説明

回転式電子部品のクリック機構

【課題】材料費の削減が図れると同時にクリックバネの確実な位置決め・固定が行える回転式電子部品のクリック機構を提供すること。
【解決手段】ケース10と、ケース10の収納部13内に回転自在に収納される回転体50と、アーム部71に設けた弾接部73を回転体50に設けたクリック係合部61に係合することでクリック感覚を生じさせるクリックバネ70と、ケース10の収納部13を覆うカバー100とを具備する。クリックバネ70は円弧状のアーム部71の根元部分に取付部75を連結したリング形状に形成されている。アーム部71は収納部13内に収納される外径寸法であり、取付部75はアーム部71の外周から水平方向外方に向けて突出している。ケース10の外周側壁17,21上に設けたクリックバネ係止部24内に取付部75を挿入・位置決めした上で、この取付部75をケース10とカバー100の間に挟持して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式電子部品に用いられるクリック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1の図2に記載されているように、クリック機能付きの回転式電子部品は、スイッチ基板(60)の収納部内に、つまみ(30)の回転型物(31)を回転自在に収納し、その上にクリックバネ部材(20)を設置し、さらにその上をカバー(10)で覆って構成されている。クリックバネ部材(20)は、枠状の固定部(21)の内部にリング状のクリックバネ(22)を形成して構成されており、クリックバネ(22)の部分に設けた弾接部(24)を回転型物(31)に設けた凹凸部(35)に弾接させ、つまみ(30)を回転することでクリック感覚が得られるようにしている。またクリックバネ部材(20)の固定部(21)は、スイッチ基板(60)の上面とカバー(10)の間に挟持されて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−78844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来のクリックバネ部材(20)は、リング状のクリックバネ(22)の周囲を枠状の固定部(21)が囲む形状なので、その面積が大きく、材料費のコストダウンが図れなかった。一方材料費を削減するために固定部(21)を省略すると、クリックバネ部材(20)の確実な位置決め・固定が困難になる。
【0005】
つまみ(30)の回転時に生じるクリック感覚(その強弱)を変更するため、クリックバネ部材(20)の厚みを変更してクリックバネ(22)の弾接部(24)の弾発力を変更する場合があるが、その場合、変更した厚み分だけ、回転式電子部品の高さ寸法が変化してしまう。そしてクリックバネ部材(20)の厚みを薄くした場合、この電子部品の足(15)を硬質の回路基板に設けた取付孔に差し込むと足(15)の先端近傍に設けた折り曲げ部分と回路基板の裏面との間に隙間が生じてガタツキが出てしまう。またクリックバネ部材(20)の厚みを厚くした場合、回路基板の取付孔の内部に足(15)の折り曲げ部分が当接してしまうため回路基板にしっかり差し込めないという不都合が生じる。さらに予め設定した厚みのクリックバネ部材(20)に合わせてスイッチ基板(60)とカバー(10)間を固定するようにカバー(10)の足(14)をスイッチ基板(60)の下面側に折り曲げる設定をしている場合に、例えばクリックバネ部材(20)の厚みを薄くすると、スイッチ基板(60)とカバー(10)間によるクリックバネ部材(20)の挟持力が小さくなり、場合によってはがたつきが生じる恐れもあった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、材料費の削減が図れると同時にクリックバネの確実な位置決め・固定が行え、また異なる厚みのクリックバネを確実に挟持・固定できる回転式電子部品のクリック機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の発明は、収納部を有するケースと、前記ケースの収納部内に回転自在に収納される回転体と、前記回転体上に設置され、弾性を有するアーム部に設けた弾接部を前記回転体に設けたクリック係合部に係合することでクリック感覚を生じさせるクリックバネと、前記クリックバネ上に設置されてケースの収納部を覆うカバーと、を具備し、前記クリックバネは円弧状のアーム部の根元部分に取付部を連結したリング形状又は円弧形状に形成され、前記アーム部は前記収納部内に収納される外径寸法であり、且つ前記取付部は前記アーム部の外周から水平方向外方に向けて突出し、前記ケースの収納部の周囲に形成した外周側壁上に設けた凹部からなるクリックバネ係止部に前記取付部を挿入・位置決めした上で、この取付部を前記ケースとカバーの間に挟持固定したことを特徴とする回転式電子部品のクリック機構にある。
【0008】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転式電子部品のクリック機構において、前記ケースのクリックバネ係止部の底面にはクリックバネの取付部を前記ケースとカバーの間に挟持した際に変形することで取付部の厚み寸法の相違を吸収する挟持用突部が設けられていることを特徴とする回転式電子部品のクリック機構にある。
【0009】
本願請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の回転式電子部品のクリック機構において、前記クリックバネの取付部には、カバーに向けて折り曲げられた係止爪が設けられており、この係止爪を前記カバーに設けた係止孔に挿入・係止してクリックバネの位置決めを行うことを特徴とする回転式電子部品のクリック機構にある。
【0010】
本願請求項4に記載の発明は、請求項1又は2又は3に記載の回転式電子部品のクリック機構において、前記クリックバネは、一対の円弧状のアーム部の根元部分を一対の取付部によって連結したリング形状に形成されていることを特徴とする回転式電子部品のクリック機構にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、クリックバネは、ケースの収納部内に収納されるアーム部と、アーム部の外周から突出してケースのクリックバネ係止部に挿入・位置決めされる取付部とによって構成されるので、小さな面積でクリックバネを構成でき、材料費の削減が図れる。またクリックバネの取付部をケースのクリックバネ係止部に挿入・位置決めした上で、この取付部をケースとカバーの間に挟持固定するので、クリックバネの位置決め・固定が容易且つ確実に行える。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、クリックバネの弾発力を変更する等の理由からクリックバネの厚みを変更しても、クリックバネを確実に挟持でき、固定できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、クリックバネの係止爪をカバーの係止孔に挿入・係止するので、クリックバネの位置決めをさらに確実に行うことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、クリックバネをリング形状に形成し、且つ一対の取付部をケースとカバーの間に挟持固定する構成なので、クリックバネの固定が確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】回転式電子部品1の分解斜視図である。
【図2】回転式電子部品1を下側から見た分解斜視図である(但しケース10及び反転板45の記載は省略)。
【図3】回転式電子部品1の断面図(図1のA−A断面図)である。
【図4】図4はクリックバネ70の斜視図である。
【図5】図5はクリックバネ係止部24の部分の要部拡大斜視図である。
【図6】ケース10の挟持用突部241の作用説明図である。
【図7】ケース10の挟持用突部241の作用説明図である。
【図8】ケース10の挟持用突部241の作用説明図である。
【図9】クリックバネ70−2の斜視図である。
【図10】クリックバネ70−3の斜視図である。
【図11】クリックバネ70−4の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るクリック機構を用いた回転式電子部品1の分解斜視図、図2は回転式電子部品1を下側から見た分解斜視図(但しケース10及び反転板45の記載は省略)、図3は回転式電子部品1の断面図(図1のA−A断面図)である。これらの図に示すように回転式電子部品1は押圧スイッチ付きの回転式電子部品であり、収納部13を有するケース10と、ケース10の収納部13内に設置される反転板45と、ケース10の収納部13内に回転自在に収納される回転体50と、回転体50の下面に取り付けられる摺動子65と、回転体50に連結されるツマミ120と、回転体50上に設置されるクリックバネ70と、クリックバネ70上に設置されてケース10の収納部13を覆うカバー100とを具備して構成されている。なお以下の説明において、「上」とはケース10からカバー100側をみる方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0017】
ケース10は中央に回転体50を収納する略円形の凹部からなる収納部13を有するケース本体11と、前記収納部13の内底面にインサート成型によって配置される回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)30と、ケース本体11の対向する2つの外周側面からそれぞれ突出する2本と3本の金属板製の端子40とを具備して構成されている。ケース本体11は合成樹脂を箱型で上面が解放された形状に成形して構成されており、略矩形状の底面15と、4つの外周側壁17,19,21,23とを具備している。外周側壁17〜23の上面の対向する角部には一対の小突起状の位置決め係止部29が設けられている。対向する外周側壁17,21の上面中央には下記するクリックバネ70の取付部75を挿入・位置決めする凹部からなるクリックバネ係止部24が形成されている。図5は前記クリックバネ係止部24の部分の要部拡大斜視図である。同図に示すようにクリックバネ係止部24は矩形凹状に形成され、その長手方向の長さ寸法は下記するクリックバネ70の取付部75の幅寸法とほぼ同一である。またクリックバネ係止部24の底面には挟持用突部241が設けられている。挟持用突部241はクリックバネ係止部24の底面の長手方向全長にわたって形成されている。挟持用突部241の横断面は三角形状であり、その先端を細くした形状とすることで、この上に設置される下記するクリックバネ70の取付部75をさらにその上に設置するカバー100で押し付けることで挟持した際に前記先端部分が変形(弾性変形又は塑性変形)して少し潰れるように構成している。
【0018】
フレキシブル回路基板30は可撓性を有する合成樹脂フイルム(この実施形態ではポリエチレンテレフタレートフイルム)を略矩形状であって前記ケース本体11の底面15の内部に内蔵される寸法に形成して構成されている。フレキシブル回路基板30の上面中央には押圧スイッチ用スイッチパターン31が形成され、またその周囲を囲むように回転スイッチ用スイッチパターン33が形成されている。これら両スイッチパターン31,33の間を仕切る位置には、フレキシブル回路基板30の上面上に突出するリング形状の突起部25が形成されており、この突起部25の内側の凹部が反転板収納部27を構成している。突起部25はフレキシブル回路基板30に形成した図示しない小孔を介して底面15と連結されている。
【0019】
端子40はフレキシブル回路基板30の上面の外周辺近傍部分に設けた図示しない端子接続パターン上にその一端を当接し、その上下をケース本体11によって挟持することで固定されている。一方の外周側面21から突出する2本の端子40は前記押圧スイッチ用スイッチパターン31に電気的に接続されており、他方の外周側面17から突出する3本の端子40は前記回転スイッチ用スイッチパターン33に電気的に接続されている。反転板45は弾性金属板を上方向に凸となるドーム形状に形成して構成されている。
【0020】
回転体50は合成樹脂を略円板状に一体成形して構成されており、その上面中央から円柱状の軸部51を突出している。軸部51の内部には軸部51を上下に貫通するつまみ取付孔53が形成されている。つまみ取付孔53の形状は、円の180°対向する部分から矩形状に突出する突出部分54,54を設けた形状であり、その下面には前記突出部分54が突出する方向に対して90°回転した方向に向かう直線状の一対の溝部55が形成されている。回転体50の下面はリング形状の摺動子取付面57となっており、3つの小突起からなる摺動子取付部59が設けられている。また回転体50の上面の前記軸部51の周囲を囲む位置には、リング状の凹凸からなるクリック係合部61が形成されている。
【0021】
摺動子65は弾性金属板をリング形状に形成し、その3か所に摺接部67を設け、また各摺接部67の根元部分に小孔からなる取付部69を設けて構成されている。
【0022】
図4はクリックバネ70を拡大して示す斜視図である。同図に示すようにクリックバネ70は弾性金属板製であり、一対の弾性を有する円弧状のアーム部71,71の根元部分を一対の取付部75,75によって連結したリング形状に形成されている。各アーム部71の中央には下方向に突出するように湾曲する弾接部73が設けられている。各取付部75は略矩形状であってアーム部71の外周から水平方向外方に向けて突出しており、その内部には矩形状の小孔77が設けられ、小孔77内に突出する係止爪79をカバー100に向けて略垂直上方を向くように折り曲げている。両アーム部71はそれらの両端部が接続されている取付部75の面から斜め下方に向けて下降するようにその根元部分が折り曲げられている。
【0023】
カバー100は金属板製であり、前記ケース10の収納部13を覆う略矩形形状のカバー本体部101と、カバー本体部101の対向する一対の辺からそれぞれ下方に折り曲げてなる2本ずつのケース係止部103及び1本ずつの取付部105とを有して構成されている。カバー本体部101の中央には上方向に突出する筒状の軸支部107が設けられ、カバー本体部101の対向する2つの角部近傍には前記ケース10の位置決め係止部29を挿入する小孔からなる係止部109が設けられている。またケース本体部101の前記クリックバネ70の2つの係止爪79に対向する位置にはそれぞれ係止爪79を略ぴったり挿入して係止する小孔からなる係止孔111が設けられている。
【0024】
ツマミ120は合成樹脂を略円柱状であって前記カバー100の軸支部107内に回動自在に挿入される寸法に成形して構成されており、その下面から小径の円柱状の突起部121を突出し、突起部121の下端近傍の外周から180°異なる方向に向けて略矩形状の係止部123を突出している。一対の係止部123は前記回転体50のつまみ取付孔53の一対の突出部分54にぴったり挿入でき、且つ係止部123の上部の部分は前記溝部55にぴったり挿入できる寸法形状に形成されている。突起部121の下端面は球面状に突出する押圧部125となっている。
【0025】
回転式電子部品1を組み立てるには、予め回転体50の摺動子取付面57に摺動子65を設置し、その際回転体50の摺動子取付部59を摺動子65の取付部69に挿入し、各摺動子取付部59の先端を熱かしめし、これによって摺動子65を回転体50に固定しておく。一方回転体50のつまみ取付孔53にその上側からツマミ120の突起部121を挿入し、その先端の係止部123全体を回転体50の突出部分54の下側に突出させ、その状態で(係止部123全体が突出部分54の下側に露出している状態で)ツマミ120を90°回転し、ツマミ120を上方に持ち上げて前記係止部123の上面側部分を回転体50の溝部55内に係合しておく。
【0026】
そしてケース10の反転板収納部27内に反転板45を収納する。この反転板45とフレキシブル回路基板30の押圧スイッチ用スイッチパターン31とによって押圧スイッチの基本構造が構成される。
【0027】
次にケース10の収納部13内に前記摺動子65及びツマミ120を取り付けた回転体50を挿入する。このとき摺動子65の各摺接部67が回転スイッチ用スイッチパターン33上に当接する。この摺動子65と回転スイッチ用スイッチパターン33とによって回転スイッチ(回転式電子部品)の基本構造が構成される。
【0028】
次に前記回転体50の上にクリックバネ70を載置する。このときクリックバネ70の両取付部75はそれぞれケース10のクリックバネ係止部24内に収納され位置決めされる。同時にクリックバネ70の弾接部73は回転体50のクリック係合部61に弾接している。
【0029】
次に前記クリックバネ70の上にカバー100を被せ、その際カバー100の軸支部107内にツマミ120と回転体50の軸部51とを挿入し、同時にカバー100の係止部109にケース10の位置決め係止部29を挿入し、同時にカバー100の係止孔111にクリックバネ70の係止爪79を挿入・係止してクリックバネ70の位置決めを行う。そしてカバー100のケース係止部103をケース10の底面側に折り曲げて一体化する。これによって回転式電子部品1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0030】
ここでケース10の挟持用突部241の作用について説明する。図7に示すように、クリックバネ70の取付部75をケース10のクリックバネ係止部24内に収納した際、取付部75は挟持用突部241上に載置される。このとき取付部75はその全体がクリックバネ係止部24内に収納されるのではなく、厚み方向の一部がクリックバネ係止部24の上方に露出する。言い換えれば取付部75の厚み方向の一部(上部)がクリックバネ係止部24の上方に露出するように各部材の寸法を設定している。そしてケース10の上にカバー100を載置して図6に示すようにカバー100をケース10に押し付けるように取り付ければ、取付部75は、カバー100と挟持用突部241によって挟持され、その際の挟持力によって挟持用突部241(特にその先端近傍部分)が変形し、これによってカバー100の下面はケース10の外周側壁17〜23の上面に当接する(または接近して位置する)。つまり挟持用突部241はこれが変形することでケース10の外周側壁17〜23の上面から突出する取付部75の厚み分を吸収する。
【0031】
一方クリックバネ70の弾発力を変更する等の理由からクリックバネ70の厚みを変更した場合(例えば薄くした場合)、図8に示すように取付部75の厚みも薄くなる。しかしながらこの場合も、取付部75の厚み方向の一部(上部)がクリックバネ係止部24の上方に露出するので、前記と同様に、挟持用突部241が変形することでクリックバネ70を確実に挟持でき、固定できる。クリックバネ70の厚みを厚くした場合も同様である。即ちクリックバネ70の厚みを変更しても、クリックバネ係止部24の上方に突出する寸法が異なるだけであり、その突出した部分の寸法は挟持用突部241が異なる変形を行うことで吸収でき、クリックバネ70を確実に挟持固定できる上に、ケース10とカバー100間の高さ寸法は同一を保てる。
【0032】
次に回転式電子部品1の動作を説明する。即ちツマミ120を回転すると、これと一体に回転体50及び摺動子65が回転し、摺動子65の摺接部67が回転スイッチ用スイッチパターン33上を摺動し、その出力が変化する。出力は同一方向に突出した3本の端子40から取り出される。このとき同時にクリックバネ70の弾接部73が回転する回転体50のクリック係合部61に弾接することでクリック感覚が生じる。一方ツマミ120を真下方向に向けて押圧すると、回転体50は元の位置のまま、ツマミ120のみが下降してその押圧部125が反転板45を押圧反転し、これによって押圧スイッチ用スイッチパターン31を構成する2つのスイッチパターン間が電気的に接続されてオンする。出力は同一方向に突出した2本の端子40から取り出される。このときツマミ120と共にツマミ120の係止部123も下降するが、係止部123が下降した位置でも回転体50の溝部55から外れないように各部の寸法を設定しているので、回転体50に対してツマミ120だけが回転することはない。そしてツマミ120への押圧を解除すると、反転板45の弾性復元力によって反転板45は元の形状に自動復帰し、これによって押圧スイッチはオフし、同時にツマミ120は押し上げられて元の位置に自動復帰する。
【0033】
以上説明したように回転式電子部品1によれば、クリックバネ70を、ケース10の収納部13内に収納されるアーム部71と、アーム部71の外周から突出してケース10のクリックバネ係止部24に挿入・位置決めされる取付部75とによって構成したので、小さな面積でクリックバネ70を構成でき、材料費の削減が図れる。またクリックバネ70の取付部75をケース10のクリックバネ係止部24に挿入・位置決めした上で、この取付部75をケース10とカバー100の間に挟持固定するので、クリックバネ70の位置決め・固定が容易且つ確実に行える。このようにクリックバネ70の取付部75をケース10のクリックバネ係止部24に挿入することで、クリックバネ70の回転方向への位置決めは確実に行えるが、半径方向への位置決めは必ずしも確実とはいえない。このためこの回転式電子部品1においては、クリックバネ70の係止爪79をカバー100の係止孔111に挿入・係止する構成とし、これによってクリックバネ70の回転方向と半径方向の両方向の位置決めを確実にしている。
【0034】
またケース10のクリックバネ係止部24の底面にクリックバネ70の取付部75を挟持した際に変形することで取付部75の厚み寸法の相違を吸収する挟持用突部241を設けたので、クリックバネ70の弾発力を変更する等の理由からクリックバネ70の厚みを変更しても、クリックバネ70を確実に挟持でき、固定できる。その際、ケース10とカバー100間の高さ寸法は変わらない。さらにこの回転式電子部品1のクリックバネ70のように、クリックバネ70を一対の円弧状のアーム部71の根元部分を一対の取付部75によって連結したリング形状に形成し、且つ一対の取付部75をケース10とカバー100の間に挟持固定する構成とすれば、クリックバネ70の固定がさらに確実に行える。
【0035】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記回転式電子部品1においては、クリックバネ70を一対のアーム部71と一対の取付部75によってリング状に形成し、且つ各アーム部71に弾接部73を設けたが、例えば図9に示すように弾接部73を一方のアーム部71だけに設けてクリックバネ70−2を構成しても良く、また図10に示すように一方のアーム部71を省略して1つのアーム部71と2つの取付部75でクリックバネ70―3を構成しても良く、また図11に示すように一方の取付部75を省略して円弧状の2つのアーム部71と1つの取付部75によってクリックバネ70―4を構成しても良い。また図9に示す弾接部73を設けていないアーム部71を点線で示すように円弧状以外の形状(この例では直線状)に形成しても良い。つまりクリックバネは、円弧状のアーム部71の根元部分に取付部75を連結したリング形状又は円弧形状に形成されていればよい。
【0036】
また上記回転式電子部品1は押圧スイッチ付きの回転式電子部品であるが、押圧スイッチを省略した回転式電子部品に対しても本発明を適用できることは言うまでもない。この場合、回転体50とツマミ120は一体に構成し、押圧スイッチを構成する各構成部分は省略する。また上記回転式電子部品1は回転式スイッチであるが、パターンの変更等によって回転式可変抵抗器として構成しても良い。
【0037】
また挟持用突部241の形状・構造も種々の変更が可能であり、例えばクリックバネ係止部24の底面の長手方向全長にわたって形成しなくても良く、また例えば1又は複数個の点状に突出する形状や、1又は複数個のかまぼこ状に突出する形状等でも良く、種々の変形が可能である。また挟持用突部241は上記実施形態ではケース10と一体成形されているが、挟持用突部241のみをラバー等で別部品として作成し、これをクリックバネ係止部24の底面に取り付けても良い。要はケース10のクリックバネ係止部24の底面にクリックバネ70の取付部75をケース10とカバー100の間に挟持した際に変形することで取付部75の厚み寸法の相違を吸収する構成であれば、どのような構成であっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 回転式電子部品
10 ケース
13 収納部
17,19,21,23 外周側壁
24 クリックバネ係止部
241 挟持用突部
45 反転板
50 回転体
61 クリック係合部
65 摺動子
70 クリックバネ
71 アーム部
73 弾接部
75 取付部
79 係止爪
100 カバー
111 係止孔
120 ツマミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部を有するケースと、
前記ケースの収納部内に回転自在に収納される回転体と、
前記回転体上に設置され、弾性を有するアーム部に設けた弾接部を前記回転体に設けたクリック係合部に係合することでクリック感覚を生じさせるクリックバネと、
前記クリックバネ上に設置されてケースの収納部を覆うカバーと、を具備し、
前記クリックバネは円弧状のアーム部の根元部分に取付部を連結したリング形状又は円弧形状に形成され、前記アーム部は前記収納部内に収納される外径寸法であり、且つ前記取付部は前記アーム部の外周から水平方向外方に向けて突出し、前記ケースの収納部の周囲に形成した外周側壁上に設けた凹部からなるクリックバネ係止部に前記取付部を挿入・位置決めした上で、この取付部を前記ケースとカバーの間に挟持固定したことを特徴とする回転式電子部品のクリック機構。
【請求項2】
請求項1に記載の回転式電子部品のクリック機構において、
前記ケースのクリックバネ係止部の底面にはクリックバネの取付部を前記ケースとカバーの間に挟持した際に変形することで取付部の厚み寸法の相違を吸収する挟持用突部が設けられていることを特徴とする回転式電子部品のクリック機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転式電子部品のクリック機構において、
前記クリックバネの取付部には、カバーに向けて折り曲げられた係止爪が設けられており、この係止爪を前記カバーに設けた係止孔に挿入・係止してクリックバネの位置決めを行うことを特徴とする回転式電子部品のクリック機構。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の回転式電子部品のクリック機構において、
前記クリックバネは、一対の円弧状のアーム部の根元部分を一対の取付部によって連結したリング形状に形成されていることを特徴とする回転式電子部品のクリック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−113985(P2012−113985A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262451(P2010−262451)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】