説明

回転炉床炉の排ガス処理方法

【課題】排ガス流速を従来に比べて増加させ、増加しても緻密な固着物のダクトへの付着は抑えることができる、回転炉床炉の排ガス処理方法を提供する。
【解決手段】加熱還元により還元鉄を製造する回転炉床炉1の排ガス排出口に直結された第1の排ガスダクト2を介して排ガスを冷却する冷却装置5が連結され、冷却装置5の後段に第2の排ガスダクト7を介して2次集じん器8が連結された回転炉床炉の排ガス処理方法において、第1の排ガスダクト2の上流側は回転炉床炉1に対して水平配置した水平ダクト3とし、下流側を垂直配置した垂直ダクト4として冷却装置5に連結し、かつ第1の排ガスダクト内の排ガス流速を9m/秒〜17m/秒とし、第2の排ガスダクト7の上流側を上昇傾斜とし下流側を下降傾斜として2次集じん器8に接続し、かつ、第2の排ガスダクト内の排ガス流速を15m/秒〜23m/秒とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鉱石粉あるいは製鉄廃棄物、還元剤を原料とし、還元鉄を製造する回転炉床炉の排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼ダストや粉鉱石などの製鉄廃棄物に含まれる酸化鉄を再利用するため、これらと還元剤やバインダを混練・造粒したペレットを回転炉床炉に装入し、加熱還元することにより還元鉄を製造するとともに、亜鉛を含む製鉄廃棄物から亜鉛を除去、回収するプロセスが実用化されている。これは還元によって気化した亜鉛を炉内または排ガスダクト内の酸素により酸化して固体の酸化亜鉛とし、排ガス系の後段の集塵装置によって回収するプロセスである。このプロセスの排ガスダクトは立ち上げ型や水平型が採用されていた。
【0003】
特許文献1(特許第4047495号公報)には、回転床を有する金属の還元炉において、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化クロムの少なくとも一類を有する原料粉体であって、当該原料粉体がアルカリ金属および亜鉛を含む場合に、当該原料粉体を還元する際に、当該還元炉から発生する排ガスの経路に、付着ダスト除去装置を有する廃熱ボイラー、排ガス冷却器、付着ダスト除去装置を有する熱交換器、および、集塵機を順に設置した排ガス処理設備が開示されている。この特許文献1に開示されている立ち上げ型はガス流速を低速にして、ダストが炉外に流出しにくいようにしている。
【0004】
また、特許文献2(特開平2005−299979号公報)に示されている水平型の例では、亜鉛を含む酸化金属と炭素を含む粒子の混合物を還元する回転炉床式還元炉の排ガス処理において、排ガス処理装置を、排ガス煙道水平部、廃熱ボイラー、熱交換機、バグフィルター式集塵機の構成とし、排ガス煙道水平部を通過する際の排ガス流速が1.7〜8m/秒、廃熱ボイラーを通過する際の排ガス流速が2〜8m/秒、熱交換器を通過する際の排ガス流速が2〜7m/秒とすることで粗粒を沈降排出する機能を持たせることが示されている。
【特許文献1】特許第4047495号公報
【特許文献2】特開2005−299979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記文献1の立ち上げ型では、低流速であるため、酸化亜鉛を炉外に排出して回収するプロセスには適さない。また、前記特許文献2に記載された酸化亜鉛を除去する水平型のプロセスでは、排ガス流速が低速であるため、炉内にダスト粉が残留し溶融することで操業障害が生じる。さらに、低流速にするために排ガス処理設備が大型になるという欠点がある。
【0006】
逆に排ガスダクト内での排ガス流速を高速にすると、微粒子でかつ真密度が高い酸化亜鉛がダクト管壁へ衝突して、ダクト管壁が摩耗したり、あるいは衝突により緻密な固着物となってダクトに付着してダクトを閉塞したりする現象が生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、排ガス流速を従来に比べて増加させ、増加しても緻密な固着物のダクトへの付着は抑えることができる、回転炉床炉の排ガス処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、加熱還元により還元鉄を製造する回転炉床炉の排ガス排出口に直結された第1の排ガスダクトを介して排ガスを冷却する冷却装置が連結され、前記冷却装置の後段に第2の排ガスダクトを介して2次集じん器が連結された回転炉床炉の排ガス処理方法において、次の(1)〜(7)を特徴とする。
【0009】
(1)前記第1の排ガスダクトの上流側は回転炉床炉に対して水平配置した水平ダクトとし、下流側を垂直配置した垂直ダクトとして前記冷却装置に連結し、かつ前記第1の排ガスダクト内の排ガス流速を9m/秒〜17m/秒とする。
【0010】
(2)前記第2の排ガスダクトの上流側を上昇傾斜とし下流側を下降傾斜として2次集じん器に接続し、かつ、前記第2の排ガスダクト内の排ガス流速を15m/秒〜23m/秒とする。
【0011】
(3)前記第1の排ガスダクトの上流側は回転炉床炉に対して水平配置した水平ダクトとし、下流側を垂直配置した垂直ダクトとして前記冷却装置に連結し、かつ前記第1の排ガスダクト内の排ガス流速を9m/秒〜17m/秒とし、前記第2の排ガスダクトの上流側を上昇傾斜とし下流側を下降傾斜として2次集じん器に接続し、かつ、前記第2の排ガスダクト内の排ガス流速を15m/秒〜23m/秒とする。
【0012】
(4)前記第1の排ガスダクトの垂直ダクトの下部にダスト排出装置を連結して、第1の排ガスダクト内のダストを排出する。
【0013】
(5)前記排ガスを冷却する冷却装置の下部にダスト排出装置を連結して、冷却装置内のダストを排出する。
【0014】
(6)前記第2の排ガスダクトの上流側および下流側を加振装置により加振して、第2の排ガスダクト内に付着するダクトを落下させる。
【0015】
(7)前記第2の排ガスダクト内の酸素濃度を1%以上とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、第1の排ガスダクトでは、排ガス流速を9m/秒〜17m/秒とすることにより、酸化亜鉛の内壁面への付着を抑え、第1の排ガスダクトを水平ダクトと垂直ダクトの組合せにより、ガス流れを水平から上昇に急変化させることで粗粒を排除することができる。また第2の排ガスダクトでは排ガス流速を15m/秒〜23m/秒とするとともに、傾斜ダクトにすることにより、酸化亜鉛の圧密を抑えて管底に落下させ、傾斜に沿って滑らせることができる。その結果、ダクトの掃除頻度が下がり長期連続運転が可能になり稼働率が向上し、またダクトの掃除負荷が下がりメンテナンスが容易になる。
【0017】
この時、亜鉛は必ず固体の酸化亜鉛となっておく必要があるが少なくとも1%以上の酸素濃度により、亜鉛は酸化して固体になる。
【0018】
また、流速の増加によりダクトの断面積を小さくすることができるので、排ガス処理設備を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施例として、回転炉床炉の排ガスダクトを排ガスが600℃〜1400℃の高温域においては水平と垂直からなる耐火物ダクト構造とし、その中における流速を9m/sec〜17m/secとし、垂直ダクト下部にはダスト排出装置を設け、排ガスダクトを耐火物ダクトにして回転炉床炉の側壁に結合する。また、排ガスダクトを排ガスが600℃未満の低温域においては傾斜部からなる鋼製ダクト構造とし、その中におけるガス流速を15m/sec〜23m/secとしてダクト外面には衝撃あるいは振動を与えることのできる装置を有し、その両端にはダスト排出装置を有した設備を配する構成とすることができる。この1600℃未満の低温域では排ガス装置内の雰囲気を少なくとも1%以上の酸素濃度にして、酸化亜鉛を固体にして、回収二次ダスト中の亜鉛濃度を上げる。
【0020】
本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の回転炉床炉の排ガス処理理方法を適用する排ガス処理装置の全体を示す概略図である。
【実施例1】
【0021】
図1において、亜鉛を含有する粉鉱石や製鉄ダストなどの製鉄廃棄物と還元剤を混練・造粒したペレットが回転炉床炉1の炉床の回転に伴い、炉内の加熱ゾーンで加熱され、次いで還元ゾーンで還元される。回転炉床炉内では、還元された亜鉛が蒸発して、ペレットから抜ける。
【0022】
蒸発した亜鉛は、排ガスとともに炉内を移動して、加熱ゾーンの側壁に設置されている排ガスの排出口に接続されているほぼ水平方向に排ガスを流す水平ダクト3とその下流側に垂直配置された垂直ダクト4からなる第1の排ガスダクト2により排ガスを冷却する冷却装置5に送られる。第1の排ガスダクト2は耐火物を内張した耐火物ダクト構造にする。垂直ダクト4にすることによりダストが落ちやすくなる。排ガスを冷却する冷却装置5としては、1次集じん器、ガス冷却機または熱交換器が利用できる。
【0023】
垂直ダクト4および冷却装置5の下部には、沈降、蓄積したダストを排出するため、ダスト排出装置6が設けられる。
【0024】
第1の排ガスダクト2では、排ガス流速を9m/秒〜17m/秒とする。流速が9〜17m/secでは酸化亜鉛の付着性は弱く、第1の排ガスダクト内壁面に堆積しない。従ってその流速は外部から衝撃や振動を与えることのできない高温ガスの流通する耐火物ダクトに適している。一方、酸化鉄や酸化ニッケル等の粗粒が回収2次ダストに侵入して酸化亜鉛濃度を下げないためには、第1の排ガスダクト2を水平ダクト3と垂直ダクト4の組合せとし、流れの急激な変化によって粗粒を排除することが効果的となる。排除されたダストを排出するためには垂直ダクト4の下部にダスト排出装置6が必要となる。
【0025】
表1に示すように、排ガス流速9m/秒未満の場合は、流速が小さく酸化亜鉛粒子の一部が水平ダクト内に沈降、蓄積するので好ましくない。一方、排ガス流速が17m/秒を超えると、流速が高くなり真密度が高い酸化亜鉛がダクト管壁へ付着して緻密な固着物となりダクトが閉塞するおそれがあるので好ましくない。
【0026】
【表1】

【0027】
第1の排ガスダクト2からの600℃〜1400℃の亜鉛含有排ガスは、冷却装置5に入り約200℃に冷却される。
【0028】
冷却された排ガスは、第2の排ガスダクト7を経てバグフィルター式集塵機8に導入されて除塵される。冷却装置5とバグバグフィルター式集塵機8を接続する第2の排ガスダクト7は鋼製とし、冷却装置5の上流側を上昇傾斜した上流側傾斜ダクト9とし、下流側を下降傾斜した上流側傾斜ダクト10が接続された山形の傾斜ダクトに形成する。傾斜ダクトからなる第2の排ガスダクト7では、排ガス流速を15m/秒〜23m/秒とする。
【0029】
表2に示すように、流速が23m/sec以下ではダクト管壁に付着したダストは圧密されておらず、外部から衝撃や振動を与えることによって容易に剥離することができる。また剥離したダストがダクト底部に堆積しないよう、ダクトは傾斜させる。
【0030】
【表2】

【0031】
第2の排ガスダクト7では、排ガス流速15m/秒未満の場合は、流速が小さいため酸化亜鉛が傾斜ダクトを上昇せずにダクト内に落下するので好ましくない。一方、排ガス流速が23m/秒を超えると、流速が高くなり真密度が高い酸化亜鉛が傾斜ダクトに衝突して壁へ付着して緻密な固着物となりダクトを閉塞させるおそれがある。
【0032】
傾斜ダクトの上流側および下流側に加振装置11を設け、傾斜ダクトを加振させて、傾斜ダクト内に付着するダクトを落下させるようにすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の回転炉床炉の排ガス処理理方法を適用する排ガス処理装置の全体を示す概略図である。
【符号の説明】
【0034】
1:回転炉床炉
2:第1の排ガスダクト
3:水平ダクト
4:垂直ダクト
5:冷却装置
6:ダスト排出装置
7:第2の排ガスダクト
8:バグフィルター式集塵機
9:上流側傾斜ダクト
10:下流側傾斜ダクト
11:加振装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱還元により還元鉄を製造する回転炉床炉の排ガス排出口に直結された第1の排ガスダクトを介して排ガスを冷却する冷却装置が連結され、前記冷却装置の後段に第2の排ガスダクトを介して2次集じん器が連結された回転炉床炉の排ガス処理方法において、前記第1の排ガスダクトの上流側は回転炉床炉に対して水平配置した水平ダクトとし、下流側を垂直配置した垂直ダクトとして前記冷却装置に連結し、かつ前記第1の排ガスダクト内の排ガス流速を9m/秒〜17m/秒とすることを特徴とする回転炉床炉の排ガス処理方法。
【請求項2】
加熱還元により還元鉄を製造する回転炉床炉の排ガス排出口に直結された第1の排ガスダクトを介して排ガスを冷却する冷却装置が連結され、前記冷却装置の後段に第2の排ガスダクトを介して2次集じん器が連結された回転炉床炉から排出される排ガスの処理方法において、前記第2の排ガスダクトの上流側を上昇傾斜とし下流側を下降傾斜として2次集じん器に接続し、かつ、前記第2の排ガスダクト内の排ガス流速を15m/秒〜23m/秒とすることを特徴とする回転炉床炉の排ガス処理方法。
【請求項3】
前記第1の排ガスダクトの上流側は回転炉床炉に対して水平配置した水平ダクトとし、下流側を垂直配置した垂直ダクトとして前記冷却装置に連結し、かつ前記第1の排ガスダクト内の排ガス流速を9m/秒〜17m/秒とすることを特徴とする請求項2に記載の回転炉床炉の排ガス処理方法。
【請求項4】
前記第1の排ガスダクトの垂直ダクトの下部にダスト排出装置を連結して、第1の排ガスダクト内のダストを排出することを特徴とする請求項1または3のいずれかに記載の回転炉床炉の排ガス処理方法。
【請求項5】
前記排ガスを冷却する冷却装置の下部にダスト排出装置を連結して、冷却装置内のダストを排出することを特徴とする請求項2または3に記載の回転炉床炉の排ガス処理方法。
【請求項6】
前記第2の排ガスダクトの上流側および下流側を加振装置により加振して、第2の排ガスダクト内に付着するダクトを落下させることを特徴とする請求項2または3に記載の回転炉床炉の排ガス処理方法。
【請求項7】
前記第2の排ガスダクト内の酸素濃度を1%以上とすることを特徴とする請求項2,3,5,6のいずれかに記載の回転炉床炉の排ガス処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−281617(P2009−281617A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132278(P2008−132278)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】