説明

噴流発生装置及び電子機器

【課題】
騒音の発生を抑制しつつ、発熱体から発せられる熱を効果的に放熱することができる噴流発生装置、これを搭載した電子機器を提供すること。
【解決手段】
本発明に係る噴流発生装置1は、ノズル3a及び3bを有し、内部2a及び2bに冷媒が含まれた筐体2と、筐体2内に配置され、冷媒に振動を与えることで、当該振動に同期するように、ノズル3a及び3bを介して交互に冷媒を脈流として吐出させる振動板5と、筐体2内に配置され、振動板5の振動方向Rで該振動板に対して対称構造を有し、前記振動板5の振動を駆動する駆動機構10とを具備する。本発明では、駆動機構10が振動板5に対して対象構造を有しているので、筐体2内において振動板5に対して対称的な空力特性を得ることができる結果、騒音の発生を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴流を発生させて電子部品等の発熱体を冷却する噴流発生装置及びこれを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、PC(Personal Computer)の高性能化に伴うIC(Integrated Circuit)等の発熱体からの発熱量の増大が問題となっており、様々な放熱の技術が提案され、あるいは製品化されている。その放熱方法として、例えばICにアルミなどの金属でなる放熱用のフィンを接触させて、ICからの熱をフィンに伝導させて放熱する方法がある。また、ファンを用いることにより、例えばPCの筐体内の温まった空気を強制的に排除し、周囲の低温の空気を発熱体周辺に導入することで放熱する方法もある。あるいは放熱フィンとファンとを併用することにより、放熱フィンで発熱体と空気の接触面積を大きくしつつ、ファンにより放熱フィンの周囲の暖まった空気を強制的に排除する方法もある。
【0003】
しかしながら、このようなファンによる空気の強制対流では、放熱フィンの下流側でフィン表面の温度境界層が生起され、放熱フィンからの熱を効率的に奪えないという問題がある。このような問題を解決するためには、例えばファンの風速を上げて温度境界層を薄くすることが上げられる。しかし、風速を上げるためにファンの回転数を増加させることにより、ファンの軸受け部分からの騒音や、ファンからの風が引き起こす風切り音などによる騒音が発生するという問題がある。
【0004】
上記温度境界層を破壊し、放熱フィンからの熱を効率よく空気に逃がす方法として、合成噴流を用いたものがある。これはチャンバ内に設けられた往復するピストンなどにより生じる空気の動きを、チャンバの一端に設けられた孔から噴出させるものである。この孔から噴出された空気は合成噴流と呼ばれ、空気の混合を促進し上記温度境界層の破壊を引き起こし、従来のファンによる強制対流に比べ効率よく放熱することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】米国特許第6123145号明細書(FIG.8等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、ピストンの往復運動による空気振動が音波として伝搬するため、この音による騒音が問題となる。また、近年のICの高クロック化によって発生する熱量は増加の一途をたどっているため、例えばその発熱によって放熱フィン付近に形成される温度境界層を破壊するためには、そのICや放熱フィンに向けてこれまでより多量の空気を送り込まなければならない。そうすると、上記特許文献1におけるFIG.1A等に示された装置のように、振動膜を振動させて空気を噴出させる装置であっても、その振動の振幅を上げて空気の噴出量を上げなければならない。したがってその振動膜の振動数が可聴帯域にある場合には、その振動膜の騒音も問題となる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、極力騒音の発生を抑制しつつ、発熱体から発せられる熱を効果的に放熱することができる噴流発生装置、これを搭載した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る噴流発生装置は、第1及び第2の開口を有し、内部に気体が含まれた筐体と、前記筐体内に配置され、前記気体に振動を与えることで、当該振動に同期するように、前記第1及び第2の開口を介して交互に前記気体を脈流として吐出させる振動板と、前記筐体内に配置され、前記振動板の振動方向で該振動板に対して対称構造を有し、前記振動板の振動を駆動する駆動機構とを具備する。
【0008】
本発明では、駆動機構の駆動によって振動板が振動することで、筐体内から第1及び第2の開口を介して交互に前記気体を脈流として吐出させるようにしている。このように交互に気体が吐出されることで、開口から発生する音波の周波数も等しくなり、逆位相となり弱め合うことになる。これにより、騒音が低減される。また、駆動機構は振動板に対して対象構造を有しているので、筐体内において振動板に対して対称的な空力特性を得ることができる。その結果、第1及び第2の開口から発生する音波の振幅等が等しくなり、それぞれの音波の弱め合いに寄与し、騒音のさらなる低減化が図れる。
【0009】
本発明において、気体としては例えば空気が挙げられるが、その他の気体であってもよい。また、第1及び第2の開口はそれぞれ複数設けられていてもよい。このように複数設けられる場合、騒音の低減化のため、第1の開口と第2の開口の数が等しくすることが好ましい。駆動機構としては、例えば電磁駆動のものを用いることができるが、そのほか、圧電駆動または静電駆動でもよい。以下、同様である。
【0010】
本発明の一の形態によれば、前記振動板は平板状である。これにより、振動する方向で振動板が対称形状となるため、騒音を低減することができる。
【0011】
本発明の一の形態によれば、前記振動板は、振動の方向にほぼ垂直な第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面とを有し、前記駆動機構は、前記第1の面側に配置された前記第1のアクチュエータと、前記第2の面側に配置され、前記第1のアクチュエータと同期して駆動し、前記第1のアクチュエータと同じ構造の第2のアクチュエータとを有する。このように2つのアクチュエータが設けられることにより、振動方向での対称性を確保することができる上、大きな駆動力を得ることができ、気体の吐出量を多くすることができる。
【0012】
本発明の一の形態によれば、前記筐体は内壁を有し、当該噴流発生装置は、前記振動板の外周に取り付けられるとともに、前記内壁に取り付けられ、前記振動板を支持する支持部材をさらに具備する。振動板が支持部材を介して筐体の内壁に直接取り付けられることにより、例えばフレームを有するスピーカ型の振動装置を筐体内に設ける場合に比べ、構造が簡単になり、噴流発生装置の小型化、低コスト化が図れる。また、そのようなフレームがある場合に比べ、本発明のようにフレームがない場合は空力特性がよくなる。
【0013】
本発明の一の形態によれば、前記振動板の外周の形状と、前記支持部材が取り付けられた位置における前記内壁の周方向での形状とがほぼ同じである。これにより、振動板が振動するときに、筐体内に含まれた気体に対して極力大きな面積による振動を与えることができる。したがって、各開口からの流量もその分多くなり、冷却効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の一の形態によれば、前記駆動機構は、ステータと、作動することで前記ステータの少なくとも一部が出入りする内部空間と、前記内部空間に連通する前記気体が流通可能な流通孔とを有し、前記振動板に接続された筒状の可動部材とを有する。本発明では、可動部材が作動し、ステータと可動部材との相対的な動きによってステータが上記内部空間に出入りする。流通孔がない場合は、ステータが内部空間に入ることにより、例えば振動板の撓みで容積を小さくしようとする側のチャンバの容積を大きくすることになり、チャンバの容積変化が打ち消し合い効率が悪くなる。しかし、本発明によれば、流通孔が設けられることにより、内部空間にある気体がその流通孔を介して可動部材の外側に逃げることができるのでそのような問題を解消することができる。本発明においては、駆動機構としては、例えば電磁駆動のものを用いることができる。例えば、筒状の可動部材にコイルが巻回されたものが挙げられるが、これに限らず、ステータにコイルが設けられているものであってもよい。
【0015】
本発明の一の形態によれば、前記可動部材は、前記流通孔が前記振動板と対面するように設けられた底部を有し、前記駆動機構は、前記可動部材の底部と前記振動板とを接続するロッドを有する。ロッドが設けられる場合は、可動部材の底部と振動板とは離れているので、その底部に流通孔が設けられていてもよい。
【0016】
本発明の一の形態によれば、前記振動板は、振動の方向に沿うように立設され、第1の端部と、前記振動方向で前記第1の端部と反対側に設けられた第2の端部とを有する側壁を有し、当該噴流発生装置は、前記第1の端部を支持する第1の支持部材と、前記第2の端部を支持する第2の支持部材とをさらに具備する。このように振動の方向に配列された第1の支持部材と第2の支持部材とによって側壁が支持されることにより、振動板の横振れを防止して安定した振動を得ることができる。また、横振れが抑えられることにより、例えば駆動機構が電磁駆動のものである場合、ステータと可動部材とが衝突しにくくすることができる。このように衝突しにくくすることで、ステータと可動部材との隙間を狭くすることができコイルにかかる磁界を強くできる。その結果、駆動機構は効率よく駆動力を得ることができる。さらに、衝突しにくくすることで、高次モードの振動を抑制することができ、ノイズを低減することができる。
【0017】
本発明の一の形態によれば、前記振動板は、振動の方向に沿うように立設された側壁を有し、当該噴流発生装置は、前記側壁を前記振動方向に摺動可能に支持する支持部材をさらに具備する。これにより、軸受部材が支持する側壁の支持面積を大きくすることができるので、振動板の横振れを防止して安定した振動を得ることができる。
【0018】
本発明の一の形態によれば、前記側壁と前記支持部材との間に介在された潤滑材をさらに具備する。これにより、振動板がスムーズに振動できるようなり、また、筐体内で振動板で仕切られて形成された2つのチャンバ間での気密性を高めることができる。潤滑材は固体でも流体でもよい。
【0019】
本発明の一の形態によれば、前記潤滑材は磁性流体である。これにより、例えば側壁や支持部材が磁性体であれば、潤滑材の保持が容易になる。
【0020】
本発明の一の形態によれば、前記筐体は内壁を有し、前記振動板は、振動の方向に沿うように立設され、前記内壁により振動の方向に摺動可能に支持された側壁を有する。このように振動板の側壁が直接筐体の内壁に摺接することで、上記のように側壁を支持する支持部材が設けられる場合に比べ、噴流発生装置を小型化することができる。また、支持部材がある場合に比べ空力特性もよくなる。本発明においても、上記の支持部材の場合と同様に、側壁と内壁との間に潤滑材が設けられていてもよい。
【0021】
本発明の一の形態によれば、噴流発生装置は、前記振動板の外周で該振動板を支持する支持部材と、少なくとも前記支持部材に取り付けられるように配線され、前記駆動機構に給電するための導線とをさらに具備する。これにより、導線が空中に配線される場合に比べ、導線の断線を抑制することができる。導線は振動板にも取り付けられるようにしてもよい。
【0022】
本発明の一の形態によれば、前記導線は、前記振動板の周囲に沿って螺旋状に配線されている。導線が振動板や支持部材に取り付けられてこれら振動板や支持部材と一体的に動くように構成されていても、例えば導線が、支持部材の変形量が大きい方向、すなわち振動板の中央から外側に向かう方向に沿って配線される場合には、導線に大きな応力が加わり断線する可能性がある。しかし、本発明では振動板の周囲に沿って螺旋状に配線されているので、導線にかかる応力を低減することができ、断線を防止することができる。
【0023】
本発明の一の形態によれば、前記導線は前記支持部材に埋設されていてもよい。導線が埋設されることで、信頼性の高い振動デバイスを実現することができる。またその振動デバイスの製造時において、導線の半田付けのような組み立てが不要となり、コストを低減することができる。
【0024】
本発明の一の形態によれば、前記支持部材は、前記振動板の周囲に沿って螺旋状に形成された溝を有し、前記導線は、前記溝に沿って配線されている。これにより、噴流発生装置を製造するときに、その支持部材への配線が容易となる。
【0025】
本発明の一の形態によれば、噴流発生装置は、前記第1の面側に前記振動板の周囲に沿って螺旋状に形成された第1の溝と、前記第1の溝が稜線となるように前記第2の面側に螺旋状に形成された第2の溝とを有し、前記振動板の外周で該振動板を支持する支持部材と、前記第1の溝に沿って配線され、前記第1のアクチュエータに給電するための第1の導線と、前記第2の溝に沿って配線され、前記第2のアクチュエータに給電するための第2の導線とをさらに具備する。つまり、本発明では、支持部材は蛇腹(ベローズ)状のものとなる。この蛇腹状の支持部材の両面(上記第1の面側及び第2の面側)の第1及び第2の溝を利用して配線することができる。
【0026】
本発明に係る電子機器は、発熱体と、第1及び第2の開口を有し、内部に気体が含まれた筐体と、前記筐体内に配置され、前記気体に振動を与えることで、当該振動に同期するように、前記第1及び第2の開口を介して交互に前記気体を脈流として前記発熱体に向けて吐出させる振動板と、前記筐体内に配置され、前記振動板の振動方向で該振動板に対して対称構造を有し、前記振動板の振動を駆動する駆動機構とを具備する。
【0027】
本発明では、駆動機構が振動板に対して対象構造を有しているので、筐体内において振動板に対して対称的な空力特性を得ることができ、効率よく発熱体を冷却することができる。発熱体としては、例えばICチップや抵抗等の電子部品、あるいは放熱フィン等が挙げられるが、これらに限られず発熱するものなら何でもよい。電子機器としては、コンピュータ、PDA(Personal Digital Assistance)、カメラ、ディスプレイ装置、オーディオ機器、その他の電化製品等が挙げられる。以下、同様である。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、極力騒音の発生を抑制しつつ、発熱体から発せられる熱を効果的に放熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る噴流発生装置を示す斜視図である。図2及び図3はそれぞれ図1に示すA−A線断面図、B−B線断面図である。
【0031】
噴流発生装置1は筐体2を有しており、筐体2内には例えば2つの振動デバイス10が配置されている。2つの振動デバイス10はそれぞれ実質的に同一の構成を有している。筐体2は、剛性の高い物質、例えばアルミ等の金属によって構成されているが、金属に限られず、樹脂でもよい。筐体2内には、図中上下に2つのチャンバ2a及び2bを形成するために仕切り部材2cが設けられ、この仕切り部材2cに設けられた開口部2dに、振動デバイス10が装着されている。仕切り部材2c、後述する振動板5及びエッジ部材18によって、筐体2の内部が分けられ、これにより、チャンバ2aとチャンバ2bとが形成される。
【0032】
振動デバイス10は、例えば2つのスピーカが対面するような構造を有する振動デバイスである。振動デバイス10は、1つの平板状の振動板5を共有する2つのアクチュエータ11及び21を備えている。振動板5は、例えば柔軟な膜状の物質でなり、例えばPET(polyethylene terephthalate)フィルム等により形成されている。アクチュエータ11及び21は、それぞれ実質的に同一の構成を有しており、上記仕切り部材の開口部2dに嵌着されたフレーム17にそれぞれ装着されている。フレーム17には筐体2内の冷媒、例えば空気が流通する流通孔17aがチャンバ2a及び2b側で複数設けられている。アクチュエータ11及び21は、例えば筒状のヨーク12及び22、このヨーク12に固定されたマグネット13及び23、ヨークの機能を果たすプレート14及び24、コイル15及び25、これらのコイル15及び25を保持するコイル保持部材16及び26等で構成されている。振動板5は、フレームに取り付けられた支持部材としてのエッジ部材18により支持されている。エッジ部材18は、振動板5が振動できるように、例えば弾性、または可撓性を有し、樹脂やゴムでなる。可動部となるコイル保持部材16及び26が振動板5の両面に固定されている。これにより振動板5、コイル保持部材16及び26が一体的に矢印Rの方向振動する。このように、振動デバイス10は、振動板5の振動方向Rで対称的な構造となっている。
【0033】
図3に示すように、コイル15及び25には、アクチュエータ11及び21の駆動を制御する制御部19が電気的に接続されている。制御部19は、例えば、コイル15及び25にそれぞれ正弦波の交流電圧を印加するための電源回路や、その電源回路等を制御する制御回路等を有している。制御部19は、コイル保持部材16とコイル保持部材26との動きが同期して同じ向きとなるようにコイル15及び25に電流を流すように制御を行う。
【0034】
筐体2の側面には、例えばチャンバ2a及び2bに内部の流路が連通するノズル3a及び3bがそれぞれ設けられている。図1及び図2に示すように、これらのノズル3a及び3bは、振動方向R(図3)にほぼ垂直な面内でそれぞれ複数配列されている。ノズル3a等は、筐体2等から突出した形状でなくてもよく、例えば筐体2等の側面が開口されているだけでもよい。
【0035】
以上のように構成された噴流発生装置1の作用を説明する。制御部19が振動デバイス10を駆動し、振動板5を正弦波振動させることにより、チャンバ2a及び2b内の容積が増減する。チャンバ2a及び2bの容積変化に伴い、それらチャンバ2a及び2bの圧力が変化し、これに伴い、それぞれノズル3a及び3bを介して交互に空気の流れが脈流として発生する。例えば、振動板5がチャンバ2bの容積を増加させる方向に変位すると、チャンバ2aの圧力は高くなり、ノズル3aを介して筐体2内の空気が噴出される。このとき、チャンバ2bの圧力は低くなり、ノズル3bを介し外部から空気がチャンバ2b内に流れ込む。逆に、振動板5がチャンバ2aの容積を増加させる方向に変位すると、チャンバ2bの圧力は高くなり、ノズル3bを介して筐体2内の空気が吐出される。このとき、チャンバ2aの圧力は低くなり、ノズル3aを介し外部から空気がチャンバ2b内に流れ込む。このように噴出された空気を例えば高熱部に吹き付けることにより、高熱部を冷却することができる。
【0036】
一方、振動板5の振動は音波となって空気中を伝搬する。仮に、ノズル3a及び3bからそれぞれ独立してばらばらに空気が吐出される場合、ノズル3a及び3bから騒音が発生する。しかしながら、この噴流発生装置1では、ノズル3a及び3bから交互に吐出音が発生する。すなわち、ノズル3a及び3bから発生する音波は逆位相となるため、互いに弱め合い、あるいは打ち消し合う。これにより、全体として騒音が低減する。
【0037】
特に、本実施の形態では、振動デバイス10が振動板5に対して対象構造を有しているので、筐体2内において振動板5に対して対称的な空力特性を得ることができる。その結果、ノズル3a及び3bから発生する音波の振幅等が等しくなり、それぞれの音波の弱め合いに寄与し、騒音のさらなる低減化が図れる。振動板に対して対称性が低いほど、振動板5やアクチュエータ11等の駆動によって発生するノイズ(音波の高調波成分)も大きい。しかし、本実施の形態のように高い対称性を確保することで、ノイズを低減することが可能となる。また、2つのアクチュエータ11及び21が設けられることで、大きな駆動力を得ることができ、冷媒の吐出量を多くすることができる。
【0038】
なお、図1に示すようにノズル3aとノズル3bとの距離をd(開口間の距離)とし、音波の波長(基本波の波長)をλ(m)とした場合、d<λ/2、好ましくはd<λ/6を満たすことが望ましい。このようにすれば、ノズル3a等から発生した音波のほぼ最大振幅同士で強め合う箇所がなくなるので、騒音の発生を極力防止することができる。
【0039】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図である。第2の実施の形態以降の説明において、上記第1の実施の形態に係る噴流発生装置1の部材や機能等について同様のものは説明を簡略または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0040】
図4に示す噴流発生装置31では、図3に示したフレーム17が設けられておらず、アクチュエータ11及び21が直接筐体2の内壁2eに取り付けられている。振動板5は、エッジ部材18を介して仕切り部材2cに直接取り付けられている。このような構成によれば、例えばフレーム17がある場合に比べ、構造が簡単になり、噴流発生装置31の小型化、低コスト化が図れる。また、そのようなフレーム17がある場合に比べ、筐体2内を流れる空気の抵抗が小さくなり空力特性がよくなる。また、部材が少なくなればなるほど、振動板5に対して対称性を維持しやすくなる。
【0041】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図である。この噴流発生装置41の振動板5を支持するエッジ部材18は、直接筐体2の内壁2eに取り付けられている。このような構成によっても、上記第2の実施の形態に係る噴流発生装置31と同様の効果が得られる。
【0042】
このようにエッジ部材18が直接筐体2の内壁2eに取り付けられる場合、図6に示すように、振動板5及びエッジ部材18を内壁2eの周方向での形状と同様に長方形とすればよい。つまり、その内壁2eの周方向での形状、振動板5の外周形状、エッジ部材18の外周形状をそれぞれ相似形とすればよい。ここで言う周方向とは、振動板5の振動方向にほぼ垂直な面内での周方向である。このような構成によれば、振動板5が振動するときに、筐体2内に含まれた空気に対して極力大きな面積で振動を与えることができる。したがって、ノズル3a及び3bからの流量もその分多くなり、冷却効率を向上させることができる。なお、アクチュエータ11は振動板5の両面側に1つずつ設けられていればよい。
【0043】
図7は、本発明の第4の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図である。この噴流発生装置51では、コイル保持部材36に空気を流通させるための流通孔36aが設けられている。例えばコイル35に電圧が印加され、コイル保持部材36が上下に作動するとき、ヨーク12に固定されたマグネット13及び図示しないプレート等からなるステータと、コイル保持部材36との相対的な動きによって、ステータがコイル保持部材36の内部の空間に出入りする。流通孔36aがない場合は、ステータがその内部空間に入ることで、例えば振動板5の撓みで容積を小さくしようとする側のチャンバ2a(または2b)の容積を大きくすることになり、チャンバ2a(または2b)の容積変化が打ち消し合い、噴流を発生させるときの効率が悪くなる。また、流通孔36aがない場合は、振動板5の振動時にコイル保持部材36の内部空間で局所的に圧力変化が起こることも考えられ、効率が悪くなる。その結果、空気の吐出量が減ってしまう。しかし、流通孔36aが設けられることにより、その流通孔36aから空気が逃げることができるのでそのような問題を解消することができる。
【0044】
図8は、本発明の第5の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図である。この噴流発生装置61では、コイル保持部材36と振動板5とはロッド27で接続、固定されている。図9に示すように、コイル保持部材36の底部には流通孔46aが設けられている。このような構成によっても、振動板5が、チャンバ2aの容積を小さくする方向へ動いた場合に、コイル保持部材46の内部空間46bの空気を流通孔46aから空気を逃がすことができる。これにより、効率よく噴流を発生させることができる。
【0045】
図10は、本発明の他の実施の形態に係る振動デバイスを示す断面図である。この振動デバイス20は、例えば直方体形状のフレーム57を有し、フレーム57の上部及び下部にアクチュエータ11及び21がそれぞれ取り付けられている。フレーム57には、空気が流通する流通孔57aが設けられている。本実施の形態に係る振動板55は、筒形状の側壁55aを有している。この側壁55aは振動方向Rに沿って立設されており、この側壁55aの周囲であって、その上端部及び下端部は、フレーム57に取り付けられたエッジ部材18a及び18bによってそれぞれ支持されている。側壁55aは、周方向に連続的に設けられていてもよいし、間欠的に設けられていてもよい。なお、この振動デバイス20は、例えば図3で示した筐体2内に配置され、仕切り部材2cの開口部2dにフレーム57が嵌着されることにより噴流発生装置が構成される。
【0046】
このような振動デバイス20によれば、振動方向Rに沿って配列されたエッジ部材18a及び18bによって側壁55aが支持されることにより、振動板55の横振れを防止して安定した振動を得ることができる。側壁55aの振動方向Rの長さが長いほど、エッジ部材18aとエッジ部材18bとの距離が長くなり、振動板55はより安定して振動する。
【0047】
図11は、図10に示した振動デバイス20の変形例を示す図である。この振動デバイスの振動板55の側壁55aと、フレーム57との間には、潤滑材56が介在されている。これにより、振動板55がスムーズに振動できるようなり、また、図示しない筐体内で振動板5で仕切られて形成された2つのチャンバ間での気密性を高めることができる潤滑材としては、鉱油系、合成系潤滑材等がある。モリブデン系の固体潤滑材でもよい。液体潤滑材なら、振動板55の表と裏の気密性を高めるのに効果的である。また、例えばフレーム57が磁性体であれば、潤滑材に磁性流体が用いられれば、潤滑材の保持が容易になる。
【0048】
次に、これまで説明した振動デバイスにおける給電用の導線の配線構造について説明する。
【0049】
図12は、その配線構造が適用された振動デバイスを示す断面図である。この振動デバイス280のアクチュエータ370は、ヨーク376、マグネット372、ヨークの機能を持つプレート373、コイル378、このコイル378が巻回されるとともに振動板285が固定された可動部材374等で構成される。このアクチュエータ370は、図49等に示すアクチュエータ370と同様のものである。アクチュエータ370のヨーク376は、通気孔286aを有するフレーム286に取り付けられ、振動板285も、エッジ部材287を介してフレーム286の開口端部に取り付けられている。
【0050】
図13は、図12に示す振動板285及びエッジ部材287等を示す平面図である。図に示すように、制御部(例えば図3に示した制御部310)からの制御信号をコイル378に供給するための導線284が、エッジ部材287に形成された螺旋状の溝287aに沿って配線されている。導線284は、フレーム286に固定された上記端子台288に接続されている。符号287bで示す箇所はエッジ部材287の稜線である。このような構成により、導線284が空中に配線される場合に比べ、導線284の断線を抑制することができる。
【0051】
一般的なスピーカでは、このような導線(一般的に錦糸線と言う)は、電磁コイルから空中を伝って直接端子台に接続されている。つまり、振動板は動くが、端子台は固定されているので、錦糸線の一側は動き、他側は固定される。振動板の数十、数百Hzの動きに追従して錦糸線には繰り返しの応力がかかるため、スピーカの耐久性を論じる場合に、この錦糸線の寿命が問題となる。
【0052】
特に、上記各実施の形態に係る噴流発生装置が小型化される場合は、単に導線が振動板やエッジ部材に取り付けられているだけでは問題がある。すなわち、噴流発生装置が小型化に伴って振動板の面積も小さくなるので、その分、振幅を大きくして冷媒の噴出量を多くする必要がある。この場合、錦糸線の長さは短く、振動板の振幅は大きくなるので、錦糸線にかかる応力は大きくなりやすい。すなわち、耐久性としては悪い条件となりがちである。具体的には、例えば図13の破線で示すように導線289が配線される場合(振動板285の中央から外周に沿って導線が289が配線される場合)、導線284にかかる応力は大きい。したがって、図13に示したように、錦糸線284がエッジ部材287に螺旋状に配線される構成とすることは、断線防止には非常に効果的である。また、特に、本実施の形態では、導線284が溝287aに沿って配線されているので、そのエッジ部材287への配線が容易となる。
【0053】
図14は、図13に示す振動デバイス280が2つ対称的に配置されて構成された振動デバイスを示す断面図である。この振動デバイス290では、エッジ部材287の表裏両面に設けられた螺旋状の溝に導線284が配線されている。このようにエッジ部材287の蛇腹形状を利用して、表裏面に導線284を螺旋状に配線することができる。このように構成された振動デバイス290が、例えば図3で示す筐体2内に、振動デバイス10の代わりに配設されて噴流発生装置が構成される。
【0054】
なお、以上のような錦糸線は、エッジ部材287に埋め込まれたような形態であってもよい。また、エッジ部材287等に固定されていなくても、その形状を長期間に渡り保持できるならば、エッジ部材287とは独立して、螺旋状のコイルのような形で空中に浮いていてもよい。この場合、エッジ部材に螺旋状の溝は必要ない。これによっても導線にかかる応力は小さく出来る。
【0055】
本発明は以上説明した実施の形態には限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0056】
上記各実施の形態に係る噴流発生装置の筐体2等の形状は直方体に限られず、円筒形であってもよい。振動板5もその筐体2の外形、または筐体2の内部の形状に合わせて変形可能である。
【0057】
図10に示した形態では、振動板55の側壁55aを支持するエッジ部材18a及び18bがフレーム57に取り付けられていた。しかし、エッジ部材18a及び18bが筐体2(図3等参照)に直接取り付けられていてもよい。これにより、上記のように側壁55aを支持するフレーム57が設けられる場合に比べ、噴流発生装置を小型化することができる。また、フレーム57がある場合に比べ空力特性もよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る噴流発生装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図1におけるB−B線断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図である。
【図6】図5に示す噴流発生装置の横断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る噴流発生装置を示す断面図である。
【図9】図8に示すコイル保持部材の斜視図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る振動デバイスを示す断面図である。
【図11】図10に示した振動デバイスの変形例を示す図である。
【図12】駆動機構への給電用の導線の配線構造が適用された振動デバイスを示す断面図である。
【図13】図12に示す振動板及びエッジ部材等を示す平面図である。
【図14】図13に示す振動デバイスが2つ対称的に配置されて構成された振動デバイスを示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
R…振動方向
1、31、41、51、61…噴流発生装置
2、382…筐体
2e…内壁
3a…ノズル
3b…ノズル
5、55、285…振動板
10、20、280、290…振動デバイス
11、21、370…アクチュエータ
17…フレーム
18、18a、18b、287、387…エッジ部材
36、46…コイル保持部材
36a、46a…流通孔
46b…内部空間
55a…側壁
56…潤滑材
284…導線
287a…溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の開口を有し、内部に気体が含まれた筐体と、
前記筐体内に配置され、前記気体に振動を与えることで、当該振動に同期するように、前記第1及び第2の開口を介して交互に前記気体を脈流として吐出させる振動板と、
前記筐体内に配置され、前記振動板の振動方向で該振動板に対して対称構造を有し、前記振動板の振動を駆動する駆動機構と
を具備することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の噴流発生装置であって、
前記振動板は平板状であることを特徴とする噴流発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の噴流発生装置であって、
前記振動板は、振動の方向にほぼ垂直な第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面とを有し、
前記駆動機構は、
前記第1の面側に配置された前記第1のアクチュエータと、
前記第2の面側に配置され、前記第1のアクチュエータと同期して駆動し、前記第1のアクチュエータと同じ構造の第2のアクチュエータと
を有することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項4】
請求項1の記載の噴流発生装置であって、
前記筐体は内壁を有し、
当該噴流発生装置は、前記振動板の外周に取り付けられるとともに、前記内壁に取り付けられ、前記振動板を支持する支持部材をさらに具備することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項5】
請求項4の記載の噴流発生装置であって、
前記振動板の外周の形状と、前記支持部材が取り付けられた位置における前記内壁の周方向での形状とがほぼ同じであることを特徴とする噴流発生装置。
【請求項6】
請求項1に記載の噴流発生装置であって、
前記駆動機構は、
ステータと、
作動することで前記ステータの少なくとも一部が出入りする内部空間と、前記内部空間に連通する前記気体が流通可能な流通孔とを有し、前記振動板に接続された筒状の可動部材と
を有することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項7】
請求項6に記載の噴流発生装置であって、
前記可動部材は、前記流通孔が前記振動板と対面するように設けられた底部を有し、
前記駆動機構は、前記可動部材の底部と前記振動板とを接続するロッドを有することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項8】
請求項1に記載の噴流発生装置であって、
前記振動板は、振動の方向に沿うように立設され、第1の端部と、前記振動方向で前記第1の端部と反対側に設けられた第2の端部とを有する側壁を有し、
当該噴流発生装置は、
前記第1の端部を支持する第1の支持部材と、
前記第2の端部を支持する第2の支持部材と
をさらに具備することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項9】
請求項1に記載の噴流発生装置であって、
前記振動板は、振動の方向に沿うように立設された側壁を有し、
当該噴流発生装置は、前記側壁を前記振動方向に摺動可能に支持する支持部材をさらに具備することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項10】
請求項9に記載の噴流発生装置であって、
前記側壁と前記支持部材との間に介在された潤滑材をさらに具備することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項11】
請求項10に記載の噴流発生装置であって、
前記潤滑材は磁性流体であることを特徴とする噴流発生装置。
【請求項12】
請求項1に記載の噴流発生装置であって、
前記筐体は内壁を有し、
前記振動板は、振動の方向に沿うように立設され、前記内壁により振動の方向に摺動可能に支持された側壁を有することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項13】
請求項1に記載の噴流発生装置であって、
前記振動板の外周で該振動板を支持する支持部材と、
少なくとも前記支持部材に取り付けられるように配線され、前記駆動機構に給電するための導線と
をさらに具備することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項14】
請求項13に記載の噴流発生装置であって、
前記導線は、前記振動板の周囲に沿って螺旋状に配線されていることを特徴とする噴流発生装置。
【請求項15】
請求項13に記載の噴流発生装置であって、
前記導線は前記支持部材に埋設されていることを特徴とする噴流発生装置。
【請求項16】
請求項14に記載の噴流発生装置であって、
前記支持部材は、前記振動板の周囲に沿って螺旋状に形成された溝を有し、
前記導線は、前記溝に沿って配線されていることを特徴とする噴流発生装置。
【請求項17】
請求項3に記載の噴流発生装置であって、
前記第1の面側に前記振動板の周囲に沿って螺旋状に形成された第1の溝と、前記第1の溝が稜線となるように前記第2の面側に螺旋状に形成された第2の溝とを有し、前記振動板の外周で該振動板を支持する支持部材と、
前記第1の溝に沿って配線され、前記第1のアクチュエータに給電するための第1の導線と、
前記第2の溝に沿って配線され、前記第2のアクチュエータに給電するための第2の導線と
をさらに具備することを特徴とする噴流発生装置。
【請求項18】
発熱体と、
第1及び第2の開口を有し、内部に気体が含まれた筐体と、
前記筐体内に配置され、前記気体に振動を与えることで、当該振動に同期するように、前記第1及び第2の開口を介して交互に、前記気体を脈流として前記発熱体に向けて吐出させる振動板と、
前記筐体内に配置され、前記振動板の振動方向で該振動板に対して対称構造を有し、前記振動板の振動を駆動する駆動機構と
を具備することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−55741(P2006−55741A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239838(P2004−239838)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】