40】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR−21発現阻害剤を投与する工程を含む、前記方法。
【請求項41】
化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含む、請求項40の方法。
【請求項42】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含む、請求項40の方法。
【請求項43】
AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含む、請求項40の方法。
【請求項44】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌を治療する必要がある患者において、こうした癌を治療する方法であって、薬学的に有効な量のmiR発現促進組成物を投与する工程を含み、miRが:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、前記方法。
【請求項45】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量の請求項1の組成物を導入する工程を含む、前記方法。
【請求項46】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量の請求項4の組成物を導入する工程を含む、前記方法。
【請求項47】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のアンチセンスmiRを導入する工程を含み、該アンチセンスmiRがmiR−21に対してアンチセンスである、前記方法。
【請求項48】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞が腺癌細胞である、請求項47の方法。
【請求項49】
腺癌細胞が:H3255細胞;H1975細胞;およびH1650細胞を含む群より選択される、請求項47の方法。
【請求項50】
アジュバントを導入する工程をさらに含む、請求項47の方法。
【請求項51】
化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を導入する工程をさらに含む、請求項47の方法。
【請求項52】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含む、請求項47の方法。
【請求項53】
AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含む、請求項47の方法。
【請求項54】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR発現阻害剤を導入する工程を含み、miRが:miR−21;miR−210;およびmiR−129を含む群より選択される、前記方法。
【請求項55】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR−21発現阻害剤を導入する工程を含む、前記方法。
【請求項56】
化学療法薬剤;AG1478;ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));セツキシマブ;パニツマブ;ザルツママブ;ニモツザマブ;マツズマブ;およびラパチニブを含む群より選択される化合物を投与する工程をさらに含む、請求項54の方法。
【請求項57】
上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤を投与する工程をさらに含む、請求項54の方法。
【請求項58】
AG1478または薬学的に許容されうるその配合物を投与する工程をさらに含む、請求項54の方法。
【請求項59】
上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞のアポトーシスを誘導するための方法であって、アポトーシスに有効な量のmiR発現促進組成物を導入する工程を含み、miRが:miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択される、前記方法。
【請求項60】
薬学的に有用な組成物を同定するための方法であって:
i)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物にアンチセンスmiRを導入し、ここでアンチセンスmiRは:miR−21;miR−210;miR−129を含む群より選択されるmiRに対してアンチセンスであり;
ii)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物に試験組成物を導入し;そして
iii)アポトーシスを誘導する試験組成物を、薬学的に有用な組成物と同定する;
工程を含む前記方法。
【請求項61】
薬学的に有用な組成物を同定するための方法であって:
i)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物にアンチセンスmiRを導入し、ここでアンチセンスmiRは:miR−21に対してアンチセンスであり;
ii)上皮増殖因子受容体突然変異体癌細胞培養物に試験組成物を導入し;そして
iii)アポトーシスを誘導する試験組成物を、薬学的に有用な組成物と同定する;
工程を含む前記方法。
【請求項62】
癌細胞が肺癌細胞である、請求項61の方法。
【請求項63】
リン酸化上皮増殖因子受容体レベルを同定する工程をさらに含む、請求項61の方法。
【請求項64】
肺癌と診断された患者の臨床転帰を予測する方法であって、患者から得た癌細胞試料においてmiR−21発現レベルを検出する工程を含み、対照に比較してmiR−21レベルの1.5倍以上の増加があると、上皮増殖因子受容体突然変異体状態と組み合わせて、生存減少が予測される、前記方法。
【請求項65】
肺癌治療用の療法剤を同定する方法であって、in vitroで候補剤をスクリーニングして、miR21の発現を減少させる剤を選択し、それによって肺癌治療用の剤を同定する工程を含む、前記方法。
【請求項66】
肺癌において示差的に発現されるmiRを同定するためのキットであって:miR−21;miR−210;miR−129;miR−486;miR−126:miR−138;miR−521;miR−451;miR−141;miR−30d;およびmiR−30aを含む群より選択されるmiRの少なくとも1つの分子同定因子を含む、前記キット。
【請求項67】
肺癌において示差的に発現されるmiR−21を同定するためのキットであって、miR−21の少なくとも1つの分子同定因子を含み、分子同定因子が:プローブ;プライマー;抗体;または小分子を含む群より選択される、前記キット。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【公表番号】特表2012−518997(P2012−518997A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552098(P2011−552098)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025173
【国際公開番号】WO2010/099161
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(593172050)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (33)
【氏名又は名称原語表記】THE OHIO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025173
【国際公開番号】WO2010/099161
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(593172050)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (33)
【氏名又は名称原語表記】THE OHIO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【Fターム(参考)】
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