説明

回転対称ツールを製造するレーザ加工装置及び方法

【課題】回転対称ツールを製造するレーザ加工装置及び方法を提供する。
【解決手段】円形ブランク27を用い、例えば矩形の輪郭をしたパルス領域55を規定して、レーザビームを所定の軌跡Bに沿って移動することによってレーザアブレーションが行われ、ブランク材から材料が除かれ所定の形状とされる。ブランク27を支持するツールホルダとレーザビームインパルス24を送給するレーザヘッドとの相対運動は、数個の軸を有する位置決め装置によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2010年3月15日に出願された独国特許出願第10 2010 011 508.8−34号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ブランクからツール、特に、回転対称ツールを製造するレーザ加工装置及び方法に属する。ブランクには、1つ又は数個のチップ溝、切削エッジ、切削面、及び端フランクが形成される。また、このブランクは、例えば、硬質金属シャフト及びダイヤモンドツールインサートとして、数層の材料層又は数個の接合要素も含み得る。
【背景技術】
【0003】
このようなブランクを加工するのに、様々なアブレーション方法(例えば、研削)が知られている。非常に硬質な材料(例えば、多結晶ダイヤモンド(PKD)又はCVD(化学蒸着)ダイヤモンド)の研削は、技術的にも経済的にも制限される。特に寸法が非常に小さい場合、研削では、一定の形状寸法のチップ溝しか作成できない。更に、ブランクへの力の効果が非常に大きく、望まない変形に至ることがある。短パルスレーザを用いるレーザアブレーションは、例えばツールの製造において、これらの材料を経済的に加工する新しい可能性を提供する。
【0004】
しかしながら、高品質のツールを製造することは困難である。現在の最先端技術では、レーザスキャナを用いてツールの輪郭をスキャンするレーザシステムが知られており、このシステムでは、スキャナに対してブランクは静止している。これらのレーザスキャナは、個々のレーザビームインパルスによるブランクのスキャン中、非常に速いスキャン速度で作動する。しかしながら、達成可能な精度は、今日の要求に応じていない。更に、この処理において形成される表面及びエッジは、直線のコースからずれて、不揃いなギザギザのコースをしている。
【0005】
更に、レーザがブランクに対し機械軸に沿って移動されるレーザ加工装置が知られている。このようにして、ブランクに形成される表面及びエッジの精度及び品質は高めることができるが、これにより達成され得るアブレーション速度は遅い。その理由は、機械軸の動力及び速度が制限されるからである。機械軸の動力を高めるには、多くの労力と費用が必要であり、レーザ加工装置が非常に高価となる。
【0006】
ブランクをレーザ加工する方法及び装置が、例えば、独国実用新案第299 08 385(U1)号から知られている。この装置は、レーザインパルスを生成するレーザを含む。レーザ及び/又はツールブランクホルダは、駆動装置を介して、レーザの光軸の方向及び光軸を横断する方向に移動される。この処理において、レーザビームは、除去される表面の全幅にわたる数本の隣接したライン又は重なり合ったラインに沿って移動される。従って、材料は、レーザインパルスの衝突位置において、1点1点除去される。材料のアブレーションを連続的に行うため、衝突位置は5〜25%重なっている。そのため、パルスレーザの周波数が高い場合、それに対応する速い進行速度が必要である。既に述べたように、この手順におけるアブレーション速度は遅く、それに対応して加工時間が長い。
【0007】
国際公開第2006/038017(A2)号には、レーザ加工装置の2つの異なる実施形態が説明されている。第1の実施形態では、レーザスキャナを用いて、数個の隣接したレーザインパルス衝突位置から成るパルス領域が形成される。このパルス領域内のレーザインパルス衝突位置において、材料のアブレーションが行われる。第2の実施形態では、実際には材料のアブレーションは行われないが、ブランクは切除される。まず、ブランクに通路が開けられる。通路の完成後、一挙にブランクを切削する進行運動が開始される。これは、レーザ加工の最初に説明した変形例に相当する。
【0008】
独国特許出願公開第10 2007 012 815(A1)号は、レーザビームインパルスの衝突位置がスキャナにより格子パターンに沿って配置される方法を開示している。これに重ねて、格子パターンと衝突位置の一次元又は二次元相対運動が行われ得る。このような重ね合わせ相対運動は、スキャナによるレーザインパルスの通路移動よりも速くなければならない。このような高速重ね合わせ運動の達成方法については、開示されていない。既知の機械軸では、このような高速重ね合わせ運動をとてももたらせない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国実用新案第29908385号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/038017号パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第102007012815号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの既知の方法及び装置に基づいて、本発明の目的は、ツールを製造する改良された方法及びレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ブランク(27)からツール、詳細には、その長手方向軸(L)を中心に回転する回転ツールを製造する方法及び装置に属する。この回転ツールは、少なくとも1つの切削エッジ(60)及びチップ溝(61)を含む。この回転ツールは、その作動領域(63)において、断面が長手方向軸(L)に対して半径方向に対称的であるのが好ましい。その作動領域は、レーザ加工装置(20)を用い、例えば矩形の輪郭をしたパルス領域(55)をレーザスキャナが使用することによって、レーザアブレーションが行われることにより、円柱形ブランク(27)から切除するようにして(exclusively)作成される。レーザビームインパルス(24)は、このパルス領域(55)内において、所定のパルス通路(B)に沿って配置された複数の衝突位置(25)に向けられる。このパルス領域(55)は、ブランク(27)の表面(26)に沿って、ツールのように移動される。これにより、チップ溝(61)とその次に切削エッジ(60)が、ブランク(27)から材料が昇華することによって形成される。ブランク(27)を支持するツールホルダ(18)とレーザビームインパルス(24)を送給するレーザヘッド(19)との相対運動は、数個の軸を有する位置決め装置(30)によって行われる。
【0012】
本発明によれば、所定のパルス周波数のレーザビームインパルスを生成するパルスレーザが設けられている。このレーザビームインパルスは、方向転換装置を介して、ブランクの表面上にある多数の衝突位置に、特に、予め決められた一定の順序で向けられる。これら所定の衝突位置によって、ブランクの表面上に二次元のパルス領域が形成される。このようにして、一連のレーザビームインパルスが生成され、パルス領域における互いに異なる衝突位置に向けられる。この手順が、所定の順序で繰り返される。
【0013】
位置決め装置は、ブランク及び/又は方向転換装置を、場合によってはレーザと共に、形成されるエッジ若しくは表面領域に沿って、相対運動方向に移動させる。本発明では、パルス面は、位置決め装置がブランクの表面上における相対運動に対してもたらす速度で移動する。このようにして、ツールのようにブランクに対して移動されるパルス面領域において、材料のアブレーションが行われる。その結果、一方では、アブレーション速度が速くなり、他方では、所望のコースラインに対してほとんどずれ若しくは誤差のない非常に正確なエッジ及び表面コースを生成することができる。ブランクには、少なくとも1つのチップ溝と少なくとも1つの切削エッジが形成され、まずチップ溝が形成されるのが好ましい。このようにして、追加の成形処理(詳細には、材料アブレーション処理)を省略することができる。このツールは、ブランクから、レーザアブレーションによって切除するようにして製造することができる。詳細には、直径が2mm未満又は更には0.5mm未満の小型回転ツールを製造することが可能である。
【0014】
本発明は、これまで選択的に使用されてきた2つのレーザ加工方法を組み合わせる。パルス領域を形成するには、高速スキャナレンズが用いられる。このスキャナレンズは、レーザビームインパルスを、形成される表面若しくはエッジの所望の輪郭に沿って位置決めするのではなく、パルス領域の衝突位置に向ける。機械軸を介してパルス領域とブランクが同時に相対運動することによって、所望の精度が確実になり、表面及びエッジコースが、所定のコースからほんの少しずれるだけで維持される。
【0015】
チップ溝を形成するために材料をアブレーションしている間、パルス領域とブランクの相対運動方向は、チップ溝のシャフト側端部において反転される。方向反転中、レーザビームインパルスはオフにされ、このチップ溝の端部において、チップ溝を所望の形状にするため、パルス領域におけるレーザインパルスの衝突位置の数及び/又は位置が変更される。
【0016】
これに対し、切削エッジの形成中には、パルス領域とブランクの相対運動が維持され、これにより、ブランクの表面上におけるパルス領域は停止されないため、連続相対運動と呼ばれ得る。例えば、相対運動の方向反転中に小休止が生じる場合、このような休止状態中、パルス領域はブランクの外側にある。パルス領域の一部だけでもブランクの表面に衝突するとすぐに、相対運動は停止せずに行われる。
【0017】
まず、1つの又は全てのチップ溝が形成されるのが好ましい。このようにして、次に少なくとも1つの切削エッジを形成するのに必要とされる材料のアブレーションを軽減することができる。また、これにより、ほとんど不均一性若しくは凹凸のない切削エッジコースがもたらされる。チップ溝が形成された後、且つ、切削エッジが形成される前に、切削エッジの形成によってもたらされる自由領域付近に、解放位置凹部を形成してもよい。この解放位置凹部によって、約15゜〜30゜の範囲の大きな逃げ角が作りやすくなる。
【0018】
切削エッジを形成するためのレーザビームインパルスの強度は、チップ溝を形成するためのものより低くてもよい。好適な実施形態において、レーザビームインパルスのビームは均一化される。ゆえに、レーザビームインパルスにおけるエネルギー分布は、レーザビームインパルスの断面積全体にわたって、従って衝突領域全体にわたって均一である。ゆえに、ツールの製造中におけるブランクの加熱を更に軽減することができると共に、熱損傷(特に、熱変形)を回避することができる。これは、例えばマイクロツールに関連する、極めて繊細なツールを製造する際に、特に重要である。
【0019】
位置決め装置は、加工される円柱形ブランクの長手方向軸と一致する回転軸を含み得る。ブランクは、チップ溝の加工中、及び/又は、2つのチップ溝の加工と加工との間に、この回転軸を中心に回転される。また、このようにして、少なくとも一部がブランクの長手方向軸を横断するように延びるチップ溝(例えば、螺旋状のチップ溝)を作成することもできる。
【0020】
周波数が1〜10MHzのパルスレーザを用いるのが好ましい。
【0021】
位置決め装置は、少なくとも時々、且つ、少なくともチップ表面又は自由表面の作成中に、レーザビームインパルスの進行方向とブランクに形成される表面領域との間の傾斜角を、0よりも大きくなるように調整するのが好ましい。本発明では、レーザビームインパルスは、相対運動方向に対して直角に延びるのが好ましい。パルス領域は、形成される表面領域を横断するように方向付けられる。形成される表面領域に対し斜めに方向付けられたレーザビームインパルスによって、材料のアブレーション中に追加の自由空間が形成され、これにより、アブレーション領域に形成されたプラズマの除去が向上する。この手順の始め、傾斜角は0であってよく、この手順が所定状態に到達した後、傾斜角は増加され得る。
【0022】
傾斜角は、例えば、ブランクの材料に応じて調整されてもよい。この傾斜角は、0゜〜45゜の領域、好ましくは5゜〜25゜の範囲であり得る。また、傾斜角は、位置決め装置によって、ブランクの加工中に変更され、所望の値に調整されてもよい。特に、ブランクが異なる材料の数層から構成されていて、加工されている材料が加工中に変わる場合、所定の傾斜角は、それぞれの材料に合わせて、異なる値に調整されてもよい。
【0023】
パルス領域は、基本的に長方形の輪郭を有し得る。パルス領域を形成する衝突位置は、この長方形の輪郭内に互いに隣り合わせで配置され、レーザビームインパルスによってこれらの衝突位置に形成されるクレータのうちの数個は、この長方形の輪郭に接する。別の言い方をすれば、パルス領域の外側の衝突位置は、矩形のラインに沿って配置される。長方形のパルス領域の代わりに、その他の多角形領域、楕円形若しくは円形領域、又は、扇形(annular segment-shaped)領域を形成してもよい。パルス領域の形状は、行われる材料アブレーション、及び、ブランクから形成される加工物の所望の輪郭に合わせてもよい。
【0024】
パルス領域のサイズは、チップ溝の形成中に変化してもよい。パルス領域は、例えば、チップ溝の深さが深くなるにつれて、小さくなってもよい。このようにして、異なる形状寸法をしたチップ溝を、単純な方法で形成することができる。パルス領域は、1本のパルスライン又は1つの衝突位置まで縮小することができる。
【0025】
方向転換装置は、所定のパルス通路に沿って配置された衝突位置の方へ、レーザビームインパルスを向けるのが好ましい。パルス通路は、パルス領域の形状によって決まり、好ましくは、蛇行形状若しくは螺旋状のコースを有する。本発明では、このパルス通路は、始点としての衝突位置及び終点としての衝突位置を含み得る。終点は、形成される輪郭に割り当てられる、パルス領域のエッジに配置される。この終点を含む通路部分は、相対運動方向に対して平行に又は接線方向に延びるのが好ましい。終点から始点へのリセット移動中には、比較的長い調整距離を通過し、この距離は、その他の、パルス通路に沿った2つの連続する衝突位置間における調整通路よりも、実質的に長い。レーザインパルスの位置決め精度は方向転換装置によって制限されると共に、方向転換装置は行き過ぎる傾向にあるので、リセット移動の移動方向は、形成されるエッジ及び/又は領域から離れるように向けられる。このようにして、作成されている輪郭に対する定量的悪影響が回避される。
【0026】
パルス通路に沿った2つの連続する衝突位置間の距離は、特に、インパルスの調整周波数及び方向転換装置の調整速度を選択することによって、所望通り、予め決定され得る。
【0027】
2つの連続するレーザビームインパルスは、パルス領域における異なる衝突位置に向けられてもよい。或いは、2つ以上のレーザビームインパルスから成るインパルスシリーズを同じ衝突位置に向けたり、次のインパルスシリーズのみを異なる衝突領域に向けたりすることも可能である。1つの衝突位置に向けられる個々のインパルスのエネルギー又はインパルスシリーズのエネルギーは、使用されるインパルスの数に応じて、予め決められて分配される。1つのインパルスシリーズに含まれるレーザビームインパルスの数が多いほど、1つのレーザビームインパルスに含まれるエネルギーは小さい。
【0028】
ブランクの、形成される表面領域を覆っている部分の材料は、パルス面領域に対し基本的に平行に延びる数層のアブレーション層の一層ずつ、有益に除去される。レーザビーム放射方向におけるアブレーション層の厚さは、レーザのインパルス周波数及びパルス面領域のブランクに対する相対速度によって決まる。この層の厚さは、100分の数mmにすることができる。アブレーション層は、形成される表面領域を横断するように延びる。
【0029】
各アブレーション層をアブレーションした後、レーザビームインパルスの焦点は、集束レンズ系又は位置決め装置によって、調節若しくは調整されるのが好ましい。
【0030】
また、材料に応じて、加工パラメータが追加されてもよい。例えば、材料のアブレーション中、レーザインパルスの強度は変更されてもよい。このようにして、所望のツール形状からのずれを小さくすることができる。
【0031】
プロセスガス流は、プロセスガス供給部を介して、ブランクに向けることができる。このプロセスガス流は、便宜的に、パルス面領域に対して斜めに向けられる。昇華中に形成されたプラズマは、このプロセスガス流を介して、レーザの加工領域から除去される。プロセスガス供給部は、離間された数個のプロセスガスノズルを含むのが好ましく、これらのノズルはそれぞれ、異なる方向からの部分流を、パルス面領域付近の加工領域に向ける。
【0032】
本発明の有益な特徴は、本発明を例示する以下の図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】レーザ加工装置の一例示的な実施形態のブロック図である。
【図2】レーザ加工装置の一例示的な実施形態の略側面図である。
【図3】パルス面領域の様々な形状の1つを示す図である。
【図4】パルス面領域の様々な形状の1つを示す図である。
【図5】パルス面領域の様々な形状の1つを示す図である。
【図6】2つの衝突領域の略断面図である。
【図7】チップ溝作成中における、ブランクの断面図である。
【図8】切削エッジ形成前に行われる外側の材料アブレーション中における、ブランクの断面図である。
【図9】切削エッジ作成中における、ブランクの断面図である。
【図10】長手方向軸の方向に延びるチップ溝を備えた、ブランクの略斜視図である。
【図11】長手方向軸に対して斜めに延びるチップ溝を備えた、ブランクの略斜視図である。
【図12】図10及び図11に示されているブランクの、チップ溝のシャフト側端部領域における長手方向断面図であり、ブランクとパルス面領域の相対運動を概略的に示している。
【図13】螺旋状のチップ溝を備えた、ブランクの略側面図である。
【図14】レーザビームインパルス又はインパルスシリーズの強度を経時的に示すグラフである。
【図15】真空室を含む、レーザ加工装置の別の実施形態の、ブロック図に似た略式の略図である。
【図16】図14による例示的な実施形態の変形例の、ブロック図のような略図である。
【図17】切削エッジ付近に形成された支持ベースを備える、完成ツールの作動領域の部分斜視図である。
【図18】切削エッジ付近にチップガイドステージを備える、完成ツールの作動領域の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、レーザ加工装置20を概略的に示している。このレーザ加工装置は、パルスレーザ21を含み、このパルスレーザ21は、パルスレーザビーム22を発生させて、方向転換装置23を含むレーザヘッド19へ供給する。方向転換装置23は、もたらされるレーザビームインパルスの方向を変更することができ、その結果、そのレーザビームインパルス24をブランク27の表面26上にある所定の衝突位置25に向けることができる。この方向転換装置23は、スキャナ装置とも呼ばれる。また、この方向転換装置23は、集束レンズ系28も備える。ブランク27は、収容領域47においてツール支持部18に支持される。
【0035】
このレーザ加工装置20は、更に制御装置29を含み、この制御装置29は、レーザヘッド19とブランク27の相対位置を調整且つ変更することのできる位置決め装置30を制御する。この位置決め装置30の直線軸及び回転軸の数は、様々であってよい。
【0036】
レーザ加工装置の一例示的な実施形態が、図2に側面図で示されている。このレーザ加工装置20は、装置台を形成するベース部材31を含む。装置台を形成するため、このベース部材31上には、第1ガイドトラック32が取り付けられ、この第1ガイドトラック32によって、キャリッジ33が装置台上を第1方向xに移動することができる。この第1キャリッジ33には、第2方向zに移動することができるようにツールホルダ18が支持されている。第2方向zは、第1方向xに対して直角に延びる。ゆえに、第1キャリッジ33には、第2方向zに延びて第2キャリッジ35が移動可能に支持される第2ガイドトラック34が設けられる。第2キャリッジ35には、旋回軸37が、第1方向xに対しても第2方向yに対しても垂直に延びる第3方向yに延びる、第1旋回装置36が配置されている。この第1旋回装置36は、第2旋回軸39を備えた第2旋回装置38を保持している。この第2旋回装置38の第2旋回軸39は、第1旋回軸37に対して直角に延びる。この例示的な実施形態では、ブランク27と係合するツールホルダ18は、第2旋回軸39と同軸上に延びる。ゆえに、このツールホルダ18に係合される円柱形ブランクは、第2旋回軸39と同軸上に支持される。第2旋回装置が回転されると、ブランク27はその長手方向軸Lに沿って回転する。
【0037】
ベース部材31には、更なる第3ガイドトラック40が配置され、この第3ガイドトラック40には、レーザヘッド19を支持する第3キャリッジ41が、第3方向yに移動することができるように支持されている。この第3キャリッジ41は、レーザヘッド19が配置されている上部42を含む。レーザビームインパルス24は、収容領域47内へベース部材31の方向に向けられる。
【0038】
これらのキャリッジ33、35、41は、例えば直線的に移動することができる。
【0039】
パルスレーザ21によって発生されたレーザビームは、このレーザ21からレーザヘッド19へ、管状レーザビームダクト43内を延びる。第1ダクト部分43aは、ベース部材31内を第3方向yに延びる。この第1ダクト部分43aは、伸縮自在管の形態であるため、その長さを第3キャリッジ41の第3方向yにおける移動に合わせやすい。第1ダクト部分43aには、方向転換ミラー44aを介して第2ダクト部分43bが結合されている。この第2ダクト部分43bは、ベース部材31から第3キャリッジ41内をその上部42まで延びる。ここで、第2ダクト部分43bは、第2方向転換ミラー44bを介して第3ダクト部分43cに結合され、この第3ダクト部分43cの端部に、レーザヘッド14が配置される。
【0040】
位置決め装置30は駆動装置を含み、この駆動装置によって、キャリッジ33、35、41及び旋回装置36、38が移動されて位置決めされる。このようにして、レーザビームインパルス24とブランク27の相対位置及び相対運動は、制御装置29によって提供される制御信号に従い、位置決め装置30によって調整することができる。旋回駆動装置としては、例えばトルクモータが用いられてもよく、キャリッジ33、35、41を動かす駆動装置としては、リニア駆動装置(例えば、リニアモータシャフト)や直接駆動装置が用いられるのが好ましい。位置決め装置30は、レーザヘッド19とツールホルダ18(従って、これに係合されるブランク)の相対運動をもたらす。この相対運動は、3つの方向x、y、zによって画定される空間内であれば、いずれの通路を辿ってもよい。
【0041】
図示されているこの例示的な実施形態から離れ、レーザヘッド19は、ベース部材31に対して移動不可能に配置されてもよい。この場合、レーザヘッド19とツールホルダ18の第3方向yにおける相対運動は、ベース部材31と第1キャリッジガイドトラック32の間、又は、第1キャリッジガイドトラック32と第1キャリッジ33の間に、更なるキャリッジを配置することによって、行うことができる。加えて、更なる第3旋回軸及びこれに関連する旋回装置を設けることも可能である。より単純なレーザ加工装置では、機械軸の数を減らしてもよい。
【0042】
制御装置29は、レーザヘッド19を制御して、例えば、ブランク27を加工する動作パラメータを調整又は変更してもよい。この動作パラメータとは、例えば、レーザインパルス24の強度I、及び/又はレーザ21のインパルス周波数f、及び/又は集束レンズ系28の焦点距離であり得る。周波数範囲は、1MHzから10MHzまで幅があってもよいし、この周波数範囲のうちの一部範囲のみから成っていてもよい。
【0043】
このレーザ加工装置20は、更に、収容領域47においてプロセスガス流Pを生成するプロセスガス供給部45及びプロセスガス吸引装置46を含む。プロセスガス流Pは、レーザアブレーション中に材料が昇華することによって形成されるプラズマを除去する機能を果たす。加工されているブランク27の領域にプラズマ雲があると、レーザビームインパルスに含まれるエネルギーの一部がこのプラズマによって吸収されてしまうので、材料のアブレーション効率が低下する可能性がある。ブランク27からプラズマを除去することによって、レーザビームインパルスによる材料のアブレーションが確実に制約されなくなる。
【0044】
第2方向zに見て、プロセスガス吸引装置46は、例えば、加工されるブランク27のレベルに配置される(図2に、破線によって可能な動作位置が示されている)。プロセスガス流Pは、ブランク27からこのプロセスガス吸引装置46へ、およそ第3方向yに流れる。プロセスガス供給部45は、レーザヘッド19付近に配置されるのが好ましい。図2に示されているように、レーザヘッド19とプロセスガス供給部45は、第3キャリッジ41の上部42に隣り合わせで配置されている。ゆえに、このプロセスガス供給部45から放出されるプロセスガスは、加工されるブランク27の方へ斜めに向けられる。プロセスガス流Pは、プロセスガス供給部45とブランク27の間において、例えば、第1方向x及び第3方向yによって画定される平面に対して斜めに流れる。このプロセスガス供給部45は、1つ又は数個のプロセスガスノズル52を含み得る。本明細書中で説明するこの例示的な実施形態では、第1方向xにおいて、3つのプロセスガスノズル52が隣り合わせで配置されている。各プロセスガスノズル52は、加工されているブランク27の領域付近へ向けられる部分的な流れを放出する。また、プロセスガスの流れ出ていく方向を制御するよう調整できる、旋回可能なプロセスガスノズル52を設けることも可能である。プロセスガス吸引装置46は、第3方向yにおいて、第3キャリッジ41と共に移動することができる。更に、このプロセスガス吸引装置46は、第2方向z及び/又は第1方向xにおいても調整できるように、キャリッジ41に支持されていてもよい。
【0045】
図15及び図16に示されているような例示的な実施形態では、プロセスガス流Pを生成する代わりに、真空室48が設けられており、この真空室48内には、ツールホルダ18及びブランク27の収容領域47が配置されている。収容領域47を真空状態にすることができるように、この真空室48は、吸引ライン49を介して真空ポンプ50に接続されている。この場合、方向転換装置23は、真空室48の内部に配置されてもよいし(図15)、或いは、例えば図2及び図16に示されているように、真空室48の外部に配置されてもよい。後者の場合、真空室48は、用いられるレーザ波長が透過する、レーザインパルス24の入射位置51の領域になければならない。
【0046】
方向転換装置23を用いて、レーザビームインパルス24は、パルス領域55の領域において、ブランク27の表面26へ向けられる。レーザビームインパルス24が衝突位置25において表面26に衝突し、そこで材料のアブレーションが生じることによって、図6に概略的に示されているように、漏斗状のクレータ56が形成される。衝突位置25としては、この場合、クレータの中心点又は中心軸が示されている。所定間隔の複数の衝突位置25が、パルス領域55を形成している。
【0047】
制御装置29は、方向転換装置23に、連続する衝突位置25を配置するパルス通路Bを提供する。方向転換装置23は、レーザビームインパルス24を次々と、パルス通路Bの衝突位置25に向ける。パルス通路Bのコースは、パルス領域55の形状によって決まり、図3による長方形のパルス領域55では、直線通路部分57から構成される蛇行形状をしている。エッジ60又は自由表面62’から離間した、パルス領域55の角地点にある衝突位置25が、始点Sを成す。この始点Sから始まり、レーザビームインパルス24は、パルス領域の対角線上に反対の角にある、パルス通路Bの終点Eを務める衝突位置25まで、パルス通路Bに沿って位置付けられる。
【0048】
終点Eを含むパルス通路の通路部分57は、切削エッジの作成において、エッジ60付近のチップ若しくは自由表面62’に対して平行に延びる。この通路部分57は、形成される自由表面領域62’又はエッジ60に直接接する。終点Eに到達すると、方向転換装置23においてリセット移動が開始され、レーザビームインパルス24は、始点Sから始まるパルス通路Bに再び位置付けられる。このリセット移動は、形成される輪郭60、61から離れる方向に行われる。このリセット移動は、図3〜図5に、破線の矢印によって示されている。
【0049】
パルス通路Bに沿った2つの連続する衝突位置25間の距離Aは、レーザ21のインパルス周波数f及び方向転換装置23の調整速度によって決定される。パルス通路Bの方向転換中、この距離Aは様々であってもよい。
【0050】
パルス領域55が、円形、楕円形、又は別の曲線形である場合、終点Eを含む通路部分は、形成される輪郭60、61に対して接線方向に延びていてもよい(図4)。この場合、パルス通路Bは螺旋形をしている。また、パルス領域55は、扇形(form of ring segments)をしていてもよい(図5)。
【0051】
連続するレーザビームインパルス24を蛇行した若しくは蛇のような通路に沿って位置合わせする代わりに、制御装置29に格納されている別のパルス通路を選択して、画定された全ての衝突位置25を始点Sから終点Eまで順々に訪れてもよい。始点Sと終点Eは、互いにできるだけ離れているのが好ましく、プロセスガスは、終点Eから始点Sへ向かって流れる。
【0052】
この好適な例示的な実施形態では、各衝突位置25にレーザビームインパルス24が1つだけ向けられ、次のレーザビームインパルス24は、パルス領域55の別の衝突位置25に向けられる。このような手順が、図14の上部に示されている。2つの連続するレーザビームインパルス24間の時間距離は、レーザ21の瞬時インパルス周波数fの逆数である。パルスレーザ21は、ナノ秒レーザ、ピコ秒レーザ、又はフェムト秒レーザの形態であり得る。
【0053】
連続するレーザビームインパルス24が異なる衝突位置25に向けられる場合、これらのレーザビームインパルス24は強度I1を有する。図14のその他2つのグラフに示されているように、2つ以上のレーザビームインパルス24が1つの衝突位置25に向けられてもよく、その後、次の衝突位置25が指定される。つまり、方向転換装置23は、数個のレーザビームインパルス24から成るインパルスシリーズ65を1つの衝突位置25に向け、その後、次のインパルスシリーズ65を別の衝突位置25に向ける。この場合、1つのインパルスシリーズ65に含まれてその衝突位置25に効果をもたらすエネルギーは、強度I1を有する1つのレーザビームインパルス24のエネルギーに対応しなければならない。従って、1つのインパルスシリーズ65の個々のレーザビームインパルス24の強度Iは低くなる。本明細書中に示されているこの例示的な実施形態では、レーザインパルスシリーズ65全体の強度Iは一定である。ゆえに、1つのインパルスシリーズ65の個々のレーザビームインパルス24の強度Iは、強度I1を、このインパルスシリーズ65を構成するレーザビームインパルス24の数で割った商に対応する。
【0054】
クレータ56の直径Dは、衝突位置25におけるレーザビームインパルス24の有効径によって決まり、集束レンズ系28によって予め決められ、好ましくは一定の値に調整されるが、加工中に変更されてもよい。
【0055】
レーザヘッド19は、パルスレーザビーム22を均一化する装置66も含み得る。このビーム均一化装置66は、レーザビームインパルスの断面積におけるエネルギー分布をより均一にする。このビーム均一化装置66としては、屈折型又は回折型のビームホモジナイザが用いられ得る。このようにして、長方形の強度プロファイルの不均一性を2%未満にすることも可能である。このようなビーム均一化装置66を用いた場合、図14に概略的に示されているように、個々のレーザビームインパルス24の上がり下がりは非常に急勾配である。レーザスポットの領域における衝突位置2周囲では、アブレーションされる材料が均一に昇華される。このようにして、加工されているブランク27の加熱が更に軽減される。
【0056】
二次元空間的に制限されたパルス領域55が方向転換装置23によって加工されるのと同時に、位置決め装置30は、ブランク27の表面26上においてこのパルス領域55を相対的に移動させる。つまり、レーザビームインパルス24の複数の衝突位置25を含むパルス領域55によって形成される材料アブレーション領域は、所定の相対速度Vrelで移動する。
【0057】
図7〜図9には、円柱形ブランク27から、1つ又は数個の切削エッジ60及び1つ以上のチップ溝61を備えた回転ツールを形成する、3つの方法ステップが示されている。
【0058】
図7による第1方法ステップにおいて、チップ溝61がブランク27に形成される。そのために、ブランク27の表面上をパルス領域55が移動することによって、材料が一層59ずつ除去され、これにより、所望のチップ溝61が形成される。パルス領域55のサイズは、変更されてもよい。このようにして、パルス領域55のサイズは、形成されるチップ溝61の所望の形状に合わせることができる。例えば、底部に向けて狭くなっていくチップ溝61に関し、パルス領域55のサイズは、アブレーション層59毎に、より小さくなり得る。パルス領域55がブランク27に沿って移動されることにより、チップ溝61は、ほとんどどんな形状にもすることができる。このチップ溝61には、鈍角又は鋭角のエッジを形成することができる。また、1つ又は数個の溝フランクにアンダーカットを施すことも可能である。図10、図11、及び図13に、チップ溝61の異なる形態が概略的に示されている。
【0059】
チップ溝61は、長手方向軸Lに対して平行に延びていてもよい(図10)。また、これとは異なり、チップ溝61は、円柱形ブランク27の長手方向軸Lに対して斜めに延びていてもよい。図11の実施形態では、チップ溝61は、直線に沿って延びており、この溝のエッジは、円柱形ブランク27の長手方向軸Lに対して平行に延びる線に対し鋭角をなしている。別のツールの形態では、チップ溝61は、長手方向軸Lの方向において、螺旋状に延びていてもよい。このような実施形態が、図13に概略的に示されている。
【0060】
ブランク27から製造されるツールは、シャフト62を含み、このシャフト62から、チップ溝61と、切削エッジ60を備えた作動領域63とが延びている。これらのシャフト62及び作動領域63は、互いに接合される2つの異なる部品であってもよい。例えば、ブランク27は、硬質金属シャフト62に配置されたピンの形態であってもよい。このピンは、多結晶ダイヤモンド(PKD)又はCVD(化学蒸着)ダイヤモンドから成る、ダイヤモンドツールインサートであってよい。或いは、これらのシャフト62及び作動領域63は、接合又は結合ゾーンのない一部品の材料要素から構成されていてもよい。
【0061】
シャフト62付近のチップ溝端部64の領域では、長手方向軸Lから半径方向に測定されるチップ溝61の深さがより浅くなっている。チップ溝61は、チップ溝端部64へ向かって、例えば傾斜して延びていてもよい。傾斜したチップ溝端部64を備えるチップ溝61を形成するには、図12に概略的に示されているように、パルス領域55が、形成されるチップ溝61に沿って、ブランク27上を数回移動される。パルス領域55が相対運動方向Vにおいて移動される毎に、1つのアブレーション層59が除去される。アブレーション層59は、長手方向軸Lに対して半径方向に互いに積み重ねられている。パルス領域55の最初の相対運動により、ブランク27の自由端部67からシャフト端部64へ向かう方向に、材料のアブレーションが行われる。チップ溝端部64に到達すると、パルス領域55とブランク27の相対運動方向は反転されなければならない。この運動反転中、レーザビームインパルス24はオフにされる。相対運動方向Vが反転されると共に、この除去されたアブレーション層の終点68及び新しいアブレーション層59の始点69間のチップ溝方向における変位dSが到達されて初めて、レーザビームインパルスは再びオンにされる。この変位dSの量は、溝のシャフト側端部64における溝底部の所望のピッチによって決まる。チップ溝のシャフト側端部64から自由端部67へパルス領域55が移動する場合には、パルス領域55がブランク27を離れたときのみ、この相対運動方向の反転が行われる。自由端部67において運動方向が反転される際には、レーザインパルス24はオフにされる必要がない。アブレーション層の終点68及び次のアブレーション層の始点69間の変位dSは、溝の深さによって決まり、チップ溝のシャフト側端部64の領域における溝底部のピッチが変動する場合、長さが異なり得る。
【0062】
この例示的な実施形態では、図7による第1方法ステップにおいて、2つのチップ溝61が形成される。ブランク27のマーキング領域63において得られた断面形状は、長手方向軸Lに対して半径方向に対称的である。
【0063】
図8による選択的な第2方法ステップでは、形成されるチップ溝61付近の外側70において、材料のアブレーションが行われる。この例示的な実施形態では、円柱形ブランク27の元々の外面の一部が半径方向内側にアブレーションされ、その結果、凹部71が形成される。このアブレーション深さは、長手方向軸Lに対して半径方向に測定すると一定である。この処理において、パルス領域55は、ブランク27の長手方向軸Lに沿って数回移動される。従って、アブレーション層は、半径方向に互いに積み重ねられる。
【0064】
凹部71の形成は、次に切削エッジ60を形成するのに必要な材料のアブレーションを減らすため、必要又は得策であり得る。これは、例えば、大きな自由角を作成する場合に当てはまり得る。チップ溝61が周方向において非常に大きい場合、或いは、十分なチップ溝61がある場合には、本明細書中に提示したこの第2方法ステップによる、外側70における凹部71の形成は、省略されてもよい。
【0065】
次に、第3方法ステップ(図9)では、少なくとも1つの切削エッジ60が生成される。本明細書中に説明するこの例示的な実施形態では、2つの切削エッジ60が形成される。この切削エッジ60の生成中に、空間72が形成される。この空間72は、凹部71とチップ溝61との間に形成される。チップ溝61において、切削エッジ60の隣にチップガイド領域73が形成される。このチップガイド領域73は、チップ溝61が形成されるのに伴って形成されている。
【0066】
空間72又は切削エッジ60の作成中において、パルス領域55の少なくとも一部がブランク27の表面26に到達している限り、パルス領域55とブランク27の相対運動は決して0にはならない。これにより、非常に平らなエッジ及び領域が形成される。特に、切削ツールの切削エッジ60の作成においては、平滑なコースが非常に重要である。
【0067】
切削エッジ60の作成中、位置決め装置30によって、レーザビームインパルス24のビーム方向Rと空間72が位置する平面Fとの間における傾斜角αを設けることができる。空間72の表面輪郭は湾曲しているため、平面Fとは、パルス領域55が作動する領域に対する長手方向面である。傾斜角αは、制御装置29によって予め決定され、加工中に変更されてもよい。例えば、この傾斜角αは、加工されるブランク27の材料に合わせてもよい。
【0068】
選択的な更なる方法ステップでは、加工動作中におけるチップの粉砕を向上させるため、切削エッジ60の作成後、チップガイドステップ75を、チップガイド領域73に、切削エッジ60に沿って形成してもよい(図18)。更に、ブランク27の元々の外面領域に、支持面76を維持することも可能であり、この支持面76は、長手方向軸Lを中心に切削エッジ60と同一半径上に又はそれよりわずかに下に位置する。この支持面76は、微細構造を備える。詳細には、この支持面は、その半径方向外面に数個の凹部77を備え、これらの凹部77には、ツールの動作中に冷却潤滑剤を収容することができる。このようにして、摩擦力を減らすことができると共に、ツールの寿命を延ばすことができる。図17において、これらの凹部は、サイズを拡大して概略的に示されている。
【0069】
ツールの製造中、アブレーション層62のアブレーション速度は、レーザビームインパルス24の強度Iによって変更されてもよい。例えば、切削エッジ60及び空間72の作成中よりもチップ溝61及び/又は凹部71の作成中の方が、強度Iが高くてもよい。アブレーション層59の厚さは、これに対応して変更される。また、その他のパラメータ(例えば、パルス領域55とブランク27の相対速度)も、エッジコース又は表面の均一性要件が異なるため、異なる方法ステップにおいて、異なるように設定されてもよい。チップ溝61では、切削エッジ60に比べて、不均一性が高くても許容され得る。
【0070】
アブレーション層が除去されることによって、ブランク27の表面26とレーザヘッド19との間の距離が、除去されたアブレーション層59の厚さ分だけ変更されるため、アブレーション層59が除去された後、焦点位置は、位置決め装置30及び/又は集束レンズ系28によって、確実に次のアブレーション層59に合わせられる。この焦点位置は、各アブレーション層59の除去後に調整される。
【0071】
本発明は、ブランク27からツール(詳細には、その長手方向軸Lを中心に回転する回転ツール)を製造する方法及び装置に属する。この回転ツールは、少なくとも1つの切削エッジ60及びチップ溝61を含む。この回転ツールは、その作動領域63において、断面が長手方向軸Lに対して対称的であるのが好ましい。その作動領域63は、レーザ加工装置20によって、円柱形ブランク27から切除するようにして作成される。レーザ加工装置20は、レーザスキャナを介して、例えば長方形のパルス領域55を生成する。レーザビームインパルス24は、このパルス領域55内において、多数の衝突位置25を含む所定のパルス通路Bを辿る。このパルス領域55は、ブランク27の表面26に沿って、ツールのように移動される。この処理において、チップ溝61とその次に切削エッジ60が、ブランク27から材料が昇華することによって加工される。ツール支持部18とレーザビームインパルス24を供給するレーザヘッド19との相対運動は、数個の軸を含む位置決め装置30によって行われる。チップ溝61の作成中における動作パラメータは、切削エッジ60の作成中における加工パラメータと異なる。加工パラメータとしては、レーザビームインパルス24の強度I、及び/又はパルス領域55とブランク27の相対速度、及び/又はインパルス周波数f、及び/又はパルス領域55のサイズが、制御装置29を介して提供され得る。
【符号の説明】
【0072】
18 ツール支持部
19 レーザヘッド
20 レーザ加工装置
21 パルスレーザ
22 パルスレーザビーム
23 方向転換装置
24 レーザビームインパルス
25 衝突位置
26 27の表面領域
27 ブランク
28 集束レンズ系
29 制御装置
30 位置決め装置
31 ベース部材
32 第1ガイドトラック
33 第1キャリッジ
34 第2ガイドトラック
35 第2キャリッジ
36 第1旋回装置
37 第1旋回軸
38 第2旋回装置
39 第2旋回軸
40 第3ガイドトラック
41 第3キャリッジ
42 41の上部
43 レーザビームダクト
43a 第1ダクト部分
43b 第2ダクト部分
43c 第3ダクト部分
44a 第1方向転換ミラー
44b 第2方向転換ミラー
45 プロセスガス供給部
46 プロセスガス吸引装置
47 収容領域
48 真空室
49 吸引ライン
50 真空ポンプ
51 入射位置
52 プロセスガスノズル
55 パルス領域
56 クレータ
57 通路部分
59 アブレーション層
60 切削エッジ
61 チップ溝
62 シャフト
62’ (自由表面)シャフト
63 作動領域
64 チップ溝端部
65 インパルスシリーズ
66 ビーム均一化装置
67 27の自由端部
68 59の終点
69 59の始点
70 外側
71 凹部
72 空間
73 チップガイド領域
75 チップガイドステップ
76 支持面
77 凹部
α 傾斜角
A 距離
B パルス通路
D 直径
dS 変位
E 終点
f インパルス周波数
F 平面
I 強度
L 27の長手方向軸
P プロセスガス流
R 放射方向
S 始点
V 相対運動方向
x 第1方向
y 第3方向
z 第2方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランク(27)からツールを製造するレーザ加工装置であって、
レーザビームインパルス(24)を生成するレーザ(21)と、
前記ブランク(27)上の所定のパルス領域(55)内に互いに離れて配置された衝突位置(25)に、前記レーザ(21)の前記レーザビームインパルス(24)を向ける、方向転換装置(23)を含む、レーザヘッド(19)と、
前記ブランク(27)にチップ溝(61)及び切削エッジ(60)を生成するように、前記ブランク(27)と前記パルス領域(55)の相対運動をもたらす、位置決め装置(30)と、
を備える、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記位置決め装置(30)が、加工される円柱型ブランク(27)の長手方向軸(L)と一致する旋回軸(39)を有する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記レーザビームインパルス(24)のビームを均一化するビーム均一化装置(66)を更に備える、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記位置決め装置(30)を制御し、前記レーザビームインパルス(24)を放射する前記レーザヘッド(19)の光軸(R)と前記ブランク(27)に形成される表面領域若しくはエッジ(60)との間における傾斜角(α)を決定すると共に、前記傾斜角(α)を適宜調整する、制御装置(29)を更に含む、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記制御装置(29)が更に、前記ブランク(27)の加工中に前記傾斜角(α)を変更するように、前記位置決め装置(30)を制御する、請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記制御装置(29)が更に、前記ブランク(27)の材料アブレーション中に前記レーザビームインパルス(24)の強度(I)を変更するように、前記レーザヘッド(19)を制御する、請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記方向転換装置(23)が、更に、所定の順序で前記パルス領域(55)の前記衝突位置(25)に前記レーザビームインパルス(24)を向ける、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記方向転換装置(23)が、更に、所定のパルス通路(B)に沿って配置された所定の衝突位置(25)に前記レーザビームインパルス(24)を向ける、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記ブランク(27)へ、前記パルス領域(55)に対して斜めに延びる方向に向けられた、プロセスガス流(P)を生成する、プロセスガス供給部(45)を更に含む、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記プロセスガス供給部(45)が、それぞれが、異なる方向からの前記プロセスガス流(P)の部分流を前記パルス領域(55)付近の加工領域に向ける、数個のプロセスガスノズル(52)を更に含む、請求項9に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記レーザ(21)と前記レーザヘッド(19)との間に作動するように配置されて、前記レーザビームインパルス(24)を前記レーザヘッド(19)に向ける、レーザビームダクト(43)を更に含む、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
ブランク(27)から輪郭(60、61)を備えたツールを製造する方法であって、
前記ブランク(27)を用意するステップと、
レーザビームインパルス(24)を生成し、前記ブランク(27)上の所定のパルス領域(55)内における離間した所定の衝突位置(25)に前記レーザビームインパルス(24)を向けるステップと、
前記ブランク(27)にチップ溝(61)及び切削エッジ(60)を形成するように、前記ブランク(27)と前記パルス領域(55)の相対運動(V)を行うステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記ブランク(27)の材料を、前記パルス領域(55)によって決定されるような、数層のアブレーション層(59)の一層ずつアブレーションするステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ブランク(27)が円柱形をしており、製造される前記ツールが回転ツールである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ブランク(27)に少なくとも1つの前記チップ溝(61)を形成するステップと、次に前記ブランク(27)の外側(70)に少なくとも1つの前記切削エッジ(60)を形成する別のステップとを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記チップ溝(61)を形成する前記ステップの後、且つ、前記切削エッジ(60)を形成する前記ステップの前に、前記切削エッジ(60)の形成によって作られる空間(72)の付近に凹部(71)を形成する追加ステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記パルス領域(55)のサイズが、前記チップ溝(61)を形成する前記ステップ中に変更される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
最大直径が2mm未満で回転対称であり、前記レーザビームインパルス(24)によって切除するようにして加工される、用意された前記ブランク(27)から、前記ツールが製造される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの切削エッジ(60)を形成する前記ステップの後に、前記ツールの加工動作中におけるチップの粉砕を向上させる少なくとも1つのチップガイドステップ(75)を、チップガイド領域(73)に、前記少なくとも1つの切削エッジ(60)に沿って形成する追加ステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記ブランク(27)の元々の外面に、長手方向軸(L)を中心に前記切削エッジ(60)と同一半径上に又はそれよりわずかに下に位置する支持面(76)を維持すると共に、前記支持面(76)の半径方向外面に、前記ツールの動作中に冷却潤滑剤を収容することによって、摩擦力を減らし前記ツールの寿命を延ばすことのできる、数個の凹部(77)を形成する、追加ステップを更に含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−200935(P2011−200935A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−55564(P2011−55564)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(510280372)エワーグ アーゲー (3)
【Fターム(参考)】