説明

回折型光変調器の反射部位置リセット装置

【課題】回折型光変調器の反射部の位置を特定の循環に初期位置にリセットさせ、反射部の位置に対する制御可能性を増加させた回折型光変調器の反射部位置リセット装置の提供。
【解決手段】回折型光変調器で生成された回折光を処理して連続的な映像を生成するディスプレイシステムに使用される前記回折型光変調器において、前記ディスプレイシステムに位置する前記回折型光変調器から出射される回折光が前記ディスプレイシステムのスクリーン上のブランクタイム区間にあるとき、リセット制御信号を出力する制御部と、前記制御部からリセット制御信号が印加されると、前記回折型光変調器を初期化するリセット駆動回路とを含んでなることを特徴とする、回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折型光変調器の反射部位置リセット装置に係り、特に、回折型光変調器の反射部の位置を特定の瞬間に初期位置にリセットさせて反射部の位置に対する制御可能性を増加させた回折型光変調器の反射部位置リセット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細技術の進展に伴い、いわゆるマイクロマシン(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems、超小型電気的・機械的複合体)素子およびMEMS素子を組み立てた小型機器が注目されている。
【0003】
最近、このようなMEMS素子を使用する空間光変調器が開発された。この種の空間光変調器の一例として回折型光変調器がある。
【0004】
図1は従来の技術に係るオープンホール型基盤の回折型光変調器を示す斜視図である。
【0005】
図1を参照すると、オープンホール基盤の回折光変調器は、シリコン基板121、絶縁層122、下部反射部123、および複数の駆動エレメント130a〜130nから構成されている。
【0006】
ここで、下部反射部123は、シリコン基板121の上部に蒸着されており、入射する光を反射する。下部反射部123に用いられる物質としてはメタル(Al、Pt、Cr、Agなど)がある。
【0007】
駆動エレメント(代表的に、図面符号130aについてのみ説明するが、残りの駆動エレメントに対しても同様である)は、リボン形状をしており、中央部分がシリコン基板121の陥没部から離隔して位置するように両端の下面がそれぞれシリコン基板121の陥没部を外れた両側地域に付着している下部支持台131aを備えている。
【0008】
下部支持台131aの両側面には圧電層140a、140a'が備えられており、備えられた圧電層140a、140a'の収縮膨張によって駆動エレメント130aの駆動力が提供される。
【0009】
左右側の圧電層140a、140a'は、圧電電圧を提供するための下部電極層141a、141a'と、下部電極層141a、141a'に積層されており、両面に電圧が印加されると収縮および膨張して上下駆動力を発生させる圧電材料層142a、142a'と、圧電材料層142a、142a'に積層されており、圧電材料層142a、142a'に圧電電圧を提供する上部電極層143a、143a'とを備えている。上部電極層143a、143a'と下部電極層141a、141a'に電圧が印加されると、圧電材料層142a、142a'は収縮・膨張をして下部支持台131aの上下運動を発生させる。
【0010】
一方、下部支持台131aの中央部分には上部反射部150aが蒸着されており、複数のオープンホール151a1、151a2を備えている。
【0011】
このようなオープンホール151a1、151a2は、駆動エレメント130aに入射する入射光が貫通して、オープンホール151a1、151a2が形成された部分に対応する下部反射部123に入射するようにし、こうして下部反射部123から反射される反射光と上部反射部150aから反射される反射光とが回折光を形成し得るようにする。
【0012】
この際、上部反射部150aのオープンホール151a1、151a2を貫通して入射する入射光は、下部反射部123の該当部分に入射することができ、上部反射部150aと下部反射部123との間隔がλ/4の奇数倍(ここで、λは入射光の波長)になるとき、最大の回折光を発生させる。
【0013】
ここで、一つの上部反射部150aとそれに対応する下部反射部123は、スクリーンに形成される映像のピクセルを形成するためのスキャニング回折点光を形成することができる。これをより詳しく説明するために図2を参照すると、回折型光変調器は、スクリーンに形成される映像の第aピクセル、第bピクセル、第cピクセル、第dピクセル、第eピクセル、・・・、第nピクセルのそれぞれに対応するn個の上部反射部150a〜150nから構成されている。回折型光変調器は、図面符号150aの一つの上部反射部を参考して説明すると、上部反射部150aの反射面150a1、150a2、150a3から反射された反射光と、上部反射部150aのオープンホール151a1、151a2、151a3(ここで、151a3は上部反射部150aと隣接の上部反射部150b間の間隔をいう)を通過して下部反射部123から反射された反射光とが回折光を形成するが、このような回折光はスクリーンに形成される映像のピクセルに対応するスキャニング回折点光になる。
【0014】
すなわち、上部反射部150a〜150nのそれぞれは、それに対応する下部反射部123の反射面と共にスクリーンに形成される映像のピクセルに対応するスキャニング回折点光を形成し、このようなスキャニング回折点光は、複数個が一列に整列して走査腺(ここで、走査線はn個のピクセルに対応するn個のスキャニング回折点光から構成されると仮定する)を形成する。
【0015】
一方、上述したオープンホール基盤の回折型光変調器において左右側の圧電層に圧電電圧が印加されるとき、圧電層による駆動力に起因した上部反射部の変位は図3A、Bに示すようにヒステリシス特性を示す。すなわち、図3Aを参照すると、左右側の圧電層に印加される圧電電圧が0Vから始まってVmaxになるまでA線に沿って上部反射部の変位が変化し、Vmaxから始まって0Vに進むときはB線に沿ったヒステリシス特性を示す。A線とB線は、直線ではなく曲線であって、非線形性を示す。
【0016】
このような回折型光変調器のヒステリシス特性は、最大電圧Vmax電圧を印加して最大変位に到達した後、最大電圧Vmaxから始まってVmaxより低い電圧に移動し、その地点でさらに始まって最大電圧Vmaxに到達する場合に図3Bのような変位特性を示す。
【0017】
すなわち、図3Bを参照すると、0電圧から始まってVmaxまで印加して最大変位を得た後、さらにV4電圧まで徐々に電圧を下げながら印加し、その後さらにV4電圧から始まって再び最大電圧Vmaxに到達した場合にはB4線のような変位特性を示す。
【0018】
そして、さらにV3電圧まで徐々に電圧を下げながら印加し、その後さらにV3電圧から始まって再び最大電圧Vmaxに到達した場合には、B3線のような変位特性を示す。
【0019】
また、さらにV2電圧まで徐々に電圧を下げながら印加し、その後さらにV2電圧から始まって再び最大電圧Vmaxに到達した場合には、B2線のような変位特性を示す。
【0020】
そして、さらにV1電圧まで徐々に電圧を下げながら印加し、その後さらにV1電圧から始まって再び最大電圧Vmaxに到達した場合には、B1線のような変位特性を示す。
【0021】
一方、このような回折型光変調器のヒステリシス特性は、最低電圧から始まって任意の電圧まで印加し、所望の変位に到達した後、任意の電圧から0電圧まで徐々に電圧を下げながら印加するときにも現れる。
【0022】
このような回折型光変調器のヒステリシス特性は、上部反射部を所望の位置に移動させるために印加されるべき電圧を決定することを難しくする。
【0023】
一方、前述した回折型光変調器は、同一の駆動電圧を印加する場合にも、上部反射部が互いに異なる初期位置を持つクリープ(creep)現象を示す。
【0024】
このようなヒステリシスとクリープ現象が、上部反射部を所望の位置に移動させるために要求される電圧を決定することを難しくするから、これに対する解決が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、回折型光変調器の反射部の位置を特定の循環に初期位置にリセットさせ、反射部の位置に対する制御可能性を増加させた回折型光変調器の反射部位置リセット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するための本発明は、回折型光変調器で生成された回折光を処理して連続的な映像を生成するディスプレイシステムに使用される前記回折型光変調器において、前記ディスプレイシステムに位置する前記回折型光変調器から出射される回折光が前記ディスプレイシステムのスクリーン上のブランクタイム区間にあるとき、リセット制御信号を出力する制御部と、前記制御部からリセット制御信号が印加されると、前記回折型光変調器を初期化するリセット駆動回路とを含んでなることを特徴とする、回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置を提供する。
【発明の効果】
【0027】
上述した本発明によれば、便利な方法で上部反射部の位置を初期化させて画質型光変調器のヒステリシス特性による異常動作を抑制し得るようにする効果がある。
【0028】
また、本発明によれば、上部反射部の位置を初期化させて回折型光変調器のクリープ現象による異常動作を防止し得るようにする効果がある。
【0029】
また、本発明によれば、上部反射部の位置を初期化し、以後の印加電圧に対する予測可能性を増大させ、動作における制御可能性を増加させる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例に係る回折型光変調器の反射部位置リセット装置について詳細に説明する。
【0031】
図4Aは本発明の好適な一実施例に係る回折型光変調器の反射部位置リセット装置の構成図である。
【0032】
図4Aを参照すると、本発明の好適な一実施例に係る回折型光変調器の反射部位置リセット装置は、映像入力部501、映像ピボット部502、メモリ503、制御部504、映像データ出力部505、光変調器駆動回路506、リセット駆動回路507、フォトセンサ550、およびエレメント別リセット電圧算出部560を含んでいる。
【0033】
ここで、映像入力部501は、外部から映像データの入力を受け、同時に垂直同期信号Vsyncと水平同期信号Hsyncの入力を受ける。
【0034】
映像ピボット部502は、横方向に整列されている映像データを縦方向に変換するデータトランスポーズを行い、横方向に入力された映像データを縦方向の映像データに変換してメモリ503に格納する。このように映像ピボット部502でデータトランスポーズが必要な理由は、回折型光変調器から出射する走査線は、複数のピクセルに対応するスキャニング回折点光が縦に配列されており、横方向にスキャニングして表示するようになっているためである。
【0035】
メモリ503には、映像ピボット部502によってトランスポーズされた映像データが格納されており、リセット動作のためにサンプル映像データが格納されている。このメモリ503に格納されたサンプル映像データは、任意の映像データであってもよく、後述するエレメント別リセット電圧の算出過程に使用される。また、メモリ503には、サンプル映像データによる駆動電圧が回折型光変調器に印加される場合にそれぞれのエレメント別に出射する回折光から測定されるものと予想される予想測定エレメント別光強度が格納されている。このような予想測定エレメント別光強度も後述するエレメント別リセット電圧の算出過程に使用される。
【0036】
映像データ出力部505は、メモリ503に格納された映像データを順次読み取って出力する。
【0037】
光変調器駆動回路506は、映像データ出力部505から出力される映像データに応じて回折型光変調器を駆動し、入射する入射光を変調することにより、映像情報を持っている回折光を形成する。
【0038】
フォトセンサ550は、回折型光変調器から出射される回折光の各ピクセルに対応するそれぞれのエレメントから出射されるエレメント別光強度を検出して出力する。
【0039】
エレメント別リセット電圧算出部560は、フォトセンサ550で測定されたエレメント別光強度が入力されると、それぞれのエレメントに対してサンプル映像データによる駆動電圧が印加されるときに出射されるものと予想される予想エレメント別光強度と、フォトセンサ550から入力された測定エレメント別光強度とを比較し、エレメントリセット電圧を算出する。
【0040】
一方、リセット駆動回路507は、下部反射部123と上部反射部(一つのエレメント130aについて説明すると、150a)に付着されている。
【0041】
リセット駆動回路507は、リセット制御信号が入力されると、光変調器駆動回路506がオフされる時間の間に、メモリ503に格納されたリセット電圧値を読み取ってきて、それによるリセット電圧を回折型光変調器の上部反射部(一つのエレメント130aを例とすれば150a)と下部反射部123に印加してリセット動作を行う。ここで、リセット駆動回路507が出力するリセット電圧は、回折型光変調器の上部反射部150a〜150nを初期化させる値であり、その値が0ではない。
【0042】
制御部504は、光変調器駆動回路506を制御して回折型光変調器を動作させ、リセット駆動回路507を制御して回折型光変調器をリセットさせる。
【0043】
このような構成の回折型光変調器の反射部位置リセット装置の制御部504は、回折型光変調器を用いたディスプレイ装置において、スクリーンの有効画面区間(図5の520)には回折型光変調器の回折光が投射される時間に映像データ出力部505から光変調器駆動回路506へ映像データが出力されるようにし、ブランクタイム区間(図5の510、530)には光変調器駆動回路506をオフさせた後にリセット駆動回路507にリセット制御信号を出力する。
【0044】
ここで、図5を参照すると、有効画面区間520と、第1ブランクタイム区間510および第2ブランクタイム区間530が示されている。すなわち、図5を参照すると、一つのフレーム映像は、ユーザに見せようとする映像情報を出力する有効画面区間520と、有効画面区間520の出力前後に有効画面区間520の両端から構成されている第1および第2ブランクタイム区間(blank time area)510および530とを含んでいるが、制御部504は、第1または第2ブランクタイム区間510または530で所定のリセット電圧が回折型光変調器に印加されるようにリセット制御信号をリセット駆動回路507に出力する。
【0045】
ここで、第1または第2ブランクタイム区間510または530は、水平方向に一つのピクセルがスキャニングされる時間であってもよく、複数のピクセルがスキャニングされる時間であってもよい。応用に応じて調整が可能である。
【0046】
図6の時間タイミング図を参照すると、制御部504は、有効画面区間520には映像データ出力部505と光変調器駆動回路506にオン(on)データ同期化信号を提供し、映像データ出力部505から光変調器駆動回路506へ映像データが出力されるようにする。そして、制御部504は、ブランクタイム区間510、530には映像データ出力部505と光変調器駆動回路506にオフ(off)データ同期化信号を提供し、映像データ出力部505から光変調器駆動回路506へ映像データが出力されないようにし、リセット駆動回路507にオンリセット同期化信号およびリセット制御信号を出力する。
【0047】
一方、リセット駆動回路507は、リセット制御信号が入力されると、光変調器駆動回路506がオフされるブランクタイム区間510、530に回折型光変調器の上部反射部(一つのエレメント130aを例とすれば150a)と下部反射部123にメモリ503からリセット電圧値を読み取ってきて、それによるリセット電圧を上部反射部(一つのエレメント130aを例とすれば150a)と下部反射部123に印加してリセット動作を行う。ここで、リセット駆動回路507が出力するリセット電圧は、回折型光変調器の上部反射部150a〜150nを初期化させる値であり、その値が0ではない。
【0048】
このようにリセット駆動回路507によって回折型光変調器がリセットされると、印加電圧対変位曲線が図3Aに示すように初期化された値からさらに始まることにより、予想される変位曲線から大きく外れない地点で有効画面区間の間に制御を始まることになり、所望の変位を得るための印加電圧値をほぼ近似的に得ることができる。その結果、回折型光変調器において上部反射部の位置に対する制御可能性が増加する。
【0049】
一方、メモリ503に格納されているリセット電圧値は、予め一定値が指定されて格納されることもできるが、光変調器駆動回路506を用いて、メモリ503に格納されたサンプル映像データによる駆動電圧を回折型光変調器に提供した後、回折型光変調器から出射される回折光の光強度をフォトセンサ550によって測定し、それによりエレメント別リセット電圧算出部560でエレメント別にリセット電圧を算出することもできる。
【0050】
すなわち、制御部504は、第1または第2ブンラクタイム区間510、530の開始時間に光変調器駆動回路506へサンプル映像データによる駆動電圧を出力するようにサンプル電圧出力制御信号を伝送する。
【0051】
すると、光変調器駆動回路506は、メモリ503に格納されているサンプル映像データを読み取ってそれによる駆動電圧を回折型光変調器に印加する。
【0052】
そして、フォトセンサ550は、各ピクセルに対応するそれぞれのエレメントから出射されるエレメント別回折光の光強度を検出してエレメント別リセット電圧算出部560に出力する。
【0053】
この際、メモリ503には、既にサンプル映像データによる駆動電圧が回折型光変調器に印加されるときに測定されるものと予想される予想光強度が格納されているが、エレメント別リセット電圧算出部560は、メモリ503に格納された、それぞれのエレメントからサンプル映像データによる駆動電圧が印加されるときに出射されるものと予想される予想エレメント別光強度と測定エレメント別光強度とを比較し、エレメントリセット電圧を算出してメモリ503に格納する。
【0054】
すなわち、図7を参照すると、特定の基準電圧が印加されるときにそれによる変位が発生するが、上部反射部150aを持つエレメントの場合にサンプル映像データによる駆動電圧が印加されると、150a'の位置を示すものと予想されるが、実際150a"の位置を示す場合がある。上部反射部150aと下部反射部123との段差1aが(入射光の波長をλにした場合)λ/4であれば、このような変位によって決定された回折光の光強度は予想される光強度より少なくなる。したがって、図面符号150a"に移動した上部反射部150aへ移動させるためには、このような変位がないときよりさらに大きい逆電圧を上部反射部150aおよび下部反射部123に印加しなければならない。
【0055】
図7を参照すると、上部反射部150bを持つエレメントの場合にサンプル映像データによる駆動電圧が印加されると、150b"の位置を示すものと予想されるが、実際150b'の位置を示す場合のようにより少し移動する場合にも同様の説明が可能である。よって、上部反射部150bと下部反射部123との段差1bが(入射光の波長をλとした場合)λ/4であれば、このような変位によって決定された回折光の光強度は予想される光強度より大きくなる。したがって、図面符号150b'に移動した上部反射部を図面符号150bに移動させるためには、このような変位がないときよりさらに小さい逆電圧を上部反射部150bおよび下部反射部123に印加しなければならない。
【0056】
このようにエレメント別リセット電圧算出部560は、メモリ503に格納された、それぞれのエレメントにサンプル映像データによる駆動電圧が印加されるときに出射されるものと予想される予想エレメント別光強度と測定エレメント別光強度とを比較し、エレメントリセット電圧を算出してメモリ503に格納する。
【0057】
一方、ここでは、回折型光変調器から出射される回折光を用いて上部反射部の異常変位を測定したが、上部反射部と下部反射部に充填されたキャパシタンス量を測定して異常変位を決定することができる。
【0058】
図4Bは本発明の好適な他の実施例に係る回折型光変調器の反射部位置リセット装置の構成図である。図4Aと比較したとき、下部反射部123を、上部反射部150aを移動させるための基準電極として使用するのではなく、上部反射部150aから上側に位置しており、リセット駆動回路507にその端子が連結されている別途の基準電極部570を備えていることにその特徴がある。このような基準電極部570は、透明電極ITOなどが使用できる。このような本発明の他の実施例に係る回折型光変調器の反射部位置リセット装置は、図4Aに示すように、上部反射部150aと下部反射部123にリセット電圧を印加するのではなく、上部反射部150aと基準電極部570にリセット電圧を印加する点において差異があり、他の構成と動作は同一である。
【0059】
図8は本発明の好適な別の実施例に係る回折型光変調器の反射部位置リセット装置の構成図である。
【0060】
図8を参照すると、本発明の好適な別の実施例に係る回折型光変調器の反射部位置リセット装置は、映像入力部501、映像ピボット部502、メモリ503、制御部504、映像データ出力部505、光変調器駆動回路506、およびリセット駆動回路507'を含んでいる。
【0061】
ここで、映像入力部501は、外部から映像データの入力を受け、同時に垂直同期信号と水平同期信号の入力を受ける。
【0062】
映像ピボット部502は、横方向に整列されている映像データを縦方向に変換するデータトランスポーズを行い、横方向に入力された映像データを縦方向の映像データに変換してメモリ503に格納する。
【0063】
メモリ503には、映像ピボット部502によってトランスポーズされた映像データが格納されており、リセット電圧が格納されている。
【0064】
映像データ出力部505は、メモリ503に格納された映像データを順次読み取って出力する。
【0065】
光変調器駆動回路506は、映像データ出力部505から出力される映像データに応じて回折型光変調器を駆動し、入射する入射光を変調することにより、映像情報を持っている回折光を形成する。
【0066】
映像データ出力部505は、スキャニング時間の間には映像ピボット部502によってデータトランスポーズされ、メモリ503に格納された映像データを一番目の列から最後目の列まで順次読み取って出力する。
【0067】
一方、制御部504は、回折型光変調器を用いたディスプレイ装置において、スクリーンの有効画面区間(図5の520)には回折型光変調器の回折光が投射される時間に映像データ出力部505から光変調器駆動回路506へ映像データが出力されるようにし、ブランクタイム区間(図5の510、530)には光変調器駆動回路506をオフさせた後、リセット駆動回路507'にリセット制御信号を出力する。
【0068】
図6の時間タイミング図を参照すると、制御部504は、有効画面区間520には映像データ出力部505と光変調器駆動回路506にオンデータ同期化信号を提供し、映像データ出力部505から光変調器駆動回路506へ映像データが出力されるようにする。そして、制御部504は、ブランクタイム区間510、530には映像データ出力部505と光変調器駆動回路506へオフデータ同期化信号を提供し、映像データ出力部505から光変調器駆動回路506へ映像データが出力されないようにし、リセット駆動回路507'にオンリセット同期化信号およびリセット制御信号を出力して、リセット駆動回路507'が回折型光変調器をリセットするようにする。
【0069】
すると、リセット駆動回路507'は、光変調器駆動回路506がオフされるブランクタイム領域区間510、530に回折型光変調器の上部電極層(一つのエレメント130aを例とすれば143a、143a')と下部電極層141a、141a'にリセット電圧を印加してリセット動作を行う。ここで、リセット駆動回路507'が出力するリセット電圧は、図3Aの回折型光変調器のヒステリシス曲線においてA線とB線とが一致する最小電圧を意味し、その値が0ではない。
【0070】
このようにリセット駆動回路507'によって回折型光変調器がリセットされると、印加電圧対変位曲線が図3Aに示すように初期化された値からさらに始まることにより、予想される変位曲線から大きく外れていない時点で有効画面区間の間に制御を始まることになり、所望する変位を得るための印加電圧値をほぼ近似的に得ることができる。その結果、回折型光変調器において上部反射部の位置に対する制御可能性が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】従来の技術に係るオープンホール基盤の回折型光変調器を示す斜視図である。
【図2】従来の技術に係るオープンホール基盤の回折型光変調器を示す平面図である。
【図3A】一般な圧電材料を用いたアクチュエータのヒステリシス特性を示すグラフである。
【図3B】一般な圧電材料を用いたアクチュエータのヒステリシス特性を示すグラフである。
【図4A】本発明の好適な一実施例に係る回折型光変調器の反射部位置リセット装置の構成図である。
【図4B】本発明の他の実施例に係る回折型光変調器の反射部位置リセット装置の構成図である。
【図5】本発明に用いられるスクリーンにおける有効画面区間とブランクタイム区間を示す図である。
【図6】図4Aおよび図4Bの制御部が映像データ出力部、光変調器駆動回路、およびリセット駆動回路に提供する同期化信号に対するタイミング図である。
【図7】図4Aおよび図4Bの回折型光変調器にサンプル映像データによる駆動電圧が印加される場合に発生する上部反射部の変位を説明するための図である。
【図8】本発明の別の実施例に係る回折型光変調器の反射部位置リセット装置の構成図である。
【符号の説明】
【0072】
501 映像入力部
502 映像ピボット部
503 メモリ
504 制御部
505 映像データ出力部
506 光変調器駆動回路
507、507'リセット駆動回路
510、530 ブランクタイム区間
520 有効画面区間
550 フォトセンサ
560 エレメント別リセット電圧算出部
570 基準電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折型光変調器で生成された回折光を処理して連続的な映像を生成するディスプレイシステムに使用される前記回折型光変調器において、
前記ディスプレイシステムに位置する前記回折型光変調器から出射される回折光が前記ディスプレイシステムのスクリーン上のブランクタイム区間にあるとき、リセット制御信号を出力する制御部と、
前記制御部からリセット制御信号が印加されると、前記回折型光変調器を初期化するリセット駆動回路とを含んでなることを特徴とする、回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項2】
前記回折型光変調器は、
基板と、
前記基板によって支持されており、中間部分は前記基板から離隔して空間を確保しており、前記基板に配向する表面が反射面として形成されて入射光を反射し、少なくとも一つのオープンホールが形成されて入射光を通過させるように構成されている少なくとも一つの第1反射部と、
前記基板と前記第1反射部との間に前記第1反射部から離隔して空間を確保するように位置し、前記第1反射部の前記オープンホールを通過して入射する光を反射させる反射表面を持っている第2反射部と、
該当するそれぞれの前記第1反射部の中間部分を前記基板に対して遠くまたは近くなるように動かし、前記第1反射部と前記第2反射部の反射光によって形成される回折光の光量を変化させる駆動手段とを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項3】
前記リセット駆動回路は、
前記第1反射部と前記第2反射部に逆電圧を印加して前記回折型光変調器を初期化することを特徴とする、請求項2に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項4】
前記回折型光変調器は、前記第1反射部から離隔している基準電極部をさらに含み、
前記リセット駆動回路は、前記第1反射部と前記基準電極部に逆電圧を印加して前記回折型光変調器を初期化することを特徴とする、請求項2に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項5】
前記基準電極部は、前記回折型光変調器の光経路上に位置し、透明電極で形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項6】
前記回折型光変調器から出射される光量を測定する光検出部と、
前記光検出部で測定した光強度と、サンプル映像データによる駆動電圧印加の際に予想される光強度とを比較し、逆電圧を算出するリセット電圧算出部とをさらに含み、
前記制御部は、特定の時間に前記回折型光変調器にサンプル映像データによる駆動電圧を印加し、前記リセット電圧算出部が当該時間にリセット電圧を算出して出力するようにすることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項7】
前記光検出部はフォトセンサであることを特徴とする、請求項6に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項8】
前記第1反射部と前記第2反射部のキャパシタンス量を測定するキャパシタンス測定部と、
前記キャパシタンス測定部で測定したキャパシタンス量を用いて逆電圧を算出するリセット電圧算出部とをさらに含んでなることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項9】
前記リセット駆動回路は、
前記駆動手段にリセット電圧を印加して前記回折型光変調器を初期化することを特徴とする、請求項2に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項10】
外部から入力される映像データを受け取る映像入力部と、
前記映像入力部から入力された映像データを格納するメモリと、
前記メモリから第2スキャン時間領域で入力された映像データの一番目の列のデータから最後目の列のデータまで順次読み取って出力する映像データ出力部と、
前記映像データ出力部から出力される映像データによる駆動信号を前記回折型光変調器に提供する光変調器駆動回路とをさらに含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項11】
前記映像入力部に入力された横方向に整列されている映像データを縦方向に変換するデータトランスポーズを行い、横方向に入力された映像データを縦方向の映像データに変換して、前記メモリに格納する映像ピボット部をさらに含んでなることを特徴とする、請求項10に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項12】
前記第2スキャン時間領域は有効画面区間であることを特徴とする、請求項10に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。
【請求項13】
第1スキャン時間領域はブランクタイム区間であることを特徴とする、請求項1に記載の回折型光変調器の上部反射部位置リセット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−58969(P2008−58969A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220960(P2007−220960)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】