説明

回転型電気部品

【課題】回転部材の回転角度を広く設定することができる回転型電気部品を提供する。
【解決手段】ハウジング1の収納部1a内を回転可能な回転部材2に第1および第2のストッパ突起2e,2fと一対の切欠き2g,2hを形成し、これら切欠き2g,2hの一端部に捩りコイルばね3の第1および第2の腕部3b,3cをそれぞれ係止すると共に、第1および第2の腕部3b,3cに係脱して捩りコイルばね3に復帰方向の付勢力を生じさせる係止部としての機能と、第1および第2のストッパ突起2e,2fに係脱して回転部材の回転角度を規制する受部としての機能とを、ハウジング1の外側ガイド壁8に形成した係合突起8dに持たせるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部材の回転操作に応じた信号を検出可能な回転型電気部品に係り、特に、回転部材を所定位置に自動復帰させるセルフリターン機能付きの回転型電気部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハウジングのガイド孔に回転部材を回転可能に保持すると共に、この回転部材に巻回した捩りコイルばねの両端部をハウジングに係止し、回転部材を所定位置から一方向へ回転操作したときに、捩りコイルばねに操作方向と逆向きの付勢力を働かせて回転部材を所定位置に自動復帰するようにした回転型電気部品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。前記ハウジングには、捩りコイルばねの両端部を係止する保持壁と、回転部材の回転角度を規定する係止突起とが形成されており、これら保持壁と係止突起はガイド孔の中心を挟んで対向する位置にある。一方、前記回転部材には、ハウジングの係止突起に係脱可能な一対のストッパ突起と、捩りコイルばねの一方の端部に係脱可能な駆動部とが形成されており、これら駆動部と両ストッパ突起は回転部材の回転軸を挟んで対向する位置にある。なお、ハウジングには複数の固定接点を有する回路基板が配設され、回転部材には回路基板上を摺動する可動接点が取り付けられている。
【0003】
このように概略構成された従来の回転型電気部品において、ユーザが回転部材を所定位置から一方向へ回転操作すると、それに伴って駆動部が捩りコイルばねの一端部に当接してこれを巻締め方向へ押圧するため、捩りコイルばねに操作方向と逆向きの付勢力が蓄えられていく。そして、一方のストッパ突起が係止突起に当接した時点で回転部材の回転が阻止され、その間に可動接点が固定接点に接離して切り換え信号が出力される。また、この状態でユーザが回転部材に対する一方向への回転操作力を除去すると、捩りコイルばねに蓄えられた付勢力が駆動部を介して回転部材に作用するため、回転部材は他方向へ回転して所定位置まで自動復帰される。回転部材を所定位置から上記と逆の他方向へ回転操作した場合には、駆動部が捩りコイルばねの他端部を押圧せず、よって捩りコイルばねに付勢力が蓄えられない状態で、他方のストッパ突起が係止突起に当接した時点で回転部材の回転が阻止される。
【特許文献1】特開2001−202851号公報(第3−5頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の回転型電気部品では、回転部材を所定位置から一方向へ回転させたときに、駆動部が捩りコイルばねの端部を押圧することで捩りコイルばねに付勢力を発生させ、この付勢力によって回転部材を所定位置に自動復帰させることができる。しかしながら、ハウジングのガイド孔の外側に捩りコイルばねの両端部を係止するための保持壁が所定角度で形成されると共に、この保持壁とガイド孔の中心を挟んで対向する位置に係止突起が形成され、これら保持壁と係止突起との間を回転部材の両ストッパ突起が回転するようになっているので、回転部材の回転角度を広く設定することが困難であるという難点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、回転部材の回転角度を広く設定することができる回転型電気部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の回転型電気部品は、収納部を有するハウジングと、前記収納部の内部に回転可能に保持された回転部材と、この回転部材に保持された復帰用の捩りコイルばねとを備え、前記回転部材の外周面にストッパ突起と一対の切欠きを形成すると共に、前記捩りコイルばねの両端から突出する腕部をそれぞれ前記切欠きの端部に係止し、前記収納部の内周面に、前記腕部に係脱可能な係止部と前記ストッパ突起に係脱可能な受部とを同じ位置または近接した位置に突出形成する構成とした。
【0007】
このように構成された回転型電気部品では、回転部材を所定位置から一方向へ回転操作すると、回転部材の切欠きに係止された捩りコイルばねの両腕部のうち、一方の腕部がハウジングの係止部に係合して捩りコイルばねに付勢力が蓄えられていき、回転部材のストッパ突起がハウジングの突起に係合することで、回転部材は末端位置でそれ以上の回転が阻止された状態となり、この末端位置で回転部材に対する回転操作力が取り除かれると、回転部材は捩りコイルばねに蓄えられた付勢力によって所定位置に自動復帰される。そして、この回転型電気部品は、捩りコイルばねの腕部に係脱可能な係止部とストッパ突起に係脱可能な受部とがハウジングの収納部の内周面に近接して突出形成されており、捩りコイルばねの腕部を係止部から離間させた状態でストッパ突起を回転できる領域が広くなるため、回転部材の回転角度を広く設定することができる。
【0008】
上記の構成において、係止部と受部は互いに近接していれば別々の部位に形成してもよいが、これら係止部と受部を共通の係合突起に形成すると、セルフリターン機構の全体構成を簡略化することができて好ましい。
【0009】
また、上記の構成において、回転部材に軸線方向の一端側を開放した環状溝を形成し、この環状溝内に捩りコイルばねの巻回部を収納すると共に、一対の切欠きを環状溝の外周面に連通させると、捩りコイルばねを回転部材に簡単に組み込むことができて好ましい。
【0010】
また、上記の構成において、ハウジングの収納部と回転部材のいずれか一方に複数のクリック溝を周方向に離間させて形成すると共に、いずれか他方にクリック溝と係脱可能な駆動体を弾性保持し、この駆動体が所定のクリック溝と係合しているとき、捩りコイルばねの両腕部がいずれも係止部から離間するように構成すると、回転部材の回転操作中に駆動体とクリック溝との係脱によってクリック感が生起されるため、回転部材を操作するユーザは所定位置をブラインドタッチで認識することができると共に、回転部材を所定位置に安定的に保持することができて好ましい。
【0011】
この場合において、複数のクリック溝のうち周方向における外側(回転末端に近い側)に位置するクリック溝の端部に、所定のクリック溝とは逆方向に延びるガイド面を形成し、回転部材が捩りコイルばねの付勢力によって所定位置へ回転復帰するとき、駆動体がガイド面を摺動して外側に位置するクリック溝と係合するように構成すると、駆動体と外側に位置するクリック溝の係脱によって生起されるクリック感を回転部材の回転方向に応じて大きく変えることができるため、回転部材を所定位置から末端位置方向へ回転して捩りコイルばねに付勢力を蓄えるときだけ、ほとんどクリック感を生起させずに駆動体を軽い力でクリック溝から脱出させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転型電気部品は、回転部材の切欠きに係止された捩りコイルばねの腕部に係脱して捩りコイルばねに復帰方向の付勢力を生じさせる係止部と、回転部材のストッパ突起に係脱して回転部材の回転角度を規制する受部とが、いずれもハウジングの収納部の内周面の同じ位置または近接した位置に突出形成されているため、捩りコイルばねの腕部を係止部から離間させた状態でストッパ突起を回転できる領域が広くなり、その結果、回転部材の回転角度を広く設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る回転型電気部品を含む複合操作型入力装置を斜め上方から見た外観図、図2は該複合操作型入力装置を斜め下方から見た外観図、図3は該複合操作型入力装置の断面図、図4は該複合操作型入力装置を分解して示す上方斜視図、図5は該複合操作型入力装置を分解して示す下方斜視図、図6は該回転型電気部品に備えられるハウジングの平面図、図7は該回転型電気部品に備えられる回転部材の裏面図、図8は該複合操作型入力装置に備えられる操作ユニットを分解して示す上方斜視図、図9は該操作ユニットを分解して示す下方斜視図、図10は該複合操作型入力装置に備えられるスイッチユニットを分解して示す上方斜視図、図11は該スイッチユニットを分解して示す下方斜視図、図12は該回転型電気部品のセルフリターン動作を示す説明図である。
【0014】
これらの図に示す複合操作型入力装置は、環状の収納部1aを有するハウジング1と、収納部1aの内部に回転可能に保持された回転部材2と、回転部材2に保持された復帰用(セルフリターン用)の捩りコイルばね3と、回転部材2の内側に組み込まれた操作ユニット4と、操作ユニット4の下方に積層配置されたスイッチユニット5と、ハウジング1の上部開口端を塞ぐカバー6とを備えており、これら各部材のうちハウジング1と回転部材2と捩りコイルばね3と操作ユニット4およびカバー6によって回転型電気部品(ロータリスイッチ)が構成されている。
【0015】
ハウジング1は樹脂モールド品からなり、その底面中央部には円形の中心孔1bが形成されている。ハウジング1の底面には内側ガイド壁7と外側ガイド壁8が同心円状に立設されており、収納部1aはこれら内側ガイド壁7と外側ガイド壁8との間に画成されている。内側ガイド壁7の高さ寸法は外側ガイド壁8に比べて低く設定されており、この内側ガイド壁7の内周面には複数の凸部7aが形成されている。外側ガイド壁8の内周面には第1乃至第3のクリック溝8a,8b,8cと係合突起8dとが形成されており、外側ガイド壁8の外周面には複数の取付孔8eと保持溝8fとが形成されている。第1乃至第3のクリック溝8a,8b,8cと係合突起8dは収納部1aの周方向に所定間隔を保って配置されており、本実施形態例の場合、第1のクリック溝8aと第3のクリック溝8cが係合突起8dから互いに逆方向の等距離位置に形成されると共に、第1のクリック溝8aと第2のクリック溝8bの間隔が第2のクリック溝8bと第3のクリック溝8cの間隔よりも遙かに広く設定されている。また、複数(本実施形態例では3個)のクリック溝のうち、所定のクリック溝となる第2のクリック溝8bを挟んで周方向における外側(係合突起8d寄り)に位置する第1および第3のクリック溝8a,8cの係合突起8dと連続する側の端部には、それぞれテーパ状のガイド面8g,8hが第2のクリック溝8bとは逆方向へ延びて形成されている。これらガイド面8g,8hは外側ガイド壁8の内周面から第1および第2のクリック溝8a,8cの溝底面に向かって傾斜している。さらに、第1のクリック溝8aと第2のクリック溝8b間において、外側ガイド壁8の上端には収納部1aの内底面に向かって傾斜するテーパ面8iが形成されており、係合突起8dはこのテーパ面8iと中心孔1bを挟んで対向する位置に形成されている。
【0016】
図6に示すように、ハウジング1の収納部1aの内底面には約180度の範囲に渡って金属材からなるコモン接点9と第1乃至第5の固定接点10a,10b,10c,10d,10eが配設されており、各固定接点10a,10b,10c,10d,10eはコモン接点9の外側に周方向に所定間隔を保って配列されている。これらコモン接点9と各固定接点10a,10b,10c,10d,10eはインサート成形によってハウジング1に一体化されており、ハウジング1の底面からコモン接点9と各固定接点10a,10b,10c,10d,10eの端部がそれぞれ端子11として導出されている。
【0017】
回転部材2も樹脂モールド品からなり、この回転部材2は中央に貫通孔2aを有するリング状に形成されている。回転部材2はハウジング1の収納部1a内に配置されており、その内外両周面が内側ガイド壁7と外側ガイド壁8に案内されることにより、収納部1aの周方向に沿って回転可能に保持されている。図5と図7に示すように、回転部材2の底面には二股状に分岐された金属材からなる可動接点12が取り付けられており、この可動接点12の一方の分岐端はコモン接点9上を摺動し、他方の分岐端は各固定接点10a,10b,10c,10d,10e上を摺動するようになっている。そして、コモン接点9および各固定接点10a,10b,10c,10d,10eとからなる固定接点パターンと、可動接点12とによって、回転部材2の回転を検出する回転検出手段が構成されている。
【0018】
回転部材2の内周壁と外周壁との間には上面を開放した環状溝2bが形成されており、後述するように、この環状溝2b内に捩りコイルばね3の巻回部3aが収納されている。回転部材2の内周壁上端には径方向外側へ突出する抜け止め部2cが形成されており、この抜け止め部2cによって巻回部3aが環状溝2bから不用意に飛び出さないようになっている。また、回転部材2の内周壁には複数の係合凹部2dが形成されており、これら係合凹部2dは周方向に等間隔を保った位置に形成されている。
【0019】
回転部材2の外径寸法は所定範囲に亘って大径部分と小径部分に分けられており、これら小径部分と大径部分の境界に生じる段差によって、回転部材2の外周壁下部には第1および第2のストッパ突起2e,2fが形成されている。そして、これら第1および第2のストッパ突起2e,2fが外側ガイド壁8の内周面に形成された係合突起8dと当接することにより、ハウジング1に対する回転部材2の回転角度が規定されるようになっている。また、回転部材2の外周壁上部には一対の切欠き2g,2hが形成されており、第1のストッパ突起2eは一方の切欠き2gの底面中央部に位置し、第2のストッパ突起2fは他方の切欠き2hの底面中央部に位置している。さらに、回転部材2の外周面には横孔2iが形成されており、この横孔2i内にはスプリング13と鋼球14が順次挿入されている。この鋼球14は各クリック溝8a,8b,8cと係脱可能な駆動体であり、スプリング13の弾発力を受けて外側ガイド壁8の内周面に常時圧接されている。
【0020】
捩りコイルばね3は、回転部材2の環状溝2b内に収納された巻回部3aと、巻回部3aの両端に折曲形成された第1および第2の腕部3b,3cとを有しており、第1および第2の腕部3b,3cはそれぞれ切欠き2g,2hの一端部に係止されて回転部材2の外周壁から突出している。これら第1および第2の腕部3b,3cの先端は回転部材2の回転に伴って係合突起8dと係脱可能であり、後述するように、第1または第2の腕部3b,3cが係合突起8dに当接した時点で、回転部材2に復帰方向の付勢力が働いてセルフリターン動作されるようになっている。なお、回転部材2を捩りコイルばね3と共にハウジング1の収納部1a内に組み込む際に、鋼球14をテーパ面8iに沿って外側ガイド壁8の内部へ押し込むようにすれば、当該位置は第1および第2の腕部3b,3cが係合突起8dから離間してセルフリターン動作の作用しない領域であるため、回転部材2を収納部1a内に容易に組み込むことができる。
【0021】
図8と図9に示すように、操作ユニット4は、中央部に円形の開口15aを有する上ケース15と、中央部に円形の開口16aを有する下ケース16と、中央部に円形の開口17aを有する底蓋17と、上下両ケース15,16の間にスライド移動可能に配置された操作体18と、この操作体18をスライド方向の中立位置へ自動復帰する環状コイルばね19と、下ケース16と底蓋17の間にスライド移動可能に配置された移動体20とによって主に構成されており、上ケース15と下ケース16および操作体18はいずれも樹脂モールド品からなる。
【0022】
上ケース15の開口15aの周縁には環状の突堤15bが形成されており、この上ケース15の外周部底面には複数の取付ピン15cが突設されている。下ケース16の開口16aの周縁には環状の突堤16bが形成されており、この下ケース16の周縁部には複数の取付孔16cが形成されている。また、下ケース16の周縁には複数の係合凸部16dが形成され、下ケース16の底面には開口16aを包囲するように矩形状のガイド溝16eが形成されている。底蓋17は金属板からなり、その周縁部には複数の取付孔17bが形成されている。操作体18は、円板状の鍔部18aと、鍔部18aの中心から上方へ突出する操作軸部18bと、鍔部18aの中心から下方へ突出する駆動軸部18cとを有しており、駆動軸部18cは断面略小判形に形成されている。鍔部18aは両ケース15,16の突堤15b,16b間にスライド移動可能に挟持されており、この鍔部18aは突堤15b,16bに外装された環状コイルばね19によって径方向内側へ弾性付勢されている。移動体20は長方形の外形を呈しており、その中央部には長孔20aが形成されている。この移動体20はガイド溝16e内に配置されることによって短辺方向(長孔20aと直交する方向)へスライド移動可能に案内されており、駆動軸部18cは長孔20aを貫通して底蓋17の開口17aから下方へ突出している。したがって、操作軸部18bが移動体20の短手方向へスライド操作されると、移動体20は駆動軸部18cが長孔20aの周縁に係合することでガイド溝16e内を同方向へ移動するが、操作軸部18bが移動体20の長手方向へスライド操作された場合は、駆動軸部18cが長孔20a内を移動するだけで移動体20は停止したままとなる。
【0023】
そして、操作体18と環状コイルばね19を上下両ケース15,16間に収納すると共に、移動体20を下ケース16と底蓋17間に収納した状態で、上ケース15の各取付ピン15cを下ケース16の取付孔16cに挿通して底蓋17の取付孔17bにかしめ固定することにより、上ケース15と下ケース16および底蓋17の三者が一体化されて操作ユニット4として組み立てられる。図4と図5に示すように、このようにして組み立てられた操作ユニット4の状態において、操作体18の操作軸部18bは開口15aを貫通して上ケース15の上方へ突出し、駆動軸部18cは開口16aを貫通して下ケース16の下方へ突出している。また、この操作ユニット4は回転部材2の貫通孔2a内に組み込まれ、下ケース16の各係合凸部16dが回転部材2の対応する係合凹部2dに挿入されている。これにより、操作体18の操作軸部18bが回転操作されたときに、その回転力が駆動軸部18cと長孔20aの係合部分を介して移動体20から下ケース16へと伝達された後、係合凸部16dと係合凹部2dの係合部分を介して回転部材2まで伝達されることにより、回転部材2がハウジング1の収納部1a内を回転するようになっている。
【0024】
図10と図11に示すように、スイッチユニット5は、樹脂モールド品からなる基台21と、基台21に取り付けられた4つのスイッチ素子22と、各スイッチ素子22上に配置された支持板23と、支持板23上に載置された被伝達板24と、中央部に円形の開口25aを有する取付板25とによって主に構成されている。
【0025】
基台21には十字状に延びる保持溝21aが形成されており、この保持溝21a内に4つのスイッチ素子22が挿入・固定されている。また、基台21の上面には一対の規制ピン21bが突設されており、基台21の底面四隅には凹部21cが形成されている。支持板23には一対の取付孔23aが形成されており、これら取付孔23aを規制ピン21bに挿入することにより、支持板23は基台21上に位置決めされている。また、支持板23の外周縁には4つの切欠き部23bが90度の等間隔を保って形成されており、これら切欠き部23bからスイッチ素子22のアクチュエータ22aが突出している。被伝達板24は円板状の樹脂モールド品からなり、その外周縁は切欠き部23bから突出する各スイッチ素子22のアクチュエータ22aに対向している。この被伝達板24の中央部には円形の係合孔24aが形成されており、前述した操作体18の駆動軸部18cは取付板25の開口25aを挿通して係合孔24aと係合している。また、被伝達板24には係合孔24aを挟んで一対の十字状規制孔24bが形成されており、基台21から突出する規制ピン21bは支持板23の取付孔23aを挿通して十字状規制孔24bと係合している。取付板25の外周縁には複数の取付脚25bが折曲形成されており、これら取付脚25bを基台21の外壁面にスナップ結合することにより、基台21と取付板25が一体化されてスイッチユニット5として組み立てられる。
【0026】
このスイッチユニット5はハウジング1の中心孔1b内に組み込まれ、基台21の各凹部21cを内側ガイド壁7の凸部7aに圧入することにより、ハウジング1に対して高さ方向と周方向に位置決めされた状態で固定される。また、このスイッチユニット5の上方に前述した操作ユニット4が組み込まれ、操作ユニット4の下ケース16から突出する駆動軸部18cがスイッチユニット5の被伝達板24の係合孔24aに挿入される。これにより、操作体18の操作軸部18bがスライド操作されると、その操作力が係合孔24aを介して被伝達板24に伝達されるため、被伝達板24を支持板23上で任意方向へスライド移動することができる。ただし、被伝達板24の移動方向は規制ピン21bと十字状規制孔24bによって4方向へ規制されているため、操作軸部18bのスライド操作によって被伝達板24をいずれか一方向へ移動させ、当該方向に位置するスイッチ素子22のアクチュエータ22aを押圧してオン動作させることができる。
【0027】
カバー6は金属板からなり、その中央部には円形の開口6aが形成されている。また、カバー6の外周面には複数の取付孔6bと取付脚6cが形成されており、各取付脚6cは下方へ直角に折り曲げられている。そして、前述したようにハウジング1に回転部材2とスイッチユニット5および操作ユニット4を組み込んだ後、カバー6の各取付脚6cを外側ガイド壁8の保持溝8fに挿入して先端を折り曲げることにより、図1と図2に示すように、操作体18の操作軸部18bをカバー6の開口6aから突出させた複合操作型入力装置が組み立てられる。この複合操作型入力装置は、ハウジング1の底面から突出する端子11とスイッチユニット5の各スイッチ素子22から突出する端子22bを図示せぬプリント基板のランドに半田付けすると共に、カバー6とハウジング1の各取付孔6b,8eを利用して該プリント基板上に取り付けられる。なお、本実施形態例に係る複合操作型入力装置では、ハウジング1と回転部材2と捩りコイルばね3と回転操作部材となる操作ユニット4およびカバー6によってセルフリターン機能付きの回転型電気部品(ロータリスイッチ)が構成されており、この回転型電気部品にスライド操作部材としても機能する操作ユニット4とスイッチユニット5で構成される多方向入力装置が一体的に組み込まれている。
【0028】
次に、このように構成された複合操作型入力装置の動作を説明する。
【0029】
まず、多方向入力装置のスライド操作について簡単に説明すると、ユーザが操作軸部18bに取り付けられた図示せぬ操作つまみを介して操作体18を任意方向へスライド操作すると、鍔部18aが環状コイルばね19をスライド方向へ押し込んで伸長させると共に、駆動軸部18cが被伝達板24をスライド操作方向へ移動させるため、各スイッチ素子22の1つが被伝達板24によって選択的にオン動作される。また、このように操作体18をスライド操作した後にその操作力が除去されると、鍔部18aに押し込まれて伸長していた環状コイルばね19が自身の弾性で元の形状に戻ろうとするため、環状コイルばね19の弾性復帰力によって操作体18が初期位置に自動復帰する。
【0030】
次に、回転型電気部品の回転操作について主に図12を参照して説明すると、本実施形態例では回転部材2の回転角度が図1のP1からP5間に規定されており、そのうちP1とP2間およびP4とP5間でセルフリターン動作が働き、P2とP4間はセルフリターン動作が働かない領域になっている。
【0031】
図12(c)は図1のP3位置に対応しており、この場合、鋼球14は第2のクリック溝8bと係合しており、捩りコイルばね3の第1および第2の腕部3b,3cの先端はいずれも係合突起8dから離間している。この状態からユーザが操作つまみを介して操作体18をP2方向(反時計方向)へ回転操作すると、前述したように、操作体18の回転力が移動体20から下ケース16へと伝達された後、係合凸部16dと係合凹部2dの係合部分を介して回転部材2まで伝達されるため、回転部材2がハウジング1の収納部1a内を反時計方向へ回転する。
【0032】
このようにして回転部材2が図12(b)に示す位置まで回転すると、鋼球14が外側ガイド壁8の内周面から第1のクリック溝8a内に落ち込んでクリック感を生起するため、ユーザは操作体18がP2位置まで回転したことをブラインドタッチで認識できる。このとき、捩りコイルばね3の第1の腕部3bが係合突起8dに当接し、第2の腕部3cは係合突起8dから遠ざかる。また、可動接点12が回動してコモン接点9と第2の固定接点10b間を導通させるため、そのオン信号が端子11から出力される。
【0033】
操作体18をP2位置からさらにP1方向へ回転操作すると、係合突起8dに当接する第1の腕部3bが切欠き2gの一端部から離れて他端側へ向かうため、捩りコイルばね3に回転部材2をP2方向へ戻そうとする付勢力が蓄えられていく。そして、回転部材2が図12(a)に示す位置まで回転すると、回転部材2の第1のストッパ突起2eが係合突起8dに当接してそれ以上の回転が阻止され、捩りコイルばね3に十分な付勢力が蓄えられる。なお、この間に第1のクリック溝8aに係合していた鋼球14はテーパ状のガイド面8gを摺動するため、ユーザは比較的軽い力で操作体18をP2位置からP1方向へ回転操作することができる。また、回転部材2の回転に伴って可動接点12がコモン接点9と第1の固定接点10a間を導通させるため、そのオン信号が端子11から出力される。
【0034】
このようにして操作体18をP1位置まで回転操作した後、その操作力が除去されると、捩りコイルばね3に蓄えられていた付勢力によって回転部材2が時計方向へ回転し、図12(b)に示す位置まで自動復帰する。すなわち、このP1とP2の間は捩りコイルばね3によるセルフリターン動作が働く領域であり、かかるセルフリターン動作は鋼球14がガイド面8gを摺動して第1のクリック溝8aと係合した時点で終了し、操作体18はP2位置で停止する。
【0035】
一方、P2位置に停止している操作体18をP3方向(時計方向)へ回転操作すると、第1のクリック溝8aに係合していた鋼球14が外側ガイド壁8の内周面を摺動して第2のクリック溝8b内に落ち込んだ時点でクリック感を生起するため、ユーザは操作体18がP3位置まで回転したことをブラインドタッチで認識できる。また、かかる回転部材2の回転に伴って可動接点12がコモン接点9と第3の固定接点10c間を導通させ、そのオン信号が端子11から出力される。さらに操作体18をP3位置からP4方向(時計方向)へ回転操作すると、回転部材2が図12(d)に示す位置まで回転した時点で、第2のクリック溝8bに係合していた鋼球14が外側ガイド壁8の内周面を摺動して第3のクリック溝8c内に落ち込んでクリック感を生起するため、ユーザは操作体18がP4位置まで回転したことをブラインドタッチで認識できる。また、かかる回転部材2の回転に伴って可動接点12がコモン接点9と第4の固定接点10d間を導通させ、そのオン信号が端子11から出力される。そして、このように操作体18をP2位置からP4位置まで回転操作する間に、捩りコイルばね3の第1の腕部3bは係合突起8dから遠ざかり、第2の腕部3cが係合突起8dに近づいて当接するため、P2とP4の間は捩りコイルばね3によるセルフリターン動作が働かない領域である。
【0036】
P4位置に停止している操作体18をさらにP5方向へ回転操作すると、係合突起8dに当接する第2の腕部3cが切欠き2hの一端部から離れて他端側へ向かうため、捩りコイルばね3に回転部材2をP4方向へ戻そうとする付勢力が蓄えられていく。そして、回転部材2が図12(e)に示す位置まで回転すると、回転部材2の第2のストッパ突起2fが係合突起8dに当接してそれ以上の回転が阻止され、捩りコイルばね3に十分な付勢力が蓄えられる。なお、この場合も第3のクリック溝8cに係合していた鋼球14はテーパ状のガイド面8hを摺動するため、ユーザは比較的軽い力で操作体18をP4位置からP5方向へ回転操作することができる。また、回転部材2の回転に伴って可動接点12がコモン接点9と第5の固定接点10e間を導通させるため、そのオン信号が端子11から出力される。
【0037】
このようにして操作体18をP5位置まで回転操作した後、その操作力が除去されると、捩りコイルばね3に蓄えられていた付勢力によって回転部材2が反時計方向へ回転し、図12(d)に示す位置まで自動復帰する。すなわち、このP4とP5の間も捩りコイルばね3によるセルフリターン動作が働く領域であり、かかるセルフリターン動作は鋼球14がガイド面8hを摺動して第3のクリック溝8cと係合した時点で終了し、操作体18はP4位置で停止する。
【0038】
上記の如く本実施形態例に係る回転型電気部品(ロータリスイッチ)では、ハウジング1の収納部1a内を回転可能な回転部材2に第1および第2のストッパ突起2e,2fと一対の切欠き2g,2hを形成し、これら切欠き2g,2hの一端部に捩りコイルばね3の第1および第2の腕部3b,3cをそれぞれ係止すると共に、第1および第2の腕部3b,3cに係脱して捩りコイルばね3に復帰方向の付勢力を生じさせる係止部としての機能と、第1および第2のストッパ突起2e,2fに係脱して回転部材の回転角度を規制する受部としての機能とを、ハウジング1の外側ガイド壁8に形成した係合突起8dに持たせたため、捩りコイルばね3の両腕部3b,3cが係合突起8dから離間した状態で第1および第2のストッパ突起2e,2fを回転できる領域(図1のP2−P4間)が広くなり、その結果、回転部材2の回転角度を広く設定することができる。
【0039】
しかも、本実施形態例では、回転部材2に上端側を開放した環状溝2bを形成し、この環状溝2b内に捩りコイルばね3の巻回部3aを収納すると共に、一対の切欠き2g,2hを環状溝2bの外周面に連通させたので、捩りコイルばね3を回転部材2に簡単に組み込むことができる。
【0040】
また、本実施形態例では、ハウジング1の外側ガイド壁8の内周面に複数(3つ以上)のクリック溝8a,8b,8cを周方向に離間させて形成すると共に、回転部材2に各クリック溝8a,8b,8cと係脱可能な鋼球14を弾性保持したので、回転部材2を回転操作するユーザは鋼球14とクリック溝8a,8b,8cとの係脱で生起されるクリック感により所定位置をブラインドタッチで認識することができると共に、回転部材2を所定位置に安定的に保持することができる。しかも、第2のクリック溝8bを挟んで周方向における外側(両端部側)に位置する第1および第3のクリック溝8a,8cの一方側(係合突起8d側)にガイド面8g,8hを形成し、セルフリターン動作が働く方向へ回転部材2を回転操作するとき、鋼球14が第1および第3のクリック溝8a,8cからガイド面8g,8hを摺動して脱出するようにしたので、この間でユーザはクリック感を感じることなく軽い操作力で回転部材2を回転操作することができる。
【0041】
なお、上記実施形態例では、本発明を回転型電気部品と多方向入力装置の両機能を有する複合操作型入力装置に適用した場合について説明したが、多方向入力装置を省略した回転型電気部品に適用可能であることはいうまでもない。
【0042】
また、上記実施形態例では、周方向の外側に位置する第1および第3のクリック溝8a,8cの間、すなわちセルフリターン動作が働かない領域に所定のクリック溝として1つのクリック溝8bを設けたもので説明したが、回転部材がセルフリターン動作しない領域(クリック溝8aと8cの間)に複数のクリック溝を設けたものでもよい。
【0043】
さらに、上記実施形態例では、回転部材を正逆両方向に回転させた場合にセルフリターン動作が働くものについて説明したが、回転部材を一方向にのみ回転させた場合だけセルフリターン動作が働くものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態例に係る回転型電気部品を含む複合操作型入力装置を斜め上方から見た外観図である。
【図2】該複合操作型入力装置を斜め下方から見た外観図である。
【図3】該複合操作型入力装置の断面図である。
【図4】該複合操作型入力装置を分解して示す上方斜視図である。
【図5】該複合操作型入力装置を分解して示す下方斜視図である。
【図6】該回転型電気部品に備えられるハウジングの平面図である。
【図7】該回転型電気部品に備えられる回転部材の裏面図である。
【図8】該複合操作型入力装置に備えられる操作ユニットを分解して示す上方斜視図である。
【図9】該操作ユニットを分解して示す下方斜視図である。
【図10】該複合操作型入力装置に備えられるスイッチユニットを分解して示す上方斜視図である。
【図11】該スイッチユニットを分解して示す下方斜視図である。
【図12】該回転型電気部品のセルフリターン動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ハウジング
1a 収納部
1b 中心孔
2 回転部材
2b 環状溝
2d 係合凹部
2e 第1のストッパ突起
2f 第2のストッパ突起
2g,2h 切欠き
2i 横孔
3 捩りコイルばね
3a 巻回部
3b 第1の腕部
3c 第2の腕部
4 操作ユニット
5 スイッチユニット
6 カバー
7 内側ガイド壁
8 外側ガイド壁
8a 第1のクリック溝
8b 第2のクリック溝
8c 第3のクリック溝
8d 係合突起(係止部,受部)
8g,8h ガイド面
13 スプリング
14 鋼球(駆動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部を有するハウジングと、前記収納部の内部に回転可能に保持された回転部材と、この回転部材に保持された復帰用の捩りコイルばねとを備え、
前記回転部材の外周面にストッパ突起と一対の切欠きを形成すると共に、前記捩りコイルばねの両端から突出する腕部をそれぞれ前記切欠きの端部に係止し、前記収納部の内周面に、前記腕部に係脱可能な係止部と前記ストッパ突起に係脱可能な受部とを同じ位置または近接した位置に突出形成したことを特徴とする回転型電気部品。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記係止部と前記受部を共通の係合突起に形成したことを特徴とする回転型電気部品。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記回転部材に軸線方向の一端側を開放した環状溝を形成し、この環状溝内に前記捩りコイルばねの巻回部を収納すると共に、前記切欠きを前記環状溝の外周面に連通させたことを特徴とする回転型電気部品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記収納部と前記回転部材のいずれか一方に複数のクリック溝を周方向に離間させて形成すると共に、いずれか他方に前記クリック溝と係脱可能な駆動体を弾性保持し、この駆動体が所定の前記クリック溝と係合しているとき、前記捩りコイルばねの前記両腕部がいずれも前記係止部から離間するようにしたことを特徴とする回転型電気部品。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記複数のクリック溝のうち周方向における外側に位置するクリック溝の端部に、前記所定のクリック溝とは逆方向に延びるガイド面を形成し、前記回転部材が前記捩りコイルばねの付勢力によって所定位置へ回転復帰するとき、前記駆動体が前記ガイド面を摺動して前記外側に位置するクリック溝と係合するようにしたことを特徴とする回転型電気部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−130327(P2008−130327A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313177(P2006−313177)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】