説明

回路基板の製造方法および回路基板

【課題】接着剤層と基材との密着性に優れた回路基板の製造方法および回路基板を提供する。
【解決手段】第1基材と、第2基材とを接着剤層を介して電気的に接合して得られる回路基板の製造方法であって、前記第1基材の前記接着剤層と接合する面を、酸素、窒素、四フッ化炭素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の第1気体で予めプラズマ処理する第1プラズマ処理工程と、前記接合面をさらに前記第1プラズマ処理工程に用いる第1気体と異なる第2気体でプラズマ処理する第2プラズマ処理工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法および回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高密度化に伴い、これに用いる回路基板の多層化、回路基板に形成される回路の細線化が要求されている。このような、細線化された回路を有する多層基板を形成する方法の一つにバンプめっきによる接合方式があり、例えば次のような方法で形成される。
【0003】
銅と金属、または銅と合金とで構成される導体2層ポストを有する基版と、前記導体2層ポストと接続するためのランドを有する基板とを用意する。そして、層間接着剤を介して、前記導体2層ポストを有する基板と、前記ランドを有する基板とを接合して多層基板を得ている。
【0004】
この多層基板において、層間の密着性を向上させることが非常に重要になってくる。層間の密着性が乏しい場合には、多層基板を高温多湿下で処理した際に基板と層間接着剤との間に水分が侵入し、半田耐熱性試験(JIS C5016)で層間が剥離し、膨れ等が発生する場合がある。
【0005】
そこで、層間の密着性を向上させるために、被着物の表面を粗面化する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法では、基板、ランド、回路等を粗面化する。しかし、高周波の信号を伝搬させると、表皮効果により信号が祖化された回路の表面部分のみを伝搬するため、その表面の凹凸に起因して信号にノイズが発生してしまう場合があった。そこで、層間の密着性を粗面化することなく密着性を向上させることが必要となっていた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−163454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、接着剤層と基材との密着性に優れた回路基板の製造方法および回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(5)に記載の本発明により達成される。
(1)第1基材と、第2基材とを接着剤層を介して電気的に接合して得られる回路基板の製造方法であって、前記第1基材の前記接着剤層と接合する面を、酸素、窒素、四フッ化炭素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の第1気体で予めプラズマ処理する第1プラズマ処理工程と、
前記接合面をさらに前記第1プラズマ処理工程に用いる第1気体と異なる第2気体でプラズマ処理する第2プラズマ処理工程とを有していることを特徴とする回路基板の製造方法。
(2)前記第2基材の前記接着剤層と接合する面を、酸素、窒素、四フッ化炭素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の第1気体で予めプラズマ処理する第1プラズマ処理工程と、前記接合面をさらに前記第1プラズマ処理工程に用いる第1気体と異なる第2気体でプラズマ処理する第2プラズマ処理工程とを有しているものである上記(1)に記載の回路基板の製造方法。
(3)前記第1プラズマ処理工程は、酸素を用いるものである上記(1)または(2)に記載の回路基板の製造方法。
(4)前記第2プラズマ処理工程は、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の第2気体を用いるものである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の回路基板の製造方法で得られることを特徴とする回路基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着剤層と基材との密着性に優れた回路基板を得ることができる。
また、第1プラズマ処理工程で酸素を用いた場合、特に基材表面の有機物を効率良く除去できる。
また、第2プラズマ処理でアルゴンを用いた場合、前記第1プラズマ処理工程では、除去できなかった強固に付着している有機物、無機物を除去することができる。これによって、純度の高い表面を得ることができる。さらに、表面の濡れ性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の回路基板の製造方法および回路基板について、添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の回路基板の製造方法は、第1基材と、第2基材とを接着剤層を介して電気的に接合して得られる回路基板の製造方法であって、前記第1基材の前記接着剤層と接合する面を、酸素、窒素、四フッ化炭素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の気体で予めプラズマ処理する第1プラズマ処理工程と、前記接合面をさらに前記第1プラズマ工程に用いる気体と異なる気体でプラズマ処理する第2プラズマ処理工程とを有していることを特徴とする。
本発明の回路基板は、上述の回路基板の製造方法で得られることを特徴とするものである。
【0011】
図1は、第1基材の一例を示す断面図である。図2は、第2基材の一例を示す断面図である。図3は、本発明の回路基板の製造方法で用いるプラズマ装置を模式的に表す側面図である。図4は、回路基板の一例を示す断面図である。
まず、回路基板100を構成する第1基材1および第2基材2について説明する。
【0012】
図1に示すように、第1基材1は、フィルム11と、フィルム11の一方の面側(図1中上側)に設けられる導体回路12と、導体回路12と接続し、かつフィルム11を貫通して設けられる導体ポスト(突起電極)13と、導体ポスト13の先端部を覆う被覆層131とで構成されている。
【0013】
フィルム11を構成する材料としては、例えばポリイミド、ポリエステル、液晶ポリマー、シアネート樹脂等が挙げられる。フィルム11の厚さは、特に限定されないが、5〜50μmが好ましく、特12.5〜25μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に屈曲性に優れる。
【0014】
導体回路12を構成する材料は、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば銅、銅系合金、金等が挙げられる。
導体回路12を形成する方法としては、例えばエッチングする方法、メッキする方法等が挙げられる。
【0015】
導体ポスト13を構成する材料は、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば銅、銅系合金、錫等が挙げられる。
導体ポスト13を形成する方法としては、例えば上述の材料のペーストを埋め込む方法、メッキする方法等が挙げられる。
【0016】
被覆層131を構成する材料は、導電性を有し、かつ導体ポスト13と後述する導体パッドとの接続信頼性に優れるものであれば特に限定されないが、例えば金、銀、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン等の金属単体、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、銅から選ばれた2種以上の金属で構成される半田が挙げられる。より具体的には、錫―鉛系、錫―銀系、錫−亜鉛系、錫―ビスマス系、錫―アンチモン系、錫−銀−ビスマス系、錫−銅系等の半田が挙げられる。
被覆層131を形成する方法としては、例えばメッキする方法、ペースト印刷する方法等が挙げられる。
【0017】
図2に示すように、第2基材2は、フィルム21の一方の面側に形成された導体パッド22と、導体回路23と、フィルム21の他方の面側に形成された導体回路23とで構成されている。
【0018】
フィルム21を構成する材料としては、例えばポリイミド、ポリエステル、液晶ポリマー、シアネート樹脂等が挙げられる。フィルム21の厚さは、特に限定されないが、5〜50μmが好ましく、特に12.5〜25μmが好ましい。厚さが前記範囲内であると、特に屈曲性に優れる。
【0019】
導体パッド22を構成する材料は、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば銅、銅系合金、金等が挙げられる。
導体回路22を形成する方法としては、例えばエッチングする方法、メッキする方法等が挙げられる。
【0020】
導体回路23を構成する材料は、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば銅、銅系合金、錫等が挙げられる。
導体回路23を形成する方法としては、例えばエッチングする方法、メッキする方法等が挙げられる。
【0021】
本発明の回路基板の製造方法では、上述したような第1基材1および第2基材2を、後述するプラズマ処理することを特徴とするが、次に本発明で用いるプラズマ装置について説明する。
図3に示すように、プラズマ装置3は、チャンバー31と、チャンバー31の上部(図3中上側)に設けられるガス供給部32と、チャンバー31の左側(図3中左側)に設けられる真空ポンプ33とを有している。チャンバー31の内部には、平行平板式の電極が設けられており、チャンバー31内部の上側(図3中上側)に上部電極34と、その下側に下部電極35とを有している。
【0022】
ここで、ガス供給部32は、反応ガスを供給するために設けられており、図示しないマスフローコントローラーが設置されている。
また、真空ポンプ33は、チャンバー31内を真空に保つために設けられている。
ここで、基板は、上部電極34と下部電極35との間に挿入されることになる。
このプラズマ装置3は、低圧および常圧タイプのどちらの装置を用いても良い。
【0023】
次に、プラズマ処理について説明する。
本発明でプラズマ処理は、第1基材1の前記接着剤層と接合する面を、酸素、窒素、四フッ化炭素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の第1気体で予めプラズマ処理する第1プラズマ処理工程と、前記接合面をさらに前記第1プラズマ処理工程に用いる第1気体と異なる第2気体でプラズマ処理する第2プラズマ処理工程とを有していることを特徴とする。前記第1プラズマ処理工程では、表面に付着する有機物を除去することができる。また、前記第2プラズマ処理工程では、前記第1プラズマ処理工程で除去が困難なように強固に付着している有機物または無機物を除去することができる。
【0024】
まず、第1基板1のプラズマ処理について説明する。
<第1プラズマ処理工程>
第1基板1をプラズマ装置3のチャンバー31内にある下部電極35の上に配置する。この際、第1基板1の導体ポスト13の被覆層131が上側(図3中上側)となるように配置する(すなわち、導体回路12が下側となる)。これにより、導体ポスト131側の面がプラズマ処理されることになる。なお、下部電極35と、第1基板1との間に隙間(例えば、第1基板の撓み等により)が存在すると、その隙間にプラズマが集中する異常放電現象が生じる可能性がある。そのため、異常放電現象を防止するために、専用の冶具または粘着テープ等で固定することが好ましい。
【0025】
次に、チャンバー31を閉じて、真空ポンプ33を稼動させ、チャンバー31内の真空引きを開始する。真空度は、特に限定されないが、100Pa以下が好ましく、特に1〜10Paが好ましい。真空度が前記範囲内であると、特にプラズマを安定に発生することができ、均一な処理を行なうことができる。
【0026】
チャンバー31内が所定の真空度に到達したらガス供給部32より、酸素、窒素、四フッ化炭素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の第1気体(特に好ましくは、酸素)を所定量供給する。前記第1気体を数秒間供給した後、下部電極35に電圧をかけてプラズマ処理を行なう。これにより、安定した状態からプラズマ処理が開始され、処理毎のばらつきを低減することができる。
【0027】
ここで、特に前記第1気体として酸素を用いた場合の反応について説明する。
前記第1気体として酸素を用いた場合に第1基板1の表面(被覆層131側の表面)では、次のような反応がなされていると考えられる。
酸素原子はイオン(O+)と、電子と、ラジカル(O*)とに電離する。ラジカル(O*)は、第1基板1の表面に吸着し、揮発性物質を形成する化学的反応を行なう。イオン(O+)は、電圧がかかることにより直進し、付着している炭素/水素/酸素で構成されている有機物に物理的に作用し、この有機物の表面解離または表面解離を誘発する。この表面解離した、または表面解離が誘発された有機物と、ラジカル(O*)が反応し、二酸化炭素や水となり、有機物が効率良く除去される。
【0028】
<第2プラズマ処理工程>
続いて、第2プラズマ処理工程を行なう。第2プラズマ処理工程は、前記第1プラズマ処理工程の第1気体の供給を停止し、所定の真空度まで真空引きを行なう。所定の真空度に到達したら、前記第1気体と異なる前記第2気体を所定量供給する。前記第2気体は、前記第1気体と異なる気体であれば特に限定されないが、例えばアルゴン、ネオン、クリプトン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることが好ましい。これらの中でも入手が容易、安価、かつ反応性が高いアルゴンガスが好ましい。
前記第1プラズマ処理工程の場合と同様に、前記第2気体を数秒間供給した後、下部電極35に電圧をかけてプラズマ処理を行なう。これにより、安定した状態からプラズマ処理が開始され、処理毎のばらつきを低減することができる。
【0029】
ここで、特に前記第2気体としてアルゴンガスを用いた場合の反応について説明する。
前記第2気体としてアルゴンガスを用いた場合に第1基板1の表面(被覆層131側の表面)では、次のような反応がなされていると考えられる。
アルゴンガスはイオン(Ar+)と、電子とに分離する。アルゴンガスは、前述したような酸素ガスと異なり、反応によって有機物を除去するのではなく、イオン(Ar+)による強力な物理的効果により、付着している有機物、無機物をスパッタリングで除去する。これにより、前記第1プラズマ処理工程では、除去できなかった強固に付着している有機物、無機物を除去することができる。これによって、純度の高い表面を得ることができる。さらに、表面の濡れ性を向上することができる。
【0030】
このような、上記第1プラズマ処理工程および第2プラズマ処理工程により、第1基板1の表面(被覆層131側の表面)と、接着剤層との密着性を向上することができる。さらに、第1基板1の表面(被覆層131側の表面)の濡れ性を向上することができ、それによって第1基板1の被覆層131と、第2基板2の導体パッド22との間の半田溶融接合を安定化することができる。
【0031】
次に、第2基板2のプラズマ処理について説明する。
<第1プラズマ処理工程>
第2基板2をプラズマ装置3のチャンバー31内にある下部電極35の上に配置する。この際、第2基板2の導体パッド22が上側(図3中上側)となるように配置する(すなわち、導体回路23が下側となる)。これにより、導体パッド22側の面がプラズマ処理されることになる。なお、下部電極35と、第2基板2との間に隙間(例えば、第2基板の撓み等により)が存在すると、その隙間にプラズマが集中する異常放電現象が生じる可能性がある。そのため、異常放電現象を防止するために、専用の冶具または粘着テープ等で固定することが好ましい。
【0032】
次に、チャンバー31を閉じて、真空ポンプ33を稼動させ、チャンバー31内の真空引きを開始する。真空度は、特に限定されないが、100Pa以下が好ましく、特に1〜10Paが好ましい。真空度が前記範囲内であると、特にプラズマを安定に発生することができ、均一な処理を行なうことができる。
【0033】
チャンバー31内が所定の真空度に到達したらガス供給部32より、酸素、窒素、四フッ化炭素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の第1気体(特に好ましくは、酸素)を所定量供給する。前記第1気体を数秒間供給した後、下部電極35に電圧をかけてプラズマ処理を行なう。これにより、安定した状態からプラズマ処理が開始され、処理毎のばらつきを低減することができる。
【0034】
ここで、特に前記第1気体として酸素を用いた場合の反応について説明する。
前記第1気体として酸素を用いた場合に第2基板2の表面(導体パッド22側の表面)では、次のような反応がなされていると考えられる。
酸素原子はイオン(O+)と、電子と、ラジカル(O*)とに電離する。ラジカル(O*)は、第2基板2の表面に吸着し、揮発性物質を形成する化学的反応を行なう。イオン(O+)は、電圧がかかることにより直進し、付着している炭素/水素/酸素で構成されている有機物に物理的に作用し、この有機物の表面解離または表面解離を誘発する。この表面解離した、または表面解離が誘発された有機物と、ラジカル(O*)が反応し、二酸化炭素や水となり、有機物が除去される。
【0035】
<第2プラズマ処理工程>
続いて、第2プラズマ処理工程を行なう。第2プラズマ処理工程は、前記第1プラズマ処理工程の第1気体の供給を停止し、所定の真空度まで真空引きを行なう。所定の真空度に到達したら、前記第1気体と異なる前記第2気体を所定量供給する。前記第2気体は、前記第1気体と異なる気体であれば特に限定されないが、例えばアルゴン、ネオン、クリプトン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることが好ましい。これらの中でも入手が容易、安価、かつ反応性が高いアルゴンガスが好ましい。
前記第1プラズマ処理工程の場合と同様に、前記第2気体を数秒間供給した後、下部電極35に電圧をかけてプラズマ処理を行なう。これにより、安定した状態からプラズマ処理が開始され、処理毎のばらつきを低減することができる。
【0036】
ここで、特に前記第2気体としてアルゴンガスを用いた場合の反応について説明する。
前記第2気体としてアルゴンガスを用いた場合に第2基板2の表面(導体パッド22側の表面)では、次のような反応がなされていると考えられる。
アルゴンガスはイオン(Ar+)と、電子とに分離する。アルゴンガスは、前述したような酸素ガスと異なり、反応によって有機物を除去するのではなく、イオン(Ar+)による強力な物理的効果により、付着している有機物、無機物をスパッタリングで除去する。これにより、前記第1プラズマ処理工程では、除去できなかった強固に付着している有機物、無機物を除去することができる。これによって、純度の高い表面を得ることができる。さらに、表面の濡れ性を向上することができる。
【0037】
このような、上記第1プラズマ処理工程および第2プラズマ処理工程により、第2基板2の表面(導体パッド22側の表面)と、接着剤層との密着性を向上することができる。さらに、第2基板2の表面(導体パッド22側の表面)の濡れ性を向上することができ、それによって第2基板2の導体パッド22と、第1基板1の被覆層121との間の半田溶融接合を安定化することができる。
【0038】
なお、第1基板1と第2基板2との前記プラズマ処理は、上述のような順番でも先に第2基板2のプラズマ処理を行なった後に、第1基板1のプラズマ処理を行なっても良い。
【0039】
このようにプラズマ処理した第1基板1および第2基板2を用いて、図5に示すような回路基板100を得る。
まず、プラズマ処理した第1基板1の被覆層131面側を覆うように、接着剤4を形成する(図4)。
接着剤4を形成する方法としては、例えば印刷により塗布する方法、シート状の接着剤をラミネートする方法等が挙げられる。これらの中でもラミネートする方法が好ましい。これにより、作業工数を低下することができる。
【0040】
接着剤4を構成する材料としては、例えばエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0041】
次に、第1基板1と、第2基板2とを積層して、位置決めを行なう。この際、導体ポスト13と、導体パッド22とが接合できるように位置決めを行なう。その後、被覆層131が溶融可能な温度に加熱して、導体ポスト13と、導体パッド22とを接合する。次に、接着剤4が熱硬化型の樹脂で構成されている場合は、加熱して硬化させる。これにより、導体ポスト13と、導体パッド22とが電気的に接続された回路基板100を得ることができる。
【0042】
以上のように本発明の回路基板の製造方法および回路基板について好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第3基材、第4基材等を有する多層構造であっても良い。
また、プラズマ処理工程においても、第1プラズマ処理工程を第1基材および第2基材それぞれについて実施した後、第2プラズマ処理工程を実施しても良い。
【0043】
次に本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
1.第1基材
第1基材として、厚さ12μmの銅箔を有するポリイミドフィルム(厚さ25μm)で構成されている2層片面回路基板(宇部興産社製、SE1310)を用いた。この第1基材に、ポリイミドフィルム側から開口部を形成し、該開口部に電解銅メッキを施して銅ポストを形成した後、半田メッキを施し導体2層ポストを形成した。
【0044】
2.第1基材の第1プラズマ処理工程
上述の第1基材をプラズマ装置のチャンバー内に挿入し、下部電極の上にポリイミドフィルム面が上側となるように配置した。そして、チャンバー内を真空ポンプで5Paまで真空引きを行なった後、酸素を200sccm導入して、電極間に2,500Wとなるように加圧して、1分間保持しながらプラズマ処理を行なった。
【0045】
3.第1基材の第2プラズマ処理工程
第1プラズマ処理終了後に、酸素の供給を止めて、もう一度、チャンバー内を真空ポンプで5Paまで真空引きを行なった。次に、アルゴンを60sccm導入して、電極間に2,500Wとなるように加圧して、2分間保持しながらプラズマ処理を行なった。
【0046】
4.第2基材
第2基材として、厚さ12μmの銅箔を有するポリイミドフィルム(厚さ25μm)で構成されている2層両面回路基板(三井化学社製、NFX2ABEPFE(25T))を用いた。この第2基材に、回路エッチングによりランド(導体パッド)を形成した。
【0047】
5.第2基材の第1プラズマ処理工程
上述の第2基材をプラズマ装置のチャンバー内に挿入し、下部電極の上にランドを形成した面が上側となるように配置した。そして、チャンバー内を真空ポンプで5Paまで真空引きを行なった後、酸素を200sccm導入して、電極間に2,500Wとなるように加圧して、1分間保持しながらプラズマ処理を行なった。
【0048】
6.第2基材の第2プラズマ処理工程
第1プラズマ処理終了後に、酸素の供給を止めて、もう一度、チャンバー内を真空ポンプで5Paまで真空引きを行なった。次に、アルゴンを60sccm導入して、電極間に2,500Wとなるように加圧して、2分間保持しながらプラズマ処理を行なった。
【0049】
7.回路基板の製造
プラズマ処理を施した第1基材に熱硬化性の接着シート(住友ベークライト社製、層間シートDBF、厚さ22μm)をラミネートした。次に、接着シートを有する第1基材と、プラズマ処理を施した第2基材とを、位置合わせ用のピンガイド付き冶具を用いて接着シートとランド側の面が接するように積層し、真空プレスで260℃、0.3MPaで5分間プレスした。これにより、導体2層ポストとランドとが半田溶融接合される。次に、温度180℃、60分間加熱し、接着シートを硬化させて最終的に回路基板を得た。
【0050】
(実施例2)
第1プラズマ処理において酸素の代わりに窒素を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0051】
(比較例1)
プラズマ処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様にした。
【0052】
(比較例2)
第1プラズマ処理工程および第2プラズマ処理工程を共に、同じアルゴンで行なった以外は、実施例1と同様にした。
【0053】
各実施例および各比較例で得られた回路基板について、以下の評価を行なった。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
1.密着性
密着性は、第1基材と、第2基材との90度引き剥がし強度(JIS−C5012 8.1)で評価した。
【0054】
2.半田耐熱性試験
半田耐熱性試験は、40℃、90%の高温高湿槽で96時間処理した後、260℃、1分間の半田耐熱試験(JIS C5016)で評価した。各符号は、以下の通りである。
◎:外観に膨れ、剥がれ等の異常なし。
○:一部の外観に膨れ、剥がれ等の異常あるが、実用上問題なし。
△:一部の外観に膨れ、剥がれ等の異常あり、実用不可。
×:外観に膨れ、剥がれ等の異常あり。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から明らかなように、実施例1および実施例2は、基材と接着剤との密着性に優れていた。
また、実施例1および2は、半田耐熱性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、接着剤層と基材との密着性に優れた回路基板の製造方法および回路基板を得ることができる。本発明の回路基板の製造方法は、回路基板の中でもフレキシブル回路基板の製造に用いることが好ましく、特に多層フレキシブル回路基板の製造方法に用いることが好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1基材の一例を示す断面図である。
【図2】第2基材の一例を示す断面図である。
【図3】プラズマ装置の一例を示す模式図である。
【図4】第1基材に接着剤が形成されている状態の一例を示す断面図である。
【図5】回路基板の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 第1基材
11 フィルム
12 導体回路
13 導体ポスト
131 被覆層
2 第2基材
21 フィルム
22 導体パッド
23 導体回路
3 プラズマ装置
31 チャンバー
32 ガス供給部
33 真空ポンプ
34 上部電極
35 下部電極
4 接着剤
100 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と、第2基材とを接着剤層を介して電気的に接合して得られる回路基板の製造方法であって、
前記第1基材の前記接着剤層と接合する面を、酸素、窒素、四フッ化炭素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の第1気体で予めプラズマ処理する第1プラズマ処理工程と、
前記接合面をさらに前記第1プラズマ処理工程に用いる第1気体と異なる第2気体でプラズマ処理する第2プラズマ処理工程とを有していることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2基材の前記接着剤層と接合する面を、酸素、窒素、四フッ化炭素、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の第1気体で予めプラズマ処理する第1プラズマ処理工程と、
前記接合面をさらに前記第1プラズマ処理工程に用いる第1気体と異なる第2気体でプラズマ処理する第2プラズマ処理工程とを有しているものである請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1プラズマ処理工程は、酸素を用いるものである請求項1または2に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記第2プラズマ処理工程は、アルゴン、ネオン、クリプトンおよびヘリウムの中から選ばれる1種以上の第2気体を用いるものである請求項1ないし3のいずれかに記載の回路基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の回路基板の製造方法で得られることを特徴とする回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−216754(P2006−216754A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27521(P2005−27521)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】