説明

回路材料、回路、多層回路、およびそれらの製造方法

基板上に配置された導電層を有し、前記基板は、共有結合多面体シルセスキノキサン(POSS)を含む有機または無機ポリマーを有する、電気回路材料。基板は、追加の分散POSS、繊維状ウエブを含む任意の他のフィラー類をさらに含んでもよい。共有結合POSSを使用すると、許容される誘電定数および散逸率を有する組成物において難燃性が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路材料、回路、および多層回路の形成に有益な誘電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で使用されるように、回路材料は、回路および多層回路を製造する際に使用される物品であり、回路積層板、ボンドプライ(bond ply)、樹脂コート導電層およびカバーフィルムが挙げられる。回路材料は、熱硬化性または熱可塑性ポリマーとすることができる誘電材料から形成される。ポリマーをしばしば、シリカなどのフィラー類と組み合わせ、ポリマーの誘電性または他の特性を調整する。ボンドプライ、樹脂被覆導電層、またはカバーフィルムにおける誘電材料は実質的に流動性を有さず、すなわち、製造中は軟化し、または流動化するが、回路の使用中にはそのようにはならず、一方、回路積層板(すなわち、誘電体基板)における誘電材料は、製造または回路もしくは多層回路の使用中に軟化および流動化しないように設計される。誘電体基板材料は剛性誘電材料とすることができ、繊維状ウエブおよび/または他の形態の強化材、例えば短繊維もしくは長繊維類またはフィラー類を含んでもよい。
【0003】
回路積層板は、誘電体基板層に固定して結合された導電層を有する回路材料の型である。ダブルクラッド積層板は、誘電体基板の各側に1つずつ、2つの導電層を有する。積層板の導電層を、例えばエッチングによりパターニングすると、回路層が得られ、その結果回路が得られる。多層回路は複数の導電層を備え、その少なくとも1つは導電配線パターンを含む。典型的には、多層回路は、ボンドプライ、場合によっては、樹脂コート導電層を用い、適当に整合させ、熱および/または圧力を使用して、1または複数の回路を共に積層することにより形成させる。ボンドプライを使用して、回路間および/または回路と導電層との間、または2つの導電層間の接着を提供する。ボンドプライにより回路に結合された導電層の代わりに、多層回路は、回路の外側層に直接結合された樹脂コート導電層を含んでもよい。そのような多層構造では、積層後、公知の孔形成技術およびメッキ技術を使用して、導電層間に有益な電気経路を作製してもよい。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,516,983号明細書
【特許文献2】米国特許第6,472,076号明細書
【特許文献3】米国特許第6,623,711号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在では、様々なポリマー誘電材料を使用して回路材料が形成されており、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂類、エポキシ樹脂類、ならびにイソプレンおよびブタジエン−系樹脂類が含まれる。現在のポリマー誘電材料はしばしばそれ自体、難燃性ではなく、このため、臭素含有添加剤をさせ、UL94 V−0規格を達成してもよい。新規法律のために、例えば、ヨーロッパおよび日本では、回路材料から臭素含有化合物を取り除くことに大きな関心が寄せられている。残念なことに、臭素含有化合物を他の難燃性添加剤と置き換えるには、しばしば、多量の添加剤を添加する必要があり、これはポリマー材料を用いて作製した積層板の電気特性に悪影響をもたらす場合がある。このように、適した電気特性および熱特性を有する回路材料、回路、および多層回路において使用するための難燃性ポリマー材料が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記欠点および短所は、共有結合多面体シルセスキノキサン(covalently bound polyhedral silsesquinoxane)を含むポリマーを有する回路材料により軽減される。
【0007】
別の実施形態では、回路材料は誘電層上に配置された導電層を備え、ここで、誘電層は共有結合多面体シルセスキノキサンを含むポリマーを有する。追加の導電層もまた、誘電層の反対側に配置し、ダブルクラッド回路材料を形成してもよい。さらに回路層を追加し、多層回路を作製してもよい。別の実施形態では、誘電層はさらに繊維状マットを含む。
【発明の効果】
【0008】
共有結合された多面体シルセスキノキサンを含むポリマーは本質的に難燃性であり、これを使用すると、優れた電気特性および物理特性を有する難燃性回路材料を形成することができる。本発明の上記ならびに他の特徴および利点は、当業者であれば、下記の詳細な説明および図面により認識され、理解されると思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、例示的な図面について説明する。複数の図面において、同様の要素には同様の符号を付する。
【0010】
回路材料は、本明細書で記述されるように、共有結合された多面体シルセスキノキサン(POSS)を含むポリマーを有する誘電材料から形成される。そのようなポリマー類により良好な電気特性および熱特性を有する難燃性回路材料の作製が可能となる。共有結合POSSという用語は、POSSがペンダント基として、またはポリマー内の繰り返しユニットとしてポリマーに共有結合されていることを意味する。組成物はさらに、分散(dispersed)POSSを含んでもよく、ここで、分散POSSは共有結合POSSと同じ、または異なっている。シリカおよび/またはガラス布と組み合わせると、ハロゲン化難燃剤を添加せずに、適した電気特性およびUL−94 V−0規格を有する剛性回路材料を作製することができる。POSS樹脂類は本質的に熱硬化性であり、低温で硬化するため、共有結合POSS基を含むポリマーを他の積層板、例えば液晶ポリマー類を基本とするもののためのボンドプライ層として使用してもよい。
【0011】
POSS基の共有結合に適したポリマー類としては、例えば、シリコーン樹脂類、1,2−ポリブタジエン類、ポリイソプレン類、ポリエステル類、アクリレートエステル類、ポリブタジエン−ポリイソプレンコポリマー類、アリル化ポリフェニレンエーテル類、および熱可塑性樹脂類、例えばポリフェニレンエーテル類(PPE)、ビスマレイミドトリアジン類(BT)、エポキシ類、シアネートエステル類、ジアルキルシロキサンポリマー類、例えばジメチルシロキサンポリマー類、ならびに前記樹脂類の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。熱硬化性樹脂類および熱可塑性樹脂類の混合物もまた使用してもよく、非制限的な例としては、エポキシ含浸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エポキシ−コートPTFE、エポキシ−ポリフェニレンエーテル、エポキシ−ポリエーテルイミド(PEI)、シアネートエステル−PPE、および1,2−ポリブタジエン−ポリエチレンが挙げられる。ポリブタジエン、ポリイソプレン、および/またはポリブタジエンとポリイソプレンのコポリマー類を含む組成物は特に有益である。他の有益なポリマー類としては、16までの炭素原子を有する一価炭化水素類、特定的には8までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、またはアリール基、より特定的には6までの炭素原子を有するフェニルまたは低級アルキルもしくはアルケニル、最も特定的にはメチルまたはフェニルを有するジオルガノシロキサンポリマー類、例えばポリジメチルシロキサン類、ポリジビニルシロキサン類およびポリジフェニルシロキサン類が挙げられる。
【0012】
多面体シルセスキノキサン類は一般式(RSiO1.5を有し、ここで、Rは有機部分であり、nは6、8、10、12またはそれ以上である。これらの分子は剛性の、熱的に安定な、酸素対珪素比が1.5である珪素−酸素フレームワーク、および例えば、炭化水素類(例えば、ビニル、フェニル、イソオクチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、イソブチル、または他の炭化水素類)を含む有機外側層を提供する共有結合された有機基、ならびにエステル、エポキシ、アクリレート、または他の官能基などの官能基を有する。特定のPOSSはビニルPOSSである。POSSは400平方メートル/グラム(m/gm)を超える表面積を有してもよい。SiPOSS構造を下記に示す。
【化1】

【0013】
共重合またはペンダント基としての結合は、官能化POSS(「POSSモノマー類」としても公知)を使用することにより得ることができ、ここで、共有結合された有機基の1、2またはそれ以上が、使用した少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーと反応しポリマーが形成され、またはポリマー中の少なくとも1つの官能基と反応できる。いくつかの場合では、共有結合された有機基の全てを反応性基とすることが可能である。
【0014】
官能化POSSは、例えば、置換トリクロロシランによるトリシラノール基を含む不完全に縮合したPOSSのコーナーキャッピングにより調製してもよい。例えば、R(OH)(ここで、Rは炭化水素基である)のトリシラノール官能基をClSi−Yと反応させ、完全に縮合させたPOSSモノマーRYを生成することができる。下記構造では、TはSiO1.5であり、Yは官能基を含む有機基である。
【化2】

シラン上のY基を変化させることにより、様々な官能基を、POSSフレームワークのコーナーから離して配置させることができ、ハロゲン化物、アルコール、アミン、水素化物、イソシアネート、酸、酸塩化物、シラノール類、シラン、アクリレート、メタクリレート、オレフィンおよびエポキシドが挙げられるが、それらに限定されない。
【0015】
適したPOSSモノマー類の別の例としては、一般式Rn−mのものが挙げられ、ここで、Rは炭化水素であり、nは6、8、10、12またはそれ以上であり、mは1〜nであり、TはSiO1.5であり、Yは官能基を含む有機基であり、ここで、官能基としては、例えば、ハロゲン化物、アルコール、アミン、イソシアネート、酸、酸塩化物、シラノール類、シラン、アクリレート、メタクリレート、オレフィンおよびエポキシドが挙げられる。適したPOSSモノマーでは、例えば、nは8であり、mは1、2、3、4、5、6、7または8であり、RはC〜C24の直鎖、分枝、または環状アルキル、C〜C24の芳香族、アルキルアリール、またはアリールアルキルであり、ここで、アルキルまたは芳香族は必要に応じて、C〜Cアルキル、ハロ、C〜Cアルコキシ、C〜Cパーハロアルキル、などで置換される。
【0016】
別の適したPOSSモノマーとしては一般式R(OY)のものが挙げられる。
【化3】

ここで、RおよびYはRYPOSSモノマーに対し前に規定した通りである。
【0017】
適した官能基はエポキシ類、エステル類ならびにアクリレート基(−X−OC(O)CH=CH)およびメタクリレート基(−X−OC(O)CH(CH)=CH)であり、ここで、Xは1〜36の炭素を有する二価結合基であり、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、フェニレンなどである。Xはまた、官能基がPOSSの形成または使用を妨害しない限り、エーテル(例えば、−CHCHOCHCH−)などのそのような官能基により置換されてもよい。Xはプロピレン、イソブチレン、またはOSi(CHCHCHCH−としてもよい。共有結合された官能基のうちの1つ、全て、または中間の数はアクリレート基またはメタクリレート基(以後、(メタ)アクリレート)としてもよい。そのように官能化POSSはゲレスト社(Gelest、Inc.、ツリータウン、ペンシルベニア州)およびハイブリッドプラスチックス社(Hybrid Plastics Corp.)から入手可能である。メタクリルオキシプロピル−置換TPOSS(この場合、多面体の全ての位置がメタクリルオキシプロピルで置換される)は、ハイブリッドプラスチック社から商標MA0735として入手可能である。別のメタクリルオキシプロピル−置換TPOSS(この場合、多面体の1つの位置がメタクリルオキシプロピルで置換され、残りの位置はイソブチルで置換される)がハイブリッドプラスチック社(ファウンテインバレー、カリフォルニア州)から商標MA0702として入手可能である。
【0018】
結合基Xは他の官能基と共に使用するのに適している。他のPOSS構造は、例えば、ジエトキシメチルシリルエチル、ジエトキシメチルシリルプロピル、エトキシジメチルシリルエチル、エトキシジメチルシリルプロピル、トリエトキシシリルエチルなどのアルコキシシラン類、スチレニル(CCH=CH−)、スチリル(−CCH=CH)などのスチレン、アリル、−OSi(CHCHCH=CH、シクロヘキセニルエチル、−OSi(CHCH=CHなどのオレフィン類、4−プロピル−1,2−エポキシシクロヘキシル、3−プロポキシ、グリシジル(−CHCHCHOCHCH(O)CH)などのエポキシ類、クロロシリルエチル、ジクロロシリルエチル、トリクロロシリルエチルなどのクロロシラン類、アミノプロピル、アミノエチルアミノプロピルなどのアミン類、−OSi(CHCHCHCHOC(CHCH(CHCHOH)、4−プロピレン−トランス−1,2−シクロヘキサンジオール、−CHCHCHOCHC(CHOH)(OH)などのアルコール類およびフェノール類、ジフェニルホスフィノエチル、ジフェニルホスフィノプロピルなどのホスフィン類、ノルボルネニルエチルなどのノルボルネニル類、シアノエチル、シアノプロピル、−OSi(CHCHCHCHCNなどのニトリル類、イソシアナトプロピル、−OSi(CHCHCHCHNCOなどのイソシアネート類、3−クロロプロピル、クロロベンジル(−CCHCl)、クロロベンジルエチル、4−クロロフェニル、トリフルオロプロピル(8トリフルオロプロピル置換を有するT立方体を含む)などのハロゲン化物類、エチルウンデカノアト−1−イルおよびメチルプロピオナト−1−イルなどのエステル類で官能化されたT、T、T10、またはT12構造を含む。ポリ(ジメチル−コメチルヒドリド−コ−メチルプロピルポリマー類、ポリ(ジメチル−コメチルビニル−コ−メチルエチルシロキシ)、ポリ(エチルノルボネニル−コ−ノルボネン)およびポリ(エチルシルセスキノキサン)などの一定のポリマー類を使用してPOSSを官能化してもよい。これらの置換体の多くは、ハイブリッドプラスチック社およびゲレストからTPOSSで市販されている。
【0019】
POSSモノマー類は、例えば、ラジカル重合法などの標準技術を用いて重合することができ、無機−有機ハイブリッドコポリマー類が提供される。コポリマー類はランダムに分配されたPOSS、またはPOSSモノマー類のブロック類を含むことができる。例えば、ブロックシルセスキノキサンポリマーは、所望の長さまでホモポリマー鎖を成長させ、続いて、第2のモノマーフィード(feed)を付加し、その後、所望のセグメント鎖に到達するまで重合させることにより製造してもよい。このプロセスでは、その後、再付加および重合を実施することができる。2またはそれ以上のシルセスキノキサンオリゴマー類を溶液に添加し、その後、重合させ、ランダムにまたは規則的にシルセスキノキサンユニットを含むポリマーを形成させることにより、この手順の変形を実施することができる。
【0020】
その代わりに、または共重合に追加して、多面体ポリゴマーシルセスキノキサンを予め形成させたポリマーバックボーンまたは鎖に共有結合させてもよい。POSSが1つの官能性結合点を含む場合、例えば、反応基Yがヒドリド、クロリド、またはアルコールである場合、グラフト反応を使用してもよい。例えば、末端ビニル基を用いた、多面体オリゴマーシルセスキノキサンのポリマーへのグラフト反応は、THF溶液中、数時間にわたり、ヒドロシリル化触媒、例えばカールステッド(Karsted)触媒またはスパイヤ(Spier)触媒、例えばヘキサクロロ白金酸の存在下、進行させてもよい。この反応からのシルセスキノキサンポリマー類の合成は、親ポリマーのビニル結合を横切る反応性珪素−水素結合の付加により得られる。
【0021】
ポリマー中の共有結合POSSの量は、共有結合POSSを含むポリマーの総重量に対し、約20重量%(wt%)〜約80wt%とすることができる。特定の量は、共有結合POSSを含むポリマーの総重量に対し、約30〜約70wt%であり、さらに特定的には約40〜60wt%である。
【0022】
誘電材料は、さらに、任意で、共有結合POSSと同じまたは異なる分散POSSを含んでもよい。適した分散POSSは、例えば、ビニルPOSSである。存在する場合、分散POSSは誘電材料の総重量の約20wt%〜約80wt%とすることができる。特定量は、誘電材料の総重量に対し、約30〜約70wt%、さらに特定的には約40〜約60wt%である。
【0023】
共有結合POSSを含むポリマーの他に、誘電材料は他の添加剤、例えば、ポリマー類、架橋剤、硬化剤、などを含んでもよい。例えば、誘電材料は、回路基板材料での使用が公知の他のポリマー類、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどを含んでもよい。このように、誘電材料は、誘電材料の総重量に対し、約5wt%〜約70wt%の、共有結合POSSを含むポリマーとは化学的に異なる第2のポリマーを含んでもよい。第2のポリマーの特定量は、誘電材料の総重量に対し、約10〜約60wt%、より特定的には約15〜約50wt%である。
【0024】
1つの実施形態では、第2のポリマーは約10,000未満の分子量を有し、POSSと共有結合可能な反応基を含む低分子量ポリマーとしてもよい。そのようなポリマー類は相溶化剤および/または架橋剤として有益である場合がある。適した反応基としては、エポキシ、マレアート、ヒドロキシ、カルボキシル、メタクリレート、およびアルケニル基、より特定的にはビニル基が挙げられる。適した第2のポリマー類としては、例えば、低分子量ポリブタジエン、アルケニル末端ポリフェニレンオキシド類、(メタ)アクリレートポリマー類などが挙げられる。低分子量熱硬化性ポリブタジエン−またはポリイソプレン−系樹脂としては、エポキシ、マレアート、ヒドロキシ、カルボキシルおよびメタクリレート−官能化樹脂が挙げられるが、それらに限定されない。可能な官能化液体ポリブタジエン樹脂類は、日本ソーダ株式会社(Nippon Soda Co.,Ltd.)から入手でき、商標ニッソ(Nisso)G−1000、G−2000、G−3000、ニッソC−1000、ニッソBN−1010、BN−2010、BN−3010、CN−1010、ニッソTE−2000およびニッソBF−1000のものが挙げられる。別の適した官能化ポリマーがコロラドケミカルスペシャルティズ社(Colorado Chemical Specialties,Inc.)から商標リコン(Ricon)131/MAとして市販されている。
【0025】
例えば分子の末端珪素原子の各々に1つ結合している、1分子あたり平均2つの珪素結合アルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン類もまた適した第2のポリマー類である。ポリジオルガノシロキサンの有機基は、それぞれ独立して、16までの炭素原子を有する一価炭化水素、特定的には8までの炭素原子を有するアルキルまたはアリール基、より特定的には6までの炭素原子を有する低級アルキル、最も特定的にはメチルとしてもよい。アルケニル基は8までの炭素原子を有してもよく、特定的にはビニル基である。適したポリジオルガノシロキサン類としては、ポリジアルキルシロキサン類、例えばα,ω−ビニルジメチルシロキシポリジメチルシロキサン、ポリジアリールシロキサン類、例えばα,ω−ビニルジフェニルシロキシポリジフェニルシロキサン、またはポリアルキルアリールシロキサン類、例えばα,ω−ビニルメチルフェニルシロキシポリメチルフェニルシロキサン、などが挙げられる。ジアルキルシロキサンおよびジアリールシロキサン基を含むコポリマー類、例えばビニル末端コポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)もまた使用してもよい。前記第2のポリマー類の少なくとも1つ、例えばトリアリルイソシアヌレートを含む混合物もまた使用してもよい。
【0026】
小分子架橋剤、例えばトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、および多官能性アクリレートモノマー類(例えば、アルコスペシャルティケミカルズ社(Arco Specialty Chemicals Co.)から入手可能なサートマー(Sartomer)化合物)、およびそれらの組み合わせもまた使用してもよく、これらは全て市販されている。熱硬化性組成物の架橋剤量は、当業者であれば、組成物の所望の難燃性、他の構成成分の量、および最終製品において所望の他の特性によって、容易に決定することができる。一般に、有効量は、誘電材料の樹脂部分の総重量に対し、約0.5〜約15、特定的には約1〜約10、より特定的には約5〜約8wt%である。
【0027】
好ましい硬化剤は有機ペルオキシド類、例えばジクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾアート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、α,α−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、およびt−ブチルペルオキシヘキシン−3であり、これらは全て市販されている。これらは単独で、または組み合わせて使用してもよい。硬化剤の典型的な量は、100部の総樹脂組成物あたり約1.5部(PHR)〜約6PHRである。適当な量の有機ペルオキシド、例えばジクミルペルオキシドおよびt−ブチルペルベンゾアートペルオキシドを使用すると、誘電材料のかなり低い硬化温度が達成される可能性がある。
【0028】
ポリマー類の靱性を向上させ、および/または脆性を減少させるために、エラストマーを必要に応じて組成物に添加してもよい。必要に応じて用いる適したエラストマー類としては、例えば、エチレン−プロピレンエラストマー(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーエラストマー(EPDM)、スチレン−ブタジエンエラストマー(SBR)、スチレンブタジエンブロックコポリマー類(SB)、1,4−ポリブタジエン、他のポリブタジエンブロックコポリマー類、例えば、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック(SIS)、スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレントリブロック(SEBS)、スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレントリブロック(SEPS)、およびスチレン−(エチレン−ブチレン)ジブロック(SEB)、ポリイソプレン、エラストマー系(メタ)アクリレートホモポリマー類およびコポリマー類、シリコーンエラストマー類、フルオロポリマーエラストマー類、ブチルゴム、ウレタンエラストマー類、ノルボルネンおよびジシクロブタジエン系エラストマー類、アクリロニトリルとのブタジエンコポリマー類、(メタ)アクリレートエステル類またはカルボキシル化ビニルモノマー類、イソプレンのアクリロニトリルとのコポリマー類、アクリレートエステル類、メタクリレートエステル類またはカルボキシル化ビニルモノマー類、ならびに前記エラストマー類の1または複数を含む組み合わせが挙げられる。
【0029】
エラストマーは存在する場合、特定的に、誘電材料の総重量の約1wt%〜最大約50wt%の量で使用される。特定量は、誘電材料の総重量に対し、約5〜約40wt%、より特定的には約10〜約30wt%である。
【0030】
必要に応じて用いる分散POSSの他に、またはその代わりに、誘電材料は1または複数の他の誘電性粒状フィラー類を含んでもよい。有益な粒状フィラー類としては、二酸化チタン(ルチルおよびアナターゼ)、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、溶融アモルファスシリカおよびフュームドシリカを含むシリカ(粒子および中空球)、他の中空セラミック球、コランダム、ウォラストナイト、アラミド繊維(例えば、デュポン(DuPont)からのケブラール(KEVLAR))、ガラス繊維、BaTi20、ガラス球、石英、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ベリリア、アルミナおよびマグネシアが挙げられるが、それらに限定されない。粒状フィラー類は単独で、または組み合わせて使用してもよい。特に有益な粒状フィラー類はルチル型二酸化チタンおよびアモルファスシリカである。これらのフィラー類は、それぞれ、高いおよび低い誘電定数を有し、このため、組成物中の2つのフィラー類の個々の量を調節することにより、最終製品において低い散逸率を有するブロードな範囲の誘電定数を達成することができるからである。フィラー類とポリマーとの間の接着を向上させるために、フィラーは1または複数のカップリング剤、例えばシラン類、ジルコン酸塩類、またはチタン酸塩類で処理してもよい。
【0031】
誘電粒状フィラーの総量は、存在する場合、一般に、誘電組成物の総重量の約20〜約80wt%である。特定量は、誘電材料の総重量に対し、約30〜約70wt%、より特定的には約40〜約60wt%である。
【0032】
特に、誘電体基板として使用する場合、誘電材料はさらに、繊維状ウエブを含んでもよく、繊維状ウエブは本明細書で、誘電材料、回路基板材料およびそれらから形成される回路の形成に関係する処理条件に耐えることができる繊維の織または不織集合体として規定される。繊維状ウエブは、適した繊維、特定的にはガラス(E、S、およびDガラス)または高温ポリマー繊維(例えば、イーストマンコダックから得られるコデル(KODEL)ポリエステルまたはフィリップスペトロレウム(Phillips Petroleum)から得られるポリフェニルスルフィド繊維)の熱的に安定なウエブ、クラレ(Kuraray)から得られるベクトリス(Vectris)を含む。そのような熱的に安定な繊維による強化により、複合物には所望の構造的剛性が付与される。さらに、繊維状ウエブを使用すると誘電材料にかなり高い機械強度が付与される。
【0033】
繊維状ウエブの具体例を下記表1に示す。
【表1】

【0034】
繊維状ウエブは誘電材料の総重量の約10wt%〜約50wt%を占めることができる。特定量は、誘電材料の総重量の約15wt%〜約40wt%、より特定的には約20〜約30wt%である。誘電材料の厚さは特定的には約1〜約120ミル(約0.025〜約3.05mm)である。
【0035】
一般に、POSS含有ポリマー系は溶液中で処理される。共有結合POSSを含むポリマーと、任意の追加のポリマー類と、任意の分散POSSと、任意の粒状フィラー類と、任意の必要に応じて用いる成分、例えばペルオキシド類、ビニルアルコキシシラン類などの架橋剤と、をポリマー系が溶解可能な任意の溶媒中で完全に混合してもよい。混合温度は、成分の実質的な分解、架橋、または他の反応が起きないように調節する。粒状フィラーが組成物全体に均一に分散されるまで、混合し続ける。粒状フィラーは、試薬をより有効に使用するために、別の工程でシラン類と共に予め加熱してもよい。必要に応じて、シラン類ならびにペルオキシド硬化剤をスラリー中に含有させてもよい。
【0036】
組成物が織または不織ウエブを含む場合、スラリーをウエブ上に、例えばワニスとしてコートすることができる。溶媒をウエブから除去した後、ウエブはプリプレブの形態である。
【0037】
回路材料、回路、および多層回路を形成するために有益な導電層としては、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、亜鉛、鉄、遷移金属類、および前記の少なくとも1つを含む合金類が挙げられ、銅が特に有益である。導電層の厚さに関しては特別な制限はなく、導電層の形状、サイズまたは表面テクスチャーに関しても制限はない。しかしながら、特に、導電層は約3μm〜約200μmの厚さを有し、約9μm〜約180μmがとりわけ有益である。2またはそれ以上の導電層が存在する場合、2つの層の厚さは同じであっても、異なってもよい。
【0038】
銅導電層は特に有益である。銅導電層は表面積を増大させるように処理することができ、導電層の酸化を防止するように安定化剤で処理することができ(例えば、汚れ防止)、または熱障壁を形成するように処理することができる。亜鉛または亜鉛合金熱障壁で処理した粗さの低いおよび高い銅導電層はどちらも特に有益であり、さらに、必要に応じて汚れ防止層を備えてもよい。そのような銅導電層は、例えば、コ−テック(Co−Tech)から商標TWX、TWおよびTAXとして、オーク−ミツイ(Oak−Mitsui)から商標TOBとして、サーキットフォイルルクセンブルグ(Circuit Foil Luxembourg)から商標TWSおよびNT TORとして、ゴールドエレクトロニクスから商標JTCSとして、ならびにチャンチュンペトロケミカルカンパニー(Chang Chun Petrochemical Company)から商標PINKとして入手可能である。
【0039】
前に述べたように、結合POSSを含むポリマーは、回路積層板、ボンドプライ、および樹脂コート導電層などの回路材料の形成のための誘電材料として有益である。それらの回路材料の全てまたはいくつかを使用して回路および多層回路を形成してもよい。誘電材料の流動性の程度により、樹脂コート導電層で見られるような実質的に非流動性の誘電体のための誘導体基板、またはボンドプライなどの流動性誘電体を形成してもよい。誘電体基板は、回路製造中および使用中の流動性の程度が実質的に低いことを特徴とする。本明細書で開示した材料以外の材料を含む誘電材料を本明細書で開示した誘電材料と組み合わせて使用し、回路材料、回路および多層回路を形成してもよいと考えられる。
【0040】
バッチプロセスまたは半連続プロセスを使用する場合、共有結合POSSを含むポリマーを有する誘電材料の少なくとも1つの層、および回路または多層回路形成するために使用される任意の所望の、必要に応じて用いられる追加の層は、所望の順に配列されスタックが形成される。その後、スタックをプレス内に置く。プレスは排気され、真空を形成してもよく、そうでなくてもよい。典型的なプレスサイクルでは、温度は約2〜約10℃/分の速度で上昇させる。温度が所望の積層温度に到達すると直ちに、圧力を約2〜約3メガパスカル(MPa)まで増加させる。所望の温度は誘電材料の組成に依存するが、温度は典型的には約100℃〜約170℃、特に約130℃である。スタックを所望の温度および圧力で、層を接着させるのに十分な時間、約5〜約45分間保持する。得られた物品をその後、所望の圧力を維持しながら冷却する。スタックは必要に応じて約200℃〜約350℃の温度、特に約250℃で約2時間、ポストベークしてもよい。温度が約100℃以下になると物品をプレスから取り出し、使用するまで貯蔵してもよい。
【0041】
第1の例示的な実施形態を図1に示す。図において、回路材料10は誘電材料12上に配置された導電層20を備える。本明細書および開示内容全体で使用されるように、配置されたという用語は、複数の層が互いに部分的にまたは完全に被覆していることを含む。誘電材料12は共有結合POSS14を含むポリマーと、粒状フィラー16と、織ウエブ18と、を有する。誘電層12が実質的に非流動性である(すなわち、誘電体基板)場合、シングルクラッド回路積層板が提供され、誘電層12が回路作製中、例えば、積層中に流動性である場合、樹脂カバー導電層が提供される。
【0042】
図2は別の実施形態を示す図であり、図において、回路材料30は、粒状フィラーまたは織ウエブ無しで、共有結合POSS34を含むポリマーを有する誘電層32を備える。誘電層32は導電層36上に配置される。誘電層32が実質的に非流動性である(すなわち、誘電体基板)場合、シングルクラッド回路積層板が提供され、誘電層32が回路製造中、例えば、積層中に流動性である場合、樹脂カバー導電層が提供される。さらに、導電層36は回路層(図示せず)の形態であってもよく、シングルクラッド回路(図示せず)が形成される。
【0043】
別の例示的な実施形態を図3に示す。図において、ダブルクラッド回路積層板40は導電層50と導電層52との間に配置された誘電体基板42を備える。誘電体基板42は、共有結合POSS44を含むポリマーと、粒状フィラー46と、織ウエブ48と、を有する。さらに、導電層50、52のうちの1つまたは両方は回路層(図示せず)の形態としてもよい。
【0044】
図4は導電層62と導電層68との間に配置された誘電体基板64を備えるダブルクラッド回路積層板60の別の実施形態を示す。誘電体基板64は共有結合POSS66を含むポリマーを有するが、粒状フィラーまたは織ウエブは添加されていない。さらに、導電層62、68のうちの1つまたは両方をエッチし、回路層(図示せず)を形成してもよい。
【0045】
図5は樹脂コート導電層152の1つの実施形態を備える多層回路150を示した図である。ここで、樹脂コート導電層152は、流動性誘電材料156上に配置された導電層154を備える。流動性誘電材料156は誘電体基板層162と反対側の、回路層160上のダブルクラッド回路158の回路層160上に配置される。誘電体基板層162は導電層164上に配置される。この実施形態では、流動性誘電材料156は粒状フィラー168および/または織ウエブ170を含む。別の実施形態では、ウエブは省略してもよい(図示せず)。誘電体基板層162は粒状フィラー174、および/またはウエブ176を含む。流動性誘電材料156および/または誘電体基板層162の少なくとも1つは、共有結合POSS166、172を含むポリマーを有する。
【0046】
図6はダブルクラッド回路188上に配置した樹脂コート導電層182を備える多層回路180を示す図である。樹脂コート導電層182は流動性誘電材料186上に配置された導電層184を含む。ダブルクラッド回路188は回路層190と導電層194との間に配置された誘電体基板192を備える。流動性誘電材料186および/または誘電体基板192の少なくとも1つは共有結合POSSを含むポリマーを有する。流動性誘電材料186および/または誘電体基板192のうちの1つまたは両方は粒状フィラーを含んでもよい。
【0047】
上記のように誘電材料は許容される誘電特性、すなわち、約4未満、特定的には約3.8未満、より特定的には約3.6未満の誘電定数、および約0.015未満、特定的には約0.010未満、さらに好ましくは約0.008未満の散逸率を有する。これらはそれぞれ、1〜10ギガヘルツ(GHz)にわたり測定した。誘電材料はUL−94に従い測定するとV−0規格であり、燃焼時間(burn time)が約1秒である。Z−軸熱膨張係数は約60ppm、特定的には約40ppm未満である。
【実施例】
【0048】
本発明を、下記の非制限的な実施例により説明する。
【0049】
下記実施例の調製において使用する材料としては、ハイブリッドプラスチック社から商標PM1284Xとして入手可能なPOSS樹脂系、ゲレストから商標PS782として入手可能なビニル末端コポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、CEミネラルズ(Minerals)から商標CE44iとして入手可能な溶融アモルファスシリカ、ヌシルケミカルコーポレーション(Nusil Chemical Corporation)から商標CF−4721として入手可能なシリコーン樹脂(フェニルシルセスキノキサン)、ゲレストから50wt%のトルエン溶液として入手可能なトリエトキシシリル修飾ポリ−1,2−ブタジエン(「M−PBD」)(粘度100〜200cSt.、Mw3500〜4500、密度0.90)、ジェネラルエレクトリック社(General Electric Corporation)から商標A−171として入手可能なビニルトリメトキシシラン(「シラン」)、および日本化成(株)(Nippon Kasei Chemical Inc)から商標ペルカリンク(Perkalink)301として入手可能なトリアリルイソシヌレート(「TAIC」)が挙げられる。過酸化ジクミル(「Dicup」)を開始剤として使用した。実施例の積層板を調製する際に使用したガラス布は、へキセル−シュエーベル社からのスタイル1080織ガラス布である。積層板を調製するために使用した銅箔は、三井(株)(Mitsui Corporation)から商標MQ−VLとして入手可能な1平方フットあたり1/2オンス(oz/ft)の銅箔である。これらの材料は、下記表2の成分の概要に含まれる。
【0050】
引受会社の実験室法(Underwriter’s Laboratory Method)UL−94に従い、燃焼/消炎試験を実施する。高さ3/4(1.9cm)の内部錐体を有する炎を各試料に適用し、距離3/8(1.0cm)だけ試料の下方端を炎のベース(base)から分離する。炎をその位置で10秒間保持し、その後、除去する。燃焼時間(T)を、試料から炎が出て、消えるのに必要な時間として規定する。試料の燃焼が30秒のT以内で中断すると、炎をさらに10秒間適用し、第2の燃焼時間(T)を決定する。引受会社の実験室法UL−94によるUL燃焼性規格は下記の通りである。
【0051】
V−0規格では、第1または第2の適用から得られる個々の燃焼時間が10秒を超えない可能性がある。任意の5つの試料に対する燃焼時間の合計は50秒を超えない可能性がある。試料の下に位置する、一片の綿ガーゼを点火する落下物(ドリップ:drip)粒子は許容されていない。
【0052】
V−1規格では、第1または第2の適用から得られる個々の燃焼時間が30秒を超えない可能性がある。任意の5つの試料に対する燃焼時間の合計は250秒を超えない可能性がある。試料の下に位置する、一片の綿ガーゼを点火するドリップ粒子は許容されていない。
【0053】
V−2規格では、第1または第2の適用から得られる個々の燃焼時間が30秒を超えない可能性がある。任意の5つの試料に対する燃焼時間の合計は250秒を超えない可能性がある。試料の下に位置する、一片の綿ガーゼを点火するドリップ粒子は許容される。
【0054】
F規格は可燃性を示す。
【0055】
IPC−TM−650−2.5.5.5に従い、誘電定数を決定する。IPC−TM−650−2.5.5.5に従い、散逸率を決定する。ASTM D570に従い、水吸収率を決定する。
【0056】
実施例で調製した積層板は、表2で示した硬化条件を用いて形成させた。別の積層温度および期間を示す場合、使用した条件を実施例において特定する。必要に応じて用いる後処理を除き、積層は100psiで実施する。後処理は、オーブン内、大気圧で実施する。
【0057】
【表2】

【0058】
<実施例1>
この実施例では、複合材料系は、33.5重量部のPM1284Xと、47.1重量部のCE44iと、0.7重量部のジカップ(dicup)とを含むように作製した。これらの成分をキシレン中、50重量%固体の濃度で混合し、その後、スタイル1080織ガラス布上にコートし、乾燥固体を基本として18.8重量部の布が提供されるようにした。乾燥させたプリプレグをその後、表2で示した温度プロファイルで銅箔の2つのシート間で積層させ、この場合、加熱ステージ4を250℃で1時間実施した。得られた積層板は、表3に示されるように、優れた誘電特性を有した。
【0059】
<実施例2>
この実施例では、複合材料系は、31.4重量部のPM1284Xと、3.2重量部のPS782と、49.5重量部のCE44iと、0.7重量部のジカップとを含むように作製した。これらの成分をキシレン中、50重量%固体の濃度で混合し、その後、ガラス布上にコートし、乾燥固体を基本として18.8重量部の布が提供されるようにした。乾燥させたプリプレグをその後、表2で示した温度プロファイルで銅箔の2つのシート間で積層させ、この場合、加熱ステージ4を250℃で1時間実施した。得られた積層板は、表3に示されるように、優れた誘電特性および難燃性を有した。
【0060】
【表3】

【0061】
<実施例3〜8>
これらの実施例では、複合材料系は、40.2重量部のPM1284Xと添加剤A(添加剤AのPM1284Xに対する比率については表4を参照のこと)とのブレンドと、47.4重量部のCE44iと、0.4重量部のA−171と、0.7重量部のジカップとを含むように作製した。これらの成分をキシレン中、50重量%固体の濃度で混合し、その後、ガラス布上にコートし、乾燥固体を基本として18.8重量部の布が提供されるようにした。乾燥させたプリプレグをその後、表2で示した温度プロファイルを用い銅箔の2つのシート間で積層させ、この場合、特に記載がなければ、加熱ステージ4を290℃で2時間実施した。得られた積層板の特性を下記表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
上記結果から、ポリブタジエンおよび修飾ポリブタジエンなどのエラストマー類、TAICなどの小分子架橋剤、およびポリマーシリコーンを使用して、ポリマーPOSSの一部を置換してもよく、実施例で使用した組成物の水吸収度、電気特性、および難燃性が改善される。上記実施例からわかるように、POSS量(charge)の増大部分としてポリブタジエン添加剤(修飾または未修飾)を使用すると、一般に誘電定数が改善され、水吸収度が低くなる(修飾PBDの場合を除く)が、BPDを有しない実施例1および2と比較すると、難燃性が一般に減少する。POSS量の少量をCF2−4721で置換すると、これはよりコストの低い希釈剤であるが、実施例1の電気特性に相当する特性が得られる。
【0064】
<実施例9〜11>
これらの実施例では、複合材料系は、37.3重量部のPM1284Xとシランとのブレンド(シランのPM1284Xに対する重量比に対しては表5を参照のこと)と、43.1重量部のCE44iと、0.8重量部のジカップとを含むように作製した。これらの成分をキシレン中、50重量%固体の濃度で混合し、その後、ガラス布上にコートし、乾燥固体を基本として18.8重量部の布が提供されるようにした。乾燥させたプリプレグをその後、表2で記述した条件に従い、銅箔の2つのシート間で積層させ、この場合、加熱ステージ4を290℃で2時間実施した。得られた積層板の特性を下記表5に示す。
【0065】
【表5】

【0066】
上記データより、シラン添加剤は燃焼性に悪影響を与えないこと、シランを添加していない実施例1の結果と比較すると、少量のシランの添加により、散逸率(Df)が減少することが示される。
【0067】
<積層後ベーク試験>
実施例3〜7および9の積層板をさらに、表3で示した積層後ベーク処理し、ここで、使用した積層後条件は下記表6および7で特定する。比較例1は、実施例1のために記述した組成に従い添加剤A無しで調合した。
【0068】
表6は、積層後、および積層後ベーク後の実施例3〜7および9から得られた積層板に対する誘電定数(Dk)および散逸率(Df)の比較を示したものである。
【0069】
【表6】

【0070】
上記結果により、積層板のポストベークにより積層板の散逸率が改善することが示される。
【0071】
表7は積層後、および積層後ベーク後の実施例3〜7から得られる積層板に対する水吸収%の比較を示したものである。
【0072】
【表7】

【0073】
上記結果により、ポストベークは積層板の水吸収に有意の影響を与えないことが示される。
【0074】
単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈で特に明確に記載されていなければ、複数の対象物を含む。同じ特性を列挙する全ての範囲の終点は合体させることができ、列挙された終点を含む。全ての参考文献は参照により本明細書に組み入れられる。
【0075】
特定の実施形態を示し、記述してきたが、本発明の精神および範囲を逸脱せずに、これらの実施形態に対し様々な改変および置換が可能である。したがって、本発明について実例により記述してきたが、限定するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】共有結合多面体シルセスキノキサンポリマー材料と、織ウエブと、導電層と、を備える例示的な回路材料の概略図である。
【図2】共有結合多面体シルセスキノキサンポリマー材料と、導電層と、を備える例示的な回路材料の概略図である。
【図3】共有結合多面体シルセスキノキサンポリマー材料と、織ウエブと、2つの導電層と、を備える例示的なダブルクラッド回路材料の概略図である。
【図4】共有結合多面体シルセスキノキサンポリマー材料と、2つの導電層と、を備える例示的なダブルクラッド回路材料の概略図である。
【図5】共有結合多面体シルセスキノキサンポリマー材料を備える例示的なダブルクラッド回路積層板の概略図である。
【図6】共有結合多面体シルセスキノキサンポリマー材料を備える例示的な多層回路の概略図である。
【符号の説明】
【0077】
10,30 回路材料、12 誘電材料、14,34,44,66 共有結合POSS、16,46 粒状フィラー、18,48 織ウエブ、20,36,50,52,62,68 導電層、32 誘電層、40,60 ダブルクラッド回路積層板、42 誘電体基板、150,180 多層回路、152,182 樹脂コート導電層、154,164,184,194 導電層、156,186 流動性誘電材料、158,188 ダブルクラッドル回路、160,190 回路層、162 誘電体基板層、166,172 共有結合POSS、168,174 粒状フィラー、170,176 織ウエブ、192、誘電体基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電ポリマーに共有結合された多面体シルセスキノキサンを含み、1〜10GHzにわたり測定すると誘電定数が4未満である、誘電材料。
【請求項2】
前記誘電ポリマーはアルケニル末端ポリジアルキルシロキサン、アルケニル末端ポリジアリールシロキサン、アルケニル末端ポリアルキルアリールシロキサン、またはアルケニル末端コポリ(ジアルキルシロキサン/ジアリールシロキサン)である、請求項1記載の回路材料。
【請求項3】
前記誘電ポリマーはビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ポリメチルフェニルシロキサン、またはビニル末端コポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)である、請求項1記載の回路材料。
【請求項4】
粒状フィラー、繊維状ウエブ、または前記材料の少なくとも1つを有する組み合わせをさらに含む、請求項1記載の回路材料。
【請求項5】
前記回路材料は、分散多面体シルセスキノキサンをさらに含む、請求項1記載の回路材料。
【請求項6】
第1の導電層と
第1の導電層上に配置し、誘電ポリマーに共有結合された多面体シルセスキノキサンを含む誘電材料の層と、
を備える回路または多層回路を形成するための回路材料。
【請求項7】
前記誘電ポリマーは、アルケニル末端ポリジアルキルシロキサン、アルケニル末端ポリジアリールシロキサン、アルケニル末端ポリアルキルアリールシロキサン、またはアルケニル末端コポリ(ジアルキルシロキサン/ジアリールシロキサン)である、請求項6記載の回路材料。
【請求項8】
前記誘電ポリマーはビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ポリメチルフェニルシロキサン、またはビニル末端コポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)である、請求項6記載の回路材料。
【請求項9】
エラストマーをさらに含む、請求項6記載の回路材料。
【請求項10】
前記誘電材料は、粒状フィラー、繊維状ウエブ、または前記材料の少なくとも1つを有する組み合わせをさらに含む、請求項6記載の回路材料。
【請求項11】
前記誘電材料は、分散多面体シルセスキノキサンをさらに含む、請求項6記載の回路材料。
【請求項12】
前記第1の導電層と反対側の、前記誘電材料の層上に配置された第2の導電層をさらに備える、請求項6記載の回路材料。
【請求項13】
前記導電層は銅である、請求項6記載の回路材料。
【請求項14】
前記導電層は回路形態である、請求項6記載の回路材料。
【請求項15】
前記結合多面体シルセスキノキサンは化学式(RSiO1.5を有し、ここで、Rは有機部分であり、nは6、8、10、12またはそれ以上である、請求項6記載の回路材料。
【請求項16】
前記有機部分はビニル部分である、請求項15記載の回路材料。
【請求項17】
1〜10GHzにわたり測定すると、誘電定数が4未満であり、散逸率は0.010以下である、請求項6記載の回路材料。
【請求項18】
請求項1記載の回路材料を備える回路。
【請求項19】
請求項6記載の回路材料を備える回路。
【請求項20】
第1の導電層上に誘電材料の層を配置する工程を含み、前記誘電材料は誘電ポリマーに共有結合された多面体シルセスキノキサンを含む、回路材料の形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−525803(P2007−525803A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551573(P2006−551573)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/003118
【国際公開番号】WO2005/072031
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(500105311)ワールド・プロパティーズ・インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】