説明

噴霧乾燥製品を製造するための調剤処理方法

固体材料を製造する方法を開示する。該方法の1つの態様は、有機材料を該有機材料用の非溶媒を含有する溶媒系中に含む供給原料を周囲条件よりも高めた温度及び/又は圧力で供給し、前記供給原料を液滴またはフィルムのいずれかで分配し、前記溶媒系を供給原料から蒸発させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮特許出願第60/886,750号(2007年1月26日出願)の利益を主張し、その内容を本明細書に参照して援用する。
本発明は、噴霧乾燥製品の製造方法に関する。より詳細には、本発明の一態様は、有機材料を含む供給原料を該有機材料用の非溶媒を含む組成物中で利用して噴霧乾燥組成物を製造し、ここで供給原料を周囲条件と比べて高めた温度及び/又は高めた圧力で供給する固体材料の調製方法に関するものである。発明の特定の実施形態によると、供給原料は、ポリマーと薬学的活性材料とを備える。
【背景技術】
【0002】
噴霧乾燥は、供給原料をまず噴霧して液滴を作り、次いで加熱乾燥媒体、通常空気の使用により供給原料の液体を蒸発させることにより、液体供給原料を粉末製品に変える粉体処理技術である。液体供給原料は、溶液、懸濁液、液体ペーストまたは乳濁液の形態をとることができ、ポンプ送液可能で液滴形成可能でなければならない。溶媒と称する供給原料の液体が製品の固形分を溶解する場合に、溶液が創出される。製品の固形分が供給原料の液体に溶解しない場合に、スラリーおよび分散液が創出される。農業、化学品、乳製品および医薬を含む複数の産業への噴霧乾燥の大規模な適用は、原料貯蔵、ポンプ送液、噴霧化、乾燥及び製品(粉末)回収に役立つ技術を創出することとなった。噴霧乾燥技術の広範囲の再考がマスターズ(2002)により記述されており、ここに参照して援用する。
【0003】
噴霧乾燥粉体の製造の中核をなす競合的な熱および物質移動処理は、最終製品の特性に寄与する。供給原料液体の蒸発と同時に起こる液滴温度の上昇(加熱乾燥媒体によって付与された熱移動による)は、粒子形成の複雑なメカニズムをもたらす。供給原料処方と噴霧乾燥器操作の両方が、噴霧化供給原料液滴から固体を如何にして形成するかを決定する。滑らかで破裂した球体や不規則で/断片化した形態を含む様々な最終粒子形状が報告されている。
【0004】
供給原料がプラスチックフィルム形成材料(例えば、ポリマー)を含む場合、濃密で、自由に流動する噴霧乾燥粉体を製造することは困難である。噴霧化後、初期の液滴表面が乾燥媒体中で容易に蒸発する溶媒で自由に飽和される。引き続く溶媒減少でフィルムが形成される場合があり、追加の乾燥を起こすためには、溶媒がかかる蒸発用の層を介して拡散しなければならない。最終的には、前記フィルム層が溶媒の拡散/蒸発を十分に阻害することができる。 この状態は、肌焼きとして既知で、2つの理由から望ましくない:第一に、肌焼きした粒子からさらなる溶媒を除去することが著しく困難である。溶媒の含有量を許容レベルまで低減するために大規模な二次乾燥が必要になる場合がある。第二に、封入溶媒を乾燥媒体によって加熱すると、肌焼き粒子の径が膨張する場合がある。その結果、フィルム形成材料の噴霧乾燥粉体は、許容できない高残留溶媒含有量に加えて、低い嵩およびタップ密度に苦しむ場合がある。これらの制約を解消するため、当業者は、肌焼きとその否定的な結果を引き起こしうる温度勾配を制限するのに特殊なノズルや乾燥方法に依らなければならないであろう。それにもかかわらず、前記残留溶媒含有量を完成製品に許容し得るレベルまで低減するために、さらなる乾燥工程が必要な場合がある。それゆえ、生産を容易にし、製品の品質を向上させるために肌焼きを低減する方法の必要性が存在する。
【0005】
噴霧乾燥粉体の製造に関するさらなる課題は、個々の供給原料液滴の噴霧化である。当業者には、粘性の供給原料をきれいに噴霧しえないことが周知である。供給物を個々の液滴にするのに必要なせん断力は、噴霧化の時点での粘性力に打ち勝つには不十分な場合がある。その結果、噴霧化装置は、乾燥媒体中で固化し得る粘性の糸状体を作り出す。かかる糸状体は、その可変性と乏しい流動性により、製品の品質を著しく減ずる。高い供給原料粘度の問題は、固体濃度(生産処理量を不所望に低減する)を減らすことによるか、又は供給原料の温度を上げることにより解決することができる。牛乳や他の食品業界で共通した水性の供給原料を加熱する習慣は、同時に微生物汚染を低減するのに役立つ。加熱した供給原料の効果は、供給物温度の増加が供給物を脱気するか否か応じて粉体密度を増減する場合がある[マスターズ、2002]。
【0006】
従来の噴霧乾燥技術の他の欠点は、供給原料の処方に課した制限である。さまざまな製品品質上や性能上の理由により、噴霧乾燥すべき供給原料中に好ましい成分を組み込むことが望しい場合がある。しかし、共通溶媒における相互溶解性の欠如は、その達成を困難か不可能にする場合がある。 他方、供給原料成分間の満足な溶解性は、使用が困難な又は有毒な溶媒によってのみ達成される。例えば、共通溶媒が著しく高い沸点を有する(例えば、ジメチルスルホキシド、189℃)場合、該溶媒を噴霧乾燥だけで除去することが困難な場合があり;噴霧乾燥粉体(もし製造できた場合)が次に大規模な二次乾燥を要求する。あるいはまた、共通溶媒がICHクラスIまたはIIの溶媒(ジクロロメタンなど)を含む場合があり、その毒性学と周囲上の懸念が特殊な処理条件を必要とする。すなわち、溶解性を容易にし、使用が困難な又は有毒な溶媒の必要性を低減ないし排除するのに高度な噴霧乾燥処理の必要性が存在する。
【0007】
供給原料の処方が従来技術を用いて達成し得る場合でも、噴霧乾燥粉体の性能は、粒径、粒径分布、嵩及び/又はタップ密度、活性成分放出速度及び/又は活性成分の放出量を含む許容しえない物性に苦しむ場合がある。かかる物性を解消するのに有効な再処方は、当業者に既知の従来技術を用いて提供することができない。すなわち、処方の柔軟性を高め、これら所望の組成物を創出する高度な方法が必要である。
【0008】
この教示に反して、実用的な方法を有機溶媒を含む供給原料に対し提供することができず、乾燥室を該有機溶媒の沸点以上で維持する場合、ノズルがかかる条件下で詰まる場合があるからである。したがって、乾燥室を溶媒の沸点未満の温度で維持することが有利な場合がある。驚くべきことに、粉末製品を製造するためには、加熱乾燥媒体の状態が不必要な場合があり;乾燥室をかなり周囲条件以上に加熱する必要はなく、実際処理ガスが高エネルギー供給原料の液滴を冷却すべき場合がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、改良された特性の粉体と粒状製品を製造する方法に関する。本発明の一態様によれば、有機材料を該有機材料用の非溶媒を含む組成物中に備える高エネルギーの供給原料を用いて粉体または粒状末製品を製造する方法を提供するもので、この場合前記供給原料を高温若しくは高圧又は両方で維持する。特に有用な実施態様においては、活性成分を高エネルギーの供給原料中で相互溶解性を達成する1つ以上のポリマーと組合せる。驚くべきことに、従来技術を用いて作成するのが不可能な供給原料の組成物を製造することができる。
【0010】
本発明の特定の態様によって製造した製品は、処理操作と製品性能を改善する改良された物理および化学特性を示す。処理の優位点としては、使用が困難な又は有毒な溶媒の低減又は排除と、改良された生産割合を挙げることができる。製品性能の優位点としては、より高い嵩及び/又はタップ密度、より狭い粒径分布、よりよく制御された粒径、より速い活性成分放出速度、より多い活性成分の放出量及び/又は供給原料成分の結晶状態の改善された除去を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一態様に係る噴霧乾燥器システムの概念図である;
【図2】図2は、実施例#1によって製造した粒子に関する熱流対温度のグラフである。
【図3】図3A−Bは、実施例#1によって製造した粒子の光学顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例#2によって製造した粒子に関する熱流対温度のグラフである。
【図5】図5A−Bは、実施例#2によって製造した粒子の光学顕微鏡写真である。
【図6】図6は、実施例#1および#2によって製造した組成物について結晶質エファビレンツと比較した放出率対時間のグラフである。
【図7】図7は、実施例#4によって製造した粒子に関する熱流対温度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで「含む」という用語は、より制限的な用語「主としてなる」や「からなる」を網羅する。
【0013】
「周囲条件」という語句は、室内で通常見られる温度と圧力、約20℃および1気圧をいう。
【0014】
ここで用いる百分率、比率及び割合は、特記しない限り重量によるものである。
【0015】
生体利用効率は、活性成分が投与後体内で利用可能になる程度を示す。通常、血漿試料を採取し、活性成分の血漿濃度につき分析する。これらのデータを、血漿中に見出された活性成分の最大量Cmaxとして、又は血漿濃度の経時曲線下の面積AUSとして示すことができる。改良された生体利用効率は、活性成分、活性代謝産物又は両者のCmax及び/又はAUSの増加によって証明することができる。本発明の特定の態様に係る組成物は、対照組成物と比べて、改良された生体利用効率を示す。
【0016】
ここで用いる用語「固体分散体」は、少なくとも2つの成分を含む固体状態のシステムを意味するもので、ここで1つの成分が他の成分又は成分類に均一に分散している。「固体分散体」の用語は、完全に結晶質、完全に非晶質又はその間のあらゆる状態で、一つの相が他の相に分散した、通常直径が約1μmの微小粒子を有するシステムを含む。
【0017】
ここで用いる用語「固溶体」は、1つの成分が他の成分中に分子として分散して系の至る所で化学的、物理的に均一で均質であるような固体分散体の一タイプである。かかる系は、熱分析やX線回折によって検証されるような結晶や微小結晶状態にある相当量の活性成分を含まない。
【0018】
噴霧乾燥は、液状の供給原料を液滴として溶媒の除去に役立つ加熱プロセスガス流と共に乾燥室に分散させ、粉体製品を製造する周知の方法である。標準圧力(すなわち約1気圧)で加熱した水性の供給原料が、特に乳製品や大豆製品工業で、粘度を低減(供給原料をポンプ輸送し、個々の液滴に噴霧化できるように)し、供給原料の固形分を増加(経済的な生産という利点のため)させる程度までのみにかつ微生物汚染を抑制するために用いられる。
【0019】
噴霧乾燥器の操作は、粒子の特性に影響を与える。マスターズ(1991)には、噴霧化球体からの溶媒蒸発が3段階を経て伸展すると提案されている:最初に、液滴表面を溶媒で飽和する場合、蒸発が一定速度で進行し、乾燥の第一段階と呼ばれる。乾燥速度の変化が、乾燥固形物の表面上での形成により更なる乾燥で注目される。この臨界点において、表面がもはや溶媒で飽和されているとみなすことはできない。液滴からの更なる溶媒蒸発は、固体表面層による拡散ないし毛管作用を必要とするより遅い速度で進行する。この乾燥段階では、出来る限り大量の溶媒を除去し、液滴の膨張と低密度粉体の製造を回避するべく、噴霧乾燥器の注意深い操作が望まれる。入口及び出口温度並びに乾燥ガスの流路構成を制御する必要がある。
【0020】
それでもなお、製品物性に負の影響を与えかねない噴霧乾燥器の操作条件を回避することが時として不可能になる。ポリマーのようなフィルム形成物を溶媒に含む処方は、表面蒸発の臨界点に速やかに達して、肌焼きに近づくか又は到達する状況をもたらすことができる。外側のポリマーフィルムの肌焼きは、噴霧乾燥粉体を損なうことなく、完全又はほぼ完全な溶媒除去を困難にするか、または実質的に不可能にする。固体ポリマー(ないしポリマー類似物)の表面フィルムも低密度粉体をもたらす場合がある。乾燥器の操作により閉じ込められた溶媒の体積膨張は、乾燥工程や材料取扱い中に壊れやすい低密度で、肉厚の薄い粒子をもたらす。
【0021】
本発明のある態様によって製造した噴霧乾燥粉体は、高エネルギー供給原料の噴霧化により創出された粒子形態による並外れた特性を示す。かかる粒子構造と特性は、大気圧で最低限の温度変更(すなわち供給原料の温度が20℃からわずかに高い)での従来の噴霧乾燥法によつては通常達成し得ない。
【0022】
その上、粒子特性の選択的カスタマイズ化は、製薬、ヘルスケア、農業、パーソナルケア、除草剤および工業用途を含む多数の産業における製造方法と活性物送達について関心をそそる機会を提供することができる。個々の粒子の形態は、この探求に中心的役割を果たす。その理由は、かかる形態が密度、残留溶媒含量および流動性のようなバルク粉体特性に直接影響するからである。それに加えて、粒子の形状と内部構造を改変する技術は、残留溶媒含量、活性物導入、結晶性、放出速度、溶解性及び生体利用効率のような製品特性に深く影響することがある。すなわち、粒子形態を工夫する能力は、製造方法と製品特性に相当密接な関係を有する。
【0023】
本発明は、噴霧乾燥に限られる訳ではないが、好ましくはこれによって改良した特性の製品を製造する調剤処理方法に関する。より詳細には、本発明は、有機材料と、該有機材料用の非溶媒を含む組成物とを備える供給原料を調製する方法と、それから製造した製品とを開示する。ここに開示した方法は、供給原料を周囲条件より高めた温度及び/又は圧力で用いることを含む。高めた温度及び/又は圧力では、非溶媒が有機材料用の溶媒として機能し得る。処理すべき有機材料の選択は特に制限されず、製薬、ヘルスケア、農業、パーソナルケア、除草剤および工業用途の工業で見出される多数の組成物を選ぶことができる。一例としては、除草剤、食物成分、染料、栄養素、製薬成分、ポリマー、塩及びそれらの混合物が挙げられる。他の実施態様によれば、粉体を吸入剤送達に適したサイズの0.5μmのように小さく製造する。本発明の特定の実施態様に係る製薬噴霧乾燥粉体は、通常約0.5μm〜500μmの平均粒径を有する。次に、本有機材料を溶媒システムと組み合わせ、本発明に係る調剤処理方法を行うように高めた温度及び/又は圧力で維持する。
【0024】
本明細書中に記載したように、適切な有機材料及び溶媒/非溶媒を選択し、高エネルギー供給原料を調製することにより、従来の噴霧乾燥法に対して様々な改善を実現しうる。より詳細には、本発明を実施することにより以下のことが可能となりうる:
1.使用が困難な供給原料の溶媒の必要性を低減ないし排除する;
2.有毒な供給原料の溶媒の必要性を低減ないし排除する;
3.生産速度を高める;
4.処方の柔軟性を増す;
5.製品粉体中の残留溶媒濃度を低減する;
6.粒径に対する制御を改善する;
7.粒径分布に対する制御を改善する;
8.活性成分の放出速度を増す;
9.活性成分の放出量を増す;
10.固体状態の化学的性質を変える(有機材料の結晶性を低減する);
11.高度にひしゃげた及び/又はへこんだ粒子を創る;及び/又は
12.粉体の嵩密度及び/又はタップ密度を高める。
【0025】
本発明の他の態様は、従来の条件下で低い溶解性である特定の有機材料を使用するのに適した噴霧乾燥法に関する。例えば、薬学的活性物のような活性成分が水及び有機溶媒において広範囲な溶解性を示す。溶解性の序列が米国薬局方にある(表1)。水や有機溶媒にやや溶けにくい(又はより溶けにくい)材料について、経済的な噴霧乾燥器の生産速度を達成するのは困難な場合がある。加えて、有機材料が限定的な溶解性を有する場合、調剤をチャレンジすることができる。他の用例では、高沸点(例えばジメチルスルホキシド)や毒性(例えばジクロロメタン)のような不所望な処理チャレンジを示す溶媒を用いてのみ高い溶解性が達成される。本発明の1つの態様によれば、より扱いやすい供給原料溶媒を含む供給原料を加熱及び/又は加圧することによりこれら問題を解決し得る。
【0026】
【表1】

【0027】
以下の記載は噴霧乾燥組成物の調製に主として関するものであるが、本発明は噴霧乾燥組成物に限られるものでない。本発明の範囲は、顆粒や他の多粒子組成物のような他の固体材料を調製する方法も含む。かかる固体材料は、糖、ポリマー、活性物質やその混合物のような任意の有機物を含んでもよい。これら他の固体材料は、高せん断造粒法、流動床造粒法、フィルムコーティングやこれらに関連する技術のような従来技術によって調製することができる。
【0028】
本発明によると、高エネルギー供給原料を用意し、供給原料を従来の周囲条件で維持する従来の噴霧乾燥操作と比較して、前期供給原料をより高めた温度及び/又は高めた圧力で維持する。供給原料の溶液を高めた温度、高めた圧力又は高めた温度と圧力両方で維持することができる。例えば、ポリビニルピロリドンに適する溶媒系は、該ポリマーが周囲条件下のアセトン/トルエンの混合物に溶けないから、150℃及び10psigのアセトンとトルエンである。次いで、高エネルギー供給原料は、該供給原料を噴霧化し、該噴霧を粒子形成室へ供給することができる任意の装置に送達される。1つの実施形態では、従来の噴霧乾燥装置を用いて粉体製品を製造する。
【0029】
本発明の一態様に係る噴霧乾燥システムを図1に示す。噴霧乾燥システム(10)は、供給原料(14)を含有する密閉供給原料供給タンク(12)を含む。図示実施態様における供給原料(14)は、溶媒/非溶媒混合物中に薬学的活性物質及びポリマーを含む。供給原料(14)を密閉容器中で高めた温度及び/又は圧力で維持する。供給原料溶液(14)を、導管(16)を介して粒子形成室(18)に供給する。導管(16)を、室(18)の頂上に位置した噴霧器(20)に接続する。噴霧器(20)は、あらゆる従来のデザイン(例えば、回転輪式噴霧器、加圧ノズル、2流体ノズルなど)とすることができる。噴霧器(20)は、凝固を容易にするプロセスガスを備え得る粒子形成室(18)内で、供給原料溶液(14)を微細液滴に分配する。溶媒が室(18)内の液滴から蒸発し、これにより活性物質とポリマーの固体分散粒子を形成する。固体分散粒子は、室(18)底部にある出口(22)を通って室(18)から出る。出口(22)は、製品回収用の装置に向かう。
【0030】
本発明によると、高エネルギーの供給原料を用意し、供給原料を従来の周囲条件(すなわち、20℃及び1気圧)で維持した従来の噴霧乾燥操作と比較して、前記供給原料を高めた温度及び/又は高めた圧力で維持する。本発明の特定の態様によれば、供給原料溶液を周囲より高いが有機材料を分解する温度及び圧力よりも低い温度及び圧力で維持する。より詳細には、供給原料の温度を、ほぼ大気温から約200℃、特に約35℃から約115℃、特定の実施態様によれば約40℃から約80℃の温度で維持することができる。
【0031】
本発明の他の実施態様によれば、供給原料溶液を1気圧を越えた高めの圧力で維持する。例えば、供給原料溶液を密閉容器中で、約0.1から約215気圧(ゲージ圧)、特に約0.5から約20気圧(ゲージ圧)、特定の実施態様によれば約1から約10気圧(ゲージ圧)の圧力で維持する。供給原料溶液を高めた温度、高めた圧力又は高めた温度と圧力両方で維持する。次いで、高エネルギー供給原料を従来の噴霧乾燥装置に送達して供給液を噴霧化し、溶媒を蒸発し、噴霧乾燥製品を製造する。
【0032】
供給原料はあらゆる有機材料を制限することなく含むことができる一方、供給原料は一つ以上のポリマーを含むのが好ましく、活性成分を一つ以上のポリマーとともに含むのがより好ましい。好適な実施態様において、有機材料は活性成分及び/又は溶解性を強化する有機材料を含む。活性成分を取り込んだ製品を製造するのに適用する場合、あるポリマー系を用いて粒子形態のみならず、活性物の性能も改変することができる。
【0033】
本発明の1つの態様は、ポリマーを注意深く選択した溶媒系と組合せることを含む。本発明の1つの態様ではポリマーである有機材料が、周囲条件で溶媒系に可溶又は不溶とすることができる。「可溶」の用語は、ポリマーと溶媒分子間の引力がポリマー分子間の競合する分子間及び分子内の引力よりも大きく、ポリマー分子が膨張することを意味する。ポリマーの溶解性を定義する指針は、膨張係数(α)によって付与される。
【数1】

【0034】
ここで、

は分子鎖末端間の平均二乗距離であり、

は非摂動長である。


は、重心周りの旋回平均二乗径

及び対応する非摂動長

を用いて分岐ポリマーについて類似した方法で記述することができる。)ポリマーの溶解性は、αが1またはより大きい場合に得られ、この条件を満足する溶媒を「良溶媒」又は単に「溶媒」と呼ぶ。ポリマー−溶媒の引力がポリマー−ポリマーの引力より大きいため、溶媒はポリマー分子を真直ぐにする(又は膨張する)。光分散法(例えば、ビスコテック社製の3重検出器アレイ)を用いて

に書かれた変数を決定することができる。かかる概念が、マルコムP.ステーブンスによるポリマー化学、入門編のテキストに定義されており、ここに参照して援用する。
【0035】
αが1に等しい場合、ポリマー−溶媒とポリマー−ポリマーの力が釣合うという特殊な条件が存在する。本条件を可能にする溶媒をθ―溶媒と呼ぶ。温度がポリマーの溶解性に影響する場合に、θ−温度は、αが1に等しくなる温度である。本発明の文脈においては、αがほぼ1に等しいかそれより大きい場合に、溶媒を「良溶媒」と考える。本明細書中に記載したように温度及び/又は圧力を変えることにより良溶媒を単に非溶媒に変形し得るように温度がαに影響することが認められる。
【0036】
本発明の他の実施態様において、溶媒混合物は、逆が真となる、すなわちポリマー−ポリマーの力がポリマー−溶媒の力を凌駕するための溶媒を含有することができる。この場合、ポリマーが崩壊した未膨張状態で存在するため、αは1未満で、溶媒を「非溶媒」と称する。
【0037】
本発明の文脈においては、ポリマーの溶解性を一般的な温度と圧力に対して定義する必要があることが認められる。所定のポリマーについて、溶媒系が全て非溶媒を周囲条件で含有することが可能で、これは高めた温度/圧力(θ−温度より高い)で溶媒に変化し、温度/圧力が周囲条件に戻ると、非溶媒に復帰する。あるいはまた、溶媒系が溶媒及び非溶媒の混合物を含んでもよい。本発明の特定の実施態様によれば、高エネルギー供給原料が、供給原料の噴霧化に先立って、最低で1つの有機材料を可溶状態で含む。
【0038】
本発明の特に有用な実施態様において、一次ポリマーと称する少なくとも1つの供給原料ポリマーが、供給原料組成物を周囲条件以上に加熱及び/又は加圧する際に可溶になり;該ポリマーは周囲条件で溶けても溶けなくてもよい。単一の溶剤が溶剤系を構成する際に、供給原料組成物の加熱を要求し得るポリマーのθ−温度に達する場合、ポリマー溶解性を提供することができる。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、室温(すなわち、20℃)でエタノールに溶けないが、50℃に加熱されると真性溶液を形成する。溶媒系は一つ以上の溶媒を随意に含むことができ、これに対して共溶媒効果がポリマー溶解性に寄与し得る。溶媒混合物は、周囲条件でポリマーを溶解しても溶解しなくてもよい。
【0039】
高エネルギー供給原料を噴霧乾燥することにより独特な粉体製品を製造し、ここで粒子形成処理が一次ポリマーの非溶媒効果を含んでも、含まなくてもよい。非溶媒効果とは、供給原料の噴霧化後粒子形成室での粒子形成中での一次ポリマーの崩壊を指し示す。非溶媒効果は2つの機構により生起し得る:第一に、供給原料が周囲条件下で全て一次ポリマー用の非溶媒(又は非溶媒の混合物)を含むことができ、高めた温度及び/又は圧力状態で溶媒になり、次いで噴霧化後の粒子形成室における粒子形成中に非溶媒に戻る。あるいはまた、供給原料は、非溶媒に加えて一次ポリマー用の溶媒を含んでもよい。非溶媒は、加熱/加圧された供給原料にとって非溶媒のままで、さらに粒子形成室での粒子形成中も非溶媒のままである。
【0040】
本発明の1つの実施形態によれば、一次ポリマーは適当な溶媒/非溶媒の混合物(周囲条件下)を備え、ここで溶媒が非溶媒(周囲条件下)よりも低い沸点を有する。ポリマー/溶媒/非溶媒組合せ(周囲条件に対し定義された)の一例としては、限定することなく、ポリビニルピロリドン(PVP)/ジクロロメタン/アセトン、ポリビニルピロリドン−ビニルアセテート(PVP−VA)/アセトン/へキサン及びエチルセルロース/アセトン/水が挙げられる。
【0041】
供給原料がポリマー/溶媒/非溶媒系(周囲条件下)からなる場合、非溶媒濃度が臨界値を越えると、ポリマーの崩壊が起きる。この臨界比率Rcは次のように定義される:
【数2】

【0042】
これは、沈殿発生前の非溶媒の最大画分である。実用目的では、比率Rcを周囲条件で溶媒及び非溶媒を含む供給原料に関してのみ定義することができる。比率Rcは、溶液濁度の相当な増加をもたらす各成分の質量画分を同定することにより実験的に決めることができる。もしある系でRc値を同定することができるなら、該系は溶媒/非溶媒の混合物を含む。一例として、約10質量%のPVP、18質量%のジクロロメタン及び72質量%のアセトンからなる溶液に対しRcは0.80となる。通常、ポリマー系を、該系に対するRc値より低い溶媒/非溶媒混合物で用いる。粒子の形態/大きさ並びに活性成分の結晶性、溶解性、生体利用効率及び/又は放出特性を制御するためには、より複雑なポリマー/溶媒系を処方するのが有利な場合がある。
【0043】
とても驚くべきことに、本発明者らは、一次ポリマーに関して高めた温度/圧力で非溶媒のみの系において真性溶液を形成しうることを見出した。アセトンやトルエンは、周囲条件でポリビニルピロリドン(PVP)分子を目につくほど膨張しない。しかし、76℃及び14psigまで供給原料を加熱及び加圧することによりアセトンとトルエンの等量混合物中にPVPの1%溶液を創出することが可能である。
【0044】
本発明の他の実施態様は、噴霧乾燥粉体の密度を増大する方法を提供する。通常、噴霧乾燥は、幾分かの内部空隙を有する球状粒子を製造する。この空隙は、質量なしで粒子の嵩を増大させ、低密度材料を創出する。非溶媒効果は、粒径及び形態を変えて、密度の増大をもたらす。粒子は、溶媒のみを用いて調製したものと比べて、より小さく、しわくちゃで、へこんで、及び/又は崩壊している。溶媒/非溶媒解決法はまた、平均粒径を減少させて、粉体をよりよく充填することができる。加えて、粉体流動性及び粉体−粉体混合特性が強化される。
【0045】
上述したとおり、溶媒/非溶媒系から調製した組成物は、通常低減した粒径をもたらす。本発明の特定の実施形態によれば、ここに記載したような溶媒/非溶媒系から噴霧乾燥した系から調製した組成物が、非溶媒なしの同じ溶媒から類似条件下で噴霧乾燥した同じ材料を含む系から調製した対照組成物と比べて、少なくとも約50%、特に少なくとも約100%、特定の場合には少なくとも約300%程度の粒径の減少をもたらす。
【0046】
本発明の特定の態様によれば、小粒子が比較的狭い粒径分布またはスパンを備える。ここで用いる用語「スパン」は、活性物含有粒子の大きさのバラツキの目安を提供し、以下のように計算される。
【数3】

【0047】
ここでd10は10体積%の直径を示し、d50は50体積%の直径を示し、d90は90体積%の直径を示す。本発明の特に有用な態様によれば、平均粒径は約0.5μmから100μm、特に約1μmから50μm、特定の実施形態で約1μmから10μmであり、またかかる実施形態でのスパンは約2.0未満、特に約1から1.6まで、さらにより詳細には約1から1.4まで、特定の実施形態で約1から1.25までである。溶媒/非溶媒系は、上述範囲内にある粒子を製造するのに特に適している。
【0048】
本発明の特定の態様は、噴霧乾燥粉体および粒状物質の二次乾燥の必要性を低減ないし排除する方法を提供する。これらの製品は、しばしば残留溶媒を含むので、より乾燥した製品を製造することが望ましく又は必要である。高い残留溶媒含量は、処方又は処理の制約に起因することがある。噴霧乾燥する固体を溶解する溶媒を用いることが通常実施されている。そうすることで、溶媒を肌焼きにより噴霧乾燥粉体又は粒状ビーズの内部に閉じ込めることができる。低沸点の溶媒と、処理される材料用の高沸点の非溶媒との意図的組合せは、非溶媒の処理ポリマーに対する効果により、残留溶媒がより少ない製品を産出することができる。
【0049】
本発明の別の実施形態では、有機材料はポリマーでない。本文脈では、有機材料が非溶媒より低い温度で沸騰する溶媒の蒸発減量中に溶液から沈殿するように、非溶媒を選定する。かかる沈殿を溶媒蒸発中に達成する溶媒と非溶媒間での有機材料溶解性の差が本発明の範囲内である。1つの実施形態において、有機材料溶解性は、非溶媒中より溶媒中で少なくとも約10倍以上、特に少なくとも約25倍以上、さらにより詳細に少なくとも約50倍以上であり、本発明の特に有用な実施形態において、有機材料溶解性は非溶媒中より溶媒中では少なくとも約100倍以上である。共沸組成の溶媒混合物は、溶媒又は非溶媒を構成するが、一緒に溶媒/非溶媒混合物の基準を満足しない。
【0050】
高エネルギー供給原料から溶媒(複数の溶媒、非溶媒及びその混合物を含む)の蒸発減量により、独特な粉体物性を得ることができる。この蒸発は、供給原料の噴霧化(或いはまた、粒化処理中に)後に起こる。溶媒の混合物を含む噴霧化液滴は、蒸発により全溶媒組成が変わる。本方法は、液滴がどのように発生または噴霧されたかによらない。最初に、加熱及び/又は加圧供給原料が有機材料を可溶状態で示す。噴霧化後、分散した供給原料が粒子形成室の一般的な温度および圧力と速やかに平衡になる。溶媒蒸発が急速に起こり、加熱されたプロセスガスからの付加的な熱エネルギーを要求又は要求しなくてもよい。特定の実施形態によれば、プロセスガスを周囲条件で、又はほぼ周囲条件で維持する。他の実施形態においては、非溶媒効果が供給原料平衡化/溶媒蒸発処理中に現れる。前述した非溶媒効果は、有機材料の可溶状態からの溶解度を低減する。有機材料がポリマーを含む場合、該ポリマーが溶液から崩壊し、それ自体縮こまる。あるいはまた、有機材料がポリマーでない場合、該有機材料がその溶解性の損失により沈殿する。かかる粒子形成処理中の溶解作用の損失は、より低い残存溶媒含量若しくはより高い嵩密度やタップ密度を示す高度にひしゃげ、へこんで、崩壊した粒子を製造する場合がある。
【0051】
かかる粒子形成中の非溶媒効果は、より高密度のより低い残留溶媒含量を示す高度にひしゃげて、へこんだ、又は崩壊した粒子を製造する場合がある。増大した粉体密度は、製薬、ヘルスケア、パーソナルケア、農業、除草剤及び工業化学品を含む多くの用途で重要な特性である。有機材料がポリマーを含む場合、崩壊の程度、したがって噴霧乾燥粉体物性に対する正味の影響は、溶媒対非溶媒の比率(混合物が用いられる場合)、噴霧化すべき溶液中の固形分濃度、ポリマーの化学構造や分子量のようなポリマーの溶解性因子に依存する。追加のポリマーの存在が、一次ポリマー及び溶媒系との相互作用により最終粒子形態に寄与する場合がある。
【0052】
組成物が活性成分を含む場合、非溶媒効果が活性物の性質にも影響し、そのため活性物の装填、結晶性、溶解性、安定性及び放出性に影響を及ぼす。付加的なポリマーアジュバントを添加して、付加的目的、すなわち活性物の再結晶化の抑制、活性物濃度の最大化、さらに溶解速度の増強/遅延/阻害を果たすことができる。これらの機能を果たすためには、アジュバントの溶解性を一次ポリマー用に選定した溶媒混合物と適当に合致させる必要がある。
【0053】
本明細書に記載した噴霧乾燥処理は、従来の噴霧乾燥操作に対して、数々の利点がある。例えば、噴霧乾燥器の生産割合が、密閉供給原料系で達成し得る高い固形分により増大し得る。噴霧乾燥効率を、供給原料に対して低減した溶媒含量と熱エネルギーにより高めることができる。噴霧乾燥製品を、噴霧乾燥器中に加熱したプロセスガスを必要とすることなく製造することができる。さらに、特定の実施形態によれば、増大した温度及び/又は圧力で高めた溶解度により通常使用されない溶媒を利用することが可能である。このようにして、ある溶媒をより好ましい他の溶媒と置換することができる。
【0054】
本発明の特定の実施形態によれば、結晶性を低減し活性物濃度を増す方法を提供する。さまざまな溶媒蒸発方法(例えば、回転蒸発、噴霧乾燥)が、結晶質の活性物を非晶質形に転換するのに報告されている。これらの方法は通常、活性物/ポリマー/溶媒系の処方を含む。「良溶媒」を常に選択して活性物とポリマーを溶解する。しかし、この解決法を採用する際、非晶質への転換に必要なポリマーの形式と量が普遍的でないので、時として活性物の結晶性を排除するのにポリマーの高装填が必要となる。非溶媒効果は、まったく異なる方法で活性物の結晶性の度合いに深くそして驚くような影響を与える。
【0055】
本発明の実施形態において、高エネルギー供給原料の噴霧化後、非溶媒効果を活性化することができる。特定の原理に縛られることなしに、非溶媒効果が溶媒蒸発と粒子形成の機構を、特に有機材料がポリマーを付加的に含む場合に変更することが現れる。結晶質活性物の非晶質転換を達成するのにポリマーを少なくすることが必要となる。それゆえに、かかる組成物は、溶媒のみの噴霧乾燥法を用いて製造し得るものより高い濃度の活性物を含むことができる。本発明の特定の実施態様によれば、約25重量%より多い活性物、特に約50重量%より多い活性物、そして特定の実施態様によれば約75重量%より多い活性物を含む溶媒/非溶媒混合物から噴霧乾燥した活性物と、ポリマーとを含む系から組成物を調製することができる。
【0056】
特定のポリマーが溶解性強化型ポリマーとして機能し、該ポリマーの組成物中の存在は様々な条件下で活性物の溶解性を改善する。溶解性強化型ポリマーは、その組成物中での存在の結果として溶解性強化型ポリマーなしの対照組成物又は結晶形の活性物を含有する組成物と比較して、以下の特性の少なくとも1つを付与する:
a)少なくとも約25%、特に少なくとも約100%、特定の実施態様によれば少なくとも約200%の初期の放出の増大
b)少なくとも約25%、特に少なくとも約100%、特定の実施態様によれば少なくとも約200%の放出量の増大
c)少なくとも約25%、特に少なくとも約100%、特定の実施態様によれば少なくとも約200%の最大血漿濃度の増大
d)少なくとも約25%、特に少なくとも約100%、特定の実施態様によれば少なくとも約200%のAUC0−24hの増大
【0057】
初期の放出とは、標準溶解試験法により15分後に放出された活性物の百分率を示す。放出量とは、標準溶解試験法により240分後に放出された活性物の百分率を示す。
【0058】
さらに、溶媒/非溶媒解決法によって作成した組成物は、より速い放出速度やより多い放出量又は両者で開始し得る異なった溶解プロファイルによって特徴付けられる。本発明の特定の実施態様によれば、ここに記載したような溶媒/非溶媒系から類似条件下で噴霧乾燥した活性物と、ポリマーとを含む系から調製した組成物は、ある時点での放出された活性物の百分率が同一ポリマーと、非溶媒なしの同じ溶媒から噴霧乾燥された活性物とを含む系から調製した対照組成物よりも少なくとも約25%、特に少なくとも約50%、特定の事例では少なくとも約100%大きいという溶解プロファイルを示す。好ましくは、これら限界が約120分以内、特に約60分以内、さらにより詳細には約30分以内で得られる。溶解プロファイルは、実施例に記載されたような試験法や組成物中の特定の活性物に適した任意の方法を用いて決定することができる。
【0059】
本発明のさらなる展開においては、1つ又はそれ以上のポリマーが溶媒/非溶媒と作用して新規な粒子形態を創出するように、ポリマー系を選択する。必要に応じて、追加の有機材料を添加して活性物の溶解性と放出性能並びに粒子形態に影響を及ぼすことができる。改良された溶解性は、改善された濡れ性、活性物の非晶質形の創出、再結晶化に対する安定性及び/又は共溶媒効果(これらに限られる訳ではない)を含む多数の因子により達成することができる。そうすることで、活性物の過飽和溶液が製造される。「改変された放出性能」とは、活性物を放出する時間枠の変化、すなわち、即時、遅延、長期を示す。かかる改変放出が、機能性ポリマーを溶媒/非溶媒混合物と合致させることによって創出される。
【0060】
本発明の方法に用いるのに適した溶媒と非溶媒は、どんな有機物質や水でもよく、有機材料が周囲条件下で決定されるように溶媒の場合可溶で、また非溶媒の場合不溶である。有機材料がポリマーを含まない場合、有機材料の溶解性は、非溶媒よりも溶媒中で約10倍以上、好ましくは非溶媒よりも溶媒中で約100倍以上である。あるいはまた、有機材料が1つ以上のポリマーを含む場合、溶媒/非溶媒の選定と比率は、一次ポリマーの選定によって決まる。それゆえ、溶媒又は非溶媒の選定は、一次ポリマー次第である。従って、1つの系での溶媒が別の系で非溶媒であるかもしれない。特に有用な溶媒及び非溶媒としては、限られる訳ではないが、酢酸、アセトン、アセトニトリル、アニソール、1−ブタノール、2−ブタノール、酢酸ブチル、tert−ブチルメチルエーテル、クロロベンゼン、クロロホルム、クメン、シクロヘキサン、1−2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、1−2−ジメトキシエタン、N−N−ジメチルアセトアミド、N−N−ジメチルホルムアミド、1−4−ジオキサン、エタノール、2−エトキシエタノール、酢酸エチル、エチレングリコール、エチルエーテル、蟻酸エチル、ホルムアミド、蟻酸、ヘプタン、ヘキサン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、メタノール、酢酸メチル、2−メトキシエタノール、3−メチル−1−ブタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−1−プロパノール、N−メチルピロリドン、ニトロメタン、ペンタン、1−ペンタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、酢酸プロピル、ピリジン、スルホラン、テトラヒドロフラン、テトラリン、1−2−2−トリクロロエタン、トルエン、水及びキシレンがある。溶媒の混合物及び非溶媒の混合物も使用することができる。共沸混合物は、一つの共通温度で沸騰する溶媒の特定比率の混合物であり、供給原料の処方に適している。
【0061】
本発明の混合物に用いるのに適した一次ポリマーと他の有機材料は、溶媒中で可溶、非溶媒中では不溶でなければならない。有用な有機材料の特定例としては、これに限られる訳ではないが、脂肪族ポリエステル類(例えば、ポリD‐ラクチド)、糖アルコール類(例えば、ソルビトール、マルチトール、イソマルトース)、カルボキシアルキルセルロース類(例えば、カルボキシメチルセルロース、架橋したカルボキシメチルセルロース)、アルキルセルロース類(例えば、エチルセルロース)、ゼラチン、ヒドロキシアルキルセルロース類(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース類(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC))、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、ポリアミン類(例えば、キトサン)、ポリエチレングリコール類(例えば、PEG8000、PEG20000)、メタクリル酸重合体及び共重合体(例えば、ローム・ファーマ社製のオイドラギット(登録商標)シリーズのポリマー)、N−ビニルピロリドンのホモ−及びコポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、架橋したポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドン−コ−ビニルアセテート)、ビニルラクタムのホモ−及びコポリマー、スターチ類(例えば、コーンスターチ、デンプングリコール酸ナトリウム)、多糖類(例えば、アルギニン酸)、ポリグリコール類(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、ポリビニルエステル類(例えば、ポリビニルアセテート)、精製/変性シェラックがある。混合物中に存するポリマーまたは有機材料の量は、混合物の重量に対し約1%から約95%、特に約5%から約90%の範囲である。有機材料の混合物も使用し得る。
【0062】
また、供給原料組成物は活性物質を含んでもよい。以下の記載は主に薬学的活性材料に関しているが、本発明は薬学的活性材料に限定するものではない。本発明の範囲は、パーソナルケア(例えば、ヘアケア、スキンケア又はオーラルケア)、農業、除草剤及び他の工業的又は消費者用途に用いる活性成分も含む。ここで用いるような「薬学的活性材料」は、栄養学的活性材料、栄養補助食品及びビタミン材料を含むことを意図する。混合物は、活性物の所望投与量に応じて約1%から約95%の活性物、特に約20%から約80%の活性物を含んでよい。本発明に使用し得る活性物は、特に制限されない。使用し得る活性物の例としては、これらに限られる訳ではないが、硫酸アバカビル、アセブトロール、アセトアミノフェン、アセメタシン、アセチルシステイン、アセチルサリチル酸、アシクロビル、アデホビルジピボキシル、アルプラゾラム、アルブミン、アルファカルシドール、アラントイン、アロプリノール、アンブロキソール、アミカシン、アミロライド、アミノ酢酸、アミオダロン、アミトリプチリン、アムロジピン、アモキシシリン、アモキシシリン三水和物、塩酸アミオダロン、アムホテリシンB、アンピシリンアンプレナビル、アプレピタント、アナストロゾール、アスコルビン酸、アスパルテーム、アステミゾール、硫酸アタザナビル 、アテノロール、アトルバスタチンカルシウム、アザチオプリン、アジスロマイシン、アジスロマイシン二水化物、ベクロメタゾン、ベンセラジド、水酸化ベンザルコニウム、ベンゾカイン、安息香酸、ベタメタゾン、ベザフィブラート、ビカルタミド、ビオチン、ビペリデン、ビソプロロール、ボセンタン、ブロマゼパム、ブロムヘキシン、ブロモクリプチン、ブデゾニド、ブフェキサマク、ブフロメジル、ブスピロン、カフェイン、カンフル、カンデサルタンシレキセチル、カプトプリル、カルバマゼピン、カルビドーパ、カルボプラチン、カルベジロール、セファクロル、セファレキシン、セファドロキシル、セファゾリン、セフジニル、セフィキシム、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフロキシム、セレコキシブ、クロラムフェニコール、クロルヘキシジン、クロルフェニラミン、クロタリドン、コリン、シラスタチン、シロスタゾール、シメチジン、シプロフロキサシン、シサプリド、シスプラチン、臭化水素酸シタロプラム 、クラリスロマイシン、クラブラン酸、クロミプラミン、クロナゼパム、クロニジン、重硫酸クロピドグレル、クロトリマゾール、クロザピン、コデイン、コレスチラミン、コエンザイムQ10、クロモグリシン酸、シアノコバラミン、シクロスポリン、シプロテロン、ダナゾール、メシル酸デラビルジン、デシプラミン、デスロラタジン、デスモプレシン、デソゲストレル、デキサメタゾン、デクスパンテノール、デキストロメトルファン、デキストロプロポキシフェン、ジアゼパム、ジクロフェナク、ジゴキシン、ジヒドロコデイン、ジヒドロエルゴタミン、ジルチアゼム、ジフェンヒドラミン、ジピリダモール、ジピロン、ジソピラミド、ドセタキセル、ドムペリドン、ドーパミン、ドキシサイクリン、塩酸ドキソルビシン、ドロナビノール、デュタステライド、エファビレンツ、臭化水素酸エレトリプタン、エムトリシタビン、エナラプリル、エンロフロキサシン、エンタカポン、エフェドリン、エピネフリン、エプレレノン、メシル酸エプロサルタン、エルゴカルシフェロール、メシル酸エルゴロイド、酒石酸エルゴタミン、エリスロマイシン、蓚酸エスシタロプラム、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エトポシド、エキセメスタン、エゼチミブ、ファモチジン、フェロジピン、フェノフィブラート、フェノテロール、フェンタニル、塩酸フェキソフェナジン、フイナステリド、フラビンモノヌクレオチド、フルコナゾール、フルナリジン、フルオロウラシル、フルオキセチン、フルルビプロフェン、塩酸フルフェナジン、フルタミド、プロピオン酸フルチカゾン、フルバスタチン、ホサアンプレナビル、ホサンプレナビルカルシウム、フロセミド、ガバペンチン、臭化水素酸ガランタミン、ガンシクロビル、ゲムフィブロジル、ゲンタミシン、ギンクボビロバ、グリベンクラミド、グリメピリド、グリピジド、グリシルヒザグラブラ、グリブリド、グアイフェネシン、グアナベンツ、ハロペリドール、ヘパリン、ヒアルロン酸 、ヒドロクロルチアジド、ヒドロコドン、ヒドロコロチゾン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシテトラサイクリン、水酸化イプラトロピウム、イブプロフェン、イダルビシン、イミペネム、塩酸イミプラミン、硫酸インジナビル、インドメタシン、イオヘキソール、イオパミドール、イリノテカン、二硝酸イソソルビド、イルベサルタン、硝酸イソソルビド、イソトレチノイン、イスラジピン、イトラコナゾール、ケトチフェン、ケトコナゾール、ケトプロフェン、ケトロラック、ラベタロール、ラクツロース、ラミブジン、ラモトリギン、ランソプラゾール、レシチン、レベチラセタム、レボカルニチン、レボドーパ、レボグルタミド、レボノルゲステレル、レボチロキシン、リドカイン、リパーゼ、リシノプリル、ロペラミド、ロピナビル、ロラタジン、ロラゼパム、ロバスタチン、メドロキシプロゲステロン、メロキシカム、メルファラン、メントール、メルカプトプリン、メサラミン、メトトレキサートメチルドパ、N−メチルエフェドリン、メチルプレドニゾロン、メトクロピラミド、メトラゾン、メトプロロール、ミコナゾール、ミダゾラム、ミノサイクリン、ミノキシジル、ミソプロストール、ミトタン、モダファニル、モメタゾン、モルヒネ、モサプリド、マルチビタミン&ミネラル、ナブメトン、ナドロール、ナフチドロフリル、ナプロキセン、ネファゾドン、メシル酸ネルフィナビル、ネオマイシン、ネビラピン、塩酸ニカルジピン、ニセルゴリン、ニコチンアミド、ニコチン、ニコチン酸、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニザチジン、ノルエチステロン、ノルフロキサシン、ノルゲストレル、ノルトリプチリン、ナイスタチン、オフロキサシン、オランゼピン、オルメサルタンメドキソミル、オメプラゾール、オンダンセトロン、オルリスタット、オクスカルバゼピン、パクリタキセル、パンクレアチン、パンテノール、パントプラゾール、パントテン酸、パラセタモール、塩酸パロキセチン、ペニシリンG、ペニシリンV、ペルフェナジン、フェノバルビタール、フェニルエフリン、フェニルプロパノールアミン、フェニトイン、ピメクロリムス、ピモジド、塩酸ピオグリタゾン、ピロキシカム、ポリミキシンB、ポビドンヨード、プラバスタチンナトリウム、プラゼパム、プラゾシン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プログルメタシン 、塩酸プロパフェノン、プロプラノロール、プロポフォール、プソイドエフェドリン、ピリドキシン、塩酸キナプリル、キニジン、塩酸ラロキシフイン、ラミプリル、ラニチジン、レセルピン、レスベラトロール、レスベラトロール誘導体、レチノール、リバブリン、リボフラビン、リファンピシン、リスペリドン、リトナビル、ロスバスタチンカルシウム、ルトシド、サッカリン、サルブタモール、サケカルトニン、サリチル酸、キシナホ酸サルメトロール、サキナビル、セルトラリン、クエン酸シルデナフィル、シンバスタチン、シロリムス、ソマトロピン、ソタロール、スピロノラクトン、スタブジン、スクラルファート、スルバクタム、サルファメトキサゾール、サルファサラジン、スルピリド、タクロリムス、タダラフィル、タモキシフェン、塩酸タムスロシン、テガフール、フマル酸テノホビルジソプロキシル、テノキシカム、テプレノン、テラゾシン、塩酸テルビナフィン、マレイン酸テガセロッド、テルミサルタン、テルブタリン、テルフェナジン、タリドマイド、テオフィリン、チアミン、チアプロフェン酸、チクロピジン、チモロール、塩酸チザニジン、トピラマート、トランドラプリル、トラネキサム酸、トレチノイン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムテレン、トリアゾラム、トリメトプリム、トロキセルチン、ウラシル、バルデコキシブ、塩酸バルガンシクロビル、バルプロン酸、バルルビシン、バルサルタン、バンコマイシン、ベラパミル、塩酸バルデナフィル、ビタミンE、ザフィルルカスト、ザルシタビン、ザレフォン、ジドブジン、ジプラシドン、酒石酸ゾルピデム、ゾニサミド又はゾテピンがある。
【0063】
供給原料組成物はまた、最終製品の特性を改変し得る追加の有機材料を含んでもよい。例えば、特定の有機物質を含めて粒子形態/径並びに活性成分の溶解性、生体利用効率及び放出特性を制御することができる。追加の有機材料を混合物に含めて、さらに活性物の再結晶化を抑制したり、活性物の濃度を最大化したり、溶解速度を強化/遅延/阻止したりしてもよい。この系に添合し得る追加の有機材料は、特に限定されない。本発明の1つの実施形態において、追加の有機材料はポリマーである。
【0064】
供給原料組成物は、通常混合物の総重量に対して約40重量%から99.9重量%の総溶媒(非溶媒を含む)、特に約80重量%から95重量%の総溶媒を含む。供給原料がポリマー/溶媒/非溶媒(周囲条件で定義された)を含む場合、臨界比率Rが約0.01〜0.99、特に約0.1〜0.9、さらに詳細には約0.3〜0.8から変化し得る。
【0065】
溶媒、ポリマー及び任意の活性物に加えて、調剤は混合物の性能、取扱いや処理を向上させる他の成分も含みうる。代表的な成分としては、限定する訳ではないが、表面活性剤、pH調整剤、充填剤、錯化剤、可溶化剤、顔料、潤滑剤、滑剤、風味剤、可塑剤、矯味剤、崩壊剤、崩壊助剤(例えば、ケイ酸カルシウム)などがある。有用な表面活性剤の例としては、限定する訳ではないが、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、ソルビタンモノオレエート及びソルビタントリオレエートがある。有用な充填剤の例としては、限定する訳ではないが、ラクトース類、デキストリン、糖類、糖アルコール及びシリカがある。これらの賦形剤は、慣行の目的で代表的な量で用いることができる。
【0066】
本発明の方法に用いる装置は、高エネルギー供給原料から粉体及び粒状製品を形成できる装置のあらゆる形を取ることができる。かかる装置には、あらゆる市場で入手し得るデザインの噴霧乾燥器がある。特定の噴霧乾燥装置の例として、ニロ社製の噴霧乾燥器(例えば、SD−Micro(登録商標)、PSD(登録商標)−1、PSD(登録商標)−2など)、Mini Spray Dryer(ビュッヒラボテクニックAG社製)、スプレイドライイングシステム社製の噴霧乾燥器(例えば、モデル30、48,72)及びSSP Pvt.Ltd.社製のものが挙げられる。本発明の実施形態に関しては、加熱プロセスガスは必要でなく、事実固相粉体を形成するのに冷却プロセスガスを要求する場合がある。
【0067】
一般に、噴霧乾燥方法と噴霧乾燥装置がペリーの化学工学ハンドブック、第6版(R.H.ペリー、D.W.グリーン、J.O.マロニー、編)マグロウヒル書店、1984、第20−54〜第20−57頁に記載されている。噴霧乾燥方法と装置に関する詳細が、マーシャルの「噴霧化と噴霧乾燥」50Chem.Eng.Prog.Monogr。Series第2巻(1954)に報告されている。これら文献の内容を本明細書に参照して援用する。
【0068】
「噴霧乾燥」という用語が従来から使用され、一般に液体混合物を小液滴へと分離し、液滴からの溶媒蒸発用の強力な駆動力がある容器(噴霧乾燥装置)中で溶媒を混合物から急速に除去することを備える方法を指し示す。噴霧化技術としては、2流体圧力ノズルと、回転噴霧装置を含む。通常、溶媒蒸発用の強力な駆動力は、噴霧乾燥装置内の溶媒の分圧を乾燥中の液滴温度で溶媒の気化圧力以下に十分維持することにより付与される。これは、(1)噴霧乾燥装置内の圧力を部分真空で保持し;(2)暖かい乾燥ガスと液状液滴とを混合し;又は(3)両方によるいずれかによって達成することができる。
【0069】
一般に、乾燥ガスの温度および流速と、噴霧乾燥器のデザインとを、噴霧化液滴が装置の壁面に到着する時点までに十分乾燥し、これらが実質的に固体で、微粉体を形成し、装置の壁面に付着しないように、選択する。この乾燥レベルを達成する時間の実際の長さは、液滴のサイズ、処方及び噴霧乾燥器の操作による。凝固に続いて、固体粉体を噴霧乾燥室に5〜60秒留めて、さらに溶媒を固体粉体から蒸発させることができる。乾燥器から取り出した粒子の最終的な溶媒含量は、製品の取扱いと安定性を改善するため、低くすべきである。通常、噴霧乾燥組成物の残留溶媒含量は、約10重量%未満、好ましくは約2重量%未満とすべきである。本発明によれば通常不要であるが、非溶媒の存在がより低い残留溶媒含量の噴霧乾燥粉体をもたらすため、本発明の特定の実施形態によれば噴霧乾燥組成物に更なる乾燥を施して残留溶媒をより低いレベルにまで低下させるのが有用である。特定の噴霧乾燥方法に関する追加的な詳細を実施例にてより詳しく記載する。しかし、粉体を噴霧乾燥する操作条件は当業界で周知であり、当業者なら容易に調整しうる。さらに、実施例は、実験室規模の噴霧乾燥器で得た結果を記載する。当業者は、生産規模設備で同様の結果を得るため変更すべき変数を直ちに理解するであろう。
【0070】
また、供給原料をキャストフィルムとして基材担体あり又はなしで分配することができる。担体は、多孔質又は非孔質の基材を備えることができ、限定する訳ではないが、粉末、粉体、錠剤又はシートがある。あるいはまた、供給原料を担体なしのフィルムとして分配してもよく、供給原料の溶媒を蒸発により除去して固体又は固体状材料を製造する。
【0071】
本発明の組成物を、多岐にわたる産業で通常用いる多数の形態にて提供することができる。典型的な提供形態は、粉体、顆粒及び多粒子体である。これらの形態を直接用いてまたはさらに処理して錠剤、カプセル又は丸薬をもたらすか、又は水や他の液体の添加により再構成してペースト、スラリー、懸濁液又は溶液を形成してもいい。種々の添加剤を本発明の組成物と混合、粉砕又は造粒して上述の製品形態に適する材料を形成してもよい。
【0072】
本発明の組成物を種々の形態で調剤して液状媒体における粒子の懸濁液として分配することができる。かかる懸濁液を製造時に液体若しくはペーストとして調剤するか、または乾燥粉末として調剤し、後で使用前に液体、通常水を添加することができる。懸濁液の構成要素となる粉体は、子袋または構成経口用粉末としばしば称する。これら製品形態をあらゆる既知の処理により調剤し、再構築することができる。
【0073】
製剤用途において、本発明の組成物を、限定する訳ではないが、経口、経鼻、経直腸、経膣、皮下注射、静脈注射や経肺を含む多様な経路から送達することができる。通常、経口経路が好適である。
【0074】
経口で、固体投与の製剤用噴霧乾燥粉体は、通常約0.5μm〜500μmの平均粒径を有し、一般に総固形分が1%以上、より詳しくは約2〜50%、さらにより詳しくは約3〜25%の濃度で溶液から調製する。
【0075】
経口で、固体投与の製剤用顆粒は、通常約50μm〜5000μmの平均粒径を有する。顆粒の製造技術には、限定する訳ではないが、湿式造粒や種々の流動床造粒方法がある。
【0076】
本発明のいくつかの実施態様によって製造した組成物は、固溶体や固体分散体のような固体状態の形で存在する。該組成物は、主としてまたは本質的にすべてがこのような形であるか、またはこのような形に特定の成分を含むことができる。これらの形によって、優れた生体利用効率、溶解性などのような利益をもたらすことができる。
【0077】
本発明を以下の非限定的な実施例により詳細に記載する。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
A.ジクロロメタン10%、アセトン90%中で総固形分が10%となるように1:3のエファビレンツ(EFV):ポリビニルピロリドン(PVP)と2%のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)とを含む分散液を作成した。周囲条件下PVP用の非溶媒であるアセトンを上記量で用いて真性溶液は形成されなかった。
【0079】
B.前記分散液を圧力容器(パール インスツルメント社製)に静置し、80℃に25psigで加熱した。かかる条件下でPVPが溶解し、透明な真性溶液を得た。
【0080】
C.加熱溶液を2流体ノズルで作動する噴霧乾燥器(SD−マイクロ(登録商標)、ニロ社製)に排出した。プロセスガスを65℃の入口温度に加熱した。
【0081】
D.粉体がサイクロン容器に回収され、3.2%の全残留溶媒含量であった。
【0082】
E.エファビレンツ結晶性のDSC(Q1000(登録商標)、TAインスツルメント社製)による分析は、約139℃でエファビレンツ融解吸熱の完全な欠如を示した。噴霧乾燥粉体は、完全な非晶質エファビレンツのみを含んでいた(図2)。
【0083】
F.走査電子顕微鏡によれば、本処方と製法によって調製した粉体は、約10μm未満の粒径であった(図3A及び3B)。かかる粒子は、球形でなく、広範囲な襞を有してほぼ崩壊していた。
(実施例2)
【0084】
A.分散液を105℃に50psigで加熱して透明な真性溶液を作る以外実施例1に記載した方法を用いて2番目の粉体を調製した。
【0085】
B.粉体がサイクロン容器に回収され、6.2%の全残留溶媒含量であった。
【0086】
C.エファビレンツ結晶性のDSC(Q1000(登録商標)、TAインスツルメント社製)による分析は、約139℃でエファビレンツ融解吸熱の完全な欠如を示した。噴霧乾燥粉体は、完全な非晶質エファビレンツのみを含んでいた(図4)。
【0087】
D.走査電子顕微鏡によれば、本処方と製法によって調製した粉体は、約10μm未満の粒径であった(図5A及び5B)。かかる粒子は、球形でなく、広範囲な襞を有してほぼ崩壊していた。
(実施例3)
【0088】
A.前記両方の非晶質組成物の溶解特性を試験して、結晶性EFVと比較した。50mgエファビレンツに等価な量を分析した。粉体を、サイズ1の硬質ゼラチンカプセル(シオノギクオリカプス社製)に追加の15%クロスカルメロースナトリウム(Ac−Di−Sol(登録商標)FMCバイオポリマーズ社製)と共に手で充填した。米国薬局方の装置II(パドル法)(VK7010(登録商標)、バリアン社製)を槽温度37℃、パドル速度50rpmで60分間用いた。
【0089】
B.実施例1と2の各非晶質粉体は、結晶質形と比べてより高い放出速度と最大水溶液濃度を達成した(図6、表2)。非晶質粉体の初期放出速度は、結晶質形と比べて10倍以上高かった。105℃の溶液温度から噴霧乾燥した非晶質製品は、その不十分な水溶性薬剤のほぼ完全な放出をもたらした。
【0090】
【表2】

【0091】
(実施例4)
【0092】
1:1のエゼチミブ:PVP K−12とを1%の総固形分で酢酸エチル中に含む分散液を、標準実験室条件(約25℃及び1気圧)にて調製した。これら条件下で、エゼチミブ(EZE)はPVP用非溶媒である酢酸エチルに可溶であり、ポリマー分子が膨張しない(α<1)ことを意味する。
【0093】
分散液を実施例1の加圧容器に静置し、110℃に45barで加熱した。真性な透明溶液をかかる条件下で形成した。
【0094】
加熱加圧溶液を0.5mmの2流体ノズルを備えた噴霧乾燥器(モービルマイナー、ニロ社製)に排出した。噴霧乾燥器の入口温度は110℃、出口温度は45℃、噴霧圧力は1.0barとした。粉体製品を噴霧乾燥器のサイクロン回収容器に回収した。
【0095】
エゼチミブサイクロン製品の効力検定を、Sistlaほかによる「医薬品投与形態のエゼチミブの決定用の逆相HPLC法の進歩と有効性」J.Pharma Bio Anal,第39巻(2005),第517−522頁に基づいたHPLC法で測定した。250mm×4.6mmのPhenomenex C18 Luna カラムを用い、移動相が60%アセトニトリル:40%水で、流速1.5mL/分とした。効力検定が84%エゼチミブであると測定され、これは水または残留酢酸エチル含量に対し補正されていない。
【0096】
エゼチミブ組成物の熱物性を、示差走査熱量計(Q1000、TAインスツルメント社製)を用いて測定した。10℃/分の加熱速度を波形のアルミ製皿とともに用いた。高圧高温製品の融解エンタルピー(11J/g、調剤補正)は、結晶形の製薬(103J/g)よりもかなり小さい値であった(図7)。
【0097】
当業者であれば、以下の請求項で定義した本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書中に記載した組成物及び/又は製造方法の工程や工程順序について変更を加えることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有機材料を該有機材料用の非溶媒を含有する溶媒系中に備える供給原料を準備し、該供給原料を周囲条件と比べて高めた温度及び/又は高めた圧力で供給し、
(b)前記供給原料を液滴またはフィルムのいずれかで分配し、
(c)前記溶媒系を供給原料から蒸発させる
ことを特徴とする固体材料を製造する方法。
【請求項2】
前記供給原料が約40℃から約200℃の温度にある請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給原料が約1気圧(ゲージ圧)から約20気圧(ゲージ圧)の圧力にある請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記供給原料が約40℃から約200℃の温度にある請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機材料が薬学的活性材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有機材料が更にポリマーを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記供給原料が更に1以上の薬学的に許容し得る成分を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機材料を、脂肪族ポリエステル、糖アルコール、カルボキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース誘導体、ポリアミン、ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリマー及びコポリマー、N−ビニルピロリドンのホモ及びコポリマー、ビニルラクタムのホモ及びコポリマー、澱粉、多糖類、ポリグリコール、ポリビニルエステル、精製/変性されたシェラック及びそれらの混合物からなる群から選択する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有機材料を、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルピロリドン−コビニルアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及びそれらの混合物からなる群から選択する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒系が、約5%の溶媒対約95%の非溶媒から約95%の溶媒対約5%の非溶媒の比率で存在する少なくとも一つの有機材料用の溶媒と非溶媒の組合せを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒対非溶媒の比率が、有機材料を供給原料に高めた温度及び/又は高めた圧力で溶解するように選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記供給原料中の有機材料の濃度が、約1%から約90%である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物が更に第二の有機材料を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の有機材料がポリマーで、第二の有機材料が薬学的活性材料である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記薬学的活性材料が、非溶媒なしのポリマー系を用いて調製した対照組成物と比較して、増加した溶解速度を呈する請求項5に記載の方法。
【請求項16】
前記薬学的活性材料が、非溶媒なしのポリマー系を用いて調製した対照組成物と比較して、増加した溶解量を呈する請求項5に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法によって製造した粒子を含む組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物を備える薬学組成物。
【請求項19】
経口固体投与形態の形状である請求項18に記載の薬学組成物。
【請求項20】
(a)薬学的活性材料とポリマーとを該ポリマー用の溶媒と非溶媒との混合物中に含む供給原料を高めた温度及び/又は高めた圧力で供給し、
(b)前記供給原料を噴霧乾燥して噴霧乾燥組成物を形成する
ことを特徴とする噴霧乾燥組成物を製造する方法。
【請求項21】
前記噴霧乾燥組成物が、約0.5μmから約5000μmの平均粒径を有する粒子を含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記供給原料が約40℃から約200℃の温度にある請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記供給原料が約1気圧(ゲージ圧)から約20気圧(ゲージ圧)の圧力にある請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記供給原料が約40℃から約200℃の温度にある請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記噴霧乾燥組成物が少なくとも約25重量%の薬学的活性材料を含む請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記噴霧乾燥組成物が少なくとも75重量%の薬学的活性材料を含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記噴霧乾燥組成物が、同一のポリマーと、非溶媒なしの同一溶媒から噴霧乾燥した活性物とを含む系から調製した対照組成物と比較して活性物の放出百分率が少なくとも約25%大きい溶解性を示す請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記噴霧乾燥組成物が、同一のポリマーと、非溶媒なしの同一の溶媒から噴霧乾燥した活性物とを含む系から調製した対照組成物と比較して活性物放出の初期速度が少なくとも約25%大きい溶解性を示す請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記噴霧乾燥組成物が、同一のポリマーと、非溶媒なしの同一の溶媒から噴霧乾燥した活性物とを含む系から調製した対照組成物と比較して活性物放出の百分率が少なくとも約100%大きい溶解性を示す請求項20に記載の方法。
【請求項30】
前記噴霧乾燥組成物が、同一のポリマーと、非溶媒なしの同一の溶媒から噴霧乾燥した活性物とを含む系から調製した対照組成物と比較して活性物放出の初期速度が少なくとも約100%大きい溶解性を示す請求項20に記載の方法。
【請求項31】
請求項20に記載の方法によって製造した噴霧乾燥組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−516781(P2010−516781A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547436(P2009−547436)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/052003
【国際公開番号】WO2008/092057
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(596121138)アイエスピー インヴェストメンツ インコーポレイテッド (24)
【氏名又は名称原語表記】ISP INVESTMENTS INC.
【Fターム(参考)】