説明

回路パターン形成方法および回路パターン形成装置

【課題】基材上に回路パターンを形成する際に断線や短絡等の問題が生じず、薄膜で均一な厚さの回路パターンを形成することができる回路パターン形成装置および回路パターン形成方法を提供する。
【解決手段】基材1に液状のドット12を隙間17を置いて形成する。次に、液状のドット12の間に液状のドットをさらに形成する。これにより液状の回路パターンを形成する。その後、定着工程で回路パターンを固化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、電気機器、コンピューター、通信機器等に用いられる回路基板の回路パターンを形成する回路パターン形成方法および回路パターン形成装置に関する。特に基材上に回路パターン形成用の溶液を吐出して回路を形成する回路パターン形成方法および回路パターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器や通信機器、コンピューター等に設けられる回路基板には、LSI等の半導体や各種電子部品等が実装される。回路基板には多くの種類があり、セラミックを基材とするもの、ガラス繊維などの補強材とエポキシ樹脂などの合成樹脂との複合材を基材として用いるもの、ポリエステル樹脂やアラミド樹脂等の可撓性フィルムを基材とするものなどがある。また、回路基板は、かつては片面基板や両面基板がほとんどであったが、装置の小型化、高密度化に従って、回路パターンを積層したものが用いられるようになってきており、現在では8層や16層などの多層回路基板が主流となっている。また、回路パターンも電子回路の高速化に伴ってパターンの微細化および高密度化が急速に進んでいる。
【0003】
特許文献1には導電性溶液と絶縁性溶液をインクジェット法によって、直接、基材表面上に吐出して導電パターンと絶縁パターンを描画し、回路を形成する方法が開示されている。この方法によれば、サブトラクテイブ法が不要となり、工程数が少なくなり、メッキ工程やエッチング工程において発生する廃液処理もなくなると言うメリットがある。
【0004】
この特許文献1では、インクジェット印刷機により吐出されるインク液滴のうち、隣接する液滴同士が互いに重なるように回路パターンを形成している。これは、隣接する液滴同士が重なっていないと、液滴が互いに接触していない部分が断線の原因となるからである。しかし、この方法では、基材上に吐出した液滴が既に基材上にある液滴と接触することにより、接触した液滴が合体して液だまりが発生することがある。
【0005】
ここで、液だまりについて説明する。
図18は配線パターン200において、液だまり201,203が発生した状態を示したものである。液だまり201,203は、基材上に吐出した液滴が既に基材上にある液滴と接触することにより、吐出された液滴が、既に基材上に吐出されている液滴の方へ引き寄せられることによって発生する。さらにこの液だまりが拡がると、203に示すようにそれ203自身が他のパターンと接触して短絡を起こしてしまうことがある。また、吐出ヘッドの吐出誤差などによって、吐出された液滴が、基材上に既に吐出されている液滴に対して接触しない位置に着弾してしまった場合には、その液滴は周囲のパターンから離間した状態で定着されることとなる。この場合、図18の202に示す部分のように断線が発生する。
【0006】
そこで、特許文献2に開示されているような、上記液だまりを防止して断線や短絡等の問題が生じないようにするための提案が成されている。この方法では、図19(a)および(b)に示すように、まず、第1吐出工程として、ヘッド1002から液滴1003を吐出して基材1001上にドット1006を形成する。このドット1006は、基材1001上に着弾した後の液滴の直径1004よりも大きいピッチ1005で形成されている。なお、ここで言うピッチとは、隣接するドットの各々の中心の間の距離を意味する。
【0007】
その後、乾燥工程を施し、第1吐出工程にて形成したドット1006を定着させた後、第2吐出工程としてドット1007を形成する。ドット1007の形成字には、液滴1003を第1吐出工程における吐出位置と異なる位置に第1吐出工程と同じピッチ1005で吐出する。そして再度乾燥工程を施し、第2吐出工程にて形成したドット1007を定着させた後、第3吐出工程としてドット1008を形成する。このドット1008の形成時には、液滴1003を第1吐出工程におけるピッチ1005より小さいピッチで吐出する。
【0008】
このように特許文献2では、基材上に間隔をおいてドットを形成し、それらのドットを乾燥工程にて定着させてから、各ドット間に液滴を吐出するようになっている。このため、着弾した液滴が基材上に既に存在するドットの方へ引き寄せられることはなくなり、液だまりを防止することができる。さらに、特許文献2では、図19(b)に示すように、形成される回路の厚膜化を図ることで断線や短絡等の問題が生じないようにしている。
【0009】
【特許文献1】特開平07−245467号公報
【特許文献2】特開2003−133691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、各吐出工程後に乾燥工程を施し、かつ厚膜化を図るようになっているため、第3吐出工程後の回路パターンの厚さが不均一な状態になり、表面の平坦性が損なわれるという問題がある。このため、多層回路基板を形成する際に必須とされる薄膜で均一な厚さおよび平坦性を有する回路パターンを形成するには不向きである。これに対し、近年では回路基板は高密度化してきており、薄膜を多層構造で形成できる回路パターンの要求が高まりつつあるが、特許文献2の技術では、この要求に十分に対応し難いものとなっている。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題に着目してなされたものであり、基材上に回路パターンを形成する際に断線や短絡等の問題が生じず、薄膜で均一な厚さの回路パターンを形成することができる回路パターン形成装置および回路パターン形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
本発明の第1の形態は、液体吐出手段を用いて回路パターン形成用の液体を基材に吐出することにより、前記基材上に液状のドットを隙間を置いて形成する第1の吐出工程と、前記液体吐出手段から前記液体を吐出させ、前記基材上の前記液状のドット間に、液状のドットをさらに形成することで液状の回路パターンを形成する第2の吐出工程と、前記液状の回路パターンを固化させる定着工程と、を備えたことを特徴とする回路パターン形成方法である。
【0013】
本発明の第2の形態は、回路パターン形成用の液体を液体吐出手段によって基材に吐出することにより、前記基材上に液状のドットを複数形成することで回路パターンを形成する回路パターン形成装置であって、前記液体吐出手段を前記基材に対して相対移動させる移動手段と、前記液体吐出手段と基材との相対位置を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された液体吐出手段と基材との相対位置および回路パターンを形成するデータに基づいて、前記基材に液状のドットを隙間を置いて形成させた後に、前記基材に形成された液状のドット間に液状のドットをさらに形成して液状の回路パターンを形成させる制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明は、基材上に形成されるドットの間に隙間が形成されるよう液滴を吐出させた後、基材上に形成されたドットが固化する前に、連結すべきドットとドットの隙間に液滴を吐出させるようにする。これにより、基材上に略均一な厚さを有する平坦な薄膜を容易に形成することができる。このため、本発明は、断線や短絡等の問題および誤導通などの発生を軽減することができ、近年の回路基板に要請されている高密度化および多層化にも対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の実施形態を、下記の順序に従って説明する。
1.回路パターン形成装置の構成
2.制御系の構成
3.回路形成位置の制御
4.回路パターン形成に使用される材料
4−1.基材
4−2.導電性溶液と絶縁性溶液
5.回路パターン形成方法
【0016】
[1.回路パターン形成装置の構成]
まず本発明の実施形態として、基材上に絶縁パターンと導電パターンからなる回路パターンを形成するために使用される回路パターン形成装置を説明する。
【0017】
図1に示す本実施形態で用いる回路パターン形成装置は、主走査方向(X方向)に沿って往復移動するキャリッジ109と、回路パターンを形成するための基材1が搭載されるステージ103などを有している。このキャリッジには、基材1上に絶縁性溶液を吐出する液体吐出ヘッド2と、導電性溶液を噴射するための液体吐出ヘッド3と、両液体吐出ヘッド2、3に絶縁性溶液、導電性溶液をそれぞれ供給するための2つのタンク(不図示)と、が搭載されている。
【0018】
図2は、液体吐出ヘッド2のオリフィス面に配置されているノズル列を模式的に示す図である。図2に示すように、液体吐出ヘッド2には比較的大きい液滴を吐出する大ノズル20と、大ノズル20が等間隔に並ぶ大ノズル列30aが配置されている。なお、図2には記載していないが、液体吐出ヘッド3も液体吐出ヘッド2と同様な大ノズル20と大ノズル列30aが配置されている。
【0019】
また、図1において、キャリッジ109を往路方向への移動(以下、往走査と称す)および復路方向への移動(以下、復走査と称す)させる動力源としてCRリニアモータ(キャリッジリニアモータ)101が設けられる。さらに、基材1をY方向へと移動させる基材移動手段として、ステージ103およびLFリニアモータ(ラインフィードリニアモータ)102が設けられている。LFリニアモータ102は定盤108に確固に固定されており、ステージ103が移動しても基材1を載せるステージ103の上面を、定盤108の上面に対して常に平行に保ち得るようになっている。一方、CRリニアモータ101は定盤108の上にベース104および105を介して高い剛性を保つよう固定されている。
【0020】
また、キャリッジ109は、定盤面の上面、すなわちステージ表面に対し、主走査方向(X方向)に沿って往復移動する。CRリニアモータ101およびLFリニアモータ102にはそれぞれリニアエンコーダ111、112および原点センサ106、107が内蔵されており、それらの出力は、各リニアモータの駆動時時のサーボ制御入力として利用される。さらに、キャリッジ側のリニアエンコーダ111は溶液の吐出タイミングの生成にも利用される。
また、本実施形態における回路パターン形成装置には、ホスト装置として不図示のパーソナルコンピュータが接続されている。このパーソナルコンピュータから送られた図形情報(回路パターン情報)に基づいて、回路パターン形成装置は、液体吐出ヘッド2,3の移動、各溶液の吐出、およびステージ103の移動などを行い、基材1の表面に回路パターンを形成する。
【0021】
なお、基材1を支持しているステージ103の下側には、加熱ヒータ(不図示)が埋め込まれており、この加熱ヒータで基材上に描画された回路パターンを加熱することにより、回路パターンを定着させるようになっている。本実施形態の場合、回路パターンの定着が目的であるため、加熱ヒータの設定温度は40〜70℃としている。このようにステージ103内に加熱ヒータを埋め込むという簡易的な構成でも充分に基材1上の溶液を定着させることが可能である。なお、定着を完了すれば回路基板として機能上の問題が生じることはないが、さらに導体パターンの導電性の向上と、絶縁パターンの絶縁性向上を望むのであれば、別途用意されたベーク装置により焼成すると良い。
【0022】
[2.制御系の構成]
次に、本実施形態の回路パターン形成装置の制御系について説明する。
図3は、本実施形態の回路パターン形成装置における制御系の全体構成を概略的に示すブロック図である。機構部46は、液体吐出ヘッド2を搭載したキャリッジ109を主走査方向に移動させるためのCRリニアモータ101、基材1を搭載したステージ103を搬送するLFリニアモータ102などを備えている。
【0023】
主制御部44は、液体吐出ヘッドおよび機構部46等をはじめとする本実施形態における回路パターン形成装置全体を制御する中枢部分である。この主制御部44は、CPUおよび動作プログラムなどを格納してなるROM、種々のデータの書き込みおよび読み出しを可能とする作業用RAMなどを備えている。
【0024】
主制御部44は、機構部46に対し制御信号を出力してキャリッジ109の移動やステージ103の移動などの機構制御を行う。さらに、主制御部44は、ヘッド制御部42、メモリ制御部50および描画位置信号発生部41などとの間でも信号の授受を行い、液体吐出ヘッド2の駆動を制御する。I/F部47は、不図示のパソコンと回路パターン形成装置とのインターフェース部分でパソコンからコマンドおよび回路パターンの描画データ(回路パターン形成データ)の受信を行う。メモリ制御部50は、I/F部47から入力されたコマンドを主制御部44に転送すると共に、主制御部44の制御の下で描画データをバッファメモリ45に書き込むようアドレス信号と書き込みタイミング信号を生成する。
【0025】
さらに、主制御部44は、I/F部47から入力されたコマンドを解析し、その解析結果により描画速度や描画解像度などの描画条件を設定し、その描画条件に基づき機構部46および描画位置信号発生部41を制御して、所定の条件で描画を実行させる。
また、不図示のパソコンから受信した描画データは、一時メモリであるバッファメモリ45に記憶されたあと、主制御部44から指令を受けたメモリ制御部50の制御により、ヘッド制御部42に転送される。
【0026】
ヘッド制御部42は、描画位置信号発生部41から出力される描画位置信号に同期して、バッファメモリ45から転送された描画データに従って液体吐出ヘッドの各ノズルを駆動し、描画を行う。
【0027】
[3.描画位置の制御]
次に、本実施形態の回路パターン形成装置における描画位置の制御方法について説明する。
図4(a)および(b)は、リニアエンコーダ111の出力信号を示す図である。図中、位相が90°ずれた2つの信号AおよびBは、リニアエンコーダ111より生成された信号である。このうち、図4(a)は、キャリッジ109が往路方向動作時に生成される信号AおよびBを示し、図4(b)は、キャリッジ109が復路方向動作時に生成される信号AおよびBを示している。図4(a)に示すように、信号Aの位相が信号Bの位相より90°進んでいるときは、キャリッジ109が往路方向に移動している状態にある。このため、この状態においては、各信号の立ち上がりおよび立ち下がりエッジに応じてカウントアップを行う。また、図4(b)に示すように、位相が90°遅れているときは、キャリッジ109が復路方向に移動しているため、カウントダウンする。
【0028】
このようにして、リニアエンコーダ111の出力信号をカウントすることによりキャリッジ109の移動位置を検出することができる。すなわち、図3中の位置検出部40は、リニアエンコーダ111からのA、B2つの信号と、原点センサ106から出力される原点信号Zとを受けて、キャリッジ109の現在の主走査方向における絶対位置、つまり原点からの位置を検出する。
【0029】
図5は、液体吐出ヘッド位置検出部40の回路の一例を示す図である。この検出部40は、リニアエンコーダ111からの信号A、Bと原点センサ106からの原点信号Zおよびロジックの同期を取るためのクロック(CLK)に基づいて、カウント信号(PLS)とアップ/ダウン信号、すなわち移動方向信号(DIR)を生成する。図5中の201〜204で構成される回路がAの立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングを検出する部分である。Aの立ち上がりタイミングに同期したパルスは回路203から出力され、立ち下がりタイミングに同期したパルスは回路204から出力される。
同様にして、図5中の205〜208で構成される回路がBの立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングを検出する部分である。Bの立ち上がりタイミングに同期したパルスが回路205から出力され、立ち下がりタイミングに同期したパルスが回路208から出力される。
【0030】
図6は、図5に示す回路における各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
図6において、最初Aの位相がBの位相より90°進んでいるので、移動方向信号DIRは、往方向を表すローレベルの信号となる。さらに、図6の途中から位相が逆に90°遅れているので、移動方向信号DIRは、復方向を表すハイレベルの信号になっていることが分かる。また、カウント信号PLSは、A、B2つの信号の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングでパルスが出力される。
【0031】
原点信号Z、カウント信号PLS、移動方向信号DIRは、図5に示すアップダウンカウンタ210のリセット(CLR)、クロック(CK)、アップダウン(UP/DW)の各々の入力端子に接続されている。従って、主制御部44の初期化命令によって、キャリッジ109が原点位置に移動すると、原点信号Zがアクティブになって、カウント値がクリア(カウント値=0)される。そして、それ以降はカウント値=0を原点とし、キャリッジ109の主走査方向における絶対位置をカウント値として描画位置信号発生部41に出力する。
【0032】
図7は、描画位置信号発生部41のブロック図である。図5の液体吐出ヘッド位置検出部40で生成されたカウント値は、RAM300のアドレス入力端子にセレクタ301経由で接続されている。このRAM300には、主制御部44内のCPUから直接リード/ライト(R/W)ができるように、アドレスバスはセレクタ301のもう一方の入力を経由してRAM300のアドレス入力端子(AB端子)に接続されている。さらに、主制御部44内のCPUのデータバスはRAM300のデータバス端子(DB端子)に接続され、同じくCPUのアクセス信号はRAM300のR/W端子に入力されている。
【0033】
主制御部44からRAM300にデータを書き込む場合には、セレクタ301をCPU側に接続する。また、描画動作中はカウント値がRAM300のアドレス入力となるようにセレクタ301を切り替え、キャリッジ109の移動に従ってキャリッジ109の位置に対応したアドレスのRAMデータがヘッド制御部42に出力される。
【0034】
ここで、RAM300に予め主制御部44のCPUから描画データを書き込んでおくと、キャリッジ109が移動して描画位置に来るたびにヘッド制御部42に描画位置パルスが出力される。ヘッド制御部42はこの描画位置パルスを受けると液体吐出ヘッド2を駆動して溶液を基材1に吐出する。
【0035】
図8は、描画位置パルスの出力タイミングを表すタイミングチャートである。
図8において、RAM300のアドレスおよびデータ(RAM)は、RAM300のアドレスとデータを表しており、RAM300に書き込まれている往復2ビットのデータがどのように書き込まれているかを表している。また、図8中の描画位置パルスは、ヘッド制御部42に描画タイミングを与えるパルス信号でキャリッジ109が移動すると、図8に示すように往路方向、復路方向で対応するビットが選択されて別々のパルス出力を得ることができる。
【0036】
ところで、図8に示す往路方向のパルスと復路方向のパルスとでは、それぞれの出力タイミングが一致していない。これは、液体吐出ヘッドが走査方向における同一位置で液滴を吐出したとしても、その時の液体吐出ヘッドの移動方向が往路方向であるか復路方向であるかによって、基材上への着弾位置が異なるためである。すなわち、液体吐出ヘッドの往路方向への移動時に吐出された液滴は、基材上に着弾するまでに吐出位置から往路方向へとずれ、逆に復路方向への移動時に吐出された液滴は、復路方向へとずれることとなる。このため、往路方向への移動時と復路方向への移動時とで液滴の吐出位置が異なるように描画位置パルスのタイミングが設定されている。
【0037】
なお、図8は、液体吐出ヘッドが往路と復路のいずれにおいても描画を行う場合を行う双方向描画を例にとり、その描画位置パルスのタイミングを説明したが、往路方向のみでしか描画を行わない一方向描画の場合には、復路のビットを全て0に設定すればよい。この場合、復路方向にキャリッジが移動しているときには描画位置パルスは出力されない。また図8では、便宜上RAM300のデータと描画位置パルスは、往復1セットのみしか記述していない。しかし、本実施形態のように液体吐出ヘッド2が複数個(m個)ある場合、あるいは液体吐出ヘッド2にノズル列が複数列(n列)ある場合には、RAM300のデータビット数を増やしてmセット分またはn列分のデータを発生させるようにすれば良い。
【0038】
[4.使用される材料]
[4−1.基材]
本発明に使用される基材1は、フィルム状、シート状、板状などの平面形状を有するものが使用可能であるが、これに限らず、インクジェット方式による回路パターンの形成が可能であれば曲面形状を有するものでも使用可能である。また、基材1は、回路パターン層を形成する際に、焼成する工程を含むため、耐熱性に優れた材質によって構成されたものであることが特に好ましい。例えば、基材1としては、アルミナ、シリカなどを焼結させたセラミックス、あるいはポリエステルフィルムや芳香族ポリアミドフイルム、ポリイミドフイルムのような熱可塑性樹脂フィルムなどが適用可能である。また、ガラス繊維やポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維による織物や不織布に熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂を含浸硬化させシート状としたものによって構成することも可能である。さらに、通常の回路基板に用いられるガラスエポキシ積層板のような板状のもの、あるいは浸透性のある基材、紙や布のようなものを用いることも可能である。なお、本発明において使用する基材は、親水性のある基材が望ましい。特に基材上に着弾した後述する溶液がその溶液の表面張力により濡れ広がらない程度に表面処理されているものが好ましい。また撥水性のある基材であっても、上記同様の表面処理を施してあるものであれば良い。
【0039】
[4−2.導電性溶液および絶縁性溶液]
以下、本実施形態において使用する導電性溶液および絶縁性溶液について説明する。
本実施形態で使用される導電性溶液は、水、導電性材料を含有するものである。本発明に係る導電性溶液の調製用に使用される水としては、通常、工業用水を原料とし、脱イオン交換処理によって、陽イオン、陰イオンを除去したものが好ましい。導電性溶液中における水の量は、その割合、または導電性溶液に要求される特性に応じて広い範囲で決定されるが、一般には、導電性溶液に対して、10〜98重量%の範囲であり、特に好ましいのは40〜90重量%の範囲である。
【0040】
導電性溶液に使用される導電性材料としては、例えばレーザーアブレーションを用いて作製された平均粒子径が1〜100nm以下の金属超微粒子である。金属超微粒子としては、ITO(インジウム・スズ酸化物)、SnO2(酸化スズ)等が挙げられる。
【0041】
本発明で使用される絶縁性溶液は、水、絶縁性材料及び第2の成分を含む。第2の成分は、アルカリ性水溶液であり、導電性溶液に使用される導電性材料と接触すると、pH差における凝集沈澱反応により接触領域で界面凝集が起こり、導電性溶液と絶縁性溶液とのにじみを抑え、各々の溶液を互いに分離して存在させる。また、この第2の成分は、後処理の熱硬化処理により揮発してしまう物質である。絶縁性溶液に使用される水は、前述の導電性溶液に用いられる水の例が挙げられる。
【0042】
第2の成分として使用される物質として、任意のポリマーが挙げられる。任意のポリマーの例としては、アニオン性水溶性ポリマー、揮発性アミン等を用いることができる。第2の成分の具体例として、アニオン性水溶性ポリマーとしては、アンモニウム塩が、揮発性アミンとしては、水酸化アンモニウムがそれぞれ挙げられる。また、絶縁性材料としては、非イオン性ポリマーが挙げられる。非イオン性ポリマーの具体例としては、エポキシ樹脂等を主成分とするソルダーレジストを用いることができる。
【0043】
[5.回路パターン形成方法]
(第1の実施形態)
図9(a)ないし(h)は、本発明の第1の実施形態における回路パターン形成方法を説明するための概略工程図である。この第1の実施例では、図2に示したような液体吐出ヘッド2を使用する。また、導体用ノズル列30aでは、基材に形成された隣接する2つの大ドット12と、吐出された大液滴10が互いに接触する必要があるので、図10に示したような2つの大ドット12の間隔より大きな直径の大液滴10を吐出し得るようになっている。
【0044】
まず第1吐出工程を説明する。
図9(a)に示すように、液体吐出ヘッド2を描画開始位置である基材1の一端(図中、左端)へ移動させる。そして、図9(a)および(b)に示すように、液体吐出ヘッド2を主走査における往方向(図中、左から右)へと移動させながら、大ノズル20から大液滴10を吐出して基材1上に着弾させる。この第1吐出工程では、図9(c)に示すように、基材1上に着弾して形成される大ドット12が互いに重ならないように液滴10の吐出が行われる。このようにして基材1上に形成されたそれぞれの大ドット12は、絶縁性溶液の表面張力により濡れ広がることなく基材1上の所定の位置に形成される。このため、第1吐出工程によって基板1上に吐出された隣接する大ドット12と12の間には、図9(c)に示すように、隙間17が形成される。
【0045】
次に第2吐出工程を説明する。
前述の第1吐出工程により基材1上に液状の大ドット12を形成した後、直ちに液体吐出ヘッド2を描画開始位置(基材1の左端)へ復動させる。そして、第2吐出工程として図9(d)および(e)に示すように再び液体吐出ヘッド2を往路方向へと移動させながら、基材1上に隣接して形成された大ドット12と12の隙間17に絶縁性溶液の大液滴10を吐出する。この吐出は、基材1上の大ドット12が液体からゲル状に変化する前、すなわち固化(ゲル化)する前に行う。このため、図9(f)に示すように大ドット12と絶縁性溶液の大液滴10とが接触すると、両者は互いに引き寄せ合って混ざり合う。その結果、図9(g)のように大液滴10と2つの大ドット12が合体し、平坦で略均一な線状パターン15が形成される。そして、加熱ヒータにより基材1を加熱し定着させることにより、図9(h)のように、平坦かつ均一な薄膜からなる絶縁パターン16が形成される。
【0046】
なお、この第2吐出工程では、2つの大ドット12と大液滴10がお互いに接触する必要があるので、図10に示したような2つの基材上に形成された大ドット12の隙間17より大液滴10の直径Dが大きいことが必要となる。
【0047】
以上のようにして絶縁パターンの形成を行った後、液体吐出ヘッド3から導電性溶液を吐出し、同様に導電パターンを形成する。この導電パターンの形成も絶縁パターンと同様に図9(a)ないし(h)に示す手順で行うことにより、平坦かつ均一な薄い膜厚の導電パターンを形成することができる。
【0048】
なお、図9では大液滴10の吐出を図面の左端から開始するものとしたが、逆方向(図面右端)から吐出を開始しても良い。さらに、液体吐出ヘッド2と基材1との相対移動を一往復させる間に、、往路において第1吐出工程を行い、復路において第2吐出工程を行っても良い。往復吐出により高スピードでパターンの形成が可能になる。
ここで、本明細書における隙間の定義について述べる。図11は基材1上に形成されたドットの配置を上から見た模式図である。図11(a)は、大ドット12が互いに重ならない間隔で各ドットが平行に並ぶように形成されている。この大ドット12が形成されたところ以外、すなわちドットに囲まれた部分およびドットに挟まれた部分が隙間17である。この隙間17を第1吐出工程で使用した液滴と同じサイズの大液滴10で埋めた例が図11(b)である。間隔Aのような隙間に大液滴10が着弾すると、既に基板1上に着弾している隣接する大ドット12との接触が生じ、前述した図9(f)のように液の混ざり合いを起こす。また図11(c)の間隔Bのように、隣接する2つの大ドット12との間隔が狭い部分を埋める場合には、第1吐出工程で使用した液滴より小さいサイズの小液滴11を吐出しても良い。
【0049】
なお、図示は省略するが、第2層目以降の絶縁パターンと導電パターンの形成も、第1層目のパターン形成と同様の方法で行えば良い。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
図12(a)ないし(j)は、この第2の実施形態における回路パターン形成方法を説明するための概略工程図である。
【0051】
この第2の実施形態では、絶縁パターンと導電パターンを同時に形成するものとなっている。
まず第1吐出工程を説明する。
図12(a)に示すように、液体吐出ヘッド2、3を描画開始位置である基材1の一端(図中、左端)へ移動させる。そして、図12(a)および(b)に示すように、液体吐出ヘッド2、3を主走査における往方向(図中、左から右)へと移動させながら大液滴10aを吐出し、基材1上に着弾させる。この際、基板1上に形成された大ドット12aが、図12(c)に示すように、大ドット12a同士で互いに重ならないように液滴10aの吐出が行われる。このようにして基材1上に形成されたそれぞれの大ドット12aは、導電性溶液の表面張力により濡れ広がることなく基材1上の所定の位置に形成される。このため、第1吐出工程によって基板1上に吐出された隣接する大ドット12と12の間には、図9(c)に示すように、隙間17aが形成される。
【0052】
続いて図12(d)に示すように、上記絶縁性溶液の大液滴10bを、液体吐出ヘッド3の大ノズル列30aの大ノズル20から吐出して基材1上に着弾させる。さらに、図12(d)に示すように液体吐出ヘッド2,3を往方向へ移動しながら、大液滴10bを吐出する。この絶縁性溶液の液滴10bの吐出も、図12(e)に示すように、基材1上に着弾した後に形成される大ドット12bが互いに重ならないように行う。従って隣接する液滴10bと10bとの間には隙間17bが形成される。
【0053】
次に第2吐出工程を説明する。
前述の第1吐出工程により基材1上に液状の大ドット12a,12bを形成した後、直ちに液体吐出ヘッド2,3を描画開始位置(基材1の左端)へ復動させる。そして、基材1上の大ドット12a,12bが液体からゲル状に変化する前、すなわち固化(ゲル化)する前に、図12(e)に示すように、第1吐出工程で基材1上に形成された大ドット12a、12aとの隙間17aに導電性溶液の大液滴10aを吐出する。さらに、絶縁性溶液の大液滴10bも同様に、液体吐出ヘッド2,3を往方向へと移動させながら、基材1上に形成されている大ドット12bと12bとの隙間17bに吐出する(図12(f)および(g)参照)。
【0054】
このとき、第1吐出工程で形成された大ドット12a,12bはゲル化する前の状態であるため、大ドット12aと導電性溶液の大液滴10aとが接触すると、図12(g)のように大ドット12aと大液滴10bとが接触し、互いに引き寄せ合って混ざり合う。その結果、大液滴10aと2つの大ドット12aが合体した線状のパターン15aが形成される(図12(h)参照)。また、絶縁性溶液の大液滴10bも図12(h)に示すように、大ドット12bに大液滴10bが接触し、それらが互いに引き寄せあって混ざり合い、合体する。これにより、平坦で略均一な厚さを有する薄膜の線状パターン15bが形成される(図12(i)参照)。そして、加熱ヒータにより基材1を加熱し定着させることにより、図12(j)のように、平坦かつ均一な薄膜からなる導電パターン16aと絶縁パターン16bとが形成される。
【0055】
なお、図12(a)ないし(j)では単層基板を形成する場合について説明したが、このような導電パターン16aや絶縁パターン16bを積層して多層回路基板を形成することもできる。
【0056】
また、導電パターン、絶縁パターンに限らず、半導体材料を始め、液体で吐出することができる材料を用いたパターン形成方法においては、あらゆるものに適用可能であることは言うまでも無い。
【0057】
図13は、多層回路基板として3層の回路基板を形成する工程を示す図である。
まず、1層目を形成する場合には、図13(a)に示すように、絶縁性溶液と導電性溶液を用いて、前述の第1吐出工程および第2吐出工程のような、大ドットと大ドットとの隙間に大液滴を吐出して各パターンを形成し、略均一な薄い膜厚を得る。その後加熱処理を施して図13(b)に示すように1層目を定着させる。
【0058】
次に、1層目の上に2層目を形成する。これは、図13(c)に示すように、定着させた1層目の上に、1層目と同様に第1吐出工程および第2吐出工程を行い、絶縁パターンおよび導電パターンを形成する。その後、加熱処理により2層目を定着させる(図13(d)参照)。
【0059】
そして、3層目の形成は、1層目および2層目と同様の方法によってパターン形成を行い(図13(e)参照)、加熱処理を施して図13(f)のように3層目を定着させる。
このようにして3層の回路基板を形成した場合においても、各層が略均一な薄い膜厚を得ることができた。
【0060】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
図14は、この第3の実施形態に使用する液体吐出ヘッドのオリフィス面に配置されているノズル列を模式的に示す底面図、図15(a)ないし(f)は同実施形態における回路パターン形成方法を説明するための概略工程図である。
この第3の実施形態では、第1吐出工程から第2吐出工程までの工程間時間を短縮するようになっている。このため、使用する溶液(絶縁性溶液および導電性溶液)が、液体からゲル状への変化時間が短い特性を有する場合にも、第1吐出工程で形成された大ドットと第2吐出工程で吐出された大液滴とを混ざり合わせることが可能になる。
【0061】
図14に示すように、液体吐出ヘッド4には大きい液滴を吐出する大ノズル20と、大ノズル20が等間隔に並ぶ大ノズル列30bと30cの2列が配置されている。また、ここでは図示しないが、この第3の実施形態においても、上記各実施形態と同様に、絶縁性溶液を吐出する液体吐出ヘッド4と、これと同様の構成を有する導電性溶液吐出用の液体吐出ヘッドとが並設されている。
【0062】
以下、図15(a)ないし(f)に基づきこの第3の実施形態における回路パターンの形成工程を説明する。なお、ここでは絶縁性溶液を吐出する場合を例に採り説明するが、導電性溶液を吐出する場合も同様の方法を適用可能である。
定着時間(液体からゲル状に変化するまでの時間)が長い特性を有する絶縁性溶液を使用する場合には、上記第1、第2の実施形態のように、液体吐出ヘッドを一旦、描画開始位置(基材1の左端)へ移動してから第2吐出工程を行えば良い。しかし、この方法を、定着時間が短い特性を有する溶液に適用した場合、第1吐出工程から第2吐出工程までの間に、第1吐出工程にて吐出された大ドットが固化してしまい、両工程において吐出された液滴が混ざり合わない可能性もある。そこで、この第3の実施形態においては、第1吐出工程と第2吐出工程とを液体吐出ヘッド4の同一走査内で行うことにより、第1吐出工程で形成されたドットが固化する前に、第2吐出工程における液滴を吐出するようにしている。
【0063】
すなわち、まず、図15(a)に示すように、液体吐出ヘッド4を描画開始位置である基材1の左端(図中、左側)へ移動させる。そして、図15(a)および(b)に示すように、液体吐出ヘッド4を往方向(図中、左から右)へと移動させながら、大液滴10を吐出し、基材1上に着弾させる。この際、基材1上に形成された隣接する大ドット12A、12Bが互いに重ならないように吐出する。この吐出工程が第1吐出工程となる。
【0064】
次に、同一の走査において、基材1上に絶縁性溶液の大ドット12Bを形成すると、直ちに走査方向後方に位置するノズル列30cのノズル20から絶縁性溶液の大液滴を吐出し(図15(c))、両大ドット12A、12Bの間に着弾させる(図15(d))。これが、この第3の実施形態における第2の吐出工程となる。つまり、この実施形態では、前述の第1、第2の実施形態のように、液体吐出ヘッド4を吐出開始位置(基材1の左端)へと移動させてから第2吐出工程を行うのではなく、図15(c)に示すように、第1吐出工程を終えた位置から直ちに第2吐出工程を開始する。このため、大ドット12A、12Bが形成されてから殆ど時間差なく大液滴10を着弾させることができる。従って、先に着弾した大ドット12A、12Bが固化し易いものであったとしても、それらのドットが固化(ゲル化)する前に大液滴10を着弾させることができる。そして、図15(d)に示すように大ドット12A、12Bに絶縁性溶液の大液滴10が接触すると、その接触部分で互いに引き寄せ合って混ざり合い(図15(e)参照)、その後、大液滴10と2つの大ドット12が合体する。これにより、平坦で略均一な厚さを有する薄膜の線状パターン15を形成することができる(図15(f)参照)。
【0065】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。
図16は、この第4の実施形態に使用する液体吐出ヘッドのオリフィス面に配置されているノズル列を模式的に示す底面図、図17(a)ないし(f)は同実施形態における回路パターン形成方法を説明するための概略工程図である。
図17に示すように、本発明の第4の実施形態では、第1吐出工程にて基材1上に形成した大ドット12Aと12Bとの隙間に、第2吐出工程で小さな液滴を吐出する。これにより、大ドット12Aと12Bとの隙間が小さい場合にも、液滴が溢れ広がるのを防止しつつ、大ドット12A、12Bと小液滴11とが混ざり合わせることが可能になる。
【0066】
この第4実施形態では、図17に示すような液体吐出ヘッド5を使用する。図17に示す液体吐出ヘッド5には、大きい液滴を吐出する大ノズル20を等間隔に配列した大ノズル列30dと、小さい液滴を吐出する小ノズル21を等間隔に配列した小ノズル列31とが並設されている。また、ここでは図示しないが、この第4の実施形態においても、上記各実施形態と同様に、絶縁性溶液を吐出する液体吐出ヘッド5と、これと同様の構成を有する導電性溶液吐出用の液体吐出ヘッドとが並設されている。
【0067】
以下、図16に基づきこの第4の実施形態における回路パターンの形成工程を説明する。
本発明の第4の実施形態である第1吐出工程と第2吐出工程で使用する液滴の大きさを変更する方法を説明する。なお、第4の実施形態でも絶縁性溶液を使用する場合を例に採り説明するが、導電性溶液を使用した場合でも同様の方法によって実施可能である。
【0068】
まず、図17(a)に示すように、液体吐出ヘッド5を描画開始位置である基材1の左端(図面上左側)へ移動し、絶縁性溶液の大液滴10を液体吐出ヘッド5の大ノズル列30bの大ノズル20から吐出して基材1上に着弾させる。第1吐出工程として図17(b)に示すように、液体吐出ヘッド5を走査方向(図中、左から右)へと移動しながら、大液滴10を吐出し、基材1上に着弾させる。この際、基材1上に形成された隣接する大ドット12A、12Bが互いに重ならないように吐出する。この吐出工程が第1吐出工程となる。
【0069】
次に第2吐出工程を説明する。
この第4の実施形態においても、上記第3の実施形態と同様に、液体吐出ヘッド5を描画開始位置(基材1の左端)へと移動せずに第2吐出工程を行う。すなわち、図17(c)のように、第1吐出工程において大ドット12Aと12Bとが形成されたとき、両ドットの隙間に絶縁性溶液の小液滴11を小ノズル列31の小ノズル21から吐出する。この小液滴11は大ドット12A、12Bと接触し(図17(d)参照)、その接触部分で大ドット12A、12Bと液滴11とは互いに引き寄せ合って混ざり合い(図17(e)参照)、その後、小液滴11と2つの大ドット12とが合体する。これにより、平坦で略均一な厚さを有する薄膜の線状パターン15が形成される(図17(f)参照)。
【0070】
このように、この第4の実施形態では、第1吐出工程で形成された大ドット12Aと12Bとの間に形成される狭小な隙間17に合わせて、第2吐出工程で吐出される液滴を小さくした。このため、この液滴と大ドット12A,12Bとの合体によって液滴が外側へと溢れ広がるのを防止することができ、より正確に回路パターンを形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態で用いる回路パターン形成装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に用いる液体吐出ヘッドのオリフィス面に配置されているノズル列を模式的に示す底面図である。
【図3】本発明の実施形態における回路パターン形成装置に設けられる制御系の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態におけるリニアエンコーダの出力信号を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における液体吐出ヘッド位置検出部の回路の一例を示すブロック図である。
【図6】図5に示す回路における各部の出力信号を示すタイミングチャートである。
【図7】図3に示す描画位置信号発生部のブロック図である。
【図8】本発明の実施形態における描画位置パルスの出力タイミングを表すタイミングチャートである。
【図9】本発明の第1の実施形態における回路パターン形成方法を説明するための概略工程図である。
【図10】本発明の第1の実施形態における基板上に形成される隣接するドットの隙間とその隙間に吐出される液滴の直径との関係を示す図である。
【図11】図11は基材1上に形成されたドットの配置を上から見た模式図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における回路パターン形成方法を説明するための概略工程図である。
【図13】本発明の第2の実施形態により多層回路基板として3層の回路基板を形成する方法を説明するための概略工程図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に用いる液体吐出ヘッドのオリフィス面に配置されているノズル列を模式的に示す底面図である。
【図15】本発明の第3の実施形態における回路パターン形成方法を説明するための概略工程図である。
【図16】本発明の第4の実施形態に用いる液体吐出ヘッドのオリフィス面に配置されているノズル列を模式的に示す底面図である。
【図17】本発明の第3の実施形態における回路パターン形成方法を説明するための概略工程図である。
【図18】従来の回路パターン形成において、液だまり、断線および短絡が発生した状態を示す図である。
【図19】従来の回路パターン形成方法を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 基材
2,3,4,5 液体吐出ヘッド
10,10a,10b 大液滴
11 小液滴
12,12a,12b 大ドット
15,15a,15b 線状のドットパターン
16,16a,16b,19 定着済みの導電パターン
17 隙間
18 定着済みの絶縁パターン
20 大ノズル
21 小ノズル
30a,30b,30c,30d 大ノズル列
31 小ノズル列
45 バッファメモリ
46 機構部
50 メモリ制御部
101 CRリニアモータ
102 LFリニアモータ
103 ステージ
106,107 原点センサ
109 キャリッジ
111,112 リニアエンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出手段を用いて回路パターン形成用の液体を基材に吐出することにより、前記基材上に液状のドットを隙間を置いて形成する第1の吐出工程と、
前記液体吐出手段から前記液体を吐出させ、前記基材上の前記液状のドット間に、液状のドットをさらに形成することで液状の回路パターンを形成する第2の吐出工程と、
前記液状の回路パターンを固化させる定着工程と、
を備えたことを特徴とする回路パターン形成方法。
【請求項2】
前記基材上に形成された回路パターン上に、さらに前記第1の吐出工程、前記第2の吐出工程および前記定着工程を繰り返すことで、積層構造の回路パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の回路パターン形成方法。
【請求項3】
前記第2の吐出工程で吐出される液滴の直径は、前記第1の吐出工程で前記基材に形成された連結すべきドットの隙間より大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の回路パターン形成方法。
【請求項4】
前記回路パターン形成用の液体は、導電パターンを形成する導電性微粒子を含有する導電性溶液と、絶縁パターンを形成する絶縁性溶液と、を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の回路パターン形成方法。
【請求項5】
回路パターン形成用の液体を液体吐出手段によって基材に吐出することにより、前記基材上に液状のドットを複数形成することで回路パターンを形成する回路パターン形成装置であって、
前記液体吐出手段を前記基材に対して相対移動させる移動手段と、
前記液体吐出手段と基材との相対位置を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された液体吐出手段と基材との相対位置および回路パターンを形成するデータに基づいて、前記基材に液状のドットを隙間を置いて形成させた後に、前記基材に形成された液状のドット間に液状のドットをさらに形成して液状の回路パターンを形成させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする回路パターン形成装置。
【請求項6】
前記液体吐出手段は、前記基材に対して相対的に走査しながら液体を吐出し、
前記制御手段は、前記基材に液状のドットを隙間を置いて形成させる際の前記液体吐出手段の走査方向と、連結すべき液状のドットの隙間を埋めるように前記液体吐出手段から液滴を吐出させる際の前記液体吐出手段の走査方向と、が同一方向であることを特徴とする請求項5に記載の回路パターン形成装置。
【請求項7】
前記液体吐出手段は、前記基材に対して相対的に往復走査しながら液体を吐出し、
前記制御手段は、前記基材に液状のドットを隙間を置いて形成させる際の前記液体吐出手段の走査と、連結すべき液状のドットの隙間を埋めるように液滴を吐出させる際の前記液体吐出手段の走査と、が往復走査にて行われる請求項5または6に記載の回路パターン形成装置。
【請求項8】
前記液体吐出手段は、液滴を吐出するノズルを前記走査方向と交差する方向に沿って複数配列してなるノズル列の複数を前記走査方向に沿って順次並設してなり、
前記基材に液状のドットを隙間を置いて形成させる際の前記液体吐出手段の走査と、連結すべき液状のドットの隙間を埋めるように液滴を吐出させる際の前記液体吐出手段の走査と、が同一の走査であることを特徴とする請求項6に記載の回路パターン形成装置。
【請求項9】
前記ノズル列は、大液滴を吐出する大ノズルからなる大ノズル列と、前記大液滴より小さい径の小液滴を吐出する小ノズルからなる小ノズル列と、を有し、
前記制御手段は、前記大ノズルから前記基材に対し大液滴を吐出させて液状の大ドットを隙間を置いて形成させ、前記小ノズルから連結すべき液状の大ドットの隙間を埋めるように小液滴を吐出させることを特徴とする請求項7または8に記載の回路パターン形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−36209(P2007−36209A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166456(P2006−166456)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】