説明

回路装置およびその製造方法

【課題】 導電パターン11と封止樹脂13との接合強度が向上された回路装置およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 本形態の回路装置10Aは、孔部18が設けられた導電パターン11と、この導電パターン11と電気的に接続された半導体素子12Aと、導電パターン11の裏面を露出させて半導体素子12Aおよび導電パターン11を被覆する封止樹脂13とを有する。導電パターン11に穿設された孔部18に封止樹脂13が充填されることにより、導電パターン11と封止樹脂13との密着強度が向上されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路装置およびその製造方法に関し、特に、導電パターンと樹脂材料との接着力が強化された回路装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器にセットされる回路装置は、携帯電話、携帯用のコンピューター等に採用されるため、小型化、薄型化、軽量化が求められている。例えば、回路装置として半導体装置を例にして述べると、最近ではCSP(チップサイズパッケージ)と呼ばれる、チップのサイズと同等のウェハスケールCSPが開発されている。
【0003】
図9は、支持基板としてガラスエポキシ基板65を採用した、チップサイズよりも若干大きいCSP66を示すものである。ここではガラスエポキシ基板65にトランジスタチップTが実装されたものとして説明していく。
【0004】
このガラスエポキシ基板65の表面には、第1の電極67、第2の電極68およびダイパッド69が形成され、裏面には第1の裏面電極70と第2の裏面電極71が形成されている。そしてスルーホールTHを介して、前記第1の電極67と第1の裏面電極70が接続されている。更にスルーホールTHを介して、第2の電極68と第2の裏面電極71が電気的に接続されている。またダイパッド69にはトランジスタチップTが固着され、トランジスタのエミッタ電極と第1の電極67が金属細線72を介して接続される。更に、トランジスタのベース電極と第2の電極68が金属細線72を介して接続されている。トランジスタチップTを覆うようにガラスエポキシ基板65に樹脂層73が設けられている。
【0005】
前記CSP66は、チップTから外部接続用の裏面電極70、71までの延在構造が簡単であり、安価に製造できるメリットを有する。
【0006】
しかしながら、上記したCSP66は、ガラスエポキシ基板65をインターポーザとして用いており、このことによりCSP66の小型化および薄型化には限界があった。このことから、実装基板を不要にした回路装置80が開発された(例えば、特許文献1を参照。)。
【0007】
図10を参照して、回路装置80では、固着材88を介して、導電パターン81に回路素子82が固着されている。そして、回路素子82と導電パターン81とは、金属細線84により接続されている。封止樹脂83は、導電パターン81の裏面を露出させて回路素子82、金属細線84および導電パターン81を被覆している。従って、回路装置80は実装基板を不要にして構成されており、CSP66と比較すると、薄型且つ小型に形成されていた。
【特許文献1】特開2002−076246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した回路装置80では、導電パターン81の上面が平滑面と成っていたために、導電パターン81と封止樹脂83との接着力が弱い問題があった。従って、導電パターン81が封止樹脂83から剥離してしまう問題があった。
【0009】
特に、外部電極85として鉛フリー半田を用いた場合は、上記した問題が顕著に発生する。これは、鉛フリー半田の溶融温度が鉛共晶半田と比較すると高いために、外部電極85を溶融させて回路装置80の実装を行うリフローの工程の温度が高くなるからである。このリフローの工程では、例えば250℃の高温に回路装置80が晒される。また、導電パターン81と封止樹脂83とは、熱膨張係数が異なる。従って、導電パターン81と封止樹脂83との界面に熱応力が作用して、両者が界面から剥離してしまう問題が発生していた。
【0010】
従って、本発明の主な目的は、導電パターンと封止樹脂との接合強度が向上された回路装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の回路装置は、回路素子と、前記回路素子に電気的に接続された導電パターンと、少なくとも前記回路素子を被覆するように形成された封止樹脂とを具備し、前記導電パターンに設けた孔部に前記封止樹脂を埋め込むことを特徴とする。
【0012】
更に本発明の回路装置は、導電パターンと、前記導電パターンに電気的に接続された回路素子と、前記導電パターンの裏面を露出させて前記回路素子および前記導電パターンを被覆する封止樹脂とを具備し、前記導電パターンに設けた孔部に前記封止樹脂を埋め込むことを特徴とする。
【0013】
更に本発明の回路装置では、周辺部に位置する前記導電パターンに、複数個の前記孔部を設けることを特徴とする。
【0014】
更に本発明の回路装置では、前記孔部は、前記導電パターンを貫通することを特徴とする。
【0015】
更に本発明の回路装置では、前記孔部の径は、前記導電パターン同士が離間する距離と実質同一であることを特徴とする。
【0016】
本発明の回路装置の製造方法は、導電箔をパターニングすることにより導電パターンを形成し、更に前記導電パターンに孔部を形成する工程と、前記導電パターンに回路素子を電気的に接続する工程と、前記導電パターンおよび前記回路素子が被覆され、前記孔部に充填されるように封止樹脂を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【0017】
更に本発明の回路装置の製造方法は、導電箔の表面に分離溝を形成することにより導電パターンを凸状に形成し、前記導電パターンが形成される領域の前記導電箔の表面に孔部を形成する工程と、前記導電パターンに電気的に回路素子を接続する工程と、前記回路素子が被覆され、前記分離溝および前記孔部が充填されるように封止樹脂を形成する工程と、前記分離溝に充填された前記封止樹脂が露出するまで前記導電箔を裏面から除去する工程とを具備することを特徴とする。
【0018】
更に本発明の回路装置の製造方法では、前記分離溝と前記孔部とは、エッチングにより同時に形成されることを特徴とする。
【0019】
更に本発明の回路装置の製造方法では、前記孔部に充填された前記封止樹脂は、前記導電パターンの裏面から露出することを特徴とする。
【0020】
更に本発明の回路装置の製造方法では、前記孔部は、前記回路素子が載置される領域を除いた箇所の前記導電パターンに形成されることを特徴とする。
【0021】
更に本発明の回路装置の製造方法では、前記孔部の深さを前記分離溝と実質同一にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の回路装置に依れば、導電パターンに設けた孔部に封止樹脂を埋め込むことにより、導電パターンと封止樹脂との密着強度を向上させることができる。従って、熱応力等が作用することにより、導電パターンと封止樹脂とが剥離するのを防止することができる。
【0023】
本発明の回路装置の製造方法に依れば、導電パターンをパターニングする際に、導電パターンに孔部を形成し、この孔部に封止樹脂を埋め込んでいる。従って、製造工程の途中段階にて、封止樹脂と導電パターンが剥離するのを防止することができる。更に、導電パターンと孔部とは、同時に行うエッチングにより形成することができる。従って、工程の増加を伴わず、孔部を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本形態の回路装置10Aの構成を説明する。図1(A)は回路装置10Aの斜視図であり、図1(B)はその平面図であり、図1(C)はその断面図である。
【0025】
図1(A)を参照して、本形態の回路装置10Aは、導電パターン11と、この導電パターン11と電気的に接続された回路素子12と、導電パターン11の裏面を露出させて回路素子12および導電パターン11を被覆する封止樹脂13とを有する。更に、導電パターン11には、封止樹脂13が充填される孔部18が形成されている。
【0026】
導電パターン11はロウ材の付着性、ボンディング性、メッキ性が考慮されてその材料が選択される。具体的には、Cuを主材料とした導電箔、Alを主材料とした導電箔またはFe−Ni等の合金から成る導電箔等が、導電パターン11の材料として採用される。ここでは、導電パターン11は裏面を露出させて封止樹脂13に埋め込まれた構造になっており、分離溝17により電気的に分離されている。導電パターン11はエッチングにより形成され、その側面は湾曲面に形成されている。
【0027】
更に、導電パターン11は、中央部付近に配置されたダイパッド11Bと、ダイパッド11Bを囲むよう配置された複数個のボンディングパッド11Aとから成る。ダイパッド11Bの上面には、半田等の固着材20を介して、半導体素子12Aが固着されている。半導体素子12Aの表面に設けられた電極と、ボンディングパッド11Aとは、金属細線14を介して接続される。各導電パターン11の間に設けられる分離溝17の幅W1は、例えば150μm以上である。
【0028】
回路素子としては、トランジスタ、ダイオード、ICチップ等の半導体素子12A、チップコンデンサ、チップ抵抗等のチップ素子である。これらの回路素子は、固着材20を介して導電パターン11の表面に固着される。また厚みが厚くはなるが、CSP、BGA等のフェイスダウンの半導体素子も実装できる。ここでは、フェイスアップで実装された半導体素子12Aが採用されている。更に、複数個の回路素子12から成るシステムが構成されてもよい。
【0029】
封止樹脂13は、導電パターン11の裏面を露出させて半導体素子12A、金属細線14および導電パターン11を被覆している。封止樹脂13としては、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を採用することができる。本発明の回路装置10Aは、封止樹脂13により全体が支持されている。また、各導電パターン11を分離する分離溝17には封止樹脂13が充填されている。更に、ボンディングパッド11Aには、孔部18が穿設されている。この孔部18に封止樹脂13が充填されることにより、ボンディングパッド11Aと封止樹脂13との密着強度が向上されている。
【0030】
分離溝17は、各導電パターン11の間に設けられて、各導電パターン11を電気的に分離する働きを有する。そして、分離溝17の幅W1は、基本的にどの箇所でもその幅が均一に形成され、例えば、150μm程度以上である。換言すると、各導電パターン11は、等間隔に離間されている。
【0031】
孔部18は、導電パターン11に穿設された孔状の領域であり、この孔部18に封止樹脂13が充填されることにより、封止樹脂13と導電パターン11との密着強度が向上されている。
【0032】
図1(C)を参照して、固着材20は、絶縁性接着剤または導電性接着剤から成り、半導体素子12A等の回路素子を導電パターン11に固着させる働きを有する。ここで、絶縁性接着剤としてはエポキシ樹脂等を採用することができる。また、導電性接着剤としては、鉛共晶半田、鉛フリー半田、銀ペースト、銅ペースト等を採用することができる。
【0033】
封止樹脂13から露出する導電パターン11の裏面には半田等のロウ材から成る外部電極15が設けられている。また、装置の裏面で外部電極15が設けられない箇所は、レジスト16で被覆されている。
【0034】
本形態では、導電パターン11に孔部18を設け、この孔部18に封止樹脂13を充填させることにより、導電パターン11と孔部18との密着強度を向上させている。図1(A)を参照すると、角部に位置するボンディングパッド11Aの各々に、1つの孔部18が形成されている。更に、図1(C)を参照すると、孔部18は、ボンディングパッド11Aを貫通して形成されている。即ち、孔部18に充填された封止樹脂18は、導電パターン11の裏面から露出している。ここでは、周辺部に位置するボンディングパッド11Aに孔部18を設けているが、他の導電パターン11に孔部18を設けても良い。
【0035】
更に、孔部18の径D1は、分離溝17の幅W1と同程度が好適である。例えば、D1およびW1は、150μm程度に形成される。孔部18および分離溝17はエッチングにより形成されるので、両者の幅および径を同程度にすることにより、深さを実質同一にすることができる。例えば、深さが60μm程度の孔部18および分離溝17が形成される。従って、分離溝17と同程度の深い孔部18が得られ、孔部18と封止樹脂13との密着強度が向上される。
【0036】
また、孔部18の径D1は、分離溝17の幅W1より広くても、狭くても良い。しかしながら、孔部18の径D1をW1以上(例えば150μm以上)に形成すると、孔部18が占める平面的面積が大きくなり、装置全体の小型化が阻害される。また、孔部18の径D1をW1よりも狭くすると、分離溝17よりも浅い深さの孔部18がエッチングにより形成される。従って、孔部18と封止樹脂13との密着強度が低下する。更に、分離溝17の径が小さすぎると、封止樹脂13が充填されない恐れもある。これらのことから、孔部18の径D1は、分離溝17の幅W1と同程度が好適である。
【0037】
図1(C)を参照して、外部電極15として鉛フリー半田を用いる場合でも、導電パターン11に孔部18を設けることにより、導電パターン11と封止樹脂13との密着を確保することができる。具体的には、外部電極15として鉛フリー半田を採用した場合は、外部電極15を溶融させて回路装置10Aの実装を行うリフローの工程にて、リフロー温度が250℃程度になる場合がある。このような高温の雰囲気に回路装置10Aが晒された場合、導電パターン11と封止樹脂13とは異なる膨張量を示すので、両者の界面には熱応力が作用する。本形態では、導電パターン11に設けた孔部18に封止樹脂13が充填されているので、熱応力により導電パターン11と封止樹脂13とが剥離してしまうのを抑止することができる。
【0038】
図2(A)は、実装基板30の表面に設けた導電路31に、回路装置10Aが実装された状態を示す断面図である。実装基板30と回路装置10Aとの熱膨張係数が異なると、温度変化に伴い、外部電極15に熱応力が作用する。更には、外部電極15が固着された導電パターン11にも、この熱応力が作用する。また、作用する熱応力は、回路装置10Aの中心部よりも周辺部の方が大きい。そこで、本形態では、孔部18を、回路装置10Aの周辺部に位置する導電パターン11に設けている。この構成により、周辺部に位置する導電パターン11と封止樹脂13との密着性を確保することができる。
【0039】
図2(B)を参照して、他の形態の回路装置10Bでは、多層の配線構造が形成されている。ここでは、絶縁層21を介して、第1の配線層22および第2の配線層23が積層されている。また、第1の配線層22と第2の配線層23とは、絶縁層21を貫通する接続部19により所望の箇所にて電気的に接続されている。
【0040】
第1の配線層22には、固着材20を介して、半導体素子12Aやチップ素子12Bが固着される。また、第1の配線層22には、孔部18が形成されており、この孔部18に封止樹脂13が充填されることで、第1の配線層22と封止樹脂13との密着強度が向上されている。孔部18は、底部から絶縁層21が露出する程度に深く形成される。
【0041】
第2の配線層23の裏面には、半田等のロウ材から成る外部電極15が形成される。また、外部電極15が形成される領域を除いて、第2の配線層23はレジスト16により被覆されている。ここで、第2の配線層23に孔部18が形成されても良い。このことにより、第2の配線層23とレジスト16との密着強度が向上される。
【0042】
<第2の実施の形態>
次に、図3から図7を参照して、図1に示した単層の導電パターン11を有する回路装置10Aの製造方法を説明する。
【0043】
本発明の第1の工程は、図3から図4に示すように、導電箔40に分離溝17を形成することにより凸状に突出する導電パターン11を形成し、導電パターン11に孔部18を形成することにある。
【0044】
本工程では、図3(A)の如く、シート状の導電箔40を用意する。この導電箔40は、Cuを主材料とした導電箔、Alを主材料とした導電箔またはFe−Ni等の合金から成る導電箔等が採用される。導電箔の厚さは、後のエッチングを考慮すると100μm〜300μm程度が好ましい。具体的には、図3(B)に示す如く、短冊状の導電箔40に多数のユニットが形成されるブロック42が4〜5個離間して並べられる。各ブロック42間にはスリット43が設けられ、モールド工程等での加熱処理で発生する導電箔40の応力を吸収する。また導電箔40の上下周端にはインデックス孔44が一定の間隔で設けられ、各工程での位置決めに用いられる。
【0045】
まず、図3(A)に示す如く、導電箔40の上に、耐エッチングマスクであるレジストPRを形成する。レジストPRは、形成予定の分離溝17および孔部18に対応する領域の導電箔40の表面が露出するようにパターンニングされている。このレジストPRをエッチングマスクとしてウェットエッチングを行うことにより、レジストPRから露出する導電箔40がエッチングされて分離溝17が形成される。更に、分離溝17と共に孔部18も形成される。
【0046】
図4を参照して、この工程で形成される具体的な導電パターン11の形状を説明する。図4(A)は分離溝17および孔部18が形成された導電箔40の断面図であり、図4(B)はその平面図である。
【0047】
図4(A)を参照して、導電箔40の表面に分離溝17が形成されることにより、凸状に突出した導電パターン11が形成されている。ここでは、ダイパッド11Bおよびボンディングパッド11Aから成る導電パターン11が形成されている。更に、ボンディングパッド11Aには、孔部18が形成される。ここで、分離溝17および孔部18の開口幅は、同程度に形成され、それら幅は例えば150μm程度である。更に、エッチングにより形成される分離溝17と孔部18との深さも同程度に形成され、その深さは例えば60μm程度である。
【0048】
図4(B)に具体的な導電パターン11を示す。本図は図3(B)で示したブロック42の1個を拡大したもの対応する。点線で囲まれた部分の1個が1つのユニット45である。1つのブロック42にはマトリックス状に複数のユニット45が配列され、各ユニット45毎に同一の導電パターン11が設けられている。ここでは、2行2列の4個のユニット45が形成されているが、更に多数個のユニット45を形成することも可能である。また、本工程が終了した後に、レジストPRは剥離される。
【0049】
個々のユニット45では、中央部にランド状のダイパッド11Bが形成され、このダイパッド11Bを囲むように複数個のボンディングパッド11Aが形成されている。更に、周辺部に位置するボンディングパッド11Aに、孔部18が形成されている。
【0050】
本発明の第2の工程は、図5(A)の断面図および図5(B)の平面図に示す如く、固着材20を介して回路素子を導電パターン11に固着することにある。
【0051】
回路素子12としては、トランジスタ、ダイオード、ICチップ等の半導体素子、チップコンデンサ、チップ抵抗等の受動素子である。また厚みが厚くはなるが、CSP、BGA等のフェイスダウンの半導体素子も実装できる。ここでは、半導体素子12Aの裏面が固着材20を介してダイパッド11Bの表面に固着されている。固着材20としては、半田等のロウ材または導電性ペーストを用いることができる。更には、エポキシ樹脂等の絶縁性接着剤を、固着材20として採用することもできる。
【0052】
本発明の第3の工程は、図6に示す如く、半導体素子12Aが被覆されて、分離溝17Aおよび孔部18に充填されるように封止樹脂13を形成することにある。
【0053】
本工程では、封止樹脂13は半導体素子12Aおよび複数の導電パターン11を被覆し、導電パターン11間の分離溝17には封止樹脂13が充填される。また、封止樹脂13は、導電パターン11側面の湾曲構造と嵌合して強固に結合する。更に、本形態では、孔部18に封止樹脂13が充填されることにより、封止樹脂13と孔部18との密着強度が向上されている。
【0054】
本発明の第4の工程は、図7(A)に示す如く、各導電パターン11を電気的に分離することにある。ここでは、分離溝17に充填された封止樹脂13が露出するまで導電箔40の裏面を除去して、各導電パターン11の分離を行う。具体的には、エッチャントを用いたウエットエッチングにより導電箔40を裏面から除去して、各導電パターン11が分離されている。
【0055】
本形態では、半導体素子12Aが固着される領域を除外した部分の導電パターン11に、孔部18が形成される。このことにより、孔部18に固着材20が充填されることによる問題を回避することができる。具体的には、孔部18を半導体素子12Aが載置されるダイパッド11Bに設けた場合、半導体素子12Aを固着させる固着材20が孔部18に充填される。この場合では、導電箔40を裏面から除去すると、孔部18に充填された固着材20が外部に露出して、エッチャントに接触してしまう。従って、孔部18を介して、固着材20と導電パターン11との界面にエッチャントが内部に侵入してしまい、両者の接続信頼性が低下してしまう。特に、固着材20として半田や導電性ペーストを採用した場合は、この問題が顕著に発生する。本形態では、孔部18には封止樹脂13が充填されており、両者の密着強度は大きいので、上記した問題は抑止されている。
【0056】
尚、固着材20としてエポキシ樹脂等の絶縁性接着剤を用いる場合は、半導体素子12Aが配置される領域に孔部18を設けても良い。絶縁性接着剤と導電パターン11との密着強度は大きいので、上記した問題が発生しないからである。
【0057】
更に本工程では、孔部18の深さは分離溝17と同程度であるので、孔部18に充填された封止樹脂13も裏面に露出する。各導電パターン11が分離された後は、露出する導電パターン11の裏面に外部電極15およびレジスト16が形成される。
【0058】
本発明の第5の工程は、図7(B)に示す如く、封止樹脂13を各ユニット45毎にダイシングにより分離することにある。図7(B)の平面図は、ブロック42を下面から見た図である。
【0059】
本工程では、ブレード49で各ユニット45間のダイシングラインに沿って封止樹脂13をダイシングし、個別の回路装置に分離する。ダイシングラインには分離溝に充填された封止樹脂13しか存在しないので、ブレード49の摩耗は少ない。更に、金属バリも発生せず極めて正確な外形にダイシングできる。
【0060】
<第3の実施の形態>
本形態では、図8を参照して、図2(B)に示した多層の配線構造を有する回路装置10Bの製造方法を説明する。
【0061】
図8(A)を参照して、先ず、第1の導電箔50と第2の導電箔51とが絶縁層21を介して積層される。第1の導電箔50と第2の導電箔51とは、絶縁層21を貫通する接続部19により所定の箇所にて接続されている。ここで、第1の導電箔50および第2の導電箔51の厚みは、例えば10μm〜50μmの範囲である。また、絶縁層21の厚みは、例えば10μm〜100μmの範囲である。
【0062】
図8(B)を参照して、次に、レジストPRを介したエッチングにより、第1の導電箔50および第2の導電箔51をパターニングする。このエッチングにより、第1の配線層22および第2の配線層23が形成される。更に、第1の配線層22に孔部18を形成する。第1の配線層22同士が離間する距離(W3)は、例えば40μm程度である。それに対して、孔部18の幅(W4)も40μm程度に形成される。
【0063】
図8(C)を参照して、次に、第1の配線層22に回路素子を固着する。ここでは、半導体素子12Aの裏面が固着材20を介して第1の配線層22に固着される。そして、チップ素子12Bの両端の電極も、固着材20を介して第1の配線層22に固着される。
【0064】
図8(D)を参照して、次に、回路素子が被覆されるように封止樹脂13を形成する。本形態では、第1の配線層22の孔部18が形成されているので、孔部18に封止樹脂13が充填されることにより、封止樹脂13と第1の配線層22との密着強度が向上されている。更に、第2の配線層23の裏面に外部電極15およびレジスト16を形成する。これらの工程により、回路装置10Bが製造される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の回路装置を示す斜視図(A)、平面図(B)、断面図(C)である。
【図2】本発明の回路装置を示す断面図(A)、断面図(B)である。
【図3】本発明の回路装置の製造方法を示す断面図(A)、平面図(B)である。
【図4】本発明の回路装置の製造方法を示す断面図(A)、平面図(B)である。
【図5】本発明の回路装置の製造方法を示す断面図(A)、平面図(B)である。
【図6】本発明の回路装置の製造方法を示す断面図である。
【図7】本発明の回路装置の製造方法を示す断面図(A)、平面図(B)である。
【図8】本発明の回路装置の製造方法を示す断面図(A)−(D)である。
【図9】従来の回路装置を示す断面図である。
【図10】従来の回路装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10A 回路装置
10B 回路装置
11 導電パターン
11A ボンディングパッド
11B ダイパッド
12 回路素子
12A 半導体素子
12B チップ素子
13 封止樹脂
14 金属細線
15 外部電極
16 レジスト
17 分離溝
18 孔部
19 接続部
20 固着材
21 絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路素子と、前記回路素子に電気的に接続された導電パターンと、少なくとも前記回路素子を被覆するように形成された封止樹脂とを具備し、
前記導電パターンに設けた孔部に前記封止樹脂を埋め込むことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
導電パターンと、前記導電パターンに電気的に接続された回路素子と、前記導電パターンの裏面を露出させて前記回路素子および前記導電パターンを被覆する封止樹脂とを具備し、
前記導電パターンに設けた孔部に前記封止樹脂を埋め込むことを特徴とする回路装置。
【請求項3】
周辺部に位置する前記導電パターンに、複数個の前記孔部を設けることを特徴とする請求項1または請求項2記載の回路装置。
【請求項4】
前記孔部は、前記導電パターンを貫通することを特徴とする請求項1または請求項2記載の回路装置。
【請求項5】
前記孔部の径は、前記導電パターン同士が離間する距離と実質同一であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の回路装置。
【請求項6】
導電箔をパターニングすることにより導電パターンを形成し、更に前記導電パターンに孔部を形成する工程と、
前記導電パターンに回路素子を電気的に接続する工程と、
前記導電パターンおよび前記回路素子が被覆され、前記孔部に充填されるように封止樹脂を形成する工程とを具備することを特徴とする回路装置の製造方法。
【請求項7】
導電箔の表面に分離溝を形成することにより導電パターンを凸状に形成し、前記導電パターンが形成される領域の前記導電箔の表面に孔部を形成する工程と、
前記導電パターンに電気的に回路素子を接続する工程と、
前記回路素子が被覆され、前記分離溝および前記孔部が充填されるように封止樹脂を形成する工程と、
前記分離溝に充填された前記封止樹脂が露出するまで前記導電箔を裏面から除去する工程とを具備することを特徴とする回路装置の製造方法。
【請求項8】
前記分離溝と前記孔部とは、エッチングにより同時に形成されることを特徴とする請求項6または請求項7記載の回路装置の製造方法。
【請求項9】
前記孔部に充填された前記封止樹脂は、前記導電パターンの裏面から露出することを特徴とする請求項7記載の回路装置の製造方法。
【請求項10】
前記孔部は、前記回路素子が載置される領域を除いた箇所の前記導電パターンに形成されることを特徴とする請求項6または請求項7記載の回路装置の製造方法。
【請求項11】
前記孔部の深さを前記分離溝と実質同一にすることを特徴とする請求項7記載の回路装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−128501(P2006−128501A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316813(P2004−316813)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】