説明

回路ユニット、回路ユニットを有するバイアス回路、並びに第1及び第2の回路ユニットを有する差動増幅回路

ヘテロ接合バイポーラトランジスタ及びロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタを備える回路ユニット(CU)。前記ロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタのソース(S)又はドレイン(D)が、前記ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ(C)又はエミッタ(E)に電気的に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路ユニット、回路ユニットを有するバイアス回路、並びに第1及び第2の回路ユニットを有する差動増幅回路に関連する。
【背景技術】
【0002】
差動増幅回路は、差動信号を増幅することが一般的に知られている。差動増幅回路は、
演算増幅器、またはその他、コンパレータ、ギルバートセル型混合器もしくは発振器などの回路に用いられる。差動増幅回路は、2個の入力信号間の差を増幅するよう動作する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の目的は、高い電圧利得を得ることが容易で、小さな所要空間のみで足りる回路ユニット及び差動増幅回路を提供することである。また、この発明の目的は、電流供給量を小さくすることが容易なバイアス回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの目的は、独立請求項に記載する特徴によって実現される。観点及びいくつかの実施形態は従属請求項の記載による。
【0005】
第1の観点に係る本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ及びロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタを備える回路ユニットであることを特徴とする。前記ロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタのソース又はドレインは、前記ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ又はエミッタに電気的に結合される。
【0006】
ロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタすなわちpHEMTもヘテロ接合バイポーラトランジスタすなわちHBTも、GaAs技術において形成することができ、ロングゲートpHEMTは、従来のpHEMTに比べてチャネルが著しく長いことを特徴とする。HBTは高い相互コンダクタンスを有し、ロングゲートpHEMTは、たとえば能動負荷として構成されたとき高いインピーダンスを有する。これにより高利得が容易に得られる。さらに、ロングゲートpHEMTのゲートが長いことにより、このような回路ユニットを有する回路装置の電力要求は非常に小さくなる。
【0007】
この回路ユニットのHBTはnpn−HBTであること、及び、ロングゲートpHEMTはデプレッションモードロングゲートpHEMTであることが望ましい。デプレッションモードのトランジスタは、ゲート−ソース間電圧がトランジスタの負のしきい電圧より負であるときは、ソースとドレインとの間を導通させない。デプレッションモードのトランジスタは、しきい電圧より上、すなわち、より負でないか、0であるか、あるいは正のゲート−ソース間電圧のとき、ソースとドレインとの間を導通させる。エンハンスメントモードのトランジスタは、ゲート−ソース間電圧が正のしきい電圧より正であるときは、ソースとドレインとの間を導通させ、ゲート−ソース間電圧がより下のとき、ソースとドレインとの間を導通させない。
【0008】
ロングゲートpHEMTは、ゲート電極とソース電極との間の電圧が0Vとなるよう、そのゲートをそのソースに電気的に短絡ないしバイパスすることにより、能動負荷として構成することができる。この構成で、ロングゲートpHEMTは、特にAC回路装置において、従来の抵抗器に代えて用いてもよい。このような能動負荷としてのロングゲートpHEMTには、とりわけ同一のプロセスで生成される従来の抵抗器に比べ、チップ上での空間的な所要量が著しく少ないという利点がある。ロングゲートpHEMTのソースは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタに電気的に結合されることが望ましい。
【0009】
第1の観点に係るひとつの実施形態では、前記ロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタは、0.5μm以上のチャネル長を備える。前記ロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタは、チャネル長に対するチャネル幅のチャネルサイズ比が0.01から0.4で、チャネル長が0.5μm以上、とりわけ0.5μmと1000μmとの間であってもよい。電流は、ソースとドレインとの間のチャネルを流れる。これは、高にインピーダンス、及び、小さな電流供給量という利点を有する。
【0010】
第1の観点に係るさらなる実施形態では、前記ロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタは、チャネル幅Wより有意に大きなチャネル長Lのチャネルを備える。チャネル長Lは40μmであってもよく、チャネル幅Wは3μmであってもよい。チャネルは、ゲート電極の下方に位置する領域である。電流は、ソースとドレインとの間のチャネルを通じて流れる。
【0011】
上述したチャネルの大きさを有するFETあるいはpHEMTはロングゲートのFETあるいはpHEMTであり、同一のチップ面積で実現される従来のFETに比べ、比較的低い電流値の電流源として用いられ得るものである。
【0012】
第1の観点に係るさらなる実施形態では、前記回路ユニットは、GaAs BiFET又はBiHEMTの技術を用いたシングルチップ上に集積される。特に、しばしばBiFETあるいはBiHEMTと呼ばれ、HBTとFETもしくはpHEMTデバイスとを同一のGaAs基板上に含む、FET−HBTの重ね合わせ及び併合の仕組みは、低電流の回路にするために用いることができる。BiFETを用いれば、npnバイポーラトランジスタとロングゲートpHEMTとを結合して、HBTのみまたはpHEMTのみのものより良好な電気的性能を得ることが可能となる。
【0013】
第2の観点に係る本発明は、第1の観点に係る回路ユニットを有するバイアス回路であることを特徴とする。前記回路ユニットの前記HBTは第6の制御素子として識別され、前記回路ユニットの前記ロングゲートpHEMTは第7の制御素子として識別される。前記バイアス回路は、もうひとつのHBTを備える第5の制御素子を有する。前記第6の制御素子のベース及びコレクタは電気的に短絡される。前記第5の制御素子のベースは、前記第6の制御素子の前記ベースに電気的に結合される。これにより、バイアス回路が非常に小さな電流を供給するよう動作することが容易になる。これと同時に、このようなバイアス回路は、単一の基板上での空間的な所要量が非常に少ない。前記ベースと前記コレクタとの間の電圧は0Vとなるように、前記第6の制御素子の前記ベース及び前記コレクタは電気的に短絡される。前記第5の制御素子は、npn型HBTであってもよい。
【0014】
「第5の制御素子」、「第6の制御素子」及び「第7の制御素子」という用語は、前記バイアス回路の特定の制御素子の名称のみを表すものであって、前記バイアス回路がまた第1乃至第4の制御素子を備えていることを含意するものではない。これらの用語は、請求の範囲及び明細書における前記バイアス回路の前記制御素子を区別する用途にのみ資するものである。
【0015】
第2の観点に係るひとつの実施形態では、前記第7の制御素子のゲート及びソースは電気的に短絡され又はバイパスされる。前記第7の制御素子の前記ゲート及び前記ソースは、ゲート−ソース間電圧が0Vとなるように、電気的に短絡され又はバイパスされる。これにより前記回路ユニットの前記ロングゲートpHEMTは能動負荷として構成される。この構成においては、前記第7の制御素子は、高インピーダンスを有する電流源となる。
【0016】
第3の観点に係る本発明は、そのHBTが第1の制御素子として識別され、そのロングゲートpHEMTが第2の制御素子として識別される、前記第1の観点に係る第1の回路ユニットを備える差動増幅回路であることを特徴とする。前記差動増幅回路はまた、前記第1の観点に係る第2の回路ユニットを備え、そのHBTが第3の制御素子として識別され、そのロングゲートpHEMTが第4の制御素子として識別される。前記第1の制御素子及び前記第3の制御素子は、接続点を経由して電気的に結合され、前記第2の制御素子及び前記第4の制御素子は、さらなる接続点を経由して電気的に結合される。さらに、前記差動増幅回路は、基準電位と前記接続点との間に電気的に配置される電流シンクを備える。この電流シンクは、前記第1の回路ユニット及び/又は前記第2の回路ユニットを通じる所定の電流を要求するよう動作する。
【0017】
このような差動増幅回路は、電力の所要量が小さい。前記第1及び第3の制御素子が、前記差動増幅回路の差動対となり、前記第1の制御素子のベースには第1の所定の信号が供給され、前記第3の制御素子のベースには第2の所定の信号が供給されてもよい。前記差動増幅回路は、対称的に非対称的にも動作させ得る。対称動作の場合、前記差動増幅回路の出力電圧は、前記第1及び第2の制御素子の間の第1の共通な電気的結合と、前記第3及び第4の制御素子の間の第2の共通な電気的結合と、の間で決定されてもよい。非対称動作の場合、出力電圧は、前記第1の共通な電気的結合と前記基準電位との間、あるいは前記第2の共通な電気的結合と前記基準電位との間で決定されてもよい。前記電流シンクは電流源、とりわけ定電流源であってもよい。
【0018】
前記さらなる接続点に電気的に結合され、前記第1の回路ユニット及び前記第2の回路ユニットに所定の電源電圧を供給するように作動する電圧供給源が、前記差動増幅回路に結合されてもよい。
【0019】
「第1の制御素子」、「第2の制御素子」、「第3の制御素子」及び「第4の制御素子」という用語は、前記差動増幅回路の特定の制御素子の名称のみを表すものである。これらの用語は、請求の範囲及び明細書における前記バイアス回路の前記制御素子を区別する用途にのみ資するものである。
【0020】
第3の観点に係るひとつの実施形態では、前記電流シンクは前記第2の観点に係るバイアス回路を備える。前記バイアス回路の前記第5の制御素子は前記基準電位と前記接続点との間に電気的に配置され、前記バイアス回路の前記回路ユニットは前記基準電位と前記さらなる接続点との間に電気的に配置される。前記第7の制御素子のドレインは前記さらなる接続点に電気的に結合されてもよく、前記第6の制御素子のエミッタは前記基準電位に電気的に結合されてもよい。前記バイアス回路は、非常に小さな電流をあらかじめ定めることに寄与する。
【0021】
第3の観点に係るさらなる実施形態では、前記電流シンクは、ゲート及びソースが電気的に短絡されたデプレッションモードのロングゲートpHEMTである第8の制御素子を備える。前記第8の制御素子は、前記基準電位と前記接続点との間に電気的に配置される。前記第8の制御素子のドレインは前記接続点に電気的に結合されてもよく、前記第8の制御素子のソースは前記基準電位に電気的に結合されてもよい。この構成において、前記第8の制御素子は、高インピーダンスの電流源となる。
【0022】
「第8の制御素子」という用語は、この制御素子の名称のみを表すものである。これらの用語は、この制御素子を前記差動増幅回路の他の制御素子から区別する用途にのみ資するものである。
【0023】
第3の観点に係るさらなる実施形態では、前記第2の制御素子のゲート及び前記第4の制御素子のゲートは、前記第7の制御素子の、電気的に短絡されたゲート及びソースに電気的に結合される。この結果、前記第7の制御素子のゲート−ドレイン電圧は前記第2及び第4の制御素子のゲート−ドレイン電圧と基本的に同一となる。前記第7の制御素子は、基準電流生成器となる。前記第2の制御素子のゲート−ソース電圧及び前記第4の制御素子のゲート−ソース電圧は、それぞれ、第1の分岐電流及び第2の分岐電流に依存する。第1及び第2の分岐電流の和は、前記電流シンクにより要求される電流となる。これには、追加的な回路を要せずに電流を安定的に設定する、という利点がある。
【0024】
前記第2及び第4の制御素子は、従来の抵抗器を前記第2及び第4の制御素子で置き換えることができるよう、能動負荷として構成される。これは、必要とされるチップ面積を削減すると同時に電圧利得を増大させることに寄与する。
【0025】
第3の観点に係るさらなる実施形態では、前記第2の制御素子のゲート及び前記第4の制御素子のゲートは互いに電気的に結合される。前記第2の制御素子又は前記第4の制御素子のいずれかのゲート及びソースは電気的に短絡又はバイパスされる。前記第2の制御素子又は前記第4の制御素子のいずれかのゲート及びソースは、ゲート−ソース間電圧が0Vとなるよう、電気的に短絡又はバイパスされる。これにより、前記差動増幅回路をシングルエンドないし非対称の増幅器として動作させることが容易になる。
【0026】
第3の観点に係るさらなる実施形態では、前記第2の制御素子のゲート及びソースは電気的に短絡又はバイパスされ、前記第4の制御素子のゲート及びソースは電気的に短絡又はバイパスされる。前記第2の制御素子のゲート及びソースは、ゲート−ソース間電圧が0Vとなるよう、電気的に短絡又はバイパスされる。前記第4の制御素子のゲート及びソースは、ゲート−ソース間電圧が0Vとなるよう、電気的に短絡又はバイパスされる。これにより、前記第2の制御素子及び前記第4の制御素子を高インピーダンスの能動負荷として動作させることが容易になる。
【0027】
第3の観点に係るさらなる実施形態では、前記差動増幅回路はシングルチップ上に集積される。とりわけ、GaAs BiFET技術は、HBTとロングゲートpHEMTとを単一の基板上に集積することを可能とする。これには、高い相互コンダクタンスの値を有するものであるHBTと、高いインピーダンスを有するものであるロングゲートpHEMTとを結合するという利点がある。これは、前記差動増幅回路の電圧利得を増大させることに寄与し、同時に基板上における前記差動増幅回路の空間的な所要量を削減することに寄与する。シングルチップには、組込が容易で、コストとサイズの所要量がより少ない、という利点がある。
【0028】
さらに、前記差動増幅回路は、多くの問題が解消される演算増幅器として用いられてもよい。
−演算増幅器は、一定の閉ループ利得を実現するためにカスケード接続される段をより少なくする必要がある。
−カスケード接続される段がより少ない演算増幅器は、極がより少なく、従って安定性の問題がより少ないため、設計の複雑さがより少ない。
−たとえば電源レギュレータあるいは電力制御ループなど、DCから動作させることを要する場合は特に、段あたりの利得が高い演算増幅器は、電圧の余裕に係る問題がより少ない。
−カスケード接続される段がより少ない演算増幅器は、DCオフセットの問題に煩わされることがより少ない。
−カスケード接続される段がより少ない演算増幅器は、電流消費をより少なくすることができる。
−カスケード接続される段がより少ない演算増幅器は、より小さなレイアウト領域内に実装することができる。
−カスケード接続される段がより少ない演算増幅器は、発生する雑音がより少ない。
【0029】
1個以上の回路ユニットが特定の応用形態、たとえばインバータ、コンパレータ、ギルバートセル型の混合器あるいは発振器などの中で用いられれば、これらの利点をこの応用形態にももたらし得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】差動増幅回路の第1の実施形態
【図2】差動増幅回路の第2の実施形態
【図3a】第2の実施形態のシミュレーション結果
【図3b】第2の実施形態のシミュレーション結果
【図3c】第2の実施形態のシミュレーション結果
【図3d】第2の実施形態のシミュレーション結果
【図4】差動増幅回路の第3の実施形態
【図5】差動増幅回路の第4の実施形態
【図6a】第4の実施形態のシミュレーション結果
【図6b】第4の実施形態のシミュレーション結果
【図6c】第4の実施形態のシミュレーション結果
【図6d】第4の実施形態のシミュレーション結果
【図7】差動増幅回路の第5の実施形態
【図8a】第5の実施形態のシミュレーション結果
【図8b】第5の実施形態のシミュレーション結果
【図8c】第5の実施形態のシミュレーション結果
【図8d】第5の実施形態のシミュレーション結果
【図9a】さらなるシミュレーション結果
【図9b】さらなるシミュレーション結果
【図9c】さらなるシミュレーション結果
【図9d】さらなるシミュレーション結果
【図10】他の増幅回路
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本開示をさらに詳細に説明する。
異なる図面に現れる、同一のデザイン及び機能の構成要素は、同一の参照符号を付すことで特定している。
【0032】
図1は、差動増幅回路DAの第1の実施形態を描写している。差動増幅回路DAは、第1の回路ユニットCU1と、第2の回路ユニットCU2と、電流シンクCSとを備える。差動増幅回路DAには、所定の電源電圧VBを供給する電圧供給源と、第1の所定の電圧V1及び第2の所定の電圧V2を供給する第1の信号源及び第2の信号源とが結合される。第1の所定の電圧V1は、第1のDC電圧VDC1と第1のAC電圧VAC1とより構成される。第2の所定の電圧V2は、第2のDC電圧VDC2と第2のAC電圧VAC2とより構成される。いずれの所定の電圧V1、V2も、付加的にオフセット電圧VOFFSにより構成されていてもよく、これが、第1の回路ユニット及び第2の回路ユニットがたとえば正の電圧領域で動作するのに寄与する。
【0033】
第1の回路ユニットCU1は、第1の制御素子T1及び第2の制御素子T2を備える。第1の制御素子T1は、npn型ヘテロ接合バイポーラトランジスタすなわちnpn−HBTであり、第2の制御素子T2は、デプレッションモードロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタすなわちDモードロングゲートpHEMTである。
【0034】
pHEMTは、GaAsとAlGaAsなど、異なる禁制帯幅を有する物質間に、1個以上の注入を施したことによって、チャネル内が高い電子移動度を有する電界効果トランジスタである。
【0035】
第1の制御素子T1のコレクタCは、第1の接続点TP1を経由して、第2の制御素子T2のソースSに電気的に結合される。第2の制御素子T2のゲートG及びソースSは、ゲートGとソースSとの間の電圧が0Vとなるよう、電気的に短絡される。
【0036】
第1の制御素子T1のベースBは、第1の信号源に電気的に結合され、第1の所定の電圧V1の供給を受ける。
【0037】
第2の回路ユニットCU2は、第3の制御素子T3及び第4の制御素子T4を備える。第3の制御素子T3はnpn−HBTであり、第4の制御素子T4はDモードロングゲートpHEMTである。第3の制御素子T3のコレクタCは、第2の接続点TP2を経由して、第4の制御素子T4のソースSに電気的に結合される。第4の制御素子T4のゲートG及びソースSは電気的に短絡される。
【0038】
第2及び第4の制御素子T2、T4は、いずれも、能動負荷となる。
【0039】
対称な出力電圧VOUTは、第1の接続点TP1と第2の接続点TP2との間で決定され得る。
【0040】
第3の制御素子T3のベースBは、第2の信号源に電気的に結合され、第2の所定の電圧V2の供給を受ける。第2の所定の電圧V2は、第1の所定の電圧V1と反対の極性を備える。
【0041】
第1の制御素子T1のエミッタEと第3の制御素子T3のエミッタEとは、第3の接続点TP3を経由して互いに電気的に結合される。第3の接続点TP3は、接続点としても識別される。
【0042】
第2の制御素子T2のドレインDと第4の制御素子T4のドレインDとは、第4の接続点TP4を経由して互いに電気的に結合される。第4の接続点TP4は、さらなる接続点としても識別される。
【0043】
電流シンクCSは、第3の接続点TP3と基準電位GNDとの間に電気的に配置されている。電流シンクCSは、所定の電流Iを要求するよう動作するものであり、これは基本的には、具体的にはベース電流を無視すれば、第1の分岐電流I1と第2の分岐電流I2との和である。第1の分岐電流I1は、第1の回路ユニットCU1に対応付けられており、第2の分岐電流I2は、第2の回路ユニットCU2に対応付けられている。
【0044】
第4の接続点TP4は、所定のベース電圧VBの供給を受ける。差動増幅回路DAは、たとえば、GaAs BiFET技術プロセスを用いて形成されるシングルチップ上に集積される。GaAs BiFET技術は、GaAs HBT及びGaAs pHEMTを重ね合わせ及び併合する技術である。
【0045】
第2の制御素子T2及び第4の制御素子T4は、高インピーダンスを有する電流源となり、たとえば薄膜抵抗器のような従来の抵抗器に代わって用いられ得る。
【0046】
第2の実施形態(図2)において、電流シンクCSは、以後の説明において第8の制御素子T8として識別される、もうひとつの制御素子を備えていてもよい。第8の制御素子T8もまた、ゲートG及びソースSが電気的に短絡されたDモードロングゲートpHEMTであってもよい。第8の制御素子T8のドレインDは、第3の接続点TP3に電気的に結合され、第8の制御素子T8のソースSは、基準電位GNDに電気的に結合される。第8の制御素子T8は、高インピーダンスを有する電流源として動作し、所定の電流I、たとえば50μAを要求するよう動作する。
【0047】
ロングゲートpHEMTは、チャネル幅Wのチャネル長Lに対する所定のチャネルサイズ比W/Lを有し、たとえばW/L=0.4であるロングゲートpHEMTのチャネル長Lは0.5μm以上であってもよく、特に0.5から1000μmの間であってもよい。従来のpHEMTのチャネル長は約0.5μmである。
【0048】
図3aから3d、6aから6d及び8aから8dは、異なる増幅回路のシミュレーション結果の図を示す。この図は、本発明に係る差動増幅回路DAのシミュレーション結果、EモードpHEMT増幅回路のシミュレーション結果、及び、DモードpHEMT増幅回路のシミュレーション結果を示す。
【0049】
EモードpHEMT増幅回路は、第1及び第3の制御素子T1、T3としてエンハンスメントモードpHEMTを備えている点が、差動増幅回路DAとは異なる。DモードpHEMT増幅回路は、第1及び第3の制御素子T1、T3としてデプレッションモードpHEMTを備えている点が、差動増幅回路DAとは異なる。3個の増幅回路はすべて、第2及び第4の制御素子T2、T4としてロングゲートpHEMTを備えている。Dモード増幅回路及びEモード増幅回路は、pHEMTのみの回路ということになる。
【0050】
図3aから3dは、図2に従った構成の差動増幅回路DAのシミュレーション結果を示す。EモードpHEMT増幅回路及びDモードpHEMT増幅回路もまた、図2に示す構成に従って構成されており、差動増幅回路DAとの比較を可能とするため、差動増幅回路DAと同様な大きさとされている。
【0051】
図3aから3dにおける破線L1は差動増幅回路DAに対応付けられており、点線L2はDモードpHEMT増幅回路に対応付けられており、実線L3はEモードpHEMT増幅回路に対応付けられている。
【0052】
図3aにおける図は、差動電圧VDIFFに対する電流及び出力電圧VOUTを示す。特定の第1のAC電圧VAC1及び第2のAC電圧VAC2は0Vに設定されている。
【0053】
第1のDC電圧VDC1と第2のDC電圧VDC2との電圧差が、差動電圧VDIFFとなる。第1及び第2のDC電圧VDC1、VDC2は極性を有していてもよいものの、電気的には逆方向に結合されてもよく、特定の差動電圧VDIFFの半分の大きさを有していてもよい。第1及び第2のDC電圧VDC1、VDC2の値の所定の組み合わせが、特定の増幅回路の、対応する動作点を表す。
【0054】
図3aの左図は、差動電圧VDIFFに対する、第1の分岐電流I1、第2の分岐電流I2、及び電流Iを示す。差動電圧VDIFFの値0Vは、第1の分岐電流I1の値が基本的に第2の分岐電流I2の値に等しくなる動作点を表す。差動電圧VDIFFの値を0Vから正の値に増加させることにより特定の増幅回路の動作点を移動させると、第1の分岐電流I1の値が増大し、その一方で第2の分岐電流I2の値が減少する。差動電圧VDIFFの値を0Vから負の値に減少させることにより特定の増幅回路の動作点を移動させると、第1の分岐電流I1の値が減少し、その一方で第2の分岐電流I2の値が増大する。第1及び第2の分岐電流I1、I2の和は基本的に一定の電流値、たとえば50μAとなり、これが、特定の電流シンクCSにより要求される電流Iとなる(図3aの左図内の水平線をみよ)。EモードpHEMT増幅回路、DモードpHEMT増幅回路及び差動増幅回路DAについて、所定の第1及び第2のDC電圧VDC1、VDC2が同様であれば、第1及び第2の分岐電流I1、I2も同様な結果となる。
【0055】
図3aの右図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路の出力電圧VOUTを示す。特定の増幅回路の第2の接続点TP2と第1の接続点TP1との電圧差が、出力電圧VOUTとなる。出力電圧VOUTは、所定の差動電圧VDIFFにより表される特定の動作点に対応する。差動電圧VDIFFの値を0Vから正の値に増加させることにより特定の増幅回路の動作点を移動させると、第1の分岐電流I1の値が増大して、これと同時に第1の制御素子T1の電圧降下が減少し、その一方で第2の分岐電流I2の値が減少して、これと同時に第3の制御素子T3の電圧降下が増大する。この結果として、出力電圧VOUTの値が正の値へと増大する。その一方で、差動電圧VDIFFの値を0Vから負の値に減少させることにより特定の増幅回路の動作点を移動させると、第1の制御素子T1の電圧降下が増大し、その一方で第3の制御素子T3の電圧降下が減少し、結果として、出力電圧VOUTの値が負の値へと増大する。差動電圧VDIFFに対する特定の増幅回路の出力電圧VOUTの値は同様である。
【0056】
図3b及び3cにおけるシミュレーション結果は、特定の増幅回路の小信号解析に関するものである。この場合において、特定の第1の制御素子T1のベースBに供給される第1の所定の電圧V1は、0Vではない値を有する第1のAC電圧VAC1により構成されている。さらに、特定の第3の制御素子T3のベースBは、0Vではない値を有する第2のAC電圧VAC2の値を、第2の所定の電圧V2によって供給される。周波数f及び所定の第1のAC電圧VAC1の値は、周波数及び所定の第2のAC電圧VAC2の値と同一である。周波数fは、たとえば1MHzに設定され、第1のAC電圧VAC1の尖頭値及び第2のAC電圧VAC2の尖頭値は、たとえば0.5Vに設定される。第1のAC電圧VAC1の向きは、第2のAC電圧VAC2の向きの反対である。結果として、特定の差動AC電圧の大きさは1Vとなる。
【0057】
図3bの左図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路の第1の制御素子T1及び第3の制御素子T3の相互コンダクタンスgmを表す。図3bの左図に描写されているように、差動増幅回路DAにはただ1個の破線L1が対応付けられており、EモードpHEMT増幅回路にはただ1個の点線L2が対応付けられており、DモードpHEMT増幅回路にはただ1個の実線L3が対応付けられている。すなわち、特定の増幅回路の第1及び第3の制御素子T1、T3の相互コンダクタンスgmは基本的に同一であるということである。第1の制御素子T1に対応付けられた相互コンダクタンスgmは、第1の所定の電圧V1に対する第1の分岐電流I1の比であり、第3の制御素子T3に対応付けられた相互コンダクタンスは、第2の所定の電圧V2に対する第2の分岐電流I2の比である。差動増幅回路DAの第1及び第3の制御素子T1、T3の相互コンダクタンスgmは、EモードpHEMT増幅回路のEモードpHEMT及びDモードpHEMT増幅回路のDモードpHEMTの相互コンダクタンスより著しく大きい。
【0058】
図3cは、差動電圧VDIFFに対する特定の増幅回路の第2の制御素子T2のインピーダンスZ及び第4の制御素子T4のインピーダンスZの対数表現を示す。特定の増幅回路の第2及び第4の制御素子T2、T4のインピーダンスZは基本的に同一である。図示するように、インピーダンスZの軌跡は所定の差動電圧VDIFFに依存する。EモードpHEMT増幅回路、DモードpHEMT増幅回路及び差動増幅回路DAのインピーダンスZの差は、特定の分岐電流が同じ差動電圧VDIFFに対して異なっていることに起因している。
【0059】
図3bの右図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路のAC電圧利得Aを表す。AC電圧利得Aは、所与の差動電圧VDIFFのもとでの特定の相互コンダクタンスgm及び特定のインピーダンスZの増倍度を表す。第1の差動電圧VD1と第2の差動電圧VD2との間の範囲の所定の差動電圧VDIFFは、この範囲におけるEモードpHEMT増幅回路及びDモードpHEMT増幅回路の電圧利得Aに比べて大きな差動増幅回路DAの電圧利得Aをもたらす。
【0060】
図3dの左図は、第1及び第2のAC電圧VAC1、VAC2の周波数fを対数表現したものに対する、AC電圧利得Aを表す。図3dに描写したシミュレーション結果については、差動電圧VDIFFの値は一定値たとえば0Vに設定されている。図3dの左図に示す電圧利得Aは、図3bの右図に示す0Vの差動電圧VDIFFに対する、電圧利得Aに対応する。図示したように、たとえば23dBである差動増幅回路DAのAC電圧利得Aは、EモードpHEMT増幅回路の電圧利得A及びDモードpHEMT増幅回路のAC電圧利得Aに比べて、広範囲の周波数fにわたって著しく高い。差動増幅回路DAのカットオフ周波数f_3dbは、たとえば100MHzである。
【0061】
図3dの右図は、第1及び第2のAC電圧VAC1、VAC2の周波数fを対数表現したものに対する、特定の増幅回路の位相応答φを示す。位相応答φは、すべての増幅回路について同様であり、特定のカットオフ周波数f_3dbに至るまで0°に近い。差動増幅回路DAのカットオフ周波数f_3dbは、これもまた100MHzであってもよい。
【0062】
図4は、バイアス回路CMを備える、電流シンクCSを有した第3の実施形態の差動増幅回路DAを描写する。バイアス回路CMは、第5の制御素子T5、第6の制御素子T6、及び、第7の制御素子T7を備える。第5及び第6の制御素子T5、T6は、いずれもnpn−HBTである。第6の制御素子T6のベースB及びコレクタCは電気的に短絡され、第5の制御素子T5のベースBは、第6の制御素子T6のベースBに電気的に結合される。第5の制御素子T5のコレクタCは第3の接続点TP3に電気的に結合され、第5の制御素子T5のエミッタEは基準電位GNDに電気的に結合される。
【0063】
第7の制御素子T7はデプレッションモードロングゲートpHEMTであり、そのドレインDに電源電圧VBを供給される。第7の制御素子T7のゲートG及びソースSは電気的に短絡され、こうすることにより能動負荷として構成される。第7の制御素子T7のソースSは第6の制御素子T6のコレクタCに電気的に結合される。第6の制御素子T6のエミッタEは基準電位GNDに電気的に結合される。第6及び第7の制御素子T6、T7は第1及び第2の回路ユニットCU1、CU2以外のさらなる回路ユニットとなる。
【0064】
バイアス回路CMは、所定の基準電流CSを、第5の制御素子T5を通じて流れるよう要求される電流Iとして再現するよう動作する。第7の制御素子T7は、たとえばそのチャネル幅W及び/またはチャネル長Lをあらかじめ定めることにより、所定の基準電流IR及び対応する電流Iが、たとえば50μA流れるように構成される。
【0065】
図5は、第4の実施形態の差動増幅回路DAを描写する。図4の差動増幅回路DAと比べ、第2の制御素子T2のゲートG及び第4の制御素子T4のゲートGはそれらの各ソースに電気的に短絡されておらず、第7の制御素子T7のゲートGに電気的に結合される。
【0066】
図6aから6dは、図5に従った構成の差動増幅回路DAのシミュレーション結果を示す。EモードpHEMT増幅回路及びDモードpHEMT増幅回路もまた、図5に示す構成に従って構成されており、相互の比較を可能とするため、差動増幅回路DAと同様な大きさとされている。
【0067】
図6aから6dにおける破線L1は差動増幅回路DAに対応付けられており、点線L2はDモードpHEMT増幅回路に対応付けられており、実線L3はEモードpHEMT増幅回路に対応付けられている。
【0068】
図6aにおける図は、差動電圧VDIFFに対する電流及び出力電圧VOUTを示す。特定の第1のAC電圧VAC1及び第2のAC電圧VAC2は0Vに設定されている。
【0069】
図6aの左図は、差動電圧VDIFFに対する、第1の分岐電流I1、第2の分岐電流I2、及び電流Iを示す。図6aの右図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路の出力電圧VOUTを示す。図6aの左図に示すように、差動電圧VDIFFの値0Vは、第1の分岐電流I1の値が基本的に第2の分岐電流I2の値に等しくなる動作点を表す。差動電圧VDIFFの値を0Vから正の値に増加させることにより特定の増幅回路の動作点を移動させると、第1の分岐電流I1の値が増大し、その一方で第2の分岐電流I2の値が減少する。差動電圧VDIFFの値を0Vから負の値に減少させることにより特定の増幅回路の動作点を移動させると、第1の分岐電流I1の値が減少し、その一方で第2の分岐電流I2の値が増大する。第1及び第2の分岐電流I1、I2の和は基本的に、特定の電流シンクCSにより要求される電流Iとして表される一定の電流値となる(図6aの左図内の水平線をみよ)。EモードpHEMT増幅回路、DモードpHEMT増幅回路及び差動増幅回路DAについて、所定の第1及び第2のDC電圧VDC1、VDC2が同様であれば、第1及び第2の分岐電流I1、I2も同様な結果となる。
【0070】
図6aの右図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路の出力電圧VOUTを示す。特定の増幅回路の第2の接続点TP2と第1の接続点TP1との電圧差が、出力電圧VOUTとなる。図示するように、差動電圧VDIFFに対する特定の増幅回路の出力電圧VOUTの値は同様である。
【0071】
図6b及び6cにおけるシミュレーション結果は、特定の増幅回路の小信号解析に関するものである。周波数f並びに第1のAC電圧VAC1及び第2のAC電圧VAC2の値は、図3b及び3cに従って既に述べたように設定されていてもよい。
【0072】
図6bの左図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路の第1の制御素子T1及び第3の制御素子T3の相互コンダクタンスgmを表す。図6bの左図に描写されているように、3個の増幅回路の第1及び第3の制御素子T1、T3の相互コンダクタンスgmは基本的に同一である。さらに、差動増幅回路DAの第1及び第3の制御素子T1、T3の相互コンダクタンスgmは、EモードpHEMT増幅回路及びDモードpHEMT増幅回路の第1及び第3の制御素子T1、T3に比べて著しく大きい。
【0073】
図6cは、差動電圧VDIFFに対する特定の増幅回路の第2の制御素子T2のインピーダンスZ及び第4の制御素子T4のインピーダンスZの対数表現を示す。特定の増幅回路の第2及び第4の制御素子T2、T4のインピーダンスZは基本的に同一である。図示するように、3個の増幅回路のインピーダンスZの軌跡は互いに異なっている。EモードpHEMT増幅回路、DモードpHEMT増幅回路及び差動増幅回路DAのインピーダンスZの差は、特定の分岐電流が同じ差動電圧VDIFFに対して異なっていることに起因している。
【0074】
図6bの右図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路のAC電圧利得Aを表す。図示したように、差動増幅回路DAのAC電圧利得Aは、EモードpHEMT増幅回路の電圧利得A及びDモードpHEMT増幅回路の電圧利得Aに比べて著しく高い。特定の第1及び第3の制御素子T1、T3の相互コンダクタンスgmが0A/Vより大きい限り、特定の増幅回路は正のAC電圧利得Aを有する。第1の差動電圧VD1及び第2の差動電圧VD2が表す範囲は、EモードpHEMT増幅回路のEモードpHEMT及びDモードpHEMT増幅回路のDモードpHEMTがそれぞれ0A/Vより大きな相互コンダクタンスgmを有し、一方でこの電圧範囲の外では相互コンダクタンスgmが0A/Vに近くなる、という差動電圧VDIFFの範囲を表す。
【0075】
図6dの左図は、第1及び第2のAC電圧VAC1、VAC2の周波数fを対数表現したものに対する、AC電圧利得Aを表す。差動電圧VDIFFの値は、図3dに従って既に述べたように設定されている。差動増幅回路DAのAC電圧利得Aは、EモードpHEMT増幅回路の電圧利得A及びDモードpHEMT増幅回路の電圧利得Aに比べて、広範囲の周波数fにわたって著しく高い。
【0076】
図6dの右図は、第1及び第2のAC電圧VAC1、VAC2の周波数fを対数表現したものに対する、特定の増幅回路の位相応答φを示す。位相応答φは、すべての増幅回路について同様であり、特定のカットオフ周波数f_3dbに至るまで0°に近い。差動増幅回路DAのカットオフ周波数f_3dbは、これもまた100MHzであってもよい。
【0077】
図7は、第5の実施形態の差動増幅回路DAを描写する。図4と比べ、第2及び第4の制御素子T2、T4の各ゲートGは互いに電気的に結合され、第2の制御素子T2のゲートG及びソースSに電気的に短絡される。さらに、出力電圧VOUTは、第2の接続点TP2と基準電位GNDとの間の電圧に対応する。これにより、第5の実施形態に係る差動増幅回路DAは、シングルエンドないしは非対称の出力増幅器となる。
【0078】
図8aから8dは、図7に従った構成の差動増幅回路DAのシミュレーション結果を示す。EモードpHEMT増幅回路及びDモードpHEMT増幅回路もまた、図7に示す構成に従って構成されており、相互の比較を可能とするため、差動増幅回路DAと同様な大きさとされている。
【0079】
図8aから8dにおける破線L1は差動増幅回路DAに対応付けられており、点線L2はDモードpHEMT増幅回路に対応付けられており、実線L3はEモードpHEMT増幅回路に対応付けられている。
【0080】
図8aにおける図は、差動電圧VDIFFに対する電流及び出力電圧VOUTを示す。特定の第1のAC電圧VAC1及び第2のAC電圧VAC2は0Vに設定されている。
【0081】
図8aの左図に示すように、差動電圧VDIFFの値0Vは、第1の分岐電流I1の値が基本的に第2の分岐電流I2の値に等しくなる動作点を表す。差動電圧VDIFFの値を0Vから正の値に増加させることにより特定の増幅回路の動作点を移動させると、第1の分岐電流I1の値が増大し、その一方で第2の分岐電流I2の値が減少する。差動電圧VDIFFの値を0Vから負の値に減少させることにより特定の増幅回路の動作点を移動させると、第1の分岐電流I1の値が減少し、その一方で第2の分岐電流I2の値が増大する。第1及び第2の分岐電流I1、I2の和は基本的に、特定の電流シンクCSにより要求される電流Iとして表される一定の電流値となる(図8aの左図内の水平線をみよ)。EモードpHEMT増幅回路、DモードpHEMT増幅回路及び差動増幅回路DAについて、所定の第1及び第2のDC電圧VDC1、VDC2が同様であれば、第1及び第2の分岐電流I1、I2も同様な結果となる。
【0082】
図8aの右図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路の出力電圧VOUTを示す。特定の増幅回路の第2の接続点TP2と基準電位GNDとの間の電圧が、出力電圧VOUTとなる。図示するように、出力電圧VOUTは、特定の差動電圧VDIFFを変化させることによって特定の増幅回路の動作点を変化させるとき、電圧値VOUT1の周辺で変化する。前述の実施形態においては、出力電圧VOUTは値0Vの周辺で変化する。
【0083】
図8b及び8cにおけるシミュレーション結果は、特定の増幅回路の小信号解析に関するものである。周波数f並びに第1のAC電圧VAC1及び第2のAC電圧VAC2の値は、図3b及び3cに従って既に述べたように設定されていてもよい。
【0084】
図8bの左図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路の第1の制御素子T1及び第3の制御素子T3の相互コンダクタンスgmを表す。図6bの左図に描写されているように、第1及び第3の制御素子T1、T3の相互コンダクタンスgmは基本的に同一である。差動増幅回路DAの第1及び第3の制御素子T1、T3の相互コンダクタンスgmは、EモードpHEMT増幅回路及びDモードpHEMT増幅回路に比べ、より大きい。特に、差動電圧VDIFFが0Vである場合に、差動増幅回路DAの第1及び第3の制御素子T1、T3は最も高い相互コンダクタンスgmの値をとる。
【0085】
図8cは、差動電圧VDIFFに対する特定の増幅回路の第2の制御素子T2のインピーダンスZ及び第4の制御素子T4のインピーダンスZの対数表現を示す。3個の増幅回路のインピーダンスの軌跡は互いに異なっている。EモードpHEMT増幅回路、DモードpHEMT増幅回路及び差動増幅回路DAのインピーダンスZの差は、特定の分岐電流が同じ差動電圧VDIFFに対して異なっていることに起因している。
【0086】
図8bの右図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路のAC電圧利得Aを表す。図示したように、動作点を0Vの差動電圧VDIFFに設定したときは、差動増幅回路DAのAC電圧利得Aは、EモードpHEMT及びDモードpHEMT増幅回路の電圧利得Aより高い。
【0087】
図8dの左図は、第1及び第2のAC電圧VAC1、VAC2の周波数fを対数表現したものに対する、AC電圧利得Aを表す。図8dに描写したシミュレーション結果については、差動電圧VDIFFの値は、一定値たとえば0Vに設定されている。差動増幅回路DAのAC電圧利得Aは、EモードpHEMT増幅回路の電圧利得A及びDモードpHEMT増幅回路の電圧利得Aに比べて、広範囲の周波数fにわたって著しく高い。
【0088】
図8dの右図は、第1及び第2のAC電圧VAC1、VAC2の周波数fを対数表現したものに対する、特定の増幅回路の位相応答φを示す。位相応答φは、すべての増幅回路について同様であり、特定のカットオフ周波数f_3dbに至るまで0°に近い。差動増幅回路DAのカットオフ周波数f_3dbは、これもまた100MHzであってもよい。
【0089】
図9aから9dは、図1に従った構成の差動増幅回路DA及び図10に従った他方の増幅回路のシミュレーション結果を示す。双方の増幅回路は同じ回路装置を有し、相互の比較を可能とするため、同様な大きさとされている。双方の増幅回路は、第1及び第3の制御素子T1、T3としてHBTを備える。しかし、他方の増幅回路は、第2及び第4の制御素子T2、T4として、DモードロングゲートpHEMTに代えて、ともに同一の所定の抵抗値たとえば13kΩを有する第1の抵抗器R2及び第2の抵抗器R4を備える。
【0090】
図9aから9dにおける破線L1は差動増幅回路DAに対応付けられており、点線L2は他方の増幅回路に対応付けられている。
【0091】
図9aにおける図は、差動電圧VDIFFに対する電流及び出力電圧VOUTを示す。特定の第1のAC電圧VAC1及び第2のAC電圧VAC2は0Vに設定されている。
【0092】
図9aの左図は、差動電圧VDIFFに対する、第1の分岐電流I1、第2の分岐電流I2、及び電流Iを示す。図9aの左図に示すように、差動電圧VDIFFの値0Vは、第1の分岐電流I1の値が基本的に第2の分岐電流I2の値に等しくなる動作点を表す。
図示したように、第1及び第2の分岐電流I1、I2の軌跡は互いに同様である。第1及び第2の分岐電流I1、I2の和は基本的に、特定の電流シンクCSにより要求される電流Iとなる。
【0093】
図9aの右図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路の出力電圧VOUTを示す。特定の増幅回路の第2の接続点TP2と第1の接続点TP1との電圧差が、出力電圧VOUTとなる。図示したように、差動増幅回路DA及び他方の増幅回路の出力電圧VOUTの値は、とりわけ、第1の差動電圧VD1と第2の差動電圧VD2との間の所定の範囲では、差動電圧VDIFFに対して同様である。この範囲の外では、差動増幅回路DAの出力電圧VOUTの値は、他方の増幅回路における値に比べてより大きくなる。
【0094】
図9b及び9cにおけるシミュレーション結果は、特定の増幅回路の小信号解析に関するものである。周波数f並びに第1のAC電圧VAC1及び第2のAC電圧VAC2の値は、図3b及び3cに従って既に述べたように設定されていてもよい。
【0095】
図9bの左図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路の第1の制御素子T1及び第3の制御素子T3の相互コンダクタンスgmを表す。図9bの左図に描写されているように、第1及び第3の制御素子T1、T3の相互コンダクタンスgmは基本的に同一である。相互コンダクタンスgmの軌跡は、双方の増幅回路について基本的に同一である。これは、双方の増幅回路において第1及び第3の制御素子T1、T3がHBTであることに起因する。
【0096】
図9cは、差動電圧VDIFFに対する特定の増幅回路の第2の制御素子T2のインピーダンスZ及び第4の制御素子T4のインピーダンスZの対数表現を示す。差動増幅回路DAと他方の増幅回路との間の差異を図9cより見て取ることができる。他方の増幅回路の第2及び第4の制御素子T2、T4のインピーダンスZの軌跡は、抵抗器R2、R4があるため、差動電圧VDIFFから独立して一定値を保つ。差動増幅回路DAの第2及び第4の制御素子T2、T4のインピーダンスZの軌跡は、差動電圧VDIFFに依存して量が増大する。図9cに示したように、差動増幅回路DAの第2及び第4の制御素子T2、T4は、0Vの差動電圧VDIFFの場合において双方の制御素子T2、T4のインピーダンスZが他方の増幅回路の第1及び第2の抵抗器R2、R4のインピーダンスZに等しくなるような大きさを有していてもよい。これに代えて、差動増幅回路DAの第2及び第4の制御素子T2、T4の大きさは、他方の増幅回路のそれとは異なっていてもよい。
【0097】
図9bの右図は、差動電圧VDIFFに対する、特定の増幅回路のAC電圧利得Aを表す。0Vの差動電圧VDIFFのとき、差動増幅回路DA及び他方の増幅回路のAC電圧利得Aは基本的に同一である。他の値の差動電圧VDIFFは、他方の増幅回路のAC電圧利得Aに比べて高い差動増幅回路DAのAC電圧利得Aを伴う。
【0098】
図9dの左図は、第1及び第2のAC電圧VAC1、VAC2の周波数fを対数表現したものに対する、AC電圧利得Aを表す。差動電圧VDIFFの値は、一定値たとえば0Vに設定されている。差動増幅回路DA及び他方の増幅回路のAC電圧利得Aは基本的に同一である。差動増幅回路DAのカットオフ周波数f_3dbは、たとえば100MHzである。
【0099】
図9dの右図は、第1及び第2のAC電圧VAC1、VAC2の周波数fを対数表現したものに対する、特定の増幅回路の位相応答φを示す。位相応答φは、双方の増幅回路について同様であり、特定のカットオフ周波数f_3dbに至るまで0°に近い。差動増幅回路DAのカットオフ周波数f_3dbは、これもまた100MHzであってもよい。
【0100】
本例及びは例示的なものとして理解されるべきものであって限定的なものではなく、本発明はここに示した詳細に限定されるものではなく、付属する請求の範囲の範囲及びその均等の範囲で変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0101】
CS 電流シンク
φ 位相
A 電圧利得
B ベース
C コレクタ
CM バイアス回路
CS 電流シンク
CU1 第1の回路ユニット
CU2 第2の回路ユニット
D ドレイン
DA 差動増幅回路
E エミッタ
f 周波数
f_3db カットオフ周波数
G ゲート
GND 基準電位
I 電流
I1 第1の分岐電流
I2 第2の分岐電流
IR 基準電流
L チャネル長
L1、L2、L3 線
R2、R4 抵抗器
S ソース
T1 第1の制御素子
T2 第2の制御素子
T3 第3の制御素子
T4 第4の制御素子
T5 第5の制御素子
T6 第6の制御素子
T7 第7の制御素子
T8 第8の制御素子
TP1 第1の接続点
TP2 第2の接続点
TP3 第3の接続点
TP4 第4の接続点
V1 第1の所定の電圧
V2 第2の所定の電圧
VAC1 第1のAC電圧
VAC2 第2のAC電圧
VB 電源電圧
VD1 第1の差動電圧の値
VD2 第2の差動電圧の値
VDC1 第1のDC電圧
VDC2 第2のDC電圧
VDIFF 差動電圧
VOFFS オフセット電圧
VOUT 出力電圧
W チャネル幅
W/L チャネル幅とチャネル長との比
Z インピーダンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ接合バイポーラトランジスタ及びロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタを備え、前記ロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタのソース(S)又はドレイン(D)が、前記ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタ(C)又はエミッタ(E)に電気的に結合される回路ユニット(CU)。
【請求項2】
前記ロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタは、0.5μm以上のチャネル長Lを備える、請求項1に記載の回路ユニット(CU)。
【請求項3】
前記ロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタは、チャネル幅Wより有意に大きなチャネル長Lのチャネルを備える、請求項1又は2に記載の回路ユニット(CU)。
【請求項4】
前記回路ユニット(CU)は、GaAs BiFET又はBiHEMTの技術を用いたシングルチップ上に集積される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の回路ユニット(CU)。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回路ユニット(CU)を有するバイアス回路(CM)であって、前記回路ユニット(CU)の前記ヘテロ接合バイポーラトランジスタは第6の制御素子(T6)であり、前記回路ユニット(CU)の前記ロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタは第7の制御素子(T7)であり、もうひとつのヘテロ接合バイポーラトランジスタを備える第5の制御素子(T5)を有し、前記第6の制御素子(T6)のベース(B)及び前記コレクタ(C)は電気的に短絡され、前記第5の制御素子(T5)のベース(B)は、前記第6の制御素子(T6)の前記ベース(B)に電気的に結合されるバイアス回路(CM)。
【請求項6】
前記第7の制御素子(T7)のゲート(G)及び前記ソース(S)は電気的に短絡され又はバイパスされる、請求項5に記載のバイアス回路(CM)。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の第1の回路ユニット(CU1)であって、そのヘテロ接合バイポーラトランジスタが第1の制御素子(T1)であり、そのロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタが第2の制御素子(T2)である第1の回路ユニット(CU1)、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の第2の回路ユニット(CU2)であって、そのヘテロ接合バイポーラトランジスタが第3の制御素子(T3)であり、そのロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタが第4の制御素子(T4)であり、前記第1の制御素子(T1)及び前記第3の制御素子(T3)が接続点(TP3)を経由して電気的に結合され、前記第2の制御素子(T2)及び前記第4の制御素子(T4)がさらなる接続点(TP4)を経由して電気的に結合される第2の回路ユニット(CU2)、及び、
基準電位(GND)と前記接続点(TP3)との間に電気的に配置され、前記第1の回路ユニット(CU1)及び/又は前記第2の回路ユニット(CU2)を通じる所定の電流(I)を要求するよう動作する電流シンク(CS)、
を備える差動増幅回路(DA)。
【請求項8】
前記電流シンク(CS)は請求項5又は6に記載のバイアス回路(CM)を備え、前記バイアス回路(CM)の前記第5の制御素子(T5)は前記基準電位(GND)と前記接続点(TP3)との間に電気的に配置され、前記バイアス回路(CM)の前記回路ユニット(CU)は前記基準電位(GND)と前記さらなる接続点(TP4)との間に電気的に配置される、請求項7に記載の差動増幅回路(DA)。
【請求項9】
前記電流シンク(CS)は、ゲート(G)及びソース(S)が電気的に短絡されたデプレッションモードのロングゲート疑似格子整合高電子移動度トランジスタである第8の制御素子(T8)を備え、前記第8の制御素子(T8)は前記基準電位(GND)と前記接続点(TP3)との間に電気的に配置される、請求項7に記載の差動増幅回路(DA)。
【請求項10】
前記第2の制御素子(T2)のゲート(G)及び前記第4の制御素子(T4)のゲート(G)は、前記第7の制御素子(T7)の、電気的に短絡されたゲート(G)及びソース(S)に電気的に結合される、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の差動増幅回路(DA)。
【請求項11】
前記第2の制御素子(T2)のゲート(G)及び前記第4の制御素子(T4)のゲート(G)は互いに電気的に結合され、前記第2の制御素子(T2)又は前記第4の制御素子(T4)のいずれかのゲート(G)及び前記ソース(S)は電気的に短絡又はバイパスされる、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の差動増幅回路(DA)。
【請求項12】
前記第2の制御素子(T2)のゲート(G)及び前記ソース(S)は電気的に短絡又はバイパスされ、前記第4の制御素子(T4)のゲート(G)及び前記ソース(S)は電気的に短絡又はバイパスされる、請求項7乃至11のいずれか1項に記載の差動増幅回路(DA)。
【請求項13】
前記差動増幅回路(DA)はシングルチップ上に集積される、請求項7乃至12のいずれか1項に記載の差動増幅回路(DA)。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−521682(P2013−521682A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555307(P2012−555307)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052855
【国際公開番号】WO2011/107159
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】