説明

回転ツマミ装置

【課題】 小ツマミに電子部品のシャフトをガタツキの無いように咬合させるとともに、ツマミの咬合部を補強するリブを設ける場合にも、ツマミの変形ないし破損を防止して、ツマミを電子部品のシャフトに咬合させられるようにする回転ツマミ装置を提供する。
【解決手段】 回転ツマミが、外径部と、シャフトと咬合してその中心軸がシャフトの回転軸と一致する略円筒形状のシャフト咬合部と、外径部とシャフト咬合部とを連結するリブ状の複数の連結リブ部と、を有し、連結リブ部のそれぞれが、シャフト咬合部の外径を規定する円の接線又は円に交差する直線を含む平面である内周側平面と、内周側平面と平行な平面であり連結リブ部の所定の厚みを規定する外周側平面と、を備え、シャフト咬合部と連結リブ部との連結部分において、外周側平面の延長面がシャフト咬合部と交差せずに所定の厚み以下の段部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像音響機器、または、パーソナルコンピューター等の電子計算機の操作部分に使用される回転ツマミ装置に関し、特に、抵抗器、セレクタスイッチ、ロータリエンコーダ、等の回転するシャフトを有する電子部品と、この電子部品のシャフトに取り付けられるツマミ、ノブ、ダイアル等を備える回転ツマミ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
映像音響機器、または、パーソナルコンピューター等の電子計算機においては、抵抗器、セレクタスイッチ、ロータリエンコーダ等の回転するシャフトを有する電子部品は、例えば、前面パネルの操作部分に設けられ、電子部品のシャフトには、使用者が操作しやすいようにツマミ、ノブ、ダイアル等が取り付けられて、回転ツマミ装置を構成する。電子部品は、基板または前面パネルに固定するための構造が設けられており、電子部品のシャフトに連結するツマミが、前面パネルの取付孔から操作可能に露出するように固定される。
【0003】
ここで、回転ツマミ装置においては、電子部品のシャフトに取り付けられたツマミがガタつくことが無く、または、揺れが無く、滑らかに回転するのが望ましい。ツマミの背面側の中心部分には、シャフトの径よりも少し小さい穴径を有する咬合部が設けられて、シャフトをガタツキの無いように咬合させる。シャフトを咬合させるツマミの咬合部には強い応力が作用するので、咬合部を補強するリブを設ける場合がある。咬合部を補強するリブは、ツマミの外径側の基体と、中央部分の咬合部とを連結する連結部としても機能する。
【0004】
従来には、回動するシャフトに挿入されシャフト挿入部の挿入孔断面がD字状をした回動つまみにおいて、前記シャフト挿入部は、固定部と変形部を備え、変形部は複数個に分割されていることを特徴とする回動つまみがある(特許文献1)。この回動つまみの固定部はリブによって回動つまみに固定され、変形部は2つに分割され、前記シャフトを挿入することによって挿入孔が広がる方向に可撓性を有するリブを備える場合がある。
【0005】
また、従来には、操作用つまみが装着された回転軸の外周面の少なくとも3ヶ所で接する接触部を結んで描かれる円の直径が前記回転軸の直径より若干小さくなるように外周枠からその内方に向け、前記回転軸と同心円的に形成された少なくとも3個のバネ部材で弾性的に挟着して軸受けしたことを特徴とする操作用つまみのトルク調整装置がある(特許文献2)。
【0006】
また、従来には、転軸に一体回転可能に取り付けられ、外周部分の一部を機器のハウジング外に突出させて設けられるツマミにおいて、前記回転軸上に固定される固定部と、前記ハウジング外に突出された操作部と、前記固定部と前記操作部との間を連結してなる弾性を有したリブ状の連結部とでなり、前記連結部で前記操作部側から付与される衝撃力を吸収できるようにしたことを特徴とするツマミの破損防止構造がある(特許文献3)。
【0007】
しかし、回転ツマミ装置においては、ツマミの咬合部を補強するリブを設けた場合には、咬合部が強くなりすぎて変形量が小さくなり、その結果、その穴径よりもシャフトの径が少しでも大きくなるとシャフトを挿入できず、ツマミを電子部品のシャフトに咬合させられない場合があるという問題がある。そのような場合にツマミを電子部品のシャフトに咬合させると、過大な応力が掛かってツマミの変形ないし破損につながるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−195143号公報 (第1図〜第3図)
【特許文献2】特開平11−288323号公報 (第1図〜第6図)
【特許文献3】実開平5−20112号公報 (第1図〜第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、映像音響機器、または、パーソナルコンピューター等の電子計算機の操作部分に使用される回転ツマミ装置に関し、ツマミに電子部品のシャフトをガタツキの無いように咬合させるとともに、ツマミの咬合部を補強するリブを設ける場合にも、ツマミの変形ないし破損を防止して、ツマミを電子部品のシャフトに咬合させられるようにする回転ツマミ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回転ツマミ装置は、回転するシャフトを有する電子部品と、電子部品のシャフトに咬合して回転操作される回転ツマミと、を備える回転ツマミ装置であって、回転ツマミが、その外径寸法を規定する外径部と、シャフトと咬合してその中心軸がシャフトの回転軸と一致する略円筒形状のシャフト咬合部と、外径部とシャフト咬合部とを連結するリブ状の複数の連結リブ部と、を有し、連結リブ部のそれぞれが、シャフト咬合部の外径を規定する円の接線又は円に交差する直線を含む平面である内周側平面と、内周側平面と平行な平面であり連結リブ部の所定の厚みを規定する外周側平面と、を備え、シャフト咬合部と連結リブ部との連結部分において、外周側平面の延長面がシャフト咬合部と交差せずに所定の厚み以下の段部を形成する。
【0011】
また、本発明の回転ツマミ装置は、回転ツマミのシャフト咬合部が、シャフトの回転軸と直交する断面において略D字状に規定される内部空間を有し、電子部品のシャフトが、回転ツマミのシャフト咬合部と咬合する部分において、シャフトの回転軸と直交する断面方向に略D字状断面を備える。
【0012】
好ましくは、本発明の回転ツマミ装置は、回転ツマミのシャフト咬合部および連結リブ部が樹脂から形成される。
【0013】
好ましくは、本発明の回転ツマミ装置は、回転ツマミの外径部に咬合する他の回転ツマミをさらに含む。
【0014】
好ましくは、本発明の映像音響機器または電子計算機は、上記の回転ツマミ装置を含む。
【0015】
以下、本発明の作用について説明する。
【0016】
本発明の回転ツマミ装置は、回転するシャフトを有する電子部品と、電子部品のシャフトに咬合して回転操作される回転ツマミと、を備える回転ツマミ装置である。本発明の映像音響機器または電子計算機では、例えば回転ツマミ装置の電子部品に基板または前面パネルに固定するための構造が設けられて、電子部品のシャフトに連結する回転ツマミが、前面パネルの取付孔から操作可能に露出するように固定される。
【0017】
回転ツマミは、その外径寸法を規定する外径部と、電子部品のシャフトと咬合してその中心軸がシャフトの回転軸と一致する略円筒形状のシャフト咬合部と、外径部とシャフト咬合部とを連結するリブ状の複数の連結リブ部と、を有する。好ましくは、回転ツマミのシャフト咬合部が、シャフトの回転軸と直交する断面において略D字状に規定される内部空間を有し、一方で、電子部品のシャフトが、回転ツマミのシャフト咬合部と咬合する部分において、シャフトの回転軸と直交する断面方向に略D字状断面を備える。回転ツマミは、好ましくは、そのシャフト咬合部および連結リブ部が樹脂から形成され、あるいは、回転ツマミの外径部に咬合する他の回転ツマミ(例えば、その外径部が金属から構成される回転ツマミ)をさらに含む。
【0018】
したがって、この回転ツマミ装置においては、ツマミの背面側の中心部分には、電子部品のシャフトの径よりも少し小さい穴径を有する咬合部が設けられて、シャフトをガタツキの無いように咬合させるので、取り付けられたツマミがガタつくことが無く、または、揺れが無く、滑らかに回転することができる。
【0019】
回転ツマミの連結リブ部のそれぞれは、シャフト咬合部の外径を規定する円の接線又は円に交差する直線を含む平面である内周側平面と、内周側平面と平行な平面であり連結部の所定の厚みを規定する外周側平面と、を備える。つまり、回転ツマミの連結リブ部は、シャフト咬合部の外径を規定する円の接線方向に形成された薄板状のリブであるか、又は上記円に45°以下の浅い角度で交差する線の方向に形成された薄板状のリブである。さらに、回転ツマミの連結リブ部は、上記円の接線方向または上記円に浅い角度で交差する線の方向に形成されるので、シャフト咬合部と連結リブ部との連結部分において、外周側平面の延長面がシャフト咬合部と交差せずに所定の厚み以下の段部を形成する。
【0020】
つまり、本発明の回転ツマミ装置では、回転ツマミの外径部とシャフト咬合部とを連結する連結リブ部が、径方向と直角になるシャフト咬合部の外径を規定する円の接線方向に形成される。したがって、回転ツマミの咬合部と電子部品のシャフトとの咬合がきつくなる寸法関係を有する場合に、回転ツマミの咬合部を径方向に広げようとする応力が連結リブ部に加わっても、その応力は、連結リブ部を径方向に圧縮する力ではなく、シャフト咬合部と連結リブ部との連結部分において、シャフト咬合部と交差しない外周側平面の延長面により規定される連結リブ部の厚み以下の段部を径方向に曲げる力として作用する。その結果、ツマミの咬合部を補強するリブを設ける場合にも、その穴径よりも径の大きなシャフトを挿入できず、ツマミを電子部品のシャフトに咬合させられない等の問題が生じない。また、大きな応力が掛かっても、ツマミの全体形状である外径部の変形ないし破損も防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回転ツマミ装置は、ツマミに電子部品のシャフトをガタツキの無いように咬合させるとともに、ツマミの咬合部を補強するリブを設ける場合にも、ツマミの変形ないし破損を防止して、ツマミを電子部品のシャフトに咬合させられるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好ましい実施形態による回転ツマミ装置を説明する断面図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態による回転ツマミ装置を構成する回転ツマミを説明する図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態による回転ツマミに加わる応力分布および変位量を説明する図である。(実施例1)
【図4】比較例の回転ツマミに加わる応力分布および変位量を説明する図である。(比較例1)
【図5】本発明の他の好ましい実施形態による回転ツマミ装置を構成する回転ツマミを説明する図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態による回転ツマミ装置について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の好ましい実施形態による回転ツマミ装置1について説明する断面図であり、回転ツマミ装置1を備える映像音響機器(全体は図示しない)の操作部分を側面方向から見た断面図である。例えば、回転ツマミ装置1は、前面パネル3から突出した回転ツマミ2を回転させることにより、AVレシーバー等の映像音響機器の入出力信号もしくは機能を選択するセレクタであり、前面パネル3の裏側には、回転ツマミ2を介して回転スイッチ10が設けられている。回転ツマミ2は、図示するZ軸を回転軸として回転する。なお、回転ツマミ2は、後述する回転ツマミ20と、回転ツマミ20と咬合して操作部となる回転ツマミ9と、から構成される。なお、図1において、説明に不要な部分および回転スイッチ10の内部構造は省略されている。
【0025】
回転ツマミ装置1は、映像音響機器の前面パネル3に設けられており、前面パネル3は、上面側で天板4と、下面側で底板5と連結している。前面パネル3は、例えば、樹脂を射出成型して形成された部材であり、Z軸を中心とする円孔および回転ツマミ2の一部を収容する凹部を備える。前面パネル3の内面側には、回転スイッチ10を固定するブラケット6が設けられており、前面パネル3もしくは天板4、底板5と連結している。ブラケット6は、金属板をプレス加工して形成した部材であり、Z軸を中心とする円孔を備え、回転スイッチ10を後述するナット7により固定する。
【0026】
前面パネル3の内面側において、回転スイッチ10は、基板8に端子を介して電気的に接続される。回転スイッチ10は、スイッチ部(図示しない)を収容するケース11と、ケース11から突出してZ軸を回転軸として回転するシャフト12と、を有する。シャフト12が回転することにより、ケース11内のスイッチ部における電気的接続が変更され、回転ツマミ装置1はセレクタとして機能する。このシャフト12は、先端側が円筒の一部を切り欠いたようになっており、Z軸と直交する先端側の断面において略D字状断面(Dカット13)を備える。
【0027】
回転スイッチ10のケース11は、ケース11から円筒状に突出し、かつ、その中心軸がシャフト12の回転軸(つまりZ軸)と一致する円筒状凸部14を備える。この円筒状凸部14を形成する円筒曲面には、ナット7が螺合する螺旋溝が設けられており、回転スイッチ10をブラケット6の円孔に固定することができる。すなわち、ブラケット6が、円筒状凸部14の螺旋溝に螺合するナット7と、回転スイッチ10のケース11との間に挟み込まれるので、回転スイッチ10は、ブラケット6に強固に固定される。
【0028】
回転ツマミ2は、樹脂で形成される回転ツマミ20と、回転ツマミ20と咬合する金属で形成される回転ツマミ9と、から構成される。この映像音響機器の回転ツマミ装置1を操作する使用者は、2つの回転ツマミ20および9が咬合して構成される回転ツマミ2を介して、回転スイッチ10のシャフト12を回転させることができる。回転ツマミ9は、使用者が操作する操作部を構成する外径部91と、回転ツマミ20の外径部21と咬合する円筒状凹部92とを備え、回転ツマミ2を構成する。したがって、回転ツマミ装置1を操作する使用者が触れる部分は、外観視される回転ツマミ9になる。なお、本実施例の回転ツマミ2では、外観視される回転ツマミ9を内側の回転ツマミ20に被せるように設けているが、シャフト12に連結する回転ツマミ20が、前面パネル3の取付孔から操作可能に露出するようにしてもよい。
【0029】
樹脂で形成される回転ツマミ20は、その外径寸法を規定する外径部21と、シャフト12と咬合してその中心軸がシャフト12の回転軸(Z軸)と一致する略円筒形状のシャフト咬合部22と、外径部21とシャフト咬合部22とを連結するリブ状の4つの連結リブ部23と、を備える。シャフト咬合部22は、シャフト12の回転軸と直交する断面において略D字状に規定される内部空間(円筒状凹部)を有しており、同じ断面方向に略D字状断面を備えるDカット13と咬合する。シャフト咬合部22には、径方向に1箇所切欠25が設けられている。シャフト咬合部22の円筒状凹部の直径φCは、回転スイッチ10のシャフト12の直径φDと略等しい。したがって、回転スイッチ10のシャフト12に取り付けられた回転ツマミ20がガタつくことが無く、または、揺れが無く、滑らかに回転することができる。
【0030】
樹脂で形成される回転ツマミ20では、中央のシャフト咬合部22から径方向にリブ状の4つの連結リブ部23が設けられ、外径部21とシャフト咬合部22とを連結する。それぞれの連結リブ部23は、シャフト咬合部22側の平面を規定する内周側平面23aと、内周側平面23aと平行な平面であり連結リブ部23の所定の厚みを規定する外周側平面23bと、を備える薄板状のリブである。ここで、内周側平面23aは、シャフト咬合部22の外径を規定する円22aの接線を含む平面として形成される平面であるので、これに対応する外周側平面23bの延長面は、シャフト咬合部22と連結リブ部23との連結部分において図示するようにシャフト咬合部22と交差しなくなり、その結果、シャフト咬合部22と連結リブ部23との連結部分に連結リブ部23の所定の厚み以下の段部24が形成される。段部24は、シャフト咬合部22と交差しない外周側平面23bの延長面により規定され、連結リブ部23の厚み以下になる。
【0031】
したがって、回転ツマミ20の咬合部22と回転スイッチ10のシャフト12との咬合がきつくなる寸法関係を有する場合であっても、回転ツマミ20の咬合部22を径方向に広げようとする応力が連結リブ部23に加わっても、その応力は、連結リブ部23を径方向に圧縮する力ではなく、シャフト咬合部22と連結リブ部23との連結部分の段部24を径方向に曲げる力として作用する。その結果、回転ツマミ20の咬合部22を補強する連結リブ部23を設ける場合にも、咬合部22の穴径と略一致する径を有するシャフト12を挿入できず、回転ツマミ20を回転スイッチ10のシャフト12に咬合させられない等の問題が生じない。
【0032】
図3は、回転ツマミ20に加わる応力分布および変位量を説明する図である。具体的には、回転ツマミ20のシャフト咬合部22に咬合部22の穴径と略一致する径を有するシャフト12を挿入する場合に、図3(a)が回転ツマミ20の応力分布であり、図3(b)が回転ツマミ20の変位量である。図3(a)において、色が濃くなっている部分に高い応力が作用している。同様に、図3(b)において、色が濃くなっている部分の変位量が大きくなっている。このように回転ツマミ2では、回転ツマミ20の外径部21とシャフト咬合部22とを連結する連結リブ部23が、径方向と直角になるシャフト咬合部22の外径を規定する円22aの接線方向に形成されるので、シャフト咬合部22と連結リブ部23との連結部分の段部24を径方向に変形させることで、シャフト咬合部22での応力緩和と回転ツマミ20の全体の変形防止とを実現している。
【0033】
一方、図4は、比較例の回転ツマミ200に加わる応力分布および変位量を説明する図である。比較例の回転ツマミ200は、回転ツマミ20と連結リブ部との構成が異なる他は、シャフト咬合部等の構成が回転ツマミ20と同じである。比較例の回転ツマミ200の連結リブ部は、図示するように、外径部とシャフト咬合部とを連結するのにあたって、径方向と一致するように所定の厚みのリブが構成されている。したがって、実施例の回転ツマミ20におけるシャフト咬合部22と連結リブ部23との連結部分の段部24に相当する部分は、比較例の回転ツマミ200には存在しない。回転ツマミ20と同じ条件の場合に、図4(a)が回転ツマミ200の応力分布であり、図4(b)が回転ツマミ200の変位量である。
【0034】
図4(a)において矢印で示す色が濃くなっている部分に、実施例の場合よりも高い応力が作用している。同様に、図4(b)において矢印で示す色が濃くなっている部分の変位量が、実施例の場合よりも大きくなっている。このように比較例の回転ツマミ200では、回転ツマミ20の外径部21とシャフト咬合部22とを連結する連結リブ部23が、径方向と一致する方向に形成されるので、シャフト咬合部22と連結リブ部23との連結部分の段部24が径方向に変形しにくくなり、強い応力が働き、場合によっては破損する恐れがある。
【0035】
このように本実施例の回転ツマミ20は、回転スイッチ10のシャフト12の直径が咬合部22の穴径よりも若干大きく、回転ツマミ20の咬合部22に大きな応力が掛かる場合であっても、回転ツマミ20の全体形状である外径部21の変形ないし破損も防止できる。
【実施例2】
【0036】
図5は、他の好ましい実施形態による樹脂で形成される回転ツマミ20aを説明する図である。回転ツマミ20aでは、中央のシャフト咬合部22から径方向にリブ状の4つの連結リブ部23が設けられ、外径部21とシャフト咬合部22とを連結する。それぞれの連結リブ部23は、シャフト咬合部22側の平面を規定する内周側平面23aと、内周側平面23aと平行な平面であり連結リブ部23の所定の厚みを規定する外周側平面23bと、を備える薄板状のリブである点で、回転ツマミ20aは、先の実施例の回転ツマミ20と一致する。
【0037】
ここで、回転ツマミ20aの内周側平面23aは、シャフト咬合部22の外径を規定する円22aに交差する直線を含む平面である。交差する角度θは、45°以下の浅い角度であれば、外周側平面23bの延長面は、シャフト咬合部22と連結リブ部23との連結部分において図示するようにシャフト咬合部22と交差しなくなり、その結果、シャフト咬合部22と連結リブ部23との連結部分に連結リブ部23の所定の厚み以下の段部24が形成される。段部24は、シャフト咬合部22と交差しない外周側平面23bの延長面により規定され、連結リブ部23の厚み以下になる。
【0038】
したがって、回転ツマミ20aの咬合部22と回転スイッチ10のシャフト12との咬合がきつくなる寸法関係を有する場合であっても、回転ツマミ20aの咬合部22を径方向に広げようとする応力が連結リブ部23に加わっても、その応力は、連結リブ部23を径方向に圧縮する力ではなく、シャフト咬合部22と連結リブ部23との連結部分の段部24を径方向に曲げる力として作用する。その結果、回転ツマミ20aの咬合部22を補強する連結リブ部23を設ける場合にも、咬合部22の穴径と略一致する径を有するシャフト12を挿入できず、回転ツマミ20aを回転スイッチ10のシャフト12に咬合させられない等の問題が生じない。また、回転スイッチ10のシャフト12の直径が咬合部22の穴径よりも若干大きく、回転ツマミ20aの咬合部22に大きな応力が掛かる場合であっても、回転ツマミ20aの全体形状である外径部21の変形ないし破損も防止できる。
【0039】
回転ツマミ20または20aと咬合する回転ツマミ9は、回転ツマミ2を構成する。例えば、具体的には、回転ツマミ20は樹脂から形成され、回転ツマミ9はアルミニウムを含む金属から構成される。美観上もしくは触感上の理由から、映像音響機器の回転ツマミ装置1の回転ツマミ2を、前面側から見たときにアルミニウムを含む金属にしたい場合でも、回転ツマミ2の全体を金属で構成するよりも軽量で安価にすることができ、さらに、ほとんどガタつかない精度の高い回転ツマミ装置1が実現される。同時に回転ツマミ2の回転時の偏心が減少し、回転ツマミ装置1の精密感が向上する。もちろん、回転ツマミ2は、回転ツマミ20と咬合する回転ツマミ9とが、一体に構成されていてもよい。
【0040】
なお、本発明は上記実施例に限定されない。回転スイッチ10をブラケット6に取り付ける場合に、円筒状凸部14を形成する円筒曲面にナット7が螺合する螺旋溝が設けられていなければ、ナット7ではなく他の固定手段により回転スイッチ10をブラケット6に取り付ければよい。例えば、回転スイッチ10のケース11にブラケット6と連結するためのネジ孔が設けられていれば、ネジにより固定してもよい。もちろん、ブラケット6は、映像音響機器のシャーシを構成する前面パネル3、天板4もしくは底板5のいずれかに連結していればよく、また、これらのシャーシ構成部材と一体になっていてもよい。また、ブラケット6が省略される場合には、基板8に固定されているだけでもよい。
【0041】
また、回転ツマミ装置1は、AVレシーバー等の映像音響機器の入出力信号もしくは機能を選択するセレクタに限られない。回転ツマミ装置1は、パーソナルコンピューターなどの電子計算機の操作部に用いるボリュームツマミなどでもよく、使用する材料、部材等は、適宜変更可能である。回転スイッチ10は、ロータリエンコーダや、ボリュームなと、回転軸を中心に回転するシャフトを備えるデバイスであればよく、そのデバイスのシャフトに、ツマミ、ノブ、ダイアル等が取り付けられて構成される回転ツマミ装置であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の回転ツマミ装置は、映像音響機器又は電子計算機のみならず、車両の操作部、等の操作者がツマミを回転させて操作する構造にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 回転ツマミ装置
2、9 回転ツマミ
3 前面パネル
4 天板
5 底板
6 ブラケット
7 ナット
8 基板
10 回転スイッチ
11 ケース
12 シャフト
13 Dカット
14 円筒状凸部
20、20a 回転ツマミ
21、91 外径部
22 シャフト咬合部
23 連結リブ部
24 段部
25 切欠
92 円筒状凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するシャフトを有する電子部品と、
該電子部品の該シャフトに咬合して回転操作される回転ツマミと、
を備える回転ツマミ装置であって、
該回転ツマミが、その外径寸法を規定する外径部と、該シャフトと咬合してその中心軸が該シャフトの回転軸と一致する略円筒形状のシャフト咬合部と、該外径部と該シャフト咬合部とを連結するリブ状の複数の連結リブ部と、を有し、
該連結リブ部のそれぞれが、該シャフト咬合部の外径を規定する円の接線又は該円に交差する直線を含む平面である内周側平面と、該内周側平面と平行な平面であり該連結リブ部の所定の厚みを規定する外周側平面と、を備え、該シャフト咬合部と該連結リブ部との連結部分において、該外周側平面の延長面が該シャフト咬合部と交差せずに該所定の厚み以下の段部を形成する、
回転ツマミ装置。
【請求項2】
前記回転ツマミの前記シャフト咬合部が、前記電子部品の前記シャフトの前記回転軸と直交する断面において略D字状に規定される内部空間を有し、
該シャフトが、該回転ツマミの該シャフト咬合部と咬合する部分において、該シャフトの前記回転軸と直交する断面方向に略D字状断面を備える、
請求項1に記載の回転ツマミ装置。
【請求項3】
前記回転ツマミの前記シャフト咬合部および前記連結リブ部が樹脂から形成される、
請求項1または2に記載の回転ツマミ装置。
【請求項4】
前記回転ツマミの前記外径部に咬合する他の回転ツマミをさらに含む、
請求項1または3のいずれかに記載の回転ツマミ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の回転ツマミ装置を含む、映像音響機器または電子計算機。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−150612(P2012−150612A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8118(P2011−8118)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)
【Fターム(参考)】